JP2004286585A - 質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高感度化、小型化およびマルチセンサ化に対応することが可能な、質量測定チップを提供する。
【解決手段】逆メサ型圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、その検体溶液に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップ2であって、逆メサ型圧電振動片20における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材10に接合して、逆メサ型圧電振動片20における電極相互の短絡を防止した。
【選択図】 図1
【解決手段】逆メサ型圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、その検体溶液に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップ2であって、逆メサ型圧電振動片20における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材10に接合して、逆メサ型圧電振動片20における電極相互の短絡を防止した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置に係り、特に圧電振動片を用いて検体溶液における特定物質の濃度等を測定する質量測定チップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や生化学、環境などの分野で、特定物質の有無や濃度等を測定するため、水晶振動子マイクロバランス法が利用されている。その具体的な方法は、まず圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に、特定物質の感応膜を塗布する。感応膜を塗布した圧電振動子を溶液に浸漬した後、溶液中で周波数が安定するまで暫く時間をおく。その後、溶液に吸着或いは脱着、沈殿或いは分解の反応を起させる物質、または検出される物質を加え、振動子上の感応膜と特定物質とを反応させてその質量変化を検出する。
【0003】
たとえば、加えられた検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し、励振電極の質量が増加する。この励振電極の質量増加にともなって、圧電振動片の共振周波数が低下する。これにより、検体溶液中の特定物質の有無を判断することができる。なお、検体溶液中の特定物質の濃度が高いほど、共振周波数の低下速度は速くなる。そこで、圧電振動片の共振周波数の低下速度を把握することにより、検体溶液中の特定物質の濃度を測定することができる。
【0004】
ところで、圧電振動片を検体溶液中に浸漬する際に、その両面に形成した励振電極が相互に短絡すると、圧電振動片を発振させることができなくなる。そこで、感応膜を塗布しない他方面側の励振電極を被覆部材等で覆うことにより、当該励振電極を検体溶液から封止して、電極間の短絡を防止する必要がある。
【0005】
図10に、特許文献1に記載された質量測定チップの説明図を示す。なお、図10(1)は平面図であり、図10(2)は図10(1)のG−G線における側面断面図である。この質量測定チップ803は、矩形状の圧電平板の両面に円形状の励振電極822a,822bを形成した圧電振動片820を備えている。また、圧電振動片820の一方面側には、絶縁性薄板からなる被覆部材850が接着剤858によって接着されている。これにより、一方面側の励振電極822bが検体溶液から封止され、電極間の短絡が防止されている。さらに、各励振電極にはリード線824が取り付けられ、リード線824の検体溶液に浸漬する部分は接着剤858によって被覆されている。
【0006】
図11に、従来の質量測定装置の説明図を示す。質量測定装置801において、上述した質量測定チップ803は外部の発振回路840に接続されている。質量の測定は、励振電極822aの表面に上述した感応膜(不図示)を塗布した上で、質量測定チップ803を検体溶液7中に浸漬して行う。まず、発振回路840により質量測定チップ803の圧電振動片を発振させ、周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を測定する。上述したように、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し励振電極の質量が増加すると、圧電振動片の共振周波数が低下する。そこで、コンピュータ6によりこの共振周波数の低下量等を解析して、検体溶液中の特定物質の有無および濃度等を算出する。
【0007】
【特許文献1】特開平6−138125号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
検体溶液に含まれる特定物質が微量であっても、その測定を可能とするため、質量測定チップには高感度化が要求されている。質量測定チップを高感度化するには、圧電振動片を高周波化する必要がある。そして圧電振動片を高周波化するには、振動部の肉厚を薄くする必要がある。しかし、図10に示す従来の質量測定チップ803において、肉厚の薄い圧電振動片820を実装すると、接着時の加圧や接着剤858の固化により圧電振動片820に応力が作用し、圧電振動片820が破損する場合がある。以上の理由から、質量測定チップの高感度化に対応できないという問題がある。
【0009】
また、測定費用を安価にするために、非常に微量な検体溶液で測定できる装置が求められており、質量測定チップには小型化が要求されている。質量測定チップを小型化するには、圧電振動片を小型化する必要がある。しかし圧電振動片を小型化すると、製造工程における取り扱いが困難になるという問題がある。
【0010】
また、同時に多種類の特定物質の測定を可能とするため、質量測定チップにはマルチセンサ化が要求されている。質量測定チップをマルチセンサ化するには、多数の圧電振動片を低コストで製造する必要がある。しかし、図10に示す質量測定チップ803では、圧電振動片820の個片と被覆部材850の個片とを接合して質量測定チップ803を製造するため、多数の圧電振動片を備えた質量測定チップを低コストで製造することができない。その結果、質量測定チップのマルチセンサ化に対応できないという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点に着目し、高感度化、小型化およびマルチセンサ化に対応することが可能な、質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置の製造方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る質量測定チップは、逆メサ型圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップであって、前記逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材に接合して、前記逆メサ型圧電振動片における電極相互の短絡を防止した構成とした。
【0013】
逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部を基板部材に接合するので、実装時の加圧や接着剤の固化により、中央の薄肉振動部に大きな応力が作用することはなく、圧電振動片の破損を防止することができる。また、圧電振動片の振動部と基板部材との干渉を回避することができる。さらに、逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部の表面と基板部材の表面とを広範囲にわたって面接触させるので、封止の安定性を向上させることができる。したがって、肉厚の薄い高周波の圧電振動片を使用することが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0014】
