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JP2005168316A - タンパク質の合成方法 - Google Patents

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JP2005168316A JP2003408641A JP2003408641A JP2005168316A JP 2005168316 A JP2005168316 A JP 2005168316A JP 2003408641 A JP2003408641 A JP 2003408641A JP 2003408641 A JP2003408641 A JP 2003408641A JP 2005168316 A JP2005168316 A JP 2005168316A
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黒板  敏弘
Katsuya Daimon
克哉 大門
Hiroaki Inoue
浩明 井上
Masanori Oka
岡  正則
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Abstract

【課題】本発明は、無細胞タンパク質合成法を用いる「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法、より詳細には、酸化型物質を含有しない還元条件の無細胞タンパク質試薬に細胞性膜成分を添加することを特徴とする生理活性を有するタンパク質の合成方法に関する。
【解決手段】以下の(a)および(b)の条件を満たす無細胞タンパク質試薬に、細胞性膜成分を添加することを特徴とする「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法。(a)グルタチオン成分を2mM以上の濃度で含有しない(b)還元剤を0.2mM以上の濃度で含有する。

Description

本発明は、無細胞タンパク質合成法を用いる「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法に関し、より詳細には、酸化型物質を含有しない還元条件の無細胞タンパク質試薬に細胞性膜成分を添加することを特徴とする生理活性を有するタンパク質の合成方法に関する。
近年の遺伝子工学や分子生物学分野の進歩並びに各種ゲノム配列解読の成果により、目的の遺伝子の産物であるタンパク質を発現させ、網羅的に、その機能および構造を解析することに研究の主眼が注がれるようになっている。その中でも、特に研究の進みの著しいタンパク質は、細胞内に存在するタンパク質であり、遺伝子配列を元に種々の方法で発現させ、研究が進められている。特に、ハイスループット化という観点から、近年、無細胞タンパク質合成法を用いた、網羅的な合成を用いることが一般化しつつある。
無細胞タンパク質合成法とは、生細胞の代わりに、種々の細胞系の破砕物を準備し、基質やエネルギー源等を必要に応じて添加することで、細胞の成育とは無関係にタンパク質を合成・発現させる技術である。そのためほぼあらゆる種類のタンパク質を合成することが可能で、その応用範囲はきわめて広い。現在無細胞タンパク合成系として知られているものは、大腸菌の細胞破砕物、哺乳類の網状赤血球の抽出物それに、植物種子のエキストラクト等である。これらを用いることで、無細胞系においてタンパクの合成が可能である。
また特に、近年、高効率コムギ胚芽無細胞タンパク質抽出液を用いる方法が注目を集めている(例えば、非特許文献1を参照。)。この方法は、コムギ胚芽抽出液中に含まれるとタンパク質合成を阻害する成分であるトリチンとはじめとするリボトキシンの含量を減らすことにより、タンパク質合成能を高めた方法である。真核生物由来のタンパク質合成方法としては、従来ウサギ網状赤血球を用いる方法が主に使用されてきたが、収量が低い、夾雑タンパク質が多い等の理由から、合成されたタンパク質の機能を解析するには、あまり向かない方法であると思われている。
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(2),559−564(2000)
一方、このコムギ胚芽を用いた改良法は、重層法を併用することで、高収率でタンパク質を得ることができる(例えば、非特許文献2を参照。)。また、休眠期の胚芽を原料として抽出液を調製していることから、夾雑タンパク質も少なく、合成したタンパク質の機能を解析する場合有利であり、ヒトをはじめとする真核生物由来のタンパク質の解析に広く使われ始めている。
FEBS Letter 514, 102−105(2000)
また、無細胞タンパク質合成法では、安定同位体や、セレノメチオニンなどをタンパク質に取りこませることが比較的容易であり、NMRやX線結晶解析などへの応用面でも大いに期待されている。
一方、細胞質内に存在しないタンパク質、すなわち、分泌タンパク質や、細胞内小器官へ局在化するタンパク質、膜タンパク質などのいわゆる「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の研究は、細胞内タンパク質と比べて遅れている現状にある。それは、細胞などを用いた発現において、分泌や局在などが律速となり、正常に発現しないことが多いことに起因している。また、それらの多くは、翻訳後に様々な修飾を受けたり、膜へ埋めこまれたりすることが必要であり、無細胞タンパク質合成法を用いても困難である場合が多くみうけられる。
これを解決するために考えられたのが、細胞内器官である小胞体を断片化しその画分を無細胞タンパク質合成系に添加する方法である。細胞内成分である小胞体を断片化したものは通常ミクロソーム画分と呼ばれ、一般的には動物由来のミクロソームの調製法が知られている(例えば、非特許文献3を参照。)。このミクロソーム画分は、動物の膵臓や肝臓および卵管といった臓器や、酵母の細胞からも得ることができる。調製されたミクロソーム画分は、ウサギ網状赤血球由来の無細胞タンパク質合成系ならびに、小麦胚芽由来の無細胞タンパク質合成系と共役させる方法が可能であることが知られている。
