JP2004255441A - 摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、撹拌条件の変化に影響されることなく摩擦撹拌部の金属温度を塑性流動温度域に管理する。
【解決手段】摩擦撹拌装置は、金属材料を含むワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸12及び回転子13をワーク2に対して押圧し且つ相対移動させ、金属材料を塑性流動温度域に昇温して軟化し、摩擦撹拌する。摩擦撹拌装置は、回転駆動装置11及び主軸移動装置16の作動を制御する制御装置C/U、6を有し、制御装置は、回転軸及び回転子の回転負荷を検出する回転負荷検出手段(電流検出部)と、回転軸及び回転子の移動負荷を検出する移動負荷検出手段(6、移動制御部)と、回転負荷検出手段及び移動負荷検出手段により検出された回転負荷及び移動負荷を基準に回転駆動装置及び主軸移動装置の作動を可変制御する作動制御手段(移動制御部、回転制御部)とを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】摩擦撹拌装置は、金属材料を含むワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸12及び回転子13をワーク2に対して押圧し且つ相対移動させ、金属材料を塑性流動温度域に昇温して軟化し、摩擦撹拌する。摩擦撹拌装置は、回転駆動装置11及び主軸移動装置16の作動を制御する制御装置C/U、6を有し、制御装置は、回転軸及び回転子の回転負荷を検出する回転負荷検出手段(電流検出部)と、回転軸及び回転子の移動負荷を検出する移動負荷検出手段(6、移動制御部)と、回転負荷検出手段及び移動負荷検出手段により検出された回転負荷及び移動負荷を基準に回転駆動装置及び主軸移動装置の作動を可変制御する作動制御手段(移動制御部、回転制御部)とを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法に関するものであり、より詳細には、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域に確実に維持管理する摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属成形品は、軽量で、しかも、熱放散性に優れるので、例えば、エンジンシリンダーブロック、シリンダーヘッド、ブレーキディスク、マニホールド等の自動車部品として使用される。
【0003】
このような金属成形品の製法として、鍛造法又は粉末焼結法等の採用も考慮し得るが、鍛造法又は粉末焼結法等の製法では、所望の設計自由度を得難く、成形可能な製品形状に限界が生じることから、一般には、設計自由度が高く、任意の形状又は複雑な形状の製品を成型し得る鋳造法が、この種の軽金属成形品の製法として採用される。
【0004】
軽金属成形品の鋳造法に関し、成形法自体に起因する課題、即ち、鋳物内部の凝固組織が不均一になり易く、巣や気孔等の鋳造欠陥が生じ易いという課題が長年に亘って指摘されている。しかしながら、組織の粗大化による素材特性のバラツキや品質低下等の鋳造法特有の課題は、容易には克服し難く、このため、素材を強化すべく、金属、セラミックス繊維等の添加による金属鋳物材料の複合化、圧接による鍛造材及び異種金属の接合、レーザーを用いたリメルト処理、更には、元素添加による合金化又は合金特性の改善等により、鋳造法の課題を克服する努力が払われてきた。
【0005】
このような鋳造法特有の課題を克服し得る手段として、近年、摩擦攪拌接合法(FSW法)を応用した鋳物材の表面改質技術が注目されている。摩擦撹拌接合法は、接合すべき金属材料の接合部に高融点且つ高硬度のロッド状回転工具を押圧し、回転工具の高速回転により発生する摩擦熱を利用して接合部の金属材料を軟化し、金属同士を接合する接合法として知られており、これは、固体溶接法又は固相接合法の一種である。このように金属溶融を伴わない摩擦撹拌接合法によれば、金属材料の合金成分が失われ難く、接合部が母材強度に近い接合強度を発揮するなど、多くの利点が得られる。
【0006】
摩擦撹拌接合法を応用した金属表面の改質方法においても又、表面改質すべき金属材よりも高融点且つ高硬度のロッド状回転工具を金属材の表面に加圧接触せしめた状態で回転工具を回転させ且つ移動させ、金属材の表層部を塑性流動温度域に加熱し且つ摩擦攪拌して、金属材表層部の金属組織を緻密化ないし微細化する。このような表面改質法によれば、摩擦攪拌時の発熱及び機械的エネルギーにより、鋳物材の表層を改質し得る(特許文献1〜3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−312980号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2000−336465号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−32058号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この種の摩擦撹拌接合法及び表面改質方法では、半溶融状態の金属を回転軸及び回転子により撹拌するので、被撹拌部分の金属材料の温度を塑性流動温度域に維持管理する必要がある。例えば、金属の温度が塑性流動温度域に達しない状態で摩擦撹拌を継続すると、回転軸及び回転子が過大な回転抵抗及び移動抵抗を受け、回転軸又は回転子が損傷する虞がある。他方、金属温度が塑性流動温度域を超える場合、金属が溶融するので、所望の金属組成を達成し難いばかりでなく、回転軸先端のショルダー面で溶融金属を完全に押さえることができず、溶融金属が周囲に飛散する事態が懸念される。このため、従来の摩擦撹拌装置では、金属材料の温度を組成流動温度域に維持すべく、回転工具の回転数(回転速度)及び送り速度(移動速度)を常時一定値に維持しようとする。
【0011】
しかしながら、実際に接合又は改質すべき金属材料には、摩擦撹拌中に撹拌条件の変動又は変化をもたらす要因、例えば、肉厚の変化、金属組成の変化等があり、このような場合、従来の摩擦撹拌装置では、回転数及び送り速度を撹拌条件の変動又は変化に適切に追従させることができず、これに起因する接合不良、改質不良、金属溶融、回転工具損傷等が生じてしまう。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、撹拌条件の変化に影響されることなく被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域に維持管理することができる摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、金属材料を含むワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸及び回転子と、前記回転軸及び回転子を回転させる回転駆動装置と、前記回転軸及び回転子をワークに対して押圧し且つ相対移動させる主軸移動装置とを有し、前記金属材料を塑性流動温度域に昇温して軟化し、摩擦撹拌により前記金属材料の金属組織を微細化する摩擦撹拌装置において、
