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JP2004300486A - カーボン保護膜及びその形成方法、並びにそのカーボン保護膜を備えた磁気記録媒体、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置 - Google Patents

カーボン保護膜及びその形成方法、並びにそのカーボン保護膜を備えた磁気記録媒体、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置 Download PDF

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JP2004300486A
JP2004300486A JP2003092869A JP2003092869A JP2004300486A JP 2004300486 A JP2004300486 A JP 2004300486A JP 2003092869 A JP2003092869 A JP 2003092869A JP 2003092869 A JP2003092869 A JP 2003092869A JP 2004300486 A JP2004300486 A JP 2004300486A
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Japan
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protective film
carbon
carbon protective
plasma
substrate
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JP2003092869A
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Inventor
Tsukasa Itani
司 井谷
Tetsukazu Nakamura
哲一 中村
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Fujitsu Ltd
Original Assignee
Fujitsu Ltd
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Publication date
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Abstract

【課題】平滑性及び膜質が良好で高硬度であり薄膜化が可能なカーボン保護膜及びその形成方法を提供する。
【解決手段】プラズマトーチ11と、真空チャンバ12と、真空チャンバ12内にプラズマトーチ11と対向して設けられた基板13を保持する基板保持台14と、プラズマトーチ11にカーボン保護膜の原料となるカーボン粒子を供給する粉体供給器15などから構成されたアーク放電プラズマジェット成膜装置10において、プラズマトーチ11にアーク放電を生じさせ、形成されたプラズマ中にキャリアガスと共にカーボン粒子を供給する。カーボン粒子をカーボンイオンに変換してプラズマジェットとして基板13に放射し、カーボン保護膜を堆積させる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボン保護膜及びその形成方法、並びにそのカーボン保護膜を備えた磁気記録媒体、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置に係り、特に平滑性及び膜質が良好で高硬度の、薄膜化が可能なカーボン保護膜及びその形成方法に関する。
【0002】
近年、インターネットの急速な普及、及び通信速度の向上等により、データ量が飛躍的に増加し、記憶容量が百Gバイト台の記憶装置がパソコンや画像記録装置に搭載されるようになってきている。記憶容量のさらに大なる記憶装置のニーズが高まると共に、これまでと同様の耐久性も要求される。記憶装置において、高記録密度化及び耐久性の向上の両立がますます困難となってきている。
【0003】
【従来の技術】
記憶装置、例えばハードディスクドライブでは、記録密度向上のためには、磁気記録媒体の記録層と、磁気ヘッドの記録再生素子との間隔を低減する必要がある。その手法としては、磁気記録媒体の記録層や磁気ヘッドの記録再生素子を覆う保護膜を薄膜化することや、磁気記録媒体からの磁気ヘッドの浮上量を低減することが挙げられる。しかし、保護膜を薄膜化すると、保護膜の機械的脆弱化や耐蝕性の低下が問題となる。
【0004】
そこで、従来これらの保護膜には機械的強度が高く化学的に不活性な、スパッタ法やCVD法(化学的気相成長法)によるDLC膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかし、今後の一層の薄膜化への要求には硬度が不充分であるため要求性能を満足できないと考えられている。
【0005】
極めて硬度の高いDLC膜が得られる手法としてFCA法(Filtered Cathodic Arc法)がある。この手法は、通常炭素材のカソードターゲットからアーク放電によりカーボンイオンを生じさせ、同時に付随的に生じる中性カーボン粒子を磁気偏向型の質量分析器によりカーボンイオンだけを選別して基板に照射する手法である。この手法はカーボンイオンのみにより形成されるため、水素を含まず、従って硬度低下の原因である炭化水素結合(C−H結合)が無く、sp結合に富んだ高硬度のDLC膜が得られる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−45429号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2002−285328号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、FCA法によりDLC膜を安定して形成するためには、カソードターゲット表面の放電点(陰極点)における炭素の蒸発量を精密に制御する必要がある。しかしながら、放電点での炭素蒸発量は事実上制御が不可能である。つまり、急激なカソードターゲット表面の温度上昇により表面が剥離され、サイズの大きなグラファイト粒子が発生する。このようにして発生したグラファイト粒子は磁気偏向器を通しても、磁気偏光器の器壁での反射等により完全に除去することができず基板表面に到達し付着する。グラファイト粒子が付着したDLC膜をハードディスク媒体や磁気ヘッドの保護膜などに用いると、グラファイト粒子の突起により磁気ヘッドが磁気ディスクと衝突し、ヘッドクラッシュが発生しあるいは保護膜が破壊されてしまう。
【0009】
このようなグラファイト粒子は、磁気偏向器を多段構成としてフィルタリングを厳密に行うこと等の工夫により抑制することが可能であるが、成膜装置が複雑化かつ大型化し、さらにカーボン保護膜の成膜速度も低下するなどの問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、平滑性及び膜質が良好で高硬度であり薄膜化が可能なカーボン保護膜及びその形成方法、並びにそのカーボン保護膜を備えた磁気記録媒体、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、カーボンイオンを含むプラズマを放射してカーボン保護膜を基体上に堆積させるカーボン保護膜の形成方法であって、プラズマを形成し、該プラズマ中にカーボン粒子を供給してカーボンイオンに変換し、該カーボンイオンを含むプラズマを前記基体に放射するカーボン保護膜の形成方法が提供される。
【0012】
本発明によれば、アーク放電等により形成されたプラズマ中にカーボン粒子を供給し、昇華、解離させてカーボンイオンに変換することにより、カーボン保護膜中に粒子状のカーボン(グラファイト)の混入を防止し、平滑なカーボン保護膜を形成できる。また、カーボンイオンが堆積して形成されるので、膜質が緻密で良好となる。したがって、硬度が高く化学的に不活性なカーボン保護膜を形成することができる。
【0013】