Methods in Enzymology, 1983, Vol.96, 84−93
しかし、これらの方法では、主に膜タンパク質のトランスロケーションの研究に使われてきたのが実状であり、合成されたタンパク質の酵素活性などの機能を解析した例は数えるほどしかないのが事実である。非特許文献4では、β−Hexosaminidase Bが、非特許文献5では、tissue−type plasminogen activator (t−PA)を合成した例が、ウサギ網状赤血球無細胞系とイヌ膵臓由来ミクロソームを組み合わせた事例が報告されている。(β−Hexosaminidase Bはリソソームへ局在する酵素であり、t−PAは分泌性のセリンプロテアーゼの一種である。)これらの例では、活性測定まで行われている。これらの反応系へは、いずれも、酸化グルタチオンの添加が必須であることが論文に記載されている。しかし、通常細胞質は還元状態にあることから、酸化条件でタンパク質合成を行うことは不自然であるといえる。
J. Biol. Chem. 263(26), 13463−13469 Biochem J. 286, 275−280 (1992)
また、t−PAの解析においては、分離した膜画分をサンプルとした解析例しか示されておらず、無細胞タンパク質合成後の反応液を直接用いた解析例に関しては、例示されていない。それは、ウサギ網状赤血球を用いる無細胞タンパク質合成系では、夾雑タンパク質の活性のレベルが高いことなどから、解析のバックグラウンドが高くなってしまうことに起因している可能性が高い。特に、哺乳類由来のタンパク質を用いた解析においては、ウサギ網状赤血球などの哺乳類系の無細胞タンパク質合成法を用いない方が、その後の解析面からは好ましいと言える。
その点では、夾雑タンパク質の活性の低いコムギ無細胞タンパク質合成(特に、高効率コムギ胚芽無細胞タンパク質抽出液を用いる方法(例えば、非特許文献6を参照。)と膜画分をカップルさせ、生理活性を有する「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」を合成することが好ましいといえる。しかし、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系では、活性等を測定した例はほとんどないのが現状であり、その原因を追求し、改善することが急務であると考えられる。
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(2),559−564(2000))
このような理由から、コムギ無細胞タンパク質合成法を用いる、生理活性を有する「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法が求められていた。すなわち、本発明の目的は、植物由来無細胞タンパク質合成系に細胞性膜成分を添加し、分泌タンパク質、細胞内小器官へ局在するタンパク質、膜タンパク質などを、生理活性を有する形で合成する方法を供給することにある。また、それを達成する試薬・キット、および本方法で合成されたタンパク質を供給することである。
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1) 無細胞タンパク質合成法を用いる「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法であって、以下の(a)および(b)の条件を満たす無細胞タンパク質試薬に、細胞性膜成分を添加することを特徴とする生理活性を有するタンパク質の合成方法。
(a)グルタチオン成分を2mM以上の濃度で含有しない
(b)還元剤を0.2mM以上の濃度で含有する
(2) 還元剤としてジチオスレイトール(DTT)または2−メルカプトエタノールを用いることを特徴とする、(1)に記載のタンパク質の合成方法。
(3) 細胞性膜成分が、動物由来もしくは植物由来であることを特徴とする、(1)に記載のタンパク質の合成方法。
(4) 細胞性膜成分が、イヌ膵臓由来ミクロソームであることを特徴とする(4)に記載のタンパク質の合成方法。
(5) 以下の(c)および/または(d)の構成からなる緩衝溶液中に調製された細胞性膜組成物を添加することを特徴とする、(1)に記載のタンパク質の合成方法。
(c)緩衝溶液中に含まれるトリエタノールアミン濃度が40mM以下
(d)同様にスクロース濃度が0.2M以下
(6)以下の(e)および/または(f)を含有する緩衝溶液中に調製された細胞性膜組成物を添加することを特徴とする、(1)に記載のタンパク質の合成方法。
(e)両性イオン緩衝液成分
(f)糖アルコール類またはトレハロース
(7) 無細胞タンパク質合成に用いる抽出液が、植物由来、動物由来、もしくは菌由来であることを特徴とする、(1)に記載のタンパク質の合成方法。
(8) 無細胞タンパク質合成に用いる抽出液が、コムギ胚芽由来であることを特徴とする、(7)に記載のタンパク質の合成方法。
(9) 無細胞タンパク質合成に用いる抽出液が、タンパク質合成阻害因子の混入が少ない方法で調製されたことを特徴とする、(8)に記載のタンパク質の合成方法。
(10) 膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質が、分泌タンパク質、細胞内小器官局在タンパク質、膜タンパク質であることを特徴とする、(1)に記載に生理活性を有するタンパク質の合成方法。
(11) 生理活性が、酵素活性、リガンド−リセプター相互作、アフィニティー、抗原−抗体反応、細胞増殖・分泌促進・アポトーシス誘導、細胞形態に及ぼす影響、細胞成分の局在に及ぼす作用であることを特徴とする(1)に記載のタンパク質の合成方法。
