JP2005200574A - ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブル - Google Patents

Abstract

【課題】 新規に多段重合により合成した高分子量、高ＶＡ量のＥＶＡを用いて、伸び、引張強さ等の機械的特性を損なうことなく、また高い難燃性を有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブルを提供する。
【解決手段】 酢酸ビニル含有量が４０ｗｔ％以上で、メルトフローレート（ＭＦＲ）が０．１〜１．０ｇ／１０ｍｉｎのエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）を単独、もしくはその他のポリオレフィン系樹脂と混合したベースポリマ１００重量部に対して、金属水酸化物を１５０〜３００重量部、及び１，３，５−トリアジン誘導体を２０〜５０重量部含む。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブルに関し、特に、燃焼時にハロゲン系ガスやホスフィンガス等の有毒なガスを発生しないノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを導体の絶縁体、又はシースに用いた電線・ケーブルに関する。

従来、ハロゲン化合物を含まない難燃性樹脂組成物として、ポリオレフィン系樹脂に水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を添加した組成物が用いられている。これらの組成物は燃焼時に塩化水素やダイオキシン等の有毒なガスが発生しないため、火災時の毒性ガスの発生や、二次災害等を防止することができ、かつ、廃却時に焼却処分を行っても問題とならない。

ただし、金属水酸化物を単独で添加しただけでは、目的の難燃性を得られない場合が多いので、難燃性向上のための難燃助剤として、赤リンなどのリン含有難燃剤を添加することが行われている（特許文献１〜３）。

特開２００２−４２５７４号公報 特開２００２−４２５７５号公報 特開２００３−１１３２７６号公報

しかしながら、金属水酸化物の添加量を増やすと、それに伴い、伸び、引張強さ等の機械的特性が著しく低下してしまうという問題点がある。

また、機械的特性を改善する目的で、ベースポリマのエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）を高分子量化したものでは、これまではポリマ中の酢酸ビニル量（ＶＡ量）が低いものしか合成できず、難燃性が不十分であった。

従って、本発明の目的は、新規に多段重合により合成した高分子量、高ＶＡ量のＥＶＡを用いて、伸び、引張強さ等の機械的特性を損なうことなく、また高い難燃性を有するノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブルを提供することにある。

本発明は、酢酸ビニル含有量が４０ｗｔ％以上で、メルトフローレート（ＭＦＲ）が０．１〜１．０ｇ／１０ｍｉｎのエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）を単独、もしくはその他のポリオレフィン系樹脂と混合したベースポリマ１００重量部に対して、金属水酸化物を１５０〜３００重量部、及び１，３，５−トリアジン誘導体を２０〜５０重量部含むノンハロゲン難燃性樹脂組成物を提供する。

前記ベースポリマは、ベースポリマ中にマレイン酸またはその誘導体で変性したエチレン系共重合体を１〜２０重量部含むことが好ましい。

前記金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム及びニッケルが固溶したこれらの金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上であることが好ましい。

本発明は、上記のノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体の絶縁体、又はシースに用いた電線・ケーブルを提供する。

本発明によるノンハロゲン難燃性樹脂組成物は、燃焼時に有害なガスを発生せず、高い難燃性及び優れた機械的強度を有するものである。また、その樹脂組成物を絶縁体又はシースに使用することにより、使用時に有害なガスを発生せず、高い難燃性及び優れた機械的強度を有する電線・ケーブルを得ることができる。

本発明のノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びそれを導体の絶縁体又はシースに用いた電線・ケーブルについて説明する。

本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）は、新規に多段重合により合成した高分子量、高ＶＡ量のもので、酢酸ビニル含有量が４０ｗｔ％以上で、メルトフローレート（ＭＦＲ）が０．１〜１．０ｇ／１０ｍｉｎのものを用い、これを単独、もしくは他のポリオレフィン系樹脂と混合して用いる。

ここで、ＥＶＡを用いるのは、難燃性を向上させるためである。またＥＶＡの酢酸ビニル含有量を４０ｗｔ％以上で、ＭＦＲを０．１〜１．０ｇ／１０ｍｉｎとしたのは、４０ｗｔ％未満の含有量では、十分な難燃効果が得られないためである。また、ＭＦＲを１．０ｇ／１０ｍｉｎより大きいポリマでは、引張強さ等の特性低下が顕著になるからである。なおＭＦＲの測定はＪＩＳ Ｋ ６９２４に基づいて、１９０℃、２．１６ｋｇの荷重で測定した際の値である。

また、ベースポリマ中へのエチレン−酢酸ビニル共重合体の添加量は、８０重量部以上が好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体と混合する他のエチレン系共重合体やポリオレフィン系樹脂としては、低密度、中密度、及び高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−スチレン共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、マレイン酸グラフト直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらは、１種、又は２種以上混合して使用できる。

ベースポリマに添加する金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム及び、ニッケルが固溶したこれらの金属水酸化物が挙げられる。これらは、単独又は２種以上を併用しても良い。また、これらの金属水酸化物は、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸塩やステアリン酸カルシウム等の脂肪酸又は、脂肪酸金属塩等によって表面処理されているものを用いても差し支えない。また、他の金属水酸化物を適量加えても良い。

本発明において、金属水酸化物の添加量は、ベースポリマ１００重量部に対して、１５０〜３００重量部であり、添加量が１５０重量部より少ないと十分な難燃性が得られず、３００重量部より多いと機械特性が著しく低下する。

