JP2004338507A - 自動二輪車 - Google Patents
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Abstract
【課題】ふらつくことなく、走行路に沿って安定した自動走行を可能とする自動二輪車を提供する。
【解決手段】後輪2を転舵アクチュエータ3で転舵軸OT 回りに回転して転舵すると共に、後輪2を支持するスイングアーム15を揺動アクチュエータ4で揺動軸OY 回りに回転して揺動することにより前輪1と後輪2との相対位置を調整して重心点の対地相対位置を調整可能とし、転舵角指令値τζは車体のロール角Φに基づいて設定し、揺動角指令値τξは車体のヨー角Ψに基づいて設定する。揺動角指令値τξは、ヨーレートΨ’を加味して操縦性を高めると共に、重心点横変位yを加味して横風外乱等の入力に対する安定性を高める。指令値算出に際し、各フィードバックゲインを走行速度uやヨーレートΨ’に応じて設定する。
【選択図】 図2
【解決手段】後輪2を転舵アクチュエータ3で転舵軸OT 回りに回転して転舵すると共に、後輪2を支持するスイングアーム15を揺動アクチュエータ4で揺動軸OY 回りに回転して揺動することにより前輪1と後輪2との相対位置を調整して重心点の対地相対位置を調整可能とし、転舵角指令値τζは車体のロール角Φに基づいて設定し、揺動角指令値τξは車体のヨー角Ψに基づいて設定する。揺動角指令値τξは、ヨーレートΨ’を加味して操縦性を高めると共に、重心点横変位yを加味して横風外乱等の入力に対する安定性を高める。指令値算出に際し、各フィードバックゲインを走行速度uやヨーレートΨ’に応じて設定する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体の前方及び後方の夫々に前輪及び後輪を一輪ずつ配設した自動二輪車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動二輪車は、乗員がシートに跨って着座し、操舵ハンドルを操舵して前輪を転舵すると共に、自身を横(左右)方向に移動させて釣り合いをとりながら走行するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動二輪車を自律走行させようとすると、乗員が横方向に移動しないことが前提となるので、走行中の釣り合いがとりにくく、実質的に自動二輪車の自律走行は不可能であると考えられている。
本発明は前記諸問題を解決すべく開発されたものであり、自律走行を可能とする自動二輪車を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記諸問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る自動二輪車は、車体の前方及び後方の夫々に前輪及び後輪を一輪ずつ配設し、前記前輪及び後輪の何れかの車輪を転舵軸周りに転舵する転舵手段と、前記前輪及び後輪の何れかの車輪を横方向に移動して両者の相対位置を調整する揺動手段と、前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、少なくとも自律走行するために必要なヨー運動量及びロール運動量の目標値を算出し、このヨー運動量及びロール運動量の目標値に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0005】
なお、本発明の自律走行とは、ふらつかず、走行路に沿って、安定して走行することを意味している。特に、ふらつかないことは、安定して走行するためにも、走行路に沿って走行するためにも重要である。
また、本発明のうち請求項2に係る自動二輪車は、前記請求項1の発明において、前記制御手段は、前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明のうち請求項3に係る自動二輪車は、前記請求項1又は2の発明において、自車両に発生するロール運動量を検出するロール運動量検出手段と、自車両に発生するヨー運動量を検出するヨー運動量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ロール運動量検出手段で検出されたロール運動量検出値と前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、前記ヨー運動量検出手段で検出されたヨー運動量検出値と前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のうち請求項4に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至3の何れかの発明において、前記転舵手段による車輪の転舵量を検出する転舵量検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵量検出手段で検出された車輪の転舵量に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項5に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至4の何れかの発明において、前記揺動手段による車輪の揺動量を検出する揺動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記揺動量検出手段で検出された車輪の揺動量に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のうち請求項6に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至5の何れかの発明において、自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のうち請求項7に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至6の何れかの発明において、自車両の重心点の横移動量を検出する重心点横移動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重心点横移動量検出手段で検出された重心点横移動量検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のうち請求項8に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至7の何れかの発明において、自車両の走行速度を検出する走行速度検出手段を備え、前記制御手段は、少なくとも前記揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを前記走行速度検出手段で検出された走行速度検出値に基づいて設定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項9に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至8の何れかの発明において、自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて設定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項10に係る自動二輪車は、前記請求項1の発明において、前記制御手段は、前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項11に係る自動二輪車は、前記請求項1又は10の発明において、自車両に発生するヨー運動量を検出するヨー運動量検出手段と、自車両に発生するロール運動量を検出するロール運動量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ヨー運動量検出手段で検出されたヨー運動量検出値と前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、前記ロール運動量検出手段で検出されたロール運動量検出値と前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項12に係る自動二輪車は、前記請求項10又は11の発明において、前記制御手段は、前記揺動手段による車輪の揺動量と転舵手段による車輪の転舵量とを、同じか又はほぼ同じ大きさで逆向きに制御することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項13に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至12の何れかの発明において、前記制御手段は、前記揺動手段によって車輪が揺動されているときに発生する横力が小さくなるように前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項14に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至13の何れかの発明において、前記制御手段は、前記揺動手段によって車輪が揺動されているときに発生する横力と逆向きの横力が発生するように前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項15に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至14の何れかの発明において、前記転舵手段による車輪の転舵量を検出する転舵量検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵量検出手段で検出された車輪の転舵量に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項16に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至15の何れかの発明において、前記揺動手段による車輪の揺動量を検出する揺動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記揺動量検出手段で検出された車輪の揺動量に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項17に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至16の発明において、自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項18に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至17の発明において、自車両の重心点の横移動量を検出する重心点横移動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重心点横移動量検出手段で検出された重心点横移動量検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動二輪車の第1実施形態について説明する。
