JP2004226476A - ペリクルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】汚染物質の付着がなく、波長100〜200nmのレーザー光に対して透過率及び耐久性が高いペリクルの製造方法を提供すること。
【解決手段】下記含フッ素ポリマー(A)からなるペリクル膜、フレーム及び該ペリクル膜と該フレームを接着する接着剤からなるペリクルの製造方法において、該ペリクル膜を基板上に形成する工程、基板から該ペリクル膜を剥離する工程、及び該剥離工程の前に、該ペリクル膜が形成された基板を(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg,m)−40)℃〜(Tg,m−10)℃の超純水中に浸漬する工程を有することを特徴とするペリクルの製造方法。含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1又は2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子又は含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。
【選択図】図1
【解決手段】下記含フッ素ポリマー(A)からなるペリクル膜、フレーム及び該ペリクル膜と該フレームを接着する接着剤からなるペリクルの製造方法において、該ペリクル膜を基板上に形成する工程、基板から該ペリクル膜を剥離する工程、及び該剥離工程の前に、該ペリクル膜が形成された基板を(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg,m)−40)℃〜(Tg,m−10)℃の超純水中に浸漬する工程を有することを特徴とするペリクルの製造方法。含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1又は2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子又は含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長100〜200nmのレーザー光を用いるフォトリソグラフィに適したペリクルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ペリクルとは、半導体装置または液晶表示板を製造する際の一工程であるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクやレチクル(以下これらを「マスク」という。)上に異物が乗り、露光時にパターン欠陥となることを防ぐためにマスクのパターン上に装着される保護具であって、ペリクル膜とフレームからなる。通常は接着剤を介してフレームに取り付けられたペリクルが、マスク面から一定距離をおいて設置される構造を有している。
【0003】
これらが使用される半導体装置や液晶表示板の製造分野では、配線や配線間隔の微細化進展にともない、フォトリソグラフィにおいても、用いられる光源の波長が急速に短波長化している。最小パターン寸法0.3μm以上の従来の露光技術では、i線(365nm)を光源として用いたプロセスが主流であり、ペリクルの材料としてはニトロセルロース系材料が使用されてきた。
【0004】
最小パターン寸法0.3μm未満の配線加工のために、KrFエキシマレーザーを光源とする波長248nmのレーザー光、フッ化アルゴンエキシマレーザー(以下「ArFエキシマレーザー」という。)を光源とする波長193nmのレーザー光が使用されている。これらの波長領域では、ニトロセルロース系の膜材料では耐久性が不充分であり、非結晶性のパーフルオロポリマーがペリクル膜の材料として採用されている。
【0005】
一方、さらなる微細加工のためにフッ素ガスエキシマレーザー(以下、「F2エキシマレーザー」という。)を光源とする波長157nmのレーザー光の使用が提案されている。波長100〜200nmのArFエキシマレーザー光やF2エキシマレーザー光が使用されるペリクル膜の材料としては、特定構造のフルオロポリマーが提案されている。
【0006】
しかし、これらのレーザーからのレーザー光は非常に高いエネルギーを有するため、前記非結晶性のパーフルオロポリマーでも充分な耐久性がない。例えば、そこに使用されているパーフルオロポリマーである「CYTOP」(商品名)は170nmより短い波長では光透過性や耐久性が急激に低下する。このパーフルオロポリマーは波長157nmを発振するF2エキシマレーザー光に対する透過性は著しく低い。そのため、F2エキシマレーザー光に対応できるペリクル材料として、例えば含フッ素ポリマー(A)やパーフルオロ−1,3−ジオキソールを主成分としたポリマーが膜または該ペリクルの膜とフレームとの接着剤として有用とされている。
ここで、含フッ素ポリマー(A)とは、炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマーである。
【0007】
KrFエキシマレーザー露光用ペリクル膜やArFエキシマレーザー露光用ペリクルに用いられる非結晶性のパーフルオロポリマーに関しては、その光透過率や耐光性に影響する汚染物質の付着をおさえ基板から清浄なペリクル膜を得る方法が種々知られている。例えば基板からペリクル膜を剥離する方法として、剥離部に電荷を付与して剥離する方法(特許文献1参照)、イオンを照射しながら剥離する方法(特許文献2参照)、軟X線を照射しながら剥離する方法(特許文献3参照)などが知られている。
【0008】
しかしながら、F2エキシマレーザー露光用ペリクルとして有用な含フッ素ポリマー(A)はポリマー中に水素を含み、前記非結晶性パーフルオロポリマーと比較してポリマー内に極性を有するため、種々の基板に対して相互作用が強くなり、このような従来の方法を用いた場合でも基板から剥離することが難しく、剥離した膜に著しい伸びや、破れが発生するという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−26821号公報
【特許文献2】
特開平10−26822号公報
【特許文献3】
特開平10−26823号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、汚染物質の付着がなく、波長100〜200nmのレーザー光(以下、短波長レーザー光ともいう。)の照射に対して透過率および耐久性が高いペリクルの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、本課題解決のために鋭意検討し、基板からの剥離には熱超純水が有効であることを見出した。すなわち、含フッ素ポリマー(A)を基板から剥離する新規な剥離方法を見出した。本発明は波長が100〜200nmである短波長レーザー光に対して高い透過性と耐久性を兼ね備える含フッ素ポリマー(A)を用いたペリクルの製造方法に関する下記発明である。
【0012】
下記含フッ素ポリマー(A)からなるペリクル膜、フレームおよび該ペリクル膜と該フレームを接着する接着剤からなるペリクルの製造方法において、該ペリクル膜を基板上に形成する工程、基板から該ペリクル膜を剥離する工程、および該剥離工程の前に、該ペリクル膜が形成された基板を(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度−40)℃から(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度−10)℃の超純水中に浸漬する工程を有することを特徴とするペリクルの製造方法。
含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。
【0013】
本発明のペリクル製造方法は、特に波長100〜200nmのレーザー光による露光処理用ペリクルの製造方法として適している。具体的には、157nmのF2エキシマレーザー光による露光処理におけるペリクルの製造方法として最も適している。
【0014】
【発明の実施の形態】
【0015】
本発明におけるペリクル膜は、下記の含フッ素ポリマー(A)からなる。含フッ素ポリマー(A)は、炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーである。このポリマーの主鎖の炭素原子連鎖は原則としてモノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子が連結した連鎖からなる。したがって、含フッ素ポリマー(A)において「主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子またはフッ素含有置換基が結合した炭素原子とを含む」とは、重合性不飽和基を1個有するモノマーの重合により得られるホモポリマーの場合、モノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の一方の炭素原子には水素原子が結合し他方の炭素原子には水素原子が結合していないモノマー(以下「モノマー(a)」という。)のポリマーであることを意味する。
コポリマーの場合には、重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくともいずれかに水素原子が結合しているモノマー(以下「モノマー(b)」という。)と重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子のいずれにも水素原子が結合していないモノマー(以下「モノマー(c)」という。)とのコポリマーであってもよい。なお、モノマー(b)は、その範疇にモノマー(a)を含む。
さらに含フッ素ポリマー(A)は、モノマー(a)の2種以上のコポリマーであってもよく、モノマー(a)と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。同様に、モノマー(b)とモノマー(c)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0016】
含フッ素ポリマー(A)は2個の重合性不飽和結合を有するモノマー(以下、「ジエンモノマー」という。)の環化重合により得られるポリマーであってもよい。通常このポリマーの場合には2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子がポリマーの主鎖を形成する。したがって、この含フッ素ポリマー(A)は、2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子の内1個以上の炭素原子が水素原子を有しかつ1個以上の炭素原子が水素原子を有しないモノマー(以下「ジエンモノマー(d)」という。)の環化重合により得られるポリマーである。
コポリマーの場合には4個の炭素原子のいずれも水素原子を有しないジエンモノマー(以下「ジエンモノマー(e)」という。)と重合性不飽和結合の炭素原子に水素原子を有するモノマー(このモノマーは重合性不飽和結合を2個有する環化重合しうるジエンモノマーであっても重合性不飽和結合を1個有するモノマーであってもよい)(以下「モノマー(f)」という。)とのコポリマーであってもよい。さらに、含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)と他のモノマーとのコポリマーであってもよく、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0017】
含フッ素ポリマー(A)がフッ素を有するポリマーであることから、上記モノマー(a)、モノマー(c)、ジエンモノマー(d)およびジエンモノマー(e)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必要である。モノマー(b)、モノマー(f)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必須ではないがそれらが結合していてもよい。
