JP2004291108A - ボールエンドミル - Google Patents
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Abstract
【課題】金型加工等の切削加工に用いるボールエンドミルにおいて、先端部の欠損が少なく、かつ、耐摩耗性に優れるとともに、小径のものとすることが可能なボールエンドミルを製作コスト上有利に提供する。
【解決手段】軸線回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条設けられてなるボールエンドミル1であって、前記底刃3が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップ5と該先端チップをろう付けする基台部分6とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼で、前記基台がサーメット又はセラミックスでできており、欠損が起こりやすい軸線近傍を靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼で、摩耗しやすい外周部分をサーメット又はセラミックスで構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】軸線回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条設けられてなるボールエンドミル1であって、前記底刃3が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップ5と該先端チップをろう付けする基台部分6とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼で、前記基台がサーメット又はセラミックスでできており、欠損が起こりやすい軸線近傍を靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼で、摩耗しやすい外周部分をサーメット又はセラミックスで構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型加工等の切削加工に用いるボールエンドミルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、三次元加工によって被削材に曲面を形成する工具として、図7に示すように、工具本体の先端部に、軸線の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃E1を含む螺旋状の切刃部Eが複数条設けられたボールエンドミルが知られている。そして、この工具全体を上記軸線回りに回転させつつ、被削材に対して切り込みと送りを与えることにより、三次元曲面が形成されていく。
【0003】
一般に、切削加工において最適とされる工具材料の選択は、切削速度の違いにより大きな影響を受ける。しかし、上述のようなエンドミルにおいては、工具先端に向かうに従い回転半径が減少して切削速度が小さくなる一方、外周部は回転半径が大きいため切削速度が相対的に大きくなるというように、切刃位置によって切削速度が大きく異なるため、最適な材料を一義的に定めるのが困難である。すなわち、切削速度を切刃外周部に適切となるように設定すると、切刃中心部では回転速度が不足して切削抵抗が大きくなり、その結果としてチッピングや欠損が生じやすくなる。一方、回転速度を上げて切削抵抗を減少させれば切刃中心部の欠損は防止できるが、切刃外周部は切削速度が適正速度を超えてしまうため摩耗が著しく増大することとなる。
【0004】
上記問題点のうち特に切刃中心部の損傷を改善するための手段として、切刃中心に略V字状の底刃を設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。このような構成にすれば、切削速度がゼロ近傍となる切刃がなくなるので、切刃中心部における欠損の発生を防ぐことができる。しかし、このような工具では、先端の球面刃とVノッチとの間にシャープな角部が形成されるため、加工面に切削痕が生じるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するための手段として、図8に示すように、切刃中心に硬質チップCを埋め込む構成が提案されている(特許文献2参照)。このような構成にすれば、加工面に切削痕が生じず、また切刃中心部の耐摩耗性が他の切刃部より高くなることにより切刃全体が同レベルで摩耗するとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−267211号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平9−262714号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示すのような構成とした場合、切刃中心部の耐摩耗性は高まるものの靭性が低下するため、より欠損しやすいことになってしまう。また、ボールエンドミルの先端に硬質チップを埋め込むための穴をあけることが必要なため、実際上、加工径が比較的大きな工具にしか用いることができないという難点がある。さらに、穴をあける工程に加え、穴に埋め込む硬質チップを別途製作しなければならず、通常のエンドミルに比べ製作コストが著しく高くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、金型加工等の切削加工に用いるボールエンドミルにおいて、先端部の欠損が少なく、かつ、耐摩耗性に優れるとともに、小径のものとすることが可能なボールエンドミルを製作コスト上有利に提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1のボールエンドミルは、軸線の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条設けられてなるボールエンドミルであって、前記底刃が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップと該先端チップをろう付けする基台部分とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼からなるとともに、前記基台がサーメット又はセラミックスからなることを特徴としている。
