JP2004224712A - ジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、中性付近の新規触媒を用いてジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを反応させる事により、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を抑制し、短時間に高選択率で高品質のジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルを製造可能な工業的に好ましい製法を提供する事である。
【解決手段】本発明の課題は、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法によって解決される。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の課題は、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法によって解決される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、感光性物質、ポリマー原料、医農薬等の原料として有用な、ジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジヒドロキシベンゼンのモノヒドロキシエチルエーテルの製法としては、例えば、p−イソプロペニルフェノールをエチレンカーボネート及びフッ化カリウム二水和物とN,N−ジメチルホルムアミド中で反応させて2−(4−(1−メチルエテニル)フェノキシ)エタノールを合成した後、メタノール中、硫酸存在下、過酸化水素水を用いて4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールを得る方法(特許文献1)、レゾルシンのモノナトリウム塩に、エチレンクロルヒドリンを反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献1)、レゾルシンとエチレンクロルヒドリンと苛性カリとを反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(特許文献2)、カテコールのモノナトリウム塩とエチレンクロロヒドリンとを反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献2)、カテコールとエチレンオキサイドを鉄触媒存在下で反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(特許文献3)が知られている。
【0003】
また、エチレンカーボネートを用いる製法として、カテコールとエチレンカーボネートとをヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムの存在下、160℃で加熱する2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献3)、2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エタノールの合成中間体として、カテコールとエチレンカーボネートと臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムとを180℃で加熱する2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献4)、更に、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートとを、脱炭酸触媒として炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、または水酸化アルカリ土類金属存在下に反応させる方法が知られている(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−51142号公報
【特許文献2】
米国特許第2015115号明細書
【特許文献3】
独国特許発明第1493741号明細書
【特許文献4】
特公平7−96514号公報
【非特許文献1】
J.Am.Chem.Soc.,54, 1932, p.1195−1196
【非特許文献2】
Ann. Chem.,162, 1937, p.528
【非特許文献3】
Bull. Chem. Soc. Jpn.,61, 1988, p.2047−2054
【非特許文献4】
J. Med. Chem. 40, 1997, p.2674−2687
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
p−イソプロペニルフェノールを出発原料とする合成法は、中間体として2−(4−(1−メチルエテニル)フェノキシ)エタノールを経由するため、目的物を得るための工程数が多く煩雑である。
【0006】
エチルクロルヒドリンを用いる方法は、エチルクロルヒドリンの毒性が高く、取扱いに注意を要する。また、溶媒を使用するため、溶媒との分離工程が必要である。
【0007】
エチレンオキシドを用いる方法は、エチレンオキシドが引火性、爆発性を有するため、取扱いに注意が必要であり、安全対策を立てた製造装置が必要である。
【0008】
上記毒性、安全性の問題を解決する合成法として、エチレンカーボネートを用いる合成法が種々知られている。
この内、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムや臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩を用いる方法は、反応により臭素やヨウ素が生成して製品に混合するため着色がおこり、さらに製品にアミン臭がつく、また加熱により触媒が分解するために、触媒のリサイクルが出来ない等の問題もある。
【0009】
その他、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートとを、脱炭酸触媒として炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、または水酸化アルカリ土類金属存在下に反応させる方法が知られている。
しかし、ここで用いられる炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属及び水酸化アルカリ土類金属は、アルカリ性の塩であるため、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を生じる。このため、該廃液の中和処理を行う必要が有り、煩雑である。
【0010】
本発明の課題は、中性付近の新規触媒を用いてジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを反応させる事により、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を抑制し、短時間に高選択率で高品質のジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルを製造可能な工業的に好ましい製法を提供する事である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの合成法として、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法を見出した。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートとを、ハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ土類金属塩、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法である。
