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JP2005035945A - 組織再生複合療法 - Google Patents

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芳樹 澤
Satoru Takeya
哲 竹谷
Shigeru Miyagawa
繁 宮川
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Abstract

【課題】
臓器移植および医療機器での補助システムを全く使用することなく、損傷した生物組織を治療すること。
【解決手段】
本発明は、生物の器官の組織を再生するためおよび疾患を治療するための組成物およびキットを提供する。この組成物は、細胞生理活性物質および細胞を、心臓への移入に適した形態で含む。このキットは、細胞生理活性物質、細胞および指示書を備える。本発明はまた、生物の器官の組織を再生するための方法および疾患を治療する方法を提供する。この方法は、細胞生理活性物質を提供する工程および細胞を提供する工程を包含する。本発明により、臓器移植および医療機器での補助システムを全く使用することなく、損傷した生物の器官の組織を再生することが可能になった。従って、本発明を利用することにより心筋梗塞、拡張型心筋症のような難治性疾患を治療することができる。
【選択図】 なし

Description

本願発明は、細胞移植併用療法(「combined regenerative therapy」)の分野に関する。より詳細には、細胞生理活性物質(例えば、サイトカイン、細胞増殖因子など)と細胞移植を組み合わせて用いて生物の臓器または器官(例えば、心臓、脳、肺など)の組織を再生させる方法および心疾患を治療する方法ならびにそれを実現するための組成物およびキットなどに関する。以下に発明の詳細な説明を記載する。
再生医学を利用した疾患治療の発展には、近年目を見張るものがある。しかし、臓器移植を必要とする疾患に対して利用されるまでには至っていない。従って、そのような疾患の治療として、臓器移植のほか、医療機器での補助システムを利用することが現在行われている。しかし、これらの処置には、ドナー不足、拒絶、感染、耐用年数などの問題がある。
例えば、心臓外科の分野において、上記事情は同様である。心不全治療の医学的、外科的な処置においては近年目を見張る進展がある。しかし、末期心不全、特に虚血が原因のものは、世界的にも未だ主要な死因である。心臓移植(非特許文献1)および医療機器での補助システム(LVAS)移植(非特許文献2)は、これら患者を補助する究極の助命手段として充分に認知されている。しかし、これらの処置には、ドナー不足、拒絶、心臓移植に関する感染(非特許文献3)、LVASの耐用年数のような制限がある。例えば、米国では年間約7万例の心臓移植対象者がいるが、移植例はここ数年間わずか2000例にとどまっている。また、日本でも臓器移植法施行後、脳死者からの心臓移植が行われているが、数十例にとどまっており、実用的な処置法にはほど遠い。
分子生物学の近年の進歩により、生物の器官を修復する試みがなされている。例えば、心臓機能損傷を回復するための新たなアプローチが提供されている(非特許文献5)。しかし、この方法には、問題がいくつか残存している。細胞が移植されてもその部位に十分な生着をえるのは困難である。さらに、心筋細胞等が注射によって移植されても、心筋梗塞に陥った部位をこの細胞によっては再生することはできない。また、移植されたばらばらの細胞が細胞間接着を再構築し、心臓組織形態に変化するか不明である。
細胞を移植して組織を再生させる試みも行われている。例えば、心筋細胞またはその前駆細胞(組織幹細胞)に特定の遺伝子を導入して移植に適した細胞にする治療法の開発が試みられているが、いまだに実用レベルには達しておらず、移植した細胞が損傷を受けた心臓組織を再生させるまでには至らない。このような状況は、脳細胞、骨格筋細胞などでも同様であり、実用化には程遠い。
他方、細胞生理活性物質(例えば、サイトカイン、細胞増殖因子など)が注目されている。細胞生理活性物質(例えば、サイトカイン、細胞増殖因子など)は、免疫系、造血系、内分泌系、神経系などの生体の種々の高次機能を維持する上で重要な生理活性物質である。その多機能性を利用して、臨床応用が試みられている。例えば、貧血治療のためにエリスロポエチン(EPO)が用いられている。しかし、本発明者らの知る限り、サイトカインのような細胞生理活性物質を再生医療に利用することに成功したという報告はなされていない。
心臓組織の再生についても、EPO、インターロイキンのような細胞生理活性物質は、単独で心臓組織の再生に効果があるという報告はない。細胞生理活性物質が心臓再生に効果の可能性を記載する報告においても、完全な再生を達成したものはない。心臓再生を必要とする疾患または障害に本格的に利用することができるものは皆無である。
このように、従来の内科的、外科的治療により改善しない重症心不全に対する現在の治療方法は補助人工心臓と心移植であるが、現段階では前者はその耐久性に、後者はドナーの確保に問題があり、すべての症例に対する普遍的治療と言いがたいのが実情である。
拡張型心筋症(DCM)等の重症心不全または難治性心不全に対する治療の一選択肢として、細胞移植、遺伝子治療などの研究が行われており、いずれも心機能がある程度改善したという報告がある。しかし、DCMの治療には、線維化の抑制、脱落した心筋細胞の補填、および心筋細胞骨格の修復が重要であるが、これらに有効な治療法は報告されていない。
DCMは5年生存率が40%程度との報告もあるが、ACE阻害剤やβ遮断薬などの進歩により、その予後は改善しつつある。しかし、薬剤抵抗性の難治性心不全を呈した場合補助人工心臓と心移植しか治療法がないのが実情である。
このように、DCMを含む難治性心不全については、根本的な治療法が無いのが問題であり、しかも、心臓移植適応除外症例(たとえば、高齢者、透析症例など)の場合は、心臓移植の代替治療が不可欠である。そのような代替治療としてBatista手術が試みられたが、代替治療になり得ないことが報告されている(非特許文献35)。また、心臓移植治療において補助人工心臓のブリッジ使用も試みられているが、処置自体に技術を要するものであることから、やはり代替治療が必要となることが予想される。従って、新たな内科的治療の展開が期待されている。
「心臓移植」とは、脳死患者(ドナー)などから得た心臓を患者(レシピエント)に移植する手術をいい、心疾患の最後の治療法として注目されている。しかし、心臓移植のレシピエントは、従来の治療法では救命または延命の期待が望めない重症心疾患患者に適用されている。特に、適応症としては、たとえば、拡張型心筋症、拡張相肥大型心筋症、虚血性心疾患、その他学会など当該分野において承認された心疾患が対象とされている。適応症としての条件としては、長時間または反復した入院治療が必要であり、β遮断薬およびACE阻害薬などの薬物療法がNYHA(ニューヨーク心臓協会分類)III〜IVから改善しない症例、および現存するいかなる治療法でも無効な致死性重症不整脈を有する症例などが挙げられる。
ただし、心機能改善によっても生命予後の改善が期待できないと考えられる状態の患者は除外されており、また、以下のような絶対的除外条件がある:(1)肝臓、腎臓などの不可逆的機能障害、(2)活動性感染症、(3)肺高血圧症、(4)薬物依存、(5)悪性腫瘍、(6)HIV抗体陽性など。また、相対的除外要件として、たとえば、(1)肝臓、腎臓の機能障害、(2)活動性消化性潰瘍、(3)インスリン依存性糖尿病、(4)精神神経症、(5)肺拘束症の既往歴、肺血管閉塞病変、(6)膠原病などの全身性疾患などが挙げられれる。これらの除外条件に該当する場合は特に、現在、根治的治療がまったく存在しないことになり、その治療法が渇望されている。特にDCMについては、心筋繊維配列の乱れと線維化の進行により心筋壁の菲薄化、収縮性の低下を生じ、心拡大を呈するDCMの根本治療には心筋繊維配列の乱れの改善、線維化の抑制、脱落した筋細胞の補填等の複合治療が必要と考えられる。
これらの状況のもと、移植に頼らないどのような臓器または器官でも適用可能な新たなコンセプトの代用療法への開発が試みられつつある。
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従って、本発明は、心臓移植および医療機器での補助システムに代わる、全く新しい概念の新規の心疾患・心障害の治療システムの開発を課題とする。特に、根治的治療法がまったく無いか実質的に無い難治性心不全に関し、根治的治療を提供することを課題とする。
本発明は、細胞を心臓へ移植する際に、細胞生理活性物質(例えば、HGF、VEGF、FGFなど)を投与することで、心臓組織の再生が促進されるという予想外の発見に基づいて開発された。
本発明者らはまた、梗塞心において細胞移植とHGFなどの細胞生理活性物質の遺伝子導入とを併用することにより、移植細胞の細胞骨格の再生および不全心の機能・組織の改善が予想外に得られたことを見出した。加えて、心疾患、特に、DCMなどを含む難治性心不全に対しても、細胞移植とHGFとの併用により、細胞の補填、繊維化の抑制のみならず、残存心筋細胞骨格の再生効果も見いだされ、心機能改善効果、心筋組織の再生効果が見出され。従って、本発明は、心疾患、特に、DCMなどを含む難治性心不全の病因制御による新たな治療法として有用であることを見出した。特に、心臓移植が適応できない難治性心不全にとっては、初めて根治的治療が提供されたことになり、その効果は絶大である。
本発明は、具体的には、以下を提供する。
(1) 生物の心疾患の治療、予防または予後のための組成物であって、
細胞生理活性物質および細胞を、上記器官への移入に適した形態で含む、
組成物。
(2) 上記心疾患は、難治性心不全(たとえば、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患)を含む、項目1に記載の組成物。
(3) 上記心疾患は拡張型心筋症を含む、項目1に記載の組成物。
(4) 上記細胞生理活性物質は、造血活性、コロニー刺激活性または細胞増殖活性を有する、項目1に記載の組成物。
(5) 上記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用の少なくとも1つの活性を有する、項目1に記載の組成物。
(6) 上記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用を有する、項目1に記載の組成物。
(7) 上記細胞生理活性物質は、キナーゼ型レセプターをレセプターとして有する、項目1に記載の組成物。
(8) 上記細胞生理活性物質は、チロシンキナーゼ型レセプターをレセプターとして有する、項目1に記載の組成物。
(9) 上記細胞生理活性物質は、FGF、HGFおよびVEGFからなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(10) 上記細胞生理活性物質は、HGFである、項目1に記載の組成物。
(11) 上記細胞生理活性物質は、VEGFである、項目1に記載の組成物。
(12) 上記細胞生理活性物質は、そのレセプターがc−metである、項目1に記載の組成物。
(13) 上記細胞は、胚性幹細胞または組織幹細胞である、項目1に記載の組成物。
(14) 上記細胞は、分化した細胞である、項目1に記載の組成物。
(15) 上記細胞は、外胚葉、中胚葉または内胚葉に由来する幹細胞である、項目1に記載の組成物。
(16) 上記細胞は、中胚葉に由来する幹細胞である、項目1に記載の組成物。
(17) 上記細胞は、造血幹細胞または間葉系幹細胞である、項目1に記載の組成物。
(18) 上記細胞は、間葉系幹細胞である、項目1に記載の組成物。
(19) 上記細胞は、骨髄系の組織幹細胞である、項目1に記載の組成物。
(20) 上記細胞は、間葉系幹細胞に由来する分化細胞である、項目1に記載の組成物。
(21) 上記細胞は、心筋細胞、骨格筋芽細胞および骨芽細胞からなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
(22) 上記細胞は、初代培養心筋細胞または分化させた心筋細胞である、項目1に記載の組成物。
(23) 上記細胞は、骨髄由来である、項目1に記載の組成物。
(24) 上記細胞は、同系由来、同種異系由来または異種由来の細胞である、項目1に記載の組成物。
(25) 上記細胞は、自己由来である、項目1に記載の組成物。
(26) 上記細胞生理活性物質は、タンパク質形態または核酸形態である、項目1に記載の組成物。
(27) 上記細胞生理活性物質は、タンパク質形態である、項目1に記載の組成物。
(28) 上記細胞生理活性物質は、核酸形態である、項目1に記載の組成物。
(29) 上記細胞生理活性物質は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの形態で存在する、項目1に記載の組成物。
(30) 上記細胞生理活性物質は、HVJリポソームの形態で存在する、項目1に記載の組成物。
(31) 徐放性形態である、項目1に記載の組成物。
(32) さらに生体親和性材料を含む、項目1に記載の組成物。
(33) シリコーン、コラーゲン、ゼラチンおよびグリコール酸・乳酸の共重合体からなる群より選択される少なくとも1つの生体親和性材料を含む、項目1に記載の組成物。
(34) 上記細胞生理活性物質は2種類以上の細胞生理活性物質である、項目1に記載の組成物。
(35) さらに他の薬剤を含む、項目1に記載の組成物。
(36) 上記細胞は2種類以上の細胞を含む、項目1に記載の組成物。
(37) 上記細胞は、ヒト由来である、項目1に記載の組成物。
(38) 上記生物は、ヒトである、項目1に記載の組成物。
(39) 生物の心疾患の治療、予防または予後のためのキットであって、
細胞生理活性物質;
細胞;ならびに
上記細胞生理活性物質および上記細胞の上記器官への移植に関する指示書、
を備え、ここで、上記指示書は、
上記細胞生理活性物質を上記細胞の心臓への移植の前、同時または後に投与することを指示する、
キット。
(40) 上記指示書は、上記細胞生理活性物質を上記細胞の上記心臓への移植の前に投与することを指示する、項目39に記載のキット。
(41) 上記指示書は、上記細胞生理活性物質および上記細胞を上記心臓の罹患部位、傷害部位または虚血部位へと投与することを指示する、項目39に記載のキット。
(42) 上記心疾患は難治性心不全(たとえば、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患)を含む、項目39に記載のキット。
(43) 上記心疾患は拡張型心筋症であり、上記細胞生理活性物質および上記細胞の投与は、左心室を含む部位に投与することを含む、項目39に記載のキット。
(44)
生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するための薬学的組成物であって、
細胞生理活性物質、
を含む、薬学的組成物。
(45)
生物の心疾患の治療、予防または予後のための方法であって、
細胞生理活性物質を上記器官へ提供する工程;および
細胞を心臓へ提供する工程、
を包含する、方法。
(46)
上記心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患を含む、項目45に記載の方法。
(47)
上記心疾患は拡張型心筋症を含む、項目45に記載の方法。
(48)
生物の心疾患の治療、予防または予後のための医薬組成物の製造のための、細胞生理活性物質;および細胞の使用。
(49)
上記心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患を含む、項目48に記載の使用。
(50)
上記心疾患は拡張型心筋症を含む、項目48に記載の使用。
(51)
生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するための、細胞生理活性物質の使用。
本発明により、心臓移植および医療機器での補助システムを全く使用することなく、拡張型心筋症、心筋梗塞などの種々の心臓疾患を治療および予防することが可能になった。本発明により、根治的治療がほとんど不可能であった難治性心不全に対して初めて根治的治療を提供することができるという顕著な効果が奏される。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、独語の場合の「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその格変化形、仏語の場合の「un」、「une」、「des」、「le」、「la」、「les」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(用語の定義)
本明細書において使用される「併用療法」(combined theraphy)とは、細胞移植と細胞生理活性物質(例えば、サイトカイン、細胞増殖因子など)の投与とを組み合わせた治療をいう。「組合せ(併用)」とは、同じ被検体(または患者)に両方の処置が何らかの形態で施されることをいい、両方の処置が同時に施される必要はないが、同時に両方の処置が行われてもよい。本明細書では、併用療法は、複合療法ともいい、両用語は同義で用いられる。
本明細書において用いられる「細胞生理活性物質」(cellular physiologically active substance)とは、細胞に作用する物質を言う。細胞生理活性物質には、サイトカインおよび増殖因子が含まれる。細胞生理活性物質は、天然に存在するものであっても、合成されたものでもよい。好ましくは、細胞生理活性物質は、細胞が産生するものまたはそれと同様の作用を有するものである。本明細書では、細胞生理活性物質はタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態を意味する。
本明細書において使用される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカインは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制禦作用、内分泌系の調節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるいは他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパク質形態を意味する。
本明細書において用いられる「増殖因子」または「細胞増殖因子」とは、本明細書では互換的に用いられ、細胞の増殖を促進または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能することが判明している。
サイトカインには、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類が含まれる。増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
サイトカインおよび増殖因子などの細胞生理活性物質は一般に、機能重複現象(redundancy)があることから、他の名称および機能で知られるサイトカインまたは増殖因子であっても、本発明に使用される細胞生理活性物質の活性を有する限り、本発明において使用され得る。また、サイトカインまたは増殖因子は、本明細書における好ましい活性を有してさえいれば、本発明の併用療法の好ましい実施形態において使用することができる。
本発明の併用療法では、どのような細胞生理活性物質も使用され得る。本発明の併用療法の1つの好ましい実施形態において、細胞生理活性物質として、造血活性、コロニー刺激活性または細胞増殖活性を有するサイトカインまたは増殖因子が使用される。造血活性またはコロニー刺激活性を有するサイトカインとしては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、multi−CSF(IL−3)、エリスロポエチン(EPO)、白血病抑制因子(LIF)、c−kitリガンド(SCF)などが挙げられる。細胞増殖活性を有する増殖因子としては、血小板由来増殖因子(PDGF)、表皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)インシュリン様増殖因子(IGF)などが挙げられる。本発明の1つの好ましい実施形態では、細胞増殖活性を有する細胞生理活性物質(例えば、サイトカインまたは増殖因子)が使用され得る。
サイトカインおよび増殖因子のような細胞生理活性物質はまた、そのレセプター(例えば、サイトカインレセプター)によって分類することもできる。サイトカインレセプターは、非キナーゼ型およびキナーゼ型に分類される。非キナーゼ型としては、Gタンパク質結合型レセプター、NGF/TNFレセプターファミリー、IFNレセプターファミリー、サイトカインレセプタースーパーファミリーなどが挙げられる。キナーゼ型としては、増殖因子型レセプター(チロシンキナーゼ型、例えば、HGFの場合はc−met)、TGFβレセプターファミリー(セリン・スレオニンキナーゼ型)などが挙げられる。本発明の併用療法の好ましい実施形態では、キナーゼ型(特に増殖因子型レセプターに結合する細胞生理活性物質(例えば、HGF、FGF、VEGFなど))が使用される。細胞生理活性物質は、場合により、レセプターサブユニットを共有することから、上記好ましいサイトカインおよび増殖因子とレセプターサブユニットを共有するサイトカインおよび増殖因子もまた、好ましいサイトカインおよび増殖因子であり得る。