【0011】
ここで、超硬合金とは炭化タングステンを主体とした焼結体のことであり(1998年 JIS B 4053)、高速度工具鋼とはタングステン、モリブデン等の金属を一定量含む鋼のことである(2000年 JIS G 0203)。また、サーメットとはチタン、タンタルの炭化物、窒化物及び炭窒化物を主体とした焼結体のことであり(1998年 JIS B 4053)、セラミックスとは酸化アルミニウム、窒化珪素を主体とした焼結体のことである(1998年 JIS B 4053)。
【0012】
かかる構成によれば、底刃における軸線の近傍が超硬合金又は高速度工具鋼で形成され、外周部分がサーメット又はセラミックスで形成されている。前述したように、一般に軸線の近傍は回転速度が遅く切削抵抗が大きいので、摩耗は小さいが欠損が起こりやすい傾向にある。本発明では、この部分を靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼で構成したことから、欠損が起こりにくい。これに対し、外周部分は回転速度が速いので低抵抗ではあるが、摩耗しやすい傾向にある。本発明は、この部分を高硬度材料であるサーメット又はセラミックスとしたことから、摩耗が低減される。また、本発明においては、このような底刃が設けられている先端底刃部の構成を、前記軸線の近傍を切削する先端チップを基台部分にろう付けすることで実現しているため、小径のボールエンドミルとすることが可能であり、また、製作が簡便でコスト的に有利である。
【0013】
請求項2のボールエンドミルは、前記複数条に設けられた底刃と前記基台部分との境界の少なくとも1つの回転軌跡が、残りの境界の回転軌跡と重ならないことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、各底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界の回転軌跡が前記先端チップと前記基台部分との境界以外の他の切刃の回転軌跡でカバーされるので、底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界に生じる微小段差によって被削材の仕上げ面が傷つくのを防ぐことができる。
【0015】
また、請求項3のボールエンドミルは、前記境界の部分に、凹溝を形成したことを特徴としている。
【0016】
かかる構成によれば、前記境界部分の損傷を抑制でき、より長寿命のボールエンドミルとすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0018】
図1乃至図6は本発明の実施形態を示すものであり、図1は本発明の実施形態によるボールエンドミルの側面図、図2は図1のボールエンドミルの先端面図、図3は図1のボールエンドミルの切刃形成前の状態を示す斜視図、図4、図5は本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの先端部側面図、図6は本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの側面図である。
【0019】
図1、図2において、本実施形態におけるボールエンドミル1は、軸線2の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃3が複数条設けられてなるボールエンドミル1であって、前記底刃3が設けられている先端底刃部4は、前記軸線2の近傍を切削する先端チップ5と該先端チップ5をろう付けする基台部分6からできている。このようなボールエンドミル1は、図3に示すように先端チップとなる材料5を基台部分となる材料6にあらかじめろう付けしておき、その後の加工により切刃をどのようにも形成することができるので、小径のボールエンドミルとすることが可能であり、また容易に製作できる。
【0020】
また、図1、図2において、先端底刃部4の先端チップ5が靭性の高い炭化タングステンを主体とする超硬合金又はタングステン、モリブデン等を一定量含む高速度工具鋼でできており、基台部分6が高硬度材料であるチタン、タンタルの炭化物、窒化物及び炭窒化物を主体とするサーメット又は酸化アルミニウム、窒化珪素を主体とするセラミックスでできている。ここで、底刃3は切刃先端7に向かうに従い回転半径が減少するので、回転速度が遅くなり、切削抵抗が増大する。そして一般に、摩耗は小さいが欠損が起こりやすくなる。しかし、本発明では上記のように、先端チップ5の部分に靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼を用いたので、欠損が起こりにくいものとなっている。また、先端底刃部4の外周部分は回転半径が大きく、回転速度が速いので、一般に、低抵抗ではあるが摩耗しやすいという傾向をもつ。これに対し、本発明では上記のように、外周刃を形成する基台部分6に高硬度材料であるサーメット又はセラミックスを用いたので、摩耗しにくいものとなっている。
【0021】