前記回転駆動装置及び主軸移動装置の作動を制御する制御装置を有し、該制御装置は、前記回転軸及び回転子の回転負荷を検出する回転負荷検出手段と、前記回転軸及び回転子の移動負荷を検出する移動負荷検出手段と、前記金属材料の温度を塑性流動温度域に維持すべく、回転負荷検出手段及び/又は移動負荷検出手段により検出された回転負荷及び/又は移動負荷を基準に前記回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の制御目標値を調節する作動制御手段とを備えたことを特徴とする摩擦撹拌装置を提供する。
【0014】
被撹拌部の金属温度が高い場合、金属の流動抵抗は比較的低く、他方、被撹拌部の金属温度が低い場合、金属の流動抵抗は比較的高く顕れる。本発明の上記構成によれば、制御装置の作動制御手段は、回転軸及び回転子の回転負荷及び/又は移動負荷の検出結果に基づき、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度に維持するように回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の制御目標値を調節し、制御装置は、この制御目標値に従って回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の作動を制御する。例えば、金属温度が上昇すると、回転負荷又は移動負荷は低下するので、制御装置は、回転軸及び回転子の移動速度を増大し、又は回転速度を低下させ、これにより、金属温度を低下させる。他方、金属温度が降下すると、回転負荷又は移動負荷は増大するので、制御装置は、回転軸及び回転子の移動速度を低下し、又は回転速度を増大し、これにより、金属温度を上昇させる。制御装置は、このような制御を継続することにより、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域の制御目標温度に維持管理する。
【0015】
好ましくは、上記制御装置は、摩擦撹拌開始後に所定時間経過した時期、又は上記回転軸が摩擦撹拌開始後に所定距離移動したとき、作動制御手段による制御目標値の調節を開始させる制御開始手段を更に有する。摩擦撹拌開始時には、回転軸及び回転子がワークに部分的にのみ接触するにすぎない状態や、ワークの金属温度が比較的低温であるため、回転負荷及び移動負荷と金属温度との相関関係は、定常運転時の相関関係と大きく相違する。このため、制御装置は、摩擦撹拌開始直後には、上述の制御を行わず、摩擦撹拌開始後に所定時間が経過し又は回転軸が所定距離移動した後に上述の制御を開始する。
【0016】
更に好ましくは、上記回転駆動装置は、回転軸を回転駆動する電動モータからなり、回転負荷検出手段は、電動モータの消費電力の計測により回転負荷を検出し、移動負荷検出手段は、回転軸及び回転子の進行方向の荷重を計測するための荷重計を含み、荷重計の計測値に基づき移動負荷を検出する。
【0017】
好適には、上記制御装置は、回転負荷及び/又は移動負荷と、被撹拌部の金属材料の温度との相関関係を示す関数又はマップを記憶した記憶・演算手段を備え、該記憶・演算手段は、回転負荷及び/又は移動負荷に基づき、金属材料の温度を所定の塑性流動温度に制御すべく、上記制御目標値を設定する。所望により、制御装置は、回転負荷検出手段又は移動負荷検出手段により検出された回転負荷又は移動負荷が所定範囲外の値を示すときに、異常を判定する異常判定手段を有する。
【0018】
本発明は又、金属材料を含むワークに対して、該ワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸及び回転子を押圧し、回転状態の前記回転軸及び回転子を前記ワークに摩擦接触せしめ、摩擦接触により発生する発熱で前記金属材料を塑性流動温度域に昇温し且つ軟化し、摩擦撹拌作用により前記金属材料の金属組織を微細化する摩擦撹拌方法において、
前記回転軸及び回転子の回転負荷を検出するとともに、前記回転軸及び回転子の移動負荷を検出し、前記回転負荷及び/又は移動負荷の検出値に基づき、前記金属材料の温度を塑性流動温度域に維持するように前記回転軸及び回転子の回転数及び/又は移動速度をフィードバック制御することを特徴とする摩擦撹拌方法を提供する。
【0019】
本発明の上記構成によれば、回転軸及び回転子の回転数及び/又は移動速度のフィードバック制御により、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、金属温度を塑性流動温度域に維持することができる。
【0020】
好ましくは、摩擦撹拌開始後の所定時間内、又は回転軸が摩擦撹拌開始後に所定距離移動するまで、回転数及び/又は移動速度のフィードバック制御実行を制限し、所定時間経過後又は所定距離移動後にフィードバック制御を実行する。更に好ましくは、回転負荷及び/又は移動負荷により検出した金属材料の温度に基づき、被撹拌部の金属温度の正常又は異常を判定する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る摩擦攪拌装置の全体構成を示す正面図であり、図2は、図1に示す回転ツール及びプローブ部分の構造を示す部分拡大断面図である。
【0022】
金属材料の表層を摩擦撹拌して金属組織を微細化し、金属材料の表面改質を行うように構成した摩擦撹拌装置1が、図1及び図2に示されている。摩擦攪拌装置1は、回転駆動装置11、回転ツール12及びプローブ13を有する。回転ツール12及びプローブ13は夫々、回転軸及び回転子を構成する。回転駆動装置11は、主軸移動装置16を介して支柱15に支持され、支柱15は、支持台14に垂直に固定される。ワークテーブル17が、支持台14上に配設され、アルミニウム合金又はマグネシウム合金等の軽金属鋳物からなるワーク2が、ワークテーブル17上に静置される。回転駆動装置11は、電動モータからなり、回転ツール12は、回転駆動装置11の作動時に、回転駆動装置11の回転駆動軸(図示せず)と一体的に回転する。主軸移動装置16は、回転駆動装置11をワーク2に対して垂直方向に相対移動させるとともに、回転駆動装置11をワーク2に対して水平方向に相対変位させる。主軸移動装置16は、制御ユニットC/U(図示せず)に接続され、制御ユニットC/Uの制御下に回転駆動装置11を垂直方向及び水平方向に移動させる。主軸移動装置16には、回転軸11の軸荷重を検出する荷重計6が配設される。
【0023】
回転ツール12は、主軸回転軸線CLを軸芯とした均一な円形横断面を有し、ワーク2の母材よりも高硬度且つ高融点の金属材料、例えば、ステンレス鋼の成形品からなる。図2に示す如く、回転ツール12の下端部は、ワーク2の上面を押圧可能な水平押圧面18を備える。押圧面18は、軟化金属の飛び出しを防止し且つ摩擦接触面積を確保するショルダー面を構成する。押圧面18の中心には、プローブ13の上部を受入可能な凹部19が形成される。プローブ13の上部は、凹部19内に挿入され、回転ツール12の本体部分に着脱可能に固定される。プローブ13の下部は、押圧面18の中心において主軸回転軸線CLと同心に下方に突出する。プローブ13も又、主軸回転軸線CLを軸芯とした均一な円形横断面を有し、ワーク2の母材よりも高硬度且つ高融点の金属材料、例えば、ステンレス鋼の成形品からなる。図2に示す如く、プローブ13の下部表面は、金属材料に添加すべき添加材3で被覆される。
