JP2004249179A - 空気浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】一旦フィルタに捕捉されていた花粉などやこれらに含まれるアレルゲンが衝撃などによってフィルタから離脱したとしてもアレルギー疾患を引き起こさないようにするための空気浄化装置を提供する。
【解決手段】空気浄化装置は、途中にフィルタとしてのHEPAフィルタ3014を有する送風経路と、この送風経路を通るように空気の流れを生じさせる送風手段としてのファン3017およびファンモータ3018と、送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるための第1イオン発生素子としてのイオン発生素子3011を備える。イオン発生素子3011は、HEPAフィルタ3014に隣接する位置に配置されている。好ましくはHEPAフィルタ3014の直後に配置されている。
【選択図】 図9
【解決手段】空気浄化装置は、途中にフィルタとしてのHEPAフィルタ3014を有する送風経路と、この送風経路を通るように空気の流れを生じさせる送風手段としてのファン3017およびファンモータ3018と、送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるための第1イオン発生素子としてのイオン発生素子3011を備える。イオン発生素子3011は、HEPAフィルタ3014に隣接する位置に配置されている。好ましくはHEPAフィルタ3014の直後に配置されている。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、花粉などによるアレルギー症状の発症を防止するための空気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住環境の変化に伴い、たとえば、人のアレルギー疾患の原因となる花粉などのような、空気中の有害な浮遊物質を取り除き、健康で快適な生活を送りたいという要望が強くなっている。この要望に応えるため、各種のフィルタを備えた装置が開発されている。たとえば、特開平8−173843号公報(特許文献1)に開示される空気清浄装置がある。
【0003】
このような装置では、空間の空気を吸引してフィルタにより花粉その他の浮遊物質を吸着もしくは濾過する方式であるため、長期にわたる使用においては、フィルタの交換などのメンテナンスが不可欠である。しかもフィルタの特性が充分でないため満足のいく性能が得られない場合がある。
【0004】
また、従来のこの種の装置では、空間の空気を吸引してフィルタにより花粉などを吸着若しくはろ過する方式であるため、花粉などが一旦フィルタに捕捉された後でも、運転の開始時や停止時、あるいは物理的な衝撃、あるいは湿気などによる化学的作用などにより、捕捉されていた花粉などがフィルタから再離脱することが知られている。再離脱した花粉などは、人にアレルギー疾患を起こさせる原因となりうる。
【0005】
そこで、このような問題点を解消した花粉の処理装置として、特開平7−807号公報(特許文献2)に開示された装置がある。この装置は、壁面に加熱手段を配置した恒温槽を備えており、吸気口から取りこまれて恒温槽の内部を通過する花粉に対して熱を加えることによって抗原タンパク質に変性または化学反応を生じさせて、失活させる方式である。
【0006】
しかし、このような加熱手段を備える方式では、空気自体を加熱してしまい、不所望な室温の上昇をもたらしてしまう。また、同文献には酸やアルカリなどの使用によって失活させる方法も開示されているが、酸やアルカリの使用は、人体に対する悪影響が懸念される。ほかに電磁波の照射やコロナ放電の使用について開示されているが、これらを抗原性物質の失活に十分な程度使用するとなると、条件によっては人体に対する悪影響が問題となる可能性がある。
【0007】
ほかに、フィルタと紫外線との組合せでスギ花粉を失活させる装置としては、特開平6−154298号公報(特許文献3)に開示されたものや、特開2000−111106号公報(特許文献4)に開示されたものがある。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−173843号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平7−807号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平6−154298号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−111106号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、花粉その他の浮遊物質やこれらの浮遊物質に含まれるアレルゲン、あるいは、それ自体が浮遊するアレルゲン(以下「浮遊アレルゲン」という。)などによるアレルギー疾患をなるべく引き起こさないように、空気を浄化するための空気浄化装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、一旦フィルタに捕捉されていた花粉その他の浮遊物質やこれらに含まれるアレルゲンあるいは一旦フィルタに捕捉されていた浮遊アレルゲンなどが衝撃などによってフィルタから離脱したとしてもアレルギー疾患をなるべく引き起こさないようにするための空気浄化装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に基づく空気浄化装置は、途中にフィルタを有する送風経路と、上記送風経路を通るように空気の流れを生じさせる送風手段と、上記送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるための第1イオン発生素子とを備える。ただし、上記第1イオン発生素子は、上記フィルタに隣接する位置に配置されている。この構成を採用することにより、フィルタを通過する浮遊物質や浮遊アレルゲン、あるいは、フィルタから再離脱する浮遊物質や飛散するアレルゲンを第1イオン発生素子から発生する正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0015】
上記発明において好ましくは、上記第1イオン発生素子は、上記フィルタの直後に配置されている。この構成を採用することにより、フィルタを通過したり、フィルタから後ろ側に再離脱するアレルゲンを正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0016】
上記発明において好ましくは、第1イオン発生素子以外に、第2イオン発生素子が、上記フィルタの直前に配置されている。第2イオン発生素子も上記送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるためのものである。この構成を採用することにより、フィルタから前側に再離脱するアレルゲンを正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0017】
上記発明において好ましくは、第2イオン発生素子は、上記送風経路の上側に配置されている。この構成を採用することにより、正負イオンを送風経路に効率良く拡散させることができる。
【0018】
第2イオン発生素子がない場合、第1イオン発生素子は、上記フィルタの直後でなく直前に配置されていることとしても好ましい。この構成を採用することにより、フィルタから前側に再離脱するアレルゲンを正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0019】
上記発明において好ましくは、上記第1イオン発生素子は、上記フィルタと略同一面上に配置されている。この構成を採用することにより、空気浄化装置のコンパクト化を図ることができる。
【0020】
上記発明において好ましくは、上記第1イオン発生素子は、上記送風経路の上側に配置されている。この構成を採用することにより、正負イオンを送風経路に効率良く拡散させることができる。
【0021】
上記発明において好ましくは、上記送風経路を通った空気を外部に放出するための吹出し口と、正負両方のイオンを発生させるための第3イオン発生素子とを備え、上記第3イオン発生素子は、上記吹出し口の直前に配置されている。この構成を採用することにより、送風経路を通過する空気に含まれるアレルゲンをより確実に失活させることができる。
【0022】
上記発明において好ましくは、オン/オフ操作するためのスイッチと、上記スイッチをオンにしたときに、上記第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始し、その後に上記送風手段の動作が開始するようにタイミングを制御するオン時制御手段とを備える。第1〜第3イオン発生素子の3つを備えずに第1イオン発生素子のみを備える場合や、第1,第2イオン発生素子の2つのみを備える場合についても同様である。この構成を採用することにより、送風手段の動作開始時の衝撃や振動によってフィルタから再離脱するアレルゲンに対しても十分な量の正負両方のイオンを送風経路内に用意しておくことができ、より確実に失活させることができる。
【0023】
あるいは、上記発明において好ましくは、オン/オフ操作するためのスイッチと、上記スイッチをオフにしたときに、上記送風手段の動作を停止し、その後にも上記第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続し、その後に上記第1〜第3イオン発生素子のすべてが動作を停止するようにタイミングを制御するオフ時制御手段とを備える。第1〜第3イオン発生素子の3つを備えずに第1イオン発生素子のみを備える場合や、第1,第2イオン発生素子の2つのみを備える場合についても同様である。この構成を採用することにより、送風手段の動作停止時の衝撃や振動によってフィルタから再離脱するアレルゲンに対しても十分な量の正負両方のイオンを接触させることができ、より確実に失活させることができる。
【0024】
上記発明において好ましくは、イオン発生素子は、100000個/cm3以上の濃度で正負両方のイオンを発生させる。ここで述べた濃度は、正イオンが100000個/cm3以上であり、かつ、負イオンが100000個/cm3以上という意味である。このようにすることで、花粉アレルゲンの失活を促進することができる。この場合においては、正負両方のイオンを、室内に放出するかまたは室内空気と混合するだけでも空気浄化を効果的に促進することができる。
【0025】
上記発明において好ましくは、上記イオン発生素子が発生させる正負両方のイオンは、正イオンはH3O+(H2O)n(nは0または自然数)を主体とし、負イオンはO2 −(H2O)m(mは0または自然数)を主体とするものである。こうすることで、正負両方のイオンの作用で空気浄化を効果的に促進することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(アレルゲン)
本発明において「アレルゲン」とは、スギ、ヒノキ、ブタクサ、オオアワガエリ、ヨモギなどの花粉や、ダニなどの生物に含まれる物質であって、生体に作用することにより抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応を生じさせる物質をいうものとする。通常、アレルゲンは、タンパク質もしくは糖タンパク質からなるものであるが、その形状または大きさは特に限定されず、それらのタンパク質や糖タンパク質自体の分子状のもの、あるいはそれらが集合して粒子状になったもの、またあるいはその分子状のものの一部である抗原決定基などが含まれるものとする。
【0027】
(アレルゲンの失活)
