JP2004316752A - 車両用クラッチ制御装置および制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能を連続的に得る。
【解決手段】ECT_ECU1020は、エンジン100の出力を伝達および遮断するロックアップクラッチ210を車両発進時にスリップ制御する。ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比eを算出するモジュールと、速度比に従って連続的に変化するロックアップクラッチ210の容量係数との関係を予め記憶するメモリと、メモリに記憶された関係に基づいて、算出された速度比eから容量係数Cを算出するモジュールと、算出された容量係数Cからロックアップクラッチ210の発進時のクラッチトルクT(C)を決定するモジュールとを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】ECT_ECU1020は、エンジン100の出力を伝達および遮断するロックアップクラッチ210を車両発進時にスリップ制御する。ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比eを算出するモジュールと、速度比に従って連続的に変化するロックアップクラッチ210の容量係数との関係を予め記憶するメモリと、メモリに記憶された関係に基づいて、算出された速度比eから容量係数Cを算出するモジュールと、算出された容量係数Cからロックアップクラッチ210の発進時のクラッチトルクT(C)を決定するモジュールとを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン出力を伝達および遮断する車両用クラッチの制御装置に関し、特に、車両発進時のスリップ制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンから駆動系へ、エンジン出力を伝達したり遮断したりする車両用クラッチは、車両停止時や変速機の変速時等に解放状態とされ、エンジン出力の伝達を遮断するとともに、車両走行時には係合状態とされて駆動系へエンジン出力を伝達する。係合時のクラッチトルク、すなわち伝達可能なトルクの大きさは一般的にエンジントルクよりも大きく、エンジントルクを確実に変速機等の駆動系へ伝達できるようになっている。
【0003】
また、変速機の変速段を自動で切り換えるオートマチックトランスミッション車においてトルクコンバータの代わりにこのようなクラッチを用いたものもある。このような車両用クラッチとしては、油圧やばね力などで摩擦板が押圧されることにより摩擦力でトルクを伝達する摩擦クラッチや、電磁力によってトルクを伝達する電磁クラッチなどが知られている。
【0004】
特開平8−119002号公報(特許文献1)は、車両発進時のもたつき感や違和感を解消して発進性能を向上させるとともに、走行抵抗の大きい場所でのスリップ制御に起因する発進性能の著しい悪化やクラッチの発熱などを防止する車両用クラッチの制御装置を開示する。この制御装置は、エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ係合させる車両用クラッチを制御する。この制御装置は、エンジントルクを検出するエンジントルク検出センサと、クラッチの従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達したか否かを判断する等速回転判断部と、その等速回転判断部によって従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達した旨の判断がなされるまでは、クラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ小さな値となるようにクラッチをスリップ係合させる第1スリップ制御部と、第1スリップ制御部によるスリップ制御時間が所定時間を経過したか否かを判断する経過時間判断部と、その経過時間判断部によって第1スリップ制御部によるスリップ制御時間が所定時間を経過した旨の判断がなされた場合に、クラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ大きな値となるようにクラッチをスリップ係合させる第2スリップ制御部と、等速回転判断部によって従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達した旨の判断がなされた場合に、クラッチを完全係合させる完全係合制御部とを含む。
【0005】
特許文献1に開示された制御装置によると、たとえば、クラッチ係合油圧係数とエンジントルクとの乗算によりクラッチトルクを算出して車両発進時のスリップ制御を行なう際に、まず、第1スリップ制御部により係数を0.8〜0.9に選定し、その後、第2スリップ制御部により係数を1.1〜1.2に選定し、その後、従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達すると、クラッチを完全に係合する。このようにすると、まず、第1スリップ制御部によりクラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ小さな値となるようにクラッチをスリップ係合させることになる。クラッチトルクがエンジントルクより小さいため、クラッチのスリップ係合に拘らずエンジンの回転速度は上昇させられるとともに、エンジントルクの一部すなわちクラッチトルクに相当するトルクがクラッチを介して従動側回転部材に伝達され、そのトルクに基づいて従動側回転部材の回転速度が上昇させられる。次に、第2スリップ制御部によりクラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ大きな値となるようにクラッチをスリップ係合させることになる。すなわち、走行抵抗が大きくて従動側回転部材の回転速度の上昇が遅い場合など、第1スリップ制御部によるスリップ制御時間が予め定められた時間を超えても従動側回転部材の回転速度がエンジン回転速度に到達しない場合には、第2スリップ制御部によりクラッチトルクがエンジントルクより大きな値となるようにして、クラッチを介して従動側回転部材へ伝達するトルクを増大させ、その従動側回転部材の回転速度を速やかに上昇させるようにしたのである。クラッチトルクがエンジントルクより大きいことから、エンジンの回転速度は低下するが、第1スリップ制御部によるスリップ制御時にエンジン回転速度はある程度上昇しているため、エンジン回転速度の低下に伴って直ちにエンジン停止などのトラブルが生じるおそれはない。そして、このような従動側回転部材の回転速度上昇およびエンジン回転速度の低下により両者の回転速度が略同じになり、等速回転判断部により従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達した旨の判断がなされると、クラッチを完全係合されて、エンジンと従動側回転部材とが一体的に結合して一体回転させられるようになる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−119002号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された車両用クラッチの制御装置は、第1スリップ制御部によるスリップ制御と第2スリップ制御部によるスリップ制御とを、時間で切換えるので、その切換えのタイミングでクラッチトルクが不連続になる。このクラッチトルクの不連続により滑らかな発進加速を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能を連続的に得ることができる車両用クラッチ制御装置および制御方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両用クラッチ制御装置は、エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ制御する。この制御装置は、クラッチの入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比またはクラッチの入力側回転数と出力側回転数との差である速度差を算出するための算出手段と、速度比または速度差と、速度比または速度差に従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係を予め記憶するための記憶手段と、記憶された関係に基づいて、算出された速度比または速度差から容量係数を算出し、算出された容量係数からクラッチトルクを決定するための決定手段とを含む。
【0010】
第1の発明によると、記憶手段には、速度比または速度差と、それらに従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係が予め記憶される。クラッチトルクは、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出されるので、容量係数を速度比や速度差に対して連続的に設定しておくことにより、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る車両用クラッチ制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、決定手段は、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数とに基づいて、クラッチトルクを決定するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、クラッチトルクを、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出して、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。
【0013】
第3の発明に係る車両用クラッチ制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、決定手段は、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差とに基づいて、クラッチトルクを決定するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差を算出して、この差の2乗と算出された容量係数との積によりクラッチトルクを算出できる。このようにすると、クラッチトルクをアイドル時に0にすることができる。そのため、アイドル時の負荷を最小にすることができる。
【0015】
第4の発明に係る車両用クラッチ制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、速度比が予め定められた値以上または速度差が予め定められた値以下になると、発進完了と判断して、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させるための手段をさらに含む。