含フッ素有機基としては1価の基と2価の基が好ましい。2価の含フッ素有機基の2個の結合手は、重合性不飽和結合の2個の炭素原子それぞれに結合する(2個の炭素原子を含む環を形成する)場合と2個の炭素原子の一方のみに結合する(その1個の炭素原子を含む環を形成し他方の炭素原子が環外の炭素原子となる)場合とがある。
モノマー(a)〜モノマー(f)は前記定義を満たす範囲でその重合性不飽和基の炭素原子に水素原子、フッ素原子、アルキル基などの有機基、その他の置換基を有していてもよい。しかし、アルキル基などの有機基を側鎖に多数有するポリマーはその炭素原子に結合した水素原子が耐久性低下の要因となりやすくそのような置換基は少ない方が好ましい。
1価の含フッ素有機基としては含フッ素アルキル基と含フッ素アルコキシ基が好ましい。これらの基の炭素数は10以下、特に4以下が好ましい。これらの基は水素原子を含まないことが好ましく、フッ素原子のみを含む基が好ましい。
2価の含フッ素有機基としてはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数10以下(特に6以下)のポリフルオロアルキレン基が好ましい。このポリフルオロアルキレン基としてはパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子は、ポリフルオロアルキレン基の一方の末端に存在してもよく、両末端に存在してもよく、炭素原子間に存在してもよい。2価の含フッ素有機基としては直鎖状のものに限られず、分岐を有していてもよい。
1価の有機基としては、前記1価の含フッ素有機基とフッ素を有しない1価の有機基がある。フッ素を有しない1価の有機基としては炭素数10以下、特に4以下のアルキル基とアルコキシ基が好ましい。フッ素を有しない1価の有機基としては特にメチル基が好ましい。
【0018】
結晶性を有するポリマーは光散乱による透過率の低下やレチクル像のゆがみを引き起こすため、含フッ素ポリマー(A)の結晶化度は30%以下が好ましく、特に20%以下の非結晶性であることが好ましい。ポリマー分子中にバルキーな構造を導入することによりポリマーの結晶化度を下げることができる。したがって、バルキーな構造である脂肪族環をポリマーの主鎖に存在させてポリマーの結晶化を抑制し、非結晶性の透明性の高いポリマーとすることが好ましい。よって、含フッ素ポリマー(A)としては特に主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素ポリマーであることが好ましい。
「主鎖に脂肪族環構造を有する」とは主鎖の炭素原子の1個以上が脂肪族環を構成する炭素原子であることを意味する。この脂肪族環は、その脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上にフッ素原子または含フッ素有機基が結合している含フッ素脂肪族環であることが好ましい。また、この脂肪族環を構成する原子の一部は炭素原子以外の酸素原子や窒素原子などの原子であってもよい。好ましい脂肪族環は1〜2個の酸素原子を有する5〜8員環の含フッ素脂肪族環である。
【0019】
脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを用いることによって主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーが得られる。ジエンモノマー(d)やジエンモノマー(e)は環化重合により主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーを形成する。「脂肪族環に重合性不飽和基を有する」とは、脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性不飽和基を有するか、または、環を構成する炭素原子と環外の炭素原子との間に重合性不飽和基を有することを意味する。この脂肪族環としては含フッ素脂肪族環であることが好ましく、前記のように環を構成する原子として酸素原子を有していてもよい。
以下、含フッ素脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーという。含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの環を構成する原子としては炭素原子以外に1〜2個の酸素原子を有していてもよい。モノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであることが好ましい。モノマー(a)、モノマー(b)およびモノマー(f)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであってもよい。
【0020】
モノマー(a)としてはフッ化ビニリデンや1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレンが好ましい。しかしこれらのモノマーのホモポリマーは結晶性となることが多く透明性が低い傾向にある。
【0021】
モノマー(b)としては、CHR1=CR2R3[R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。前記のようにモノマー(b)はモノマー(a)を包含している。R1、R2としては水素原子またはフッ素原子が好ましく、R3は水素原子、フッ素原子または炭素数4以下のアルキル基(特にメチル基)が好ましい。具体的には、エチレン、プロピレンなどのオレフィン、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどの重合性不飽和基の炭素原子に水素原子が結合したフルオロオレフィンがある。モノマー(b)としては、炭素数2〜3のオレフィンと炭素数2〜3のフルオロオレフィンが好ましい。特に好ましいモノマー(b)は、エチレンおよびプロピレンから選ばれたオレフィンおよびフッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンから選ばれたフルオロオレフィンである。
【0022】
モノマー(c)としては、CFR4=CR5R6[R4、R5、R6はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表すか、R4とR5は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表すか、または、R5とR6は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。この内、R4とR5が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、および、R5とR6が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、そのモノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの1種であり、以下このモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)という。
【0023】
モノマー(c)としては、具体的には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの水素原子を有しないポリフルオロオレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、並びに、下記式1、式2および式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)などがある。特に好ましいモノマー(c)はパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)[すなわち、R11およびR12がいずれもトリフルオロメチル基である式1で表される化合物]である。
【0024】
【化1】
【0025】
上記式1〜式3においてR11〜R16はそれぞれ独立にフッ素原子または含フッ素有機基を表し、含フッ素有機基としてはパーフルオロアルキル基、特に炭素数1または2のパーフルオロアルキル基が好ましい。
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーからなる含フッ素ポリマー(A)としては、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどの主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよいが、これらは透明性が充分とはいえない。しかし、膜とフレームを接着するための接着剤としては有用である。好ましい含フッ素ポリマー(A)はモノマー(b)と上記式1〜式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)とのコポリマーである。この場合のモノマー(b)としては、エチレンなどのオレフィンおよび不飽和基の炭素原子に水素原子を有するフルオロオレフィンから選ばれた少なくとの1種のモノマーが好ましい。
【0026】
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーにおけるモノマー(b)の重合により形成されたモノマー単位(以下モノマー単位(b)という。他のモノマー単位についても同様とする)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合は10〜70モル%が好ましい。モノマー(b)がエチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマーの場合は10〜50モル%が好ましい。特に好ましいモノマー単位(b)の割合は20〜40モル%である。接着剤用の含フッ素ポリマー(A)においてはさらにモノマー単位(b)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合が40〜85モル%であるポリマーも好ましい。
なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(b)とモノマー単位(c)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に80〜100モル%が好ましい。最も好ましいポリマーはモノマー(b)とモノマー(c)のみからなるコポリマー(ただし各モノマーは2種以上であってもよい)である。
【0027】
ジエンモノマー(d)としては、CH2=CR7−Q−CR8=CF2[ただし、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは2価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。R7としては水素原子とフッ素原子が好ましく特に水素原子が好ましい。R8としてはフッ素原子または炭素数2以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0028】
