JP2004353577A - ピストンリングおよびそれを用いたピストン - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動抵抗が小さく、軽量で、放熱性の高いピストンリングおよびピストンを提供することを課題とする。
【解決手段】ピストンリング3は、少なくとも、樹脂リング部材31と、樹脂リング部材31よりも燃焼室7側において樹脂リング部材31と当接して配置される金属リング部材30と、を備え、樹脂リング部材31の軸方向肉厚は、金属リング部材30の軸方向肉厚よりも、大きく設定されていることを特徴とする。金属リング部材30は樹脂リング部材31よりも熱伝達係数が大きい。金属リング部材30と樹脂リング部材31とは当接している。このため、ピストンの持つ熱を、速やかに放熱することができる。また、樹脂リング部材31は金属リング部材30よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、ピストンリング3は、全てが金属製のピストンリングよりも、摺動抵抗が小さく軽量である。
【選択図】 図3
【解決手段】ピストンリング3は、少なくとも、樹脂リング部材31と、樹脂リング部材31よりも燃焼室7側において樹脂リング部材31と当接して配置される金属リング部材30と、を備え、樹脂リング部材31の軸方向肉厚は、金属リング部材30の軸方向肉厚よりも、大きく設定されていることを特徴とする。金属リング部材30は樹脂リング部材31よりも熱伝達係数が大きい。金属リング部材30と樹脂リング部材31とは当接している。このため、ピストンの持つ熱を、速やかに放熱することができる。また、樹脂リング部材31は金属リング部材30よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、ピストンリング3は、全てが金属製のピストンリングよりも、摺動抵抗が小さく軽量である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのシリンダ内面に摺接し燃焼室の気密性を確保するピストンリングおよびそれを用いたピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
図10に、エンジン用ピストンの軸方向断面図を示す。ピストン100は、シリンダ101内に往復動可能に配置されている。ピストン100頂面は、シリンダ101内面との間に、燃焼室102を区画している。ピストン100の外周面には、三列のリング溝103が形成されている。これらの三列のリング溝103には、ピストンリングが環装されている。具体的には、上段および中段の二列のリング溝103には、それぞれ炭素鋼製のコンプレッションリング104が環装されている。二列のコンプレッションリング104の外周面は、それぞれシリンダ101内周面に当接している。下段のリング溝103には、オイルリング105が環装されている。オイルリング105は、シリンダ101内周面からオイルの余剰分を掻き落としている。そして、シリンダ101内周面に適切な厚さのオイル膜を形成している。
【0003】
図11に、特許文献1に記載されている無潤滑圧縮機用のピストンリングの側面図を示す。ピストンリング900は、PTFE(ポリエチレンテレフタレート)ベースリング部材901、902と、熱硬化性樹脂リング部材903と、を備えている。熱硬化性樹脂リング部材903は、PTFEベースリング部材901、902間に介装されている。そして、この状態で、三つのリング部材が一列のリング溝に環装されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−323435号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前出図10に示すエンジン用ピストンにおいては、摺動抵抗の低減、軽量化が重要な課題の一つとなっている。このため、コンプレッションリング104の樹脂化が検討されている。ここで、前出図11のピストンリング900を構成するPTFEベースリング部材901、902と、熱硬化性樹脂リング部材903と、は全て樹脂製である。このため、前出図11のピストンリング900を、前出図10のコンプレッションリング104用として転用することも考えられる。
【0006】
しかしながら、樹脂の方が金属よりも熱伝達係数が小さい。このため、前出図11のピストンリング900をコンプレッションリング104用として転用すると、ピストン100の放熱性が低下する。したがって、燃焼行程により発生する燃焼熱により、ピストン100が過熱されるおそれがある。このように、燃焼行程について何ら考慮されていない無潤滑圧縮機用のピストンリングを、エンジン用のコンプレッションリングとして転用するのは困難である。
【0007】
本発明のピストンリングおよびピストンは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、摺動抵抗が小さく、軽量で、放熱性の高いピストンリングおよびピストンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決するため、本発明のピストンリングは、少なくとも、樹脂リング部材と、該樹脂リング部材よりも燃焼室側において該樹脂リング部材と当接して配置される金属リング部材と、を備え、該樹脂リング部材の軸方向肉厚は、該金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されていることを特徴とする。
【0009】
金属リング部材は樹脂リング部材よりも熱伝達係数が大きい。金属リング部材は樹脂リング部材よりも燃焼室側に配置されている。また、金属リング部材と樹脂リング部材とは当接している。このため、本発明のピストンリングによると、ピストンの持つ熱を、金属リング部材または樹脂リング部材を介して、速やかに放熱することができる。すなわち、本発明のピストンリングは、前出図10に示すような、金属製のピストンリング同様の放熱性を確保している。
【0010】
また、樹脂リング部材の軸方向肉厚は、金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されている。圧縮行程および燃焼行程においては、燃焼室からの圧力が、リング溝103の溝内周底面とピストンリング(コンプレッションリング)104内周面との間に加わる(前出図10参照)。このため、ピストンリング104がリング溝103の溝内周底面から浮き上がる。すなわち、ピストンリング104が拡径変形する。この拡径変形により、ピストンリング104外周面は、シリンダ101内周面に強く押し付けられる。
