JP2004506019A - 少なくとも1つの抗原およびカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むワクチン - Google Patents
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Abstract
少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むワクチン、並びに少なくとも1つの抗原に対する免疫応答促進用アジュバントを調製するためのカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体の使用を記載する。
Description
【0001】
(技術分野)
本発明は、少なくとも1つの抗原および免疫促進物質を含むワクチンに関する。
【0002】
(背景技術)
侵入する病原体からの宿主の防御には細胞系のエフェクターおよび体液系のエフェクターが関与しており、非適合(non−adaptive)(生得)免疫および適合(adaptive)(獲得)免疫の両者の協調作用の結果得られる。後者はレセプターによって媒体される特異的な免疫学的認識に基づくものであり、最近獲得された免疫系であり、脊椎動物にのみ存在する。前者は適合免疫が発達する前から進化しており、あらゆる生物にわたって分布する様々な細胞および分子からなり、潜在的な病原体を制御下におくことを役目としている(Boman 2000)、(Zanetti, Gennaroら、1997)。
【0003】
BおよびTリンパ球は獲得された抗原特異的な適合免疫のメディエーターであり、免疫学的記憶の発達を含むが、これはワクチンの製造を成功させる主たる目標である(Schijns 2000)。抗原提示細胞(APC)は、抗原をプロセシングし、プロセシングしたその断片をリンパ球の活性化に必要な分子とともに細胞表面に提示することのできる高度に特殊化した細胞である。このことは、特異的な免疫応答の開始にはAPCが非常に重要であることを意味する。Tリンパ球活性化のための主たるAPCは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、およびB細胞であり、一方、Bリンパ球活性化のための主たるAPCは濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells)である。一般に、DCが、休止したナイーブなおよびメモリーBおよびTリンパ球を刺激する免疫応答を開始させる観点から最も強力なAPCである(Banchereau, Briereら、2000)。
【0004】
末梢にあるAPC(たとえば、DCやランゲルハンス細胞)の天然の役目は抗原を捕捉しプロセシングすることであり、それによって活性化されてリンパ球コスティミュレート分子の発現を開始し、リンパ器官に移動し、サイトカインを分泌して抗原を異なる集団のリンパ球に提示し、かくして抗原特異的な免疫応答を開始させる。APCは、ある環境下でリンパ球を活性するのみならず、抗原に対してT細胞を寛容にもする(BanchereauおよびSteinman 1998)。
【0005】
Tリンパ球による抗原の認識は、主要組織適合複合体(MHC)により拘束されている。ある特定のTリンパ球は、ペプチドが特定のMHC分子に結合している場合にのみ抗原を認識する。一般に、Tリンパ球は自己のMHC分子の存在下でのみ刺激され、抗原は自己のMHC分子に結合したペプチドとしてのみ認識される。MHC拘束は、認識される抗原の観点から、およびそのペプチド断片に結合するMHC分子の観点から、Tリンパ球の特異性を定めるものである。
【0006】
細胞内および細胞外の抗原は、認識および適切な応答の両観点から免疫系に対して極めて異なった攻撃を提示する。T細胞への抗原の提示は、2つの別個のクラスの分子、MHCクラスI(MHC−I)およびMHCクラスII(MHC−II)によって媒体され、これらは別個の抗原プロセシング経路を利用している。大概は、発達してきた2つの主要な抗原プロセシング経路を識別することが可能である。細胞内抗原に由来するペプチドはMHCクラスI分子(該分子は実質的にあらゆる細胞で発現される)によってCD8+T細胞に提示されるのに対し、細胞外抗原に由来するペプチドはMHCクラスII分子によってCD4+T細胞に提示される(Monaco 1992)、(Harding 1995)。
【0007】
しかしながら、この二分法にはある種の例外が存在する。エンドサイトーシスされた粒状または可溶性のタンパク質に由来するペプチドが、マクロファージ並びに樹状細胞のMHC−I分子上に提示されることを幾つかの研究が示している(Harding 1996)、(BrossartおよびBeven 1997)。それゆえ、樹状細胞のように末梢に存在するAPCは、細胞外抗原を捕捉およびプロセシングし、これら抗原をMHC−I分子上でTリンパ球に提示する高い潜在能力を発揮し、インビトロおよびインビボにて抗原で細胞外にて追跡する(pulsing)ための興味深い標的である。
【0008】
様々なタイプの白血球に対する刺激活性を含むAPCの重要かつ独特の役割は、ワクチン開発を成功させるに際して適切な戦略のための標的としての中心的な位置を反映している。理論的には、このことを行う一つの方法は、APCの天然の役割である抗原の取り込みを促進または刺激することである。ワクチンの対象とされる適当な抗原を適用されたら(pulsed)、APCは取り込まれた抗原のプロセシングを開始し、それによって活性化され、リンパ球コスティミュレート分子を発現し、リンパ器官に移動し、サイトカインを分泌し、リンパ球の異なる集団に抗原を提示し、かくして免疫応答を開始するに違いない。
【0009】
活性化されたT細胞は、一般に多数のエフェクターサイトカイン(インターロイキン2(IL−2)、インターフェロンγ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5およびIL−10を含む)を高度に制御された仕方で分泌する。特定の抗原(たとえば、腫瘍抗原、一般にワクチンにて投与される抗原)に対する細胞障害性Tリンパ球応答の機能的検出は、サイトカイン産生を単一細胞レベルで分析する技術であるELISpotアッセイ(酵素結合免疫スポットアッセイ)によって一般にモニターされる。本発明では細胞免疫促進促進サイトカインIFN−γのためのELISpotアッセイを、首尾よいペプチド特異的T細胞活性化をモニターするのに用いた。
【0010】
以前にポリカチオンがMHCクラスI適合(matched)ペプチドの腫瘍細胞中への取り込みを有効に促進することが示されており、これは「トランスローディング(TRANSloading)」と呼ばれるペプチドまたはタンパク質適用(pulsing)法である(Buschle, Schmidtら、1997)。さらに、本発明者らは、ポリカチオンがペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞中に「トランスロード」できることをインビボおよびインビトロで示した(Buschle 1998)。さらに、ポリL−アルギニンまたはポリL−リシンとワクチンとしての適当なペプチドとの混合物を同時に注射すると、マウスモデルにおいて動物が腫瘍増殖から保護される(Schmidt, Buschleら、1997)。この化学的に規定されたワクチンは、非常に多数の抗原/ペプチド特異的なT細胞を誘発することができる。これは、少なくとも部分的にはポリカチオンによって媒体されたAPC中へのペプチドの促進された取り込みによるものであることが示されており(Buschle 1998)、APCはインビボで抗原を適用されたときに該投与抗原に対してT細胞媒体免疫を誘発しうることを示している。
【0011】
獲得免疫(高度に特異的だが応答が比較的遅い)とは異なり、生得免疫は宿主と比較して微生物成分の構造上の差異により誘起されるエフェクター機構に基づいている。これら機構はかなり迅速な初期応答を開始することができ、これは主として有毒物質の中和に導く。生得免疫の反応は低級な門の動物の唯一の防御戦略であり、獲得免疫系が動員される前の第一線の宿主防御として脊椎動物でも保持されている。
【0012】
より高等な脊椎動物では、生得免疫のエフェクター細胞は、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞およびおそらく樹状細胞であるのに対し(Mizukawa, Sugiyamaら、1999)、この経路の体液成分は補体カスケードおよび種々の異なる結合性タンパク質である(Boman 2000)。
【0013】
生得免疫の迅速かつ有効な成分は、長さが12から100アミノ酸残基の間の非常に様々な殺菌性ペプチドの産生である。数百の異なる抗菌ペプチドが、海綿動物、昆虫から動物およびヒトにいたる様々な生物で単離されており、これら分子の広範な分布を指し示している。抗菌ペプチドはまた、競合生物に対する拮抗物質として細菌によっても産生される。
【0014】
抗菌ペプチドの主たる源は、呼吸器管、胃腸管および尿生殖器管に整列している好中球および上皮細胞の顆粒である。一般に、これらペプチドは微生物の侵入に最も暴露される解剖学部位で認められ、内部の体液中に分泌されるかまたは専門の食細胞(好中球)の細胞質顆粒中に貯蔵される(GanzおよびLehrer 1997)、(GanzおよびLehrer 1998)、(LehrerおよびGanz 1999)、(GudmundssonおよびAgerberth 1999)。
【0015】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
本発明の目的は、同時に投与した特定の抗原に対する免疫応答を強力に促進するアジュバント/「担体ペプチド」を提供することである。
本発明のさらなる目的は、アジュバント/「担体ペプチド」(ヒトを含む動物、とりわけ哺乳動物において生体所持(body−own)分子として知られる)を提供することであり、所定のアジュバント/「担体ペプチド」に対してヒトを含む動物において免疫応答が開始されるリスクを低減することである。
【0016】
(その解決方法)
これら目的は、少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むワクチンによって解決される。
抗菌ペプチドは、公知のまたは予測される3D構造に基づいて5つのクラスに分類することができる(Boman 2000)。
【0017】
抗菌ペプチドの殺菌活性に感受性の生物のスペクトルは広く、種々の細菌(グラム陽性および陰性)、原生動物、真菌およびある場合にはウイルス感染細胞および腫瘍細胞を含む。
一般に、各種は、異なる整列(array)のこれらペプチドを備えており、これはある特定の種との微生物の特定の集合の優先的な関係によって記述される進化的な選択の結果を表しているように思われる。
【0018】
知られている抗菌ペプチドは全て、前駆体分子からのタンパク質加水分解プロセシングによって生成する。さらに、エフェクターの生合成の重要な部分は様々な形態の転写後修飾であり、これはC末端アミド化(たとえば、インドリシジン(indolicidin)、PR−39、幾つかのベータ−デフェンシン(beta−defensins)(BradburyおよびSmyth 1991))、Dアミノ酸置換(Kreil 1997)またはN末端のピログルタミン酸ブロッキング(たとえば、アタシン(attacins)および幾つかのベータ−デフェンシン)などのように最終的な機能にとって重要である。
【0019】
動物およびヒトにおけるカチオン性抗菌ペプチド(CAP)の1つの主要なファミリーはカテリシジン(cathelicidins)である(Zanetti, Gennaroら、2000)。カテリシジンは骨髄細胞に由来し、幾つかの哺乳動物種で同定されている。これまでのところ、16〜26kDaの範囲の質量のカテリシジンが、ヒト、マウス、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギおよびラットの骨髄細胞で主として発現されている。カテリシジンは前駆体として生成され、該前駆体では高度に同一のN末端プレプロ配列に高度に変化するC末端配列(特定の開裂部位でプロ配列が除去された後の抗菌ペプチドに対応する)が続いている(図3に示す、Zanetti, Gennaroら、1997から)。
【0020】
これら全ての同属物(congeners)のプロ配列は、カテリンと称するタンパク質(ブタ白血球から最初に単離された)の配列に高度に相同である。この高度に保存されたカテリン様ドメインが共通して存在することに基づき、これら前駆体はカテリシジンと称するファミリーに分類された。
【0021】
カテリン様プレプロ領域は、ウシの75%から幾つかのブタ同属物の完全な同一性にいたるまで高度の種内同一性を示す。カテリン様プロピース(propiece)のC末端領域に集まっている4つの不変のシステインは、2つの分子内ジスルフィド結合を形成するように配列されており、分子に構造的な制約を付している。カテリン様プロ領域は、既知のチオールプロテアーゼ阻害機能を有するタンパク質であるシスタチンファミリーとは限られたホモロジーしか示さない。このことは、システインプロテイナーゼカテプシンL(カテリンの頭字語に基づく)の活性に対して幾つかのカテリシジンが穏やかな阻害作用しか奏しないことによってさらに支持される。このプロ配列に特異的な機能は確立されていないが、進化的な圧力がその保存へと向かわせたことは、該配列が重要な生物学的機能、たとえば、抗菌ペプチドの顆粒へのターゲティングや正しいタンパク質加水分解による成熟の援助を果たしていることを示唆している。
【0022】
カテリシジンのプレプロ領域は128〜143アミノ酸残基長であり、推定の29〜30残基のシグナルペプチドおよび99〜114残基のプロピースを含み、一方、C末端ドメインは12〜100残基長である。これらのプロペプチドが分泌されると限定タンパク質加水分解を受ける。ウシおよびブタの好中球ではカテリシジンはエラスターゼによって媒体される開裂によって放出され(Cole, Shiら、2001)、一方、ヒトのカテリシジンhCAP−18は細胞外でプロテイナーゼ3によって抗菌ペプチドLL−37にプロセシングされ(Sorensen, Follinら、2001)、共通のプロタンパク質からの活性な抗菌ペプチドの生成が関連する種で異なって生じることを示している。
【0023】
カテリシジンは好中球の二次顆粒で最初に見つかった(Gudmundsson, Agerberthら、1996)、(GudmundssonおよびAgerberth 1999)。それゆえ、カテリシジンは炎症液(inflammatory fluids)中に放出され、そこで比較的高濃度で見つかった(Agerberth, Grunewaldら、1999)、(GudmundssonおよびAgerberth 1999)。これまでにヒトで見つかった唯一のカテリシジンであるペプチドLL−37(hCAP−18/FALL−39)は、好中球の顆粒中に発現され、骨髄および精巣で生成される(Cowland, Johnsenら、1995)、(Sorensen, Arnljotsら、1997)。さらに、LL−37は、口、舌、食道、頚部および膣の鱗状上皮(Frohm Nilsson, Sandstedtら、1999)、肺上皮(Bals, Wangら、1998)および精巣上体の上皮(Malm, Sorensenら、2000)で構成的に発現される。さらに、高レベルのLL−37が精液プラスマ(seminal plasma)で認められた(Malm, Sorensenら、2000)。さらに、LL−37は炎症を起こした皮膚のケラチノサイトで誘発され(Frohm, Agerberthら、1997)、血漿のリポタンパク質画分(Sorensen, Brattら、1999)および気管支肺胞の洗浄液(Agerberth, Grunewaldら、1999)に高濃度で見つかっている。最近、NK、γδT細胞、B細胞および単球/マクロファージでのLL−37の発現が記載されている(Agerberth, Charoら、2000)。
【0024】
C末端に対応する成熟抗菌ペプチドは構造的に多様な配列であり(図1に示す、Popsueva, Zinovjevaら、1996から)、それらに与えられた個々の名前は以下のとおりである:
ウシカテリシジン(Storici, Tossiら、1996)、(Skerlavaj, Gennaroら、1996)、(Gennaro, Scocchiら、1998):Bac1(バクテネシン1)、Bac5、Bac7、インドリシジン(indolicidin)、BMAP−27(ウシ骨髄抗菌ペプチド27)およびBMAP−28;
ブタカテリシジン(Harwig, Kkryakovら、1995):PR−39(プロリン−アルギニンリッチ39アミノ酸ペプチド)、PMAP−36(ブタ骨髄抗菌ペプチド36)、PMAP−37、PMAP−23、プロテグリン(protegrins)、およびプロフェニン(prophenins);