【0016】
第4の発明によると、速度比が1に近づくまたは速度差が0に近づくと、それに従って、クラッチトルクが下がるので、そのままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑ることになる。これを回避すべく、速度比が予め定められた値(1に近い値)以上または速度差が予め定められた値(0に近い値)以下になると、発進完了と判断してクラッチ容量係数を上昇させるなどして、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させて、最終的に、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくなった時点で完全に係合する。
【0017】
第5の発明に係る車両用クラッチ制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、記憶される関係は、速度比が1に向かって増加または速度差が0に向かって減少するに従って、クラッチの容量係数は、0より大きな初期値から第1の極大値まで上昇し、第1の極大値よりも小さい第2の極大値まで下降し、第2の極大値よりも小さい終了値に到達するように変化する関係である。
【0018】
第5の発明によると、0よりも大きな初期値から第1の極大値へ、第1の極大値から第1の極大値よりも小さい第2の極大値へ、第2の極大値から第2の極大値よりも小さい終了値へ連続的に変化させるような容量係数となる。このようにすると、車両発進時にクラッチが係合させられる際にエンジン回転速度が一時的に低下し、もたつき感や違和感を生じることがなくなり、十分な加速性能が得られる。さらに、登坂路などで走行抵抗が大きいときでもエンジン回転速度が低下し続けないで、エンジン回転が不安定になったり停止したりすることがなくなる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御装置を提供することができる。
【0019】
第6の発明に係る車両用クラッチ制御方法は、エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ制御する。この制御方法は、クラッチの入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比またはクラッチの入力側回転数と出力側回転数との差である速度差を算出する算出ステップと、速度比または速度差と、速度比または速度差に従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係を予め記憶する記憶ステップと、記憶された関係に基づいて、算出された速度比または速度差から容量係数を算出し、算出された容量係数からクラッチトルクを決定する決定ステップとを含む。
【0020】
第6の発明によると、記憶ステップにて、速度比または速度差と、それらに従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係が予め記憶される。クラッチトルクは、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出されるので、容量係数を速度比や速度差に対して連続的に設定しておくことにより、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御方法を提供することができる。
【0021】
第7の発明に係る車両用クラッチ制御方法においては、第6の発明の構成に加えて、決定ステップは、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数とに基づいて、クラッチトルクを決定するステップを含む。
【0022】
第7の発明によると、クラッチトルクを、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出して、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。
【0023】
第8の発明に係る車両用クラッチ制御方法においては、第6の発明の構成に加えて、決定ステップは、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差とに基づいて、クラッチトルクを決定するステップを含む。
【0024】
第8の発明によると、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差を算出して、この差の2乗と算出された容量係数との積によりクラッチトルクを算出できる。このようにすると、クラッチトルクをアイドル時に0にすることができる。そのため、アイドル時の負荷を最小にすることができる。
【0025】
第9の発明に係る車両用クラッチ制御方法は、第6〜8のいずれかの発明の構成に加えて、速度比が予め定められた値以上または速度差が予め定められた値以下になると、発進完了と判断して、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させるためのステップをさらに含む。
【0026】
第9の発明によると、速度比が1に近づくまたは速度差が0に近づくと、それに従って、クラッチトルクが下がるので、そのままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑ることになる。これを回避すべく、速度比が予め定められた値(1に近い値)以上または速度差が予め定められた値(0に近い値)以下になると、発進完了と判断してクラッチ容量係数を上昇させるなどして、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させて、最終的に、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくなった時点で完全に係合する。
【0027】
第10の発明に係る車両用クラッチ制御方法においては、第6〜9のいずれかの発明の構成に加えて、記憶される関係は、速度比が1に向かって増加または速度差が0に向かって減少するに従って、クラッチの容量係数は、0より大きな初期値から第1の極大値まで上昇し、第1の極大値よりも小さい第2の極大値まで下降し、第2の極大値よりも小さい終了値に到達するように変化する関係である。
【0028】
第10の発明によると、0よりも大きな初期値から第1の極大値へ、第1の極大値から第1の極大値よりも小さい第2の極大値へ、第2の極大値から第2の極大値よりも小さい終了値へ連続的に変化させるような容量係数となる。このようにすると、車両発進時にクラッチが係合させられる際にエンジン回転速度が一時的に低下し、もたつき感や違和感を生じることがなくなり、十分な加速性能が得られる。さらに、登坂路などで走行抵抗が大きいときでもエンジン回転速度が低下し続けないで、エンジン回転が不安定になったり停止したりすることがなくなる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御方法を提供することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。本実施の形態では、トルクコンバータを備えた、遊星歯車式減速機構を有する自動変速機において、車両の発進時にトルクコンバータのロックアップクラッチをスリップ制御する制御装置を説明する。なお、本発明は、このロックアップクラッチに限定されて適用されるものではなく、他のクラッチであってもよい。また、トルクコンバータを有さない構造であってもよい。さらに遊星歯車式減速機構を有する自動変速機ではなく、ベルト式などの無段変速機であってもよい。
【0031】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、自動変速機300と、ECU1000とから構成される。エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ400により検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0032】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250と、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200と自動変速機300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ410により検知される。自動変速機300の出力軸回転数NOは、出力軸回転数センサ420により検知される。
【0033】
車両の発進時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップを解放して、ロックアップクラッチ210がスリップ制御されることにより、エンジン100から自動変速機300へ伝達されるトルクを滑らかに増大させる。車両の停止時においては、ロックアップクラッチ210を解放して、自動変速機300の回転および停止のいずれにもかかわらずエンジン100の回転を許容する。通常走行時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップ機能によりポンプ羽根車220およびタービン羽根車230を連結して回転損失を防止する。
【0034】
図2に自動変速機300の作動表を示す。図2に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C1)、ワンウェイクラッチ要素(F0、F3)が係合する。
【0035】
これらのパワートレーンを制御するECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、自動変速機300を制御するECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020とを含む。
【0036】
ECT_ECU1020には、タービン回転数センサ410からタービン回転数NTを表わす信号が、出力軸回転数センサ420から出力軸回転数NOUTを表わす信号が入力される。また、ECT_ECU1020には、エンジンECU1010から、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号が入力される。
【0037】
これら回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸に、それぞれ取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0038】
ECT_ECU1020から、トルクコンバータ200や自動変速機300のリニアソレノイドにソレノイド制御信号が出力される。図2に示すクラッチ要素(C1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)を、係合させたり解放させたりする。たとえば、5速から6速へのアップシフト時においては、クラッチC3が係合から解放されるように締結圧が制御され、ブレーキB2が解放から係合されるように締結圧が制御される。実際には、ECT_ECU1020は、ソレノイド制御信号を油圧回路のリニアソレノイドバルブに出力している。ECT_ECU1020は、後述する目標の油圧(目標の締結圧を実現する油圧)を算出しれ、その目標油圧等により油圧サーボへの油圧を算出してソレノイドバルブに出力する。