図1は、自律走行を可能とする自動二輪車の一実施形態を示す外観図、図2は、図1の自動二輪車の主要構成部材の組立説明図である。
この自動二輪車は、車体前方に前輪1、車体後方に後輪2を備え、夫々、スイングアーム14、15を介して車体フレーム13に揺動可能に取付けられている。また、本実施形態の自動二輪車の前輪1はモータ11で駆動されるように構成されている。前記車体フレーム13の上には車体カバー16が搭載され、この車体カバー16内に乗員室17が形成される。乗員室17内には、乗員が着座するシート18が配設されると共に、操舵入力を付与するためのハンドル19が設けられている。
【0020】
本実施形態の自動二輪車では、原則として乗員は操舵しない。即ち、前記ハンドル19は、あくまで操舵入力を付与するためだけのものであって、ハンドル19を操舵したからといって転舵輪が転舵するわけではない。所謂、ステアバイワイヤと呼ばれるシステムと同様に、ハンドル19の操舵角と転舵輪の転舵角とは機械的に連結されていない。但し、四輪車両のように単に転舵輪を転舵するだけではバランスを維持できない。通常の自動二輪車の場合、乗員が操舵しながら重心点を移動することによってバランスを維持しているが、操舵しない乗員は重心点を如何様に移動させればよいかが分からない。そこで、本実施形態では、前輪1と後輪2との相対位置を調整することにより、重心点を移動させる代わりにバランスを維持する。
【0021】
具体的な構成を図2及び図3に示す。まず、本実施形態では、前記自動走行を可能とするために、転舵輪を後輪2とする。後輪2は、転舵アクチュエータ3によって、略上下方向の転舵軸OT 回りに回転し、転舵される。更に、この後輪2を前記車体フレーム13に連結するスイングアーム15そのものを揺動アクチュエータ4によって略上下方向の揺動軸OY 回りに回転して揺動し、後輪2と前輪1との相対位置を調整する。つまり、乗員が乗車しているときの車体の重心点の位置が一定であるとすると、前輪1と後輪2との相対位置を調整することにより、車体の重心点の対地相対位置が変化する。これを利用して、重心点位置の調整を行う。なお、前記転舵アクチュエータ3及び揺動アクチュエータ4は、何れも電動モータなどによって構成される。
【0022】
この実施形態の自動二輪車で自動走行を行うためのシステム概略構成図を図4に示す。図に示すパワーシステム6は、給電用バッテリの充放電を管理するためのものであり、例えばバッテリの充電は、前輪駆動用モータ11を所謂回生作動させ、発電機として使用することによって行われる。本実施形態の自動二輪車の出力端である前輪駆動用モータ11、転舵アクチュエータ3、揺動アクチュエータ4は、何れも電動アクチュエータなので、後述するコントロールユニット5からの制御信号を受けながらパワーシステム6によって駆動状態が制御される。
【0023】
車両には、前記後輪2の転舵角ζを検出する転舵角センサ21、前記後輪2の前輪1に対する揺動角(以下、単に後輪2の揺動角とも記す)ξを検出する揺動角センサ22、車体のヨー角Ψを検出するヨー角センサ23、車体のロール角Φを検出するロール角センサ24、車体重心点の横変位yを検出する重心点横変位センサ25、走行速度uを検出する走行速度センサ26、自車両の位置を検出するGPS27、前記ハンドル19の操舵角θを検出する操舵角センサ28等を備え、それらの出力は後述するコントロールユニット5に入力される。なお、前記ヨー角センサ23は、ヨーレートセンサ等によって検出されたヨー角速度、所謂ヨーレートを積分して用いてもよい。また、重心点横変位センサ25は、加速度センサ等によって検出された加速度を二回積分して用いてもよい。
【0024】
また、前記ハンドル19の近傍には、乗員によって操作され、走行速度を設定するためのアクセルスイッチやコーストスイッチなどからなる走行速度入力スイッチ20が設けられており、その出力が前記コントロールユニット5に入力される。
また、前記乗員室17の前方には、各種の状態をモニタするためのディスプレイ10が設けられている。具体的には、前記走行速度センサ26で検出された走行速度uを表示するための速度表示モニタ31、前記GPS27の検出内容を表示するためのGPSモニタ32、コントロールユニット5によって制御されている自車両の走行状態を表示する走行状態表示モニタ33などを構成している。
【0025】
前記コントロールユニット5は、例えばマイクロコンピュータ等の高度演算処理装置を備えて構成されている。このコントロールユニット5では、後述する各種の演算処理を行って、前記前輪駆動用モータ11、転舵アクチュエータ3、揺動アクチュエータ4の駆動状態を設定し、その駆動状態が達成される制御信号を各アクチュエータ並びに前記パワーシステム6に向けて出力する。なお、各アクチュエータの作動状態はパワーシステム6でモニタされたものをコントロールユニット5が読込む。例えば前輪駆動用モータ11の駆動トルクは、各モータの消費電流値から検出することができる。また、車両を加速する場合には各モータを駆動作動し、減速する場合には各モータを回生作動させればよい。
【0026】
次に、前記コントロールユニット5内で行われるロジックについて説明する。本実施形態の自動二輪車の加減速制御は、前述のように各モータの作動状態を制御することによって行われる。本実施形態の自動二輪車では、ふらつくことなく、走行路の沿って走行するために、前記転舵角ζ、揺動角ξ、ヨー角Ψ、ロール角Φの関係を求める。
【0027】
本実施形態のように自動二輪車を、ふらつくことなく、走行路に沿って走行させるための理論の根源は、所謂自律ロボットなどと同じ、倒立振子の原理から開始された。つまり、乗員は乗車していてもバランスの調整をしないので、搭載されている乗員は質量と同じであるという考え方である。このような倒立振子に相当する自動二輪車を車輪の向きが生み出す横力で姿勢制御することは可能である。しかし、それだけでは、ふらつきを抑制するのが限界であり、ふらつくことなく、走行路の沿って安定して走行することはできない。自動二輪車がふらつくことなく、走行路に沿って安定して走行するためには、重心点の微妙な調整が必要であり、通常は乗員がそれを調整しているから安定走行が可能なのである。そこで、前述のように、本実施形態では車輪の位置を動かすことによって、重心点の対地相対位置を調整するようにした。
【0028】
図5に本実施形態の自動二輪車の走行ロジックの概念を示す。図の左半部はプラント、即ち自動二輪車と乗員とによる出力状態を示し、図の右半部はアクチュエータ、即ち制御系の出力状態を示す。プラントの出力は速度u、その時間微分値、ロール角Φ、その時間微分値、ヨー角Ψ、その時間微分値などが挙げられる。これに対応するアクチュエータの出力は、トルクQ、その時間微分値、転舵角ζ、その時間微分値、揺動角ξ、その時間微分値などが挙げられる。この走行ロジックの目的は、プラントの出力とアクチュエータの出力との間の相関を求め、必要なプラント出力をアクチュエータの出力に置換することである。
【0029】
今、図6に示すように、プラント、即ち自動二輪車と乗員との出力が走行速度u、ロール角Φ、ヨー角Ψ、重心点横変位yとする。このプラント中におけるアクチュエータの出力が転舵角ζ、揺動角ξ、加速度ωである。但し、加速度ωは、前記モータの出力状態によって制御されるものであり、直接的な姿勢制御の対象としては取り扱わない。また、操舵入力θは、後述する目標ロール角Φ0 や目標ヨー角Ψ0 を設定するためのものであり、それ自体をプラントの出力としては扱わない。
【0030】
また、各アクチュエータの制御信号としては、駆動トルク指令値Q、転舵角指令値τζ、揺動角指令値τξや、前記加速度ωを達成するための減速指令値τB 、加速指令値τA 等が挙げられる。一方、制御入力は、前記走行速度入力スイッチ20で入力される走行速度指令値v、操舵角センサ28で検出された操舵角θが挙げられる。これらの制御入力と、前記各センサで検出された走行速度u、ロール角Φ、ヨー角Ψ、重心点横変位y、転舵角ζ、揺動角ξ等を用い、適宜演算処理を行って前記制御信号である駆動トルク指令値Q、転舵角指令値τζ、揺動角指令値τξを求める。
【0031】
車両の走行方向並びに姿勢を制御するのは、前記転舵角指令値τζ、揺動角指令値τξであるから、以後、これらの指令値の算出理論について説明する。本実施形態では、例えば前記揺動角ξは、前後輪の相対位置を調整するものであるから、自転運動、即ちヨーイングの運動を制御するものであると考える。また、前記ヨーイング運動は、周知のように操縦性を制御するものであるから、ヨーイング運動を揺動角ξによって制御するのなら、操縦性を示すヨーレートΨ’に基づいても揺動角ξを制御すべきである。これに対し、自動二輪車における転舵角ζは、所謂キャンバスラストに関与して対地キャンバ角の制御、自動二輪車ではローリングの運動を制御するものであると考える。即ち、本実施形態は、転舵によって横力を発生し、その横力を揺動、つまり前後輪の相対位置調整によって調整することでバランスをとろうとするものである。言い換えれば、一般的な自動二輪車で、乗員が行う操作の順に操縦を行うものである。
【0032】
また、前記揺動角ξは、前述のように、本実施形態では重心点の対地相対位置を制御するためのものであるから、例えば前記重心点横変位yを制御入力とした場合には、この重心点横変位yに応じても揺動角ξを制御すべきである。なお、この重心点横変位yは、例えば横風外乱など、転舵や揺動以外の入力を想定している。また、転舵角センサ21で検出された転舵角ζに基づいて転舵角指令値τζをフィードバック制御する必要があるし、揺動角センサ22で検出された揺動角ξに基づいて揺動角指令値τξをフィードバック制御する必要もある。
【0033】
このような原理に基づいて、前記転舵角指令値τζを下記1式で、揺動角指令値τξを下記2式で表した。1式は、目標ロール角Φ0 と検出されたロール角Φとの差分値及び検出された転舵角ζを用いたPID(比例ー微分ー積分)要素からなり、2式は目標ヨー角Ψ0 と検出されたヨー角Ψとの差分値及びヨー角Ψの時間微分値、即ちヨーレートΨ’の変化量及び検出された重心転横変位yの変化量及び検出された揺動角ξを用いたPID要素からなる。なお、式中のG1 〜G12及びK1 〜K6 は各項に係るフィードバックゲインである。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、前記目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 の設定方法について説明する。例えば、車両ロール角Φと走行速度u及び走行路曲率半径Rとの理想的な関係は、車輌モデル式を解析した下記3式で与えられる。