Qとしては、炭素数10以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子はパーフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、両末端に存在していてもよく、炭素原子間に存在していてもよい。エーテル性酸素原子を有しないパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数2〜6、一方の末端にエーテル性酸素原子を有するまたは炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜4、両末端にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜3であることがより好ましい。分岐部の炭素原子を除いた炭素原子と酸素原子の合計数は2〜4であることが最も好ましい。
Qとしては、2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル性酸素原子を有しない炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基が好ましい。さらに好ましいQは2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基である。
すなわち、最も好ましいジエンモノマー(d)は、CH2=CH−Rf−O−CF=CF2[ただし、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキレン基を表す]で表されるモノマーである。このモノマーは環化重合性が高く、短波長光の透過性が高く機械的強度の高いポリマーが得られる(特開昭63−238111号公報、特開昭63−238113号公報等参照)。Rfとしては分岐を除いて炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基が好ましい。分岐が存在する場合は、分岐はトリフルオロメチル基が好ましく、分岐の数は1〜2が好ましい。
【0029】
なお、CH2=CR7−Q−CR8=CF2の環化重合により通常下記式4、式5、式6などで表されるモノマー単位(以下モノマー単位(d)という。)が形成される。CH2=CR7−Q−CR8=CF2で表されるジエンモノマー(d)としては、例えば以下の化合物がある。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)のホモポリマー(ただし、ジエンモノマー(d)の2種以上のコポリマーであってもよい)であってもよく、他のモノマーとのコポリマーであってもよい。他のモノマーとしては、モノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)、ジエンモノマー(e)などがある。コポリマーとしてはジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーおよびジエンモノマー(d)とジエンモノマー(e)のコポリマーが好ましく、ジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーがより好ましい。この場合のモノマー(c)としては、前記の含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)が好ましい。
この含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するモノマー単位(d)の割合は30〜100モル%が適当であり、50〜100モル%が好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ジエンモノマー(e)としては、ジエンモノマー(d)の重合性不飽和基の炭素原子に結合した水素原子がすべてフッ素原子またはパーフルオロアルキル基に置換されたモノマーが好ましい。より好ましくは、CF2=CR9−Q−CR10=CF2[R9、R10はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは前記に同じ]で表されるモノマーが好ましい。ただし、前記したQにおけるエーテル性酸素原子の位置や数の制約はない。具体的には下記のようなモノマーがある。
【0033】
【化4】
【0034】
モノマー(f)としては前記モノマー(a)やモノマー(b)を使用しうる。特にモノマー(b)が好ましい。ジエンモノマー(e)とモノマー(f)の共重合においてはジエンモノマー(e)は環化重合により含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を形成し、このモノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーが生成する。モノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーはさらに他のモノマー単位を有していてもよく、例えば前記モノマー単位(c)を有していてもよい。
【0035】
ジエンモノマー(e)とモノマー(f)のコポリマーにおいて、モノマー単位(e)とモノマー単位(f)との合計に対するモノマー単位(f)の割合は10〜70モル%が好ましい。エチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマー(f)の場合は10〜60モル%が好ましい。特に好ましいモノマー(f)の割合は20〜50モル%である。なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(e)とモノマー単位(f)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に70〜100モル%が好ましい。
含フッ素ポリマー(A)は前記のように含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を含むポリマーであることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するこの含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位の割合は、20モル%以上、特に40モル%以上であることが好ましい。
特に好ましい含フッ素ポリマー(A)は、エチレンとパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のホモポリマー、および、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とジエンモノマー(d)とのコポリマーである。
【0036】
本発明におけるペリクル膜とフレームは、含フッ素ポリマー(A)を含む接着剤により接着されていることが好ましい。
ペリクル膜とフレームを接着する接着剤用の含フッ素ポリマー(A)としては、例えば、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のポリマー、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とのコポリマーなどが好ましい。また、接着剤用の含フッ素ポリマー(A)は必ずしも高い透明性は要求されないことより、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよい。したがって、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー以外のモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー(すなわち主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A))も好ましい接着剤として使用できる。
主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A)としては、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどがある。このようなポリマーにおけるモノマー単位(c)とモノマー単位(b)の合計に対するモノマー単位(b)の割合は、40〜85モル%が好ましく、特に50〜80モル%が好ましい。
【0037】
本発明におけるフレームとしては、アルミニウム、黒化処理したアルミニウムまたは合成石英製のフレームであることが好ましい。
また、含フッ素ポリマー(A)を、フレームとペリクル膜との接着剤として用いる場合、接着性向上に有効な官能基が導入された含フッ素ポリマー(A)を用いることが好ましい。なお、ペリクル膜用の含フッ素ポリマー(A)は光透過性の面から官能基を有しないことが好ましい。
該官能基としては、フレームやペリクル膜に対して接着性を発現しうるものであれば特に制約はなく、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、エステル結合を有する基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられる。この官能基としては、フレームの材料であるアルミニウムなどに対する接着性が良好で、保存安定性に富み、比較的低温でその効果が発現できる観点より、カルボン酸基が特に好適である。
【0038】
本発明は、ペリクル膜を基板上に製膜する工程を有する。かかる基板は、平滑かつ本発明に使用する含フッ素ポリマー(A)または後述する含フッ素ポリマー(A)溶液に溶解または膨潤しないものであれば何ら制限はない。好ましくはシリコン基板や石英基板が使用される。
【0039】
好ましい基板の例としては、半導体用のシリコンウエハ、シリコン酸化膜ウエハなどのシリコン基板、合成石英、フッ素ドープ合成石英などの石英基板が例示される。これらの基板を使用する際には、事前に研磨、洗浄などの前処理を施しておくことが好ましい。例えば、シリコンウエハの場合は、極微量の有機性不純物が付着している可能性があるため、約0.5%程度の希釈したフッ化水素水溶液にて洗浄した後、超純水で洗浄し乾燥させることが好ましい。特に好ましい基板は半導体用シリコン基板および100〜200nmにて高い透過率を示すフッ素ドープ合成石英基板である。
【0040】
本基板上にペリクル膜を形成する方法としては、本ペリクル膜の材料となる含フッ素ポリマー(A)の溶液を使用した製膜法が好ましい。溶媒としては、本発明における含フッ素ポリマー(A)を溶解できるものであれば、なんでも使用できる。好ましくは含フッ素溶媒である。該溶液のポリマー濃度としては、3〜10質量%であることが好ましい。この溶液を用いて、基板上に均一な湿潤薄膜を形成する。このときの湿潤薄膜の形成方法としては、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法などが用いられる。これらの手法を用いてポリマー溶液の湿潤薄膜を形成した後、オーブン、ホットプレート等の加熱装置を用いて溶媒を揮発させ、好ましくは厚み0.5〜2μmの均一な薄膜(ペリクル膜)が形成された基板を製造する。
【0041】
本発明は、該基板から該ペリクル膜を剥離する工程、および該剥離工程の前にペリクル膜が形成された基板を、熱超純水に浸漬する工程を有する。熱超純水に浸漬する際には、後の工程を考慮して、あらかじめペリクル膜にフレームを接着させておくことが好ましい。以下、この好ましい態様について本工程を詳細に述べる。尚、本発明における超純水とは、電気抵抗が10MΩ・cm以上の水を意味する。
フレームにあらかじめ接着剤のポリマー溶液を塗布し、自然乾燥したのち加熱を行う。接着剤のポリマーとしては、フレームとペリクル膜を接着できるものであれば何でも構わない。好ましくは前述した通り、含フッ素ポリマー(A)であり、さらに好ましくは官能基を有する含フッ素ポリマー(A)である。溶液の溶媒としては、接着剤のポリマーを溶解できるものであれば何でも構わない。接着剤が、好ましい態様である含フッ素ポリマー(A)である場合は、かかる溶媒は含フッ素溶媒であることが好ましい。接着剤のポリマー溶液の濃度としては、2〜10質量%であることが操作性が良好であるころから好ましい。