【0024】
図3は、図1に示す摩擦攪拌装置における回転ツール12の軸負荷及びワーク部分の温度の関係を示す線図であり、図4(A)〜(C)は、表面改質工程を段階的に示す工程説明図である。また、図5は、摩擦攪拌時の状態を示す回転ツール先端部の拡大断面図であり、図6は、摩擦攪拌時の状態を示す斜視図である。
【0025】
図4(A)に示す如く、ワーク2は、摩擦攪拌装置1のワークテーブル17上に固定される。摩擦攪拌装置1の制御ユニットC/Uは、回転駆動装置11及び主軸移動装置16を作動し、回転ツール12及びプローブ13は、ワーク2の上面レベルに降下し且つ高速回転する。
【0026】
主軸移動装置16は、回転ツール12及びプローブ13をワーク2に対して水平移動させ、図4(B)に示すように、押圧面18によりワーク2上面を押圧した状態で回転ツール12及びプローブ13をワーク2の母材と摩擦接触せしめる。回転ツール12とワーク2との相対運動により発生する摩擦熱により、ワーク2の母材は軟化し、摩擦攪拌される。
【0027】
主軸移動装置16は、主軸の回転軸線方向Gに鉛直荷重Fを加え続けるとともに、回転ツール12を進行方向Hに水平移動させる。回転駆動装置11は、回転ツール12及びプローブ13の高速回転を維持し、押圧面18は、ワークWの表面を押圧し続ける。この結果、ワーク2の表層は、図4(C)及び図5に示す如く、回転ツール12の移動経路に沿って、摩擦攪拌による改質作用を受ける。
【0028】
摩擦撹拌時に温度上昇する金属は、金属固有の融点温度において固相から液相に状態変化する。金属は、融点温度以下の塑性流動温度域において流動化し、回転ツール12及びプローブ13の摩擦撹拌作用を受ける。融点温度を超える溶融温度域においては、金属を構成する合金成分が失われたり、過剰な摩擦撹拌により溶融液が飛散するなどの現象が生じるので、摩擦撹拌は、金属の塑性流動温度域において実施しなければならない。
【0029】
ここに、摩擦撹拌時の金属温度を正確且つ直接的に測定することは、非常に困難であるが、図3に示す如く、回転ツール12の軸負荷S(回転負荷、移動負荷)は、金属温度Tの上昇につれて低下する傾向を示す。従って、回転ツール12の軸負荷Sを測定し、これを指標として、比較的正確に金属温度Tを検出することができる。
【0030】
塑性流動温度域に相応する軸負荷Sの範囲ΔS1が、図3に図示されている。軸負荷Sが負荷範囲ΔS1に達しない負荷領域では、金属温度Tは、溶融温度域に達し、軸負荷Sが負荷範囲ΔS1を超える負荷領域では、十分な金属の流動性が得られない。従って、摩擦撹拌は、負荷範囲ΔS1内において実施され、所望の摩擦撹拌を達成し得る軸負荷Sの範囲ΔS2が、制御目標値として設定される。摩擦撹拌装置1の軸負荷Sは、以下の如く、制御目標値ΔS2を基準にフィードバック制御される。
【0031】
図7は、軸負荷Sとして検出すべき要素を概念的に示す回転ツール12の側面図であり、図8は、摩擦撹拌装置1の制御系構成を概略的に示すブロック図である。
【0032】
回転ツール12は、摩擦撹拌時に高速回転しながら進行方向Hに移動する際、半溶融状態の金属の流動抵抗が、回転ツール12の回転負荷として回転駆動装置11に作用するとともに、回転ツール12の移動負荷(送り負荷)として主軸移動装置16に作用する。回転負荷の変化は、回転駆動装置11の電流値変化として顕れ、移動負荷の変化は、回転ツール12のラジアル方向(径方向)反力の変化、即ち、主軸移動装置16の荷重変化として顕れる。従って、回転負荷は、回転駆動装置11に給電される電流の電流値変化を測定することにより検出することができ、移動負荷は、主軸移動装置16のラジアル方向の荷重値を荷重計6で測定することにより検出することができる。
【0033】
図1及び図8に示す如く、摩擦撹拌装置1は、回転駆動装置11及び主軸移動装置16の作動を制御する制御ユニットC/Uを備える。荷重計6は、回転ツール12及びプローブ13の移動負荷を検出する移動負荷検出手段を構成し、荷重計6及び制御ユニットC/Uを含む制御系(図8)は、摩擦攪拌装置1の制御装置を構成する。
制御ユニットC/Uの電源供給部には、摩擦撹拌装置1の動力が給電される。制御ユニットC/Uの回転制御部は、電流検出部により検出された回転駆動装置11の消費電力値に基づき、回転駆動部から回転駆動装置11に供給される作動電力を可変制御する。荷重計6の荷重検出値は、制御ユニットC/Uの移動制御部に入力され、移動制御部は、移動装置駆動部から主軸移動装置16に供給される作動電力を制御し、回転ツール12の軸線方向荷重及びラジアル方向荷重を可変制御する。なお、電流検出部は、回転ツール12及びプローブ13の回転負荷を検出する回転負荷検出手段を構成し、回転制御部及び移動制御部は、回転負荷及び移動負荷を基準に回転駆動装置11及び主軸移動装置16の制御目標値を調節する作動制御手段を構成する。
【0034】
図9は、制御ユニットC/Uが実行する制御フローを概略的に示すフローチャートである。
摩擦撹拌開始時には、回転ツール12が低温のワーク2に接触し、回転ツール12は、瞬間的に大きな移動抵抗(進行方向負荷)を受け、負荷ピーク等が生じる。摩擦熱による金属温度の上昇により、金属温度は安定し、摩擦撹拌装置1は、定常運転に移行する。制御ユニットC/Uは、撹拌条件が安定しない接触初期段階から定常運転に移行したことを検出すべく、初期判定を先ず実行する(S1)。初期判定は、摩擦撹拌装置1の作動開始後の経過時間、或いは、作動開始後の回転ツール12の移動距離に基づいて実行される。制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌装置1の作動開始後、所定時間が経過し、或いは、回転ツール12が所定距離移動したことを検出すると、負荷検出を開始する(S2)。
【0035】
制御ユニットC/Uの電流検出部は、回転駆動装置11の消費電流値を継続的に検出し、回転制御部は、消費電流値を常時監視する(S2)。制御ユニットC/Uの移動制御部には、荷重計6の荷重検出値が継続的に入力され、移動制御部は、回転ツール12のラジアル方向荷重を常時監視する(S2)。回転制御部及び移動制御部は、消費電流値及びラジアル方向荷重が所定範囲内の値を示すとき、回転ツール12の適正負荷を判定し、初期設定値に基づく回転駆動装置11及び主軸移動装置16の定常運転を維持する。
【0036】
制御ユニットC/Uは、消費電流値が所定値を超え、或いは、荷重計6のラジアル方向荷重が所定値を超えた場合、回転ツール12の過大負荷を判定し、他方、消費電流値が所定値未満に低下し、或いは、荷重計6のラジアル方向荷重値が所定値未満に低下したとき、回転ツール12の過小負荷を判定する(S3)。
【0037】