また、単純な構造により圧電振動片の電極相互の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0015】
なお、前記基板部材は、樹脂モールドにリードフレームを埋設して形成してもよい。この場合も、単純な構造により圧電振動片の電極相互の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0016】
なお、前記逆メサ型圧電振動片の外周に沿って、前記基板部材の表面から凸部を形成してもよい。この凸部が圧電振動片に作用する外力を受け止めるので、圧電振動片の破損を防止することができる。したがって、肉厚の薄い高周波の圧電振動片を使用することが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0017】
なお、前記逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部は、異方性導電性ゴムを介して基板部材に接合し、前記逆メサ型圧電振動片における一方面側の周縁の厚肉部を押圧する押圧手段を備えてもよい。異方性導電性ゴムは適度な圧力を加えることで、圧力の作用方向に導電性を示すので、逆メサ型圧電振動片および基板部材の電極間を電気的に接続することができる。また、異方性導電性ゴムは封止材として機能するので、圧電振動片における電極相互の短絡を防止することができる。したがって、製造工程が簡略化され、質量測定チップの低コスト化が可能になる。
【0018】
一方、本発明にかかる質量測定チップの製造方法は、逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材に実装した質量測定チップを製造する方法であって、複数の基板部材が連続する基板母材を形成する工程と、前記基板母材に複数の逆メサ型圧電振動片を実装する工程と、前記基板母材を分割して複数の質量測定チップを形成する工程と、を有する構成とした。これにより、圧電振動片を小型化した場合でも、基板母材が製造トレイとして機能するので、製造工程における取り扱いが容易になる。したがって、質量測定チップを小型化することができる。また、複数の質量測定チップを同時に製造することができるので、質量測定チップの低コスト化が可能になる。したがって、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0019】
一方、本発明にかかる質量測定装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の質量測定チップを使用して製造した構成とした。これにより、上記効果をともなった質量測定装置を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
最初に、第1実施形態について説明する。
図1に、第1実施形態に係る質量測定チップの説明図を示す。なお、図1(1)は平面図であり、図1(2)は図1(1)のA−A線における側面断面図である。第1実施形態に係る質量測定チップ2は、逆メサ型圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、その検体溶液に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップ2であって、逆メサ型圧電振動片20における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材10に接合して、逆メサ型圧電振動片20における電極相互の短絡を防止したものである。
【0022】
本実施形態に係る質量測定チップは、従来の質量測定チップを高感度化したものである。質量測定チップの感度は、次式で表すことができる。
【数1】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ρは圧電材料の密度、μは圧電材料のせん断応力、dmは励振電極に結合した検出物質の質量、Aは励振電極の面積である。上式からわかるように、圧電振動片の共振周波数の初期値f0が高いほど、その変化量dfが大きくなり、質量測定チップが高感度化する。例えば、f0を従来の27MHzから150MHzまで高周波化すれば、感度を30倍にすることができる。また、例えば1GHzまでさらに高周波化すれば、より高い感度が得られる。そして圧電振動片を高周波化するには、圧電振動片の振動部における肉厚を薄くすればよい。
【0023】
そこで、圧電振動片20として、いわゆる逆メサ型圧電振動片を使用する。逆メサ型圧電振動片20は、水晶等の圧電材料を平板状に切り出し、その両面中央部に凹部を形成して薄肉化し、その薄肉部の両面に励振電極22a,22bを形成したものである。圧電振動片20の周縁の厚肉部には、励振電極22a,22bと導通する接続電極24a,24bを形成する。なお、圧電振動片20の上面側の接続電極24aは、圧電振動片20の下面にも延長形成する。そして圧電振動片20の下面には、上面側の接続電極24aと下面側の接続電極24bとを並べて配置する。なお、各電極はAu/CrまたはAg/Crの2層によって構成する。このような逆メサ型圧電振動片では、周縁の厚肉部により中央の薄肉振動部が保護されるので、外力による振動部の破壊を防止することができる。これにより、高周波の圧電振動片が利用可能となり、質量測定装置を高感度化することができる。
【0024】
そして、この圧電振動片20における上面の励振電極22aの表面に感応膜を塗布する。感応膜は、検出すべき特定物質の分子のみと結合する物質であり、特定物質に対応して選択する。
【0025】
一方、圧電振動片20を実装する基板部材10を形成する。基板部材10は、セラミック材料やエポキシ材料、シリコン材料等の樹脂材料によって構成する。なお、圧電材料と同等の熱膨張係数を有するガラス材料によって基板部材10を形成すれば、圧電振動片20と基板部材10との熱膨張率および熱収縮率が同等となるので、両者の接合部における破壊を防止することができる。加えて、振動片への応力の影響も最小限に抑えることができる。また、基板部材10の上面には接続電極14を形成し、下面には外部電極16を形成して、スルーホール15により上下の電極相互の導通を確保する。なお、各電極はAu、Cu材料等によって形成する。
【0026】
そして、基板部材10の上面側に圧電振動片20を配置する。さらに、基板部材10の上面に形成した接続電極14と、圧電振動片20の下面に形成した接続電極24a,24bとを、Agペースト等の導電性接着剤18により接着して電気的に接続する。なお導電性接着剤18の代わりに、金属バンプや金属ロウ剤を介して両電極を接続してもよい。また、両電極表面のAu材料を溶着または圧着して両電極を接続してもよい。
【0027】
一方、基板部材10の上面と圧電振動片20の側面との角部に、封止用接着剤19を塗布する。なお封止用接着剤19には、シリコン系接着剤等の、電気絶縁性、耐薬品性、耐水性および弾性を有する接着剤を使用する。また、封止用接着剤19は圧電振動片20の全周にわたって塗布する。これにより、圧電振動片20の下面側の励振電極22bが基板部材10によって密閉封止され、圧電振動片20の上下両面に形成した電極相互の短絡が防止される。
【0028】
図2に、第1実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図を示す。第1変形例に係る質量測定チップ70は、圧電振動片20の外周に沿って、基板部材72の表面から凸部74を形成したものである。この凸部74は、セラミック材料等からなるシートを基板部材72に積層・焼成して形成する。なお、凸部74の高さは、圧電振動片20の上面より高くするのが好ましい。この凸部74が圧電振動片20に作用する外力を受け止めるので、圧電振動片20の破損を防止することができる。
【0029】