ウサギカテリシジン:CAP18(カチオン性抗菌タンパク質18);
【0025】
ヒトカテリシジン(Cowland, Johnsenら、1995)、(Gudmundsson, Agerberthら、1996):hCAP−18/FALL−39/LL−37(ヒト抗菌タンパク質/C末端由来ドメインはFALL−39またはLL−37と呼ばれる);
マウスカテリシジン(Gallo, Kimら、1997)、(Popsueva, Zinovjevaら、1996):mCRAMP(マウスカテリン関連抗菌ペプチド)、MCLP(マウスカテリン様タンパク質);
ラットカテリシジン:rCRAMP(ラットカテリン関連抗菌ペプチド);
ヒツジカテリシジン(Mahoney, Leeら、1995)、(Bagella, Scocchiら、1995):SMAP29(ヒツジ骨髄抗菌ペプチド29)およびSMAP34。
カテリシジン以外にも動物およびヒトで同定されている抗菌ペプチドの他のファミリーが存在する:主としてセクロピン(cecropins)およびデフェンシン(GudmundssonおよびAgerberth 1999)、(Boman 2000)。
【0026】
デフェンシンは4kDaペプチドのファミリーであり、その活性は正味の陽イオン電荷およびその3D構造の両者に依存する。デフェンシンは、微生物膜を透過性にする多量体で電圧依存性の孔を形成する(GanzおよびLehrer 1994)、(GanzおよびLehrer 1999)。βデフェンシンはαデフェンシンと形状は似ているが、βデフェンシンの方がわずかに大きく、6つの保存されたシステイン残基の配置および連結性が異なっている(GanzおよびLehrer 1998)。
【0027】
ヒトのαデフェンシン(ヒト好中球ペプチド;HNP1−4)は主として好中球の顆粒で見つかっており、食作用を受けた微生物を殺すことに参画している(Lehrer, Lichtensteinら、1993)。さらに最近、ヒトでのこのファミリーの2つの成員、HD−5およびHD−6(ヒトαデフェンシン5および6)が、小腸陰窩にある特殊化された分泌細胞であるパーネト細胞によって構成的に生成されることがわかった。HD−5はまた、女性の生殖管でも構成的に生成される(GanzおよびLehrer 1999)。
【0028】
βデフェンシンの2つのクラスは、その発現パターンを比較することによって定めることができる。構成的に発現されるβデフェンシンは、上皮で発現されるヒトβデフェンシン1(hBD1)およびウシ好中球βデフェンシン(BNBD−1−13)(GanzおよびLehrer 1998)である。対照的に、ウシ舌抗菌ペプチド(LAP)(Schonwetter, Stolzenbergら、1995)、ウシ気管抗菌ペプチド(TAP)およびそのヒトホモログβデフェンシン2(hBD2)などのβデフェンシンの発現は、感染攻撃の際にアップレギュレーションされる(GanzおよびLehrer 1998)。誘導性の発現はまた、他の知られたヒトベータデフェンシンhBD−3およびhBD−4で記載されている(Harder, Bartelsら、2000)、(Garcia, Krauseら、2001)。
【0029】
抗菌ペプチドのさらなるクラスはセクロピンである。セクロピンは動物で最初に見つかった抗菌ペプチドであった。細菌が、ヤママユガHyalophora cecropiaの休眠中のさなぎでこれら化合物を誘発することが示された(Boman 1991)。その3D構造は、間にヒンジを挟んだ2つのαヘリックスからなる。これまでセクロピンは高等昆虫で見つかっており、哺乳動物のセクロピンはブタの腸から単離されている(Boman 2000)。セクロピン様ペプチドは、海綿動物、およびHelicobacter pyloriのリボソームタンパク質L1から単離されている(Putsep, Brandenら、1999)、(Putsep, Normarkら、1999)。
【0030】
炎症部位で非常に高濃度が記録されていることから(HancockおよびDiamond 2000)(たとえば、嚢胞性線維症の患者の痰では300μg/mlまたはそれ以上;舌背(dorsal tongue)では20〜100μg/ml;敗血症の個体の血漿では170μg/mlまで)、感染に対処するうえでのCAPの重要な役割を推定することができる。さらに、CAPは、粘膜および上皮表面、および消化管、肺、腎臓および皮膚で見つかっている。炎症の際のCAPの誘発は、炎症応答の補助および/または指令における主たる役割と相関付けられる。実際、上昇レベルのCAPは、多くの臨床および実験室誘導の感染および炎症状態で観察されている(HancockおよびDiamond 2000)。
【0031】
最近、プレプロデフェンシンを活性な成熟形にプロセシングするのに必要な単一の酵素が同定された。この単一の遺伝子(マトリリシン(matrilysin);マトリックス−メタロプロテイナーゼ7:MMP−7)を遺伝的に不活化すると活性なデフェンシンの産生が完全に阻害され、その結果、経口で導入した毒性細菌による感染に対する感受性が10倍増大することが観察された(Wilson, Ouelletteら、1999)。さらに、広範囲の動物実験および初期の臨床研究は、天然および非天然のCAPが、外部から加えたときに細菌および真菌による局所または全身感染に対して防御することを示した((HancockおよびDiamond 2000)、(Hancock 1999)に概説)。
【0032】
しかしながら、CAPの作用は微生物を殺すことを指令することに限られない。それよりも、CAPは、とりわけ免疫応答の質および有効性に影響を及ぼす様々なさらなる活性を有している。CAPは以下の事柄に関与していることが報告されている:
(a)リポ多糖(LPS)、リポテイコ酸(LTA)またはCpGなどの炎症刺激を放出する細菌菌体の初期溶解(HancockおよびDiamond 2000)、(HancockおよびScott 2000);
(b)LPSおよびLTAを中和し、かくしてマクロファージによるTNF−αおよびIL−6の産生を抑制する(=防腐活性)(Scott, Rosenbergerら、2000)、(Scott, Yanら、1999)、(Scott, Goldら、1999)、(Gough, Hancockら、1996);
【0033】
(c)肥満細胞の脱顆粒。αデフェンシンはヒスタミン放出および血管拡張を誘発することが示されている(Befus, Mowatら、1999)。さらに、hBD−2およびLL−37は、肥満細胞においてヒスタミン放出および細胞内カルシウム移動を誘発するが、hBD−1は誘発しないことが示されている。さらに、hBD−2は肥満細胞においてプロスタグランジンD2を産生させるが、LL−37およびhBD−1は産生させない(Niyonsaba, Someyaら、2001)。
【0034】
(d)組織プラスミノーゲンアクチベーターによるフィブリン溶解を抑制し、かくして細菌の拡散を低減する(Higazi, Ganzら、1996);
(e)繊維芽細胞の化学走性および増殖の促進による組織/創傷の修復(Gallo, Onoら、1994)、(ChanおよびGallo 1998);
(f)フリンやカテプシンなどのある種のプロテアーゼの阻害による組織傷害の抑制(Basak, Ernstら、1997)、(Van Wetering, Mannesse−Lazeromsら、1997);
(g)免疫抑制性コルチゾールの放出の抑制(HancockおよびDiamond 2000);
【0035】
(h)種々の免疫細胞集団の補給(recruitment)。αデフェンシンは気道上皮細胞においてIL−8産生を誘発し、好中球の補給に導くことが示されている(Van Wetering, Mannesse−Lazeromsら、1997)。さらに、αデフェンシンは、ナイーブなCD4+/CD45RA+およびCD8+T細胞に対しては化学走性活性を発揮するが、CD4+/CD45RO+メモリーT細胞に対しては発揮しないことが報告されている(Chertov, Michielら、1996)、(Yang, Chenら、2000)。同様に、αデフェンシンおよびβデフェンシンは、単球由来の未熟な樹状細胞の移動は誘発することができるが、単球および成熟樹状細胞の移動は誘発することができないことが示されている(Yang, Chertovら、1999)、(Yang, Chenら、2000)。さらに、このβデフェンシンの化学走性活性は、成熟樹状細胞ではなく未熟な樹状細胞上で発現されたケモカインレセプターの1つであるCCR6(ケモカインレセプター6)との相互作用によって媒体されることが示されている(Yang, Chertovら、1999)。
【0036】
ヒトLL−37やブタPR−39などのカテリシジンは、好中球に対して化学走性活性を発揮することが示されている(Agerberth, Charoら、2000)、(De, Chenら、2000)。さらに、LL−37は、CD4+T細胞に対しては化学走性活性を発揮するが、CD8+T細胞に対しては発揮しない(Agerberth, Charoら、2000)、(De, Chenら、2000)。さらに、LL−37は、ホルミルペプチドレセプター様1(FPRL1)を利用して、末梢血の単球、好中球およびCD4+T細胞の化学走性を誘発することが最近示された(De, Chenら、2000)。しかしながら、未熟な樹状細胞および成熟樹状細胞に対するLL−37の化学走性活性は観察されていない。これら知見は、未熟な樹状細胞への単球の分化に伴ってFPRL1発現は廃棄されるという事実によって支持された(Ynag, Chenら、2001)。しかしながら、FPRL1の発現は骨髄由来の細胞に限られることが記載されており、Tリンパ球については記載されていない(Murphy 1994)。それゆえ、好中球や単球と同様にTリンパ球や骨髄由来の細胞に対して化学走性活性を発揮するに際して、LL−37は異なるレセプターを利用しているようである。
【0037】
(i)獲得した全身免疫応答の促進。αデフェンシンと卵アルブミン(OVA)との鼻内送達は、C57BL/6マウスにおいてOVA特異的な血清IgG抗体応答を促進した(Lillard, Boyakaら、1999)。さらに、通常のアジュバントである水酸化アルミニウムに吸着したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)をαデフェンシンと組み合わせて腹腔内投与すると、Balb/cマウスにおいてKLH特異的な抗体の産生が増大した。さらに、αデフェンシンは、同系の腫瘍抗原、リンパ腫Igイディオタイプに対する抗体応答を促進し、腫瘍攻撃に対する抵抗性も増大させた(Tani, Murphyら、2000)。
【0038】
獲得免疫応答の指示に重要な多様なCAP(たとえば、デフェンシン、カテリシジン)の様々な活性が今日まで記載されている。種々のCAPの共通する活性および多様な活性が明らかにされている。樹状細胞に対するそれらの化学走性活性に関して幾つかの明らかな相違が示されている。αデフェンシンおよびβデフェンシンは樹状細胞に対して化学走性を発揮するが、この特殊化された細胞型に対するカテリシジンの化学走性活性は欠如している。
【0039】
驚くべきことに、本発明の範囲内において、異なる種からのカテリシジン由来の抗菌ペプチド(ウシインドリシジン、ウシドデカペプチド、マウスmCRAMPおよびヒトLL−37)が、マウスおよびヒトの樹状細胞において抗原の取り込みを促進する能力を発揮することが示される。さらに、カテリシジン由来の抗菌ペプチドとともに腫瘍抗原を皮下投与すると、注射した腫瘍抗原に対する免疫応答が顕著に促進された。
【0040】
米国特許第5,837,248号にはデフェンシンペプチドによるT細胞化学走性の刺激が開示されているが、デフェンシンおよびCAP37/アズロシジン(azurocidin)以外の他のT細胞化学走性ペプチドは好中球に存在しないことが言及されている。
【0041】
しかしながら、抗菌ペプチドの多用なファミリーが同じ細胞型(たとえば、好中球、小腸パーネト細胞)に存在するけれども(GanzおよびLehrer 1999)、これら抗菌ペプチド間で重要な変異が存在する(このことは、ある1つのファミリーの特徴が必ずしも他のファミリーでも生じるとは限らないことを意味する)。一般に、この変異は、アミノ酸配列の発散によるばかりでなく、抗菌ペプチドをコードする局所的に発現された遺伝子産物の数および夥しさにも適用されると思われる。この変異の観点から、これらエフェクターが進化を通じて保存されてきた存在であることが明らかである。おそらく、抗菌ペプチドの変異は、その標的の特性:宿主−微生物相互作用に関する迅速な獲得進化変異を反映している。
【0042】
免疫応答の誘発は、リンパ器官で利用できる抗原に決定的に依存している。排出(draining)リンパ節に到達しない抗原に対する応答は存在しない(Zinkernagel, Ehlら、1997)。かくして免疫応答の開始はリンパ器官でしか起こらない。リンパ器官で抗原を負荷されたAPCとT細胞および/またはB細胞との最初の相互作用が免疫カスケードの開始を可能にする(Kurts, Heathら、1996)。
【0043】
これらを考慮すると、増大された免疫応答性は、単に注射した末梢部位から排出局所リンパ節へのワクチン抗原の移動の増大の結果である。このプロセスでは、樹状細胞やランゲルハンス細胞などの末梢に存在する天然の抗原提示細胞が中心的な役割を果たしている(Schijns 2000)。これらは「天然アジュバント」として記載される。なぜなら、これら末梢に存在する天然の抗原提示細胞は抗原を非常に有効に捕捉する用意のできた番人として殆どの組織に存在しており、抗原の捕捉はこれら細胞の二次リンパ器官への移動を誘発し、該リンパ器官で該細胞はナイーブなT細胞およびB細胞を初回抗原刺激することができるからである(Steinman 1991)。これら末梢に存在する天然の抗原提示細胞は、生きたまたは不活化したウイルスまたは細菌の接種に応答して組織傷害部位に速やかに補給される(McWilliam, Napoliら、1996)。
【0044】
セクロピンが同様のカテリシジン様構造特性(αヘリックスコンホメーション)に類似している事実にもかかわらず、セクロピンはカテリシジンとは対照的に抗原適用能(antigen pulsing capacity)は示さない(実施例参照)。カテリシジン由来の抗菌ペプチドが抗原適用能を有し、それゆえ免疫応答促進活性を有するのは驚くべきことである。このことは、異なるクラスの抗菌ペプチドが異なる機能を有すること、それゆえ、報告されたデフェンシンペプチドによるT細胞化学走性の刺激は、生得免疫と獲得免疫との間に同様の関連が存在することを当業者に示すものでないことを確認するものである。
【0045】
それゆえ、ともに炎症性組織で放出されるカテリシジンおよびデフェンシンは、異なる仕方で適合免疫応答を指令する。デフェンシンは樹状細胞を誘引することによって参画するけれども、カテリシジンは本発明で示されるように樹状細胞の活性化にとって中心となるものである。それゆえ、カテリシジンは免疫応答促進活性を媒体するうえでの中心的な成分であり、それゆえワクチン開発にとって非常に有効なアジュバントを構成する。
【0046】
今や驚くべきことに、カテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体が免疫応答促進活性を有すること、それゆえ非常に有効なアジュバントであることが本発明に従って示された。
【0047】
本発明の範囲において、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは、カルボキシ末端抗菌ペプチド(カテリシジン遺伝子の第四エクソンによって優先的にコードされるが該第四エクソンのみによってコードされるわけではない)に続いてカテリシジンのカテリン様プレプロ領域(カテリシジン遺伝子の最初の3つのエクソンによって優先的にコードされるが該3つのエクソンのみによってコードされるわけではない)を含むもの、またはその誘導体として理解される。カテリシジンプレプロ領域は、ウシで75〜87%の同一性およびブタのプレプロ領域で90〜97%の範囲の同一性(Zanetti, Gennaroら、1995)の高い種内同一性を有し、該領域はまた51〜65%の範囲(プログラムblastpを用いてhCAP−18と比較(Altschul, Maddenら、1997))の高い種間同一性を有するため、種内および種間のホモロジーを有している。
【0048】
このようにカテリシジンプレプロ領域の高い種内および種間でのタンパク質配列同一性が知られていることに鑑み、本発明では、カテリシジンプレプロ領域に対して45%以上(≧)、有利には60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上のタンパク質配列同一性を有するタンパク質またはタンパク質ドメインに由来し、それゆえカテリシジン由来の抗菌ペプチドとして理解されるべきこれらタンパク質の抗菌ドメインであるのであれば、全ての抗菌ペプチドをカテリシジン由来の抗菌ペプチドと称する。
