JP2004344072A - Smn遺伝子のスプライシング調節エレメント - Google Patents
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Abstract
【課題】SMN遺伝子の発現制御手段の提供。
【解決手段】特定の塩基配列からなるスプライシング調節因子又はそのバリアントの核酸、該核酸を含有した核酸導入用担体、該核酸を用いるSMN遺伝子の発現制御方法、該核酸又は該核酸導入用担体を有効成分とする医薬組成物、並びに被験物質の存在下及び非存在下に、順に、SMN2遺伝子のイントロン6とSMN2遺伝子のエキソン7と特定の塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7とが配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクター構築物を含む細胞を維持し、被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定する、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質の検索方法。
【選択図】 なし
【解決手段】特定の塩基配列からなるスプライシング調節因子又はそのバリアントの核酸、該核酸を含有した核酸導入用担体、該核酸を用いるSMN遺伝子の発現制御方法、該核酸又は該核酸導入用担体を有効成分とする医薬組成物、並びに被験物質の存在下及び非存在下に、順に、SMN2遺伝子のイントロン6とSMN2遺伝子のエキソン7と特定の塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7とが配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクター構築物を含む細胞を維持し、被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定する、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質の検索方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、SMN遺伝子の発現制御のための手段に関する。より詳しくは、本発明は、SMN遺伝子のスプライシングを調節しうるスプライシング調節エレメントの核酸及び核酸導入用担体、SMN遺伝子の発現制御方法、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物、並びにSMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
脊髄性筋萎縮症は、常染色体性劣性疾患であり、最終的に、死に至らしめる近位の四肢及び体幹の筋の衰弱をもたらす脊髄における運動ニューロンの欠損を特徴とする。
【0003】
前記脊髄性筋萎縮症の疾患原因と考えられる遺伝子として、ヒト第5染色体5q13座に局在するsurvival motor neuron(SMN)遺伝子が見出されている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
前記SMN遺伝子は、ヒトにおいては、スプライシングにより、2種のアイソフォーム、すなわち、エキソン7を含まない「SMNΔエキソン7」と、エキソン7を含む「SMN+エキソン7」を生じることが知られている。前記エキソン7を含む「SMN+エキソン7」が存在しない場合、前記脊髄性筋萎縮症を発症すると考えられている。
【0005】
前記脊髄性筋萎縮症の治療法の開発のために、例えば、酪酸塩(酢酸ナトリウム、酪酸アルギニン、酪酸等)、トラポクシン、トリコスタチンA等のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を用いて、SMN遺伝子のエキソン7の発現を増加させること(特許文献1を参照のこと)、SMN2遺伝子のエキソン7を含有したDNAでトランスフェクトされた哺乳動物細胞に、SMN2遺伝子のエキソン7の包含を制御する物質をさらし、エキソン7包含とエキソン7スキッピングの割合を調べることにより、SMN2遺伝子のエキソン7包含を制御する物質を試験すること(特許文献2を参照のこと)、SMN2遺伝子のエキソン7包含を制御する物質として、スプライシング調節因子Htra2−beta 1タンパク質をコードする核酸を、哺乳動物細胞にトランスフェクトし、それにより、エキソン7を含まないSMN2転写産物を減少させ、全長SMN2発現をアップレギュレートさせること(前記特許文献2を参照のこと)等が試みられている。
【0006】
しかしながら、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を用いる場合、ヒストンの脱アセチル化が阻害されヒストンが有するヌクレオソーム形成に影響を与えるため、細胞の分裂・増殖が障害される可能性があるという欠点がある。また、前記特許文献2に記載の方法によれば、Htra2−beta1は、各臓器・組織のすべての細胞で発現し、多くの遺伝子のスプライシングを制御しているため、過剰に発現させれば、Htra2−beta1がスプライシングを制御している他の遺伝子のスプライシングに影響を与える可能性があるという欠点がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−338502号公報、実施例4等
【特許文献2】
欧州特許公開第1 133 993号明細書(EP 1 133 993 A1)
【非特許文献1】
レフェブレ(Lefebvre,S.)ら,Cell,第80巻,第155頁−第165頁 1995年発行
【非特許文献2】
ロシェット(Rochette,C.T.)ら,Hum.Genet.,第108巻,第255頁−第266頁,2001年発行
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、全長SMN遺伝子を発現させること、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させること、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うこと等の少なくとも1つを可能にする、SMN遺伝子のスプライシング調節エレメントを有する核酸を提供することを目的とする。また、本発明は、前記スプライシング調節エレメントを有する核酸を、細胞に効率よく導入することができる、核酸導入用担体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、全長SMN遺伝子を発現させること、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させること等を可能にする、SMN遺伝子の発現制御方法を提供することを目的とする。また、本発明は、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症の発症を予防又は治療することができる、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、全長SMN遺伝子の発現を増強させうる物質、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物の発現を増強させうる物質等を効率よくスクリーニングすることができる、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。なお、本発明の他の課題は、本明細書の記載及び全教示から明らかである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸、
〔2〕 配列番号:1又は2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記〔1〕記載の核酸のバリアントの核酸、
〔3〕 バリアントが、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24及び配列番号:25からなる群より選ばれた塩基配列からなる、前記〔2〕記載の核酸、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項記載の核酸を含有してなる、核酸導入用担体、
〔5〕 下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを、染色体に組み込ませることを特徴とする、SMN遺伝子の発現制御方法、
〔6〕前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項記載の核酸又は前記〔4〕記載の核酸導入用担体を有効成分として含有してなる、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物、
〔7〕 (I)被験物質の存在下及び非存在下に、
下記(1)〜(3):
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクターを含む細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)において、被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定するステップ、
を含み、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することを指標とする、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のスプライシング調節エレメントの核酸は、配列番号:1に示される塩基配列(RNA)又は配列番号:2に示される塩基配列(DNA)からなることに1つの大きな特徴がある。本発明の核酸は、Survival motor neuron(SMN)遺伝子のシスエレメント(以下、エレメント2という)の配列のうち、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節する配列単位であり、ステム−ループ構造を形成する核酸である。
【0011】
したがって、本発明の核酸によれば、エキソン7を含むSMN転写産物を生じさせるという優れた効果を発揮する。また、本発明の核酸によれば、SMN1遺伝子が欠損又は変異している場合であっても、スプライシングにより、SMN2からエキソン7を含むSMN転写産物を生じさせうるという優れた効果を発揮する。
【0012】
前記survival motor neuron(SMN)遺伝子には、SMN1遺伝子〔ジーンバンク(GenBank) アクセッション番号:AH006635〕と、該SMN1遺伝子と数個のヌクレオチドが異なる塩基配列を有するSMN2遺伝子との2種のSMN遺伝子が存在することが知られている。
【0013】
また、前記SMN1遺伝子は、スプライシングにより、通常、エキソン1〜エキソン8までの全てのエキソンの転写産物を生じるが、前記SMN2遺伝子は、オルタナティブスプライシングにより、エキソン7を含まない転写産物を生じるという性質を有する。さらに、前記SMN2遺伝子の翻訳産物は、前記SMN1遺伝子の翻訳産物の機能を補うことができないという性質を有する。したがって、本発明の核酸によれば、SMN遺伝子又はSMN遺伝子の翻訳産物の本来の機能が欠損している場合、あるいは、SMN1遺伝子が欠損又は変異している場合であっても、エキソン7を含むSMN転写産物を生じさせ、SMN遺伝子の本来の機能を補うことができるという優れた効果を発揮する。さらに、本発明の核酸によれば、エキソン7を含むSMN転写産物を生じさせることができるため、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、具体的には、脊髄性筋萎縮症等の疾患の治療に用いられうる。
【0014】
なお、自然界においては、天然の遺伝子において、自然発生的(naturally occuring)に変異が起こって生じたバリアントであっても、該バリアントによりコードされる産物が、本来の機能を発揮する場合がある。したがって、本発明のスプライシング調節エレメントの核酸には、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであれば、配列番号:1又は2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、バリアントの核酸も含まれる。前記バリアントの核酸は、好ましくは、配列番号:1又は2に示される塩基配列と少なくとも1塩基、すなわち、1又は数個の塩基が、核酸多型を介して異なる塩基配列を有するものであり、ステム−ループ構造を形成する核酸であることが望ましい。
【0015】
前記バリアントは、人為的に、例えば、慣用の部位特異的変異導入方法等により作製することもできる。
【0016】
前記配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸のバリアントの塩基配列としては、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであればよく、具体的には、例えば、
配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸と中ストリンジェント、好ましくは、高ストリンジェントの条件下にハイブリダイズする核酸のアンチセンス鎖の塩基配列、
配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸に対し、BLASTアルゴリズム〔例えば、BLASTNにおいて、期待値10、ワードサイズ3、ギャップコスト(Existence:11、Extension:1)〕により、最適な状態にアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも70%、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上である塩基配列であって、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するエレメント、好ましくは、ステム−ループを形成するエレメントの塩基配列であって、
配列番号:1の1位のG及び2位のUが、それぞれ、A及びAに置換された塩基配列
配列番号:1の3位のG及び20位のGが、それぞれ、U及びUに置換された塩基配列、
配列番号:1の21位のA及び22位のAが、それぞれ、U及びUに置換された塩基配列、
等が挙げられる。また、前記配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸のバリアントの塩基配列としては、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであればよく、具体的には、例えば、
配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸と中ストリンジェント、好ましくは、高ストリンジェントの条件下にハイブリダイズする核酸のアンチセンス鎖の塩基配列、
配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸に対し、BLASTアルゴリズム〔例えば、BLASTNにおいて、期待値10、ワードサイズ3、ギャップコスト(Existence:11、Extension:1)〕により、最適な状態にアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも70%、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上である塩基配列であって、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するエレメント、好ましくは、ステム−ループを形成するエレメントの塩基配列、
配列番号:2の1位のG及び2位のTが、それぞれ、A及びAに置換された塩基配列
配列番号:2の3位のG及び20位のGが、それぞれ、T及びTに置換された塩基配列、
配列番号:2の21位のA及び22位のAが、それぞれ、T及びTに置換された塩基配列、
等が挙げられる。
【0017】
本明細書において、前記「中ストリンジェントな条件」とは、組成:6×SSC(0.9M NaCl、0.09M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と、5×デンハート(0.5% FicollTM、0.5% ポリビニルピロリジン、0.5% ウシ血清アルブミン)と、0.1% SDSとを含む溶液中、配列番号:1又は2に示される塩基配列からなる核酸とともに37℃で一晩保温し、低イオン強度、例えば、2×SSC、よりストリンジェントには、0.1×SSC等の条件及び/又はより高温、37℃以上、ストリンジェントには、50℃以上、よりストリンジェントには、60℃以上、より一層ストリンジェントには、65℃以上等の条件下での洗浄を行なう条件により達成されうる。
【0018】
前記バリアントとしては、より具体的には、例えば、配列番号:21に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:22に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:23に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:24に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:25に示される塩基配列からなる核酸等が挙げられる。
【0019】
なお、核酸が、ステム−ループ構造を形成するものであることは、MFOLDプログラム(Michael Zuker Rensselaer Polytechnic Institute製)等の慣用のプログラムにより二次構造を解析することにより、評価されうる。
【0020】
また、核酸が、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであることは、