【0039】
油圧回路は、たとえば2個のリニアソレノイドバルブを有するとともに、自動変速機のプラネタリギヤユニットの伝達経路を切換えて、前進6速、後進1速の変速段を達成する複数の摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)を係合及び解放する複数の油圧サーボを有する。また、リニアソレノイドバルブの入力ポートにはソレノイドモジュレータ圧が供給されており、これらリニアソレノイドバルブの出力ポートからの制御油圧がそれぞれプレッシャコントロールバルブの制御油室に供給されている。プレッシャコントロールバルブは、ライン圧がそれぞれ入力ポートに供給されており、制御油圧にて調圧された出力ポートからの調圧が、それぞれシフトバルブを介して適宜各油圧サーボに供給される。
【0040】
このような油圧回路は、一例であって、実際には、自動変速機に対応して油圧サーボは多数備えられており、これら油圧サーボへの油圧を切換えるシフトバルブも多数備えている。また、油圧サーボは、シリンダにオイルシールにより油密状に嵌合するピストンを有しており、そのピストンは、油圧室に作用するプレッシャコントロールバルブからの調圧油圧に基づき、戻しスプリングに抗して移動し、外側摩擦プレートおよび内側摩擦材を接触する。その摩擦プレートおよび摩擦材は、クラッチのみならずブレーキも同様である。
【0041】
ECT_ECU1020は、発進時における車両に所望の加速を与えるために、ロックアップクラッチ210のスリップ制御を実現するためのプログラム、そのプログラムで用いられるマップや各種しきい値を内部メモリに記憶する。ECT_ECU1020は、そのプログラムを実行することにより、ロックアップクラッチ210の容量係数Cを変化させてロックアップクラッチ210のクラッチトルクを算出して、そのクラッチトルクが伝達されるように、ロックアップクラッチ210を係合および解放するために供給される油圧を制御する。
【0042】
なお、発進時においてロックアップクラッチ210は解放状態であることが前提である。このことは、車両の発進時においてロックアップクラッチ210をロックアップしているとエンストするので、ロックアップクラッチ210は解放状態であることと整合する。
【0043】
本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020の内部メモリに記憶される速度比eに対するロックアップクラッチ210の容量係数Cの特性について説明する。
【0044】
本実施の形態に係る制御装置を実現するECT_ECU1020においては、ロックアップクラッチ210の容量係数Cを、クラッチ速度比eの関数であって、連続して可変な係数として、ロックアップクラッチ210のクラッチ係合圧を制御してロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。
【0045】
ロックアップクラッチ210のクラッチトルクをT(C)、ロックアップクラッチ210の入力側回転数をN(IN)とすると、C=T(C)/N(IN)2で表わされる。このため、クラッチトルクT(C)は、T(C)=C×N(IN)2により算出できる。
【0046】
また、ロックアップクラッチ210の容量係数Cをクラッチ速度比eの関数とするので、容量係数C(e)と表わすこともできる。このクラッチ速度比eは、ロックアップクラッチ210の出力側回転数をN(OUT)、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)とすると、e=N(OUT)/N(IN)で表わされる。なお、ロックアップクラッチ210の出力側回転数N(OUT)は、タービン回転数センサ410により検知されるタービン回転数NTであり、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)は、エンジン回転数センサ400により検知されるエンジン回転数NEである。
【0047】
図3に、ECT_ECU1020の内部メモリに記憶されるクラッチ容量係数Cのマップを示す。図3に示すように、クラッチ容量係数Cは、クラッチ速度比eの関数であって、クラッチ速度比eが0から1の範囲で、クラッチ容量係数Cが連続的に変化するように設定されている。なお、クラッチ容量係数Cをクラッチ速度比eの関数とするのではなくて、クラッチ容量係数Cをクラッチ速度差ΔN=N(IN)−N(OUT)の関数としてもよい。
【0048】
図3に示すように、クラッチ速度比eが0から1へ変化するに従って、クラッチ容量係数Cは、初期値C(1)から、第1の極大値C(2)および第2の極大値C(3)を経て最終値C(4)まで変化する。このとき、初期値C(1)は、最終値C(4)よりも大きく第2の極大値C(3)よりも小さく、第1の極大値C(2)は、クラッチ速度比eが0から1が変化する中で最も大きく、第2の極大値C(3)は、初期値C(1)よりも大きく第1の極大値C(2)よりも小さく、最終値C(4)は、クラッチ速度比eが0から1が変化する中で最も小さい。なお、このような容量係数の大小関係は一例であって本発明を限定するものではない。
【0049】
また、後述するように、クラッチ速度比eが1に近づくと、この車両の発進が終了したと判断して、クラッチ容量係数Cをこの図3に示す関数とは無関係に増大させて、クラッチトルクを上昇させる。これは、クラッチ速度比eが1に近づくと、図3に示すように容量係数が下がってクラッチトルクが下がるので、そのままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑るので、クラッチ容量係数Cを上昇させてクラッチトルクを上昇させて、最終的に、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくさせて、ロックアップクラッチ210が完全に係合するようにする。
【0050】
さらに、この車両の発進が終了後であって、発進が完了したと判断されると、クラッチトルク自体をこの図3に示す関数とは無関係に増大させて、クラッチを完全に係合させる。
【0051】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。図4に示すプログラムは、予め定められたサンプリング時間の間隔で実行され、車両の現在の動作モードを検知する。
【0052】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)1000にて、ECT_ECU1020は、1サンプリングタイム前のモードを読出す。S2000にて、ECT_ECU1020は、アイドル接点の状態を検知する。S3000にて、ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)を検知する。このとき、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号に基づいて、入力側回転数N(IN)が検知される。
【0053】
S4000にて、ECT_ECU1020は、前モードが「停止」であって、かつアイドル接点「ON→OFF」に変更されたか否かを判断する。前モードが「停止」であって、かつアイドル接点「ON→OFF」に変更されると(S4000にてYES)、処理はS5000に移される。もしそうでないと(S4000にてNO)、処理はS6000に移される。
【0054】
S5000にて、ECT_ECU1020は、モードを「発進」に設定する。これにより、車両の動作モードが発進モードと記憶される。
【0055】
S6000にて、ECT_ECU1020は、前モードが「走行」であって、かつロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)が{N(IN_IDLE)+α}以下であるか否かを判断する。ここで、N(IN_IDLE)は、アイドル時におけるロックアップクラッチ210の入力側回転数であって、αは、発進完了後の通常走行時におけるロックアップクラッチ210の入力側回転数を表わすためにN(IN_IDLE)に加算される正の値である。前モードが「走行」であって、かつロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)が{N(IN_IDLE)+α}以下であると(S6000にてYES)、処理は、S5000に移される。もうそうでないと(S6000にてNO)、処理は、S7000に移される。
【0056】
S7000にて、ECT_ECU1020は、前モードとして現在のモードである「停止」または「走行」を記憶する。
【0057】
S8000にて、ECT_ECU1020は、発進制御ルーチンを実行する。この発進制御ルーチンの詳細については、図5を用いて説明する。
【0058】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行される、図4のS8000の発進制御ルーチンの制御構造について説明する。図4に示すプログラムが予め定められたサンプリング時間の間隔で実行されるので、図4に示すプログラムで車両の現在の動作モードが「発進」と判断される限りにおいて、図5に示すプログラムは、そのサンプリング時間の間隔で繰返し実行される。
【0059】
S8010にて、ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の速度比eを算出する。このとき、ECT_ECU1020は、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号に基づいてロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)を検知して、タービン回転数センサ410にて検知されたタービン回転数NTを表わす信号に基づいてロックアップクラッチ210の出力側回転数N(OUT)を検知する。ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)を出力側回転数N(OUT)で除算して、クラッチ速度比eを算出する。
【0060】
S8020にて、ECT_ECU1020は、クラッチ速度比eがε(1)以下であるか否かを判断する。このε(1)は、図3に示すe(3)以上の値である。クラッチ速度比eがε(1)以下であると(S8020にてYES)、処理は、S8030に移される。もしそうでないと(S8020にてNO)、処理は、S8040に移される。
【0061】
S8030にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSに「発進制御中」と設定して、ECT_ECU1020の内部タイマ(積算型タイマ)のTIMER値を0に設定(初期化)する。その後、処理は、S8080に移される。