図3(1)に、第1実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図を示す。第2変形例に係る質量測定チップ80は、異方性導電性ゴム82を介して圧電振動片20を実装したものである。異方性導電性ゴム82は、適度な圧力を加えることで、圧力の作用方向に導電性を示すゴム材料である。この異方性導電性ゴム82を、逆メサ型圧電振動片20の下面の周縁厚肉部と、基板部材10の上面との間に配置する。そして、逆メサ型圧電振動片20の上面の周縁厚肉部表面にキャップ83を配置する。このキャップ83は、逆メサ型圧電振動片20の上面の周縁厚肉部を所定の圧力で押圧するように配置されているため、異方性導電性ゴム82は、圧電振動片20の接続電極24および基板部材10の接続電極14によって挟まれた部分で圧力の加わる方向に導電性を示し、両電極間を電気的に接続することができる。また異方性導電性ゴム82は封止材として機能し、圧電振動片20の下面の励振電極22bを密閉封止する。したがって、圧電振動片20における電極相互の短絡を防止することができる。これにともなって、導電性接着剤および封止用接着剤の塗布が不要となり、製造工程が簡略化されて、製造コストを削減することができる。
【0030】
図4に、アタッチメントおよびホルダの説明図を示す。なお、図4(1)は全体の側面断面図であり、図4(2)はアタッチメントの側面断面図である。図1に示す質量測定チップ2を使用して、図4に示すアタッチメント50を形成する。具体的には、まず配線パターン(不図示)を形成したフレーム52に質量測定チップ2を装着する。そして、フレーム52の周囲に樹脂材料54等を成型する。なお、感応膜を塗布する励振電極22aが外部に露出するように、樹脂材料54等を成型する。このようなアタッチメント50を形成することにより、微小な質量測定チップ2の取り扱いが容易になり、また使用済みの質量測定チップを簡単に交換することができる。
【0031】
一方、アタッチメント50を着脱するホルダ4を形成する。具体的には、まず配線パターン(不図示)を形成したフレーム42に、発振回路素子40およびソケット部材46を装着する。また、フレーム42から周波数カウンタ5(図5参照)への配線48を接続する。さらに、フレーム42の周囲に樹脂材料44等を成型すれば、ホルダ4が完成する。そして、ホルダ4のソケット部材46に、アタッチメント50のフレーム52を挿入することにより、発振回路40と質量測定チップ2とを電気的に接続する。また、係合部49においてホルダ4の凹部にアタッチメント50の凸部を係合させることにより、ホルダ4とアタッチメント50とを機械的に接続する。これにより、質量測定に使用済みのアタッチメント50をホルダ4から取り外して、図4(2)に示すような他のアタッチメント150と交換することができる。なお、ホルダ4の内部に発振回路40を設けたので、伝送経路を伝わる発振信号の波長に対し、圧電振動片20と発振回路40との電気長が短くなって、圧電振動片20を高周波で発振させても、安定に発振させることができる。よって、高周波の圧電振動片を検体溶液中で安定して発振させることが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0032】
図5に、質量測定装置の説明図を示す。上記のようにアタッチメントを装着したホルダ4は、周波数カウンタ5に接続する。周波数カウンタ5は、圧電振動片の共振周波数を測定するものである。また、周波数カウンタ5はコンピュータ6に接続する。コンピュータ6は、周波数カウンタ5が測定した共振周波数から、圧電振動片の励振電極に吸着もしくは脱着した特定物質の質量を算出するものである。加えて、特定物質の付着量の経時変化から検体溶液中の特定物質の濃度を解析し得るようにコンピュータ6を構成する。
【0033】
次に、本実施形態に係る質量測定チップおよび質量測定装置を使用して、質量測定を行う方法について説明する。
質量測定を行うには、まず図4に示す発振回路40から圧電振動片20に通電して、圧電振動片20を発振させる。また、図5に示す周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を連続的に計測しておく。次に、アタッチメント50を検体溶液7中に浸漬し、圧電振動片の励振電極に検体溶液を接触させる。検体溶液が励振電極に接触すると、検体溶液中の特定物質が励振電極表面の感応膜と結合する。これにより、励振電極の質量が増加して、圧電振動片の共振周波数が低下する。この共振周波数の低下量等をコンピュータ6で解析することにより、特定物質の有無および濃度等を算出することができる。なお、質量測定チップを検体溶液に浸漬して使用するだけでなく、水平配置した質量測定チップに検体溶液を滴下して使用することも可能である。また、質量測定チップを検体ガスに暴露して使用することにより、検体ガス中の特定物質の質量を測定することも可能である。なお、励振電極の質量の増加だけでなく、励振電極の質量の減少や検体溶液の粘度、密度の変化等による圧電振動片の共振周波数の増減をコンピュータ6で解析することにより、液体の粘度や密度などの物理量を測定することも可能である。
以上に詳述した本実施形態に係る質量測定チップにより、高感度化、小型化およびマルチセンサ化に対応することが可能となる。
【0034】
すなわち本実施形態では、逆メサ型圧電振動片における下面側の周縁の厚肉部を基板部材に接合して、逆メサ型圧電振動片における下面側の電極を密閉封止した構成とした。逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部を基板部材に接合するので、実装時の加圧や接着剤の固化により、中央の薄肉振動部に大きな応力が作用することはなく、圧電振動片の破損を防止することができる。また、圧電振動片の振動部と基板部材との干渉を回避することができる。さらに、逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部の表面と基板部材の表面とを広範囲にわたって面接触させるので、封止の安定性を向上させることができる。したがって、肉厚の薄い高周波の圧電振動片を使用することが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0035】
また、単純な構造により圧電振動片の電極相互の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。なお、本実施形態で使用する基板部材は、基板母材を個片に分割して形成する。ここで、個片に分離した基板部材に圧電振動片を実装すれば通常の質量測定チップが完成し、基板母材に対して複数の圧電振動片を実装すればマルチセンサ化された質量測定チップを得ることができる。したがって、特段の製造コストを要することなく、質量測定チップをマルチセンサ化することができる。
【0036】
次に、第2実施形態について説明する。
図6に、第2実施形態に係る質量測定チップの説明図を示す。第2実施形態に係る質量測定チップ102は、樹脂モールド111にリードフレーム115を埋設して基板部材110を形成したものである。
【0037】
リードフレーム115は、Fe−Ni合金等の金属材料で形成する。なお、インナリード部分は上方に立ち上げて接続電極114を形成する。また、アウタリード部分はガルウイング状に下方に折り曲げて外部端子116を形成する。一方、リードフレーム115を埋設するように樹脂モールド111を成型する。この樹脂モールド111により、リードフレーム115相互間およびリードフレーム115と外部との間の電気絶縁性を確保することができる。
【0038】
そして、基板部材110の上面側に圧電振動片120を配置し、基板部材110の上面に形成した接続電極114と、圧電振動片120の下面に形成した接続電極124とを、導電性接着剤118等により電気的に接続する。また、基板部材110の表面と圧電振動片120の側面との角部に、圧電振動片の全周にわたって封止用接着剤119を塗布する。これにより、圧電振動片120の下面側の励振電極122bが基板部材110によって密閉封止され、圧電振動片120の両面に形成された電極間の短絡を防止することができる。なお、アウターリードの形状は、DIP形状であっても良い。