制御ユニットC/Uは、消費電流値及びラジアル方向荷重と金属温度との相関関係を関数化した関数式又は制御マップを記憶する記憶・演算部(図8)を内蔵しており、記憶・演算部は、過大負荷又は過小負荷状態が回転制御部又は移動制御部により検出されると、金属温度を制御目標範囲内に収束すべく、回転ツール12の回転数及び送り速度の最適値(目標電流値及び目標荷重値)を設定する。なお、記憶・演算部は、回転負荷及び移動負荷と、金属材料の温度との相関関係を示す関数又はマップを記憶した記憶・演算手段を構成する。
回転制御部は、記憶・演算部が設定した目標電流値に基づき、回転駆動装置11に対する供給電力を制御し、移動制御部は、記憶・演算部が設定した目標荷重値に基づき、主軸移動装置16に対する供給電力を制御する(S5)。例えば、制御ユニットC/Uは、過小負荷運転状態では、回転ツール12及びプローブ13の移動速度を増大し且つ回転速度を低下させ、これにより、金属温度を低下させる。他方、制御ユニットC/Uは、過大負荷状態を検出すると、回転ツール12及びプローブ13の移動速度を低下し且つ回転速度を増大する。この結果、金属温度は上昇する。
【0038】
制御ユニットC/Uは、このような負荷検出(S2)、負荷判断(S3)及び制御目標値変更(S5)のルーチンを継続的に実行し、消費電流値及びラジアル方向荷重に基づくフィードバック制御、即ち、回転負荷及び移動負荷の適正化ないし最適化により金属温度を塑性流動温度域内の所定温度に維持するフィードバック制御を実行する。
【0039】
摩擦撹拌装置1が、予め設定された所定距離を移動し、摩擦撹拌による表面改質を完了すると、制御ユニットC/Uは、このようなフィードバック制御を終了し、各種制御値を初期化する(S4)。
【0040】
このように、本実施形態によれば、摩擦撹拌装置1の制御ユニットC/Uは、被撹拌部の金属温度の指標として回転ツール12の回転負荷及び移動負荷を用い、過大負荷又は過小負荷を検出すると回転ツール12の制御目標値を設定変更し、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域内の所定温度に維持するように回転ツール12の回転数及び移動速度を調節するフィードバック制御を実行する。
【0041】
このような構成の摩擦撹拌装置1によれば、回転負荷及び移動負荷の適正化により被撹拌部の金属温度を塑性流動温度に確実に維持管理し得るので、肉厚が変化する偏肉ワークや、多種多様な形状の軽金属鋳物の如く、摩擦撹拌中に撹拌条件が変化するワークを確実に塑性流動温度域で摩擦撹拌することができ、この結果、摩擦撹拌作用は均一化し、製品の品質は安定する。
【0042】
なお、上記制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌開始時の条件不安定域においては、回転ツール2の送り速度及び回転数を一定値に制御する。しかしながら、制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌開始時に生じ得る負荷ピークを回避する回転数制御及び移動制御を実施しても良い。例えば、制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌開始時に回転ツール12の移動速度(進行方向速度)を低速から高速に段階的に変化させ、或いは、線形変化させ、初期の負荷ピーク発生を防止する。この場合、制御ユニットC/Uは、回転負荷を消費電流値より監視し、回転負荷が一定値に低下したことにより、金属温度安定を確認して回転ツールの移動速度を定常速度に設定変更するようにしても良く、或いは、回転負荷の低下に比例して回転ツール12の移動速度を増減する移動速度制御を行っても良い。このような初期制御によれば、摩擦撹拌初期に生じ易い空隙発生又は局所的強度低下等の不良を防止するとともに、急激な負荷変動や負荷ピーク発生による回転ツール12の寿命低下等の問題を解消し得る。また、このような初期制御は、金属部材端部における不良部分発生を防止する上で有効であるので、殊に、表面改質又は金属接合処理を施す金属部材が比較的短く、不良端部の切断処理を施し難い場合、有益である。
【0043】
また、制御ユニットC/Uは、軸負荷Sの範囲ΔS1を超えるような異常な軸負荷を検出したとき、異常警報を外部に発し、或いは、摩擦撹拌装置1の操作ディスプレイ上にエラー表示を表示する等の異常警報手段を備えても良い。
更に、上記実施形態では、荷重検出手段の構成要素として、回転ツール12のラジアル方向荷重値を測定する荷重計6を採用したが、主軸移動装置16の駆動電流値の変動や、消費電力値の変化などにより回転ツール12の移動負荷を検出するように荷重検出手段を構成することも可能である。
【0044】
なお、上記実施形態は、摩擦撹拌接合法を応用した金属表面の改質に関するものであるが、金属を接合する一般的な摩擦撹拌接合に上記構成を適用し得ることは、いうまでもない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の摩擦撹拌装置又は摩擦撹拌方法によれば、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、被撹拌部の金属温度を定常的に塑性流動温度域に維持管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦攪拌装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す回転ツール及びプローブ部分の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す摩擦攪拌装置における回転軸の軸負荷及びワーク部分の温度の関係を示す線図である。
【図4】表面改質工程を段階的に示す工程説明図である。
【図5】摩擦攪拌時の状態を示す回転ツール先端部の拡大断面図である。
【図6】摩擦攪拌時の状態を示す斜視図である。
【図7】回転負荷及び軸負荷として検出すべき要素を概念的に示す回転軸の側面図である。
【図8】摩擦撹拌装置の制御系構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】制御ユニットが実行する制御フローを概略的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 摩擦攪拌装置
2 ワーク
6 荷重計
11 回転駆動装置
12 回転ツール
13 プローブ
16 主軸移動装置
C/U 制御ユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法に関するものであり、より詳細には、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域に確実に維持管理する摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属成形品は、軽量で、しかも、熱放散性に優れるので、例えば、エンジンシリンダーブロック、シリンダーヘッド、ブレーキディスク、マニホールド等の自動車部品として使用される。
【0003】
このような金属成形品の製法として、鍛造法又は粉末焼結法等の採用も考慮し得るが、鍛造法又は粉末焼結法等の製法では、所望の設計自由度を得難く、成形可能な製品形状に限界が生じることから、一般には、設計自由度が高く、任意の形状又は複雑な形状の製品を成型し得る鋳造法が、この種の軽金属成形品の製法として採用される。
