JP2005000521A - 血液処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】中空糸の前処理(湿熱収縮)を省略できるとともに、固定材の亀裂やハウジングからの剥がれに起因する洩れの危険がない血液処理装置を提供すること。
【解決手段】ハウジング(5)の内部に長さ方向に沿って中空糸束(6)を配置し、中空糸束(6)端部を固定材(3)によりハウジング(5)端部内面に固定し、前記ハウジング(5)端部に、血液流出入口(1A)を有するポート(1)を装着した血液処理装置において、前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下である血液処理装置。
【選択図】図1
【解決手段】ハウジング(5)の内部に長さ方向に沿って中空糸束(6)を配置し、中空糸束(6)端部を固定材(3)によりハウジング(5)端部内面に固定し、前記ハウジング(5)端部に、血液流出入口(1A)を有するポート(1)を装着した血液処理装置において、前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下である血液処理装置。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液透析、血液ろ過、血液透析ろ過、血漿分離用に用いる血液処理装置であって、中空糸をハウジングの内部に装填した血液処理装置の改良に関し、中空糸が湿熱により収縮する材料で形成され、高圧蒸気滅菌される血液処理装置に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】
血液処理装置の滅菌方法には高圧蒸気滅菌、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌による3種類の滅菌方法がある。3種類の滅菌方法は各々の特徴があるが、中空糸が耐熱性を有する場合は高圧蒸気滅菌が好まれて利用され、耐熱性の不安な中空糸を用いる場合は放射線やエチレンオキサイドガス滅菌が利用されている。
これに対して、高圧蒸気滅菌した時、性能面・物性面では使用可能であるが、若干の収縮が認められる場合、モジュール化する前に中空糸をあらかじめ湿熱処理により収縮させた後に、ハウジングに組込む手段が取られる場合もある。この場合、前処理(湿熱収縮)を怠ると滅菌時または保管時に中空糸が収縮を起こし、固定材に亀裂が生じたり、ハウジングから剥がれたりして臨床使用中に血液洩れを起こす危険があった。
【0003】
高圧蒸気滅菌を施した血液処理装置の固定材には一般的に主材と硬化材の2液を混合硬化させるポリウレタンが使われており、混合硬化させると発熱し、硬化と同時に若干の収縮を起こす性質がある。
また、ハウジングには熱可塑プラスチックの中でも耐熱性を有するポリカーボネートが一般的に使われており、その熱(線)膨張係数は6〜7×10(superscript:−5)(/℃)と比較的に小さい数値である。一方、ポリウレタンの熱(線)膨張係数は10〜20×10(superscript:−5)(/℃)とポリカーボネートに比べて大きい。
すなわちハウジングの熱(線)膨張係数をA、固定材の熱(線)膨張係数をBとすると、これらの熱(線)膨張係数の比B/Aは、従来の血液処理装置では、少なくとも1.4を超えている。
ハウジングに内接したポリウレタンは比較的高温で硬化した時点ですでに収縮が起きており、更に温度の低下と共に熱(線)膨張係数に応じて収縮する。一方、ポリウレタン(固定材)の外側に接着固定しているポリカーボネート(ハウジング)は熱(線)膨張係数が小さいため、温度の低下による収縮もポリウレタンに比べて小さく、ポリウレタン(固定材)はハウジングから剥がれる方向に応力が働いている。
更に、洗浄・滅菌等で加熱、冷却が繰り返されるたびに、熱(線)膨張係数の違いにより固定材とハウジングの間に無理な応力がかかり剥離や亀裂は進行することになる。
【0004】
従来の血液処理装置においても、洗浄あるいは滅菌時に生じる固定材の亀裂を防止するためや剥離による血液漏れを防止するために固定材とハウジングとの間に固定材に対して接着性の低いリングを配置して固定材のハウジングへの付着を除去する発明(特許文献1参照。)や、固定材の外周をハウジングとは接触させずに、型内で硬化させ硬化後型を取り除くことにより、固定材が応力を受けずに収縮できる配慮を施している発明(特許文献2参照。)が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2887347号公報(1頁、図3)
【特許文献2】
特開平10−211421号公報(1頁、図1)
【0006】
これらの文献1、2も、固定材の亀裂を無くすための発明ではあるが、固定材の硬化時の収縮や洗浄・滅菌時の膨張・収縮に耐えるためのものであり、これに加えて中空糸が湿熱により収縮する材料で形成され、高圧蒸気滅菌される血液処理装置のためのものではない。
【0007】
血液処理装置に使用される固定材、ハウジング及び中空糸の各構成材料並びに固定材とハウジングの接続形態等の各組み合わせにより、以下の1から3に示すケースが想定される。
[ケース1]
▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数の比B/Aが少なくとも1.4を超える材料の組み合わせを使用し、かつ▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングを相互に接着した形態
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなり、ハウジングから剥がれる作用を示す。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は熱(線)膨張係数が大きく異なるため、ハウジングの収縮率は小さいが固定剤の収縮率は大きく、固定材はハウジングから剥がれる作用を示す。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下では固定材は熱(線)膨張係数が大きく、ハウジングは熱(線)膨張係数が小さいため、固定材は大きく膨らみ、ハウジングに規制されてゆがんだ形となり同時に固定材に植込まれた中空糸も真円を保持できずに変形する。