【0013】
本発明で用いられるジヒドロキシベンゼンとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンが挙げられる。
【0014】
エチレンカーボネートの使用量は、ジヒドロキシベンゼン1モルに対して、0.1〜1.5モル、好ましくは0.3〜1.3モルの範囲である。
【0015】
本発明で用いられる触媒としては、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0016】
ハロゲン化アルカリ金属塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化ルビジウム、塩化ルビジウム、臭化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウムが挙げられる。
【0017】
ハロゲン化アルカリ土類金属塩としては、例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウムが挙げられる。
【0018】
カルボン酸のアルカリ金属塩は、炭素原子数1〜4の脂肪族カルボン酸、又は芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩であり、例えば、酢酸リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、プロピオン酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、酒石酸カリウム、乳酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ルビジウム、シュウ酸セシウム、安息香酸カリウムが挙げられる。
【0019】
カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、炭素原子数1〜4の脂肪族カルボン酸、又は芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩であり、例えば酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ストロンチウム、シュウ酸バリウムが挙げられる。
【0020】
リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、例えば、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどのリン酸水素アルカリ金属、ビス(リン酸二水素)カルシウムが挙げられる。
【0021】
なお、上記に例示した触媒は、その塩の水和物も含み、更に水や有機溶媒に溶解した形でも供給することができる。
【0022】
上記の触媒としては、リン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ金属が好ましい。ここでアルカリ金属としてはナトリウム又はカリウムが好ましい。更に好ましい触媒としては、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、蓚酸カリウム、蓚酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。
【0023】
触媒の使用量は、ジヒドロキシベンゼン1モルに対して0.005〜10モル、好ましくは0.05〜5モルの範囲である。
【0024】
反応温度は100〜250℃の範囲が好ましく、更に140〜200℃の範囲がより好ましい。
反応圧力は特に制限されないが、通常、常圧で実施される。
【0025】
本反応は、溶媒を用いることもできるが、通常、無溶媒で行われる。
【0026】
使用可能な溶媒としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ドデカン、シクロドデカン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ジクロルエタン、トリクロルエチレンのような塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族又は脂環式の炭化水素類、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのようなニトリル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのようなアルコール類、ジエチルケトン、シクロドデカノンなどのようなケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、ジメチルスルフォキシドなどのスルホキシ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物、スルフォラン、水、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0027】
また、本反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス気流下、或はこれらガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0028】
合成されたジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルは、反応終了後、蒸留等の手段により精製することができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
原料ならびに生成物の定量分析は液体クロマトフラフィーで行った。
なお、本実施例の記載において用いる化合物の略称は次の通りである。
CL=カテコール、
EC=エチレンカーボネート、
CHE=カテコールのモノ(2−ヒドロキシエチル)エーテル、
CDE=カテコールのジ(2−ヒドロキシエチル)エーテル
【0030】
【数1】
【0031】
【数2】
【0032】
実施例1
1リットルのガラス製4つ口フラスコに、CL500.0g(4.54mol)、EC399.9g(4.54mol)、シュウ酸カリウム一水和物4.18g(0.023mol)を仕込み、反応器内を窒素雰囲気にした。この溶液を160℃に昇温し、攪拌しながら約3.5時間反応を行った。発生する炭酸ガスは反応系外に排出した。反応終了後、液体クロマトフラフィーで反応液(703.2g)の分析を行った結果、反応液の組成はCL12.3wt%、EC0.21wt%、CHE67.5wt%、CDE14.3wt%であり、CL転化率82.7%、CHE選択率(CL基準)82.0%、CHE収率(CL基準)67.8%であった。
規則充填物(スルーザーパッキング)の入った蒸留塔に、上記反応液の入った4つ口フラスコを装着し、CHEの蒸留精製を行い、CL76.1gを回収し、467.9gのCHE(3mmHg、139〜141℃)を得た。CHEの純度は99.4%であり、蒸留精製後のCHE選択率(CL基準)は78.9%、CHE収率(CL基準)は66.9%であった。なお蒸留後の残渣は72.7gあり、その中に8.2gのCHE、54.8gのCDEが含有されていた。
【0033】
実施例2
実施例1のシュウ酸カリウム一水和物の代わりに実施例1で得られた蒸留後の残渣72.7gを使用した以外は、実施例1と同様な操作を行った。