【0062】
S8040にて、ECT_ECU1020は、クラッチ速度比eがε(1)より大きくて、ε(2)以下であるか否かを判断する。このε(2)は、ε(1)よりも大きい値である。クラッチ速度比eがε(1)より大きくて、ε(2)以下であると(S8040にてYES)、処理は、S8050に移される。もしそうでないと(S8040にてNO)、処理は、S8060に移される。
【0063】
S8050にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSに「発進終了制御」と設定する。その後、処理は、S8080に移される。
【0064】
S8060にて、ECT_ECU1020は、クラッチ速度比eがε(2)より大きいか、またはタイマ値TIMERが発進完了時間を表わすしきい値TIMER(0)以上であるか否かを判断する。クラッチ速度比eがε(2)より大きいか、またはタイマ値TIMERがしきい値TIMER(0)以上であると(S8060にてYES)、処理は、S8070に移される。もしそうでないと(S8060にてNO)、処理は、S8080に移される。
【0065】
S8070にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSに「発進完了制御」と設定する。その後、処理は、S8080に移される。
【0066】
S8080にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSが「発進完了制御」であるか否かを判断する。変数STATUSが「発進完了制御」であると(S8080にてYES)、処理は、S8090に移される。もしそうでないと(S8060にてNO)、処理は、S8100に移される。
【0067】
S8090にて、ECT_ECU1020は、クラッチトルクT(C)を、T(C)=T(C)+ΔTとして算出する。ΔTは、正の値であって、車両の発進完了後のクラッチトルクT(C)を決定するための値であって、これによりロックアップクラッチ210が完全に係合する。その後、この処理は終了する。
【0068】
S8100にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSが「発進終了制御」であるか否かを判断する。変数STATUSが「発進終了制御」であると(S8100にてYES)、処理は、S8110に移される。もしそうでないと(S8100にてNO)、処理は、S8120に移される。
【0069】
S8110にて、ECT_ECU1020は、クラッチ容量係数C(4)を、C(4)=C(4)+ΔCとして算出する。ΔCは、正の値であって、クラッチトルクT(C)を強制的にかつ漸増的に上昇させる。これにより、クラッチトルクをエンジントルクよりも大きくなるように、ロックアップクラッチ210を完全に係合させるために必要なクラッチトルクまで増加させる。その後、処理は、S8120に移される。
【0070】
S8120にて、ECT_ECU1020は、クラッチ容量係数Cを算出する。この処理においては、(1)0≦e≦e(2)のとき、C=[{C(2)−C(1)}/e(2)]×e+C(1)として、(2)e(2)<e≦e(3)のとき、C=[{C(3)−C(2)}/{e(3)−e(2)}]×{e−e(2)}+C(2)として、(3)e(3)<e≦1のとき、C=[{C(4)−C(3)}/{1−e(3)}]×{e−e(3)}+C(3)として、クラッチ容量係数Cを算出する。
【0071】
S8120にて、ECT_ECU1020は、クラッチトルクT(C)を算出する。この処理においては、クラッチトルクT(C)は、T(C)=C×{N(IN)−N(IN_IDLE)}2として算出する。
【0072】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両のの動作について説明する。
【0073】
[車両が発進制御中:クラッチ速度比e≦ε(1)]
停止中の車両が発進すると、1サンプリング前のモード、アイドル接点の状態変化、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)に基づいて(S1000、S2000、S3000)、動作モードが「発進」と判断され(S4000にてYESまたはS6000にてYES、S5000)、発進制御ルーチンが実行される(S8000)。
【0074】
発進時におけるクラッチ速度比eが算出され(S8010)、e≦ε(1)であるので、発進制御中と判断される(S8020にてYES、S8030)。なお、このときのε(1)は、図3のe(3)よりも大きい。このため、このとき算出されたクラッチ速度比eは、図3における、0から、e(3)よりも大きなε(1)までの間のいずれかの位置にある。
【0075】
変数STATUSが「発進制御中」であるので(S8080にてNO、S8090にてNO)、クラッチ速度比eの範囲に応じてクラッチ容量係数Cが算出される(S8120)。このとき、図3のような容量係数になるように演算される。なお、図3に示した、クラッチ速度比eと容量係数Cとの関係は、線形な関係であるので、S8210に示した数式となるが、本発明はこれに限定されない。クラッチ速度比eと容量係数Cとの関係は、非線形な関係であってもよいし、線形な関係であっても、非線形な関係であっても、マップ等に速度比eに対応した容量係数Cの値を記憶するようにしてもよい。
【0076】
クラッチ速度比eの範囲に応じて算出された容量係数Cに基づいて、クラッチトルクが算出される(S8130)。この算出されたクラッチトルクに基づいて、ロックアップクラッチ210の係合圧が制御される。
【0077】
[車両が発進終了制御中:クラッチ速度比ε(1)<e≦ε(2)]
発進時におけるクラッチ速度比eが算出され(S8010)、ε(1)<e≦ε(2)であるので、発進終了制御中と判断される(S8040にてYES、S8050)。なお、このとき算出されたクラッチ速度比eは、図3における、e(3)よりも大きなε(1)から、ε(1)よりも大きなε(2)までの間のいずれかの位置にある。
【0078】
変数STATUSが「発進終了制御中」であるので(S8080にてNO、S8090にてYES)、図3に示すC(4)にΔCだけ加算されたC(4)が算出される(S8110)。これにより、クラッチ速度比eが1に近づいて、容量係数が下がってクラッチトルクが下がったままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑ることを回避して、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくさせて、ロックアップクラッチ210を完全に係合させる。
【0079】
[車両が発進完了制御中:クラッチ速度比ε(2)≦e等]
発進時におけるクラッチ速度比eが算出され(S8010)、ε(2)≦eであるか、TIMER値がTIMER(0)よりも大きいので、発進完了制御中と判断される(S8060にてYES、S8070)。
【0080】
変数STATUSが「発進完了制御中」であるので(S8080にてYES)、発進完了制御中に入る直前のサンプリングタイムで算出されたクラッチトルクT(C)にΔTだけ加算されたT(C)が算出される(S8090)。これにより、発進処理が完了した時点で、クラッチトルクをさらにΔTだけ上昇させて、ロックアップクラッチ210を完全に係合させて、発進制御を完了させる。
【0081】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、メモリに、速度比と、その速度比に従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係が予め記憶される。クラッチトルクは、容量係数と、クラッチ入力側回転数とアイドル時のクラッチ入力側回転数との差の2乗との積により算出する。容量係数を速度比に対して連続的に設定しておくことにより、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。さらに、クラッチトルクを、クラッチ入力側回転数とアイドル時のクラッチ入力側回転数との差を用いて算出したので、アイドル時のアイドル時の負荷を最小にすることができる。さらに、速度比が予め定められた値(1に近い値)以上になると、発進動作が終了または完了したと判断して、クラッチ容量係数を上昇させる、またはクラッチトルクを上昇させることにより、クラッチが滑らせることなく、係合させることができる。その結果、車両発進時にクラッチが係合させられる際にエンジン回転速度が一時的に低下し、もたつき感や違和感を生じることがなくなり、十分な加速性能が得られる。さらに、登坂路などで走行抵抗が大きいときでもエンジン回転速度が低下し続けないで、エンジン回転が不安定になったり停止したりすることがなくなる。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を含む車両の制御ブロック図である。
【図2】図1に示す自動変速機の作動表である。
【図3】クラッチ速度比とクラッチ容量係数との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御装置であるECT_ECUで実行される動作モード判定処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る制御装置であるECT_ECUで実行される発進制御処理のプログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、300 自動変速機、310 入力クラッチ、400エンジン回転数センサ、410 タービン回転数センサ、420 出力軸回転数センサ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン出力を伝達および遮断する車両用クラッチの制御装置に関し、特に、車両発進時のスリップ制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンから駆動系へ、エンジン出力を伝達したり遮断したりする車両用クラッチは、車両停止時や変速機の変速時等に解放状態とされ、エンジン出力の伝達を遮断するとともに、車両走行時には係合状態とされて駆動系へエンジン出力を伝達する。係合時のクラッチトルク、すなわち伝達可能なトルクの大きさは一般的にエンジントルクよりも大きく、エンジントルクを確実に変速機等の駆動系へ伝達できるようになっている。
【0003】
また、変速機の変速段を自動で切り換えるオートマチックトランスミッション車においてトルクコンバータの代わりにこのようなクラッチを用いたものもある。このような車両用クラッチとしては、油圧やばね力などで摩擦板が押圧されることにより摩擦力でトルクを伝達する摩擦クラッチや、電磁力によってトルクを伝達する電磁クラッチなどが知られている。
【0004】