サイトカインおよび増殖因子のような細胞生理活性物質はまた、タンパク質型または核酸型の場合、相同性比較により分類され得る。従って、本発明の好ましい実施形態として、本発明の好ましい細胞生理活性物質と相同性のある細胞生理活性物質が使用される。そのような相同性を有する細胞生理活性物質としては、例えば、Blastのデフォルトパラメータを用いて比較した場合に、比較対照の細胞生理活性物質に対して、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%の相同性を有する細胞生理活性物質が挙げられる。
本発明の別の好ましい実施形態において、増殖因子は、FGF、HGF、VEGF、IGF、NGFである。最も好ましい実施形態では、サイトカインおよび増殖因子はHGFであり得る。
HGFは分子量約85000のタンパク質であり、肝臓の一部を切ったラットの血液中から、肝細胞の増殖を促進する物質として分離された。1989年にこのタンパク質のアミノ酸配列が解明され、四つ葉のクローバーのような独特の分子構造を持つことが示された。HGFは細胞の増殖・遊走・形態形成を促して組織の再構築をもたらす活性を有しており、それゆえに様々な急性・慢性臓器疾患に対し強い発症阻止・治癒作用を示す。とりわけ肝硬変や慢性腎不全などの慢性疾患では線維化を促すTGF-βの過剰発現と相反して内因性HGFの発現低下が起こり、これが線維性疾患の発症につながる。これに対し、HGFは上皮細胞や内皮細胞の再生を促す一方でTGF-βの発現を抑制し、強い治癒・再生作用を示す。従って、血管新生作用および/または抗線維化作用を有する他のサイトカインおよび増殖因子もまた、本発明の併用療法の好ましい実施形態において使用され得る。
近年HGFは、血管新生作用を有し(非特許文献8および9)、抗線維化作用を有する(非特許文献10)ことが明らかになった。このHGFは、オートクライン様作用(非特許文献10)およびパラクライン様作用(非特許文献11)を有する。さらに、HGFは、細胞間相互作用および細胞と細胞外マトリクスとの間の相互作用を増強する(非特許文献12)。この相互作用は、β1インテグリン、ラミニンおよびフィブロネクチンの調節により制禦される(非特許文献12)。従って、血管新生作用および/または抗線維化作用を有する他のサイトカインおよび増殖因子もまた、本発明の併用療法の好ましい実施形態において使用され得る。
本明細書において用いられる「血管新生作用(活性)」とは、ある因子が標的に作用したとき、その標的において血管を新たに形成する能力をいう。血管新生作用を測定する方法としては、代表的には、コントラスト剤を用いた超音波測定、血管に特異的な遺伝子産物に対する抗体を用いた血管数計数などが挙げられる。本明細書において、増殖因子が血管新生作用を有するか否かは、第VIII因子関連抗原等で免疫組織化学染色した後に血管数を計数することによって判定される。この計数方法では、検体を10%の緩衝化ホルマリンで固定し、パラフィン包埋し、各々の検体から数個の連続切片を調製し、凍結する。次いで、凍結切片をPBS中の2%パラホルムアルデヒド溶液で5分間、室温にて固定し、3%過酸化水素を含むメタノール中に15分間浸漬し、次いでPBSで洗浄する。このサンプルをウシ血清アルブミン溶液で約10分間覆って、非特異的反応をブロックする。検体を、HRPと結合する、第VIII因子関連抗原に対するEPOS結合体化抗体と共に一晩インキュベートする。サンプルをPBSで洗浄した後、これらを、ジアミノベンジジン溶液(例えば、PBS中、0.3mg/mlジアミノベンジジン)中に浸漬して、陽性染色を得る。染色された血管内皮細胞を、例えば、200倍の倍率の光学顕微鏡下で計数し、例えば、計数結果を、1平方ミリメートルあたりの血管の数としてあらわす。特定のサイトカインおよび増殖因子の処置後、血管数が統計学的に有意に増加しているか否かを判定することにより、血管新生活性を判定することができる。
本明細書において用いられる「抗線維化作用」とは、ある因子が標的に作用したとき、その標的における線維症を抑制する能力をいう。抗線維化作用は、マッソントリクローム染色法により判定することができる。
マッソントリクローム染色法は以下のとおりである:マッソントリクローム染色では、鉄ヘマトキシリンで核が染められ、その後に拡散速度の大きい小色素分子(酸フクシン、ポンソーキシリジン)が細胞の細網孔へ浸透し、次いで拡散速度の小さい大色素分子(アニリン青)が膠原線維の粗構造に入り込み青色に染め出す。
マッソントリクローム染色で使用される試薬
A)媒染剤
10%トリクロル酢酸水溶液 1容
10%重クロム酸カリウム水溶液 1容
B)ワイゲルトの鉄ヘマトキシリン液(使用時に1液と2液を等量混合)
1液
ヘマトキシリン 1g
100%エタノール 100ml
2液
塩化第二鉄 2.0g
塩酸(25%) 1ml
蒸留水 95ml
C)1%塩酸70%アルコール
D)I 液
1%ビーブリッヒスカーレット 90ml
1%酸性フクシン 10ml
酢酸 1ml
E)II液
リンモリブデン酸 5g
リンタングステン酸 5g
蒸留水 200ml
F)III液
アニリン青 2.5g
酢酸 2ml
蒸留水 100ml
G)1%酢酸水
マッソントリクローム染色法の手順
1.脱パラ、水洗、蒸留水
2.媒染(10〜15分)
3.水洗(5分)
4.ワイゲルトの鉄ヘマトキシリン液(5分)
5.軽く水洗
6.1%塩酸70%アルコールで分別
7.色出し、水洗(10分)
8.蒸留水
9.I 液(2〜5分)
10.軽く水洗
11.II液(30分以上)
12.軽く水洗
13.III液(5分)
14.軽く水洗
15.1%酢酸水(5分)
16.水洗(すばやく)
17.脱水、透徹、封入。
マッソントリクローム染色法では、膠原線維、細網線維、糸球体基底膜は、鮮やかな青に染まり、核は黒紫色に染まり、細胞質は淡赤色に染まり、赤血球は橙黄色〜深紅色に染まり、粘液は青色に染まり、細胞分泌顆粒は好塩基性が青に好酸性が赤に染まり、線維素は赤に染まる。従って、青く染まった面積を線維化した部位として算出することができる。本明細書において、特定のサイトカインおよび増殖因子の処置後、線維症化した面積が統計学的に有意に減少しているか否かを判定することにより、抗線維化作用を判定することができる。
本明細書において使用される「細胞」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義され、多細胞生物の組織の構成単位であって、外界を隔離する膜構造に包まれ、内部に自己再生能を備え、遺伝情報およびその発現機構を有する生命体をいう。本発明の併用療法においては、どのような細胞も使用され得る。本発明で使用される「細胞」は移植に適した形態で提供されることが好ましく、本明細書においてそのような細胞を「移植細胞」ともいう。
本発明において、細胞は、幹細胞または分化した細胞であり得る。「幹細胞」とは、自己複製能を有し、多分化能を有し、組織が傷害を受けたときに再生することができる細胞をいう。本発明において使用される幹細胞は、胚性幹細胞(ES)または組織幹細胞(組織特異的幹細胞または体性幹細胞ともいう)であり得る。胚性幹細胞とは初期胚に由来する多能性幹細胞をいう。胚性幹細胞は、1981年に初めて樹立され、1989年以降ノックアウトマウス作製にも応用されている。1998年にはヒト胚性幹細胞が樹立されており、再生医学にも利用されつつある(非特許文献27)。従って、本発明の1つの好ましい実施形態では、細胞として胚性幹細胞が使用され得る。本発明の併用療法において胚性幹細胞が使用されるときは、予め心筋細胞へ分化させてから使用することもできる。心筋細胞への分化は、白血病阻害因子(LIF)で処理することによって誘導することができる。
組織幹細胞は、胚性幹細胞とは異なり、分化の方向が限定されている細胞であり、組織中の特定の位置に存在し、未分化な細胞内構造をしている。組織幹細胞は、核/細胞質比が高く、細胞内小器官が乏しい。組織幹細胞は、概して、多分化能を有し、細胞周期が遅く、個体の一生以上に増殖能を維持する。従って、本発明の1つの好ましい実施形態において、細胞として心臓組織へと方向付けられた組織幹細胞が使用され得る。
組織幹細胞は、由来により、外胚葉、中胚葉、内胚葉由来の幹細胞に分類され得る。外胚葉由来の組織幹細胞は、主に脳に存在し、神経幹細胞が含まれる。中胚葉由来の組織幹細胞は、主に骨髄に存在し、血管幹細胞、造血幹細胞および間葉系幹細胞が含まれる。内胚葉由来の組織幹細胞は主に臓器に存在し、肝幹細胞、膵幹細胞が含まれる。本発明の好ましい実施形態では、中胚葉由来の幹細胞が使用され得る。本発明のより好ましい実施形態では、間葉系幹細胞が使用され得る。
由来する部位により分類すると、組織幹細胞は、例えば、皮膚系、消化器系、骨髄系、神経系などに分けられる。皮膚系の組織幹細胞としては、表皮幹細胞、毛嚢幹細胞などが挙げられる。消化器系の組織幹細胞としては、膵(共通)幹細胞、肝幹細胞などが挙げられる。骨髄系の組織幹細胞としては、造血幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。神経系の組織幹細胞としては、神経幹細胞、網膜幹細胞などが挙げられる。心臓組織を構成する心筋細胞は間葉系幹細胞に由来することから、本発明の併用療法の1つの実施形態では、骨髄系の組織幹細胞が使用され得、本発明の併用療法の1つの好ましい実施形態では、間葉系幹細胞が好ましく使用され得る。
本明細書において「分化(した)細胞」とは、機能および形態が特殊化した細胞(例えば、筋細胞、神経細胞など)をいい、幹細胞とは異なり、多能性はないか、またはほとんどない。分化した細胞としては、例えば、表皮細胞、膵実質細胞、膵管細胞、肝細胞、血液細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、骨芽細胞、骨格筋芽細胞、神経細胞、血管内皮細胞、色素細胞、平滑筋細胞、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞などが挙げられる。本発明の1つの実施形態において、骨髄に由来する細胞(例えば、骨芽細胞)が使用され得る。本発明の好ましい実施形態においては、心筋細胞、骨格筋芽細胞、骨芽細胞のような間葉系幹細胞に由来する細胞が使用され得る。本発明のより好ましい実施形態では、心筋細胞が使用され得る。心筋細胞は、初代細胞でも、幹細胞などから分化誘導させた細胞でもよい。
本明細書において用いられる心筋原細胞は、幹細胞を5−アザシチジンで処理することにより作製することができる。心筋原細胞を得るためには以下のような処置を行うことができる。例えば、ラットなどの被検体から大腿骨の骨髄初代培養を作成し、5−アザシチジンで分化誘導する。分化誘導した細胞から自己拍動能を有する細胞をスクリーニングして心筋原細胞を得ることができる。
本発明の併用療法で使用される細胞は、同系由来(自己(自家)由来)でも、同種異系由来(他個体(他家)由来)でも、異種由来でもよい。拒絶反応が考えられることから、自己由来の細胞が好ましいが、拒絶反応が問題でない場合同種異系由来であってもよい。
本発明で用いられる細胞は、どの生物由来の細胞(例えば、脊椎動物、無脊椎動物)でもよい。好ましくは、脊椎動物由来の細胞が用いられ、より好ましくは、哺乳動物(例えば、霊長類、齧歯類など)由来の細胞が用いられる。さらに好ましくは、霊長類由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
本発明が対象とする組織は、生物のどの臓器または器官でもよい。本明細書において臓器または器官とは、互換的に用いられ、生物個体のある機能が個体内の特定の部分に局在して営まれ,かつその部分が形態的に独立性をもっている構造体をいう。一般に多細胞生物(例えば、動物、植物)では器官は特定の空間的配置をもついくつかの組織からなり、組織は多数の細胞からなる。そのような臓器または器官としては、血管系に関連する臓器または器官が挙げられる。1つの実施形態では、本発明が対象とする器官は、虚血性または糖尿病性の器官(脳虚血、虚血性の脳梗塞を患った脳、心筋梗塞を起こした心臓、虚血を起こした骨格筋など)が挙げられる。好ましくは、本発明が対象とする器官は、心臓、脳、肺、膵臓、肝臓、四肢末梢、網膜などが挙げられる。1つの好ましい実施形態では、本発明が対象とする器官は、心臓である。
本発明が対象とする組織および使用する細胞の組合せとしては、例えば、心疾患(例えば、虚血性心疾患)を起こした心臓への心筋細胞の投与、脳虚血または脳梗塞を起こした脳への神経細胞、神経細胞へ分化可能な細胞または神経前駆細胞の投与、心筋梗塞、骨格筋虚血部位への血管内皮細胞または血管内皮細胞に分化可能な細胞の投与が挙げられる。
本発明が対象とする組織は、どのような種類の生物由来であり得る。本発明が対象とする生物としては、脊椎動物または無脊椎動物が挙げられる。好ましくは、本発明が対象とする生物は、哺乳動物(例えば、霊長類、齧歯類など)である。より好ましくは、本発明が対象とする生物は、霊長類である。最も好ましくは、本発明はヒトを対象とする。
本発明の併用療法において、細胞生理活性物質(サイトカイン、増殖因子など)はどのような形態でも送達され得る。従って、細胞生理活性物質は、タンパク質形態でも核酸形態でもよく、最終的に機能する細胞生理活性物質(サイトカインおよび増殖因子の場合はタンパク質形態)が標的に送達される限り、他の形態も可能である。本発明の併用療法ではまた、細胞生理活性物質はどのような経路でも送達され得る。細胞生理活性物質が機能するとは、細胞生理活性物質の少なくとも1つの上述した機能(例えば、細胞増殖活性、血管新生作用、抗線維化作用など)を少なくとも一つ発揮することをいう。
タンパク質形態の場合、直接または間接的に送達され得る。直接投与する場合は、タンパク質形態の細胞生理活性物質を直接処置部位に投与し得る。間接的に送達する場合は、目的とするタンパク質形態の細胞生理活性物質が最終的に処置部位に送達される、当該分野において公知の任意の方法を使用することができる。そのような方法としては、注射により注入を用いる投与方法が挙げられる。
本発明の併用療法において、細胞生理活性物質の投与は、細胞移植と同時でもよく、細胞生理活性物質投与が細胞移植前でも細胞生理活性物質が細胞移植後でもよい。細胞生理活性物質が細胞移植より前であることが好ましい。
本明細書において「再生」とは、損傷した組織が元通りに回復することをいい、病理的再生ともいう。生物の体は一生の間に外傷や病気によって臓器の一部を失ったり、大きな傷害を受けたりする。その場合、損傷した臓器が再生できるか否かは、臓器によって(または動物種によって)異なる。自然には再生できない臓器(または組織)を再生させ、機能を回復させようというのが再生医学である。組織が再生したかどうかは、その機能が改善したかにどうかによって判定することができる。哺乳動物は、組織・器官を再生する力をある程度備えている(例えば、皮膚および肝臓の再生)。しかし、心臓を含むほとんどの器官は、一旦損傷すると、哺乳動物はほとんど再生させることができない。従って、例えば、心臓組織が損傷した場合、従来は心臓移植による処置しか有効な措置がなかった。本発明は、心臓などの臓器の組織を「再生させる」画期的な方法を提供するという有用性および格別の効果を提供する。
本明細書において「器官への移入に適した」とは、器官(例えば、心臓)に細胞を移植をするために適切な任意の形態をいう。そのような形態は当該分野において公知であり、そのような方法としては、例えば、注射器を使用して細胞を注入する方法が挙げられる。当業者は、例えば、日本薬局方、米国薬局方などを参照して容易にその形態を調製することができる。細胞生理活性物質の「心臓への移入に適した」としては、例えば、リポソーム形態が挙げられる。
本発明の併用療法が対象とする「疾患」は、組織に傷害がある任意の心疾患であり得る。そのような心疾患としては、心不全、心筋梗塞、心筋症などが挙げられる。本発明の併用療法は、組織傷害の再生を目的とする限り、心臓以外の臓器の傷害を再生するためにも適用され得る。特定の実施形態において、本発明の方法が対象とする疾患は、難治性心不全である。
「心不全」とは、心機能不全、循環機能不全、収縮力減退など心臓自体に障害があって、全身の臓器へ必要な量および質の血液を循環し得なくなった状態をいう。心不全は、心筋梗塞、心筋症などの心臓疾患の末期の症状である。重症心不全とは、その程度が重症であるものをいい、末期心不全ともいう。
「難治性心不全」とは、内科的治療、薬物治療では改善が困難な治療抵抗性心不全をいい、慢性心不全または末期的心不全とほぼ同義に用いられる。このような難治性心不全は、通常のジギタリス薬、利尿薬、ACE阻害薬などを用いるトリプルセラピー、β遮断薬を加えた薬物治療ではコントロールできない。これらの治療には、IABP(intra−aortic balloon pumping)またはPCPS(percutaneous cardiopulmonary support)などによる機械的循環補助、あるいは心臓移植を必要とすることから、簡便でかつ根本的な治療の開発が求められていた。特に、心臓移植は、ドナー不足が深刻であり、心臓移植適応除外症例(たとえば、高齢者、透析症例など)の場合は難治性心不全は大きな問題となっており、心臓移植代替治療が切望されている。
「心筋梗塞」とは、冠状動脈の種々の病変による高度狭窄、閉塞によってその灌流領域に虚血性壊死が生じる疾患である。心筋梗塞の重傷度判定には、種々の分類がある。そのような分類としては、例えば、時間的経過による分類、形態学的分類(心筋層内範囲、部位、壊死の大きさなど)、心筋の壊死形態、梗塞後の心室再構築、血行動態的分類(治療、予後などに関連する)、臨床的重症度による分類などが挙げられる。ここで重症度が高いものを特に重症心筋梗塞という。
「心筋症」とは、心筋の器質的および機能的な異常に起因する疾患の総称であり、高血圧、代謝異常症、虚血などの基礎疾患に続発する二次性心筋症、および見かけ上の基礎疾患なしに発症する突発性心筋症に分類される。病理的変化としては、心筋肥大、線維化、変性などが認められる。
「拡張型心筋症」とは、左室の拡張を伴った左心室の機能不全をいい、「うっ血性心筋症」とも言われる。本明細書において「DCM」(dilated cardiomyopathy)と略することがある。拡張型心筋症では、収縮不全が伴い、慢性心不全をきたす。病因としては、たとえば、ウイルス感染、遺伝子変異など多様なものが挙げられる。一般的には、他に明らかな一義的原因のある虚血性心筋症、代謝異常などに伴う心筋疾患などの特定心筋疾患(従来、二次性心筋疾患と称されていた疾患)は含まれないとされるが、本発明の目的では、その治療効果が示される限り、本発明の範囲内に入る。大部分の患者は全体に収縮力低下を示すが孤立性に部分的壁運動異常が起こることもあるといわれる。通常はうっ血を伴う心不全徴候を示すが,低心拍出量状態を現す倦怠感を示すこともある。拡張型心筋症は、原因不明で、特発性の心筋疾患である。主な病態は心筋収縮力の低下であり、その結果左室内腔の拡大をきたす。左室拍出血液量の減少、左室拡張期圧の上昇などを起こす。発症は急性または潜行性であり、末期では難治性心不全を呈することが多い。病理組織学的には,びまん性にあるいは局所的に心筋組織の変性、線維化、萎縮が認められる。残存心筋細胞が肥大している例も多い。心不全のほか重篤な不整脈、血栓塞栓症をきたし,予後はきわめて不良である。診断上とくに有用なものは心エコー図であり、びまん性壁運動の低下、心室壁の菲薄化、心室内腔の拡大を証明する。これに冠動脈造影術にて冠動脈病変の否定、心筋生検(心筋バイオプシー)を行うことによりより確実に診断することができる。従って、本発明では、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、核医学検査(心筋シンチ検査)、心筋生検など当該分野において周知の検査手法を行うことによって拡張型心筋症の改善を確認することができる。
従来、拡張型心筋症では、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬、強心薬などによる薬物療法、塩分・水分摂取制限、運動制限などの生活指導が行われているが、いずれも疾患そのもののに対する治療ではない。不整脈に対してはアミオダロンなどの抗不整脈投与が行われているが、これも対症療法としかなり得ない。血栓、塞栓にはワルファリンなどの抗凝固薬が使用されるが、これも対症療法に過ぎない。外科的療法として、ペースメーカー、埋め込み型除細動器、補助循環装置(バイパス)、心臓移植などが行われているが、心臓移植以外は根治的とはいえず、ドナー不足が深刻な現在、心臓移植にも限界が存在する。本発明の治療技術は、このような拡張型心筋症などにも有効であり、画期的な治療効果をもたらす。
「肥大型心筋症」(hypertrophic cardiomyopathy;HCM)は、心筋の異常な肥厚および左心室肥大による拡張期コンプライアンスの低下を主な症状とする心筋症をいう。心収縮機能は通常保たれている。5年および10年の生存率は、それぞれ約90%、約80%であり、良好であるが、突然死の原因とされており、臨床上の問題となっていることから、その根治的治療が求められている。本発明の治療技術は、このような肥大型心筋症などにも有効であり、画期的な治療効果をもたらす。