また、図4には他の実施形態として、先端チップ5と基台部分6との接合面が、軸線2に垂直な平面8に対して傾斜したボールエンドミルの先端部を示している。図において、工具本体の先端部に切刃Aと切刃Bが備えられており、傾斜角αの接合面を介して先端チップ5と基台部分6とがろう付けされている。ここで、X’は切刃Aにおける先端チップ5と基台部分6との境界であり、X”は切刃Bにおける基台部分6であって、共に回転軌跡が重なる位置を示している。言い換えると、切刃Bにおける境界先端チップ5と基台部分6との境界Xの回転軌跡が、他の底刃Aの境界X’の回転軌跡と重ならず、前記境界X’以外の前記他の底刃Aでカバーされることになる。また、切刃をさらに増やした場合においても同様のことがいえるので、先端チップ5と基台部分6との境界9の回転軌跡は、少なくとも他の1つの底刃における境界9以外の部分の回転軌跡と重なる。このように、先端チップ5と基台部分6との境界の回転軌跡は、全て前記境界以外の他の底刃の回転軌跡でカバーされるので、底刃3における先端チップ5と基台部分6との境界に生じる微小段差によって被削材の仕上げ面が傷つくのを防ぐことができる。
【0022】
また、図5には他の実施形態として、各底刃3における先端チップ5と基台部分6との境界部分に、凹溝10を形成したボールエンドミルの先端部を示している。このようにすれば、境界部が切刃として用いられることがなくなるので、境界部の損傷が抑制でき、より長寿命のボールエンドミルとすることができる。
【0023】
さらに、以上述べたような実施形態は、軸線の中心から外周にわたり切刃を有するボールエンドミル全般に対して適用できるので、ここに例示した切刃と工具本体とが一体化したソリッドタイプのボールエンドミル1だけでなく、図6に示すような、切刃を形成するスローアウェイチップ11が工具本体の先端部で着脱交換されるスローアウェイタイプのボールエンドミル12においても同様に実施することが可能である。
【0024】
図6において、スローアウェイチップ11の斜線で示す先端部分が先端チップ5であって、基台部分6としての、スローアウェイチップ11の他の部分に、この先端チップ5がろう付けされている。
【0025】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態とすることができることは云うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上記述した通り、本発明のボールエンドミルによれば、軸線回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条設けられてなるボールエンドミルであって、前記底刃が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップと該先端チップをろう付けする基台部分とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼で、前記基台がサーメット又はセラミックスでできており、欠損が起こりやすい軸線近傍を靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼で、摩耗しやすい外周部分をサーメット又はセラミックスで構成したことから、先端部の欠損が少なく、かつ耐摩耗性に優れるボールエンドミルとすることができる。また、このような底刃が設けられている先端底刃部の構成を、前記軸線の近傍を切削する先端チップを基台部分にろう付けすることで実現しているため、小径のボールエンドミルとすることが可能であり、製作コスト上有利に提供できる。
【0027】
また、前記複数条に設けられた底刃と前記基台部分との境界の少なくとも1つの回転軌跡が、残りの境界の回転軌跡と重ならないようにした場合、前記各底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界の回転軌跡が、前記境界以外の他の切刃の回転軌跡でカバーされるので、底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界に生じる微小段差によって被削材の仕上げ面が傷つくのを防ぐことができる。
【0028】
また、前記先端チップと前記基台部分との接合面を、前記軸線に直交する平面に対して傾斜させた場合、前記各底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界の回転軌跡と、少なくとも他の1つの前記底刃における前記境界以外の部分の回転軌跡が重なる構成を容易に得ることができる。
【0029】
また、前記境界の部分に、凹溝を形成した場合、前記境界部分の損傷を抑制でき、より長寿命のボールエンドミルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるボールエンドミルの側面図である。
【図2】図1のボールエンドミルの先端面図である。
【図3】図1のボールエンドミルの切刃形成前の状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの先端部側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの先端部側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの側面図である。
【図7】従来のボールエンドミルの側面図である。
【図8】図7のボールエンドミルの先端部側面図である。
【符号の説明】
1:ボールエンドミル(ソリッドタイプ)
2:軸線
3:底刃
4:先端底刃部
5:先端チップ
6:基台部分
7:切刃先端
8:軸線に垂直な平面
9:境界(先端チップと基台部分との境界)
10:凹溝
11: スローアウェイチップ
12: ボールエンドミル(スローアウェイタイプ)
A、B:切刃
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型加工等の切削加工に用いるボールエンドミルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、三次元加工によって被削材に曲面を形成する工具として、図7に示すように、工具本体の先端部に、軸線の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃E1を含む螺旋状の切刃部Eが複数条設けられたボールエンドミルが知られている。そして、この工具全体を上記軸線回りに回転させつつ、被削材に対して切り込みと送りを与えることにより、三次元曲面が形成されていく。