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクターを用いることにより評価されうる。具体的には、前記エキソントラップベクター中の前記(3)のイントロン7の塩基配列において、配列番号:2に示される塩基配列の領域を、被験対象の核酸と置換し、得られた構築物を、適切な宿主細胞、例えば、COS−7細胞、SK−N−SH細胞等に、慣用の遺伝子導入方法により導入し、得られた細胞における前記(2)のエキソン7に対応する転写産物の存在を検出することにより評価されうる(「スプライシング能評価法」という)。
【0021】
ここで、「エキソン7を生じさせるスプライシングを正に調節する」とは、エキソン7を包含した転写産物(エキソン7含有型)を生じるか、あるいは該転写産物の量を増大させるように、スプライシングを制御することを意味する。
【0022】
前記エキソントラップベクターとしては、SV40プロモーターを持ち、HIV−tat遺伝子の2つのエキソン間にクローニングサイトを有するベクターが挙げられ、具体的には、pSPL3ベクター〔プロメガ(Promega)社製〕等が挙げられる。
【0023】
前記(1)のイントロン6と、(2)のエキソン7と、(3)のイントロン7は、前記ジーンバンクアクセッション番号:AH006635の配列に基づき得ることもできる。
【0024】
前記核酸構築物は、例えば、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版〔ザンブルーク(Sambrook)ら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nded.,(1989)〕等に記載の慣用の遺伝子操作法により構築されうる。
【0025】
なお、本発明においては、前記エキソントラップベクター構築物の他、適切なプロモーターの制御下に、SMN遺伝子のエキソン6〜エキソン8までの領域のゲノム由来配列を含むプラスミドも用いられうる。かかる態様も本発明に含まれる。
【0026】
エキソン7の検出は、細胞から抽出された全RNAを、エキソン7の塩基配列に基づいて作製されたプローブを用いたノーザンブロット解析、用いたベクターに特異的なプライマー対や該エキソン7に特異的なプライマー対を用いたRT−PCR解析等に供することより行なわれうる。なお、前記プローブ又はプライマー対は、かかる検出を容易にする標識物質(蛍光物質、放射性同位元素等)によりに標識されていてもよい。
【0027】
前記プローブの鎖長は、特に限定はないが、非特異的なハイブリダイゼーションを防止する観点から、連続した15ヌクレオチド長以上であり、好ましくは、18ヌクレオチド長以上であることが望ましい。前記プローブとしては、例えば、エキソン7の塩基配列からなる核酸又はそのアンチセンス鎖、前記エキソン7の塩基配列のうち、データベースの公知配列に存在しない塩基配列からなる核酸又はそのアンチセンス鎖、エキソン7の塩基配列中の連続した15ヌクレオチド長以上の塩基配列を有する核酸又はそのアンチセンス鎖等が挙げられる。
【0028】
また、プライマーの鎖長は、特に限定はないが、例えば、15〜40ヌクレオチド長であり、好ましくは、17〜30ヌクレオチド長であることが望ましい。
【0029】
前記プローブ又はプライマーに適した配列は、例えば、Tm値等、公知配列、核酸の二次構造の形成等を考慮し、プローブ及び/又はプライマーのデザインを支援する慣用のソフトウェアなどにより得られうる。
【0030】
本発明の核酸は、前記塩基配列を有するため、全長SMN遺伝子を発現させることができ、SMN1遺伝子が欠損又は変異して機能欠損を起こしている場合であっても、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができ、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができる。
【0031】
また、本発明の核酸は、細胞に導入可能な担体に組み込むこと又は保持させることにより得られた核酸導入用担体により、より効率よく細胞等に導入することができる。したがって、かかる核酸導入用担体も本発明に含まれる。
【0032】
本発明の核酸導入用担体は、本発明の核酸を含有することに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の核酸導入用担体は、前記塩基配列を有するため、全長SMN遺伝子を発現させることができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の核酸導入用担体は、前記塩基配列を有するため、SMN1遺伝子が欠損又は変異して機能欠損を起こしている場合であっても、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができる。さらに、本発明の核酸導入用担体は、前記塩基配列を有するため、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができるという優れた効果を発揮する。
【0033】
また、本発明の核酸導入用担体は、本発明の核酸を含有し、かつ該核酸が、細胞に導入可能な担体に組み込まれていること又は保持されていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の核酸導入用担体によれば、本発明の核酸を、より効率よく、細胞等に導入することができ、さらに、より効率よく染色体上のターゲティング部位(例えば、SMN遺伝子のイントロン7等)に組み込むことができるという優れた効果を発揮する。
【0034】
前記「細胞に導入可能な担体」としては、例えば、導入対象となる細胞等に適したベクター、金粒子、リポソーム等が挙げられる
【0035】
ベクターとしては、例えば、宿主細胞中で機能するプロモーター〔例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター等〕を含む哺乳動物細胞用のベクター(レトロウイルス系ベクター、セムリキフォレストウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)等が挙げられる。
【0036】
なお、本発明の核酸導入用担体には、染色体上のターゲティング部位(例えば、染色体上のSMN遺伝子のイントロン7等)との相同組換えを可能にする配置で、本発明の核酸と、相同組換えに適した配列からなる核酸とが配置された核酸構築物も含まれる。なお、前記核酸構築物は、さらに、前記「細胞に導入可能な担体」に組み込み、又は保持させてもよい。
【0037】
前記細胞としては、例えば、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞、SY−5Y細胞、ヒト初代培養神経細胞、COS−7細胞、HeLa細胞、293細胞等が挙げられる。
【0038】
前記「相同組換えを可能にする配置」としては、特に限定されないが、順に、SMN遺伝子のエキソン7と、
SMN遺伝子のイントロン7上に下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを有する核酸と
SMN遺伝子のエキソン8と
を有する配置等が挙げられる。
【0039】
本発明の核酸及び本発明の核酸導入用担体によれば、SMN遺伝子のスプライシングを調節することができ、SMN遺伝子の発現制御方法が提供される。
【0040】
本発明のSMN遺伝子の発現制御方法は、本発明の核酸を染色体に組み込ませることを1つの大きな特徴とする。したがって、本発明の発現制御方法によれば、本発明の核酸を染色体上のターゲティング部位(すなわち、SMN遺伝子のイントロン7)に組み込むため、全長SMN遺伝子を発現させることができ、また、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができるという優れた効果が発揮される。
【0041】
本発明の発現制御方法としては、下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを、染色体に組み込ませることを特徴とする、SMN遺伝子の発現制御方法が挙げられ、具体的には、
(A)本発明の核酸又は核酸導入用担体を、細胞に導入するステップ、及び
(B)ステップ(A)で得られた細胞を、スプライシングが行なわれるに適した条件下に維持するステップ
を含む方法等が挙げられる。
【0042】
なお、本発明のSMN遺伝子の発現制御方法は、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症に罹患した個体、発症の可能性がある個体に対して、適用することにより、該疾患の発症の予防又は治療を行なうことができる。
【0043】
前記ステップ(A)においては、本発明の核酸が、相同組換えにより、ターゲティング部位(すなわち、SMN遺伝子のイントロン7)に、効率よく組み込ませる観点から、好ましくは、染色体上のターゲティング部位(例えば、染色体上のSMN遺伝子のイントロン7等)との相同組換えを可能にする配置で、本発明の核酸と、相同組換えに適した配列からなる核酸とが配置された核酸構築物である核酸導入用担体又は前記核酸構築物を前記「細胞に導入可能な担体」に組み込みこと若しくは保持させることにより得られた核酸導入用担体を用いることが望ましい。
【0044】
前記細胞としては、例えば、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞、SY−5Y細胞、ヒト初代培養神経細胞、COS−7細胞、HeLa細胞、293細胞等が挙げられる。なお、前記細胞は、培養細胞であってもよく、個体(ヒト、非ヒト哺乳動物等)の細胞であってもよい。
【0045】
本発明の核酸又は核酸導入用担体の使用量は、核酸の量として、100ng以上であり、好ましくは、1μg以上であり、より好ましくは、10μg以上であることが望ましく、1000μg以下であり、好ましくは、100μg以下であり、より好ましくは20μg以下であることが望ましい。
【0046】
培養細胞細胞への本発明の核酸又は核酸導入用担体の導入法としては、例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクション、リン酸カルシウム法、金粒子を用いた遺伝子銃による直接導入法、リポフェクション法等が挙げられる。また、個体への本発明の核酸又は核酸導入用担体の導入法としては、ウイルスベクターやリポソームを介して、直接個体の体内に導入するin vivo法、個体から、ある種の細胞を取り出し、該細胞に対して、前記培養細胞への導入法の例のように、体外で本発明の核酸又は核酸導入用担体を導入し、得られた細胞を体内に戻すというex vivo法等が挙げられる。
【0047】
ついで、前記ステップ(B)において、本発明の核酸又は本発明の核酸導入用担体が導入された細胞は、細胞内でスプライシングが行なわれるように維持される。
【0048】
ここで、細胞が、培養細胞である場合、細胞に応じた培養条件下で該細胞を維持することにより、スプライシングが行われる。また、個体の細胞に直接的に導入する場合には、個体の通常の活動を維持することにより、スプライシングが行なわれる。
【0049】
本発明の発現制御方法においては、細胞からmRNAを単離し、エキソン7に対応する転写産物の存在をRT−PCR、ノーザンブロット解析等で検出すること等により、SMN遺伝子の発現制御、具体的には、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシングが評価されうる。
【0050】
また、本発明の核酸及び核酸導入用担体によれば、前記したように、全長SMN遺伝子を発現させることができるため、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物を提供することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物は、本発明の核酸及び核酸導入用担体を有効成分として含有することに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の医薬組成物は、全長SMN遺伝子を発現させること、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させること、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うこと等が可能になるため、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症の発症を予防又は治療することができるという優れた効果を発揮する。
【0052】
本発明の医薬組成物中の有効成分の含有量は、治療目的の疾患及びその病状の程度、患者の年齢、体重等に応じて適宜設定されうるが、例えば、本発明の核酸の量として、薬効が期待できる投与量の観点から、0.1g以上、好ましくは、1.0g以上、より好ましくは、数g以上であり、100g以下、好ましくは、30g以下、より好ましくは、10g以下であることが望ましい。
【0053】
本発明の医薬組成物は、前記有効成分に加え、核酸を安定に保持しうる助剤(例えば、緩衝液)、投与形態に応じた慣用の助剤等を適宜含有していてもよい。
【0054】
本発明の医薬組成物の投与は、例えば、本発明の発現制御方法における個体への本発明の核酸又は核酸導入用担体の導入法と同様に行なわれうる。具体的には、例えば、前記in vivo法により投与する場合、ウイルスベクター、リポソーム等を介して、投与対象の組織、器官等に応じて、静脈投与、動脈投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、局所投与等が行なわれうる。また、前記ex vivo法により行なう場合、1)個体より細胞を取り出し、2)該細胞に本発明の医薬組成物を、前記in vivo法により導入し、3)再度、細胞を個体の体内に戻すことにより行なわれる。
【0055】
本発明の医薬組成物の薬理評価は、前記スプライシング能評価法を行ない、SMN遺伝子の転写産物にエキソン7が包含されていることを確認すること等により行なわれうる。
【0056】
また、本発明の核酸の動態及び/又はスプライシング能を指標として、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質をスクリーニングすることができる。すなわち、前記スプライシング能評価法は、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニングに適用されうる。本発明には、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法も含まれる。
【0057】
本発明のスクリーニング方法は、(I)被験物質の存在下及び非存在下に、下記(1)〜(3):
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクターを含む細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)において被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、前記ステップ(I)において被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定するステップ、
を含み、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することを指標とする方法である。
【0058】
本発明のスクリーニング方法は、前記核酸構築物を用いることに1つの大きな特徴がある。本発明のスクリーニング方法は、前記核酸構築物を用いるため、本発明の核酸のスプライシング能に作用する物質を効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。また、本発明のスクリーニング方法は、前記核酸構築物を用いることにより、本発明の核酸のスプライシング能を指標として評価するため、全長SMN遺伝子の発現を増強させうる物質、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物の発現を増強させうる物質等を効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。
【0059】
本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞は、前記スプライシング能評価法に用いられるものと同様である。
【0060】
被験物質としては、例えば、低分子又は高分子の有機化合物、微生物代謝産物等が挙げられる。
【0061】
前記ステップ(I)は、被験物質を含有した培地又は被験物質を含まない培地で、前記細胞を維持することにより行なわれうる。ここで、前記培地は、細胞に応じたものが挙げられ、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、α−Minimum Essential Medium(α−MEM)、RPMI1640等が挙げられる。
【0062】
ついで、ステップ(I)において被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、前記ステップ(I)において被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定する〔ステップ(II)〕。
【0063】
ステップ(II)において、転写産物は、慣用の方法により、ステップ(I)で得られた細胞から、全RNAを得、得られた全RNAについて、前記スプライシング能評価法と同様のプローブ又はプライマー対を用い、ノーザンブロット解析、RT−PCRを行なうことにより測定されうる。
【0064】
本発明のスクリーニング方法においては、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することが、該被験物質が、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質であることの指標となる。
【0065】
また、本発明の核酸に結合する物質は、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシングを調節することが期待される。したがって、本発明の核酸により、本発明の核酸に結合する物質、特に、スプライシング能を調節する物質、例えば、結合タンパク質、そのミメティクス、化合物等をスクリーニングすることもできる。この場合、1)本発明の核酸と被験物質(タンパク質含有試料、細胞抽出物等)との結合の有無を検出し、