反応液(758.9g)の分析を行った結果、反応液の組成はCL10.7wt%、EC0wt%、HEP67.5wt%、DEB20.5wt%であり、CL転化率83.7%、CHE選択率(CL基準)86.1%、CHE収率(CL基準)72.0%であった。次にこの反応液の蒸留精製を行った結果、CL74.4gを回収し、470.7gのCHE(3mmHg、139〜141℃)を得た。CHEの純度は99.0%であり、蒸留精製後のCHE選択率(CL基準)は79.0%、CHE収率(CL基準)は67.2%であった。
【0034】
実施例3
実施例1において、シュウ酸カリウム一水和物の代わりに、リン酸水素二カリウム 3.95g(0.023mol)を使用し、反応温度を170℃とした以外は、同様な操作を行った。
【0035】
実施例4
実施例1において、シュウ酸カリウム一水和物の代わりに、酢酸カリウム2.23g(0.023mol)を使用し、反応温度を180℃にした以外は、同様な操作を行った。
【0036】
実施例5
実施例1において、ECの量を279.9gに変更し、シュウ酸カリウム一水和物の代わりに、塩化ナトリウム1.34g(0.023mol)を使用し、反応温度180℃とした以外は同様な操作を行った。
【0037】
実施例6
実施例1において、ECの量を200.1gに変更し、反応温度を170℃とした以外は同様な操作を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明により、ジヒドロキシベンゼンのモノヒドロキシエチル化を、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を生じる事無く、短時間に高選択率で効率良く行うことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料、感光性物質、ポリマー原料、医農薬等の原料として有用な、ジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ジヒドロキシベンゼンのモノヒドロキシエチルエーテルの製法としては、例えば、p−イソプロペニルフェノールをエチレンカーボネート及びフッ化カリウム二水和物とN,N−ジメチルホルムアミド中で反応させて2−(4−(1−メチルエテニル)フェノキシ)エタノールを合成した後、メタノール中、硫酸存在下、過酸化水素水を用いて4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールを得る方法(特許文献1)、レゾルシンのモノナトリウム塩に、エチレンクロルヒドリンを反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献1)、レゾルシンとエチレンクロルヒドリンと苛性カリとを反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(特許文献2)、カテコールのモノナトリウム塩とエチレンクロロヒドリンとを反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献2)、カテコールとエチレンオキサイドを鉄触媒存在下で反応させる2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(特許文献3)が知られている。
【0003】
また、エチレンカーボネートを用いる製法として、カテコールとエチレンカーボネートとをヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムの存在下、160℃で加熱する2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献3)、2−[2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)フェノキシ]エタノールの合成中間体として、カテコールとエチレンカーボネートと臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムとを180℃で加熱する2−(2−ヒドロキシエトキシ)フェノールの製法(非特許文献4)、更に、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートとを、脱炭酸触媒として炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、または水酸化アルカリ土類金属存在下に反応させる方法が知られている(特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭60−51142号公報
【特許文献2】
米国特許第2015115号明細書
【特許文献3】
独国特許発明第1493741号明細書
【特許文献4】
特公平7−96514号公報
【非特許文献1】
J.Am.Chem.Soc.,54, 1932, p.1195−1196
【非特許文献2】
Ann. Chem.,162, 1937, p.528
【非特許文献3】
Bull. Chem. Soc. Jpn.,61, 1988, p.2047−2054
【非特許文献4】
J. Med. Chem. 40, 1997, p.2674−2687
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
p−イソプロペニルフェノールを出発原料とする合成法は、中間体として2−(4−(1−メチルエテニル)フェノキシ)エタノールを経由するため、目的物を得るための工程数が多く煩雑である。
【0006】
エチルクロルヒドリンを用いる方法は、エチルクロルヒドリンの毒性が高く、取扱いに注意を要する。また、溶媒を使用するため、溶媒との分離工程が必要である。
【0007】
エチレンオキシドを用いる方法は、エチレンオキシドが引火性、爆発性を有するため、取扱いに注意が必要であり、安全対策を立てた製造装置が必要である。
【0008】
上記毒性、安全性の問題を解決する合成法として、エチレンカーボネートを用いる合成法が種々知られている。
この内、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムや臭化テトラ−n−ブチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩を用いる方法は、反応により臭素やヨウ素が生成して製品に混合するため着色がおこり、さらに製品にアミン臭がつく、また加熱により触媒が分解するために、触媒のリサイクルが出来ない等の問題もある。
【0009】
その他、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートとを、脱炭酸触媒として炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、または水酸化アルカリ土類金属存在下に反応させる方法が知られている。
しかし、ここで用いられる炭酸アルカリ金属、水酸化アルカリ金属及び水酸化アルカリ土類金属は、アルカリ性の塩であるため、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を生じる。このため、該廃液の中和処理を行う必要が有り、煩雑である。
【0010】
本発明の課題は、中性付近の新規触媒を用いてジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを反応させる事により、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を抑制し、短時間に高選択率で高品質のジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルを製造可能な工業的に好ましい製法を提供する事である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの合成法として、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法を見出した。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートとを、ハロゲン化アルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ土類金属塩、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法である。