【0049】
カテリシジン由来の抗菌ペプチドの例は、たとえば、PMAP−37、hCAP18、BMAP−27、CAP18、Bac5、Bac7、PR−39、インドリシジン、ウシドデカペプチド、プロテグリンPG−2などである。
抗菌ペプチドは、通常用いられるアッセイである最小阻害濃度アッセイ(MIC)で活性を示すときに抗菌性または殺菌性であるといわれる(GudmundssonおよびAgerberth 1999)、(Boman 2000)。
【0050】
一定範囲の微生物に対する物質のMICは、とりわけ正確な方法であるブロス希釈法により決定するのが好ましい。各物質の系列希釈を96ウエルプレート中、ルリア−ベルタニ(Luria−Bertani)培地で行う。各ウエルに104〜105コロニー形成単位/mlの被験生物10μlを接種する。プレートを37℃で36〜48時間インキュベートした後にMICを決定する。MICは、増殖を抑制する最低の抗菌濃度として扱われる。
【0051】
本発明の範囲において、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは、グラム陽性細菌および/またはグラム陰性細菌、真菌または原生動物に対して被験物質の500μM未満、好ましくは300μM未満、さらに好ましくは200μM未満、さらに好ましくは0.05〜160μMの範囲のMIC(Travis, Andersonら、2000)を示すときに抗菌性または殺菌性であるといわれる。
【0052】
本発明の範囲において、カテリシジン由来の抗菌ペプチドの誘導体は、たとえば、カテリシジン由来の抗菌ペプチドの断片、並びに置換、欠失、付加などの1またはそれ以上の変異を有するカテリシジン由来の抗菌ペプチド、および修飾したあらゆるカテリシジン由来の抗菌ペプチド、たとえば、塩、エステルなどを含む。好ましくは、本発明による所定のカテリシジン由来の抗菌ペプチドのアミノ酸の10%以下が置換、欠失または付加される。そのような変異は、標準的な知見に従って行う、たとえば、疎水性アミノ酸残基を他の疎水性アミノ酸残基で置換するなど。
【0053】
カテリシジン由来の抗菌ペプチドの誘導体は、MICが500μM未満、好ましくは300μM未満、さらに好ましくは200μM未満、さらに好ましくは0.05〜160μMの範囲である限りカテリシジン分子として理解されなければならない。本発明によるカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体の長さは重要ではない。長さは、上記MICを発揮する限り、たとえば5アミノ酸からそのような抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むタンパク質の長さまで、好ましくは10〜60アミノ酸であってよい。タンパク質は、たとえば、カテリシジン、たとえば、MCLP(マウスカテリン様タンパク質)、hCAP−18などである。本発明による分子はまた、天然のカテリシジン由来ペプチドに匹敵する、とりわけ同じかまたは一層優れた化学走性活性をも示すのが好ましい。
【0054】
ワクチンは、少なくとも1つのカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体と免疫応答が向けられた少なくとも1つの抗原とを含む。もちろん、ワクチンは所望の免疫応答に依存して2またはそれ以上の抗原を含んでいてよい。抗原はまた、免疫応答をさらに促進すべく修飾してよい。
【0055】
好ましくは、ウイルスまたは細菌病原体に由来する、真菌または寄生虫に由来するタンパク質またはペプチド、並びに腫瘍抗原(癌ワクチン)または自己免疫疾患において推定の役割を有する抗原を用いる(グリコシル化、脂質付加(lipidated)、糖脂質付加(glycolipidated)またはヒドロキシル化した抗原などの誘導体化抗原を含む)。さらに、炭水化物、脂質または糖脂質を抗原自体として用いてよい。誘導体化のプロセスとしては、病原体からの特定のタンパク質またはペプチドの精製、病原体の不活化並びにそのようなタンパク質またはペプチドのタンパク質加水分解もしくは化学的誘導体化または安定化が挙げられる。別のやり方として、病原体自体を抗原として使用してもよい。抗原は、ペプチドまたはタンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質またはそれらの混合物であるのが好ましい。
【0056】
好ましくは、抗原は、5〜60、好ましくは6〜30、とりわけ8〜11のアミノ酸残基からなるペプチドである。この長さの抗原は、T細胞を活性化するのに特に適していることがわかっている。抗原はさらに、A657/2000に従ってテールとカップリングすることができる。また、抗原はカテリシジン由来の抗菌ペプチドにカップリング、たとえば共有結合させることができる。もちろん、得られた化合物は天然に存在するカテリシジンであってはならない。
【0057】
本発明の組成物の成分の相対的な量は、個々の組成物の必要性に大きく依存する。好ましくは10ng〜1gの抗原およびカテリシジン由来の抗菌ペプチドを投与する。抗原/カテリシジン由来の抗菌ペプチドの好ましい量は、ワクチン接種当たり0.1〜1000μgの範囲の抗原および0.1〜1000μgのカテリシジン由来の抗菌ペプチドである。
本発明による組成物はさらに、緩衝剤、塩、安定化剤、抗酸化剤などの補助物質、または抗炎症剤や抗刺激剤(antinociceptive drugs)などの作用物質を含んでいてよい。
【0058】
本発明の組成物は、患者、たとえばワクチン接種候補者に、有効量で、たとえば1週間毎、2週間毎または1ヶ月毎の間隔で投与することができる。本発明の組成物で処置する患者は、繰り返しワクチン接種することもできるし、または1回だけワクチン接種することもできる。本発明の好ましい使用は、特定の抗原に対して保護することのない、とりわけヒトまたは動物の能動免疫処置である。
【0059】
本発明の組成物は、皮下、筋肉内、直腸内、静脈内、皮内、耳介内(intrapinnaly)、経皮並びに経口摂取により投与してよい。
ワクチンが1を超えるカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含んでいるなら、これらカテリシジン由来の抗菌ペプチドは抗原に対する免疫応答をさらに促進して強めるべく相互作用するであろう。
【0060】
もちろん、本発明によるワクチンは、たとえば他の薬理学的に許容しうる担体などのさらなる物質を含んでいてよい。本発明によるワクチンは、公知の方法に従って、たとえば静脈内ワクチン、DNAワクチン、経皮ワクチン、局所ワクチン、鼻内ワクチンおよびコンビネーションワクチンとして製剤化することができる。公知のワクチンの改良である投与量をワクチンの標準法により選択することができるが、公知のワクチンよりも低い投与量も同じ保護に対して可能であり、それゆえ好ましい。
好ましくは、ワクチンは貯蔵安定な形態で提供され、たとえば凍結乾燥して適当な再構成溶液と任意に組み合わせて提供される。
【0061】
好ましくは、カテリシジンは動物のカテリシジンである。本発明の範囲内において、「動物のカテリシジン」はヒトカテリシジン、とりわけ哺乳動物のカテリシジンを含む。とりわけカテリシジンがワクチンをデザインした動物種に由来するときは、これらカテリシジンに由来する抗菌ペプチドはその動物の免疫系によって認識されることはなく、かくして該動物においてカテリシジン由来の抗菌ペプチドに対する免疫応答を引き起こすリスクが低減するであろう。
【0062】
好ましい態様によれば、動物のカテリシジンはマウスカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号1に示す配列を含むのが好ましい。このワクチンがマウスに投与されると、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは認識されることはなく、該カテリシジン由来の抗菌ペプチドに対する免疫応答は引き起こされないであろう。しかしながら、このカテリシジン由来の抗菌ペプチドはまた、ヒトを含む他のいかなる動物に投与されるワクチンとしても適している。配列番号1に示す配列を含むカテリシジン由来の抗菌ペプチドは特に有効であることが示されている。
【0063】
好ましい態様によれば、カテリシジンはヒトカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号2に示す配列を含むのが好ましい。このワクチンがヒトに投与されると、該カテリシジン由来の抗菌ペプチドは免疫系によって認識されないので該カテリシジン由来の抗菌ペプチドに対する免疫応答は誘発されないであろう。配列番号2に示す配列を含むカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、少なくとも1つの抗原を含むワクチンに加えたときに特に有効であることが示されている。
【0064】
本発明の好ましい態様によれば、動物のカテリシジン由来の抗菌ペプチドはインドリシジンペプチド、好ましくはウシインドリシジンペプチドであり、配列番号3に示す配列を含むのが特に好ましい。
科学文献には、カルボキシ末端のグリシンを有する((Del Sal, Storiciら、1992)、(Zanetti, Gennaroら、1995)、(Zanetti, Gennaroら、1997))および有しない((Selsted, Novotnyら、1992)、(Falla, Karunaratneら、1996)、(AndreuおよびRivas 1998)、(HancockおよびDiamond 2000))ウシインドリシジンの様々な配列が公開されている。トリプトファンに富むウシインドリシジンがウシ好中球からアミド化トリデカペプチドとして精製されている(Selsted, Novotnyら、1992)。精製したインドリシジンには認められないさらなるグリシンが、導かれたcDNA配列のカルボキシル末端に存在するのが見つかっており、翻訳後のアミド化に関与しているものと思われる(Del Sal, Storiciら、1992)。
【0065】
本発明では、ウシインドリシジンは、C末端がアミノ化された形態の配列番号3に示す配列:NH2−ILPWKWPWWPWRR−CONH2を含む、ウシ好中球から精製したペプチド(Selsted, Novotnyら、1992)に従って合成するのが好ましい。このカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、ウシに対してデザインしたワクチンとして用いるのが特に好ましい、というのはこの動物種では該カテリシジン由来の抗菌ペプチドに対して免疫応答が誘発されないだろうからである。しかしながら、このカテリシジン由来の抗菌ペプチドはまた、ヒトを含む他のいかなる動物種に対するワクチンとしても適している。配列番号3に示す配列を含むカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、アジュバントとして特に有効であることがわかった。
【0066】
好ましい動物のカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、配列番号4に示す配列を含むウシの環状および/または線状のドデカペプチドである。このカテリシジン由来の抗菌ペプチドはかなり短いが、ワクチンに含まれる抗原に対する免疫応答を有効に促進することが示された。
【0067】
理論的には、ワクチンは少なくとも2つの成分:(1)免疫応答を引き起こすべき抗原および(2)免疫応答を促進および/または指令すべきアジュバントを含んでいなければならない。免疫アジュバントは、もともと「特定の抗原と組み合わせて用いられ、抗原単独の場合よりも高い免疫を生成する物質」として記載された(SinghおよびO’Hagan 1999)。免疫促進能に関してアジュバントの高い多様性が得られることが知られている(Schijns 2000)。それゆえ、特異に作用するアジュバントをワクチン調製のために組み合わせた場合に改良された効能が記載されている。
【0068】
たとえば、皮膚リーシュマニア症の霊長類モデルにおける組換えヒトサイトカインIL−12および水酸化アルミニウムを用いた保護免疫が示された(Kenney, Sacksら、1999)。さらに、組換えマウスサイトカインIL−12の同時投与による樹状細胞ワクチンの改良された効能および腫瘍抗原ペプチド適用末梢血単核球での免疫の成功が示された(Fallarino, Uyttenhoveら、1999)。しかしながら、他のアジュバントと組み合わせて相乗作用の示されたのはサイトカインのみではなかった。たとえば、ポリ(I−C)またはサイトカインIFN−γ、IL−2およびIL−12とともにアジュバントしたジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドが、結核サブユニットワクチンに対して免疫応答の変調作用を示す(Lindblad, Elhayら、1997)。
【0069】
好ましくは、ワクチンは少なくとも1つのさらなる免疫応答促進物質を含む。免疫応答促進物質としては、アジュバントとして作用することが知られているいかなる物質をも用いることができる。そのような物質は、WO93/19768に開示されている。他の物質は、たとえばポリリシンやポリアルギニンなどのポリカチオンである。他のアジュバントは、細胞の内部に入れるように充分に小さな粒子の形態、たとえばシリカゲルやデキストランビーズの形態の成分であってよい。このさらなる免疫応答促進物質の添加は、ワクチンをさらに一層有効なものとするであろう。
【0070】
好ましくは、免疫応答促進物質はサイトカインである。サイトカインは、B細胞、T細胞およびNK細胞、マクロファージ、樹状細胞および免疫応答の誘発に参画する他の様々な細胞を活性化および刺激するうえで重要な役割を果たしている。抗原に対する免疫応答をさらに促進するいかなるサイトカインをも用いることができる。
【0071】
本発明の他の側面は、少なくとも1つの抗原に対する免疫応答促進用アジュバントを調製するための、カテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体の使用である。本発明のこの側面に従っても、「カテリシジン由来の抗菌ペプチド」、「カテリシジン」、「誘導体」および「抗原」は上記と同様に理解されなければならない。
【0072】
好ましくは、アジュバントは抗原提示細胞(APC)において少なくとも1つの抗原の取り込みを促進する。抗原提示細胞において一層多くの抗原が取り込まれるので、T細胞などの抗原特異的な免疫エフェクター細胞の誘発に導くAPC誘発カスケードが促進される。それゆえ、APCにおける抗原の取り込みの促進はこれら抗原に対する免疫応答を促進する。
【0073】
好ましくは、カテリシジンは動物のカテリシジンである。特に好ましいのは、カテリシジンを投与した個体において免疫応答を引き起こさないカテリシジンである。
本発明の好ましい態様によれば、カテリシジンはマウスカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号1に示す配列を含むのが好ましい。
【0074】
さらなる有利な態様によれば、カテリシジンはヒトカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号2に示す配列を含むのが好ましい。
好ましくは、カテリシジン由来の抗菌ペプチドはインドリシジンペプチド、好ましくはウシインドリシジンペプチドであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号3に示す配列を含むのがさらに好ましい。
【0075】
好ましくは、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは、配列番号4に示す配列を含むウシの環状および/または線状ドデカペプチドである。
これら上記のカテリシジン由来の抗菌ペプチドの利点は上記に記載したものと同じである。
本発明の好ましい態様によれば、アジュバントをワクチンに加える。もちろん、アジュバントを動物に直接、好ましくはワクチン接種をする前に投与することが可能である。しかしながら、アジュバントをワクチンに加え、ついでこれを動物に1度に投与するのが一層容易である。
【0076】
さらなる側面によれば、本発明は、特定の抗原または特定の抗原群に対してヒトを含む動物をワクチン接種する方法に関し、該方法は、ワクチン接種すべき該動物(ヒトを含む)に有効量の本発明のワクチンを投与することを含む。あるいは、該方法は、カテリシジン由来の抗菌ペプチドを含む有効量のアジュバントを投与することを含み、その後、ワクチンを投与する。
【0077】
本発明を下記実施例および図面によりさらに詳細に記載するが、本発明はこれらに限られるものではない。