【0011】
拡径変形量は、ピストンリング104内周面に加わる荷重に比例する。すなわち、ピストンリング104内周面の面積が大きい方が、面積が小さいよりも、拡径変形しやすい。
【0012】
この点、本発明のピストンリングによると、樹脂リング部材の軸方向肉厚が、金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されている。すなわち、樹脂リング部材の方が金属リング部材よりも、内周面の面積が大きい。このため、樹脂リング部材の方が拡径変形しやすい。つまり、樹脂リング部材の方がシリンダ内周面に強く押し付けられる。
【0013】
ここで、樹脂リング部材は金属リング部材よりも摺動抵抗が小さい。したがって、本発明のピストンリングによると、摺動抵抗の小さい樹脂リング部材が、金属リング部材に優先して、シリンダ内周面に押し付けられる。このため、本発明のピストンリングによると、摺動抵抗が小さくなる。また、これに伴いシリンダ内周面の摩耗量も小さくなる。
【0014】
(2)好ましくは、前記樹脂リング部材および前記金属リング部材は、それぞれ合口部を有し、該樹脂リング部材および該金属リング部材は、該合口部同士が互い違いになるように配置されている構成とする方がよい。本構成によると、合口部同士がピストン往復動方向に連通しにくい。このため、合口部を介して、ブローバイガスが漏出するおそれが小さい。したがって、ピストン本体に組み付けるピストンリングの配置数が少なくても、燃焼室の気密性を確保することができる。
【0015】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記樹脂リング部材および前記金属リング部材のうち一方は、他方の前記合口部に係合する回り止め凸部を有する構成とする方がよい。
【0016】
例えば、ピストンの往復動などにより、樹脂リング部材や金属リング部材が回動する場合がある。この場合、当初、合口部同士が互い違いになるようにピストンリングを組み付けても、回動により、合口部同士がピストン往復動方向に連通してしまうおそれがある。
【0017】
この点、本構成によると、樹脂リング部材および金属リング部材は、回り止め凸部と合口部とが係合するように配置されている。このため、樹脂リング部材と金属リング部材とは、互いに相対的に回動しない。したがって、合口部同士がピストン往復動方向に連通してしまうおそれがない。
【0018】
(4)また、上記課題を解決するため、本発明のピストンは、エンジンのシリンダ内を往復動し、該シリンダ内面とともに燃焼室を区画するピストン本体と、該ピストン本体に環装され、該燃焼室の気密性を確保する複数のピストンリングと、を備えてなるピストンであって、前記ピストン本体は、金属部と樹脂部とを有し、該金属部は、前記燃焼室に表出する燃焼室側表出部を有し、複数の前記ピストンリングのうち少なくとも一つのピストンリングは、少なくとも、樹脂リング部材と、該樹脂リング部材よりも前記燃焼室側において該樹脂リング部材と当接して配置される金属リング部材と、を有し、該金属リング部材と該金属部とは、当接して配置されることを特徴とする。
【0019】
ピストン本体は、金属部と樹脂部とを有する。このうち金属部は、燃焼室に表出する燃焼室側表出部を有する。また、複数のピストンリング(コンプレッションリング、オイルリングなど)のうち少なくとも一つのピストンリングは、樹脂リング部材と金属リング部材とを有する。このうち金属リング部材は、金属部と当接している。燃焼室からの燃焼熱は、燃焼室側表出部→金属部内→金属リング部材(または樹脂リング部材)を介して、放熱される。これら伝熱部材のうち、樹脂リング部材以外は熱伝達係数の大きい金属製である。このため、本発明のピストンは、前出図10に示すような、金属製のコンプレッションリング104のみを持つピストン同様の放熱性を確保している。
【0020】
また、樹脂リング部材は金属リング部材よりも摺動抵抗が小さく軽量である。同様に、樹脂部は金属部よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、本発明のピストンは摺動抵抗が小さく軽量である。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記金属部は、さらに、前記シリンダ内において前記燃焼室と仕切られたクランク室に表出するクランク室側表出部を有する構成とする方がよい。
【0022】
本構成によると、燃焼室からの燃焼熱は、燃焼室側表出部→金属部内→クランク室側表出部を介して、クランク室にも放熱される。このため、燃焼熱を放熱する放熱経路が一つ多くなる。したがって、本構成によると、さらに放熱性が向上する。併せて、本構成の放熱経路は、熱伝達係数の大きい金属部のみに形成されている。この点においても、本構成によると、さらに放熱性が向上する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のピストンリングおよびピストンの実施の形態について説明する。
【0024】
(1)第一実施形態
まず、本実施形態のピストンリングおよびピストンの構成について説明する。図1に、本実施形態のピストンの組み付け図を示す。図2に、本実施形態のピストンの斜視図を示す。図3に、本実施形態のピストンの分解斜視図を示す。図4に、図2のI−I断面図を示す。
【0025】
これらの図に示すように、ピストン1は、エンジンのシリンダ5内に配置されている。ピストン1頂面とシリンダ5内面との間には、燃焼室7が区画されている。一方、ピストン1下部とシリンダ5内面との間には、燃焼室7から隔離されたクランク室8が区画されている。ピストン1は、コンロッド6の上端に枢支されている。コンロッド6の下端は、クランクピン(図略)に枢支されている。ピストン1は、ピストン本体2とコンプレッションリング3とオイルリング4とを備えている。コンプレッションリング3は、請求項1〜6のピストンリングに含まれる。また、オイルリング4は、請求項5、6のピストンリングに含まれる。
【0026】
ピストン本体2は、金属部20と樹脂部21とを備えている。金属部20は、アルミニウム合金製であって円板状を呈している。金属部20の下面ほぼ中央には、突起200が形成されている。突起200は、根本から先端(上から下)に向かって拡径する円柱状を呈している。突起200の先端には、クランク室8に表出するクランク室側表出部201が配置されている。一方、金属部20の頂面全体には、燃焼室7に表出する燃焼室側表出部202が配置されている。