▲4▼冷却されればハウジングは元に戻るが、固定材は中空糸の収縮に伴い収縮し、ハウジングから剥がれる作用を示す。
【0008】
[ケース2]
▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数の比B/Aが少なくとも1.4を超える材料の組み合わせを使用し、▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングが相互に接着しにくい形態
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなるが、最初からハウジングから剥がれているのでポリウレタンに亀裂が入るようなことはない。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は線膨張係数が大きく異なるため、ハウジングの収縮率は小さいが固定剤の収縮率は大きく、隙間は大きくなる傾向を示すが固定材(ポリウレタン)に亀裂が入るようなことはない。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下では固定材は線膨張係数が大きく、ハウジングは線膨張係数が小さいため、固定材は大きく膨張し、ハウジングに規制されてひずみが発生し、同時に固定材に植込まれた中空糸も真円を保持できずに変形する。
▲4▼冷却されればハウジングは元に戻るが、固定材は中空糸の収縮に伴い収縮するため、隙間は更に大きくなる傾向を示す。
【0009】
[ケース3]
▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数が接近している材料(熱(線)膨張係数の比B/Aが0.7〜1.4)の組み合わせを使用し、▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングを相互に接着した形態
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなり、ハウジングから剥がれる作用を示す。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は線膨張係数が接近しているため、固定材がハウジングから剥がれるような作用は起こらない。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下でも線膨張係数が接近しているため、固定材とハウジングは同程度に膨張しひずみは発生しない。
▲4▼冷却された時固定材は中空糸の収縮に伴い収縮し、ハウジングから剥がれる作用を示す。
【0010】
高圧蒸気滅菌時に径方向に収縮する性質を有する中空糸を使用した血液処理装置の場合、前記特許文献1及び特許文献2(前記[ケース2])では十分とは言えない。さらにケース1から3の発明は、前記したように《固定材硬化時》及び/又は《高圧蒸気滅菌》時に、固定材とハウジングの剥がれ等が発生し、満足のゆくものではない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の(a)から(b)、さらに好ましくは(c)、(d)により、固定材に発生する応力を極力小さくすると共に、中空糸径が収縮し結果として固定材の径が縮んだ場合でも洩れの発生しない高圧蒸気滅菌した血液処理装置の発明に到達した。
(a)ハウジングと固定材に用いる材料の熱(線)膨張係数の比B/Aを1.4以下とする(好ましくは0.7〜1.4、更に好ましくは0.9〜1.1)こと[(注)1.4以下であれば固定材(ポリウレタン)の弾力により固定材(ポリウレタン)の亀裂の発生を抑えることができるが、もっとも好ましいのは熱(線)膨張係数が実質的に等しく(熱(線)膨張係数の比B/Aが0.9〜1.1)、温度変化に対しても同程度に膨張・収縮する状態である]、(b)ハウジング自体を固定材と接着しにくい材質とすること(前記[ケース4]参照)、(c)ハウジングの固定材が充填される部分にフランジを溶着固定して、当該フランジを固定材に埋設すること、(d)当該固定材をポートとフランジとで締付けシールすること。
【0012】
すなわち、▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数が接近している材料(熱(線)膨張係数の比B/Aが0.7〜1.4)の組み合わせを使用し、▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングが相互に接着しにくい形態にした本発明では、
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなるが、最初からハウジングから剥がれているため硬化材に亀裂が入るような事はない。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は線膨張係数が接近しているため、固定材がハウジングから剥がれるような作用は起こらない。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下でも線膨張係数が接近しているため、固定材とハウジングは同程度に膨張しひずみは発生しない。
▲4▼冷却された時固定材は中空糸の収縮に伴い大きく収縮するが、固定材とハウジングが相互に接着しにくい接続形態であるため、固定材に亀裂が入るような事はない。
以上のように本願発明では、《固定材硬化時》及び/又は《高圧蒸気滅菌》時に、固定材とハウジングの剥がれ等が発生することがない。
【0013】
[1]本発明は、ハウジング(5)の内部に長さ方向に沿って中空糸束(6)を配置し、
中空糸束(6)端部を固定材(3)によりハウジング(5)端部内面に固定し、
前記ハウジング(5)端部に、血液流出入口(1A)を有するポート(1)を装着した血液処理装置において、
前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下である血液処理装置を提供する。
[2]本発明は、前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが0.7〜1.4である[1]に記載の血液処理装置を提供する。