図1には種々のカテリシジンタンパク質の類似性を示す。MCLP(マウスカテリン様タンパク質、配列番号5)の推論アミノ酸配列を、ウサギ(カテリン、配列番号6、およびCAP18、配列番号7)、ウシ(バクテネシン、配列番号8、Bac5、配列番号9、インドリシジン、配列番号10)、ヒト(FALL−39、配列番号11)からのペプチド抗生物質の前駆体配列とアラインメントする。これらは、本発明によるカテリシジン由来の抗菌ペプチドの例示である。システインは枠で囲んである。二塩基性のプロテアーゼプロセシング部位には下線を引いてある。アラインメントはプログラムDNA−SUNを用いて行った。
【0078】
図2はプロFALL−39/hCAP18についてのヒト遺伝子の配置を示す。3つの保存されたエクソン(e1〜e3)の全体の構造は、全てのカテリシジン遺伝子で同じである。変異する部分は常にエクソン4であり、このエクソンは、ヒト、ブタ、ウシ、ウサギ、マウスおよびヒツジで完全に異なるエフェクターをコードすることができ、抗菌ペプチドの最初の4つのクラスに属する。領域1は、NF−KB、NF−IL6、APRFなどの転写因子の制御部位を示す。矢印2はエクソンシャフリングの仮定部位を示し、領域3はシグナルペプチドを示し、領域4はカテリン由来の前駆体を示し、領域5は一次翻訳産物を示す。領域6はエクソン4の産物を示し、ここでFALL−39およびLL−37はhCAP−18に由来するC末端抗菌ペプチドの略語である。FALL−39のプロセシングは未だに行っていない。
【0079】
図3は、カテリシジンファミリーのプロペプチドの模式図を示す。C末端抗菌ペプチドの幾つかを示してあり、代表例は、αヘリックス配列(PAMP−37、配列番号12;hCAP18、配列番号13;BMAP−27、配列番号14;CAP18、配列番号15)、ProおよびArgに富む配列(Bac5、配列番号16;Bac7、配列番号17;PR−39、配列番号18)、Trpに富む配列(インドリシジン、配列番号3)、1つのジスルフィド架橋を含む配列(ドデカペプチド、配列番号4)、および2つのジスルフィド架橋を含む配列(プロテグリンPG−2、配列番号19)である。これらは、本発明によるカテリシジン由来の抗菌ペプチドの例示である。領域1は保存されたプレプロ領域を示し、領域2は変異する抗菌ドメインを示し、矢印3はシグナルペプチダーゼの部位を示し、矢印4はエラスターゼの開裂部位を示す。3つの領域(pre、pro、pep(tide))の下の数字は、これらペプチドのアミノ酸残基の数を示す。
【0080】
実施例
APC中への標識抗原ペプチドの取り込みを促進する種々のペプチドの能力(トランスローディングアッセイ; Buschle, Schmidt ら、 1997 )およびインビボでのペプチド特異的なT細胞応答の誘発の試験
多様なカテリシジンまたはセクロピン由来の抗菌ペプチドが抗原に対する「担体ペプチド」として機能しうるか否かを試験するため、APCをインビトロでトランスローディングすべく(これはAPC中への抗原の取り込みの促進を意味する)、蛍光標識したペプチドを抗原ペプチドとして用いた。これらを、多様なタイプおよび濃度の所定の「担体ペプチド」と混合した。
【0081】
これら多様な「担体ペプチド」のペプチド送達の有効性を比較するため、P388D1細胞(マウス単球−マクロファージ抗原提示細胞株;ATCC(TIB−63)から購入)、またはヒトCD1a陽性(ヒトHLA−A2陽性ドナーから、CD14+陽性PBMC)樹状細胞を、37℃で1時間、一定量のフルオレセイン標識ペプチドを単独かまたは所定の濃度の多様な「担体ペプチド」と組み合わせてインキュベートすることによって、APC中へのペプチド取り込みの量をモニターした。細胞をフローサイトメトリーによって分析する前に、細胞を充分に洗浄して遊離のペプチドを除去した。細胞によって取り込まれたフルオレセイン標識ペプチドの相対量をフローサイトメトリーにより測定した。
【0082】
実施例1
「担体ペプチド」としてのカテリシジン由来の抗菌ペプチドによるマウスマクロファージのトランスローディング
ウシインドリシジン(配列番号3)、線状または環状ウシドデカペプチド(配列番号4)、マウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)を、等価な量の正の荷電を示す濃度にて用いた。使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった(図4参照、蛍光強度は対数スケール):
【0083】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+63μgのウシインドリシジン(配列番号3)
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+75μgの環状ウシドデカペプチド(配列番号4)
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+75μgの線状ウシドデカペプチド(配列番号4*)
(6)2μgのFL−LFEAIEGFI+20μgのポリL−アルギニン
(7)2μgのFL−LFEAIEGFI+58μgのマウス抗菌ペプチド(配列番号1)
【0084】
ペプチドのみで処理した細胞では蛍光は疎らであると思われるが、カテリシジン由来の抗菌ペプチドを「担体ペプチド」としてトランスローディングした細胞では全て「トランスローディングした」細胞の強い蛍光が認められ、これら抗菌ペプチドが抗原ペプチドでAPCを非常に有効に適用しうることを示していた。試験した全てのカテリシジン由来の抗菌ペプチドはペプチドの送達を大きく促進し、APCへの良好な「担体ペプチド」として機能する。
【0085】
実施例2
セクロピン由来の抗菌ペプチドとカテリシジン由来の抗菌ペプチドとのトランスローディング活性の比較
ウシインドリシジン(配列番号3)、線状または環状ウシドデカペプチド(配列番号4)およびセクロピン様Helicobacter pylori RpL1由来のペプチド(Hp RpL1 2−20)(アミノ酸残基2〜20)((Putsep, Normarkら、1999)、(Boman 2000))を、等価な量の正の荷電を示す濃度にて用いた。使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった:
【0086】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+47μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+63μgのウシインドリシジン(配列番号3)
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+37.5μgの環状ウシドデカペプチド(配列番号4)
【0087】
カテリシジン由来の抗菌ペプチドが明瞭かつ有意のトランスローディング活性を示すのに対し、セクロピン由来の抗菌ペプチドはペプチド取り込みのわずかな促進のみを示す(図5参照、蛍光強度は対数スケール)。
【0088】
実施例3
増大濃度の線状ウシドデカペプチド
使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった:
【0089】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+18.75μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+37.5μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+75μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
(6)2μgのFL−LFEAIEGFI+150μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
カテリシジン由来の抗菌ペプチド(ウシドデカペプチド:配列番号4)の量が増大するとともに適用作用もまた有意に増大することが示された(図6参照、蛍光強度は対数スケール)。
【0090】
実施例4
増大濃度のセクロピン様Hp RpL1由来抗菌
使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった(図7参照、蛍光強度は対数スケール):
【0091】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+25μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+50μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+100μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(6)2μgのFL−LFEAIEGFI+200μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
図7は、セクロピン由来の抗菌ペプチドの量の増大は適用作用を有効に増大させないことを示している。
【0092】
実施例5
LL−37によるMHCクラスIペプチドおよびMHCクラスIIペプチドのヒトDCへのトランスローディング
マウスAPCのみならずヒトAPCもカテリシジン由来の抗菌ペプチドによってトランスローディングされることを示すため、ヒトCD1a陽性(ヒトHLA−A2陽性ドナー由来、CD14+陽性PBMC)樹状細胞を標的APCとして用い、該APCをインフルエンザマトリックスタンパク質A由来のMHCクラスI結合性ペプチド(アミノ酸残基58〜67)(Morrison, Elvinら、1992)かまたは破傷風毒素由来のMHCクラスII結合性ペプチド(アミノ酸残基830〜843)(Valmori, Sabbatiniら、1994)で適用した。これら2つのクラスの抗原性フルオレセイン標識ペプチドを用いた。ヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドとしては公知のLL−37ペプチド(配列番号2)(Cowland, Johnsenら、1995)を用いた。
【0093】
使用したヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドLL−37および抗原ペプチドの濃度は以下に示すとおりである:
図8a:
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−GILGFVFTLT(MHCクラスI;ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−GILGFVFTLT(MHCクラスI)+30μgのLL−37(配列番号2)
図8b:
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−QYIKANSKFIGITE(MHCクラスII;ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−QYIKANSKFIGITE(MHCクラスII)+30μgのLL−37(配列番号2)
【0094】
図8aおよび図8bに示すように、ヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドLL−37は、両クラス(MHCクラスIおよびMHCクラスII)の抗原ペプチドでヒト樹状細胞を有意な程度まで適用した。
それゆえ、多様な種からのカテリシジン由来の抗菌ペプチドが異なる起源のAPCを適用する「担体ペプチド」として機能しうる。
【0095】
実施例6
ペプチド特異的なT細胞応答の誘発をインビボで促進する能力の試験
これらのカテリシジン由来の抗菌ペプチドがペプチド特異的なT細胞応答の誘発をインビボで促進する能力を試験するため、TRP−2(マウスチロシナーゼ関連タンパク質2:アミノ酸配列181〜188;VYDFFVWL)(Bloom, Perry−Lalleyら、1997)由来の抗原性メラノーマペプチド(100μg)と種々の「担体ペプチド」、すなわちポリL−アルギニン、マウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)またはウシインドリシジン(配列番号3)との混合物を用いて、1群4匹のマウス(C57BL/6、雌、8週齢、H−2b)の脇腹に3回(0日目、7日目、および14日目)皮下注射した。
【0096】
マウス群は以下の注射を受けた(マウス当たりの量を示す):
(1)100μgのVYDFFVWL
(2)100μgのVYDFFVWL+100μgのポリL−アルギニン
(3)100μgのVYDFFVWL+1000μgのマウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)
(4)100μgのVYDFFVWL+500μgのウシインドリシジン(配列番号3)
【0097】
3回目のワクチン接種の2週間後に、排出(draining)(鼠蹊部)リンパ節を取り出し、リンパ節細胞(図9)および脾細胞(図10)をTRP−2由来(マウスチロシナーゼ関連タンパク質2:アミノ酸配列181〜188:VYDFFVWL)ペプチドでエクスビボで活性化してIFN−γ産生特異細胞(それぞれ、100万の脾細胞およびリンパ節細胞当たりのIFN−γ ELISpotの数)をELISpotアッセイで決定した。
【0098】
図9は、ペプチドとウシインドリシジン(配列番号3)とを注射したマウスで、ペプチド単独またはペプチドとポリL−アルギニンとを注射したマウスに比べて一層多くのIFN−γ産生特異細胞という結果となったことを示す。
図10は、ペプチドとウシインドリシジン(配列番号3)とを注射したマウスおよびペプチドとマウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)とを注射したマウスの両者で、ペプチド単独またはペプチドとポリL−アルギニンとを注射したマウスに比べて一層多くのIFN−γ産生特異細胞という結果となったことを示す。
【0099】
この実施例は、カテリシジン由来の抗菌ペプチドがペプチド特異的なT細胞応答の誘発をインビボで促進することを明らかに示している。
要約すると、試験した全てのカテリシジン由来の抗菌ペプチドは高い「トランスローディング」および免疫変調能を示し、カテリシジン由来の抗菌ペプチドがAPCをインビトロおよびインビボにて抗原ペプチドで適用することができ、適合免疫応答を誘発するに際して抗原ペプチドの良好なアジュバント/「担体ペプチド」であることを示している。
【0100】
参照文献
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【図1】カテリシジンタンパク質間の配列類似性を示す。
【図2】プロFALL−39/hCAP18についてのヒト遺伝子の配置を示す。
【図3】カテリシジンファミリーのプロペプチドの模式図を示す。
【図4】「担体ペプチド」としてのカテリシジン由来の抗菌ペプチドによるP388D1のトランスローディングを示す。
【図5】「担体ペプチド」としてのセクロピンまたはカテリシジン由来の抗菌ペプチドによるP388D1のトランスローディングを示す。
【図6】「担体ペプチド」としてのカテリシジン由来の抗菌ペプチド(ウシ線状ドデカペプチド配列番号4)の増大量によるP388D1のトランスローディングを示す。
【図7】「担体ペプチド」としてのセクロピン様Hp RpL1(アミノ酸残基2−20)由来の抗菌ペプチドの増大量によるP388D1のトランスローディングを示す。
【図8】LL−37によるMHCクラスIペプチドおよびMHCクラスIIペプチドのヒトDCへのトランスローディングを示す。
【図9】ワクチン接種したマウスにおけるIFN−γ産生細胞の量を示す。
【図10】ワクチン接種したマウスにおけるIFN−γ産生細胞の量を示す。
(技術分野)
本発明は、少なくとも1つの抗原および免疫促進物質を含むワクチンに関する。
【0002】
(背景技術)
侵入する病原体からの宿主の防御には細胞系のエフェクターおよび体液系のエフェクターが関与しており、非適合(non−adaptive)(生得)免疫および適合(adaptive)(獲得)免疫の両者の協調作用の結果得られる。後者はレセプターによって媒体される特異的な免疫学的認識に基づくものであり、最近獲得された免疫系であり、脊椎動物にのみ存在する。前者は適合免疫が発達する前から進化しており、あらゆる生物にわたって分布する様々な細胞および分子からなり、潜在的な病原体を制御下におくことを役目としている(Boman 2000)、(Zanetti, Gennaroら、1997)。
【0003】