【0027】
樹脂部21は、PF(フェノールフォルムアルデヒドレジン)製であって下方に開口する有底円筒状つまりカップ状を呈している。樹脂部21の頂底壁ほぼ中央には、上記突起200がインサート成形により固定されている。樹脂部21の胴部には、内周側に突出するボス部210が形成されている。ボス部210は、180°離間して合計二つ配置されている。この一対のボス部210が、前記コンロッド6上端に枢支されている。樹脂部21外周面の頂部には、頂部リング溝211が周設されている。また、樹脂部21外周面の胴部には、胴部リング溝212が周設されている。前記オイルリング4は、胴部リング溝212に環装されている。
【0028】
コンプレッションリング3は、頂部リング溝211に環装されている。コンプレッションリング3は、シリンダ5内周面に当接している。コンプレッションリング3は、PF製の樹脂リング部材31と、炭素鋼製の金属リング部材30とを備えている。
【0029】
金属リング部材30は、合口部300を備えている。樹脂リング部材31は、金属リング部材30の下方に並置されている。樹脂リング部材31上面と金属リング部材30下面とは当接している。樹脂リング部材31は、合口部310と回り止め凸部311とを備えている。回り止め凸部311は、樹脂リング部材31上面から突設されている。回り止め凸部311は、前記金属リング部材30の合口部300と係合している。ここで、樹脂リング部材31の合口部310は、回り止め凸部311と180°離間して配置されている。したがって、金属リング部材30の合口部300と、樹脂リング部材31の合口部310とは、180°離間して、互い違いに配置されている。
【0030】
次に、本実施形態のピストンリングおよびピストンの作用について説明する。まず、燃焼熱の放熱性について説明する。前出図4において白抜き矢印で示すように、燃焼室7からの燃焼熱は、燃焼室側表出部202を介して、金属部20内に伝達する。金属部20は、熱伝達係数の大きいアルミニウム合金製である。このため、燃焼熱は速やかに金属部20内を伝達する。金属部20内を伝達した燃焼熱は、クランク室側表出部201を介して、クランク室8に放出される。すなわち、燃焼熱は、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→クランク室側表出部201→クランク室8の順に伝達する。
【0031】
図5に、図4円A内の拡大図を示す。なお、図5に示すのは、吸入行程および排気行程のピストンの状態である。図中、白抜き矢印で示すように、燃焼室7からの燃焼熱は、燃焼室側表出部202を介して、金属部20内に伝達する。金属部20内を伝達した燃焼熱は、金属リング部材30に伝達する。金属リング部材30内を伝達した燃焼熱は、樹脂リング部材31に伝達する。すなわち、燃焼熱は、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→金属リング部材30(または樹脂リング部材31)の順に伝達する。そして、主に金属リング部材30からシリンダ内周面に熱を逃がすとともに、樹脂リング部材31からもシリンダ内周面に熱を逃がしている。
【0032】
次に、摺動抵抗について説明する。図6に、図4円A内の拡大図を示す。なお、図6に示すのは、圧縮行程および燃焼行程のピストンの状態である。図中、白抜き矢印で示すように、燃焼室7からの圧力は、頂部リング溝211内に流入する。そして、金属リング部材30および樹脂リング部材31の内周面に作用する。具体的には、燃焼室7からの圧力は、金属リング部材30および樹脂リング部材31を拡径変形させ、シリンダ5内周面に当接させる方向に作用する。ここで、圧力が作用する内周面の面積が大きい方が、よりシリンダ5内周面に対する当接力が大きくなる。すなわち、リング部材内周面の面積と、シリンダ5内周面に対する当接力とは比例する。したがって、リング部材の軸方向肉厚と、シリンダ5内周面に対する当接力とは比例する。図に示すように、樹脂リング部材31の軸方向肉厚W1は、金属リング部材30の軸方向肉厚W2よりも、大きく設定されている。このため、樹脂リング部材31のシリンダ5内周面に対する当接力は、金属リング部材30のシリンダ5内周面に対する当接力よりも大きい。すなわち、PF製で、より摺動抵抗の小さい樹脂リング部材31の方が、金属リング部材30よりも、強い力でシリンダ5内周面に押し付けられる。
【0033】
次に、本実施形態のピストンリングおよびピストンの効果について説明する。本実施形態のコンプレッションリング3およびピストン1によると、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→金属リング部材30(または樹脂リング部材31)を介して、燃焼熱を速やかに放熱することができる。このため、放熱性が高い。
【0034】
また、本実施形態のピストン1によると、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→クランク室側表出部201→クランク室8を介して、燃焼熱を速やかに放熱することができる。この点においても、放熱性が高い。
【0035】
また、樹脂リング部材31は金属リング部材30よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、本実施形態のコンプレッションリング3は、前出図10のコンプレッションリング104のような全てが金属製のコンプレッションリングよりも、摺動抵抗が小さく軽量である。
【0036】
また、樹脂リング部材31および金属リング部材30は、合口部310、300同士が180°互い違いになるように配置されている。このため、ブローバイガスが漏出するおそれが小さい。したがって、本実施形態のピストン1によると、前出図10に示すように、コンプレッションリング104を二列に配置しなくても、燃焼室7の気密性を確保することができる。
【0037】
また、金属リング部材30の合口部300と、樹脂リング部材31の回り止め凸部311とは係合している。このため、樹脂リング部材31と金属リング部材30とは、互いに相対的に回動しない。したがって、合口部310、300同士がピストン軸方向に連通してしまうおそれがない。
【0038】