前記加熱はオーブン、ホットプレートなどを使用し、フレームに溶液を塗布した面を上にして加熱する。加熱温度は、フレームと前記基板上の膜をしっかりと接着させる観点から、接着剤のポリマーのガラス転移温度(以下、Tg,aと記す。)以上で行うことが好ましく、より具体的にはTg,a〜(Tg,a+50)℃の範囲、より好ましくは(Tg,a+20)〜(Tg,a+50)℃の範囲である。また加熱時間は10〜20分程度が好ましいが、この時間についてはフレームの厚みおよび幅によって調節されることが好ましい。
【0042】
接着剤のポリマーが柔らかくなったところで、前記基板のペリクル膜が形成された面を接着剤面側にして基板をフレーム上にのせ、さらに加熱を行い、フレームとペリクル膜を接着させる。より強固な接着を得るためにフレームを取り付けた基板ごとオーブンにて再加熱してもよい。このようにして、フレーム、接着剤、ペリクル膜および基板との一体化品が得られる。
【0043】
次に、この基板からフレームと膜を剥離する工程について説明する。ペリクル膜の材料である含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度をTg,mとすると、前記一体化品を(Tg,m−40)〜(Tg,m−10)℃の超純水に浸漬する。後記の実施例の重合体Aについては、この温度はほぼ70〜100℃となる。より好ましい温度は(Tg,m−30)〜(Tg,m−10)℃である。
【0044】
また、浸漬時間は1時間から48時間の間であることが好ましい。1時間未満の場合は、熱超純水処理としては不十分であり、48時間を超える場合は生産性が悪くなると同時に不要なH2Oの吸着をまねき、ペリクルの透過率を悪化させるおそれがある。より好ましくは1時間〜36時間である。
【0045】
加熱処理を行う容器としては、有機性不純物や無機性不純物の溶出のない容器であれば特に制限はなく、種々の材質が使用可能である。しかしながら超純水は極性が高いこと、浸漬温度がポリマーによっては100℃以上となることからフッ素樹脂容器が好ましい。なかでも溶出金属と溶出物を抑えた高純度PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を使用した半導体用途向けの容器が好ましい。また、これらの容器を加熱する装置としては、一般的なオーブンや加湿加圧型のオーブンもしくはオートクレーブ等が好ましい装置として用いられる。
【0046】
熱超純水に浸漬後、一体化品を取り出すと、ペリクル膜がフレームごと基板より容易に剥離することができる。この理由は以下のように考えられる。
含フッ素ポリマー(A)は完全フッ素化ポリマーではなく基本骨格の一部に水素を含む含フッ素ポリマーであるため、水素とフッ素の大きな電気陰性度の差から分子内に極性が発生し、それらにより基板との相互作用がパーフルオロポリマーと比較して強くなることから、従来の方法では基板から剥離できない。
【0047】
しかし、本相互作用は静電的なものであり、化学的な結合ではないため基板との相互作用のより強い物質かつポリマーとの相互作用のない物質にて界面を処理すると剥離可能となると考えられる。このような物質として清浄性が高くコスト的にも安価であり、溶存有機物とイオン性不純物のレベルが最も低い超純水が選ばれる。超純水のなかでも、電気抵抗が15MΩ・cm以上であることが好ましい。
【0048】
しかも、(Tg,m−40)℃以上とすることにより、基板とペリクル膜の界面内へ短時間に超純水が浸透し、ムラが発生することがなく、剥離時に膜の伸びやたるみを招くことがない。一方で、(Tg,m−10)℃以下とすることにより、膜の機械的強度が低下することがなく、剥離時に伸びや破れを発生させることがない。
【0049】
上記のようにして得られたペリクル膜には、極わずかではあるが容器からの不純物や製膜工程などで基板に付着した有機性不純物が転写付着する場合がある。また、高温化で剥離処理を施すため、ペリクル膜表面に水蒸気が溶存する場合もある。これら不純物は、例えば157nmの光の透過率を著しく低下させ、耐久性を悪化させるため取り除くことが好ましい。
【0050】
これら不純物の除去にはアルキルアルコールを主成分とする溶媒を用いることが好ましい。かかる溶媒は、ペリクル膜を溶解も膨潤もせず、水と相溶性が良好であり、後の工程で容易に除去できるため好ましい。具体的には、フッ素を含まないアルキルアルコールを主成分とする溶媒が好ましく、より好ましいものは炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルアルコールを主成分とする溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましく、メタノールが最も好ましい。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。また、新たな不純物を再付着させない観点より、当然のことながら半導体グレードの溶媒を用いることが好ましい。
【0051】
アルキルアルコールを主成分とするということは、これらアルキルアルコールを容量比で50%以上含むことを意味する。より好ましくは60%以上である。当然のことながら該アルキルアルコールを100%で用いても差し支えない。アルキルアルコールが容量比で50%以上含むことにより洗浄中にペリクル膜の伸びや破れが発生する可能性が小さい。
【0052】
該アルキルアルコールと併用してもよい溶媒としては、極性溶媒、無極性溶媒のいずれでもよく、1種類でも数種類併用してもよい。しかしながら、ペリクル膜の破れや剥離を防止する観点から、フッ素原子を含まないものが好ましい。また、後工程にて除去を容易にするため沸点が1気圧下で150℃以下のものが好ましい。より好ましい溶媒を例示すればアセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン等が例示される。これらはいずれも半導体用超高純度薬品として入手可能でありこれらを使用することが好ましいことは言うまでもない。また、フレームとして耐酸性の材料、例えばニッケルやニッケルめっき品を選択した場合は、希フッ化水素酸なども選択可能である。
【0053】
前記アルキルアルコールを主成分とする溶媒にて洗浄する場合は、溶媒中にペリクル膜をフレームごと浸漬し、暫く遥動させた後引き上げ、その後新鮮な同種溶媒にてリンスを行い、常圧下、または減圧下にて乾燥させればよい。遥動の代わりに前記溶媒の循環槽中に浸漬し洗浄する方法もとりうる。本溶媒での洗浄処理は非常に短時間でよい。浸漬時間としてはとくに制限はないが5秒〜数10分の間で任意に選択可能である。本洗浄においては長時間の浸漬を行うより、新鮮な溶媒を用いて回数を多く洗浄する方が効果的である。また、処理温度については、常温下で行うことが好ましい。また、アルキルアルコールを主成分とする溶媒にて洗浄したのち膜表面に水分を吸着させない程度の短時間で常温の超純水にてリンスしたのち乾燥を行ってもよい。
【0054】
本発明におけるペリクルの製造方法を適応した膜は、光透過率にてその性能を確認することが可能である。本製造法を適応した膜の光透過率は157nm〜200nmの範囲の光で膜厚1μmで95%以上の光透過率を有する。ここで、光透過率とは、山と谷の連続した透過率曲線に対しては山の透過率値をいう。
以下、本発明の具体例を、実施例をもって説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0055】
【実施例】
(例1)[含フッ素ポリマー(A)の合成例]
1,1,2,4,4,5−ヘキサフルオロ−3−オキサ−5−トリフルオロメチル−1,6−ヘプタジエン[CH2=CHCF(CF3)CF2OCF=CF2]の30gおよび1H−パーフルオロヘキサン[CF3CF2CF2CF2CF2CF2H]の70gを窒素置換した内容積100mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)パーオキシドの17mgを加え、系内を再度窒素で置換した後、5℃で72時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素環構造を有する非結晶性ポリマー(以下「重合体A」という。)を24g得た。
重合体Aの固有粘度[η]は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で0.60dl/gであった。重合体Aのガラス転移温度は108℃であり、室温ではタフで透明ガラス状の重合体であり、屈折率は1.34と低かった。
一方、上記と同じ方法で得た重合体Aを空気中320℃で4時間熱処理した後に水中に浸漬して変性した。変性された重合体AのIRスペクトル測定によりカルボキシル基のピークが確認され、その量は0.005ミリモル/gであった。この変性された重合体Aを以下「接着剤A」という。
【0056】
(例2)
重合体Aの6gとパーフルオロトリブチルアミンの94gをガラス製フラスコ中に入れて40℃にて24時間加熱撹拌した。その結果、無色透明で濁りのない均一な溶液を得た。シリコンウェハを基板として使用し、この溶液をシリコン基板上にスピン速度500rpmにて10秒、その後1000rpmにて20秒スピンコートを実施した後、80℃にて1時間、さらに180℃にて1時間加熱処理することにより、シリコン基板上に均一で透明な膜が得られた。
一方、接着剤Aの4gとパーフルオロトリブチルアミンの48g、パーフルオロオクタンの48gを上記と同様に処理して得た溶液をアルミニウムフレーム上に塗布し、室温で4時間乾燥した。その後、130℃のホットプレート上に接着面を上にしてアルミニウムフレームを載せて10分間加熱し、上記重合体Aの膜が形成された基板の膜面をフレーム側にして圧着した。その状態で130℃で10分間、200℃オーブン中1時間保持して接着を完結させ、フレーム、接着剤、ペリクル膜および基板の一体化品を得た。その後、電気抵抗16MΩ・cmの超純水700mlを内容積1リットルの密栓可能な高純度PFA容器中に用意し、前記一体化品を浸漬し、密栓した後、85℃のオーブン中に24時間保持した。オーブンからPFA容器を取り出し、一体化品を水中から取り出した。基板からフレームごとペリクル膜を容易に剥離することができ、のびやむらのない重合体Aからなる膜厚約1μmの均一な自立膜からなるペリクル膜がついたペリクルを得た。本ペリクルをそのまま90℃で真空乾燥を行いペリクルAを得た。
一方、上記重合体Aのペリクルをそのまま真空乾燥せず、半導体用グレードのメタノール中に浸漬して、5分間左右上下に揺動し、膜面に付着した不純物や水蒸気を溶出させた。その後、90℃で真空乾燥を行い、ペリクルBを得た。
【0057】
上記のようにして得たペリクルAおよびBの膜の表面をX線光電子分光分析装置をもちいて分析したところ、メタノールにて洗浄処理をしなかったペリクルAでは剥離工程前の膜組成と比較して炭素量が多く有機不純物の付着が示唆された。一方メタノールにて洗浄処理したペリクルBについては、剥離工程前の膜組成と同等であり、不純物などの付着がないことがわかった。
表1にX線光電子分光分析装置による分析結果を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
ペリクルAおよびBを用いて光透過率を測定したところ、ペリクルAについては157nmでの光透過率が約94%であり、157nm〜200nmの範囲内で95%未満の透過率範囲があった。一方、ペリクルBは157nmの波長での光透過率は98%以上でありかつ、波長157nm〜200nmの範囲でも95%以上であった。
図1にペリクルA及びペリクルBの光透過率の測定結果を示す。
【0060】
(例3)