本発明の他の観点によれば、上記カーボンイオンを含むプラズマを放射してカーボン保護膜を基体上に堆積させるカーボン保護膜であって、当該カーボン保護膜の光学ギャップが3.6eV〜3.7eVであるカーボン保護膜が提供される。本発明によれば、光学ギャップを3.6eV〜3.7eVの範囲とすることで、粒子状のカーボン(グラファイト)が含まれない平滑なカーボン保護膜が実現される。
【0014】
本発明のその他の観点によれば、基板と、前記基板の上方に、上記記載の形成方法により形成されたカーボン保護膜、または上記記載のカーボン保護膜とを備える磁気記録媒体が提供される。本発明によれば、上記カーボン保護膜は膜質が緻密で良好であり、硬度が高く化学的に不活性でありさらに平滑であるので、薄膜化可能である。したがって、高密度記録が可能な磁気記録媒体を実現することができる。
【0015】
本発明のその他の観点によれば、磁気記録媒体に接触し、または磁気記録媒体上を浮上して記録または再生を行い、スライダと、前記スライダの磁気記録媒体に対向する側に形成されたカーボン保護膜とを含む磁気ヘッドにおいて、前記カーボン保護膜が上記項記載の形成方法により形成されたカーボン保護膜、または上記記載のカーボン保護膜である磁気ヘッドが提供される。本発明によれば、上記カーボン保護膜は膜質が緻密で良好であり、硬度が高く化学的に不活性でありさらに平滑であるので、薄膜化可能である。したがって、高密度記録が可能な磁気記録媒体を実現できる。また、高硬度、化学的不活性の特性により接触型の磁気ヘッドの保護膜としても最適である。
【0016】
本発明のその他の観点によれば、上記磁気記録媒体、及び/又は上記磁気ヘッドを備えた磁気記憶装置が提供される。本発明によれば、上記磁気記録媒体や磁気ヘッドの保護膜に用いることにより、高密度記録が可能でありかつ耐久性が良好であるので、大容量かつ長寿命の磁気記憶装置を実現することができる。
【0017】
図1は、本発明の原理を説明するための図である。図1を参照するに、放電ガスが供給された真空チャンバ1にアーク放電や誘導結合型放電により熱プラズマ領域2を形成し、その熱プラズマ領域2に極微細なカーボン粒子をキャリアガスにより輸送して供給する。熱プラズマ領域2ではカーボン粒子は昇華し、さらに、放電ガスを形成するイオンにより解離してカーボンイオンに変換される。炭素ターゲットを用いる従来の場合は炭素ターゲットから剥離したカーボン粒子がカーボンイオンに変換されずに基板に堆積されるという問題があったが、極微細なカーボン粒子を炭素源とすることにより、かかる問題を防止することができる。
【0018】
さらに本発明では、熱プラズマ領域2から基板3に向かって噴出する際、プラズマ流路が一旦絞り込まれた後、噴出口4が末広状の開口部となっているので、断熱膨張してプラズマジェット5が形成され、プラズマジェット5の流れにより基板3にカーボンイオンが到達しカーボン保護膜6が形成される。本発明では、イオンビーム堆積法のようにカーボンイオンを基板に導くためのバイアス電圧を印加する必要が無いため、カーボンイオンに過度の運動エネルギーが付加されない。したがって、膜質が良好でかつ均一性の高いカーボン保護膜6を形成することができる。その結果、本発明のカーボン保護膜は硬度が高く薄膜化が可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
先ず始めに本発明の実施の形態に係るカーボン保護膜を形成するための成膜装置について説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係るカーボン保護膜を形成するためのアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。図3は、図2に示すプラズマトーチを拡大して示す図である。図2及び図3を参照するに、アーク放電プラズマジェット成膜装置10は、プラズマトーチ11と、真空チャンバ12と、真空チャンバ12内にプラズマトーチ11と対向して設けられた基板13を保持する基板保持台14と、プラズマトーチ11にカーボン保護膜の原料となるカーボン粒子を供給する粉体供給器15などから構成されている。
【0022】
前記プラズマトーチ11は、カソード22と、前記カソード22と同軸上にカソード22を取り囲むように形成され、放電ガスを流通する放電ガス流路23となる間隙を介して配置されたアノード26と、前記アノード26の先端部に絶縁リング29を介して設けられたノズル28と、前記ノズル28中に形成されたカーボン粒子を供給するカーボン粒子供給流路30と、カソード22とアノード26との間に直流電圧を印加してアーク放電を形成する第1電源27などより構成されている。
【0023】
カソード22は、先端部22−1が円錐状に尖った円柱を形成し、タングステンやグラファイト等により構成されている。また、アノード26は先端部26−1がグラファイト、銅などの導電材料より構成されている。プラズマ中への不純物の混入を防止する観点からは、アノード26の先端部26−1の材料はグラファイトが好適である。アーク放電の異常放電によりアノード26の材料がスパッタ等されても不純物の混入を防止することができる。
【0024】
カソード22とアノード26との間に第1電源27によりアーク放電を生じさせるための電圧を印加する。電圧はカソード22とアノード26との距離等により異なるが、例えば好ましい範囲としては印加電圧100V〜190V、電流50A〜70Aに設定される。
【0025】
放電ガスは、同軸上に設けられたカソード22とアノード26との間に形成された放電ガス流路23を通じて供給される。流量は、後述する先細部26A及び噴出口28Aの寸法等により異なるが、好適な範囲としては例えば0.5SLM〜5SLM、圧力は0.3MPa以下に設定される。
【0026】
また、放電ガス流路23において、カソード22の上流側に放電ガスを旋回流とする整流板43を設ける。図4は、図3のX−X断面図である。図4を参照するに、整流板43の上流側及び下流側に開口部44A、44Bが設けられ、カソード22と略同軸上に、それらの開口部44A、44Bを連通する流路44Cが設けられている。放電ガスは整流板43の上流側の開口部44Aから流入し、流路44C中で前記略同軸上の円周方向の流れとなって下流側の開口部44Bより噴出される。したがって、放電ガスは、旋回流としてカソード22及びアノード26に達する。直流アーク放電によりカソード26表面に形成される陽極点が一点に集中し高温となって材料が異常に蒸発することを回避することができる。また、図4では旋回流の方向は左回りとなっているが、右回りでもよい。なお、整流板43は必須ではなく旋回流を形成しなくてもよい。
【0027】
アノード26にはカソード22から基板保持台14に向かって先細となったテーパ状の先細部26Aが形成されている。ここで放電ガスを絞り込み、放電ガスの圧力を高める。
【0028】
ノズル28とアノード26との間は絶縁リング29により絶縁される。絶縁リング29は例えばテフロン(登録商標)やアルミナ、石英ガラス等を用いることができる。
【0029】
ノズル28は銅、グラファイトにより構成され、下流に向かって末広となった噴出口28Aが形成されている。アノード26に形成された先細部26Aで放電ガスが一旦絞り込まれた後に末広に形成された噴出口28Aにより、放電ガスが断熱膨張されカーボンイオンを含むプラズマジェット40となって基板13に照射される。本発明では断熱膨張による気体の流れのみにより放射するので、カーボンイオンに過剰な運動エネルギーを与えることなく、基板13上に堆積させることができる。
【0030】
なお、カソード22、アノード26、及びノズル28は数万度のプラズマに曝され高温となるので内部に冷却水が循環するようになっている。
【0031】
ノズル28にはカーボン粒子供給流路30が設けられている。カーボン粒子供給流路30にはカーボン粒子源として粉体供給器15が接続されている。粉体供給器15は、カーボン粒子を撹拌するロータ31と、ボンベ32よりキャリアガスを注入するキャリアガス導入流路33と、撹拌されキャリアガスと混合された粉体が送出される送出流路34と、ロータを回転するモータ35などより構成されている。粉体供給器15には、カーボン粒子36、例えばフラーレン、カーボンブラック、クラスターダイヤモンド等の固体炭素材料等が充填される。キャリアガスは、不活性ガス、例えばHe、Arなどの希ガスが用いられ、流量調整器38及びバルブ39等により所定のガス流量に制御されてカーボン粒子36がカーボン粒子供給流路30を通じてプラズマに供給される。キャリアガスの流量は0.1SLM〜0.8SLMが好適である。流量が過度であるとプラズマを不安定化させ、アーク放電が停止(失火)するおそれがある。なお、キャリアガスに炭化水素ガスを添加してもよい。カーボン保護膜に微量の水素が添加され、後述する磁気記録媒体用の潤滑剤との濡れ性や密着性が良好となる。炭化水素ガスは、炭素原子が1〜4個の飽和炭化水素あるいは不飽和炭化水素よりなるガスが、ガス状態であるため取扱いの点から好ましく、これらのうち、メタン(CH),エタン(C),プロパン(C),ブタン(C10)などの飽和炭化水素、あるいはエチレン(C),プロピレン(C),ブチレン(C)、アセチレン(C)などの不飽和炭化水素が特に好ましい。