【0036】
【数2】
【0037】
但し、gは重力加速度である。
これに対し、車体がロール角Φで傾斜したためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合をCh、車体がヨー角Ψで横滑りしたためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合をCfとしたとき、横力Fsに対し、下記4式が成立する。なお、前記車体がロール角Φで傾斜したためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合Ch、車体がヨー角Ψで横滑りしたためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合Cfは、何れも凡そタイヤの特性で決まる定数である。
【0038】
【数3】
【0039】
前記4式を前記3式に代入して下記5式を得る。
【0040】
【数4】
【0041】
前記3式で得られるロール角Φを前記目標ロール角Φ0 とし、この目標ロール角Φ0 を用いて前記5式で得られるヨー角Ψを前記目標ヨー角Ψ0 とすれば、前記1式及び2式から転舵角指令値τζ及び揺動角指令値τξを得ることができる。図7には、走行路曲率半径R及び走行速度uを用いて目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定するための制御マップの一例を示した。
【0042】
但し、実際には走行路曲率半径Rと走行速度uとから目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定することは困難である。特に、走行路の曲率半径は細かく変化し続けているし、仮に走行路曲率半径を細かく検出することができても、走行路のどの部分を走行するのが最も理想的なのかまでは判定できない。そこで、本実施形態では、前記操舵入力である操舵角θから、例えばこれから走行しようとする走行路における目標ヨーレートを求め、その目標ヨーレートを達成するための目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定する。目標ヨーレートは、周知の車両運動方程式に従って、走行速度uや操舵角θ或いはその微分値に基づいて設定可能である。また、目標ヨーレートが決まれば、自動二輪車の場合、車両を旋回内側に回す力、即ちコーナリングフォースやキャンバスラストを考慮することにより、目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定することができる。
【0043】
一方、車両モデル式を解析することにより、前記1式及び2式中のフィードバックゲインG1 、G3 、G6 、G9 、G10、G12及びK1 〜K4 、K6 は車両諸元やタイヤ特性から決まる固定フィードバックゲインでよいが、G4 、G5 、G7 、G8 、K5 は走行速度uに依存するフィードバックゲイン、G2 、G11は走行速度u及びヨーレートΨ’に依存するフィードバックゲインであることが明らかとなった。つまり、前述した可変性のフィードバックゲインは、パラメータを考慮して設定しないと、前記1式及び2式が正しく記述されないことになる。
例えば、前記走行速度uにのみ依存するフィードバックゲインG4 、G5 、G7 、G8 、K5 の一例を下記表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
また、前記走行速度u及びヨーレートΨ’に依存するフィードバックゲインG2 の一例を図9に、同じくフィードバックゲインG11の一例を図9に示す。
このようにフィードバックゲインを正しく設定することにより、前記1式及び2式が正しく記述され、その結果、走行速度uやヨーレートΨ’に応じた転舵角指令値τζ及び揺動角指令値τξを正しく得ることができ、自動二輪車を走行路に沿って、ふらつくことなく、安定して走行させることが可能となる。
【0046】
次に、本発明の自動二輪車の第2実施形態について説明する。前述したように、前記第1実施形態の自動二輪車は、一般的な自動二輪車で、乗員が行う操作の順に操縦を行うものであり、まず転舵によって横力を発生し、その横力を揺動、つまり前後輪の相対位置調整によってバランスをとろうとするものである。これに対し、本実施形態では、前後輪の相対位置をずらすことによって車両を横に傾け、つまりローリングさせ、不要な横力が発生しないように転舵する、つまり車輪の向きを調整する。即ち、揺動、つまり前後輪の相対位置調整によってローリング運動量を制御し、転舵によって横力、つまりヨーイング運動量を制御する。
【0047】
まとめると、本実施形態ではヨーイングの運動を転舵角ζで制御し、ローリングの運動を揺動角ξで制御する。ヨーレートはヨーイング運動量の一種であるから、ヨーレートのフィードバック制御も転舵角ζで行う。但し、転舵角ζ自身のサーボ制御は転舵角ζで行わなければならないし、揺動角ξ自身のサーボ制御は揺動角ξで行わなければならない。また、前記第1実施形態と同様に、重心点の対地相対位置制御は揺動角ξでしか行えないので、前記重心点横変位yに応じても揺動角ξを制御すべきである。
【0048】
以上より、本実施形態における前記転舵角指令値τζは下記6式で、揺動角指令値τξは下記7式で表れる。6式は、目標ヨー角Ψ0 と検出されたヨー角Ψとの差分値及びヨー角Ψの時間微分値、即ちヨーレートΨ’の変化量及び検出された転舵角ζを用いたPID(比例ー微分ー積分)要素からなり、7式は目標ロール角Φ0 と検出されたロール角Φとの差分値及び検出された重心転横変位yの変化量及び検出された揺動角ξを用いたPID要素からなる。なお、式中のG101 〜G112 及びK101 〜K106 は各項に係るフィードバックゲインである。
【0049】
【数5】
【0050】
前記6式及び7式中の全てのフィードバックゲインは、車両諸元やタイヤ特性によって決まる固定ゲインでよい。これは、前述のように、始めに揺動角ξ、つまり前後輪の相対位置を調整してローリング運動を制御しようとするためである。前後輪の相対位置を調整することは、いわば車体重心点を支える位置を調整するだけであるから、少なくともそのことによって横力が変化することはない。前記第1実施形態では、始めに転舵角ζを調整してヨーイングを制御しようとするため、横力変化に伴うヨーレート及びヨーレートの制御因子である走行速度に応じてフィードバックゲインを調整しなければならないが、本実施形態では横力が変化しないのでフィードバックゲインを固定化することが可能となる。
【0051】
次に、本実施形態における揺動角ξと転舵角ζとの関係について考察する。通常の自動二輪車を考えれば分かるように、ローリング運動を伴いながら重心点位置が調整された定常旋回状態では、転舵角は“0”か、又はほぼ“0”でよい。つまり、旋回に必要な横力はローリング運動によるキャンバスラストで担われており、転舵によるコーナリングフォースを付加する必要は殆どない。この状態は、車体と転舵輪とが平行であることを意味するから、定常旋回状態で横力を変化させる必要のないときは、揺動角ξと転舵角ζとは、大きさが同じか又はほぼ同じで且つ逆向き(逆相ともいう)であればよい。
【0052】
図10は定常旋回状態における揺動角ξと転舵角ζとの関係を示している。このような定常旋回状態では、前述のように横力を変化させる必要がないので、前記揺動角ξと転舵角ζとは、大きさが同じか又はほぼ同じで且つ逆向きであればよくこれにより走行状態を安定化させることが可能となる。しかしながら、揺動角ξが変化しているとき、つまり車輪を動かしているとき(揺動の過渡期)には、その動かすという動作によって横力が変化する。揺動の過渡期に横力が変化すると、所謂バランスが崩れてしまうので、この横力がキャンセルされるように転舵角ζを調整する。
【0053】
今、仮に転舵輪である後輪の着力点(タイヤ接地点)と前記転舵軸とが平面視において同一であるとして、横力が発生している点、つまり後輪着力点の横移動速度は、揺動角ξの時間微分値に揺動腕の長さΓを乗じた値ξ’Γになる。この横力発生点の横移動速度ξ’Γを、前後(縦)方向への移動速度である走行速度uで除すと、横力発生点の対地移動角度、所謂横滑り角βが得られる。揺動過渡期の横力は、この横滑り角βに応じて発生するので、転舵角ζにより横滑り角βをキャンセルしてやればよい。これを前記揺動角ξ及び転舵角ζの関係に組み込むと、下記8式が得られる。
【0054】
【数6】
【0055】
このように転舵輪の揺動過渡期に発生する横力が小さくなるように転舵角を制御することにより、揺動過渡期の車両挙動が安定する。
この考え方を更に発展させると、前記横滑り角βより少し大きい転舵角ζを与えてやると、それに伴う横力、この場合は転舵輪揺動の横力と逆向きの横力が発生し、それが転舵輪揺動を補助することになる。その条件を満たす揺動角ξと転舵角ζとの関係を下記9式に示す。
【0056】
【数7】
【0057】
前記9式の条件の下に揺動角ξ及び転舵角ζを制御すると、転舵輪揺動のための揺動アクチュエータ4の負荷が軽減され、エネルギ損を減少することができる。また、理論上は、揺動アクチュエータ4を不要とすることも可能であるが、実際にはローリング状態における横力に対し、揺動角ξを保持する必要があるため、なくしてしまうことはできない。
【0058】
図11は、本実施形態の制御量の経時変化を示したものである。本実施形態では、初期動作として転舵輪揺動、即ち前後輪相対位置調整を行うため、横力が変化せず或いは変化しても転舵角制御によってそれをキャンセルすることができるので、比較的速やかに収束(減衰)し、安定状態になる。これに対し、前記第1実施形態では、初期動作として転舵を行うため、横力が変化し、これを減少するために転舵輪を揺動し、つまり前後輪相対位置調整を行い、このときにまた横力が変化し、これを繰り返すために、どうしても発散しがちになる。
【0059】
なお、前記実施形態では、モデル式から得たフィードバックゲインのパラメータとして走行速度u及びヨーレートΨ’のみについて説明したが、これ以外のパラメータを考慮するようにしてもよい。一例としては、例えば車両の空力係数やタイヤ係数などが挙げられる。空力係数としては、例えば空力が車体に最初に作用して重心点位置まで伝達されるのに数十msec. かかるので、車体先端で空力を検出し、重心点に作用する前に処理を施すようにすることが考えられる。また、タイヤ係数としては、例えば転舵角に対する横力の作用を考慮するようにしてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、乗員による情報として操舵角θ及び設定速度vのみを取り上げたが、例えば加速指令や減速指令、停車指令、発進指令、旋回指令などを取り扱うようにしてもよい。
