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JP2005194490A - 水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末とその製造方法及びその鱗片状亜鉛粉末を分散した非クロム水性金属防錆塗料 - Google Patents

水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末とその製造方法及びその鱗片状亜鉛粉末を分散した非クロム水性金属防錆塗料 Download PDF

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JP2005194490A
JP2005194490A JP2004053303A JP2004053303A JP2005194490A JP 2005194490 A JP2005194490 A JP 2005194490A JP 2004053303 A JP2004053303 A JP 2004053303A JP 2004053303 A JP2004053303 A JP 2004053303A JP 2005194490 A JP2005194490 A JP 2005194490A
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Tomio Sakai
富男 酒井
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Institute of Technology Precision Electrical Discharge Works
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Abstract

【課題】 犠牲防食効果を示す水性防錆顔料に用いる鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に、結合剤水溶液との反応を防ぎ、かつ結合剤水溶液中に鱗片状亜鉛粉末を容易にかつ実質的に一次粒子の状態に分散することができる被膜を付けた水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末、その製造方法、およびこの鱗片状亜鉛粉末を含む非クロム水性金属防錆塗料を提供する。
【解決手段】 鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に疎水基を有するシラン化合物が付加した薄い被膜を形成し、亜鉛粉末粒子表面をシラン化合物によって撥水化処理する。鱗片状亜鉛粉末はその一部を鱗片状アルミニウム粉末で置換したものとすることができる。撥水化処理に使う疎水基を有するシラン化合物は、疎水基とアルコキシ基を有しており、アルコキシ基を加水分解によってヒドロキシ基としたシラン化合物を鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に付加する。
【選択図】 図1

Description

本発明は鋼鉄、鋳鉄など主に鉄系金属製品の表面を防錆塗装するための水性金属防錆塗料用に、犠牲防食効果を示す防錆顔料として使われる鱗片状亜鉛粉末とその製造方法及びこれを用いた非クロム水性金属防錆塗料に関する。
防錆塗料の趨勢として、環境を汚染しないようクロム成分を含まず、かつ有機溶媒の含有量が少ない非クロム水性金属防錆塗料が志向されている。犠牲防食効果を示す鱗片状亜鉛粉末を防錆顔料に使用したクロム成分を含まない水性金属防錆塗料は既に市販されている。しかし、鱗片状亜鉛粉末を用いた水性金属防錆塗料はその防錆性能がクロム成分を含む水性金属防錆塗料と比べ劣っていたり、経時変化のためポットライフが短い等の問題があることによって、今もクロム成分を含む水性金属防錆塗料が使用されている。
犠牲防食効果を示す防錆顔料として使われる鱗片状亜鉛粉末は、次のようなプロセスで製造されている。まずミネラルスピリットなどの有機媒体中に平均粒径が3〜6μmの粒状亜鉛粉末、アルミニウム粉末、脂肪酸または高級アルコール等を混合し、分散してスラリーとする。次いで、直径0.5ミリ程度のジルコニアビーズを使うビーズミルで亜鉛粉末スラリーを処理して、ジルコニアビーズが亜鉛粒子にぶつかる衝撃力で亜鉛粒子を圧延し鱗片化する。この後、ミネラルスピリットなどの有機媒体を減圧蒸留法等で除去し、乾かして表面がミネラルスピリット中に溶けているステアリン酸や高級アルコール等の滑剤兼バリヤ層で覆われた鱗片状亜鉛粒子からなる粉末とする。鱗片状亜鉛粉末粒子は通常その平均厚さが0.5μmより薄く、平均長さと幅は数μm〜10μm程度である。
表面が滑剤兼バリヤ剤で被覆されていない鱗片状亜鉛粉末粒子は、その表面が防錆塗料の結合剤水溶液に直接触れると、亜鉛粉末及びアルミニウム粉末が徐々に酸化されて細かい水素泡を発生するとともに、防錆塗料の粘度が次第に増して塗装性が損なわれ、防錆塗料の防錆性能も次第に劣化する。
