JP2005264132A - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 樹脂組成物からなる成形品の透明性、色調、および耐紫外線性に優れると共に、成形時の熱安定性および離型性に優れ、かつ金型付着物生成の十分に低減されたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、特定の多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)(例えばBASF社からUVINUL3030(商品名)として市販されている化合物)0.01〜10重量部、および多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、かつ500〜2000g/モルの分子量を有する脂肪酸エステル化合物(C成分)(例えばペンタエリスリトールとステアリン酸などの脂肪族カルボン酸とのエステル)0.01〜1重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、特定の多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)(例えばBASF社からUVINUL3030(商品名)として市販されている化合物)0.01〜10重量部、および多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、かつ500〜2000g/モルの分子量を有する脂肪酸エステル化合物(C成分)(例えばペンタエリスリトールとステアリン酸などの脂肪族カルボン酸とのエステル)0.01〜1重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、特定構造を有する紫外線吸収剤及び特定の脂肪酸エステル化合物を含有したポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。さらに詳しくは、本発明はかかる特定の紫外線吸収剤及び脂肪酸エステル化合物を含有することにより、(i)成形品の耐紫外線性に優れている、(ii)成形時の金型からの離型性に優れている、(iii)射出成形時の金型鏡面、スライド部およびガス抜き部などに生じる金型付着物を大幅に低減できる、(iv)成形加工時の熱安定性に優れている、並びに(v)成形品の透明性および色調に優れている、高い実用性のポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品に関する。殊に本発明は該ポリカーボネート樹脂組成物からなる車両用透明部材にも関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性に優れていることから、多くの用途に使用されている。最近では、シート材料や窓ガラス材料等、屋外での用途においても広く使用されるようになってきている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂を屋外で長期間使用すると、紫外線による樹脂劣化により、色相、透明性、機械物性が低下することが知られている。耐紫外線性を改良する方法としては、例えば、紫外線吸収剤をポリカーボネート樹脂に配合する方法、および紫外線吸収剤を配合した樹脂(ポリカーボネ−ト樹脂あるいはその他のアクリル樹脂等)をポリカーボネート成形体表面に積層あるいは被覆する方法などが広く知られている。
一方、ポリカーボネート樹脂を射出成形する場合、溶融成形時の金型からの離型性を向上させるために、一般的には樹脂そのものに離型剤を配合する方法が広く用いられている。
紫外線吸収剤および離型剤としては、これまで多くの種類が開示され、実際に用いられている。しかしながらこれらの添加剤はポリカーボネート樹脂との溶融混練時および溶融混練して得られた樹脂組成物の成形加工時に揮発や分解が起こりやすく、シルバーストリーク現象や変色等の成形不良、金型付着物の生成、および成形品表面の転写不良等の様々な問題を引き起こす原因となることがある。
特に、近年のヘッドランプレンズおよびグレージング材等に代表される車両用透明部材の成形においては、薄肉軽量化および大型化がすすみ、さらに生産性向上の目的で成形時の樹脂温度をより高くする傾向にある。その結果上記の問題はますます大きくなっている。一方でこれらの車両用透明部材は、極めて良好な外観が要求される部材であることから、上記問題が生じないよう細心の注意を払って製造されているのが現状である。
特に金型付着物生成の問題は、ヘッドランプレンズ(素通し型のレンズ、すなわちヘッドランプカバーを含む)に代表される金型構造の複雑な成形品の生産時に、特に顕著となりやすい。これは金型構造が複雑であるほど付着物が堆積する隘路が生成しやすいためである。一方でかかる金型付着物による不良を防止する為に定期的な金型内部のメンテナンス(洗浄)は金型構造が複雑であるため、長時間を必要とし、生産性を大幅に低下させる。したがって、ヘッドランプレンズでは金型付着物生成の問題は、解決すべき重要な課題となっている。一方、グレージング材はヘッドランプレンズほど金型構造が複雑でない場合であっても極めて大面積を有するために不良の発生率が高くなりやすい。したがってグレージング材においても金型付着物生成の問題は、解決すべき重要な課題である。
熱による分解や揮発が少なく、樹脂の色相や熱安定性にも影響が少ない紫外線吸収剤については既に多くの提案がなされている。
比較的耐揮発性の良い紫外線吸収剤を高濃度に含んだポリカーボネート樹脂フィルムをポリカーボネート樹脂成形品の表面に積層する方法は公知である(特許文献1、2、3参照)。これらの方法によれば、比較的高い耐紫外線性の成形品が得られるものの、成形品外観を悪化させること無く均一の厚みにフィルムを積層させることは困難であるために、成形品形状は非常に制約される。実用上上記方法は、シート材料程度の非常に限定された形状の成形品にしか使用できず、また工程が複雑となることから生産性も劣るという問題がある。
紫外線吸収剤としてビス−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸誘導体、並びに該誘導体は基本的に無色である点およびフェノール性水酸基の存在を必要としない点において優れることは公知である(特許文献4参照)。紫外線吸収剤として多官能2−シアノアクリル酸エステル化合物、並びに該化合物の揮発性が低いことは公知である(特許文献5参照)。
ポリカーボネート樹脂に紫外線吸収剤として分子量500以上の多官能2−シアノアクリル酸エステル化合物を、熱安定剤として周知のホスファイト化合物と共に配合することにより、紫外線吸収剤の揮発および成形品の色相変化が共に抑制されたポリカーボネート樹脂組成物が得られることは公知である(特許文献6参照)。
レゾルシノールアリレートポリエステルに1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンを配合した樹脂組成物並びにかかる組成物からなる層とポリカーボネート樹脂からなる層との多層成形体は公知である(特許文献7参照)。
しかしながら金型付着物生成の問題を解決するためには、上記知見は未だ十分とはいえなかった。車両用透明部材を構成するポリカーボネート樹脂組成物においては、少なからず離型剤の配合が必要とされるが、かかる離型剤との組み合わせにおける金型付着物生成に関する知見は、上記公知文献にはいずれも明らかにされていなかった。
本発明の目的は、樹脂組成物からなる成形品の透明性、色調、および耐侯性に優れると共に、成形時の熱安定性および離型性に優れ、かつ金型付着物生成の十分に低減されたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品、特にヘッドランプレンズやグレージング材に代表される車両用透明部材を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成せんとして鋭意検討を重ねた。その結果本発明者らは、金型付着の問題が単に紫外線吸収剤の揮発性の低減やその分子量にはよらないことを見出した。より具体的には、離型剤を更に配合したポリカーボネート樹脂組成物においては離型剤の種類によっても金型付着物生成が大きく異なる点を見出した。かくして本発明者らは、離型剤の選定が上記課題を解決しより実用的なポリカーボネート樹脂組成物の提供に重要であるとの認識を得た。かかる認識の下、更に研究を進めた結果、ポリカーボネート樹脂に、特定構造の紫外線吸収剤及び特定の脂肪酸エステルをそれぞれ特定量配合することによって、上記の課題を解決できることを究明し本発明を完成した。
本発明は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、下記一般式(I)で表される多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)0.01〜10重量部、および多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、かつ500〜2000g/モルの分子量を有する脂肪酸エステル化合物(C成分)0.01〜1重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物にかかるものである。
本発明の別の態様によれば、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、上記一般式(I)で表される多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)0.01〜10重量部、および多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルであり、500〜2000g/モルの分子量を有し、かつ4〜20の酸価を有する脂肪酸フルエステル化合物(C’成分)0.01〜1重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物が提供される。
上記脂肪酸エステルは、好ましくは脂肪酸フルエステルであり、より好ましくは炭素数5〜30である脂肪族の4〜8価のアルコールと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸とのフルエステルであり、更に好ましくは該脂肪族多価アルコールはペンタエリスリトールであるフルエステルである。
上記一般式(I)で表される多官能2−シアノアクリル酸エステル(B成分)は、nが4〜8の整数であり、かつXが炭素数5〜20の脂肪族ポリオールから誘導されるエステル形成性残基である化合物が好ましい。尚、上記一般式(I)おいて“エステル形成性゛残基”とは、脂肪族または脂環族ポリオールの水酸基(−OH)がエステル結合を形成した場合に、エステル結合を形成した残基(つまりこれらポリオールから水酸基が離脱した形の脂肪族基または脂環族基)をいう。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物からは、好ましくはその溶融成形された成形品が提供され、該成形品は好ましくは車両用透明部材であり、中でも好ましいのは、車両用灯具カバーまたはレンズ、並びに車両用グレージング材である。
以下本発明の詳細について説明する。
以下本発明の詳細について説明する。
<A成分について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるA成分は、該樹脂組成物の主成分となるポリカーボネート樹脂である。代表的なポリカーボネート樹脂(以下、単に「ポリカーボネート」と称することがある)は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法及び環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるA成分は、該樹脂組成物の主成分となるポリカーボネート樹脂である。代表的なポリカーボネート樹脂(以下、単に「ポリカーボネート」と称することがある)は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法及び環状カーボネート化合物の開環重合法等を挙げることができる。
上記2価フェノールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらの中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
本発明では、汎用のポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、他の2価フェノール類を用いて製造した特殊なポリカーボネ−トをA成分として使用することが可能である。