【0032】
ここで、カーボン粒子の最大粒径は0.5nm〜100nmに設定される。100nmより大きいと、十分に昇華しきれず粒子状のまま基板に堆積するおそれがあり、また、カーボン粒子の最大粒径は小さいほど良いが、0.5nmより小さいと固体炭素粒子として安定に得られないためである。カーボン粒子材料として好適なカーボン粒子は球状フラーレンであり、特に粒径が0.7nm〜0.8nm程度のC60の球状フラーレンが好適である。カーボン粒子材料としては、例えば、フロンティアカーボン社のフラーレン混合物を用いることができる。カーボン粒子の供給量は、例えば0.01mg/秒〜0.09mg/秒に設定される。なお、カーボン粒子の最大粒径は、SEMまたはHRTEMにより写真上で例えば20mm程度に拡大して観察し、一次粒子について外接円の直径をその一次粒子の直径として、視野内の粒子が有する最大の直径を最大粒径とした。
【0033】
カーボン粒子はキャリアガスと共にカーボン粒子供給流路30を流通してカーボン粒子供給用ノズル45より、アノード26とノズル28との間においてプラズマ中に供給される。図5は、図3に示すY−Y断面図である。図5を参照するに、カーボン粒子供給用ノズル45は、カーボン粒子供給流路30に連通した上流側開口部46と、上流側開口部46Aに連通し、アノード26と略同軸の円周状に形成された流路46Cと、流路と連通した下流側開口部46Bから構成されている。したがって、カーボン粒子供給用ノズル45を流通したカーボン粒子を含むキャリアガスは、旋回流を形成して放電ガス中、すなわちプラズマ中に噴出される。放電ガスが旋回流として供給される場合は、噴出方向が放電ガスの旋回流の回転方向と同一方向に設定する方がよい。放電ガスの旋回流の流れを阻害せず、その結果プラズマを乱すことなくカーボン粒子をプラズマ中に注入することができる。なお、カーボン粒子供給用ノズル45は、螺旋状の複数の隔壁により構成されていてもよい。旋回流を形成することができると共に、保守・清掃が容易である。
【0034】
基板保持台14は、プラズマジェット40の流れに対して略垂直に基板13が対向するように設けられ、基板13を冷却するための冷却水流路41が付設されている。基板温度は0℃〜100℃の範囲に設定され、カーボン保護膜の膜質を緻密化させる点で好ましい。
【0035】
カーボン保護膜の放電ガス等の排気は基板保持台側より行われ、図示されない分子ターボポンプ等の真空ポンプが用いられる。
【0036】
カソード22とアノード26との間に、放電ガス流路23を通じてArガスなどの放電ガスが供給され、前記アーク放電によりアーク柱42がカソード22とアノード24との間に形成され、アーク柱42付近にプラズマ領域が形成される。プラズマ領域にはカーボン粒子供給流路30よりキャリアガスと共にカーボン粒子が供給される。カーボン粒子は、プラズマ中で電子あるいはArイオンにより粉砕・昇華され解離してカーボンイオンとなる。カーボンイオンを含んだプラズマは、放電ガスがカソード22から基板保持台13に向かって噴出口28Aが末広となっているので、プラズマジェット40となってカーボンイオンが基板13に照射され、基板13上にカーボン保護膜が形成される。かかるカーボン保護膜は、炭化水素結合(C−H結合)が含まれないため、炭素同士の結合がsp結合の割合が多いta−アモルファスカーボンが形成され、膜質が良好で硬度の高いカーボン保護膜を形成することができる。
【0037】
次に、上記アーク放電プラズマジェット成膜装置を用いて、カーボン保護膜を形成する方法を説明する。
【0038】
まず、例えば後述する磁気ディスクを磁性層までを形成した基板13を、外気に曝すことなく真空チャンバ間を搬送して基板保持台14にセットする。次いで、Arガスなどよりなる放電ガスを所定の流量流す。次いでカソード22とアノード26との間に直流電圧を印加し着火してアーク放電を生じさせプラズマを発生させる。次いで粉体供給器15にキャリアガスを流してカーボン粒子をプラズマ領域に供給し、カーボンイオンに変換すると共にプラズマジェットとなって基板に放射されカーボン保護膜が形成される。この際、プラズマトーチ11と基板保持台13との間にシャッタ等を設けてシャッタを閉じた状態でアーク放電を継続させ、成膜する際にシャッタを開いて成膜するのがよい。アーク放電が安定化しプラズマが安定化するので膜質の均一性がさらに向上する。
【0039】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の実施の形態に係るカーボン保護膜を形成するためのアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。図7は、図6に示すプラズマトーチを拡大して示す図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図6及び図7を参照するに、アーク放電プラズマジェット成膜装置50は、プラズマトーチ51と、真空チャンバ12内にプラズマトーチ51と対向して設けられた基板13を保持する基板保持台14と、プラズマトーチ51にカーボン保護膜の原料となるカーボン粒子を供給する粉体供給器15などから構成されている。
【0041】
前記プラズマトーチ51は、カソード22と、前記カソード22と同軸上にカソード22を取り囲むように形成され、放電ガスを流通する放電ガス流路23となる間隙を介して配置されたアノード26と、アノード26の周りに絶縁リング29A,29B及びカーボン粒子供給流路30を介して配置された第2のアノードとしての機能を有するノズル52と、カソード22とアノード26との間に直流電圧を印加してアーク放電を形成する第1電源27と、カソード22とノズル52との間に直流電圧を印加してアーク放電を形成する第2電源53と、アノード26とノズル52との間に、絶縁リング29A,29Bにより電気的に絶縁されたカーボン粒子を供給するカーボン粒子供給流路30などより構成されている。アーク放電プラズマジェット成膜装置50は、カソード22とアノード26との間に形成されたアーク柱54Aに加えカソード22とノズル52との間にもアーク柱54Bが形成され、カーボン粒子を含むキャリアガスがアーク柱54A、54Bに囲まれた空間に供給される点以外は第1の実施の形態において説明したアーク放電プラズマジェット成膜装置10と同様である。なお、整流板43及びカーボン粒子供給用ノズル45を設けてもよく、設けなくともよい。
【0042】
ノズル52は、アノード26と同様の導電材料よりなり、銅やグラファイトが好適である。ノズル52は、絶縁リング29A,29B及びカーボン粒子供給流路30によりアノード26と電気的に絶縁されている。また、カーボン粒子供給流路30もアノード26及びノズル52と電気的に絶縁されている。
【0043】
第1電源27に加えて第2電源53を設け、カソード22とノズル52との間に電圧を印加する。カソード22とノズル52との間にアーク放電を生じさせノズル52の先端部52Aまで延ばす共にノズル52の先端部52Aで広がったアーク柱54Bを形成する。第1電源27及び第2電源53の電圧はカソード22とアノード26との距離、及びアノード26とノズル52との距離等により異なるが、例えば好ましい範囲としては第1電源による印加電圧が約50Vで一定、電流が20A〜40A、第2電源による印加電圧が100V〜250V、電流40A〜70Aに設定される。
【0044】
カーボン粒子は、カーボン粒子供給流路30からキャリアガスと共にアノード26先端部付近で広がったアーク柱54Aとノズル先端部で広がったアーク柱54Bとの間の空間に供給される。この空間はプラズマ密度が高く、カーボン粒子が効率良く昇華、解離されてカーボンイオンに変換される。したがって、良質のカーボン保護膜が形成される。
【0045】