【0004】
軽金属成形品の鋳造法に関し、成形法自体に起因する課題、即ち、鋳物内部の凝固組織が不均一になり易く、巣や気孔等の鋳造欠陥が生じ易いという課題が長年に亘って指摘されている。しかしながら、組織の粗大化による素材特性のバラツキや品質低下等の鋳造法特有の課題は、容易には克服し難く、このため、素材を強化すべく、金属、セラミックス繊維等の添加による金属鋳物材料の複合化、圧接による鍛造材及び異種金属の接合、レーザーを用いたリメルト処理、更には、元素添加による合金化又は合金特性の改善等により、鋳造法の課題を克服する努力が払われてきた。
【0005】
このような鋳造法特有の課題を克服し得る手段として、近年、摩擦攪拌接合法(FSW法)を応用した鋳物材の表面改質技術が注目されている。摩擦撹拌接合法は、接合すべき金属材料の接合部に高融点且つ高硬度のロッド状回転工具を押圧し、回転工具の高速回転により発生する摩擦熱を利用して接合部の金属材料を軟化し、金属同士を接合する接合法として知られており、これは、固体溶接法又は固相接合法の一種である。このように金属溶融を伴わない摩擦撹拌接合法によれば、金属材料の合金成分が失われ難く、接合部が母材強度に近い接合強度を発揮するなど、多くの利点が得られる。
【0006】
摩擦撹拌接合法を応用した金属表面の改質方法においても又、表面改質すべき金属材よりも高融点且つ高硬度のロッド状回転工具を金属材の表面に加圧接触せしめた状態で回転工具を回転させ且つ移動させ、金属材の表層部を塑性流動温度域に加熱し且つ摩擦攪拌して、金属材表層部の金属組織を緻密化ないし微細化する。このような表面改質法によれば、摩擦攪拌時の発熱及び機械的エネルギーにより、鋳物材の表層を改質し得る(特許文献1〜3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−312980号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2000−336465号公報
【0009】
【特許文献3】
特開2001−32058号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この種の摩擦撹拌接合法及び表面改質方法では、半溶融状態の金属を回転軸及び回転子により撹拌するので、被撹拌部分の金属材料の温度を塑性流動温度域に維持管理する必要がある。例えば、金属の温度が塑性流動温度域に達しない状態で摩擦撹拌を継続すると、回転軸及び回転子が過大な回転抵抗及び移動抵抗を受け、回転軸又は回転子が損傷する虞がある。他方、金属温度が塑性流動温度域を超える場合、金属が溶融するので、所望の金属組成を達成し難いばかりでなく、回転軸先端のショルダー面で溶融金属を完全に押さえることができず、溶融金属が周囲に飛散する事態が懸念される。このため、従来の摩擦撹拌装置では、金属材料の温度を組成流動温度域に維持すべく、回転工具の回転数(回転速度)及び送り速度(移動速度)を常時一定値に維持しようとする。
【0011】
しかしながら、実際に接合又は改質すべき金属材料には、摩擦撹拌中に撹拌条件の変動又は変化をもたらす要因、例えば、肉厚の変化、金属組成の変化等があり、このような場合、従来の摩擦撹拌装置では、回転数及び送り速度を撹拌条件の変動又は変化に適切に追従させることができず、これに起因する接合不良、改質不良、金属溶融、回転工具損傷等が生じてしまう。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、撹拌条件の変化に影響されることなく被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域に維持管理することができる摩擦撹拌装置及び摩擦撹拌方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、金属材料を含むワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸及び回転子と、前記回転軸及び回転子を回転させる回転駆動装置と、前記回転軸及び回転子をワークに対して押圧し且つ相対移動させる主軸移動装置とを有し、前記金属材料を塑性流動温度域に昇温して軟化し、摩擦撹拌により前記金属材料の金属組織を微細化する摩擦撹拌装置において、
前記回転駆動装置及び主軸移動装置の作動を制御する制御装置を有し、該制御装置は、前記回転軸及び回転子の回転負荷を検出する回転負荷検出手段と、前記回転軸及び回転子の移動負荷を検出する移動負荷検出手段と、前記金属材料の温度を塑性流動温度域に維持すべく、回転負荷検出手段及び/又は移動負荷検出手段により検出された回転負荷及び/又は移動負荷を基準に前記回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の制御目標値を調節する作動制御手段とを備えたことを特徴とする摩擦撹拌装置を提供する。
【0014】
被撹拌部の金属温度が高い場合、金属の流動抵抗は比較的低く、他方、被撹拌部の金属温度が低い場合、金属の流動抵抗は比較的高く顕れる。本発明の上記構成によれば、制御装置の作動制御手段は、回転軸及び回転子の回転負荷及び/又は移動負荷の検出結果に基づき、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度に維持するように回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の制御目標値を調節し、制御装置は、この制御目標値に従って回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の作動を制御する。例えば、金属温度が上昇すると、回転負荷又は移動負荷は低下するので、制御装置は、回転軸及び回転子の移動速度を増大し、又は回転速度を低下させ、これにより、金属温度を低下させる。他方、金属温度が降下すると、回転負荷又は移動負荷は増大するので、制御装置は、回転軸及び回転子の移動速度を低下し、又は回転速度を増大し、これにより、金属温度を上昇させる。制御装置は、このような制御を継続することにより、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域の制御目標温度に維持管理する。
【0015】
好ましくは、上記制御装置は、摩擦撹拌開始後に所定時間経過した時期、又は上記回転軸が摩擦撹拌開始後に所定距離移動したとき、作動制御手段による制御目標値の調節を開始させる制御開始手段を更に有する。摩擦撹拌開始時には、回転軸及び回転子がワークに部分的にのみ接触するにすぎない状態や、ワークの金属温度が比較的低温であるため、回転負荷及び移動負荷と金属温度との相関関係は、定常運転時の相関関係と大きく相違する。このため、制御装置は、摩擦撹拌開始直後には、上述の制御を行わず、摩擦撹拌開始後に所定時間が経過し又は回転軸が所定距離移動した後に上述の制御を開始する。
【0016】