【0039】
図7に、第2実施形態に係る質量測定チップの製造方法の説明図を示す。上述した質量測定チップを製造するには、図7(1)に示すように、まず連続したリードフレーム115を形成する。さらに、そのリードフレーム115における複数の質量測定チップ形成領域に、樹脂モールド111を成型する。これにより、連続した複数の基板部材からなる基板母材110aが形成される。次に、図7(2)に示すように、基板母材110aにおける各基板部材110に、それぞれ圧電振動片120を実装する。そして、図7(3)に示すように、基板母材110aを各質量測定チップの個片102aに分割する。その後、各質量測定チップのアウタリード116を下側に折り曲げれば、図6に示す質量測定チップ102を同時に複数個形成することができる。
【0040】
図8に、第2実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図を示す。第1変形例に係る質量測定チップは、アウタリードの形状を変更したものである。図8(1)の質量測定チップ170では、アウタリードをJリードに加工して外部端子172を形成する。Jリード部分は、その可撓性により緩衝材として機能する。したがって、外力による質量測定チップの破損を防止することができる。図8(2)の質量測定チップ175では、アウタリードを樹脂モールドの下側表面に配置して外部端子177を形成する。これにより、質量測定チップを小型化することができる。なお、図8(1)(2)に示す質量測定チップ170,175では、圧電振動片120の外周に沿って基板部材171の表面から凸部174を形成している。この凸部174は、基板部材171の樹脂モールドと一体成型する。この凸部174により、外力による圧電振動片の破損を防止することができる。
【0041】
図9に、第2実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図を示す。第2変形例に係る質量測定チップ180,185は、基板部材181,186の中央部に貫通孔183,188を設けて、圧電振動片120の下面側の励振電極122bを、下方に向かって開放したものである。質量測定チップを検体溶液に浸漬して使用する場合とは異なり、圧電振動片の上面に検体溶液を滴下して使用する場合や、圧電振動片を検体ガスに暴露して使用する場合には、上下両面に形成した電極相互の短絡がないからである。なお、図9(1)は図8(1)の質量測定チップにおける基板部材に貫通孔を設けたものであり、図9(2)は図8(2)の質量測定チップにおける基板部材に貫通孔を設けたものである。
【0042】
なお図3(2)に示すように、異方性導電性ゴム182を介して圧電振動片120を実装することにより、圧電振動片120と基板部材110とを電気的に接続するとともに、圧電振動片120の上下両面に形成した電極相互の短絡を防止することも可能である。そして、圧電振動片120の周縁厚肉部にキャップ85を配置し、圧電振動片120を適宜の力で基板部材110の底面に押圧した状態で、キャップ85を圧電振動片120の厚肉部と凸部174との上端面に接合する。これにより、導電性接着剤および封止用接着剤の塗布が不要となり、製造工程を簡略化して、製造コストを削減することができる。なお図3(2)は、図8(2)の質量測定チップにおける導電性接着剤および封止用接着剤の代わりに、異方性導電性ゴムを介して圧電振動片を実装したものである。
【0043】
以上に詳述したように、第2実施形態に係る質量測定チップでは、樹脂モールドにリードフレームを埋設して基板部材を形成した構成とした。かかる単純な構造により圧電振動片の電極間の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0044】
また、第2実施形態に係る質量測定チップの製造方法では、複数の基板部材が連続する基板母材を形成する工程と、基板母材に複数の逆メサ型圧電振動片を実装する工程と、基板母材を分割して複数の質量測定チップを形成する工程と、を有する構成とした。これにより、圧電振動片を小型化した場合でも、基板母材が製造トレイとして機能するので、製造工程における取り扱いが容易になる。したがって、質量測定チップを小型化することができる。また、複数の質量測定チップを同時に製造することができるので、質量測定チップの低コスト化が可能になり、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態では、本発明に係る質量測定チップないし質量測定装置をバイオセンサとして使用する方法について説明したが、本発明に係る質量測定チップないし質量測定装置は、例えばメッキ膜厚モニタや粘度計、イオンセンサ、においセンサなどにも使用することが可能である。まず、メッキ膜厚モニタとして使用する場合には、メッキ対象物とともに質量測定チップをメッキ液中に浸漬する。この場合、励振電極の表面に付着したメッキ膜厚の増加とともに、圧電振動片の共振周波数が低下する。したがって、メッキ対象物のメッキ膜厚を検知することができる。また、イオンセンサとして使用する場合には、感応膜としてイオン吸着物質を塗布すればよい。一方、においセンサとして使用する場合には、感応膜としてにおい成分の吸着物質を塗布すればよい。
【0046】
次に、粘度/密度計として使用する場合の測定原理を説明する。ATカット圧電振動子は、その表面に沿って厚み滑り振動する。このATカット圧電振動子を液体中に浸漬して発振させると、液体との間にせん断応力を生じる。そこで、ニュートンの粘性の式と水晶振動子の振動の式とから、液体の粘性による周波数変化量を表す次式が導かれる。
【数2】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ηは液体の粘度、ρLは液体の密度、μは圧電材料の弾性率である。上式において、液体の粘度ηまたは液体の密度ρLのいずれか一方を一定とすれば、いずれか他方と共振周波数の変化量とが一対一に対応する。したがって、共振周波数の変化量を測定することにより、液体の粘度変化または液体の密度変化を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る質量測定チップの説明図である。
【図2】第1実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図である。
【図3】第1実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図である。
【図4】アタッチメントおよびホルダの説明図である。
【図5】質量測定装置の説明図である。
【図6】第2実施形態に係る質量測定チップの説明図である。
【図7】第2実施形態に係る質量測定チップの製造方法の説明図である。
【図8】第2実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図である。
【図9】第2実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図である。
【図10】従来の質量測定チップの説明図である。
【図11】従来の質量測定装置の説明図である。
【符号の説明】
2………質量測定チップ、10………基板部材、14………接続電極、15………スルーホール、16………外部電極、18………導電性接着剤、19………封止用接着剤、20………圧電振動片、22a,22b………励振電極、24a,24b………接続電極。
【発明の属する技術分野】