また、樹脂リング部材31の軸方向肉厚W1は、金属リング部材30の軸方向肉厚W2よりも、大きく設定されている。このため、樹脂リング部材31の方が金属リング部材30よりも拡径変形しやすい。つまり、摺動抵抗の小さい樹脂リング部材31の方が、シリンダ5内周面に強く押し付けられる。したがって、この点においても、本実施形態のコンプレッションリング3は摺動抵抗が小さい。また、これに伴いシリンダ5内周面の摩耗量も小さい。
【0039】
また、樹脂リング部材31は金属リング部材30よりも摺動抵抗が小さく軽量である。同様に、樹脂部21は金属部20よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、本実施形態のピストン1は、従来のピストンよりも、摺動抵抗が小さく軽量である。
【0040】
また、本実施形態のピストン1によると、金属部20の突起200が、樹脂部21に対し、アンダーカット状に作用している。このため、突起200が樹脂部21から脱落しにくい。したがって、金属部20と樹脂部21との接合性が高い。
【0041】
(2)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、クランク室側表出部に放熱溝が配置されている点である。また、樹脂部カップ内周面に放熱リブが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0042】
図7に、本実施形態のピストンの下面図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、突起200先端のクランク室側表出部201には、放熱溝203が凹設されている。放熱溝203は、放射状に合計八つ配置されている。また、樹脂部21カップ内周面からは、放熱リブ213が突設されている。放熱リブ213は、ピストン軸方向(紙面表裏方向)に延在している。放熱リブ213は、一対のボス部210を挟んで両側に、五つずつ配置されている。
【0043】
本実施形態のピストン1は第一実施形態のピストンと同様の効果を有する。また、本実施形態のピストン1には、放熱溝203および放熱リブ213が配置されている。すなわち、本実施形態のピストン1は、放熱溝203および放熱リブ213を配置した分だけ伝熱面積が大きい。したがって、本実施形態のピストン1は、より放熱性が高い。
【0044】
(3)第三実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、コンプレッションリングが、一対の金属リング部材と単一の樹脂リング部材とから構成されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0045】
図8に、本実施形態のピストンリングの拡大断面図を示す。なお、図5と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、頂部リング溝211には、一対の金属リング部材30、32が配置されている。樹脂リング部材31は、これら一対の金属リング部材30、32の間に介装されている。
【0046】
本実施形態のコンプレッションリング3は第一実施形態のコンプレッションリングと同様の効果を有する。また、本実施形態のコンプレッションリング3によると、新たに金属リング部材32を配置した分だけ、さらに放熱性が向上する。
【0047】
(4)第四実施形態
本実施形態と第二実施形態との相違点は、樹脂部カップ上底面に放熱リブが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0048】
図9に、本実施形態のピストンの下面図を示す。なお、図7と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、樹脂部21カップ上底面からは、放熱リブ214が突設されている。放熱リブ214は、放射状および弧状に配置されている。放射状に配置された方の放熱リブ214は、放熱リブ213とつながっている。
【0049】
本実施形態のピストン1は第二実施形態のピストンと同様の効果を有する。また、本実施形態のピストン1には、放熱溝203および放熱リブ213に加えて、さらに放熱リブ214が配置されている。すなわち、本実施形態のピストン1は、放熱リブ214を配置した分だけ伝熱面積が大きい。したがって、本実施形態のピストン1は、より放熱性が高い。
【0050】
(5)その他
以上、本発明のピストンリングおよびピストンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的、改良的形態で実施することも可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、金属リング部材30、32を、炭素鋼により形成したが、例えばステンレス鋼、ばね鋼などにより形成してもよい。また、上記実施形態においては、樹脂リング部材31を、PFにより形成したが、例えばPI(ポリイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)などにより形成してもよい。同様に、樹脂部21を、例えばPI、PBIなどにより形成してもよい。また、金属部20と樹脂部21との接合方法は特に限定しない。例えば、ボルト締めなどにより接合してもよい。また、樹脂部21の頂面に金属膜を蒸着し、これを金属部20としてもよい。
【0052】
【発明の効果】
本発明によると、摺動抵抗が小さく、軽量で、放熱性の高いピストンリングおよびピストンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一実施形態のピストンの組み付け図である。
【図2】第一実施形態のピストンの斜視図である。
【図3】第一実施形態のピストンの分解斜視図である。
【図4】図2のI−I断面図である。
【図5】図4円A内の拡大図である。
【図6】図4円A内の拡大図である。
【図7】第二実施形態のピストンの下面図である。
【図8】第三実施形態のピストンリングの拡大断面図である。
【図9】第四実施形態のピストンの下面図である。
【図10】従来のエンジン用ピストンの軸方向断面図である。
【図11】無潤滑圧縮機用のピストンリングの側面図である。
【符号の説明】