鱗片状亜鉛粉末の酸化を防ぐ対策として、特許文献1には、鱗片化処理するときにステアリン酸等の脂肪酸をスラリーに添加して、脂肪酸を鱗片状亜鉛粉末の表面に被覆し、塗料化した際の水性媒体との反応を防いで、水性金属防錆塗料に鱗片状亜鉛粉末を混入する方法が開示されている。
この場合、ビーズミルで亜鉛粉末の鱗片化処理をした後、脂肪酸が鱗片状粒子の表面に残留するようにミネラルスピリットを減圧下で蒸発させる。脂肪酸は鱗片状粒子の表面を覆う被膜となって残留し、鱗片状亜鉛粉末が水や湿った空気と触れたときにバリヤになって酸化反応を防ぐ。
結合剤水溶液中にこの鱗片状亜鉛粉末を分散して防錆塗料とする場合には、脂肪酸被膜のバリヤ効果によって水をはじくため分散しにくいが、界面活性剤を併用することによって鱗片状亜鉛粉末を結合剤水溶液中に分散させることができ、亜鉛粉末粒子と結合剤水溶液との間で生じる水素を発生する反応を抑制することができる。
また、鱗片状亜鉛粉末の酸化を防ぐために特許文献2には亜鉛粉末の表面に水性コロイダルシリカ被膜を形成して水中での反応を防いだコーティング亜鉛含有金属フレークを用いることが開示されている。しかし、水性コロイダルシリカの被膜は親水性であって水分を通すので水分のバリヤとして不完全である。
特開2003−3271号公報 特開平6−9897号公報
このように、結合剤水溶液中に脂肪酸や高級アルコール等で被覆された鱗片状亜鉛粉末を分散して水性金属防錆塗料を得ているが、鱗片状亜鉛粉末の粒子を被覆しているステアリン酸等が接着剤となって鱗片状亜鉛粉末粒子を相互に接合する接着剤として働き、鱗片状亜鉛粉末粒子を二次粒子化するという問題がある。
即ち、表面に脂肪酸等が付着している鱗片状亜鉛粉末を結合剤水溶液中に分散せしめても、鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに接合、あるいは積層した二次粒子を形成している。
この種の水性金属防錆塗料は、鋼製ボルトやナットなどのファスナー類の防錆塗装に多く使用されている。ファスナー類を塗装する方法として、通常ディップアンドスピン法が採用されている。すなわち、金属製の籠に入れたファスナー類を籠ごと塗料槽に浸漬し、塗料槽から金属製の籠を引き上げて回転させ、遠心力でファスナー類の表面に付着している過剰の塗料を振り落とし、乾燥後焼き付ける。通常この塗装を2回繰り返す重ね塗りが行われる。
互いに接合あるいは積層して二次粒子になっている鱗片状亜鉛粉末を含む防錆塗料を基材に塗装すると、塗膜中にも鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに接合あるいは積層した二次粒子構造が認められる。二次粒子の間にできる隙間は大きく、塗装された塗膜の厚さが不均一となる。ファスナー類では比較的薄くて防錆力のある塗膜で基材の表面を覆う必要があるが、二次粒子となった亜鉛粉末を含む防錆塗料はこの条件を充たすことができない。
防錆塗料中で鱗片状亜鉛粉末の粒子が一次粒子に分離した状態で分散していれば、防錆塗料を基材に塗布したとき塗膜中で鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに平行にずれた状態で重なりあって基材表面に付くので、薄い防錆塗膜で基材表面を多層に覆うことができ、これによって防錆性能を十分に発揮できると予想される。
互いに接合あるいは積層した鱗片状亜鉛粉末の二次粒子を一次粒子に解すために、ステアリン酸等で被覆して乾かした鱗片状亜鉛粉末をジェットミルにかけて風簸分級し、回収することを試みた。しかし、ジェットミルで解す処理をすると鱗片状亜鉛粒子の一部が引きちぎられて亜鉛粉末の一部が微細化し、同時に鱗片状亜鉛粉末粒子の表面を覆っているステアリン酸等の被膜に傷がつき、亜鉛粉末粒子の金属表面の一部が露出する。このような鱗片状亜鉛粉末を防錆塗料の結合剤水溶液中に分散すると、亜鉛粒子と結合剤水溶液との反応が起きるため水素泡が発生し、時間が経過すると塗料が変質し防錆塗料の粘度が増す。
他方、水性コロイダルシリカの被膜は親水性があるために水と亜鉛粉末間の反応を抑制する効果が十分でなく、酸化亜鉛の白錆を生じやすい。
本発明者は、二次粒子化している鱗片状亜鉛粉末をジェットミル等で一次粒子に解す処理をしなくても済み、鱗片状亜鉛粉末粒子の全表面を被覆して不活性化し、かつ鱗片状亜鉛粉末粒子が二次粒子化しにくい方法を種々検討し、本発明に到達した。
そこで本発明は、犠牲防食効果を示す防錆顔料として結合剤水溶液中に分散して用いられる鱗片状亜鉛粉末に結合剤水溶液との反応を防ぐための被膜を形成し、かつその鱗片状亜鉛粉末が二次粒子化しにくい水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末を提供することを目的とする。
また本発明は、鱗片状亜鉛粉末と結合剤水溶液との反応を防ぐとともに鱗片状亜鉛粉末が二次粒子化しにくい被膜を付けた水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法を提供することを目的としている。
更に本発明の他の目的は、かかる水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末を結合剤水溶液中に分散させた非クロム水性金属防錆塗料を提供することである。