[3]本発明は、前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが0.9〜1.1である[1]ないし[2]に記載の血液処理装置を提供する。
[4]本発明は、前記ハウジング(5)を(a)固定材(3)が接着しにくい極性の低い材料、又は(b)表面を離型処理した材料より形成した[1]ないし[3]に記載の血液処理装置を提供する。
[5]本発明は、ハウジング(5)端部より間隔をあけて、フランジ(4)をハウジング(5)に装着し、当該フランジ(4)を前記固定材(3)内に埋設した[1]ないし[4]に記載の血液処理装置を提供する。
[6]本発明は、前記固定材(3)を、前記ポート(1)と前記フランジ(4)により締付シールした[1]ないし[5]に記載の血液処理装置を提供する。
[7]本発明は、前記フランジ(4)、前記ハウジング(5)及び前記ポート(1)を同一材料により形成した[1]ないし[6]に記載の血液処理装置を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の血液処理装置の一例の概略図を図1に示し、拡大図を図2に示す。
本発明の血液処理装置は、ハウジング5の内部に長さ方向に沿って中空糸束6を配置し、当該中空糸束6端部を固定材3によりハウジング5端部内面に固定し、当該ハウジング5端部に、血液流出入口1Aを有するポート1を装着(溶着または接着固定)している。
[ハウジング5]
ハウジング5は、(a)固定材3が接着しにくい極性の低い材料、又は(b)表面を離型処理した材料より形成している。
前記固定材3が接着しにくい極性を有しない材料として、例えばポリプロピレン、メチルペンテン樹脂等の材料を使用することができ、対応樹脂の中で熱(線)膨張係数が固定材3(例えばポリウレタン)と同程度(熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のもの)の熱膨張係数を有するの材料を選ぶことが望ましい。
前記表面が離型処理されている材料とは、固定材3との接触面が離型処理されている材料であり、当該材料として例えばポリカーボネート等高圧蒸気滅菌に絶えうる材料であれば何でも使用することができる。また前記離型処理剤としては例えばシリコーン樹脂やグリス又はオイルを使用することができる。
ハウジング5の側面には、血液処理液(透析液)出入口5Aが形成されている。
[フランジ4]
フランジ4を前記ハウジング5端部より間隔をあけて、ハウジング5に装着(溶着または接着固定)し、当該フランジ4を前記固定材3内に埋設している。
フランジ4はリング状に形成され、上部に固定材注型時の気泡抜きのためのテーパー部4Aが形成されていることが好ましい。
フランジ4内周により前記中空糸束6の端部外周形状を規制している。
フランジ4も、前記ハウジング5と同様の材料、例えばポリプロピレン、メチルペンテン樹脂等の材料を使用することができ、対応樹脂の中で固定材3(例えばポリウレタン)と同程度(熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のもの)の熱(線)膨張係数を有する材料を選ぶことが望ましい。
【0015】
[固定材3]
固定材3により前記中空糸束6の端部を前記ハウジング5端部内面に固定している。固定材3はハウジング5に溶着されたフランジ4を内包(埋設)することでハウジング5への長手方向への支持を行っている。
固定材3は、例えばポリウレタン等が使用され、ハウジング5の熱(線)膨張係数を考慮しながら、熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のものを選ぶことが望ましい。
前記固定材3は、前記ポート1と前記フランジ4により締付シールされている。さらに詳述すれば前記固定材3は、前記ハウジング5端部内面及びフランジ4とは軽く接着しているだけで滅菌後においては剥離している場合もあり、前記固定材3は、前記ポート1下部1B、前記フランジ4のテーパー部4Aにて締付けシールすることにより、液密性を保持している。
[ポート1]
ポート1下部1Bには、溝1Mが形成され、当該溝1MにOリング2が配置され、ポート1下部1Bと固定材3の切断面の間はOリング2により、液密状態に維持される。
ポート1も、前記フランジ4及び前記ハウジング5と同様の材料、例えばポリプロピレン、メチルペンテン樹脂等の材料を使用することができ、対応樹脂の中で固定材3(例えばポリウレタン)と同程度(後述する熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のもの)の熱(線)膨張係数を有する材料を選ぶことが望ましい。
前記Oリング2は、シリコーン樹脂、合成ゴム等が使用されるが、高圧蒸気滅菌による熱や長時間の圧縮にも変形しにくいものが望ましい。
【0016】
[ポート1、固定材3、フランジ4、ハウジング5材料の相互関係]
前記フランジ4、前記ハウジング5及び前記ポート1を同一材料により形成するのが良い。
前記ハウジング5の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材3の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下(好ましくは0.7〜1.4、更に好ましくは0.9〜1.1)になる材料を組み合わせて使用するのが良い。
熱(線)膨張係数の比B/Aが、1.4を超えると洗浄・滅菌等で加熱、冷却が繰り返されると、熱(線)膨張係数の違いにより固定材3に無理な応力がかかることになるため好ましくない。
またB/Aがあまり小さいと(0.7未満)滅菌時(高温時)にハウジングと固定材間に隙間が生じ好ましくない。
本発明では、前記フランジ4及び/又は前記ポート1の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材3の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが、1.4以下、好ましくは0.7〜1.4、より好ましくは0.9〜1.1となる材料を組み合わせて使用するのが良い。
【0017】
[各構成部材の溶着等]
フランジ4の外面とハウジング5端部内面の溶着は、例えば超音波溶着、レーザ溶着、ヒートシール、溶接等により行うことができる。