また、本発明において「失活」とは、アレルゲンを変成ないし分解することにより、活性なアレルゲンを消滅させることのみならず、活性なアレルゲンの数を減少させること、および個々のアレルゲンの活性度を低下させることをも含むものとする。
【0028】
(参考とした試験)
発明者は、アレルギー疾患の発生を効果的に防止することが可能な空気調節装置を開発するに際して、以下に示す試験の結果を参考とした。
【0029】
試験は、花粉から抽出したアレルゲンを高濃度の正負両方のイオンを含む雰囲気中にさらすことにより、アレルゲンが失活するかどうか、またアレルゲンが失活した場合にどの程度失活するかを検証したものである。以下においては、この試験の試験方法および試験結果について説明する。
【0030】
(A.試験方法)
まず、ニホンスギ(学名:Cryptomeria Japonica)から採取したスギ花粉を化学処理し、スギ抗原性物質(略称:CJP)を得た。このスギ抗原性物質には、主要なアレルゲン蛋白質として、Cry j1およびCry j2が含まれている。
【0031】
つづいて、フォーリン−ローリー(Folin−Lowry)法により、スギ抗原性物質の蛋白量を定量した。
【0032】
次に、スギ抗原性物質を含んだ溶液を密閉空間内にて噴霧器を用いて噴霧し、回収した。このとき、密閉空間内に正負両方のイオンを放出するイオン発生装置を取付けた。そして、イオン発生装置を動作させて密閉空間内の正負両方のイオン濃度を平均1×105個/cm3に維持した雰囲気中で噴霧されたサンプルと、イオン発生装置を動作させることなく通常の雰囲気中で噴霧されたサンプルとを得た。なお、本明細書では「イオン濃度」とは、臨界移動度が1cm2/V・秒以上の小イオンの濃度を意味している。このような条件を満たす小イオンの濃度の測定は、空気イオンカウンター(ダン科学製空気イオンカウンタ(品番83−1001B))を用いて行なった。
【0033】
この2つのサンプルを比較することにより、イオン処理によってアレルゲンが失活したかどうか、またアレルゲンの失活がどの程度生じたかを評価した。評価方法としては、以下の4つの評価方法が実施された。
【0034】
第1の評価方法は、イライザ(ELISA:Enzyme−linked Immunosorbent Assay)法による評価である。イライザ法は、サンプルを花粉症患者から抽出した血清IgE(免疫グロブリンE)抗体と反応させ、その蛍光強度を測定することによりアレルゲンの活性度を評価するものである。また、サンプルのスギ抗原性物質をCry j1とCry j2とに遠心分離し、モノクローナル抗体と反応させることによってどの程度反応性が低下しているかを評価する。
【0035】
第2の評価方法は、イライザ・インヒビション(ELISA inhibition:Enzyme−linked Immunosorbent Assay inhibition)法による評価である。イライザ・インヒビション法は、上述のイライザ法を用いて血清IgE抗体とアレルゲンの反応性を定量的に比較評価するものである。
【0036】
第3の評価方法は、皮内反応試験と呼ばれる評価方法である。皮内反応試験は、花粉症患者の前腕屈側皮内にスギ抗原性物質を含む溶液を注射し、その後に現れる炎症の大きさによりアレルゲンの失活状況を評価するものである。
【0037】
第4の評価方法は、結膜反応試験と呼ばれる評価方法である。結膜反応試験は、花粉症患者の眼にスギ抗原性物質を含む溶液を滴下し、その後に現れる充血の程度によりアレルゲンの失活状況を評価するものである。
【0038】
(B.試験結果)
図1から図4は、上述の第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。図1から図4に示すように、スギ抗原性物質にイオン処理を施すことにより、患者19から60までの合計42人の花粉症患者のうち、患者40、患者49、患者54および患者57を除く38人の花粉症患者の血清IgE抗体との間で、スギ抗原性物質の抗原抗体反応の反応性が低下していることが確認された(蛍光強度が小さいほど、反応性が低下していることを示している)。また、抗原抗体反応の反応性の低下が確認された38人の花粉症患者のうち、33人の花粉症患者においては、著しい抗原抗体反応の反応性の低下が確認された。
【0039】
図5は、上述の第1の評価方法による他の試験結果を示すグラフである。図5に示すように、Cry j1とモノクローナル抗体との反応性は、未処理のスギ抗原性物質に比べてイオン処理を施したスギ抗原性物質では約5分の1に低下している。Cry j2とモノクローナル抗体との反応性においてもイオン処理を施したスギ抗原性物質では2分の1以下に低下していることが確認された。
【0040】
図6は、上述の第2の評価方法による試験結果を示すグラフである。図6に示すように、イオン処理を施していないスギ抗原性物質においては、50%阻害(スギ抗原性物質の血清IgE抗体に対する反応率を50%に低下させること)に必要なスギ抗原性物質の量は約2.53×103pg/wellであるのに対し、イオン処理を施したスギ抗原性物質では、50%阻害に必要なスギ抗原性物質の量が1.34×104pg/wellにまで低下していることが分かった。すなわち、50%阻害に必要なスギ抗原性物質の量は、イオン処理済みのものでは未処理のものの場合の約5.3倍にもなることが確認された。
【0041】
表1に、上述の第3の評価方法による試験結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
ここで、表1においては、注射によって生じる炎症のうち、紅斑が10mm未満の場合を「−」、紅斑が10mm以上20mm未満の場合を「±」、紅斑が20mm以上30mm未満であるか、または膨疹が10mm未満の場合を「+」、紅斑が30mm以上40mm未満であるか、または膨疹が10mm以上15mm未満の場合を「++」、紅斑が40mm以上か、または膨疹が15mm以上の場合を「+++」とした。
【0044】
表1に示すように、花粉症患者AからFの6人全員に対して皮内反応性の低下が確認された。
【0045】
表2に、上述の第4の評価方法による試験結果を示す。なお、患者AからFは、上述の皮内反応試験における患者と同一人である。
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、表2においては、滴下によって生じる結膜反応のうち、充血が認められない場合を「−」、僅かに充血が認められ痒み感のある場合を「±」、球結膜上部または下部のいずれかに充血の認められる場合を「+」、球結膜上部または下部のいずれにも充血が認められる場合を「++」、球結膜全体に充血が認められる場合を「+++」、眼瞼の浮腫等が認められる場合を「++++」とした。
【0048】
表2に示すように、花粉症患者AからFの6人のうち、患者Aを除く5人に対して、結膜反応性の低下が確認された。
【0049】
以上の試験結果より、アレルゲンを失活させる方法として、アレルゲンを高濃度の正負両イオンを含む雰囲気中に晒すことが非常に効果的であることがわかる。これは、以下のメカニズムによって生ずるものと解される。
【0050】
まず、空間に正負両方のイオンが放出される。ここでいう正負両方のイオンとは、正イオンとしてはH3O+(H2O)n(nは0または自然数)を主体とし、負イオンとしてはO2 −(H2O)m(mは0または自然数)を主体とするものを意味する。この放出された正負両方のイオンが空気中に浮遊しているアレルゲンを取り囲む。するとアレルゲンの表面で正負両イオンが以下のような化学反応(1)および(2)を起こす。そして、この反応によって生じると考えられる活性種である過酸化水素H2O2、二酸化水素HO2またはヒドロキシラジカル・OHが、アレルゲンの抗体反応部位を変成または分解する。これにより、アレルゲンが失活するものと考えられる。
【0051】
【化1】
【0052】
なお、上記の説明においては、正イオンとしてH3O+(H2O)n(nは0または自然数)、負イオンとしてO2 −(H2O)m(mは0または自然数)をそれぞれ中心に述べてきたが、本発明における正負のイオンはこれらに限定されるものではない。上記2種類の正負のイオンをそれぞれ主体としつつ、たとえば、正イオンとしてはたとえばN2 +、O2 +などを、負イオンとしてはたとえばNO2 −、CO2 −などをそれぞれ含んでいたとしても同様の効果が期待できる。
【0053】
またここで、正イオンとして記載したH3O+(H2O)n(nは0または自然数)は、表記方法を変更するとH+(H2O)n(nは自然数)と記述することが可能であり、同等のイオンを示すものである。
【0054】
また、上記試験結果によって、上記正負イオンが花粉のアレルゲンの失活化に対して効果的であることが理解されるが、ダニなどの有するアレルゲンに対しても同様の効果があることが推測される。
【0055】
(実施の形態1)
(構成)
図7を参照して、本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、筐体に吸込み口3012と吹出し口3016とを有し、筐体の内部に吸込み口3012から吹出し口3016に至る送風経路を有する。さらに、この空気浄化装置は、この送風経路に空気の流れを生じさせるための送風手段としてファン3017およびこれを回転させるためのファンモータ3018を備える。送風経路の途中にはフィルタとして、活性炭フィルタ3013が配置され、より下流側に、微細な細孔を多数有するHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ3014が配置されている。HEPAフィルタ3014に隣接する位置には第1イオン発生素子としてイオン発生素子3011が配置されている。イオン発生素子3011の配置される位置としては、具体的には、送風経路のHEPAフィルタ3014の直前の位置である。すなわち、イオン発生素子3011はHEPAフィルタ3014の上流側に隣接するように配置されている。
【0056】
この空気浄化装置においては、活性炭フィルタ3013とHEPAフィルタ3014との間に送風経路の一部をなす空間3019が設けられており、イオン発生素子3011は、この空間3019の上側から下向きに配置されている。
【0057】
使用者がこの空気浄化装置の操作を行なうための操作パネル3015は筐体の正面の上部に斜めに配置されている。
【0058】
イオン発生素子3011は、正負両方のイオン(以下、「正負イオン」という。)を発生できるように構成された素子であり、具体的には、たとえば、薄い2枚の板状電極を誘電体を介して微小距離だけ隔てて平行に対向させたものであり、これに交流電圧または正負交互に繰返すパルス電圧を印加することによって正負のイオンを微小時間ずつ交互に発生させる構成が採用可能である。
【0059】
イオン発生素子についてより詳しく説明するために、図8にイオン発生素子およびこれを駆動するための電源などをまとめて示す。この構成全体を「イオン発生装置」と呼ぶものとする。図8に示すように、イオン発生装置140は、第1電極142および第2電極144からなる一対の電極と、これらの間に介在された誘電体146と、第1電極142に電気的に接続された電源148とから構成される。「イオン発生素子」とは、このイオン発生装置のうち、第1電極142、第2電極144および誘電体146からなる部分をいう。
【0060】
第1電極142は板状の電極であり、板状の誘電体146の下面の一部を覆うように形成されている。また、第2電極144はメッシュ状の電極であり、誘電体146の上面の一部を覆うように形成されている。電源148は交流電源であり、第1電極142に正極と負極の高電圧を交互に印加する。
【0061】