また、前記実施形態では、車両を操縦するために操舵角を操舵入力として付与するようにしたが、例えばGPS(Global Positioning System )から地図情報を読込み、これから走行する走行路の形態に合わせて自動操舵を行うようにすることも可能である。即ち、前述したように目標とするヨー運動は走行路に沿って走行するためのものであるから、操舵入力に代えて、走行路情報として走行路曲率半径が得られれば、目標とするヨー運動を設定することができ、結果的に走行路に沿って走行することが可能となる。また、これに加えて、例えば路面勾配や路面摩擦係数などを考慮するようにしてもよい。ちなみに、何れのパラメータも周知の手法により、走行路情報として取り扱うことができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る自動二輪車によれば、前輪及び後輪の何れかの車輪を転舵手段で転舵し、前輪及び後輪の何れかの車輪を横方向に移動して両者の相対位置を揺動手段で調整するようにすると共に自律走行するために必要なヨー運動量及びロール運動量の目標値を算出し、このヨー運動量及びロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、ふらつくことなく、走行路に沿って走行することが可能となり、結果的に自律走行を可能とする。
【0062】
また、本発明のうち請求項2に係る自動二輪車によれば、自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、前後輪の相対位置調整によるヨー運動量と転舵輪の転舵によるロール運動量とをバランスさせてふらつくことなく、走行路に沿って走行することができる。
【0063】
また、本発明のうち請求項3に係る自動二輪車によれば、検出されたロール運動量検出値と自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、検出されたヨー運動量検出値と自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0064】
また、本発明のうち請求項4に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の転舵量に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
また、本発明のうち請求項5に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の揺動量に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0065】
また、本発明のうち請求項6に係る自動二輪車によれば、検出されたヨーレート検出値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、十分な操縦性を確保することができる。
また、本発明のうち請求項7に係る自動二輪車によれば、検出された重心点横移動量検出値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、横風外乱等に対し、十分な安定性を確保することができる。
【0066】
また、本発明のうち請求項8に係る自動二輪車によれば、揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを検出された走行速度検出値に基づいて設定する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
また、本発明のうち請求項9に係る自動二輪車によれば、転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを検出されたヨーレート検出値に基づいて設定する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0067】
また、本発明のうち請求項10に係る自動二輪車によれば、自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、前後輪の相対位置調整による横傾き量、即ちロール運動量と転舵輪の転舵による横力の調整量、即ちヨー運動量とをバランスさせてふらつくことなく、走行路に沿って走行することができる。
【0068】
また、本発明のうち請求項11に係る自動二輪車によれば、検出されたヨー運動量検出値と自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、検出されたロール運動量検出値と自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0069】
また、本発明のうち請求項12に係る自動二輪車によれば、揺動される車輪の揺動量と転舵される車輪の転舵量とを、同じか又はほぼ同じ大きさで逆向きに制御する構成としたため、前後輪の相対位置調整による横力を小さくして自車両の走行状態を安定化することができる。
また、本発明のうち請求項13に係る自動二輪車によれば、車輪が揺動されているときに発生する横力が小さくなるように車輪の転舵量を制御する構成としたため、車輪揺動時の横力を小さくして自車両の走行状態を安定化することができる。
【0070】
また、本発明のうち請求項14に係る自動二輪車によれば、車輪が揺動されているときに発生する横力と逆向きの横力が発生するように車輪の転舵量を制御する構成としたため、車輪の転舵で揺動を補助することができる。
また、本発明のうち請求項15に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の転舵量に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0071】
また、本発明のうち請求項16に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の揺動量に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
また、本発明のうち請求項17に係る自動二輪車によれば、検出されたヨーレート検出値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御する構成としたため、十分な操縦性を確保することができる。
また、本発明のうち請求項18に係る自動二輪車によれば、検出された重心点横移動量検出値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、横風外乱等に対し、十分な安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動二輪車の一実施形態を示す外観図である。
【図2】図1の自動二輪車の組立説明図である。
【図3】図1の自動二輪車の転舵及び揺動調整のための構成図である。
【図4】図1の自動二輪車の自動走行制御装置の概略構成図である。
【図5】図1の自動二輪車のシャシダイナモの説明図である。
【図6】図1の自動二輪車のコントロールユニットで行われるロジックの概念図である。
【図7】図1の自動二輪車のコントロールユニットで行われるロジックの概略構成図である。
【図8】図7のロジックで用いられる制御マップである。
【図9】図7のロジックで用いられる制御マップである。
【図10】図7のロジックで用いられる制御マップである。
【図11】図7のロジックによる作用の説明図である。
【符号の説明】
1は前輪
2は後輪
3は転舵アクチュエータ(転舵手段)
4は揺動アクチュエータ(揺動手段
5はコントロールユニット
6はパワーシステム
11は前輪駆動用モータ
12は後輪駆動用モータ
20は走行速度入力スイッチ
21は転舵角センサ
22は揺動角センサ
23はヨー角センサ
24はロール角センサ
25は重心点横変位センサ
26は走行速度センサ
27はGPS
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体の前方及び後方の夫々に前輪及び後輪を一輪ずつ配設した自動二輪車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動二輪車は、乗員がシートに跨って着座し、操舵ハンドルを操舵して前輪を転舵すると共に、自身を横(左右)方向に移動させて釣り合いをとりながら走行するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動二輪車を自律走行させようとすると、乗員が横方向に移動しないことが前提となるので、走行中の釣り合いがとりにくく、実質的に自動二輪車の自律走行は不可能であると考えられている。
本発明は前記諸問題を解決すべく開発されたものであり、自律走行を可能とする自動二輪車を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記諸問題を解決するため、本発明のうち請求項1に係る自動二輪車は、車体の前方及び後方の夫々に前輪及び後輪を一輪ずつ配設し、前記前輪及び後輪の何れかの車輪を転舵軸周りに転舵する転舵手段と、前記前輪及び後輪の何れかの車輪を横方向に移動して両者の相対位置を調整する揺動手段と、前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、少なくとも自律走行するために必要なヨー運動量及びロール運動量の目標値を算出し、このヨー運動量及びロール運動量の目標値に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0005】
なお、本発明の自律走行とは、ふらつかず、走行路に沿って、安定して走行することを意味している。特に、ふらつかないことは、安定して走行するためにも、走行路に沿って走行するためにも重要である。