ハウジング5端部とポート1下部1Bは超音波溶着、レーザ溶着、ヒートシール、溶接等で溶着することができる。
【0018】
本発明の血液処理装置は例えば、以下のように組立てることができる。
(1)ハウジング5両端部内面にフランジ4を超音波で溶着する。
(2)前記ハウジング5内に中空糸束6を装填し、中空糸束6の外周形状をリング4の内周で規制する。
(3)前記中空糸束6両端部を所定の長さに切断し、開口端部を密封シールする。
(4)前記ハウジング5の両端部に、固定材充填用のキャップを装着し、血液処理液(透析液)出入口5Aより、固定材3を注入しながら遠心力を付与する。
(固定材の硬化は高温でキュアさせるほど収縮は大きくなるため35℃以下でキュアさせることが望ましい。)
(5)前記固定材3を硬化させた後充填用のキャップを取り外し、固定材3で固定した中空糸束6の両端部を切断し、中空糸束6の端部を開口する。
(6)前記ハウジング5の両端部に、Oリング2を組込んだポート1を超音波で溶着し、前記固定材3を、前記ポート1下部1B、前記フランジ4のテーパー部4Aにより締付けシールする。
(7)組立てられた血液処理装置に水を充填して、血液流出入口1A、血液処理液(透析液)出入口5Aに栓をした後、高圧蒸気滅菌をする。
【0019】
【実施例】
図1、図2の形態の血液処理装置(実施例1)と図3の形態の血液処理装置(比較例1、2)の各構成部品に以下の材料を使用し、当該血液処理装置のモジュールを各10セット組立て、水を充填して121℃、20分の高圧蒸気滅菌を行った後、外観検査及び洩れ試験を行った。
実施例1
中空糸束6:ポリスルホン(前処理(湿熱収縮)無し)
固定材3:ポリウレタン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ハウジング5:ポリプロピレン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
リング4:ポリプロピレン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ポート1:ポリプロピレン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕(Oリング2:シリコーン樹脂)
比較例1
中空糸膜16:ポリスルホン(前処理(湿熱収縮)無し)
固定材13:ポリウレタン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ハウジング15:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕
ポート11:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕(Oリング12:シリコーン樹脂)
比較例2
中空糸膜16:ポリスルホン(前処理(湿熱収縮)実施)
固定材13:ポリウレタン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ハウジング15:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕
ポート11:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕(Oリング12:シリコーン樹脂)
結果
実施例:10セットとも固定材3に亀裂が生じることもなく、洩れ試験の結果洩れが認められる事はなかった。
比較例1:10セット中6セットにハウジング15からの固定剤13の剥がれが発生し、洩れ試験の結果洩れが認められた。
比較例2:10セットとも固定剤13の亀裂や、ハウジング15からの剥がれは発生せず、洩れ試験の結果洩れが認められる事はなかった。
【0020】
【発明の作用効果】
(1)本発明では固定材の硬化時や洗浄・滅菌時の加熱、冷却が繰り返されることによる応力を、熱膨張係数の差をその比が1.4以下(好ましくは0.7〜1.4、更に好ましくは0.9〜1.1)となる材料を選択することで小さくすることができる。
(2)本発明では固定材はハウジングに軽く接着しているにすぎないため、湿熱により収縮する材料を中空糸に用いた場合でも中空糸を含む固定材のみが収縮するだけで亀裂等の危険が発生しないので、中空糸の前処理(湿熱収縮)を省略できる。このため中空糸の前処理による性能の変化も発生せず、組立てのコストも低減できる。
(3)固定材の亀裂やハウジングからの剥がれに起因する洩れの危険がなくなる。
(4)固定材の硬化時の収縮及び滅菌時の中空糸の収縮に伴う固定材の収縮に対して固定材が容易にハウジングから外れて収縮し、応力が緩和するようにすることができる。
(5)固定材をポートとフランジとの間で締付けることで液密性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血液処理装置の概略図
【図2】本発明の血液処理装置の一部詳細拡大図
【図3】従来の血液処理装置の概略図
【符号の説明】
1 ポート
1A 血液出入口
1B ポート下部
1M 溝
2 Oリング
3 固定材
4 フランジ
4A テーパー部
5 ハウジング
5A 血液処理液(透析液)出入口
6 中空糸束
11 ポート
12 Oリング
13 固定材
15 ハウジング
16 中空糸束
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液透析、血液ろ過、血液透析ろ過、血漿分離用に用いる血液処理装置であって、中空糸をハウジングの内部に装填した血液処理装置の改良に関し、中空糸が湿熱により収縮する材料で形成され、高圧蒸気滅菌される血液処理装置に関する。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】
血液処理装置の滅菌方法には高圧蒸気滅菌、放射線滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌による3種類の滅菌方法がある。3種類の滅菌方法は各々の特徴があるが、中空糸が耐熱性を有する場合は高圧蒸気滅菌が好まれて利用され、耐熱性の不安な中空糸を用いる場合は放射線やエチレンオキサイドガス滅菌が利用されている。