本発明による水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末は、鱗片状亜鉛粉末と、その粒子表面に付加された疎水基を有するシラン化合物とからなり、亜鉛粉末粒子表面が前記シラン化合物によって撥水化処理されていることを特徴とする。
本発明の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末は、6〜35重量%の鱗片状アルミニウム粉末を含む混合物であることが好ましい。
本発明の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末において、疎水基を有する前記シラン化合物は疎水基とアルコキシ基を有するシラン化合物のアルコキシ基が加水分解して生成したヒドロキシ基を有するものであることが好ましい。
本発明の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末において、疎水基を有するシラン化合物を表面に付加した前記鱗片状亜鉛粉末は、界面活性剤が添加されていない水に対して水面に浮かぶ性質を示すことが更に好ましい。
本発明による水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法は、有機媒体中に平均粒径が3〜6μmの亜鉛粉末を混合して亜鉛粉末の有機媒体スラリーとし、そのスラリー中の亜鉛粉末を鱗片化処理して鱗片状とし、そのスラリーを静置して鱗片状亜鉛粉末を有機媒体中で沈降させて上澄みの有機媒体を取り除き、媒体をアルコールで置換して鱗片状亜鉛粉末のアルコールスラリーとし、別途、疎水基とアルコキシ基を有するシラン化合物のアルコール溶液に触媒と水を添加してアルコキシ基を加水分解したシラン化合物のアルコール溶液を作り、このシラン化合物のアルコール溶液を鱗片状亜鉛粉末のアルコールスラリー中に混合することによって疎水基を有するシラン化合物を鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に付加せしめ、鱗片状亜鉛粉末を混合したアルコールスラリーからアルコールを除去して疎水基を有するシラン化合物を粒子表面に付加した鱗片状亜鉛粉末を得ることを特徴とする。
本発明の前記水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法において、亜鉛粉末の前記有機媒体スラリーに鱗片状アルミニウム粉末を混合して6〜35重量%の鱗片状アルミニウム粉末を含む亜鉛粉末のスラリーとし、疎水基を有するシラン化合物を鱗片状アルミニウム粉末を含む鱗片状亜鉛粉末粒子表面に付加せしめることが好ましい。
本発明の前記水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法において、鱗片状亜鉛粉末を混合したアルコールスラリーからアルコールを除去する工程は、傾斜法あるいはサイフォン吸引で大部分のアルコールを除いた上で、アルコールで濡れた鱗片状亜鉛粉末を濾紙に載せて液体成分を濾紙に吸収させ、その後乾燥させることが好ましい。
本発明の非クロム水性金属防錆塗料は、鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に疎水基を有するシラン化合物が付加されていることによって撥水性を呈する鱗片状亜鉛粉末が、界面活性剤を含む結合剤水溶液中に実質的に一次粒子の状態で分散されていることを特徴とする。
本発明による鱗片状亜鉛粉末を用いた非クロム水性金属防錆塗料では、鱗片状亜鉛粉末粒子が疎水基を持つシラン化合物が付加した被膜で覆われていることによって、塗料化したときに結合剤水溶液との反応による水素泡がほとんど発生せず、水素泡の跡である穴が認められない塗膜を形成できる。
水素が発生する反応が抑制されているので塗料粘度が増大しにくく塗料の保存性が向上し、また鱗片状亜鉛粉末の粒子がシラン化合物の付加による粘着性の小さい被膜で覆われているので、鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに接合して二次粒子化するのを防げ、あるいは二次粒子化していても通常の撹拌操作によって容易に一次粒子に解すことができる。かくして水性金属防錆塗料中に鱗片状亜鉛粉末粒子が実質的に一次粒子の形で分散しているので、水性金属防錆塗料が被塗装物表面に塗装された塗膜中において鱗片状亜鉛粉末粒子が互いに平行にずれた状態で重なり合う層状組織を形成し、10μm程度の薄い塗膜のみで塩水噴霧試験において約1000時間の防錆性能を確保できる。
さらにこの塗膜の上に先に特願2004−52991号で特許出願している表面処理剤を塗布し、2μm弱の厚さの被覆を表面に形成することにより、塩水噴霧試験で2000時間を超える防錆性能のある塗膜を形成できる。従ってボルト等のファスナー類の防錆塗装に好適な、塗膜が薄くても塩水噴霧試験で2000時間を超える防錆性能が得られる非クロム水性金属防錆塗料を提供できる。