ここで、カーボン粒子は第1の実施の形態と同様の材料を用いることができるが、カーボン粒子の最大粒径は0.5nm〜100nmに設定される。また、第1の実施の形態のアーク放電プラズマジェット成膜装置と比較して、上記の範囲内において最大粒径の大きな又は多量のカーボン粒子であっても、プラズマ密度が高いので、十分にカーボンイオンに変換することができ、その結果成膜速度を向上することができる。
【0046】
なお、本実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置によりカーボン保護膜を形成する方法は、第1の実施の形態おいて説明した方法と同様である。
【0047】
本実施の形態によれば、カーボン粒子がアノード先端部付近で広がったアーク柱54Aとノズル先端部で広がったアーク柱54Bとの間アーク柱に挟まれた空間に供給されるので、カーボン粒子に変換され易く、良質のカーボン保護膜が形成されると共に成膜速度を向上することができる。
【0048】
(第3の実施の形態)
図8は、本発明の実施の形態に係るカーボン保護膜を形成するためのアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、カーボン粒子を供給する粉体供給器15(図2に示す。)の図示を省略する。
【0049】
図8を参照するに、本実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置60は、プラズマトーチ11と、基板保持台が設けられた成膜室62と、プラズマトーチ11と成膜室62との間にプラズマジェット中のカーボンイオンを選択する電場偏向型フィルタ部61などより構成されている。なお、プラズマトーチ11は第1の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置のプラズマトーチ11と同様のものである。
【0050】
電場偏向型フィルタ部61は、1/8分円タイプのフィルタが用いられ、一対のフィルタリング電極63と、フィルタリング電極63に直流電圧を印加するフィルタリング電源64等よりなっている。
【0051】
図9(A)は図8に示す電場偏向型フィルタ部の要部を拡大して示す図、図9(B)は(A)のX−X断面図である。図8、図9(A)及び(B)を参照するに、フィルタリング電極63は、真空チャンバ12の器壁12Aの内側に電気的に絶縁する絶縁体64を介して対向して設けられている。また、真空チャンバの器壁12Aの外側にはプラズマジェットにより高温とならないように冷却チューブ65が巻回されている。
【0052】
フィルタリング電源64によりフィルタリング電極63間に印加される電圧は、プラズマジェットの流速等により適宜選択されるが、具体的には30V〜300Vに設定される。また、フィルタリング電極63は、例えば半径500mmの1/8円の範囲に設けられ、電極間距離が120mmに設定される。
【0053】
プラズマトーチ11の噴出口28Aから放射されたプラズマジェットは、フィルタリング電極63により印加された電場により、荷電粒子のみがローレンツ力を受け成膜室の方向に流れの方向が曲げられる。荷電粒子のうちカーボンイオンのみが基板に到達するようにフィルタリング電極63間の電圧が設定される。一方、中性のカーボン粒子等は器壁12Aの内側表面やフィルタリング電極63に衝突し成膜室62に到達できない。したがって、基板13上に形成されるカーボン保護膜には中性のカーボン粒子(グラファイト粒子)が混入することなく、平滑でかつ良質のカーボン保護膜を形成することができる。
【0054】
なお、フィルタリング電極63は1対に限定されず、プラズマジェット流の方向に沿って2以上に分割されていてもよい。また、プラズマトーチ11の替わりに第2の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置のプラズマトーチ51(図6に示す。)を用いてもよい。
【0055】
(第4の実施の形態)
図10は、本発明の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、カーボン粒子を供給する粉体供給器15(図2に示す。)の図示を省略する。
【0056】
図10を参照するに、本実施の形態に係るカーボン保護膜を形成するためのアーク放電プラズマジェット成膜装置70は、プラズマトーチ11と、基板保持台14が設けられた成膜室62と、プラズマトーチ11と成膜室62との間にプラズマジェット73中のカーボンイオンを選択する磁場偏向型フィルタ部71などより構成されている。なお、プラズマトーチ11は第1の実施の形態のアーク放電プラズマジェット成膜装置のプラズマトーチ11と同様のものである。
【0057】
磁場偏向型フィルタ部71には、2つのフィルタコイル72を備えた45°ベントタイプのフィルタが用いられている。フィルタコイル72によりプラズマジェット73の流れの方向に対して垂直に(図の紙面に対して垂直に)磁場を印加することにより、プラズマジェット73中のカーボンイオンをローレンツ力により成膜室62の方向に曲げ、中性のカーボン粒子等を器壁12Aの内側表面や器壁12Aに設けられたフィン74にトラップさせ、成膜室62に到達することを防止する。したがって、基板13上形成されるカーボン保護膜には中性のカーボン粒子が混入することなく、平滑でかつ良質のカーボン保護膜を形成することができる。
【0058】
なお、図示されていないが、真空チャンバの器壁12Aの外側にはプラズマジェット73により高温とならないように冷却チューブが巻回されている。
【0059】
また、プラズマトーチ11の替わりに第2実施の形態のアーク放電プラズマジェット成膜装置のプラズマトーチ51(図6に示す。)を用いてもよい。
【0060】
(第5の実施の形態)
図11は、本発明の実施の形態に係るカーボン保護膜を形成するための誘導結合型プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0061】
図11を参照するに、本実施の形態に係る誘導結合型プラズマジェット成膜装置は、誘導結合型プラズマトーチ81と、真空チャンバ12内にプラズマ発生部と対向して設けられた基板13を保持する基板保持台14と、プラズマ発生部にカーボン保護膜の原料となるカーボン粒子を供給する粉体供給器15などから構成されている。
【0062】
誘導結合型プラズマトーチ81は、プラズマを形成する空間を外部から隔絶する石英ガラスなどのセラミックス絶縁体よりなる円筒体82と、円筒体82の器壁に螺旋状に巻回された導電材よりなる高周波コイル83と、高周波コイル83に接続されたプラズマ励起高周波電源84と、前記円筒体82の絞り込まれた先端部82Aに絶縁リング29を介して設けられたノズル28と、前記ノズル28中に形成されたカーボン粒子を供給するカーボン粒子供給流路30などより構成されている。
【0063】
円筒体82に上述した放電ガスを導入し、プラズマ励起高周波電源84により、例えば1MHz〜8MHz、100A〜200Aの高周波電流が高周波コイル83に印加されることにより、放電ガスが解離したイオンと電子を含む高密度でプラズマ温度が1万℃以上の熱プラズマが形成される。
【0064】
円筒体82の先端部82Aは、第1の実施の形態に係るアノード(図3に示す26A。)と同様に絞り込まれている。さらにノズル28及びカーボン粒子供給流路30を第1の実施の形態と同様としているので、円筒体82中で発生したプラズマは一旦絞り込まれる。さらにカーボン粒子供給流路30から絞り込まれたプラズマ中にカーボン粒子が供給され、カーボン粒子がカーボンイオンに変換される。カーボンイオンを含んだプラズマは、ノズルの末広の噴射口28Aからプラズマジェット85となって、基板13上に放射される。
【0065】
本実施の形態によれば、高周波誘導プラズマにより高密度のプラズマが形成されてカーボン粒子がカーボンイオンに効率良く変換されるので、膜質が良好なカーボン保護膜を形成することができる。以下、実施例について説明する。
【0066】
[第1実施例]
図2に示す第1の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置を使用して、シリコン基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜し、また、後述する光学ギャップ測定のためMgF基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜した。