(12) (1)〜(11)の方法に従って合成したタンパク質を、膜画分を分離することなしに、反応液を用いてタンパク質の機能および/または構造を解析する方法。
(13) (1)〜(12)の方法に従って合成したタンパク質を、合成後、膜画分を分離し、タンパク質の機能および/または構造を解析する方法。
(14) 解析の前に、界面活性剤で処理することを特徴とする、(12)、(13)に記載のタンパク質の機能および/または構造を解析する方法。
(15) (1)〜(14)に記載の方法に用いるための試薬類、キット。
(16) (1)〜(15)に記載の方法に従って合成された、タンパク質。
本発明により、ウサギ網状赤血球無細胞タンパク質合成系以外の、特にコムギ胚芽無細胞タンパク質合成での生理活性を有する「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成の効率が著しく向上した。本発明の方法で得られた「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」は活性が高く、また、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いることができるようになったことから、反応後のクルードな溶液を活性測定に用いることができるようになり、従来法に比べ、簡便かつ確実な結果が得られる。
本発明は、無細胞タンパク質合成法を用いる「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法であって、以下の(a)および(b)の条件を満たす無細胞タンパク質試薬に、細胞性膜成分を添加することを特徴とする生理活性を有するタンパク質の合成方法である。
(a)グルタチオン成分を2mM以上の濃度で含有しない
(b)還元剤を0.2mM以上の濃度で含有する
ここでいう、生理活性を有するとは、タンパク質が膜上へ正しく標的化されること、もしくは膜上もしくは内に標的化された後、ジスルフィド結合や糖鎖付加などの翻訳後修飾を受けることにより活性を発現することを意味する。具体的には、酵素活性やバインディングアッセイ、増殖誘発活性、アポトーシス誘導活性、細胞の形態変化誘発活性など、何らかの方法でその活性を測定できる活性のことを示す。
ここでいう、膜構造体とは、具体的には細胞性膜成分のことを意味し、さらに具体的には小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソーム、グリオキシソーム、ミクロソーム、細胞膜等の膜構造体を示す。
ここでいう膜構造体上へ標的化されるとは、膜に埋まり込む、または膜表面に存在するということ意味している。タンパク質の種類としては、膜タンパク質を挙げることができる。膜タンパク質の多くは、N末端にシグナル配列と呼ばれる疎水性に富んだ配列を有しており、細胞質中でSRP(シグナル認識粒子)により認識され、小胞体へ運ばれる。運ばれたタンパク質は、N末端から小胞体中へ陥入し、最終的に小胞体の膜上に存在するようになる。膜タンパク質の種類によっては、一回以上膜を貫通するものの存在する。細胞膜へ局在化する膜タンパク質は、小胞体からゴルジ体を経て、細胞膜へ移動する経路が知られている。シグナル配列は、最終的にシグナルペプチダーゼの作用により切除されるものが多い。
膜構造体内へ標的化されるとは、たとえば小胞体やミクロソーム内へ存在するようになるということである。これらのタンパク質もN末端にシグナル配列を有しているものが多く、細胞質中でSRP(シグナル認識粒子)により認識され、小胞体へ運ばれる。それらのタンパク質はジスルフィド結合や、糖鎖修飾などを受けた後、ゴルジ体へ運ばれ、最終的に細胞外へ分泌されるものや、リソソームなどの細胞内小器官へ輸送されるものが多い。
ジスルフィド結合の形成は、大腸菌などの原核生物では原形質内層(エンドプラズム)で、真核生物では小胞体で行われる。これらの内部は、細胞質が還元的環境にあるのに対して、酸化的に保たれているのが特徴である。実際には、大腸菌はDsbAやC、真核生物ではPDF(プロテインジスルフィドイソメラーゼ)などの作用によってジスフフィド結合は形成される。ジスルフィド結合の形成は、酸化的環境でタンパク質が合成されるだけでは不充分であり、膜の透過に続いて、上に述べたようなタンパク質成分などが総合的に作用することにより、正しいジスルフィド結合が形成され、活性を示すようになると考えられている。
タンパク質の糖鎖修飾は、主に真核生物で起こる代表的な翻訳後修飾である。最初に、小胞体で糖鎖を付加され、続いてゴルジ体へ移行し成熟型糖鎖へと変換される経路が一般的である。この反応についても中心的な役割を果たすのが、小胞体である。
従来技術の項でも述べたが、無細胞タンパク質合成においては、小胞体の断片であるミクロソームがこれらの反応の場として使用されてきた。特に、イヌ膵臓由来のミクソソームはPromega社などからも市販されており、膜タンパク質のトランスロケーションの研究を中心に使用されてきた。
しかし、合成したタンパク質の生理活性に関して研究された例は思うほど多くない。また、それらの報告は、ウサギ網状赤血球の無細胞タンパク質合成系にイヌ由来ミクロソームを添加し、非還元条件もしくは酸化グルタチオン(GSSG)を添加した条件にて合成したタンパク質の事例のみである。また、ウサギ網状赤血球無細胞系以外で合成した「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」を用いて、その生理活性を測定した事例はほぼ皆無である。
ここでいうグルタチオン成分は、主に酸化型グルタチオン(GSSG)として添加され、DTT等の還元性を打ち消すために用いられるものである。今までの報告では、2〜3mMの濃度で使用される場合が最も多く、DTTを含有する溶液中に添加されることで、一部還元型グルタチオン(GSH)へ変換されていると思われる。請求項には、代表的な物質としてグルタチオンを記載したが、システインの二量体であるシスチンなども同様の用いることができるため、シスチンを含有しないことも同様に本発明の範囲に含めることができると考えられる。本願では、グルタチオンおよびシスチンを合わせてグルタチオン成分と呼称する。