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)を用いたポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、吸水による寸法変化や形態安定性の要求が特に厳しい用途に適当である。これらのBPA以外の2価フェノールは、該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
殊に、高剛性かつより良好な耐加水分解性が要求される場合には、樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)〜(3)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(1)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつBis−TMCが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
なお、上述した各種のポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率及びTg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、ポリマー自体の耐加水分解性が良好で、かつ成形後の低反り性においても格段に優れているため、形態安定性が要求される分野では特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃であるポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%であるポリカーボネート。
ここで、ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
一方、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステル又はハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート又は2価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
このような2価フェノールとカーボネート前駆体とから界面重合法によってポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、2価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また、ポリカーボネートは3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。ここで使用される3官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、その量は、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また、特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる分岐構造の割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
また、本発明の樹脂組成物においてA成分となる芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族もしくは脂肪族(脂環族を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート並びにかかる2官能性カルボン酸及び2官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。また、得られたポリカーボネートの2種以上をブレンドした混合物でも差し支えない。
ここで用いる脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の2官能性のカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸及びシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。2官能性アルコールとしては、脂環族ジオールがより好適であり、例えばシクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。
さらに、本発明では、A成分として、ポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
A成分となる芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述した2価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等の各種ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合したものを使用することもできる。
ポリカーボネートの重合反応において、界面重縮合法による反応は、通常、2価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、例えば、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の3級アミン、4級アンモニウム化合物、4級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
また、かかる重合反応においては、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類のとしては、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等の炭素数10以上の長鎖アルキル基で核置換された単官能フェノールを挙げることができ、該フェノールは流動性の向上及び耐加水分解性の向上に効果がある。かかる末端停止剤は単独で使用しても2種以上併用してもよい。
溶融エステル交換法による反応は、通常、2価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に2価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコール又はフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は、生成するアルコール又はフェノールの沸点等により異なるが、殆どの場合120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコール又はフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は、通常、1〜4時間程度である。
上記カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物等を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等のエステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。これらの触媒は単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。触媒の使用量は、原料の2価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
溶融エステル交換法による反応では、生成ポリカーボネートのフェノール性末端基を減少する目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば、2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
さらに、溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また、重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用するのが適当である。好ましい失活剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩が挙げられる。
A成分となるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は限定されない。しかしながら、粘度平均分子量は、10,000未満であると強度等が低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、15,000〜28,000の範囲がさらに好ましい。この場合、成形性等が維持される範囲内で、粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートを混合することも可能である。例えば、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量のポリカーボネート成分を配合することも可能である。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4M0.83
c=0.7
なお、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は、次の要領で行う。すなわち、該樹脂組成物をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度(ηSP)を、オストワルド粘度計を用いて求め、上式によりその粘度平均分子量Mを算出する。
<B成分について>
本発明ではB成分として上記一般式(I)で表される多官能性2−シアノアクリル酸エステルが使用される。ポリカーボネート樹脂組成物に使用される紫外線吸収剤は、一般的に可視領域の光も若干吸収するものが多く、その為、成形品が着色を呈し、光線透過率が低下するという問題があった。しかしながら本発明で使用するB成分は、吸収領域がより短波長側となることから、ポリカーボネート樹脂に与える色相の影響が少ないという利点がある。なお且つ比較的良好な紫外線吸収能を有するため、ポリカーボネート樹脂に対して充分な耐紫外線性を付与することができる。特に高い光線透過率や高度な意匠性が必要となる車両用灯具カバーやレンズ並びに車両用グレージング材用途に好適な紫外線吸収剤である。
本発明ではB成分として上記一般式(I)で表される多官能性2−シアノアクリル酸エステルが使用される。ポリカーボネート樹脂組成物に使用される紫外線吸収剤は、一般的に可視領域の光も若干吸収するものが多く、その為、成形品が着色を呈し、光線透過率が低下するという問題があった。しかしながら本発明で使用するB成分は、吸収領域がより短波長側となることから、ポリカーボネート樹脂に与える色相の影響が少ないという利点がある。なお且つ比較的良好な紫外線吸収能を有するため、ポリカーボネート樹脂に対して充分な耐紫外線性を付与することができる。特に高い光線透過率や高度な意匠性が必要となる車両用灯具カバーやレンズ並びに車両用グレージング材用途に好適な紫外線吸収剤である。
本発明のB成分は上記一般式(I)において、nの下限は好ましくは3、より好ましく4であり、一方nの上限は好ましくは8、より好ましくは6である。B成分においては成形加工時の揮発性を低減する目的において、かかる分子量は大きい方が望ましく、透明性や色相の点からは低い方が好ましいためである。かかる点から本発明で使用されるB成分の多官能性2−シアノアクリル酸エステルの分子量は好ましくは550〜3000g/モルであり、より好ましくは783〜2200g/モルであり、更に好ましくは1044〜1700g/モルである。またそれらは2種以上を混合して使用することが可能であるが、できる限り単一の構造からなる化合物である方が透明性や色相の点から有利である。また合成時の副生物や不純物もできる限り低減されていることが好ましい。
上記一般式(I)において、Xは炭素原子数3〜20である脂肪族または脂環族ポリオールから誘導されるエステル形成性残基を表し、そのポリオールの具体例としては、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、および1−メチル−2,2,6,6−テトラヒドロキシメチルシクロヘキサンなどが例示される。これらの中でも好適なポリオールは、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、およびジペンタエリスリトールであり、特に好ましくはペンタエリスリトールである。特に好適なB成分は、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンであり、該化合物はBASF社からUVINUL3030(商品名)として市販されており容易に利用できる。