「拡張相肥大型心筋症」とは、肥大型心筋症のうち、経過中に心筋の線維化が進み、心室壁の菲薄化、収縮力の低下が生じ、心室内腔の拡張をきたして拡張型心筋症のような症状を呈したものをいう。きわめて予後不良といわれているが、無症状のものも多数存在しており、臨床上の問題となっている。従って、この拡張相肥大型心筋症もまた、根治的治療が求められている。本発明の治療技術は、このような拡張相肥大型心筋症などにも有効であり、画期的な治療効果をもたらす。
上述のような難治性心不全の従来の治療および診断法などについては、非特許文献35などに記載されている。つい最近に刊行された非特許文献35に記載されているように、難治性心不全については、根治的治療法がなく、本発明はこのような心疾患、特に難治性心不全に対して初めて治療法を提供したという効果を奏する。
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)とは、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状態が起こらないようにするか、そのような状態を低減した状態で生じさせるかまたはその状態が起こることを遅延させるように処置することをいう。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。本明細書では「根治的治療」とは、病的過程の根源または原因の根絶を伴う治療をいう。従って、根治的治療がなされる場合は、原則として、その疾患の再発はなくなる。
本明細書において「予後」とは、予後の処置ともいい、ある疾患または障害について、治療後の状態を診断または処置することをいう。
(発明を実施する最良の形態)
本発明は、1つの局面において、生物の器官の組織を再生するための組成物を提供する。この組成物は、細胞生理活性物質および細胞を、器官への移入に適した形態で含む。
別の局面において、本発明は、生物の器官の疾患を治療するための組成物を提供する。この組成物は、細胞生理活性物質および細胞を、上記器官への移入に適した形態で含む。本発明では、特に、心疾患(特に、難治性心疾患)を治療するための組成物および方法を提供する。従って、細胞生理活性物質および細胞は、心疾患を処置するに適した形態で提供されることが好ましい。
別の局面において、本発明は、生物の器官の組織を再生するためのキットを提供する。このキットは、細胞生理活性物質;細胞;ならびに上記細胞生理活性物質および上記細胞の生物の器官への移植に関する指示書を備える。ここで、上記指示書は、上記細胞生理活性物質を上記細胞の生物の器官への移植の前、同時または後に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
別の局面において、本発明は、生物の器官の疾患を治療するためのキットを提供する。このキットは、細胞生理活性物質;細胞;ならびに上記細胞生理活性物質および上記細胞の上記器官への移植に関する指示書、を備える。ここで、上記指示書は、上記細胞生理活性物質を上記細胞の上記器官への移植の前、同時または後に投与することを指示する。本発明では、特に、心疾患(特に、難治性心疾患)を治療するためのキットを提供する。従って、細胞生理活性物質および細胞は、心疾患を処置するに適した形態で提供されることが好ましい。このようなキットは、医療機関内で細胞が取得される場合には、細胞に代えて細胞を取得する指示書が添付されていてもよい。そのような場合、細胞は宿主(患者)の自己細胞であり得る。
本発明の組成物およびキットは、通常は医師の監督のもとで実施されるが、その国の監督官庁および法律が許容する場合は、医師の監督なしに実施することができる。
別の局面において、本発明は、生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するための薬学的組成物であって、細胞生理活性物質を含む薬学的組成物を提供する。細胞生理活性物質は、従来、単独で用いられており、細胞とともに投与されることはほとんど無かった。本発明では、予想外に、細胞とともに投与することによって心臓の再生が促進され、難治性心不全の治癒をそれぞれを単独で投与したときよりもはるかに(統計学的に優位な改善を伴って)促進したという効果を奏する。従って、本発明は、心疾患の治療、予防または予後のために、細胞とともに投与するという、細胞生理活性物質の新たな用途を見出したことになる。
他の局面では、本発明は、生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するための、細胞生理活性物質の使用を提供する。この用途は上述のように、新たな用途であり、従来の単独投与の効果からは予測できなかったものである。
さらに別の局面において、本発明は、生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するためのキットであって、細胞生理活性物質;および細胞生理活性物質と細胞とを投与する方法を記載する指示書を含むキットを提供する。ここで、上記指示書は、上記細胞生理活性物質を上記細胞の生物の心臓または心臓へと供給される身体部位への移植の前、同時または後に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
1つの実施形態において、上記細胞生理活性物質は、サイトカインまたは増殖因子であり得る。1つの実施形態において、上記細胞生理活性物質は、造血活性、コロニー刺激活性または細胞増殖活性を有し得る。別の実施形態において、上記細胞生理活性物質は、造血活性またはコロニー刺激活性を有し得る。好ましくは、上記細胞生理活性物質は、細胞増殖活性を有し得る。
別の好ましい実施形態において、上記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用の少なくとも1つの活性を有し得る。より好ましくは、上記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用の両方を有し得る。
他の実施形態において、上記細胞生理活性物質は、キナーゼ型レセプターをレセプターとして有し得る。より好ましくは、上記細胞生理活性物質は、チロシンキナーゼ型レセプターをレセプターとして有し得る。好ましくは、上記細胞生理活性物質は、そのレセプターがc−metであり得る。
他の実施形態において、上記細胞生理活性物質は、FGF、HGFおよびVEGFからなる群より選択され得る。好ましくは、上記細胞生理活性物質は、HGFであり得る。他の好ましい実施形態では上記細胞生理活性物質は、VEGFであり得る。
本発明で用いる細胞生理活性物質は、HGF、VEGF、FGFなどを含め、公知の物質であり、医薬として使用することができる程度に精製された物であれば、種々の方法で調製されたものを用いることができる。市販されている細胞生理活性物質製剤を使用してもよい(例えば、東洋紡No.HGF−101(HGF)など)。
タンパク質形態の細胞生理活性物質を製造する方法としては、例えば、その細胞生理活性物質を産生する初代培養細胞または株化細胞を培養し、培養上清などから単離または精製することによりその細胞生理活性物質を得ることができる。あるいは、遺伝子操作手法を利用して、その細胞生理活性物質をコードする遺伝子を適切な発現ベクターに組み込み、これを用いて発現宿主を形質転換し、この形質転換細胞の培養上清から組換え細胞生理活性物質を得ることができる(例えば、特許文献1、非特許文献32)。上記宿主細胞は、機能性細胞生理活性物質を発現するものであれば、特に限定されず、従来から遺伝子操作において利用される各種の宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、動物細胞など)を用いることが可能である。このようにして得られた細胞生理活性物質は、天然型の細胞生理活性物質と実質的に同一の作用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が置換、付加および/または欠失していてもよく、糖鎖が置換、付加および/または欠失していてもよい。
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(非特許文献33)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。特許文献2(米国特許第4、554、101号)に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書中において、機能的に等価なペプチドフルクトース化合物を作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
用語「ペプチドアナログ」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。
本明細書において使用される細胞生理活性物質の核酸形態は、その細胞生理活性物質のタンパク質形態を発現し得る核酸分子をいう。この核酸分子は、発現される細胞生理活性物質が天然型の細胞生理活性物質と実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、細胞生理活性物質をコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、その細胞生理活性物質と実質的に同一の機能を有する細胞生理活性物質をコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
別の実施形態では、本発明で使用される細胞生理活性物質は、合成された物質である。合成物質がペプチドまたは核酸である場合、ペプチド自動合成器または核酸自動合成器のような自動化された機器を用いて合成することができる。
他の実施形態において、上記細胞は、幹細胞(例えば、胚性幹細胞または組織幹細胞)または分化した細胞であり得る。
別の実施形態において、上記細胞は、外胚葉、中胚葉または内胚葉に由来する幹細胞であり得る。好ましくは、上記細胞は、中胚葉に由来する幹細胞であり得る。より好ましくは、上記細胞は、造血幹細胞または間葉系幹細胞であり得る。さらに好ましくは、上記細胞は、間葉系幹細胞であり得る。他の好ましい実施形態では、上記細胞は、骨髄系の組織幹細胞であり得る。別の好ましい実施形態では、上記細胞は、間葉系幹細胞に由来する分化細胞であり得る。
他の好ましい実施形態において、上記細胞は、心筋細胞、骨格筋芽細胞および骨芽細胞からなる群より選択され得る。別の好ましい実施形態では、上記細胞は、骨髄由来であり得る。
他の実施形態において、上記細胞は、初代培養心筋細胞または分化させた心筋細胞であり得る。
他の実施形態において、上記細胞は、同系由来、同種異系由来または異種由来の細胞であり得る。同系由来が好ましい。同種異系由来の場合は、拒絶反応を起こさない系統のものが好ましいが、拒絶反応を起こすものも必要に応じて拒絶反応を解消する処置を行うことにより利用することができる。異種由来の細胞もまた、拒絶反応が問題にならない場合または必要に応じて拒絶反応を解消する処置を講じる場合に使用され得る。
本発明の併用療法において、上記細胞生理活性物質は、タンパク質形態または核酸形態であり得る。核酸形態の場合、上記細胞生理活性物質は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの形態で存在し得る。核酸形態の場合はまた、上記細胞生理活性物質は、HVJ−リポソームの形態で存在し得る。
本発明の組成物またはキットは、生物の器官(たとえば、心臓または心臓へと送達され得る部位)への移入に適した形態であれば、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。投与経路としては経口投与、非経口投与、患部への直接投与などが挙げられる。
注射剤は当該分野において周知の方法により調製することができる。例えば、適切な溶剤(生理食塩水、PBSのような緩衝液、滅菌水など)に溶解した後、フィルターなどで濾過滅菌し、次いで無菌容器(例えば、アンプルなど)に充填することにより注射剤を調製することができる。この注射剤には、必要に応じて、慣用の薬学的キャリアを含めてもよい。HVJ−リポソームのようなリポソーム形態の場合には、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍結剤のようなリポソーム製剤に必要な試薬を加えることができる。リポソームは、非経口的に投与することが好ましい。従って、リポソームを投与する場合には、非侵襲的なカテーテルまたは非侵襲的な注射器などによる投与方法を用いることができる。非侵襲的なカテーテルを用いる投与方法としては、例えば、心室内腔により心筋内に直接本発明の組成物を注入することが挙げられる。
1つの実施形態において、本発明の組成物またはキットは、徐放性形態で提供され得る。徐放性形態の剤型は、本発明において使用され得る限り、当該分野で公知の任意の形態であり得る。そのような形態としては、例えば、ロッド状(ペレット状、シリンダー状、針状など)、錠剤形態、ディスク状、球状、シート状のような製剤であり得る。徐放性形態を調製する方法は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方および他の国の薬局方などに記載されている。徐放剤(持続性投与剤)を製造する方法としては、例えば、複合体から薬物の解離を利用する方法、水性懸濁注射液とする方法、油性注射液または油性懸濁注射液とする方法、乳濁製注射液(o/w型、w/o型の乳濁製注射液など)とする方法などが挙げられる。
徐放性形態の場合、徐放性製剤(ミニペレット製剤など)を投与部位付近に埋め込むこともできる。または、徐放性製剤は、オスモチックポンプなどを用いて投与部位に連続的に徐々に投与することもできる。
本発明の組成物またはキットはまた、さらに生体親和性材料を含み得る。この生体親和性材料は、例えば、シリコーン、コラーゲン、ゼラチン、グリコール酸・乳酸の共重合体、エチレンビニル酢酸共重合体、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。成型が容易であることからシリコーンが好ましい。生分解性高分子の例としては、コラーゲン、ゼラチン、α−ヒロドキシカルボン酸類(例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸など)、ヒドロキシジカルボン酸類(例えば、リンゴ酸など)およびヒドロキシトリカルボン酸(例えば、クエン酸など)からなる群より選択される1種以上から無触媒脱水重縮合により合成された重合体、共重合体またはこれらの混合物、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸(例えば、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸など)、無水マレイン酸系共重合体(例えば、スチレン−マレイン酸共重合体など)のポリ酸無水物などが挙げられる。重合の形式は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよく、α−ヒドロキシカルボン酸類、ヒドロキシジカルボン酸類、ヒドロキシトリカルボン酸類が分子内に光学活性中心を有する場合、D−体、L−体、DL−体のいずれでも用いることが可能である。好ましくは、グリコール酸・乳酸の共重合体が使用され得る。
核酸形態の細胞生理活性物質を投与する場合、その細胞生理活性物質は、非ウイルスベクター形態またはウイルスベクター形態による投与、またはnaked DNAでの直接投与の形態などで投与され得る。このような投与形態は、当該分野において周知であり、例えば、非特許文献28、非特許文献29などに詳説されている。
非ウイルスベクター形態の場合、リポソームを用いて核酸分子を導入する方法(リポソーム法、HVJ−リポソーム法、カチオニックリポソーム法、リポフェクチン法、リポフェクトアミン法など)、マイクロインジェクション法、遺伝子銃(Gene Gun)でキャリア(金属粒子)とともに核酸分子を細胞に移入する方法などが利用され得る。発現ベクターとしては、例えば、pCAGGS(非特許文献31)、pBJ−CMV、pcDNA3.1、pZeoSV(Invitrogen、Stratageneなどから入手可能である)、ゼラチンなどの核酸導入促進物質の利用などが挙げられる。
HVJ−リポソーム法は、脂質二重膜で作製されたリポソーム中に核酸分子を封入し、このリポソームと不活化したセンダイウイルス(Hemagglutinating virus of Japan、HVJ)とを融合させることを包含する。このHVJ−リポソーム法は、従来のリポソーム法よりも、細胞膜との融合活性が非常に高いことを特徴とする。HVJ−リポソーム調製法は、非特許文献28、非特許文献29および下記実施例に詳述されている。HVJとしては、任意の株が利用可能であり(例えば、ATCC VR−907、ATCC VR−105など)、Z株が好ましい。
ウイルスベクター形態の場合、組換えアデノウイルス、レトロウイルスなどのウイルスベクターが利用される。無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、SV40、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのDNAウイルスまたはRNAウイルスに、核酸形態の細胞生理活性物質を導入し、細胞にこの組換えウイルスを感染させることにより、細胞内に遺伝子を導入することができる。これらウイルスベクターでは、アデノウイルスの感染効率が他のウイルスベクターによる効率よりも遙かに高いことから、アデノウイルスベクター系を用いることが好ましい。
Naked DNA法の場合、上述の非ウイルスベクターである発現プラスミドを生理食塩水などに溶解し、そのまま投与する。例えば、非特許文献30に記載される方法により、生物の器官の組織などに直接注入することができる。
本発明では、細胞生理活性物質は2種類以上の細胞生理活性物質であり得る。2種類以上の細胞生理活性物質が使用される場合、類似の機能を発揮する細胞生理活性物質が組み合わされてもよく、異なる機能を有する細胞生理活性物質が補完的に組み合わされてもよい。
本発明の組成物またはキットは、さらに他の薬剤を含み得る。そのような薬剤は、薬学において公知の任意の薬剤であり得る。当然、本発明の組成物またはキットは、2種類以上の他の薬剤を含んでいてもよい。そのような薬剤としては、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などの最新版において掲載されているものなどが挙げられる。そのような薬剤は、好ましくは、生物の器官に対して効果を有するものであり得る。そのような薬剤としては、例えば、血栓溶解剤、血管拡張剤、組織賦活化剤が挙げられる。
他の実施形態において、上記細胞は2種類以上の細胞を含み得る。2種類以上の細胞を使用する場合、類似の性質または由来の細胞を使用してもよく、異なる性質または由来の細胞を使用してもよい。
本発明の組成物およびキットにおいて含まれる細胞生理活性物質および細胞の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
従って、本発明の組成物およびキットにおいて含まれる細胞生理活性物質の量は、例えば、タンパク質の場合、成人(体重約60kg)の場合、約1μg〜約1000mg、好ましくは約5μg〜約100mgであり得る。細胞生理活性物質の量の範囲の下限は、例えば、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約15μg、約20μgなど、約1μg〜約1mgの間の任意の数値であり得る。細胞生理活性物質の量の範囲の上限は、例えば、約1000mg、約900mg、約800mg、約700mg、約600mg、約500mg、約400mg、約300mg、約200mg、約100mg、約75mg、約50mg、約25mg、約10mg、約5mgなど、約1000mg〜約1mgの任意の数値であり得る。核酸の場合、成人(体重約60kg)の場合、約1μg〜約10mg、好ましくは約1μg〜約1000μg、より好ましくは約5μg〜約400μgであり得る。細胞生理活性物質の量の範囲の下限は、例えば、約1μg、約2μg、約3μg、約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約15μg、約20μgなど、約1μg〜約20μgの間の任意の数値であり得る。細胞生理活性物質の量の範囲の上限は、例えば、約10mg、約9mg、約8mg、約7mg、約6mg、約5mg、約4mg、約3mg、約2mg、約1mg、約750μg、約500μg、約250μg、約100μgなど、約10mg〜約10μgの任意の数値であり得る。2種類以上の細胞生理活性物質が含まれる場合も、上記の量が個々に適用される。ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターとして投与される場合は、通常、0.0001〜100mg、好ましくは0.001〜10mg、より好ましくは0.01〜1mgである。投与頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。