更に好ましくは、上記回転駆動装置は、回転軸を回転駆動する電動モータからなり、回転負荷検出手段は、電動モータの消費電力の計測により回転負荷を検出し、移動負荷検出手段は、回転軸及び回転子の進行方向の荷重を計測するための荷重計を含み、荷重計の計測値に基づき移動負荷を検出する。
【0017】
好適には、上記制御装置は、回転負荷及び/又は移動負荷と、被撹拌部の金属材料の温度との相関関係を示す関数又はマップを記憶した記憶・演算手段を備え、該記憶・演算手段は、回転負荷及び/又は移動負荷に基づき、金属材料の温度を所定の塑性流動温度に制御すべく、上記制御目標値を設定する。所望により、制御装置は、回転負荷検出手段又は移動負荷検出手段により検出された回転負荷又は移動負荷が所定範囲外の値を示すときに、異常を判定する異常判定手段を有する。
【0018】
本発明は又、金属材料を含むワークに対して、該ワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸及び回転子を押圧し、回転状態の前記回転軸及び回転子を前記ワークに摩擦接触せしめ、摩擦接触により発生する発熱で前記金属材料を塑性流動温度域に昇温し且つ軟化し、摩擦撹拌作用により前記金属材料の金属組織を微細化する摩擦撹拌方法において、
前記回転軸及び回転子の回転負荷を検出するとともに、前記回転軸及び回転子の移動負荷を検出し、前記回転負荷及び/又は移動負荷の検出値に基づき、前記金属材料の温度を塑性流動温度域に維持するように前記回転軸及び回転子の回転数及び/又は移動速度をフィードバック制御することを特徴とする摩擦撹拌方法を提供する。
【0019】
本発明の上記構成によれば、回転軸及び回転子の回転数及び/又は移動速度のフィードバック制御により、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、金属温度を塑性流動温度域に維持することができる。
【0020】
好ましくは、摩擦撹拌開始後の所定時間内、又は回転軸が摩擦撹拌開始後に所定距離移動するまで、回転数及び/又は移動速度のフィードバック制御実行を制限し、所定時間経過後又は所定距離移動後にフィードバック制御を実行する。更に好ましくは、回転負荷及び/又は移動負荷により検出した金属材料の温度に基づき、被撹拌部の金属温度の正常又は異常を判定する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る摩擦攪拌装置の全体構成を示す正面図であり、図2は、図1に示す回転ツール及びプローブ部分の構造を示す部分拡大断面図である。
【0022】
金属材料の表層を摩擦撹拌して金属組織を微細化し、金属材料の表面改質を行うように構成した摩擦撹拌装置1が、図1及び図2に示されている。摩擦攪拌装置1は、回転駆動装置11、回転ツール12及びプローブ13を有する。回転ツール12及びプローブ13は夫々、回転軸及び回転子を構成する。回転駆動装置11は、主軸移動装置16を介して支柱15に支持され、支柱15は、支持台14に垂直に固定される。ワークテーブル17が、支持台14上に配設され、アルミニウム合金又はマグネシウム合金等の軽金属鋳物からなるワーク2が、ワークテーブル17上に静置される。回転駆動装置11は、電動モータからなり、回転ツール12は、回転駆動装置11の作動時に、回転駆動装置11の回転駆動軸(図示せず)と一体的に回転する。主軸移動装置16は、回転駆動装置11をワーク2に対して垂直方向に相対移動させるとともに、回転駆動装置11をワーク2に対して水平方向に相対変位させる。主軸移動装置16は、制御ユニットC/U(図示せず)に接続され、制御ユニットC/Uの制御下に回転駆動装置11を垂直方向及び水平方向に移動させる。主軸移動装置16には、回転軸11の軸荷重を検出する荷重計6が配設される。
【0023】
回転ツール12は、主軸回転軸線CLを軸芯とした均一な円形横断面を有し、ワーク2の母材よりも高硬度且つ高融点の金属材料、例えば、ステンレス鋼の成形品からなる。図2に示す如く、回転ツール12の下端部は、ワーク2の上面を押圧可能な水平押圧面18を備える。押圧面18は、軟化金属の飛び出しを防止し且つ摩擦接触面積を確保するショルダー面を構成する。押圧面18の中心には、プローブ13の上部を受入可能な凹部19が形成される。プローブ13の上部は、凹部19内に挿入され、回転ツール12の本体部分に着脱可能に固定される。プローブ13の下部は、押圧面18の中心において主軸回転軸線CLと同心に下方に突出する。プローブ13も又、主軸回転軸線CLを軸芯とした均一な円形横断面を有し、ワーク2の母材よりも高硬度且つ高融点の金属材料、例えば、ステンレス鋼の成形品からなる。図2に示す如く、プローブ13の下部表面は、金属材料に添加すべき添加材3で被覆される。
【0024】
図3は、図1に示す摩擦攪拌装置における回転ツール12の軸負荷及びワーク部分の温度の関係を示す線図であり、図4(A)〜(C)は、表面改質工程を段階的に示す工程説明図である。また、図5は、摩擦攪拌時の状態を示す回転ツール先端部の拡大断面図であり、図6は、摩擦攪拌時の状態を示す斜視図である。
【0025】
図4(A)に示す如く、ワーク2は、摩擦攪拌装置1のワークテーブル17上に固定される。摩擦攪拌装置1の制御ユニットC/Uは、回転駆動装置11及び主軸移動装置16を作動し、回転ツール12及びプローブ13は、ワーク2の上面レベルに降下し且つ高速回転する。
【0026】
主軸移動装置16は、回転ツール12及びプローブ13をワーク2に対して水平移動させ、図4(B)に示すように、押圧面18によりワーク2上面を押圧した状態で回転ツール12及びプローブ13をワーク2の母材と摩擦接触せしめる。回転ツール12とワーク2との相対運動により発生する摩擦熱により、ワーク2の母材は軟化し、摩擦攪拌される。
【0027】
主軸移動装置16は、主軸の回転軸線方向Gに鉛直荷重Fを加え続けるとともに、回転ツール12を進行方向Hに水平移動させる。回転駆動装置11は、回転ツール12及びプローブ13の高速回転を維持し、押圧面18は、ワークWの表面を押圧し続ける。この結果、ワーク2の表層は、図4(C)及び図5に示す如く、回転ツール12の移動経路に沿って、摩擦攪拌による改質作用を受ける。
【0028】
摩擦撹拌時に温度上昇する金属は、金属固有の融点温度において固相から液相に状態変化する。金属は、融点温度以下の塑性流動温度域において流動化し、回転ツール12及びプローブ13の摩擦撹拌作用を受ける。融点温度を超える溶融温度域においては、金属を構成する合金成分が失われたり、過剰な摩擦撹拌により溶融液が飛散するなどの現象が生じるので、摩擦撹拌は、金属の塑性流動温度域において実施しなければならない。
【0029】
ここに、摩擦撹拌時の金属温度を正確且つ直接的に測定することは、非常に困難であるが、図3に示す如く、回転ツール12の軸負荷S(回転負荷、移動負荷)は、金属温度Tの上昇につれて低下する傾向を示す。従って、回転ツール12の軸負荷Sを測定し、これを指標として、比較的正確に金属温度Tを検出することができる。
【0030】
塑性流動温度域に相応する軸負荷Sの範囲ΔS1が、図3に図示されている。軸負荷Sが負荷範囲ΔS1に達しない負荷領域では、金属温度Tは、溶融温度域に達し、軸負荷Sが負荷範囲ΔS1を超える負荷領域では、十分な金属の流動性が得られない。従って、摩擦撹拌は、負荷範囲ΔS1内において実施され、所望の摩擦撹拌を達成し得る軸負荷Sの範囲ΔS2が、制御目標値として設定される。摩擦撹拌装置1の軸負荷Sは、以下の如く、制御目標値ΔS2を基準にフィードバック制御される。