また、本発明のうち請求項2に係る自動二輪車は、前記請求項1の発明において、前記制御手段は、前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明のうち請求項3に係る自動二輪車は、前記請求項1又は2の発明において、自車両に発生するロール運動量を検出するロール運動量検出手段と、自車両に発生するヨー運動量を検出するヨー運動量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ロール運動量検出手段で検出されたロール運動量検出値と前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、前記ヨー運動量検出手段で検出されたヨー運動量検出値と前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のうち請求項4に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至3の何れかの発明において、前記転舵手段による車輪の転舵量を検出する転舵量検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵量検出手段で検出された車輪の転舵量に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項5に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至4の何れかの発明において、前記揺動手段による車輪の揺動量を検出する揺動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記揺動量検出手段で検出された車輪の揺動量に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のうち請求項6に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至5の何れかの発明において、自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のうち請求項7に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至6の何れかの発明において、自車両の重心点の横移動量を検出する重心点横移動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重心点横移動量検出手段で検出された重心点横移動量検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のうち請求項8に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至7の何れかの発明において、自車両の走行速度を検出する走行速度検出手段を備え、前記制御手段は、少なくとも前記揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを前記走行速度検出手段で検出された走行速度検出値に基づいて設定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のうち請求項9に係る自動二輪車は、前記請求項1乃至8の何れかの発明において、自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて設定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項10に係る自動二輪車は、前記請求項1の発明において、前記制御手段は、前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項11に係る自動二輪車は、前記請求項1又は10の発明において、自車両に発生するヨー運動量を検出するヨー運動量検出手段と、自車両に発生するロール運動量を検出するロール運動量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ヨー運動量検出手段で検出されたヨー運動量検出値と前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、前記ロール運動量検出手段で検出されたロール運動量検出値と前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項12に係る自動二輪車は、前記請求項10又は11の発明において、前記制御手段は、前記揺動手段による車輪の揺動量と転舵手段による車輪の転舵量とを、同じか又はほぼ同じ大きさで逆向きに制御することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項13に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至12の何れかの発明において、前記制御手段は、前記揺動手段によって車輪が揺動されているときに発生する横力が小さくなるように前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項14に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至13の何れかの発明において、前記制御手段は、前記揺動手段によって車輪が揺動されているときに発生する横力と逆向きの横力が発生するように前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
また、本発明のうち請求項15に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至14の何れかの発明において、前記転舵手段による車輪の転舵量を検出する転舵量検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵量検出手段で検出された車輪の転舵量に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項16に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至15の何れかの発明において、前記揺動手段による車輪の揺動量を検出する揺動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記揺動量検出手段で検出された車輪の揺動量に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項17に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至16の発明において、自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項18に係る自動二輪車は、前記請求項10乃至17の発明において、自車両の重心点の横移動量を検出する重心点横移動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重心点横移動量検出手段で検出された重心点横移動量検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動二輪車の第1実施形態について説明する。
図1は、自律走行を可能とする自動二輪車の一実施形態を示す外観図、図2は、図1の自動二輪車の主要構成部材の組立説明図である。
この自動二輪車は、車体前方に前輪1、車体後方に後輪2を備え、夫々、スイングアーム14、15を介して車体フレーム13に揺動可能に取付けられている。また、本実施形態の自動二輪車の前輪1はモータ11で駆動されるように構成されている。前記車体フレーム13の上には車体カバー16が搭載され、この車体カバー16内に乗員室17が形成される。乗員室17内には、乗員が着座するシート18が配設されると共に、操舵入力を付与するためのハンドル19が設けられている。
【0020】
本実施形態の自動二輪車では、原則として乗員は操舵しない。即ち、前記ハンドル19は、あくまで操舵入力を付与するためだけのものであって、ハンドル19を操舵したからといって転舵輪が転舵するわけではない。所謂、ステアバイワイヤと呼ばれるシステムと同様に、ハンドル19の操舵角と転舵輪の転舵角とは機械的に連結されていない。但し、四輪車両のように単に転舵輪を転舵するだけではバランスを維持できない。通常の自動二輪車の場合、乗員が操舵しながら重心点を移動することによってバランスを維持しているが、操舵しない乗員は重心点を如何様に移動させればよいかが分からない。そこで、本実施形態では、前輪1と後輪2との相対位置を調整することにより、重心点を移動させる代わりにバランスを維持する。
【0021】
具体的な構成を図2及び図3に示す。まず、本実施形態では、前記自動走行を可能とするために、転舵輪を後輪2とする。後輪2は、転舵アクチュエータ3によって、略上下方向の転舵軸OT 回りに回転し、転舵される。更に、この後輪2を前記車体フレーム13に連結するスイングアーム15そのものを揺動アクチュエータ4によって略上下方向の揺動軸OY 回りに回転して揺動し、後輪2と前輪1との相対位置を調整する。つまり、乗員が乗車しているときの車体の重心点の位置が一定であるとすると、前輪1と後輪2との相対位置を調整することにより、車体の重心点の対地相対位置が変化する。これを利用して、重心点位置の調整を行う。なお、前記転舵アクチュエータ3及び揺動アクチュエータ4は、何れも電動モータなどによって構成される。
【0022】
この実施形態の自動二輪車で自動走行を行うためのシステム概略構成図を図4に示す。図に示すパワーシステム6は、給電用バッテリの充放電を管理するためのものであり、例えばバッテリの充電は、前輪駆動用モータ11を所謂回生作動させ、発電機として使用することによって行われる。本実施形態の自動二輪車の出力端である前輪駆動用モータ11、転舵アクチュエータ3、揺動アクチュエータ4は、何れも電動アクチュエータなので、後述するコントロールユニット5からの制御信号を受けながらパワーシステム6によって駆動状態が制御される。
【0023】
車両には、前記後輪2の転舵角ζを検出する転舵角センサ21、前記後輪2の前輪1に対する揺動角(以下、単に後輪2の揺動角とも記す)ξを検出する揺動角センサ22、車体のヨー角Ψを検出するヨー角センサ23、車体のロール角Φを検出するロール角センサ24、車体重心点の横変位yを検出する重心点横変位センサ25、走行速度uを検出する走行速度センサ26、自車両の位置を検出するGPS27、前記ハンドル19の操舵角θを検出する操舵角センサ28等を備え、それらの出力は後述するコントロールユニット5に入力される。なお、前記ヨー角センサ23は、ヨーレートセンサ等によって検出されたヨー角速度、所謂ヨーレートを積分して用いてもよい。また、重心点横変位センサ25は、加速度センサ等によって検出された加速度を二回積分して用いてもよい。
【0024】
また、前記ハンドル19の近傍には、乗員によって操作され、走行速度を設定するためのアクセルスイッチやコーストスイッチなどからなる走行速度入力スイッチ20が設けられており、その出力が前記コントロールユニット5に入力される。