本発明において、無細胞タンパク質合成反応液は、2mM以上の濃度でグルタチオン成分を含まない。ここでグルタチオン成分としたのは、還元剤を含有する溶液に酸化型グルタチオンを添加した場合、一部が還元型となり、明確にどちらかを定義することが困難になるからである。
グルタチオンの検出方法としては、グルタチオンレダクターゼ、NADPH存在下でジスルフィドとのチオール−ジスルフィド交換反応を利用する方法が知られている。
還元剤として、好ましくは、ジチオスレイトール(DTT)や、2−メルカプトエタノールなどから選択される還元剤を含有する。その無細胞タンパク質合成溶液中での濃度は、0.2mM以上、好ましくは0.2〜20mM、更に好ましくは1〜10mM、最も好ましくは2〜5mMが用いられる。もっとも好ましくはDTTを含有する。
さらに、本発明は細胞性膜成分を用いることを特徴としている。細胞性膜成分としては、小胞体成分が好ましく用いられるが、小胞体成分を中心とする画分は、ミクロソーム画分を中心とする画分であることが好ましい。ここでミクロソームとは、組織のホモジネートから、遠心および超遠心分離することで沈殿として回収できる画分で、小胞体が細胞の破砕によってちぎれてできたものが主成分である。ミクロソームは動物の臓器由来のものが好ましいが、この他、酵母由来のミクロソーム画分を、本発明の小胞体成分として用いることも可能である。これに加えて、細胞中の小器官であるミクロボディー画分を使用することもできる。細胞由来のミクロボディー画分である、ペルオキシソームやグリオキシソーム等の器官を、同様の目的に使用することが可能であると考えられる。本発明で使用可能なミクロソームの由来を列挙すると以下のようになる。動物膵臓由来ミクロソーム膜成分、動物卵管由来ミクロソーム膜成分、動物肝臓由来ミクロソーム膜成分、動物由来ペルオキシソオーム、酵母由来ミクロソーム膜成分、植物種子由来ミクロソーム成分、植物由来ペルオキシソーム膜成分、植物由グリオキシソーム膜成分である。この中で最も好ましくは、イヌ膵臓由来ミクロソームが用いられる。
イヌの由来としては、特に限定されないが、好ましくは系統が純系化されているもの。好ましくは、ビーグル犬が好ましい。
イヌ膵臓由来ミクロソームは、市販品を用いることもできるが、好ましくは、無細胞タンパク質合成システム用にさらに至適化されたものを用いることが好ましい。
好ましくは、緩衝溶液中に含まれるトリエタノールアミン濃度が40mM以下、スクロース濃度が0.2M以下の緩衝液中に調製された細胞性膜画分をもちいることが好ましく。より好ましくは、トリエタノールアミン濃度が10mM以下、スクロース濃度が0.1M以下、最も好ましくはトリエタノールアミン、スクロースを含有しない緩衝液を用いる。この理由は、トリエタノールアミンおよびスクロースが、無細胞タンパク質合成を阻害するからである。また更に、これらの物質はミクロソームの糖鎖付加等の活性をも阻害する場合があるからである。
よって、本発明に用いる細胞性膜画分は、トリエタノールアミンの代わりに両性イオン緩衝液成分、スクロースの代わりに糖アルコール類またはトレハロース成分を含むことが好ましいといえる。
両性イオン緩衝液成分としては、グッドの緩衝液が好ましく用いられ、更に好ましくは2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)が用いられる。使用するHEPESの濃度としては、5〜500mMが好ましく用いられ、更に好ましくは10〜250mMが好ましく用いられる。また、pHとしては、6.8〜8.2が好ましく、7.4〜7.8が更に好ましく、7.6が最も好ましく用いられる。(グッドバッファーのpHは、25℃で調整するのが好ましい)。
糖アルコールとしては、ソルビトール、イノシトール、キシリトールが好ましく用いられる。更に、好ましくは、ソルビトールが用いられる。ソルビトールの濃度としては、0.2〜4Mが好ましく用いられ、0.3〜2Mが更に好ましく用いられる。
無細胞タンパク質合成に用いられる、抽出液の由来は特に限定されないが、植物由来、動物由来、もしくは菌由来であることが好ましい。更に好ましくは、コムギ胚芽由来、最も好ましくは、タンパク質合成阻害因子が少ないことを特徴とする方法((Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(2),559−564(2000))を用いる。この方法に従って調製した無細胞タンパク質合成試薬は、東洋紡績(株)からPROTIEOSTM Cell−free protein synthesis kitとして販売されている。
また、無細胞タンパク質合成方法は、従来行われてきたバッチ法、重層法((FEBS Letter 514, 102−105(2000))、透析法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(2),559−564(2000))を用いることが出来、特に限定されない。重層法、透析法は共に、タンパク質合成時に必要とされるATP、GTG、やアミノ酸などの低分子物質を、タンパク質反応液に断続的に供給することにより、無細胞タンパク質合成の効率を向上させる方法である。重層法は、反応層の上にATP、GTG、やアミノ酸を含むバッファー層を重層することにより、それらが拡散で徐々に交じり合うことで、それらの物質が供給されることを原理としている。また透析法は、透析膜を介してATP、GTG、やアミノ酸などを供給すると共に、副生成物を除去することで、数日にわたり無細胞タンパク質合成を続けることができる。これらの方法を用いることにより、高収量でタンパク質を合成できるので、本発明において好ましくは、機能解析には重層法が、構造解析には透析法が適しているといえる。