<C成分について>
本発明で使用するC成分は、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであって、かつ500〜2000g/モルの分子量を有する脂肪酸エステル化合物である。かかる特定の脂肪酸エステルとの組合せにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な透明性および離型性を有し、かつ金型付着物生成を低減している。かかる脂肪酸エステル化合物の分子量は、好ましくは600〜1800g/モルであり、より好ましくは700〜1500g/モルである。分子量が低いほど成形品の透明性や離型性は良好になる傾向にある。これはポリカーボネート樹脂との相溶性がより良好となりやすく、また成形加工時の表面移行性が高いためと考えられる。一方分子量が高いほど脂肪酸エステル化合物自体の揮発性は低減され、金型付着物生成もより生じにくくなる。上記分子量範囲は透明性および離型性と、金型付着物生成の両立において優れた範囲であり、特に上記のより好適な範囲においてその特性は効果的である。尚、脂肪酸エステル化合物は2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合上記の分子量は該混合物としての平均分子量となる。
本発明で使用するC成分は、多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであって、かつ500〜2000g/モルの分子量を有する脂肪酸エステル化合物である。かかる特定の脂肪酸エステルとの組合せにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な透明性および離型性を有し、かつ金型付着物生成を低減している。かかる脂肪酸エステル化合物の分子量は、好ましくは600〜1800g/モルであり、より好ましくは700〜1500g/モルである。分子量が低いほど成形品の透明性や離型性は良好になる傾向にある。これはポリカーボネート樹脂との相溶性がより良好となりやすく、また成形加工時の表面移行性が高いためと考えられる。一方分子量が高いほど脂肪酸エステル化合物自体の揮発性は低減され、金型付着物生成もより生じにくくなる。上記分子量範囲は透明性および離型性と、金型付着物生成の両立において優れた範囲であり、特に上記のより好適な範囲においてその特性は効果的である。尚、脂肪酸エステル化合物は2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合上記の分子量は該混合物としての平均分子量となる。
C成分に使用される多価アルコールは、特にその価数(水酸基数)が4〜8であり、炭素原子数が5〜30の脂肪族多価アルコ−ルであることが好ましい。脂肪族多価アルコ−ルの価数は、好ましくは4〜6であり、また炭素原子数は、好ましくは5〜12、より好ましくは5〜10である。脂肪族多価アルコ−ルは、炭素鎖中にエーテル結合を含んでいてもよい。脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられ、中でもペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールが好ましく、特にペンタエリスリトールが好ましい。
C成分に使用される脂肪族カルボン酸は好ましくは炭素数が10〜22である。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14〜20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。特にステアリン酸およびパルミチン酸が好ましい。
ステアリン酸やパルミチン酸などの脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造される。したがってステアリン酸などの脂肪族カルボン酸は通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。本発明のC成分の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸が好ましく使用される。かかる混合物における各成分の組成割合の好ましい態様は次のとおりである。
C成分を構成する脂肪族カルボン酸はパルミチン酸成分とステアリン酸成分とを含み、その熱分解メチル化GC/MS(ガスクロマト−質量分析)法におけるピーク面積において、パルミチン酸成分の面積(Sp)とステアリン酸成分の面積(Ss)との合計が全脂肪族カルボン酸中80%以上であり、かつ両者の面積比(Ss/Sp)が1.3〜30であるものが好ましい。
ここで熱分解メチル化GC/MS法とは、パイロフィル上において試料である脂肪酸フルエステルと反応試剤である水酸化メチルアンモニウムを反応させて脂肪酸フルエステルを分解すると共に脂肪酸のメチルエステル誘導体を生成させ、かかる誘導体に対してGC/MS測定を行う方法である。
かかるSpおよびSsの合計は、全脂肪族カルボン酸成分中85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、91%以上がさらに好ましい。また一方で上記のSpおよびSsの合計は100%とすることも可能であるが、製造コストなどの観点から98%以下が好ましく、96%以下がより好ましい。また上記の面積比(Ss/Sp)は、1.3〜30の範囲が好ましい。かかる範囲の上限は好ましくは10、より好ましくは4、更に好ましくは3である。なお、これらの混合比率は単独の脂肪族カルボン酸で満足する必要はなく、2種以上の脂肪族カルボン酸を混合することにより満足するものであってもよい。
また上記の混合比率を満足する脂肪族カルボン酸の原料となる油脂としては、例えば牛脂および豚脂などの動物性油脂、並びにアマニ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、トウモロコシ油、落花生油、綿実油、ゴマ油、およびオリーブ油などの植物性油脂を挙げることができる。上記の中でもステアリン酸をより多く含む点で動物性油脂が好ましく、さらに牛脂がより好ましい。さらに牛脂の中でもステアリン酸およびパルミチン酸などの飽和成分を多く含むオレオステアリンが好ましい。
本発明のC成分の脂肪酸エステルは、部分エステルおよび全エステル(フルエステル)のいずれであってもよいが、より好ましくはフルエステルである。部分エステルは通常水酸基価が高くなり、それ自身の熱安定性が低下したり、ポリカーボネート樹脂に対する反応性が高まる結果、樹脂組成物の熱安定性を低下させやすい。またエステル自体の分子量が低くなりがちであるため揮発性の点においても部分エステルは不利となりやすい。本発明でフルエステルとは、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよく、好ましくは85%以上であることを指す。かかるフルエステルは樹脂内部における樹脂間の摩擦力を低減し、よりスムースな樹脂流動を実現し、結果して成形品内部の歪みを低減可能とする効果も有する。
上記の特定の脂肪酸エステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、アルコールと脂肪族カルボン酸とを従来公知の各種方法を利用することができる。また本発明の特定の条件を満足するためには、特にフルエステルの製造においては十分な時間をかけて反応を完全に完結するよりも、見かけ上エステル化反応が終了した比較的早い段階で反応を終了することが好ましい。反応触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、並びに2−エチルヘキシル錫などの有機錫化合物が挙げられる。
更に本発明のC成分は、より好適にはその酸価が4〜20の範囲である脂肪酸フルエステル(C’成分)である。かかる範囲を満足する脂肪酸フルエステルを配合することにより、更に良好な離型性が得られる。かかる酸価は4〜18の範囲がより好ましく、5〜15の範囲が更に好ましい。また成形品内部の歪みの低減も可能となる。かかる酸価が4未満では離型性の不足する場合があり、酸価が20を超えるものは熱安定性の不足する場合がある。かかる酸価を発現する主成分は、脂肪酸エステル中に含まれる遊離の脂肪族カルボン酸(以下単に遊離脂肪酸と称する場合がある)であり、したがって本発明で使用するC成分である脂肪酸エステル中には、遊離脂肪酸などの酸成分がその酸価に対応する量存在する。ここで酸価は試料1g中に含まれる遊離脂肪酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
上記特定酸価の脂肪酸フルエステルが、離型力をより低減(離型性の向上)可能とする理由は明らかではないが次のように考えられる。酸価によって測定される対象は主として遊離脂肪酸であり、これはその分子量から成形加工時にガス化し、上記と同様成形品表面への偏斥が生じ、離型性の向上に寄与すると考えられる。当然ある程度の揮発分が上昇することになるが、これらは、その割合が比較的少量であり、かつ離型時に金型側に残留する割合が少ないことから金型付着物生成が増加しないものと考えられる。
以上、本発明でいうC成分の脂肪酸エステルとは、エステル化合物自体のみならず、該化合物と遊離の脂肪族カルボン酸化合物との混合物をも総称するものである。さらに上記の如く酸価や重量減少温度の値が遊離脂肪族カルボン酸の割合によって変化することを利用して、低い酸価の脂肪酸エステルに、別途脂肪族カルボン酸を添加して、目的とする酸価を有する脂肪酸エステルを調整することも可能である。同様に酸価の異なる2種以上の脂肪酸エステルを混合して本発明の条件を満足する脂肪酸エステルを調整することも可能である。
C成分の水酸基価は、熱安定性および離型力低減の点からは低いことが好ましく、一方あまりに低いことはその製造時間の増大によりコストが増大するため好ましくない。C成分の水酸基価は、0.1〜30の範囲が適切であり、1〜30の範囲が好ましく、2〜20の範囲がより好ましい。ここで水酸基価は試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
本発明のC成分においてヨウ素価は、熱安定性の点から低いことが好ましい。C成分のヨウ素価は10以下が好ましく、1以下がより好ましい。かかるヨウ素価は試料100gにハロゲンを反応させたとき、結合するハロゲンの量をヨウ素のg数に換算した量であり、JIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
脂肪酸エステルの分子量は、該エステルを形成するのに使用される脂肪族カルボン酸がその炭素数の異なる成分の混合物である場合には、その平均炭素数(例えば飽和脂肪族カルボン酸成分をCnH2n+1COO(H)で表したときの平均のn数)に基づく脂肪族カルボン酸からなる脂肪酸エステルとして算出することができる。かかる平均炭素数は、1H−NMR測定により算出されることができる。かかる算出方法としては例えば、末端のメチル基の水素原子に由来するピーク面積と中間のメチレン基の水素原子に由来するピーク面積との比から算出する方法が例示される。
また1H−NMR測定により、脂肪族カルボン酸成分(遊離酸化合物およびエステル化合物のいずれも含む)における、遊離酸化合物とエステル化合物との比も算出することが可能である。したがって酸価が高く比較的多くの遊離脂肪族カルボン酸を含む場合は、かかる比も勘案することにより脂肪酸エステルの分子量は算出される(ここで、脂肪族カルボン酸成分における平均鎖長は遊離酸化合物とエステル化合物のいずれにおいても同一との仮定が含まれるが、かかる仮定は十分に合理的であると考えられる)。
1H−NMR測定による遊離酸化合物とエステル化合物との比は、例えば、脂肪族カルボン酸成分のカルボキシル基に結合したメチレン基の水素原子のピーク面積と、エステル結合と結合したアルコール成分中のメチレン基の水素原子のピーク面積とから算出することができる。
脂肪酸エステルの分子量の算出はより具体的には次のように行われる。
(i)脂肪酸成分の平均鎖長の算出
通常、脂肪酸エステルの原料たる脂肪酸は、異なる鎖長、即ち炭素数の異なるアルキル基を有する脂肪酸の混合物である。したがってかかるアルキル基の分布が脂肪酸エステルの分子量に与える影響を反映させる必要がある。そのため脂肪酸の平均鎖長を算出する。かかる算出は測定周波数400MHz以上のNMR測定装置を用いた1H−NMR測定により行われる。より具体的には、アルキル基末端のメチル基(−CH3基)における水素原子のピーク面積と、アルキル基中のメチレン結合(−CH2−結合)における水素原子のピーク面積との比から、平均鎖長を算出する。尚、かかる平均鎖長は、脂肪酸エステル中のエステル成分および遊離脂肪酸のいずれにおいても同一であると仮定する。かかる仮定は製造方法を考慮すると十分に合理的である。