本発明の組成物およびキットにおいて含まれる細胞の量は、例えば、約1×10細胞〜約1×1011細胞、好ましくは約1×10細胞〜約1×1010細胞、より好ましくは約1×10細胞〜約1×10細胞などであり得る。これらの細胞は、例えば、約0.1ml、0.2ml、0.5ml、1mlの生理食塩水のような溶液として存在し得る。細胞の量の範囲の上限としては、例えば、約1×1011細胞、約5×1010細胞、約2×1010細胞、約1×1010細胞、約5×10細胞、約2×10細胞、約1×10細胞、約5×10細胞、約2×10細胞、約1×10細胞、約5×10細胞、約2×10細胞、約1×10細胞などが挙げられる。細胞の量の下限としては、例えば、約1×10細胞、約2×10細胞、約5×10細胞、約1×10細胞、約2×10細胞、約5×10細胞、約1×10細胞、約2×10細胞、約5×10細胞、約1×10細胞などが挙げられる。
組成物およびキットの処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方、などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、投与すべき細胞生理活性物質および細胞量を決定することができる。
1つの実施形態において、本発明のキットに備えられる指示書には、上記細胞生理活性物質を上記細胞の生物の器官への移植の前に投与することを指示する文言が記載され得る。特定の実施形態では、細胞生理活性物質を事前に投与することにより、損傷部位およびその周辺部位が組織再生により適した状況となるからである。
別の実施形態において、上記指示書には、上記細胞生理活性物質および上記細胞を生物の器官の傷害部位または心虚血部位へと投与することを指示する文言が記載され得る。
別の実施形態において、上記指示書には、上記生物の器官が心不全、心筋梗塞、心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症などの心疾患から選択される状態であるときに、上記投与を指示する文言が記載され得る。このような心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択され得る。特に好ましい実施形態では、この心疾患は、拡張型心筋症である。
他の局面において、本発明は、生物の器官の組織を再生するための方法を提供する。この方法は、細胞生理活性物質を生物の器官(たとえば、心臓または心臓へ送達され得る部位)へ提供する工程;および細胞を生物の器官へ提供する工程、を包含する。
他のさらなる局面において、本発明は、心疾患を治療するための方法を提供する。この方法は、細胞生理活性物質を生物の器官(たとえば、心臓または心臓へ送達され得る部位)へ提供する工程;および細胞を生物の器官へ提供する工程、を包含する。
本発明の方法の1つの実施形態において、上記細胞生理活性物質は、造血活性、コロニー刺激活性または細胞増殖活性を有し得る。別の実施形態において、上記細胞生理活性物質は、造血活性またはコロニー刺激活性を有し得る。好ましくは、上記細胞生理活性物質は、細胞増殖活性を有し得る。
別の好ましい実施形態において、上記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用の少なくとも1つの活性を有し得る。より好ましくは、上記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用の両方を有し得る。
他の実施形態において、上記細胞生理活性物質は、キナーゼ型レセプターをレセプターとして有し得る。より好ましくは、上記細胞生理活性物質は、チロシンキナーゼ型レセプターをレセプターとして有し得る。好ましくは、上記細胞生理活性物質は、そのレセプターがc−metである細胞生理活性物質であり得る。
他の実施形態において、上記細胞生理活性物質は、FGF、HGFおよびVEGFからなる群より選択され得る。好ましくは、上記細胞生理活性物質は、HGFであり得る。他の好ましい実施形態では上記細胞生理活性物質は、VEGFであり得る。
他の実施形態において、上記細胞は、幹細胞(例えば、胚性幹細胞または組織幹細胞)または分化した細胞であり得る。
別の実施形態において、上記細胞は、外胚葉、中胚葉または内胚葉に由来する幹細胞であり得る。好ましくは、上記細胞は、中胚葉に由来する幹細胞であり得る。より好ましくは、上記細胞は、造血幹細胞または間葉系幹細胞であり得る。さらに好ましくは、上記細胞は、間葉系幹細胞であり得る。他の好ましい実施形態では、上記細胞は、骨髄系の組織幹細胞であり得る。別の好ましい実施形態では、上記細胞は、間葉系幹細胞に由来する分化細胞であり得る。
他の好ましい実施形態において、上記細胞は、心筋細胞、骨格筋芽細胞および骨芽細胞からなる群より選択され得る。別の好ましい実施形態では、上記細胞は、骨髄由来であり得る。
他の実施形態において、上記細胞は、初代培養心筋細胞または分化させた心筋細胞であり得る。
他の実施形態において、上記細胞は、同系由来、同種異系由来または異種由来の細胞であり得る。同系由来が好ましい。同種異系由来の場合は、拒絶反応を起こさない系統のものが好ましいが、起こすものも必要に応じて拒絶反応を解消する処置を行うことにより利用することができる。異種由来の細胞もまた、拒絶反応が問題にならない場合または必要に応じて拒絶反応を解消する処置を講じる場合に使用され得る。従って、本発明の方法の好ましい実施形態では、本発明の方法は、拒絶反応を回避する工程をさらに包含する。拒絶反応を回避する手順は当該分野において公知であり、例えば、非特許文献34に記載されている。そのような方法としては、例えば、免疫抑制剤、ステロイド剤の使用などの方法が挙げられる。拒絶反応を予防する免疫抑制剤は、現在、「シクロスポリン」(サンディミュン/ネオーラル)、「タクロリムス」(プログラフ)、「アザチオプリン」(イムラン)、「ステロイドホルモン」(プレドニン、メチルプレドニン)、「T細胞抗体」(OKT3、ATGなど)があり、予防的免疫抑制療法として世界の多くの施設で行われている方法は、「シクロスポリン、アザチオプリン、ステロイドホルモン」の3剤併用である。免疫抑制剤は、本発明の併用療法と同時期に投与されることが望ましいが、必ずしもひつようではない。従って、免疫抑制効果が達成される限り免疫抑制剤は本発明の併用療法の前または後にも投与され得る。
本発明の方法において、上記細胞生理活性物質は、タンパク質形態または核酸形態であり得る。核酸形態の場合、上記細胞生理活性物質は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの形態で存在し得る。核酸形態の場合はまた、上記細胞生理活性物質は、HVJリポソームの形態で存在し得る。
1つの実施形態において、本発明の方法では、細胞生理活性物質および/または細胞は、徐放性形態で提供され得る。本発明の生物の器官の組織を再生するための方法で使用される組成物またはキットはまた、さらに生体親和性材料を含み得る。この生体親和性材料は、例えば、シリコーン、コラーゲン、ゼラチンおよびグリコール酸・乳酸の共重合体からなる群より選択される少なくとも1つを含み得る。
本発明の方法で使用される細胞生理活性物質は、2種類以上の細胞生理活性物質であり得る。2種類以上の細胞生理活性物質が使用される場合、類似の機能を発揮する細胞生理活性物質が組み合わされてもよく、異なる機能を有する細胞生理活性物質が補完的に組み合わされてもよい。これらの細胞生理活性物質は、同時に投与されても別の時期に投与されてもよい。
本発明の方法では、他の薬剤でのさらなる処置が施され得る。そのような薬剤は、薬学において公知の任意の薬剤であり得る。そのような薬剤は、2種類以上の他の薬剤であり得る。そのような薬剤としては、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方の最新版において掲載されているものなどが挙げられる。そのような薬剤は、好ましくは、生物の器官のに対して効果を有するものであり得る。
他の実施形態において、上記細胞は2種類以上の細胞を含み得る。2種類以上の細胞を使用する場合、類似の性質または由来の細胞を使用してもよく、異なる性質または由来の細胞を使用してもよい。
本発明において使用される細胞は、どのような生物に由来する細胞でもよい。1つの実施形態では、脊椎動物から得られた細胞であり得る。別の実施形態では、上記細胞は、哺乳動物の細胞である。好ましい実施形態では、上記細胞は霊長類の細胞であり、最も好ましくは、ヒト細胞である。
本発明では、上記生物は、どのような生物でもよい。1つの実施形態では、上記生物は、脊椎動物である。別の実施形態では、上記生物は、哺乳動物である。好ましい実施形態では、上記生物は霊長類であり、最も好ましい実施形態では、上記生物はヒトである。
本発明では、上記器官はどのような器官でもよい。1つの実施形態では、上記器官は、虚血性病変を伴う器官であり得る。別の実施形態では、上記器官は、心臓、脳、肺、膵臓、肝臓、四肢末梢および網膜からなる群より選択される。好ましくは、上記器官は、心臓であり得る。別の好ましい実施形態では、上記器官は、脳である。他の好ましい実施形態では、上記器官は、肺である。
本発明の方法において使用される細胞生理活性物質および細胞の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、被験体の年齢、体重、性別、既往歴、細胞生理活性物質の形態または種類、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
本発明の方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1週間−1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
好ましい実施形態では、上記細胞生理活性物質の提供工程は、上記細胞を生物の器官のへ提供する工程の前に行われ得る。細胞生理活性物質を事前に投与することにより、損傷部位およびその周辺部位が組織再生により適した状況となるからである。
好ましい実施形態では、上記細胞生理活性物質および上記細胞は、生物の器官のの傷害部位または心虚血部位へと投与され得る。
1つの実施形態において、上記器官は心臓である。特定の実施形態において、この心臓は、特に難治性心不全である。難治性心不全については、従来根本的な治療、移植を伴わないなどの簡便な治療が実質的に存在しなかったことから、このような難治性心不全にとっては実質的に初めて治療法が提示されたことになり、医学界におけるその効果、意義は絶大である。従って、心臓疾患としては、たとえば、心不全、心筋梗塞および心筋症、拡張型心筋症から選択される疾患であり得る。難治性心不全としては、たとえば、心筋症のうち、たとえば、心筋炎、拡張型心筋症、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症などが挙げられる。これらの炎症は、本発明によってもたらされる心筋などの再生によって実質的に初めて治療が達成されたことから、史上初めて治療方法および治療技術を提供するという顕著な効果が達成される。
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、本発明の遺伝子をコードする配列を含む核酸は、本発明の併用療法において、遺伝子治療の目的で投与され得る。遺伝子治療とは、発現されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタンパク質は治療効果を媒介する。
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る。例示的な方法は、以下のとおりである。
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
したがって、本発明では、HGFなどの細胞生理活性物質またはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子を用いた遺伝子治療が有用であり得る。
本明細書において「診断、予防、処置または予後上有効な量」とは、それぞれ、診断、予防、処置(または治療)または予後において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
本発明が対象とする動物は、神経系または類似の系を有するものであれば、どの生物(例えば、動物(たとえば、脊椎動物、無脊椎動物))でもよい。好ましくは、脊椎動物(たとえば、メクラウナギ類、ヤツメウナギ類、軟骨魚類、硬骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳動物など)であり、より好ましくは、哺乳動物(例えば、単孔類、有袋類、貧歯類、皮翼類、翼手類、食肉類、食虫類、長鼻類、奇蹄類、偶蹄類、管歯類、有鱗類、海牛類、クジラ目、霊長類、齧歯類、ウサギ目など)であり得る。例示的な被験体としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれらに限定されない。さらに好ましくは、霊長類(たとえば、チンパンジー、ニホンザル、ヒト)由来の細胞が用いられる。最も好ましくはヒト由来の細胞が用いられる。
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられるがそれらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、細胞生理活性物質またはその改変体もしくはフラグメントなどのポリペプチドまたはポリヌクレオチド、またはその改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的な他の物質を補充することが可能である。
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性であり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエチレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、スクロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTris緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトールまたはその適切な代替物を含み得る。
以下に本発明の医薬組成物の一般的な調製法を示す。なお、動物薬組成物、医薬部外品、水産薬組成物、食品組成物および化粧品組成物等についても公知の調製法により製造することができる。
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドなどは、薬学的に受容可能なキャリアと配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、座剤等の固形製剤、またはシロップ剤、注射剤、懸濁剤、溶液剤、スプレー剤等の液状製剤として経口または非経口的に投与することができる。薬学的に受容可能なキャリアとしては、上述のように、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、崩壊阻害剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、溶解補助剤、安定化剤、液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が挙げられる。また、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を用いることができる。また、本発明の組成物には本発明の細胞生理活性物質のポリヌクレオチド形態、ポリペプチド形態など以外の物質を配合することも可能である。非経口の投与経路としては、静脈内注射、筋肉内注射、経鼻、直腸、膣および経皮等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における賦形剤としては、例えば、グルコース、ラクトース、スクロース、D−マンニトール、結晶セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、カオリンおよび尿素等が挙げられる。
固形製剤における滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ホウ酸末、コロイド状ケイ酸、タルクおよびポリエチレングリコール等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、白糖、D−マンニトール、結晶セルロース、デキストリン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン溶液、ゼラチン溶液、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、およびシェラック等が挙げられる。
固形製剤における崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カンテン末、ラミナラン末、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、ステアリン酸モノグリセリド、ラクトースおよび繊維素グリコール酸カルシウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における崩壊阻害剤の好適な例としては、水素添加油、白糖、ステアリン、カカオ脂および硬化油等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸収促進剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩基類およびラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における吸着剤としては、例えば、デンプン、ラクトース、カオリン、ベントナイトおよびコロイド状ケイ酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における保湿剤としては、例えば、グリセリン、デンプン等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における溶解補助剤としては、例えば、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤における安定化剤としては、例えば、ヒト血清アルブミン、ラクトース等が挙げられるがそれらに限定されない。
固形製剤として錠剤、丸剤等を調製する際には、必要により胃溶性または腸溶性物質(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)のフィルムで被覆していてもよい。錠剤には、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーテイング錠あるいは二重錠、多層錠が含まれる。カプセル剤にはハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。座剤の形態に成形する際には、上記に列挙した添加物以外に、例えば、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、半合成グリセライド等を添加することができるがそれらに限定されない。
液状製剤における溶剤の好適な例としては、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油およびトウモロコシ油等が挙げられる。
液状製剤における溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウムおよび塩酸プロカイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるがそれらに限定されない。
液状製剤における抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロールおよびシステイン等が挙げられるがそれらに限定されない。
注射剤として調製する際には、液剤および懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であることが好ましい。通常、これらは、バクテリア保留フィルター等を用いるろ過、殺菌剤の配合または照射によって無菌化する。さらにこれらの処理後、凍結乾燥等の方法により固形物とし、使用直前に無菌水または無菌の注射用希釈剤(塩酸リドカイン水溶液、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、エタノールまたはこれらの混合溶液等)を添加してもよい。
さらに、必要ならば、医薬組成物は、着色料、保存剤、香料、矯味矯臭剤、甘味料等、ならびに他の薬剤を含んでいてもよい。
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤(日本薬局方第14版またはその最新版、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gennaro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥されたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