1:ピストン、2:ピストン本体、20:金属部、200:突起、201:クランク室側表出部、202:燃焼室側表出部、203:放熱溝、21:樹脂部、210:ボス部、211:頂部リング溝、212:胴部リング溝、213:放熱リブ、214:放熱リブ、3:コンプレッションリング(ピストンリング)、30:金属リング部材、300:合口部、31:樹脂リング部材、310:合口部、311:回り止め凸部、32:金属リング部材、4:オイルリング(ピストンリング)、5:シリンダ、6:コンロッド、7:燃焼室、8:クランク室。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのシリンダ内面に摺接し燃焼室の気密性を確保するピストンリングおよびそれを用いたピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】
図10に、エンジン用ピストンの軸方向断面図を示す。ピストン100は、シリンダ101内に往復動可能に配置されている。ピストン100頂面は、シリンダ101内面との間に、燃焼室102を区画している。ピストン100の外周面には、三列のリング溝103が形成されている。これらの三列のリング溝103には、ピストンリングが環装されている。具体的には、上段および中段の二列のリング溝103には、それぞれ炭素鋼製のコンプレッションリング104が環装されている。二列のコンプレッションリング104の外周面は、それぞれシリンダ101内周面に当接している。下段のリング溝103には、オイルリング105が環装されている。オイルリング105は、シリンダ101内周面からオイルの余剰分を掻き落としている。そして、シリンダ101内周面に適切な厚さのオイル膜を形成している。
【0003】
図11に、特許文献1に記載されている無潤滑圧縮機用のピストンリングの側面図を示す。ピストンリング900は、PTFE(ポリエチレンテレフタレート)ベースリング部材901、902と、熱硬化性樹脂リング部材903と、を備えている。熱硬化性樹脂リング部材903は、PTFEベースリング部材901、902間に介装されている。そして、この状態で、三つのリング部材が一列のリング溝に環装されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−323435号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前出図10に示すエンジン用ピストンにおいては、摺動抵抗の低減、軽量化が重要な課題の一つとなっている。このため、コンプレッションリング104の樹脂化が検討されている。ここで、前出図11のピストンリング900を構成するPTFEベースリング部材901、902と、熱硬化性樹脂リング部材903と、は全て樹脂製である。このため、前出図11のピストンリング900を、前出図10のコンプレッションリング104用として転用することも考えられる。
【0006】
しかしながら、樹脂の方が金属よりも熱伝達係数が小さい。このため、前出図11のピストンリング900をコンプレッションリング104用として転用すると、ピストン100の放熱性が低下する。したがって、燃焼行程により発生する燃焼熱により、ピストン100が過熱されるおそれがある。このように、燃焼行程について何ら考慮されていない無潤滑圧縮機用のピストンリングを、エンジン用のコンプレッションリングとして転用するのは困難である。
【0007】
本発明のピストンリングおよびピストンは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、摺動抵抗が小さく、軽量で、放熱性の高いピストンリングおよびピストンを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決するため、本発明のピストンリングは、少なくとも、樹脂リング部材と、該樹脂リング部材よりも燃焼室側において該樹脂リング部材と当接して配置される金属リング部材と、を備え、該樹脂リング部材の軸方向肉厚は、該金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されていることを特徴とする。
【0009】
金属リング部材は樹脂リング部材よりも熱伝達係数が大きい。金属リング部材は樹脂リング部材よりも燃焼室側に配置されている。また、金属リング部材と樹脂リング部材とは当接している。このため、本発明のピストンリングによると、ピストンの持つ熱を、金属リング部材または樹脂リング部材を介して、速やかに放熱することができる。すなわち、本発明のピストンリングは、前出図10に示すような、金属製のピストンリング同様の放熱性を確保している。
【0010】
また、樹脂リング部材の軸方向肉厚は、金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されている。圧縮行程および燃焼行程においては、燃焼室からの圧力が、リング溝103の溝内周底面とピストンリング(コンプレッションリング)104内周面との間に加わる(前出図10参照)。このため、ピストンリング104がリング溝103の溝内周底面から浮き上がる。すなわち、ピストンリング104が拡径変形する。この拡径変形により、ピストンリング104外周面は、シリンダ101内周面に強く押し付けられる。
【0011】
拡径変形量は、ピストンリング104内周面に加わる荷重に比例する。すなわち、ピストンリング104内周面の面積が大きい方が、面積が小さいよりも、拡径変形しやすい。
【0012】
この点、本発明のピストンリングによると、樹脂リング部材の軸方向肉厚が、金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されている。すなわち、樹脂リング部材の方が金属リング部材よりも、内周面の面積が大きい。このため、樹脂リング部材の方が拡径変形しやすい。つまり、樹脂リング部材の方がシリンダ内周面に強く押し付けられる。
【0013】
ここで、樹脂リング部材は金属リング部材よりも摺動抵抗が小さい。したがって、本発明のピストンリングによると、摺動抵抗の小さい樹脂リング部材が、金属リング部材に優先して、シリンダ内周面に押し付けられる。このため、本発明のピストンリングによると、摺動抵抗が小さくなる。また、これに伴いシリンダ内周面の摩耗量も小さくなる。
【0014】
(2)好ましくは、前記樹脂リング部材および前記金属リング部材は、それぞれ合口部を有し、該樹脂リング部材および該金属リング部材は、該合口部同士が互い違いになるように配置されている構成とする方がよい。本構成によると、合口部同士がピストン往復動方向に連通しにくい。このため、合口部を介して、ブローバイガスが漏出するおそれが小さい。したがって、ピストン本体に組み付けるピストンリングの配置数が少なくても、燃焼室の気密性を確保することができる。