2)該核酸に結合した被験物質と、前記核酸構築物とが導入された細胞を得、
3)細胞内におけるSMN遺伝子のエキソン7に対応する転写産物を測定することにより、被験物質が、本発明の核酸に結合し、スプライシング能を調節する物質であるかどうかを評価することができる。なお、対照として、被験物質が導入されていないが、前記核酸構築物が導入された細胞が用いられる。
【0066】
結合の有無は、ゲル移動度シフトアッセイ、共鳴プラズモン相互作用解析等の慣用の方法により検出できる。
【0067】
ついで、被験試料から、結合した物質を単離し、その構造(例えば、アミノ酸配列等)を同定する。
【0068】
その後、得られた構造の情報を基に、該核酸に結合した被験物質と、前記核酸構築物とが導入された細胞を得る。
【0069】
なお、本発明においては、前記エキソントラップベクター構築物を用いる代わりに、適切なプロモーターの制御下に、SMN遺伝子のエキソン6〜エキソン8までの領域のゲノム由来配列を含むプラスミドも用いられうる。かかる態様も本発明に含まれる。
【0070】
さらに、本発明においては、前記エキソントラップベクター構築物を用いる代わりに、SMN遺伝子のエキソン6〜エキソン8までの領域のゲノム由来配列を有するミニジーンをpre−mRNAとして転写させ、得られた産物を、試験管内で核抽出液若しくは転写系と反応させ、電気泳動等により解析することにより、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質をスクリーニングすることもできる。かかる態様も本発明に含まれる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を、下記実施例により、具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。また、下記実施例において、培地の組成は、特に明記しない限り、「分子細胞生物学基礎実験法」 第50頁〜第51頁、1994年9月1日発行、発行所:株式会社 南江堂、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版〔ザンブルーク(Sambrook)ら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed.,(1989)〕等の記載に基づく。
【0072】
実施例1
SMN遺伝子について、イン・ビボでのスプライシングを調べるため、pCI哺乳動物発現ベクター中エキソン6からエキソン8の領域を含むSMN1 ミニジーンの構築物及びpCI哺乳動物発現ベクター中エキソン6からエキソン8を含むSMN2 ミニジーンの構築物〔エリオット アンドロフィー(Elliot Androphy)博士(Tufts University)及びクリスチャン ローソン(Christian Lorson)博士より贈与された〕を用いた。
【0073】
また、pCIベクター中SMN1 エキソン6からエキソン8の領域を含み、かつエキソン7中にCからTへの転位を含むミニジーンの構築物について、部位特異的変異導入方法によりエレメント1に変異導入することにより作製した。
【0074】
前記構築物のトランスフェクションには、COS−7細胞又はSK−N−SH細胞を用いた。前記COS−7細胞の培養は、10% ウシ胎仔血清(FBS)/Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)上、37℃、5% CO2の条件下で行ない、SK−N−SH細胞の培養は、10% FBSを含むα−Minimum Essential Medium(α−MEM)上、37℃、5% CO2の条件下で行なった。前記細胞を、3.5cmディッシュ上、60〜80%コンフルエンシーの密度で播種した。
【0075】
ついで、商品名:LipofectAMINE reagent又は商品名:LipofectAMINE ACE reagent〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕を用い、製造者のプロトコールに従い、前記構築物(1.0μg相当量)を、COS−7細胞又はSK−N−SH細胞にトランスフェクトした。
【0076】
得られたトランスフェクト細胞を、緩衝液RLT〔キアジェン(Qiagen)社製〕に溶解させ、得られた溶解物から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0077】
得られた全RNAと、ランダムプライマー(タカラバイオ社製)と、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕とを、20μlの反応液〔組成:2.7μM ランダムプライマー Hexa−デオキシリボヌクレオチドミクスチャー(タカラバイオ社製)、0.5mMdNTPミクスチャー、12.5mM DTT、5×第1鎖緩衝液、200UM−HLV逆転写酵素)中、37℃で、60分間反応させることにより、第1鎖cDNAを合成した。
【0078】
ついで、前記構築物から生成した前記第1鎖cDNA 1.2μgと、各0.4μMのpCIフォワードプライマー〔5’−GCT AAC GCA GTC AGT GCT TC−3’ (配列番号:3)〕とpCIリバースプライマー〔5’−GTA TCT TAT CAT GTC TGC TCG−3’(配列番号:4)〕とからなるプライマー対と、微量の[α−32P] dNTPを含む0.2μM dNTPと、5U rTaq DNAポリメラーゼと10×PCR緩衝液(タカラバイオ社製)とを含む全量50μlの反応液で、PCRを行ない、イン・ビボでのスプライシングを調べた。
【0079】
なお、増幅条件は、94℃、2分間のインキュベーションによる開始変性ステップの後、94℃、30秒間と56℃、1.5分間と72℃、1分間とを1サイクルとする30サイクルの反応ステップを行ない、その後、72℃、10分間の最終伸長ステップを行なう条件とした。
【0080】
得られた反応産物を、5% ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動により、分離した。各バンドの強度の定量化を、商品名:Densitography Program〔アトー株式会社製〕を用いて行なった。エキソン7含有型の割合を、全バンドの強度に対するエキソン7含有型の強度の割合として定量化し、表わした。その結果を図1に示す。
【0081】
その結果、図1に示されるように、エキソン6からエキソン8の領域を含むSMN1ミニジーン構築物及びSMN2ミニジーン構築物それぞれの一過性トランスフェクションにより、SMN1 mRNAは、全長転写産物を発現するが、SMN2は、低レベルの全長転写産物と高レベルのエキソン7欠損アイソフォーム(SMNΔ7)とを産生することが確認された。
【0082】
また、図1に示されるように、SMN1のエキソン7内の6ヌクレオチドに存在するCからTへの置換は、エキソン7の排除をもたらし、エキソン7のスプライシングパターンは、野生型SMN2のエキソン7に似ていることがわかった。対照的に、変異体SMN2(SMN2におけるTからCへの置換)ミニジーンは、全長SMN転写産物を産生することがわかった。
【0083】
実施例2
SMN エキソン7のスキッピングに応答しうるシス作用エレメントを決定するために、エキソン7と隣接イントロン6及び隣接イントロン7とを含む野生型SMN1ミニジーンと変異体SMN1(エキソン7におけるCからTへの転位)ミニジーンとの両方の種々の欠失変異体を構築し、これらをエキソントラップベクター pSPL3にクローン化した。かかる欠失変異体の模式図を図2に示す。
【0084】
イントロン6とエキソン7とイントロン7とを含むSMN1の種々の欠失変異体を、下記プライマー対:
I7DM1について、600Fwdプライマー〔5’−AAG CTT GGC ATG AGC CAC TGC AAG AAA AC−3’(配列番号:5)〕とORプライマー〔5’−GGA TCC GAG AAT TCT AGT AGG GAT GTA G−3’(配列番号:6)〕とからなるプライマー対;
I7DM2について、前記600FwdプライマーとOR−IRプライマー〔5’−AAG CTT GTT TTA CAT TAA CCT TTC AAC T−3’(配列番号:7)〕とからなるプライマー対;
I7DM3について、前記600FwdプライマーとDR−11Rプライマー〔5’−GGA TCC GAA CTT TTT AAA TGT TCA AAA AC−3’(配列番号:8)〕とからなるプライマー対;
I7DM4について、前記600FwdプライマーとIRプライマー〔5’−GGA TCC CAC AAA CCA TAA AGT TTT AC−3’(配列番号:9)〕を用いたPCRにより作製した。
【0085】
なお、エキソン7上に転位を含まない野生型SMN1から構築された欠失変異体を、それぞれ、I7DM1−C、I7DM1−C、I7DM1−C及びI7DM1−Cと表記し、エキソン7上にCからTへの転位を含む変異体SMN1から構築された欠失変異体を、それぞれ、I7DM1−T、I7DM1−T、I7DM1−T及びI7DM1−Tと表記する場合がある。
【0086】
ついで、得られた各PCR産物を、Not IとBamH Iとで消化し、得られた産物を、エキソントラップベクターpSPL3〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕に挿入した。
【0087】
得られたPCR産物を、商品名:BKLキット(タカラバイオ社製)を用い、エキソントラップベクターpSPL3〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕に連結させた。なお、実験前、得られた構築物全てについて、シークエンスした。
【0088】
前記構築物を用いて、COS−7細胞をトランスフェクションして、24時間後のトランスフェクトCOS−7細胞から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0089】
ついで、得られた全RNA(3.0μg相当量)を、SA2プライマー〔5’−ATC TCA GTG GTA TTT GTG AGC−3’(配列番号:10)〕と、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジー(Life Technologies)〕とを用いて、逆転写させ、スプライシング産物を得た。
【0090】
逆転写反応により生じたスプライシング産物を、pSPL3ベクター特異的プライマー対、SD6プライマー〔5’−TCT GAG TCA CCT GGA CAA CC−3’(配列番号:11)〕及び前記SA2プライマーを用いたPCRにより検出した。なお、PCRは、全量40μlの反応液〔組成:1.5μl RT産物、1.0μM SD6プライマー、1.0mM SA2プライマー、0.2mM dNTPミクスチャー、10×PCR緩衝液、5U rTaq(タカラバイオ社製)〕で行なった。増幅は、94℃で1分間と60℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとする反応を30サイクル行なった後、72℃で5分間インキュベーションすることにより行なった。
【0091】
得られたPCR産物を5% ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。
【0092】
その結果、図3の上部パネルに示されるように、野生型SMN1(C)に関するの種々の欠失変異体をCOS−7細胞にトランスフェクトした場合、全構築物が、SMN エキソン7を含む全長型のmRNA(+エキソン7)を発現したが、エキソン7を欠損したアイソフォームは発現しなかった。
【0093】
対照的に、図3の下部パネルに示されるように、SMN1 エキソン7におけるCからTへの転位と235bpの隣接イントロン6と124bpの隣接イントロン7とを含む変異体SMN1の最長構築物(I7DM1)は、エキソン7の含有型及び排除の両方を有するmRNA(51%含有型)を発現した。
【0094】
図3の下部パネル(I7DM1)に示されるように、エキソントラップベクターにクローン化されたエキソン6からエキソン8を含むCからTへの転位ミニジーンを用いたエキソン含有型の割合は、pCIベクターにクローン化されたエキソン6からエキソン8の領域を含むSMNミニジーンを用いたエキソン含有型の割合よりも高かった。かかる差異は、エキソントラップベクターにクローン化されたミニジーンの配列(約400bp)とは異なる領域におけるSMN エキソン7のスプライシングを調節するいくつかのシス作用エレメントが存在するであろうことを示す。しかしながら、エキソントラップベクターpSPL3にクローン化されたSMN1 エキソン7におけるCからTへの転位を含むミニジーンが、エキソン7の排除の顕著な増加を示したので、これらの構築物が、400bpミニジーンにおけるエキソン7の排除に応答しうるシスエレメントを決定するのに有用であると思われる。
【0095】
隣接イントロンにおける欠失変異体について、図1に示されるように、I7DM1−Tの3’隣接領域の66bpの欠失を含む欠失変異体I7DM4−Tは、SMN エキソン7の排除を増加した(23%含有型)が、I7DM1−Tの52bpの欠失を含む変異体I7DM3−Tの欠失のスプライシングパターンは、I7DM1−Tのものと似ていた。
【0096】
したがって、隣接イントロン7の+59〜+72の14bp領域は、CからTへの転位を含むSMN エキソンの含有型の重要なエレメントであることが示唆される。
【0097】
イントロン7内の前記エレメント2の位置を、図4に示す。また、図4に示されるように、MFOLDプログラム GCGバージョンによる高次構造の解析により、24ヌクレオチドから構成されるエレメント2(配列番号:1)が、特有のステム−ループ構造を有することがわかった。さらに、前記配列は、SMN1とSMN2との間で完全な適合を示し、エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN1 エキソン7及び野生型SMN2のスプライシングの調節に重要であることが示唆された。
【0098】
実施例3
エレメント2におけるステム−ループ構造が、CからTへの転位を含むSMNエキソン7のスプライシングの調節に重要であるかどうかを決定するため、I7DM1−Tのエレメント2におけるステム−ループ構造に種々の変異を導入した。
【0099】
ステム−ループ構造の変異は、I7DM1−T エキソントラップベクターを鋳型とし、変異導入用ヌクレオチド〔5’−CCC CTG AAC ATT TAA AAA GTT CAG ATG−3’(配列番号:12)及び5’−CAT TTG TTT TCC ACA AAC CAT AAA GTT TTA−3’(配列番号:13)〕を用いたPCRにより生じさせた。
【0100】
前記構築物を用いて、COS−7細胞をトランスフェクションして、24時間後のトランスフェクトCOS−7細胞から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0101】
ついで、得られた全RNA(3.0μg相当量)を、SA2プライマーと、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジー(Life Technologies)〕とを用いて、逆転写させ、スプライシング産物を得た。
【0102】
逆転写反応により生じたスプライシング産物を、pSPL3ベクター特異的プライマー対、前記SD6及び前記SA2を用いたPCRにより検出した。なお、PCRは、全量40μlの反応液〔組成:1.5μl RT産物、1.0μM SD6プライマー、1.0mM SA2プライマー、0.2mM dNTPミクスチャー、10×PCR緩衝液、5U rTaq(タカラバイオ社製)〕で行なった。増幅は、94℃で1分間と60℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとする反応を30サイクル行なった後、72℃で5分間インキュベーションすることにより行なった。
【0103】
得られたPCR産物を5% ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。
【0104】
その結果、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物A及び構築物Bを用いた結果から、ループ領域の変異又は欠失は、エキソン7のスプライシングに影響を与えず、エレメント2のループは、スプライシング調節に重要でないことが示唆された。
【0105】
対照的に、ステム構造の破壊は、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物C及び構築物Dを用いた結果、I7DM1−Tの元の構造に比べ、エキソン7含有型の顕著な減少を引き起こし、エキソン7含有型の減少に対する影響は、欠失変異体I7DM4−Tのものと似ていたため、ステム構造が、エレメント2の活性に重要であることがわかった。
【0106】
さらに、ステム構造におけるGからCへの点変異は、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物Eを用いた結果、エキソン7 含有型の劇的な減少を引き起こしたため、ステム構造におけるC−G塩基対がエレメント2のスプライシング活性にも重要であることがわかった。一方、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物Fを用いた結果、ステム構造におけるA−U塩基対がG−C塩基対に置換された場合、エキソン7の含有型を、わずかに減少した。
【0107】
かかる知見より、エレメント2の高次ステム構造が重要であるが、A−U塩基対の配列がそれほど重要でないことが示唆される。
【0108】
実施例4
エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のスプライシングを活性化するかどうかを試験するため、I7DM1−Tベクター中エレメント2のタンデムリピート(3リピート又は4リピート)を含む構築物〔図6のパネル(A)中、エレメント2x3及びエレメント2x4と表記〕を、I7DM1ーTベクターと変異導入用ヌクレオチド〔5’−GTG GAA AAC AAA TGT TTT TGA ACA GTG GAA AAC AAA TGT TTT TGA ACA GTG GAA AAC AAA TGT TTT TGA ACA TTT AAA AAG TTC−3’(配列番号:14)及び5’−AAA CCA TAA AGT TTT ACA AAA GTA AGA TTC AC−3’(配列番号:15)〕を用いたPCRにより作製した。
【0109】
前記構築物を用いて、COS−7細胞をトランスフェクションして、24時間後のトランスフェクトCOS−7細胞から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0110】
ついで、得られた全RNA(3.0μg相当量)を、前記SA2プライマーと、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジー(Life Technologies)〕とを用いて、逆転写させ、スプライシング産物を得た。
【0111】
逆転写反応により生じたスプライシング産物を、pSPL3ベクター特異的プライマー対、前記SD6及び前記SA2を用いたPCRにより検出した。なお、PCRは、全量40μlの反応液〔組成:1.5μl RT産物、1.0μM SD6プライマー、1.0mM SA2プライマー、0.2mM dNTPミクスチャー、10×PCR緩衝液、5U rTaq(タカラバイオ社製)〕で行なった。増幅は、94℃で1分間と60℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとする反応を30サイクル行なった後、72℃で5分間インキュベーションすることにより行なった。
【0112】
得られたPCR産物を5% ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。
【0113】
その結果、図6のパネル(B)に示されるように、SMNのイントロン7における多コピーのエレメント2の挿入は、挿入数に依存して、SMN エキソン7の含有型を増加させることがわかり、エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のイントロンスプライシングエンハンサーであることが示された。
【0114】
実施例5
エレメント2の破壊により、SMN エキソン7のスプライシングパターンの劇的な変化が示されるため、トランス作用因子がエレメント2に特異的に結合し、直接結合を介してそのスプライシングを調節することが推測された。
【0115】
そこで、32P標識オリゴエレメント2と神経芽細胞腫SK−N−SH細胞の核抽出物とを用いたゲルシフトアッセイを行なった。
【0116】
SK−N−SH細胞(1.0×107細胞)を、10mM KClと1mM EDTAと1mM EGTAと5mM ジチオスレイトール(DTT)と1mM (p−アミジノフェニル)メタンスルフォニルフルオリド(PMSF)とを含む10mM HEPES−NaOH(pH7.9) 1ml中、4℃でホモジナイズした。なお、本実験で用いた緩衝液及び他の溶液は、使用前に、商品名:Steritop〔孔径:220nm、ミリポアコーポレーション(Millipore Corporation)製〕によるろ過により、滅菌した。
【0117】
10% Nonidet P−40(商品名)を終濃度0.6%まで添加した後、ホモジネートを15,000rpmで5分間遠心分離した。ペレットを、400mM KClと1mM EDTAと1mM EGTAと1mM DTTと1mM PMSFとを含む20mM Tris−HCl(pH7.5) 10倍容量中に再懸濁させ、15,000rpmで5分間遠心分離した。得られたペレットをゲル移動度シフトアッセイ用の核抽出物として−80℃で保存した。
【0118】
ついで、最終容量20μl(結合緩衝液:20mM HEPES、pH7.9、72mM KCl、1.5mM MgCl2、0.78mM 酢酸マグネシウム、0.52mM DTT、3.8% グリセロール、0.75mM ATP、1mM GTP)において、種々の濃度の核抽出物をRI標識RNAオリゴヌクレオチド(終濃度6nMとして存在)と混合した。なお、前記RI標識オリゴヌクレオチドとして、オリゴ−エレメント2〔5’−GUG GAA AAC AAA UGU UUU UGA ACA−3’(配列番号:16)〕又はオリゴ変異エレメント2〔5’−GUG GAA AAC AAA UGC CCC UGA ACA−3’(配列番号:17)〕を用いた。
【0119】
その後、得られた混合物を、室温で25分間インキュベートし、ついで、ローディング緩衝液(組成:37.5mM Tris−HCl、315mM グリシン、1.5mM EDTA)中4% 未変性アクリルアミドゲルに負荷し、定電圧100V2時間4℃で泳動した。ついで、ゲルを乾燥させ、オートラジオグラフィーフィルムに曝した。
【0120】
その結果、図7のパネル(A)に示されるように、有効な結合が観察され、結合活性は、核抽出物の量に対応して増加した。
【0121】
さらに、結合が特異的であることを確認するため、非標識オリゴエレメント2を用いた競合実験を行なった。
【0122】
その結果、図7のパネル(B)に示されるように、25倍を超えるモル濃度の非標識オリゴRNAと共に核抽出物をプレインキュベーションすると、活性のほぼ完全な除去をもたらしたが、T−Cの置換により変異を導入したエレメント2の非標識変異導入用ヌクレオチド(オリゴ変異体エレメント2)の等量と共に核抽出物をプレインキュベーションすると、RNA核タンパク質の結合を阻害しなかった。これらのデータは、トランス作用因子が、SMN プレmRNAのイントロン7におけるエレメント2に特異的に結合すること及びシス作用エレメント2への結合が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のスプライシングを増強するであろうことを示す。
【0123】
実施例6
SMN遺伝子のイントロン7のエレメント2は、エキソン7 スプライシングの調節に重要な役割を果たすこと及びトランス作用タンパク質が、このエレメントに直接的に結合しうることが示された。そこで、I7DM1−T エキソントラップベクターによりトランスフェクトされた細胞のアンチセンスオリゴヌクレオチドによる処理が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7の含有型の減少を導くに十分であるかどうかを調べた。
【0124】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとして、2’−O−メチル骨格修飾を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド及びホスホロチオエート骨格修飾を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(Japan Bio Service Incで合成したもの)を用いた。用いたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
エレメント2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド〔図8中、As−エレメント2;5’−UGU UCA AAA ACA UUU GUU UUC−3’(配列番号:18)〕、
SMN1のイントロン6のポリピリミジントラクトに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド〔図8中、As−pyr; 5’−GAU AGC UAU AUA UAG AU−3’(配列番号:19)〕
対照として、イントロン6の他の配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド
〔図8中、As−con;5’−GAU AGC UAU AUA UAG AU−3’(配列番号:20)〕である。
【0125】
これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドを、I7DM1−Tがクローン化されたエキソントレッピングベクターと共にCOS−7にコトランスフェクトした。なお、アンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、5nM〜25nMの範囲となるようにした。
【0126】
トランスフェクションから24時間後、慣用の方法により、全RNAを抽出した。プライマー対〔SD6プライマー及びSA2プライマー〕を用いたRT−PCRを行ない、SMNエキソン7のイン・ビボスプライシングに対するこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドの影響を調べた。
【0127】
その結果、図8のパネル(B)に示されるように、As−エレメント2により、アンチセンスオリゴヌクレオチドの量に依存して、SMN エキソン7の含有型が減少することがわかった。また、図8のパネル(C)に示されるように、As−conにより、SMN エキソン7のスプライシングは、変化しなかった。対照的に、As−pyrにより、含有型のわずかに減少した。
【0128】
ポリピリミジントラクトは、プレmRNAスプライシングに必須であるため、前記As−pyrは、シス作用エレメントをブロックするアンチセンスオリゴヌクレオチドとして効果的に働くことが予想された。
【0129】
同様に、As−エレメント2は、SMN エキソン7のスプライシングの阻害を引き起こした。
【0130】
かかる結果により、エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のスプライシングの重要なシス作用性エレメントであることが示される。
【0131】
配列表フリーテキスト
配列番号:1は、エレメント2の配列単位の配列である。
【0132】
配列番号:2は、エレメント2の配列単位の配列である。
【0133】
配列番号:3は、pCIフォワードプライマーの配列である。
【0134】
配列番号:4は、pCIリバースプライマーの配列である。
【0135】
配列番号:5は、600Fwdプライマーの配列である。
【0136】
配列番号:6は、ORプライマーの配列である。
【0137】
配列番号:7は、OR−IRプライマーの配列である。
【0138】
配列番号:8は、DR−11Rプライマーの配列である。
【0139】
配列番号:9は、IRプライマーの配列である。
【0140】
配列番号:10は、SA2プライマーの配列である。
【0141】
配列番号:11は、SD6プライマーの配列である。
【0142】
配列番号:12は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0143】
配列番号:13は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0144】
配列番号:14は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0145】
配列番号:15は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0146】
配列番号:16は、オリゴ−エレメント2の配列である。
【0147】
配列番号:17は、オリゴ−変異体エレメント2の配列である。
【0148】
配列番号:18は、アンチセンスオリゴヌクレオチドAs−エレメント2の配列である。
【0149】
配列番号:19は、アンチセンスオリゴヌクレオチドAs−pyrの配列である。
【0150】
配列番号:20は、アンチセンスオリゴヌクレオチドAs−conの配列である。
【0151】
配列番号:21は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0152】
配列番号:22は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0153】
配列番号:23は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0154】
配列番号:24は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0155】
配列番号:25は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0156】
配列番号:26は、エレメント2の変異体Aの配列である。
【0157】
配列番号:27は、エレメント2の変異体Bの配列である。
【0158】
配列番号:28は、エレメント2の変異体Cの配列である。
【0159】
配列番号:29は、エレメント2の変異体Dの配列である。
【0160】
配列番号:30は、エレメント2の変異体Eの配列である。
【0161】
配列番号:31は、エレメント2の変異体Fの配列である。
【0162】
【発明の効果】
本発明の核酸によれば、全長SMN遺伝子を発現させることができ、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができ、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができるという優れた効果を奏する。また、本発明の核酸導入用担体によれば、本発明の核酸を、細胞に効率よく導入することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明のSMN遺伝子の発現制御方法によれば、全長SMN遺伝子を発現させることができ、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができ、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができるという優れた効果を奏する。また、本発明の医薬組成物によれば、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症の発症を予防又は治療することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明のSMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法によれば、全長SMN遺伝子の発現を増強させうる物質、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物の発現を増強させうる物質等を効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。
【0163】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、SMN1及びSMN2 エキソンのスプライシングパターンを示す。図中、各レーンの上側のバンドは、エキソン6からエキソン8の領域を含む全長転写産物を示し、下側のバンドは、エキソン7を欠損した転写産物を示す。また、図中、WT SMN1(C)は、野生型ミニジーン、変異体SMN1(T)は、エキソン7内部の6ヌクレオチドに位置するCからTへの転位を含むSMN1ミニジーン、WT SMN2(T)は、野生型SMN2ミニジーン、変異体SMN2(C)は、エキソン7内の6ヌクレオチドに位置するTからCへの置換を含むSMN2ミニジーンを示す。
【図2】図2は、エキソントラップベクターの概略図を示す。図中、BPは、分岐点、PPTは、ポリピリミジントラクトを示す。
【図3】図3は、インビトロスプライシングアッセイの結果を示す。上部パネルは、野生型SMN1(C)から構築された欠失変異体の結果であり、下部パネルは、CからTへの転位を含む変異体SMN1から構築された欠失変異体の結果である。なお、下部パネルに示されるスコアは、全転写産物に対するエキソン7含有型の割合であり、値は、4回の解析の平均を示す。
【図4】図4は、イントロン7内におけるエレメント2の位置(上部パネル)及び構造(下部パネル)の概略図を示す。
【図5】図5は、CからTへの転位を含む変異体SMN1のエレメント2のステム−ループにおける変異による、エキソン7を含む転写産物の量に対する影響を調べた結果を示す。パネル(A)のA〜Fは、I7DM1−Tミニジーンにおける種々の変異体の構造の概略図である。図中、○は、野生型エレメント2に対して、置換されたヌクレオチドを示す。パネル(B)は、イン・ビボスプライシング解析の結果を示す。図中、I7DM1−T、エキソントラップベクターにクローン化されたミニジーンAからFは、パネル(A)に対応する。パネル(C)は、各構築物のスプライシングパターンの定量的解析の結果を示す。全転写産物に対するエキソン7含有型の割合は、4回の解析の平均±S.Dで表わされる。
【図6】図6は、エレメント2の挿入数による、エキソン7を含む転写産物の量に対する影響を調べた結果を示す。パネル(A)は、SMNのイントロンにおけるエレメント2のタンデムリピートを有する構築物の概略図を示す。図中、I7DM1−Tは、1コピーのエレメント2を含むオリジナル構築物、エレメント 2−Tx3は、3コピーのエレメント2を含む構築物、エレメント 2−Tx4は、4コピーのエレメント2を含む構築物を示す。パネル(B)は、エレメント2の挿入数による、エキソン7を含む転写産物の量のRT−PCR解析(上部パネル)及び全転写産物に対するエキソン7 含有型の割合(下部パネル)を示す。全転写産物に対するエキソン7 含有型の割合は、4回の解析の平均±S.Dで表わされる。
【図7】図7は、エレメント2に結合する核タンパク質の同定のためのゲル移動度シフトアッセイの結果を示す図である。パネル(A)は、SK−N−SH細胞核抽出物のゲル移動度シフトアッセイの結果を示す。パネル(B)は、野生型エレメント2又は変異体エレメント2の非標識RNAオリゴヌクレオチド(1、5、14モル濃度超)を添加することにより競合アッセイを行なった結果を示す。