剥離のために超純水に浸漬する温度を65℃にする以外は例2と同じ方法でペリクルの製造を試みたが、基板からペリクル膜をはがすことができなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明を用いて製造したペリクルは波長100〜200nm(特に157nm)の短波長領域において光透過率が高く、今後のより微細な加工に使用される短波長レーザー光に対して高い耐久性を示す。また、本発明の方法により、良好な歩留まりでペリクルが得られるとともに、ペリクル表面の汚染を極力抑えることができる。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】ペリクルA及びペリクルBの透過率の測定結果を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長100〜200nmのレーザー光を用いるフォトリソグラフィに適したペリクルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ペリクルとは、半導体装置または液晶表示板を製造する際の一工程であるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクやレチクル(以下これらを「マスク」という。)上に異物が乗り、露光時にパターン欠陥となることを防ぐためにマスクのパターン上に装着される保護具であって、ペリクル膜とフレームからなる。通常は接着剤を介してフレームに取り付けられたペリクルが、マスク面から一定距離をおいて設置される構造を有している。
【0003】
これらが使用される半導体装置や液晶表示板の製造分野では、配線や配線間隔の微細化進展にともない、フォトリソグラフィにおいても、用いられる光源の波長が急速に短波長化している。最小パターン寸法0.3μm以上の従来の露光技術では、i線(365nm)を光源として用いたプロセスが主流であり、ペリクルの材料としてはニトロセルロース系材料が使用されてきた。
【0004】
最小パターン寸法0.3μm未満の配線加工のために、KrFエキシマレーザーを光源とする波長248nmのレーザー光、フッ化アルゴンエキシマレーザー(以下「ArFエキシマレーザー」という。)を光源とする波長193nmのレーザー光が使用されている。これらの波長領域では、ニトロセルロース系の膜材料では耐久性が不充分であり、非結晶性のパーフルオロポリマーがペリクル膜の材料として採用されている。
【0005】
一方、さらなる微細加工のためにフッ素ガスエキシマレーザー(以下、「F2エキシマレーザー」という。)を光源とする波長157nmのレーザー光の使用が提案されている。波長100〜200nmのArFエキシマレーザー光やF2エキシマレーザー光が使用されるペリクル膜の材料としては、特定構造のフルオロポリマーが提案されている。
【0006】
しかし、これらのレーザーからのレーザー光は非常に高いエネルギーを有するため、前記非結晶性のパーフルオロポリマーでも充分な耐久性がない。例えば、そこに使用されているパーフルオロポリマーである「CYTOP」(商品名)は170nmより短い波長では光透過性や耐久性が急激に低下する。このパーフルオロポリマーは波長157nmを発振するF2エキシマレーザー光に対する透過性は著しく低い。そのため、F2エキシマレーザー光に対応できるペリクル材料として、例えば含フッ素ポリマー(A)やパーフルオロ−1,3−ジオキソールを主成分としたポリマーが膜または該ペリクルの膜とフレームとの接着剤として有用とされている。
ここで、含フッ素ポリマー(A)とは、炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマーである。
【0007】
KrFエキシマレーザー露光用ペリクル膜やArFエキシマレーザー露光用ペリクルに用いられる非結晶性のパーフルオロポリマーに関しては、その光透過率や耐光性に影響する汚染物質の付着をおさえ基板から清浄なペリクル膜を得る方法が種々知られている。例えば基板からペリクル膜を剥離する方法として、剥離部に電荷を付与して剥離する方法(特許文献1参照)、イオンを照射しながら剥離する方法(特許文献2参照)、軟X線を照射しながら剥離する方法(特許文献3参照)などが知られている。
【0008】
しかしながら、F2エキシマレーザー露光用ペリクルとして有用な含フッ素ポリマー(A)はポリマー中に水素を含み、前記非結晶性パーフルオロポリマーと比較してポリマー内に極性を有するため、種々の基板に対して相互作用が強くなり、このような従来の方法を用いた場合でも基板から剥離することが難しく、剥離した膜に著しい伸びや、破れが発生するという問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−26821号公報
【特許文献2】
特開平10−26822号公報
【特許文献3】
特開平10−26823号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、汚染物質の付着がなく、波長100〜200nmのレーザー光(以下、短波長レーザー光ともいう。)の照射に対して透過率および耐久性が高いペリクルの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、本課題解決のために鋭意検討し、基板からの剥離には熱超純水が有効であることを見出した。すなわち、含フッ素ポリマー(A)を基板から剥離する新規な剥離方法を見出した。本発明は波長が100〜200nmである短波長レーザー光に対して高い透過性と耐久性を兼ね備える含フッ素ポリマー(A)を用いたペリクルの製造方法に関する下記発明である。
【0012】
下記含フッ素ポリマー(A)からなるペリクル膜、フレームおよび該ペリクル膜と該フレームを接着する接着剤からなるペリクルの製造方法において、該ペリクル膜を基板上に形成する工程、基板から該ペリクル膜を剥離する工程、および該剥離工程の前に、該ペリクル膜が形成された基板を(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度−40)℃から(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度−10)℃の超純水中に浸漬する工程を有することを特徴とするペリクルの製造方法。
含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。
【0013】
本発明のペリクル製造方法は、特に波長100〜200nmのレーザー光による露光処理用ペリクルの製造方法として適している。具体的には、157nmのF2エキシマレーザー光による露光処理におけるペリクルの製造方法として最も適している。
【0014】
【発明の実施の形態】
【0015】
本発明におけるペリクル膜は、下記の含フッ素ポリマー(A)からなる。含フッ素ポリマー(A)は、炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーである。このポリマーの主鎖の炭素原子連鎖は原則としてモノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子が連結した連鎖からなる。したがって、含フッ素ポリマー(A)において「主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子またはフッ素含有置換基が結合した炭素原子とを含む」とは、重合性不飽和基を1個有するモノマーの重合により得られるホモポリマーの場合、モノマーの重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の一方の炭素原子には水素原子が結合し他方の炭素原子には水素原子が結合していないモノマー(以下「モノマー(a)」という。)のポリマーであることを意味する。
コポリマーの場合には、重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子の少なくともいずれかに水素原子が結合しているモノマー(以下「モノマー(b)」という。)と重合性不飽和結合を構成する2個の炭素原子のいずれにも水素原子が結合していないモノマー(以下「モノマー(c)」という。)とのコポリマーであってもよい。なお、モノマー(b)は、その範疇にモノマー(a)を含む。
さらに含フッ素ポリマー(A)は、モノマー(a)の2種以上のコポリマーであってもよく、モノマー(a)と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。同様に、モノマー(b)とモノマー(c)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0016】
含フッ素ポリマー(A)は2個の重合性不飽和結合を有するモノマー(以下、「ジエンモノマー」という。)の環化重合により得られるポリマーであってもよい。通常このポリマーの場合には2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子がポリマーの主鎖を形成する。したがって、この含フッ素ポリマー(A)は、2個の重合性不飽和結合の4個の炭素原子の内1個以上の炭素原子が水素原子を有しかつ1個以上の炭素原子が水素原子を有しないモノマー(以下「ジエンモノマー(d)」という。)の環化重合により得られるポリマーである。
コポリマーの場合には4個の炭素原子のいずれも水素原子を有しないジエンモノマー(以下「ジエンモノマー(e)」という。)と重合性不飽和結合の炭素原子に水素原子を有するモノマー(このモノマーは重合性不飽和結合を2個有する環化重合しうるジエンモノマーであっても重合性不飽和結合を1個有するモノマーであってもよい)(以下「モノマー(f)」という。)とのコポリマーであってもよい。さらに、含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)と他のモノマーとのコポリマーであってもよく、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とそれら以外のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0017】
含フッ素ポリマー(A)がフッ素を有するポリマーであることから、上記モノマー(a)、モノマー(c)、ジエンモノマー(d)およびジエンモノマー(e)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必要である。モノマー(b)、モノマー(f)は重合性不飽和結合の炭素原子にフッ素原子またはフッ素含有有機基が結合していることが必須ではないがそれらが結合していてもよい。
含フッ素有機基としては1価の基と2価の基が好ましい。2価の含フッ素有機基の2個の結合手は、重合性不飽和結合の2個の炭素原子それぞれに結合する(2個の炭素原子を含む環を形成する)場合と2個の炭素原子の一方のみに結合する(その1個の炭素原子を含む環を形成し他方の炭素原子が環外の炭素原子となる)場合とがある。
モノマー(a)〜モノマー(f)は前記定義を満たす範囲でその重合性不飽和基の炭素原子に水素原子、フッ素原子、アルキル基などの有機基、その他の置換基を有していてもよい。しかし、アルキル基などの有機基を側鎖に多数有するポリマーはその炭素原子に結合した水素原子が耐久性低下の要因となりやすくそのような置換基は少ない方が好ましい。
1価の含フッ素有機基としては含フッ素アルキル基と含フッ素アルコキシ基が好ましい。これらの基の炭素数は10以下、特に4以下が好ましい。これらの基は水素原子を含まないことが好ましく、フッ素原子のみを含む基が好ましい。
2価の含フッ素有機基としてはエーテル性酸素原子を含んでもよい炭素数10以下(特に6以下)のポリフルオロアルキレン基が好ましい。このポリフルオロアルキレン基としてはパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子は、ポリフルオロアルキレン基の一方の末端に存在してもよく、両末端に存在してもよく、炭素原子間に存在してもよい。2価の含フッ素有機基としては直鎖状のものに限られず、分岐を有していてもよい。
