JP2005014563A - 積層体および表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置を提供すること。
【解決手段】厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されて成ることを特徴とする積層体およびこの積層体を有して成ることを特徴とする表示装置。
【選択図】 なし
【解決手段】厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されて成ることを特徴とする積層体およびこの積層体を有して成ることを特徴とする表示装置。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層体および表示装置に関し、さらに詳しくは、高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでに、加熱成形性、切断加工性に優れたガラスフィルムと特定の構造単位を有する樹脂フィルムとの積層板(例えば、特許文献1参照)が、また、耐薬品性、耐摩耗性、ガスバリアー性を備えたガラスフィルムと特定の引張弾性率を有する樹脂フィルムとの積層体(例えば、特許文献2参照)が、さらに、表示装置の部材として有用なガラスフィルムと樹脂フィルムとの積層体(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【特許文献1】
特開平6−340029号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開2001−113631号公報(請求項1)
【特許文献3】
特表2002−534305号公報(請求項1)
しかしながら、前記いずれの積層体にあっても、過酷な環境下、例えば、高温環境下、高温高湿度環境下または低温環境下において、膨れ、反り、剥がれ等の外観異常を呈し、耐久性に乏しいという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような従来の問題を解消し、高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために、ガラス製基板に積層するフィルムを与える樹脂組成物に着目して種々検討を重ねた結果、この樹脂組成物として、特定の無機化合物を含有し、かつ特定の光線透過率を有する樹脂組成物を用いることによって、前記課題を解決することができるということを見出し、この知見に基づいてこの発明を完成するに到った。
【0005】
すなわち、この発明の前記課題を解決するための第1の手段は、
(1) 厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されて成ることを特徴とする積層体である。
【0006】
この第1の手段における好ましい態様としては、下記▲1▼〜▲3▼の積層体を挙げることができる。
▲1▼ 前記無機化合物が、小さくとも30のアスペクト比を有する層状結晶化合物である積層体。
▲2▼ 前記樹脂が、脂環式構造含有重合体である積層体。
▲3▼ 前記脂環式構造含有重合体が、極性基を有する重合体である積層体。
【0007】
また、この発明の前記課題を解決するための第2の手段は、
(2) 前記(1)の積層体を有して成ることを特徴とする表示装置
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
(1) この発明の積層体は、厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明の積層体には、厚さ1〜500μmのガラス製基板(以下、ガラス製基板を「ガラスフィルム」ということがある。)が用いられる。前記ガラスには制限はなく、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、鉛ガラス等のガラスを挙げることができる。
【0010】
前記ガラス製基板の厚さは、1〜500μmであることを要し、好ましくは10〜100μmである。ガラス製基板の厚さが1〜500μmであることにより、基板に必要とされる機械的強度を保持しながら、可撓性を付与することができるからである。
【0011】
厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面に積層されるフィルムは、樹脂中に無機化合物を分散させて成る樹脂組成物から形成されたフィルムである。この樹脂組成物を構成する樹脂に特に制限はなく、透明性に優れた樹脂組成物を調製することができる限り、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0012】
前記熱可塑性樹脂としては、脂環式構造含有重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルポリスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂等を挙げることができる。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ケイ素系樹脂等を挙げることができ、紫外線硬化性樹脂としては、ホリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0014】
これら樹脂の中でも、高度の透明性と低い複屈折とを有するという観点からすると、脂環式構造含有重合体が特に好ましい。この脂環式構造含有重合体は、その重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体である。この脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等を挙げることができるが、脂環式構造含有重合体組成物またはこの組成物から得られる成形体の熱安定性の観点からすると、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を形成する炭素数は、通常は4〜30、好ましくは、5〜20、より好ましくは、5〜15である。炭素数がこの範囲にあることにより、優れた耐熱性と柔軟性を有する樹脂組成物となる。この脂環式構造は、重合体の主鎖、側鎖のいずれに存在していてもよい。
【0015】
前記脂環式構造含有重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の含有割合に制限はなく、得られる樹脂組成物の性状、物性等に応じて適宜、選択されるが、通常は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。この繰り返し単位の含有割合が少量に過ぎると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することがあるので望ましくない。なお、この発明に用いる脂環式構造含有重合体は、脂環式構造を含有する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
【0016】
この発明において用いる脂環式構造含有重合体としては、ノルボルネン系重合体(A)、単環の環状オレフィン系重合体(B)、環状共役ジエン系重合体(C)、ビニル脂環式炭化水素重合体(D)、(A)〜(D)の水素化物、およびこれらの混合物等を挙げることができる。これら重合体の中でも、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系重合体(A)の水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体(D)、およびビニル脂環式炭化水素重合体(D)の水素化物が好ましい。
【0017】
前記ノルボルネン系重合体(A)としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体、およびこれら開環共重合体の水素化物、ならびにノルボルネン系モノマーの付加重合体、およびノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体等を挙げることができる。これら重合体および共重合体の中でも、得られる脂環式構造含有重合体組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物が特に好ましい。
【0018】
前記ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの、以下、同じ。)、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕ドデカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3エン(慣用名:メタテトラヒドロフルオレン)およびその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体等を挙げることができる。
【0019】
前記置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基等を挙げることができ、前記ノルボルネン系モノマーは、これら置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
【0020】
これら置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン等を挙げることができる。
【0021】
前記ノルボルネン系重合体(A)を製造するために用いられるこれらノルボルネン系モノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体は、前記モノマーを公知の開環重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
【0023】
前記ノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系モノマーを挙げることができる。
【0024】
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物は、通常、ノルボルネン系モノマーの重合液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することによって製造することができる。
【0025】
前記ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体は、前記モノマーを公知の付加重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
【0026】
ノルボルネン系モノマーに対して付加共重合可能な他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン等を挙げることができる。これらモノマーの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0027】
前記ノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0028】
ノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとを付加共重合するに当っては、得られる付加共重合体中のノルボルネン系モノマーに由来する構造単位と、付加共重合可能な他のモノマーに由来する構造単位との割合が、質量比で、50:50〜99:1、好ましくは70:30〜97:3の範囲となるよう、各モノマーの使用量が選択される。
【0029】
前記単環の環状オレフィン系重合体(B)としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0030】
前記環状共役ジエン系重合体(C)としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体およびその水素化物を挙げることができる。
【0031】
また、前記ビニル脂環式炭化水素重合体(D)としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香族部分を水素化してなる水素化物、ビニル脂環式炭化水素系モノマーまたはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体およびその水素化物等を挙げることができる。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロックまたはそれ以上のマルチブロック、傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
【0032】
この発明においては、無機化合物との親和性を向上させることができ、しかも樹脂組成物から得られるフィルムの光線透過率を損なうことなく耐熱性を向上させることができることから、用いる前記脂環式構造含有重合体は、極性基を有していることが好ましい。
【0033】
前記極性基としては、ヘテロ原子またはヘテロ原子を有する原子団等を挙げることができ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を挙げることができる。これらヘテロ原子の中でも、無機化合物との分散性および相溶性の観点からすると、酸素原子および窒素原子が好ましい。具体的には、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基等を挙げることができる。