【0015】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記樹脂リング部材および前記金属リング部材のうち一方は、他方の前記合口部に係合する回り止め凸部を有する構成とする方がよい。
【0016】
例えば、ピストンの往復動などにより、樹脂リング部材や金属リング部材が回動する場合がある。この場合、当初、合口部同士が互い違いになるようにピストンリングを組み付けても、回動により、合口部同士がピストン往復動方向に連通してしまうおそれがある。
【0017】
この点、本構成によると、樹脂リング部材および金属リング部材は、回り止め凸部と合口部とが係合するように配置されている。このため、樹脂リング部材と金属リング部材とは、互いに相対的に回動しない。したがって、合口部同士がピストン往復動方向に連通してしまうおそれがない。
【0018】
(4)また、上記課題を解決するため、本発明のピストンは、エンジンのシリンダ内を往復動し、該シリンダ内面とともに燃焼室を区画するピストン本体と、該ピストン本体に環装され、該燃焼室の気密性を確保する複数のピストンリングと、を備えてなるピストンであって、前記ピストン本体は、金属部と樹脂部とを有し、該金属部は、前記燃焼室に表出する燃焼室側表出部を有し、複数の前記ピストンリングのうち少なくとも一つのピストンリングは、少なくとも、樹脂リング部材と、該樹脂リング部材よりも前記燃焼室側において該樹脂リング部材と当接して配置される金属リング部材と、を有し、該金属リング部材と該金属部とは、当接して配置されることを特徴とする。
【0019】
ピストン本体は、金属部と樹脂部とを有する。このうち金属部は、燃焼室に表出する燃焼室側表出部を有する。また、複数のピストンリング(コンプレッションリング、オイルリングなど)のうち少なくとも一つのピストンリングは、樹脂リング部材と金属リング部材とを有する。このうち金属リング部材は、金属部と当接している。燃焼室からの燃焼熱は、燃焼室側表出部→金属部内→金属リング部材(または樹脂リング部材)を介して、放熱される。これら伝熱部材のうち、樹脂リング部材以外は熱伝達係数の大きい金属製である。このため、本発明のピストンは、前出図10に示すような、金属製のコンプレッションリング104のみを持つピストン同様の放熱性を確保している。
【0020】
また、樹脂リング部材は金属リング部材よりも摺動抵抗が小さく軽量である。同様に、樹脂部は金属部よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、本発明のピストンは摺動抵抗が小さく軽量である。
【0021】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記金属部は、さらに、前記シリンダ内において前記燃焼室と仕切られたクランク室に表出するクランク室側表出部を有する構成とする方がよい。
【0022】
本構成によると、燃焼室からの燃焼熱は、燃焼室側表出部→金属部内→クランク室側表出部を介して、クランク室にも放熱される。このため、燃焼熱を放熱する放熱経路が一つ多くなる。したがって、本構成によると、さらに放熱性が向上する。併せて、本構成の放熱経路は、熱伝達係数の大きい金属部のみに形成されている。この点においても、本構成によると、さらに放熱性が向上する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のピストンリングおよびピストンの実施の形態について説明する。
【0024】
(1)第一実施形態
まず、本実施形態のピストンリングおよびピストンの構成について説明する。図1に、本実施形態のピストンの組み付け図を示す。図2に、本実施形態のピストンの斜視図を示す。図3に、本実施形態のピストンの分解斜視図を示す。図4に、図2のI−I断面図を示す。
【0025】
これらの図に示すように、ピストン1は、エンジンのシリンダ5内に配置されている。ピストン1頂面とシリンダ5内面との間には、燃焼室7が区画されている。一方、ピストン1下部とシリンダ5内面との間には、燃焼室7から隔離されたクランク室8が区画されている。ピストン1は、コンロッド6の上端に枢支されている。コンロッド6の下端は、クランクピン(図略)に枢支されている。ピストン1は、ピストン本体2とコンプレッションリング3とオイルリング4とを備えている。コンプレッションリング3は、請求項1〜6のピストンリングに含まれる。また、オイルリング4は、請求項5、6のピストンリングに含まれる。
【0026】
ピストン本体2は、金属部20と樹脂部21とを備えている。金属部20は、アルミニウム合金製であって円板状を呈している。金属部20の下面ほぼ中央には、突起200が形成されている。突起200は、根本から先端(上から下)に向かって拡径する円柱状を呈している。突起200の先端には、クランク室8に表出するクランク室側表出部201が配置されている。一方、金属部20の頂面全体には、燃焼室7に表出する燃焼室側表出部202が配置されている。
【0027】
樹脂部21は、PF(フェノールフォルムアルデヒドレジン)製であって下方に開口する有底円筒状つまりカップ状を呈している。樹脂部21の頂底壁ほぼ中央には、上記突起200がインサート成形により固定されている。樹脂部21の胴部には、内周側に突出するボス部210が形成されている。ボス部210は、180°離間して合計二つ配置されている。この一対のボス部210が、前記コンロッド6上端に枢支されている。樹脂部21外周面の頂部には、頂部リング溝211が周設されている。また、樹脂部21外周面の胴部には、胴部リング溝212が周設されている。前記オイルリング4は、胴部リング溝212に環装されている。
【0028】
コンプレッションリング3は、頂部リング溝211に環装されている。コンプレッションリング3は、シリンダ5内周面に当接している。コンプレッションリング3は、PF製の樹脂リング部材31と、炭素鋼製の金属リング部材30とを備えている。
【0029】
金属リング部材30は、合口部300を備えている。樹脂リング部材31は、金属リング部材30の下方に並置されている。樹脂リング部材31上面と金属リング部材30下面とは当接している。樹脂リング部材31は、合口部310と回り止め凸部311とを備えている。回り止め凸部311は、樹脂リング部材31上面から突設されている。回り止め凸部311は、前記金属リング部材30の合口部300と係合している。ここで、樹脂リング部材31の合口部310は、回り止め凸部311と180°離間して配置されている。したがって、金属リング部材30の合口部300と、樹脂リング部材31の合口部310とは、180°離間して、互い違いに配置されている。