(i)脂肪酸成分の平均鎖長の算出
通常、脂肪酸エステルの原料たる脂肪酸は、異なる鎖長、即ち炭素数の異なるアルキル基を有する脂肪酸の混合物である。したがってかかるアルキル基の分布が脂肪酸エステルの分子量に与える影響を反映させる必要がある。そのため脂肪酸の平均鎖長を算出する。かかる算出は測定周波数400MHz以上のNMR測定装置を用いた1H−NMR測定により行われる。より具体的には、アルキル基末端のメチル基(−CH3基)における水素原子のピーク面積と、アルキル基中のメチレン結合(−CH2−結合)における水素原子のピーク面積との比から、平均鎖長を算出する。尚、かかる平均鎖長は、脂肪酸エステル中のエステル成分および遊離脂肪酸のいずれにおいても同一であると仮定する。かかる仮定は製造方法を考慮すると十分に合理的である。
(ii)脂肪酸エステル中のエステル成分のモル数(P)と遊離脂肪酸のモル数(Q)の算出
脂肪酸エステル中には遊離脂肪酸が少なからず含有されることから、脂肪酸エステル中の脂肪酸エステル成分と遊離脂肪酸との比率が脂肪酸エステルの分子量に与える影響を反映させる必要がある。
脂肪酸エステル中には遊離脂肪酸が少なからず含有されることから、脂肪酸エステル中の脂肪酸エステル成分と遊離脂肪酸との比率が脂肪酸エステルの分子量に与える影響を反映させる必要がある。
(ii−1)遊離脂肪酸のエステル結合に結合した脂肪酸成分に対する割合(Ff/Fe)の算出
上記PおよびQの算出のためには、エステル結合に結合した脂肪酸成分と遊離脂肪酸との割合を第1に算出する必要がある。かかる算出は、脂肪酸エステルを測定周波数400MHz以上のNMR測定装置を用いた1H−NMR測定により行われる。具体的には、脂肪酸のカルボキシル基(遊離酸およびエステル結合に結合した脂肪酸成分のいずれのカルボキシル基も含む)に結合した炭化水素結合(例えばメチレン結合)の水素原子のピーク面積を算出する。かかるピーク面積は全脂肪酸成分の量に比例する。一方、脂肪酸エステルのアルコール成分においてエステル結合と結合した炭化水素結合の水素原子のピーク面積を算出する。かかるピーク面積は全エステル結合の量に比例する。したがってこれらのピーク面積から、上記Ff/Fe(=yとする)を算出することができる。
上記PおよびQの算出のためには、エステル結合に結合した脂肪酸成分と遊離脂肪酸との割合を第1に算出する必要がある。かかる算出は、脂肪酸エステルを測定周波数400MHz以上のNMR測定装置を用いた1H−NMR測定により行われる。具体的には、脂肪酸のカルボキシル基(遊離酸およびエステル結合に結合した脂肪酸成分のいずれのカルボキシル基も含む)に結合した炭化水素結合(例えばメチレン結合)の水素原子のピーク面積を算出する。かかるピーク面積は全脂肪酸成分の量に比例する。一方、脂肪酸エステルのアルコール成分においてエステル結合と結合した炭化水素結合の水素原子のピーク面積を算出する。かかるピーク面積は全エステル結合の量に比例する。したがってこれらのピーク面積から、上記Ff/Fe(=yとする)を算出することができる。
更に具体的には、例えば脂肪酸エステルがペンタエリスリトールのエステルの場合には、次のように算出される。脂肪酸のカルボキシル基に結合したメチレン基の水素原子のシグナルは約2.3ppmに現れる。かかる領域のピーク面積をScとする。一方、エステル結合と結合したペンタエリスリトール成分中のメチレン基の水素原子のシグナルは約4.1ppmに現れる。かかる領域のピーク面積をSeとする。これらより、
Ff/Fe=y=(Sc/2−Se/2)/(Se/2)
の関係からFf/Fe(=y)が算出される。
Ff/Fe=y=(Sc/2−Se/2)/(Se/2)
の関係からFf/Fe(=y)が算出される。
(ii−2)エステル成分のモル数(P)および遊離酸のモル数(Q)の算出
1モルの脂肪酸エステル中に含有されるエステル結合に結合した脂肪酸成分のモル数をαとする。1モルの脂肪酸エステル中に含有される水酸基(−OH基)のモル数をxとする。脂肪酸エステルのアルコール成分の価数をvとする。このとき1モルの脂肪酸エステル中に含有される正味のエステル化合物であるエステル成分のモル数は、(α−x)/vで表される。PとQとの和(P+Q)を1としたとき、Pは1モルの脂肪酸エステル中に含有されるエステル成分のモル数を表す。したがってP=(α+x)/vとなる。一方、Q=y×α=1−Pとなる。したがってαおよびxを確定することによりPおよびQを求めることができる。
1モルの脂肪酸エステル中に含有されるエステル結合に結合した脂肪酸成分のモル数をαとする。1モルの脂肪酸エステル中に含有される水酸基(−OH基)のモル数をxとする。脂肪酸エステルのアルコール成分の価数をvとする。このとき1モルの脂肪酸エステル中に含有される正味のエステル化合物であるエステル成分のモル数は、(α−x)/vで表される。PとQとの和(P+Q)を1としたとき、Pは1モルの脂肪酸エステル中に含有されるエステル成分のモル数を表す。したがってP=(α+x)/vとなる。一方、Q=y×α=1−Pとなる。したがってαおよびxを確定することによりPおよびQを求めることができる。
(iii)脂肪酸エステルの分子量の算出
(iii−1)αの算出
1モルの脂肪酸エステル中に含有されるエステル結合に結合した脂肪酸成分のモル数であるαは、上記のPおよびQの関係から、α=(v−x)/(1+v×y)の関係式を満足する。したがってxを確定することによりαを求めることができる。
(iii−1)αの算出
1モルの脂肪酸エステル中に含有されるエステル結合に結合した脂肪酸成分のモル数であるαは、上記のPおよびQの関係から、α=(v−x)/(1+v×y)の関係式を満足する。したがってxを確定することによりαを求めることができる。
(iii−2)脂肪酸エステルの分子量に対するエステル成分の寄与分Meの算出
1モルの脂肪酸エステルには、αモルのエステル結合に結合した脂肪酸成分、P(=(α+x)/v)モルの脂肪酸エステルにおけるアルコール成分、およびxモルのOH基の水素原子が結合してエステル成分を形成している。したがって脂肪酸エステルの分子量に対するエステル成分の寄与分Meは、Me=(α×ms)+(P×mt)+(x×1)となる。ここでmsは脂肪酸成分の分子量、mtは脂肪酸エステルにおけるアルコール成分の分子量である。msは脂肪酸成分の平均鎖長から算出することができる。Meの算出においてもxの確定が必要である。
1モルの脂肪酸エステルには、αモルのエステル結合に結合した脂肪酸成分、P(=(α+x)/v)モルの脂肪酸エステルにおけるアルコール成分、およびxモルのOH基の水素原子が結合してエステル成分を形成している。したがって脂肪酸エステルの分子量に対するエステル成分の寄与分Meは、Me=(α×ms)+(P×mt)+(x×1)となる。ここでmsは脂肪酸成分の分子量、mtは脂肪酸エステルにおけるアルコール成分の分子量である。msは脂肪酸成分の平均鎖長から算出することができる。Meの算出においてもxの確定が必要である。
(iii−3)脂肪酸エステルの分子量に対する遊離脂肪酸の寄与分Mfの算出
かかるMfは、遊離脂肪酸の分子量をmuとすると、Mf=mu×Qとなる。muは脂肪酸成分の平均鎖長から算出することができる。
かかるMfは、遊離脂肪酸の分子量をmuとすると、Mf=mu×Qとなる。muは脂肪酸成分の平均鎖長から算出することができる。
(iii−4)脂肪酸エステルの分子量(M)の算出
上記より脂肪酸エステルの分子量は、M=Me+Mfから算出される。しかしながら上記の如くかかるMeおよびMfを算出するためには、xの確定が必要である。1モルの脂肪酸エステル中に含有される水酸基(−OH基)のモル数xは、脂肪酸エステルの水酸基価より算出することができる。但し水酸基価からxを算出するためには、分子量Mの数値が必要であり、xはMの関数となる。かかるxをM=Me+Mfの式に導入することにより、Mを計算することが可能である。より簡便には次のようにMを算出する。即ちxを仮定して仮の分子量(M’)を算出する。次に該分子量M’と水酸基価より仮のxたるx’を算出する。かかるxとx’が一致する数値が真のxであり、かかる真のxより算出される分子量をMとする。
上記に詳細に説明した方法によって、本発明の脂肪酸エステルの分子量を算出することができる。
上記より脂肪酸エステルの分子量は、M=Me+Mfから算出される。しかしながら上記の如くかかるMeおよびMfを算出するためには、xの確定が必要である。1モルの脂肪酸エステル中に含有される水酸基(−OH基)のモル数xは、脂肪酸エステルの水酸基価より算出することができる。但し水酸基価からxを算出するためには、分子量Mの数値が必要であり、xはMの関数となる。かかるxをM=Me+Mfの式に導入することにより、Mを計算することが可能である。より簡便には次のようにMを算出する。即ちxを仮定して仮の分子量(M’)を算出する。次に該分子量M’と水酸基価より仮のxたるx’を算出する。かかるxとx’が一致する数値が真のxであり、かかる真のxより算出される分子量をMとする。
上記に詳細に説明した方法によって、本発明の脂肪酸エステルの分子量を算出することができる。
<組成割合について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、100重量部のA成分、0.01〜10重量部のB成分および0.01〜1重量部のC成分からなる。かかるA成分、B成分およびC成分を配合することにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。B成分の組成割合は100重量部のA成分に対して、好ましくは0.05〜3.5重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部である。B成分が0.01重量部未満では紫外線吸収性能が小さく、十分な耐紫外線性が得られない。一方、B成分が100重量部のA成分に対して10重量部を超えると組成物の熱安定性が悪化したり、またポリカーボネート樹脂中に溶解しにくくなるために、金型付着物生成にも悪影響を与える。C成分の組成割合は100重量部のA成分に対して、好ましくは0.02〜0.5重量部であり、より好ましくは0.05〜0.25重量部である。C成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて少なすぎる場合には離型性の改善が十分でない。一方、C成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて多すぎる場合には成形品の透明性を損ない、成形時の熱安定性も低下しやすい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、100重量部のA成分、0.01〜10重量部のB成分および0.01〜1重量部のC成分からなる。かかるA成分、B成分およびC成分を配合することにより本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することができる。B成分の組成割合は100重量部のA成分に対して、好ましくは0.05〜3.5重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部である。B成分が0.01重量部未満では紫外線吸収性能が小さく、十分な耐紫外線性が得られない。一方、B成分が100重量部のA成分に対して10重量部を超えると組成物の熱安定性が悪化したり、またポリカーボネート樹脂中に溶解しにくくなるために、金型付着物生成にも悪影響を与える。C成分の組成割合は100重量部のA成分に対して、好ましくは0.02〜0.5重量部であり、より好ましくは0.05〜0.25重量部である。C成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて少なすぎる場合には離型性の改善が十分でない。一方、C成分の脂肪酸エステルが上記範囲を超えて多すぎる場合には成形品の透明性を損ない、成形時の熱安定性も低下しやすい。
<他の紫外線吸収剤について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において他の紫外線吸収剤を含有することができる。本発明のB成分は、ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品において、初期の紫外線防御効率が他の紫外線吸収剤に比較してやや劣る場合がある。一方でB成分は、紫外線曝露によるそれ自身の分解や揮発がしくにい性質を有しているので、より長期の耐紫外線性において有利である。したがって本発明のB成分と他の紫外線吸収剤との併用によって、それぞれの不足分を補うことが可能となる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において他の紫外線吸収剤を含有することができる。本発明のB成分は、ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品において、初期の紫外線防御効率が他の紫外線吸収剤に比較してやや劣る場合がある。一方でB成分は、紫外線曝露によるそれ自身の分解や揮発がしくにい性質を有しているので、より長期の耐紫外線性において有利である。したがって本発明のB成分と他の紫外線吸収剤との併用によって、それぞれの不足分を補うことが可能となる。