【0067】
成膜条件は、放電ガスを流量1SLMのArガス、キャリアガスを0.5SLMのArガス、真空チャンバ内の圧力を6.7Pa(0.05Torr)、第1電源の電圧を150V、放電電流を70A、基板温度を40℃とした。また、アノードの材料を銅とした。
【0068】
また、カーボン粒子の最大粒径が100nmのカーボンブラックを供給した。なお、カーボン粒子の最大粒径の測定方法は上述した方法を用いた。
【0069】
[第2実施例]
本実施例のカーボン保護膜は、カーボン粒子として最大粒径0.8nmの球状フラーレン(MTR社製C60/C70混合物)を用いた以外は、第1実施例の条件と同様の条件により作製した。
【0070】
[第3実施例]
本実施例のカーボン保護膜は、キャリアガスをArガスの替わりにHeガスを用いた以外は、第1実施例の条件と同様の条件により作製した。
【0071】
[第4実施例]
本実施例のカーボン保護膜は、キャリアガスをArガスの替わりにメタンガス(CH)を用いた以外は第1実施例の条件と同様の条件により作製した。
【0072】
[第1比較例]
本比較例のカーボン保護膜は、最大粒径が300nmのカーボン粒子(三菱化学社製カーボンブラック商品名)を供給した以外は第1実施例の条件と同様の条件により作製した。
【0073】
[第5実施例]
図6に示す第2の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置を使用して、シリコン基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜し、また、後述する光学ギャップ測定のためMgF基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜した。
【0074】
成膜条件は、放電ガスを流量1SLMのArガス、キャリアガスを0.5SLMのArガス、真空チャンバ内の圧力を6.7Pa(0.05Torr)、第1電源を50V、40A、第2電源を150V、70A、基板温度を40℃とした。また、アノード及びノズルの材料をグラファイトとした。カーボン粒子は最大粒径が100nmのカーボンブラックを供給した。
【0075】
[第6実施例]
図8に示す第3の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置を使用して、シリコン基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜し、また、後述する光学ギャップ測定のためMgF基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜した。
【0076】
成膜条件は、放電ガスを流量1SLMのArガス、キャリアガスを0.5SLMのArガス、真空チャンバ内の圧力を6.7Pa(0.05Torr)、第1電源を150V、70A、基板温度を40℃とした。また、アノードの材料をグラファイトとした。カーボン粒子は最大粒径が100nmのカーボンブラックを供給した。
【0077】
また、フィルタリング電極に印加する電圧を予め選択してカーボンイオンのみが基板上に到達するようにした。
【0078】
[第7実施例]
図10に示す第4の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置を使用して、シリコン基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜し、また、後述する光学ギャップ測定のためMgF基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜した。
【0079】
成膜条件は、放電ガスを流量1SLMのArガス、キャリアガスを0.5SLMのArガス、真空チャンバ内の圧力を6.7Pa(0.05Torr)、第1電源を150V、70A、基板温度を40℃とした。また、アノードの材料をグラファイトとした。カーボン粒子は最大粒径が100nmのカーボンブラックを供給した。また、フィルタコイルに印加する電圧を予め選択してカーボンイオンのみが基板上に到達するようにした。
【0080】
[第8実施例]
図11に示す第4の実施の形態に係る誘導結合型プラズマジェット成膜装置を使用して、シリコン基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜した。また、後述する光学ギャップ測定のためMgF基板上に厚さ30nmのカーボン保護膜を成膜した。
【0081】
成膜条件は、放電ガスを流量1SLMのArガス、キャリアガスを0.5SLMのArガス、真空チャンバ内の圧力を6.7Pa(0.05Torr)、プラズマ励起高周波電源を40kHz、電流100A、基板温度を40℃とした。また、アノードの材料をグラファイトとした。カーボン粒子は最大粒径が100nmのカーボンブラックを供給した。
【0082】
(カーボン保護膜の評価)
第1〜第8実施例及び第1比較例に係るカーボン保護膜の光学ギャップ及び硬度の評価を行った。
【0083】
カーボン保護膜に局所的にグラファイト粒子が存在する場合、カーボン保護膜の光学ギャップが減少することが報告されている(Teo et al., J. Appl. Phys. 89(2001)p.3706−p.3710)。
本報告の評価方法は、カーボン保護膜の広い範囲に亘るグラファイト粒子の有無を評価する方法として有用である。この方法を用いて、第1〜第4実施例及び第1比較例に係るカーボン保護膜中のグラファイト粒子の可視吸光スペクトルを測定し光学ギャップを求めた。可視吸光スペクトルの測定には、日立製作所製U3200スペクトロフォトメータを使用し、以下の測定条件により行った。
【0084】
測定モード:透過法
ビームスリットサイズ:10mm×0.1mm
次いで測定により得られた吸光度α(E)と光エネルギーEを用いて、[α(E)×E]1/2とEとの関係(Taucプロット)の傾き及び切片から光学ギャップを求めた。
【0085】
また、カーボン保護膜の硬度の測定を行った。測定には、nano indentation法(原子間力顕微鏡(AFM)のプローブにダイアモンド圧子を用いて、ダイアモンド圧子をカーボン保護膜に押し込み、押し込みの際の反発力と変位量を測定する方法)を用いて以下の測定条件により行った。
【0086】
測定装置:Triboscope(Hysitron社製)
ダイアモンド圧子の先端形状:曲率半径40nm以下、90°Tip
押し込み力:70μN
図12は、第1〜第8実施例及び第1比較例に係るカーボン保護膜の光学ギャップと硬度を示す図である。図中、使用したカーボン粒子の最大粒径をあわせて示した。
【0087】
図12を参照するに、まず、第1の実施の形態のアーク放電プラズマジェット成膜装置を使用した第1〜第3実施例と第1比較例を比較すると、300nmの最大粒径のカーボン粒子を用いて形成した第1比較例の光学ギャップは2.8eVであり、第1〜第3実施例の光学ギャップより低く、第1比較例に係るカーボン保護膜にはグラファイト粒子が混在していることが分かる。
【0088】
また、100nmの最大粒径のカーボン粒子を用いて形成した第1及び第3実施例と、0.8nmの最大粒径のカーボン粒子を用いて形成した第2実施例とを比較すると、第2実施例の光学ギャップが3.70eVと高く、グラファイト粒子が混入していないカーボン保護膜が形成されていることがわかる。
【0089】
また、キャリアガスにメタンガスを用いた第4実施例は光学ギャップが第1〜第3実施例より若干低い程度であるが、硬度が40GPaに低下している。カーボン保護膜中に炭化水素結合(C−H結合)成分が形成されているものと推察される。第4実施例のカーボン保護膜は、硬度は比較的低いものの、パーフルオロポリエーテルを主鎖とする潤滑剤の濡れ性及び密着性が向上した。
【0090】
次に第1実施例と、第5〜第8実施例とを比較すると、最大粒径が同様のカーボン粒子を用いているものの、第5〜第8実施例の方が光学ギャップが3.70eVと若干高く、グラファイト粒子が混入していないカーボン保護膜が形成されていることが分かる。
【0091】
図13は、カーボン保護膜の光学ギャップと供給したカーボン粒子の最大粒径との関係を示す図である。
【0092】