【0034】
極性基を有する脂環式構造含有重合体を得る方法としては特に制限はないが、脂環式構造含有重合体がノルボルネン系重合体である場合、例えば、(1)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる未変性重合体に、極性基を有する化合物を反応(変性反応)させる方法、(2)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーと極性基を有するノルボルネン系モノマーとを共重合させる方法、(3)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる重合体と、前記(1)の方法または(2)の方法により得られた極性基を有するノルボルネン系重合体とを混合する方法等を挙げることができる。ノルボルネン系重合体以外の脂環式構造含有重合体についても、ノルボルネン系重合体の場合と同様である。
【0035】
極性基を有する脂環式構造含有重合体としては、例えば、脂環式構造含有重合体の塩素化物、クロロスルホン化物、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物等を挙げることができ、中でも、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物が好ましい。
【0036】
前記極性基含有不飽和化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、p−スチリルカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルのグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸等の不飽和カルボン酸化合物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート等の不飽和エステル化合物;アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等の不飽和アルコール酸化合物;クロロジメチルビニルシラン、トリメチルシリルアセチレン、5−トリメチルシリル−1,3−シクロペンタジエン、3−トリメチルシリルアリルアルコール、トリメチルシリルメタクリレート等の不飽和シラン化合物等を挙げることができる。
【0037】
これら極性基含有不飽和化合物の中でも、無機化合物の分散性の観点からすると、不飽和エポキシ化合物および不飽和カルボン酸化合物が特に好ましい。なお、これら極性基含有不飽和化合物を効率よく共重合させるためには、汎用のラジカル開始剤の存在下に重合反応を実施することが好ましく、この好適なラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル等を挙げることができる。
【0038】
この発明において用いられる極性基を有する脂環式構造含有重合体は、その極性基含量が少なくとも0.01mmol/gであることが好ましく、より具体的には、0.01〜0.8mmol/g、さらに好ましくは、0.01〜0.5mmol/gである。極性基含量が前記範囲内にあることにより、無機化合物の分散性の向上と得られる積層体の耐水性等のような諸物性の向上とを両立させることができる。
【0039】
前記極性基含量は、前記(1)の方法においては、極性基を有する化合物の反応による極性基の導入率により、前記(2)の方法においては、極性基を有するモノマーの共重合割合により、前記(3)の方法においては、極性基を有しない重合体と極性基を含有する重合体との混合割合により、調節することができる。
【0040】
また、この発明において用いられる脂環式構造含有重合体の分子量に特に制限はないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常は、5000〜500000、好ましくは、8000〜200000、より好ましくは、10000〜100000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、得られる樹脂組成物の成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることもできる。この重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液またはトルエン溶液のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法により測定することができる。
【0041】
さらに、この発明において用いられる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)にも特に制限はないが、通常は、80℃以上、好ましくは、130〜250℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、得られる樹脂組成物において、高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることがなく、優れた耐久性を与えることができる。
【0042】
このような樹脂中に分散させる無機化合物としては、前記樹脂の透明性を阻害しない限り特に制限はなく、各種の金属化合物および層状結晶化合物を挙げることができる。前記金属化合物としては、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Pd、Ag、Sn、PtおよびAuから選ばれた少なくとも一種の金属の酸化物を挙げることができる。前記金属酸化物は、微粒子として用いられ、その形状は、球状、楕円状、破砕状、平板状または多面体状である。
【0043】
前記金属酸化物は、濡れ性を付与し、前記樹脂に対する分散性を向上させるために、表面処理されていることが好ましい。この表面処理に用いる表面処理剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジプロピオレート等のアルミニウム系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート等のチタネート系カップリング剤等を挙げることができる。
【0044】
このような表面処理剤を用いて金属酸化物を処理する方法としては、ブレンダー等で金属酸化物を強制撹拌しながら、カップリング剤を直接または水もしくは他の溶媒により希釈した溶液を空気または窒素ガスで噴射させて処理する乾式法、金属酸化物を水に分散させ、この分散液にカップリング剤を直接または水もしくは他の溶媒により希釈した溶液を添加した後、静置して金属酸化物を沈降分離し、乾燥する湿式法、高温の金属酸化物にカップリング剤を直接または水もしくは他の溶媒により希釈した溶液をスプレーするスプレー法等を挙げることができる。
【0045】
また、前記金属酸化物の屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下、好ましくは0.01以下であることが好ましい。両者の屈折率の差が0.05以下であることにより、得られる樹脂組成物に高度の透明性を付与することができるからである。この屈折率の測定は、浸漬液中の金属酸化物微粒子を偏光顕微鏡で観察する方法(ベッケラインと称される粒子外郭に沿った明るい線の位置で粒子外郭と浸漬液の屈折率の大小を判別することができる。)またはシェアリング(Applied Optics Vol.25 No.91 October 1986に記載)により、金属酸化物微粒子内の屈折率変化を測定し、金属酸化物微粒子最外部の屈折率を測定する方法によることができる。
【0046】
また、前記層状結晶化合物は、その化合物が平面的に配列されたシート構造を有する状態(層状)にあり、その垂直方向にシート構造の繰り返しが見られる、多結晶層構造を有する化合物である。この層状結晶化合物は、結晶層が相互にファンデルワールス力または水素結合力により結合されているものと、各結晶層間に陽イオンが介在していて、負電荷に荷電した結晶層が相互に前記陽イオンを介して微弱な静電力により結合されているものとに大別することができる。
【0047】
このような層状結晶化合物の具体例としては、グラファイト、TiS2、NbSe2、MoS2等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS4等の二価金属リンカルコゲン化物;MoO3、V2O5等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等のオキシハロゲン化物;Zn(OH)2、Cu(OH)2等の水酸酸化物;Zr(HPO4)2・nH2O、Ti(HPO4)3・nH2O、Na(UO2PO4)3・nH2O等のリン酸塩;Na2Ti3O7、KTiNbO5、RbxMnxTi2−xO4等のチタン酸塩;Na2U2O7、K2U2O7等のウラン酸塩;KV3O8、K3V5O14、CaV6O16・nH2O、Na(UO2V3O9)・nH2O等のバナジン酸塩;KNb3O3、K4Nb6O17等のニオブ酸塩;Na2W4O13、Ag4W10O13等のタングステン酸塩;Mg2Mo2O7、Cs2Mo5O16、Cs2Mo7O22、Ag4Mo10O33等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、H2SiO5、H2Si14O29・5H2O等の珪酸塩またはこの珪酸塩により構成される鉱物類等を挙げることができる。
【0048】
これら層状結晶化合物の中でも、前記樹脂への分散性、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点から、珪酸塩、リン酸塩およびモリブデン酸塩が好ましく、さらには、珪酸塩が特に好ましい。
【0049】
この発明の積層体においては、使用する無機化合物としては、小さくとも30、好ましくは小さくとも50のアスペクト比を有する層状結晶化合物が好ましい。このようなアスペクト比を有する層状結晶化合物を用いることにより、積層体の耐久性を向上させることができるからである。なお、アスペクト比は、層状結晶化合物の長軸方向の長さをD1とし、短軸方向の長さをD2としたときのD1/D2である。
【0050】
この発明において用いられる層状結晶化合物は、前記樹脂に対する分散性を向上させるために、有機化処理を施すことが好ましい。この有機化処理は、例えば、陽イオン性界面活性剤を用いて行うことができる。この陽イオン性界面活性剤としては、R1R2R3R4N+X−で表される第四級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0051】
前記R1R2R3R4N+X−において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一であっても、別異であってもよく、炭素数1〜30の飽和または不飽和炭化水素基を表す。この炭素数1〜30の飽和または不飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基、ラウリル基、オレイル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を挙げることができる。X−としては、Cl−、Br−、NO3 −、OH−、CH3COO−等の陰イオンを挙げることができる。
【0052】
層状結晶化合物の有機化処理は、例えば、層状結晶化合物を水に分散させて層状結晶化合物分散液を調製し、この分散液に前記陽イオン性界面活性剤を添加して、例えば常温下に撹拌することによって行うことができる。このときの層状結晶化合物分散液における層状結晶化合物の濃度は、0.01〜70質量%に調整することが好ましい。また、前記陽イオン性界面活性剤は、水溶液として用いることもできる。
【0053】
この樹脂組成物における組成比に格別の制限はないが、樹脂と無機化合物との合計量を100質量部としたとき、無機化合物の量が、通常は、0.01〜50質量部、好ましくは、0.5〜30質量部、より好ましくは、1〜20質量部である。無機化合物の量が前記範囲にあることにより、得られる樹脂組成物に優れた耐久性と機械的強度とを与えることができる。
【0054】
この発明で使用する樹脂組成物には、所望により、フェノール系またはリン系等の老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0055】
例えば、液晶用基板として、前記樹脂組成物を用いる場合には、液晶は紫外線によって変質するので、紫外線吸収剤の添加は特に好ましい。この紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤等を挙げることができる。これら添加剤の添加量は、通常は10〜10000ppm、好ましくは100〜5000ppmである。
【0056】
溶液流延法により基板を作製する場合には、表面粗さを小さくするためにレベリング剤を添加することも好ましい。このレベリング剤としては、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レべリング剤、シリコーン系レべリング剤等の塗料用レべリング剤を挙げることができる。その添加量は、通常は5〜10000ppm、好ましくは1〜5000ppmである。