これに対して、高圧蒸気滅菌した時、性能面・物性面では使用可能であるが、若干の収縮が認められる場合、モジュール化する前に中空糸をあらかじめ湿熱処理により収縮させた後に、ハウジングに組込む手段が取られる場合もある。この場合、前処理(湿熱収縮)を怠ると滅菌時または保管時に中空糸が収縮を起こし、固定材に亀裂が生じたり、ハウジングから剥がれたりして臨床使用中に血液洩れを起こす危険があった。
【0003】
高圧蒸気滅菌を施した血液処理装置の固定材には一般的に主材と硬化材の2液を混合硬化させるポリウレタンが使われており、混合硬化させると発熱し、硬化と同時に若干の収縮を起こす性質がある。
また、ハウジングには熱可塑プラスチックの中でも耐熱性を有するポリカーボネートが一般的に使われており、その熱(線)膨張係数は6〜7×10(superscript:−5)(/℃)と比較的に小さい数値である。一方、ポリウレタンの熱(線)膨張係数は10〜20×10(superscript:−5)(/℃)とポリカーボネートに比べて大きい。
すなわちハウジングの熱(線)膨張係数をA、固定材の熱(線)膨張係数をBとすると、これらの熱(線)膨張係数の比B/Aは、従来の血液処理装置では、少なくとも1.4を超えている。
ハウジングに内接したポリウレタンは比較的高温で硬化した時点ですでに収縮が起きており、更に温度の低下と共に熱(線)膨張係数に応じて収縮する。一方、ポリウレタン(固定材)の外側に接着固定しているポリカーボネート(ハウジング)は熱(線)膨張係数が小さいため、温度の低下による収縮もポリウレタンに比べて小さく、ポリウレタン(固定材)はハウジングから剥がれる方向に応力が働いている。
更に、洗浄・滅菌等で加熱、冷却が繰り返されるたびに、熱(線)膨張係数の違いにより固定材とハウジングの間に無理な応力がかかり剥離や亀裂は進行することになる。
【0004】
従来の血液処理装置においても、洗浄あるいは滅菌時に生じる固定材の亀裂を防止するためや剥離による血液漏れを防止するために固定材とハウジングとの間に固定材に対して接着性の低いリングを配置して固定材のハウジングへの付着を除去する発明(特許文献1参照。)や、固定材の外周をハウジングとは接触させずに、型内で硬化させ硬化後型を取り除くことにより、固定材が応力を受けずに収縮できる配慮を施している発明(特許文献2参照。)が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特許第2887347号公報(1頁、図3)
【特許文献2】
特開平10−211421号公報(1頁、図1)
【0006】
これらの文献1、2も、固定材の亀裂を無くすための発明ではあるが、固定材の硬化時の収縮や洗浄・滅菌時の膨張・収縮に耐えるためのものであり、これに加えて中空糸が湿熱により収縮する材料で形成され、高圧蒸気滅菌される血液処理装置のためのものではない。
【0007】
血液処理装置に使用される固定材、ハウジング及び中空糸の各構成材料並びに固定材とハウジングの接続形態等の各組み合わせにより、以下の1から3に示すケースが想定される。
[ケース1]
▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数の比B/Aが少なくとも1.4を超える材料の組み合わせを使用し、かつ▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングを相互に接着した形態
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなり、ハウジングから剥がれる作用を示す。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は熱(線)膨張係数が大きく異なるため、ハウジングの収縮率は小さいが固定剤の収縮率は大きく、固定材はハウジングから剥がれる作用を示す。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下では固定材は熱(線)膨張係数が大きく、ハウジングは熱(線)膨張係数が小さいため、固定材は大きく膨らみ、ハウジングに規制されてゆがんだ形となり同時に固定材に植込まれた中空糸も真円を保持できずに変形する。
▲4▼冷却されればハウジングは元に戻るが、固定材は中空糸の収縮に伴い収縮し、ハウジングから剥がれる作用を示す。
【0008】
[ケース2]
▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数の比B/Aが少なくとも1.4を超える材料の組み合わせを使用し、▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングが相互に接着しにくい形態
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなるが、最初からハウジングから剥がれているのでポリウレタンに亀裂が入るようなことはない。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は線膨張係数が大きく異なるため、ハウジングの収縮率は小さいが固定剤の収縮率は大きく、隙間は大きくなる傾向を示すが固定材(ポリウレタン)に亀裂が入るようなことはない。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下では固定材は線膨張係数が大きく、ハウジングは線膨張係数が小さいため、固定材は大きく膨張し、ハウジングに規制されてひずみが発生し、同時に固定材に植込まれた中空糸も真円を保持できずに変形する。
▲4▼冷却されればハウジングは元に戻るが、固定材は中空糸の収縮に伴い収縮するため、隙間は更に大きくなる傾向を示す。
【0009】
[ケース3]
▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数が接近している材料(熱(線)膨張係数の比B/Aが0.7〜1.4)の組み合わせを使用し、▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングを相互に接着した形態
