JP2004242460A - 車輌用回生式制動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車輌の運転状態に基づき車輌の安定な走行状態を維持しつつ制動するための各車輪の目標制動力Fxtiに基づき前輪及び後輪の基本回生制動力Fbbrgft、Fbbrgrtが演算され(S100、600)、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが演算され(S650)、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど大きくなるよう後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが演算され(S700〜850)、基本回生制動力Fbbrgftと回生制動力の移行量ΔFbrgとの和として前輪の目標回生制動力Fbrgtfが演算され(S950)、左右前輪の目標制動力Fxtiより目標回生制動力Fbrgtfの2分の1が減算された値として左右前輪の目標摩擦制動力Fbptiが演算される(S1000)。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車輌の制動制御装置に係り、更に詳細には各車輪に個別に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置と、複数の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置とを有する回生式の制動制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車輌の回生式制動制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる下記の特許文献1に記載されている如く、車輌の運転状況に基づき各車輪の目標制動力を演算し、左右輪のうち目標制動力が小さい方の車輪の目標制動力に基づき回生制動力を決定し、目標制動力が大きい方の車輪については摩擦制動力と回生制動力との和により目標制動力を達成するよう構成された回生式制動制御装置が従来より知られており、また本願出願人の出願にかかる下記の特許文献5に記載されている如く、制動力の前後配分比を目標通りに維持しつつ回生効率を最大にする技術も既に知られている。
【0003】
尚本願出願人の出願にかかる下記の特許文献2には、前輪及び後輪に回生制動装置を備えた四輪駆動車に於いて車輌の安定性及び回生効率を最適にする技術が記載されており、また本願出願人の出願にかかる下記の特許文献3及び4には、制動力の前後配分比を考慮して回生制動力を制御する回生式制動制御装置が記載されている。
【特許文献1】
特開2002−104156号公報
【特許文献2】
特開2001−169405号公報
【特許文献3】
特開平9−104333号公報
【特許文献4】
特開平7−203602号公報
【特許文献5】
特開2002−95108号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如き従来の回生式制動制御装置によれば、車輌の走行安定性や旋回性能を悪化させることなく回生制動力を高くすることができるが、目標摩擦制動力及び目標回生制動力の比率や制動力の前後配分比により回生制動力が一義的に決定されるため、回生制動力が付与される車輪のタイヤに制動力発生の余裕がある場合にもその余裕を有効に利用して回生制動力を増大せることができず、従って車輌全体の燃費を向上させる上でこの点に於いて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前後配分比等に応じて回生制動力を制御するよう構成された従来の回生式制動制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、回生制動力が付与される車輪のタイヤ負荷率、即ちタイヤが発生可能な力に対するタイヤが発生している力の比が小さく、タイヤに制動力発生の余裕がある場合には当該車輪の回生制動力を増大させることにより、従来の回生式制動制御装置の場合に比して回生制動力を高くすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、各車輪に個別に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置と、複数の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置とを有する車輌用回生式制動制御装置に於いて、回生制動力が付与される車輪のタイヤ負荷率の指標値を演算し、タイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性を維持しつつ当該車輪の回生制動力を増加させることを特徴とする車輌用回生式制動制御装置(請求項1の構成)、又は各車輪に個別に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置と、複数の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置とを有する車輌用回生式制動制御装置に於いて、前輪のタイヤ負荷率の指標値を演算し、前輪のタイヤ負荷率の指標値に応じて回生制動力を変更することにより制動力の前後配分比を変更することを特徴とする車輌用回生式制動制御装置(請求項8の構成)によって達成される。
【0007】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、目標摩擦制動力及び目標回生制動力の総和が変化しないよう且つ車輌のヨーレートが変化しないようタイヤ負荷率の指標値が小さい車輪の回生制動力を増加させることにより、車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性を維持するよう構成される(請求項2の構成)。
【0008】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1及び2の構成に於いて、各車輪のタイヤ前後力及び横力、各車輪の接地荷重、路面の摩擦係数を推定し、これらに基づき各車輪のタイヤ負荷率の指標値を演算するよう構成される(請求項3の構成)。
【0009】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1及び2の構成に於いて、車輌の運転状況に基づき車輌モデルの車輌状態量を推定し、車輌モデルの車輌状態量と実際の車輌状態量との偏差に基づき車輌全体の車輪のタイヤ負荷率の指標値を演算するよう構成される(請求項4の構成)。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の構成に於いて、車輌の運転状況に基づき各車輪の目標制動力を演算し、前記目標制動力に基づき目標摩擦制動力及び目標回生制動力を演算し、各車輪のタイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して車輌全体の目標摩擦制動力及び目標回生制動力の総和を変更することなく当該車輪の前記目標回生制動力を増加補正するよう構成される(請求項5の構成)。
【0011】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項5の構成に於いて、車輌の旋回度合が高いほど目標回生制動力の増加補正量の低減量を大きくし目標回生制動力の増加補正量を小さくするよう構成される(請求項6の構成)。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項4又は5の構成に於いて、車輌の旋回度合を判定し、車輌の旋回度合が高いときにはそれが低いときに比して前記目標回生制動力の増加補正量を低減するよう構成される(請求項7の構成)。
【0013】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項8の構成に於いて、前輪の回生可能量は後輪の回生可能量よりも大きく、前輪のタイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して前輪の制動力配分が大きくなるよう前輪のタイヤ負荷率の指標値に応じて回生制動力を変更するよう構成される(請求項9の構成)。
【0014】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1の構成によれば、回生制動力が付与される車輪のタイヤ負荷率の指標値が演算され、タイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性を維持しつつ当該車輪の回生制動力が増加されるので、タイヤ負荷率が小さい車輪についてはそのタイヤの力発生能力を有効に利用して回生制動力を増大させることができ、これにより車輌全体の制動力を変更したり車輌の走行安定性を損なうことなく回生制動量を増大させて車輌全体の燃費を向上させることができる。
【0015】
また上記請求項2の構成によれば、目標摩擦制動力及び目標回生制動力の総和が変化しないよう且つ車輌のヨーレートが変化しないようタイヤ負荷率の指標値が小さい車輪の回生制動力を増加させることにより、車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性が維持されるので、車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性を確実に維持しつつ、回生制動量を増大させて車輌全体の燃費を向上させることができる。
【0016】
また上記請求項3の構成によれば、各車輪のタイヤ前後力及び横力、各車輪の接地荷重、路面の摩擦係数が推定され、これらに基づき各車輪のタイヤ負荷率の指標値が演算されるので、各車輪のタイヤ前後力及び横力に基づき各車輪のタイヤが発生している力を推定し、各車輪の接地荷重及び路面の摩擦係数に基づき各車輪のタイヤが発生可能な力を推定することができ、これにより各車輪のタイヤ負荷率の指標値を正確に演算することができる。
【0017】
また上記請求項4の構成によれば、車輌の運転状況に基づき車輌モデルの車輌状態量が推定され、車輌モデルの車輌状態量と実際の車輌状態量との偏差に基づき車輌全体の車輪のタイヤ負荷率の指標値が演算されるが、車輌モデルの車輌状態量と実際の車輌状態量との偏差は車輌全体としての車輪のタイヤ負荷率に対応しており、前記偏差の大きさが大きいほど車輌全体としての車輪のタイヤ負荷率が大きいので、車輌全体の車輪のタイヤ負荷率の指標値を簡便に演算することができる。
【0018】