1価の有機基としては、前記1価の含フッ素有機基とフッ素を有しない1価の有機基がある。フッ素を有しない1価の有機基としては炭素数10以下、特に4以下のアルキル基とアルコキシ基が好ましい。フッ素を有しない1価の有機基としては特にメチル基が好ましい。
【0018】
結晶性を有するポリマーは光散乱による透過率の低下やレチクル像のゆがみを引き起こすため、含フッ素ポリマー(A)の結晶化度は30%以下が好ましく、特に20%以下の非結晶性であることが好ましい。ポリマー分子中にバルキーな構造を導入することによりポリマーの結晶化度を下げることができる。したがって、バルキーな構造である脂肪族環をポリマーの主鎖に存在させてポリマーの結晶化を抑制し、非結晶性の透明性の高いポリマーとすることが好ましい。よって、含フッ素ポリマー(A)としては特に主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素ポリマーであることが好ましい。
「主鎖に脂肪族環構造を有する」とは主鎖の炭素原子の1個以上が脂肪族環を構成する炭素原子であることを意味する。この脂肪族環は、その脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上にフッ素原子または含フッ素有機基が結合している含フッ素脂肪族環であることが好ましい。また、この脂肪族環を構成する原子の一部は炭素原子以外の酸素原子や窒素原子などの原子であってもよい。好ましい脂肪族環は1〜2個の酸素原子を有する5〜8員環の含フッ素脂肪族環である。
【0019】
脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを用いることによって主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーが得られる。ジエンモノマー(d)やジエンモノマー(e)は環化重合により主鎖に脂肪族環構造を有するポリマーを形成する。「脂肪族環に重合性不飽和基を有する」とは、脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性不飽和基を有するか、または、環を構成する炭素原子と環外の炭素原子との間に重合性不飽和基を有することを意味する。この脂肪族環としては含フッ素脂肪族環であることが好ましく、前記のように環を構成する原子として酸素原子を有していてもよい。
以下、含フッ素脂肪族環に重合性不飽和基を有するモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーという。含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの環を構成する原子としては炭素原子以外に1〜2個の酸素原子を有していてもよい。モノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであることが好ましい。モノマー(a)、モノマー(b)およびモノマー(f)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであってもよい。
【0020】
モノマー(a)としてはフッ化ビニリデンや1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレンが好ましい。しかしこれらのモノマーのホモポリマーは結晶性となることが多く透明性が低い傾向にある。
【0021】
モノマー(b)としては、CHR1=CR2R3[R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。前記のようにモノマー(b)はモノマー(a)を包含している。R1、R2としては水素原子またはフッ素原子が好ましく、R3は水素原子、フッ素原子または炭素数4以下のアルキル基(特にメチル基)が好ましい。具体的には、エチレン、プロピレンなどのオレフィン、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどの重合性不飽和基の炭素原子に水素原子が結合したフルオロオレフィンがある。モノマー(b)としては、炭素数2〜3のオレフィンと炭素数2〜3のフルオロオレフィンが好ましい。特に好ましいモノマー(b)は、エチレンおよびプロピレンから選ばれたオレフィンおよびフッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンから選ばれたフルオロオレフィンである。
【0022】
モノマー(c)としては、CFR4=CR5R6[R4、R5、R6はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表すか、R4とR5は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表すか、または、R5とR6は共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4はフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。この内、R4とR5が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR6がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、および、R5とR6が共同して2価の含フッ素有機基を表しかつR4がフッ素原子もしくは1価の含フッ素有機基を表す場合、そのモノマー(c)は含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーの1種であり、以下このモノマーを含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)という。
【0023】
モノマー(c)としては、具体的には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどの水素原子を有しないポリフルオロオレフィン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、並びに、下記式1、式2および式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)などがある。特に好ましいモノマー(c)はパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)[すなわち、R11およびR12がいずれもトリフルオロメチル基である式1で表される化合物]である。
【0024】
【化1】
【0025】
上記式1〜式3においてR11〜R16はそれぞれ独立にフッ素原子または含フッ素有機基を表し、含フッ素有機基としてはパーフルオロアルキル基、特に炭素数1または2のパーフルオロアルキル基が好ましい。
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーからなる含フッ素ポリマー(A)としては、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどの主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよいが、これらは透明性が充分とはいえない。しかし、膜とフレームを接着するための接着剤としては有用である。好ましい含フッ素ポリマー(A)はモノマー(b)と上記式1〜式3で表される含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)とのコポリマーである。この場合のモノマー(b)としては、エチレンなどのオレフィンおよび不飽和基の炭素原子に水素原子を有するフルオロオレフィンから選ばれた少なくとの1種のモノマーが好ましい。
【0026】
モノマー(b)とモノマー(c)のコポリマーにおけるモノマー(b)の重合により形成されたモノマー単位(以下モノマー単位(b)という。他のモノマー単位についても同様とする)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合は10〜70モル%が好ましい。モノマー(b)がエチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマーの場合は10〜50モル%が好ましい。特に好ましいモノマー単位(b)の割合は20〜40モル%である。接着剤用の含フッ素ポリマー(A)においてはさらにモノマー単位(b)とモノマー単位(c)との合計に対するモノマー単位(b)の割合が40〜85モル%であるポリマーも好ましい。
なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(b)とモノマー単位(c)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に80〜100モル%が好ましい。最も好ましいポリマーはモノマー(b)とモノマー(c)のみからなるコポリマー(ただし各モノマーは2種以上であってもよい)である。
【0027】
ジエンモノマー(d)としては、CH2=CR7−Q−CR8=CF2[ただし、R7、R8はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは2価の含フッ素有機基を表す]で表されるモノマーが好ましい。R7としては水素原子とフッ素原子が好ましく特に水素原子が好ましい。R8としてはフッ素原子または炭素数2以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
【0028】
Qとしては、炭素数10以下のエーテル性酸素原子を有していてもよいパーフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子はパーフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、両末端に存在していてもよく、炭素原子間に存在していてもよい。エーテル性酸素原子を有しないパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数2〜6、一方の末端にエーテル性酸素原子を有するまたは炭素原子間にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜4、両末端にエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基の場合は炭素数1〜3であることがより好ましい。分岐部の炭素原子を除いた炭素原子と酸素原子の合計数は2〜4であることが最も好ましい。
Qとしては、2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基およびエーテル性酸素原子を有しない炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基が好ましい。さらに好ましいQは2,2−ジフルオロビニル基側にエーテル性酸素原子を有する炭素数4以下のパーフルオロアルキレン基である。
すなわち、最も好ましいジエンモノマー(d)は、CH2=CH−Rf−O−CF=CF2[ただし、Rfは炭素数1〜4のパーフルオロアルキレン基を表す]で表されるモノマーである。このモノマーは環化重合性が高く、短波長光の透過性が高く機械的強度の高いポリマーが得られる(特開昭63−238111号公報、特開昭63−238113号公報等参照)。Rfとしては分岐を除いて炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基が好ましい。分岐が存在する場合は、分岐はトリフルオロメチル基が好ましく、分岐の数は1〜2が好ましい。