【0031】
図7は、軸負荷Sとして検出すべき要素を概念的に示す回転ツール12の側面図であり、図8は、摩擦撹拌装置1の制御系構成を概略的に示すブロック図である。
【0032】
回転ツール12は、摩擦撹拌時に高速回転しながら進行方向Hに移動する際、半溶融状態の金属の流動抵抗が、回転ツール12の回転負荷として回転駆動装置11に作用するとともに、回転ツール12の移動負荷(送り負荷)として主軸移動装置16に作用する。回転負荷の変化は、回転駆動装置11の電流値変化として顕れ、移動負荷の変化は、回転ツール12のラジアル方向(径方向)反力の変化、即ち、主軸移動装置16の荷重変化として顕れる。従って、回転負荷は、回転駆動装置11に給電される電流の電流値変化を測定することにより検出することができ、移動負荷は、主軸移動装置16のラジアル方向の荷重値を荷重計6で測定することにより検出することができる。
【0033】
図1及び図8に示す如く、摩擦撹拌装置1は、回転駆動装置11及び主軸移動装置16の作動を制御する制御ユニットC/Uを備える。荷重計6は、回転ツール12及びプローブ13の移動負荷を検出する移動負荷検出手段を構成し、荷重計6及び制御ユニットC/Uを含む制御系(図8)は、摩擦攪拌装置1の制御装置を構成する。
制御ユニットC/Uの電源供給部には、摩擦撹拌装置1の動力が給電される。制御ユニットC/Uの回転制御部は、電流検出部により検出された回転駆動装置11の消費電力値に基づき、回転駆動部から回転駆動装置11に供給される作動電力を可変制御する。荷重計6の荷重検出値は、制御ユニットC/Uの移動制御部に入力され、移動制御部は、移動装置駆動部から主軸移動装置16に供給される作動電力を制御し、回転ツール12の軸線方向荷重及びラジアル方向荷重を可変制御する。なお、電流検出部は、回転ツール12及びプローブ13の回転負荷を検出する回転負荷検出手段を構成し、回転制御部及び移動制御部は、回転負荷及び移動負荷を基準に回転駆動装置11及び主軸移動装置16の制御目標値を調節する作動制御手段を構成する。
【0034】
図9は、制御ユニットC/Uが実行する制御フローを概略的に示すフローチャートである。
摩擦撹拌開始時には、回転ツール12が低温のワーク2に接触し、回転ツール12は、瞬間的に大きな移動抵抗(進行方向負荷)を受け、負荷ピーク等が生じる。摩擦熱による金属温度の上昇により、金属温度は安定し、摩擦撹拌装置1は、定常運転に移行する。制御ユニットC/Uは、撹拌条件が安定しない接触初期段階から定常運転に移行したことを検出すべく、初期判定を先ず実行する(S1)。初期判定は、摩擦撹拌装置1の作動開始後の経過時間、或いは、作動開始後の回転ツール12の移動距離に基づいて実行される。制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌装置1の作動開始後、所定時間が経過し、或いは、回転ツール12が所定距離移動したことを検出すると、負荷検出を開始する(S2)。
【0035】
制御ユニットC/Uの電流検出部は、回転駆動装置11の消費電流値を継続的に検出し、回転制御部は、消費電流値を常時監視する(S2)。制御ユニットC/Uの移動制御部には、荷重計6の荷重検出値が継続的に入力され、移動制御部は、回転ツール12のラジアル方向荷重を常時監視する(S2)。回転制御部及び移動制御部は、消費電流値及びラジアル方向荷重が所定範囲内の値を示すとき、回転ツール12の適正負荷を判定し、初期設定値に基づく回転駆動装置11及び主軸移動装置16の定常運転を維持する。
【0036】
制御ユニットC/Uは、消費電流値が所定値を超え、或いは、荷重計6のラジアル方向荷重が所定値を超えた場合、回転ツール12の過大負荷を判定し、他方、消費電流値が所定値未満に低下し、或いは、荷重計6のラジアル方向荷重値が所定値未満に低下したとき、回転ツール12の過小負荷を判定する(S3)。
【0037】
制御ユニットC/Uは、消費電流値及びラジアル方向荷重と金属温度との相関関係を関数化した関数式又は制御マップを記憶する記憶・演算部(図8)を内蔵しており、記憶・演算部は、過大負荷又は過小負荷状態が回転制御部又は移動制御部により検出されると、金属温度を制御目標範囲内に収束すべく、回転ツール12の回転数及び送り速度の最適値(目標電流値及び目標荷重値)を設定する。なお、記憶・演算部は、回転負荷及び移動負荷と、金属材料の温度との相関関係を示す関数又はマップを記憶した記憶・演算手段を構成する。
回転制御部は、記憶・演算部が設定した目標電流値に基づき、回転駆動装置11に対する供給電力を制御し、移動制御部は、記憶・演算部が設定した目標荷重値に基づき、主軸移動装置16に対する供給電力を制御する(S5)。例えば、制御ユニットC/Uは、過小負荷運転状態では、回転ツール12及びプローブ13の移動速度を増大し且つ回転速度を低下させ、これにより、金属温度を低下させる。他方、制御ユニットC/Uは、過大負荷状態を検出すると、回転ツール12及びプローブ13の移動速度を低下し且つ回転速度を増大する。この結果、金属温度は上昇する。
【0038】
制御ユニットC/Uは、このような負荷検出(S2)、負荷判断(S3)及び制御目標値変更(S5)のルーチンを継続的に実行し、消費電流値及びラジアル方向荷重に基づくフィードバック制御、即ち、回転負荷及び移動負荷の適正化ないし最適化により金属温度を塑性流動温度域内の所定温度に維持するフィードバック制御を実行する。
【0039】
摩擦撹拌装置1が、予め設定された所定距離を移動し、摩擦撹拌による表面改質を完了すると、制御ユニットC/Uは、このようなフィードバック制御を終了し、各種制御値を初期化する(S4)。
【0040】
このように、本実施形態によれば、摩擦撹拌装置1の制御ユニットC/Uは、被撹拌部の金属温度の指標として回転ツール12の回転負荷及び移動負荷を用い、過大負荷又は過小負荷を検出すると回転ツール12の制御目標値を設定変更し、被撹拌部の金属温度を塑性流動温度域内の所定温度に維持するように回転ツール12の回転数及び移動速度を調節するフィードバック制御を実行する。
【0041】
このような構成の摩擦撹拌装置1によれば、回転負荷及び移動負荷の適正化により被撹拌部の金属温度を塑性流動温度に確実に維持管理し得るので、肉厚が変化する偏肉ワークや、多種多様な形状の軽金属鋳物の如く、摩擦撹拌中に撹拌条件が変化するワークを確実に塑性流動温度域で摩擦撹拌することができ、この結果、摩擦撹拌作用は均一化し、製品の品質は安定する。
【0042】