無細胞タンパク質合成法に用いる温度は、通常無細胞タンパク質合成に用いられる温度であれば、特に限定されない。通常、20℃〜30℃が好ましく行われる。コムギ胚芽抽出液を用いる方法では、20℃〜26℃が好ましく。更に好ましくは、23〜26℃が用いられる。網状赤血球、大腸菌由来の抽出液を用いる場合は、30℃がもっとも好ましく行われる
また、本発明で重要なのは、上にも何度か述べたが、無細胞タンパク質合成を還元条件下で行うことである。無細胞タンパク質合成は一般的には還元条件下で行われることは、公知であり、ミクロソーム等の細胞性膜成分を添加する場合も還元条件下で行われることも報告されている。しかし、合成されたタンパク質の生理活性を測定した報告は、ほぼすべて酸化型グルタチオンを反応系に加えたウサギ網状赤血球抽出液を用いた無細胞タンパク質合成系のみであり、特にコムギ胚芽抽出液を用いるタンパク質合成系で生理活性を測定した例は、酸化型グルタチオンを添加する系においても皆無である。
上にも示したように、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成システムは近年注目を浴びつつある。それにも関わらず、細胞性膜成分を添加し「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」を合成し、その活性を測定した例が全く存在しないのは、一つは、酸化的条件下で合成する方法が一般化していたため、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成においてもそれを適用した結果、思わしくない結果しか得られなかったことが考えられる。また、今まで高効率コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系や、無細胞タンパク質合成液中でより高い活性を有する細胞性膜成分の調製方法がなかったため、それらの検討がなされなかった可能性もある。よって、本発明はこれらの条件をすべて整えることができたことにより達成されたとも言えるのではないかと思われる。
発明者らのヒトTissue−type plasminogen activator (t−PA)およびβ−Hexosaminidase Bをコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて発現させ、活性を測定した検討では、還元的条件で行った方が、合成されたタンパク質は明らかに有意に高い活性を有していることが確認された(図3、4)。t−PAを用いた検討では、2.5mMDTT>2.5mMDTT+2.5M GSSG>無添加>2M GSSGという結果である。この結果は、ウサギ網状赤血球抽出液無細胞タンパク質合成系を用いた検討において、還元条件下で合成したこれらのタンパク質の活性がほぼ検出できないことを考えると、驚くほど逆の結果であることが分かる。しかし、元来、細胞質は還元状態であり、無細胞タンパク質合成はそれを反映しているはずであることを考えると、今回の結果の方がより自然であると考えることができる。
また、今回の検討では、t−PAの活性を膜画分の精製なし測定することに成功している。このようなクルード系での活性測定は、今までの報告では皆無で、コムギ胚芽中に夾雑タンパク質が少ないという性質に起因していると考えることができる。これは、今回の発明がなければ成しえなかった解析法の一つであると思われる。
今回、生理活性を有する膜上に標的化されるタンパク質(膜タンパク質)に関しては具体的に示していないが、既に本発明を用いて数種の膜タンパク質が合成でき、糖鎖修飾を受けることも確認しており、上に示したタンパク質同様に生理活性を有していることが容易に推察できる。
また今回、一連の実験は、自家調製したイヌ膵臓由来ミクロソームを用いたが、市販のイヌ膵臓由来ミクロソームを用いても、効率は異なるが、傾向はほぼ同じであると推察される。
本発明でいう「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」とは、分泌タンパク質、細胞内小器官局在タンパク質、膜タンパク質などを指す。
本発明でいう生理活性とは、特に活性として測定できるものであれば特に限定されないが、酵素活性、リガンド−リセプター相互作、アフィニティー、抗原−抗体反応、細胞増殖・分泌促進・アポトーシス誘導、細胞形態に及ぼす影響、細胞成分の局在に及ぼす作用などのことを指す。
この後、本発明の方法を用いて、今まで解析の困難とされてきた分泌性タンパク質や、細胞小器官局在性タンパク質、膜タンパク質などの、機能解析が効果的かつハイスループット化されることが考えられる。具体的には、リセプターのリガンドの探索、医薬品ターゲットのスクリーニングなどの用途に広く使われる可能性が考えられる。さらに、構造解析にも応用されることも十分応用されることが考えられる。
以下に本発明の実施例をあげることにより、本発明による効果をより一層明瞭なものとする。ただし、これらの実施例によって本発明の範囲は限定されるものではない。
実施例1:細胞性膜組成物調製用の緩衝溶液の調製
細胞性膜組成物調製用の緩衝溶液の調製方法について以下に示す。
(1)238gのHEPESを滅菌水に溶解し、1モル/リットル濃度の水酸化カリウム溶液でpHを7.5に調製する。その後滅菌水で1リットルにし、HEPESの1モル/リットル溶液とする。使用時に、必要な濃度に調製して使用する。
(2)182gのソルビトールをはかりとり、滅菌水に溶解し500mlとする。これを2モル/リットルのソルビトール溶液とし、使用時に必要な濃度に調製して使用する。
これらの溶液をベースにして、以下の緩衝液系を調製し、使用した。
実施例2:小胞体成分(ミクロソーム画分)の調製