上記構成のイオン発生装置140においては、電源148の作用により、メッシュ形状の第2電極144の端面において電界集中が生じる。このため、この部分(領域149)において沿面放電(プラズマ放電)が発生する。このプラズマ放電が生じる領域149に常時空気を送り込むことにより、イオンを次々と発生させることが可能になる。なお、上述のイオン発生装置140においては、第1電極142と第2電極144との間で交互に正極と負極が入れ変わるため、正負両方のイオンが発生することになる。
【0062】
また、このイオン発生装置140は、高濃度の正負イオンを放出することが可能なように構成されている。イオン発生装置140から放出可能なイオンの量は電極の構造などにより異なるが、たとえば印加電圧を3kVから7kV程度とすることにより、多量の正負イオンを供給することが可能である。また、現在の技術では、このときに同時に生成されるオゾンの発生量を比較的少量に抑えることが可能となっており、上述の量のイオンを発生させた場合にも人体に影響がでるおそれはない。また、必要に応じてイオン発生素子を複数個設けることにより、正負イオンの発生量を多くしつつオゾンの発生量を少なくすることが可能である。
【0063】
(作用・効果)
本実施の形態における空気浄化装置を動作させた場合、ファンモータ3018がファン3017を回転させる。ファン3017の回転によって、吸込み口3012から吹出し口3016に向かって空気の流れが生じる。吸込み口3012から筐体内に室内の空気が流入するが、この空気は、活性炭フィルタ3013を通過してさらにHEPAフィルタ3014を通過する。空気がHEPAフィルタ3014を通過する際に、空気中に浮遊して含まれる花粉などはHEPAフィルタ3014に捕捉される。
【0064】
たとえば花粉の場合、花粉の各粒子は、実際に人体に対してアレルギー疾患を引き起こす原因となるさらに微小な粒としてのアレルゲン(以下、花粉に含まれるこのようなアレルゲンを「花粉アレルゲン」という。)を表面や内部に含んでいると考えられている。その場合、花粉としては、HEPAフィルタ3014に捕捉されても、HEPAフィルタ3014に衝突した際の衝撃や、他の衝撃によって花粉が破壊されて花粉アレルゲンが単体または凝集体(ユービッシュ・ボディ)として浮遊を開始する場合があり得る。あるいは、花粉が破壊されて生じた花粉の断片が花粉アレルゲンを含んだ形で浮遊を開始する可能性もある。以下、「アレルゲン」といった場合、花粉アレルゲンの単体だけでなく、花粉アレルゲンの凝集体、花粉の断片で花粉アレルゲンを含むものも含めて意味するものとする。
【0065】
この空気浄化装置の運転開始時や運転終了時、あるいはそれ以外の物理的な衝撃や湿気などによる化学的な作用によって、HEPAフィルタ3014に捕捉されていた花粉その他の浮遊物質やアレルゲンが、再離脱することが考えられる。この場合、上流側からHEPAフィルタ3014に進入して捕捉されていた花粉などのうちの多くの量が、再びフィルタ3014の上流側に向かって、つまり吸込み口3012側に向かって再離脱することが考えられる。
【0066】
この空気浄化装置では、図7に示すようにHEPAフィルタ3014の直前の位置に配置されたイオン発生素子3011から正負イオンがHEPAフィルタ3014の直前の空間3019に向けて供給されている。上述の試験結果によれば、正負イオンが、浮遊アレルゲンに空間中で接触することにより、浮遊アレルゲンのアレルギー活性を失わせる作用があることが証明されている。したがって、HEPAフィルタ3014の直前の空間3019において正負イオンを接触させた花粉その他の浮遊物質中のアレルゲンは失活する。特に、花粉表面に存在する花粉アレルゲン、浮遊物質に付着していた花粉アレルゲンは正負イオンにより失活が促進される。
【0067】
また、再離脱したものに限らず、吸込み口3012から空間3019に入ってきたばかりの花粉その他の浮遊物質あるいは浮遊アレルゲンも正負イオンによって失活させることが期待できる。さらに、空間3019に供給された正負イオンは送風手段によって生じた空気の流れに乗ってHEPAフィルタ3014に対しても接触するので、HEPAフィルタ3014に捕捉されている花粉その他の浮遊物質あるいは浮遊アレルゲンについてもHEPAフィルタ3014に捕捉されたままの状態で失活させることができる。
【0068】
以上のように本実施の形態における空気浄化装置においては、HEPAフィルター3014で捕捉された花粉などが何らかの理由で再離脱し、送風経路の上流側に浮遊することとなったり、さらにその再離脱した花粉などがこの空気浄化装置の外部に拡散するようなことがあったりしたとしても、その花粉などに含まれるアレルゲンは正負イオンによる処理で既に失活させられていることから、たとえこれらが外部に拡散したとしても、もはや人体にアレルギー症状を引き起こさせないといえる。あるいは、アレルギー症状を完全には防止できない場合であっても、アレルギー症状の程度を抑えることができる。
【0069】
(実施の形態2)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、正負イオンを発生させるための第1のイオン発生素子としてのイオン発生素子3011の位置がHEPAフィルタ3014の直前の位置ではなく、HEPAフィルタ3014の直後の位置となっている。活性炭フィルタ3013とHEPAフィルタ3014との間には空間はなく、代わりにHEPAフィルタ3014とファン3017との間に空間3020が設けられている。イオン発生素子3011はこの空間3020に対して上側から下向きに配置されている。これら以外の部分については、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0070】
(作用・効果)
この空気浄化装置を動作させた場合、ファン3017の回転によって、吸込み口3012から吹出し口3016に向かって空気の流れが生じ、空気中に浮遊して含まれる花粉などがHEPAフィルタ3014に捕捉されるところまでは実施の形態1で説明したのと同様である。しかし、たとえば花粉の場合、花粉アレルゲンは花粉そのものに比べて粒径が小さいので、HEPAフィルタ3014から前側に向かって拡散するとは限らず、空気の流れに乗ってHEPAフィルタ3014の後ろ側に拡散する可能性も大きいといえる。
【0071】
また、元々、室内の空気中には、完全な状態の花粉以外に何らかの原因で飛散した微小なアレルゲンも浮遊していると考えられる。こういったアレルゲンが吸込み口3012から取りこまれた場合、その粒径が小さいため、HEPAフィルタ3014によっては捕捉されずに送風経路に沿ってHEPAフィルタ3014の後ろ側まで通過してしまうことがありうる。
【0072】
このような場合、本実施の形態における空気浄化装置では、図9に示すように、HEPAフィルタ3014の後ろ側の空間3020に向けてイオン発生素子3011から正負イオンが放出されているので、HEPAフィルタ3014から脱落したアレルゲン、または、HEPAフィルタ3014を通過してきたアレルゲンは、正負イオンと接触することとなり、失活する。あるいは、これらのアレルゲンと正負イオンとの接触は、空間3020で生じるとは限らず、より下流側で生じてもよい。空気はやがて吹出し口3016から筐体外に放出されるが、アレルゲンも吹出し口3016から放出されることとなる。しかし、この空気浄化装置内を通過したアレルゲンは既に正負イオンの作用によって失活しているため、もはや人体にアレルギー症状を引き起こさせないといえる。あるいは、アレルギー症状を完全には防止できない場合であっても、アレルギー症状の程度を抑えることができる。
【0073】
(実施の形態3)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、HEPAフィルタ3014の直後に第1イオン発生素子としてのイオン発生素子3011aを備え、HEPAフィルタ3014の直後に第2イオン発生素子としてのイオン発生素子3011bを備える。イオン発生素子3011a,3011bはいずれも正負イオンを発生させるためのものであり、送風経路の上側に下向きに配置されている。HEPAフィルタ3014の前後には空間3019,3020がそれぞれ設けられており、イオン発生素子3011a,3011bから発生した正負イオンは、送風経路の一部であるこれらの空間3019,3020に放出される。これら以外の部分については、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0074】
(作用・効果)
この空気浄化装置を動作させた場合、ファン3017の回転によって、吸込み口3012から吹出し口3016に向かって空気の流れが生じ、空気中に浮遊して含まれる花粉などがHEPAフィルタ3014に捕捉されるところまでは実施の形態1で説明したのと同様である。
【0075】
この空気浄化装置においては、HEPAフィルタ3014から再離脱した花粉などがHEPAフィルタ3014の前側に向かって離脱した場合も、花粉などの完全体から分裂した花粉アレルゲンのようにHEPAフィルタ3014を通過可能な形態のものであってHEPAフィルタ3014の後ろ側に向かって離脱した場合やHEPAフィルタ3014を通過した場合であっても、これらの物は、イオン発生素子3011a,3011bのいずれかから発生する正負イオンに触れることになって、アレルゲンは失活する。したがって、本実施の形態における空気浄化装置は、実施の形態1,2における空気浄化装置の効果を併せ持つことによってさらに確実にアレルゲンの失活を行なえる空気浄化装置となる。
【0076】
(実施の形態4)
図11を参照して、本発明に基づく実施の形態4における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、正負イオンを発生させるための第1のイオン発生素子としてのイオン発生素子3021を、HEPAフィルタ3014と略同一面上になるように備えている。ただし、HEPAフィルタ3014より上側に配置されており、HEPAフィルタ3014の後ろ側に向かって正負イオンを放出するように配置されている。これら以外の部分については、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0077】
(作用・効果)
この空気浄化装置における動作は、基本的に実施の形態1における空気浄化装置と同様である。イオン発生素子3021から発生した正負イオンは、HEPAフィルタ3014を通る送風経路に合流して、空気中のアレルゲンを失活させる。
【0078】
図11に示した例では、HEPAフィルタ3014とファン3017との間に空間3020が設けられており、主にこの空間3020において正負イオンとアレルゲンとの接触が生じて、アレルゲンが失活すると考えられる。
【0079】
あるいは、他の構造の例として、図12に示すように、この空間3020をなくした構造であってもよい。その場合であっても、ファン3017を通過して送風経路を進んでいくうちに正負イオンとアレルゲンとの接触が生じて、アレルゲンが失活すると考えられる。図12に示す構造を採用した場合、空気浄化装置のコンパクト化につながるという利点がある。
【0080】
なお、実施の形態1〜4における空気浄化装置において、吹出し口3016の直前に、第3イオン発生素子としてイオン発生素子3022を備えてもよい。ただし、イオン発生素子3022は、第1,2イオン発生素子と同様に、送風経路を通過する空気の中に正負イオンを発生させるためのものである。たとえば、図7に示した実施の形態1における空気浄化装置においてイオン発生素子3022を設置した例を図13に示す。図9に示した実施の形態2における空気浄化装置においてイオン発生素子3022を設置した例を図14に示す。同様にして、実施の形態3,4における空気浄化装置においても、イオン発生素子3022を設置してもよい。