【0057】
この発明の積層体は、前記厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面に、前記無機化合物を前記樹脂中に分散させて成る樹脂組成物から形成されたフィルムを積層した積層体である。
【0058】
この発明の積層体に使用するフィルムを形成する樹脂組成物を製造する方法としては、(1)樹脂、無機化合物および各種添加剤を、ブラベンダー、押出機、ロール等を用いて溶融混合する方法、(2)樹脂、無機化合物および各種添加剤を溶液中で混合する方法を挙げることができる。これら方法の中でも、無機化合物の分散性の観点から、前記(2)の方法が好ましい。
【0059】
前記(2)の方法における好ましい具体的方法としては、前記無機化合物を溶媒中に分散して調製された懸濁液と、前記樹脂または溶媒に前記樹脂を溶解して調製された溶液とを混合し、得られた混合液を分散処理する方法を挙げることができる。
【0060】
この樹脂組成物の製造に当っては、まず、無機化合物を溶媒中に分散させた懸濁液が調製される。このときに用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等を挙げることができるが、分散性の観点からすると、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
【0061】
この懸濁液を調製するに際し、用いる無機化合物および溶媒の量に特に制限はないが、無機化合物と溶媒との合計量を100質量部としたとき、通常は、0.01〜90質量部、好ましくは、1〜40質量部の無機化合物が用いられる。分散処理する温度、時間についても制限はなく、通常は、0〜150℃で、0.5〜60分間、分散処理される。
【0062】
次いで、このようにして調製された懸濁液と、樹脂とを混合する。このとき、前記懸濁液と樹脂そのものとを混合してもよいが、混合効率を高めるために、溶媒に前記樹脂を溶解して調製された溶液とを混合することが好ましい。このときに用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等を挙げることができるが、溶解性の観点からすると、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
【0063】
この樹脂溶液を調製するに当って、用いる樹脂および溶媒の量に特に制限はないが、樹脂と溶媒との合計量を100質量部としたとき、通常は、0.01〜90質量部、好ましくは、1〜40質量部の樹脂が用いられる。溶解処理する温度、時間についても制限はなく、通常は、0〜150℃で、0.5〜60分間、溶解処理される。
【0064】
この樹脂組成物の製造においては、前記樹脂または前記のとおり調製された樹脂溶液と無機化合物分散懸濁液とを混合し、得られた混合液を分散処理することによって、樹脂組成物が製造される。このときの混合および分散処理に際しては、高速回転ミキサーを用いることが好ましい。
【0065】
好ましく用いられる前記高速回転ミキサーは、撹拌部の先端速度が15m/sec以上、好ましくは20m/sec以上、より好ましくは30m/sec以上の速度で稼動されることが望ましい。先端速度の上限は、通常、90m/sec程度である。このような高速回転による撹拌によって、せん断力を強力にして、無機化合物の分散を均一にすることができる。
【0066】
混合および分散処理に要する時間は、通常は2〜1800秒間、好ましくは5〜1200秒間、より好ましくは5〜900秒間である。また、混合および分散処理の温度は、通常は20〜80℃、好ましくは30〜70℃である。
【0067】
前記高速回転ミキサーは、容器と撹拌ホイールとを備えており、撹拌ホイールは、高速回転が可能でその端部が容器内側近傍に達する直径を有していることが好ましい。このような撹拌ホイールを高速回転させると、遠心力によって、撹拌液が容器内側面に回転しながら、薄膜状に押し付けられ、その薄膜に撹拌ホイールの先端部が接触して、効率的な撹拌を実現できることができる。
【0068】
前記高速回転ミキサーとしては、薄膜旋回型高速ミキサー、薄膜旋回型高速回転分散混合機等を挙げることができ、市販品としては、特殊機化工業株式会社製の薄膜旋回型高速ミキサー(商品名:T.K.フィルミックス)、特殊機化工業株式会社製の薄膜旋回型高速粉体溶解装置(商品名:T.K.パウダーフィルミックス)等を挙げることができる。
【0069】
図1に、薄膜旋回型高速ミキサーの一例を示す。この薄膜旋回型高速ミキサーは、円筒状の容器1と撹拌ホイール5とを装備している。撹拌ホイール5は容器1の中心に設けられた回転軸6によって駆動装置7に連結されており、この駆動装置7によって回転駆動される。2は流入口、3は流出口、4はジャケット、8は堰である。
【0070】
このようにして、樹脂または溶媒に前記樹脂を溶解して調製された溶液と、無機化合物を溶媒中に分散して調製された懸濁液とを混合し、得られた混合液を分散処理して樹脂組成物を得た場合は、溶液状態のままであってもよく、溶媒を除去した状態であってもよい。溶媒を除去する場合には、円筒型濃縮乾燥機が好ましく用いられる。この円筒型濃縮乾燥機を用いるときの条件は、通常、乾燥温度が100〜350℃、圧力が1MPa以下である。
【0071】
また、この発明に用いる樹脂組成物は、厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上であり、高度の透明性を有する。ここにいう光線透過率は、厚さ2mmの樹脂組成物に入射する光の強度と前記組成物を透過し出射する光の強度との比率(百分率)である。この高度の透明性は、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させることによって達成される。また、光線透過率は、樹脂中に分散させる無機化合物の量によって制御することができる。
【0072】
前記ガラス製基板に積層されるフィルムは、このようにして製造された樹脂組成物から形成されたフィルムである。前記樹脂組成物からフィルムを成形する方法に特に制限はなく、溶液流延法、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等が採用されるが、生産性や積層体中の残留溶媒の影響がないことにより積層体の密着性を向上させることができる点から、溶融押出成形法が好ましい。
【0073】
前記樹脂組成物から形成されるフィルムの厚さに特に制限はないが、得られる積層体の透明性や柔軟性等の観点からすると、通常は1〜500μm、好ましくは20〜200μmである。
【0074】
前記ガラス製基板に前記フィルムを積層する方法にも特に制限はないが、得られる積層体の透明性を確保するためには、例えば、プレス成形機を用い、加圧処理することによって積層する方法が好ましく採用される。この加圧処理に当っては、ガラス製基板のフィルム積層面を予め、前記金属酸化物の表面処理に用いた表面処理剤と同様の表面処理剤により表面処理することが好ましい。また、積層するフィルムの積層面を予め、コロナ放電処理またはプラズマ放電処理することが好ましい。
(2)また、この発明の表示装置は、前記(1)の積層体を有して成ることを特徴とする。
【0075】
この発明の積層体は、様々な用途に供することができるが、特に液晶表示装置および有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)表示装置の部材として有用である。これら部材の中でも、液晶表示装置に用いる液晶セル基板として好適である。
【0076】
この発明の積層体を液晶表示装置用の液晶セル基板として用いる場合には、透明電極層、液晶配向膜、ガスバリア層、位相差フィルム等が積層される。また、2枚の液晶基板間の液晶を封入する空間を設けるためのスペーサーを積層してもよい。
【0077】
この発明の積層体を液晶表示装置に用いる場合には、一般的に、偏光板、液晶セルおよび必要に応じて反射板や位相差板等の位相差補償板等の部材を適宜、組み合わせ、駆動回路を組み込むことにより構成される。
【0078】
図2に液晶表示素子の構成例を示す。図2において、9は液晶表示素子を、10は反射板を、11は液晶基板を、12は透明導電膜を、13は配向膜を、14は液晶を、15はスペーサーを、16はシール材を、17は上偏光板を、18は下偏光板を表す。
【0079】
図2には、反射板を設けた反射型液晶表示装置の概略図を示しているが、この発明の積層体は反射型に限定されるものではなく、透過型液晶表示装置においても適用することができる。透過型液晶表示装置においては、反射板は存在しない構成となる。
【0080】
液晶表示素子9は、液晶セルと偏光板とから成る。液晶セルは、ITO(酸化インジウム・錫)膜等から成る透明導電膜12および配向膜13が形成されている2枚の液晶基板11が対向して配設されており、2枚の液晶基板11の双方の端面部に形成されたシール材16により密封された空間内には、適当な数だけ散布されたプラスチックビーズ等のスペーサー15と共に液晶14が封入されている。また、下偏光板18には、上偏光板17が貼り付けられ、さらに下偏光板18には、反射板10が積層されている。
【0081】
反射型液晶表示素子の場合、図2においては、2枚の偏光板17および18を有しているが、上偏光板17のみにより構成されていてもよい。偏光子フィルムの材料としては、多ハロゲン偏光フィルム、染料偏光フィルム、金属偏光フィルム等を挙げることができ、いずれのフィルムも偏光子層として偏光板17および18に利用することができる。
【0082】
スペーサー15は、配向膜13間のギャップ、すなわち、セル間のギャップを一定に保つための部材であり、通常は、プラスチックビーズやシリカ球等が用いられる。透明導電膜12としては、通常は、ITO膜が用いられる。配向膜13は、液晶表示素子の表示性能を決定するものであり、この材料としては、通常はポリイミド系樹脂が用いられる。
【0083】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例によってこの発明はなんら限定されるものではない。なお、「部」とあるのは、特に断りのない限り、質量部である。
【0084】
製造例1
(極性基を有しない脂環式構造含有重合体の製造例)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を反応器に入れ、室温で混合した後、45℃に保持しながら、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン、以下、「TCD」と略記する。)80部、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(メタノテトラヒドロフルオレン、以下、「MTF」と略記する。)120部および六塩化タングステン(0.7質量%トルエン溶液)80部を、2時間に亘り連続的に添加して重合した。得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。
【0085】
次いで、得られた前記開環重合体を含有する重合反応溶液100部に、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒として、ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して、撹拌しながら200℃まで加温し、4時間、反応させることにより、TCD/MTF開環共重合体水素化物を20質量%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を、TCD/MTF開環共重合体水素化物を100部に対して0.1部になるようにろ過して得られた反応溶液に添加、溶解させた。続いて、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、TCD/MTF開環共重合体水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化してペレットを製造した。このようにして製造された極性基を有しない脂環式構造含有重合体の一例であるTCD/MTF開環共重合体水素化物の重量平均分子量は34000、水素化率は99.9%、ガラス転移点は160℃であった。
【0086】
製造例2
(極性基を有する脂環式構造含有重合体の製造例)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を反応器に入れ、室温で混合した後、45℃に保持しながら、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(以下、「ETCD」と略記する。)100部および六塩化タングステン(0.7質量%トルエン溶液)40部を、2時間に亘り連続的に添加して重合した。得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。
【0087】