(1)イヌ(ビーグル犬)から摘出した膵臓を氷冷した調製液A(50mM−HEPES, pH7.5、50mM−酢酸カリウム、6mM−酢酸マグネシウム、1mM−エチレンジアミン四酢酸、1mM−ジチオスレイトール、0.5mM−フェニルメタンスルホニルフルオリド、0.25M−ソルビトール)で洗浄し、重量を測定した後細かく切断した。
(2)膵臓の重量に対して四倍量の上記調製液Aを加えてよくホモジナイズした。この溶液を、 約1,000×gで10分間遠心分離し上清を集めた。この上清を約10,000×gで10分間再度遠心分離し、同様に上清を集めた。
(3)この上清溶液を遠心管に入れ、1/3容量の調製液B(ソルビトール濃度を1.3Mとした以外は調製液Aと同じ組成のもの)を遠心管の底に重層し、140,000×gで2.5時間遠心分離した。
(4)沈澱物を集め、上記(2)の膵臓の重量と等量の調製液C(50mM−HEPES, pH7.5、1mM−ジチオスレイトール、0.25M−ソルビトール)に懸濁し、よくホモジナイズした。この溶液を少量とって1%−SDS溶液を用いて希釈し、OD280値を測定した。この時、OD280値が40ODよりも濃い場合は上記調製液Cで40OD濃度となるように希釈した。逆に40ODよりも薄い場合は、(3)に記載の方法で再度超遠心分離し、より少量の調製液Cで懸濁した。
(5)この溶液に対し等量の調製液D(調製液Cに50mM−EDTAを添加したもの)を加え、4℃で15分おいた。
(6)この溶液を遠心管に入れ、1/3容量の調製液E(ソルビトール濃度を0.5Mとした以外は調製液Cと同じ組成のもの)を遠心管の底に重層し、140,000×gで1時間遠心分離した。
(7) 沈澱物を集め、上記(4)で調製した溶液の半量の調製液Cに懸濁し、よくホモジナイズした。この溶液を少量とって1%−SDS溶液を用いて希釈し、OD280値を測定した。この時、OD280値が40ODよりも濃い場合は調製液Cで40OD濃度となるように希釈した。逆に40ODよりも薄い場合は、(6)に記載の方法で再度超遠心分離し、より少量の調製液Cで懸濁した。
このようにして調製した細胞性膜組成物を、無細胞タンパク質合成に使用した。
実施例3: ヒトTissue−type plasminogen activator (t−PA)およびβ−Hexosaminidase B遺伝子のクローニング、および無細胞タンパク質合成用mRNAの調製
ヒトβ−HexosaminidaseおよびB Tissue−type plasminogen activator (t−PA)遺伝子の配列は既に公知であり、データベースより配列を元にPCR増幅用プライマーを合成した。β−Hexosaminidase Bの増幅は、配列番号1、2、t−PAの増幅は、配列番号3、4に示すプライマーを用い、KOD −Plus−(東洋紡績製)を用い、取扱い説明書に従って増幅した。増幅産物を精製した後(MagExtractor −PCR&Gel Clean Up−:東洋紡製使用)、β−Hexosaminidase B増幅産物をSalIで、t−PA増幅産物をBamHIに消化し、それぞれpEU3−NIIベクター(東洋紡製)の、EcoRV−SalI、EcoRV− BamHIサイトへ挿入し、pEU−BHMB、およびpEU−t−PAを取得した。プラスミドは、大腸菌JM109を形質転換し、調製した。具体的には、QIAGEN社のプラスミド精製キットを用いて精製した後、フェノール・クロロホルム処理を行い、更に精製したものを用いた。mRNAの合成は、調製したプラスミドを鋳型としてThermo T7 RNAポリメラーゼ(東洋紡製)を用い、取扱い説明書に従って行った。合成後、G−25マイクロスピンカラム(アマシャムバイオサイエンス社製)を用いてゲル濾過精製(滅菌水)を行った後、1μg/μlに調整した。
実施例4:無細胞タンパク質合成によるヒトβ−Hexosaminidase B およびTissue−type plasminogen activator (t−PA)の合成
上記実施例3で調製したmRNAを用いて、無細胞タンパク質合成を実施した。無細胞タンパク質合成には、高効率コムギ胚芽無細胞タンパク質合成キット「PROTEIOSTM」(東洋紡製)を用い、取扱い説明書に記載してある重層法に従って合成反応を行った。このキットは、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96(2),559−564(2000)に記載の方法に従って調製されたものである。この検討において細胞性膜組成物(40 OD)を反応系あたり15%になるように添加し、検討を行った。ここでいう反応系とは、重層法の下層の反応液のことである。ただ、取扱い説明書に記載してある濃度のmRNA(Buffer mix中に調製)を用いると方法に従うと容量がオーバーしてしまうため、mRNAとして1μg/μl(滅菌水中に調製)のものを使用し、最終組成が同一になるよう調整を行った。また、この検討では、還元剤等の濃度を変える必要があったため、基本的に反応バッファーはProc.Natl.Acad.Sci.USA 96(2),559−564(2000)、FEBS Letter 514, 102−105(2000)に記載してある反応組成を参考にした。これらの文献に従うと、還元剤DTTの最終濃度は、約2.5mMとなる。また、コムギ胚芽抽出液に含有される還元剤(最終濃度約0.13 mM)については、少量のため、無視することができると考えて実験を進めた。その他の条件等は、キットの取扱い説明書および上記文献に忠実に従って行った。無細胞タンパク質合成反応は、ポリスチレン製96穴プレートを用い、26℃にて約16時間行った。
実施例5:酵素活性測定前処理
無細胞タンパク質合成後のサンプルの前処理は、以下の方法に従って実施した。β−Hexosaminidase Bの前処理は、J. Biol. Chem. 263(26) 13463−13469 (1988)に従って実施した。具体的には、サンプル10μlをBufferA(20mM NaHPO、12mM citric acid, 0.1% Nonidet−P40(pH4.4))90μlに溶解し、51℃、2時間インキュベートした後、15,000r.p.m.にて10分間遠心分離を行った。その上清をサンプルとして活性測定を実施した。