【0081】
あるいは、第3イオン発生素子としてのイオン発生素子3022は、送風経路を通過する空気に対してではなく、吹出し口から外に出た直後の空気に対して正負イオンを供給するためのものであってもよい。
【0082】
このように、第3イオン発生素子を備えることとすれば、送風経路を通過する空気に含まれるアレルゲンをより確実に失活させることができる。
【0083】
(実施の形態5)
(構成)
図15を参照して、本発明に基づく実施の形態5における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、フィルタ、送風手段、イオン発生素子などの配置関係については基本的には実施の形態1〜4で説明したものと同様である。
【0084】
この空気浄化装置は、操作パネル3015にオン/オフ操作するためのスイッチを備えている。さらに、この空気浄化装置は、オン時制御手段として制御装置を備えている。この制御装置は、図15に示すように、スイッチがオンになったときに、第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始して、その後に送風手段の動作が開始されるように制御するように設定されている。イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始してから送風手段が動作を開始するまでの時間t1は、数秒から数分とすることが考えられる。この時間の長さは空気浄化装置の大きさ、送風経路の形状、空気中のアレルゲンの存在状況などを考慮して、適宜設定すればよい。
【0085】
なお、図15、図16においては、図中の左から右に向かって時間の流れを表し、太実線の部分が各構成要素の動作している状態、太点線の部分が各装置の停止している状態を表している。
【0086】
(作用・効果)
仮に、スイッチをオンしたときにイオン発生素子と送風手段とが同時に動作を開始した場合、スイッチオン直後には送風経路内に十分に正負イオンが供給されていないので、送風手段によって送られた初期の空気に含まれるアレルゲンは失活することなく送風経路を通過して吹出し口3016から出てしまう。特に、ファンモータ3018の動作開始時の衝撃や振動によって、フィルタに捕捉されていたアレルゲンが再離脱することは大いに考えられるので、初期に送風経路を通過する空気に乗って吹出し口3016から出てしまうアレルゲンを十分に失活させられないとすると問題である。
【0087】
しかし、本実施の形態における空気浄化装置では、スイッチをオンにすると、オン時制御手段の働きにより、まず、イオン発生素子が動作を開始し、時間t1を経過するうちに送風経路内に十分な量の正負イオンが浮遊するようになる。その後でファン3017が回転を開始して送風経路に空気の流れが生じる。このとき、衝撃または振動によってHEPAフィルタ3014から再離脱するアレルゲンがあったとしても、送風経路に入ったアレルゲンは既に十分な量だけ浮遊している正負イオンと触れ合うこととなり、失活してから外部に送り出されることとなる。したがって、上述のようなスイッチオン時の問題を回避することができる。
【0088】
なお、本実施の形態において、時間t1の間、送風手段を定常状態の強さよりも弱く動作させておき、時間t1経過後に、送風手段の動作を強めて定常状態のレベルにすることにしてもよい。このようにした場合、自然対流などの風がない場合でも、送風経路内にイオンを高濃度で行き渡らせることができるという効果を得ることができる。
【0089】
(実施の形態6)
(構成)
図16を参照して、本発明に基づく実施の形態6における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、フィルタ、送風手段、イオン発生素子などの配置関係については基本的には実施の形態1〜4で説明したものと同様である。
【0090】
この空気浄化装置は、操作パネル3015にオン/オフ操作するためのスイッチを備えている。さらに、この空気浄化装置は、オフ時制御手段として制御装置を備えている。この制御装置は、図16に示すように、スイッチがオフになったときに、まず送風手段の動作を停止し、その後にもイオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続し、その後にイオン発生素子のすべてが動作を停止するように制御するように設定されている。送風手段の動作が停止してからイオン発生素子のすべてが動作を停止するまでの時間t2は、数秒から数分とすることが考えられる。この時間の長さは空気浄化装置の大きさ、送風経路の形状、空気中のアレルゲンの存在状況などを考慮して、適宜設定すればよい。
【0091】
なお、本実施の形態において、時間t2の間、送風手段を定常状態の強さよりも弱く動作させておくことにしてもよい。このようにした場合、自然対流などの風がない場合でも、送風経路内にイオンを高濃度で行き渡らせることができるという効果を得ることができる。
【0092】
(作用・効果)
仮に、スイッチをオフしたときにイオン発生素子と送風手段とが同時に動作を停止した場合、停止直前に吸込み口3012から取り込まれたアレルゲンや、停止直前に花粉がフィルタなどに衝突して破壊され、飛散したアレルゲンは、失活しないまま送風経路内部に残ることとなる。また、送風手段の動作停止時の衝撃や振動によって、既にフィルタに捕捉されていたアレルゲンが再離脱して送風経路内部に残ることも考えられる。このようにして十分に失活しないまま送風経路内部に残ったアレルゲンは、空気浄化装置自体を移動させたり傾けたりしたときに筐体の外部に漏洩することや、次回の動作開始時に吹出し口3016から外部に送り出されることが懸念される。
【0093】
しかし、本実施の形態における空気浄化装置では、スイッチをオフにすると、オフ時制御手段の働きにより、まず、送風手段が動作を停止する。この後もイオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続するので、この状態で時間t2を経過する間に、送風手段停止時の衝撃や振動によってフィルタから再離脱して送風経路内に漂うアレルゲンや、失活せずに送風経路内に残っていたアレルゲンを確実に失活させることができる。イオン発生素子は、送風経路内に残存するアレルゲンを十分に失活させてから停止する。したがって、上述のようなスイッチオフ時の問題を回避することができる。
【0094】
なお、実施の形態5,6の両方を組合せてもよい。すなわち、1台の空気浄化装置として、上述のオン時制御手段とオフ時制御手段との両方を備えることとしてもよい。その場合、時間t1とt2は同じである必要はなく、それぞれ最適な長さに設定すればよい。
【0095】
(その他の構成)
上記各実施の形態においては、イオン発生素子を送風経路の上側に配置した例を示したが、送風経路内に正負イオンを供給することができる位置でありさえすれば、上側以外に配置することとしてもよい。しかし、イオン発生素子から発生した正負イオンを送風経路に効率良く拡散させるには、上側に配置することが好ましい。
【0096】
上記各実施の形態においては、フィルタとしてHEPAフィルタを例示したが、フィルタがHEPAフィルタ以外のタイプのものであっても本発明は適用可能である。
【0097】
各図においては、イオン発生素子は、D字形の部品として表示されているが、これはあくまで表示の便宜上記号化して表したものであって、イオン発生素子の実際の形状はこれに限らない。
【0098】
上記各実施の形態では、花粉に含まれるアレルゲンに特に注目して説明したが、花粉以外にダニ、カビなどに含まれるアレルゲンに対しても、本発明に基づく空気浄化装置は効果を発揮すると考えられる。
【0099】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、花粉その他の浮遊物質や、これらに含まれるアレルゲンや、浮遊アレルゲンなどに効果的に作用して空気を浄化することができる。
【0101】
本発明によれば、衝撃などによってフィルタから再離脱するアレルゲンやフィルタを通過してしまうアレルゲンに対しても、イオン発生素子から供給される正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。したがって、アレルギー疾患の発症を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図2】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図3】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図4】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図5】参考とした試験における第1の評価方法による他の試験結果を示すグラフである。
【図6】参考とした試験における第2の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の断面図である。
【図8】イオン発生装置の模式図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置の断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態4における空気浄化装置の断面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態4における空気浄化装置の変形例の断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の変形例の断面図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置の変形例の断面図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態5における空気浄化装置においてなされる制御のタイミングチャートである。
【図16】本発明に基づく実施の形態6における空気浄化装置においてなされる制御のタイミングチャートである。
【符号の説明】
140 イオン発生装置、142 第1電極、144 第2電極、146 誘電体、148 電源、149 (沿面放電が発生する)領域、3011,3011a,3011b,3021,3022 イオン発生素子、3012 吸込み口、3013 活性炭フィルタ、3014 HEPAフィルタ、3015 操作パネル、3016 吹出し口、3017 ファン、3018 ファンモータ、3019,3020 空間。
【発明の属する技術分野】
本発明は、花粉などによるアレルギー症状の発症を防止するための空気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住環境の変化に伴い、たとえば、人のアレルギー疾患の原因となる花粉などのような、空気中の有害な浮遊物質を取り除き、健康で快適な生活を送りたいという要望が強くなっている。この要望に応えるため、各種のフィルタを備えた装置が開発されている。たとえば、特開平8−173843号公報(特許文献1)に開示される空気清浄装置がある。
【0003】
このような装置では、空間の空気を吸引してフィルタにより花粉その他の浮遊物質を吸着もしくは濾過する方式であるため、長期にわたる使用においては、フィルタの交換などのメンテナンスが不可欠である。しかもフィルタの特性が充分でないため満足のいく性能が得られない場合がある。
【0004】
また、従来のこの種の装置では、空間の空気を吸引してフィルタにより花粉などを吸着若しくはろ過する方式であるため、花粉などが一旦フィルタに捕捉された後でも、運転の開始時や停止時、あるいは物理的な衝撃、あるいは湿気などによる化学的作用などにより、捕捉されていた花粉などがフィルタから再離脱することが知られている。再離脱した花粉などは、人にアレルギー疾患を起こさせる原因となりうる。