また上記請求項5の構成によれば、車輌の運転状況に基づき各車輪の目標制動力が演算され、目標制動力に基づき各車輪の目標摩擦制動力及び目標回生制動力が演算され、タイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して車輌全体の目標摩擦制動力及び目標回生制動力の総和を変更することなく当該車輪の目標回生制動力が増加補正されるので、回生制動量を確実に増大させることができると共に、車輌全体の制動力が変化することを確実に防止することができる。
【0019】
また上記請求項6の構成によれば、車輌の旋回度合が高いほど目標回生制動力の増加補正量の低減量が大きくされ目標回生制動力の増加補正量が小さくされるので、車輌の走行安定性が低下し易いほど目標回生制動力の増加補正量が小さくすることができ、これにより目標回生制動力の増加補正及びこれに伴う制動力の配分比の変動に起因して車輌の旋回時の走行安定性が低下することを効果的に防止することができる。
【0020】
また上記請求項7の構成によれば、車輌の旋回度合が判定され、車輌の旋回度合が高いときにはそれが低いときに比して目標回生制動力の増加補正量が低減されるので、目標回生制動力の増加補正に伴い制動力の移動が行われる場合にも、車輌の旋回度合が高く車輌の走行安定性が低下し易い状況に於いて目標回生制動力の増加補正及び制動力の移動に起因して車輌の走行安定性が低下する虞れを確実に低減することができる。
【0021】
また上記請求項8の構成によれば、前輪のタイヤ負荷率の指標値が演算され、前輪のタイヤ負荷率の指標値に応じて制動力の前後配分比が変更されることにより回生制動力が増大されるので、前輪タイヤの力発生の余裕に応じて制動力の前後配分比を変更することにより回生制動力を増大させ、これにより車輌の走行安定性の低下を防止しつつ回生制動力を増大させることができる。
【0022】
また上記請求項9の構成によれば、前輪の回生可能量は後輪の回生可能量よりも大きく、前輪のタイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して前輪の制動力配分が大きくなるよう前輪のタイヤ負荷率の指標値に応じて回生制動力が変更されるので、前輪タイヤの力発生の余裕が高いほど制動力の前後配分比を前輪寄りにして車輌の走行安定性の低下を確実に防止すると共に前輪の回生制動力を増大させて車輌全体の回生制動量を増大させることができる。
【0023】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至5の構成に於いて、タイヤ負荷率の指標値が小さいほど当該車輪の回生制動力の増加量が大きくなるようタイヤ負荷率の指標値に応じて回生制動力の増加量を可変制御するよう構成される(好ましい態様1)。
【0024】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項7の構成に於いて、車輌の旋回度合が高いほど目標回生制動力の増加補正量の低減量を大きくし目標回生制動力の増加補正量を小さくするよう構成される(好ましい態様2)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項8又は9の構成に於いて、車輌の運転状況に基づき各車輪の目標制動力を演算し、各車輪の目標制動力に基づき目標摩擦制動力及び目標回生制動力を演算するよう構成される(好ましい態様3)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様3の構成に於いて、車輌の運転状況に基づき車輌の目標前後力、目標横力、目標ヨーモーメントを演算し、車輌の走行安定性を維持しつつ車輌の目標前後力、目標横力、目標ヨーモーメントを達成する各車輪の目標制動力を演算するよう構成される(好ましい態様4)。
【0027】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様4の構成に於いて、前輪のタイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して前輪の制動力配分が大きくなるよう各車輪の目標制動力を演算するよう構成される(好ましい態様5)。
【0028】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の構成に於いて、車輌は前輪に回生制動装置を有する前輪駆動車であるよう構成される(好ましい態様6)。
【0029】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様6の構成に於いて、回生制動装置は左右前輪に共通の回生制動装置であるよう構成される(好ましい態様7)。
【0030】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の構成に於いて、車輌は前輪及び後輪に回生制動装置を有する四輪駆動車であるよう構成される(好ましい態様8)。
【0031】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様8の構成に於いて、前輪の回生制動装置は左右前輪に共通の回生制動装置であり、後輪の回生制動装置は左右前輪に共通の回生制動装置であるよう構成される(好ましい態様9)。
【0032】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至9の構成に於いて、車輌は各車輪に回生制動装置を有する四輪駆動車であるよう構成される(好ましい態様10)。
【0033】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施の形態(以下単に実施形態という)について詳細に説明する。
【0034】
第一の実施形態
図1はハイブリッドエンジンが搭載された前輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【0035】
図1に於いて、10は前輪を駆動するハイブリッドエンジンを示しており、ハイブリッドエンジン10はガソリンエンジン12と電動発電機14とを含んでいる。ガソリンエンジン12の出力軸16はクラッチを内蔵する無段変速機18の入力軸に連結されており、無段変速機18の入力軸は電動発電機14の出力軸20にも連結されている。無段変速機18の出力軸19の回転はフロントディファレンシャル22を介して左右前輪用車軸24FL及び24FRへ伝達され、これにより左右の前輪24FL及び24FRが回転駆動される。
【0036】
ハイブリッドエンジン10のガソリンエンジン12及び電動発電機14はエンジン制御装置28により運転者による図には示されていないアクセルペダルの踏み込み量及び車輌の走行状況に応じて制御される。また電動発電機14は前輪用回生制動装置30の発電機としても機能し、回生発電機としての機能(回生制動)もエンジン制御装置28により制御される。
【0037】
特に図示の実施形態に於いては、ハイブリッドエンジン10は図には示されていないシフトレバーがDレンジにある通常走行時にはガソリンエンジン12又はガソリンエンジン12と電動発電機14とにより駆動力又はエンジンブレーキ力を発生し(通常運転モード)、シフトレバーがDレンジにあるが負荷が低いときには電動発電機14のみにより駆動力を発生し(電気自動車モード)、シフトレバーがBレンジにあるときにもガソリンエンジン12と電動発電機14とにより駆動力又はエンジンブレーキ力を発生するが、その場合のエンジンブレーキ力はDレンジの場合よりも高く(エンジンブレーキモード)、シフトレバーがDレンジにあり運転者によりブレーキペダル32が踏み込まれたときにも電動発電機14は回生発電機として機能する。
【0038】
左右の前輪26FL、26FR及び左右の後輪34RL、34RRの摩擦制動力は摩擦制動装置44の油圧回路46により対応するホイールシリンダ48FL、48FR、48RL、48RRの制動圧が制御されることによって制御される。図には示されていないが、油圧回路46はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧力は通常時には運転者によるブレーキペダル32の踏み込み量及びブレーキペダル32の踏み込みに応じて駆動されるマスタシリンダ50の圧力に応じて摩擦制動装置用制御装置としての制動制御装置52により制御される。
【0039】
エンジン制御装置28にはアクセルペダルセンサ54よりアクセルペダルの踏み込み量を示す信号、シフトポジション(SP)センサ56より無段変速機18のシフト位置を示す信号、制動制御装置52より前輪の目標回生制動力Frgftを示す信号がそれぞれ入力される。
【0040】
車輪10FR〜10RLに近接した位置にはそれぞれ各車輪のホイールシリンダ48FR、48FL、48RR、48RL内の圧力Pi(i=fr、fl、rr、rl)を検出する圧力センサ58FR、58FL、58RR、58RLが設けられ、図には示されていないがステアリングホイールが連結されたステアリングコラムには操舵角φを検出する操舵角センサ60が設けられている。
【0041】
また車輌12にはそれぞれ車輌のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ62、前後加速度Gxを検出する前後加速度センサ64、横加速度Gyを検出する横加速度センサ66、車速Vを検出する車速センサ68が設けられている。尚操舵角センサ60、ヨーレートセンサ62及び横加速度センサ66は車輌の左旋回方向を正としてそれぞれ操舵角、ヨーレート及び横加速度を検出する。
【0042】
図示の如く、圧力センサ58FR〜58RLにより検出されたホイールシリンダ内圧力Piを示す信号、操舵角センサ60により検出された操舵角φを示す信号、ヨーレートセンサ62により検出されたヨーレートγを示す信号、前後加速度センサ64により検出された前後加速度Gxを示す信号、横加速度センサ66により検出された横加速度Gyを示す信号、車速センサ68により検出された車速Vを示す信号は制動制御装置52に入力される。
【0043】
尚エンジン制御装置28及び制動制御装置52は実際にはそれぞれ例えばCPU、ROM、RAM、入出力装置を含むマイクロコンピュータと駆動回路とを含む一般的な構成のものであってよい。
【0044】
後に詳細に説明する如く、制動制御装置52は、後述の如く図2に示されたルーチンに従って車輌の運転状態に基づき車輌の安定な走行状態を維持しつつ制動するための各車輪の目標制動力Fxti(i=fr、fl、rr、rl)を演算し、目標制動力Fxtiに基づき前輪の基本回生制動力Fbbrgft及び後輪の基本回生制動力Fbbrgrtを演算する。
【0045】