【図8】図8は、エレメント2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによる、エキソン7を含む転写産物の発現への影響を調べた結果を示す。パネル(A)は、用いた3つのアンチセンスオリゴヌクレオチド(As−エレメント2、As−con、As−pyr)のSMN遺伝子上の位置を示す。パネル(B)は、As−エレメント2について、エキソントラッピング系を用いたイン・ビボスプライシングのRT−PCR解析の結果を示す。エキソン7含有型の割合を、4回の実験の平均で示し、各レーンの下に示す。パネル(C)は、As−conについて、エキソントラッピング系を用いたイン・ビボスプライシングのRT−PCR解析の結果を示す。エキソン7含有型の割合を、4回の実験の平均で示し、各レーンの下に示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、SMN遺伝子の発現制御のための手段に関する。より詳しくは、本発明は、SMN遺伝子のスプライシングを調節しうるスプライシング調節エレメントの核酸及び核酸導入用担体、SMN遺伝子の発現制御方法、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物、並びにSMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
脊髄性筋萎縮症は、常染色体性劣性疾患であり、最終的に、死に至らしめる近位の四肢及び体幹の筋の衰弱をもたらす脊髄における運動ニューロンの欠損を特徴とする。
【0003】
前記脊髄性筋萎縮症の疾患原因と考えられる遺伝子として、ヒト第5染色体5q13座に局在するsurvival motor neuron(SMN)遺伝子が見出されている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
前記SMN遺伝子は、ヒトにおいては、スプライシングにより、2種のアイソフォーム、すなわち、エキソン7を含まない「SMNΔエキソン7」と、エキソン7を含む「SMN+エキソン7」を生じることが知られている。前記エキソン7を含む「SMN+エキソン7」が存在しない場合、前記脊髄性筋萎縮症を発症すると考えられている。
【0005】
前記脊髄性筋萎縮症の治療法の開発のために、例えば、酪酸塩(酢酸ナトリウム、酪酸アルギニン、酪酸等)、トラポクシン、トリコスタチンA等のヒストンデアセチラーゼ阻害剤を用いて、SMN遺伝子のエキソン7の発現を増加させること(特許文献1を参照のこと)、SMN2遺伝子のエキソン7を含有したDNAでトランスフェクトされた哺乳動物細胞に、SMN2遺伝子のエキソン7の包含を制御する物質をさらし、エキソン7包含とエキソン7スキッピングの割合を調べることにより、SMN2遺伝子のエキソン7包含を制御する物質を試験すること(特許文献2を参照のこと)、SMN2遺伝子のエキソン7包含を制御する物質として、スプライシング調節因子Htra2−beta 1タンパク質をコードする核酸を、哺乳動物細胞にトランスフェクトし、それにより、エキソン7を含まないSMN2転写産物を減少させ、全長SMN2発現をアップレギュレートさせること(前記特許文献2を参照のこと)等が試みられている。
【0006】
しかしながら、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を用いる場合、ヒストンの脱アセチル化が阻害されヒストンが有するヌクレオソーム形成に影響を与えるため、細胞の分裂・増殖が障害される可能性があるという欠点がある。また、前記特許文献2に記載の方法によれば、Htra2−beta1は、各臓器・組織のすべての細胞で発現し、多くの遺伝子のスプライシングを制御しているため、過剰に発現させれば、Htra2−beta1がスプライシングを制御している他の遺伝子のスプライシングに影響を与える可能性があるという欠点がある。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−338502号公報、実施例4等
【特許文献2】
欧州特許公開第1 133 993号明細書(EP 1 133 993 A1)
【非特許文献1】
レフェブレ(Lefebvre,S.)ら,Cell,第80巻,第155頁−第165頁 1995年発行
【非特許文献2】
ロシェット(Rochette,C.T.)ら,Hum.Genet.,第108巻,第255頁−第266頁,2001年発行
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、全長SMN遺伝子を発現させること、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させること、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うこと等の少なくとも1つを可能にする、SMN遺伝子のスプライシング調節エレメントを有する核酸を提供することを目的とする。また、本発明は、前記スプライシング調節エレメントを有する核酸を、細胞に効率よく導入することができる、核酸導入用担体を提供することを目的とする。さらに、本発明は、全長SMN遺伝子を発現させること、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させること等を可能にする、SMN遺伝子の発現制御方法を提供することを目的とする。また、本発明は、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症の発症を予防又は治療することができる、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物を提供することを目的とする。さらに、本発明は、全長SMN遺伝子の発現を増強させうる物質、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物の発現を増強させうる物質等を効率よくスクリーニングすることができる、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。なお、本発明の他の課題は、本明細書の記載及び全教示から明らかである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸、
〔2〕 配列番号:1又は2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記〔1〕記載の核酸のバリアントの核酸、
〔3〕 バリアントが、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24及び配列番号:25からなる群より選ばれた塩基配列からなる、前記〔2〕記載の核酸、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項記載の核酸を含有してなる、核酸導入用担体、
〔5〕 下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを、染色体に組み込ませることを特徴とする、SMN遺伝子の発現制御方法、
〔6〕前記〔1〕〜〔3〕いずれか1項記載の核酸又は前記〔4〕記載の核酸導入用担体を有効成分として含有してなる、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物、
〔7〕 (I)被験物質の存在下及び非存在下に、
下記(1)〜(3):
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクターを含む細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)において、被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定するステップ、
を含み、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することを指標とする、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のスプライシング調節エレメントの核酸は、配列番号:1に示される塩基配列(RNA)又は配列番号:2に示される塩基配列(DNA)からなることに1つの大きな特徴がある。本発明の核酸は、Survival motor neuron(SMN)遺伝子のシスエレメント(以下、エレメント2という)の配列のうち、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節する配列単位であり、ステム−ループ構造を形成する核酸である。
【0011】
したがって、本発明の核酸によれば、エキソン7を含むSMN転写産物を生じさせるという優れた効果を発揮する。また、本発明の核酸によれば、SMN1遺伝子が欠損又は変異している場合であっても、スプライシングにより、SMN2からエキソン7を含むSMN転写産物を生じさせうるという優れた効果を発揮する。
【0012】
前記survival motor neuron(SMN)遺伝子には、SMN1遺伝子〔ジーンバンク(GenBank) アクセッション番号:AH006635〕と、該SMN1遺伝子と数個のヌクレオチドが異なる塩基配列を有するSMN2遺伝子との2種のSMN遺伝子が存在することが知られている。
【0013】
また、前記SMN1遺伝子は、スプライシングにより、通常、エキソン1〜エキソン8までの全てのエキソンの転写産物を生じるが、前記SMN2遺伝子は、オルタナティブスプライシングにより、エキソン7を含まない転写産物を生じるという性質を有する。さらに、前記SMN2遺伝子の翻訳産物は、前記SMN1遺伝子の翻訳産物の機能を補うことができないという性質を有する。したがって、本発明の核酸によれば、SMN遺伝子又はSMN遺伝子の翻訳産物の本来の機能が欠損している場合、あるいは、SMN1遺伝子が欠損又は変異している場合であっても、エキソン7を含むSMN転写産物を生じさせ、SMN遺伝子の本来の機能を補うことができるという優れた効果を発揮する。さらに、本発明の核酸によれば、エキソン7を含むSMN転写産物を生じさせることができるため、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、具体的には、脊髄性筋萎縮症等の疾患の治療に用いられうる。
【0014】
なお、自然界においては、天然の遺伝子において、自然発生的(naturally occuring)に変異が起こって生じたバリアントであっても、該バリアントによりコードされる産物が、本来の機能を発揮する場合がある。したがって、本発明のスプライシング調節エレメントの核酸には、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであれば、配列番号:1又は2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、バリアントの核酸も含まれる。前記バリアントの核酸は、好ましくは、配列番号:1又は2に示される塩基配列と少なくとも1塩基、すなわち、1又は数個の塩基が、核酸多型を介して異なる塩基配列を有するものであり、ステム−ループ構造を形成する核酸であることが望ましい。
【0015】
前記バリアントは、人為的に、例えば、慣用の部位特異的変異導入方法等により作製することもできる。
【0016】
前記配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸のバリアントの塩基配列としては、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであればよく、具体的には、例えば、
配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸と中ストリンジェント、好ましくは、高ストリンジェントの条件下にハイブリダイズする核酸のアンチセンス鎖の塩基配列、
配列番号:1に示される塩基配列からなる核酸に対し、BLASTアルゴリズム〔例えば、BLASTNにおいて、期待値10、ワードサイズ3、ギャップコスト(Existence:11、Extension:1)〕により、最適な状態にアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも70%、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上である塩基配列であって、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するエレメント、好ましくは、ステム−ループを形成するエレメントの塩基配列であって、
配列番号:1の1位のG及び2位のUが、それぞれ、A及びAに置換された塩基配列
配列番号:1の3位のG及び20位のGが、それぞれ、U及びUに置換された塩基配列、
配列番号:1の21位のA及び22位のAが、それぞれ、U及びUに置換された塩基配列、
等が挙げられる。また、前記配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸のバリアントの塩基配列としては、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであればよく、具体的には、例えば、
配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸と中ストリンジェント、好ましくは、高ストリンジェントの条件下にハイブリダイズする核酸のアンチセンス鎖の塩基配列、
配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸に対し、BLASTアルゴリズム〔例えば、BLASTNにおいて、期待値10、ワードサイズ3、ギャップコスト(Existence:11、Extension:1)〕により、最適な状態にアラインメントされ、算出された配列同一性が、少なくとも70%、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上である塩基配列であって、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するエレメント、好ましくは、ステム−ループを形成するエレメントの塩基配列、
配列番号:2の1位のG及び2位のTが、それぞれ、A及びAに置換された塩基配列
配列番号:2の3位のG及び20位のGが、それぞれ、T及びTに置換された塩基配列、
配列番号:2の21位のA及び22位のAが、それぞれ、T及びTに置換された塩基配列、
等が挙げられる。
【0017】
本明細書において、前記「中ストリンジェントな条件」とは、組成:6×SSC(0.9M NaCl、0.09M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と、5×デンハート(0.5% FicollTM、0.5% ポリビニルピロリジン、0.5% ウシ血清アルブミン)と、0.1% SDSとを含む溶液中、配列番号:1又は2に示される塩基配列からなる核酸とともに37℃で一晩保温し、低イオン強度、例えば、2×SSC、よりストリンジェントには、0.1×SSC等の条件及び/又はより高温、37℃以上、ストリンジェントには、50℃以上、よりストリンジェントには、60℃以上、より一層ストリンジェントには、65℃以上等の条件下での洗浄を行なう条件により達成されうる。
【0018】
前記バリアントとしては、より具体的には、例えば、配列番号:21に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:22に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:23に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:24に示される塩基配列からなる核酸、配列番号:25に示される塩基配列からなる核酸等が挙げられる。
【0019】
なお、核酸が、ステム−ループ構造を形成するものであることは、MFOLDプログラム(Michael Zuker Rensselaer Polytechnic Institute製)等の慣用のプログラムにより二次構造を解析することにより、評価されうる。
【0020】
また、核酸が、SMN遺伝子のスプライシング、具体的には、エキソン7を生じさせるスプライシングを調節、具体的には、正に調節するものであることは、
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクターを用いることにより評価されうる。具体的には、前記エキソントラップベクター中の前記(3)のイントロン7の塩基配列において、配列番号:2に示される塩基配列の領域を、被験対象の核酸と置換し、得られた構築物を、適切な宿主細胞、例えば、COS−7細胞、SK−N−SH細胞等に、慣用の遺伝子導入方法により導入し、得られた細胞における前記(2)のエキソン7に対応する転写産物の存在を検出することにより評価されうる(「スプライシング能評価法」という)。
【0021】
ここで、「エキソン7を生じさせるスプライシングを正に調節する」とは、エキソン7を包含した転写産物(エキソン7含有型)を生じるか、あるいは該転写産物の量を増大させるように、スプライシングを制御することを意味する。
【0022】
前記エキソントラップベクターとしては、SV40プロモーターを持ち、HIV−tat遺伝子の2つのエキソン間にクローニングサイトを有するベクターが挙げられ、具体的には、pSPL3ベクター〔プロメガ(Promega)社製〕等が挙げられる。
【0023】
前記(1)のイントロン6と、(2)のエキソン7と、(3)のイントロン7は、前記ジーンバンクアクセッション番号:AH006635の配列に基づき得ることもできる。
【0024】
前記核酸構築物は、例えば、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版〔ザンブルーク(Sambrook)ら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nded.,(1989)〕等に記載の慣用の遺伝子操作法により構築されうる。
【0025】
なお、本発明においては、前記エキソントラップベクター構築物の他、適切なプロモーターの制御下に、SMN遺伝子のエキソン6〜エキソン8までの領域のゲノム由来配列を含むプラスミドも用いられうる。かかる態様も本発明に含まれる。
【0026】