なお、上記制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌開始時の条件不安定域においては、回転ツール2の送り速度及び回転数を一定値に制御する。しかしながら、制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌開始時に生じ得る負荷ピークを回避する回転数制御及び移動制御を実施しても良い。例えば、制御ユニットC/Uは、摩擦撹拌開始時に回転ツール12の移動速度(進行方向速度)を低速から高速に段階的に変化させ、或いは、線形変化させ、初期の負荷ピーク発生を防止する。この場合、制御ユニットC/Uは、回転負荷を消費電流値より監視し、回転負荷が一定値に低下したことにより、金属温度安定を確認して回転ツールの移動速度を定常速度に設定変更するようにしても良く、或いは、回転負荷の低下に比例して回転ツール12の移動速度を増減する移動速度制御を行っても良い。このような初期制御によれば、摩擦撹拌初期に生じ易い空隙発生又は局所的強度低下等の不良を防止するとともに、急激な負荷変動や負荷ピーク発生による回転ツール12の寿命低下等の問題を解消し得る。また、このような初期制御は、金属部材端部における不良部分発生を防止する上で有効であるので、殊に、表面改質又は金属接合処理を施す金属部材が比較的短く、不良端部の切断処理を施し難い場合、有益である。
【0043】
また、制御ユニットC/Uは、軸負荷Sの範囲ΔS1を超えるような異常な軸負荷を検出したとき、異常警報を外部に発し、或いは、摩擦撹拌装置1の操作ディスプレイ上にエラー表示を表示する等の異常警報手段を備えても良い。
更に、上記実施形態では、荷重検出手段の構成要素として、回転ツール12のラジアル方向荷重値を測定する荷重計6を採用したが、主軸移動装置16の駆動電流値の変動や、消費電力値の変化などにより回転ツール12の移動負荷を検出するように荷重検出手段を構成することも可能である。
【0044】
なお、上記実施形態は、摩擦撹拌接合法を応用した金属表面の改質に関するものであるが、金属を接合する一般的な摩擦撹拌接合に上記構成を適用し得ることは、いうまでもない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の摩擦撹拌装置又は摩擦撹拌方法によれば、摩擦撹拌中に生じ得る撹拌条件の変化に適切に追従し、被撹拌部の金属温度を定常的に塑性流動温度域に維持管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る摩擦攪拌装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】図1に示す回転ツール及びプローブ部分の構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】図1に示す摩擦攪拌装置における回転軸の軸負荷及びワーク部分の温度の関係を示す線図である。
【図4】表面改質工程を段階的に示す工程説明図である。
【図5】摩擦攪拌時の状態を示す回転ツール先端部の拡大断面図である。
【図6】摩擦攪拌時の状態を示す斜視図である。
【図7】回転負荷及び軸負荷として検出すべき要素を概念的に示す回転軸の側面図である。
【図8】摩擦撹拌装置の制御系構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】制御ユニットが実行する制御フローを概略的に示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 摩擦攪拌装置
2 ワーク
6 荷重計
11 回転駆動装置
12 回転ツール
13 プローブ
16 主軸移動装置
C/U 制御ユニット
Claims (9)
- 金属材料を含むワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸及び回転子と、前記回転軸及び回転子を回転させる回転駆動装置と、前記回転軸及び回転子をワークに対して押圧し且つ相対移動させる主軸移動装置とを有し、前記金属材料を塑性流動温度域に昇温して軟化し、摩擦撹拌により前記金属材料の金属組織を微細化する摩擦撹拌装置において、
前記回転駆動装置及び主軸移動装置の作動を制御する制御装置を有し、該制御装置は、前記回転軸及び回転子の回転負荷を検出する回転負荷検出手段と、前記回転軸及び回転子の移動負荷を検出する移動負荷検出手段と、前記金属材料の温度を塑性流動温度域に維持すべく、回転負荷検出手段及び/又は移動負荷検出手段により検出された回転負荷及び/又は移動負荷を基準に前記回転駆動装置及び/又は主軸移動装置の制御目標値を調節する作動制御手段とを備えたことを特徴とする摩擦撹拌装置。 - 前記制御装置は、摩擦撹拌開始後に所定時間経過した時期、又は前記回転軸が摩擦撹拌開始後に所定距離移動したとき、前記作動制御手段による制御目標値の調節を開始させる制御開始手段を更に有することを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌装置。
- 前記回転駆動装置は、前記回転軸を回転駆動する電動モータからなり、前記回転負荷検出手段は、前記電動モータの消費電力の計測により前記回転負荷を検出することを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌装置。
- 前記移動負荷検出手段は、前記回転軸及び回転子の進行方向の荷重を計測する荷重計を含み、該荷重計の計測値に基づき前記移動負荷を検出することを特徴とする請求項1に記載の摩擦撹拌装置。
- 前記制御装置は、前記回転負荷及び/又は移動負荷と、被撹拌部の金属材料の温度との相関関係を示す関数又はマップを記憶した記憶・演算手段を備え、該記憶・演算手段は、前記回転負荷及び/又は移動負荷に基づき、金属材料の温度を所定の塑性流動温度に制御するように前記制御目標値を設定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の摩擦撹拌装置。
- 前記制御装置は、回転負荷検出手段又は移動負荷検出手段により検出された回転負荷又は移動負荷が所定範囲外の値を示すときに、金属温度の異常を判定する異常判定手段を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の摩擦撹拌装置。
- 金属材料を含むワークに対して、該ワークよりも高硬度且つ高融点の素材からなる回転軸及び回転子を押圧し、回転状態の前記回転軸及び回転子を前記ワークに摩擦接触せしめ、摩擦接触により発生する発熱で前記金属材料を塑性流動温度域に昇温し且つ軟化し、摩擦撹拌作用により前記金属材料の金属組織を微細化する摩擦撹拌方法において、
前記回転軸及び回転子の回転負荷を検出するとともに、前記回転軸及び回転子の移動負荷を検出し、前記回転負荷及び/又は移動負荷の検出値に基づき、前記金属材料の温度を塑性流動温度域に維持するように前記回転軸及び回転子の回転数及び/又は移動速度をフィードバック制御することを特徴とする摩擦撹拌方法。 - 摩擦撹拌開始後の所定時間内、又は前記回転軸が摩擦撹拌開始後に所定距離移動するまで、前記回転数及び/又は移動速度のフィードバック制御実行を禁止し、前記所定時間経過後又は所定距離移動後に前記フィードバック制御を実行することを特徴とする請求項7に記載の摩擦撹拌方法。
- 前記回転負荷及び/又は移動負荷により検出した前記金属材料の温度により、被撹拌部の金属温度の正常又は異常を判定することを特徴とする請求項7又は8に記載の摩擦撹拌方法。
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