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなり、ハウジングから剥がれる作用を示す。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は線膨張係数が接近しているため、固定材がハウジングから剥がれるような作用は起こらない。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下でも線膨張係数が接近しているため、固定材とハウジングは同程度に膨張しひずみは発生しない。
▲4▼冷却された時固定材は中空糸の収縮に伴い収縮し、ハウジングから剥がれる作用を示す。
【0010】
高圧蒸気滅菌時に径方向に収縮する性質を有する中空糸を使用した血液処理装置の場合、前記特許文献1及び特許文献2(前記[ケース2])では十分とは言えない。さらにケース1から3の発明は、前記したように《固定材硬化時》及び/又は《高圧蒸気滅菌》時に、固定材とハウジングの剥がれ等が発生し、満足のゆくものではない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の(a)から(b)、さらに好ましくは(c)、(d)により、固定材に発生する応力を極力小さくすると共に、中空糸径が収縮し結果として固定材の径が縮んだ場合でも洩れの発生しない高圧蒸気滅菌した血液処理装置の発明に到達した。
(a)ハウジングと固定材に用いる材料の熱(線)膨張係数の比B/Aを1.4以下とする(好ましくは0.7〜1.4、更に好ましくは0.9〜1.1)こと[(注)1.4以下であれば固定材(ポリウレタン)の弾力により固定材(ポリウレタン)の亀裂の発生を抑えることができるが、もっとも好ましいのは熱(線)膨張係数が実質的に等しく(熱(線)膨張係数の比B/Aが0.9〜1.1)、温度変化に対しても同程度に膨張・収縮する状態である]、(b)ハウジング自体を固定材と接着しにくい材質とすること(前記[ケース4]参照)、(c)ハウジングの固定材が充填される部分にフランジを溶着固定して、当該フランジを固定材に埋設すること、(d)当該固定材をポートとフランジとで締付けシールすること。
【0012】
すなわち、▲1▼固定材とハウジングに熱(線)膨張係数が接近している材料(熱(線)膨張係数の比B/Aが0.7〜1.4)の組み合わせを使用し、▲2▼中空糸に高圧蒸気滅菌で径収縮する材料を使用し、かつ▲3▼固定材とハウジングが相互に接着しにくい形態にした本発明では、
《固定材硬化時》
▲1▼固定材(ポリウレタン)の硬化は収縮反応であるため小さくなるが、最初からハウジングから剥がれているため硬化材に亀裂が入るような事はない。
▲2▼固定材(ポリウレタン)の硬化は発熱反応であるため、硬化直後は高温であり、以後室温まで低下する。ハウジングと固定材は線膨張係数が接近しているため、固定材がハウジングから剥がれるような作用は起こらない。
《高圧蒸気滅菌》
▲3▼120℃の環境下でも線膨張係数が接近しているため、固定材とハウジングは同程度に膨張しひずみは発生しない。
▲4▼冷却された時固定材は中空糸の収縮に伴い大きく収縮するが、固定材とハウジングが相互に接着しにくい接続形態であるため、固定材に亀裂が入るような事はない。
以上のように本願発明では、《固定材硬化時》及び/又は《高圧蒸気滅菌》時に、固定材とハウジングの剥がれ等が発生することがない。
【0013】
[1]本発明は、ハウジング(5)の内部に長さ方向に沿って中空糸束(6)を配置し、
中空糸束(6)端部を固定材(3)によりハウジング(5)端部内面に固定し、
前記ハウジング(5)端部に、血液流出入口(1A)を有するポート(1)を装着した血液処理装置において、
前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下である血液処理装置を提供する。
[2]本発明は、前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが0.7〜1.4である[1]に記載の血液処理装置を提供する。
[3]本発明は、前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが0.9〜1.1である[1]ないし[2]に記載の血液処理装置を提供する。
[4]本発明は、前記ハウジング(5)を(a)固定材(3)が接着しにくい極性の低い材料、又は(b)表面を離型処理した材料より形成した[1]ないし[3]に記載の血液処理装置を提供する。
[5]本発明は、ハウジング(5)端部より間隔をあけて、フランジ(4)をハウジング(5)に装着し、当該フランジ(4)を前記固定材(3)内に埋設した[1]ないし[4]に記載の血液処理装置を提供する。
[6]本発明は、前記固定材(3)を、前記ポート(1)と前記フランジ(4)により締付シールした[1]ないし[5]に記載の血液処理装置を提供する。
[7]本発明は、前記フランジ(4)、前記ハウジング(5)及び前記ポート(1)を同一材料により形成した[1]ないし[6]に記載の血液処理装置を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の血液処理装置の一例の概略図を図1に示し、拡大図を図2に示す。
本発明の血液処理装置は、ハウジング5の内部に長さ方向に沿って中空糸束6を配置し、当該中空糸束6端部を固定材3によりハウジング5端部内面に固定し、当該ハウジング5端部に、血液流出入口1Aを有するポート1を装着(溶着または接着固定)している。
[ハウジング5]
ハウジング5は、(a)固定材3が接着しにくい極性の低い材料、又は(b)表面を離型処理した材料より形成している。
前記固定材3が接着しにくい極性を有しない材料として、例えばポリプロピレン、メチルペンテン樹脂等の材料を使用することができ、対応樹脂の中で熱(線)膨張係数が固定材3(例えばポリウレタン)と同程度(熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のもの)の熱膨張係数を有するの材料を選ぶことが望ましい。
前記表面が離型処理されている材料とは、固定材3との接触面が離型処理されている材料であり、当該材料として例えばポリカーボネート等高圧蒸気滅菌に絶えうる材料であれば何でも使用することができる。また前記離型処理剤としては例えばシリコーン樹脂やグリス又はオイルを使用することができる。