t−PAも合成後同様に前処理を実施した。具体的には、合成終了液10μlを90μlのPBS(−)、0.01%Tween80に添加し、氷上で10分間以上放置し、その上清を活性測定用サンプルとして用いた。
t−PAの合成後、膜画分の精製も実施した。この操作はBiochem. J 286,275−280(1992)に従い行った。具体的には、ショ糖密度勾配遠心用溶液(0.5M ショ糖、100mM KCl、50mM HEPES(pH7.6))500μlを1.5ml超遠心チューブに添加し、その上に反応終了液100μlを重層した後、150,000r.p.m.で20分間遠心した。遠心後、沈殿を75μlのPBS(−), 0.01%Tween80溶液で溶解し、活性測定用サンプルとして使用した。
実施例6:ヒトβ−Hexosaminidase B およびTissue−type plasminogen activator (t−PA)の活性測定
ヒトβ−Hexosaminidase Bの活性は、J. Biol. Chem. 263(26) 13463−13469 (1988)に従って行った。具体的には、1.2mM 4−Methylumbeliferyl−N−acetyl−β−D−glucosaminide dihydrate (4−MU−GluNAc) (シグマ製)/ Buffer A 50μlに前処理液を10μl添加し、37℃で約1時間反応させた後、10倍量の0.17M NaCO(pH 10.0)を添加し、蛍光を測定した(励起波長:355nm、測定波長:460nm)。
t−PAの活性の測定は、ANGIOPHARM社のAngioSence Human tPA Chromogenic Activity Assay Kitを用いて行った(参考文献:J. Clin. Invest. 88, 1067 (1991))。測定原理は、t−PAによりプラスミノーゲンを活性化し、そのプロテアーゼ活性を合成基質を用いて比色定量することによる。具体的には、Assay diluent 10μl、Fibrinogen Fragments 10μl、Plasminogen 10μlと活性測定用サンプル10μlを混合し、37℃で約30分間加温した後に、Plasmin substrate 20μlを添加し、37℃で約30分間し、その405nmの吸収を測定した。
図1に反応終了液をサンプルとした場合の、ヒトβ−Hexosaminidase Bの活性の測定結果を示した。図からも理解できるように、無細胞タンパク質合成液中に約2.5mMの濃度でDTTが存在する条件で合成したものに強い活性を認めることができた。還元状態が弱くなるに従い、活性が低くなる傾向が見られた。
図2には、反応終了液をサンプルとした場合のヒトt−PAの活性の測定結果を示した。図からもわかるように還元条件での合成時のみ強い活性が確認されている。また、クルードな反応終了液を用いたt−PAの活性測定例は今まで報告されておらず、これは、コムギハイガ無細胞タンパク質合成系を用いたことで可能になったものと推察される。
図3、図4には、ショ糖密度勾配遠心して膜画分を精製したサンプルを用いた活性測定例を示した。何れも還元条件で合成したt−PAの活性が有意に高く、多くの文献で用いられているDTTを打ち消すためにGSSGを添加したものや、−DTTなどでは、やはり還元条件で得られたタンパク質よりも活性が発現しにくい傾向にあった。
本発明の方法は、今まで無細胞タンパク質合成で生理活性を有する形で合成困難とされてきた分泌性タンパク質や、細胞小器官局在性タンパク質、膜タンパク質などの、機能解析を効果的かつハイスループット化するのに有用である。具体的には、リセプターのリガンドの探索、医薬品ターゲットのスクリーニングなどの用途に広く使われる可能性が考えられる。さらに、構造解析にも応用されることも十分応用されることが考えられる。「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の解析は、創薬等の観点から大変重要視されているにも関わらず、通常の細胞質に存在するタンパク質に比べて解析が遅れているのが現状である。今後、本方法を用いることにより、「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の解析が容易に実施可能になることは産業界に寄与できるところが大きいと考えられる。
合成したヒトβ−Hexosaminidase Bの活性測定結果を示す図。縦軸に蛍光強度(酵素活性)を示す。β−Hexosaminidase B mRNAおよびミクロソーム画分の無細胞タンパク質合成反応液への有無と、無細胞タンパク質合成反応液中への酸化・還元剤の添加(+DTT:2.5mM DTT、−DTT:0mM DTT、+GSSG:2mM GSSG)の合成タンパク質の生理活性(酵素活性)との相関を示す。(0mM DTTは正確には、コムギ胚芽抽出液から若干の持ち込みがあるが、0.2mM未満であり、無視できると判断した)(図中、左から、+mRNA−Microsome、+mRNA+Microsome、−mRNA+Microsomeの順で表示) 合成したTissue−type plasminogen activator (t−PA)の活性測定結果を示す図。縦軸に発色(酵素活性)を示す。Tissue−type plasminogen activator (t−PA) mRNAおよびミクロソーム画分の無細胞タンパク質合成反応液への有無と、無細胞タンパク質合成反応液中への酸化・還元剤の添加(+DTT:2.5mM DTT、−DTT:0mM DTT、+GSSG:2mM GSSG)の合成タンパク質の生理活性(酵素活性)との相関を示す。