図13を参照するに、上記実施例及び比較例にさらに、本発明によらない他の比較例として、第1実施例において最大粒径が200nm以上のカーボン粒子を供給してカーボン保護膜を形成した。最大粒径が100nmを超えると光学ギャップが急激に減少することが分かる。
【0093】
(第6の実施の形態)
図14は本発明の実施の形態に係る磁気記録媒体の断面図である。図14を参照するに、磁気記録媒体90は、基板91と、基板91上に下地層92、非磁性中間層93、安定化層94、非磁性結合層95、記録層96、カーボン保護膜98が順次積層され、さらにカーボン保護膜98上に潤滑層99が形成された構成となっている。
【0094】
基板91は、ガラス基板、NiPメッキアルミニウム合金基板、シリコン基板、セラミクス基板等を用いることができる。ガラス基板、シリコン基板、セラミクス基板等にはスパッタ法などによりNiP層などを形成してもよい。導電性を付与してスパッタ時にバイアスを印加することが可能となると共に、次に説明する下地層92を所望の結晶方向に配向させることができる。
【0095】
下地層92としては、スパッタ法、蒸着法により、基板温度を200℃に設定し、厚さ40nmの(002)面方向に成長したCr層が形成される。具体的には、下地層92は、厚さ10nmから100nmであり、Cr層に限定されず、例えば、Cr層の替わりにCr合金層、例えばCrW、CrMo、CrTi等が用いられる。CrにW等を添加することにより格子定数を制御して下地層92上に形成される非磁性中間層との格子整合を図り、非磁性中間層93のエピタキシャル成長をより完全なものにすることができる。下地層92の厚さは2nm以上50nm以下であることが好ましい。50nmより厚いと下地層92の結晶粒が成長し、結晶粒の面内方向の大きさ(例えば直径)が過度になり、下地層92上に成長する各層に順次引き継がれてしまい、最終的に記録層96の結晶粒が過度に大となり、媒体ノイズを増加させてしまう。また2nmより小さいと非磁性中間層93の結晶性を低下させてしまう。
【0096】
非磁性中間層93は、スパッタ法、蒸着法により形成され、基板温度180℃に設定し、厚さ20nmの(11−20)面方向に成長したCoCr合金、あるいはCoCrTa合金等が用いられる。具体的には、非磁性中間層93は、厚さ1nm〜10nmのCoCr合金(Crの含有量が25原子%以上)、またはCoCr合金にTa、Pt、W等を添加した合金が用いられる。非磁性中間層93は、下地層92と安定化層94(及び記録層96)との格子不整合を緩和するバッファ層として機能すると共に、(11−20)面を成長方向として、安定化層94(及び記録層96)のCoCrPt合金のc軸の面内配向性を向上させる機能を有する。
【0097】
安定化層94及び記録層96は、これらの層間に非磁性結合層95を有し、面内方向にc軸が配向し(例えば(11−20)面方向に成長し)、互いに反強磁性結合する、すなわち安定化層94及び記録層96の磁化が反平行となる積層フェリ構造を有している。安定化層94及び記録層96はそれぞれ強磁性層であり、例えば同じ組成の異なる膜厚の強磁性層が形成される。具体的には、安定化層94及び記録層96は、CoCrPt(Cr:10原子%〜25原子%、Pt:3原子%〜15原子%)、CoCrPtB(B:2原子%〜10原子%)、CoCrPtTa、CoCrPtTaNb等のCoCrPtを主成分とし、これに第4、第5元素を添加した組成を有する。これらのうち、CoCrPtBは例えばCoCrPtTaと比較して少ないPt含有量で保磁力を増すことができるので、高記録密度化および低コスト化の観点から好適である。また、CoCrPtBは、結晶粒の微細化の観点からも好適である。CoCrPtBにさらに第5元素を添加してもよい。
【0098】
また、安定化層94及び記録層96の厚さは、記録層96の残留磁束密度Mrと膜厚δの積Mrδ(磁性層)が安定化層94のMrδ(安定化層)より大に設定する。すなわち、Mrδ−Mrδ>0となるようにする。この差を磁気ヘッドが感知して、磁気記録媒体90に記録された情報を再生する。したがって、情報が記録された磁気記録媒体90からの漏洩磁界を過度に大とすることなく、磁性単位である磁性粒の体積Vを増すことができ、磁化の熱的安定性KV/kTを高めることができる。例えば、安定化層94及び記録層96の組成が同一の場合、すなわちMr=Mrの場合は、安定化層94及び記録層96の厚さの差δ−δに比例する漏洩磁界が生じる。なお、Kは異方性定数、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
【0099】
非磁性結合層95は、安定化層94及び記録層96間にスパッタ法、蒸着法により形成され、厚さ0.4nm〜1.0nm(好ましくは0.6nm〜0.8nm)のRu、Rh、Ir、Ru系合金、Rh系合金、及びIr系合金が用いられる。このような範囲の膜厚に設定することにより、安定化層94と記録層96の磁化の向きを反平行とすることができる。
【0100】
カーボン保護膜98は上述した第1から第5の実施の形態に係る形成方法により記録層96上に形成される。炭素同士の結合がsp結合の割合が多いta−アモルファスカーボンを形成され、グラファイト粒子が混入しないので平滑性が高く、膜質の良好で硬度の高いカーボン保護膜98が形成される。
【0101】
潤滑層99は、カーボン保護膜98上に厚さ0.5nm〜3nmに設定して、浸漬法、スピンコーティング法により形成される。具体的には、潤滑剤はパーフルオロポリエーテルを主鎖とするZDOL、Z25、AM3001(以上、アウジモント社製商品名)等をフロン系溶媒(例えば、フロリナート(3M社製商品名))に希釈して、浸漬法、例えば基板を引き上げる際の速度により潤滑層の膜厚を制御する引き上げ法を用いることができる。もちろん潤滑剤を含んだフロン系溶媒の液面を所定の速度で低下させて潤滑層の膜厚を制御してもよい。潤滑層99は、上述した窒素あるいは水素をドープしたカーボン保護膜98を用いることにより、密着性を向上することができる。特に、キャリアガスにメタンガス(CH)を用いて形成したカーボン保護膜98は、ZDOL及びAM3001が好適である。潤滑剤の濡れ性及び密着性が良好である。
【0102】
本実施の形態によれば、カーボン保護膜が第1〜第5の実施の形態に係る形成方法により形成されるので、平滑であり膜質が良好で硬度が高い。したがって、耐久性、耐蝕性の優れた磁気記録媒体を実現することができる。
【0103】
(第7の実施の形態)
本発明の実施の形態は、本発明のカーボン保護膜を備えた磁気ヘッドに係るものである。
【0104】
図15は本発明の実施の形態に係る磁気ヘッドが磁気記録媒体上を浮上する様子を示す図である。図16は、図15に示す磁気ヘッドの磁気記録媒体に対向する側からみた斜視図である。図15及び図16を参照するに、磁気ヘッド100は、矢印ME方向に移動する磁気記録媒体101により生じる矢印AIR方向に流れる空気流の圧力により、空気流の流出端において磁気記録媒体101から数十nmの高さを浮上し、磁気記録媒体101に記録・再生を行う。磁気ヘッド100の空気流の流出端には、記録・再生を行う複合型磁気ヘッド素子102が設けられている(微少なため点で示す。)。
【0105】
磁気ヘッド100のスライダの媒体対向面103−1は、空気流に対する正圧を生じさせるための3つのパッド104と、3つのパッド104に囲まれた負圧を生じさせるための凹部105と、パッド104Lの流出端に設けられた複合型磁気ヘッド素子102などにより構成されている。
【0106】
スライダ103は、アルチック(アルミナとTiCのセラミクス)よりなり、図15に示すようにスライダ103の媒体対向面103−1にはカーボン保護膜106が設けられている。具体的には、図16に示す3つのパッド104の表面には、上記第1〜第5の実施の形態に係る形成方法により形成した厚さ0.5nm〜20nmのカーボン保護膜106に覆われている。磁気記録媒体101との接触による摩耗、スクラッチ等を防止して、磁気ヘッド100の浮上特性が劣化を防止することができる。なお、カーボン保護膜106を形成する条件は、第1の実施の形態と同様である。
【0107】
ここで、パッド104L又はパッド104Rの流出端、特に複合型磁気ヘッド素子102が形成されているパッド104Lの流出端は、磁気ヘッド100の浮上の際、磁気記録媒体とのスペーシングが最も小さくなる。カーボン保護膜106には突起がなく平滑性に優れているので、スペーシングを低減することができ、優れた耐摩耗性及び耐スクラッチ性を有するが故カーボン保護膜106の膜厚低減も可能であるので、スペーシングを一層低減することができ、高記録密度化が可能となる。