次いで、得られた開環重合体を含有する重合反応溶液100部に、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒として、ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して、撹拌しながら200℃まで加温し、4時間、反応させることにより、ETCD開環重合体水素化物を20質量%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を、ETCD開環重合体水素化物を100部に対して0.1部になるようにろ過して得られた反応溶液に添加、溶解させた。続いて、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、ETCD開環重合体水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化してペレットを製造した。このようにして製造されたところの、この発明における極性基を有しない脂環式構造含有重合体の一例であるETCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は40000、水素化率は99.9%、ガラス転移点は138℃であった。
【0088】
このようにして得られたETCD開環重合体水素化物100部に、無水マレイン酸10部、ジクミルパーオキシド3部およびtert−ブチルベンゼン230部を混合し、オートクレーブ中で135℃、6時間、反応させた後、多量のイソプロピルアルコール中に加えることによって析出させ、ろ過して、樹脂を得た。この樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間、乾燥して、この発明における極性基を有する脂環式構造含有重合体の一例である無水マレイン酸変性ETCD開環重合体水素化物105部を得た。この無水マレイン酸変性ETCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は65000、ガラス転移点は135℃、1H−NMRで測定した無水マレイン酸変性量は0.45mmol/gであった。
【0089】
製造例3
(有機化処理モンモリロナイトの製造例)
モンモリロナイト(層状珪酸塩、平均長径0.5μm)100部を60℃の蒸留水1000部に均一に分散させ、モンモリロナイト分散液を調製した。次いで、このモンモリロナイト分散液を撹拌しながら、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド20部を蒸留水300部に溶解させた溶液を緩やかに添加し、60℃で3時間、撹拌を続けた後、ろ過して固形物を分取した。この固形物を60℃の蒸留水500部に加えて再度、分散させた後、再度、ろ過して固形物を分取した。この分散とろ過とを3回繰り返した後、凍結乾燥法により水分を除去して、有機化処理モンモリロナイトを製造した。得られた有機化処理モンモリロナイトのアスペクト比は50であった。
【0090】
実施例1
(積層体の製造例)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製、パンライトL−1250)90部、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業社製、プラクセルPCL212)5部および製造例3により製造された有機化処理モンモリロナイト5部を、二軸押出機(東芝機械社製、TEM−35B)を用いて窒素雰囲気下、溶融混練し、ペレット化して、この発明に係る樹脂組成物の一例であるポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを熱プレスして、厚さ2mmのサンプルを作製し、光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0091】
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間、乾燥して水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を用い、240℃、Tダイの幅300mmの条件で厚さ100μmのフィルムを押出成形した。その後、このフィルムを200×200mmのサイズにスリットし、フィルムの片面をコロナ放電により処理した。
【0092】
次いで、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにより両面を処理したガラスフィルム(縦200mm×横200mm×厚み50μm)の両面に、前記片面をコロナ放電により処理したフィルムを、コロナ放電処理面をガラスフィルムとの接触面として重ね、プレス成形機を用い、135℃、3MPaの条件で5分間、加圧処理した後、さらに、90℃、3MPaの条件で10分間、加圧処理することにより、積層体を製造した。
【0093】
実施例2
(積層体の製造例)
表面をデシルトリメトキシシランにより処理した酸化シラン微粒子(平均粒径35nm)5.0部、製造例1により製造された極性基を有しない脂環式構造含有重合体40.0部、製造例2により製造された極性基を有する脂環式構造含有重合体5.0部およびトルエン450.0部からなる溶液を、超音波分散機(日本精機製作所製、超音波ホモジナイザーUS−150T)を用い、3分間、分散処理した。
【0094】
次いで、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、トルエンを除去しつつ、溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化して、この発明における樹脂組成物の一例である脂環式構造含有重合体組成物を製造した。この脂環式構造含有重合体組成物を熱プレスすることにより厚さ2mmのサンプルを作製し、全光線透過率を測定したところ、86%であった。
【0095】
前記脂環式構造含有重合体組成物を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間、乾燥して水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を用い、240℃、Tダイの幅300mmの条件で厚さ100μmのフィルムを押出成形した。その後、このフィルムを200×200mmのサイズにスリットし、フィルムの片面をコロナ放電により処理した。
【0096】
次いで、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにより両面を処理したガラスフィルム(200mm×200mm×50μm)の両面に、前記片面をコロナ放電により処理したフィルムを、コロナ放電処理面をガラスフィルムとの接触面として重ね、プレス成形機を用い、135℃、3MPaの条件で5分間、加圧処理した後、さらに、90℃、5MPaの条件で10分間、加圧処理することにより、この発明に係る積層体の一例である積層体を製造した。
【0097】
実施例3
(積層体の製造例)
製造例3により製造された有機化処理モンモリロナイト5.0部をトルエン450.0部に分散させた分散液に、製造例1により製造された極性基を有しない脂環式構造含有重合体40.0部および製造例2により製造された極性基を有する脂環式構造含有重合体5.0部を加え、この溶液を図1に示す高速旋回分散機(特殊機化工業社製、フィルミックスFM80−50型)を用いて、撹拌部の先端速度20m/secで分散処理した。
【0098】
次いで、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、トルエンを除去しつつ、溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化して、この発明における樹脂組成物の一例である脂環式構造含有重合体組成物を製造した。この脂環式構造含有重合体組成物を熱プレスすることにより厚さ2mmのサンプルを作製し、全光線透過率を測定したところ、90%であった。
【0099】
前記脂環式構造含有重合体組成物を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間、乾燥して水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を用い、240℃、Tダイの幅300mmの条件で厚さ100μmのフィルムを押出成形した。その後、このフィルムを縦200×横200mmのサイズにスリットし、フィルムの片面をコロナ放電により処理した。
【0100】
次いで、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにより両面を処理したガラスフィルム(縦200mm×横200mm×厚み50μm)の両面に、前記片面をコロナ放電により処理したフィルムを、コロナ放電処理面をガラスフィルムとの接触面として重ね、プレス成形機を用い、135℃、3MPaの条件で5分間、加圧処理した後、さらに、90℃、3MPaの条件で10分間、加圧処理することにより、積層体を製造した。
【0101】
比較例1
(積層体の製造例)
有機化処理モンモリロナイトを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0102】
比較例2
(積層体の製造例)
酸化シラン微粒子を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして、積層体を製造した。
【0103】
評価
(耐湿熱試験)
実施例1〜3および比較例1〜2で製造された積層体を、下記環境下(▲1▼〜▲5▼のサイクル)に曝した後、透明性(耐湿熱試験前後の光線透過率の差で評価)およびヘイズ(耐湿熱試験前後のヘイズの差で評価)ならびに外観異常(膨れ、反り、剥がれの有無の評価)について評価した。ヘイズの測定には、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いた。また、外観異常は、視認によった。結果を表1に示す。
【0104】
▲1▼ 高温環境:80℃、湿度50%、500時間
▲2▼ 高温高湿度環境:60℃、湿度90%、500時間
▲3▼ 高温高湿度環境:80℃、湿度90%、100時間
▲4▼低温環境:−30℃、湿度10%、500時間
▲5▼耐水性:80℃、湿度90%で、ウェットティッシュを載せて5時間放置
【0105】
【表1】
【0106】
表1における膨れ、反り、及び剥がれについての評価基準は、次のとおりである。
【0107】
○:積層体全面に異常(膨れ、反り、及び剥がれ)が観察されない。
【0108】
△:積層体短部に異常(膨れ、反り、及び剥がれ)が観察される。
【0109】
×:積層体全面に異常(膨れ、反り、及び剥がれ)が観察される。
【0110】
実施例4
(反射型液晶表示装置の作製例)
実施例3により得られた積層体から成る基板に、透明電極をフォトリングラフィーでパターニングし、透明電極パターンを形成した。次いで、透明電極パターン上に配向膜を印刷形成した後、250度ツイストのSTNモードの液晶を実現するように、レーヨン布を用いた回転ラビングにより、配向処理を行った。対向基板も同様にして作製した。
【0111】
ガラスファイバーを1.0質量%混入した紫外線硬化性シール樹脂を用意し、一方の基板の周囲部分にこの紫外線硬化性シール樹脂を印刷した。他方の基板上には、所定の径の樹脂ビーズを200個/mm2の割合で散布した。そして、両基板を貼り合わせ、紫外線照射によりシール樹脂を硬化させた。
【0112】
その後、n=0.14のエステル系ネマチック液晶に所定量のカイラル剤を混合した混合液晶を真空注入し、紫外線硬化性樹脂で封口した。続いて、紫外線照射により硬化させた後、熱処理することによって液晶セルを形成した。この液晶セルを前記耐湿熱試験に供した後、液晶セル基板の両面に偏光板を光の透過軸が直交するように貼り合わせ、一方の偏光板に反射板を設置することにより、図2に示す反射型液晶表示装置を作製した。この液晶表示状態を視認したところ、きわめて良好であった。
【0113】
比較例3
(反射型液晶表示装置の作製例)
比較例2により得られた積層体から成る基板に、実施例4と同様の操作を行って液晶セルを形成した。この液晶セルを前記耐湿熱試験に供した後、図2に示す反射型液晶表示装置を作製した。この液晶表示状態を視認したところ、表示装置の端の部分に顕著な画像不良が認められた。
【0114】
【発明の効果】
この発明によれば、高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置が提供され、液晶表示装置および有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)表示装置の設計および製造分野に寄与するところはきわめて多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明において用いることのできる薄膜旋回型高速ミキサーの一例を示す図である。
【図2】図2は、この発明の積層体を用いた液晶表示装置の層構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 容器
2 流入口
3 流出口
4 ジャケット
5 撹拌ホイール
6 回転軸
7 駆動装置
8 堰
9 液晶表示素子
10 反射板
11 液晶基板
12 透明導電膜
13 配向膜
14 液晶
15 スペーサー
16 シール材
17 上偏光板
18 下偏光板
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層体および表示装置に関し、さらに詳しくは、高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでに、加熱成形性、切断加工性に優れたガラスフィルムと特定の構造単位を有する樹脂フィルムとの積層板(例えば、特許文献1参照)が、また、耐薬品性、耐摩耗性、ガスバリアー性を備えたガラスフィルムと特定の引張弾性率を有する樹脂フィルムとの積層体(例えば、特許文献2参照)が、さらに、表示装置の部材として有用なガラスフィルムと樹脂フィルムとの積層体(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【特許文献1】