BおよびTリンパ球は獲得された抗原特異的な適合免疫のメディエーターであり、免疫学的記憶の発達を含むが、これはワクチンの製造を成功させる主たる目標である(Schijns 2000)。抗原提示細胞(APC)は、抗原をプロセシングし、プロセシングしたその断片をリンパ球の活性化に必要な分子とともに細胞表面に提示することのできる高度に特殊化した細胞である。このことは、特異的な免疫応答の開始にはAPCが非常に重要であることを意味する。Tリンパ球活性化のための主たるAPCは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、およびB細胞であり、一方、Bリンパ球活性化のための主たるAPCは濾胞樹状細胞(follicular dendritic cells)である。一般に、DCが、休止したナイーブなおよびメモリーBおよびTリンパ球を刺激する免疫応答を開始させる観点から最も強力なAPCである(Banchereau, Briereら、2000)。
【0004】
末梢にあるAPC(たとえば、DCやランゲルハンス細胞)の天然の役目は抗原を捕捉しプロセシングすることであり、それによって活性化されてリンパ球コスティミュレート分子の発現を開始し、リンパ器官に移動し、サイトカインを分泌して抗原を異なる集団のリンパ球に提示し、かくして抗原特異的な免疫応答を開始させる。APCは、ある環境下でリンパ球を活性するのみならず、抗原に対してT細胞を寛容にもする(BanchereauおよびSteinman 1998)。
【0005】
Tリンパ球による抗原の認識は、主要組織適合複合体(MHC)により拘束されている。ある特定のTリンパ球は、ペプチドが特定のMHC分子に結合している場合にのみ抗原を認識する。一般に、Tリンパ球は自己のMHC分子の存在下でのみ刺激され、抗原は自己のMHC分子に結合したペプチドとしてのみ認識される。MHC拘束は、認識される抗原の観点から、およびそのペプチド断片に結合するMHC分子の観点から、Tリンパ球の特異性を定めるものである。
【0006】
細胞内および細胞外の抗原は、認識および適切な応答の両観点から免疫系に対して極めて異なった攻撃を提示する。T細胞への抗原の提示は、2つの別個のクラスの分子、MHCクラスI(MHC−I)およびMHCクラスII(MHC−II)によって媒体され、これらは別個の抗原プロセシング経路を利用している。大概は、発達してきた2つの主要な抗原プロセシング経路を識別することが可能である。細胞内抗原に由来するペプチドはMHCクラスI分子(該分子は実質的にあらゆる細胞で発現される)によってCD8+T細胞に提示されるのに対し、細胞外抗原に由来するペプチドはMHCクラスII分子によってCD4+T細胞に提示される(Monaco 1992)、(Harding 1995)。
【0007】
しかしながら、この二分法にはある種の例外が存在する。エンドサイトーシスされた粒状または可溶性のタンパク質に由来するペプチドが、マクロファージ並びに樹状細胞のMHC−I分子上に提示されることを幾つかの研究が示している(Harding 1996)、(BrossartおよびBeven 1997)。それゆえ、樹状細胞のように末梢に存在するAPCは、細胞外抗原を捕捉およびプロセシングし、これら抗原をMHC−I分子上でTリンパ球に提示する高い潜在能力を発揮し、インビトロおよびインビボにて抗原で細胞外にて追跡する(pulsing)ための興味深い標的である。
【0008】
様々なタイプの白血球に対する刺激活性を含むAPCの重要かつ独特の役割は、ワクチン開発を成功させるに際して適切な戦略のための標的としての中心的な位置を反映している。理論的には、このことを行う一つの方法は、APCの天然の役割である抗原の取り込みを促進または刺激することである。ワクチンの対象とされる適当な抗原を適用されたら(pulsed)、APCは取り込まれた抗原のプロセシングを開始し、それによって活性化され、リンパ球コスティミュレート分子を発現し、リンパ器官に移動し、サイトカインを分泌し、リンパ球の異なる集団に抗原を提示し、かくして免疫応答を開始するに違いない。
【0009】
活性化されたT細胞は、一般に多数のエフェクターサイトカイン(インターロイキン2(IL−2)、インターフェロンγ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5およびIL−10を含む)を高度に制御された仕方で分泌する。特定の抗原(たとえば、腫瘍抗原、一般にワクチンにて投与される抗原)に対する細胞障害性Tリンパ球応答の機能的検出は、サイトカイン産生を単一細胞レベルで分析する技術であるELISpotアッセイ(酵素結合免疫スポットアッセイ)によって一般にモニターされる。本発明では細胞免疫促進促進サイトカインIFN−γのためのELISpotアッセイを、首尾よいペプチド特異的T細胞活性化をモニターするのに用いた。
【0010】
以前にポリカチオンがMHCクラスI適合(matched)ペプチドの腫瘍細胞中への取り込みを有効に促進することが示されており、これは「トランスローディング(TRANSloading)」と呼ばれるペプチドまたはタンパク質適用(pulsing)法である(Buschle, Schmidtら、1997)。さらに、本発明者らは、ポリカチオンがペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞中に「トランスロード」できることをインビボおよびインビトロで示した(Buschle 1998)。さらに、ポリL−アルギニンまたはポリL−リシンとワクチンとしての適当なペプチドとの混合物を同時に注射すると、マウスモデルにおいて動物が腫瘍増殖から保護される(Schmidt, Buschleら、1997)。この化学的に規定されたワクチンは、非常に多数の抗原/ペプチド特異的なT細胞を誘発することができる。これは、少なくとも部分的にはポリカチオンによって媒体されたAPC中へのペプチドの促進された取り込みによるものであることが示されており(Buschle 1998)、APCはインビボで抗原を適用されたときに該投与抗原に対してT細胞媒体免疫を誘発しうることを示している。
【0011】
獲得免疫(高度に特異的だが応答が比較的遅い)とは異なり、生得免疫は宿主と比較して微生物成分の構造上の差異により誘起されるエフェクター機構に基づいている。これら機構はかなり迅速な初期応答を開始することができ、これは主として有毒物質の中和に導く。生得免疫の反応は低級な門の動物の唯一の防御戦略であり、獲得免疫系が動員される前の第一線の宿主防御として脊椎動物でも保持されている。
【0012】
より高等な脊椎動物では、生得免疫のエフェクター細胞は、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞およびおそらく樹状細胞であるのに対し(Mizukawa, Sugiyamaら、1999)、この経路の体液成分は補体カスケードおよび種々の異なる結合性タンパク質である(Boman 2000)。
【0013】
生得免疫の迅速かつ有効な成分は、長さが12から100アミノ酸残基の間の非常に様々な殺菌性ペプチドの産生である。数百の異なる抗菌ペプチドが、海綿動物、昆虫から動物およびヒトにいたる様々な生物で単離されており、これら分子の広範な分布を指し示している。抗菌ペプチドはまた、競合生物に対する拮抗物質として細菌によっても産生される。
【0014】
抗菌ペプチドの主たる源は、呼吸器管、胃腸管および尿生殖器管に整列している好中球および上皮細胞の顆粒である。一般に、これらペプチドは微生物の侵入に最も暴露される解剖学部位で認められ、内部の体液中に分泌されるかまたは専門の食細胞(好中球)の細胞質顆粒中に貯蔵される(GanzおよびLehrer 1997)、(GanzおよびLehrer 1998)、(LehrerおよびGanz 1999)、(GudmundssonおよびAgerberth 1999)。
【0015】
(発明の開示)
(発明が解決しようとする技術的課題)
本発明の目的は、同時に投与した特定の抗原に対する免疫応答を強力に促進するアジュバント/「担体ペプチド」を提供することである。
本発明のさらなる目的は、アジュバント/「担体ペプチド」(ヒトを含む動物、とりわけ哺乳動物において生体所持(body−own)分子として知られる)を提供することであり、所定のアジュバント/「担体ペプチド」に対してヒトを含む動物において免疫応答が開始されるリスクを低減することである。
【0016】
(その解決方法)
これら目的は、少なくとも1つの抗原および少なくとも1つのカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むワクチンによって解決される。
抗菌ペプチドは、公知のまたは予測される3D構造に基づいて5つのクラスに分類することができる(Boman 2000)。
【0017】
抗菌ペプチドの殺菌活性に感受性の生物のスペクトルは広く、種々の細菌(グラム陽性および陰性)、原生動物、真菌およびある場合にはウイルス感染細胞および腫瘍細胞を含む。
一般に、各種は、異なる整列(array)のこれらペプチドを備えており、これはある特定の種との微生物の特定の集合の優先的な関係によって記述される進化的な選択の結果を表しているように思われる。
【0018】
知られている抗菌ペプチドは全て、前駆体分子からのタンパク質加水分解プロセシングによって生成する。さらに、エフェクターの生合成の重要な部分は様々な形態の転写後修飾であり、これはC末端アミド化(たとえば、インドリシジン(indolicidin)、PR−39、幾つかのベータ−デフェンシン(beta−defensins)(BradburyおよびSmyth 1991))、Dアミノ酸置換(Kreil 1997)またはN末端のピログルタミン酸ブロッキング(たとえば、アタシン(attacins)および幾つかのベータ−デフェンシン)などのように最終的な機能にとって重要である。
【0019】
動物およびヒトにおけるカチオン性抗菌ペプチド(CAP)の1つの主要なファミリーはカテリシジン(cathelicidins)である(Zanetti, Gennaroら、2000)。カテリシジンは骨髄細胞に由来し、幾つかの哺乳動物種で同定されている。これまでのところ、16〜26kDaの範囲の質量のカテリシジンが、ヒト、マウス、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギおよびラットの骨髄細胞で主として発現されている。カテリシジンは前駆体として生成され、該前駆体では高度に同一のN末端プレプロ配列に高度に変化するC末端配列(特定の開裂部位でプロ配列が除去された後の抗菌ペプチドに対応する)が続いている(図3に示す、Zanetti, Gennaroら、1997から)。
【0020】
これら全ての同属物(congeners)のプロ配列は、カテリンと称するタンパク質(ブタ白血球から最初に単離された)の配列に高度に相同である。この高度に保存されたカテリン様ドメインが共通して存在することに基づき、これら前駆体はカテリシジンと称するファミリーに分類された。
【0021】
カテリン様プレプロ領域は、ウシの75%から幾つかのブタ同属物の完全な同一性にいたるまで高度の種内同一性を示す。カテリン様プロピース(propiece)のC末端領域に集まっている4つの不変のシステインは、2つの分子内ジスルフィド結合を形成するように配列されており、分子に構造的な制約を付している。カテリン様プロ領域は、既知のチオールプロテアーゼ阻害機能を有するタンパク質であるシスタチンファミリーとは限られたホモロジーしか示さない。このことは、システインプロテイナーゼカテプシンL(カテリンの頭字語に基づく)の活性に対して幾つかのカテリシジンが穏やかな阻害作用しか奏しないことによってさらに支持される。このプロ配列に特異的な機能は確立されていないが、進化的な圧力がその保存へと向かわせたことは、該配列が重要な生物学的機能、たとえば、抗菌ペプチドの顆粒へのターゲティングや正しいタンパク質加水分解による成熟の援助を果たしていることを示唆している。
【0022】
カテリシジンのプレプロ領域は128〜143アミノ酸残基長であり、推定の29〜30残基のシグナルペプチドおよび99〜114残基のプロピースを含み、一方、C末端ドメインは12〜100残基長である。これらのプロペプチドが分泌されると限定タンパク質加水分解を受ける。ウシおよびブタの好中球ではカテリシジンはエラスターゼによって媒体される開裂によって放出され(Cole, Shiら、2001)、一方、ヒトのカテリシジンhCAP−18は細胞外でプロテイナーゼ3によって抗菌ペプチドLL−37にプロセシングされ(Sorensen, Follinら、2001)、共通のプロタンパク質からの活性な抗菌ペプチドの生成が関連する種で異なって生じることを示している。
【0023】
カテリシジンは好中球の二次顆粒で最初に見つかった(Gudmundsson, Agerberthら、1996)、(GudmundssonおよびAgerberth 1999)。それゆえ、カテリシジンは炎症液(inflammatory fluids)中に放出され、そこで比較的高濃度で見つかった(Agerberth, Grunewaldら、1999)、(GudmundssonおよびAgerberth 1999)。これまでにヒトで見つかった唯一のカテリシジンであるペプチドLL−37(hCAP−18/FALL−39)は、好中球の顆粒中に発現され、骨髄および精巣で生成される(Cowland, Johnsenら、1995)、(Sorensen, Arnljotsら、1997)。さらに、LL−37は、口、舌、食道、頚部および膣の鱗状上皮(Frohm Nilsson, Sandstedtら、1999)、肺上皮(Bals, Wangら、1998)および精巣上体の上皮(Malm, Sorensenら、2000)で構成的に発現される。さらに、高レベルのLL−37が精液プラスマ(seminal plasma)で認められた(Malm, Sorensenら、2000)。さらに、LL−37は炎症を起こした皮膚のケラチノサイトで誘発され(Frohm, Agerberthら、1997)、血漿のリポタンパク質画分(Sorensen, Brattら、1999)および気管支肺胞の洗浄液(Agerberth, Grunewaldら、1999)に高濃度で見つかっている。最近、NK、γδT細胞、B細胞および単球/マクロファージでのLL−37の発現が記載されている(Agerberth, Charoら、2000)。
【0024】
C末端に対応する成熟抗菌ペプチドは構造的に多様な配列であり(図1に示す、Popsueva, Zinovjevaら、1996から)、それらに与えられた個々の名前は以下のとおりである:
ウシカテリシジン(Storici, Tossiら、1996)、(Skerlavaj, Gennaroら、1996)、(Gennaro, Scocchiら、1998):Bac1(バクテネシン1)、Bac5、Bac7、インドリシジン(indolicidin)、BMAP−27(ウシ骨髄抗菌ペプチド27)およびBMAP−28;
ブタカテリシジン(Harwig, Kkryakovら、1995):PR−39(プロリン−アルギニンリッチ39アミノ酸ペプチド)、PMAP−36(ブタ骨髄抗菌ペプチド36)、PMAP−37、PMAP−23、プロテグリン(protegrins)、およびプロフェニン(prophenins);
ウサギカテリシジン:CAP18(カチオン性抗菌タンパク質18);
【0025】
ヒトカテリシジン(Cowland, Johnsenら、1995)、(Gudmundsson, Agerberthら、1996):hCAP−18/FALL−39/LL−37(ヒト抗菌タンパク質/C末端由来ドメインはFALL−39またはLL−37と呼ばれる);
マウスカテリシジン(Gallo, Kimら、1997)、(Popsueva, Zinovjevaら、1996):mCRAMP(マウスカテリン関連抗菌ペプチド)、MCLP(マウスカテリン様タンパク質);
ラットカテリシジン:rCRAMP(ラットカテリン関連抗菌ペプチド);
ヒツジカテリシジン(Mahoney, Leeら、1995)、(Bagella, Scocchiら、1995):SMAP29(ヒツジ骨髄抗菌ペプチド29)およびSMAP34。
カテリシジン以外にも動物およびヒトで同定されている抗菌ペプチドの他のファミリーが存在する:主としてセクロピン(cecropins)およびデフェンシン(GudmundssonおよびAgerberth 1999)、(Boman 2000)。
【0026】
デフェンシンは4kDaペプチドのファミリーであり、その活性は正味の陽イオン電荷およびその3D構造の両者に依存する。デフェンシンは、微生物膜を透過性にする多量体で電圧依存性の孔を形成する(GanzおよびLehrer 1994)、(GanzおよびLehrer 1999)。βデフェンシンはαデフェンシンと形状は似ているが、βデフェンシンの方がわずかに大きく、6つの保存されたシステイン残基の配置および連結性が異なっている(GanzおよびLehrer 1998)。
【0027】