【0005】
そこで、このような問題点を解消した花粉の処理装置として、特開平7−807号公報(特許文献2)に開示された装置がある。この装置は、壁面に加熱手段を配置した恒温槽を備えており、吸気口から取りこまれて恒温槽の内部を通過する花粉に対して熱を加えることによって抗原タンパク質に変性または化学反応を生じさせて、失活させる方式である。
【0006】
しかし、このような加熱手段を備える方式では、空気自体を加熱してしまい、不所望な室温の上昇をもたらしてしまう。また、同文献には酸やアルカリなどの使用によって失活させる方法も開示されているが、酸やアルカリの使用は、人体に対する悪影響が懸念される。ほかに電磁波の照射やコロナ放電の使用について開示されているが、これらを抗原性物質の失活に十分な程度使用するとなると、条件によっては人体に対する悪影響が問題となる可能性がある。
【0007】
ほかに、フィルタと紫外線との組合せでスギ花粉を失活させる装置としては、特開平6−154298号公報(特許文献3)に開示されたものや、特開2000−111106号公報(特許文献4)に開示されたものがある。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−173843号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平7−807号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平6−154298号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−111106号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、花粉その他の浮遊物質やこれらの浮遊物質に含まれるアレルゲン、あるいは、それ自体が浮遊するアレルゲン(以下「浮遊アレルゲン」という。)などによるアレルギー疾患をなるべく引き起こさないように、空気を浄化するための空気浄化装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、一旦フィルタに捕捉されていた花粉その他の浮遊物質やこれらに含まれるアレルゲンあるいは一旦フィルタに捕捉されていた浮遊アレルゲンなどが衝撃などによってフィルタから離脱したとしてもアレルギー疾患をなるべく引き起こさないようにするための空気浄化装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に基づく空気浄化装置は、途中にフィルタを有する送風経路と、上記送風経路を通るように空気の流れを生じさせる送風手段と、上記送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるための第1イオン発生素子とを備える。ただし、上記第1イオン発生素子は、上記フィルタに隣接する位置に配置されている。この構成を採用することにより、フィルタを通過する浮遊物質や浮遊アレルゲン、あるいは、フィルタから再離脱する浮遊物質や飛散するアレルゲンを第1イオン発生素子から発生する正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0015】
上記発明において好ましくは、上記第1イオン発生素子は、上記フィルタの直後に配置されている。この構成を採用することにより、フィルタを通過したり、フィルタから後ろ側に再離脱するアレルゲンを正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0016】
上記発明において好ましくは、第1イオン発生素子以外に、第2イオン発生素子が、上記フィルタの直前に配置されている。第2イオン発生素子も上記送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるためのものである。この構成を採用することにより、フィルタから前側に再離脱するアレルゲンを正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0017】
上記発明において好ましくは、第2イオン発生素子は、上記送風経路の上側に配置されている。この構成を採用することにより、正負イオンを送風経路に効率良く拡散させることができる。
【0018】
第2イオン発生素子がない場合、第1イオン発生素子は、上記フィルタの直後でなく直前に配置されていることとしても好ましい。この構成を採用することにより、フィルタから前側に再離脱するアレルゲンを正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。
【0019】
上記発明において好ましくは、上記第1イオン発生素子は、上記フィルタと略同一面上に配置されている。この構成を採用することにより、空気浄化装置のコンパクト化を図ることができる。
【0020】
上記発明において好ましくは、上記第1イオン発生素子は、上記送風経路の上側に配置されている。この構成を採用することにより、正負イオンを送風経路に効率良く拡散させることができる。
【0021】
上記発明において好ましくは、上記送風経路を通った空気を外部に放出するための吹出し口と、正負両方のイオンを発生させるための第3イオン発生素子とを備え、上記第3イオン発生素子は、上記吹出し口の直前に配置されている。この構成を採用することにより、送風経路を通過する空気に含まれるアレルゲンをより確実に失活させることができる。
【0022】
上記発明において好ましくは、オン/オフ操作するためのスイッチと、上記スイッチをオンにしたときに、上記第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始し、その後に上記送風手段の動作が開始するようにタイミングを制御するオン時制御手段とを備える。第1〜第3イオン発生素子の3つを備えずに第1イオン発生素子のみを備える場合や、第1,第2イオン発生素子の2つのみを備える場合についても同様である。この構成を採用することにより、送風手段の動作開始時の衝撃や振動によってフィルタから再離脱するアレルゲンに対しても十分な量の正負両方のイオンを送風経路内に用意しておくことができ、より確実に失活させることができる。
【0023】
あるいは、上記発明において好ましくは、オン/オフ操作するためのスイッチと、上記スイッチをオフにしたときに、上記送風手段の動作を停止し、その後にも上記第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続し、その後に上記第1〜第3イオン発生素子のすべてが動作を停止するようにタイミングを制御するオフ時制御手段とを備える。第1〜第3イオン発生素子の3つを備えずに第1イオン発生素子のみを備える場合や、第1,第2イオン発生素子の2つのみを備える場合についても同様である。この構成を採用することにより、送風手段の動作停止時の衝撃や振動によってフィルタから再離脱するアレルゲンに対しても十分な量の正負両方のイオンを接触させることができ、より確実に失活させることができる。
【0024】
上記発明において好ましくは、イオン発生素子は、100000個/cm3以上の濃度で正負両方のイオンを発生させる。ここで述べた濃度は、正イオンが100000個/cm3以上であり、かつ、負イオンが100000個/cm3以上という意味である。このようにすることで、花粉アレルゲンの失活を促進することができる。この場合においては、正負両方のイオンを、室内に放出するかまたは室内空気と混合するだけでも空気浄化を効果的に促進することができる。
【0025】
上記発明において好ましくは、上記イオン発生素子が発生させる正負両方のイオンは、正イオンはH3O+(H2O)n(nは0または自然数)を主体とし、負イオンはO2 −(H2O)m(mは0または自然数)を主体とするものである。こうすることで、正負両方のイオンの作用で空気浄化を効果的に促進することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(アレルゲン)
本発明において「アレルゲン」とは、スギ、ヒノキ、ブタクサ、オオアワガエリ、ヨモギなどの花粉や、ダニなどの生物に含まれる物質であって、生体に作用することにより抗原抗体反応の一種であるアレルギー反応を生じさせる物質をいうものとする。通常、アレルゲンは、タンパク質もしくは糖タンパク質からなるものであるが、その形状または大きさは特に限定されず、それらのタンパク質や糖タンパク質自体の分子状のもの、あるいはそれらが集合して粒子状になったもの、またあるいはその分子状のものの一部である抗原決定基などが含まれるものとする。
【0027】
(アレルゲンの失活)
また、本発明において「失活」とは、アレルゲンを変成ないし分解することにより、活性なアレルゲンを消滅させることのみならず、活性なアレルゲンの数を減少させること、および個々のアレルゲンの活性度を低下させることをも含むものとする。
【0028】
(参考とした試験)
発明者は、アレルギー疾患の発生を効果的に防止することが可能な空気調節装置を開発するに際して、以下に示す試験の結果を参考とした。
【0029】
試験は、花粉から抽出したアレルゲンを高濃度の正負両方のイオンを含む雰囲気中にさらすことにより、アレルゲンが失活するかどうか、またアレルゲンが失活した場合にどの程度失活するかを検証したものである。以下においては、この試験の試験方法および試験結果について説明する。
【0030】
(A.試験方法)
まず、ニホンスギ(学名:Cryptomeria Japonica)から採取したスギ花粉を化学処理し、スギ抗原性物質(略称:CJP)を得た。このスギ抗原性物質には、主要なアレルゲン蛋白質として、Cry j1およびCry j2が含まれている。
【0031】
つづいて、フォーリン−ローリー(Folin−Lowry)法により、スギ抗原性物質の蛋白量を定量した。
【0032】
次に、スギ抗原性物質を含んだ溶液を密閉空間内にて噴霧器を用いて噴霧し、回収した。このとき、密閉空間内に正負両方のイオンを放出するイオン発生装置を取付けた。そして、イオン発生装置を動作させて密閉空間内の正負両方のイオン濃度を平均1×105個/cm3に維持した雰囲気中で噴霧されたサンプルと、イオン発生装置を動作させることなく通常の雰囲気中で噴霧されたサンプルとを得た。なお、本明細書では「イオン濃度」とは、臨界移動度が1cm2/V・秒以上の小イオンの濃度を意味している。このような条件を満たす小イオンの濃度の測定は、空気イオンカウンター(ダン科学製空気イオンカウンタ(品番83−1001B))を用いて行なった。
【0033】
この2つのサンプルを比較することにより、イオン処理によってアレルゲンが失活したかどうか、またアレルゲンの失活がどの程度生じたかを評価した。評価方法としては、以下の4つの評価方法が実施された。
【0034】
第1の評価方法は、イライザ(ELISA:Enzyme−linked Immunosorbent Assay)法による評価である。イライザ法は、サンプルを花粉症患者から抽出した血清IgE(免疫グロブリンE)抗体と反応させ、その蛍光強度を測定することによりアレルゲンの活性度を評価するものである。また、サンプルのスギ抗原性物質をCry j1とCry j2とに遠心分離し、モノクローナル抗体と反応させることによってどの程度反応性が低下しているかを評価する。
【0035】
第2の評価方法は、イライザ・インヒビション(ELISA inhibition:Enzyme−linked Immunosorbent Assay inhibition)法による評価である。イライザ・インヒビション法は、上述のイライザ法を用いて血清IgE抗体とアレルゲンの反応性を定量的に比較評価するものである。