特開平6−340029号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開2001−113631号公報(請求項1)
【特許文献3】
特表2002−534305号公報(請求項1)
しかしながら、前記いずれの積層体にあっても、過酷な環境下、例えば、高温環境下、高温高湿度環境下または低温環境下において、膨れ、反り、剥がれ等の外観異常を呈し、耐久性に乏しいという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような従来の問題を解消し、高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために、ガラス製基板に積層するフィルムを与える樹脂組成物に着目して種々検討を重ねた結果、この樹脂組成物として、特定の無機化合物を含有し、かつ特定の光線透過率を有する樹脂組成物を用いることによって、前記課題を解決することができるということを見出し、この知見に基づいてこの発明を完成するに到った。
【0005】
すなわち、この発明の前記課題を解決するための第1の手段は、
(1) 厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されて成ることを特徴とする積層体である。
【0006】
この第1の手段における好ましい態様としては、下記▲1▼〜▲3▼の積層体を挙げることができる。
▲1▼ 前記無機化合物が、小さくとも30のアスペクト比を有する層状結晶化合物である積層体。
▲2▼ 前記樹脂が、脂環式構造含有重合体である積層体。
▲3▼ 前記脂環式構造含有重合体が、極性基を有する重合体である積層体。
【0007】
また、この発明の前記課題を解決するための第2の手段は、
(2) 前記(1)の積層体を有して成ることを特徴とする表示装置
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
(1) この発明の積層体は、厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明の積層体には、厚さ1〜500μmのガラス製基板(以下、ガラス製基板を「ガラスフィルム」ということがある。)が用いられる。前記ガラスには制限はなく、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、鉛ガラス等のガラスを挙げることができる。
【0010】
前記ガラス製基板の厚さは、1〜500μmであることを要し、好ましくは10〜100μmである。ガラス製基板の厚さが1〜500μmであることにより、基板に必要とされる機械的強度を保持しながら、可撓性を付与することができるからである。
【0011】
厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面に積層されるフィルムは、樹脂中に無機化合物を分散させて成る樹脂組成物から形成されたフィルムである。この樹脂組成物を構成する樹脂に特に制限はなく、透明性に優れた樹脂組成物を調製することができる限り、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0012】
前記熱可塑性樹脂としては、脂環式構造含有重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルポリスルホン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリレート系樹脂等を挙げることができる。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ケイ素系樹脂等を挙げることができ、紫外線硬化性樹脂としては、ホリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0014】
これら樹脂の中でも、高度の透明性と低い複屈折とを有するという観点からすると、脂環式構造含有重合体が特に好ましい。この脂環式構造含有重合体は、その重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体である。この脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等を挙げることができるが、脂環式構造含有重合体組成物またはこの組成物から得られる成形体の熱安定性の観点からすると、シクロアルカン構造が好ましい。脂環式構造を形成する炭素数は、通常は4〜30、好ましくは、5〜20、より好ましくは、5〜15である。炭素数がこの範囲にあることにより、優れた耐熱性と柔軟性を有する樹脂組成物となる。この脂環式構造は、重合体の主鎖、側鎖のいずれに存在していてもよい。
【0015】
前記脂環式構造含有重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の含有割合に制限はなく、得られる樹脂組成物の性状、物性等に応じて適宜、選択されるが、通常は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。この繰り返し単位の含有割合が少量に過ぎると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することがあるので望ましくない。なお、この発明に用いる脂環式構造含有重合体は、脂環式構造を含有する繰り返し単位以外の繰り返し単位を含有していてもよい。
【0016】
この発明において用いる脂環式構造含有重合体としては、ノルボルネン系重合体(A)、単環の環状オレフィン系重合体(B)、環状共役ジエン系重合体(C)、ビニル脂環式炭化水素重合体(D)、(A)〜(D)の水素化物、およびこれらの混合物等を挙げることができる。これら重合体の中でも、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系重合体(A)の水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体(D)、およびビニル脂環式炭化水素重合体(D)の水素化物が好ましい。
【0017】
前記ノルボルネン系重合体(A)としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体、およびこれら開環共重合体の水素化物、ならびにノルボルネン系モノマーの付加重合体、およびノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体等を挙げることができる。これら重合体および共重合体の中でも、得られる脂環式構造含有重合体組成物の耐熱性、機械的強度の観点からすると、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物が特に好ましい。
【0018】
前記ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)およびその誘導体(環に置換基を有するもの、以下、同じ。)、トリシクロ〔4.3.01,6.12,5〕ドデカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)およびその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3エン(慣用名:メタテトラヒドロフルオレン)およびその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)およびその誘導体等を挙げることができる。
【0019】
前記置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基等を挙げることができ、前記ノルボルネン系モノマーは、これら置換基を一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
【0020】
これら置換基を有するノルボルネン系モノマーとしては、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン等を挙げることができる。
【0021】
前記ノルボルネン系重合体(A)を製造するために用いられるこれらノルボルネン系モノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとの開環共重合体は、前記モノマーを公知の開環重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
【0023】
前記ノルボルネン系モノマーに対して開環共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系モノマーを挙げることができる。
【0024】
前記ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素化物は、通常、ノルボルネン系モノマーの重合液に、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することによって製造することができる。
【0025】
前記ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとの付加共重合体は、前記モノマーを公知の付加重合触媒の存在下に重合することによって製造することができる。
【0026】
ノルボルネン系モノマーに対して付加共重合可能な他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン等のシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン等を挙げることができる。これらモノマーの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0027】
前記ノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーは、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0028】
ノルボルネン系モノマーとこのノルボルネン系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとを付加共重合するに当っては、得られる付加共重合体中のノルボルネン系モノマーに由来する構造単位と、付加共重合可能な他のモノマーに由来する構造単位との割合が、質量比で、50:50〜99:1、好ましくは70:30〜97:3の範囲となるよう、各モノマーの使用量が選択される。
【0029】
前記単環の環状オレフィン系重合体(B)としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系モノマーの付加重合体を挙げることができる。
【0030】
前記環状共役ジエン系重合体(C)としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン等の環状共役ジエン系モノマーの1,2−または1,4−付加重合体およびその水素化物を挙げることができる。
【0031】
また、前記ビニル脂環式炭化水素重合体(D)としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン等のビニル脂環式炭化水素系モノマーの重合体およびその水素化物、スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族炭化水素系モノマーを重合してなる重合体に含まれる芳香族部分を水素化してなる水素化物、ビニル脂環式炭化水素系モノマーまたはビニル芳香族炭化水素系モノマーとこれらビニル芳香族炭化水素系モノマーに対して共重合可能な他のモノマーとのランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体およびその水素化物等を挙げることができる。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロックまたはそれ以上のマルチブロック、傾斜ブロック共重合体等を挙げることもできる。
【0032】
この発明においては、無機化合物との親和性を向上させることができ、しかも樹脂組成物から得られるフィルムの光線透過率を損なうことなく耐熱性を向上させることができることから、用いる前記脂環式構造含有重合体は、極性基を有していることが好ましい。
【0033】
前記極性基としては、ヘテロ原子またはヘテロ原子を有する原子団等を挙げることができ、ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ハロゲン原子等を挙げることができる。これらヘテロ原子の中でも、無機化合物との分散性および相溶性の観点からすると、酸素原子および窒素原子が好ましい。具体的には、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシ基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン基等を挙げることができる。