(0mM DTTは正確には、コムギ胚芽抽出液から若干の持ち込みがあるが、0.2mM未満であり、無視できると判断した)(図中、左から、+mRNA−Microsome、+mRNA+Microsome、−mRNA+Microsomeの順で表示) 合成したTissue−type plasminogen activator (t−PA)の分離膜画分における活性測定結果を示す図。縦軸に蛍光強度(酵素活性)を示す。Tissue−type plasminogen activator (t−PA) mRNAおよびミクロソーム画分の無細胞タンパク質合成反応液への有無と、無細胞タンパク質合成反応液中への酸化・還元剤の添加(+DTT:2.5mM DTT、+GSSG:2mM GSSG)の合成タンパク質の生理活性(酵素活性)との相関を示す。(図中、左から、+mRNA+Microsome、−mRNA+Microsomeの順で表示) 合成したTissue−type plasminogen activator (t−PA)の分離膜画分における活性測定結果を示す図。縦軸に蛍光強度(酵素活性)を示す。Tissue−type plasminogen activator (t−PA) mRNAおよびミクロソーム画分の無細胞タンパク質合成反応液への有無と、無細胞タンパク質合成反応液中への酸化・還元剤の添加(+DTT:2.5mM DTT、+DTT+GSSG:2.5mM DTT+2.5mM GSSG、−DTT:0mM DTT)の合成タンパク質の生理活性(酵素活性)との相関を示す。(0mM DTTは正確には、コムギ胚芽抽出液から若干の持ち込みがあるが、0.2mM未満であり、無視できると判断した)(図中、左から、+mRNA+Microsome、−mRNA+Microsomeの順で表示)

Claims (16)

  1. 無細胞タンパク質合成法を用いる「膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質」の合成方法であって、以下の(a)および(b)の条件を満たす無細胞タンパク質試薬に、細胞性膜成分を添加することを特徴とする生理活性を有するタンパク質の合成方法。
    (a)グルタチオン成分を2mM以上の濃度で含有しない
    (b)還元剤を0.2mM以上の濃度で含有する
  2. 還元剤としてジチオスレイトール(DTT)または2−メルカプトエタノールを用いることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
  3. 細胞性膜成分が、動物由来もしくは植物由来であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
  4. 細胞性膜成分が、イヌ膵臓由来ミクロソームであることを特徴とする請求項4に記載のタンパク質の合成方法。
  5. 以下の(c)および/または(d)の構成からなる緩衝溶液中に調製された細胞性膜組成物を添加することを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
    (c)緩衝溶液中に含まれるトリエタノールアミン濃度が40mM以下
    (d)同様にスクロース濃度が0.2M以下
  6. 以下の(e)および/または(f)を含有する緩衝溶液中に調製された細胞性膜組成物を添加することを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
    (e)両性イオン緩衝液成分
    (f)糖アルコール類またはトレハロース
  7. 無細胞タンパク質合成に用いる抽出液が、植物由来、動物由来、もしくは菌由来であることを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
  8. 無細胞タンパク質合成に用いる抽出液が、コムギ胚芽由来であることを特徴とする、請求項7に記載のタンパク質の合成方法。
  9. 無細胞タンパク質合成に用いる抽出液が、タンパク質合成阻害因子の混入が少ない方法で調製されたことを特徴とする、請求項8に記載のタンパク質の合成方法。
  10. 膜構造体上もしくは内に標的化されるタンパク質が、分泌タンパク質、細胞内小器官局在タンパク質、膜タンパク質であることを特徴とする、請求項1に記載に生理活性を有するタンパク質の合成方法。
  11. 生理活性が、酵素活性、リガンド−リセプター相互作、アフィニティー、抗原−抗体反応、細胞増殖・分泌促進・アポトーシス誘導、細胞形態に及ぼす影響、細胞成分の局在に及ぼす作用であることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の合成方法。
  12. 請求項1〜11の方法に従って合成したタンパク質を、膜画分を分離することなしに、反応液を用いてタンパク質の機能および/または構造を解析する方法。
  13. 請求項1〜12の方法に従って合成したタンパク質を、合成後、膜画分を分離し、タンパク質の機能および/または構造を解析する方法。
  14. 解析の前に、界面活性剤で処理することを特徴とする、請求項12、13に記載のタンパク質の機能および/または構造を解析する方法。
  15. 請求項1〜14に記載の方法に用いるための試薬類、キット。
  16. 請求項1〜15に記載の方法に従って合成された、タンパク質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2007048459A1 (en) * 2005-10-28 2007-05-03 Max-Planck Gesellschaft zur Förderung der Wissenschaften e.V. Cell-free in vitro transcription and translation of membrane proteins into tethered planar lipid layers

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