【0036】
第3の評価方法は、皮内反応試験と呼ばれる評価方法である。皮内反応試験は、花粉症患者の前腕屈側皮内にスギ抗原性物質を含む溶液を注射し、その後に現れる炎症の大きさによりアレルゲンの失活状況を評価するものである。
【0037】
第4の評価方法は、結膜反応試験と呼ばれる評価方法である。結膜反応試験は、花粉症患者の眼にスギ抗原性物質を含む溶液を滴下し、その後に現れる充血の程度によりアレルゲンの失活状況を評価するものである。
【0038】
(B.試験結果)
図1から図4は、上述の第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。図1から図4に示すように、スギ抗原性物質にイオン処理を施すことにより、患者19から60までの合計42人の花粉症患者のうち、患者40、患者49、患者54および患者57を除く38人の花粉症患者の血清IgE抗体との間で、スギ抗原性物質の抗原抗体反応の反応性が低下していることが確認された(蛍光強度が小さいほど、反応性が低下していることを示している)。また、抗原抗体反応の反応性の低下が確認された38人の花粉症患者のうち、33人の花粉症患者においては、著しい抗原抗体反応の反応性の低下が確認された。
【0039】
図5は、上述の第1の評価方法による他の試験結果を示すグラフである。図5に示すように、Cry j1とモノクローナル抗体との反応性は、未処理のスギ抗原性物質に比べてイオン処理を施したスギ抗原性物質では約5分の1に低下している。Cry j2とモノクローナル抗体との反応性においてもイオン処理を施したスギ抗原性物質では2分の1以下に低下していることが確認された。
【0040】
図6は、上述の第2の評価方法による試験結果を示すグラフである。図6に示すように、イオン処理を施していないスギ抗原性物質においては、50%阻害(スギ抗原性物質の血清IgE抗体に対する反応率を50%に低下させること)に必要なスギ抗原性物質の量は約2.53×103pg/wellであるのに対し、イオン処理を施したスギ抗原性物質では、50%阻害に必要なスギ抗原性物質の量が1.34×104pg/wellにまで低下していることが分かった。すなわち、50%阻害に必要なスギ抗原性物質の量は、イオン処理済みのものでは未処理のものの場合の約5.3倍にもなることが確認された。
【0041】
表1に、上述の第3の評価方法による試験結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
ここで、表1においては、注射によって生じる炎症のうち、紅斑が10mm未満の場合を「−」、紅斑が10mm以上20mm未満の場合を「±」、紅斑が20mm以上30mm未満であるか、または膨疹が10mm未満の場合を「+」、紅斑が30mm以上40mm未満であるか、または膨疹が10mm以上15mm未満の場合を「++」、紅斑が40mm以上か、または膨疹が15mm以上の場合を「+++」とした。
【0044】
表1に示すように、花粉症患者AからFの6人全員に対して皮内反応性の低下が確認された。
【0045】
表2に、上述の第4の評価方法による試験結果を示す。なお、患者AからFは、上述の皮内反応試験における患者と同一人である。
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、表2においては、滴下によって生じる結膜反応のうち、充血が認められない場合を「−」、僅かに充血が認められ痒み感のある場合を「±」、球結膜上部または下部のいずれかに充血の認められる場合を「+」、球結膜上部または下部のいずれにも充血が認められる場合を「++」、球結膜全体に充血が認められる場合を「+++」、眼瞼の浮腫等が認められる場合を「++++」とした。
【0048】
表2に示すように、花粉症患者AからFの6人のうち、患者Aを除く5人に対して、結膜反応性の低下が確認された。
【0049】
以上の試験結果より、アレルゲンを失活させる方法として、アレルゲンを高濃度の正負両イオンを含む雰囲気中に晒すことが非常に効果的であることがわかる。これは、以下のメカニズムによって生ずるものと解される。
【0050】
まず、空間に正負両方のイオンが放出される。ここでいう正負両方のイオンとは、正イオンとしてはH3O+(H2O)n(nは0または自然数)を主体とし、負イオンとしてはO2 −(H2O)m(mは0または自然数)を主体とするものを意味する。この放出された正負両方のイオンが空気中に浮遊しているアレルゲンを取り囲む。するとアレルゲンの表面で正負両イオンが以下のような化学反応(1)および(2)を起こす。そして、この反応によって生じると考えられる活性種である過酸化水素H2O2、二酸化水素HO2またはヒドロキシラジカル・OHが、アレルゲンの抗体反応部位を変成または分解する。これにより、アレルゲンが失活するものと考えられる。
【0051】
【化1】
【0052】
なお、上記の説明においては、正イオンとしてH3O+(H2O)n(nは0または自然数)、負イオンとしてO2 −(H2O)m(mは0または自然数)をそれぞれ中心に述べてきたが、本発明における正負のイオンはこれらに限定されるものではない。上記2種類の正負のイオンをそれぞれ主体としつつ、たとえば、正イオンとしてはたとえばN2 +、O2 +などを、負イオンとしてはたとえばNO2 −、CO2 −などをそれぞれ含んでいたとしても同様の効果が期待できる。
【0053】
またここで、正イオンとして記載したH3O+(H2O)n(nは0または自然数)は、表記方法を変更するとH+(H2O)n(nは自然数)と記述することが可能であり、同等のイオンを示すものである。
【0054】
また、上記試験結果によって、上記正負イオンが花粉のアレルゲンの失活化に対して効果的であることが理解されるが、ダニなどの有するアレルゲンに対しても同様の効果があることが推測される。
【0055】
(実施の形態1)
(構成)
図7を参照して、本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、筐体に吸込み口3012と吹出し口3016とを有し、筐体の内部に吸込み口3012から吹出し口3016に至る送風経路を有する。さらに、この空気浄化装置は、この送風経路に空気の流れを生じさせるための送風手段としてファン3017およびこれを回転させるためのファンモータ3018を備える。送風経路の途中にはフィルタとして、活性炭フィルタ3013が配置され、より下流側に、微細な細孔を多数有するHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ3014が配置されている。HEPAフィルタ3014に隣接する位置には第1イオン発生素子としてイオン発生素子3011が配置されている。イオン発生素子3011の配置される位置としては、具体的には、送風経路のHEPAフィルタ3014の直前の位置である。すなわち、イオン発生素子3011はHEPAフィルタ3014の上流側に隣接するように配置されている。
【0056】
この空気浄化装置においては、活性炭フィルタ3013とHEPAフィルタ3014との間に送風経路の一部をなす空間3019が設けられており、イオン発生素子3011は、この空間3019の上側から下向きに配置されている。
【0057】
使用者がこの空気浄化装置の操作を行なうための操作パネル3015は筐体の正面の上部に斜めに配置されている。
【0058】
イオン発生素子3011は、正負両方のイオン(以下、「正負イオン」という。)を発生できるように構成された素子であり、具体的には、たとえば、薄い2枚の板状電極を誘電体を介して微小距離だけ隔てて平行に対向させたものであり、これに交流電圧または正負交互に繰返すパルス電圧を印加することによって正負のイオンを微小時間ずつ交互に発生させる構成が採用可能である。
【0059】
イオン発生素子についてより詳しく説明するために、図8にイオン発生素子およびこれを駆動するための電源などをまとめて示す。この構成全体を「イオン発生装置」と呼ぶものとする。図8に示すように、イオン発生装置140は、第1電極142および第2電極144からなる一対の電極と、これらの間に介在された誘電体146と、第1電極142に電気的に接続された電源148とから構成される。「イオン発生素子」とは、このイオン発生装置のうち、第1電極142、第2電極144および誘電体146からなる部分をいう。
【0060】
第1電極142は板状の電極であり、板状の誘電体146の下面の一部を覆うように形成されている。また、第2電極144はメッシュ状の電極であり、誘電体146の上面の一部を覆うように形成されている。電源148は交流電源であり、第1電極142に正極と負極の高電圧を交互に印加する。
【0061】
上記構成のイオン発生装置140においては、電源148の作用により、メッシュ形状の第2電極144の端面において電界集中が生じる。このため、この部分(領域149)において沿面放電(プラズマ放電)が発生する。このプラズマ放電が生じる領域149に常時空気を送り込むことにより、イオンを次々と発生させることが可能になる。なお、上述のイオン発生装置140においては、第1電極142と第2電極144との間で交互に正極と負極が入れ変わるため、正負両方のイオンが発生することになる。
【0062】
また、このイオン発生装置140は、高濃度の正負イオンを放出することが可能なように構成されている。イオン発生装置140から放出可能なイオンの量は電極の構造などにより異なるが、たとえば印加電圧を3kVから7kV程度とすることにより、多量の正負イオンを供給することが可能である。また、現在の技術では、このときに同時に生成されるオゾンの発生量を比較的少量に抑えることが可能となっており、上述の量のイオンを発生させた場合にも人体に影響がでるおそれはない。また、必要に応じてイオン発生素子を複数個設けることにより、正負イオンの発生量を多くしつつオゾンの発生量を少なくすることが可能である。
【0063】
(作用・効果)
本実施の形態における空気浄化装置を動作させた場合、ファンモータ3018がファン3017を回転させる。ファン3017の回転によって、吸込み口3012から吹出し口3016に向かって空気の流れが生じる。吸込み口3012から筐体内に室内の空気が流入するが、この空気は、活性炭フィルタ3013を通過してさらにHEPAフィルタ3014を通過する。空気がHEPAフィルタ3014を通過する際に、空気中に浮遊して含まれる花粉などはHEPAフィルタ3014に捕捉される。
【0064】
たとえば花粉の場合、花粉の各粒子は、実際に人体に対してアレルギー疾患を引き起こす原因となるさらに微小な粒としてのアレルゲン(以下、花粉に含まれるこのようなアレルゲンを「花粉アレルゲン」という。)を表面や内部に含んでいると考えられている。その場合、花粉としては、HEPAフィルタ3014に捕捉されても、HEPAフィルタ3014に衝突した際の衝撃や、他の衝撃によって花粉が破壊されて花粉アレルゲンが単体または凝集体(ユービッシュ・ボディ)として浮遊を開始する場合があり得る。あるいは、花粉が破壊されて生じた花粉の断片が花粉アレルゲンを含んだ形で浮遊を開始する可能性もある。以下、「アレルゲン」といった場合、花粉アレルゲンの単体だけでなく、花粉アレルゲンの凝集体、花粉の断片で花粉アレルゲンを含むものも含めて意味するものとする。
【0065】
この空気浄化装置の運転開始時や運転終了時、あるいはそれ以外の物理的な衝撃や湿気などによる化学的な作用によって、HEPAフィルタ3014に捕捉されていた花粉その他の浮遊物質やアレルゲンが、再離脱することが考えられる。この場合、上流側からHEPAフィルタ3014に進入して捕捉されていた花粉などのうちの多くの量が、再びフィルタ3014の上流側に向かって、つまり吸込み口3012側に向かって再離脱することが考えられる。