【0034】
極性基を有する脂環式構造含有重合体を得る方法としては特に制限はないが、脂環式構造含有重合体がノルボルネン系重合体である場合、例えば、(1)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる未変性重合体に、極性基を有する化合物を反応(変性反応)させる方法、(2)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーと極性基を有するノルボルネン系モノマーとを共重合させる方法、(3)各種のノルボルネン系モノマーの中から選択されたところの、極性基を有しないノルボルネン系モノマーを重合して得られる重合体と、前記(1)の方法または(2)の方法により得られた極性基を有するノルボルネン系重合体とを混合する方法等を挙げることができる。ノルボルネン系重合体以外の脂環式構造含有重合体についても、ノルボルネン系重合体の場合と同様である。
【0035】
極性基を有する脂環式構造含有重合体としては、例えば、脂環式構造含有重合体の塩素化物、クロロスルホン化物、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物等を挙げることができ、中でも、極性基含有不飽和化合物のグラフト変性物が好ましい。
【0036】
前記極性基含有不飽和化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、p−スチリルカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテルのグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸等の不飽和カルボン酸化合物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート等の不飽和エステル化合物;アリルアルコール、2−アリル−6−メトキシフェノール、4−アリロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン等の不飽和アルコール酸化合物;クロロジメチルビニルシラン、トリメチルシリルアセチレン、5−トリメチルシリル−1,3−シクロペンタジエン、3−トリメチルシリルアリルアルコール、トリメチルシリルメタクリレート等の不飽和シラン化合物等を挙げることができる。
【0037】
これら極性基含有不飽和化合物の中でも、無機化合物の分散性の観点からすると、不飽和エポキシ化合物および不飽和カルボン酸化合物が特に好ましい。なお、これら極性基含有不飽和化合物を効率よく共重合させるためには、汎用のラジカル開始剤の存在下に重合反応を実施することが好ましく、この好適なラジカル開始剤としては、有機ペルオキシド、有機ペルエステル等を挙げることができる。
【0038】
この発明において用いられる極性基を有する脂環式構造含有重合体は、その極性基含量が少なくとも0.01mmol/gであることが好ましく、より具体的には、0.01〜0.8mmol/g、さらに好ましくは、0.01〜0.5mmol/gである。極性基含量が前記範囲内にあることにより、無機化合物の分散性の向上と得られる積層体の耐水性等のような諸物性の向上とを両立させることができる。
【0039】
前記極性基含量は、前記(1)の方法においては、極性基を有する化合物の反応による極性基の導入率により、前記(2)の方法においては、極性基を有するモノマーの共重合割合により、前記(3)の方法においては、極性基を有しない重合体と極性基を含有する重合体との混合割合により、調節することができる。
【0040】
また、この発明において用いられる脂環式構造含有重合体の分子量に特に制限はないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、通常は、5000〜500000、好ましくは、8000〜200000、より好ましくは、10000〜100000である。重量平均分子量がこの範囲にあることにより、得られる樹脂組成物の成形加工性が良好となり、機械的強度を向上させることもできる。この重量平均分子量は、シクロヘキサン溶液またはトルエン溶液のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法により測定することができる。
【0041】
さらに、この発明において用いられる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)にも特に制限はないが、通常は、80℃以上、好ましくは、130〜250℃である。ガラス転移温度がこの範囲にあることにより、得られる樹脂組成物において、高温下の使用に耐え、熱変形、応力集中等を生じることがなく、優れた耐久性を与えることができる。
【0042】
このような樹脂中に分散させる無機化合物としては、前記樹脂の透明性を阻害しない限り特に制限はなく、各種の金属化合物および層状結晶化合物を挙げることができる。前記金属化合物としては、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Pd、Ag、Sn、PtおよびAuから選ばれた少なくとも一種の金属の酸化物を挙げることができる。前記金属酸化物は、微粒子として用いられ、その形状は、球状、楕円状、破砕状、平板状または多面体状である。
【0043】
前記金属酸化物は、濡れ性を付与し、前記樹脂に対する分散性を向上させるために、表面処理されていることが好ましい。この表面処理に用いる表面処理剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジプロピオレート等のアルミニウム系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート等のチタネート系カップリング剤等を挙げることができる。
【0044】
このような表面処理剤を用いて金属酸化物を処理する方法としては、ブレンダー等で金属酸化物を強制撹拌しながら、カップリング剤を直接または水もしくは他の溶媒により希釈した溶液を空気または窒素ガスで噴射させて処理する乾式法、金属酸化物を水に分散させ、この分散液にカップリング剤を直接または水もしくは他の溶媒により希釈した溶液を添加した後、静置して金属酸化物を沈降分離し、乾燥する湿式法、高温の金属酸化物にカップリング剤を直接または水もしくは他の溶媒により希釈した溶液をスプレーするスプレー法等を挙げることができる。
【0045】
また、前記金属酸化物の屈折率と前記樹脂の屈折率との差が0.05以下、好ましくは0.01以下であることが好ましい。両者の屈折率の差が0.05以下であることにより、得られる樹脂組成物に高度の透明性を付与することができるからである。この屈折率の測定は、浸漬液中の金属酸化物微粒子を偏光顕微鏡で観察する方法(ベッケラインと称される粒子外郭に沿った明るい線の位置で粒子外郭と浸漬液の屈折率の大小を判別することができる。)またはシェアリング(Applied Optics Vol.25 No.91 October 1986に記載)により、金属酸化物微粒子内の屈折率変化を測定し、金属酸化物微粒子最外部の屈折率を測定する方法によることができる。
【0046】
また、前記層状結晶化合物は、その化合物が平面的に配列されたシート構造を有する状態(層状)にあり、その垂直方向にシート構造の繰り返しが見られる、多結晶層構造を有する化合物である。この層状結晶化合物は、結晶層が相互にファンデルワールス力または水素結合力により結合されているものと、各結晶層間に陽イオンが介在していて、負電荷に荷電した結晶層が相互に前記陽イオンを介して微弱な静電力により結合されているものとに大別することができる。
【0047】
このような層状結晶化合物の具体例としては、グラファイト、TiS2、NbSe2、MoS2等の遷移金属ジカルコゲン化物;CrPS4等の二価金属リンカルコゲン化物;MoO3、V2O5等の遷移金属の酸化物;FeOCl、VOCl、CrOCl等のオキシハロゲン化物;Zn(OH)2、Cu(OH)2等の水酸酸化物;Zr(HPO4)2・nH2O、Ti(HPO4)3・nH2O、Na(UO2PO4)3・nH2O等のリン酸塩;Na2Ti3O7、KTiNbO5、RbxMnxTi2−xO4等のチタン酸塩;Na2U2O7、K2U2O7等のウラン酸塩;KV3O8、K3V5O14、CaV6O16・nH2O、Na(UO2V3O9)・nH2O等のバナジン酸塩;KNb3O3、K4Nb6O17等のニオブ酸塩;Na2W4O13、Ag4W10O13等のタングステン酸塩;Mg2Mo2O7、Cs2Mo5O16、Cs2Mo7O22、Ag4Mo10O33等のモリブデン酸塩;モンモリロナイト、サポナイト、ハイデライト、ヘクトライト、ノントロナイト、スティブンサイト、トリオクタヘドラルバーミキュライト、ジオクタヘドラルバーミキュライト、マスコバイト、フィロゴバイト、バイオタイト、レピドライト、バラゴナイト、テトラシリシックマイト、カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト、H2SiO5、H2Si14O29・5H2O等の珪酸塩またはこの珪酸塩により構成される鉱物類等を挙げることができる。
【0048】
これら層状結晶化合物の中でも、前記樹脂への分散性、得られる樹脂組成物の耐熱性、機械的強度の観点から、珪酸塩、リン酸塩およびモリブデン酸塩が好ましく、さらには、珪酸塩が特に好ましい。
【0049】
この発明の積層体においては、使用する無機化合物としては、小さくとも30、好ましくは小さくとも50のアスペクト比を有する層状結晶化合物が好ましい。このようなアスペクト比を有する層状結晶化合物を用いることにより、積層体の耐久性を向上させることができるからである。なお、アスペクト比は、層状結晶化合物の長軸方向の長さをD1とし、短軸方向の長さをD2としたときのD1/D2である。
【0050】
この発明において用いられる層状結晶化合物は、前記樹脂に対する分散性を向上させるために、有機化処理を施すことが好ましい。この有機化処理は、例えば、陽イオン性界面活性剤を用いて行うことができる。この陽イオン性界面活性剤としては、R1R2R3R4N+X−で表される第四級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0051】
前記R1R2R3R4N+X−において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一であっても、別異であってもよく、炭素数1〜30の飽和または不飽和炭化水素基を表す。この炭素数1〜30の飽和または不飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基、ラウリル基、オレイル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を挙げることができる。X−としては、Cl−、Br−、NO3 −、OH−、CH3COO−等の陰イオンを挙げることができる。
【0052】
層状結晶化合物の有機化処理は、例えば、層状結晶化合物を水に分散させて層状結晶化合物分散液を調製し、この分散液に前記陽イオン性界面活性剤を添加して、例えば常温下に撹拌することによって行うことができる。このときの層状結晶化合物分散液における層状結晶化合物の濃度は、0.01〜70質量%に調整することが好ましい。また、前記陽イオン性界面活性剤は、水溶液として用いることもできる。
【0053】
この樹脂組成物における組成比に格別の制限はないが、樹脂と無機化合物との合計量を100質量部としたとき、無機化合物の量が、通常は、0.01〜50質量部、好ましくは、0.5〜30質量部、より好ましくは、1〜20質量部である。無機化合物の量が前記範囲にあることにより、得られる樹脂組成物に優れた耐久性と機械的強度とを与えることができる。
【0054】
この発明で使用する樹脂組成物には、所望により、フェノール系またはリン系等の老化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0055】
例えば、液晶用基板として、前記樹脂組成物を用いる場合には、液晶は紫外線によって変質するので、紫外線吸収剤の添加は特に好ましい。この紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリルニトリル系紫外線吸収剤等を挙げることができる。これら添加剤の添加量は、通常は10〜10000ppm、好ましくは100〜5000ppmである。
【0056】
溶液流延法により基板を作製する場合には、表面粗さを小さくするためにレベリング剤を添加することも好ましい。このレベリング剤としては、例えば、フッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レべリング剤、シリコーン系レべリング剤等の塗料用レべリング剤を挙げることができる。その添加量は、通常は5〜10000ppm、好ましくは1〜5000ppmである。
【0057】
この発明の積層体は、前記厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面に、前記無機化合物を前記樹脂中に分散させて成る樹脂組成物から形成されたフィルムを積層した積層体である。
【0058】