様々な送達系が公知であり、そして本発明の化合物を投与するために用いられ得る(例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなど)。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路が挙げられるがそれらに限定されない。化合物または組成物は、任意の好都合な経路により(例えば、注入またはボーラス注射により、上皮または粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を通しての吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の薬学的化合物または組成物を、任意の適切な経路(脳室内注射および髄腔内注射を包含し;脳室内注射は、例えば、Ommayaリザーバのようなリザーバに取り付けられた脳室内カテーテルにより容易にされ得る)により中枢神経系に導入することが望まれ得る。例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化剤を用いた処方により、肺投与もまた使用され得る。
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは組成物を、処置の必要な領域(例えば、心臓など)に局所的に投与することが望まれ得る;これは、制限する目的ではないが、例えば、手術中の局部注入、局所適用(例えば、手術後の創傷包帯との組み合わせて)により、注射により、カテーテルにより、坐剤により、またはインプラント(このインプラントは、シアラスティック(sialastic)膜のような膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、または膠様材料である)により達成され得る。好ましくは、抗体を含む本発明のタンパク質を投与する際、タンパク質が吸収されない材料を使用するために注意が払われなければならない。
別の実施形態において、化合物または組成物は、小胞、特に、リポソーム中に封入された状態で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−BeresteinおよびFidler(編),Liss,New York,353〜365頁(1989);Lopez−Berestein,同書317〜327頁を参照のこと;広く同書を参照のこと)。あるいは、化合物または組成物は、ゼラチンなどの遺伝子導入促進物質とともに投与され得る。
さらに別の実施形態において、化合物または組成物は、制御された徐放系中で送達され得る。1つの実施形態において、ポンプが用いられ得る(Langer(前出);Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、高分子材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,SmolenおよびBall(編),Wiley,New York(1984);RangerおよびPeppas,J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。
さらに別の実施形態において、制御された徐放系は、治療標的、即ち、脳の近くに置かれ得、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,(前出),第2巻,115〜138頁(1984)を参照のこと)。
他の制御された徐放系は、Langerにより総説において議論される(Science 249:1527−1533(1990))。
本明細書中、「投与する」とは、本発明の細胞生理活性物質(たとえば、ポリペプチド形態、ポリヌクレオチド形態、またはその他の形態の因子)および細胞を含む医薬を、単独で、または他の治療剤と組み合わせて、生体に取り込ませることを意味する。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時に投与される手順もまた含む。「組み合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤あるいは細胞のうちの1つを別々に投与することをさらに含む。ある実施形態では、本発明では、細胞と細胞生理活性物質とは別々に投与され得る。
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬、医薬などを投与する手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
本発明の方法による治療の終了の判断は、商業的に利用できるアッセイもしくは機器使用による標準的な臨床検査室の結果または本発明が対象とする疾患(例えば、拡張型心筋症などの心疾患)に特徴的な臨床症状の消滅によって支持され得る。治療は、対象とする疾患(例えば、拡張型心筋症などの心疾患)の再発により再開することができる。
このように、本発明により生物の器官の移植および医療機器での補助システムを全くまたはほとんど使用することなく、損傷した生物の器官の組織を再生することが可能になった。これは、生物の器官の移植以外には実質的に根本的な治癒が期待できなかった重症心不全、重症心筋梗塞、心筋症などの患者に対して、新規な救済処置を提供することになった。従って、このような効果は、従来技術にはない格別な効果であるといえ、その有用性は筆舌に尽くしがたい。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
以下に示した実施例において使用した試薬は、特に言及しない限り和光純薬、Sigmaから得た。
(実施例1:HGFと心筋細胞移植との併用療法)
本実施例では、例示として、HGFと心筋細胞移植とを用いて、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ラットモデル
44匹の雄性Lewis系統ラットを本実施例において用いた。NationalSociety for Medical Researchが作成した「Principles of Laboratory Animal Care」、およびInstituteof Laboratory Animal Resourceが作成しNational Intitute of Healthが公表した「Guide for theCare and Use of Laboratory Animals」(NIH Publication No.86-23,1985改訂)に遵って、動物愛護精神に則った世話を動物に対して行った。
急性心筋梗塞を非特許文献13に記載されるように誘導した。簡潔には、ラット(300g、8週齢)をペントバルビタールナトリウムで麻酔をし、陽圧式呼吸を行った。ラットの心筋梗塞モデルを作製するために、左第四肋間で胸郭を開き左冠動脈を根元から3mmの距離で、8−0ポリプロピレン糸で完全に結紮した。
心筋の単離および培養
心筋細胞を、非特許文献14に記載されるように新生Lewis系統ラットから単離した。簡潔には、生後1-2日後の新生仔Lewisラットより心筋細胞を単離した。新生仔ラットを犠死させ、すばやく心臓を摘出し、PBSにて数回洗浄した。摘出心を砕片し、collagenase-Trypsin存在下に、37℃、30分間静置し、数回ピペッティングを行った。溶解した心臓をメッシュに通し、10mlの10%DMEMを添加した。この溶液を1000回転5分間遠心し、沈殿物を10%DMEMに溶解し、1時間37℃にてpreplatingを行い、心筋細胞を純化した。
心臓へのヒトHGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトHGF cDNA(配列番号1)を、pUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れた。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は非特許文献16の記載に従っておこなった。以下に簡潔に示す。DNA溶液200μlを加え、30秒間振盪し、37度恒温槽に30秒間静置する。これを8回繰り返す。5秒間超音波処理をし、30秒間振盪する。0.3mlのBSSを加え、37度恒温槽で振盪する。不活化したHVJを加え、氷上で10分間置く。37度恒温槽にて1時間振盪する。超遠心チューブに60%と30%のショ糖溶液をそれぞれ1ml、6mlで重層し、HVJリポソーム液をのせ、BSSをチューブの付近まで加える。62,800g、4度で1.5時間超遠心する。30%ショ糖溶液層のすぐ上を回収し、4度に保存し、遺伝子導入に用いた。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体(15μgのヒトHGF cDNAを含む)を心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、hHGF cDNAのがんyベクターを梗塞を起こした心筋にトランスフェクトした。心臓組織におけるヒトHGF濃度を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体(日本、東京、株式会社特殊免疫研究所(Institite of Immunology))を用いて酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)で測定した(非特許文献17)。完結には抗原をPBSにて1μgに調製し、ELISA用の96穴プレートに50 ng(50μl)ずつ加え、PBSで2-3回水洗した後、Blocking solutionを200μl/well加え室温で2時間放置する。一次抗体を加える。室温1時間放置した後、2次抗体を加え、室温で1時間放置する。反応を止めたのち、405 nmの求光度で定量する。
心筋細胞移植
レシピエントラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させた。このラットを心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。T群(新生ラット心筋細胞懸濁物(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml、n=11);H群(ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体投与、n=10);T−H群(新生ラット心筋細胞懸濁物と、ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体同時投与、n=10);C群(培養培地単独、n=13)。これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いて左前下降枝結紮2週後に梗塞部位に移植した。
ラット心臓の心機能の測定
梗塞モデル作成2週後、移植後4週、8週後に、心臓超音波(SONOS5500, Agilent Technologies社製)にて心機能を測定した。12-MHzのtransducerを用い、左側方より、左室が最大径を示す位置で、短軸像を描出した。B-modeにて、左室収縮末期面積(endsystolic area)、M-modeにて、左室拡張末期径(LVDd)、左室収縮末期径(LVDs)、左室前壁厚(LVAWTh)を測定し、LVEF、LVFSを算出した。
LVEF(%)=((LVDd−LVDs)/LVDd)×100
LVFS(%)=((LVDd−LVDs)/LVDd)×100
心筋コントラスト剤での心エコー検査
ラットをペントバルビタールナトリウムで麻酔し、陽圧呼吸を行った後、21Frのカテーテルを、右の大腿静脈に挿入し、コントラスト剤Levobist(日本、大阪、日本シエリング(Schering Corporation))を注入した。SONOS5500を用いて、左室短軸像を描出し、評価を行った。
1. 画像面の深さ、パワー、ゲイン、リジェクションおよび周波数設定を実験のはじめに最適化し、そして実験中は変更しなかった。コントラスト剤の注射前およびその間に撮った画像はすべて、ビデオ記録して後に分析した。非特許文献19を参考にして、梗塞部位および非梗塞領域の局所血流を、評価した。
右大腿静脈に挿入したカテーテルより約0.3ml/kgのコントラスト剤を注入した。収縮末期の像をコンピュータに保存し、この収縮末期像より、各領域の時間強度曲線を作成した。時間強度曲線が山型のピークを示した時、灌流良好と判定した。他方、平坦な時間強度曲線を示した場合、灌流不良と判定した。
組織学的分析
心筋細胞移植後、8W後に心臓を摘出し、短軸にて切断し、10%ホルムアルデヒド溶液につけ、パラフィン固定を行った。切片を作成し、ヘマトキシリンーエオジン染色、マッソン-トリクローム染色を行った。また同時期の凍結切片を作成し、FactorVIII免疫染色、各種接着蛋白(インテグリン、ラミニン、α-ジストログリカン、β1-ジストログリカン)免疫染色を行った。
血管数を定量化するため、第VIII因子関連抗原の免疫組織化学染色を行った。凍結切片をPBS中の2%パラホルムアルデヒド溶液で5分間、室温にて固定し、3%過酸化水素を含むメタノール中に15分間浸漬し、次いでPBSで洗浄した。このサンプルをウシ血清アルブミン溶液(DAKO LSAB Kit CORPORATION、デンマーク)で10分間覆って、非特異的反応をブロックした。標本を、HRPと結合した、第VIII因子関連抗原に対するEPOS結合体化抗体(DAKO EPO Anti−Human Von Wille brand Factor/HRP、DAKO、デンマーク)と共に一晩浸透した。サンプルをPBSで洗浄した後、これらを、ジアミノベンジジン溶液(PBS中、0.3mg/mlジアミノベンジジン)中に浸透した。染色された血管内皮細胞を、200倍の倍率の光学顕微鏡下で計数した。計数結果を、1平方ミリメートルあたりの血管の数としてあらわした。
いくつかの接着蛋白の免疫染色を行うため、以下の抗体を用いた。一次抗体、ラミニンに対するウサギポリクローナル抗体(ICN Biomedicals,USA)、β1−インテグリンに対するハムスターモノクローナル抗体(住友電気工業株式会社(Sumitomo Electric Industries)、日本、大阪)、α−ジストログリカン(alpha-Dystroglycan)に対するマウスモノクローナル抗体(Upstate Biotechnology,Lake Placid,NY 12946)およびβ−ジストログリカンに対するマウスモノクローナル抗体(CASTRA NOVO,UK);二次抗体、ビオチン化抗ウサギ免疫グロブリン(DAKO,Denmark)、ビオチン化抗ハムスター免疫グロブリン(Vector laboratories,USA)およびビオチン化抗マウス免疫グロブリン(Amersham Pharmacia Biotech,UK)。
データ分析
データを、平均±標準偏差として表した。群間の差の有意性を評価するために、独立t検定によって統計学的評価を行った。有意なF比が得られた場合、2因子反復測定分散分析を用いて評価した。0.05未満のp値を有する場合、統計学的有意差があると決定した。
(結果)
in vivoでの心臓のヒトHGF遺伝子導入
ヒトHGFを心臓に遺伝子導入した3日後、遺伝子導入された心臓のHGFタンパク質含量を測定した。ヒトHGFタンパク質含量を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体を用いたELISA法にて測定した。ヒトHGF遺伝子を遺伝子導入した心臓において、遺伝子導入後3日目に7±1.2ng/gのヒトHGFタンパク質を検出した。一方、ヒトHGF遺伝子を含まないリポソームを注入した群においては、ヒトHGFタンパクを検出しなかった(図1)。
心機能評価
術前における駆出率、左室短縮率、左心室収縮末期断面積および左室前壁厚は、4つの群の間で有意差を認めなかった。
注射の4週間後、心エコー検査を行ったところ、T−H群における駆出率(図2)および左室短縮率(図3)は、他の3つの群と比較して有意な改善を示した。これらの機能改善は、移植後8週間まで維持された。左室収縮末期断面積は、移植の4週後および8週後において、T−H群では他の群よりも有意に縮小した(図4)。移植の4週後、左室前壁は、T−H群では有意に増加した。そしてこの壁厚は、移植後8週まで維持された(図5)。
組織学的評価
T−H群は、他の群と比較して、左室前壁厚の有意な増加および左室断面積の有意な減少を示した。T群およびT−H群において、移植心筋細胞は、梗塞巣に層状に生着した。左室前壁は、T−H群において顕著な増大を認めた。さらに、T−H群において、移植した心筋細胞は、著明に重合したサルコメアを形成した。(図6)。マッソンートリクローム染色法により、T群と比較してT−H群において線維化の有意な減少を認めた。非梗塞領域での線維化率は、他の群と比較して、T−H群において有意に減少した(T−H:T:H:C=13.5±3.5:24.5±6.8:18.5±12.0:36.7±8.2%;P<0.05)(図7)。
移植の8週後、T−H群において、心筋細胞表面にてβ1-インテグリンおよびβ−ジストログリカンは強く濃染された。T群では、β1-インテグリンおよびβ−ジストログリカンの発現を認めたが、T−H群と比較して、発現は顕著に弱く、そして、H群およびC群においては、発現を認めなかった。α−ジストログリカンおよびラミニンの発現は、T−H群において、基底膜に強い濃染性を認めた。T群においては、極めて弱い発現を認めた。H群およびコントロール群において染色性を認めなかった(図6)。
梗塞巣内の血管密度を評価するために、光学顕微鏡を用いて、第VIII因子関連抗原陽性細胞を計数した。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高値であった(T−H:T:H:C=14.2±2.3:3.9±0.7:4.9±0.6:1.5±0.7×10/mm;P<0.05)(図8)。
梗塞巣における血液灌流の改善
T−H群についての時間−強度曲線は、ピークを伴った山型の曲線を示し、梗塞巣における血液灌流が良好であった。他方、H群、T群およびC群は、平坦な時間−強度曲線を示し、血液灌流は不良であった。
(考察)
心臓移植および左心補助人工心臓の装着は、普遍的な治療とはなりえず、これまでの置換型治療にかわる新しい治療法として再生型治療が注目されている。不全心に、いくつかの増殖因子を遺伝子導入することにより、血管新生を促進し、心機能の改善が得られることが報告されている。しかし、この機能改善は、血管新生のみによるものであり、左室拡張の一つの原因である梗塞巣を治療対象としていないため、心筋細胞の欠失を伴った心不全の治療には、不十分であるものと思われる。他方、心筋細胞移植は、心筋細胞が絶対的に減少した梗塞部に対する治療であり、虚血および間質の線維化に対して無治療のままである。それゆえ、本発明者らは、心筋細胞移植を、心筋再生・血管新生因子の遺伝子治療を併用することにより、各々の治療の欠点を補い、そしてより優れた心筋再生効果をもたらすと仮定した。
本発明の併用療法の効果を調べるために、本発明者らは、ラット心筋梗塞モデルにおいて心機能評価、および組織学的評価を行った。本発明の併用療法により、心筋の再生、血管新生、線維化の軽減、および左室前壁厚の顕著な増加を認めた。移植心筋細胞間、移植心筋細胞-細胞外マトリックス間の接着蛋白の発現増強を認めた。心筋細胞移植とhHGF遺伝子導入併用療法は、梗塞心の心筋再生に有用であることが示唆された。
移植細胞への血液供給は、移植細胞のviabilityの維持に重要である。Taylorらは、移植した細胞の分化増殖において、移植細胞を栄養する血管の構築は、不可欠であることを述べている(非特許文献6)。さらに、ReinlibおよびFieldは、移植された心筋細胞は、虚血に弱く、細胞移植に加え、血管を新生させる付加治療が必要であると強調している(非特許文献7)。本研究において、移植細胞は十分な血液の供給を受けることにより、良好な細胞-細胞間の接着、および著明に発達したサルコメアを形成した。よって、移植細胞に十分血液を供給することは、移植細胞のviabilityの維持に重要であると思われる。
これまで、多くの血管新生因子が報告されており、その中でVEGFは公知の最も強力な因子である。しかし、過度のVEGFは、多数の未熟な血管を誘導し、顕著な出血および浮腫をもたらす。HGFもまた、強力な血管新生因子であり、Morishitaらは、HGFによる閉塞性動脈硬化症患者に対する血管新生療法は有効であることを報告している(非特許文献8)。さらに、HGFは、血管新生因子であるだけでなく、抗線維化作用および心筋肥大作用を含む種々の機能を有することで知られている。また、HGFはautocrine、paracrine作用を有し、レシピエント心、および移植細胞に対して、その効果を発揮するものと思われる。よって、HGF遺伝子導入と心筋細胞移植の併用は、不全心の機能組織再生に有効であるものと思われる(非特許文献11)。