エキソン7の検出は、細胞から抽出された全RNAを、エキソン7の塩基配列に基づいて作製されたプローブを用いたノーザンブロット解析、用いたベクターに特異的なプライマー対や該エキソン7に特異的なプライマー対を用いたRT−PCR解析等に供することより行なわれうる。なお、前記プローブ又はプライマー対は、かかる検出を容易にする標識物質(蛍光物質、放射性同位元素等)によりに標識されていてもよい。
【0027】
前記プローブの鎖長は、特に限定はないが、非特異的なハイブリダイゼーションを防止する観点から、連続した15ヌクレオチド長以上であり、好ましくは、18ヌクレオチド長以上であることが望ましい。前記プローブとしては、例えば、エキソン7の塩基配列からなる核酸又はそのアンチセンス鎖、前記エキソン7の塩基配列のうち、データベースの公知配列に存在しない塩基配列からなる核酸又はそのアンチセンス鎖、エキソン7の塩基配列中の連続した15ヌクレオチド長以上の塩基配列を有する核酸又はそのアンチセンス鎖等が挙げられる。
【0028】
また、プライマーの鎖長は、特に限定はないが、例えば、15〜40ヌクレオチド長であり、好ましくは、17〜30ヌクレオチド長であることが望ましい。
【0029】
前記プローブ又はプライマーに適した配列は、例えば、Tm値等、公知配列、核酸の二次構造の形成等を考慮し、プローブ及び/又はプライマーのデザインを支援する慣用のソフトウェアなどにより得られうる。
【0030】
本発明の核酸は、前記塩基配列を有するため、全長SMN遺伝子を発現させることができ、SMN1遺伝子が欠損又は変異して機能欠損を起こしている場合であっても、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができ、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができる。
【0031】
また、本発明の核酸は、細胞に導入可能な担体に組み込むこと又は保持させることにより得られた核酸導入用担体により、より効率よく細胞等に導入することができる。したがって、かかる核酸導入用担体も本発明に含まれる。
【0032】
本発明の核酸導入用担体は、本発明の核酸を含有することに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の核酸導入用担体は、前記塩基配列を有するため、全長SMN遺伝子を発現させることができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の核酸導入用担体は、前記塩基配列を有するため、SMN1遺伝子が欠損又は変異して機能欠損を起こしている場合であっても、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができる。さらに、本発明の核酸導入用担体は、前記塩基配列を有するため、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができるという優れた効果を発揮する。
【0033】
また、本発明の核酸導入用担体は、本発明の核酸を含有し、かつ該核酸が、細胞に導入可能な担体に組み込まれていること又は保持されていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の核酸導入用担体によれば、本発明の核酸を、より効率よく、細胞等に導入することができ、さらに、より効率よく染色体上のターゲティング部位(例えば、SMN遺伝子のイントロン7等)に組み込むことができるという優れた効果を発揮する。
【0034】
前記「細胞に導入可能な担体」としては、例えば、導入対象となる細胞等に適したベクター、金粒子、リポソーム等が挙げられる
【0035】
ベクターとしては、例えば、宿主細胞中で機能するプロモーター〔例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター等〕を含む哺乳動物細胞用のベクター(レトロウイルス系ベクター、セムリキフォレストウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)等が挙げられる。
【0036】
なお、本発明の核酸導入用担体には、染色体上のターゲティング部位(例えば、染色体上のSMN遺伝子のイントロン7等)との相同組換えを可能にする配置で、本発明の核酸と、相同組換えに適した配列からなる核酸とが配置された核酸構築物も含まれる。なお、前記核酸構築物は、さらに、前記「細胞に導入可能な担体」に組み込み、又は保持させてもよい。
【0037】
前記細胞としては、例えば、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞、SY−5Y細胞、ヒト初代培養神経細胞、COS−7細胞、HeLa細胞、293細胞等が挙げられる。
【0038】
前記「相同組換えを可能にする配置」としては、特に限定されないが、順に、SMN遺伝子のエキソン7と、
SMN遺伝子のイントロン7上に下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを有する核酸と
SMN遺伝子のエキソン8と
を有する配置等が挙げられる。
【0039】
本発明の核酸及び本発明の核酸導入用担体によれば、SMN遺伝子のスプライシングを調節することができ、SMN遺伝子の発現制御方法が提供される。
【0040】
本発明のSMN遺伝子の発現制御方法は、本発明の核酸を染色体に組み込ませることを1つの大きな特徴とする。したがって、本発明の発現制御方法によれば、本発明の核酸を染色体上のターゲティング部位(すなわち、SMN遺伝子のイントロン7)に組み込むため、全長SMN遺伝子を発現させることができ、また、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができるという優れた効果が発揮される。
【0041】
本発明の発現制御方法としては、下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを、染色体に組み込ませることを特徴とする、SMN遺伝子の発現制御方法が挙げられ、具体的には、
(A)本発明の核酸又は核酸導入用担体を、細胞に導入するステップ、及び
(B)ステップ(A)で得られた細胞を、スプライシングが行なわれるに適した条件下に維持するステップ
を含む方法等が挙げられる。
【0042】
なお、本発明のSMN遺伝子の発現制御方法は、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症に罹患した個体、発症の可能性がある個体に対して、適用することにより、該疾患の発症の予防又は治療を行なうことができる。
【0043】
前記ステップ(A)においては、本発明の核酸が、相同組換えにより、ターゲティング部位(すなわち、SMN遺伝子のイントロン7)に、効率よく組み込ませる観点から、好ましくは、染色体上のターゲティング部位(例えば、染色体上のSMN遺伝子のイントロン7等)との相同組換えを可能にする配置で、本発明の核酸と、相同組換えに適した配列からなる核酸とが配置された核酸構築物である核酸導入用担体又は前記核酸構築物を前記「細胞に導入可能な担体」に組み込みこと若しくは保持させることにより得られた核酸導入用担体を用いることが望ましい。
【0044】
前記細胞としては、例えば、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH細胞、SY−5Y細胞、ヒト初代培養神経細胞、COS−7細胞、HeLa細胞、293細胞等が挙げられる。なお、前記細胞は、培養細胞であってもよく、個体(ヒト、非ヒト哺乳動物等)の細胞であってもよい。
【0045】
本発明の核酸又は核酸導入用担体の使用量は、核酸の量として、100ng以上であり、好ましくは、1μg以上であり、より好ましくは、10μg以上であることが望ましく、1000μg以下であり、好ましくは、100μg以下であり、より好ましくは20μg以下であることが望ましい。
【0046】
培養細胞細胞への本発明の核酸又は核酸導入用担体の導入法としては、例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクション、リン酸カルシウム法、金粒子を用いた遺伝子銃による直接導入法、リポフェクション法等が挙げられる。また、個体への本発明の核酸又は核酸導入用担体の導入法としては、ウイルスベクターやリポソームを介して、直接個体の体内に導入するin vivo法、個体から、ある種の細胞を取り出し、該細胞に対して、前記培養細胞への導入法の例のように、体外で本発明の核酸又は核酸導入用担体を導入し、得られた細胞を体内に戻すというex vivo法等が挙げられる。
【0047】
ついで、前記ステップ(B)において、本発明の核酸又は本発明の核酸導入用担体が導入された細胞は、細胞内でスプライシングが行なわれるように維持される。
【0048】
ここで、細胞が、培養細胞である場合、細胞に応じた培養条件下で該細胞を維持することにより、スプライシングが行われる。また、個体の細胞に直接的に導入する場合には、個体の通常の活動を維持することにより、スプライシングが行なわれる。
【0049】
本発明の発現制御方法においては、細胞からmRNAを単離し、エキソン7に対応する転写産物の存在をRT−PCR、ノーザンブロット解析等で検出すること等により、SMN遺伝子の発現制御、具体的には、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシングが評価されうる。
【0050】
また、本発明の核酸及び核酸導入用担体によれば、前記したように、全長SMN遺伝子を発現させることができるため、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物を提供することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物は、本発明の核酸及び核酸導入用担体を有効成分として含有することに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の医薬組成物は、全長SMN遺伝子を発現させること、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させること、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うこと等が可能になるため、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症の発症を予防又は治療することができるという優れた効果を発揮する。
【0052】
本発明の医薬組成物中の有効成分の含有量は、治療目的の疾患及びその病状の程度、患者の年齢、体重等に応じて適宜設定されうるが、例えば、本発明の核酸の量として、薬効が期待できる投与量の観点から、0.1g以上、好ましくは、1.0g以上、より好ましくは、数g以上であり、100g以下、好ましくは、30g以下、より好ましくは、10g以下であることが望ましい。
【0053】
本発明の医薬組成物は、前記有効成分に加え、核酸を安定に保持しうる助剤(例えば、緩衝液)、投与形態に応じた慣用の助剤等を適宜含有していてもよい。
【0054】
本発明の医薬組成物の投与は、例えば、本発明の発現制御方法における個体への本発明の核酸又は核酸導入用担体の導入法と同様に行なわれうる。具体的には、例えば、前記in vivo法により投与する場合、ウイルスベクター、リポソーム等を介して、投与対象の組織、器官等に応じて、静脈投与、動脈投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、局所投与等が行なわれうる。また、前記ex vivo法により行なう場合、1)個体より細胞を取り出し、2)該細胞に本発明の医薬組成物を、前記in vivo法により導入し、3)再度、細胞を個体の体内に戻すことにより行なわれる。
【0055】
本発明の医薬組成物の薬理評価は、前記スプライシング能評価法を行ない、SMN遺伝子の転写産物にエキソン7が包含されていることを確認すること等により行なわれうる。
【0056】
また、本発明の核酸の動態及び/又はスプライシング能を指標として、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質をスクリーニングすることができる。すなわち、前記スプライシング能評価法は、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニングに適用されうる。本発明には、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法も含まれる。
【0057】
本発明のスクリーニング方法は、(I)被験物質の存在下及び非存在下に、下記(1)〜(3):
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクターを含む細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)において被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、前記ステップ(I)において被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定するステップ、
を含み、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することを指標とする方法である。
【0058】
本発明のスクリーニング方法は、前記核酸構築物を用いることに1つの大きな特徴がある。本発明のスクリーニング方法は、前記核酸構築物を用いるため、本発明の核酸のスプライシング能に作用する物質を効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。また、本発明のスクリーニング方法は、前記核酸構築物を用いることにより、本発明の核酸のスプライシング能を指標として評価するため、全長SMN遺伝子の発現を増強させうる物質、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物の発現を増強させうる物質等を効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。
【0059】
本発明のスクリーニング方法に用いられる細胞は、前記スプライシング能評価法に用いられるものと同様である。
【0060】
被験物質としては、例えば、低分子又は高分子の有機化合物、微生物代謝産物等が挙げられる。
【0061】
前記ステップ(I)は、被験物質を含有した培地又は被験物質を含まない培地で、前記細胞を維持することにより行なわれうる。ここで、前記培地は、細胞に応じたものが挙げられ、例えば、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、α−Minimum Essential Medium(α−MEM)、RPMI1640等が挙げられる。
【0062】
ついで、ステップ(I)において被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、前記ステップ(I)において被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定する〔ステップ(II)〕。
【0063】
ステップ(II)において、転写産物は、慣用の方法により、ステップ(I)で得られた細胞から、全RNAを得、得られた全RNAについて、前記スプライシング能評価法と同様のプローブ又はプライマー対を用い、ノーザンブロット解析、RT−PCRを行なうことにより測定されうる。
【0064】
本発明のスクリーニング方法においては、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することが、該被験物質が、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質であることの指標となる。
【0065】
また、本発明の核酸に結合する物質は、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシングを調節することが期待される。したがって、本発明の核酸により、本発明の核酸に結合する物質、特に、スプライシング能を調節する物質、例えば、結合タンパク質、そのミメティクス、化合物等をスクリーニングすることもできる。この場合、1)本発明の核酸と被験物質(タンパク質含有試料、細胞抽出物等)との結合の有無を検出し、
2)該核酸に結合した被験物質と、前記核酸構築物とが導入された細胞を得、
3)細胞内におけるSMN遺伝子のエキソン7に対応する転写産物を測定することにより、被験物質が、本発明の核酸に結合し、スプライシング能を調節する物質であるかどうかを評価することができる。なお、対照として、被験物質が導入されていないが、前記核酸構築物が導入された細胞が用いられる。
【0066】
結合の有無は、ゲル移動度シフトアッセイ、共鳴プラズモン相互作用解析等の慣用の方法により検出できる。
【0067】
ついで、被験試料から、結合した物質を単離し、その構造(例えば、アミノ酸配列等)を同定する。
【0068】
その後、得られた構造の情報を基に、該核酸に結合した被験物質と、前記核酸構築物とが導入された細胞を得る。
【0069】
なお、本発明においては、前記エキソントラップベクター構築物を用いる代わりに、適切なプロモーターの制御下に、SMN遺伝子のエキソン6〜エキソン8までの領域のゲノム由来配列を含むプラスミドも用いられうる。かかる態様も本発明に含まれる。
【0070】
さらに、本発明においては、前記エキソントラップベクター構築物を用いる代わりに、SMN遺伝子のエキソン6〜エキソン8までの領域のゲノム由来配列を有するミニジーンをpre−mRNAとして転写させ、得られた産物を、試験管内で核抽出液若しくは転写系と反応させ、電気泳動等により解析することにより、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質をスクリーニングすることもできる。かかる態様も本発明に含まれる。
【0071】
【実施例】