本発明は質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置に係り、特に圧電振動片を用いて検体溶液における特定物質の濃度等を測定する質量測定チップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品や生化学、環境などの分野で、特定物質の有無や濃度等を測定するため、水晶振動子マイクロバランス法が利用されている。その具体的な方法は、まず圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に、特定物質の感応膜を塗布する。感応膜を塗布した圧電振動子を溶液に浸漬した後、溶液中で周波数が安定するまで暫く時間をおく。その後、溶液に吸着或いは脱着、沈殿或いは分解の反応を起させる物質、または検出される物質を加え、振動子上の感応膜と特定物質とを反応させてその質量変化を検出する。
【0003】
たとえば、加えられた検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し、励振電極の質量が増加する。この励振電極の質量増加にともなって、圧電振動片の共振周波数が低下する。これにより、検体溶液中の特定物質の有無を判断することができる。なお、検体溶液中の特定物質の濃度が高いほど、共振周波数の低下速度は速くなる。そこで、圧電振動片の共振周波数の低下速度を把握することにより、検体溶液中の特定物質の濃度を測定することができる。
【0004】
ところで、圧電振動片を検体溶液中に浸漬する際に、その両面に形成した励振電極が相互に短絡すると、圧電振動片を発振させることができなくなる。そこで、感応膜を塗布しない他方面側の励振電極を被覆部材等で覆うことにより、当該励振電極を検体溶液から封止して、電極間の短絡を防止する必要がある。
【0005】
図10に、特許文献1に記載された質量測定チップの説明図を示す。なお、図10(1)は平面図であり、図10(2)は図10(1)のG−G線における側面断面図である。この質量測定チップ803は、矩形状の圧電平板の両面に円形状の励振電極822a,822bを形成した圧電振動片820を備えている。また、圧電振動片820の一方面側には、絶縁性薄板からなる被覆部材850が接着剤858によって接着されている。これにより、一方面側の励振電極822bが検体溶液から封止され、電極間の短絡が防止されている。さらに、各励振電極にはリード線824が取り付けられ、リード線824の検体溶液に浸漬する部分は接着剤858によって被覆されている。
【0006】
図11に、従来の質量測定装置の説明図を示す。質量測定装置801において、上述した質量測定チップ803は外部の発振回路840に接続されている。質量の測定は、励振電極822aの表面に上述した感応膜(不図示)を塗布した上で、質量測定チップ803を検体溶液7中に浸漬して行う。まず、発振回路840により質量測定チップ803の圧電振動片を発振させ、周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を測定する。上述したように、検体溶液中の特定物質が感応膜と結合し励振電極の質量が増加すると、圧電振動片の共振周波数が低下する。そこで、コンピュータ6によりこの共振周波数の低下量等を解析して、検体溶液中の特定物質の有無および濃度等を算出する。
【0007】
【特許文献1】特開平6−138125号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
検体溶液に含まれる特定物質が微量であっても、その測定を可能とするため、質量測定チップには高感度化が要求されている。質量測定チップを高感度化するには、圧電振動片を高周波化する必要がある。そして圧電振動片を高周波化するには、振動部の肉厚を薄くする必要がある。しかし、図10に示す従来の質量測定チップ803において、肉厚の薄い圧電振動片820を実装すると、接着時の加圧や接着剤858の固化により圧電振動片820に応力が作用し、圧電振動片820が破損する場合がある。以上の理由から、質量測定チップの高感度化に対応できないという問題がある。
【0009】
また、測定費用を安価にするために、非常に微量な検体溶液で測定できる装置が求められており、質量測定チップには小型化が要求されている。質量測定チップを小型化するには、圧電振動片を小型化する必要がある。しかし圧電振動片を小型化すると、製造工程における取り扱いが困難になるという問題がある。
【0010】
また、同時に多種類の特定物質の測定を可能とするため、質量測定チップにはマルチセンサ化が要求されている。質量測定チップをマルチセンサ化するには、多数の圧電振動片を低コストで製造する必要がある。しかし、図10に示す質量測定チップ803では、圧電振動片820の個片と被覆部材850の個片とを接合して質量測定チップ803を製造するため、多数の圧電振動片を備えた質量測定チップを低コストで製造することができない。その結果、質量測定チップのマルチセンサ化に対応できないという問題がある。
【0011】
本発明は上記問題点に着目し、高感度化、小型化およびマルチセンサ化に対応することが可能な、質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置の製造方法の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る質量測定チップは、逆メサ型圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップであって、前記逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材に接合して、前記逆メサ型圧電振動片における電極相互の短絡を防止した構成とした。
【0013】
逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部を基板部材に接合するので、実装時の加圧や接着剤の固化により、中央の薄肉振動部に大きな応力が作用することはなく、圧電振動片の破損を防止することができる。また、圧電振動片の振動部と基板部材との干渉を回避することができる。さらに、逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部の表面と基板部材の表面とを広範囲にわたって面接触させるので、封止の安定性を向上させることができる。したがって、肉厚の薄い高周波の圧電振動片を使用することが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0014】
また、単純な構造により圧電振動片の電極相互の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0015】
なお、前記基板部材は、樹脂モールドにリードフレームを埋設して形成してもよい。この場合も、単純な構造により圧電振動片の電極相互の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0016】
なお、前記逆メサ型圧電振動片の外周に沿って、前記基板部材の表面から凸部を形成してもよい。この凸部が圧電振動片に作用する外力を受け止めるので、圧電振動片の破損を防止することができる。したがって、肉厚の薄い高周波の圧電振動片を使用することが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0017】
なお、前記逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部は、異方性導電性ゴムを介して基板部材に接合し、前記逆メサ型圧電振動片における一方面側の周縁の厚肉部を押圧する押圧手段を備えてもよい。異方性導電性ゴムは適度な圧力を加えることで、圧力の作用方向に導電性を示すので、逆メサ型圧電振動片および基板部材の電極間を電気的に接続することができる。また、異方性導電性ゴムは封止材として機能するので、圧電振動片における電極相互の短絡を防止することができる。したがって、製造工程が簡略化され、質量測定チップの低コスト化が可能になる。
【0018】