通常、防錆塗料の塗膜の厚さを2倍に増やすと塩水噴霧試験での防錆性能が4倍程度以上に向上することを考えあわせると、本発明による鱗片状亜鉛粉末を用いた水性金属防錆塗料では防錆性能が顕著に向上していると言える。また、防錆塗料の塗膜上に表面処理剤を塗布することによって、白錆や黒錆の発生を長時間にわたって抑制できる非クロムの防錆塗膜を形成できる。
本発明において、疎水基を有するシラン化合物は鱗片状亜鉛粉末粒子の表面に非常に薄い被膜層として存在し、脂肪酸や高級アルコールで形成される被膜と比べて互いに粘着しにくく、鱗片状亜鉛粉末粒子を二次粒子化する力が弱い。従って、例え二次粒子化していても簡単な操作で一次粒子に解すことができ、このとき鱗片状亜鉛粉末粒子がちぎれたり、傷ついたりしないように一次粒子に解すことができる。
鱗片状亜鉛粉末粒子の表面がシラン化合物の疎水基で覆われているので撥水性があり、鱗片状亜鉛粉末を純水中に投入すると水に浮くが、水に界面活性剤を添加しておけば水中に分散させることができる。
鱗片状亜鉛粉末粒子の表面を覆っている疎水基を有するシラン化合物の被膜は非常に薄くても、鱗片状亜鉛粉末粒子の表面が水や湿った空気と接触したときに起きる水素が発生する反応を防ぐことができる。また、界面活性剤を添加してある水性金属防錆塗料の結合剤水溶液中に本発明の鱗片状亜鉛粉末を分散したときも、水素が発生する反応を効果的に防ぐことができる。
本発明の方法で表面処理した水性金属防食塗料用鱗片状亜鉛粉末を、界面活性剤を添加した結合剤水溶液中に分散せしめ、水性金属防錆塗料を調製することによって、鱗片状亜鉛粉末の粒子が実質的に一次粒子の状態で結合剤水溶液中に分散した水性金属防錆塗料が得られ、薄くても防錆性能の優れた非クロムの防錆塗膜を形成することができる。また、塗料化した後に、結合剤水溶液と鱗片状亜鉛粉末とが反応して水素泡が発生するのに伴って塗料が変質するのを防ぐことができる。
実質的に一次粒子からなる鱗片状亜鉛粉末を結合剤水溶液中に分散させた防錆塗料を、ボルトやナットのファスナー類の表面にディップアンドスピン法で塗装すると、鱗片状亜鉛粉末粒子が互いに平行にずれて重なり合った塗膜組織が形成され、薄くても多層の鱗片状亜鉛粉末粒子で基材を覆った組織の塗膜になり、防錆性能を十分に発揮することができる塗膜を形成する。
さらに、この表面処理した鱗片状亜鉛粉末を配合した水性金属防錆塗料を基材表面に塗装し、特願2004−52991号で先に特許出願した亜鉛メッキ製品用非クロム表面処理剤で防錆塗料の塗膜表面を上塗りすることによって、赤錆はもちろん、白錆や黒錆に対する防錆性能を長時間保持でき、薄くても優れた防錆性能を示す塗膜を基材表面に形成できる。
鱗片状亜鉛粉末を6〜35重量%の鱗片状アルミニウム粉末を含む鱗片状亜鉛粉末とすると、被塗装物に塗装した防錆塗膜の表面がアルミニウムに近い金属色を呈する。これは、鱗片状アルミニウム粉末が鱗片状亜鉛粉末と比べて比重が軽いことで、塗膜の表層部に集まりやすい傾向があるためと推定される。この場合、防錆塗料の防錆性能を向上させることができる。鱗片状亜鉛粉末に含まれる鱗片状アルミニウム粉末の量は、6重量%より少ないと置換した効果が認められず、35重量%より多くしても多くした効果が認められない。より好ましい鱗片状アルミニウム粉末の混合割合は7〜30重量%である。
鱗片状亜鉛粉末の表面に付加する疎水基を有するシラン化合物は、例えばシランカップリング剤等の疎水基とアルコキシ基を有するシラン化合物を用いて付加することができる。これらのシラン化合物をアルコール溶媒中に溶かしておき、酢酸などを触媒として少量の水を添加するとアルコキシ基の加水分解が起き、アルコキシ基のあった位置にヒドロキシ基が生成する。
この加水分解したシラン化合物のアルコール溶液をアルコール溶媒中に分散してある鱗片状亜鉛粉末スラリー中に混合すると、疎水基を有するシラン化合物が鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に付加し、シラン化合物が鱗片状亜鉛粉末粒子の全表面を被覆して撥水性を呈する鱗片状亜鉛粉末になる。
粒子状の亜鉛粉末を鱗片状亜鉛粉末とし、この鱗片状亜鉛粉末の表面に疎水基を有するシラン化合物を付加するには、まずビーズミルを使う常法によって亜鉛粉末を鱗片化処理する。この場合、亜鉛粉末は市販されている平均粒径が3〜6μmの粒状粉末を原料とし、ビーズミルで鱗片化処理する。具体的には、ミネラルスピリット等の安価で不活性な有機媒体中に亜鉛粉末を混合してスラリーとし、このスラリーをビーズミルに通して直径0.5mm程度のジルコニアビーズがぶつかり合う衝撃で亜鉛粉末の粒子をたたいて延ばし、鱗片化する。鱗片化に際し、脂肪酸や高級アルコールをミネラルスピリット中に溶かしておき、滑剤として利用しても良い。
亜鉛粉末の有機媒体スラリー中に鱗片状アルミニウム粉末のペーストを混合してからビーズミルで鱗片化処理すれば、鱗片状アルミニウム粉末が緊密に混ざり合った鱗片状亜鉛粉末が得られる。亜鉛粉末の有機媒体スラリー中への鱗片状アルミニウムペーストの混合は、ビーズミルによる鱗片化処理の後であっても良い。