【0003】
一般に、切削加工において最適とされる工具材料の選択は、切削速度の違いにより大きな影響を受ける。しかし、上述のようなエンドミルにおいては、工具先端に向かうに従い回転半径が減少して切削速度が小さくなる一方、外周部は回転半径が大きいため切削速度が相対的に大きくなるというように、切刃位置によって切削速度が大きく異なるため、最適な材料を一義的に定めるのが困難である。すなわち、切削速度を切刃外周部に適切となるように設定すると、切刃中心部では回転速度が不足して切削抵抗が大きくなり、その結果としてチッピングや欠損が生じやすくなる。一方、回転速度を上げて切削抵抗を減少させれば切刃中心部の欠損は防止できるが、切刃外周部は切削速度が適正速度を超えてしまうため摩耗が著しく増大することとなる。
【0004】
上記問題点のうち特に切刃中心部の損傷を改善するための手段として、切刃中心に略V字状の底刃を設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。このような構成にすれば、切削速度がゼロ近傍となる切刃がなくなるので、切刃中心部における欠損の発生を防ぐことができる。しかし、このような工具では、先端の球面刃とVノッチとの間にシャープな角部が形成されるため、加工面に切削痕が生じるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するための手段として、図8に示すように、切刃中心に硬質チップCを埋め込む構成が提案されている(特許文献2参照)。このような構成にすれば、加工面に切削痕が生じず、また切刃中心部の耐摩耗性が他の切刃部より高くなることにより切刃全体が同レベルで摩耗するとされている。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−267211号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平9−262714号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図8に示すのような構成とした場合、切刃中心部の耐摩耗性は高まるものの靭性が低下するため、より欠損しやすいことになってしまう。また、ボールエンドミルの先端に硬質チップを埋め込むための穴をあけることが必要なため、実際上、加工径が比較的大きな工具にしか用いることができないという難点がある。さらに、穴をあける工程に加え、穴に埋め込む硬質チップを別途製作しなければならず、通常のエンドミルに比べ製作コストが著しく高くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、金型加工等の切削加工に用いるボールエンドミルにおいて、先端部の欠損が少なく、かつ、耐摩耗性に優れるとともに、小径のものとすることが可能なボールエンドミルを製作コスト上有利に提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1のボールエンドミルは、軸線の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条設けられてなるボールエンドミルであって、前記底刃が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップと該先端チップをろう付けする基台部分とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼からなるとともに、前記基台がサーメット又はセラミックスからなることを特徴としている。
【0011】
ここで、超硬合金とは炭化タングステンを主体とした焼結体のことであり(1998年 JIS B 4053)、高速度工具鋼とはタングステン、モリブデン等の金属を一定量含む鋼のことである(2000年 JIS G 0203)。また、サーメットとはチタン、タンタルの炭化物、窒化物及び炭窒化物を主体とした焼結体のことであり(1998年 JIS B 4053)、セラミックスとは酸化アルミニウム、窒化珪素を主体とした焼結体のことである(1998年 JIS B 4053)。
【0012】
かかる構成によれば、底刃における軸線の近傍が超硬合金又は高速度工具鋼で形成され、外周部分がサーメット又はセラミックスで形成されている。前述したように、一般に軸線の近傍は回転速度が遅く切削抵抗が大きいので、摩耗は小さいが欠損が起こりやすい傾向にある。本発明では、この部分を靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼で構成したことから、欠損が起こりにくい。これに対し、外周部分は回転速度が速いので低抵抗ではあるが、摩耗しやすい傾向にある。本発明は、この部分を高硬度材料であるサーメット又はセラミックスとしたことから、摩耗が低減される。また、本発明においては、このような底刃が設けられている先端底刃部の構成を、前記軸線の近傍を切削する先端チップを基台部分にろう付けすることで実現しているため、小径のボールエンドミルとすることが可能であり、また、製作が簡便でコスト的に有利である。
【0013】
請求項2のボールエンドミルは、前記複数条に設けられた底刃と前記基台部分との境界の少なくとも1つの回転軌跡が、残りの境界の回転軌跡と重ならないことを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、各底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界の回転軌跡が前記先端チップと前記基台部分との境界以外の他の切刃の回転軌跡でカバーされるので、底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界に生じる微小段差によって被削材の仕上げ面が傷つくのを防ぐことができる。