一方、本発明にかかる質量測定チップの製造方法は、逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材に実装した質量測定チップを製造する方法であって、複数の基板部材が連続する基板母材を形成する工程と、前記基板母材に複数の逆メサ型圧電振動片を実装する工程と、前記基板母材を分割して複数の質量測定チップを形成する工程と、を有する構成とした。これにより、圧電振動片を小型化した場合でも、基板母材が製造トレイとして機能するので、製造工程における取り扱いが容易になる。したがって、質量測定チップを小型化することができる。また、複数の質量測定チップを同時に製造することができるので、質量測定チップの低コスト化が可能になる。したがって、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0019】
一方、本発明にかかる質量測定装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の質量測定チップを使用して製造した構成とした。これにより、上記効果をともなった質量測定装置を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る質量測定チップおよびその製造方法ならびに質量測定装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、以下に記載するのは本発明の実施形態の一態様にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
最初に、第1実施形態について説明する。
図1に、第1実施形態に係る質量測定チップの説明図を示す。なお、図1(1)は平面図であり、図1(2)は図1(1)のA−A線における側面断面図である。第1実施形態に係る質量測定チップ2は、逆メサ型圧電振動片20における一方面側の励振電極22aの表面に感応膜を塗布し、その一方面側の励振電極22aに検体溶液を接触させて、その検体溶液に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップ2であって、逆メサ型圧電振動片20における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材10に接合して、逆メサ型圧電振動片20における電極相互の短絡を防止したものである。
【0022】
本実施形態に係る質量測定チップは、従来の質量測定チップを高感度化したものである。質量測定チップの感度は、次式で表すことができる。
【数1】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ρは圧電材料の密度、μは圧電材料のせん断応力、dmは励振電極に結合した検出物質の質量、Aは励振電極の面積である。上式からわかるように、圧電振動片の共振周波数の初期値f0が高いほど、その変化量dfが大きくなり、質量測定チップが高感度化する。例えば、f0を従来の27MHzから150MHzまで高周波化すれば、感度を30倍にすることができる。また、例えば1GHzまでさらに高周波化すれば、より高い感度が得られる。そして圧電振動片を高周波化するには、圧電振動片の振動部における肉厚を薄くすればよい。
【0023】
そこで、圧電振動片20として、いわゆる逆メサ型圧電振動片を使用する。逆メサ型圧電振動片20は、水晶等の圧電材料を平板状に切り出し、その両面中央部に凹部を形成して薄肉化し、その薄肉部の両面に励振電極22a,22bを形成したものである。圧電振動片20の周縁の厚肉部には、励振電極22a,22bと導通する接続電極24a,24bを形成する。なお、圧電振動片20の上面側の接続電極24aは、圧電振動片20の下面にも延長形成する。そして圧電振動片20の下面には、上面側の接続電極24aと下面側の接続電極24bとを並べて配置する。なお、各電極はAu/CrまたはAg/Crの2層によって構成する。このような逆メサ型圧電振動片では、周縁の厚肉部により中央の薄肉振動部が保護されるので、外力による振動部の破壊を防止することができる。これにより、高周波の圧電振動片が利用可能となり、質量測定装置を高感度化することができる。
【0024】
そして、この圧電振動片20における上面の励振電極22aの表面に感応膜を塗布する。感応膜は、検出すべき特定物質の分子のみと結合する物質であり、特定物質に対応して選択する。
【0025】
一方、圧電振動片20を実装する基板部材10を形成する。基板部材10は、セラミック材料やエポキシ材料、シリコン材料等の樹脂材料によって構成する。なお、圧電材料と同等の熱膨張係数を有するガラス材料によって基板部材10を形成すれば、圧電振動片20と基板部材10との熱膨張率および熱収縮率が同等となるので、両者の接合部における破壊を防止することができる。加えて、振動片への応力の影響も最小限に抑えることができる。また、基板部材10の上面には接続電極14を形成し、下面には外部電極16を形成して、スルーホール15により上下の電極相互の導通を確保する。なお、各電極はAu、Cu材料等によって形成する。
【0026】
そして、基板部材10の上面側に圧電振動片20を配置する。さらに、基板部材10の上面に形成した接続電極14と、圧電振動片20の下面に形成した接続電極24a,24bとを、Agペースト等の導電性接着剤18により接着して電気的に接続する。なお導電性接着剤18の代わりに、金属バンプや金属ロウ剤を介して両電極を接続してもよい。また、両電極表面のAu材料を溶着または圧着して両電極を接続してもよい。
【0027】
一方、基板部材10の上面と圧電振動片20の側面との角部に、封止用接着剤19を塗布する。なお封止用接着剤19には、シリコン系接着剤等の、電気絶縁性、耐薬品性、耐水性および弾性を有する接着剤を使用する。また、封止用接着剤19は圧電振動片20の全周にわたって塗布する。これにより、圧電振動片20の下面側の励振電極22bが基板部材10によって密閉封止され、圧電振動片20の上下両面に形成した電極相互の短絡が防止される。
【0028】
図2に、第1実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図を示す。第1変形例に係る質量測定チップ70は、圧電振動片20の外周に沿って、基板部材72の表面から凸部74を形成したものである。この凸部74は、セラミック材料等からなるシートを基板部材72に積層・焼成して形成する。なお、凸部74の高さは、圧電振動片20の上面より高くするのが好ましい。この凸部74が圧電振動片20に作用する外力を受け止めるので、圧電振動片20の破損を防止することができる。
【0029】
図3(1)に、第1実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図を示す。第2変形例に係る質量測定チップ80は、異方性導電性ゴム82を介して圧電振動片20を実装したものである。異方性導電性ゴム82は、適度な圧力を加えることで、圧力の作用方向に導電性を示すゴム材料である。この異方性導電性ゴム82を、逆メサ型圧電振動片20の下面の周縁厚肉部と、基板部材10の上面との間に配置する。そして、逆メサ型圧電振動片20の上面の周縁厚肉部表面にキャップ83を配置する。このキャップ83は、逆メサ型圧電振動片20の上面の周縁厚肉部を所定の圧力で押圧するように配置されているため、異方性導電性ゴム82は、圧電振動片20の接続電極24および基板部材10の接続電極14によって挟まれた部分で圧力の加わる方向に導電性を示し、両電極間を電気的に接続することができる。また異方性導電性ゴム82は封止材として機能し、圧電振動片20の下面の励振電極22bを密閉封止する。したがって、圧電振動片20における電極相互の短絡を防止することができる。これにともなって、導電性接着剤および封止用接着剤の塗布が不要となり、製造工程が簡略化されて、製造コストを削減することができる。
【0030】