【0029】
なお、CH2=CR7−Q−CR8=CF2の環化重合により通常下記式4、式5、式6などで表されるモノマー単位(以下モノマー単位(d)という。)が形成される。CH2=CR7−Q−CR8=CF2で表されるジエンモノマー(d)としては、例えば以下の化合物がある。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
含フッ素ポリマー(A)は、ジエンモノマー(d)のホモポリマー(ただし、ジエンモノマー(d)の2種以上のコポリマーであってもよい)であってもよく、他のモノマーとのコポリマーであってもよい。他のモノマーとしては、モノマー(a)、モノマー(b)、モノマー(c)、ジエンモノマー(e)などがある。コポリマーとしてはジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーおよびジエンモノマー(d)とジエンモノマー(e)のコポリマーが好ましく、ジエンモノマー(d)とモノマー(c)のコポリマーがより好ましい。この場合のモノマー(c)としては、前記の含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー(c)が好ましい。
この含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するモノマー単位(d)の割合は30〜100モル%が適当であり、50〜100モル%が好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
ジエンモノマー(e)としては、ジエンモノマー(d)の重合性不飽和基の炭素原子に結合した水素原子がすべてフッ素原子またはパーフルオロアルキル基に置換されたモノマーが好ましい。より好ましくは、CF2=CR9−Q−CR10=CF2[R9、R10はそれぞれ独立にフッ素原子または1価の含フッ素有機基を表し、Qは前記に同じ]で表されるモノマーが好ましい。ただし、前記したQにおけるエーテル性酸素原子の位置や数の制約はない。具体的には下記のようなモノマーがある。
【0033】
【化4】
【0034】
モノマー(f)としては前記モノマー(a)やモノマー(b)を使用しうる。特にモノマー(b)が好ましい。ジエンモノマー(e)とモノマー(f)の共重合においてはジエンモノマー(e)は環化重合により含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を形成し、このモノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーが生成する。モノマー単位(e)とモノマー単位(f)とを有するコポリマーはさらに他のモノマー単位を有していてもよく、例えば前記モノマー単位(c)を有していてもよい。
【0035】
ジエンモノマー(e)とモノマー(f)のコポリマーにおいて、モノマー単位(e)とモノマー単位(f)との合計に対するモノマー単位(f)の割合は10〜70モル%が好ましい。エチレンなどの2個以上の水素原子(重合性不飽和結合の炭素原子に結合した水素原子)を有するモノマー(f)の場合は10〜60モル%が好ましい。特に好ましいモノマー(f)の割合は20〜50モル%である。なお、このポリマーにおける全モノマー単位に対するモノマー単位(e)とモノマー単位(f)の合計の割合は50〜100モル%が好ましく、特に70〜100モル%が好ましい。
含フッ素ポリマー(A)は前記のように含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位を含むポリマーであることが好ましい。含フッ素ポリマー(A)における全モノマー単位に対するこの含フッ素脂肪族環構造を有するモノマー単位の割合は、20モル%以上、特に40モル%以上であることが好ましい。
特に好ましい含フッ素ポリマー(A)は、エチレンとパーフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のホモポリマー、および、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とジエンモノマー(d)とのコポリマーである。
【0036】
本発明におけるペリクル膜とフレームは、含フッ素ポリマー(A)を含む接着剤により接着されていることが好ましい。
ペリクル膜とフレームを接着する接着剤用の含フッ素ポリマー(A)としては、例えば、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマーであるモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー、ジエンモノマー(d)のポリマー、ジエンモノマー(e)とモノマー(f)とのコポリマーなどが好ましい。また、接着剤用の含フッ素ポリマー(A)は必ずしも高い透明性は要求されないことより、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有しないポリマーであってもよい。したがって、含フッ素脂肪族不飽和環状モノマー以外のモノマー(c)とモノマー(b)とのコポリマー(すなわち主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A))も好ましい接着剤として使用できる。
主鎖に脂肪族環構造を有しない含フッ素ポリマー(A)としては、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーなどがある。このようなポリマーにおけるモノマー単位(c)とモノマー単位(b)の合計に対するモノマー単位(b)の割合は、40〜85モル%が好ましく、特に50〜80モル%が好ましい。
【0037】
本発明におけるフレームとしては、アルミニウム、黒化処理したアルミニウムまたは合成石英製のフレームであることが好ましい。
また、含フッ素ポリマー(A)を、フレームとペリクル膜との接着剤として用いる場合、接着性向上に有効な官能基が導入された含フッ素ポリマー(A)を用いることが好ましい。なお、ペリクル膜用の含フッ素ポリマー(A)は光透過性の面から官能基を有しないことが好ましい。
該官能基としては、フレームやペリクル膜に対して接着性を発現しうるものであれば特に制約はなく、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、エステル結合を有する基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基などが挙げられる。この官能基としては、フレームの材料であるアルミニウムなどに対する接着性が良好で、保存安定性に富み、比較的低温でその効果が発現できる観点より、カルボン酸基が特に好適である。
【0038】
本発明は、ペリクル膜を基板上に製膜する工程を有する。かかる基板は、平滑かつ本発明に使用する含フッ素ポリマー(A)または後述する含フッ素ポリマー(A)溶液に溶解または膨潤しないものであれば何ら制限はない。好ましくはシリコン基板や石英基板が使用される。
【0039】
好ましい基板の例としては、半導体用のシリコンウエハ、シリコン酸化膜ウエハなどのシリコン基板、合成石英、フッ素ドープ合成石英などの石英基板が例示される。これらの基板を使用する際には、事前に研磨、洗浄などの前処理を施しておくことが好ましい。例えば、シリコンウエハの場合は、極微量の有機性不純物が付着している可能性があるため、約0.5%程度の希釈したフッ化水素水溶液にて洗浄した後、超純水で洗浄し乾燥させることが好ましい。特に好ましい基板は半導体用シリコン基板および100〜200nmにて高い透過率を示すフッ素ドープ合成石英基板である。
【0040】
本基板上にペリクル膜を形成する方法としては、本ペリクル膜の材料となる含フッ素ポリマー(A)の溶液を使用した製膜法が好ましい。溶媒としては、本発明における含フッ素ポリマー(A)を溶解できるものであれば、なんでも使用できる。好ましくは含フッ素溶媒である。該溶液のポリマー濃度としては、3〜10質量%であることが好ましい。この溶液を用いて、基板上に均一な湿潤薄膜を形成する。このときの湿潤薄膜の形成方法としては、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法などが用いられる。これらの手法を用いてポリマー溶液の湿潤薄膜を形成した後、オーブン、ホットプレート等の加熱装置を用いて溶媒を揮発させ、好ましくは厚み0.5〜2μmの均一な薄膜(ペリクル膜)が形成された基板を製造する。
【0041】
本発明は、該基板から該ペリクル膜を剥離する工程、および該剥離工程の前にペリクル膜が形成された基板を、熱超純水に浸漬する工程を有する。熱超純水に浸漬する際には、後の工程を考慮して、あらかじめペリクル膜にフレームを接着させておくことが好ましい。以下、この好ましい態様について本工程を詳細に述べる。尚、本発明における超純水とは、電気抵抗が10MΩ・cm以上の水を意味する。
フレームにあらかじめ接着剤のポリマー溶液を塗布し、自然乾燥したのち加熱を行う。接着剤のポリマーとしては、フレームとペリクル膜を接着できるものであれば何でも構わない。好ましくは前述した通り、含フッ素ポリマー(A)であり、さらに好ましくは官能基を有する含フッ素ポリマー(A)である。溶液の溶媒としては、接着剤のポリマーを溶解できるものであれば何でも構わない。接着剤が、好ましい態様である含フッ素ポリマー(A)である場合は、かかる溶媒は含フッ素溶媒であることが好ましい。接着剤のポリマー溶液の濃度としては、2〜10質量%であることが操作性が良好であるころから好ましい。
前記加熱はオーブン、ホットプレートなどを使用し、フレームに溶液を塗布した面を上にして加熱する。加熱温度は、フレームと前記基板上の膜をしっかりと接着させる観点から、接着剤のポリマーのガラス転移温度(以下、Tg,aと記す。)以上で行うことが好ましく、より具体的にはTg,a〜(Tg,a+50)℃の範囲、より好ましくは(Tg,a+20)〜(Tg,a+50)℃の範囲である。また加熱時間は10〜20分程度が好ましいが、この時間についてはフレームの厚みおよび幅によって調節されることが好ましい。
【0042】
接着剤のポリマーが柔らかくなったところで、前記基板のペリクル膜が形成された面を接着剤面側にして基板をフレーム上にのせ、さらに加熱を行い、フレームとペリクル膜を接着させる。より強固な接着を得るためにフレームを取り付けた基板ごとオーブンにて再加熱してもよい。このようにして、フレーム、接着剤、ペリクル膜および基板との一体化品が得られる。
【0043】
次に、この基板からフレームと膜を剥離する工程について説明する。ペリクル膜の材料である含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度をTg,mとすると、前記一体化品を(Tg,m−40)〜(Tg,m−10)℃の超純水に浸漬する。後記の実施例の重合体Aについては、この温度はほぼ70〜100℃となる。より好ましい温度は(Tg,m−30)〜(Tg,m−10)℃である。
【0044】
また、浸漬時間は1時間から48時間の間であることが好ましい。1時間未満の場合は、熱超純水処理としては不十分であり、48時間を超える場合は生産性が悪くなると同時に不要なH2Oの吸着をまねき、ペリクルの透過率を悪化させるおそれがある。より好ましくは1時間〜36時間である。
【0045】
加熱処理を行う容器としては、有機性不純物や無機性不純物の溶出のない容器であれば特に制限はなく、種々の材質が使用可能である。しかしながら超純水は極性が高いこと、浸漬温度がポリマーによっては100℃以上となることからフッ素樹脂容器が好ましい。なかでも溶出金属と溶出物を抑えた高純度PFA(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を使用した半導体用途向けの容器が好ましい。また、これらの容器を加熱する装置としては、一般的なオーブンや加湿加圧型のオーブンもしくはオートクレーブ等が好ましい装置として用いられる。