また制動制御装置52は、前輪のタイヤ負荷率Ltrfを演算し、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど大きくなるよう前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づきタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrを演算し、車輌の旋回度合を示す車輌のヨーレートγの絶対値が大きいほど小さくなるよう車輌のヨーレートγの絶対値に基づき旋回度合に基づく調整係数Rstrを演算し、タイヤ負荷に基づく調整係数Rtrと旋回度合に基づく調整係数Rstrとの積として回生量調整係数Rを演算し、回生量調整係数Rと後輪の基本回生制動力Fbbrgrtとの積として後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgを演算する。
【0046】
そして制動制御装置52は、前輪の基本回生制動力Fbbrgftと回生制動力の移行量ΔFbrgとの和として前輪の目標回生制動力Fbrgtfを演算し、各車輪の目標制動力Fxtiより前輪の目標回生制動力Fbrgtfの2分の1又は後輪より前輪への移行量ΔFbrgの2分の1が減算された値として各車輪の目標摩擦制動力Fbpti(i=fr、fl、rr、rl)を演算し、エンジン制御装置28と共働して前輪の目標回生制動力Fbrgtf及び各車輪の目標摩擦制動力Fbptiが達成されるよう各車輪の制動力を制御する。
【0047】
特に制動制御装置52は、後述の如く図3乃至図7に示されたフローチャートに従い、各輪のスリップ率Siが0であるときの車輌の前後力Fxso、横力Fyso、モーメントMsoと車輌の挙動を安定化させるための目標前後力Fxt及び目標モーメントMtとの和として車輌の目標前後力Fxa、横力Fya、モーメントMaを演算し、各輪のスリップ率の微小な変化dSiに対する車輌の前後力、横力、モーメントの変化dFx、dFy、dMを示す微係数∂Fxi/∂Si、∂Fyi/∂Si、∂Mi/∂Siを演算する。
【0048】
また制動制御装置52は、目標前後力Fxaと実際の前後力Fxとの差、目標横力Fyaと実際の横力Fyとの差、目標モーメントMaと実際のモーメントMとの差及び微係数∂Fxi/∂Si、∂Fyi/∂Si、∂Mi/∂Siに基づき収束演算により前後力の修正量δFx、横力の修正量δFy、モーメントの修正量δMを演算し、前後力、横力、モーメントの修正量を達成するための各輪のスリップ率の修正量δSiを演算し、前回演算された目標スリップ率をスリップ率修正量δSiにて修正することにより今回の目標スリップ率Saiを演算し、必要に応じて目標スリップ率Saiを補正し、目標スリップ率Saiに基づき各車輪の目標制動力Fxtiを演算する。
【0049】
尚エンジン制御装置28によるハイブリッドエンジン10の運転モードの制御及びガソリンエンジン12の制御は本発明の要旨をなすものではなく、これらの制御は当技術分野に於いて公知の任意の要領にて実施されてよい。
【0050】
次に図示の第一の実施形態に於ける各車輪の目標制動力の演算の基本原理について説明する。尚目標制動力の演算の基本原理は後述の他の実施形態についても同様である。
【0051】
まず制動時の横力の低下、荷重移動、タイヤスリップ角、路面の摩擦係数が考慮されるブラッシュタイヤモデルに基づき、各輪のタイヤが発生する前後力Ftxi及び横力Ftyi(i=fr、fl、rr、rl)を求め、また微小なスリップ率の変化によるタイヤ前後力変化及び横力変化を求める。
【0052】
図9に示されている如く、各輪のタイヤ100の発生力Fti、即ち前後力Ftxi 及び横力Ftyiの合力がタイヤの縦方向に対しなす角度をθiとし、タイヤのスリップ角をβiとし、タイヤのスリップ率をSi(制動時が正、−∞<Si<1.0)とし、路面の摩擦係数をμとし、タイヤの接地荷重をWiとし、Ks及びKbを係数(正の定数)とすると、タイヤがロック状態にはない場合(ξi≧0の場合)の前後力Ftxi及び横力Ftyiはそれぞれ下記の式1及び2にて表され、タイヤがロック状態にある場合(ξi<0の場合)の前後力Ftxi及び横力Ftyiはそれぞれ下記の式3及び4にて表される。
【数1】
【0053】
尚係数Kbは図10に示されている如く、スリップ率Siが0であるときのタイヤのスリップ角βiに対する横力Ftyiのグラフの原点に於ける傾きであり、係数Ksは図11に示されている如く、スリップ角βiが0であるときのタイヤのスリップ率Siに対する前後力Ftxiのグラフの原点に於ける傾きである。またcosθ、sinθ、λ、ξはそれぞれ下記の式5〜8にて表される。
【数2】
【0054】
上記式1〜4をスリップ率Siにて偏微分することにより、微小なスリップ率の変化に対する前後力変化及び横力変化(タイヤ座標系)を演算する(下記の式9及び10)。
【数3】
【0055】
次に下記の式11〜18に従って右前輪(fr)、左前輪(fl)、右後輪(rr)、左後輪(rl)の各タイヤの前後力及び横力(タイヤ座標系)を車輌座標系に変換して車輌の重心に作用する前後力Fxi及び横力Fyiを演算すると共に、モーメントMiを演算する。尚下記の各式に於いて、φf及びφrはそれぞれ前輪及び後輪の舵角であり、Trは車輌のトレッド幅であり、Lf及びLrはそれぞれ車輌の重心から前輪車軸及び後輪車軸までの距離であり、T(φf)及びT(φr)はそれぞれ下記の式19及び20にて表される値である。
【0056】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【0057】
同様に、下記の式21〜28に従って右前輪(fr)、左前輪(fl)、右後輪(rr)、左後輪(rl)の各タイヤの前後力及び横力の偏微分値(タイヤ座標系)を車輌座標系に変換して車輌に作用する前後力及び横力の偏微分値(微係数)を演算すると共に、モーメントの偏微分値(微係数)を演算する。
【0058】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【0059】
次に各輪のスリップ率が目標スリップ率Siであるときに発生する車輌の前後力Fx、横力Fy、モーメントMをそれぞれ各輪による前後力Fxi、横力Fyi、モーメントMiの和として下記の式29に従って推定演算する。
【数13】
【0060】
次に下記の(A)及び(B)の考え方に基づき、下記の式30及び31に従って目標前後力Fxa、目標横力Fya、目標モーメントMaを演算する。尚下記の式30の右辺はスリップ率が0であるときに各輪により発生される前後力、横力、モーメントを表している。
【0061】
(A)車輌の運動制御により車輌の挙動を安定化させるための目標前後力Fxt及び目標モーメントMtは運動制御していないとき(スリップ率Siが0であるとき)に発生する前後力Fxso 及びモーメントMsoに対する上乗せ量であると見なす。
【0062】
(B)運動制御していないときの横力Fyso を目標横力Fyaとすることにより、運動制御時の横力の低下を極力減らす。
【数14】
【0063】
被制御4輪のスリップ率の微小な変化dSi による車体に作用する前後力の変化dFx、横力の変化dFy、モーメントの変化dMは下記の式32により表される。尚下記の式32に於いて、dSfr、dSfl、dSrr、dSrlはそれぞれ右前輪、左前輪、右後輪、左後輪のスリップ率の微小変化量であり、Jはヤコビ行列である。
【数15】
【0064】
次に目標前後力Fxa、目標横力Fya、目標モーメントMaを実現するスリップ率Siを演算する。ただしこのスリップ率を解析的に解くことは困難であるため、以下の収束演算により求める。
【0065】
いま現在の前後力、横力、モーメントと目標前後力、目標横力、目標モーメントとの差をΔとすると、Δは下記の式33により表され、このΔを0にするスリップ率修正量のうち、Tをトランスポートとして下記の式34にて表される評価関数Lを最小化するスリップ率修正量δSを求める。
【0066】
【数16】
L=δSTWdsδS+(S+δS)TWs (S+δS)+ETWfE……(34)
【0067】
尚上記式34の右辺第1項は目標スリップ率のスリップ率修正量δSを制限するための項であり、第2項は目標スリップ率を制限するための項であり、第3項は前後力、横力、モーメントがそれぞれ目標前後力、目標横力、目標モーメントに追従することを保証するための項である。
【0068】
式34の評価関数Lを最小化するスリップ率修正量δSは下記の式35の通りである。ただしFx、Fy、Mはそれぞれ現在の被制御輪のスリップ率で発生している前後力、横力、モーメント(式29)であり、Fxa、Fya、Maはそれぞれ目標前後力、目標横力、目標モーメント(式31)であり、S及びδSはそれぞれ各輪のスリップ率(下記の式36)及びスリップ率修正量(下記の式37)であり、EはΔとδSによる前後力、横力、モーメントの修正量との差(下記の式38)であり、Wdsはスリップ率修正量δSに対する重み(下記の式39)であり、Wsはスリップ率Sに対する重み(下記の式40)であり、Wfは各力に対する重み(下記の式41)であり、各重みは0又は正の値である。
【0069】
δS=(Wds+Ws+JTWfJ)−1(−WsS+JTWfΔ)……(35)
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【0070】
従って前回の目標スリップ率Saiをスリップ率修正量δSiにて修正することにより、目標前後力Fxa、目標横力Fya、目標モーメントMaを達成する四輪の目標スリップ率Saiを演算することができ、目標スリップ率Saiに基づき各車輪の目標制動力Fxtiを演算することができる。
【0071】
次に図2に示されたフローチャートを参照して図示の第一の実施形態に於ける制動制御について説明する。尚図2に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないイグニッションスイッチの閉成により開始され、所定の時間毎に繰返し実行される。
【0072】
まずステップ50に於いては各センサの検出値を示す信号の読み込みが行われ、ステップ100に於いては後に詳細に説明する如く図5乃至図10に示されたフローチャートに従って各車輪の目標制動力Fxti(i=fr、fl、rr、rl)が演算される。
【0073】
ステップ600に於いては左右前輪の目標制動力Fxtfl及びFxtfrのうち小さい方の値の2倍として前輪の基本回生制動力Fbbrgftが演算されると共に、左右後輪の目標制動力Fxtrr及びFxtrlのうち小さい方の値の2倍として後輪の基本回生制動力Fbbrgrtが演算される。
【0074】
ステップ650に於いては車輌の前後加速度Gx及び横加速度Gyに基づき当技術分野に於いて公知の要領にて各車輪の前後力Fxi、横力Fyi、及び各車輪の接地荷重Wi(i=fr、fl、rr、rl)が演算され、当技術分野に於いて公知の要領にて路面の摩擦係数μが演算され、下記の式42に従って左右前輪のタイヤ負荷率Ltri(i=fr、fl)が演算され、更に左右前輪のタイヤ負荷率Ltrfr及びLtrflのうち大きい方の値として前輪のタイヤ負荷率Ltrfが演算される。
【数23】
【0075】