図4に、アタッチメントおよびホルダの説明図を示す。なお、図4(1)は全体の側面断面図であり、図4(2)はアタッチメントの側面断面図である。図1に示す質量測定チップ2を使用して、図4に示すアタッチメント50を形成する。具体的には、まず配線パターン(不図示)を形成したフレーム52に質量測定チップ2を装着する。そして、フレーム52の周囲に樹脂材料54等を成型する。なお、感応膜を塗布する励振電極22aが外部に露出するように、樹脂材料54等を成型する。このようなアタッチメント50を形成することにより、微小な質量測定チップ2の取り扱いが容易になり、また使用済みの質量測定チップを簡単に交換することができる。
【0031】
一方、アタッチメント50を着脱するホルダ4を形成する。具体的には、まず配線パターン(不図示)を形成したフレーム42に、発振回路素子40およびソケット部材46を装着する。また、フレーム42から周波数カウンタ5(図5参照)への配線48を接続する。さらに、フレーム42の周囲に樹脂材料44等を成型すれば、ホルダ4が完成する。そして、ホルダ4のソケット部材46に、アタッチメント50のフレーム52を挿入することにより、発振回路40と質量測定チップ2とを電気的に接続する。また、係合部49においてホルダ4の凹部にアタッチメント50の凸部を係合させることにより、ホルダ4とアタッチメント50とを機械的に接続する。これにより、質量測定に使用済みのアタッチメント50をホルダ4から取り外して、図4(2)に示すような他のアタッチメント150と交換することができる。なお、ホルダ4の内部に発振回路40を設けたので、伝送経路を伝わる発振信号の波長に対し、圧電振動片20と発振回路40との電気長が短くなって、圧電振動片20を高周波で発振させても、安定に発振させることができる。よって、高周波の圧電振動片を検体溶液中で安定して発振させることが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0032】
図5に、質量測定装置の説明図を示す。上記のようにアタッチメントを装着したホルダ4は、周波数カウンタ5に接続する。周波数カウンタ5は、圧電振動片の共振周波数を測定するものである。また、周波数カウンタ5はコンピュータ6に接続する。コンピュータ6は、周波数カウンタ5が測定した共振周波数から、圧電振動片の励振電極に吸着もしくは脱着した特定物質の質量を算出するものである。加えて、特定物質の付着量の経時変化から検体溶液中の特定物質の濃度を解析し得るようにコンピュータ6を構成する。
【0033】
次に、本実施形態に係る質量測定チップおよび質量測定装置を使用して、質量測定を行う方法について説明する。
質量測定を行うには、まず図4に示す発振回路40から圧電振動片20に通電して、圧電振動片20を発振させる。また、図5に示す周波数カウンタ5により圧電振動片の共振周波数を連続的に計測しておく。次に、アタッチメント50を検体溶液7中に浸漬し、圧電振動片の励振電極に検体溶液を接触させる。検体溶液が励振電極に接触すると、検体溶液中の特定物質が励振電極表面の感応膜と結合する。これにより、励振電極の質量が増加して、圧電振動片の共振周波数が低下する。この共振周波数の低下量等をコンピュータ6で解析することにより、特定物質の有無および濃度等を算出することができる。なお、質量測定チップを検体溶液に浸漬して使用するだけでなく、水平配置した質量測定チップに検体溶液を滴下して使用することも可能である。また、質量測定チップを検体ガスに暴露して使用することにより、検体ガス中の特定物質の質量を測定することも可能である。なお、励振電極の質量の増加だけでなく、励振電極の質量の減少や検体溶液の粘度、密度の変化等による圧電振動片の共振周波数の増減をコンピュータ6で解析することにより、液体の粘度や密度などの物理量を測定することも可能である。
以上に詳述した本実施形態に係る質量測定チップにより、高感度化、小型化およびマルチセンサ化に対応することが可能となる。
【0034】
すなわち本実施形態では、逆メサ型圧電振動片における下面側の周縁の厚肉部を基板部材に接合して、逆メサ型圧電振動片における下面側の電極を密閉封止した構成とした。逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部を基板部材に接合するので、実装時の加圧や接着剤の固化により、中央の薄肉振動部に大きな応力が作用することはなく、圧電振動片の破損を防止することができる。また、圧電振動片の振動部と基板部材との干渉を回避することができる。さらに、逆メサ型圧電振動片の周縁厚肉部の表面と基板部材の表面とを広範囲にわたって面接触させるので、封止の安定性を向上させることができる。したがって、肉厚の薄い高周波の圧電振動片を使用することが可能となり、質量測定チップを高感度化することができる。
【0035】
また、単純な構造により圧電振動片の電極相互の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。なお、本実施形態で使用する基板部材は、基板母材を個片に分割して形成する。ここで、個片に分離した基板部材に圧電振動片を実装すれば通常の質量測定チップが完成し、基板母材に対して複数の圧電振動片を実装すればマルチセンサ化された質量測定チップを得ることができる。したがって、特段の製造コストを要することなく、質量測定チップをマルチセンサ化することができる。
【0036】
次に、第2実施形態について説明する。
図6に、第2実施形態に係る質量測定チップの説明図を示す。第2実施形態に係る質量測定チップ102は、樹脂モールド111にリードフレーム115を埋設して基板部材110を形成したものである。
【0037】
リードフレーム115は、Fe−Ni合金等の金属材料で形成する。なお、インナリード部分は上方に立ち上げて接続電極114を形成する。また、アウタリード部分はガルウイング状に下方に折り曲げて外部端子116を形成する。一方、リードフレーム115を埋設するように樹脂モールド111を成型する。この樹脂モールド111により、リードフレーム115相互間およびリードフレーム115と外部との間の電気絶縁性を確保することができる。
【0038】
そして、基板部材110の上面側に圧電振動片120を配置し、基板部材110の上面に形成した接続電極114と、圧電振動片120の下面に形成した接続電極124とを、導電性接着剤118等により電気的に接続する。また、基板部材110の表面と圧電振動片120の側面との角部に、圧電振動片の全周にわたって封止用接着剤119を塗布する。これにより、圧電振動片120の下面側の励振電極122bが基板部材110によって密閉封止され、圧電振動片120の両面に形成された電極間の短絡を防止することができる。なお、アウターリードの形状は、DIP形状であっても良い。
【0039】
図7に、第2実施形態に係る質量測定チップの製造方法の説明図を示す。上述した質量測定チップを製造するには、図7(1)に示すように、まず連続したリードフレーム115を形成する。さらに、そのリードフレーム115における複数の質量測定チップ形成領域に、樹脂モールド111を成型する。これにより、連続した複数の基板部材からなる基板母材110aが形成される。次に、図7(2)に示すように、基板母材110aにおける各基板部材110に、それぞれ圧電振動片120を実装する。そして、図7(3)に示すように、基板母材110aを各質量測定チップの個片102aに分割する。その後、各質量測定チップのアウタリード116を下側に折り曲げれば、図6に示す質量測定チップ102を同時に複数個形成することができる。
【0040】
図8に、第2実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図を示す。第1変形例に係る質量測定チップは、アウタリードの形状を変更したものである。図8(1)の質量測定チップ170では、アウタリードをJリードに加工して外部端子172を形成する。Jリード部分は、その可撓性により緩衝材として機能する。したがって、外力による質量測定チップの破損を防止することができる。図8(2)の質量測定チップ175では、アウタリードを樹脂モールドの下側表面に配置して外部端子177を形成する。これにより、質量測定チップを小型化することができる。なお、図8(1)(2)に示す質量測定チップ170,175では、圧電振動片120の外周に沿って基板部材171の表面から凸部174を形成している。この凸部174は、基板部材171の樹脂モールドと一体成型する。この凸部174により、外力による圧電振動片の破損を防止することができる。