ハウジング5の側面には、血液処理液(透析液)出入口5Aが形成されている。
[フランジ4]
フランジ4を前記ハウジング5端部より間隔をあけて、ハウジング5に装着(溶着または接着固定)し、当該フランジ4を前記固定材3内に埋設している。
フランジ4はリング状に形成され、上部に固定材注型時の気泡抜きのためのテーパー部4Aが形成されていることが好ましい。
フランジ4内周により前記中空糸束6の端部外周形状を規制している。
フランジ4も、前記ハウジング5と同様の材料、例えばポリプロピレン、メチルペンテン樹脂等の材料を使用することができ、対応樹脂の中で固定材3(例えばポリウレタン)と同程度(熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のもの)の熱(線)膨張係数を有する材料を選ぶことが望ましい。
【0015】
[固定材3]
固定材3により前記中空糸束6の端部を前記ハウジング5端部内面に固定している。固定材3はハウジング5に溶着されたフランジ4を内包(埋設)することでハウジング5への長手方向への支持を行っている。
固定材3は、例えばポリウレタン等が使用され、ハウジング5の熱(線)膨張係数を考慮しながら、熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のものを選ぶことが望ましい。
前記固定材3は、前記ポート1と前記フランジ4により締付シールされている。さらに詳述すれば前記固定材3は、前記ハウジング5端部内面及びフランジ4とは軽く接着しているだけで滅菌後においては剥離している場合もあり、前記固定材3は、前記ポート1下部1B、前記フランジ4のテーパー部4Aにて締付けシールすることにより、液密性を保持している。
[ポート1]
ポート1下部1Bには、溝1Mが形成され、当該溝1MにOリング2が配置され、ポート1下部1Bと固定材3の切断面の間はOリング2により、液密状態に維持される。
ポート1も、前記フランジ4及び前記ハウジング5と同様の材料、例えばポリプロピレン、メチルペンテン樹脂等の材料を使用することができ、対応樹脂の中で固定材3(例えばポリウレタン)と同程度(後述する熱(線)膨張係数の比B/Aが、0.7〜1.4の範囲のもの)の熱(線)膨張係数を有する材料を選ぶことが望ましい。
前記Oリング2は、シリコーン樹脂、合成ゴム等が使用されるが、高圧蒸気滅菌による熱や長時間の圧縮にも変形しにくいものが望ましい。
【0016】
[ポート1、固定材3、フランジ4、ハウジング5材料の相互関係]
前記フランジ4、前記ハウジング5及び前記ポート1を同一材料により形成するのが良い。
前記ハウジング5の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材3の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下(好ましくは0.7〜1.4、更に好ましくは0.9〜1.1)になる材料を組み合わせて使用するのが良い。
熱(線)膨張係数の比B/Aが、1.4を超えると洗浄・滅菌等で加熱、冷却が繰り返されると、熱(線)膨張係数の違いにより固定材3に無理な応力がかかることになるため好ましくない。
またB/Aがあまり小さいと(0.7未満)滅菌時(高温時)にハウジングと固定材間に隙間が生じ好ましくない。
本発明では、前記フランジ4及び/又は前記ポート1の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材3の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが、1.4以下、好ましくは0.7〜1.4、より好ましくは0.9〜1.1となる材料を組み合わせて使用するのが良い。
【0017】
[各構成部材の溶着等]
フランジ4の外面とハウジング5端部内面の溶着は、例えば超音波溶着、レーザ溶着、ヒートシール、溶接等により行うことができる。
ハウジング5端部とポート1下部1Bは超音波溶着、レーザ溶着、ヒートシール、溶接等で溶着することができる。
【0018】
本発明の血液処理装置は例えば、以下のように組立てることができる。
(1)ハウジング5両端部内面にフランジ4を超音波で溶着する。
(2)前記ハウジング5内に中空糸束6を装填し、中空糸束6の外周形状をリング4の内周で規制する。
(3)前記中空糸束6両端部を所定の長さに切断し、開口端部を密封シールする。
(4)前記ハウジング5の両端部に、固定材充填用のキャップを装着し、血液処理液(透析液)出入口5Aより、固定材3を注入しながら遠心力を付与する。
(固定材の硬化は高温でキュアさせるほど収縮は大きくなるため35℃以下でキュアさせることが望ましい。)
(5)前記固定材3を硬化させた後充填用のキャップを取り外し、固定材3で固定した中空糸束6の両端部を切断し、中空糸束6の端部を開口する。
(6)前記ハウジング5の両端部に、Oリング2を組込んだポート1を超音波で溶着し、前記固定材3を、前記ポート1下部1B、前記フランジ4のテーパー部4Aにより締付けシールする。
(7)組立てられた血液処理装置に水を充填して、血液流出入口1A、血液処理液(透析液)出入口5Aに栓をした後、高圧蒸気滅菌をする。
【0019】
【実施例】
図1、図2の形態の血液処理装置(実施例1)と図3の形態の血液処理装置(比較例1、2)の各構成部品に以下の材料を使用し、当該血液処理装置のモジュールを各10セット組立て、水を充填して121℃、20分の高圧蒸気滅菌を行った後、外観検査及び洩れ試験を行った。
実施例1
中空糸束6:ポリスルホン(前処理(湿熱収縮)無し)
固定材3:ポリウレタン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ハウジング5:ポリプロピレン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
リング4:ポリプロピレン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ポート1:ポリプロピレン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕(Oリング2:シリコーン樹脂)
比較例1