ステップ700に於いては前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づき図12に示されたグラフに対応するマップより前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど大きくなるようタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrが演算され、ステップ750に於いては車輌の旋回度合を示す車輌のヨーレートγの絶対値に基づき図13に示されたグラフに対応するマップより車輌のヨーレートγの絶対値が大きいほど小さくなるよう旋回度合に基づく調整係数Rstrが演算される。
【0076】
ステップ800に於いてはタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrと旋回度合に基づく調整係数Rstrとの積として回生量調整係数Rが演算され、ステップ850に於いては下記の式43に従って回生量調整係数Rと後輪の基本回生制動力Fbbrgrtとの積として後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが演算される。
ΔFbrg=R・Fbbrgrt ……(43)
【0077】
ステップ900に於いては後述のステップ950に於いて演算される左右前輪の目標回生制動力Fbrgtfの2分の1と後述のステップ1000に於いて演算される目標摩擦制動力Fbptiとの和を左右前輪の前後力として演算される左右前輪のタイヤ負荷率のうち大きい方の値がCa(1以下の1に近い正の定数)以下となるよう回生制動力の移行量ΔFbrgがガード処理される。
【0078】
ステップ950に於いては下記の式44に従って前輪の基本回生制動力Fbbrgftとガード処理後の回生制動力の移行量ΔFbrgとの和として前輪の目標回生制動力Fbrgtfが演算される。
Fbrgtf=Fbbrgft+ΔFbrg ……(44)
【0079】
ステップ1000に於いては下記の式45〜48に従って各車輪の目標摩擦制動力Fbpti(i=fr、fl、rr、rl)が演算される。
Fbptfr=Fxtfr−Fbrgft/2 ……(45)
Fbptfl=Fxtfl−Fbrgft/2 ……(46)
Fbptrr=Fxtrr−ΔFbrg/2 ……(47)
Fbptrl=Fxtrl−ΔFbrg/2 ……(48)
【0080】
ステップ1050に於いては前輪の目標回生制動力Fbrgtfを示す信号がエンジン制御装置28へ出力され、エンジン制御装置28により前輪の目標回生制動力Fbrgtfに基づき回生制動装置30が制御されることにより回生制動の制御が実行される。
【0081】
またステップ1050に於いては各車輪の目標摩擦制動力Fbptiに基づき各車輪の目標制動圧Pbptiが演算されると共に、各車輪の制動圧が目標制動圧Pbptiになるよう油圧回路46が制御されることによって各車輪の摩擦制動の制御が実行される。
【0082】
次に図3に示されたフローチャートを参照して上述のステップ100に於ける各車輪の目標制動力演算ルーチンについて説明する。
【0083】
まずステップ150に於いては図4に示されたルーチンに従って後輪のスリップ角βr が演算され、ステップ200に於いては図5に示されたルーチンに従って前回のステップ500に於いて演算された目標スリップ率での車輌の前後力Fx、横力Fy、モーメントM、即ち現在の前後力、横力、モーメントが演算され、ステップ250に於いては図6に示されたルーチンに従って車輌の目標前後力Fxa、目標横力Fya、目標モーメントMaが演算される。
【0084】
ステップ300に於いては上記式9及び10に従って微小なスリップ率の変化に対する各輪の前後力の変化及び横力の変化が演算されると共に、上記式21〜28及び式32に従って車輌の前後力の微係数∂Fxi/∂Si、横力の微係数∂Fyi/∂Si、モーメントの微係数∂Mi/∂Siが演算される。
【0085】
ステップ350に於いては上記式33に従ってそれぞれ前後力、横力、モーメントの目標値Fxa、Fya、Maと実際の値Fx、Fy、Mとの偏差として車輌の前後力の修正量δFx、横力の修正量δFy、モーメントの修正量δMが演算される。
【0086】
ステップ400に於いては現在の車輌の前後力、横力、モーメントと目標前後力、目標横力、目標モーメントとの差Δを0にするスリップ率修正量のうち、上記式34にて表される評価関数Lを最小化する各輪のスリップ率の修正量δSiが上記式35に従って演算される。
【0087】
ステップ450に於いては前回の目標スリップ率Saiとステップ400に於いて演算されたスリップ率の修正量δSaiとの和(Sai+δSi)として修正後の各輪の目標スリップ率Saiが演算される。
【0088】
ステップ500に於いては図7に示されたルーチンに従って各輪の目標スリップ率Saiが必要に応じて補正され、ステップ550に於いては目標スリップ率Saiに基づき図には示されていない車輌モデルに基づくマップより各輪の目標制動力Fxtiが演算される。
【0089】
図4に示された後輪のスリップ角βr演算ルーチンのステップ155に於いては、横加速度Gyと車速V及びヨーレートγの積Vγとの偏差Gy−Vγとして横加速度の偏差、即ち車輌の横すべり加速度Vydが演算され、横すべり加速度Vydが積分されることにより車体の横すべり速度Vyが演算され、車体の前後速度Vx(=車速V)に対する車体の横すべり速度Vyの比Vy/Vxとして車体のスリップ角βが演算される。
【0090】
ステップ160に於いてはLrを車輌の重心と後輪車軸との間の車輌前後方向の距離として下記の式49に従って後輪のスリップ角βr が演算される。尚後輪のスリップ角βrは後輪のころがり方向に対し後輪のすべり方向が反時計廻り方向にある場合が正である。
βr=β−Lrγ/V ……(49)
【0091】
ステップ165に於いては基準値βrcを正の定数として後輪のスリップ角βrが基準値βrcを越えているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ175へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ170に於いて後輪のスリップ角βrが基準値βrcに設定される。
【0092】
同様にステップ175に於いては後輪のスリップ角βrが−βrc未満であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ200へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ180に於いて後輪のスリップ角βrが−βrcに設定され、しかる後ステップ200へ進む。
【0093】
図5に示された目標スリップ率での車輌の前後力Fx、横力Fy、モーメントM演算ルーチンのステップ205に於いては、操舵角φに基づき前輪の実舵角φfが演算されると共に、Lfを車輌の重心と前輪車軸との間の車輌前後方向の距離として下記の式50に従って前輪のスリップ角βfが演算される。尚前輪のスリップ角βfも後輪のころがり方向に対し後輪のすべり方向が反時計廻り方向にある場合が正である。
βf=−φf+β+Lfγ/V ……(50)
【0094】
ステップ210に於いてはgを重力加速度として車体の前後加速度Gx及び横加速度Gyに基づき下記の式51に従ってタイヤに対する路面の摩擦係数μが推定演算される。
μ=(Gx2+Gy2)1/2/g ……(51)
【0095】
ステップ215に於いては車体の前後加速度Gx及び横加速度Gyに基づき当技術分野に於いて周知の要領にて各輪の荷重移動量ΔWiが演算されると共に、各輪の支持荷重Wiが各輪の静荷重Wsiと荷重移動量ΔWiとの和(Wsi+ΔWi)として演算される。
【0096】
ステップ220に於いては各輪のグリップ状態の判定値ξiが上記式8に従って演算され、ステップ225に於いては判定値ξiが正又は0であるか否かの判別、即ち車輪がグリップ状態にあるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはそれぞれ上記式1及び2に従って各輪の前後力Ftxi及び横力Ftyiが演算され、否定判別が行われたときにはステップ235に於いてそれぞれ上記式3及び4に従って各輪の前後力Ftxi及び横力Ftyiが演算される。尚ステップ225〜235は各輪毎に実行される。
【0097】
ステップ240に於いては車輌の前後力Fx、横力Fy、モーメントMに対する各輪の成分が上記式11〜20に従って演算され、ステップ245に於いては上記式29に従って車輌の実際の前後力Fx、実際の横力Fy、実際のモーメントMが演算され、しかる後ステップ250へ進む。
【0098】
図6に示された車輌の目標前後力Fxa、目標横力Fya、目標モーメントMa演算ルーチンのステップ255に於いては、KhをスタビリティファクタとしHをホイールベースとして下記の式52に従って目標ヨーレートγcが演算されると共に、Tを時定数としsをラプラス演算子として下記の式53に従って基準ヨーレートγtが演算される。尚目標ヨーレートγcは動的なヨーレートを考慮すべく車輌の横加速度Gyを加味して演算されてもよい。
γc=Vφ/(1+KhV2)H ……(52)
γt=γc/(1+Ts) ……(53)
【0099】
ステップ260に於いては下記の式54に従ってドリフトアウト量DVが演算される。尚ドリフトアウト量DVはHをホイールベースとして下記の式55に従って演算されてもよい。
DV=(γt−γ) ……(54)
DV=H(γt−γ)/V ……(55)
【0100】
ステップ265に於いてはヨーレートγの符号に基づき車輌の旋回方向が判定され、ドリフトアウト状態量DSが車輌が左旋回のときにはDVとして、車輌が右旋回のときには−DVとして演算され、演算結果が負の値のときにはドリフトアウト状態量は0とされる。
【0101】
ステップ270に於いてはドリフトアウト状態量DSに基き図8に示されたグラフに対応するマップより係数Kgが演算され、ステップ275に於いてはKm1及びKm2をそれぞれ正の定数とし、βdを車輌のスリップ角βの微分値とし、βt及びβtdをそれぞれ車輌の目標スリップ角及び目標スリップ角の微分値として下記の式56に従って挙動制御の目標モーメントMtが演算される。尚目標スリップ角βt及び目標スリップ角の微分値βtdは何れも0であってもよい。
Mt=Km1(β−βt)+Km2(βd−βtd) ……(56)
【0102】
ステップ280に於いては下記の式57に従って係数Kgと車輌の質量Massと重力加速度gとの積として挙動制御の目標前後力Fxtが演算される。
Fxt=−KgMassg ……(57)
【0103】
ステップ285に於いては各輪のスリップ率Siが0であるときの車輌の前後力Fxso、横力Fyso、モーメントMsoが上記式30に従って演算され、ステップ290に於いては車輌の目標前後力Fxa、横力Fya、モーメントMaが上記式31に従って演算され、しかる後ステップ300へ進む。