ヒトのαデフェンシン(ヒト好中球ペプチド;HNP1−4)は主として好中球の顆粒で見つかっており、食作用を受けた微生物を殺すことに参画している(Lehrer, Lichtensteinら、1993)。さらに最近、ヒトでのこのファミリーの2つの成員、HD−5およびHD−6(ヒトαデフェンシン5および6)が、小腸陰窩にある特殊化された分泌細胞であるパーネト細胞によって構成的に生成されることがわかった。HD−5はまた、女性の生殖管でも構成的に生成される(GanzおよびLehrer 1999)。
【0028】
βデフェンシンの2つのクラスは、その発現パターンを比較することによって定めることができる。構成的に発現されるβデフェンシンは、上皮で発現されるヒトβデフェンシン1(hBD1)およびウシ好中球βデフェンシン(BNBD−1−13)(GanzおよびLehrer 1998)である。対照的に、ウシ舌抗菌ペプチド(LAP)(Schonwetter, Stolzenbergら、1995)、ウシ気管抗菌ペプチド(TAP)およびそのヒトホモログβデフェンシン2(hBD2)などのβデフェンシンの発現は、感染攻撃の際にアップレギュレーションされる(GanzおよびLehrer 1998)。誘導性の発現はまた、他の知られたヒトベータデフェンシンhBD−3およびhBD−4で記載されている(Harder, Bartelsら、2000)、(Garcia, Krauseら、2001)。
【0029】
抗菌ペプチドのさらなるクラスはセクロピンである。セクロピンは動物で最初に見つかった抗菌ペプチドであった。細菌が、ヤママユガHyalophora cecropiaの休眠中のさなぎでこれら化合物を誘発することが示された(Boman 1991)。その3D構造は、間にヒンジを挟んだ2つのαヘリックスからなる。これまでセクロピンは高等昆虫で見つかっており、哺乳動物のセクロピンはブタの腸から単離されている(Boman 2000)。セクロピン様ペプチドは、海綿動物、およびHelicobacter pyloriのリボソームタンパク質L1から単離されている(Putsep, Brandenら、1999)、(Putsep, Normarkら、1999)。
【0030】
炎症部位で非常に高濃度が記録されていることから(HancockおよびDiamond 2000)(たとえば、嚢胞性線維症の患者の痰では300μg/mlまたはそれ以上;舌背(dorsal tongue)では20〜100μg/ml;敗血症の個体の血漿では170μg/mlまで)、感染に対処するうえでのCAPの重要な役割を推定することができる。さらに、CAPは、粘膜および上皮表面、および消化管、肺、腎臓および皮膚で見つかっている。炎症の際のCAPの誘発は、炎症応答の補助および/または指令における主たる役割と相関付けられる。実際、上昇レベルのCAPは、多くの臨床および実験室誘導の感染および炎症状態で観察されている(HancockおよびDiamond 2000)。
【0031】
最近、プレプロデフェンシンを活性な成熟形にプロセシングするのに必要な単一の酵素が同定された。この単一の遺伝子(マトリリシン(matrilysin);マトリックス−メタロプロテイナーゼ7:MMP−7)を遺伝的に不活化すると活性なデフェンシンの産生が完全に阻害され、その結果、経口で導入した毒性細菌による感染に対する感受性が10倍増大することが観察された(Wilson, Ouelletteら、1999)。さらに、広範囲の動物実験および初期の臨床研究は、天然および非天然のCAPが、外部から加えたときに細菌および真菌による局所または全身感染に対して防御することを示した((HancockおよびDiamond 2000)、(Hancock 1999)に概説)。
【0032】
しかしながら、CAPの作用は微生物を殺すことを指令することに限られない。それよりも、CAPは、とりわけ免疫応答の質および有効性に影響を及ぼす様々なさらなる活性を有している。CAPは以下の事柄に関与していることが報告されている:
(a)リポ多糖(LPS)、リポテイコ酸(LTA)またはCpGなどの炎症刺激を放出する細菌菌体の初期溶解(HancockおよびDiamond 2000)、(HancockおよびScott 2000);
(b)LPSおよびLTAを中和し、かくしてマクロファージによるTNF−αおよびIL−6の産生を抑制する(=防腐活性)(Scott, Rosenbergerら、2000)、(Scott, Yanら、1999)、(Scott, Goldら、1999)、(Gough, Hancockら、1996);
【0033】
(c)肥満細胞の脱顆粒。αデフェンシンはヒスタミン放出および血管拡張を誘発することが示されている(Befus, Mowatら、1999)。さらに、hBD−2およびLL−37は、肥満細胞においてヒスタミン放出および細胞内カルシウム移動を誘発するが、hBD−1は誘発しないことが示されている。さらに、hBD−2は肥満細胞においてプロスタグランジンD2を産生させるが、LL−37およびhBD−1は産生させない(Niyonsaba, Someyaら、2001)。
【0034】
(d)組織プラスミノーゲンアクチベーターによるフィブリン溶解を抑制し、かくして細菌の拡散を低減する(Higazi, Ganzら、1996);
(e)繊維芽細胞の化学走性および増殖の促進による組織/創傷の修復(Gallo, Onoら、1994)、(ChanおよびGallo 1998);
(f)フリンやカテプシンなどのある種のプロテアーゼの阻害による組織傷害の抑制(Basak, Ernstら、1997)、(Van Wetering, Mannesse−Lazeromsら、1997);
(g)免疫抑制性コルチゾールの放出の抑制(HancockおよびDiamond 2000);
【0035】
(h)種々の免疫細胞集団の補給(recruitment)。αデフェンシンは気道上皮細胞においてIL−8産生を誘発し、好中球の補給に導くことが示されている(Van Wetering, Mannesse−Lazeromsら、1997)。さらに、αデフェンシンは、ナイーブなCD4+/CD45RA+およびCD8+T細胞に対しては化学走性活性を発揮するが、CD4+/CD45RO+メモリーT細胞に対しては発揮しないことが報告されている(Chertov, Michielら、1996)、(Yang, Chenら、2000)。同様に、αデフェンシンおよびβデフェンシンは、単球由来の未熟な樹状細胞の移動は誘発することができるが、単球および成熟樹状細胞の移動は誘発することができないことが示されている(Yang, Chertovら、1999)、(Yang, Chenら、2000)。さらに、このβデフェンシンの化学走性活性は、成熟樹状細胞ではなく未熟な樹状細胞上で発現されたケモカインレセプターの1つであるCCR6(ケモカインレセプター6)との相互作用によって媒体されることが示されている(Yang, Chertovら、1999)。
【0036】
ヒトLL−37やブタPR−39などのカテリシジンは、好中球に対して化学走性活性を発揮することが示されている(Agerberth, Charoら、2000)、(De, Chenら、2000)。さらに、LL−37は、CD4+T細胞に対しては化学走性活性を発揮するが、CD8+T細胞に対しては発揮しない(Agerberth, Charoら、2000)、(De, Chenら、2000)。さらに、LL−37は、ホルミルペプチドレセプター様1(FPRL1)を利用して、末梢血の単球、好中球およびCD4+T細胞の化学走性を誘発することが最近示された(De, Chenら、2000)。しかしながら、未熟な樹状細胞および成熟樹状細胞に対するLL−37の化学走性活性は観察されていない。これら知見は、未熟な樹状細胞への単球の分化に伴ってFPRL1発現は廃棄されるという事実によって支持された(Ynag, Chenら、2001)。しかしながら、FPRL1の発現は骨髄由来の細胞に限られることが記載されており、Tリンパ球については記載されていない(Murphy 1994)。それゆえ、好中球や単球と同様にTリンパ球や骨髄由来の細胞に対して化学走性活性を発揮するに際して、LL−37は異なるレセプターを利用しているようである。
【0037】
(i)獲得した全身免疫応答の促進。αデフェンシンと卵アルブミン(OVA)との鼻内送達は、C57BL/6マウスにおいてOVA特異的な血清IgG抗体応答を促進した(Lillard, Boyakaら、1999)。さらに、通常のアジュバントである水酸化アルミニウムに吸着したキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)をαデフェンシンと組み合わせて腹腔内投与すると、Balb/cマウスにおいてKLH特異的な抗体の産生が増大した。さらに、αデフェンシンは、同系の腫瘍抗原、リンパ腫Igイディオタイプに対する抗体応答を促進し、腫瘍攻撃に対する抵抗性も増大させた(Tani, Murphyら、2000)。
【0038】
獲得免疫応答の指示に重要な多様なCAP(たとえば、デフェンシン、カテリシジン)の様々な活性が今日まで記載されている。種々のCAPの共通する活性および多様な活性が明らかにされている。樹状細胞に対するそれらの化学走性活性に関して幾つかの明らかな相違が示されている。αデフェンシンおよびβデフェンシンは樹状細胞に対して化学走性を発揮するが、この特殊化された細胞型に対するカテリシジンの化学走性活性は欠如している。
【0039】
驚くべきことに、本発明の範囲内において、異なる種からのカテリシジン由来の抗菌ペプチド(ウシインドリシジン、ウシドデカペプチド、マウスmCRAMPおよびヒトLL−37)が、マウスおよびヒトの樹状細胞において抗原の取り込みを促進する能力を発揮することが示される。さらに、カテリシジン由来の抗菌ペプチドとともに腫瘍抗原を皮下投与すると、注射した腫瘍抗原に対する免疫応答が顕著に促進された。
【0040】
米国特許第5,837,248号にはデフェンシンペプチドによるT細胞化学走性の刺激が開示されているが、デフェンシンおよびCAP37/アズロシジン(azurocidin)以外の他のT細胞化学走性ペプチドは好中球に存在しないことが言及されている。
【0041】
しかしながら、抗菌ペプチドの多用なファミリーが同じ細胞型(たとえば、好中球、小腸パーネト細胞)に存在するけれども(GanzおよびLehrer 1999)、これら抗菌ペプチド間で重要な変異が存在する(このことは、ある1つのファミリーの特徴が必ずしも他のファミリーでも生じるとは限らないことを意味する)。一般に、この変異は、アミノ酸配列の発散によるばかりでなく、抗菌ペプチドをコードする局所的に発現された遺伝子産物の数および夥しさにも適用されると思われる。この変異の観点から、これらエフェクターが進化を通じて保存されてきた存在であることが明らかである。おそらく、抗菌ペプチドの変異は、その標的の特性:宿主−微生物相互作用に関する迅速な獲得進化変異を反映している。
【0042】
免疫応答の誘発は、リンパ器官で利用できる抗原に決定的に依存している。排出(draining)リンパ節に到達しない抗原に対する応答は存在しない(Zinkernagel, Ehlら、1997)。かくして免疫応答の開始はリンパ器官でしか起こらない。リンパ器官で抗原を負荷されたAPCとT細胞および/またはB細胞との最初の相互作用が免疫カスケードの開始を可能にする(Kurts, Heathら、1996)。
【0043】
これらを考慮すると、増大された免疫応答性は、単に注射した末梢部位から排出局所リンパ節へのワクチン抗原の移動の増大の結果である。このプロセスでは、樹状細胞やランゲルハンス細胞などの末梢に存在する天然の抗原提示細胞が中心的な役割を果たしている(Schijns 2000)。これらは「天然アジュバント」として記載される。なぜなら、これら末梢に存在する天然の抗原提示細胞は抗原を非常に有効に捕捉する用意のできた番人として殆どの組織に存在しており、抗原の捕捉はこれら細胞の二次リンパ器官への移動を誘発し、該リンパ器官で該細胞はナイーブなT細胞およびB細胞を初回抗原刺激することができるからである(Steinman 1991)。これら末梢に存在する天然の抗原提示細胞は、生きたまたは不活化したウイルスまたは細菌の接種に応答して組織傷害部位に速やかに補給される(McWilliam, Napoliら、1996)。
【0044】
セクロピンが同様のカテリシジン様構造特性(αヘリックスコンホメーション)に類似している事実にもかかわらず、セクロピンはカテリシジンとは対照的に抗原適用能(antigen pulsing capacity)は示さない(実施例参照)。カテリシジン由来の抗菌ペプチドが抗原適用能を有し、それゆえ免疫応答促進活性を有するのは驚くべきことである。このことは、異なるクラスの抗菌ペプチドが異なる機能を有すること、それゆえ、報告されたデフェンシンペプチドによるT細胞化学走性の刺激は、生得免疫と獲得免疫との間に同様の関連が存在することを当業者に示すものでないことを確認するものである。
【0045】
それゆえ、ともに炎症性組織で放出されるカテリシジンおよびデフェンシンは、異なる仕方で適合免疫応答を指令する。デフェンシンは樹状細胞を誘引することによって参画するけれども、カテリシジンは本発明で示されるように樹状細胞の活性化にとって中心となるものである。それゆえ、カテリシジンは免疫応答促進活性を媒体するうえでの中心的な成分であり、それゆえワクチン開発にとって非常に有効なアジュバントを構成する。
【0046】
今や驚くべきことに、カテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体が免疫応答促進活性を有すること、それゆえ非常に有効なアジュバントであることが本発明に従って示された。
【0047】
本発明の範囲において、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは、カルボキシ末端抗菌ペプチド(カテリシジン遺伝子の第四エクソンによって優先的にコードされるが該第四エクソンのみによってコードされるわけではない)に続いてカテリシジンのカテリン様プレプロ領域(カテリシジン遺伝子の最初の3つのエクソンによって優先的にコードされるが該3つのエクソンのみによってコードされるわけではない)を含むもの、またはその誘導体として理解される。カテリシジンプレプロ領域は、ウシで75〜87%の同一性およびブタのプレプロ領域で90〜97%の範囲の同一性(Zanetti, Gennaroら、1995)の高い種内同一性を有し、該領域はまた51〜65%の範囲(プログラムblastpを用いてhCAP−18と比較(Altschul, Maddenら、1997))の高い種間同一性を有するため、種内および種間のホモロジーを有している。
【0048】
このようにカテリシジンプレプロ領域の高い種内および種間でのタンパク質配列同一性が知られていることに鑑み、本発明では、カテリシジンプレプロ領域に対して45%以上(≧)、有利には60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上のタンパク質配列同一性を有するタンパク質またはタンパク質ドメインに由来し、それゆえカテリシジン由来の抗菌ペプチドとして理解されるべきこれらタンパク質の抗菌ドメインであるのであれば、全ての抗菌ペプチドをカテリシジン由来の抗菌ペプチドと称する。
【0049】
カテリシジン由来の抗菌ペプチドの例は、たとえば、PMAP−37、hCAP18、BMAP−27、CAP18、Bac5、Bac7、PR−39、インドリシジン、ウシドデカペプチド、プロテグリンPG−2などである。
抗菌ペプチドは、通常用いられるアッセイである最小阻害濃度アッセイ(MIC)で活性を示すときに抗菌性または殺菌性であるといわれる(GudmundssonおよびAgerberth 1999)、(Boman 2000)。
【0050】
一定範囲の微生物に対する物質のMICは、とりわけ正確な方法であるブロス希釈法により決定するのが好ましい。各物質の系列希釈を96ウエルプレート中、ルリア−ベルタニ(Luria−Bertani)培地で行う。各ウエルに104〜105コロニー形成単位/mlの被験生物10μlを接種する。プレートを37℃で36〜48時間インキュベートした後にMICを決定する。MICは、増殖を抑制する最低の抗菌濃度として扱われる。
【0051】
本発明の範囲において、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは、グラム陽性細菌および/またはグラム陰性細菌、真菌または原生動物に対して被験物質の500μM未満、好ましくは300μM未満、さらに好ましくは200μM未満、さらに好ましくは0.05〜160μMの範囲のMIC(Travis, Andersonら、2000)を示すときに抗菌性または殺菌性であるといわれる。
【0052】