移植細胞間接着および移植細胞−細胞外マトリクス間接着は、移植細胞の生着、機能維持の点で重要である。免疫染色にて、β1−インテグリンおよびβ−ジストログリカンは、心筋細胞膜上で強発現を認め、α−ジストログリカンおよびラミニンも、基底膜において強い発現を認めた。インテグリンは、細胞−細胞外マトリクス接着において、最も重要な分子である。インテグリンを介する細胞−細胞外マトリクス間接着が阻害された場合、細胞は「アノイキス(anoikis)」と呼ばれる、アポトーシスに陥る。また、細胞は、インテグリンによって媒介される細胞−マトリクス相互作用を通して、種々の機能(細胞の増殖、分化、細胞の運動性およびタンパク質産生)を発揮する。本発明の併用療法群により、β1−インテグリンが細胞膜上で極めて強い発現を認めたことより、細胞外マトリクスとの接着により、移植心筋細胞が、最も効果的に機能する可能性があるものと思われる。インテグリン分子以外に、筋原性細胞は、その機能を発揮するため、ジストログリカンを必要とする。β−ジストログリカンは、骨格筋細胞膜上に発現し、そして、アクチンフィラメントに結合しているジストロフィンと呼ばれる別の分子に細胞内で結合している。また、細胞外では、β−ジストログリカンは、α−ジストログリカンと結合し、これは、基底膜に存在するラミニンと結合する。β−ジストログリカンは、細胞膜上にて、αサブユニット、βサブユニット、γサブユニットおよびδサブユニットから構成されるサルコグリカン(sarcoglycan)複合体に結合している。α−ジストログリカンおよびβ−ジストログリカンは、サルコグリカン複合体と共に複合体を形成する。この複合体は、ジストロフィンと結合し、骨格筋の機能において重要な役割を果たす:この系におけるこの分子の点変異は、いくつかの種類の筋ジストロフィーを引き起こすことが知られている。近年、この接着系は、心筋細胞においても重要であることが報告され、これらの分子における変異は、心筋症を引き起こし得る(非特許文献20)。本発明の併用療法群によって、α−ジストログリカンおよびβ−ジストログリカンが強発現したことより、HGF遺伝子導入と心筋細胞移植を併用することにより、心筋細胞における別の細胞接着分子の発現が誘導されている可能性があるものと思われる。ラミニンは、基底膜の主成分である。ラミニンレセプターとしては、筋原性細胞膜上の、インテグリンならびにα−ジストログリカンおよびβ−ジストログリカン複合体が挙げられる。併用療法により、基底膜におけるラミニンの発現が増強されることは、移植された心筋細胞が基底膜のラミニンに最も有効に接着し得るだけでなく、併用療法が細胞−細胞外マトリクス接着の再構築を通して、移植細胞が生着するための、最も適切な微小環境を誘導し得ることを示唆するものと思われる。
心筋梗塞では、機能不全に陥った心筋細胞は線維芽細胞に置き換わり、間質の線維化が起こる(非特許文献21)。特に、非梗塞領域における間質の線維化は、虚血性心筋症における「左室拡大の主な原因」であると考えられる(非特許文献22)。従って、心筋細胞移植を行う場合でさえ、梗塞心の完全な再生のためには、間質の線維化に対する付加治療が必要と思われる。
TGF-βおよびアンギオテンシン-IIは、不全心の線維化に重要な役割を果たすと考えられている(非特許文献23)。興味深いことに、これらの分子は、局所HGF産生の強力な負の調節因子である(非特許文献24、25)。さらに、HGFは、その抗線維化作用だけでなく(非特許文献9)、アンギオテンシン-II産生の阻害作用により(非特許文献26)、不全心の線維化を抑制する。本発明では、HGFは、おそらく、これらの機構を通して、非梗塞領域の線維化を顕著に抑制することが考えられる。
心筋細胞移植とHGF遺伝子導入との併用療法にて、血管の構築、線維化の抑制、移植心筋細胞の著明に重合したサルコメア形成を主とした組織再生がもたらされ、強力な左室拡大抑制と、心収縮能の回復が認められた。このようにHGFと心筋細胞の移植を用いた併用療法は梗塞心の組織機能再生に有効であることが実証された。
(実施例2:FGFと心筋細胞移植との併用療法)
次に、本実施例では、例示としてFGFと心筋細胞移植とを用いて、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ラットモデル
心筋梗塞ラットモデルは、実施例1に記載のように作製した。
心筋細胞
心筋細胞は、実施例1に記載されるように単離および培養を行った。
FGF
FGFは、核酸送達系を利用して送達した。具体的には、ヒトFGF cDNAを、pUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れた。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は、実施例1と同様に行った。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体を心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、空のベクターを梗塞を起こした心筋に遺伝子導入した。心臓組織におけるヒトFGF濃度を、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)で測定した(非特許文献17)。
細胞移植
レシピエントラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させた。このラットを心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。4群は以下のとおりである。T群(胎児ラット心筋細胞移植(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml);F群(ヒトFGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体を投与);T−F群(胎児ラット心筋細胞移植と、ヒトFGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ);C群(培養培地単独)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いたLAD結紮の2週間後に心筋梗塞領域に注射した。
ラット心臓の心機能の測定
ラット心臓の心機能測定は、実施例1に記載されるように行った。
心筋コントラスト心エコー検査
心筋コントラストの心エコー検査もまた、実施例1に記載されるように行った。
組織学的分析
組織学的分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
インビボでの心臓のFGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトFGFを用いて心臓に遺伝子導入した3日後、本発明者らは、遺伝子導入された心臓のFGFタンパク質含量を測定した。ヒトFGFタンパク質含量を、抗ヒトFGFモノクローナル抗体を用いたELISAを用いて測定した。FGF遺伝子で遺伝子導入した心臓は、遺伝子導入後3日目に10.0ng/g組織程度のレベルでヒトFGFタンパク質を含んでいた。対照的に、ヒトFGFは、空のベクターで遺伝子導入した心臓から得られた心臓組織では検出されなかった。
梗塞を起こした心筋層の機能評価
注射の4週間後、心エコー検査では、T−H群における駆出率、および左室短縮率は、他の3つの群と比較して優れた効果が見られる。これらの機能的改善は、注射後8週間まで保たれる。
組織学的評価
T−H群は、他の群と比較して、左室前壁厚の有意な増加および左室断面積の有意な減少が見られる。T群およびT−H群において、移植心筋細胞は、梗塞巣に層状に生着が見られる。左室前壁は、T−H群において顕著な増大を認める。マッソンートリクローム染色法により、T群と比較してT−H群において線維化の有意な減少を認める。
心筋瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定された。梗塞巣内の血管密度を評価するために、光学顕微鏡を用いて、第VIII因子関連抗原陽性細胞を計数した。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも優れた効果が認められる。
瘢痕における心筋層灌流の改善
T−H群は瘢痕における良好な心筋層灌流が見られる。
(考察)
本実施例より、FGFでも本発明の併用療法が心臓組織の再生に有効であることが実証された。
(実施例3:VEGFと骨格筋芽細胞移植との併用療法)
次に、本実施例では、例示としてVEGFと心筋細胞移植とを用いて、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ビーグル犬モデル
心筋梗塞ビーグル犬モデル(体重8〜10kg、24匹)は、実施例1に記載に従って以下の改変を施して作製した。ビーグル犬を全身麻酔下、左開胸にて心臓を露出し、LAD結紮により心筋梗塞モデルを作成した。
骨格筋芽細胞移植
骨格筋芽細胞の単離および培養
骨格筋芽細胞を、同種同系ビーグル犬の下肢骨格筋から単離した。簡潔には培養液とコラゲナーゼ溶液にて灌流し、骨格筋細胞を単離培養した後、遠心分離により純度の上げ、経代培養し、骨格筋芽細胞を得た。
VEGF
VEGFは、核酸送達系を利用して送達した。具体的には、ヒトVEGF cDNAを、pUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れた。核酸送達系を利用して送達した。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は、実施例1と同様に行った。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体(125μgのヒトVEGF cDNAを含む)を心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、空のベクターを梗塞を起こした心筋に遺伝子導入した。
細胞移植
レシピエントビーグル犬を麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させた。このビーグル犬を心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群(各々6匹)に分けた。4群は以下のとおりである。VEGF群(新生ビーグル犬骨格筋芽細胞懸濁物(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml)と、ヒトVEGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ、n=6);HGF群(新生ビーグル犬骨格筋芽細胞懸濁物と、HGF cDNA(125μg)を含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ;n=6);コントロールとして、L群(新生ビーグル犬骨格筋芽細胞懸濁物と、LacZ(250μg)を含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ;n=6);S群(Sham;新生ビーグル犬骨格筋芽細胞懸濁物と、空のHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ;n=6)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いたLAD結紮の2週間後に心筋梗塞領域に注射した。
ビーグル犬心臓の心機能の測定
ビーグル犬心臓の心機能測定は、実施例1に記載されるように行った。
心筋コントラスト心エコー検査
心筋コントラストの心エコー検査もまた、実施例1に記載されるように行った。
組織学的分析
組織学的分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
インビボでの心臓のVEGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトVEGFを用いて心臓に遺伝子導入した3日後、本発明者らは、遺伝子導入された心臓のVEGFタンパク質含量を測定した。ヒトVEGFタンパク質含量を、抗ヒトVEGFモノクローナル抗体を用いたELISAを用いて測定した。VEGF遺伝子で遺伝子導入した心臓は、遺伝子導入後3日目に15.0ng/g組織程度のレベルでヒトVEGFタンパク質を含んでいた。対照的に、ヒトVEGFは、空のベクターで遺伝子導入した心臓から得られた心臓組織では検出されなかった。
梗塞を起こした心筋層の機能評価
ベースラインにおける駆出率、左室短縮率、左心室収縮末期面積および前壁厚みスコアは、4つの群の間で有意差はなかった。
注射の4週間後、2D心エコー検査を行ったところVEGF群における駆出率(示さず)および左室短縮率(示さず)は、HGF群同等の改善を示した。LAD結紮後に減少した前壁厚みは、注射の4週間後においてVEGF群では有意に回復した。そしてこの前壁の回復は、注射後8週間まで保たれた(示さず)。
このように、LacZを含むベクターおよび空のベクター(Sham)を用いて同様の処置を行った群(それぞれL群およびS群)、ならびにHGF cDNAを用いたもの(HGF)および本実施例のものを比較したところ、図9に示されるように、VEGFはHGFと同様に本発明の併用療法において統計学的に有意な有効性を示すことが実証される。
(組織学的評価)
HGF群およびVEGF群は、他の群と比較して、LV壁の厚みにおける有意な増加およびLV断面積の減少を示した。顕微鏡検査では、本発明者らは、新たに形成された心臓組織が、HGF群およびVEGF群において、LV壁のうちの梗塞を起こした領域を補うことを見出した。しかし、新たに形成されたLV壁の厚みは、HGF群およびVEGF群において顕著に増強された。さらに、横紋束を有するまっすぐでかつ厚い、充分に再生された筋節は、HGF群およびVEGF群においてのみ観察された(示さず)。マッソントリクローム染色法は、T群と比較してT−V群において線維化にたいするの有効性が示される。梗塞から離れた領域での線維症が占める面積の比率(線維化率%)は、他の群と比較して、HGF群およびVEGF群において有効性が示される。
心筋瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価した。血管を、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって識別した。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出される。
コントロールとしてL群およびS群、ならびに実施例1および本実施例のものを比較したところ、図11に示されるように、VEGF群はHGF群と同様に本発明の併用療法において統計学的に有意な有効性を示すことが実証された。
コントロール群(L群およびS群)ならびにHGF群およびVEGF群の結果を処置前のものとともに図12に示す。図から明らかなように、VEGFは、HGFと同様に、本発明の併用療法の心筋層灌流改善効果においても有効であることが実証された。
(考察)
本実施例より、VEGFでもHGFと同様に本発明の併用療法が心臓組織の再生に有効であることが実証された。
(実施例4:HGFと心筋細胞との併用療法:タンパク質形態)
次に、本実施例では、例示としてタンパク質形態のHGFの投与と心筋細胞移植とを併用して、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ラットモデル
心筋梗塞ラットモデルは、実施例1に記載のように作製した。
心筋細胞
心筋細胞は、実施例1に記載されるように単離および培養を行った。
HGF
HGFは、タンパク質形態で送達した。簡潔には、組換え産生したヒトHGFタンパク質を用いた。ヒト組換えHGFは、市販のもの(東洋紡No.HGF−101)を用いた。
約1ml(約1-100μg)のヒト組換えHGFタンパク質の生理食塩水溶液を心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、ヒト組換えHGFタンパク質溶液と同容量の生理食塩水溶液を梗塞を起こした心筋に注射した。
細胞移植
レシピエントラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させる。このラットを心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。4群は以下のとおりである。T群(胎児ラット心筋細胞(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml);H群(ヒト組換えHGFタンパク質を投与);T−H群(ヒト組換えHGFタンパク質と胎児ラット心筋細胞との組合せ);C群(培養培地単独)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いたLAD結紮の2週間後に心筋梗塞領域に注射した。
ラット心臓の心機能の測定
ラット心臓の心機能測定は、実施例1に記載されるように行った。
心筋コントラスト心エコー検査
心筋コントラストの心エコー検査もまた、実施例1に記載されるように行った。
組織学的分析
組織学的分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
(梗塞を起こした心機能評価)
ベースラインにおける駆出率、左室短縮率、左心室収縮末期面積および前壁厚みスコアには、4つの群の間で有意差はないことが確認される。
注射の4週間後、2D心エコー検査を行ったところ、T−H群における駆出率(示さず)および左室短縮率(示さず)は、他の3つの群と比較して有意な改善を示す。これらの機能的改善は、注射後8週間まで保たれる。収縮末期面積は、注射の4週間後および8週間後において、T−H群では他の群よりも有意に小さく、そしてLV収縮末期面積の拡大が、他の群と比較してT−H群で減少する(示さず)。LAD結紮後に減少した前壁厚みは、注射の4週間後においてT−H群では有意に回復するが、他の群では壁の厚みの回復は見られない。
(組織学的評価)
T−H群は、他の群と比較して、LV壁の厚みにおける有意な増加およびLV断面積の減少を示す。顕微鏡検査では、新たに形成された心臓組織が、T群およびT−H群において、LV壁のうちの梗塞を起こした領域を補うことが見出される。しかし、新たに形成されたLV壁の厚みは、T−H群において顕著に増強される。さらに、横紋束を有するまっすぐでかつ厚い、充分に再生された筋節は、T−H群においてのみ観察される(示さず)。マッソントリクローム染色法は、T群と比較してT−H群において線維症の有意な減少を示した。梗塞から離れた領域での線維症が占める面積の比率(線維化率)は、他の群と比較して、T−H群において有意に減少する(示さず)。
心筋瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定される。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出される(示さず)。
瘢痕における心筋層灌流の改善
超音波造影心臓図検査では、T−H群についての時間−強度曲線は、ピークの形をしたフローを示した。このことは、瘢痕における心筋層灌流が良好であることを示す。他方、H群、T群およびC群は、平坦な時間−強度曲線を示す。このことは、乏しい心筋層灌流を示す。
(考察)
本実施例より、タンパク質形態のHGFでも本発明の併用療法が心臓組織の再生に有効であることが実証された。
(実施例5:HGFと骨格筋芽細胞との併用療法)
次に、本実施例では、例示としてHGFと骨格筋芽細胞移植とを用いて、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ラットモデル
心筋梗塞ラットモデルは、実施例1に記載のように作製した。
骨格筋芽細胞の単離および培養
骨格筋芽細胞を、新生Lewis系統ラットの下肢骨格筋から単離した。簡潔には培養液とコラゲナーゼ溶液にて灌流し、骨格筋細胞を単離培養した後、遠心分離により純度の上げ、経代培養し、骨格筋芽細胞を得た。
心臓へのヒトHGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトHGF cDNAを、実施例1に記載のようにpUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れた。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は、実施例1に記載のように非特許文献16の記載に従っておこなった。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体(15μgのヒトHGF cDNAを含む)を心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、空のベクターを梗塞を起こした心筋に遺伝子導入した。心臓組織におけるヒトHGF濃度を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体(日本、東京、株式会社特殊免疫研究所(Institite of Immunology))を用いて酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)で測定した(非特許文献17)。具体的手順は実施例1に従って行った。