特開平8−119002号公報(特許文献1)は、車両発進時のもたつき感や違和感を解消して発進性能を向上させるとともに、走行抵抗の大きい場所でのスリップ制御に起因する発進性能の著しい悪化やクラッチの発熱などを防止する車両用クラッチの制御装置を開示する。この制御装置は、エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ係合させる車両用クラッチを制御する。この制御装置は、エンジントルクを検出するエンジントルク検出センサと、クラッチの従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達したか否かを判断する等速回転判断部と、その等速回転判断部によって従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達した旨の判断がなされるまでは、クラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ小さな値となるようにクラッチをスリップ係合させる第1スリップ制御部と、第1スリップ制御部によるスリップ制御時間が所定時間を経過したか否かを判断する経過時間判断部と、その経過時間判断部によって第1スリップ制御部によるスリップ制御時間が所定時間を経過した旨の判断がなされた場合に、クラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ大きな値となるようにクラッチをスリップ係合させる第2スリップ制御部と、等速回転判断部によって従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達した旨の判断がなされた場合に、クラッチを完全係合させる完全係合制御部とを含む。
【0005】
特許文献1に開示された制御装置によると、たとえば、クラッチ係合油圧係数とエンジントルクとの乗算によりクラッチトルクを算出して車両発進時のスリップ制御を行なう際に、まず、第1スリップ制御部により係数を0.8〜0.9に選定し、その後、第2スリップ制御部により係数を1.1〜1.2に選定し、その後、従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達すると、クラッチを完全に係合する。このようにすると、まず、第1スリップ制御部によりクラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ小さな値となるようにクラッチをスリップ係合させることになる。クラッチトルクがエンジントルクより小さいため、クラッチのスリップ係合に拘らずエンジンの回転速度は上昇させられるとともに、エンジントルクの一部すなわちクラッチトルクに相当するトルクがクラッチを介して従動側回転部材に伝達され、そのトルクに基づいて従動側回転部材の回転速度が上昇させられる。次に、第2スリップ制御部によりクラッチトルクがエンジントルクより所定量だけ大きな値となるようにクラッチをスリップ係合させることになる。すなわち、走行抵抗が大きくて従動側回転部材の回転速度の上昇が遅い場合など、第1スリップ制御部によるスリップ制御時間が予め定められた時間を超えても従動側回転部材の回転速度がエンジン回転速度に到達しない場合には、第2スリップ制御部によりクラッチトルクがエンジントルクより大きな値となるようにして、クラッチを介して従動側回転部材へ伝達するトルクを増大させ、その従動側回転部材の回転速度を速やかに上昇させるようにしたのである。クラッチトルクがエンジントルクより大きいことから、エンジンの回転速度は低下するが、第1スリップ制御部によるスリップ制御時にエンジン回転速度はある程度上昇しているため、エンジン回転速度の低下に伴って直ちにエンジン停止などのトラブルが生じるおそれはない。そして、このような従動側回転部材の回転速度上昇およびエンジン回転速度の低下により両者の回転速度が略同じになり、等速回転判断部により従動側回転部材の回転速度がエンジンの回転速度に略到達した旨の判断がなされると、クラッチを完全係合されて、エンジンと従動側回転部材とが一体的に結合して一体回転させられるようになる。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−119002号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された車両用クラッチの制御装置は、第1スリップ制御部によるスリップ制御と第2スリップ制御部によるスリップ制御とを、時間で切換えるので、その切換えのタイミングでクラッチトルクが不連続になる。このクラッチトルクの不連続により滑らかな発進加速を得ることができない。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能を連続的に得ることができる車両用クラッチ制御装置および制御方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両用クラッチ制御装置は、エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ制御する。この制御装置は、クラッチの入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比またはクラッチの入力側回転数と出力側回転数との差である速度差を算出するための算出手段と、速度比または速度差と、速度比または速度差に従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係を予め記憶するための記憶手段と、記憶された関係に基づいて、算出された速度比または速度差から容量係数を算出し、算出された容量係数からクラッチトルクを決定するための決定手段とを含む。
【0010】
第1の発明によると、記憶手段には、速度比または速度差と、それらに従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係が予め記憶される。クラッチトルクは、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出されるので、容量係数を速度比や速度差に対して連続的に設定しておくことにより、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御装置を提供することができる。
【0011】
第2の発明に係る車両用クラッチ制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、決定手段は、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数とに基づいて、クラッチトルクを決定するための手段を含む。
【0012】
第2の発明によると、クラッチトルクを、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出して、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。
【0013】
第3の発明に係る車両用クラッチ制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、決定手段は、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差とに基づいて、クラッチトルクを決定するための手段を含む。
【0014】
第3の発明によると、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差を算出して、この差の2乗と算出された容量係数との積によりクラッチトルクを算出できる。このようにすると、クラッチトルクをアイドル時に0にすることができる。そのため、アイドル時の負荷を最小にすることができる。
【0015】
第4の発明に係る車両用クラッチ制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、速度比が予め定められた値以上または速度差が予め定められた値以下になると、発進完了と判断して、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させるための手段をさらに含む。
【0016】
第4の発明によると、速度比が1に近づくまたは速度差が0に近づくと、それに従って、クラッチトルクが下がるので、そのままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑ることになる。これを回避すべく、速度比が予め定められた値(1に近い値)以上または速度差が予め定められた値(0に近い値)以下になると、発進完了と判断してクラッチ容量係数を上昇させるなどして、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させて、最終的に、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくなった時点で完全に係合する。
【0017】
第5の発明に係る車両用クラッチ制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、記憶される関係は、速度比が1に向かって増加または速度差が0に向かって減少するに従って、クラッチの容量係数は、0より大きな初期値から第1の極大値まで上昇し、第1の極大値よりも小さい第2の極大値まで下降し、第2の極大値よりも小さい終了値に到達するように変化する関係である。
【0018】
第5の発明によると、0よりも大きな初期値から第1の極大値へ、第1の極大値から第1の極大値よりも小さい第2の極大値へ、第2の極大値から第2の極大値よりも小さい終了値へ連続的に変化させるような容量係数となる。このようにすると、車両発進時にクラッチが係合させられる際にエンジン回転速度が一時的に低下し、もたつき感や違和感を生じることがなくなり、十分な加速性能が得られる。さらに、登坂路などで走行抵抗が大きいときでもエンジン回転速度が低下し続けないで、エンジン回転が不安定になったり停止したりすることがなくなる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御装置を提供することができる。
【0019】
第6の発明に係る車両用クラッチ制御方法は、エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ制御する。この制御方法は、クラッチの入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比またはクラッチの入力側回転数と出力側回転数との差である速度差を算出する算出ステップと、速度比または速度差と、速度比または速度差に従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係を予め記憶する記憶ステップと、記憶された関係に基づいて、算出された速度比または速度差から容量係数を算出し、算出された容量係数からクラッチトルクを決定する決定ステップとを含む。
【0020】