【0066】
この空気浄化装置では、図7に示すようにHEPAフィルタ3014の直前の位置に配置されたイオン発生素子3011から正負イオンがHEPAフィルタ3014の直前の空間3019に向けて供給されている。上述の試験結果によれば、正負イオンが、浮遊アレルゲンに空間中で接触することにより、浮遊アレルゲンのアレルギー活性を失わせる作用があることが証明されている。したがって、HEPAフィルタ3014の直前の空間3019において正負イオンを接触させた花粉その他の浮遊物質中のアレルゲンは失活する。特に、花粉表面に存在する花粉アレルゲン、浮遊物質に付着していた花粉アレルゲンは正負イオンにより失活が促進される。
【0067】
また、再離脱したものに限らず、吸込み口3012から空間3019に入ってきたばかりの花粉その他の浮遊物質あるいは浮遊アレルゲンも正負イオンによって失活させることが期待できる。さらに、空間3019に供給された正負イオンは送風手段によって生じた空気の流れに乗ってHEPAフィルタ3014に対しても接触するので、HEPAフィルタ3014に捕捉されている花粉その他の浮遊物質あるいは浮遊アレルゲンについてもHEPAフィルタ3014に捕捉されたままの状態で失活させることができる。
【0068】
以上のように本実施の形態における空気浄化装置においては、HEPAフィルター3014で捕捉された花粉などが何らかの理由で再離脱し、送風経路の上流側に浮遊することとなったり、さらにその再離脱した花粉などがこの空気浄化装置の外部に拡散するようなことがあったりしたとしても、その花粉などに含まれるアレルゲンは正負イオンによる処理で既に失活させられていることから、たとえこれらが外部に拡散したとしても、もはや人体にアレルギー症状を引き起こさせないといえる。あるいは、アレルギー症状を完全には防止できない場合であっても、アレルギー症状の程度を抑えることができる。
【0069】
(実施の形態2)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、正負イオンを発生させるための第1のイオン発生素子としてのイオン発生素子3011の位置がHEPAフィルタ3014の直前の位置ではなく、HEPAフィルタ3014の直後の位置となっている。活性炭フィルタ3013とHEPAフィルタ3014との間には空間はなく、代わりにHEPAフィルタ3014とファン3017との間に空間3020が設けられている。イオン発生素子3011はこの空間3020に対して上側から下向きに配置されている。これら以外の部分については、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0070】
(作用・効果)
この空気浄化装置を動作させた場合、ファン3017の回転によって、吸込み口3012から吹出し口3016に向かって空気の流れが生じ、空気中に浮遊して含まれる花粉などがHEPAフィルタ3014に捕捉されるところまでは実施の形態1で説明したのと同様である。しかし、たとえば花粉の場合、花粉アレルゲンは花粉そのものに比べて粒径が小さいので、HEPAフィルタ3014から前側に向かって拡散するとは限らず、空気の流れに乗ってHEPAフィルタ3014の後ろ側に拡散する可能性も大きいといえる。
【0071】
また、元々、室内の空気中には、完全な状態の花粉以外に何らかの原因で飛散した微小なアレルゲンも浮遊していると考えられる。こういったアレルゲンが吸込み口3012から取りこまれた場合、その粒径が小さいため、HEPAフィルタ3014によっては捕捉されずに送風経路に沿ってHEPAフィルタ3014の後ろ側まで通過してしまうことがありうる。
【0072】
このような場合、本実施の形態における空気浄化装置では、図9に示すように、HEPAフィルタ3014の後ろ側の空間3020に向けてイオン発生素子3011から正負イオンが放出されているので、HEPAフィルタ3014から脱落したアレルゲン、または、HEPAフィルタ3014を通過してきたアレルゲンは、正負イオンと接触することとなり、失活する。あるいは、これらのアレルゲンと正負イオンとの接触は、空間3020で生じるとは限らず、より下流側で生じてもよい。空気はやがて吹出し口3016から筐体外に放出されるが、アレルゲンも吹出し口3016から放出されることとなる。しかし、この空気浄化装置内を通過したアレルゲンは既に正負イオンの作用によって失活しているため、もはや人体にアレルギー症状を引き起こさせないといえる。あるいは、アレルギー症状を完全には防止できない場合であっても、アレルギー症状の程度を抑えることができる。
【0073】
(実施の形態3)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、HEPAフィルタ3014の直後に第1イオン発生素子としてのイオン発生素子3011aを備え、HEPAフィルタ3014の直後に第2イオン発生素子としてのイオン発生素子3011bを備える。イオン発生素子3011a,3011bはいずれも正負イオンを発生させるためのものであり、送風経路の上側に下向きに配置されている。HEPAフィルタ3014の前後には空間3019,3020がそれぞれ設けられており、イオン発生素子3011a,3011bから発生した正負イオンは、送風経路の一部であるこれらの空間3019,3020に放出される。これら以外の部分については、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0074】
(作用・効果)
この空気浄化装置を動作させた場合、ファン3017の回転によって、吸込み口3012から吹出し口3016に向かって空気の流れが生じ、空気中に浮遊して含まれる花粉などがHEPAフィルタ3014に捕捉されるところまでは実施の形態1で説明したのと同様である。
【0075】
この空気浄化装置においては、HEPAフィルタ3014から再離脱した花粉などがHEPAフィルタ3014の前側に向かって離脱した場合も、花粉などの完全体から分裂した花粉アレルゲンのようにHEPAフィルタ3014を通過可能な形態のものであってHEPAフィルタ3014の後ろ側に向かって離脱した場合やHEPAフィルタ3014を通過した場合であっても、これらの物は、イオン発生素子3011a,3011bのいずれかから発生する正負イオンに触れることになって、アレルゲンは失活する。したがって、本実施の形態における空気浄化装置は、実施の形態1,2における空気浄化装置の効果を併せ持つことによってさらに確実にアレルゲンの失活を行なえる空気浄化装置となる。
【0076】
(実施の形態4)
図11を参照して、本発明に基づく実施の形態4における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、正負イオンを発生させるための第1のイオン発生素子としてのイオン発生素子3021を、HEPAフィルタ3014と略同一面上になるように備えている。ただし、HEPAフィルタ3014より上側に配置されており、HEPAフィルタ3014の後ろ側に向かって正負イオンを放出するように配置されている。これら以外の部分については、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0077】
(作用・効果)
この空気浄化装置における動作は、基本的に実施の形態1における空気浄化装置と同様である。イオン発生素子3021から発生した正負イオンは、HEPAフィルタ3014を通る送風経路に合流して、空気中のアレルゲンを失活させる。
【0078】
図11に示した例では、HEPAフィルタ3014とファン3017との間に空間3020が設けられており、主にこの空間3020において正負イオンとアレルゲンとの接触が生じて、アレルゲンが失活すると考えられる。
【0079】
あるいは、他の構造の例として、図12に示すように、この空間3020をなくした構造であってもよい。その場合であっても、ファン3017を通過して送風経路を進んでいくうちに正負イオンとアレルゲンとの接触が生じて、アレルゲンが失活すると考えられる。図12に示す構造を採用した場合、空気浄化装置のコンパクト化につながるという利点がある。
【0080】
なお、実施の形態1〜4における空気浄化装置において、吹出し口3016の直前に、第3イオン発生素子としてイオン発生素子3022を備えてもよい。ただし、イオン発生素子3022は、第1,2イオン発生素子と同様に、送風経路を通過する空気の中に正負イオンを発生させるためのものである。たとえば、図7に示した実施の形態1における空気浄化装置においてイオン発生素子3022を設置した例を図13に示す。図9に示した実施の形態2における空気浄化装置においてイオン発生素子3022を設置した例を図14に示す。同様にして、実施の形態3,4における空気浄化装置においても、イオン発生素子3022を設置してもよい。
【0081】
あるいは、第3イオン発生素子としてのイオン発生素子3022は、送風経路を通過する空気に対してではなく、吹出し口から外に出た直後の空気に対して正負イオンを供給するためのものであってもよい。
【0082】
このように、第3イオン発生素子を備えることとすれば、送風経路を通過する空気に含まれるアレルゲンをより確実に失活させることができる。
【0083】
(実施の形態5)
(構成)
図15を参照して、本発明に基づく実施の形態5における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、フィルタ、送風手段、イオン発生素子などの配置関係については基本的には実施の形態1〜4で説明したものと同様である。
【0084】
この空気浄化装置は、操作パネル3015にオン/オフ操作するためのスイッチを備えている。さらに、この空気浄化装置は、オン時制御手段として制御装置を備えている。この制御装置は、図15に示すように、スイッチがオンになったときに、第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始して、その後に送風手段の動作が開始されるように制御するように設定されている。イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始してから送風手段が動作を開始するまでの時間t1は、数秒から数分とすることが考えられる。この時間の長さは空気浄化装置の大きさ、送風経路の形状、空気中のアレルゲンの存在状況などを考慮して、適宜設定すればよい。
【0085】
なお、図15、図16においては、図中の左から右に向かって時間の流れを表し、太実線の部分が各構成要素の動作している状態、太点線の部分が各装置の停止している状態を表している。
【0086】
(作用・効果)
仮に、スイッチをオンしたときにイオン発生素子と送風手段とが同時に動作を開始した場合、スイッチオン直後には送風経路内に十分に正負イオンが供給されていないので、送風手段によって送られた初期の空気に含まれるアレルゲンは失活することなく送風経路を通過して吹出し口3016から出てしまう。特に、ファンモータ3018の動作開始時の衝撃や振動によって、フィルタに捕捉されていたアレルゲンが再離脱することは大いに考えられるので、初期に送風経路を通過する空気に乗って吹出し口3016から出てしまうアレルゲンを十分に失活させられないとすると問題である。
【0087】
しかし、本実施の形態における空気浄化装置では、スイッチをオンにすると、オン時制御手段の働きにより、まず、イオン発生素子が動作を開始し、時間t1を経過するうちに送風経路内に十分な量の正負イオンが浮遊するようになる。その後でファン3017が回転を開始して送風経路に空気の流れが生じる。このとき、衝撃または振動によってHEPAフィルタ3014から再離脱するアレルゲンがあったとしても、送風経路に入ったアレルゲンは既に十分な量だけ浮遊している正負イオンと触れ合うこととなり、失活してから外部に送り出されることとなる。したがって、上述のようなスイッチオン時の問題を回避することができる。