【0104】
図7に示された目標スリップ率補正演算ルーチンのステップ505に於いては、目標モーメントMaが負であり且つ後輪のスリップ角βrが正であり且つ車輌のヨーレートγが正であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ510へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ515に於いて後輪の目標スリップ率Srr及びSrlがそれぞれ0に設定され、しかる後ステップ550へ進む。
【0105】
ステップ510に於いては目標モーメントMaが正であり且つ後輪のスリップ角βrが負であり且つ車輌のヨーレートγが負であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ515へ進み、否定判別が行われたときにはそのままステップ550へ進む。
【0106】
かくして図示の第一の実施形態によれば、ステップ100に於いて車輌の運転状態に基づき車輌の安定な走行状態を維持しつつ制動するための各車輪の目標制動力Fxtiが演算され、ステップ600に於いて左右前輪の目標制動力Fxtfl及びFxtfrに基づき前輪の基本回生制動力Fbbrgftが演算されると共に、左右後輪の目標制動力Fxtrr及びFxtrlに基づき後輪の基本回生制動力Fbbrgrtが演算される。
【0107】
またステップ650に於いて前輪のタイヤ負荷率Ltrfが演算され、ステップ700に於いて前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど大きくなるよう前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づく調整係数Rtrが演算され、ステップ750に於いて車輌の旋回度合を示す車輌のヨーレートγの絶対値が大きいほど小さくなるよう車輌のヨーレートγの絶対値に基づき旋回度合に基づく調整係数Rstrが演算され、ステップ800に於いてタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrと旋回度合に基づく調整係数Rstrとの積として回生量調整係数Rが演算され、ステップ850に於いて回生量調整係数Rと後輪の基本回生制動力Fbbrgrtとの積として後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが演算される。
【0108】
そしてステップ950に於いて前輪の基本回生制動力Fbbrgftとガード処理後の回生制動力の移行量ΔFbrgとの和として前輪の目標回生制動力Fbrgtfが演算され、ステップ1000に於いて左右前輪の目標制動力Fxtiより前輪の目標回生制動力Fbrgtfの2分の1が減算された値として左右前輪の目標摩擦制動力Fbptiが演算されると共に、左右後輪の目標制動力Fxtiより前輪への移行量ΔFbrgの2分の1が減算された値として左右後輪の目標摩擦制動力Fbptiが演算され、ステップ1050に於いてエンジン制御装置28と共働して前輪の目標回生制動力Fbrgtf及び各車輪の目標摩擦制動力Fbptiが達成されるよう前輪の回生制動力が制御されると共に各車輪の摩擦制動力が制御される。
【0109】
従って図示の第一の実施形態によれば、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さく前輪が発生し得る力に余裕があるほど前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づく調整係数Rtrが大きい値に演算され、これにより後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが増大されるので、前輪タイヤの力発生能力を有効に利用して回生制動装置30による回生量を増大させ車輌全体としての燃費を向上させることができる。
【0110】
また図示の第一の実施形態によれば、左右前輪の回生制動力が同量増大され、左右前輪の回生制動力が増大される量と同量の左右後輪の摩擦制動力が低減され、これにより制動力の前後配分の変更に起因して車輌のヨーレートや車輌全体の制動力が変更されることがなく、また前輪を限界状態にもたらすことなく後輪の横力発生の余裕が増大されるので、車輌の走行安定性及び車輌の減速度を確実に維持しつつ回生量を増大させることができる。
【0111】
また図示の第一の実施形態によれば、ステップ150に於いて後輪のスリップ角βrが演算され、ステップ200に於いて現在の車輌の前後力Fx、横力Fy、モーメントMが演算され、ステップ250に於いて各輪のスリップ率Siが0であるときの車輌の前後力Fxso、横力Fyso、モーメントMsoと車輌の挙動を安定化させるための目標前後力Fxt及び目標モーメントMtとの和として車輌の目標前後力Fxa、横力Fya、モーメントMaが演算され、ステップ300に於いて各輪のスリップ率の微小な変化dSiに対する車輌の前後力、横力、モーメントの変化dFx、dFy、dMを示す微係数∂Fxi/∂Si、∂Fyi/∂Si、∂Mi/∂Siが演算される。
【0112】
またステップ350に於いて目標前後力Fxaと実際の前後力Fxとの差、目標横力Fyaと実際の横力Fyとの差、目標モーメントMaと実際のモーメントMとの差及び微係数∂Fxi/∂Si、∂Fyi/∂Si、∂Mi/∂Siに基づき収束演算により前後力の修正量δFx、横力の修正量δFy、モーメントの修正量δMが演算され、ステップ400に於いて前後力、横力、モーメントの修正量を達成するための各輪のスリップ率の修正量δSiが演算され、ステップ450に於いて前回演算された目標スリップ率がスリップ率修正量δSiにて修正されることにより今回の目標スリップ率Saiが演算され、ステップ500に於いて必要に応じて各車輪の目標スリップ率Saiが補正され、ステップ550に於いて目標スリップ率Saiに基づき各車輪の目標制動力Fxtiが演算される。
【0113】
従って図示の第一の実施形態によれば、車輌の前後力Fxが目標前後力Fxaになり、横力Fyが目標横力Fyaになり、モーメントMが目標モーメントMaになるよう各車輪の制動力が制御されるので、車輌の走行状態、特に旋回時の走行状態を確実に安定な状態に維持しつつ回生制動装置30による回生量を増大させることができ、この作用効果は後述の他の実施形態に於いても得られる。
【0114】
また図示の第一の実施形態によれば、各輪のスリップ率修正量δSiは現在の車輌の前後力、横力、モーメントと目標前後力、目標横力、目標モーメントとの差Δを0にするスリップ率修正量のうち、上記式34にて表される評価関数Lを最小化する各輪のスリップ率の修正量として上記式35に従って演算されるので、車輌や車輌の走行環境毎に各輪のスリップ率と車輌の運動を安定化させるための前後力、横力、モーメントとの間の対応関係を示す多数のマップを設定する必要がなく、これにより運動制御装置を簡便に構成することができ、また目標前後力、目標横力、目標モーメントを実現する各輪のスリップ率Siが解析により演算される場合に比して迅速に目標スリップ率を演算することができ、これにより車輌の走行状態を応答遅れなく安定な状態に維持することができ、この作用効果は後述の他の実施形態に於いても得られる。
【0115】
第二の実施形態
図14は前輪駆動用のハイブリッドエンジン及び後輪駆動用の電動発電機が搭載された四輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第二の実施形態を示す概略構成図である。尚図14に於いて、図1に示された部材に対応する部材には図1に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
【0116】
この第二の実施形態に於いては、左右の後輪34RL及び34RRは車輌の駆動時に必要に応じて左右後輪用車軸36RL、36RR及び後輪用ディファレンシャル38を介して後輪用回生制動装置40の電動発電機42により駆動され、また車輌の制動時には必要に応じて左右の後輪34RL及び34RRの回転が後輪用回生制動装置40の電動発電機42へ伝達され、後輪についても回生制動が行われるようになっている。この電動発電機42による後輪の回生制動もエンジン制御装置28により制御される。尚図示の実施形態に於いては、電動発電機42は補助的な駆動源であり、従って後輪用回生制動装置40の回生定格は前輪用回生制動装置30の回生定格よりも小さい。
【0117】
図15は第二の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートであり、図16は図15に示されたフローチャートのステップ610に於いて実行される回生制動力の基本移行量演算ルーチンを示すフローチャートである。尚図15に於いて、図2に示されたステップに対応するステップには図2に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0118】
この実施形態に於いては、図15に示された制動制御ルーチンのステップ600の次に実行されるステップ610及びステップ850を除く他のステップは上述の第一の実施形態の場合と同様に実行され、ステップ610に於いては後述の如く図16に示されたフローチャートに従って回生制動力の基本移行量ΔFbbrgが演算され、しかる後ステップ650へ進む。
【0119】
またステップ850に於いては下記の式58に従って回生量調整係数Rと回生制動力の基本移行量ΔFbbrgとの積として後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが演算される。
ΔFbrg=R・ΔFbbrg ……(58)
【0120】
また図16に示されたフローチャートのステップ612に於いては後輪の目標回生制動力Fbrgrtが後輪の回生制動装置40の回生定格により決定される最大回生制動力Fbrgrlim(正の定数)よりも大きいか否かの判別、即ち回生定格の点から後輪より前輪への回生制動力の移行が必要であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ616へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ614へ進む。
【0121】
ステップ614に於いては前輪の目標回生制動力Fbrgftが前輪の回生制動装置30の回生定格により決定される最大回生制動力Fbrgflim(正の定数)未満であるか否かの判別、即ち後輪より前輪への回生制動力の移行が可能であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ616に於いて回生制動力の基本移行量ΔFbbrgが0に設定され、肯定判別が行われたときにはステップ618へ進む。
【0122】