【0108】
図17は複合型磁気ヘッド素子102の媒体対向面の構造を示す拡大図である。図17中、対向する磁気記録媒体が下側から上側へと移動する。図17を参照するに、複合型磁気ヘッド素子102は、記録を行う誘導型記録素子108と再生を行う再生素子109より構成されている。誘導型記録素子108は、アルミナ等の非磁性絶縁材料からなる記録ギャップ部110をもって離隔された上部磁極層111と、下部副磁極112−1を備えた下部磁極層112と、上部磁極層111と下部副磁極112−1との間にヘッド磁界を生ぜしめるコイル(図示されず)などより構成されている。また、再生素子109は、感磁素子であるスピンバルブ型GMR素子113と、スピンバルブ型GMR素子113を非磁性絶縁材料を介して挟む上部シールド層114及び下部シールド層115などから構成されている。
【0109】
これらの上部磁極層111、下部副磁極112−1、下部磁極層112、スピンバルブ型GMR素子113、上部シールド層114、及び下部シールド層115は、軟磁性材料、例えばNiFe(パーマロイ)やCoFeB等、反強磁性材料、例えばFeMnやCoPtPd等、導電材料、例えばCu、Al等より構成されている。したがって、これらの材料は硬度が比較的低く、磁気記録媒体101の突起等に直接接触すると傷つき易い。また、磁気記録媒体101表面に付着している酸またはアルカリにより腐食され易い。これに対し、本実施の形態の磁気ヘッドは、図15及び図16に示すように、複合型磁気ヘッド素子102の表面に、上記第1〜第5の実施の形態に係る形成方法により形成された厚さ0.5nm〜5nmのカーボン保護膜107が形成されている。したがって、耐スクラッチ性・耐蝕性に優れる。
【0110】
なお、図15及び図16に戻り、カーボン保護膜をスライダ103の媒体対向面103−1の凹部105を含む表面全体に形成してもよい。磁気記録媒体101の潤滑層から媒体対向面103−1に移行する潤滑剤の付着を防止することができる。
【0111】
本実施の形態によれば、磁気ヘッド52の媒体対向面103−1、例えばパッド104及び複合型磁気ヘッド素子102の表面に高硬度、高密度カーボン保護膜が形成されているので、耐久性及び耐蝕性に優れる。特に、カーボン保護膜は平滑性に優れているので、磁気ヘッド・磁気記録媒体101間のスペーシングを一層低減することができる。
【0112】
(第8の実施の形態)
本発明の実施の形態は、第6の実施の形態に係る磁気記録媒体及び/又は第7の実施の形態に係る磁気ヘッドを備えた磁気記憶装置に係るものである。
【0113】
図18は、本発明の実施の形態の磁気記憶装置の要部を示す図である。図18を参照するに、磁気記憶装置120は大略ハウジング121からなる。ハウジング121内には、スピンドル(図示されず)により駆動されるハブ122、ハブ122に固定され回転される磁気記録媒体123、アクチュエータユニット124、アクチュエータユニット124に取り付けられ磁気記録媒体123の半径方向に移動されるアーム125及びサスペンション126、サスペンション126に支持された磁気ヘッド128が設けられている。
【0114】
本実施の形態の磁気記憶装置120は、磁気記録媒体123及び磁気ヘッド128に特徴がある。例えば、磁気記録媒体123は第6の実施の形態の磁気記録媒体である。また、磁気ヘッド128は、例えば第7の実施の形態の磁気ヘッドである。磁気記録媒体123及び磁気ヘッド128の少なくとも一方が係る特徴を有していればよい。
【0115】
磁気記憶装置120の基本構成は、図18に示すものに限定されるものではない。本発明で用いる磁気記録媒体123は、磁気ディスクに限定されず磁気テープであってもよい。
【0116】
本実施の形態によれば、磁気記憶装置120は、磁気記録媒体123が優れた平滑性、耐久性及び耐蝕性を有するので、高密度記録での低浮上あるいは接触記録方式であっても長期に亘る動作信頼性を有している。また、磁気ヘッド128が優れた平滑性、耐久性及び耐蝕性に加えて長期浮上安定性を有し、長期に亘る動作信頼性を有している。
【0117】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0118】
例えば、上記の実施の形態に係る磁気記録媒体として磁気ディスクを例に説明したが、磁気ディスクに限定されず、例えば、金属薄膜をテープ状基板に形成した蒸着テープ等であってもよく、実施の形態と同様の効果が得られる。
【0119】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) カーボンイオンを含むプラズマを放射してカーボン保護膜を基体上に堆積させるカーボン保護膜の形成方法であって、
プラズマを形成し、該プラズマ中にカーボン粒子を供給してカーボンイオンに変換し、該カーボンイオンを含むプラズマを前記基体に放射することを特徴とするカーボン保護膜の形成方法。
(付記2) 前記カーボン粒子は最大粒径が0.5nm以上100nm以下であることを特徴とする付記1記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記3) 前記カーボン粒子は球状フラーレンであることを特徴とする付記1または2記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記4) 前記カーボン粒子はキャリアガスと共に供給され、該キャリアガスが、N、He、Ne、Ar、Kr、及びXe群のうち少なくとも1種よりなることを特徴とする付記1〜3のうち一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記5) 前記キャリアガスはさらに炭化水素ガスを含むことを特徴とする付記4項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記6) 前記プラズマは、真空チャンバ内に放電ガスを導入し、前記真空チャンバ内に設けられたカソードと、該カソードと略同軸上に、放電ガスを導入する放電ガス導入流路を介して設けられたアノードとの間に直流電圧を印加してアーク放電を生じさせることにより形成することを特徴とする付記1〜5のうち一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記7) 前記放電ガス導入流路は、前記アノードから基体に向かってテーパ状に広がった噴射口を有することを特徴とする付記6記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記8) 前記放電ガス導入流路は、前記アノードにおいて基体に向かって絞り込まれる先細部を有することを特徴とする付記6または7記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記9) 前記カーボン粒子はカーボン粒子供給流路を通じて、前記先細部と噴射口との間に供給されることを特徴とする付記8記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記10) 前記アノード及びカソードはグラファイトよりなることを特徴とする付記6〜9のうち一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記11) 前記放電ガスは旋回流を形成して前記プラズマ中に供給されることを特徴とする付記1〜10のうち、いずれか一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記12) 前記カーボン粒子を含むキャリアガスは、前記カーボン粒子供給流路から放電ガスの旋回流の流れ方向に沿ってプラズマ中に供給されることを特徴とする付記1〜11のうち、いずれか一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記13) 前記放射されるプラズマを電場または磁場により偏向させてカーボンイオンを選別することを特徴とする付記1〜12のうち一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記14) 前記プラズマは誘導結合プラズマであることを特徴とする付記1〜5及び13のうち一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