本発明による水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法では、スラリーの媒体であるミネラルスピリットを、シラン化合物を付加する表面処理に適したアルコール溶媒で置換する。アルコール溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1−メトキシ2−プロパノール、メチルアルコール等を使うことができる。
シラン化合物の鱗片状亜鉛粉末粒子表面への付加は、シランカップリング剤を無機粉末粒子の表面に付加する通常の方法を用いることができる。
シラン化合物を鱗片状亜鉛粉末粒子表面に付加した後、付加処理に使用したアルコール溶媒(シラン化合物も溶けている)はできるだけ除いてから乾かすのが好ましい。鱗片状亜鉛粉末の表面に付加しなかった残留シラン化合物が溶け込んでいるアルコール溶媒を除くことによって過剰のシラン化合物が取り除かれるので、鱗片状亜鉛粉末は二次粒子化していない、あるいは容易に一次粒子に解せる鱗片状亜鉛粉末として回収できる。残留シラン化合物が溶け込んでいるアルコール溶媒を除去するには、上澄みを除いた後、アルコールで濡れた鱗片状亜鉛粉末を濾紙等の液体を吸収するシートの上に移すとよい。アルコール溶媒が濾紙に吸収されれば、鱗片状亜鉛粉末を乾かすのが容易になる。鱗片状亜鉛粉末粒子の表面に付加したシラン化合物は、アルコール類で洗っても取れないので、乾きやすい低沸点のアルコールで洗ってから乾かすこともできる。
アルコール溶媒は室内に放置しておいて蒸発させてもよいが、より完全に乾かすには、加温した乾燥器中に入れて暖めて乾かす、あるいは暖まっている間に減圧容器中に移して減圧下でアルコールを蒸発させて乾かすこともできる。
アルミニウムペースト中に含まれているジプロピレングリコール等はミネラルスピリットをアルコール溶媒で置換し、最後にアルコール溶媒を除いて乾かすので、ジプロピレングリコール等を実質的に含まない乾燥鱗片状亜鉛粉末になる。
かくして、鱗片状亜鉛粉末粒子が互いに接合して強く結合した二次粒子になるのを避け、鱗片状亜鉛粉末の大部分が一次粒子あるいは容易に一次粒子に解せる二次粒子からなる撥水性を有する乾燥鱗片状亜鉛粉末が得られる。即ち、結合剤水溶液中に混合、撹拌された乾燥鱗片状亜鉛粉末は実質的に一次粒子からなるということができる。
本発明の鱗片状亜鉛粉末は疎水基を有するシラン化合物が付加されていることによって撥水性を示すが、界面活性剤が添加された結合剤水溶液中に分散させて水性金属防錆塗料とすることができる。
本発明による水性金属防錆塗料では、水性金属防錆塗料中に鱗片状亜鉛粉末が実質的に一次粒子の状態で分散していることによって被塗装物の上に塗装したとき、塗膜中において鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに平行にずれた状態で重なり合って被塗装物の表面を幾重にも覆い空隙や泡のあった跡(気泡穴)のない塗膜を形成する。従って、塗膜をファスナー類の表面に10μm程度に比較的薄く塗膜を塗装しても優れた防錆性能を示す塗膜になる。水性金属防錆塗料は例えば特願2003−277284号に書かれた、種々の組成で作ることができる。
平均粒径約4μmの亜鉛粉末(本莊ケミカル(株)製のF−3000)1Kgに対しミネラルスピリット(三洋化成品(株)製のロウス)4Kg、アルミニウムペースト(昭和アルミニウムパウダー(株)製の4111GB、ミネラルスピリットを20%とジプロピレングリコールを10%含む)100g、ラウリルアルコール(花王(株)のカルコール2098)20gを混合してスラリー化し、このスラリーをサービスタンクからビーズミルに流して循環させ、鱗片化処理した。
ビーズミルは三井鉱山(株)のSC100/32Aミルを使い、直径0.5mmのジルコニアボールを約0.65Kg粉砕室に投入し、ロータを2650rpmで回転(周速約14m/秒に相当)させながら、サービスタンクに投入した亜鉛粉末スラリーをビーズミルに通しサービスタンクとの間を循環させて鱗片化処理した。処理時間はサービスタンクに入れるスラリー量によって変わるが、亜鉛粉末1Kgを鱗片化処理する場合は2時間とした。
鱗片化処理した亜鉛粉末のミネラルスピリットスラリーをステンレス製容器に移し、アルミニウムペーストを54g追加、混合してしばらく放置しておくと、比重の大きい鱗片状亜鉛粉末(9.7重量%の鱗片状アルミニウム粉末を含む)が底部に沈降してミネラルスピリットの上澄みができる。この上澄みを傾斜法またはサイフォンで取り除き、ブチルセロソルブで置換して鱗片状亜鉛粉末のブチルセロソルブスラリーを得た。
別に600gのブチルセロソルブに対し2%の酢酸水溶液30gとn−ヘキシルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)AZ−6177)130gとを加えて撹拌しながら約50℃に3時間保温してアルコキシ基を加水分解させたシランモノマー溶液を準備した。
ブチルセロソルブで置換し約55℃に保温した鱗片状亜鉛粉末スラリーを撹拌しつつ加水分解させたシランモノマー溶液を少しずつ約5時間かけてスラリーに混合し、その後撹拌しながら一晩放置した。