本発明の範囲において、カテリシジン由来の抗菌ペプチドの誘導体は、たとえば、カテリシジン由来の抗菌ペプチドの断片、並びに置換、欠失、付加などの1またはそれ以上の変異を有するカテリシジン由来の抗菌ペプチド、および修飾したあらゆるカテリシジン由来の抗菌ペプチド、たとえば、塩、エステルなどを含む。好ましくは、本発明による所定のカテリシジン由来の抗菌ペプチドのアミノ酸の10%以下が置換、欠失または付加される。そのような変異は、標準的な知見に従って行う、たとえば、疎水性アミノ酸残基を他の疎水性アミノ酸残基で置換するなど。
【0053】
カテリシジン由来の抗菌ペプチドの誘導体は、MICが500μM未満、好ましくは300μM未満、さらに好ましくは200μM未満、さらに好ましくは0.05〜160μMの範囲である限りカテリシジン分子として理解されなければならない。本発明によるカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体の長さは重要ではない。長さは、上記MICを発揮する限り、たとえば5アミノ酸からそのような抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むタンパク質の長さまで、好ましくは10〜60アミノ酸であってよい。タンパク質は、たとえば、カテリシジン、たとえば、MCLP(マウスカテリン様タンパク質)、hCAP−18などである。本発明による分子はまた、天然のカテリシジン由来ペプチドに匹敵する、とりわけ同じかまたは一層優れた化学走性活性をも示すのが好ましい。
【0054】
ワクチンは、少なくとも1つのカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体と免疫応答が向けられた少なくとも1つの抗原とを含む。もちろん、ワクチンは所望の免疫応答に依存して2またはそれ以上の抗原を含んでいてよい。抗原はまた、免疫応答をさらに促進すべく修飾してよい。
【0055】
好ましくは、ウイルスまたは細菌病原体に由来する、真菌または寄生虫に由来するタンパク質またはペプチド、並びに腫瘍抗原(癌ワクチン)または自己免疫疾患において推定の役割を有する抗原を用いる(グリコシル化、脂質付加(lipidated)、糖脂質付加(glycolipidated)またはヒドロキシル化した抗原などの誘導体化抗原を含む)。さらに、炭水化物、脂質または糖脂質を抗原自体として用いてよい。誘導体化のプロセスとしては、病原体からの特定のタンパク質またはペプチドの精製、病原体の不活化並びにそのようなタンパク質またはペプチドのタンパク質加水分解もしくは化学的誘導体化または安定化が挙げられる。別のやり方として、病原体自体を抗原として使用してもよい。抗原は、ペプチドまたはタンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質またはそれらの混合物であるのが好ましい。
【0056】
好ましくは、抗原は、5〜60、好ましくは6〜30、とりわけ8〜11のアミノ酸残基からなるペプチドである。この長さの抗原は、T細胞を活性化するのに特に適していることがわかっている。抗原はさらに、A657/2000に従ってテールとカップリングすることができる。また、抗原はカテリシジン由来の抗菌ペプチドにカップリング、たとえば共有結合させることができる。もちろん、得られた化合物は天然に存在するカテリシジンであってはならない。
【0057】
本発明の組成物の成分の相対的な量は、個々の組成物の必要性に大きく依存する。好ましくは10ng〜1gの抗原およびカテリシジン由来の抗菌ペプチドを投与する。抗原/カテリシジン由来の抗菌ペプチドの好ましい量は、ワクチン接種当たり0.1〜1000μgの範囲の抗原および0.1〜1000μgのカテリシジン由来の抗菌ペプチドである。
本発明による組成物はさらに、緩衝剤、塩、安定化剤、抗酸化剤などの補助物質、または抗炎症剤や抗刺激剤(antinociceptive drugs)などの作用物質を含んでいてよい。
【0058】
本発明の組成物は、患者、たとえばワクチン接種候補者に、有効量で、たとえば1週間毎、2週間毎または1ヶ月毎の間隔で投与することができる。本発明の組成物で処置する患者は、繰り返しワクチン接種することもできるし、または1回だけワクチン接種することもできる。本発明の好ましい使用は、特定の抗原に対して保護することのない、とりわけヒトまたは動物の能動免疫処置である。
【0059】
本発明の組成物は、皮下、筋肉内、直腸内、静脈内、皮内、耳介内(intrapinnaly)、経皮並びに経口摂取により投与してよい。
ワクチンが1を超えるカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含んでいるなら、これらカテリシジン由来の抗菌ペプチドは抗原に対する免疫応答をさらに促進して強めるべく相互作用するであろう。
【0060】
もちろん、本発明によるワクチンは、たとえば他の薬理学的に許容しうる担体などのさらなる物質を含んでいてよい。本発明によるワクチンは、公知の方法に従って、たとえば静脈内ワクチン、DNAワクチン、経皮ワクチン、局所ワクチン、鼻内ワクチンおよびコンビネーションワクチンとして製剤化することができる。公知のワクチンの改良である投与量をワクチンの標準法により選択することができるが、公知のワクチンよりも低い投与量も同じ保護に対して可能であり、それゆえ好ましい。
好ましくは、ワクチンは貯蔵安定な形態で提供され、たとえば凍結乾燥して適当な再構成溶液と任意に組み合わせて提供される。
【0061】
好ましくは、カテリシジンは動物のカテリシジンである。本発明の範囲内において、「動物のカテリシジン」はヒトカテリシジン、とりわけ哺乳動物のカテリシジンを含む。とりわけカテリシジンがワクチンをデザインした動物種に由来するときは、これらカテリシジンに由来する抗菌ペプチドはその動物の免疫系によって認識されることはなく、かくして該動物においてカテリシジン由来の抗菌ペプチドに対する免疫応答を引き起こすリスクが低減するであろう。
【0062】
好ましい態様によれば、動物のカテリシジンはマウスカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号1に示す配列を含むのが好ましい。このワクチンがマウスに投与されると、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは認識されることはなく、該カテリシジン由来の抗菌ペプチドに対する免疫応答は引き起こされないであろう。しかしながら、このカテリシジン由来の抗菌ペプチドはまた、ヒトを含む他のいかなる動物に投与されるワクチンとしても適している。配列番号1に示す配列を含むカテリシジン由来の抗菌ペプチドは特に有効であることが示されている。
【0063】
好ましい態様によれば、カテリシジンはヒトカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号2に示す配列を含むのが好ましい。このワクチンがヒトに投与されると、該カテリシジン由来の抗菌ペプチドは免疫系によって認識されないので該カテリシジン由来の抗菌ペプチドに対する免疫応答は誘発されないであろう。配列番号2に示す配列を含むカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、少なくとも1つの抗原を含むワクチンに加えたときに特に有効であることが示されている。
【0064】
本発明の好ましい態様によれば、動物のカテリシジン由来の抗菌ペプチドはインドリシジンペプチド、好ましくはウシインドリシジンペプチドであり、配列番号3に示す配列を含むのが特に好ましい。
科学文献には、カルボキシ末端のグリシンを有する((Del Sal, Storiciら、1992)、(Zanetti, Gennaroら、1995)、(Zanetti, Gennaroら、1997))および有しない((Selsted, Novotnyら、1992)、(Falla, Karunaratneら、1996)、(AndreuおよびRivas 1998)、(HancockおよびDiamond 2000))ウシインドリシジンの様々な配列が公開されている。トリプトファンに富むウシインドリシジンがウシ好中球からアミド化トリデカペプチドとして精製されている(Selsted, Novotnyら、1992)。精製したインドリシジンには認められないさらなるグリシンが、導かれたcDNA配列のカルボキシル末端に存在するのが見つかっており、翻訳後のアミド化に関与しているものと思われる(Del Sal, Storiciら、1992)。
【0065】
本発明では、ウシインドリシジンは、C末端がアミノ化された形態の配列番号3に示す配列:NH2−ILPWKWPWWPWRR−CONH2を含む、ウシ好中球から精製したペプチド(Selsted, Novotnyら、1992)に従って合成するのが好ましい。このカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、ウシに対してデザインしたワクチンとして用いるのが特に好ましい、というのはこの動物種では該カテリシジン由来の抗菌ペプチドに対して免疫応答が誘発されないだろうからである。しかしながら、このカテリシジン由来の抗菌ペプチドはまた、ヒトを含む他のいかなる動物種に対するワクチンとしても適している。配列番号3に示す配列を含むカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、アジュバントとして特に有効であることがわかった。
【0066】
好ましい動物のカテリシジン由来の抗菌ペプチドは、配列番号4に示す配列を含むウシの環状および/または線状のドデカペプチドである。このカテリシジン由来の抗菌ペプチドはかなり短いが、ワクチンに含まれる抗原に対する免疫応答を有効に促進することが示された。
【0067】
理論的には、ワクチンは少なくとも2つの成分:(1)免疫応答を引き起こすべき抗原および(2)免疫応答を促進および/または指令すべきアジュバントを含んでいなければならない。免疫アジュバントは、もともと「特定の抗原と組み合わせて用いられ、抗原単独の場合よりも高い免疫を生成する物質」として記載された(SinghおよびO’Hagan 1999)。免疫促進能に関してアジュバントの高い多様性が得られることが知られている(Schijns 2000)。それゆえ、特異に作用するアジュバントをワクチン調製のために組み合わせた場合に改良された効能が記載されている。
【0068】
たとえば、皮膚リーシュマニア症の霊長類モデルにおける組換えヒトサイトカインIL−12および水酸化アルミニウムを用いた保護免疫が示された(Kenney, Sacksら、1999)。さらに、組換えマウスサイトカインIL−12の同時投与による樹状細胞ワクチンの改良された効能および腫瘍抗原ペプチド適用末梢血単核球での免疫の成功が示された(Fallarino, Uyttenhoveら、1999)。しかしながら、他のアジュバントと組み合わせて相乗作用の示されたのはサイトカインのみではなかった。たとえば、ポリ(I−C)またはサイトカインIFN−γ、IL−2およびIL−12とともにアジュバントしたジメチルジオクタデシルアンモニウムブロマイドが、結核サブユニットワクチンに対して免疫応答の変調作用を示す(Lindblad, Elhayら、1997)。
【0069】
好ましくは、ワクチンは少なくとも1つのさらなる免疫応答促進物質を含む。免疫応答促進物質としては、アジュバントとして作用することが知られているいかなる物質をも用いることができる。そのような物質は、WO93/19768に開示されている。他の物質は、たとえばポリリシンやポリアルギニンなどのポリカチオンである。他のアジュバントは、細胞の内部に入れるように充分に小さな粒子の形態、たとえばシリカゲルやデキストランビーズの形態の成分であってよい。このさらなる免疫応答促進物質の添加は、ワクチンをさらに一層有効なものとするであろう。
【0070】
好ましくは、免疫応答促進物質はサイトカインである。サイトカインは、B細胞、T細胞およびNK細胞、マクロファージ、樹状細胞および免疫応答の誘発に参画する他の様々な細胞を活性化および刺激するうえで重要な役割を果たしている。抗原に対する免疫応答をさらに促進するいかなるサイトカインをも用いることができる。
【0071】
本発明の他の側面は、少なくとも1つの抗原に対する免疫応答促進用アジュバントを調製するための、カテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体の使用である。本発明のこの側面に従っても、「カテリシジン由来の抗菌ペプチド」、「カテリシジン」、「誘導体」および「抗原」は上記と同様に理解されなければならない。
【0072】
好ましくは、アジュバントは抗原提示細胞(APC)において少なくとも1つの抗原の取り込みを促進する。抗原提示細胞において一層多くの抗原が取り込まれるので、T細胞などの抗原特異的な免疫エフェクター細胞の誘発に導くAPC誘発カスケードが促進される。それゆえ、APCにおける抗原の取り込みの促進はこれら抗原に対する免疫応答を促進する。
【0073】
好ましくは、カテリシジンは動物のカテリシジンである。特に好ましいのは、カテリシジンを投与した個体において免疫応答を引き起こさないカテリシジンである。
本発明の好ましい態様によれば、カテリシジンはマウスカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号1に示す配列を含むのが好ましい。
【0074】
さらなる有利な態様によれば、カテリシジンはヒトカテリシジンであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号2に示す配列を含むのが好ましい。
好ましくは、カテリシジン由来の抗菌ペプチドはインドリシジンペプチド、好ましくはウシインドリシジンペプチドであり、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは配列番号3に示す配列を含むのがさらに好ましい。
【0075】
好ましくは、カテリシジン由来の抗菌ペプチドは、配列番号4に示す配列を含むウシの環状および/または線状ドデカペプチドである。
これら上記のカテリシジン由来の抗菌ペプチドの利点は上記に記載したものと同じである。
本発明の好ましい態様によれば、アジュバントをワクチンに加える。もちろん、アジュバントを動物に直接、好ましくはワクチン接種をする前に投与することが可能である。しかしながら、アジュバントをワクチンに加え、ついでこれを動物に1度に投与するのが一層容易である。
【0076】
さらなる側面によれば、本発明は、特定の抗原または特定の抗原群に対してヒトを含む動物をワクチン接種する方法に関し、該方法は、ワクチン接種すべき該動物(ヒトを含む)に有効量の本発明のワクチンを投与することを含む。あるいは、該方法は、カテリシジン由来の抗菌ペプチドを含む有効量のアジュバントを投与することを含み、その後、ワクチンを投与する。
【0077】
本発明を下記実施例および図面によりさらに詳細に記載するが、本発明はこれらに限られるものではない。
図1には種々のカテリシジンタンパク質の類似性を示す。MCLP(マウスカテリン様タンパク質、配列番号5)の推論アミノ酸配列を、ウサギ(カテリン、配列番号6、およびCAP18、配列番号7)、ウシ(バクテネシン、配列番号8、Bac5、配列番号9、インドリシジン、配列番号10)、ヒト(FALL−39、配列番号11)からのペプチド抗生物質の前駆体配列とアラインメントする。これらは、本発明によるカテリシジン由来の抗菌ペプチドの例示である。システインは枠で囲んである。二塩基性のプロテアーゼプロセシング部位には下線を引いてある。アラインメントはプログラムDNA−SUNを用いて行った。
【0078】
図2はプロFALL−39/hCAP18についてのヒト遺伝子の配置を示す。3つの保存されたエクソン(e1〜e3)の全体の構造は、全てのカテリシジン遺伝子で同じである。変異する部分は常にエクソン4であり、このエクソンは、ヒト、ブタ、ウシ、ウサギ、マウスおよびヒツジで完全に異なるエフェクターをコードすることができ、抗菌ペプチドの最初の4つのクラスに属する。領域1は、NF−KB、NF−IL6、APRFなどの転写因子の制御部位を示す。矢印2はエクソンシャフリングの仮定部位を示し、領域3はシグナルペプチドを示し、領域4はカテリン由来の前駆体を示し、領域5は一次翻訳産物を示す。領域6はエクソン4の産物を示し、ここでFALL−39およびLL−37はhCAP−18に由来するC末端抗菌ペプチドの略語である。FALL−39のプロセシングは未だに行っていない。
【0079】
図3は、カテリシジンファミリーのプロペプチドの模式図を示す。C末端抗菌ペプチドの幾つかを示してあり、代表例は、αヘリックス配列(PAMP−37、配列番号12;hCAP18、配列番号13;BMAP−27、配列番号14;CAP18、配列番号15)、ProおよびArgに富む配列(Bac5、配列番号16;Bac7、配列番号17;PR−39、配列番号18)、Trpに富む配列(インドリシジン、配列番号3)、1つのジスルフィド架橋を含む配列(ドデカペプチド、配列番号4)、および2つのジスルフィド架橋を含む配列(プロテグリンPG−2、配列番号19)である。これらは、本発明によるカテリシジン由来の抗菌ペプチドの例示である。領域1は保存されたプレプロ領域を示し、領域2は変異する抗菌ドメインを示し、矢印3はシグナルペプチダーゼの部位を示し、矢印4はエラスターゼの開裂部位を示す。3つの領域(pre、pro、pep(tide))の下の数字は、これらペプチドのアミノ酸残基の数を示す。