【0015】
また、請求項3のボールエンドミルは、前記境界の部分に、凹溝を形成したことを特徴としている。
【0016】
かかる構成によれば、前記境界部分の損傷を抑制でき、より長寿命のボールエンドミルとすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面により説明する。
【0018】
図1乃至図6は本発明の実施形態を示すものであり、図1は本発明の実施形態によるボールエンドミルの側面図、図2は図1のボールエンドミルの先端面図、図3は図1のボールエンドミルの切刃形成前の状態を示す斜視図、図4、図5は本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの先端部側面図、図6は本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの側面図である。
【0019】
図1、図2において、本実施形態におけるボールエンドミル1は、軸線2の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃3が複数条設けられてなるボールエンドミル1であって、前記底刃3が設けられている先端底刃部4は、前記軸線2の近傍を切削する先端チップ5と該先端チップ5をろう付けする基台部分6からできている。このようなボールエンドミル1は、図3に示すように先端チップとなる材料5を基台部分となる材料6にあらかじめろう付けしておき、その後の加工により切刃をどのようにも形成することができるので、小径のボールエンドミルとすることが可能であり、また容易に製作できる。
【0020】
また、図1、図2において、先端底刃部4の先端チップ5が靭性の高い炭化タングステンを主体とする超硬合金又はタングステン、モリブデン等を一定量含む高速度工具鋼でできており、基台部分6が高硬度材料であるチタン、タンタルの炭化物、窒化物及び炭窒化物を主体とするサーメット又は酸化アルミニウム、窒化珪素を主体とするセラミックスでできている。ここで、底刃3は切刃先端7に向かうに従い回転半径が減少するので、回転速度が遅くなり、切削抵抗が増大する。そして一般に、摩耗は小さいが欠損が起こりやすくなる。しかし、本発明では上記のように、先端チップ5の部分に靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼を用いたので、欠損が起こりにくいものとなっている。また、先端底刃部4の外周部分は回転半径が大きく、回転速度が速いので、一般に、低抵抗ではあるが摩耗しやすいという傾向をもつ。これに対し、本発明では上記のように、外周刃を形成する基台部分6に高硬度材料であるサーメット又はセラミックスを用いたので、摩耗しにくいものとなっている。
【0021】
また、図4には他の実施形態として、先端チップ5と基台部分6との接合面が、軸線2に垂直な平面8に対して傾斜したボールエンドミルの先端部を示している。図において、工具本体の先端部に切刃Aと切刃Bが備えられており、傾斜角αの接合面を介して先端チップ5と基台部分6とがろう付けされている。ここで、X’は切刃Aにおける先端チップ5と基台部分6との境界であり、X”は切刃Bにおける基台部分6であって、共に回転軌跡が重なる位置を示している。言い換えると、切刃Bにおける境界先端チップ5と基台部分6との境界Xの回転軌跡が、他の底刃Aの境界X’の回転軌跡と重ならず、前記境界X’以外の前記他の底刃Aでカバーされることになる。また、切刃をさらに増やした場合においても同様のことがいえるので、先端チップ5と基台部分6との境界9の回転軌跡は、少なくとも他の1つの底刃における境界9以外の部分の回転軌跡と重なる。このように、先端チップ5と基台部分6との境界の回転軌跡は、全て前記境界以外の他の底刃の回転軌跡でカバーされるので、底刃3における先端チップ5と基台部分6との境界に生じる微小段差によって被削材の仕上げ面が傷つくのを防ぐことができる。
【0022】
また、図5には他の実施形態として、各底刃3における先端チップ5と基台部分6との境界部分に、凹溝10を形成したボールエンドミルの先端部を示している。このようにすれば、境界部が切刃として用いられることがなくなるので、境界部の損傷が抑制でき、より長寿命のボールエンドミルとすることができる。
【0023】
さらに、以上述べたような実施形態は、軸線の中心から外周にわたり切刃を有するボールエンドミル全般に対して適用できるので、ここに例示した切刃と工具本体とが一体化したソリッドタイプのボールエンドミル1だけでなく、図6に示すような、切刃を形成するスローアウェイチップ11が工具本体の先端部で着脱交換されるスローアウェイタイプのボールエンドミル12においても同様に実施することが可能である。
【0024】
図6において、スローアウェイチップ11の斜線で示す先端部分が先端チップ5であって、基台部分6としての、スローアウェイチップ11の他の部分に、この先端チップ5がろう付けされている。
【0025】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものでなく、発明の目的を逸脱しない限り、任意の形態とすることができることは云うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上記述した通り、本発明のボールエンドミルによれば、軸線回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条設けられてなるボールエンドミルであって、前記底刃が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップと該先端チップをろう付けする基台部分とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼で、前記基台がサーメット又はセラミックスでできており、欠損が起こりやすい軸線近傍を靭性の高い超硬合金又は高速度工具鋼で、摩耗しやすい外周部分をサーメット又はセラミックスで構成したことから、先端部の欠損が少なく、かつ耐摩耗性に優れるボールエンドミルとすることができる。また、このような底刃が設けられている先端底刃部の構成を、前記軸線の近傍を切削する先端チップを基台部分にろう付けすることで実現しているため、小径のボールエンドミルとすることが可能であり、製作コスト上有利に提供できる。