第6の発明によると、記憶ステップにて、速度比または速度差と、それらに従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係が予め記憶される。クラッチトルクは、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出されるので、容量係数を速度比や速度差に対して連続的に設定しておくことにより、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御方法を提供することができる。
【0021】
第7の発明に係る車両用クラッチ制御方法においては、第6の発明の構成に加えて、決定ステップは、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数とに基づいて、クラッチトルクを決定するステップを含む。
【0022】
第7の発明によると、クラッチトルクを、容量係数とクラッチ入力側回転数の2乗との積により算出して、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。
【0023】
第8の発明に係る車両用クラッチ制御方法においては、第6の発明の構成に加えて、決定ステップは、算出された容量係数と、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差とに基づいて、クラッチトルクを決定するステップを含む。
【0024】
第8の発明によると、クラッチの入力側回転数およびアイドル時のクラッチの入力側回転数の差を算出して、この差の2乗と算出された容量係数との積によりクラッチトルクを算出できる。このようにすると、クラッチトルクをアイドル時に0にすることができる。そのため、アイドル時の負荷を最小にすることができる。
【0025】
第9の発明に係る車両用クラッチ制御方法は、第6〜8のいずれかの発明の構成に加えて、速度比が予め定められた値以上または速度差が予め定められた値以下になると、発進完了と判断して、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させるためのステップをさらに含む。
【0026】
第9の発明によると、速度比が1に近づくまたは速度差が0に近づくと、それに従って、クラッチトルクが下がるので、そのままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑ることになる。これを回避すべく、速度比が予め定められた値(1に近い値)以上または速度差が予め定められた値(0に近い値)以下になると、発進完了と判断してクラッチ容量係数を上昇させるなどして、記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させて、最終的に、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくなった時点で完全に係合する。
【0027】
第10の発明に係る車両用クラッチ制御方法においては、第6〜9のいずれかの発明の構成に加えて、記憶される関係は、速度比が1に向かって増加または速度差が0に向かって減少するに従って、クラッチの容量係数は、0より大きな初期値から第1の極大値まで上昇し、第1の極大値よりも小さい第2の極大値まで下降し、第2の極大値よりも小さい終了値に到達するように変化する関係である。
【0028】
第10の発明によると、0よりも大きな初期値から第1の極大値へ、第1の極大値から第1の極大値よりも小さい第2の極大値へ、第2の極大値から第2の極大値よりも小さい終了値へ連続的に変化させるような容量係数となる。このようにすると、車両発進時にクラッチが係合させられる際にエンジン回転速度が一時的に低下し、もたつき感や違和感を生じることがなくなり、十分な加速性能が得られる。さらに、登坂路などで走行抵抗が大きいときでもエンジン回転速度が低下し続けないで、エンジン回転が不安定になったり停止したりすることがなくなる。その結果、車両発進時のもたつき感や違和感を解消し、優れた発進性能が連続的に得ることができる車両用クラッチ制御方法を提供することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0030】
本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレーンについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。本実施の形態では、トルクコンバータを備えた、遊星歯車式減速機構を有する自動変速機において、車両の発進時にトルクコンバータのロックアップクラッチをスリップ制御する制御装置を説明する。なお、本発明は、このロックアップクラッチに限定されて適用されるものではなく、他のクラッチであってもよい。また、トルクコンバータを有さない構造であってもよい。さらに遊星歯車式減速機構を有する自動変速機ではなく、ベルト式などの無段変速機であってもよい。
【0031】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、トルクコンバータ200と、自動変速機300と、ECU1000とから構成される。エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転数センサ400により検知されるエンジン100の出力軸回転数NE(エンジン回転数NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転数(ポンプ回転数)とは同じである。
【0032】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250と、トルク増幅機能を発現するステータ240とから構成される。トルクコンバータ200と自動変速機300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数NT(タービン回転数NT)は、タービン回転数センサ410により検知される。自動変速機300の出力軸回転数NOは、出力軸回転数センサ420により検知される。
【0033】
車両の発進時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップを解放して、ロックアップクラッチ210がスリップ制御されることにより、エンジン100から自動変速機300へ伝達されるトルクを滑らかに増大させる。車両の停止時においては、ロックアップクラッチ210を解放して、自動変速機300の回転および停止のいずれにもかかわらずエンジン100の回転を許容する。通常走行時においては、ロックアップクラッチ210のロックアップ機能によりポンプ羽根車220およびタービン羽根車230を連結して回転損失を防止する。
【0034】
図2に自動変速機300の作動表を示す。図2に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C1)、ワンウェイクラッチ要素(F0、F3)が係合する。
【0035】
これらのパワートレーンを制御するECU1000は、エンジン100を制御するエンジンECU1010と、自動変速機300を制御するECT(Electronic Controlled Automatic Transmission)_ECU1020とを含む。
【0036】
ECT_ECU1020には、タービン回転数センサ410からタービン回転数NTを表わす信号が、出力軸回転数センサ420から出力軸回転数NOUTを表わす信号が入力される。また、ECT_ECU1020には、エンジンECU1010から、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号が入力される。
【0037】
これら回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸に、それぞれ取り付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転数センサは、トルクコンバータ200の入力軸、トルクコンバータ200の出力軸および自動変速機300の出力軸の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0038】
ECT_ECU1020から、トルクコンバータ200や自動変速機300のリニアソレノイドにソレノイド制御信号が出力される。図2に示すクラッチ要素(C1〜C4)や、ブレーキ要素(B1〜B4)、ワンウェイクラッチ要素(F0〜F3)を、係合させたり解放させたりする。たとえば、5速から6速へのアップシフト時においては、クラッチC3が係合から解放されるように締結圧が制御され、ブレーキB2が解放から係合されるように締結圧が制御される。実際には、ECT_ECU1020は、ソレノイド制御信号を油圧回路のリニアソレノイドバルブに出力している。ECT_ECU1020は、後述する目標の油圧(目標の締結圧を実現する油圧)を算出しれ、その目標油圧等により油圧サーボへの油圧を算出してソレノイドバルブに出力する。
【0039】
油圧回路は、たとえば2個のリニアソレノイドバルブを有するとともに、自動変速機のプラネタリギヤユニットの伝達経路を切換えて、前進6速、後進1速の変速段を達成する複数の摩擦係合要素(クラッチおよびブレーキ)を係合及び解放する複数の油圧サーボを有する。また、リニアソレノイドバルブの入力ポートにはソレノイドモジュレータ圧が供給されており、これらリニアソレノイドバルブの出力ポートからの制御油圧がそれぞれプレッシャコントロールバルブの制御油室に供給されている。プレッシャコントロールバルブは、ライン圧がそれぞれ入力ポートに供給されており、制御油圧にて調圧された出力ポートからの調圧が、それぞれシフトバルブを介して適宜各油圧サーボに供給される。
【0040】
このような油圧回路は、一例であって、実際には、自動変速機に対応して油圧サーボは多数備えられており、これら油圧サーボへの油圧を切換えるシフトバルブも多数備えている。また、油圧サーボは、シリンダにオイルシールにより油密状に嵌合するピストンを有しており、そのピストンは、油圧室に作用するプレッシャコントロールバルブからの調圧油圧に基づき、戻しスプリングに抗して移動し、外側摩擦プレートおよび内側摩擦材を接触する。その摩擦プレートおよび摩擦材は、クラッチのみならずブレーキも同様である。
【0041】
ECT_ECU1020は、発進時における車両に所望の加速を与えるために、ロックアップクラッチ210のスリップ制御を実現するためのプログラム、そのプログラムで用いられるマップや各種しきい値を内部メモリに記憶する。ECT_ECU1020は、そのプログラムを実行することにより、ロックアップクラッチ210の容量係数Cを変化させてロックアップクラッチ210のクラッチトルクを算出して、そのクラッチトルクが伝達されるように、ロックアップクラッチ210を係合および解放するために供給される油圧を制御する。
【0042】
なお、発進時においてロックアップクラッチ210は解放状態であることが前提である。このことは、車両の発進時においてロックアップクラッチ210をロックアップしているとエンストするので、ロックアップクラッチ210は解放状態であることと整合する。