【0030】
次に、本実施形態のピストンリングおよびピストンの作用について説明する。まず、燃焼熱の放熱性について説明する。前出図4において白抜き矢印で示すように、燃焼室7からの燃焼熱は、燃焼室側表出部202を介して、金属部20内に伝達する。金属部20は、熱伝達係数の大きいアルミニウム合金製である。このため、燃焼熱は速やかに金属部20内を伝達する。金属部20内を伝達した燃焼熱は、クランク室側表出部201を介して、クランク室8に放出される。すなわち、燃焼熱は、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→クランク室側表出部201→クランク室8の順に伝達する。
【0031】
図5に、図4円A内の拡大図を示す。なお、図5に示すのは、吸入行程および排気行程のピストンの状態である。図中、白抜き矢印で示すように、燃焼室7からの燃焼熱は、燃焼室側表出部202を介して、金属部20内に伝達する。金属部20内を伝達した燃焼熱は、金属リング部材30に伝達する。金属リング部材30内を伝達した燃焼熱は、樹脂リング部材31に伝達する。すなわち、燃焼熱は、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→金属リング部材30(または樹脂リング部材31)の順に伝達する。そして、主に金属リング部材30からシリンダ内周面に熱を逃がすとともに、樹脂リング部材31からもシリンダ内周面に熱を逃がしている。
【0032】
次に、摺動抵抗について説明する。図6に、図4円A内の拡大図を示す。なお、図6に示すのは、圧縮行程および燃焼行程のピストンの状態である。図中、白抜き矢印で示すように、燃焼室7からの圧力は、頂部リング溝211内に流入する。そして、金属リング部材30および樹脂リング部材31の内周面に作用する。具体的には、燃焼室7からの圧力は、金属リング部材30および樹脂リング部材31を拡径変形させ、シリンダ5内周面に当接させる方向に作用する。ここで、圧力が作用する内周面の面積が大きい方が、よりシリンダ5内周面に対する当接力が大きくなる。すなわち、リング部材内周面の面積と、シリンダ5内周面に対する当接力とは比例する。したがって、リング部材の軸方向肉厚と、シリンダ5内周面に対する当接力とは比例する。図に示すように、樹脂リング部材31の軸方向肉厚W1は、金属リング部材30の軸方向肉厚W2よりも、大きく設定されている。このため、樹脂リング部材31のシリンダ5内周面に対する当接力は、金属リング部材30のシリンダ5内周面に対する当接力よりも大きい。すなわち、PF製で、より摺動抵抗の小さい樹脂リング部材31の方が、金属リング部材30よりも、強い力でシリンダ5内周面に押し付けられる。
【0033】
次に、本実施形態のピストンリングおよびピストンの効果について説明する。本実施形態のコンプレッションリング3およびピストン1によると、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→金属リング部材30(または樹脂リング部材31)を介して、燃焼熱を速やかに放熱することができる。このため、放熱性が高い。
【0034】
また、本実施形態のピストン1によると、燃焼室7→燃焼室側表出部202→金属部20内→クランク室側表出部201→クランク室8を介して、燃焼熱を速やかに放熱することができる。この点においても、放熱性が高い。
【0035】
また、樹脂リング部材31は金属リング部材30よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、本実施形態のコンプレッションリング3は、前出図10のコンプレッションリング104のような全てが金属製のコンプレッションリングよりも、摺動抵抗が小さく軽量である。
【0036】
また、樹脂リング部材31および金属リング部材30は、合口部310、300同士が180°互い違いになるように配置されている。このため、ブローバイガスが漏出するおそれが小さい。したがって、本実施形態のピストン1によると、前出図10に示すように、コンプレッションリング104を二列に配置しなくても、燃焼室7の気密性を確保することができる。
【0037】
また、金属リング部材30の合口部300と、樹脂リング部材31の回り止め凸部311とは係合している。このため、樹脂リング部材31と金属リング部材30とは、互いに相対的に回動しない。したがって、合口部310、300同士がピストン軸方向に連通してしまうおそれがない。
【0038】
また、樹脂リング部材31の軸方向肉厚W1は、金属リング部材30の軸方向肉厚W2よりも、大きく設定されている。このため、樹脂リング部材31の方が金属リング部材30よりも拡径変形しやすい。つまり、摺動抵抗の小さい樹脂リング部材31の方が、シリンダ5内周面に強く押し付けられる。したがって、この点においても、本実施形態のコンプレッションリング3は摺動抵抗が小さい。また、これに伴いシリンダ5内周面の摩耗量も小さい。
【0039】
また、樹脂リング部材31は金属リング部材30よりも摺動抵抗が小さく軽量である。同様に、樹脂部21は金属部20よりも摺動抵抗が小さく軽量である。このため、本実施形態のピストン1は、従来のピストンよりも、摺動抵抗が小さく軽量である。
【0040】
また、本実施形態のピストン1によると、金属部20の突起200が、樹脂部21に対し、アンダーカット状に作用している。このため、突起200が樹脂部21から脱落しにくい。したがって、金属部20と樹脂部21との接合性が高い。
【0041】
(2)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、クランク室側表出部に放熱溝が配置されている点である。また、樹脂部カップ内周面に放熱リブが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0042】
図7に、本実施形態のピストンの下面図を示す。なお、図4と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、突起200先端のクランク室側表出部201には、放熱溝203が凹設されている。放熱溝203は、放射状に合計八つ配置されている。また、樹脂部21カップ内周面からは、放熱リブ213が突設されている。放熱リブ213は、ピストン軸方向(紙面表裏方向)に延在している。放熱リブ213は、一対のボス部210を挟んで両側に、五つずつ配置されている。