【0027】
また、前記複数条に設けられた底刃と前記基台部分との境界の少なくとも1つの回転軌跡が、残りの境界の回転軌跡と重ならないようにした場合、前記各底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界の回転軌跡が、前記境界以外の他の切刃の回転軌跡でカバーされるので、底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界に生じる微小段差によって被削材の仕上げ面が傷つくのを防ぐことができる。
【0028】
また、前記先端チップと前記基台部分との接合面を、前記軸線に直交する平面に対して傾斜させた場合、前記各底刃における前記先端チップと前記基台部分との境界の回転軌跡と、少なくとも他の1つの前記底刃における前記境界以外の部分の回転軌跡が重なる構成を容易に得ることができる。
【0029】
また、前記境界の部分に、凹溝を形成した場合、前記境界部分の損傷を抑制でき、より長寿命のボールエンドミルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態によるボールエンドミルの側面図である。
【図2】図1のボールエンドミルの先端面図である。
【図3】図1のボールエンドミルの切刃形成前の状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの先端部側面図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの先端部側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるボールエンドミルの側面図である。
【図7】従来のボールエンドミルの側面図である。
【図8】図7のボールエンドミルの先端部側面図である。
【符号の説明】
1:ボールエンドミル(ソリッドタイプ)
2:軸線
3:底刃
4:先端底刃部
5:先端チップ
6:基台部分
7:切刃先端
8:軸線に垂直な平面
9:境界(先端チップと基台部分との境界)
10:凹溝
11: スローアウェイチップ
12: ボールエンドミル(スローアウェイタイプ)
A、B:切刃
Claims (3)
- 軸線の回りに半球状の回転軌跡をなす底刃が複数条に設けられてなるボールエンドミルであって、前記底刃が設けられている先端底刃部は、前記軸線の近傍を切削する先端チップと該先端チップをろう付けする基台部分とからなり、前記先端チップが超硬合金又は高速度工具鋼からなるとともに、前記基台部分がサーメット又はセラミックスからなることを特徴とするボールエンドミル。
- 前記複数条に設けられた底刃と前記基台部分との境界の少なくとも1つの回転軌跡が、残りの境界の回転軌跡と重ならないことを特徴とする請求項1記載のボールエンドミル。
- 前記境界の部分に、凹溝を形成したことを特徴とする請求項2記載のボールエンドミル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003084282A JP2004291108A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | ボールエンドミル |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003084282A JP2004291108A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | ボールエンドミル |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004291108A true JP2004291108A (ja) | 2004-10-21 |
Family
ID=33399484
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003084282A Pending JP2004291108A (ja) | 2003-03-26 | 2003-03-26 | ボールエンドミル |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004291108A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008049409A (ja) * | 2006-08-22 | 2008-03-06 | Sumitomo Electric Hardmetal Corp | ボールエンドミルおよびその製造方法 |
JP2009274173A (ja) * | 2008-05-14 | 2009-11-26 | Toshiba Corp | 総型回転切削工具および溝切削加工装置並びに溝切削加工方法 |
-
2003
- 2003-03-26 JP JP2003084282A patent/JP2004291108A/ja active Pending
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JP2009274173A (ja) * | 2008-05-14 | 2009-11-26 | Toshiba Corp | 総型回転切削工具および溝切削加工装置並びに溝切削加工方法 |
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