また、前記乗員室17の前方には、各種の状態をモニタするためのディスプレイ10が設けられている。具体的には、前記走行速度センサ26で検出された走行速度uを表示するための速度表示モニタ31、前記GPS27の検出内容を表示するためのGPSモニタ32、コントロールユニット5によって制御されている自車両の走行状態を表示する走行状態表示モニタ33などを構成している。
【0025】
前記コントロールユニット5は、例えばマイクロコンピュータ等の高度演算処理装置を備えて構成されている。このコントロールユニット5では、後述する各種の演算処理を行って、前記前輪駆動用モータ11、転舵アクチュエータ3、揺動アクチュエータ4の駆動状態を設定し、その駆動状態が達成される制御信号を各アクチュエータ並びに前記パワーシステム6に向けて出力する。なお、各アクチュエータの作動状態はパワーシステム6でモニタされたものをコントロールユニット5が読込む。例えば前輪駆動用モータ11の駆動トルクは、各モータの消費電流値から検出することができる。また、車両を加速する場合には各モータを駆動作動し、減速する場合には各モータを回生作動させればよい。
【0026】
次に、前記コントロールユニット5内で行われるロジックについて説明する。本実施形態の自動二輪車の加減速制御は、前述のように各モータの作動状態を制御することによって行われる。本実施形態の自動二輪車では、ふらつくことなく、走行路の沿って走行するために、前記転舵角ζ、揺動角ξ、ヨー角Ψ、ロール角Φの関係を求める。
【0027】
本実施形態のように自動二輪車を、ふらつくことなく、走行路に沿って走行させるための理論の根源は、所謂自律ロボットなどと同じ、倒立振子の原理から開始された。つまり、乗員は乗車していてもバランスの調整をしないので、搭載されている乗員は質量と同じであるという考え方である。このような倒立振子に相当する自動二輪車を車輪の向きが生み出す横力で姿勢制御することは可能である。しかし、それだけでは、ふらつきを抑制するのが限界であり、ふらつくことなく、走行路の沿って安定して走行することはできない。自動二輪車がふらつくことなく、走行路に沿って安定して走行するためには、重心点の微妙な調整が必要であり、通常は乗員がそれを調整しているから安定走行が可能なのである。そこで、前述のように、本実施形態では車輪の位置を動かすことによって、重心点の対地相対位置を調整するようにした。
【0028】
図5に本実施形態の自動二輪車の走行ロジックの概念を示す。図の左半部はプラント、即ち自動二輪車と乗員とによる出力状態を示し、図の右半部はアクチュエータ、即ち制御系の出力状態を示す。プラントの出力は速度u、その時間微分値、ロール角Φ、その時間微分値、ヨー角Ψ、その時間微分値などが挙げられる。これに対応するアクチュエータの出力は、トルクQ、その時間微分値、転舵角ζ、その時間微分値、揺動角ξ、その時間微分値などが挙げられる。この走行ロジックの目的は、プラントの出力とアクチュエータの出力との間の相関を求め、必要なプラント出力をアクチュエータの出力に置換することである。
【0029】
今、図6に示すように、プラント、即ち自動二輪車と乗員との出力が走行速度u、ロール角Φ、ヨー角Ψ、重心点横変位yとする。このプラント中におけるアクチュエータの出力が転舵角ζ、揺動角ξ、加速度ωである。但し、加速度ωは、前記モータの出力状態によって制御されるものであり、直接的な姿勢制御の対象としては取り扱わない。また、操舵入力θは、後述する目標ロール角Φ0 や目標ヨー角Ψ0 を設定するためのものであり、それ自体をプラントの出力としては扱わない。
【0030】
また、各アクチュエータの制御信号としては、駆動トルク指令値Q、転舵角指令値τζ、揺動角指令値τξや、前記加速度ωを達成するための減速指令値τB 、加速指令値τA 等が挙げられる。一方、制御入力は、前記走行速度入力スイッチ20で入力される走行速度指令値v、操舵角センサ28で検出された操舵角θが挙げられる。これらの制御入力と、前記各センサで検出された走行速度u、ロール角Φ、ヨー角Ψ、重心点横変位y、転舵角ζ、揺動角ξ等を用い、適宜演算処理を行って前記制御信号である駆動トルク指令値Q、転舵角指令値τζ、揺動角指令値τξを求める。
【0031】
車両の走行方向並びに姿勢を制御するのは、前記転舵角指令値τζ、揺動角指令値τξであるから、以後、これらの指令値の算出理論について説明する。本実施形態では、例えば前記揺動角ξは、前後輪の相対位置を調整するものであるから、自転運動、即ちヨーイングの運動を制御するものであると考える。また、前記ヨーイング運動は、周知のように操縦性を制御するものであるから、ヨーイング運動を揺動角ξによって制御するのなら、操縦性を示すヨーレートΨ’に基づいても揺動角ξを制御すべきである。これに対し、自動二輪車における転舵角ζは、所謂キャンバスラストに関与して対地キャンバ角の制御、自動二輪車ではローリングの運動を制御するものであると考える。即ち、本実施形態は、転舵によって横力を発生し、その横力を揺動、つまり前後輪の相対位置調整によって調整することでバランスをとろうとするものである。言い換えれば、一般的な自動二輪車で、乗員が行う操作の順に操縦を行うものである。
【0032】
また、前記揺動角ξは、前述のように、本実施形態では重心点の対地相対位置を制御するためのものであるから、例えば前記重心点横変位yを制御入力とした場合には、この重心点横変位yに応じても揺動角ξを制御すべきである。なお、この重心点横変位yは、例えば横風外乱など、転舵や揺動以外の入力を想定している。また、転舵角センサ21で検出された転舵角ζに基づいて転舵角指令値τζをフィードバック制御する必要があるし、揺動角センサ22で検出された揺動角ξに基づいて揺動角指令値τξをフィードバック制御する必要もある。
【0033】
このような原理に基づいて、前記転舵角指令値τζを下記1式で、揺動角指令値τξを下記2式で表した。1式は、目標ロール角Φ0 と検出されたロール角Φとの差分値及び検出された転舵角ζを用いたPID(比例ー微分ー積分)要素からなり、2式は目標ヨー角Ψ0 と検出されたヨー角Ψとの差分値及びヨー角Ψの時間微分値、即ちヨーレートΨ’の変化量及び検出された重心転横変位yの変化量及び検出された揺動角ξを用いたPID要素からなる。なお、式中のG1 〜G12及びK1 〜K6 は各項に係るフィードバックゲインである。
【0034】
【数1】
【0035】
ここで、前記目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 の設定方法について説明する。例えば、車両ロール角Φと走行速度u及び走行路曲率半径Rとの理想的な関係は、車輌モデル式を解析した下記3式で与えられる。
【0036】
【数2】
【0037】
但し、gは重力加速度である。
これに対し、車体がロール角Φで傾斜したためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合をCh、車体がヨー角Ψで横滑りしたためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合をCfとしたとき、横力Fsに対し、下記4式が成立する。なお、前記車体がロール角Φで傾斜したためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合Ch、車体がヨー角Ψで横滑りしたためにタイヤが地面から受ける横力と垂直力との割合Cfは、何れも凡そタイヤの特性で決まる定数である。
【0038】
【数3】
【0039】
前記4式を前記3式に代入して下記5式を得る。
【0040】
【数4】
【0041】
前記3式で得られるロール角Φを前記目標ロール角Φ0 とし、この目標ロール角Φ0 を用いて前記5式で得られるヨー角Ψを前記目標ヨー角Ψ0 とすれば、前記1式及び2式から転舵角指令値τζ及び揺動角指令値τξを得ることができる。図7には、走行路曲率半径R及び走行速度uを用いて目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定するための制御マップの一例を示した。
【0042】
但し、実際には走行路曲率半径Rと走行速度uとから目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定することは困難である。特に、走行路の曲率半径は細かく変化し続けているし、仮に走行路曲率半径を細かく検出することができても、走行路のどの部分を走行するのが最も理想的なのかまでは判定できない。そこで、本実施形態では、前記操舵入力である操舵角θから、例えばこれから走行しようとする走行路における目標ヨーレートを求め、その目標ヨーレートを達成するための目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定する。目標ヨーレートは、周知の車両運動方程式に従って、走行速度uや操舵角θ或いはその微分値に基づいて設定可能である。また、目標ヨーレートが決まれば、自動二輪車の場合、車両を旋回内側に回す力、即ちコーナリングフォースやキャンバスラストを考慮することにより、目標ロール角Φ0 及び目標ヨー角Ψ0 を設定することができる。
【0043】
一方、車両モデル式を解析することにより、前記1式及び2式中のフィードバックゲインG1 、G3 、G6 、G9 、G10、G12及びK1 〜K4 、K6 は車両諸元やタイヤ特性から決まる固定フィードバックゲインでよいが、G4 、G5 、G7 、G8 、K5 は走行速度uに依存するフィードバックゲイン、G2 、G11は走行速度u及びヨーレートΨ’に依存するフィードバックゲインであることが明らかとなった。つまり、前述した可変性のフィードバックゲインは、パラメータを考慮して設定しないと、前記1式及び2式が正しく記述されないことになる。
例えば、前記走行速度uにのみ依存するフィードバックゲインG4 、G5 、G7 、G8 、K5 の一例を下記表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
また、前記走行速度u及びヨーレートΨ’に依存するフィードバックゲインG2 の一例を図9に、同じくフィードバックゲインG11の一例を図9に示す。
このようにフィードバックゲインを正しく設定することにより、前記1式及び2式が正しく記述され、その結果、走行速度uやヨーレートΨ’に応じた転舵角指令値τζ及び揺動角指令値τξを正しく得ることができ、自動二輪車を走行路に沿って、ふらつくことなく、安定して走行させることが可能となる。
【0046】
次に、本発明の自動二輪車の第2実施形態について説明する。前述したように、前記第1実施形態の自動二輪車は、一般的な自動二輪車で、乗員が行う操作の順に操縦を行うものであり、まず転舵によって横力を発生し、その横力を揺動、つまり前後輪の相対位置調整によってバランスをとろうとするものである。これに対し、本実施形態では、前後輪の相対位置をずらすことによって車両を横に傾け、つまりローリングさせ、不要な横力が発生しないように転舵する、つまり車輪の向きを調整する。即ち、揺動、つまり前後輪の相対位置調整によってローリング運動量を制御し、転舵によって横力、つまりヨーイング運動量を制御する。