以下、本発明を、下記実施例により、具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。また、下記実施例において、培地の組成は、特に明記しない限り、「分子細胞生物学基礎実験法」 第50頁〜第51頁、1994年9月1日発行、発行所:株式会社 南江堂、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版〔ザンブルーク(Sambrook)ら、Molecular Cloning : A Laboratory Manual 2nd ed.,(1989)〕等の記載に基づく。
【0072】
実施例1
SMN遺伝子について、イン・ビボでのスプライシングを調べるため、pCI哺乳動物発現ベクター中エキソン6からエキソン8の領域を含むSMN1 ミニジーンの構築物及びpCI哺乳動物発現ベクター中エキソン6からエキソン8を含むSMN2 ミニジーンの構築物〔エリオット アンドロフィー(Elliot Androphy)博士(Tufts University)及びクリスチャン ローソン(Christian Lorson)博士より贈与された〕を用いた。
【0073】
また、pCIベクター中SMN1 エキソン6からエキソン8の領域を含み、かつエキソン7中にCからTへの転位を含むミニジーンの構築物について、部位特異的変異導入方法によりエレメント1に変異導入することにより作製した。
【0074】
前記構築物のトランスフェクションには、COS−7細胞又はSK−N−SH細胞を用いた。前記COS−7細胞の培養は、10% ウシ胎仔血清(FBS)/Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)上、37℃、5% CO2の条件下で行ない、SK−N−SH細胞の培養は、10% FBSを含むα−Minimum Essential Medium(α−MEM)上、37℃、5% CO2の条件下で行なった。前記細胞を、3.5cmディッシュ上、60〜80%コンフルエンシーの密度で播種した。
【0075】
ついで、商品名:LipofectAMINE reagent又は商品名:LipofectAMINE ACE reagent〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕を用い、製造者のプロトコールに従い、前記構築物(1.0μg相当量)を、COS−7細胞又はSK−N−SH細胞にトランスフェクトした。
【0076】
得られたトランスフェクト細胞を、緩衝液RLT〔キアジェン(Qiagen)社製〕に溶解させ、得られた溶解物から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0077】
得られた全RNAと、ランダムプライマー(タカラバイオ社製)と、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕とを、20μlの反応液〔組成:2.7μM ランダムプライマー Hexa−デオキシリボヌクレオチドミクスチャー(タカラバイオ社製)、0.5mMdNTPミクスチャー、12.5mM DTT、5×第1鎖緩衝液、200UM−HLV逆転写酵素)中、37℃で、60分間反応させることにより、第1鎖cDNAを合成した。
【0078】
ついで、前記構築物から生成した前記第1鎖cDNA 1.2μgと、各0.4μMのpCIフォワードプライマー〔5’−GCT AAC GCA GTC AGT GCT TC−3’ (配列番号:3)〕とpCIリバースプライマー〔5’−GTA TCT TAT CAT GTC TGC TCG−3’(配列番号:4)〕とからなるプライマー対と、微量の[α−32P] dNTPを含む0.2μM dNTPと、5U rTaq DNAポリメラーゼと10×PCR緩衝液(タカラバイオ社製)とを含む全量50μlの反応液で、PCRを行ない、イン・ビボでのスプライシングを調べた。
【0079】
なお、増幅条件は、94℃、2分間のインキュベーションによる開始変性ステップの後、94℃、30秒間と56℃、1.5分間と72℃、1分間とを1サイクルとする30サイクルの反応ステップを行ない、その後、72℃、10分間の最終伸長ステップを行なう条件とした。
【0080】
得られた反応産物を、5% ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動により、分離した。各バンドの強度の定量化を、商品名:Densitography Program〔アトー株式会社製〕を用いて行なった。エキソン7含有型の割合を、全バンドの強度に対するエキソン7含有型の強度の割合として定量化し、表わした。その結果を図1に示す。
【0081】
その結果、図1に示されるように、エキソン6からエキソン8の領域を含むSMN1ミニジーン構築物及びSMN2ミニジーン構築物それぞれの一過性トランスフェクションにより、SMN1 mRNAは、全長転写産物を発現するが、SMN2は、低レベルの全長転写産物と高レベルのエキソン7欠損アイソフォーム(SMNΔ7)とを産生することが確認された。
【0082】
また、図1に示されるように、SMN1のエキソン7内の6ヌクレオチドに存在するCからTへの置換は、エキソン7の排除をもたらし、エキソン7のスプライシングパターンは、野生型SMN2のエキソン7に似ていることがわかった。対照的に、変異体SMN2(SMN2におけるTからCへの置換)ミニジーンは、全長SMN転写産物を産生することがわかった。
【0083】
実施例2
SMN エキソン7のスキッピングに応答しうるシス作用エレメントを決定するために、エキソン7と隣接イントロン6及び隣接イントロン7とを含む野生型SMN1ミニジーンと変異体SMN1(エキソン7におけるCからTへの転位)ミニジーンとの両方の種々の欠失変異体を構築し、これらをエキソントラップベクター pSPL3にクローン化した。かかる欠失変異体の模式図を図2に示す。
【0084】
イントロン6とエキソン7とイントロン7とを含むSMN1の種々の欠失変異体を、下記プライマー対:
I7DM1について、600Fwdプライマー〔5’−AAG CTT GGC ATG AGC CAC TGC AAG AAA AC−3’(配列番号:5)〕とORプライマー〔5’−GGA TCC GAG AAT TCT AGT AGG GAT GTA G−3’(配列番号:6)〕とからなるプライマー対;
I7DM2について、前記600FwdプライマーとOR−IRプライマー〔5’−AAG CTT GTT TTA CAT TAA CCT TTC AAC T−3’(配列番号:7)〕とからなるプライマー対;
I7DM3について、前記600FwdプライマーとDR−11Rプライマー〔5’−GGA TCC GAA CTT TTT AAA TGT TCA AAA AC−3’(配列番号:8)〕とからなるプライマー対;
I7DM4について、前記600FwdプライマーとIRプライマー〔5’−GGA TCC CAC AAA CCA TAA AGT TTT AC−3’(配列番号:9)〕を用いたPCRにより作製した。
【0085】
なお、エキソン7上に転位を含まない野生型SMN1から構築された欠失変異体を、それぞれ、I7DM1−C、I7DM1−C、I7DM1−C及びI7DM1−Cと表記し、エキソン7上にCからTへの転位を含む変異体SMN1から構築された欠失変異体を、それぞれ、I7DM1−T、I7DM1−T、I7DM1−T及びI7DM1−Tと表記する場合がある。
【0086】
ついで、得られた各PCR産物を、Not IとBamH Iとで消化し、得られた産物を、エキソントラップベクターpSPL3〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕に挿入した。
【0087】
得られたPCR産物を、商品名:BKLキット(タカラバイオ社製)を用い、エキソントラップベクターpSPL3〔ライフテクノロジーズ(Life Technologies)社製〕に連結させた。なお、実験前、得られた構築物全てについて、シークエンスした。
【0088】
前記構築物を用いて、COS−7細胞をトランスフェクションして、24時間後のトランスフェクトCOS−7細胞から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0089】
ついで、得られた全RNA(3.0μg相当量)を、SA2プライマー〔5’−ATC TCA GTG GTA TTT GTG AGC−3’(配列番号:10)〕と、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジー(Life Technologies)〕とを用いて、逆転写させ、スプライシング産物を得た。
【0090】
逆転写反応により生じたスプライシング産物を、pSPL3ベクター特異的プライマー対、SD6プライマー〔5’−TCT GAG TCA CCT GGA CAA CC−3’(配列番号:11)〕及び前記SA2プライマーを用いたPCRにより検出した。なお、PCRは、全量40μlの反応液〔組成:1.5μl RT産物、1.0μM SD6プライマー、1.0mM SA2プライマー、0.2mM dNTPミクスチャー、10×PCR緩衝液、5U rTaq(タカラバイオ社製)〕で行なった。増幅は、94℃で1分間と60℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとする反応を30サイクル行なった後、72℃で5分間インキュベーションすることにより行なった。
【0091】
得られたPCR産物を5% ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。
【0092】
その結果、図3の上部パネルに示されるように、野生型SMN1(C)に関するの種々の欠失変異体をCOS−7細胞にトランスフェクトした場合、全構築物が、SMN エキソン7を含む全長型のmRNA(+エキソン7)を発現したが、エキソン7を欠損したアイソフォームは発現しなかった。
【0093】
対照的に、図3の下部パネルに示されるように、SMN1 エキソン7におけるCからTへの転位と235bpの隣接イントロン6と124bpの隣接イントロン7とを含む変異体SMN1の最長構築物(I7DM1)は、エキソン7の含有型及び排除の両方を有するmRNA(51%含有型)を発現した。
【0094】
図3の下部パネル(I7DM1)に示されるように、エキソントラップベクターにクローン化されたエキソン6からエキソン8を含むCからTへの転位ミニジーンを用いたエキソン含有型の割合は、pCIベクターにクローン化されたエキソン6からエキソン8の領域を含むSMNミニジーンを用いたエキソン含有型の割合よりも高かった。かかる差異は、エキソントラップベクターにクローン化されたミニジーンの配列(約400bp)とは異なる領域におけるSMN エキソン7のスプライシングを調節するいくつかのシス作用エレメントが存在するであろうことを示す。しかしながら、エキソントラップベクターpSPL3にクローン化されたSMN1 エキソン7におけるCからTへの転位を含むミニジーンが、エキソン7の排除の顕著な増加を示したので、これらの構築物が、400bpミニジーンにおけるエキソン7の排除に応答しうるシスエレメントを決定するのに有用であると思われる。
【0095】
隣接イントロンにおける欠失変異体について、図1に示されるように、I7DM1−Tの3’隣接領域の66bpの欠失を含む欠失変異体I7DM4−Tは、SMN エキソン7の排除を増加した(23%含有型)が、I7DM1−Tの52bpの欠失を含む変異体I7DM3−Tの欠失のスプライシングパターンは、I7DM1−Tのものと似ていた。
【0096】
したがって、隣接イントロン7の+59〜+72の14bp領域は、CからTへの転位を含むSMN エキソンの含有型の重要なエレメントであることが示唆される。
【0097】
イントロン7内の前記エレメント2の位置を、図4に示す。また、図4に示されるように、MFOLDプログラム GCGバージョンによる高次構造の解析により、24ヌクレオチドから構成されるエレメント2(配列番号:1)が、特有のステム−ループ構造を有することがわかった。さらに、前記配列は、SMN1とSMN2との間で完全な適合を示し、エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN1 エキソン7及び野生型SMN2のスプライシングの調節に重要であることが示唆された。
【0098】
実施例3
エレメント2におけるステム−ループ構造が、CからTへの転位を含むSMNエキソン7のスプライシングの調節に重要であるかどうかを決定するため、I7DM1−Tのエレメント2におけるステム−ループ構造に種々の変異を導入した。
【0099】
ステム−ループ構造の変異は、I7DM1−T エキソントラップベクターを鋳型とし、変異導入用ヌクレオチド〔5’−CCC CTG AAC ATT TAA AAA GTT CAG ATG−3’(配列番号:12)及び5’−CAT TTG TTT TCC ACA AAC CAT AAA GTT TTA−3’(配列番号:13)〕を用いたPCRにより生じさせた。
【0100】
前記構築物を用いて、COS−7細胞をトランスフェクションして、24時間後のトランスフェクトCOS−7細胞から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0101】
ついで、得られた全RNA(3.0μg相当量)を、SA2プライマーと、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジー(Life Technologies)〕とを用いて、逆転写させ、スプライシング産物を得た。
【0102】
逆転写反応により生じたスプライシング産物を、pSPL3ベクター特異的プライマー対、前記SD6及び前記SA2を用いたPCRにより検出した。なお、PCRは、全量40μlの反応液〔組成:1.5μl RT産物、1.0μM SD6プライマー、1.0mM SA2プライマー、0.2mM dNTPミクスチャー、10×PCR緩衝液、5U rTaq(タカラバイオ社製)〕で行なった。増幅は、94℃で1分間と60℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとする反応を30サイクル行なった後、72℃で5分間インキュベーションすることにより行なった。
【0103】
得られたPCR産物を5% ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。
【0104】
その結果、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物A及び構築物Bを用いた結果から、ループ領域の変異又は欠失は、エキソン7のスプライシングに影響を与えず、エレメント2のループは、スプライシング調節に重要でないことが示唆された。
【0105】
対照的に、ステム構造の破壊は、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物C及び構築物Dを用いた結果、I7DM1−Tの元の構造に比べ、エキソン7含有型の顕著な減少を引き起こし、エキソン7含有型の減少に対する影響は、欠失変異体I7DM4−Tのものと似ていたため、ステム構造が、エレメント2の活性に重要であることがわかった。
【0106】
さらに、ステム構造におけるGからCへの点変異は、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物Eを用いた結果、エキソン7 含有型の劇的な減少を引き起こしたため、ステム構造におけるC−G塩基対がエレメント2のスプライシング活性にも重要であることがわかった。一方、図5のパネル(B)に示されるように、図5のパネル(A)の構築物Fを用いた結果、ステム構造におけるA−U塩基対がG−C塩基対に置換された場合、エキソン7の含有型を、わずかに減少した。
【0107】
かかる知見より、エレメント2の高次ステム構造が重要であるが、A−U塩基対の配列がそれほど重要でないことが示唆される。
【0108】
実施例4
エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のスプライシングを活性化するかどうかを試験するため、I7DM1−Tベクター中エレメント2のタンデムリピート(3リピート又は4リピート)を含む構築物〔図6のパネル(A)中、エレメント2x3及びエレメント2x4と表記〕を、I7DM1ーTベクターと変異導入用ヌクレオチド〔5’−GTG GAA AAC AAA TGT TTT TGA ACA GTG GAA AAC AAA TGT TTT TGA ACA GTG GAA AAC AAA TGT TTT TGA ACA TTT AAA AAG TTC−3’(配列番号:14)及び5’−AAA CCA TAA AGT TTT ACA AAA GTA AGA TTC AC−3’(配列番号:15)〕を用いたPCRにより作製した。
【0109】
前記構築物を用いて、COS−7細胞をトランスフェクションして、24時間後のトランスフェクトCOS−7細胞から、商品名:RNeasy Mini Kit〔キアジェン(Qiagen)社製〕を用いて、全RNAを単離した。
【0110】
ついで、得られた全RNA(3.0μg相当量)を、前記SA2プライマーと、MMLV逆転写酵素〔ライフテクノロジー(Life Technologies)〕とを用いて、逆転写させ、スプライシング産物を得た。
【0111】
逆転写反応により生じたスプライシング産物を、pSPL3ベクター特異的プライマー対、前記SD6及び前記SA2を用いたPCRにより検出した。なお、PCRは、全量40μlの反応液〔組成:1.5μl RT産物、1.0μM SD6プライマー、1.0mM SA2プライマー、0.2mM dNTPミクスチャー、10×PCR緩衝液、5U rTaq(タカラバイオ社製)〕で行なった。増幅は、94℃で1分間と60℃で1分間と72℃で1分間とを1サイクルとする反応を30サイクル行なった後、72℃で5分間インキュベーションすることにより行なった。
【0112】
得られたPCR産物を5% ポリアクリルアミドゲルで電気泳動した。
【0113】
その結果、図6のパネル(B)に示されるように、SMNのイントロン7における多コピーのエレメント2の挿入は、挿入数に依存して、SMN エキソン7の含有型を増加させることがわかり、エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のイントロンスプライシングエンハンサーであることが示された。
【0114】
実施例5