またベースポリマに添加する１，３，５−トリアジン誘導体としては、メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン等が挙げられる。より好適には、メラミンシアヌレートである。これらは、非イオン性表面活性剤や各種カップリング剤により表面処理されていても良い。

本発明において、１，３，５−トリアジン誘導体は、ベースポリマ１００重量部に対して、２０〜５０重量部であり、添加量が２０重量部より少ないと十分な難燃効果が得られず、５０重量部より多いと機械的強度が著しく低下する。

１，３，５−トリアジン誘導体は、燃焼時３００℃以上で分解、昇華し、不燃性ガスを発生するため、難燃性に寄与するものと考えられる。

マレイン酸またはその誘導体で変性したエチレン系共重合体としては、マレイン酸変性ＥＥＡ、マレイン酸変性ＥＶＡ及びマレイン酸変性ＳＥＢＳ等が挙げられる。この添加量としては、１重量部未満では引張強さ特性は改善せず、２０重量部より多く用いると樹脂組成物全体の伸び特性が低下する。

また、上記の配合剤以外にも必要に応じて酸化防止剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、無機充填剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等の添加剤を加えることが可能である。

更に、有機過酸化物による化学架橋や、電子線などの放射線による照射架橋を行っても良い。

本発明のノンハロゲン樹脂組成物を用いた電線・ケーブルの例を図１〜３で説明する。

図１は、銅導体１に絶縁体２を被覆した３線心の電線１１を介在４と共に撚り合わせ、押え巻きテープ５を施し、最外層をシース３として押出し被覆した電線・ケーブル１２を示す図であり、シース３を本発明のノンハロゲン難燃性樹脂組成物により作製する。

図２は、銅導体１に絶縁体２を被覆した電線１１であり、絶縁体２を本発明のノンハロゲン難燃性樹脂組成物により作製する。

図３は、銅導体１に絶縁体２を被覆したものを絶縁線心６とし、この絶縁線心６を対撚りした対撚線７を、４本撚り合わせたコア８の外層を、シース内層９及びシース外層１０として押出し被覆した電線・ケーブル１３を示したものである。

シース内層９及びシース外層１０は、本発明のノンハロゲン難燃性樹脂組成物により作製する。

樹脂成形物及び電線・ケーブルは、以下のように作製した。

表１に示した配合割合で各種成分を配合し、加圧ニーダによって開始温度４０℃、終了温度１９０℃で混練後、混練物をペレットにし、これを図２に示す電線１１の絶縁体２として、厚さ０．４１ｍｍで、設定温度２３０℃で押出して作製した。

電線の評価は以下に示す方法により判定した。

（１）引張試験
作製した電線を、ＪＩＳ Ｃ ３００５に準拠して引張試験を行い、伸びは、１５０％未満のものを×（不合格）、１５０〜３００％を○（合格）、それ以上を二重丸（裕度を持って合格）とした。

（２）難燃性試験
作製した電線を、ＵＬｓｕｂｕｊｅｃｔ７５８に準拠して垂直燃焼試験（ＶＷ−１）を行った。判定は、燃焼時間１分未満のものを○（合格）とし、１分以上のものを×（不合格）とした。

本発明の樹脂組成物を用いて製造した実施例を表１に、また上記と同様にして作製した比較例を表２に示す。

実施例１〜１０では、伸び・引張強さは目標を満足しており、垂直燃焼試験も全て合格し、良好な特性を示している。

これに対し、表２に示すように、ＭＦＲが規定より大きい比較例１、４及び金属水酸化物の添加量が規定より少ない比較例６は、引張強さが不十分である。

また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が規定より少ない比較例５及び１，３，５−トリアジン誘導体の添加量が規定より少ない比較例７は、難燃性が不十分である。金属水酸化物の添加量が規定より多い比較例６、及び１，３，５−トリアジン誘導体の添加量が規定より多い比較例８は伸び特性が不十分となった。

本発明が適用される、絶縁線心３条の外周を押え巻きテープ及びシースで被覆したケーブルを示す図である。 本発明が適用される、銅導体上に絶縁体で被覆した電線を示す図である。 本発明が適用される、対撚線４本のコアの外周を２重のシース層で被覆したケーブルを示す図である。

符号の説明

１ 銅導体
２ 絶縁体
３ シース
４ 介在
５ 押え巻きテープ
６ 絶縁線心
７ 対撚線
８ コア
９ シース内層
１０ シース外層
１１ 電線
１２、１３ 電線・ケーブル

Claims (4)

1. 酢酸ビニル含有量が４０ｗｔ％以上で、メルトフローレート（ＭＦＲ）が０．１〜１．０ｇ／１０ｍｉｎのエチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）を単独、もしくはその他のポリオレフィン系樹脂と混合したベースポリマ１００重量部に対して、金属水酸化物を１５０〜３００重量部、及び１，３，５−トリアジン誘導体を２０〜５０重量部含むことを特徴とするノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
2. ベースポリマ中にマレイン酸またはその誘導体で変性したエチレン系共重合体を１〜２０重量部含む請求項１記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
3. 前記金属水酸化物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム及びニッケルが固溶したこれらの金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも１種以上である請求項１又は２記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
4. 請求項１〜３いずれかに記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体の絶縁体、又はシースに用いたことを特徴とする電線・ケーブル。
   

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