骨格筋芽細胞移植
レシピエントラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させた。このラットを心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。4群は以下のとおりである。T群(ラット骨格筋芽細胞(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml、n=5);H群(ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体を投与、n=5);T−H群(ラット骨格筋芽細胞と、ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ、n=5);C群(培養培地単独、n=5)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いたLAD結紮後2週間で心筋梗塞領域に注射した。
ラット心臓の心機能の測定
ラット心臓の心機能測定は、実施例1に記載されるように行った。
心筋コントラスト心エコー検査
心筋コントラストの心エコー検査もまた、実施例1に記載されるように行った。
組織学的分析
組織学的分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
ヒトHGFで心臓に遺伝子導入した3日後、本発明者らは、遺伝子導入された心臓のHGFタンパク質含量を測定した。ヒトHGFタンパク質含量を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体を用いたELISAを用いて測定した。HGF遺伝子で遺伝子導入した心臓は、遺伝子導入後3日目に7±1.2ng/g組織程度のレベルでヒトHGFタンパク質を含んでいた。対照的に、ヒトHGFは、空のベクターで遺伝子導入した心臓から得られた心臓組織では検出されなかった。
梗塞を起こした心筋層の機能評価
ベースラインにおける駆出率、左室短縮率、左心室収縮末期面積、拡張末期面積および前壁厚みスコアは、4つの群の間で有意差はなかった。
注射の4週間後、2D心エコー検査を行ったところ、T−H群において、駆出率(図13)および左室短縮率(図14)は、他の3つの群と比較して有意な改善を示した。拡張末期面積(図15)および収縮末期面積(図16)は、注射の4週間後において、T−H群では他の群よりも有意に小さく、そしてLV収縮末期面積の拡大が、他の群と比較してT−H群で減少した。LAD結紮後に減少した前壁厚みは、注射の4週間後においてT−H群では有意に回復したが、他の群では壁の厚みの回復は見られなかった。
組織学的評価
T−H群は、他の群と比較して、LV壁の厚みにおける有意な増加およびLV断面積の減少を示した。顕微鏡検査では、本発明者らは、新たに形成された心臓組織が、T群およびT−H群において、LV壁のうちの梗塞を起こした領域を補うことを見出した。しかし、新たに形成されたLV壁の厚みは、T−H群において顕著に増強された。さらに、横紋束を有するまっすぐでかつ厚い、充分に再生された筋節は、T−H群においてのみ観察された(示さず)。マッソントリクローム染色法は、T群と比較してT−H群において線維症の有意な減少を示した。梗塞から離れた領域での線維症が占める面積の比率(線維化率)は、他の群と比較して、T−H群において有意に減少した(示さず)。
心筋瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定された。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出された(示さず)。
瘢痕における心筋層灌流の改善
超音波造影心臓図検査によって、T−H群についての時間−強度曲線は、ピークの形をしたフローを示した。このことは、瘢痕における良好な心筋層灌流を示す。一方、H群、T群およびC群は、平坦な時間−強度曲線を示した。このことは、乏しい心筋層灌流を示す。
(考察)
本実施例より、HGFと骨格筋芽細胞とを用いた併用療法が心臓組織の再生に有効であることが実証された。
(実施例6:HGFと胚性幹細胞との併用療法)
次に、本実施例では、例示としてHGFと胚性幹細胞とを用いて、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ヌードラットモデル
心筋梗塞ヌードラットモデルは、ヌードラットを用いて実施例1の方法にしたがって行った。
胚性幹細胞の単離および培養ならびに心筋細胞への分化
マウス胚性幹細胞のうちMHCの発現する遺伝子のプロモーターの部位に耐性遺伝子を導入し、分化させると心筋細胞以外に分化する細胞は淘汰される高濃度薬剤選択性培養を行い、心筋細胞を選択した。
心臓へのヒトHGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトHGF cDNAを、実施例1に記載のようにpUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れた。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は、実施例1に記載のように非特許文献16の記載に従って行った。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体(15μgのヒトHGF cDNAを含む)を心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、空のベクターを梗塞を起こした心筋に遺伝子導入した。心臓組織におけるヒトHGF濃度を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体(日本、東京、株式会社特殊免疫研究所(Institite of Immunology))を用いて酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)で測定した(非特許文献17)。
分化した胚性幹細胞の移植
レシピエントヌードラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させた。このヌードラットを心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。4群は以下のとおりである。T群(分化胚性幹細胞懸濁物(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml);H群(ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体を投与);T−H群(分化胚性幹細胞懸濁物と、ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ);C群(培養培地単独)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いたLAD結紮後2週間で心筋梗塞領域に注射した。
心臓の心機能の測定
心臓の心機能測定は、実施例1に記載されるように行った。
心筋コントラスト心エコー検査
心筋コントラストの心エコー検査もまた、実施例1に記載されるように行った。
組織学的分析
組織学的分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
HGFの発現
ヒトHGFで心臓に遺伝子導入した3日後、遺伝子導入された心臓のHGFタンパク質含量を測定した。ヒトHGFタンパク質含量を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体を用いたELISAを用いて測定した。HGF遺伝子で遺伝子導入した心臓は、遺伝子導入後3日目に7±1.2ng/g組織程度のレベルでヒトHGFタンパク質を含んだ。対照的に、ヒトHGFは、空のベクターで遺伝子導入した心臓から得られた心臓組織では検出されない。
梗塞を起こした心筋層の機能評価
ベースラインにおける駆出率、左室短縮率、左心室収縮、末期面積および前壁厚みスコアは、4つの群の間で有意差はない。
注射の4週間後、2D心エコー検査を行ったところ、T−H群において、駆出率および左室短縮率は、他の3つの群と比較して有意な改善を示す。LAD結紮後に減少した前壁厚みは、注射の4週間後においてT−H群では有意に回復したが、他の群では壁の厚みの回復は見られない。
組織学的評価
T−H群は、他の群と比較して、LV壁の厚みにおける有意な増加およびLV断面積の減少を示す。顕微鏡検査では、新たに形成された心臓組織が、T群およびT−H群において、LV壁のうちの梗塞を起こした領域を補うことが見出される。しかし、新たに形成されたLV壁の厚みは、T−H群において顕著に増強される。マッソントリクローム染色法は、T群と比較してT−H群において線維症の有意な減少を示す。梗塞から離れた領域での線維症が占める面積の比率(線維化率)は、他の群と比較して、T−H群において有意に減少する(示さず)。
心筋瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定される。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出される(示さず)。
(考察)
本実施例より、HGFと分化した胚性幹細胞とを用いた併用療法が心臓組織の再生に有効であることが実証された。
(実施例7:HGFと血管内皮細胞の肺組織への投与との併用療法)
次に、本実施例では、例示としてHGFと血管内皮細胞とを用いて、肺組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
肺梗塞ラットモデル
肺梗塞ラットモデルは、マイクロスフェア(50um)を60mg/kg投与することで肺梗塞ラットモデルを作成した。
血管内皮細胞の単離および培養
血管内皮細胞を、新生Lewis系統ラットの下肢血管から単離した。簡潔には培養液とコラゲナーゼ溶液にて灌流し、血管内皮細胞を単離培養した後、遠心分離により純度の上げ、経代培養した。
心臓へのヒトHGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトHGF cDNAを、実施例1に記載のようにpUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れた。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は、実施例1に記載のように非特許文献16の記載に従って行った。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体(15μgのヒトHGF cDNAを含む)を肺梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、空のベクターを梗塞を起こした肺に遺伝子導入した。肺組織におけるヒトHGF濃度を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体(日本、東京、株式会社特殊免疫研究所(Institite of Immunology))を用いて酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)で測定した(非特許文献17)。
血管内皮細胞の移植
レシピエントラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて左肺動脈を露出させた。このラットを肺梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。4群は以下のとおりである。T群(血管内皮細胞(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml);H群(ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体を投与);T−H群(血管内皮細胞と、ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ);C群(培養培地単独)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いて左肺動脈より肺に注射した。
肺の機能の測定
肺機能のうちガス交換能は動脈血ガス濃度により測定した。
組織学的分析
組織学的分析は、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
ヒトHGFで肺に遺伝子導入した3日後、遺伝子導入された肺のHGFタンパク質含量を測定する。ヒトHGFタンパク質含量を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体を用いたELISAを用いて測定する。HGF遺伝子で遺伝子導入した肺は、遺伝子導入後3日目に10ng/g組織程度のレベルでヒトHGFタンパク質を含む。対照的に、ヒトHGFは、空のベクターで遺伝子導入した肺から得られた肺組織では検出されない。
組織学的評価
肺瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定される。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出される(示さず)。
(考察)
本実施例より、HGFと血管内皮細胞との併用療法が肺組織の再生に有効であることが実証される。
以上の結果より、どのような細胞を用いても、かつ、どのような細胞生理活性物質を用いても、本発明の併用療法が心臓組織の再生に有効であることが示される。
(実施例8:HGFと血管内皮細胞の脳組織への併用療法)
次に、本実施例では、例示としてHGFと血管内皮細胞とを用いて、脳組織再生に対する併用療法の効果を実証する。
(材料および方法)
脳梗塞ラットモデル
脳梗塞ラットモデルは、20分間両側の頚動脈を結紮し、再還流し、作成した。
血管内皮細胞の単離および培養
血管内皮細胞を、新生Lewis系統ラットの下肢血管から単離した。簡潔には培養液とコラゲナーゼ溶液にて灌流し、血管内皮細胞を単離培養した後、遠心分離により純度の上げ、継代培養した。
脳へのヒトHGF遺伝子の遺伝子導入
ヒトHGF cDNAを、実施例1に記載のようにpUC−SRα発現ベクター(非特許文献15)中に入れる。
センダイウイルス(HVJ)およびリポソーム複合体の調製は、実施例1に記載のように非特許文献16の記載に従って行う。
約0.2mlのセンダイウイルスリポソーム−プラスミド複合体(15μgのヒトHGF cDNAを含む)を脳梗塞領域に注射する。コントロール群に対しては、空のベクターを梗塞を起こした脳に遺伝子導入する。脳組織におけるヒトHGF濃度を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体(日本、東京、株式会社特殊免疫研究所(Institite of Immunology))を用いて酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)で測定する(非特許文献17)。
血管内皮細胞の移植
20分間両側の頚動脈を結紮し、再還流し、作成した脳梗塞ラットモデルの両側頚動脈より脳梗塞領域に投与した物質に従って4群に分ける。4群は以下のとおりである。T群(血管内皮細胞(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml);H群(ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体を投与);T−H群(血管内皮細胞と、ヒトHGF cDNAを含むHVJリポソームプラスミド複合体との組合せ);C群(培養培地単独)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いて両側頚動脈より脳に注射する。
組織学的分析
組織学的分析は、実施例1に記載されるように行う。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行う。
(結果)
ヒトHGFで心臓に遺伝子導入した3日後、遺伝子導入された脳のHGFタンパク質含量を測定する。ヒトHGFタンパク質含量を、抗ヒトHGFモノクローナル抗体を用いたELISAを用いて測定する。HGF遺伝子で遺伝子導入した脳は、遺伝子導入後3日目に10ng/g組織程度のレベルでヒトHGFタンパク質を含む。対照的に、ヒトHGFは、空のベクターで遺伝子導入した脳から得られた脳組織では検出されない。
組織学的評価
脳瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定される。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出される(示さず)。
(考察)
本実施例より、HGFと血管内皮細胞との併用療法が脳組織の再生に有効であることが実証される。
(実施例9:HGFと心筋細胞との併用療法:徐放形態)
次に、本実施例では、例示として徐放形態に処方したタンパク質形態のHGFの投与と心筋細胞移植とを併用して、心臓組織再生に対する併用療法の効果を実証した。
(材料および方法)
心筋梗塞ラットモデル
心筋梗塞ラットモデルは、実施例1に記載のように作製した。
心筋細胞
心筋細胞は、実施例1に記載されるように単離および培養を行った。
HGF
HGFは、徐放形態に処方したタンパク質形態で送達した。簡潔には、組換え産生したヒトHGFタンパク質を用いた。ヒト組換えHGFは、市販のもの(東洋紡No.HGF−101)を用いた。これを、2%コラーゲン含有水溶液にこのHGFを溶解し、0.6〜60μg/mlのHGF溶液を調製して溶液状のHGF徐放性製剤を作製した。
この徐放性製剤を約0.2ml(約0.1〜10μg)の心筋梗塞領域に注射した。コントロール群に対しては、この製剤と同容量の生理食塩水溶液を梗塞を起こした心筋に注射した。
細胞移植
レシピエントラットを麻酔し、左第五肋間で胸郭を開いて心臓を露出させる。このラットを心筋梗塞領域に投与した物質に従って4群に分けた。4群は以下のとおりである。T群(胎児ラット心筋細胞(無血清培養培地中、1×10細胞/0.2ml);H群(徐放性HGF製剤を投与);T−H群(徐放性HGF製剤と胎児ラット心筋細胞との組合せ);C群(培養培地単独)。すべての場合、これらの物質を、30Gツベルクリンシリンジを用いたLAD結紮の2週間後に心筋梗塞領域に注射した。
ラット心臓の心機能の測定
ラット心臓の心機能測定は、実施例1に記載されるように行った。
心筋コントラスト心エコー検査
心筋コントラストの心エコー検査もまた、実施例1に記載されるように行った。
組織学的分析
組織学的分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
データ分析
データ分析もまた、実施例1に記載されるように行った。
(結果)
(梗塞を起こした心筋層の機能評価)
ベースラインにおける駆出率、左室短縮率、左心室収縮末期面積および前壁厚みスコアには、4つの群の間で有意差はないことが確認される。
注射の4週間後、2D心エコー検査を行ったところ、T−H群における駆出率(示さず)および左室短縮率(示さず)は、他の3つの群と比較して有意な改善を示す。これらの機能的改善は、注射後8週間まで保たれる。収縮末期面積は、注射の4週間後および8週間後において、T−H群では他の群よりも有意に小さく、そしてLV収縮末期面積の拡大が、他の群と比較してT−H群で減少する(示さず)。LAD結紮後に減少した前壁厚みは、注射の4週間後においてT−H群では有意に回復するが、他の群では壁の厚みの回復は見られない。そしてこの前壁の回復は、注射後8週間まで保たれる(示さず)。
(組織学的評価)
T−H群は、他の群と比較して、LV壁の厚みにおける有意な増加およびLV断面積の減少を示す。顕微鏡検査では、新たに形成された心臓組織が、T群およびT−H群において、LV壁のうちの梗塞を起こした領域を補うことが見出される。しかし、新たに形成されたLV壁の厚みは、T−H群において顕著に増強される。さらに、横紋束を有するまっすぐでかつ厚い、充分に再生された筋節は、T−H群においてのみ観察される(示さず)。マッソントリクローム染色法は、T群と比較してT−H群において線維症の有意な減少を示した。梗塞から離れた領域での線維症が占める面積の比率(線維化率)は、他の群と比較して、T−H群において有意に減少する(示さず)。
免疫組織化学検査では、移植の8週間後、T−H群において心筋細胞表面でのβ1−インテグリンおよびβ−ジストログリカンの最大の発現が示される。T群では、β−1インテグリンおよびβ−ジストログリカンの発現は極めて強いが、他方、T−H群においてよりも顕著に低く、そして弱い免疫反応性は、H群およびC群において観察される。α−ジストログリカンおよびラミニンの発現は、T−H群における心筋細胞の下の基底膜において検出される。他の群では移植8週間後で、これらの発現は、T群においてかなり弱い。α−ジストログリカンおよびラミニンの陽性免疫反応は、H群およびコントロール群において見出されないことが確認される。