エレメント2の破壊により、SMN エキソン7のスプライシングパターンの劇的な変化が示されるため、トランス作用因子がエレメント2に特異的に結合し、直接結合を介してそのスプライシングを調節することが推測された。
【0115】
そこで、32P標識オリゴエレメント2と神経芽細胞腫SK−N−SH細胞の核抽出物とを用いたゲルシフトアッセイを行なった。
【0116】
SK−N−SH細胞(1.0×107細胞)を、10mM KClと1mM EDTAと1mM EGTAと5mM ジチオスレイトール(DTT)と1mM (p−アミジノフェニル)メタンスルフォニルフルオリド(PMSF)とを含む10mM HEPES−NaOH(pH7.9) 1ml中、4℃でホモジナイズした。なお、本実験で用いた緩衝液及び他の溶液は、使用前に、商品名:Steritop〔孔径:220nm、ミリポアコーポレーション(Millipore Corporation)製〕によるろ過により、滅菌した。
【0117】
10% Nonidet P−40(商品名)を終濃度0.6%まで添加した後、ホモジネートを15,000rpmで5分間遠心分離した。ペレットを、400mM KClと1mM EDTAと1mM EGTAと1mM DTTと1mM PMSFとを含む20mM Tris−HCl(pH7.5) 10倍容量中に再懸濁させ、15,000rpmで5分間遠心分離した。得られたペレットをゲル移動度シフトアッセイ用の核抽出物として−80℃で保存した。
【0118】
ついで、最終容量20μl(結合緩衝液:20mM HEPES、pH7.9、72mM KCl、1.5mM MgCl2、0.78mM 酢酸マグネシウム、0.52mM DTT、3.8% グリセロール、0.75mM ATP、1mM GTP)において、種々の濃度の核抽出物をRI標識RNAオリゴヌクレオチド(終濃度6nMとして存在)と混合した。なお、前記RI標識オリゴヌクレオチドとして、オリゴ−エレメント2〔5’−GUG GAA AAC AAA UGU UUU UGA ACA−3’(配列番号:16)〕又はオリゴ変異エレメント2〔5’−GUG GAA AAC AAA UGC CCC UGA ACA−3’(配列番号:17)〕を用いた。
【0119】
その後、得られた混合物を、室温で25分間インキュベートし、ついで、ローディング緩衝液(組成:37.5mM Tris−HCl、315mM グリシン、1.5mM EDTA)中4% 未変性アクリルアミドゲルに負荷し、定電圧100V2時間4℃で泳動した。ついで、ゲルを乾燥させ、オートラジオグラフィーフィルムに曝した。
【0120】
その結果、図7のパネル(A)に示されるように、有効な結合が観察され、結合活性は、核抽出物の量に対応して増加した。
【0121】
さらに、結合が特異的であることを確認するため、非標識オリゴエレメント2を用いた競合実験を行なった。
【0122】
その結果、図7のパネル(B)に示されるように、25倍を超えるモル濃度の非標識オリゴRNAと共に核抽出物をプレインキュベーションすると、活性のほぼ完全な除去をもたらしたが、T−Cの置換により変異を導入したエレメント2の非標識変異導入用ヌクレオチド(オリゴ変異体エレメント2)の等量と共に核抽出物をプレインキュベーションすると、RNA核タンパク質の結合を阻害しなかった。これらのデータは、トランス作用因子が、SMN プレmRNAのイントロン7におけるエレメント2に特異的に結合すること及びシス作用エレメント2への結合が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のスプライシングを増強するであろうことを示す。
【0123】
実施例6
SMN遺伝子のイントロン7のエレメント2は、エキソン7 スプライシングの調節に重要な役割を果たすこと及びトランス作用タンパク質が、このエレメントに直接的に結合しうることが示された。そこで、I7DM1−T エキソントラップベクターによりトランスフェクトされた細胞のアンチセンスオリゴヌクレオチドによる処理が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7の含有型の減少を導くに十分であるかどうかを調べた。
【0124】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとして、2’−O−メチル骨格修飾を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド及びホスホロチオエート骨格修飾を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(Japan Bio Service Incで合成したもの)を用いた。用いたアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
エレメント2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド〔図8中、As−エレメント2;5’−UGU UCA AAA ACA UUU GUU UUC−3’(配列番号:18)〕、
SMN1のイントロン6のポリピリミジントラクトに対するアンチセンスオリゴヌクレオチド〔図8中、As−pyr; 5’−GAU AGC UAU AUA UAG AU−3’(配列番号:19)〕
対照として、イントロン6の他の配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド
〔図8中、As−con;5’−GAU AGC UAU AUA UAG AU−3’(配列番号:20)〕である。
【0125】
これらのアンチセンスオリゴヌクレオチドを、I7DM1−Tがクローン化されたエキソントレッピングベクターと共にCOS−7にコトランスフェクトした。なお、アンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は、5nM〜25nMの範囲となるようにした。
【0126】
トランスフェクションから24時間後、慣用の方法により、全RNAを抽出した。プライマー対〔SD6プライマー及びSA2プライマー〕を用いたRT−PCRを行ない、SMNエキソン7のイン・ビボスプライシングに対するこれらのアンチセンスオリゴヌクレオチドの影響を調べた。
【0127】
その結果、図8のパネル(B)に示されるように、As−エレメント2により、アンチセンスオリゴヌクレオチドの量に依存して、SMN エキソン7の含有型が減少することがわかった。また、図8のパネル(C)に示されるように、As−conにより、SMN エキソン7のスプライシングは、変化しなかった。対照的に、As−pyrにより、含有型のわずかに減少した。
【0128】
ポリピリミジントラクトは、プレmRNAスプライシングに必須であるため、前記As−pyrは、シス作用エレメントをブロックするアンチセンスオリゴヌクレオチドとして効果的に働くことが予想された。
【0129】
同様に、As−エレメント2は、SMN エキソン7のスプライシングの阻害を引き起こした。
【0130】
かかる結果により、エレメント2が、CからTへの転位を含むSMN エキソン7のスプライシングの重要なシス作用性エレメントであることが示される。
【0131】
配列表フリーテキスト
配列番号:1は、エレメント2の配列単位の配列である。
【0132】
配列番号:2は、エレメント2の配列単位の配列である。
【0133】
配列番号:3は、pCIフォワードプライマーの配列である。
【0134】
配列番号:4は、pCIリバースプライマーの配列である。
【0135】
配列番号:5は、600Fwdプライマーの配列である。
【0136】
配列番号:6は、ORプライマーの配列である。
【0137】
配列番号:7は、OR−IRプライマーの配列である。
【0138】
配列番号:8は、DR−11Rプライマーの配列である。
【0139】
配列番号:9は、IRプライマーの配列である。
【0140】
配列番号:10は、SA2プライマーの配列である。
【0141】
配列番号:11は、SD6プライマーの配列である。
【0142】
配列番号:12は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0143】
配列番号:13は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0144】
配列番号:14は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0145】
配列番号:15は、変異導入用オリゴヌクレオチドの配列である。
【0146】
配列番号:16は、オリゴ−エレメント2の配列である。
【0147】
配列番号:17は、オリゴ−変異体エレメント2の配列である。
【0148】
配列番号:18は、アンチセンスオリゴヌクレオチドAs−エレメント2の配列である。
【0149】
配列番号:19は、アンチセンスオリゴヌクレオチドAs−pyrの配列である。
【0150】
配列番号:20は、アンチセンスオリゴヌクレオチドAs−conの配列である。
【0151】
配列番号:21は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0152】
配列番号:22は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0153】
配列番号:23は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0154】
配列番号:24は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0155】
配列番号:25は、推定スプライシング調節エレメントの配列である。
【0156】
配列番号:26は、エレメント2の変異体Aの配列である。
【0157】
配列番号:27は、エレメント2の変異体Bの配列である。
【0158】
配列番号:28は、エレメント2の変異体Cの配列である。
【0159】
配列番号:29は、エレメント2の変異体Dの配列である。
【0160】
配列番号:30は、エレメント2の変異体Eの配列である。
【0161】
配列番号:31は、エレメント2の変異体Fの配列である。
【0162】
【発明の効果】
本発明の核酸によれば、全長SMN遺伝子を発現させることができ、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができ、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができるという優れた効果を奏する。また、本発明の核酸導入用担体によれば、本発明の核酸を、細胞に効率よく導入することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明のSMN遺伝子の発現制御方法によれば、全長SMN遺伝子を発現させることができ、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物を発現させることができ、脊髄性筋萎縮症の発症の原因となるSMN1遺伝子の欠損又は該SMN1遺伝子の変異による引き起こされるSMN1遺伝子産物の機能欠損を補うことができるという優れた効果を奏する。また、本発明の医薬組成物によれば、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患、特に、脊髄性筋萎縮症の発症を予防又は治療することができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明のSMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法によれば、全長SMN遺伝子の発現を増強させうる物質、SMN1遺伝子の機能を補いうるSMN2遺伝子由来産物の発現を増強させうる物質等を効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。
【0163】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、SMN1及びSMN2 エキソンのスプライシングパターンを示す。図中、各レーンの上側のバンドは、エキソン6からエキソン8の領域を含む全長転写産物を示し、下側のバンドは、エキソン7を欠損した転写産物を示す。また、図中、WT SMN1(C)は、野生型ミニジーン、変異体SMN1(T)は、エキソン7内部の6ヌクレオチドに位置するCからTへの転位を含むSMN1ミニジーン、WT SMN2(T)は、野生型SMN2ミニジーン、変異体SMN2(C)は、エキソン7内の6ヌクレオチドに位置するTからCへの置換を含むSMN2ミニジーンを示す。
【図2】図2は、エキソントラップベクターの概略図を示す。図中、BPは、分岐点、PPTは、ポリピリミジントラクトを示す。
【図3】図3は、インビトロスプライシングアッセイの結果を示す。上部パネルは、野生型SMN1(C)から構築された欠失変異体の結果であり、下部パネルは、CからTへの転位を含む変異体SMN1から構築された欠失変異体の結果である。なお、下部パネルに示されるスコアは、全転写産物に対するエキソン7含有型の割合であり、値は、4回の解析の平均を示す。
【図4】図4は、イントロン7内におけるエレメント2の位置(上部パネル)及び構造(下部パネル)の概略図を示す。
【図5】図5は、CからTへの転位を含む変異体SMN1のエレメント2のステム−ループにおける変異による、エキソン7を含む転写産物の量に対する影響を調べた結果を示す。パネル(A)のA〜Fは、I7DM1−Tミニジーンにおける種々の変異体の構造の概略図である。図中、○は、野生型エレメント2に対して、置換されたヌクレオチドを示す。パネル(B)は、イン・ビボスプライシング解析の結果を示す。図中、I7DM1−T、エキソントラップベクターにクローン化されたミニジーンAからFは、パネル(A)に対応する。パネル(C)は、各構築物のスプライシングパターンの定量的解析の結果を示す。全転写産物に対するエキソン7含有型の割合は、4回の解析の平均±S.Dで表わされる。
【図6】図6は、エレメント2の挿入数による、エキソン7を含む転写産物の量に対する影響を調べた結果を示す。パネル(A)は、SMNのイントロンにおけるエレメント2のタンデムリピートを有する構築物の概略図を示す。図中、I7DM1−Tは、1コピーのエレメント2を含むオリジナル構築物、エレメント 2−Tx3は、3コピーのエレメント2を含む構築物、エレメント 2−Tx4は、4コピーのエレメント2を含む構築物を示す。パネル(B)は、エレメント2の挿入数による、エキソン7を含む転写産物の量のRT−PCR解析(上部パネル)及び全転写産物に対するエキソン7 含有型の割合(下部パネル)を示す。全転写産物に対するエキソン7 含有型の割合は、4回の解析の平均±S.Dで表わされる。
【図7】図7は、エレメント2に結合する核タンパク質の同定のためのゲル移動度シフトアッセイの結果を示す図である。パネル(A)は、SK−N−SH細胞核抽出物のゲル移動度シフトアッセイの結果を示す。パネル(B)は、野生型エレメント2又は変異体エレメント2の非標識RNAオリゴヌクレオチド(1、5、14モル濃度超)を添加することにより競合アッセイを行なった結果を示す。
【図8】図8は、エレメント2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによる、エキソン7を含む転写産物の発現への影響を調べた結果を示す。パネル(A)は、用いた3つのアンチセンスオリゴヌクレオチド(As−エレメント2、As−con、As−pyr)のSMN遺伝子上の位置を示す。パネル(B)は、As−エレメント2について、エキソントラッピング系を用いたイン・ビボスプライシングのRT−PCR解析の結果を示す。エキソン7含有型の割合を、4回の実験の平均で示し、各レーンの下に示す。パネル(C)は、As−conについて、エキソントラッピング系を用いたイン・ビボスプライシングのRT−PCR解析の結果を示す。エキソン7含有型の割合を、4回の実験の平均で示し、各レーンの下に示す。
Claims (7)
- 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸。
- 配列番号:1又は2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、請求項1記載の核酸のバリアントの核酸。
- バリアントが、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24及び配列番号:25からなる群より選ばれた塩基配列からなる、請求項2記載の核酸。
- 請求項1〜3いずれか1項記載の核酸を含有してなる、核酸導入用担体。
- 下記a)又はb)の核酸:
a)配列番号:2に示される塩基配列からなる核酸、又は
b)配列番号:2に示される塩基配列とは、核酸多型を介して異なる塩基配列からなり、かつSMN遺伝子のスプライシングを調節しうる、前記a)の核酸のバリアントの核酸
の少なくとも1コピーを、染色体に組み込ませることを特徴とする、SMN遺伝子の発現制御方法。 - 請求項1〜3いずれか1項記載の核酸又は請求項4記載の核酸導入用担体を有効成分として含有してなる、SMN遺伝子の欠損又は変異により引き起こされる疾患の予防又は治療のための医薬組成物。
- (I)被験物質の存在下及び非存在下に、
下記(1)〜(3):
(1) SMN2遺伝子のイントロン6と
(2) SMN2遺伝子のエキソン7と
(3) 配列番号:1又は2に示される塩基配列からなるスプライシング調節エレメントの核酸を含有したSMN2遺伝子のイントロン7と
からなり、かつ(1)−(2)−(3)の順に配置された核酸構築物が作動可能に結合されたエキソントラップベクター構築物を含む細胞を維持するステップ、及び
(II)前記ステップ(I)において、被験物質の存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量と、被験物質の非存在下に得られた細胞中におけるSMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物の量とを測定するステップ、
を含み、被験物質の存在により、非存在下に比べ、SMN2遺伝子のエキソン7に対応する転写産物が増加することを指標とする、SMN遺伝子のエキソン7のスプライシング増強物質のスクリーニング方法。
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