中空糸膜16:ポリスルホン(前処理(湿熱収縮)無し)
固定材13:ポリウレタン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ハウジング15:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕
ポート11:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕(Oリング12:シリコーン樹脂)
比較例2
中空糸膜16:ポリスルホン(前処理(湿熱収縮)実施)
固定材13:ポリウレタン〔熱(線)膨張係数:14×10(superscript:−5)(/℃)〕
ハウジング15:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕
ポート11:ポリカーボネート〔熱(線)膨張係数:6.6×10(superscript:−5)(/℃)〕(Oリング12:シリコーン樹脂)
結果
実施例:10セットとも固定材3に亀裂が生じることもなく、洩れ試験の結果洩れが認められる事はなかった。
比較例1:10セット中6セットにハウジング15からの固定剤13の剥がれが発生し、洩れ試験の結果洩れが認められた。
比較例2:10セットとも固定剤13の亀裂や、ハウジング15からの剥がれは発生せず、洩れ試験の結果洩れが認められる事はなかった。
【0020】
【発明の作用効果】
(1)本発明では固定材の硬化時や洗浄・滅菌時の加熱、冷却が繰り返されることによる応力を、熱膨張係数の差をその比が1.4以下(好ましくは0.7〜1.4、更に好ましくは0.9〜1.1)となる材料を選択することで小さくすることができる。
(2)本発明では固定材はハウジングに軽く接着しているにすぎないため、湿熱により収縮する材料を中空糸に用いた場合でも中空糸を含む固定材のみが収縮するだけで亀裂等の危険が発生しないので、中空糸の前処理(湿熱収縮)を省略できる。このため中空糸の前処理による性能の変化も発生せず、組立てのコストも低減できる。
(3)固定材の亀裂やハウジングからの剥がれに起因する洩れの危険がなくなる。
(4)固定材の硬化時の収縮及び滅菌時の中空糸の収縮に伴う固定材の収縮に対して固定材が容易にハウジングから外れて収縮し、応力が緩和するようにすることができる。
(5)固定材をポートとフランジとの間で締付けることで液密性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血液処理装置の概略図
【図2】本発明の血液処理装置の一部詳細拡大図
【図3】従来の血液処理装置の概略図
【符号の説明】
1 ポート
1A 血液出入口
1B ポート下部
1M 溝
2 Oリング
3 固定材
4 フランジ
4A テーパー部
5 ハウジング
5A 血液処理液(透析液)出入口
6 中空糸束
11 ポート
12 Oリング
13 固定材
15 ハウジング
16 中空糸束
Claims (7)
- ハウジング(5)の内部に長さ方向に沿って中空糸束(6)を配置し、
中空糸束(6)端部を固定材(3)によりハウジング(5)端部内面に固定し、
前記ハウジング(5)端部に、血液流出入口(1A)を有するポート(1)を装着した血液処理装置において、
前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが1.4以下であることを特徴とする血液処理装置。 - 前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが0.7〜1.4であることを特徴とする請求項1に記載の血液処理装置。
- 前記ハウジング(5)の熱(線)膨張係数Aと、前記固定材(3)の熱(線)膨張係数Bの比B/Aが0.9〜1.1であることを特徴とする請求項1ないし請求項2に記載の血液処理装置。
- 前記ハウジング(5)を(a)固定材(3)が接着しにくい極性の低い材料、又は(b)表面を離型処理した材料より形成した、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の血液処理装置。
- ハウジング(5)端部より間隔をあけて、フランジ(4)をハウジング(5)に装着し、当該フランジ(4)を前記固定材(3)内に埋設した、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の血液処理装置。
- 前記固定材(3)を、前記ポート(1)と前記フランジ(4)により締付シールした、ことを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の血液処理装置。
- 前記フランジ(4)、前記ハウジング(5)及び前記ポート(1)を同一材料により形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の血液処理装置。
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Cited By (3)
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JP2021151956A (ja) * | 2020-03-24 | 2021-09-30 | 株式会社Screenホールディングス | 液体容器封止蓋および当該蓋によって封止された容器を用いた灌流装置 |
WO2022168778A1 (ja) * | 2021-02-05 | 2022-08-11 | テルモ株式会社 | 人工肺及び人工肺の製造方法 |
-
2003
- 2003-06-13 JP JP2003169542A patent/JP2005000521A/ja active Pending
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EP4272856A4 (en) * | 2021-02-05 | 2024-05-01 | TERUMO Kabushiki Kaisha | ARTIFICIAL LUNG AND METHOD FOR MANUFACTURING ARTIFICIAL LUNG |
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