かかる紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびヒドロキシフェニルトリアジン系化合物などが例示される。より具体的には例えば2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(市販品としてはCYTEC社製、CYASORB UV−5411(商品名)が例示される)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(市販品としてはCiba Specialty Chemicals K.K.製、TINUVIN234(商品名)が例示される)、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](市販品としては旭電化工業(株)製、ADEKASTAB LA−31(商品名)が例示される)、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(市販品としてはCiba Specialty Chemicals K.K.製、TINUVIN1577FF(商品名)が例示される)などが好ましい紫外線吸収剤として例示される。かかるB成分以外の紫外線吸収剤の配合量は、100重量部のA成分に対して0.2重量部以下が好ましく、0.1重量部以下が更に好ましく、一方でこれらを併用する場合の下限は好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上である。
またB成分以外の紫外線吸収剤としては、他に環状イミノエステル系化合物が例示される。かかる化合物は色相、金型付着特性、および紫外線吸収性などの特性において本発明のB成分と同様の特性を有する。したがって、かかる環状イミノエステル系化合物は、B成分との合計量において100重量部のA成分に対して10重量部まで配合されてよい。一方で該化合物を併用する場合の下限は100重量部のA成分に対して0.05重量部以上が好ましい。環状イミノエステル系化合物の配合は更に良好な熱安定性を有する樹脂組成物を提供可能とする。かかる化合物は竹本油脂(株)からCEi−P(商品名)、およびCYTEC社からCYASORB UV−3638(商品名)として市販されており、容易に利用できる。
<その他の添加剤について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記A成分〜C成分、およびその他の紫外線吸収剤以外にも、通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤を含むことができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記A成分〜C成分、およびその他の紫外線吸収剤以外にも、通常ポリカーボネート樹脂に配合される各種の添加剤を含むことができる。
(i)リン系安定剤
本発明の樹脂組成物の成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系安定剤は第3級ホスフィンを含む。
本発明の樹脂組成物の成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系安定剤は第3級ホスフィンを含む。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
上記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。上記リン系安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
(ii)ヒンダードフェノール系安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形加工時の熱安定性、耐熱老化性、および耐紫外線性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系安定剤が更に配合されることができる。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形加工時の熱安定性、耐熱老化性、および耐紫外線性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系安定剤が更に配合されることができる。かかるヒンダードフェノール系安定剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
上記(i)リン系安定剤および(ii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、0.0001〜1重量部、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.005〜0.1重量部である。安定剤が上記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、上記範囲を超えて多すぎる場合は、組成物の物性低下を起こす場合がある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、成形品の熱処理時における色相を更に安定化させる為、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することができる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら他の酸化防止剤の使用量は、A成分のポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、ヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができ、かかる光安定剤は上記紫外線吸収剤や各種酸化防止剤との併用において、耐紫外線性などの点においてより良好な性能を発揮する。
(iii)ブルーイング剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中0.05〜3.0ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。本発明の樹脂組成物において更に黄色味を減少させ成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更に良好な色相を得る。ブルーイング剤の量が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は樹脂組成物中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、更にブルーイング剤を樹脂組成物中0.05〜3.0ppm(重量割合)含んでなることが好ましい。本発明の樹脂組成物において更に黄色味を減少させ成形品に自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の使用は非常に有効である。ここでブルーイング剤とは、橙色ないし黄色の光線を吸収することにより青色ないし紫色を呈する着色剤をいい、特に染料が好ましい。ブルーイング剤の配合により本発明のポリカーボネート樹脂組成物は更に良好な色相を得る。ブルーイング剤の量が0.05ppm未満では色相の改善効果が不十分な場合がある一方、3.0ppmを超える場合には光線透過率が低下し適当ではない。より好ましいブルーイング剤の量は樹脂組成物中0.2〜2.0ppmの範囲である。ブルーイング剤としては代表例として、バイエル社のマクロレックスバイオレットB及びマクロレックスブルーRR、並びにクラリアント社のポリシンスレンブルーRLSなどが挙げられる。
(iv)蛍光染料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な透明性を有することから、更に蛍光増白剤を含むことにより、より高い光透過性や自然な透明感を付与すること、並びに蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を含むことにより、発光色を生かした意匠効果を付与することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は良好な透明性を有することから、更に蛍光増白剤を含むことにより、より高い光透過性や自然な透明感を付与すること、並びに蛍光増白剤やそれ以外の発光をする蛍光染料を含むことにより、発光色を生かした意匠効果を付与することができる。
本発明で使用する蛍光染料(蛍光増白剤を含む)としては、例えば、クマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、ペリレン系蛍光染料、アンスラキノン系蛍光染料、チオインジゴ系蛍光染料、キサンテン系蛍光染料、キサントン系蛍光染料、チオキサンテン系蛍光染料、チオキサントン系蛍光染料、チアジン系蛍光染料、およびジアミノスチルベン系蛍光染料などを挙げることができる。これらの中でも耐熱性が良好でポリカーボネート樹脂の成形加工時における劣化が少ないクマリン系蛍光染料、ベンゾピラン系蛍光染料、およびペリレン系蛍光染料が好適である。中でも本発明のB成分との組み合わせにおいても良好な特性を維持する点からクマリン系蛍光染料、即ちクマリン誘導体からなる蛍光染料が好ましい。
上記においてクマリン系誘導体からなる蛍光染料としては下記式(II)で表される蛍光増白剤が好ましい。
上記式(II)の中でも、R1が式(II-ii)の置換基である態様が好適である。更に下記式(III)および式(IV)のクマリン誘導体が好適であり、特に式(IV)が好ましい。かかるクマリン誘導体は単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
上記(iv)蛍光染料(蛍光増白剤を含む)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し0.0001〜3重量部、好ましくは0.0005〜1重量部、より好ましくは0.0005〜0.5重量部、更に好ましくは0.001〜0.5重量部、特に好ましくは0.001〜0.1重量部である。かかる範囲においてより良好な耐紫外線性および色相と、熱安定性および光線透過率とが両立する。
(v)光拡散剤および光高反射用白色顔料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は透明性、色相及び耐光性に優れることから光拡散剤による光拡散機能、白色顔料による光高反射機能はより効果的に発揮される。したがって、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は光拡散剤や白色顔料の配合によっても、より良好な特性を有する樹脂組成物を提供する。光拡散剤としては高分子微粒子(好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびシリコーン架橋粒子など)、低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示され、その割合はA成分100重量部に対し0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部が好ましい。白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましく、その割合はA成分100重量部に対し1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部が好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は透明性、色相及び耐光性に優れることから光拡散剤による光拡散機能、白色顔料による光高反射機能はより効果的に発揮される。したがって、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は光拡散剤や白色顔料の配合によっても、より良好な特性を有する樹脂組成物を提供する。光拡散剤としては高分子微粒子(好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびシリコーン架橋粒子など)、低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示され、その割合はA成分100重量部に対し0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部が好ましい。白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましく、その割合はA成分100重量部に対し1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部が好ましい。