ステップ618に於いては後輪の超過回生制動力ΔFbrgrが下記の式59に従って演算され、また後輪より前輪への移行可能回生制動力ΔFbrgfが下記の式60に従って演算されると共に、超過回生制動力ΔFbrgrが移行可能回生制動力ΔFbrgf未満であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ620へ進み、否定判別が行われたときにはステップ622へ進む。
ΔFbrgr=Fbrgrt−Fbrgrlim ……(59)
ΔFbrgf=Fbrgft−Fbrgflim ……(60)
【0123】
ステップ620に於いては回生制動力の基本移行量ΔFbbrgが超過回生制動力ΔFbrgrに設定され、ステップ622に於いては回生制動力の基本移行量ΔFbbrgが増加可能回生制動力ΔFbrgfに設定され、ステップ616、618又は620が完了するとステップ650へ進む。
【0124】
かくして図示の第二の実施形態によれば、ステップ610に於いて図16に示されたフローチャートに従って前輪用回生制動装置30及び後輪用回生制動装置40の回生定格の範囲内にて回生制動力の基本移行量ΔFbbrgが演算され、ステップ850に於いて回生量調整係数Rと回生制動力の基本移行量ΔFbbrgとの積として後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが演算されるので、前後輪に回生制動装置が設けられた車輌の場合にも回生定格の範囲を越えて後輪より前輪への回生制動力の移行が行われることを確実に防止しつつ、上述の第一の実施形態の場合と同様、前輪タイヤの力発生能力を有効に利用して回生制動装置30による回生量を増大させ車輌全体としての燃費を向上させることができると共に、車輌の走行安定性及び車輌の減速度を確実に維持しつつ回生量を増大させることができる。
【0125】
特に図示の第二の実施形態によれば、ステップ610に於いて図16に示されたフローチャートに従って、回生定格の点から後輪より前輪への回生制動力の移行が必要であり且つ後輪より前輪への回生制動力の移行が可能であり且つ後輪の超過回生制動力ΔFbrgrが後輪より前輪への移行可能回生制動力ΔFbrgf未満であると判定されると、ステップ620に於いて回生制動力の基本移行量ΔFbbrgが後輪の超過回生制動力ΔFbrgrに設定されるので、後輪の基本回生制動力Fbbrgrtが後輪用回生制動装置40の回生定格を越える状況に於いて、前輪用回生制動装置30の回生定格を越えるよう後輪より前輪へ回生制動力の移行が行われたり、後輪より前輪へ回生制動力の移行により後輪の回生制動力が後輪用回生制動装置40の回生定格よりも遥かに小さくなったりすることを確実に防止することができ、これにより前輪用回生制動装置30及び後輪用回生制動装置40の回生能力を最大限に活かすことができる。
【0126】
尚上述の第一及び第二の実施形態によれば、ステップ750に於いて車輌のヨーレートγの絶対値が大きいほど小さくなるよう車輌のヨーレートγの絶対値に基づき旋回度合に基づく調整係数Rstrが演算され、ステップ800に於いてタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrと旋回度合に基づく調整係数Rstrとの積として回生量調整係数Rが演算され、ステップ850に於いて回生量調整係数Rと後輪の基本回生制動力Fbbrgrtとの積として後輪より前輪への回生制動力の移行量ΔFbrgが演算されるので、車輌の旋回度合が高く制動力の前後配分の変更に起因して車輌の旋回性能や走行安定性が影響を受け易いほど後輪より前輪への回生制動力の移行量を小さくすることができ、従って調整係数Rstrによる回生制動力の移行量の調整が行われない場合に比して、確実に良好な車輌の旋回性能や走行安定性を確保することができる。
【0127】
また第一及び第二の実施形態によればステップ850に於いて演算された回生制動力の移行量ΔFbrgに基づいてステップ950及び1000に於いて演算される左右前輪の目標回生制動力Fbrgt及び目標摩擦制動力Fbptiにて左右前輪の回生制動力及び摩擦制動力が制御された場合に左右前輪のタイヤ負荷率のうち大きい方の値がCa(1以下の1に近い正の定数)を越えるときには、左右前輪のタイヤ負荷率のうち大きい方の値がCa以下になるよう、ステップ900に於いて回生制動力の移行量ΔFbrgがガード処理されるので、回生制動力の移行量ΔFbrgにて後輪より前輪への回生制動力を移行することに起因して前輪の発生力が飽和し、特に前輪の横力が飽和することにより車輌の安定性が悪化することを確実に防止することができる。
【0128】
また第一及び第二の実施形態によれば、ステップ650に於いて左右前輪のタイヤ負荷率Ltrfr及びLtrflが演算され、左右前輪のタイヤ負荷率Ltrfr及びLtrflのうち大きい方の値として前輪のタイヤ負荷率Ltrfが演算されるので、例えば前輪のタイヤ負荷率Ltrfが左右前輪のタイヤ負荷率Ltrfr及びLtrflの平均値や左右前輪のタイヤ負荷率Ltrfr及びLtrflのうち小さい方の値として演算される場合に比して、回生制動力の移行量ΔFbrgが過大な値に演算されること及び後輪より前輪へ過大な回生制動力が移行されることに起因して前輪の横力が飽和し車輌の安定性が悪化することを確実に防止することができる。
【0129】
第三の実施形態
図17は前輪駆動用のハイブリッドエンジンが搭載された前輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第三の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートであり、図18は前輪のタイヤ負荷率Ltrfと重みWsとの関係を示すグラフである。尚図17に於いて、図2に示されたステップに対応するステップには図2に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0130】
この実施形態に於いては、ステップ50の次に実行されるステップ60に於いて上述の第一の実施形態に於けるステップ650の場合と同様の要領にて前輪のタイヤ負荷率Ltrfが演算され、ステップ70に於いて前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど前輪の重みWsfが大きくなり後輪の重みWsrが小さくなるよう前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づき図18に示されたグラフに対応するマップより重みWs(前輪の重みWsf及び後輪の重みWsr)が演算される。
【0131】
またこの実施形態に於いては、ステップ100は上述の第一の実施形態の場合と同様に実行されるが、図3のステップ400に於いて上記ステップ70により演算された重みWsを使用する式34にて表される評価関数Lを最小化する各輪のスリップ率の修正量δSiが上記式35に従って演算される。
【0132】
更にこの実施形態に於いては、ステップ950に於いて左右前輪の目標制動力Fxtfl及びFxtfrのうち小さい方の値の2倍として前輪の目標回生制動力Fbrgftが演算され、ステップ1000に於いて上記式45及び46に従って右前輪及び左前輪の目標摩擦制動力Fbptfr、Fbptflが演算される共に、右後輪及び左後輪の目標摩擦制動力Fbptrr、Fbptrlがそれぞれステップ100に於いて演算された右後輪及び左後輪の目標制動力Fxtrr、Fxtrlに設定される。
【0133】
かくして図示の第三の実施形態によれば、ステップ70に於いて前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど前輪の重みWsfが大きく後輪の重みWsrが小さくなるよう前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づき前輪の重みWsf及び後輪の重みWsrが演算され、ステップ400に於いてこれらの重みWsf及びWsrを使用する式34にて表される評価関数Lを最小化する各輪のスリップ率の修正量δSiが演算されるので、前輪タイヤの力発生能力の余裕が高いほど車輌の安定な走行状態を維持しつつ制動力の前後配分が前輪寄りに制御され、従って上述の第一の実施形態の場合と同様、前輪タイヤの力発生能力を有効に利用して回生制動装置30による回生量を増大させ車輌全体としての燃費を向上させることができると共に、車輌の走行安定性及び車輌の減速度を確実に維持しつつ回生量を増大させることができる。
【0134】
また図示の第三の実施形態によれば、車輌の旋回度合に基づく調整係数Rstrの演算やこれに基づく後輪より前輪への回生制動力の移行量の調整は不要であるので、車輌の旋回性能に影響を与えることなく、また上述の第一及び第二の実施形態の場合に比して容易に、前輪のタイヤ負荷率に基づく制動力の前後配分の制御及び後輪より前輪への回生制動力の移行量の制御を行うことができる。
【0135】
第四の実施形態
図19は前輪駆動用のハイブリッドエンジン及び後輪駆動用の電動発電機が搭載された四輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第四の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートであり、図20は前輪のタイヤ負荷率Ltrfが大きい場合(A)及び前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さい場合(B)について前輪及び後輪の回生定格と目標回生制動力(ハッチング部分)を示す説明図である。尚図19に於いて、図17に示されたステップに対応するステップには図17に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0136】
この実施形態に於いては、ステップ50〜70及びステップ100は上述の第三の実施形態の場合と同様に実行されるが、ステップ70に於いて演算される重みWs(前輪の重みWsf及び後輪の重みWsr)は、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいときには重みの比Wsf/Wsrが後輪用回生制動装置40の回生定格に対する前輪用回生制動装置30の回生定格の比又はこれに近い値であり、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが大きいときには重みの比Wsf/Wsrが車輌の走行状態が効果的に安定な状態に維持し得る値になるよう、前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づき図18に示されている如きマップより演算される。
【0137】