【0047】
まとめると、本実施形態ではヨーイングの運動を転舵角ζで制御し、ローリングの運動を揺動角ξで制御する。ヨーレートはヨーイング運動量の一種であるから、ヨーレートのフィードバック制御も転舵角ζで行う。但し、転舵角ζ自身のサーボ制御は転舵角ζで行わなければならないし、揺動角ξ自身のサーボ制御は揺動角ξで行わなければならない。また、前記第1実施形態と同様に、重心点の対地相対位置制御は揺動角ξでしか行えないので、前記重心点横変位yに応じても揺動角ξを制御すべきである。
【0048】
以上より、本実施形態における前記転舵角指令値τζは下記6式で、揺動角指令値τξは下記7式で表れる。6式は、目標ヨー角Ψ0 と検出されたヨー角Ψとの差分値及びヨー角Ψの時間微分値、即ちヨーレートΨ’の変化量及び検出された転舵角ζを用いたPID(比例ー微分ー積分)要素からなり、7式は目標ロール角Φ0 と検出されたロール角Φとの差分値及び検出された重心転横変位yの変化量及び検出された揺動角ξを用いたPID要素からなる。なお、式中のG101 〜G112 及びK101 〜K106 は各項に係るフィードバックゲインである。
【0049】
【数5】
【0050】
前記6式及び7式中の全てのフィードバックゲインは、車両諸元やタイヤ特性によって決まる固定ゲインでよい。これは、前述のように、始めに揺動角ξ、つまり前後輪の相対位置を調整してローリング運動を制御しようとするためである。前後輪の相対位置を調整することは、いわば車体重心点を支える位置を調整するだけであるから、少なくともそのことによって横力が変化することはない。前記第1実施形態では、始めに転舵角ζを調整してヨーイングを制御しようとするため、横力変化に伴うヨーレート及びヨーレートの制御因子である走行速度に応じてフィードバックゲインを調整しなければならないが、本実施形態では横力が変化しないのでフィードバックゲインを固定化することが可能となる。
【0051】
次に、本実施形態における揺動角ξと転舵角ζとの関係について考察する。通常の自動二輪車を考えれば分かるように、ローリング運動を伴いながら重心点位置が調整された定常旋回状態では、転舵角は“0”か、又はほぼ“0”でよい。つまり、旋回に必要な横力はローリング運動によるキャンバスラストで担われており、転舵によるコーナリングフォースを付加する必要は殆どない。この状態は、車体と転舵輪とが平行であることを意味するから、定常旋回状態で横力を変化させる必要のないときは、揺動角ξと転舵角ζとは、大きさが同じか又はほぼ同じで且つ逆向き(逆相ともいう)であればよい。
【0052】
図10は定常旋回状態における揺動角ξと転舵角ζとの関係を示している。このような定常旋回状態では、前述のように横力を変化させる必要がないので、前記揺動角ξと転舵角ζとは、大きさが同じか又はほぼ同じで且つ逆向きであればよくこれにより走行状態を安定化させることが可能となる。しかしながら、揺動角ξが変化しているとき、つまり車輪を動かしているとき(揺動の過渡期)には、その動かすという動作によって横力が変化する。揺動の過渡期に横力が変化すると、所謂バランスが崩れてしまうので、この横力がキャンセルされるように転舵角ζを調整する。
【0053】
今、仮に転舵輪である後輪の着力点(タイヤ接地点)と前記転舵軸とが平面視において同一であるとして、横力が発生している点、つまり後輪着力点の横移動速度は、揺動角ξの時間微分値に揺動腕の長さΓを乗じた値ξ’Γになる。この横力発生点の横移動速度ξ’Γを、前後(縦)方向への移動速度である走行速度uで除すと、横力発生点の対地移動角度、所謂横滑り角βが得られる。揺動過渡期の横力は、この横滑り角βに応じて発生するので、転舵角ζにより横滑り角βをキャンセルしてやればよい。これを前記揺動角ξ及び転舵角ζの関係に組み込むと、下記8式が得られる。
【0054】
【数6】
【0055】
このように転舵輪の揺動過渡期に発生する横力が小さくなるように転舵角を制御することにより、揺動過渡期の車両挙動が安定する。
この考え方を更に発展させると、前記横滑り角βより少し大きい転舵角ζを与えてやると、それに伴う横力、この場合は転舵輪揺動の横力と逆向きの横力が発生し、それが転舵輪揺動を補助することになる。その条件を満たす揺動角ξと転舵角ζとの関係を下記9式に示す。
【0056】
【数7】
【0057】
前記9式の条件の下に揺動角ξ及び転舵角ζを制御すると、転舵輪揺動のための揺動アクチュエータ4の負荷が軽減され、エネルギ損を減少することができる。また、理論上は、揺動アクチュエータ4を不要とすることも可能であるが、実際にはローリング状態における横力に対し、揺動角ξを保持する必要があるため、なくしてしまうことはできない。
【0058】
図11は、本実施形態の制御量の経時変化を示したものである。本実施形態では、初期動作として転舵輪揺動、即ち前後輪相対位置調整を行うため、横力が変化せず或いは変化しても転舵角制御によってそれをキャンセルすることができるので、比較的速やかに収束(減衰)し、安定状態になる。これに対し、前記第1実施形態では、初期動作として転舵を行うため、横力が変化し、これを減少するために転舵輪を揺動し、つまり前後輪相対位置調整を行い、このときにまた横力が変化し、これを繰り返すために、どうしても発散しがちになる。
【0059】
なお、前記実施形態では、モデル式から得たフィードバックゲインのパラメータとして走行速度u及びヨーレートΨ’のみについて説明したが、これ以外のパラメータを考慮するようにしてもよい。一例としては、例えば車両の空力係数やタイヤ係数などが挙げられる。空力係数としては、例えば空力が車体に最初に作用して重心点位置まで伝達されるのに数十msec. かかるので、車体先端で空力を検出し、重心点に作用する前に処理を施すようにすることが考えられる。また、タイヤ係数としては、例えば転舵角に対する横力の作用を考慮するようにしてもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、乗員による情報として操舵角θ及び設定速度vのみを取り上げたが、例えば加速指令や減速指令、停車指令、発進指令、旋回指令などを取り扱うようにしてもよい。
また、前記実施形態では、車両を操縦するために操舵角を操舵入力として付与するようにしたが、例えばGPS(Global Positioning System )から地図情報を読込み、これから走行する走行路の形態に合わせて自動操舵を行うようにすることも可能である。即ち、前述したように目標とするヨー運動は走行路に沿って走行するためのものであるから、操舵入力に代えて、走行路情報として走行路曲率半径が得られれば、目標とするヨー運動を設定することができ、結果的に走行路に沿って走行することが可能となる。また、これに加えて、例えば路面勾配や路面摩擦係数などを考慮するようにしてもよい。ちなみに、何れのパラメータも周知の手法により、走行路情報として取り扱うことができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る自動二輪車によれば、前輪及び後輪の何れかの車輪を転舵手段で転舵し、前輪及び後輪の何れかの車輪を横方向に移動して両者の相対位置を揺動手段で調整するようにすると共に自律走行するために必要なヨー運動量及びロール運動量の目標値を算出し、このヨー運動量及びロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、ふらつくことなく、走行路に沿って走行することが可能となり、結果的に自律走行を可能とする。
【0062】
また、本発明のうち請求項2に係る自動二輪車によれば、自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、前後輪の相対位置調整によるヨー運動量と転舵輪の転舵によるロール運動量とをバランスさせてふらつくことなく、走行路に沿って走行することができる。
【0063】
また、本発明のうち請求項3に係る自動二輪車によれば、検出されたロール運動量検出値と自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、検出されたヨー運動量検出値と自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0064】
また、本発明のうち請求項4に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の転舵量に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
また、本発明のうち請求項5に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の揺動量に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0065】
また、本発明のうち請求項6に係る自動二輪車によれば、検出されたヨーレート検出値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、十分な操縦性を確保することができる。
また、本発明のうち請求項7に係る自動二輪車によれば、検出された重心点横移動量検出値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、横風外乱等に対し、十分な安定性を確保することができる。
【0066】
また、本発明のうち請求項8に係る自動二輪車によれば、揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを検出された走行速度検出値に基づいて設定する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
また、本発明のうち請求項9に係る自動二輪車によれば、転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを検出されたヨーレート検出値に基づいて設定する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0067】
また、本発明のうち請求項10に係る自動二輪車によれば、自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、前後輪の相対位置調整による横傾き量、即ちロール運動量と転舵輪の転舵による横力の調整量、即ちヨー運動量とをバランスさせてふらつくことなく、走行路に沿って走行することができる。
【0068】