(vi)帯電防止剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、A成分100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(i)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩は、A成分100重量部あたり5重量部以下の組成割合が適切であり、0.05〜5重量部が好ましく、1〜3.5重量部がより好ましく、1.5〜3重量部の範囲が更に好ましい。
帯電防止剤としては例えば、(ii)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩は、A成分100重量部あたり0.5重量部以下の組成割合が適切であり、0.001〜0.3重量部が好ましく、0.005〜0.2重量部がより好ましい。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
帯電防止剤としては、例えば(iii)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。帯電防止剤としては、例えば(iv)ポリエーテルエステルアミドなどのポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーはA成分100重量部あたり5重量部以下が適切である。他の帯電防止剤としては、例えば、(v)カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属粉末、金属酸化物粉末などの非有機化合物が挙げられる。該非有機化合物は、A成分100重量部あたり0.05重量部以下の組成割合が適切である。
(vii)熱線吸収能を有する化合物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜0.2重量部が好ましく、0.0008〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の熱線吸収能を有する化合物を使用することができる。該化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜0.2重量部が好ましく、0.0008〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーは本発明の樹脂組成物中、0.1〜200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
(viii)その他の染顔料
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、発明の効果を発揮する範囲で上記ブルーイング剤および蛍光染料以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性をより損なわない点から、染料が好適である。一方深みのある色彩や、メタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、発明の効果を発揮する範囲で上記ブルーイング剤および蛍光染料以外にも各種の染顔料を使用することができる。特に透明性をより損なわない点から、染料が好適である。一方深みのある色彩や、メタリック顔料を配合してより良好なメタリック色彩を得ることもできる。
染料としては、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、およびフタロシアニン系染料などを挙げることができる。これら染料の使用量は、A成分のポリカーボネート樹脂100重量部あたり、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない量の難燃剤を使用することができる。難燃剤としては、例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、スルホン酸塩以外の有機酸金属塩、およびシリコーン系難燃剤などが挙げられ、それらを一種以上使用することができる。かかる難燃剤はそれぞれポリカーボネート樹脂に対する公知の量を配合することができる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、他の樹脂やエラストマーを本発明の目的が損なわれない範囲で少割合使用することもできる。
かかる他の樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。
また、エラストマーとしては、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、コアシェル型のエラストマーであるMBS(メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン)ゴム、MAS(メタクリル酸メチル/アクリロニトリル/スチレン)ゴムなどが挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、各種無機充填材、流動改質剤、抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
<樹脂組成物の製造方法について>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではない。しかしながら本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各成分を溶融混練することにより製造されることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではない。しかしながら本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各成分を溶融混練することにより製造されることが好ましい。
上記溶融混練の具体的方法としては、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などを挙げることができ、中でも混練効率の点から押出機が好ましく、更に二軸押出機などの多軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機においてより好ましい態様は次の通りである。スクリュー形状は1条、2条、3条のネジスクリューを使用することができ、特に溶融樹脂の搬送能力やせん断混練能力の両方の適用範囲が広い2条ネジスクリューが好ましく使用できる。二軸押出機におけるスクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は、20〜45が好ましく、更に28〜42が好ましい。L/Dが大きい方が均質な分散が達成されやすい一方、大きすぎる場合には熱劣化により樹脂の分解が起こりやすい。スクリューには混練性を上げるためのニーディングディスクセグメント(またはそれに相当する混練セグメント)から構成された混練ゾーンを1個所以上有することが必要であり、1〜3箇所有することが好ましい。
更に押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
更にB成分やC成分およびその他添加剤(以下の例示において単に“添加剤”と称する)の押出機への供給方法は特に限定されないが、以下の方法が代表的に例示される。(i)添加剤をポリカーボネート樹脂とは独立して押出機中に供給する方法。(ii)添加剤とポリカーボネート樹脂粉末とをスーパーミキサーなどの混合機を用いて予備混合した後、押出機に供給する方法。該方法の1つは、必要な原材料を全て予備混合して押出機に供給する方法である。また他の方法は、添加剤が高濃度に配合されたマスター剤を作成し、該マスター剤を独立にまたは残りのポリカーボネート樹脂等と更に予備混合した後、押出機に供給する方法である。尚、該マスター剤は、粉末形態および該粉末を圧縮造粒などした形態のいずれも選択できる。また他の予備混合の手段は、例えばナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などがあるが、スーパーミキサーのような高速撹拌型の混合機が好ましい。更に他の予備混合の方法は、例えばポリカーボネート樹脂と添加剤を溶媒中に均一分散させた溶液とした後、該溶媒を除去する方法である。(iii)添加剤とポリカーボネート樹脂とを予め溶融混練してマスターペレット化する方法。
二軸押出機より押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。更に外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。
<本発明の樹脂組成物からなる成形品について>
上記の如く得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
上記の如く得られた本発明のポリカーボネート樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明の樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
これにより優れた透明性および離型性に加えて、金型付着物生成が低減され、より製造効率およびコストパフォーマンスに優れたポリカーボネート樹脂組成物の成形品が提供される。即ち、本発明によれば、100重量部のA成分、0.01〜10重量部のB成分、および0.01〜1重量部のC成分からなるポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる成形品が提供される。
更に本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常のポリカーボネート樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。ハードコートは特に好ましくかつ必要とされる表面処理である。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、色相、離型性、および耐紫外線性に優れることから、高い品質が要求される各種の透明部材において好適である。かかる透明部材としては例えば、各種車両用透明部材(ヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂グレージング材、メーターカバーなど)、照明灯カバー、樹脂窓ガラス(建築用など)、太陽電池カバー、太陽電池基材、ディスプレー装置用レンズ、タッチパネル、および遊技機(パチンコ機など)用部品(前面カバー、回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などを挙げることができる。更にこれらの中でも車両用透明部材が、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に対し特に適するものである。
すなわち本発明によれば、本発明のA成分〜C成分の上記所定量からなる樹脂組成物の成形品が提供され、更に好適には車両用透明部材が提供される。かかる車両用透明部材としては、特にヘッドランプレンズのような車両用灯具レンズまたはカバー(素通し型のヘッドランプレンズ)、並びに車両用グレージング材が好適に挙げられる。
本発明にいう車両用灯具レンズは、車両の灯具、中でも前照灯として機能する光源の光が通過する透明部材であればよく、該レンズは車両のいかなる位置に配置されても、またいかなる形状のものであってもよい。例えば棒状であってその長手方向に光が透過する態様のレンズも含まれる。本発明にいう車両用グレージング材としては、例えば、フロントドアウインドウ(ウインドシールド)、リアドアウインドウ、クォーターウインドウ、バックウインドウ、およびバックドアウインドウ、並びにサンルーフおよびルーフパネルなどが例示される。
以上より、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、搬送容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、評価は下記の方法によった。