(付記15) カーボンイオンを含むプラズマを放射してカーボン保護膜を基体上に堆積させるカーボン保護膜であって、
当該カーボン保護膜の光学ギャップが3.6eV〜3.7eVの範囲であることを特徴とするカーボン保護膜。
(付記16) 基板と、 前記基板の上方に、付記1〜14のうち、いずれか一項記載の形成方法により形成されたカーボン保護膜、または付記15記載のカーボン保護膜を備えることを特徴とする磁気記録媒体。
(付記17) 磁気記録媒体に接触し、または磁気記録媒体上を浮上して記録または再生を行い、
スライダと、前記スライダの磁気記録媒体に対向する側に形成されたカーボン保護膜とを含む磁気ヘッドにおいて、
前記カーボン保護膜が付記1〜14のうち、いずれか一項記載の形成方法により形成されたカーボン保護膜、または付記15記載のカーボン保護膜であることを特徴とする磁気ヘッド。
(付記18) 付記16記載の磁気記録媒体、及び/又は付記17記載の磁気ヘッドを備えた磁気記憶装置。
(付記19) カーボンイオンを含むプラズマを基体に放射して、該基体上にカーボン保護膜を形成するカーボン保護膜形成装置であって、
外壁により画成され、基体を保持する保持台を備えた真空容器と、
前記真空容器上に、前記保持台上の基体に対面するように設けられたプラズマ発生部と、
前記プラズマ発生部に放電ガスを供給する放電ガス供給部とよりなり、
前記プラズマ発生部は、カソードと、前記カソードと同軸上に、前記放電ガス供給部に接続された放電ガス流路なる間隙を介して該カソードを囲むように設けられ、その同軸上にアノード開口部を有するアノードと、前記アノードに隣接し、前記真空容器内に放電ガスと共にプラズマを放射するノズル開口部が形成されたノズルと、前記アノードとノズルとの間に設けられたカーボン粒子供給流路よりなり、
前記放電ガス流路とアノード開口部とノズル開口部とが連通し、
前記カソードとアノードとの間にアーク放電用電源が接続され、
前記アノード開口部においてカソードとアノードとの間にアーク放電によりプラズマ領域が形成され、
前記カーボン粒子供給流路から前記プラズマ領域中にカーボン粒子が供給されることを特徴とするカーボン保護膜形成装置。
(付記20) 前記カソードと前記ノズルとの間にさらに他のアーク放電用電源が接続され、
前記カソードとノズルとの間のアーク放電により前記プラズマ領域と連続した他のプラズマ領域が形成され、
前記他のプラズマ領域中にカーボン粒子が供給されることを特徴とするカーボン保護膜形成装置。
(付記21) 前記プラズマ発生部と前記保持台との間に、前記放射されたプラズマを電場または磁場により偏向させる偏向器を設けたことを特徴とする付記19または20記載のカーボン保護膜形成装置。
【0120】
【発明の効果】
以上詳述したところから明らかなように、本発明によれば、平滑性及び膜質が良好で高硬度であり薄膜化が可能な硬質カーボン保護膜及びその形成方法、並びにその硬質カーボン保護膜を備えた磁気記録媒体、磁気ヘッド、及び磁気記憶装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。
【図3】図2に示すプラズマトーチの要部を拡大して示す図である。
【図4】図3に示すX−X断面図である。
【図5】図3に示すY−Y断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。
【図7】図6に示すプラズマトーチの要部を拡大して示す図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。
【図9】(A)は図8に示す電場偏向型フィルタ部の要部を拡大して示す図、(B)は(A)のX−X断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態に係るアーク放電プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態に係る誘導結合型プラズマジェット成膜装置の概略断面図である。
【図12】第1〜第8実施例及び第1比較例に係るカーボン保護膜の光学ギャップと硬度を示す図である。
【図13】カーボン保護膜の光学ギャップと供給したカーボン粒子の最大粒径との関係を示す図である。
【図14】本発明の第6の実施の形態に係る磁気記録媒体の断面図である。
【図15】本発明の第7の実施の形態に係る磁気ヘッドが磁気記録媒体上を浮上する様子を示す図である。
【図16】図15に示す磁気ヘッドの磁気記録媒体に対向する側からみた斜視図である。
【図17】複合型磁気ヘッド素子の媒体対向面の構造を示す拡大図である。
【図18】本発明の第8の実施の形態の磁気記憶装置の要部を示す図である。
【符号の説明】
10、50、60、70 アーク放電プラズマジェット成膜装置
11、51、81 プラズマトーチ
12 真空チャンバ
13 基板
14 基板保持台
15 粉体供給器
22 カソード
23 放電ガス流路
26 アノード
27 第1電源
28、52 ノズル
28A 噴出口
29、29A、29B 絶縁リング
30 カーボン粒子供給流路
30A カーボン粒子供給流路の開口部
36 カーボン粒子
38 流量調整器
42、54A、54B アーク柱
43 整流板
45 カーボン粒子供給用ノズル
53 第2電源
61 電場偏向型フィルタ部
71 磁場偏向型フィルタ部
80 誘導結合型プラズマジェット成膜装置
90 磁気記録媒体
98、106、107 カーボン保護膜
100 磁気ヘッド
102 複合型磁気ヘッド素子
120 磁気記憶装置

Claims (10)

  1. カーボンイオンを含むプラズマを放射してカーボン保護膜を基体上に堆積させるカーボン保護膜の形成方法であって、
    プラズマを形成し、該プラズマ中にカーボン粒子を供給してカーボンイオンに変換し、該カーボンイオンを含むプラズマを前記基体に放射することを特徴とするカーボン保護膜の形成方法。
  2. 前記カーボン粒子は球状フラーレンであることを特徴とする請求項1記載のカーボン保護膜の形成方法。
  3. 前記プラズマは、真空チャンバ内に放電ガスを導入し、前記真空チャンバ内に設けられたカソードと、該カソードと略同軸上に、放電ガスを導入する放電ガス導入流路を介して設けられたアノードとの間に直流電圧を印加してアーク放電を生じさせることにより形成することを特徴とする請求項1または2記載のカーボン保護膜の形成方法。
  4. 前記放電ガス導入流路は、前記アノードにおいて基体に向かって絞り込まれる先細部を有することを特徴とする請求項3記載のカーボン保護膜の形成方法。
  5. 前記放射されるプラズマを電場または磁場により偏向させてカーボンイオンを選別することを特徴とする請求項1〜4のうち、一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
  6. 前記プラズマは誘導結合プラズマであることを特徴とする請求項1、2及び5のうち、一項記載のカーボン保護膜の形成方法。
  7. カーボンイオンを含むプラズマを放射してカーボン保護膜を基体上に堆積させるカーボン保護膜であって、
    当該カーボン保護膜の光学ギャップが3.6eV〜3.7eVであることを特徴とするカーボン保護膜。
  8. 基板と、前記基板の上方に、請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の形成方法により形成されたカーボン保護膜、または請求項7記載のカーボン保護膜とを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
  9. 磁気記録媒体に接触し、または磁気記録媒体上を浮上して記録または再生を行い、
    スライダと、前記スライダの磁気記録媒体に対向する側に形成されたカーボン保護膜とを含む磁気ヘッドにおいて、
    前記カーボン保護膜が請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の形成方法により形成されたカーボン保護膜、または請求項7記載のカーボン保護膜であることを特徴とする磁気ヘッド。
  10. 請求項8記載の磁気記録媒体、及び/又は請求項9記載の磁気ヘッドを備えた磁気記憶装置。
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