【0043】
本実施形態のピストン1は第一実施形態のピストンと同様の効果を有する。また、本実施形態のピストン1には、放熱溝203および放熱リブ213が配置されている。すなわち、本実施形態のピストン1は、放熱溝203および放熱リブ213を配置した分だけ伝熱面積が大きい。したがって、本実施形態のピストン1は、より放熱性が高い。
【0044】
(3)第三実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、コンプレッションリングが、一対の金属リング部材と単一の樹脂リング部材とから構成されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0045】
図8に、本実施形態のピストンリングの拡大断面図を示す。なお、図5と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、頂部リング溝211には、一対の金属リング部材30、32が配置されている。樹脂リング部材31は、これら一対の金属リング部材30、32の間に介装されている。
【0046】
本実施形態のコンプレッションリング3は第一実施形態のコンプレッションリングと同様の効果を有する。また、本実施形態のコンプレッションリング3によると、新たに金属リング部材32を配置した分だけ、さらに放熱性が向上する。
【0047】
(4)第四実施形態
本実施形態と第二実施形態との相違点は、樹脂部カップ上底面に放熱リブが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0048】
図9に、本実施形態のピストンの下面図を示す。なお、図7と対応する部位については同じ符号で示す。図に示すように、樹脂部21カップ上底面からは、放熱リブ214が突設されている。放熱リブ214は、放射状および弧状に配置されている。放射状に配置された方の放熱リブ214は、放熱リブ213とつながっている。
【0049】
本実施形態のピストン1は第二実施形態のピストンと同様の効果を有する。また、本実施形態のピストン1には、放熱溝203および放熱リブ213に加えて、さらに放熱リブ214が配置されている。すなわち、本実施形態のピストン1は、放熱リブ214を配置した分だけ伝熱面積が大きい。したがって、本実施形態のピストン1は、より放熱性が高い。
【0050】
(5)その他
以上、本発明のピストンリングおよびピストンの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的、改良的形態で実施することも可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、金属リング部材30、32を、炭素鋼により形成したが、例えばステンレス鋼、ばね鋼などにより形成してもよい。また、上記実施形態においては、樹脂リング部材31を、PFにより形成したが、例えばPI(ポリイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)などにより形成してもよい。同様に、樹脂部21を、例えばPI、PBIなどにより形成してもよい。また、金属部20と樹脂部21との接合方法は特に限定しない。例えば、ボルト締めなどにより接合してもよい。また、樹脂部21の頂面に金属膜を蒸着し、これを金属部20としてもよい。
【0052】
【発明の効果】
本発明によると、摺動抵抗が小さく、軽量で、放熱性の高いピストンリングおよびピストンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一実施形態のピストンの組み付け図である。
【図2】第一実施形態のピストンの斜視図である。
【図3】第一実施形態のピストンの分解斜視図である。
【図4】図2のI−I断面図である。
【図5】図4円A内の拡大図である。
【図6】図4円A内の拡大図である。
【図7】第二実施形態のピストンの下面図である。
【図8】第三実施形態のピストンリングの拡大断面図である。
【図9】第四実施形態のピストンの下面図である。
【図10】従来のエンジン用ピストンの軸方向断面図である。
【図11】無潤滑圧縮機用のピストンリングの側面図である。
【符号の説明】
1:ピストン、2:ピストン本体、20:金属部、200:突起、201:クランク室側表出部、202:燃焼室側表出部、203:放熱溝、21:樹脂部、210:ボス部、211:頂部リング溝、212:胴部リング溝、213:放熱リブ、214:放熱リブ、3:コンプレッションリング(ピストンリング)、30:金属リング部材、300:合口部、31:樹脂リング部材、310:合口部、311:回り止め凸部、32:金属リング部材、4:オイルリング(ピストンリング)、5:シリンダ、6:コンロッド、7:燃焼室、8:クランク室。
Claims (5)
- 少なくとも、樹脂リング部材と、該樹脂リング部材よりも燃焼室側において該樹脂リング部材と当接して配置される金属リング部材と、を備え、該樹脂リング部材の軸方向肉厚は、該金属リング部材の軸方向肉厚よりも、大きく設定されているピストンリング。
- 前記樹脂リング部材および前記金属リング部材は、それぞれ合口部を有し、
該樹脂リング部材および該金属リング部材は、該合口部同士が互い違いになるように配置されている請求項1に記載のピストンリング。 - 前記樹脂リング部材および前記金属リング部材のうち一方は、他方の前記合口部に係合する回り止め凸部を有する請求項2に記載のピストンリング。
- エンジンのシリンダ内を往復動し、該シリンダ内面とともに燃焼室を区画するピストン本体と、
該ピストン本体に環装され、該燃焼室の気密性を確保する複数のピストンリングと、を備えてなるピストンであって、
前記ピストン本体は、金属部と樹脂部とを有し、
該金属部は、前記燃焼室に表出する燃焼室側表出部を有し、
複数の前記ピストンリングのうち少なくとも一つのピストンリングは、少なくとも、樹脂リング部材と、該樹脂リング部材よりも前記燃焼室側において該樹脂リング部材と当接して配置される金属リング部材と、を有し、
該金属リング部材と該金属部とは、当接して配置されることを特徴とするピストン。 - 前記金属部は、さらに、前記シリンダ内において前記燃焼室と仕切られたクランク室に表出するクランク室側表出部を有する請求項4に記載のピストン。
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