【0041】
図9に、第2実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図を示す。第2変形例に係る質量測定チップ180,185は、基板部材181,186の中央部に貫通孔183,188を設けて、圧電振動片120の下面側の励振電極122bを、下方に向かって開放したものである。質量測定チップを検体溶液に浸漬して使用する場合とは異なり、圧電振動片の上面に検体溶液を滴下して使用する場合や、圧電振動片を検体ガスに暴露して使用する場合には、上下両面に形成した電極相互の短絡がないからである。なお、図9(1)は図8(1)の質量測定チップにおける基板部材に貫通孔を設けたものであり、図9(2)は図8(2)の質量測定チップにおける基板部材に貫通孔を設けたものである。
【0042】
なお図3(2)に示すように、異方性導電性ゴム182を介して圧電振動片120を実装することにより、圧電振動片120と基板部材110とを電気的に接続するとともに、圧電振動片120の上下両面に形成した電極相互の短絡を防止することも可能である。そして、圧電振動片120の周縁厚肉部にキャップ85を配置し、圧電振動片120を適宜の力で基板部材110の底面に押圧した状態で、キャップ85を圧電振動片120の厚肉部と凸部174との上端面に接合する。これにより、導電性接着剤および封止用接着剤の塗布が不要となり、製造工程を簡略化して、製造コストを削減することができる。なお図3(2)は、図8(2)の質量測定チップにおける導電性接着剤および封止用接着剤の代わりに、異方性導電性ゴムを介して圧電振動片を実装したものである。
【0043】
以上に詳述したように、第2実施形態に係る質量測定チップでは、樹脂モールドにリードフレームを埋設して基板部材を形成した構成とした。かかる単純な構造により圧電振動片の電極間の短絡を防止することができるので、質量測定チップを小型化することができる。同時に、質量測定チップの低コスト化が可能になるので、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0044】
また、第2実施形態に係る質量測定チップの製造方法では、複数の基板部材が連続する基板母材を形成する工程と、基板母材に複数の逆メサ型圧電振動片を実装する工程と、基板母材を分割して複数の質量測定チップを形成する工程と、を有する構成とした。これにより、圧電振動片を小型化した場合でも、基板母材が製造トレイとして機能するので、製造工程における取り扱いが容易になる。したがって、質量測定チップを小型化することができる。また、複数の質量測定チップを同時に製造することができるので、質量測定チップの低コスト化が可能になり、質量測定チップのマルチチップ化に対応することができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態では、本発明に係る質量測定チップないし質量測定装置をバイオセンサとして使用する方法について説明したが、本発明に係る質量測定チップないし質量測定装置は、例えばメッキ膜厚モニタや粘度計、イオンセンサ、においセンサなどにも使用することが可能である。まず、メッキ膜厚モニタとして使用する場合には、メッキ対象物とともに質量測定チップをメッキ液中に浸漬する。この場合、励振電極の表面に付着したメッキ膜厚の増加とともに、圧電振動片の共振周波数が低下する。したがって、メッキ対象物のメッキ膜厚を検知することができる。また、イオンセンサとして使用する場合には、感応膜としてイオン吸着物質を塗布すればよい。一方、においセンサとして使用する場合には、感応膜としてにおい成分の吸着物質を塗布すればよい。
【0046】
次に、粘度/密度計として使用する場合の測定原理を説明する。ATカット圧電振動子は、その表面に沿って厚み滑り振動する。このATカット圧電振動子を液体中に浸漬して発振させると、液体との間にせん断応力を生じる。そこで、ニュートンの粘性の式と水晶振動子の振動の式とから、液体の粘性による周波数変化量を表す次式が導かれる。
【数2】
ただし、dfは圧電振動片の共振周波数の変化量、f0は圧電振動片の共振周波数の初期値、ηは液体の粘度、ρLは液体の密度、μは圧電材料の弾性率である。上式において、液体の粘度ηまたは液体の密度ρLのいずれか一方を一定とすれば、いずれか他方と共振周波数の変化量とが一対一に対応する。したがって、共振周波数の変化量を測定することにより、液体の粘度変化または液体の密度変化を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る質量測定チップの説明図である。
【図2】第1実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図である。
【図3】第1実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図である。
【図4】アタッチメントおよびホルダの説明図である。
【図5】質量測定装置の説明図である。
【図6】第2実施形態に係る質量測定チップの説明図である。
【図7】第2実施形態に係る質量測定チップの製造方法の説明図である。
【図8】第2実施形態に係る質量測定チップの第1変形例の説明図である。
【図9】第2実施形態に係る質量測定チップの第2変形例の説明図である。
【図10】従来の質量測定チップの説明図である。
【図11】従来の質量測定装置の説明図である。
【符号の説明】
2………質量測定チップ、10………基板部材、14………接続電極、15………スルーホール、16………外部電極、18………導電性接着剤、19………封止用接着剤、20………圧電振動片、22a,22b………励振電極、24a,24b………接続電極。
Claims (6)
- 逆メサ型圧電振動片における一方面側の励振電極の表面に感応膜を塗布し、前記一方面側の励振電極に検体を接触させて、前記検体に含まれる特定物質の質量測定を行う質量測定チップであって、
前記逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材に接合して、前記逆メサ型圧電振動片における電極相互の短絡を防止したことを特徴とする質量測定チップ。 - 請求項1に記載の質量測定チップにおいて、
前記基板部材は、樹脂モールドにリードフレームを埋設して形成したことを特徴とする質量測定チップ。 - 請求項1または2に記載の質量測定チップにおいて、
前記逆メサ型圧電振動片の外周に沿って、前記基板部材の表面から凸部を形成したことを特徴とする質量測定チップ。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の質量測定チップにおいて、
前記逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部は、異方性導電性ゴムを介して基板部材に接合し、
前記逆メサ型圧電振動片における一方面側の周縁の厚肉部を押圧する押圧手段を備えたことを特徴とする質量測定チップ。 - 逆メサ型圧電振動片における他方面側の周縁の厚肉部を基板部材に実装した質量測定チップを製造する方法であって、
複数の基板部材が連続する基板母材を形成する工程と、
前記基板母材に複数の逆メサ型圧電振動片を実装する工程と、
前記基板母材を分割して、複数の質量測定チップを形成する工程と、
を有することを特徴とする質量測定チップの製造方法。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の質量測定チップを使用して製造したことを特徴とする質量測定装置。
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