またこの実施形態に於いては、ステップ950に於いて左右前輪の目標制動力Fxtfl及びFxtfrのうち小さい方の値の2倍として前輪の目標回生制動力Fbrgftが演算されると共に、左右後輪の目標制動力Fxtrl及びFxtrrのうち小さい方の値の2倍として後輪の目標回生制動力Fbrgrtが演算される。
【0138】
ステップ955に於いては前輪の目標回生制動力Fbrgftが前輪の回生制動装置30の回生定格により決定される最大回生制動力Fbrgflim(正の定数)よりも大きいか否かの判別、即ち前輪について回生制動に加えて摩擦制動が行われる必要があるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ960へ進み、否定判別が行われたときにはステップ965へ進む。
【0139】
ステップ960に於いては前輪の目標回生制動力Fbrgftが最大回生制動力Fbrgflimに修正されると共に、右前輪及び左前輪の目標摩擦制動力Fbptfr、Fbptflがそれぞれ下記の式61及び62に従って演算され、ステップ965に於いては前輪の目標回生制動力Fbrgftがステップ950に於いて演算された値に維持されると共に、右前輪及び左前輪の目標摩擦制動力Fbptfr、Fbptflが0に設定される。
Fbptfr=Fxtfr−Fbrgflim/2 ……(61)
Fbptfl=Fxtfl−Fbrgflim/2 ……(62)
【0140】
ステップ970に於いては後輪の目標回生制動力Fbrgrtが後輪の回生制動装置40の回生定格により決定される最大回生制動力Fbrgrlim(正の定数)よりも大きいか否かの判別、即ち後輪について回生制動に加えて摩擦制動が行われる必要があるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ975へ進み、否定判別が行われたときにはステップ980へ進む。
【0141】
ステップ975に於いては後輪の目標回生制動力Fbrgrtが最大回生制動力Fbrgrlimに修正されると共に、右後輪及び左後輪輪の目標摩擦制動力Fbptrr、Fbptrlがそれぞれ下記の式63及び64に従って演算され、ステップ980に於いては後輪の目標回生制動力Fbrgrtがステップ950に於いて演算された値に維持されると共に、右後輪及び左後輪の目標摩擦制動力Fbptrr、Fbptrlが0に設定される。
Fbptfr=Fxtfr−Fbrgflim/2 ……(63)
Fbptfl=Fxtfl−Fbrgflim/2 ……(64)
【0142】
かくして図示の第四の実施形態によれば、ステップ70に於いて演算される前輪の重みWsf及び後輪の重みWsrは、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいときには重みの比Wsf/Wsrが後輪用回生制動装置40の回生定格に対する前輪用回生制動装置30の回生定格の比又はこれに近い値であり、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが大きいときには重みの比Wsf/Wsrが車輌の走行状態が効果的に安定な状態に維持し得る値になるよう、前輪のタイヤ負荷率Ltrfに応じて演算される。
【0143】
重みWsf及びWsrが車輌の走行状態が効果的に安定な状態に維持し得る一定の値に設定される場合には、例えば図20(A)に示されている如く、前輪の回生制動装置30の回生制動力に余裕があるが、後輪の目標制動力が後輪の回生制動装置の回生制動力を越えるような状況が生じ易く、かかる状況に於いては回生制動量が制限される。
【0144】
これに対し図示の第四の実施形態によれば、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいときには重みの比Wsf/Wsrが後輪用回生制動装置40の回生定格に対する前輪用回生制動装置30の回生定格の比又はこれに近い値であるので、図20(B)に示されている如く、前輪の回生制動装置30の回生制動力を増大させると共に後輪の目標制動力が後輪の回生制動装置の回生制動力を越えることを抑制することができ、これにより車輌全体としての回生制動量を増大させることができる。
【0145】
また図示の第四の実施形態によれば、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが大きくなるにつれて重みの比Wsf/Wsrが車輌の走行状態が効果的に安定な状態に維持し得る値に漸次変化するので、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが大きい領域に於いても重みの比Wsf/Wsrが後輪用回生制動装置40の回生定格に対する前輪用回生制動装置30の回生定格の比又はこれに近い値である場合に比して、確実に車輌の走行状態を安定な状態に制御することができる。
【0146】
更に図示の第四の実施形態によれば、前輪及び後輪の何れについても、目標回生制動力Fbrgtrl、Fbrgtrrがそれぞれ最大回生制動力Fbrgflim、Fbrgrlimを越える場合には、その超過分の制動力が摩擦制動力により補充され、これにより各車輪の制動力がステップ100に於いて演算された目標制動力になるよう制御されるので、前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づく重みの比Wsf、Wsrの可変制御及びこれに伴う回生制動力の制御に起因して車輌全体の制動力が変化すること及び車輌の走行状態の悪化を確実に防止することができる。
【0147】
第五の実施形態
図21はホイールインモータ式の四輪駆動車に適用された本発明による回生式制動制御装置の第五の実施形態を示す概略構成図である。尚図21に於いて、図1及び図14に示された部材に対応する部材にはこれらの図に於いて付された符号と同一の符号が付されている。
【0148】
この第五の実施形態に於いては、図21に示されている如く、左右の前輪26FL及び26FRはそれらの車輪に組み込まれたホイールインモータである電動発電機70FL及び70FRにより駆動され、電動発電機70FL及び70FRは駆動制御装置72により制御される。電動発電機70FL及び70FRはそれぞれ左右前輪の発電機としても機能し、回生発電機としての機能(回生制動)も駆動制御装置72により制御される。
【0149】
同様に、左右の後輪34RL及び34RRはそれらの車輪に組み込まれたホイールインモータである電動発電機70RL及び70RRにより駆動され、電動発電機70RL及び70RRも駆動制御装置72により制御される。また電動発電機70RL及び70RRもそれぞれ左右後輪の発電機として機能し、回生発電機としての機能(回生制動)も駆動制御装置72により制御される。
【0150】
尚図示の実施形態に於いては、電動発電機70FL及び70FRは互いに同一の回生定格を有し、電動発電機70RL及び70RRも互いに同一の回生定格を有し、電動発電機70FL及び70FRの回生定格は電動発電機70RL及び70RRの回生定格よりも大きい。
【0151】
図22は第五の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートである。尚図22に於いて、図17及び図19に示されたステップに対応するステップにはこれらの図に於いて付されたステップ番号と同一のステップ番号が付されている。
【0152】
この第五の実施形態に於いては、ステップ50〜70及びステップ100は上述の第四の実施形態の場合と同様に実行されるが、ステップ950に於いては各車輪の目標回生制動力Fbrgti(i=fr、fl、rr、rl)がそれぞれステップ100に於いて演算された目標制動力Fxtiに設定される。
【0153】
ステップ1005〜1015は例えば右前輪、左前輪、右後輪、左後輪の順に各車輪について実行され、ステップ1005に於いては目標回生制動力Fbrgtiが対応する電動発電機の回生定格により決定される最大回生制動力Fbrglimi(正の定数)(i=fr、fl、rr、rl)を越えているか否かの判別、即ち当該車輪について回生制動に加えて摩擦制動が行われる必要があるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ1010へ進み、否定判別が行われたときにはステップ1015へ進む。
【0154】
ステップ1010に於いては目標回生制動力Fbrgtiが最大回生制動力Fbrglimiに設定されると共に目標摩擦制動力Fbpiが目標制動力Fxtiより目標回生制動力Fbrgtiを減算した値に設定され、ステップ1015に於いては目標回生制動力Fbrgtiが目標制動力Fxtiに設定されると共に目標摩擦制動力Fbpiが0に設定される。
【0155】
かくして図示の第五の実施形態によれば、上述の第四の実施形態の場合と同様、ステップ70に於いて前輪の重みWsf及び後輪の重みWsrが前輪のタイヤ負荷率Ltrfに応じて可変設定され、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいほど、換言すれば車輪タイヤの力発生能力の余裕が大きいほど制動力の前後は配分が前輪寄りに制御され、重みの比Wsf/Wsrが後輪の電動発電機70RL及び70RRの回生定格に対する前輪の電動発電機70FL及び70FRの回生定格の比に近づけられるので、車輌がホイールインモータ式の四輪駆動車である場合に、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいときには車輌の走行状態を確実に安定な状態に維持しつつ車輌全体の回生量を増大させることができる。
【0156】
また図示の第五の実施形態によれば、上述の第四の実施形態の場合と同様、何れの車輪についても、目標回生制動力Fbrgtiが最大回生制動力Fbrglimiを越える場合には、その超過分の制動力が摩擦制動力により補充され、これにより各車輪の制動力がステップ100に於いて演算された目標制動力になるよう制御されるので、前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づく重みの比Wsf、Wsrの可変制御及びこれに伴う回生制動力の制御に起因して車輌全体の制動力が変化すること及び車輌の走行状態の悪化を確実に防止することができる。
【0157】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0158】
例えば上述の各実施形態に於いては、タイヤ負荷率は車輪タイヤの前後力Fxi、横力Fyi、路面の摩擦係数μ、車輪の接地荷重Wiに基づき上記式42に従ってタイヤが発生可能な力に対するタイヤが発生している力の比として演算され、タイヤ負荷率の指標値はタイヤ負荷率そのものであるが、例えばIを車輌のヨー慣性モーメントとし、Kf及びKrをそれぞれ前輪及び後輪のコーナリングパワーとし、Khをスタビリティファクタとし、Tcを時定数とし、sをラプラス演算子として下記の式65に従って演算される車輌モデルに基づく目標ヨーレートγrefと車輌の実際のヨーレートγとの偏差の大きさや、操舵角φ及び車速Vより演算される車輌モデルに基づく車輌の目標横加速度Gyrefと車輌の実際の横加速度Gyとの偏差の大きさの如く、タイヤ負荷率の指標値は車輌モデルに基づく車輌の目標状態量と車輌の実際の状態量との偏差の大きさであってもよい。