(1)金型付着物の評価:図1に示す素通し型のヘッドランプレンズ成形品を連続して200個成形し、かかる成形後の金型付着物の量を評価した。成形は、住友重機械工業(株)製SG260M−HPを用いて、シリンダ温度310℃、金型温度80℃、射速50mm/sec、および成形サイクル70秒で実施した。付着物の採取は、金型可動側に設置された成形品本体部分に対応する入れ子(成形品の凸側表面に対応する)を連続成形後に金型より取り外し、その表面部を塩化メチレンで洗浄して付着物を金型表面から除去し、かかる塩化メチレン溶液から塩化メチレンを揮発させる方法により行った。得られた付着物をNMR測定装置で観測したところ、離型剤としてC−1成分を使用したサンプルでは、実質的に紫外線吸収剤から構成されていた。一方、離型剤としてC−2成分を使用したサンプルでは、脂肪酸エステルと紫外線吸収剤との混合物から構成されていた。したがって、金型付着物の量は、上記の付着物を一定量のクロロホルムに溶解し、該クロロホルム溶液を分光高度計(日立製、HITACHI Spectrophotmeter U−3210)を用いて、紫外線吸収剤の吸光度を測定する方法により算出した。それぞれの紫外線吸収剤の吸光度と濃度との検量線を用いて、該吸光度から付着物の重量を算出した。但し、離型剤としてC−2成分を使用したサンプルのみ、上記で得られた付着物の重量を電子天秤を用いて算出した。かかる電子天秤を用いて算出された重量は表の欄外に示した。
(1)金型付着物の評価:図1に示す素通し型のヘッドランプレンズ成形品を連続して200個成形し、かかる成形後の金型付着物の量を評価した。成形は、住友重機械工業(株)製SG260M−HPを用いて、シリンダ温度310℃、金型温度80℃、射速50mm/sec、および成形サイクル70秒で実施した。付着物の採取は、金型可動側に設置された成形品本体部分に対応する入れ子(成形品の凸側表面に対応する)を連続成形後に金型より取り外し、その表面部を塩化メチレンで洗浄して付着物を金型表面から除去し、かかる塩化メチレン溶液から塩化メチレンを揮発させる方法により行った。得られた付着物をNMR測定装置で観測したところ、離型剤としてC−1成分を使用したサンプルでは、実質的に紫外線吸収剤から構成されていた。一方、離型剤としてC−2成分を使用したサンプルでは、脂肪酸エステルと紫外線吸収剤との混合物から構成されていた。したがって、金型付着物の量は、上記の付着物を一定量のクロロホルムに溶解し、該クロロホルム溶液を分光高度計(日立製、HITACHI Spectrophotmeter U−3210)を用いて、紫外線吸収剤の吸光度を測定する方法により算出した。それぞれの紫外線吸収剤の吸光度と濃度との検量線を用いて、該吸光度から付着物の重量を算出した。但し、離型剤としてC−2成分を使用したサンプルのみ、上記で得られた付着物の重量を電子天秤を用いて算出した。かかる電子天秤を用いて算出された重量は表の欄外に示した。
(2)離型性の測定:最大型締め力735kNの射出成形機にて、シリンダー温度300℃、金型温度80℃、射出圧力118MPaの条件で直径70mm、高さ20mm、厚み4mmのカップ型成形品を成形する際の突き出しピンにかかる突き出し荷重(N)を測定し、30ショット成形した平均値を算出した。かかる平均値から参考例1の離型荷重を100%としたときの離型荷重の割合(%)を算出した。
(3)透明性(ヘーズ):算術平均粗さ(Ra)が0.03μmであり厚さ2.0mmの成形板のヘーズを、日本電色(株)製NDH−300AによりJIS K7105に準拠して測定した。ヘイズの数値が大きいほど光の拡散が大きく、透明性に劣ることを示す。
(4)色相(YI値):上記評価(3)と同様の成形板を日本電色(株)製色差計Z−1001DP型を用いて透過光を測定したX,YおよびZ値からASTM−E1925に基づき、下記式を用いて算出した。YI値が大きいほど成形板の黄色味が強いことを示す。
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
YI=[100(1.28X−1.06Z)]/Y
(5)成形耐熱性:上記評価(3)と同様の形状であって、10分間成形機シリンダー内に滞留させた樹脂より成形された成形板のYI値を、上記評価(4)と同様に測定した。滞留後の試験片のYI値から滞留前の試験片のYI値を差し引き、かかる差をΔYIとして示した。
(6)耐紫外線性:上記評価(3)と同様の成形板をサンシャイン・ウェザー・メーター(スガ試験機(株)製:WEL−SUN:HC−B)を使用しブラックパネル温度63℃、湿度50%、18分間水噴霧と102分間噴霧無しの計120分サイクルで1000時間処理し、かかる処理後の試験片のYI値から処理前の試験片のYI値を差し引き、かかる差をΔYIとして示した。
ΔYI=(処理後のYI)−(処理前のYI)
ΔYI=(処理後のYI)−(処理前のYI)
[実施例1〜4、および比較例1〜6]
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造されたポリカーボネート樹脂パウダー100重量部に、表1〜表2記載の各種添加剤を各配合量で、並びにブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.00007重量部の配合量で配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練しペレットを得た。ポリカーボネート樹脂に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂パウダーとの予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量25kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで280℃とした。
ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造されたポリカーボネート樹脂パウダー100重量部に、表1〜表2記載の各種添加剤を各配合量で、並びにブルーイング剤(バイエル社製:マクロレックスバイオレットB)を0.00007重量部の配合量で配合し、ブレンダーにて混合した後、ベント式二軸押出機を用いて溶融混練しペレットを得た。ポリカーボネート樹脂に添加する添加剤はそれぞれ配合量の10〜100倍の濃度を目安に予めポリカーボネート樹脂パウダーとの予備混合物を作成した後、ブレンダーによる全体の混合を行った。ベント式二軸押出機は(株)日本製鋼所製:TEX30α(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー)を使用した。混練ゾーンはベント口手前に1箇所のタイプとした。押出条件は吐出量25kg/h、スクリュー回転数150rpm、ベントの真空度3kPaであり、また押出温度は第1供給口からダイス部分まで280℃とした。
得られたペレットを120℃で5時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度310℃および金型温度80℃、並びに射速60mm/secの条件で、長さおよび幅が50mmかつ厚さが2mm、表面の算術平均粗さ(Ra)が0.03μmの平滑平板状の試験片を成形した。射出成形機は三菱重工業(株)製:80MSP−SCを使用した。得られた試験片は上記評価(3)、(4)および(6)に使用した。更にかかる成形において計量後シリンダーを後退させ、その状態で10分間保持した後、再度成形を行い上記評価(5)の成形耐熱性評価用の試験片を得た。得られた成形板の各評価結果を表1〜表2に示した。
また、得られたペレットを同様の方法で乾燥した後、シリンダー温度310℃および金型温度80℃の条件で、図1に示す素通し型のヘッドランプレンズを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG260M−HP)を用いて連続成形した。成形後の金型付着物の評価結果も表1および表2に示した。なお、実施例の各組成にて作成されたこのヘッドランプレンズは、色相、透明性など外観が良好であり、さらに金型付着物の発生も充分に低減されている。
なお、表中記号表記の添加剤など各成分の内容は下記の通りである。
(A成分)
PC:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)
(A成分)
PC:ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量22,400のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1225WP)
(B成分)
B−1:1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(BASF製:Uvinul3030)
B−2:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79)
B−3:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](旭電化工業(株)製:LA−31)
B−4:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(Ciba Specialty Chemicals K.K.製:Tinuvin1577)
B−1:1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(BASF製:Uvinul3030)
B−2:2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(ケミプロ化成(株)製:ケミソーブ79)
B−3:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](旭電化工業(株)製:LA−31)
B−4:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(Ciba Specialty Chemicals K.K.製:Tinuvin1577)
(C成分)
C−1:ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸からなる分子量925のフルエステル(理研ビタミン(株)製:リケスターEW−400)
かかるエステルの脂肪酸成分の平均炭素数は17.49であった(よって脂肪酸成分中のアルキル基の分子量は、15.49×14+15=231.86となる)。かかる平均炭素数は測定周波数400MHzのNMR装置(JEOL製)を用いて1H−NMR測定により算出された(以下のC成分において同じ)。また脂肪酸成分における遊離脂肪酸とエステル結合に結合した脂肪酸成分との割合(Ff/Fe)は7.7/92.3であった(y=0.0834)。かかる割合は測定周波数600MHzのNMR装置(JEOL製)を用いて1H−NMR測定により算出された(以下のC成分において同じ)。更にかかるエステルの水酸基価は6.9mgKOH/gであった。これらの値より明細書記載の方法により分子量を算出した。また1モル中の水酸基のモル数は0.114モル、1モルの脂肪酸エステル中のエステル成分(すなわちアルコール成分)のモル数(P)は0.76、遊離脂肪酸のモル数(Q)は0.24と算出された。
C−2:グリセリンと脂肪族カルボン酸からなる分子量341のモノエステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
かかるエステルの脂肪酸成分の平均炭素数は16.92であった(よって脂肪酸成分中のアルキル基の分子量は、14.92×14+15=223.88となる)。また脂肪酸成分における遊離脂肪酸とエステル結合に結合した脂肪酸成分との割合(Ff/Fe)は1/99であった(y=0.0101)。更にかかるエステルの水酸基価は326.7mgKOH/gであった。これらの値より明細書記載の方法により分子量を算出した。また1モル中の水酸基のモル数は1.987モル、1モルの脂肪酸エステル中のエステル成分(すなわちアルコール成分)のモル数(P)は0.99、遊離脂肪酸のモル数(Q)は0.01と算出された。
C−1:ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸からなる分子量925のフルエステル(理研ビタミン(株)製:リケスターEW−400)