この発明の積層体に使用するフィルムを形成する樹脂組成物を製造する方法としては、(1)樹脂、無機化合物および各種添加剤を、ブラベンダー、押出機、ロール等を用いて溶融混合する方法、(2)樹脂、無機化合物および各種添加剤を溶液中で混合する方法を挙げることができる。これら方法の中でも、無機化合物の分散性の観点から、前記(2)の方法が好ましい。
【0059】
前記(2)の方法における好ましい具体的方法としては、前記無機化合物を溶媒中に分散して調製された懸濁液と、前記樹脂または溶媒に前記樹脂を溶解して調製された溶液とを混合し、得られた混合液を分散処理する方法を挙げることができる。
【0060】
この樹脂組成物の製造に当っては、まず、無機化合物を溶媒中に分散させた懸濁液が調製される。このときに用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等を挙げることができるが、分散性の観点からすると、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
【0061】
この懸濁液を調製するに際し、用いる無機化合物および溶媒の量に特に制限はないが、無機化合物と溶媒との合計量を100質量部としたとき、通常は、0.01〜90質量部、好ましくは、1〜40質量部の無機化合物が用いられる。分散処理する温度、時間についても制限はなく、通常は、0〜150℃で、0.5〜60分間、分散処理される。
【0062】
次いで、このようにして調製された懸濁液と、樹脂とを混合する。このとき、前記懸濁液と樹脂そのものとを混合してもよいが、混合効率を高めるために、溶媒に前記樹脂を溶解して調製された溶液とを混合することが好ましい。このときに用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等を挙げることができるが、溶解性の観点からすると、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
【0063】
この樹脂溶液を調製するに当って、用いる樹脂および溶媒の量に特に制限はないが、樹脂と溶媒との合計量を100質量部としたとき、通常は、0.01〜90質量部、好ましくは、1〜40質量部の樹脂が用いられる。溶解処理する温度、時間についても制限はなく、通常は、0〜150℃で、0.5〜60分間、溶解処理される。
【0064】
この樹脂組成物の製造においては、前記樹脂または前記のとおり調製された樹脂溶液と無機化合物分散懸濁液とを混合し、得られた混合液を分散処理することによって、樹脂組成物が製造される。このときの混合および分散処理に際しては、高速回転ミキサーを用いることが好ましい。
【0065】
好ましく用いられる前記高速回転ミキサーは、撹拌部の先端速度が15m/sec以上、好ましくは20m/sec以上、より好ましくは30m/sec以上の速度で稼動されることが望ましい。先端速度の上限は、通常、90m/sec程度である。このような高速回転による撹拌によって、せん断力を強力にして、無機化合物の分散を均一にすることができる。
【0066】
混合および分散処理に要する時間は、通常は2〜1800秒間、好ましくは5〜1200秒間、より好ましくは5〜900秒間である。また、混合および分散処理の温度は、通常は20〜80℃、好ましくは30〜70℃である。
【0067】
前記高速回転ミキサーは、容器と撹拌ホイールとを備えており、撹拌ホイールは、高速回転が可能でその端部が容器内側近傍に達する直径を有していることが好ましい。このような撹拌ホイールを高速回転させると、遠心力によって、撹拌液が容器内側面に回転しながら、薄膜状に押し付けられ、その薄膜に撹拌ホイールの先端部が接触して、効率的な撹拌を実現できることができる。
【0068】
前記高速回転ミキサーとしては、薄膜旋回型高速ミキサー、薄膜旋回型高速回転分散混合機等を挙げることができ、市販品としては、特殊機化工業株式会社製の薄膜旋回型高速ミキサー(商品名:T.K.フィルミックス)、特殊機化工業株式会社製の薄膜旋回型高速粉体溶解装置(商品名:T.K.パウダーフィルミックス)等を挙げることができる。
【0069】
図1に、薄膜旋回型高速ミキサーの一例を示す。この薄膜旋回型高速ミキサーは、円筒状の容器1と撹拌ホイール5とを装備している。撹拌ホイール5は容器1の中心に設けられた回転軸6によって駆動装置7に連結されており、この駆動装置7によって回転駆動される。2は流入口、3は流出口、4はジャケット、8は堰である。
【0070】
このようにして、樹脂または溶媒に前記樹脂を溶解して調製された溶液と、無機化合物を溶媒中に分散して調製された懸濁液とを混合し、得られた混合液を分散処理して樹脂組成物を得た場合は、溶液状態のままであってもよく、溶媒を除去した状態であってもよい。溶媒を除去する場合には、円筒型濃縮乾燥機が好ましく用いられる。この円筒型濃縮乾燥機を用いるときの条件は、通常、乾燥温度が100〜350℃、圧力が1MPa以下である。
【0071】
また、この発明に用いる樹脂組成物は、厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上であり、高度の透明性を有する。ここにいう光線透過率は、厚さ2mmの樹脂組成物に入射する光の強度と前記組成物を透過し出射する光の強度との比率(百分率)である。この高度の透明性は、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させることによって達成される。また、光線透過率は、樹脂中に分散させる無機化合物の量によって制御することができる。
【0072】
前記ガラス製基板に積層されるフィルムは、このようにして製造された樹脂組成物から形成されたフィルムである。前記樹脂組成物からフィルムを成形する方法に特に制限はなく、溶液流延法、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等が採用されるが、生産性や積層体中の残留溶媒の影響がないことにより積層体の密着性を向上させることができる点から、溶融押出成形法が好ましい。
【0073】
前記樹脂組成物から形成されるフィルムの厚さに特に制限はないが、得られる積層体の透明性や柔軟性等の観点からすると、通常は1〜500μm、好ましくは20〜200μmである。
【0074】
前記ガラス製基板に前記フィルムを積層する方法にも特に制限はないが、得られる積層体の透明性を確保するためには、例えば、プレス成形機を用い、加圧処理することによって積層する方法が好ましく採用される。この加圧処理に当っては、ガラス製基板のフィルム積層面を予め、前記金属酸化物の表面処理に用いた表面処理剤と同様の表面処理剤により表面処理することが好ましい。また、積層するフィルムの積層面を予め、コロナ放電処理またはプラズマ放電処理することが好ましい。
(2)また、この発明の表示装置は、前記(1)の積層体を有して成ることを特徴とする。
【0075】
この発明の積層体は、様々な用途に供することができるが、特に液晶表示装置および有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)表示装置の部材として有用である。これら部材の中でも、液晶表示装置に用いる液晶セル基板として好適である。
【0076】
この発明の積層体を液晶表示装置用の液晶セル基板として用いる場合には、透明電極層、液晶配向膜、ガスバリア層、位相差フィルム等が積層される。また、2枚の液晶基板間の液晶を封入する空間を設けるためのスペーサーを積層してもよい。
【0077】
この発明の積層体を液晶表示装置に用いる場合には、一般的に、偏光板、液晶セルおよび必要に応じて反射板や位相差板等の位相差補償板等の部材を適宜、組み合わせ、駆動回路を組み込むことにより構成される。
【0078】
図2に液晶表示素子の構成例を示す。図2において、9は液晶表示素子を、10は反射板を、11は液晶基板を、12は透明導電膜を、13は配向膜を、14は液晶を、15はスペーサーを、16はシール材を、17は上偏光板を、18は下偏光板を表す。
【0079】
図2には、反射板を設けた反射型液晶表示装置の概略図を示しているが、この発明の積層体は反射型に限定されるものではなく、透過型液晶表示装置においても適用することができる。透過型液晶表示装置においては、反射板は存在しない構成となる。
【0080】
液晶表示素子9は、液晶セルと偏光板とから成る。液晶セルは、ITO(酸化インジウム・錫)膜等から成る透明導電膜12および配向膜13が形成されている2枚の液晶基板11が対向して配設されており、2枚の液晶基板11の双方の端面部に形成されたシール材16により密封された空間内には、適当な数だけ散布されたプラスチックビーズ等のスペーサー15と共に液晶14が封入されている。また、下偏光板18には、上偏光板17が貼り付けられ、さらに下偏光板18には、反射板10が積層されている。
【0081】
反射型液晶表示素子の場合、図2においては、2枚の偏光板17および18を有しているが、上偏光板17のみにより構成されていてもよい。偏光子フィルムの材料としては、多ハロゲン偏光フィルム、染料偏光フィルム、金属偏光フィルム等を挙げることができ、いずれのフィルムも偏光子層として偏光板17および18に利用することができる。
【0082】
スペーサー15は、配向膜13間のギャップ、すなわち、セル間のギャップを一定に保つための部材であり、通常は、プラスチックビーズやシリカ球等が用いられる。透明導電膜12としては、通常は、ITO膜が用いられる。配向膜13は、液晶表示素子の表示性能を決定するものであり、この材料としては、通常はポリイミド系樹脂が用いられる。
【0083】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例によってこの発明はなんら限定されるものではない。なお、「部」とあるのは、特に断りのない限り、質量部である。
【0084】
製造例1
(極性基を有しない脂環式構造含有重合体の製造例)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を反応器に入れ、室温で混合した後、45℃に保持しながら、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン、以下、「TCD」と略記する。)80部、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(メタノテトラヒドロフルオレン、以下、「MTF」と略記する。)120部および六塩化タングステン(0.7質量%トルエン溶液)80部を、2時間に亘り連続的に添加して重合した。得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。
【0085】
次いで、得られた前記開環重合体を含有する重合反応溶液100部に、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒として、ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して、撹拌しながら200℃まで加温し、4時間、反応させることにより、TCD/MTF開環共重合体水素化物を20質量%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を、TCD/MTF開環共重合体水素化物を100部に対して0.1部になるようにろ過して得られた反応溶液に添加、溶解させた。続いて、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、TCD/MTF開環共重合体水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化してペレットを製造した。このようにして製造された極性基を有しない脂環式構造含有重合体の一例であるTCD/MTF開環共重合体水素化物の重量平均分子量は34000、水素化率は99.9%、ガラス転移点は160℃であった。
【0086】
製造例2
(極性基を有する脂環式構造含有重合体の製造例)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部およびトリイソブチルアルミニウム0.30部を反応器に入れ、室温で混合した後、45℃に保持しながら、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(以下、「ETCD」と略記する。)100部および六塩化タングステン(0.7質量%トルエン溶液)40部を、2時間に亘り連続的に添加して重合した。得られた重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部およびイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させて、開環重合体を含有する重合反応溶液を得た。
【0087】