また、本発明のうち請求項11に係る自動二輪車によれば、検出されたヨー運動量検出値と自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、検出されたロール運動量検出値と自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0069】
また、本発明のうち請求項12に係る自動二輪車によれば、揺動される車輪の揺動量と転舵される車輪の転舵量とを、同じか又はほぼ同じ大きさで逆向きに制御する構成としたため、前後輪の相対位置調整による横力を小さくして自車両の走行状態を安定化することができる。
また、本発明のうち請求項13に係る自動二輪車によれば、車輪が揺動されているときに発生する横力が小さくなるように車輪の転舵量を制御する構成としたため、車輪揺動時の横力を小さくして自車両の走行状態を安定化することができる。
【0070】
また、本発明のうち請求項14に係る自動二輪車によれば、車輪が揺動されているときに発生する横力と逆向きの横力が発生するように車輪の転舵量を制御する構成としたため、車輪の転舵で揺動を補助することができる。
また、本発明のうち請求項15に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の転舵量に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
【0071】
また、本発明のうち請求項16に係る自動二輪車によれば、検出された車輪の揺動量に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、ふらつきをなくし、より確実に走行路に沿って走行することができる。
また、本発明のうち請求項17に係る自動二輪車によれば、検出されたヨーレート検出値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御する構成としたため、十分な操縦性を確保することができる。
また、本発明のうち請求項18に係る自動二輪車によれば、検出された重心点横移動量検出値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御する構成としたため、横風外乱等に対し、十分な安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動二輪車の一実施形態を示す外観図である。
【図2】図1の自動二輪車の組立説明図である。
【図3】図1の自動二輪車の転舵及び揺動調整のための構成図である。
【図4】図1の自動二輪車の自動走行制御装置の概略構成図である。
【図5】図1の自動二輪車のシャシダイナモの説明図である。
【図6】図1の自動二輪車のコントロールユニットで行われるロジックの概念図である。
【図7】図1の自動二輪車のコントロールユニットで行われるロジックの概略構成図である。
【図8】図7のロジックで用いられる制御マップである。
【図9】図7のロジックで用いられる制御マップである。
【図10】図7のロジックで用いられる制御マップである。
【図11】図7のロジックによる作用の説明図である。
【符号の説明】
1は前輪
2は後輪
3は転舵アクチュエータ(転舵手段)
4は揺動アクチュエータ(揺動手段
5はコントロールユニット
6はパワーシステム
11は前輪駆動用モータ
12は後輪駆動用モータ
20は走行速度入力スイッチ
21は転舵角センサ
22は揺動角センサ
23はヨー角センサ
24はロール角センサ
25は重心点横変位センサ
26は走行速度センサ
27はGPS
Claims (18)
- 車体の前方及び後方の夫々に前輪及び後輪を一輪ずつ配設し、前記前輪及び後輪の何れかの車輪を転舵軸周りに転舵する転舵手段と、前記前輪及び後輪の何れかの車輪を横方向に移動して両者の相対位置を調整する揺動手段と、前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、自律走行するために必要なヨー運動量及びロール運動量の目標値を算出し、このヨー運動量及びロール運動量の目標値に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする自動二輪車。
- 前記制御手段は、前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
- 自車両に発生するロール運動量を検出するロール運動量検出手段と、自車両に発生するヨー運動量を検出するヨー運動量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ロール運動量検出手段で検出されたロール運動量検出値と前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、前記ヨー運動量検出手段で検出されたヨー運動量検出値と前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車。
- 前記転舵手段による車輪の転舵量を検出する転舵量検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵量検出手段で検出された車輪の転舵量に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自動二輪車。
- 前記揺動手段による車輪の揺動量を検出する揺動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記揺動量検出手段で検出された車輪の揺動量に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の自動二輪車。
- 自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の自動二輪車。
- 自車両の重心点の横移動量を検出する重心点横移動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重心点横移動量検出手段で検出された重心点横移動量検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の自動二輪車。
- 自車両の走行速度を検出する走行速度検出手段を備え、前記制御手段は、少なくとも前記揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを前記走行速度検出手段で検出された走行速度検出値に基づいて設定することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の自動二輪車。
- 自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵手段による車輪の転舵量及び揺動手段による車輪の揺動量を制御するための制御ゲインを前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて設定することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の自動二輪車。
- 前記制御手段は、前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値に基づいて転舵手段による車輪の転舵量を制御すると共に、前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値に基づいて揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
- 自車両に発生するヨー運動量を検出するヨー運動量検出手段と、自車両に発生するロール運動量を検出するロール運動量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記ヨー運動量検出手段で検出されたヨー運動量検出値と前記自律走行するために必要なヨー運動量の目標値との差に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量をフィードバック制御すると共に、前記ロール運動量検出手段で検出されたロール運動量検出値と前記自律走行するために必要なロール運動量の目標値との差に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量をフィードバック制御することを特徴とする請求項1又は10に記載の自動二輪車。
- 前記制御手段は、前記揺動手段による車輪の揺動量と転舵手段による車輪の転舵量とを、同じか又はほぼ同じ大きさで逆向きに制御することを特徴とする請求項10又は11に記載の自動二輪車。
- 前記制御手段は、前記揺動手段によって車輪が揺動されているときに発生する横力が小さくなるように前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とする請求項10乃至12の何れかに記載の自動二輪車。
- 前記制御手段は、前記揺動手段によって車輪が揺動されているときに発生する横力と逆向きの横力が発生するように前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とする請求項10乃至13の何れかに記載の自動二輪車。
- 前記転舵手段による車輪の転舵量を検出する転舵量検出手段を備え、前記制御手段は、前記転舵量検出手段で検出された車輪の転舵量に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とする請求項10乃至14の何れかに記載の自動二輪車。
- 前記揺動手段による車輪の揺動量を検出する揺動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記揺動量検出手段で検出された車輪の揺動量に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項10乃至15の何れかに記載の自動二輪車。
- 自車両に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段を備え、前記制御手段は、前記ヨーレート検出手段で検出されたヨーレート検出値に基づいて前記転舵手段による車輪の転舵量を制御することを特徴とする請求項10乃至16の何れかに記載の自動二輪車。
- 自車両の重心点の横移動量を検出する重心点横移動量検出手段を備え、前記制御手段は、前記重心点横移動量検出手段で検出された重心点横移動量検出値に基づいて前記揺動手段による車輪の揺動量を制御することを特徴とする請求項10乃至17の何れかに記載の自動二輪車。
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