【0080】
実施例
APC中への標識抗原ペプチドの取り込みを促進する種々のペプチドの能力(トランスローディングアッセイ; Buschle, Schmidt ら、 1997 )およびインビボでのペプチド特異的なT細胞応答の誘発の試験
多様なカテリシジンまたはセクロピン由来の抗菌ペプチドが抗原に対する「担体ペプチド」として機能しうるか否かを試験するため、APCをインビトロでトランスローディングすべく(これはAPC中への抗原の取り込みの促進を意味する)、蛍光標識したペプチドを抗原ペプチドとして用いた。これらを、多様なタイプおよび濃度の所定の「担体ペプチド」と混合した。
【0081】
これら多様な「担体ペプチド」のペプチド送達の有効性を比較するため、P388D1細胞(マウス単球−マクロファージ抗原提示細胞株;ATCC(TIB−63)から購入)、またはヒトCD1a陽性(ヒトHLA−A2陽性ドナーから、CD14+陽性PBMC)樹状細胞を、37℃で1時間、一定量のフルオレセイン標識ペプチドを単独かまたは所定の濃度の多様な「担体ペプチド」と組み合わせてインキュベートすることによって、APC中へのペプチド取り込みの量をモニターした。細胞をフローサイトメトリーによって分析する前に、細胞を充分に洗浄して遊離のペプチドを除去した。細胞によって取り込まれたフルオレセイン標識ペプチドの相対量をフローサイトメトリーにより測定した。
【0082】
実施例1
「担体ペプチド」としてのカテリシジン由来の抗菌ペプチドによるマウスマクロファージのトランスローディング
ウシインドリシジン(配列番号3)、線状または環状ウシドデカペプチド(配列番号4)、マウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)を、等価な量の正の荷電を示す濃度にて用いた。使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった(図4参照、蛍光強度は対数スケール):
【0083】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+63μgのウシインドリシジン(配列番号3)
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+75μgの環状ウシドデカペプチド(配列番号4)
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+75μgの線状ウシドデカペプチド(配列番号4*)
(6)2μgのFL−LFEAIEGFI+20μgのポリL−アルギニン
(7)2μgのFL−LFEAIEGFI+58μgのマウス抗菌ペプチド(配列番号1)
【0084】
ペプチドのみで処理した細胞では蛍光は疎らであると思われるが、カテリシジン由来の抗菌ペプチドを「担体ペプチド」としてトランスローディングした細胞では全て「トランスローディングした」細胞の強い蛍光が認められ、これら抗菌ペプチドが抗原ペプチドでAPCを非常に有効に適用しうることを示していた。試験した全てのカテリシジン由来の抗菌ペプチドはペプチドの送達を大きく促進し、APCへの良好な「担体ペプチド」として機能する。
【0085】
実施例2
セクロピン由来の抗菌ペプチドとカテリシジン由来の抗菌ペプチドとのトランスローディング活性の比較
ウシインドリシジン(配列番号3)、線状または環状ウシドデカペプチド(配列番号4)およびセクロピン様Helicobacter pylori RpL1由来のペプチド(Hp RpL1 2−20)(アミノ酸残基2〜20)((Putsep, Normarkら、1999)、(Boman 2000))を、等価な量の正の荷電を示す濃度にて用いた。使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった:
【0086】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+47μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+63μgのウシインドリシジン(配列番号3)
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+37.5μgの環状ウシドデカペプチド(配列番号4)
【0087】
カテリシジン由来の抗菌ペプチドが明瞭かつ有意のトランスローディング活性を示すのに対し、セクロピン由来の抗菌ペプチドはペプチド取り込みのわずかな促進のみを示す(図5参照、蛍光強度は対数スケール)。
【0088】
実施例3
増大濃度の線状ウシドデカペプチド
使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった:
【0089】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+18.75μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+37.5μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+75μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
(6)2μgのFL−LFEAIEGFI+150μgの線状ウシインドリシジン(配列番号4)
カテリシジン由来の抗菌ペプチド(ウシドデカペプチド:配列番号4)の量が増大するとともに適用作用もまた有意に増大することが示された(図6参照、蛍光強度は対数スケール)。
【0090】
実施例4
増大濃度のセクロピン様Hp RpL1由来抗菌
使用した抗原ペプチドは、インフルエンザ赤血球凝集素由来MHCクラスI(Kd)結合性ペプチド(Buschle, Schmidtら、1997)である。使用した抗原ペプチドおよび担体ペプチドの量は以下のとおりであった(図7参照、蛍光強度は対数スケール):
【0091】
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−LFEAIEGFI(ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−LFEAIEGFI+25μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(4)2μgのFL−LFEAIEGFI+50μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(5)2μgのFL−LFEAIEGFI+100μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
(6)2μgのFL−LFEAIEGFI+200μgのセクロピン様Hp RpL1 2−20
図7は、セクロピン由来の抗菌ペプチドの量の増大は適用作用を有効に増大させないことを示している。
【0092】
実施例5
LL−37によるMHCクラスIペプチドおよびMHCクラスIIペプチドのヒトDCへのトランスローディング
マウスAPCのみならずヒトAPCもカテリシジン由来の抗菌ペプチドによってトランスローディングされることを示すため、ヒトCD1a陽性(ヒトHLA−A2陽性ドナー由来、CD14+陽性PBMC)樹状細胞を標的APCとして用い、該APCをインフルエンザマトリックスタンパク質A由来のMHCクラスI結合性ペプチド(アミノ酸残基58〜67)(Morrison, Elvinら、1992)かまたは破傷風毒素由来のMHCクラスII結合性ペプチド(アミノ酸残基830〜843)(Valmori, Sabbatiniら、1994)で適用した。これら2つのクラスの抗原性フルオレセイン標識ペプチドを用いた。ヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドとしては公知のLL−37ペプチド(配列番号2)(Cowland, Johnsenら、1995)を用いた。
【0093】
使用したヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドLL−37および抗原ペプチドの濃度は以下に示すとおりである:
図8a:
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−GILGFVFTLT(MHCクラスI;ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−GILGFVFTLT(MHCクラスI)+30μgのLL−37(配列番号2)
図8b:
(1)ペプチドなし(細胞のみ)
(2)2μgのFL−QYIKANSKFIGITE(MHCクラスII;ペプチドのみ)
(3)2μgのFL−QYIKANSKFIGITE(MHCクラスII)+30μgのLL−37(配列番号2)
【0094】
図8aおよび図8bに示すように、ヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドLL−37は、両クラス(MHCクラスIおよびMHCクラスII)の抗原ペプチドでヒト樹状細胞を有意な程度まで適用した。
それゆえ、多様な種からのカテリシジン由来の抗菌ペプチドが異なる起源のAPCを適用する「担体ペプチド」として機能しうる。
【0095】
実施例6
ペプチド特異的なT細胞応答の誘発をインビボで促進する能力の試験
これらのカテリシジン由来の抗菌ペプチドがペプチド特異的なT細胞応答の誘発をインビボで促進する能力を試験するため、TRP−2(マウスチロシナーゼ関連タンパク質2:アミノ酸配列181〜188;VYDFFVWL)(Bloom, Perry−Lalleyら、1997)由来の抗原性メラノーマペプチド(100μg)と種々の「担体ペプチド」、すなわちポリL−アルギニン、マウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)またはウシインドリシジン(配列番号3)との混合物を用いて、1群4匹のマウス(C57BL/6、雌、8週齢、H−2b)の脇腹に3回(0日目、7日目、および14日目)皮下注射した。
【0096】
マウス群は以下の注射を受けた(マウス当たりの量を示す):
(1)100μgのVYDFFVWL
(2)100μgのVYDFFVWL+100μgのポリL−アルギニン
(3)100μgのVYDFFVWL+1000μgのマウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)
(4)100μgのVYDFFVWL+500μgのウシインドリシジン(配列番号3)
【0097】
3回目のワクチン接種の2週間後に、排出(draining)(鼠蹊部)リンパ節を取り出し、リンパ節細胞(図9)および脾細胞(図10)をTRP−2由来(マウスチロシナーゼ関連タンパク質2:アミノ酸配列181〜188:VYDFFVWL)ペプチドでエクスビボで活性化してIFN−γ産生特異細胞(それぞれ、100万の脾細胞およびリンパ節細胞当たりのIFN−γ ELISpotの数)をELISpotアッセイで決定した。
【0098】
図9は、ペプチドとウシインドリシジン(配列番号3)とを注射したマウスで、ペプチド単独またはペプチドとポリL−アルギニンとを注射したマウスに比べて一層多くのIFN−γ産生特異細胞という結果となったことを示す。
図10は、ペプチドとウシインドリシジン(配列番号3)とを注射したマウスおよびペプチドとマウスカテリシジン由来の抗菌ペプチド(配列番号1)とを注射したマウスの両者で、ペプチド単独またはペプチドとポリL−アルギニンとを注射したマウスに比べて一層多くのIFN−γ産生特異細胞という結果となったことを示す。
【0099】
この実施例は、カテリシジン由来の抗菌ペプチドがペプチド特異的なT細胞応答の誘発をインビボで促進することを明らかに示している。
要約すると、試験した全てのカテリシジン由来の抗菌ペプチドは高い「トランスローディング」および免疫変調能を示し、カテリシジン由来の抗菌ペプチドがAPCをインビトロおよびインビボにて抗原ペプチドで適用することができ、適合免疫応答を誘発するに際して抗原ペプチドの良好なアジュバント/「担体ペプチド」であることを示している。
【0100】
参照文献
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
【表6】
【0106】
【表7】
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【図1】カテリシジンタンパク質間の配列類似性を示す。
【図2】プロFALL−39/hCAP18についてのヒト遺伝子の配置を示す。
【図3】カテリシジンファミリーのプロペプチドの模式図を示す。
【図4】「担体ペプチド」としてのカテリシジン由来の抗菌ペプチドによるP388D1のトランスローディングを示す。
【図5】「担体ペプチド」としてのセクロピンまたはカテリシジン由来の抗菌ペプチドによるP388D1のトランスローディングを示す。
【図6】「担体ペプチド」としてのカテリシジン由来の抗菌ペプチド(ウシ線状ドデカペプチド配列番号4)の増大量によるP388D1のトランスローディングを示す。
【図7】「担体ペプチド」としてのセクロピン様Hp RpL1(アミノ酸残基2−20)由来の抗菌ペプチドの増大量によるP388D1のトランスローディングを示す。
【図8】LL−37によるMHCクラスIペプチドおよびMHCクラスIIペプチドのヒトDCへのトランスローディングを示す。
【図9】ワクチン接種したマウスにおけるIFN−γ産生細胞の量を示す。
【図10】ワクチン接種したマウスにおけるIFN−γ産生細胞の量を示す。
Claims (24)
- 少なくとも1つの抗原および少なくともカテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体を含むことを特徴とするワクチン。
- カテリシジンが動物のカテリシジンである、請求項1に記載のワクチン。
- カテリシジンがマウスカテリシジンである、請求項2に記載のワクチン。
- マウスカテリシジン由来の抗菌ペプチドが配列番号1に示す配列を含む、請求項3に記載のワクチン。
- カテリシジンがヒトカテリシジンである、請求項2に記載のワクチン。
- ヒトカテリシジン由来の抗菌ペプチドが配列番号2に記載の配列を含む、請求項5に記載のワクチン。
- 動物のカテリシジン由来の抗菌ペプチドがインドリシジンペプチドである、請求項2に記載のワクチン。
- インドリシジンペプチドがウシインドリシジンペプチドである、請求項7に記載のワクチン。
- ウシインドリシジンペプチドが配列番号3に示す配列を含む、請求項8に記載のワクチン。
- 動物のカテリシジン由来の抗菌ペプチドが、配列番号4に示す配列を含むウシの環状および/または線状ドデカペプチドである、請求項2に記載のワクチン。
- 少なくとも1つのさらなる免疫応答促進物質を含む、請求項1ないし10のいずれかに記載のワクチン。
- 免疫応答促進物質がサイトカインである、請求項11に記載のワクチン。
- 少なくとも1つの抗原に対する免疫応答促進用アジュバントを調製するための、カテリシジン由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体の使用。
- 該アジュバントが、抗原提示細胞(APC)における少なくとも1つの抗原の取り込みを促進する、請求項13に記載の使用。
- カテリシジンが動物のカテリシジンである、請求項13または14に記載の使用。
- カテリシジンがマウスカテリシジンである、請求項15に記載の使用。
- カテリシジン由来の抗菌ペプチドが配列番号1に示す配列を含む、請求項16に記載の使用。
- カテリシジンがヒトカテリシジンである、請求項15に記載の使用。
- カテリシジン由来の抗菌ペプチドが配列番号2に示す配列を含む、請求項18に記載の使用。
- カテリシジン由来の抗菌ペプチドがインドリシジンペプチドである、請求項15に記載の使用。
- カテリシジン由来の抗菌ペプチドがウシインドリシジンペプチドである、請求項20に記載の使用。
- カテリシジン由来の抗菌ペプチドが配列番号3に示す配列を含む、請求項21に記載の使用。
- カテリシジン由来の抗菌ペプチドが、配列番号4に示す配列を含むウシの環状および/または線状ドデカペプチドである、請求項15に記載の使用。
- アジュバントをワクチンに加える、請求項13ないし23のいずれかに記載の使用。
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