心筋瘢痕組織における血管密度は、高出力光学顕微鏡を用いて、血管の数を数えることによって評価され、この血管は、第VIII因子関連抗原に対する抗体を用いた陽性染色によって同定される。併用療法群では、血管密度は、他の群においてよりも有意に高いことが見出される(示さず)。
瘢痕における心筋層灌流の改善
超音波造影心臓図検査では、T−H群についての時間−強度曲線は、ピークの形をしたフローを示した。このことは、瘢痕における心筋層灌流が良好であることを示す。他方、H群、T群およびC群は、平坦な時間−強度曲線を示す。このことは、乏しい心筋層灌流を示す。
(考察)
本実施例より、徐放化形態のHGFでも本発明の併用療法が心臓組織の再生に有効であることが実証された。徐放化形態のHGFを本発明に用いた場合、そうでないタンパク質形態のHGFを本発明の併用療法に用いた場合よりも、処置後少なくとも8週間までの本発明の効果の持続において顕著な改善が見られることが実証された。
(実施例10;拡張型心筋症の治療)
細胞移植およびHGF遺伝子導入の併用により、拡張型心筋症(DCM)ハムスターにおげる心機能改善効果および心筋組織の再生効果が見られるかどうかを本実施例において実証した。
(材料および方法)
DCMハムスターモデル
DCMハムスターモデルは、Sakamoto A.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 94.13873-13878(1997)に記載されているようにδサルコグリカンが欠損しているハムスターを作製することによって用意した。本明細書においてこのハムスターはBIOTO-2ハムスターと呼ぶ。このハムスターは、本実施例では27週齢のものを用いた。このハムスターは18週齢ではそれほど症状が見られないが、27週齢になると拡張型心筋症の性質を提示する(図17を参照)。
この実施例では、細胞生理活性物質としてHGFを用い、細胞としてFIBハムスター由来の筋芽細胞を用いた。
HGFは実施例1に記載されるようにHVJを用いた形態を投与した。筋芽細胞は、実施例3に記載される方法を一部改変して用いて調製した。具体的にはBIOFIBハムスター(図19を参照)の下肢骨格筋から細胞を取り出し、コラゲナーゼ処理をして培養ディッシュに播いた。24時間後に上清を別のディッシュに移し培養し、4〜5日間培養してコンフルエントにし、この細胞を細胞移植に用いた。筋芽細胞は図20に示すようにデスミン染色された。
上記DCMハムスターモデルに対して、以下の群のいずれかの処置を行った。
A)培地のみ投与した群(DMEM 0.15ml;C群)
B)筋芽細胞溶液(5×105細胞/0.15ml)のみを注入した群(T群;n=10)
C)HGF(hHGF cDNAを含むHVJリポソーム 0.15ml)のみ投与した群(H群;n=10)
D)筋芽細胞とhHGF cDNAを含むHVJリポソーム 0.15mlを注入した群(T−H群、n=10)
注入方法:
各群とも直視下に左心室の3箇所および右心室の1箇所に針を用いて注射した(図21)。処置前、処置後の各週ごとに、心臓超音波によりLVDdおよびLVDsを測定し、LVFSおよびLVEFを算出し、各群間で比較した。組織評価として、処置前および処置後各週ごとに組織を採取し、HEおよびマッソントリクローム染色を行った。また、電子顕微鏡観察により、ミトコンドリア、核およびサルコメア構造を確認した。そのタイムスケジュールは、図18に示す。
(結果)
LVDd、LVDsの結果を図22に示す。LVEFおよび体重の結果を図23に示す。図22に示されるように、LVDdについては、各群間で有意差を認めなかったが、LVDsでは術後3週間まではC群に比べH群、T群およびT+H群で改善した。しかもT+H群は、他の群に比べ、より顕著に改善していた。また、術後3週にはLVDsは図22に示されるように、それぞれC群:6.2mm(平均mm)、H群:5.8mm(平均mm)、T群:5.6mm(平均mm)、T+H群:5.2mm(平均mm)となっていた。EF群は図23に示されるように術後3週に、C群:26.0%(平均%)、H群:35.0%(平均%)、T群:37.1%(平均%)、T+H群:44.5%(平均%)と、C群に比べ、H群、T群およびT+H群で有意に改善した。しかも、T+H群は、H群に対しても有意差をもって改善しており、T群に対しても顕著に効果が改善していた。
術後4週以後はいずれの群も心機能低下が徐々に進行したが、T+H群ではH群およびT群に比べ心機能が高い傾向にあった。組織ではHE染色において、C群にくらべH群、T群およびH+T群で、左心室壁厚が増大傾向にあった(図24)。線維化は、H群およびT+H群で抑制されていた。
電顕写真でミトコンドリアの様子を確認したところ、コントロールではミトコンドリアが増加しており、不整配列がみられ、クリスタが減少していたが、H+T群(右)では、ミトコンドリアは正常な配列をしていた(図26)。この正常化は、H群、T群よりも顕著であった。したがって、ミトコンドリアレベルでもH+T群は有意な効果を示すといえる。
(まとめ)
DCMハムスターに対して、HGF遺伝子導入および筋芽細胞移植の併用療法はそれぞれの単独療法に比べ心機能の顕著な改善がみられた。拡張型心筋症における一般的な病態の改善は、本発明のHGF遺伝子導入と筋芽細胞移植との併用療法が、拡張型心筋症はもちろん、他の難治性心不全における組織機能再生に有用な方法であり、根治的治療になり得ることを示す。従って、本発明は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症などの難治性心不全の治療、予防および予後の処置にも有用である。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明により、心臓移植および医療機器での補助システムを全く使用することなく、損傷した心臓組織を再生することが可能になった。従って、本発明を利用することにより心筋梗塞のような心疾患を治療することができる。本発明の組成物およびキットは、医師以外に、例えば、製薬企業などが業として生産することができることから、産業上の利用可能性または有用性は十分にあると考えられる。本発明の方法もまた、純粋な医療目的の治療方法に加え、間接的または直接的に実施することにより、医療業の隣接産業において利用される可能性が十分考えられることから、産業上の利用可能性または有用性は十分にあると考えられる。
図1は、レシピエント心臓におけるhHGFの検出を示す図である。遺伝子導入の3日後にレシピエント心臓においてHGFが検出された。 図2は、心臓超音波検査における左室機能向上を示す図である。左室機能は、移植の4週間後にT−H群において有意に改善していた。この機能改善は、この併用療法の投与の8週間後まで保持された。C:コントロール、H:HGF遺伝子導入のみ、T:細胞移植のみ、T−H:本発明の細胞移植とHGFの併用療法。 図3は、心臓超音波検査における左室収縮性の向上を示す図である。左室収縮性は、移植の4週間後にT−H群において有意に改善していた。この収縮性の改善は、この併用療法の投与の8週間後まで保持された。C:コントロール、H:HGF遺伝子導入のみ、T:細胞移植のみ、T−H:本発明の細胞移植とHGFの併用療法。 図4は、心臓超音波検査における収縮末期面積を示す図である。収縮末期面積は、移植の4週間後および8週間後4週間後にT−H群において有意に改善していた。C:コントロール、H:HGF遺伝子導入のみ、T:細胞移植のみ、T−H:本発明の細胞移植とHGFの併用療法。 図5は、心臓超音波検査における左室前壁の壁厚を示す図である。LAD結紮後に減少した左室前壁の壁厚は、移植の4週間後においてT−H群では有意に回復したが、他の群では壁の厚みの回復は見られなかった。この前壁の回復は、移植後8週間まで保たれた。C:コントロール、H:HGF遺伝子導入のみ、T:細胞移植のみ、T−H:本発明の細胞移植とHGFの併用療法。 図6(図6Aおよび図6B)は、細胞移植群では、梗塞巣に移植した心筋細胞が認められるものの、左室内腔が拡大し、非梗塞部に間質の線維化が及んでいる。一方、心筋細胞移植と遺伝子導入を併用した群では、左室前壁は、肥厚し、左室内腔は小さく、非梗塞巣の線維化は抑制された。また、細胞移植群のみでは、α−ジストログリカンの発現を認めなかったが、併用療法群では、α−ジストログリカンの染色性の向上を認めた。β−ジストログリカンの免疫染色において、細胞移植群では、β−ジストログリカンの発現を認めなかったが、併用療法群では、β−ジストログリカンは強く染色された。β1−インテグリンにおいては、併用療法群において、心筋細胞膜状に染色性の向上を認めた。パネルA、C、D、F、GおよびHは、ヘマトキシリンエオジン染色を示す。パネルBおよびEは、マッソントリクローム染色を示す。パネルH,Iは、α−ジストログリカン免疫染色を示す。パネルJ、K、は、β−ジストログリカン免疫染色を示す。パネルL、M、は、併用療法群におけるβ1−インテグリン免疫染色を示す。 図6(図6Aおよび図6B)は、細胞移植群では、梗塞巣に移植した心筋細胞が認められるものの、左室内腔が拡大し、非梗塞部に間質の線維化が及んでいる。一方、心筋細胞移植と遺伝子導入を併用した群では、左室前壁は、肥厚し、左室内腔は小さく、非梗塞巣の線維化は抑制された。また、細胞移植群のみでは、α−ジストログリカンの発現を認めなかったが、併用療法群では、α−ジストログリカンの染色性の向上を認めた。β−ジストログリカンの免疫染色において、細胞移植群では、β−ジストログリカンの発現を認めなかったが、併用療法群では、β−ジストログリカンは強く染色された。β1−インテグリンにおいては、併用療法群において、心筋細胞膜状に染色性の向上を認めた。パネルA、C、D、F、GおよびHは、ヘマトキシリンエオジン染色を示す。パネルBおよびEは、マッソントリクローム染色を示す。パネルH,Iは、α−ジストログリカン免疫染色を示す。パネルJ、K、は、β−ジストログリカン免疫染色を示す。パネルL、M、は、併用療法群におけるβ1−インテグリン免疫染色を示す。 図7は、組織線維化率(線維化率%)を示す。線維化率%は、併用療法群において有意に抑制されていることが見出された。細胞移植のみを施したモデルでは、心筋細胞の肥大がみられ、線維症化率%は増加していた。 図8は、血管数を示す図である。第VIII因子関連抗原に対する免疫染色で評価したところ、併用療法群において、血管数が有意に増加していたことが示された。 図9は、心臓超音波検査における左室前壁の壁厚を示す図である。LacZを含むベクターおよびコントロール(Sham)を用いて同様の処置を行った群(それぞれL群およびS群)、ならびにHGFおよびVEGFを用いた。コントロールとして、正常領域のデータおよび処置前のデータを示す。虚血領域における壁厚は、HGF群およびVEGF群において顕著に改善していたが、L群およびS群では、有意な回復は見られなかった。 図10は、第VIII因子関連抗原での免疫組織化学染色の様子を示す写真である。HGFおよびVEGFでの処置により血管数が増加しているのに対し、LacZでの処置では増加が乏しい様子が分かる。 図11は、虚血領域での毛細血管数の増加を示すグラフである。HGFおよびVEGFでの処置により、L群およびS群に比べて有意に血管数が増していることが分かる。FおよびVEGFでの処置により血管数が増加しているのに対し、LacZでの処置では増加が乏しい様子が分かる。 図12は、虚血領域での局所的血流の変化を示すグラフである。HGFおよびVEGFでの処置により、有意に血流が増していることが分かる。虚血領域の局所的血流を正常領域のものの%として示した。局所的血液灌流により、HGFおよびVEGF群の療法で、有意な回復が見られた。LacZおよびShamでは効果はなかった。FおよびVEGFでの処置により血管数が増加しているのに対し、LacZでの処置では増加が乏しい様子が分かる。 図13は、骨格筋芽細胞移植後の左室機能の変化を示すグラフである。コントロールは、処置なし、CTxは骨格筋芽細胞移植のみ、HGFはHGF投与のみ、CTx+HGFは骨格筋芽細胞移植とHGF投与との併用療法を示す。併用療法が有意に効果を示すことが分かる。 図14は、骨格筋芽細胞移植後の左室収縮性を示すグラフである。コントロールは、処置なし、CTxは骨格筋芽細胞移植のみ、HGFはHGF投与のみ、CTx+HGFは骨格筋芽細胞移植とHGF投与との併用療法を示す。併用療法が有意に効果を示すことが分かる。 図15は、骨格筋芽細胞移植後の拡張末期の面積を示すグラフである。コントロールは、処置なし、CTxは骨格筋芽細胞移植のみ、HGFはHGF投与のみ、CTx+HGFは骨格筋芽細胞移植とHGF投与との併用療法を示す。併用療法が有意に効果を示すことが分かる。 図16は、骨格筋芽細胞移植後の収縮末期の面積を示すグラフである。コントロールは、処置なし、CTxは骨格筋芽細胞移植のみ、HGFはHGF投与のみ、CTx+HGFは骨格筋芽細胞移植とHGF投与との併用療法を示す。併用療法が有意に効果を示すことが分かる。 図17は、BTO TO-2ハムスター(DCMハムスター)の心筋写真を示す。左は18週齢のものであり、右は27週齢のものである。 図18は、実施例10において行った実験スキームを示す。 図19は、BIO FIBハムスター例を示す。 図20は、筋芽細胞のデスミン染色例を示す。 図21は、細胞移植の針注射位置例を示す。 図22は、実施例10のLVDd、LVDsの結果を示す。それぞれ左からC群(コントロール)、T群(細胞のみ)、H群(HGFのみ)およびT+H群(併用)を示す。 図23は、実施例10のLVEFおよび体重の結果を示す。それぞれ左からC群(コントロール)、T群(細胞のみ)、H群(HGFのみ)およびT+H群(併用)を示す。 図24は、実施例10のHE染色の様子を示す。上段は左からC群(コントロール)、T群(細胞のみ)、H群(HGFのみ)およびT+H群(併用)を示す。下段は、移植された筋芽細胞の様子を示す。 図25は、実施例10のマッソントリクローム染色の様子を示す。 図26は、実施例10の電顕写真を示す。左はコントロール、右はT+H群を示す。
配列番号1は、ヒトHGF cDNAであり、配列番号2は、ヒトHGFである。

Claims (51)

  1. 生物の心疾患の治療、予防または予後のための組成物であって、
    細胞生理活性物質および細胞を、該器官への移入に適した形態で含む、
    組成物。
  2. 前記心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記心疾患は拡張型心筋症を含む、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記細胞生理活性物質は、造血活性、コロニー刺激活性または細胞増殖活性を有する、請求項1に記載の組成物。
  5. 前記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用の少なくとも1つの活性を有する、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記細胞生理活性物質は、血管新生活性および抗線維化作用を有する、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記細胞生理活性物質は、キナーゼ型レセプターをレセプターとして有する、請求項1に記載の組成物。
  8. 前記細胞生理活性物質は、チロシンキナーゼ型レセプターをレセプターとして有する、請求項1に記載の組成物。
  9. 前記細胞生理活性物質は、FGF、HGFおよびVEGFからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記細胞生理活性物質は、HGFである、請求項1に記載の組成物。
  11. 前記細胞生理活性物質は、VEGFである、請求項1に記載の組成物。
  12. 前記細胞生理活性物質は、そのレセプターがc−metである、請求項1に記載の組成物。
  13. 前記細胞は、胚性幹細胞または組織幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
  14. 前記細胞は、分化した細胞である、請求項1に記載の組成物。
  15. 前記細胞は、外胚葉、中胚葉または内胚葉に由来する幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
  16. 前記細胞は、中胚葉に由来する幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
  17. 前記細胞は、造血幹細胞または間葉系幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
  18. 前記細胞は、間葉系幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
  19. 前記細胞は、骨髄系の組織幹細胞である、請求項1に記載の組成物。
  20. 前記細胞は、間葉系幹細胞に由来する分化細胞である、請求項1に記載の組成物。
  21. 前記細胞は、心筋細胞、骨格筋芽細胞および骨芽細胞からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
  22. 前記細胞は、初代培養心筋細胞または分化させた心筋細胞である、請求項1に記載の組成物。
  23. 前記細胞は、骨髄由来である、請求項1に記載の組成物。
  24. 前記細胞は、同系由来、同種異系由来または異種由来の細胞である、請求項1に記載の組成物。
  25. 前記細胞は、自己由来である、請求項1に記載の組成物。
  26. 前記細胞生理活性物質は、タンパク質形態または核酸形態である、請求項1に記載の組成物。
  27. 前記細胞生理活性物質は、タンパク質形態である、請求項1に記載の組成物。
  28. 前記細胞生理活性物質は、核酸形態である、請求項1に記載の組成物。
  29. 前記細胞生理活性物質は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターの形態で存在する、請求項1に記載の組成物。
  30. 前記細胞生理活性物質は、HVJリポソームの形態で存在する、請求項1に記載の組成物。
  31. 徐放性形態である、請求項1に記載の組成物。
  32. さらに生体親和性材料を含む、請求項1に記載の組成物。
  33. シリコーン、コラーゲン、ゼラチンおよびグリコール酸・乳酸の共重合体からなる群より選択される少なくとも1つの生体親和性材料を含む、請求項1に記載の組成物。
  34. 前記細胞生理活性物質は2種類以上の細胞生理活性物質である、請求項1に記載の組成物。
  35. さらに他の薬剤を含む、請求項1に記載の組成物。
  36. 前記細胞は2種類以上の細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
  37. 前記細胞は、ヒト由来である、請求項1に記載の組成物。
  38. 前記生物は、ヒトである、請求項1に記載の組成物。
  39. 生物の心疾患の治療、予防または予後のためのキットであって、
    細胞生理活性物質;
    細胞;ならびに
    該細胞生理活性物質および該細胞の該器官への移植に関する指示書、
    を備え、ここで、該指示書は、
    該細胞生理活性物質を該細胞の心臓への移植の前、同時または後に投与することを指示する、
    キット。
  40. 前記指示書は、前記細胞生理活性物質を前記細胞の前記心臓への移植の前に投与することを指示する、請求項39に記載のキット。
  41. 前記指示書は、前記細胞生理活性物質および前記細胞を前記心臓の罹患部位、傷害部位または虚血部位へと投与することを指示する、請求項39に記載のキット。
  42. 前記心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患を含む、請求項39に記載のキット。
  43. 前記心疾患は拡張型心筋症であり、前記細胞生理活性物質および前記細胞の投与は、左心室を含む部位に投与することを含む、請求項39に記載のキット。
  44. 生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するための薬学的組成物であって、
    細胞生理活性物質、
    を含む、薬学的組成物。
  45. 生物の心疾患の治療、予防または予後のための方法であって、
    細胞生理活性物質を該器官へ提供する工程;および
    細胞を心臓へ提供する工程、
    を包含する、方法。
  46. 前記心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患を含む、請求項45に記載の方法。
  47. 前記心疾患は拡張型心筋症を含む、請求項45に記載の方法。
  48. 生物の心疾患の治療、予防または予後のための医薬組成物の製造のための、細胞生理活性物質;および細胞の使用。
  49. 前記心疾患は、心筋炎、肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される少なくとも1つの疾患を含む、請求項48に記載の使用。
  50. 前記心疾患は拡張型心筋症を含む、請求項48に記載の使用。
  51. 生物の心疾患の治療、予防または予後のために細胞とともに投与するための、細胞生理活性物質の使用。
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