【0046】
熱超純水に浸漬後、一体化品を取り出すと、ペリクル膜がフレームごと基板より容易に剥離することができる。この理由は以下のように考えられる。
含フッ素ポリマー(A)は完全フッ素化ポリマーではなく基本骨格の一部に水素を含む含フッ素ポリマーであるため、水素とフッ素の大きな電気陰性度の差から分子内に極性が発生し、それらにより基板との相互作用がパーフルオロポリマーと比較して強くなることから、従来の方法では基板から剥離できない。
【0047】
しかし、本相互作用は静電的なものであり、化学的な結合ではないため基板との相互作用のより強い物質かつポリマーとの相互作用のない物質にて界面を処理すると剥離可能となると考えられる。このような物質として清浄性が高くコスト的にも安価であり、溶存有機物とイオン性不純物のレベルが最も低い超純水が選ばれる。超純水のなかでも、電気抵抗が15MΩ・cm以上であることが好ましい。
【0048】
しかも、(Tg,m−40)℃以上とすることにより、基板とペリクル膜の界面内へ短時間に超純水が浸透し、ムラが発生することがなく、剥離時に膜の伸びやたるみを招くことがない。一方で、(Tg,m−10)℃以下とすることにより、膜の機械的強度が低下することがなく、剥離時に伸びや破れを発生させることがない。
【0049】
上記のようにして得られたペリクル膜には、極わずかではあるが容器からの不純物や製膜工程などで基板に付着した有機性不純物が転写付着する場合がある。また、高温化で剥離処理を施すため、ペリクル膜表面に水蒸気が溶存する場合もある。これら不純物は、例えば157nmの光の透過率を著しく低下させ、耐久性を悪化させるため取り除くことが好ましい。
【0050】
これら不純物の除去にはアルキルアルコールを主成分とする溶媒を用いることが好ましい。かかる溶媒は、ペリクル膜を溶解も膨潤もせず、水と相溶性が良好であり、後の工程で容易に除去できるため好ましい。具体的には、フッ素を含まないアルキルアルコールを主成分とする溶媒が好ましく、より好ましいものは炭素数4以下のアルキル基を有するアルキルアルコールを主成分とする溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノールが好ましく、メタノールが最も好ましい。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。また、新たな不純物を再付着させない観点より、当然のことながら半導体グレードの溶媒を用いることが好ましい。
【0051】
アルキルアルコールを主成分とするということは、これらアルキルアルコールを容量比で50%以上含むことを意味する。より好ましくは60%以上である。当然のことながら該アルキルアルコールを100%で用いても差し支えない。アルキルアルコールが容量比で50%以上含むことにより洗浄中にペリクル膜の伸びや破れが発生する可能性が小さい。
【0052】
該アルキルアルコールと併用してもよい溶媒としては、極性溶媒、無極性溶媒のいずれでもよく、1種類でも数種類併用してもよい。しかしながら、ペリクル膜の破れや剥離を防止する観点から、フッ素原子を含まないものが好ましい。また、後工程にて除去を容易にするため沸点が1気圧下で150℃以下のものが好ましい。より好ましい溶媒を例示すればアセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン等が例示される。これらはいずれも半導体用超高純度薬品として入手可能でありこれらを使用することが好ましいことは言うまでもない。また、フレームとして耐酸性の材料、例えばニッケルやニッケルめっき品を選択した場合は、希フッ化水素酸なども選択可能である。
【0053】
前記アルキルアルコールを主成分とする溶媒にて洗浄する場合は、溶媒中にペリクル膜をフレームごと浸漬し、暫く遥動させた後引き上げ、その後新鮮な同種溶媒にてリンスを行い、常圧下、または減圧下にて乾燥させればよい。遥動の代わりに前記溶媒の循環槽中に浸漬し洗浄する方法もとりうる。本溶媒での洗浄処理は非常に短時間でよい。浸漬時間としてはとくに制限はないが5秒〜数10分の間で任意に選択可能である。本洗浄においては長時間の浸漬を行うより、新鮮な溶媒を用いて回数を多く洗浄する方が効果的である。また、処理温度については、常温下で行うことが好ましい。また、アルキルアルコールを主成分とする溶媒にて洗浄したのち膜表面に水分を吸着させない程度の短時間で常温の超純水にてリンスしたのち乾燥を行ってもよい。
【0054】
本発明におけるペリクルの製造方法を適応した膜は、光透過率にてその性能を確認することが可能である。本製造法を適応した膜の光透過率は157nm〜200nmの範囲の光で膜厚1μmで95%以上の光透過率を有する。ここで、光透過率とは、山と谷の連続した透過率曲線に対しては山の透過率値をいう。
以下、本発明の具体例を、実施例をもって説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0055】
【実施例】
(例1)[含フッ素ポリマー(A)の合成例]
1,1,2,4,4,5−ヘキサフルオロ−3−オキサ−5−トリフルオロメチル−1,6−ヘプタジエン[CH2=CHCF(CF3)CF2OCF=CF2]の30gおよび1H−パーフルオロヘキサン[CF3CF2CF2CF2CF2CF2H]の70gを窒素置換した内容積100mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)パーオキシドの17mgを加え、系内を再度窒素で置換した後、5℃で72時間重合を行った。その結果、主鎖に含フッ素環構造を有する非結晶性ポリマー(以下「重合体A」という。)を24g得た。
重合体Aの固有粘度[η]は、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で0.60dl/gであった。重合体Aのガラス転移温度は108℃であり、室温ではタフで透明ガラス状の重合体であり、屈折率は1.34と低かった。
一方、上記と同じ方法で得た重合体Aを空気中320℃で4時間熱処理した後に水中に浸漬して変性した。変性された重合体AのIRスペクトル測定によりカルボキシル基のピークが確認され、その量は0.005ミリモル/gであった。この変性された重合体Aを以下「接着剤A」という。
【0056】
(例2)
重合体Aの6gとパーフルオロトリブチルアミンの94gをガラス製フラスコ中に入れて40℃にて24時間加熱撹拌した。その結果、無色透明で濁りのない均一な溶液を得た。シリコンウェハを基板として使用し、この溶液をシリコン基板上にスピン速度500rpmにて10秒、その後1000rpmにて20秒スピンコートを実施した後、80℃にて1時間、さらに180℃にて1時間加熱処理することにより、シリコン基板上に均一で透明な膜が得られた。
一方、接着剤Aの4gとパーフルオロトリブチルアミンの48g、パーフルオロオクタンの48gを上記と同様に処理して得た溶液をアルミニウムフレーム上に塗布し、室温で4時間乾燥した。その後、130℃のホットプレート上に接着面を上にしてアルミニウムフレームを載せて10分間加熱し、上記重合体Aの膜が形成された基板の膜面をフレーム側にして圧着した。その状態で130℃で10分間、200℃オーブン中1時間保持して接着を完結させ、フレーム、接着剤、ペリクル膜および基板の一体化品を得た。その後、電気抵抗16MΩ・cmの超純水700mlを内容積1リットルの密栓可能な高純度PFA容器中に用意し、前記一体化品を浸漬し、密栓した後、85℃のオーブン中に24時間保持した。オーブンからPFA容器を取り出し、一体化品を水中から取り出した。基板からフレームごとペリクル膜を容易に剥離することができ、のびやむらのない重合体Aからなる膜厚約1μmの均一な自立膜からなるペリクル膜がついたペリクルを得た。本ペリクルをそのまま90℃で真空乾燥を行いペリクルAを得た。
一方、上記重合体Aのペリクルをそのまま真空乾燥せず、半導体用グレードのメタノール中に浸漬して、5分間左右上下に揺動し、膜面に付着した不純物や水蒸気を溶出させた。その後、90℃で真空乾燥を行い、ペリクルBを得た。
【0057】
上記のようにして得たペリクルAおよびBの膜の表面をX線光電子分光分析装置をもちいて分析したところ、メタノールにて洗浄処理をしなかったペリクルAでは剥離工程前の膜組成と比較して炭素量が多く有機不純物の付着が示唆された。一方メタノールにて洗浄処理したペリクルBについては、剥離工程前の膜組成と同等であり、不純物などの付着がないことがわかった。
表1にX線光電子分光分析装置による分析結果を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
ペリクルAおよびBを用いて光透過率を測定したところ、ペリクルAについては157nmでの光透過率が約94%であり、157nm〜200nmの範囲内で95%未満の透過率範囲があった。一方、ペリクルBは157nmの波長での光透過率は98%以上でありかつ、波長157nm〜200nmの範囲でも95%以上であった。
図1にペリクルA及びペリクルBの光透過率の測定結果を示す。
【0060】
(例3)
剥離のために超純水に浸漬する温度を65℃にする以外は例2と同じ方法でペリクルの製造を試みたが、基板からペリクル膜をはがすことができなかった。
【0061】
【発明の効果】
本発明を用いて製造したペリクルは波長100〜200nm(特に157nm)の短波長領域において光透過率が高く、今後のより微細な加工に使用される短波長レーザー光に対して高い耐久性を示す。また、本発明の方法により、良好な歩留まりでペリクルが得られるとともに、ペリクル表面の汚染を極力抑えることができる。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】ペリクルA及びペリクルBの透過率の測定結果を示すグラフである。
Claims (5)
- 下記含フッ素ポリマー(A)からなるペリクル膜、フレームおよび該ペリクル膜と該フレームとを接着する接着剤からなるペリクルの製造方法において、該ペリクル膜を基板上に形成する工程、基板から該ペリクル膜を剥離する工程、および該剥離工程の前に、該ペリクル膜が形成された基板を(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度−40)℃から(ペリクル膜の含フッ素ポリマー(A)のガラス転移温度−10)℃の超純水中に浸漬する工程を有することを特徴とするペリクルの製造方法。
含フッ素ポリマー(A):炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマーであって、主鎖の炭素原子として1個または2個の水素原子が結合した炭素原子と水素原子が結合せずかつフッ素原子または含フッ素有機基が結合した炭素原子とを含む含フッ素ポリマー。 - 前記ペリクル膜とフレームとを接着する接着剤が、含フッ素ポリマー(A)を含むものである請求項1に記載のペリクルの製造方法。
- 前記ペリクル膜の剥離工程の後に、該ペリクル膜の表面をアルキルアルコールを主成分とする溶媒で洗浄する工程をさらに有する請求項1または2に記載のペリクルの製造方法。
- 請求項1に記載の基板が、シリコン基板または石英基板である請求項1〜3のいずれかに記載のペリクルの製造方法。
- ペリクル膜の膜厚1μmにおける光透過率が、157〜200nmの範囲の光で95%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のペリクルの製造方法。
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