【0043】
本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020の内部メモリに記憶される速度比eに対するロックアップクラッチ210の容量係数Cの特性について説明する。
【0044】
本実施の形態に係る制御装置を実現するECT_ECU1020においては、ロックアップクラッチ210の容量係数Cを、クラッチ速度比eの関数であって、連続して可変な係数として、ロックアップクラッチ210のクラッチ係合圧を制御してロックアップクラッチ210をスリップ制御させる。
【0045】
ロックアップクラッチ210のクラッチトルクをT(C)、ロックアップクラッチ210の入力側回転数をN(IN)とすると、C=T(C)/N(IN)2で表わされる。このため、クラッチトルクT(C)は、T(C)=C×N(IN)2により算出できる。
【0046】
また、ロックアップクラッチ210の容量係数Cをクラッチ速度比eの関数とするので、容量係数C(e)と表わすこともできる。このクラッチ速度比eは、ロックアップクラッチ210の出力側回転数をN(OUT)、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)とすると、e=N(OUT)/N(IN)で表わされる。なお、ロックアップクラッチ210の出力側回転数N(OUT)は、タービン回転数センサ410により検知されるタービン回転数NTであり、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)は、エンジン回転数センサ400により検知されるエンジン回転数NEである。
【0047】
図3に、ECT_ECU1020の内部メモリに記憶されるクラッチ容量係数Cのマップを示す。図3に示すように、クラッチ容量係数Cは、クラッチ速度比eの関数であって、クラッチ速度比eが0から1の範囲で、クラッチ容量係数Cが連続的に変化するように設定されている。なお、クラッチ容量係数Cをクラッチ速度比eの関数とするのではなくて、クラッチ容量係数Cをクラッチ速度差ΔN=N(IN)−N(OUT)の関数としてもよい。
【0048】
図3に示すように、クラッチ速度比eが0から1へ変化するに従って、クラッチ容量係数Cは、初期値C(1)から、第1の極大値C(2)および第2の極大値C(3)を経て最終値C(4)まで変化する。このとき、初期値C(1)は、最終値C(4)よりも大きく第2の極大値C(3)よりも小さく、第1の極大値C(2)は、クラッチ速度比eが0から1が変化する中で最も大きく、第2の極大値C(3)は、初期値C(1)よりも大きく第1の極大値C(2)よりも小さく、最終値C(4)は、クラッチ速度比eが0から1が変化する中で最も小さい。なお、このような容量係数の大小関係は一例であって本発明を限定するものではない。
【0049】
また、後述するように、クラッチ速度比eが1に近づくと、この車両の発進が終了したと判断して、クラッチ容量係数Cをこの図3に示す関数とは無関係に増大させて、クラッチトルクを上昇させる。これは、クラッチ速度比eが1に近づくと、図3に示すように容量係数が下がってクラッチトルクが下がるので、そのままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑るので、クラッチ容量係数Cを上昇させてクラッチトルクを上昇させて、最終的に、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくさせて、ロックアップクラッチ210が完全に係合するようにする。
【0050】
さらに、この車両の発進が終了後であって、発進が完了したと判断されると、クラッチトルク自体をこの図3に示す関数とは無関係に増大させて、クラッチを完全に係合させる。
【0051】
図4を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行されるプログラムの制御構造について説明する。図4に示すプログラムは、予め定められたサンプリング時間の間隔で実行され、車両の現在の動作モードを検知する。
【0052】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)1000にて、ECT_ECU1020は、1サンプリングタイム前のモードを読出す。S2000にて、ECT_ECU1020は、アイドル接点の状態を検知する。S3000にて、ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)を検知する。このとき、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号に基づいて、入力側回転数N(IN)が検知される。
【0053】
S4000にて、ECT_ECU1020は、前モードが「停止」であって、かつアイドル接点「ON→OFF」に変更されたか否かを判断する。前モードが「停止」であって、かつアイドル接点「ON→OFF」に変更されると(S4000にてYES)、処理はS5000に移される。もしそうでないと(S4000にてNO)、処理はS6000に移される。
【0054】
S5000にて、ECT_ECU1020は、モードを「発進」に設定する。これにより、車両の動作モードが発進モードと記憶される。
【0055】
S6000にて、ECT_ECU1020は、前モードが「走行」であって、かつロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)が{N(IN_IDLE)+α}以下であるか否かを判断する。ここで、N(IN_IDLE)は、アイドル時におけるロックアップクラッチ210の入力側回転数であって、αは、発進完了後の通常走行時におけるロックアップクラッチ210の入力側回転数を表わすためにN(IN_IDLE)に加算される正の値である。前モードが「走行」であって、かつロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)が{N(IN_IDLE)+α}以下であると(S6000にてYES)、処理は、S5000に移される。もうそうでないと(S6000にてNO)、処理は、S7000に移される。
【0056】
S7000にて、ECT_ECU1020は、前モードとして現在のモードである「停止」または「走行」を記憶する。
【0057】
S8000にて、ECT_ECU1020は、発進制御ルーチンを実行する。この発進制御ルーチンの詳細については、図5を用いて説明する。
【0058】
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECT_ECU1020において実行される、図4のS8000の発進制御ルーチンの制御構造について説明する。図4に示すプログラムが予め定められたサンプリング時間の間隔で実行されるので、図4に示すプログラムで車両の現在の動作モードが「発進」と判断される限りにおいて、図5に示すプログラムは、そのサンプリング時間の間隔で繰返し実行される。
【0059】
S8010にて、ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の速度比eを算出する。このとき、ECT_ECU1020は、エンジン回転数センサ400にて検知されたエンジン回転数NEを表わす信号に基づいてロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)を検知して、タービン回転数センサ410にて検知されたタービン回転数NTを表わす信号に基づいてロックアップクラッチ210の出力側回転数N(OUT)を検知する。ECT_ECU1020は、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)を出力側回転数N(OUT)で除算して、クラッチ速度比eを算出する。
【0060】
S8020にて、ECT_ECU1020は、クラッチ速度比eがε(1)以下であるか否かを判断する。このε(1)は、図3に示すe(3)以上の値である。クラッチ速度比eがε(1)以下であると(S8020にてYES)、処理は、S8030に移される。もしそうでないと(S8020にてNO)、処理は、S8040に移される。
【0061】
S8030にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSに「発進制御中」と設定して、ECT_ECU1020の内部タイマ(積算型タイマ)のTIMER値を0に設定(初期化)する。その後、処理は、S8080に移される。
【0062】
S8040にて、ECT_ECU1020は、クラッチ速度比eがε(1)より大きくて、ε(2)以下であるか否かを判断する。このε(2)は、ε(1)よりも大きい値である。クラッチ速度比eがε(1)より大きくて、ε(2)以下であると(S8040にてYES)、処理は、S8050に移される。もしそうでないと(S8040にてNO)、処理は、S8060に移される。
【0063】
S8050にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSに「発進終了制御」と設定する。その後、処理は、S8080に移される。
【0064】
S8060にて、ECT_ECU1020は、クラッチ速度比eがε(2)より大きいか、またはタイマ値TIMERが発進完了時間を表わすしきい値TIMER(0)以上であるか否かを判断する。クラッチ速度比eがε(2)より大きいか、またはタイマ値TIMERがしきい値TIMER(0)以上であると(S8060にてYES)、処理は、S8070に移される。もしそうでないと(S8060にてNO)、処理は、S8080に移される。
【0065】
S8070にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSに「発進完了制御」と設定する。その後、処理は、S8080に移される。
【0066】
S8080にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSが「発進完了制御」であるか否かを判断する。変数STATUSが「発進完了制御」であると(S8080にてYES)、処理は、S8090に移される。もしそうでないと(S8060にてNO)、処理は、S8100に移される。
【0067】
S8090にて、ECT_ECU1020は、クラッチトルクT(C)を、T(C)=T(C)+ΔTとして算出する。ΔTは、正の値であって、車両の発進完了後のクラッチトルクT(C)を決定するための値であって、これによりロックアップクラッチ210が完全に係合する。その後、この処理は終了する。
【0068】
S8100にて、ECT_ECU1020は、変数STATUSが「発進終了制御」であるか否かを判断する。変数STATUSが「発進終了制御」であると(S8100にてYES)、処理は、S8110に移される。もしそうでないと(S8100にてNO)、処理は、S8120に移される。
【0069】