【数24】
【0159】
尚この場合車輌モデルに基づく車輌の目標状態量と車輌の実際の状態量との偏差の大きさは車輌全体のタイヤ負荷率の指標値であるので、上述の各実施形態に於ける前輪のタイヤ負荷率Ltrfは上記偏差の大きさそのもの又はそれに比例する値に設定される。
【0160】
また上述の各実施形態に於いては、各車輪の目標制動力fxtiは車輌の運転状況に基づき車輌の目標前後力、目標横力、目標ヨーモーメントが演算され、車輌の走行安定性を維持しつつ車輌の目標前後力、目標横力、目標ヨーモーメントを達成するための制動力として演算されるようになっているが、各車輪の目標制動力fxtiは車輌の運転状況に基づき演算される限り、当技術分野に於いて公知の任意の態様にて演算されてよい。
【0161】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、車輌の旋回度合として車輌のヨーレートγの絶対値が使用されるようになっているが、車輌の旋回度合は車輌の旋回の強さ乃至は程度を示すものであればよく、例えば上記目標ヨーレートγrefの絶対値、車輌の目標横加速度Gyrefの絶対値、車輌の実際の横加速度Gyの絶対値等であってもよい。
【0162】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、タイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrが前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づき図12に示されたグラフに対応するマップより演算されるようになっているが、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいときにはそれが大きいときに比してタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrが大きい値である限り、前輪のタイヤ負荷率Ltrfとタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrとの関係は図12に示された関係以外の関係であってもよい。
【0163】
同様に、上述の第三乃至第五の実施形態に於いては、前輪の重みWsf及び後輪の重みWsrが前輪のタイヤ負荷率Ltrfに基づき図18に示されたグラフに対応するマップより演算されるようになっているが、前輪のタイヤ負荷率Ltrfが小さいときにはそれが大きいときに比して前輪の重みWsfが大きい値であり若しくは後輪の重みWsrが小さい値である限り、前輪のタイヤ負荷率Ltrfと前輪の重みWsf及び後輪の重みWsrとの関係は図18に示された関係以外の関係であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】前輪駆動用のハイブリッドエンジンが搭載された前輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第一の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】第一の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートである。
【図3】図2に示されたフローチャートのステップ100に於ける各車輪の目標制動力演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】図3に示されたフローチャートのステップ150に於ける後輪スリップ角βr演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図3に示されたフローチャートのステップ200に於ける実際の前後力Fx、横力Fy、モーメントM演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図3に示されたフローチャートのステップ250に於ける目標前後力Fxa、横力Fya、モーメントMa演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図3に示されたフローチャートのステップ500に於ける目標スリップ率Si演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】ドリフトアウト状態量DVと係数Kgとの間の関係を示すグラフである。
【図9】タイヤの発生力Ftiがタイヤの横方向に対しなす角度θi等を示す説明図である。
【図10】スリップ率が0であるときのタイヤのスリップ角βiに対する横力Ftyiの関係を示すグラフである。
【図11】スリップ角βiが0であるときのタイヤのスリップ率Siに対する前後力Ftxiの関係を示すグラフである。
【図12】前輪のタイヤ負荷率Ltrfとタイヤ負荷率に基づく調整係数Rtrとの間の関係を示すグラフである。
【図13】車輌のヨーレートγの絶対値と旋回度合に基づく調整係数Rstrとの間の関係を示すグラフである。
【図14】前輪駆動用のハイブリッドエンジン及び後輪駆動用の電動発電機が搭載された四輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第二の実施形態を示す概略構成図である。
【図15】第二の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートである。
【図16】図15に示されたフローチャートのステップ610に於いて実行される回生制動力の基本移行量演算ルーチンを示すフローチャートである。
【図17】前輪駆動用のハイブリッドエンジンが搭載された前輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第三の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートである。
【図18】前輪のタイヤ負荷率Ltrfと重みWsf、Wsrとの間の関係を示すグラフである。
【図19】前輪駆動用のハイブリッドエンジン及び後輪駆動用の電動発電機が搭載された四輪駆動式の車輌に適用された本発明による回生式制動制御装置の第四の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートである。
【図20】重みWsの補正前(A)及び重みWsの補正前(B)について前輪及び後輪の回生定格と目標回生制動力(ハッチング部分)を示す説明図である。
【図21】ホイールインモータ式の四輪駆動車に適用された本発明による回生式制動制御装置の第五の実施形態を示す概略構成図である。
【図22】第五の実施形態に於ける制動制御ルーチンを示すゼネラルフローチャートである。
【符号の説明】
10…ハイブリッドエンジン
12…ガソリンエンジン
14…電動発電機
28…エンジン制御装置
30…前輪の回生制動装置
32…ブレーキペダル
40…後輪用回生制動装置
42…電動発電機
44…摩擦制動装置
50…マスタシリンダ
52…制動制御装置
54…アクセルペダルセンサ
56…シフトポジションセンサ
58FR〜58RL…圧力センサ
60……操舵角センサ
62…ヨーレートセンサ
64…前後加速度センサ
66…横加速度センサ
68…車速センサ
70FL〜70RL…電動発電機
72…駆動制御装置
Claims (9)
- 各車輪に個別に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置と、複数の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置とを有する車輌用回生式制動制御装置に於いて、回生制動力が付与される車輪のタイヤ負荷率の指標値を演算し、タイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性を維持しつつ当該車輪の回生制動力を増加させることを特徴とする車輌用回生式制動制御装置。
- 目標摩擦制動力及び目標回生制動力の総和が変化しないよう且つ車輌のヨーレートが変化しないようタイヤ負荷率の指標値が小さい車輪の回生制動力を増加させることにより、車輌全体の制動力及び車輌の走行安定性を維持することを特徴とする請求項1に記載の車輌用回生式制動制御装置。
- 各車輪のタイヤ前後力及び横力、各車輪の接地荷重、路面の摩擦係数を推定し、これらに基づき各車輪のタイヤ負荷率の指標値を演算することを特徴とする請求項1及び2に記載の車輌用回生式制動制御装置。
- 車輌の運転状況に基づき車輌モデルの車輌状態量を推定し、車輌モデルの車輌状態量と実際の車輌状態量との偏差に基づき車輌全体の車輪のタイヤ負荷率の指標値を演算することを特徴とする請求項1及び2に記載の車輌用回生式制動制御装置。
- 車輌の運転状況に基づき各車輪の目標制動力を演算し、前記目標制動力に基づき目標摩擦制動力及び目標回生制動力を演算し、各車輪のタイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して車輌全体の目標摩擦制動力及び目標回生制動力の総和を変更することなく当該車輪の前記目標回生制動力を増加補正することを特徴とする請求項1乃至4に記載の車輌用回生式制動制御装置。
- 車輌の旋回度合が高いほど目標回生制動力の増加補正量の低減量を大きくし目標回生制動力の増加補正量を小さくすることを特徴とする請求項5に記載の車輌用回生式制動制御装置。
- 車輌の旋回度合を判定し、車輌の旋回度合が高いときにはそれが低いときに比して前記目標回生制動力の増加補正量を低減することを特徴とする請求項4又は5に記載の車輌用回生式制動制御装置。
- 各車輪に個別に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置と、複数の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置とを有する車輌用回生式制動制御装置に於いて、前輪のタイヤ負荷率の指標値を演算し、前輪のタイヤ負荷率の指標値に応じて制動力の前後配分比を変更することにより回生制動力を増大させることを特徴とする車輌用回生式制動制御装置。
- 前輪の回生可能量は後輪の回生可能量よりも大きく、前輪のタイヤ負荷率の指標値が小さいときにはそれが大きいときに比して前輪の制動力配分が大きくなるよう前輪のタイヤ負荷率の指標値に応じて回生制動力を変更することを特徴とする請求項8に記載の車輌用回生式制動制御装置。
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