スラリーの撹拌を止めて放置し、鱗片状亜鉛粉末を底部に沈降させて再度上澄みを傾斜法とサイフォンで取り除き、濡れた鱗片状亜鉛粉末をアルミニウム製トレーに敷いた濾紙上に広げてブチルセロソルブを濾紙に吸収させ、そのまま一昼夜室内で乾燥し、更に乾燥器に入れ120℃で数時間乾燥した。
乾燥した後鱗片化処理した亜鉛粉末を解すため、容量2リットルのポリプロピレン容器に直径5mmのジルコニアボール1Kgと乾かした亜鉛粉末約0.5Kgを入れて蓋をし、ボールミルの回転架台上で回るリング枠付の一斗缶の中に、ポリプロピレン容器を納めてクッション材で周囲を固定し、ポリプロピレン容器が縦方向に30rpmで回転するようにセットした。約30分後にジルコニアボールと鱗片状亜鉛粉末をポリプロピレン容器から取り出して篩い分けた。
得られた鱗片状亜鉛粉末は良好な金属光沢を有しており、少量を指で摘んで水面上に落としたところ、撥水性があって水をかき混ぜてもすべて水面上に浮いた。
この鱗片化処理した亜鉛粉末100重量部(アルミニウム粉末9.7重量%含む)を、水性ブロックイソシアネート樹脂エマルジョン(ガンツ化成(株)製のプロミネート、樹脂成分を45重量%含む)2.7重量部、β(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(日本ユニカー(株)製のコートシル1770,11.5重量部、平均分子量1000のポリエチレングリコール58.4重量部、ノニオン系天然アルコールエトキシレート(旭電化(株)製、界面活性剤)2.8重量部、モリブデン酸ソーダ1.4重量部、水106.2重量部からなる結合剤水溶液中に混合し、ゆっくりスターラで撹拌した。この鱗片状亜鉛粉末は界面活性剤を添加した結合剤水溶液中に容易に分散することができ、水素泡が発生せず、粘度の経時変化(増大)の少ない性能が安定した鱗片状亜鉛粉末入り水性金属防錆塗料を得た。
塗料化後約24時間経過したこの水性金属防錆塗料をディップアンドスピン法(籠の回転半径約200mm、回転数340rpm)で長さ約30mmのM8ボルトに塗布し、250℃で15分間焼き付ける操作を2度繰り返して、防錆塗料を塗装したボルト20本を得た。
次いでこの水性金属防錆塗料を塗装したM8ボルトのうち10本の塗膜上に、ディップアンドスピン法(籠の回転半径約150mm、回転数350rpm)で表面処理剤を塗布し、180℃で15分間焼き付けた。この表面処理剤は、シリカ成分を約20重量%含むエトキシシランオリゴマー(重量平均分子量が2240)のアルコール溶液80重量部に対し、16.7重量%の酸化チタン超微粉末(昭和電工(株)のスーパータイタニアF−6、一次粒子の平均粒径:15nm)を含むエチルセロソルブを溶媒とする酸化チタンスラリー(ボールミルで24時間分散処理してある)を8重量部混合したものである。
防錆塗料を塗装し、その上に表面処理剤を塗布したこのボルトを樹脂に埋め込んで切断し、2000倍の顕微鏡写真を撮って塗膜断面を調べたところ、実質的に一次粒子に分散した鱗片状亜鉛粉末が塗膜中に観察された。即ち、厚さ約10μmの塗膜中において、一次粒子に分散した鱗片状亜鉛粉末が基材表面と平行な方向に互いにずれた状態で並び、鱗片状亜鉛粉末が基材表面を多重に覆う塗膜組織を形成していた。また、防錆塗膜の表面に焼け付けられた表面処理剤の被覆厚さは2μm弱であった。
図1に観察した本発明にかかる塗膜組織の断面を模式図で示した。図1において、2は基材(ボルト)1の表面に形成された厚さ約10μmの塗膜で、鱗片状亜鉛粉末の一次粒子4の間に水性結合剤の薄い固化層があって、鱗片状亜鉛粉末の一次粒子4間を相互に結合している。3は塗膜上に形成された表面処理剤の被覆である。
実施例1と同様にして鱗片状亜鉛粉末粒子の表面に疎水性を有するシラン化合物を付加し、実施例1において行った鱗片状亜鉛粉末をボールミル中で解す処理を省略し、シラン化合物を表面に付加した鱗片状亜鉛粉末を乾かし、そのまま界面活性剤を添加した結合剤水溶液中に混合し、撹拌したところ容易に鱗片状亜鉛粉末を実質的に一次粒子の状態に分散することができた。得られた水性金属防錆塗料は水素泡を発生せず、塗料粘度の経時変化(増大)の少ない安定なものであった。
この水性金属防錆塗料をディップアンドスピン法で実施例1と同様にして長さ約30mmのM8ボルト20本に塗装し、250℃で15分間焼き付ける操作を2度繰り返した。次いで塗装ボルトのうち10本に、実施例1と同様にディップアンドスピン法(籠の回転半径約150mm、回転数350rpm)で表面処理剤を塗布し、180℃で15分間焼き付けた。
ボルトを樹脂中に埋め込んで切断し、2000倍の顕微鏡写真で塗膜断面を調べたところ、鱗片状亜鉛粉末粒子が互いに平行にずれて重なり合った塗膜組織が基材(ボルト)表面に観察された。この塗膜組織は図1に示したものとほぼ同じで、塗膜の厚さは約11μm、表面処理剤によって形成された被覆の厚さは2μm弱であった。
実施例1で使ったn−ヘキシルトリメトキシシランモノマーに代えて、600gのブチルセロソルブ中に125gのn−オクチルトリエトキシシラン(日本ユニカー(株)シランモノマーA−137)を加え、酢酸を触媒として加水分解したシランモノマー溶液を準備した。