かかるエステルの脂肪酸成分の平均炭素数は17.49であった(よって脂肪酸成分中のアルキル基の分子量は、15.49×14+15=231.86となる)。かかる平均炭素数は測定周波数400MHzのNMR装置(JEOL製)を用いて1H−NMR測定により算出された(以下のC成分において同じ)。また脂肪酸成分における遊離脂肪酸とエステル結合に結合した脂肪酸成分との割合(Ff/Fe)は7.7/92.3であった(y=0.0834)。かかる割合は測定周波数600MHzのNMR装置(JEOL製)を用いて1H−NMR測定により算出された(以下のC成分において同じ)。更にかかるエステルの水酸基価は6.9mgKOH/gであった。これらの値より明細書記載の方法により分子量を算出した。また1モル中の水酸基のモル数は0.114モル、1モルの脂肪酸エステル中のエステル成分(すなわちアルコール成分)のモル数(P)は0.76、遊離脂肪酸のモル数(Q)は0.24と算出された。
C−2:グリセリンと脂肪族カルボン酸からなる分子量341のモノエステル(理研ビタミン(株)製:リケマールS−100A)
かかるエステルの脂肪酸成分の平均炭素数は16.92であった(よって脂肪酸成分中のアルキル基の分子量は、14.92×14+15=223.88となる)。また脂肪酸成分における遊離脂肪酸とエステル結合に結合した脂肪酸成分との割合(Ff/Fe)は1/99であった(y=0.0101)。更にかかるエステルの水酸基価は326.7mgKOH/gであった。これらの値より明細書記載の方法により分子量を算出した。また1モル中の水酸基のモル数は1.987モル、1モルの脂肪酸エステル中のエステル成分(すなわちアルコール成分)のモル数(P)は0.99、遊離脂肪酸のモル数(Q)は0.01と算出された。
(その他の添加剤)
EPQ:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とし、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを約10重量%含有する安定剤混合物(クラリアント社製:サンドスタブP−EPQ)
HP :ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicals K.K.製:Irganox1076)
EPQ:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトを主成分とし、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを約10重量%含有する安定剤混合物(クラリアント社製:サンドスタブP−EPQ)
HP :ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicals K.K.製:Irganox1076)
[参考例1]
実施例1にて用いたポリカーボネート樹脂(PC)に、離型剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を配合しない以外はすべて実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形品の評価結果を表2に示した。
実施例1にて用いたポリカーボネート樹脂(PC)に、離型剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を配合しない以外はすべて実施例1と同様の方法によりペレットを得た。得られたペレットを実施例1と同様の方法により成形した。得られた成形品の評価結果を表2に示した。
上記表1〜表2から明らかなように、本発明の樹脂組成物は透明性、色相、離型性、および耐侯性に非常に優れた成形品が得られることが分かる。一方、比較例に示された組成では、いずれかの特性を充分に満足できていない。
更に上記の実施例3で得られたペレットを、プラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、図2に示す自動車用透明ルーフを製造した。かかる成形機は、上記と同水準に乾燥可能なホッパードライヤー設備を付帯しており、かかる乾燥後のペレットが成形に使用された。
成形はシリンダー温度300℃、ホットランナー設定温度290℃、金型温度は固定側120℃、可動側110℃、充填時間24秒、プレスストローク:5mm、および冷却時間:150秒であった。また可動側金型パーティング面は最終の前進位置において固定側金型パーティング面に接触しないものとした。ランナーはモールドマスターズ社製のバルブゲート型のホットランナー(直径7mmφ)を用い、充填完了直前に型圧縮を開始し、充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて溶融樹脂がゲートからシリンダーへ逆流しない条件とした。成形は連続して50ショット実施したが、金型付着物は認められなかった。
本発明は、車両用灯具レンズおよびカバー、並びに車両用グレージング材に好適なポリカーボネート樹脂組成物を提供するが、本発明の樹脂組成物は、その特有の特徴からかかる用途以外にも、建設機械の窓ガラス、ビル、家屋、および温室などの窓ガラス、ガレージおよびアーケードなどの屋根、照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ、ミラー、眼鏡レンズ、ゴーグル、消音壁、バイクの風防、銘板、太陽電池カバーまたは太陽電池基材、ディスプレー装置用カバー、タッチパネル、並びに遊技機(パチンコ機など)用部品(回路カバー、シャーシ、パチンコ玉搬送ガイドなど)などの幅広い用途に使用可能である。したがって本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、各種電子・電気機器、OA機器、車両部品、機械部品、その他農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、遊戯具および雑貨などの各種用途に有用であり、その奏する産業上の効果は格別である。
1 ヘッドランプレンズ本体
2 レンズのドーム状部分(凸側が可動側金型に対応する)
3 レンズの外周部分
4 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
5 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
6 レンズの外周部分の直径(220mm)
7 レンズのドーム部分の直径(200mm)
8 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
9 レンズ成形品の厚み(4mm)
11 透明ルーフ成形品本体(本体部は厚み5mmである)
12 ホットランナーノズル先端に対応する部分
13 成形品のゲート(該ゲートは厚み5mmの平板状である)
14 成形品ゲート側長さ(成形品の最大幅に相当し、1000mmである)
15 成形品流動末端側の長さ(900mm)
16 成形品本体の長さ(1240mm)
17 ゲート部を含む成形品全体の長さ(1350mm)
18 成形品の高さ(90mm)
19 取り付け用爪部
2 レンズのドーム状部分(凸側が可動側金型に対応する)
3 レンズの外周部分
4 成形品のゲート(幅30mm、ゲート部の厚み4mm)
5 スプルー(ゲート部の直径7mmφ)
6 レンズの外周部分の直径(220mm)
7 レンズのドーム部分の直径(200mm)
8 レンズのドーム部分の高さ(20mm)
9 レンズ成形品の厚み(4mm)
11 透明ルーフ成形品本体(本体部は厚み5mmである)
12 ホットランナーノズル先端に対応する部分
13 成形品のゲート(該ゲートは厚み5mmの平板状である)
14 成形品ゲート側長さ(成形品の最大幅に相当し、1000mmである)
15 成形品流動末端側の長さ(900mm)
16 成形品本体の長さ(1240mm)
17 ゲート部を含む成形品全体の長さ(1350mm)
18 成形品の高さ(90mm)
19 取り付け用爪部
Claims (10)
- ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部、下記一般式(I)で表される多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)0.01〜10重量部、および多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルであり、かつ500〜2000g/モルの分子量を有する脂肪酸エステル化合物(C成分)0.01〜1重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物。
- 上記脂肪酸エステル(C成分)は、脂肪酸フルエステルである請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 上記脂肪酸エステル(C成分は)は、4〜8価である炭素数5〜30の脂肪族多価アルコールと炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸とのフルエステルである請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 上記脂肪族多価アルコールはペンタエリスリトールである請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 上記多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)は、上記式(I)におけるnは4〜8に整数であり、かつXは炭素数5〜20の脂肪族ポリオールから誘導されるエステル形成性残基で表される化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対し、下記一般式(I)で表される多官能性2−シアノアクリル酸エステル(B成分)0.01〜10重量部、および多価アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステルであり、500〜2000g/モルの分子量を有し、かつ4〜20の酸価を有する脂肪酸フルエステル化合物(C’成分)0.01〜1重量部を配合してなるポリカーボネート樹脂組成物。
- 上記請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を溶融成形してなる成形品。
- 上記成形品は、車両用透明部材である請求項7に記載の成形品。
- 上記車両用透明部材は、車両用灯具カバーまたはレンズである請求項8に記載の成形品。
- 上記車両用透明部材は、車両用グレージング材である請求項8に記載の成形品。
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---|---|---|---|
JP2004173783A JP2005264132A (ja) | 2004-02-17 | 2004-06-11 | ポリカーボネート樹脂組成物 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007040257A1 (ja) * | 2005-10-05 | 2007-04-12 | Nippon Sheet Glass Company, Limited | 有機無機複合膜が形成された物品およびその製造方法 |
WO2009016876A1 (ja) * | 2007-07-31 | 2009-02-05 | Nitto Denko Corporation | 光学フィルム、偏光板、および画像表示装置 |
JP2011080008A (ja) * | 2009-10-09 | 2011-04-21 | Teijin Chem Ltd | 帯電防止性ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003508568A (ja) * | 1999-09-01 | 2003-03-04 | ザ ダウ ケミカル カンパニー | シアンアクリル酸エステル安定剤化合物を含むポリカーボネート樹脂組成物 |
JP2003534424A (ja) * | 2000-05-19 | 2003-11-18 | ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド | 低揮発性uv吸収性化合物を含むカーボネートポリマー組成物 |
JP2003535169A (ja) * | 2000-05-29 | 2003-11-25 | バイエル アクチェンゲゼルシャフト | 透明な熱可塑性ポリマーを含有する組成物 |
JP2004027106A (ja) * | 2002-06-27 | 2004-01-29 | Teijin Chem Ltd | ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品 |
-
2004
- 2004-06-11 JP JP2004173783A patent/JP2005264132A/ja active Pending
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