S8110にて、ECT_ECU1020は、クラッチ容量係数C(4)を、C(4)=C(4)+ΔCとして算出する。ΔCは、正の値であって、クラッチトルクT(C)を強制的にかつ漸増的に上昇させる。これにより、クラッチトルクをエンジントルクよりも大きくなるように、ロックアップクラッチ210を完全に係合させるために必要なクラッチトルクまで増加させる。その後、処理は、S8120に移される。
【0070】
S8120にて、ECT_ECU1020は、クラッチ容量係数Cを算出する。この処理においては、(1)0≦e≦e(2)のとき、C=[{C(2)−C(1)}/e(2)]×e+C(1)として、(2)e(2)<e≦e(3)のとき、C=[{C(3)−C(2)}/{e(3)−e(2)}]×{e−e(2)}+C(2)として、(3)e(3)<e≦1のとき、C=[{C(4)−C(3)}/{1−e(3)}]×{e−e(3)}+C(3)として、クラッチ容量係数Cを算出する。
【0071】
S8120にて、ECT_ECU1020は、クラッチトルクT(C)を算出する。この処理においては、クラッチトルクT(C)は、T(C)=C×{N(IN)−N(IN_IDLE)}2として算出する。
【0072】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両のの動作について説明する。
【0073】
[車両が発進制御中:クラッチ速度比e≦ε(1)]
停止中の車両が発進すると、1サンプリング前のモード、アイドル接点の状態変化、ロックアップクラッチ210の入力側回転数N(IN)に基づいて(S1000、S2000、S3000)、動作モードが「発進」と判断され(S4000にてYESまたはS6000にてYES、S5000)、発進制御ルーチンが実行される(S8000)。
【0074】
発進時におけるクラッチ速度比eが算出され(S8010)、e≦ε(1)であるので、発進制御中と判断される(S8020にてYES、S8030)。なお、このときのε(1)は、図3のe(3)よりも大きい。このため、このとき算出されたクラッチ速度比eは、図3における、0から、e(3)よりも大きなε(1)までの間のいずれかの位置にある。
【0075】
変数STATUSが「発進制御中」であるので(S8080にてNO、S8090にてNO)、クラッチ速度比eの範囲に応じてクラッチ容量係数Cが算出される(S8120)。このとき、図3のような容量係数になるように演算される。なお、図3に示した、クラッチ速度比eと容量係数Cとの関係は、線形な関係であるので、S8210に示した数式となるが、本発明はこれに限定されない。クラッチ速度比eと容量係数Cとの関係は、非線形な関係であってもよいし、線形な関係であっても、非線形な関係であっても、マップ等に速度比eに対応した容量係数Cの値を記憶するようにしてもよい。
【0076】
クラッチ速度比eの範囲に応じて算出された容量係数Cに基づいて、クラッチトルクが算出される(S8130)。この算出されたクラッチトルクに基づいて、ロックアップクラッチ210の係合圧が制御される。
【0077】
[車両が発進終了制御中:クラッチ速度比ε(1)<e≦ε(2)]
発進時におけるクラッチ速度比eが算出され(S8010)、ε(1)<e≦ε(2)であるので、発進終了制御中と判断される(S8040にてYES、S8050)。なお、このとき算出されたクラッチ速度比eは、図3における、e(3)よりも大きなε(1)から、ε(1)よりも大きなε(2)までの間のいずれかの位置にある。
【0078】
変数STATUSが「発進終了制御中」であるので(S8080にてNO、S8090にてYES)、図3に示すC(4)にΔCだけ加算されたC(4)が算出される(S8110)。これにより、クラッチ速度比eが1に近づいて、容量係数が下がってクラッチトルクが下がったままでは、クラッチトルクとエンジントルクとがつりあう点で常時クラッチが滑ることを回避して、クラッチトルクがエンジントルクよりも大きくさせて、ロックアップクラッチ210を完全に係合させる。
【0079】
[車両が発進完了制御中:クラッチ速度比ε(2)≦e等]
発進時におけるクラッチ速度比eが算出され(S8010)、ε(2)≦eであるか、TIMER値がTIMER(0)よりも大きいので、発進完了制御中と判断される(S8060にてYES、S8070)。
【0080】
変数STATUSが「発進完了制御中」であるので(S8080にてYES)、発進完了制御中に入る直前のサンプリングタイムで算出されたクラッチトルクT(C)にΔTだけ加算されたT(C)が算出される(S8090)。これにより、発進処理が完了した時点で、クラッチトルクをさらにΔTだけ上昇させて、ロックアップクラッチ210を完全に係合させて、発進制御を完了させる。
【0081】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、メモリに、速度比と、その速度比に従って連続的に変化するクラッチの容量係数との関係が予め記憶される。クラッチトルクは、容量係数と、クラッチ入力側回転数とアイドル時のクラッチ入力側回転数との差の2乗との積により算出する。容量係数を速度比に対して連続的に設定しておくことにより、クラッチトルクを連続的に変化させて発進時のスリップ制御を行なうことができる。さらに、クラッチトルクを、クラッチ入力側回転数とアイドル時のクラッチ入力側回転数との差を用いて算出したので、アイドル時のアイドル時の負荷を最小にすることができる。さらに、速度比が予め定められた値(1に近い値)以上になると、発進動作が終了または完了したと判断して、クラッチ容量係数を上昇させる、またはクラッチトルクを上昇させることにより、クラッチが滑らせることなく、係合させることができる。その結果、車両発進時にクラッチが係合させられる際にエンジン回転速度が一時的に低下し、もたつき感や違和感を生じることがなくなり、十分な加速性能が得られる。さらに、登坂路などで走行抵抗が大きいときでもエンジン回転速度が低下し続けないで、エンジン回転が不安定になったり停止したりすることがなくなる。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を含む車両の制御ブロック図である。
【図2】図1に示す自動変速機の作動表である。
【図3】クラッチ速度比とクラッチ容量係数との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御装置であるECT_ECUで実行される動作モード判定処理のプログラムを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る制御装置であるECT_ECUで実行される発進制御処理のプログラムを示すフローチャートである。
【符号の説明】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、300 自動変速機、310 入力クラッチ、400エンジン回転数センサ、410 タービン回転数センサ、420 出力軸回転数センサ、1000 ECU、1010 エンジンECU、1020 ECT_ECU。
Claims (10)
- エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ制御する車両用クラッチ制御装置であって、
前記クラッチの入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比または前記クラッチの入力側回転数と出力側回転数との差である速度差を算出するための算出手段と、
前記速度比または前記速度差と、前記速度比または前記速度差に従って連続的に変化する前記クラッチの容量係数との関係を予め記憶するための記憶手段と、前記記憶された関係に基づいて、前記算出された前記速度比または前記速度差から容量係数を算出し、算出された容量係数からクラッチトルクを決定するための決定手段とを含む、車両用クラッチ制御装置。 - 前記決定手段は、算出された容量係数と、前記クラッチの入力側回転数とに基づいて、前記クラッチトルクを決定するための手段を含む、請求項1に記載の車両用クラッチ制御装置。
- 前記決定手段は、算出された容量係数と、前記クラッチの入力側回転数およびアイドル時の前記クラッチの入力側回転数の差とに基づいて、前記クラッチトルクを決定するための手段を含む、請求項1に記載の車両用クラッチ制御装置。
- 前記速度比が予め定められた値以上または前記速度差が予め定められた値以下になると、発進完了と判断して、前記記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させるための手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用クラッチ制御装置。
- 前記記憶される関係は、前記速度比が1に向かって増加または前記速度差が0に向かって減少するに従って、前記クラッチの容量係数は、0より大きな初期値から第1の極大値まで上昇し、前記第1の極大値よりも小さい第2の極大値まで下降し、前記第2の極大値よりも小さい終了値に到達するように変化する関係である、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用クラッチ制御装置。
- エンジン出力を伝達および遮断するクラッチを車両発進時にスリップ制御する車両用クラッチ制御方法であって、
前記クラッチの入力側回転数に対する出力側回転数の比率である速度比または前記クラッチの入力側回転数と出力側回転数との差である速度差を算出する算出ステップと、
前記速度比または前記速度差と、前記速度比または前記速度差に従って連続的に変化する前記クラッチの容量係数との関係を予め記憶する記憶ステップと、
前記記憶された関係に基づいて、前記算出された前記速度比または前記速度差から容量係数を算出し、算出された容量係数からクラッチトルクを決定する決定ステップとを含む、車両用クラッチ制御方法。 - 前記決定ステップは、算出された容量係数と、前記クラッチの入力側回転数とに基づいて、前記クラッチトルクを決定するステップを含む、請求項6に記載の車両用クラッチ制御方法。
- 前記決定ステップは、算出された容量係数と、前記クラッチの入力側回転数およびアイドル時の前記クラッチの入力側回転数の差とに基づいて、前記クラッチトルクを決定するステップを含む、請求項6に記載の車両用クラッチ制御方法。
- 前記速度比が予め定められた値以上または前記速度差が予め定められた値以下になると、発進完了と判断して、前記記憶された関係とは無関係にクラッチトルクを上昇させるためのステップをさらに含む、請求項6〜8のいずれかに記載の車両用クラッチ制御方法。
- 前記記憶される関係は、前記速度比が1に向かって増加または前記速度差が0に向かって減少するに従って、前記クラッチの容量係数は、0より大きな初期値から第1の極大値まで上昇し、前記第1の極大値よりも小さい第2の極大値まで下降し、前記第2の極大値よりも小さい終了値に到達するように変化する関係である、請求項6〜9のいずれかに記載の車両用クラッチ制御方法。
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-
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