【0088】
なお、本実施の形態において、時間t1の間、送風手段を定常状態の強さよりも弱く動作させておき、時間t1経過後に、送風手段の動作を強めて定常状態のレベルにすることにしてもよい。このようにした場合、自然対流などの風がない場合でも、送風経路内にイオンを高濃度で行き渡らせることができるという効果を得ることができる。
【0089】
(実施の形態6)
(構成)
図16を参照して、本発明に基づく実施の形態6における空気浄化装置について説明する。この空気浄化装置は、フィルタ、送風手段、イオン発生素子などの配置関係については基本的には実施の形態1〜4で説明したものと同様である。
【0090】
この空気浄化装置は、操作パネル3015にオン/オフ操作するためのスイッチを備えている。さらに、この空気浄化装置は、オフ時制御手段として制御装置を備えている。この制御装置は、図16に示すように、スイッチがオフになったときに、まず送風手段の動作を停止し、その後にもイオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続し、その後にイオン発生素子のすべてが動作を停止するように制御するように設定されている。送風手段の動作が停止してからイオン発生素子のすべてが動作を停止するまでの時間t2は、数秒から数分とすることが考えられる。この時間の長さは空気浄化装置の大きさ、送風経路の形状、空気中のアレルゲンの存在状況などを考慮して、適宜設定すればよい。
【0091】
なお、本実施の形態において、時間t2の間、送風手段を定常状態の強さよりも弱く動作させておくことにしてもよい。このようにした場合、自然対流などの風がない場合でも、送風経路内にイオンを高濃度で行き渡らせることができるという効果を得ることができる。
【0092】
(作用・効果)
仮に、スイッチをオフしたときにイオン発生素子と送風手段とが同時に動作を停止した場合、停止直前に吸込み口3012から取り込まれたアレルゲンや、停止直前に花粉がフィルタなどに衝突して破壊され、飛散したアレルゲンは、失活しないまま送風経路内部に残ることとなる。また、送風手段の動作停止時の衝撃や振動によって、既にフィルタに捕捉されていたアレルゲンが再離脱して送風経路内部に残ることも考えられる。このようにして十分に失活しないまま送風経路内部に残ったアレルゲンは、空気浄化装置自体を移動させたり傾けたりしたときに筐体の外部に漏洩することや、次回の動作開始時に吹出し口3016から外部に送り出されることが懸念される。
【0093】
しかし、本実施の形態における空気浄化装置では、スイッチをオフにすると、オフ時制御手段の働きにより、まず、送風手段が動作を停止する。この後もイオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続するので、この状態で時間t2を経過する間に、送風手段停止時の衝撃や振動によってフィルタから再離脱して送風経路内に漂うアレルゲンや、失活せずに送風経路内に残っていたアレルゲンを確実に失活させることができる。イオン発生素子は、送風経路内に残存するアレルゲンを十分に失活させてから停止する。したがって、上述のようなスイッチオフ時の問題を回避することができる。
【0094】
なお、実施の形態5,6の両方を組合せてもよい。すなわち、1台の空気浄化装置として、上述のオン時制御手段とオフ時制御手段との両方を備えることとしてもよい。その場合、時間t1とt2は同じである必要はなく、それぞれ最適な長さに設定すればよい。
【0095】
(その他の構成)
上記各実施の形態においては、イオン発生素子を送風経路の上側に配置した例を示したが、送風経路内に正負イオンを供給することができる位置でありさえすれば、上側以外に配置することとしてもよい。しかし、イオン発生素子から発生した正負イオンを送風経路に効率良く拡散させるには、上側に配置することが好ましい。
【0096】
上記各実施の形態においては、フィルタとしてHEPAフィルタを例示したが、フィルタがHEPAフィルタ以外のタイプのものであっても本発明は適用可能である。
【0097】
各図においては、イオン発生素子は、D字形の部品として表示されているが、これはあくまで表示の便宜上記号化して表したものであって、イオン発生素子の実際の形状はこれに限らない。
【0098】
上記各実施の形態では、花粉に含まれるアレルゲンに特に注目して説明したが、花粉以外にダニ、カビなどに含まれるアレルゲンに対しても、本発明に基づく空気浄化装置は効果を発揮すると考えられる。
【0099】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、花粉その他の浮遊物質や、これらに含まれるアレルゲンや、浮遊アレルゲンなどに効果的に作用して空気を浄化することができる。
【0101】
本発明によれば、衝撃などによってフィルタから再離脱するアレルゲンやフィルタを通過してしまうアレルゲンに対しても、イオン発生素子から供給される正負両方のイオンに触れさせて失活させることができる。したがって、アレルギー疾患の発症を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図2】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図3】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図4】参考とした試験における第1の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図5】参考とした試験における第1の評価方法による他の試験結果を示すグラフである。
【図6】参考とした試験における第2の評価方法による試験結果を示すグラフである。
【図7】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の断面図である。
【図8】イオン発生装置の模式図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置の断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態3における空気浄化装置の断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態4における空気浄化装置の断面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態4における空気浄化装置の変形例の断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態1における空気浄化装置の変形例の断面図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態2における空気浄化装置の変形例の断面図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態5における空気浄化装置においてなされる制御のタイミングチャートである。
【図16】本発明に基づく実施の形態6における空気浄化装置においてなされる制御のタイミングチャートである。
【符号の説明】
140 イオン発生装置、142 第1電極、144 第2電極、146 誘電体、148 電源、149 (沿面放電が発生する)領域、3011,3011a,3011b,3021,3022 イオン発生素子、3012 吸込み口、3013 活性炭フィルタ、3014 HEPAフィルタ、3015 操作パネル、3016 吹出し口、3017 ファン、3018 ファンモータ、3019,3020 空間。
Claims (16)
- 途中にフィルタを有する送風経路と、
前記送風経路を通るように空気の流れを生じさせる送風手段と、
前記送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるための第1イオン発生素子とを備え、
前記第1イオン発生素子は、前記フィルタに隣接する位置に配置されている、空気浄化装置。 - 前記第1イオン発生素子は、前記フィルタの直後に配置されている、請求項1に記載の空気浄化装置。
- 前記送風経路を通過する空気の中に正負両方のイオンを発生させるための第2イオン発生素子が、前記フィルタの直前に配置されている、請求項2に記載の空気浄化装置。
- 前記第2イオン発生素子は、前記送風経路の上側に配置されている、請求項3に記載の空気浄化装置。
- 前記第1イオン発生素子は、前記フィルタの直前に配置されている、請求項1に記載の空気浄化装置。
- 前記第1イオン発生素子は、前記フィルタと略同一面上に配置されている、請求項1に記載の空気浄化装置。
- 前記第1イオン発生素子は、前記送風経路の上側に配置されている、請求項1から6のいずれかに記載の空気浄化装置。
- 前記送風経路を通った空気を外部に放出するための吹出し口と、正負両方のイオンを発生させるための第3イオン発生素子とを備え、
前記第3イオン発生素子は、前記吹出し口の直前に配置されている、請求項1に記載の空気浄化装置。 - オン/オフ操作するためのスイッチと、
前記スイッチをオンにしたときに、前記第1イオン発生素子が動作を開始し、その後に前記送風手段の動作が開始するように制御するためのオン時制御手段とを備える、
請求項1に記載の空気浄化装置。 - オン/オフ操作するためのスイッチと、
前記スイッチをオンにしたときに、前記第1,第2イオン発生素子のうち少なくとも一方が動作を開始し、その後に前記送風手段の動作が開始するように制御するためのオン時制御手段とを備える、
請求項3に記載の空気浄化装置。 - オン/オフ操作するためのスイッチと、
前記スイッチをオンにしたときに、前記第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つが動作を開始し、その後に前記送風手段の動作が開始するように制御するためのオン時制御手段とを備える、
請求項8に記載の空気浄化装置。 - オン/オフ操作するためのスイッチと、
前記スイッチをオフにしたときに、前記送風手段の動作を停止し、その後にも前記第1イオン発生素子は動作を継続し、その後に前記第1イオン発生素子が動作を停止するように制御するためのオフ時制御手段とを備える、
請求項1に記載の空気浄化装置。 - オン/オフ操作するためのスイッチと、
前記スイッチをオフにしたときに、前記送風手段の動作を停止し、その後にも前記第1,第2イオン発生素子のうち少なくとも一方は動作を継続し、その後に前記第1,第2イオン発生素子のうち動作を継続していたものもすべて動作を停止するように制御するためのオフ時制御手段とを備える、
請求項3に記載の空気浄化装置。 - オン/オフ操作するためのスイッチと、
前記スイッチをオフにしたときに、前記送風手段の動作を停止し、その後にも前記第1〜第3イオン発生素子のうち少なくとも1つは動作を継続し、その後に前記第1〜第3イオン発生素子のうち動作を継続していたものもすべて動作を停止するように制御するためのオフ時制御手段とを備える、
請求項8に記載の空気浄化装置。 - 前記正負両方のイオンとして、正イオンを100000個/cm3以上、負イオンを100000個/cm3以上の濃度で発生させる、請求項1に記載の空気浄化装置。
- 前記正負両方のイオンは、正イオンはH3O+(H2O)n(nは0または自然数)を主体とし、負イオンはO2 −(H2O)m(mは0または自然数)を主体とするものである、請求項1に記載の空気浄化装置。
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