他は実施例2と同様にして水性金属防錆塗料を作製し、M8ボルトにディップアンドスピン法で塗装して実施例3の塗装ボルト20本を得た。次いで、水性金属防錆塗料を塗装したボルト10本の上に、ディップアンドスピン法(籠の回転半径約150mm、回転数350rpm)で実施例1と同様に表面処理剤を塗布し、180℃で15分間焼き付けた。 ボルトの表面に付いた塗膜を切断面の2000倍の顕微鏡写真を撮って調べたところ、塗膜厚さは約11μmであり、塗膜上の表面処理剤によって形成された被覆の厚さは2μm弱であった。塗膜断面の顕微鏡写真には鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに平行にずれて重なり合った塗膜組織からなる塗膜が基材(ボルト)表面に観察された。この塗膜組織は図1に示したものとほぼ同じであった。また得られた水性防錆塗料は水素泡を発生せず、塗料粘度の経時変化(増大)が少ない安定なものであった。
実施例1で使ったn−ヘキシルトリメトキシシランモノマーに代えて、600gのブチルセロソルブ中に125gのフェニルトリエトキシシラン(GE東芝シリコーン(株)アルコキシシランTSL−8178)を溶かし、酢酸を触媒としてアルコキシ基を加水分解したシランモノマー溶液を準備した。
他は実施例2と同様にして水性金属防錆塗料を作製し、鱗片状亜鉛粉末の粒子が塗料中に実質的に一次粒子の状態で分散した防錆塗料を得た。この防錆塗料を実施例1と同様にしてM8ボルトにディップアンドスピン法で塗装し実施例4の塗装ボルト20本を得た。この防錆塗料を塗装したボルト10本に、ディップアンドスピン法(籠の回転半径約150mm、回転数350rpm)で実施例1と同様にして表面処理剤を塗布し、180℃で15分間焼き付けた。ボルトを樹脂に埋めて切断し、2000倍の顕微鏡写真を撮って塗膜の断面を調べたところ、ボルト表面の塗膜厚さは約10μmで、鱗片状亜鉛粉末の粒子が互いに平行にずれて重なり合った塗膜組織が基材(ボルト)表面に観察された。この塗膜組織は図1に示したものとほぼ同じで、表面処理剤によって形成された被覆の厚さは2μm弱であった。
(比較例1)
平均粒径約4μmの亜鉛粉末(本莊ケミカル(株)製のF−3000)1Kgに対しミネラルスピリット4Kg、アルミニウムペースト154g、ラウリルアルコール20gを混合してスラリー化し、このスラリーをサービスタンクからビーズミルに流して循環させ実施例1と同様にして鱗片化処理した。
鱗片化処理した亜鉛粉末スラリーを、撹拌器を備えた減圧容器付きのミキサー(三井鉱山(株)のFM20BX型ヘンシェルミキサー)に入れて減圧乾燥し、乾燥鱗片状亜鉛粉末を得た。この乾燥鱗片状亜鉛粉末の表面は、高級アルコールのラウリルアルコールで被覆されているが、接着性のあるラウリルアルコールの存在によって二次粒子化しており容易に一次粒子に解すことができなかった。対策としてジェットミル(三井鉱山(株)のN−CONDUX CGS16型)で二次粒子を一次粒子に解し、風簸分級して解した鱗片状亜鉛粉末を回収した。
得られた鱗片状亜鉛粉末の少量を指で摘んで水面上に落としたところ、撥水性があって水をかき混ぜても水面上に浮いていた。
この鱗片状亜鉛粉末を、実施例1で用いたのと同じ結合剤水溶液中に混合して塗料化した。しかし、しばらく放置しておいたところ少量ずつであるが水素泡が発生し、数日間経過した時点では塗料粘度の増大を認めた。この現象は、鱗片状亜鉛粉末粒子がちぎれたり、被覆された粒子表面が傷ついたことによって鱗片状亜鉛粉末粒子の亜鉛が一部露出し、この亜鉛の表面が結合剤水溶液と反応して水素泡が発生したことに起因するものと推定された。
塗料化後約24時間経過した水性金属防錆塗料をディップアンドスピン法(籠の回転半径約150mm、回転数340rpm)で長さ約30mmのM8のボルト20本に塗装し、250℃で15分間焼き付ける操作を2度繰り返して比較例1の塗装ボルトを得た。更にこの水性金属防錆塗料で塗装したボルトのうち10本の上に、実施例1と同様にしてディップアンドスピン法(籠の回転半径約150mm、回転数350rpm)で表面処理剤を塗布し、180℃で15分間焼き付けた。ボルトを樹脂に埋め込んで切断した断面の2000倍の顕微鏡写真で塗膜の断面を調べたところ、M8ボルトの表面に形成された塗膜の平均厚さは約17μmであり、表面処理剤によって形成された被覆の厚さは2μm弱であった。この塗膜の厚さは不均一で厚い部分と薄い部分とがあり、塗膜には気泡の存在した跡が認められた。また、塗膜断面には鱗片状亜鉛粉末の粒子が積層した二次粒子が多数観察され、二次粒子の間には空隙も認められた。
図2に比較例1の塗膜組織の断面を模式図で示した。図2において、基材(ボルト)1の表面の塗膜2中に鱗片状亜鉛粉末が積層した二次粒子5があり、二次粒子の間には空隙7が観察されるとともに、塗膜中に泡のあった跡6が認められた。泡のあった跡6は反応で生成した水素泡によるものと考えられる。
(比較例2)