次いで、得られた開環重合体を含有する重合反応溶液100部に、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素化触媒として、ニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して、撹拌しながら200℃まで加温し、4時間、反応させることにより、ETCD開環重合体水素化物を20質量%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を、ETCD開環重合体水素化物を100部に対して0.1部になるようにろ過して得られた反応溶液に添加、溶解させた。続いて、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、シクロヘキサンおよびその他の揮発成分を除去しつつ、ETCD開環重合体水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化してペレットを製造した。このようにして製造されたところの、この発明における極性基を有しない脂環式構造含有重合体の一例であるETCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は40000、水素化率は99.9%、ガラス転移点は138℃であった。
【0088】
このようにして得られたETCD開環重合体水素化物100部に、無水マレイン酸10部、ジクミルパーオキシド3部およびtert−ブチルベンゼン230部を混合し、オートクレーブ中で135℃、6時間、反応させた後、多量のイソプロピルアルコール中に加えることによって析出させ、ろ過して、樹脂を得た。この樹脂を100℃、0.1kPa以下で48時間、乾燥して、この発明における極性基を有する脂環式構造含有重合体の一例である無水マレイン酸変性ETCD開環重合体水素化物105部を得た。この無水マレイン酸変性ETCD開環重合体水素化物の重量平均分子量は65000、ガラス転移点は135℃、1H−NMRで測定した無水マレイン酸変性量は0.45mmol/gであった。
【0089】
製造例3
(有機化処理モンモリロナイトの製造例)
モンモリロナイト(層状珪酸塩、平均長径0.5μm)100部を60℃の蒸留水1000部に均一に分散させ、モンモリロナイト分散液を調製した。次いで、このモンモリロナイト分散液を撹拌しながら、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド20部を蒸留水300部に溶解させた溶液を緩やかに添加し、60℃で3時間、撹拌を続けた後、ろ過して固形物を分取した。この固形物を60℃の蒸留水500部に加えて再度、分散させた後、再度、ろ過して固形物を分取した。この分散とろ過とを3回繰り返した後、凍結乾燥法により水分を除去して、有機化処理モンモリロナイトを製造した。得られた有機化処理モンモリロナイトのアスペクト比は50であった。
【0090】
実施例1
(積層体の製造例)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製、パンライトL−1250)90部、ポリカプロラクトン(ダイセル化学工業社製、プラクセルPCL212)5部および製造例3により製造された有機化処理モンモリロナイト5部を、二軸押出機(東芝機械社製、TEM−35B)を用いて窒素雰囲気下、溶融混練し、ペレット化して、この発明に係る樹脂組成物の一例であるポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られたポリカーボネート樹脂組成物のペレットを熱プレスして、厚さ2mmのサンプルを作製し、光線透過率を測定したところ、85%であった。
【0091】
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間、乾燥して水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を用い、240℃、Tダイの幅300mmの条件で厚さ100μmのフィルムを押出成形した。その後、このフィルムを200×200mmのサイズにスリットし、フィルムの片面をコロナ放電により処理した。
【0092】
次いで、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにより両面を処理したガラスフィルム(縦200mm×横200mm×厚み50μm)の両面に、前記片面をコロナ放電により処理したフィルムを、コロナ放電処理面をガラスフィルムとの接触面として重ね、プレス成形機を用い、135℃、3MPaの条件で5分間、加圧処理した後、さらに、90℃、3MPaの条件で10分間、加圧処理することにより、積層体を製造した。
【0093】
実施例2
(積層体の製造例)
表面をデシルトリメトキシシランにより処理した酸化シラン微粒子(平均粒径35nm)5.0部、製造例1により製造された極性基を有しない脂環式構造含有重合体40.0部、製造例2により製造された極性基を有する脂環式構造含有重合体5.0部およびトルエン450.0部からなる溶液を、超音波分散機(日本精機製作所製、超音波ホモジナイザーUS−150T)を用い、3分間、分散処理した。
【0094】
次いで、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、トルエンを除去しつつ、溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化して、この発明における樹脂組成物の一例である脂環式構造含有重合体組成物を製造した。この脂環式構造含有重合体組成物を熱プレスすることにより厚さ2mmのサンプルを作製し、全光線透過率を測定したところ、86%であった。
【0095】
前記脂環式構造含有重合体組成物を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間、乾燥して水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を用い、240℃、Tダイの幅300mmの条件で厚さ100μmのフィルムを押出成形した。その後、このフィルムを200×200mmのサイズにスリットし、フィルムの片面をコロナ放電により処理した。
【0096】
次いで、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにより両面を処理したガラスフィルム(200mm×200mm×50μm)の両面に、前記片面をコロナ放電により処理したフィルムを、コロナ放電処理面をガラスフィルムとの接触面として重ね、プレス成形機を用い、135℃、3MPaの条件で5分間、加圧処理した後、さらに、90℃、5MPaの条件で10分間、加圧処理することにより、この発明に係る積層体の一例である積層体を製造した。
【0097】
実施例3
(積層体の製造例)
製造例3により製造された有機化処理モンモリロナイト5.0部をトルエン450.0部に分散させた分散液に、製造例1により製造された極性基を有しない脂環式構造含有重合体40.0部および製造例2により製造された極性基を有する脂環式構造含有重合体5.0部を加え、この溶液を図1に示す高速旋回分散機(特殊機化工業社製、フィルミックスFM80−50型)を用いて、撹拌部の先端速度20m/secで分散処理した。
【0098】
次いで、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用い、270℃、1kPa以下で、トルエンを除去しつつ、溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後、ペレット化して、この発明における樹脂組成物の一例である脂環式構造含有重合体組成物を製造した。この脂環式構造含有重合体組成物を熱プレスすることにより厚さ2mmのサンプルを作製し、全光線透過率を測定したところ、90%であった。
【0099】
前記脂環式構造含有重合体組成物を、空気を流通させた熱風乾燥機を用いて70℃で2時間、乾燥して水分を除去した後、65mmφのスクリューを備えた樹脂溶融混練機を有するTダイ式フィルム溶融押出成形機を用い、240℃、Tダイの幅300mmの条件で厚さ100μmのフィルムを押出成形した。その後、このフィルムを縦200×横200mmのサイズにスリットし、フィルムの片面をコロナ放電により処理した。
【0100】
次いで、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランにより両面を処理したガラスフィルム(縦200mm×横200mm×厚み50μm)の両面に、前記片面をコロナ放電により処理したフィルムを、コロナ放電処理面をガラスフィルムとの接触面として重ね、プレス成形機を用い、135℃、3MPaの条件で5分間、加圧処理した後、さらに、90℃、3MPaの条件で10分間、加圧処理することにより、積層体を製造した。
【0101】
比較例1
(積層体の製造例)
有機化処理モンモリロナイトを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を製造した。
【0102】
比較例2
(積層体の製造例)
酸化シラン微粒子を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして、積層体を製造した。
【0103】
評価
(耐湿熱試験)
実施例1〜3および比較例1〜2で製造された積層体を、下記環境下(▲1▼〜▲5▼のサイクル)に曝した後、透明性(耐湿熱試験前後の光線透過率の差で評価)およびヘイズ(耐湿熱試験前後のヘイズの差で評価)ならびに外観異常(膨れ、反り、剥がれの有無の評価)について評価した。ヘイズの測定には、濁度計(日本電色工業社製、NDH−300A)を用いた。また、外観異常は、視認によった。結果を表1に示す。
【0104】
▲1▼ 高温環境:80℃、湿度50%、500時間
▲2▼ 高温高湿度環境:60℃、湿度90%、500時間
▲3▼ 高温高湿度環境:80℃、湿度90%、100時間
▲4▼低温環境:−30℃、湿度10%、500時間
▲5▼耐水性:80℃、湿度90%で、ウェットティッシュを載せて5時間放置
【0105】
【表1】
【0106】
表1における膨れ、反り、及び剥がれについての評価基準は、次のとおりである。
【0107】
○:積層体全面に異常(膨れ、反り、及び剥がれ)が観察されない。
【0108】
△:積層体短部に異常(膨れ、反り、及び剥がれ)が観察される。
【0109】
×:積層体全面に異常(膨れ、反り、及び剥がれ)が観察される。
【0110】
実施例4
(反射型液晶表示装置の作製例)
実施例3により得られた積層体から成る基板に、透明電極をフォトリングラフィーでパターニングし、透明電極パターンを形成した。次いで、透明電極パターン上に配向膜を印刷形成した後、250度ツイストのSTNモードの液晶を実現するように、レーヨン布を用いた回転ラビングにより、配向処理を行った。対向基板も同様にして作製した。
【0111】
ガラスファイバーを1.0質量%混入した紫外線硬化性シール樹脂を用意し、一方の基板の周囲部分にこの紫外線硬化性シール樹脂を印刷した。他方の基板上には、所定の径の樹脂ビーズを200個/mm2の割合で散布した。そして、両基板を貼り合わせ、紫外線照射によりシール樹脂を硬化させた。
【0112】
その後、n=0.14のエステル系ネマチック液晶に所定量のカイラル剤を混合した混合液晶を真空注入し、紫外線硬化性樹脂で封口した。続いて、紫外線照射により硬化させた後、熱処理することによって液晶セルを形成した。この液晶セルを前記耐湿熱試験に供した後、液晶セル基板の両面に偏光板を光の透過軸が直交するように貼り合わせ、一方の偏光板に反射板を設置することにより、図2に示す反射型液晶表示装置を作製した。この液晶表示状態を視認したところ、きわめて良好であった。
【0113】
比較例3
(反射型液晶表示装置の作製例)
比較例2により得られた積層体から成る基板に、実施例4と同様の操作を行って液晶セルを形成した。この液晶セルを前記耐湿熱試験に供した後、図2に示す反射型液晶表示装置を作製した。この液晶表示状態を視認したところ、表示装置の端の部分に顕著な画像不良が認められた。
【0114】
【発明の効果】
この発明によれば、高度の透明性を有し、しかも過酷な環境下においても優れた耐久性を有する積層体およびこの積層体を有して成る表示装置が提供され、液晶表示装置および有機エレクトロ・ルミネッセンス(有機EL)表示装置の設計および製造分野に寄与するところはきわめて多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明において用いることのできる薄膜旋回型高速ミキサーの一例を示す図である。
【図2】図2は、この発明の積層体を用いた液晶表示装置の層構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 容器
2 流入口
3 流出口
4 ジャケット
5 撹拌ホイール
6 回転軸
7 駆動装置
8 堰
9 液晶表示素子
10 反射板
11 液晶基板
12 透明導電膜
13 配向膜
14 液晶
15 スペーサー
16 シール材
17 上偏光板
18 下偏光板
Claims (5)
- 厚さ1〜500μmのガラス製基板の少なくとも一方の面にフィルムを積層して成る積層体であって、前記フィルムが、平均粒径が大きくとも1μmの無機化合物を樹脂中に分散させて成り、かつ厚さ2mmにおける光線透過率が80%以上である樹脂組成物から形成されて成ることを特徴とする積層体。
- 前記無機化合物が、小さくとも30のアスペクト比を有する層状結晶化合物である請求項1に記載の積層体。
- 前記樹脂が、脂環式構造含有重合体である請求項1または2に記載の積層体。
- 前記脂環式構造含有重合体が、極性基を有する重合体である請求項3に記載の積層体。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体を有して成ることを特徴とする表示装置。
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