亜鉛粉末スラリー中にラウリルアルコールに代えてステアリン酸を14gを添加し、他は比較例1と同様にして防錆塗料を試作し、M8ボルトにディップアンドスピン塗装して比較例2の塗装ボルト20本を得た。更に塗膜上に表面処理剤を比較例1と同様に塗布して表面処理剤を被覆したサンプルを得た。塗膜断面を2000倍の顕微鏡写真で調べたところ、ボルトの表面に形成された塗膜の平均厚さは約17μmであり、表面処理剤によって形成された被覆の厚さは2μm弱であった。また、塗膜には比較例1と同じく厚さの厚い部分と薄い部分が存在した。塗膜の表面には比較例1と同様に泡のあった跡が認められた。この塗膜組織は図2に示したものとほぼ同じであった。
実施例1〜4と、比較例1、2で試作した防錆塗料をM8のボルトにディップアンドスピン法で塗装したサンプル、及び防錆塗料と表面処理剤の両方をM8のボルトに塗布したサンプルを、JIS−Z−2371に準拠した塩水噴霧試験機に入れて防錆性能を評価した。即ち、塩水噴霧試験機中に各5本のサンプルを入れておき、5本のうち3本に赤錆の発生を認めた時間を防錆性能を表す時間として評価結果を表1に纏めて示した。表1から、実施例1〜4では10μm程度の薄い塗膜で、比較例1及び2の17μm程度の厚さをした塗膜と同等レベルの防錆性能を示し、更にその上に2μm弱の厚さの表面処理剤を上塗り(防錆塗料の塗膜厚さに表面処理剤の被覆厚さを加えてそれぞれ12μmと19μm)することによって、いずれも2000時間を超える防錆性能を示した。また、表面処理剤を塗布したサンプルでは、白錆や黒錆の発生が長時間抑制されることがわかった。
Figure 2005194490
本発明の実施例1による水性金属防錆塗料を塗布した塗膜組織の断面を示す模式図である。 比較例1による水性金属防錆塗料を塗布した塗膜組織の断面を示す模式図である。
符号の説明
1 基材
2 塗膜
3 (表面処理剤の)被覆
4 (鱗片状亜鉛粉末の)一次粒子
5 (鱗片状亜鉛粉末の)二次粒子
6 泡のあった跡
7 空隙

Claims (8)

  1. 鱗片状亜鉛粉末と、その粒子表面に付加された疎水基を有するシラン化合物とからなり、前記鱗片状亜鉛粉末粒子表面が撥水化処理されていることを特徴とする水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末。
  2. 前記鱗片状亜鉛粉末が6〜35重量%の鱗片状アルミニウム粉末を含む混合物であることを特徴とする請求項1記載の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末。
  3. 疎水基を有する前記シラン化合物は、疎水基とアルコキシ基とを有するシラン化合物のアルコキシ基が加水分解して生成したヒドロキシ基を有することを特徴とする請求項1あるいは2に記載の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末。
  4. 疎水基を有するシラン化合物を表面に付加した前記鱗片状亜鉛粉末は、界面活性剤が添加されていない水に対して水面に浮かぶ性質を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末。
  5. 有機媒体中に平均粒径が3〜6μmの亜鉛粉末を混合して亜鉛粉末の有機媒体スラリーとし、そのスラリー中の亜鉛粉末を鱗片化処理して鱗片状とし、そのスラリーを静置して鱗片状亜鉛粉末を有機媒体中で沈降させて上澄みの有機媒体を取り除き、媒体をアルコールで置換して鱗片状亜鉛粉末のアルコールスラリーとし、別途、疎水基とアルコキシ基を有するシラン化合物のアルコール溶液に触媒と水を添加してアルコキシ基を加水分解したシラン化合物のアルコール溶液を作り、このシラン化合物のアルコール溶液を鱗片状亜鉛粉末の前記アルコールスラリー中に混合することによって疎水基を有するシラン化合物を鱗片状亜鉛粉末の粒子表面に付加せしめ、鱗片状亜鉛粉末を混合したアルコールスラリーからアルコールを除去して疎水基を有するシラン化合物を粒子表面に付加した鱗片状亜鉛粉末を得ることを特徴とする水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法。
  6. 亜鉛粉末の前記有機媒体スラリーに鱗片状アルミニウム粉末を混合して6〜35重量%の鱗片状アルミニウム粉末を含む亜鉛粉末のスラリーとし、疎水基を有するシラン化合物を鱗片状アルミニウム粉末を含む鱗片状亜鉛粉末粒子表面に付加せしめることを特徴とする請求項5に記載の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法。
  7. 鱗片状亜鉛粉末のアルコールスラリーからアルコールを除去する工程は、傾斜法あるいはサイフォン吸引で大部分のアルコールを除いた上で、アルコールで濡れた鱗片状亜鉛粉末を濾紙に載せて液体成分を濾紙に吸収させ、その後乾燥させることを特徴とする請求項5あるいは6に記載の水性金属防錆塗料用鱗片状亜鉛粉末の製造方法。
  8. 粒子表面に疎水基を有するシラン化合物が付加されていることによって撥水性を呈する鱗片状亜鉛粉末が、界面活性剤を含む結合剤水溶液中に実質的に一次粒子の状態で分散されていることを特徴とする非クロム水性金属防錆塗料。
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