【0013】
本発明で用いられるジヒドロキシベンゼンとしては、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンが挙げられる。
【0014】
エチレンカーボネートの使用量は、ジヒドロキシベンゼン1モルに対して、0.1〜1.5モル、好ましくは0.3〜1.3モルの範囲である。
【0015】
本発明で用いられる触媒としては、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0016】
ハロゲン化アルカリ金属塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化ルビジウム、塩化ルビジウム、臭化ルビジウム、ヨウ化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウムが挙げられる。
【0017】
ハロゲン化アルカリ土類金属塩としては、例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウムが挙げられる。
【0018】
カルボン酸のアルカリ金属塩は、炭素原子数1〜4の脂肪族カルボン酸、又は芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩であり、例えば、酢酸リチウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、プロピオン酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、酒石酸カリウム、乳酸ナトリウム、シュウ酸リチウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ルビジウム、シュウ酸セシウム、安息香酸カリウムが挙げられる。
【0019】
カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、炭素原子数1〜4の脂肪族カルボン酸、又は芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩であり、例えば酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ストロンチウム、シュウ酸バリウムが挙げられる。
【0020】
リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、例えば、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどのリン酸水素アルカリ金属、ビス(リン酸二水素)カルシウムが挙げられる。
【0021】
なお、上記に例示した触媒は、その塩の水和物も含み、更に水や有機溶媒に溶解した形でも供給することができる。
【0022】
上記の触媒としては、リン酸のアルカリ金属塩、カルボン酸のアルカリ金属塩、ハロゲン化アルカリ金属が好ましい。ここでアルカリ金属としてはナトリウム又はカリウムが好ましい。更に好ましい触媒としては、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、蓚酸カリウム、蓚酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムが挙げられる。
【0023】
触媒の使用量は、ジヒドロキシベンゼン1モルに対して0.005〜10モル、好ましくは0.05〜5モルの範囲である。
【0024】
反応温度は100〜250℃の範囲が好ましく、更に140〜200℃の範囲がより好ましい。
反応圧力は特に制限されないが、通常、常圧で実施される。
【0025】
本反応は、溶媒を用いることもできるが、通常、無溶媒で行われる。
【0026】
使用可能な溶媒としては、本反応に直接関与しないものであれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン、メチルナフタリン、石油エーテル、リグロイン、ドデカン、シクロドデカン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、ジクロルエタン、トリクロルエチレンのような塩素化された又はされていない芳香族、脂肪族又は脂環式の炭化水素類、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのようなエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのようなニトリル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのようなアルコール類、ジエチルケトン、シクロドデカノンなどのようなケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド化合物、ジメチルスルフォキシドなどのスルホキシ化合物、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの尿素化合物、スルフォラン、水、或は前記溶媒の混合物などを挙げることができる。
【0027】
また、本反応は、窒素、アルゴンなどの不活性ガス気流下、或はこれらガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0028】
合成されたジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルは、反応終了後、蒸留等の手段により精製することができる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
原料ならびに生成物の定量分析は液体クロマトフラフィーで行った。
なお、本実施例の記載において用いる化合物の略称は次の通りである。
CL=カテコール、
EC=エチレンカーボネート、
CHE=カテコールのモノ(2−ヒドロキシエチル)エーテル、
CDE=カテコールのジ(2−ヒドロキシエチル)エーテル
【0030】
【数1】
【0031】
【数2】
【0032】
実施例1
1リットルのガラス製4つ口フラスコに、CL500.0g(4.54mol)、EC399.9g(4.54mol)、シュウ酸カリウム一水和物4.18g(0.023mol)を仕込み、反応器内を窒素雰囲気にした。この溶液を160℃に昇温し、攪拌しながら約3.5時間反応を行った。発生する炭酸ガスは反応系外に排出した。反応終了後、液体クロマトフラフィーで反応液(703.2g)の分析を行った結果、反応液の組成はCL12.3wt%、EC0.21wt%、CHE67.5wt%、CDE14.3wt%であり、CL転化率82.7%、CHE選択率(CL基準)82.0%、CHE収率(CL基準)67.8%であった。
規則充填物(スルーザーパッキング)の入った蒸留塔に、上記反応液の入った4つ口フラスコを装着し、CHEの蒸留精製を行い、CL76.1gを回収し、467.9gのCHE(3mmHg、139〜141℃)を得た。CHEの純度は99.4%であり、蒸留精製後のCHE選択率(CL基準)は78.9%、CHE収率(CL基準)は66.9%であった。なお蒸留後の残渣は72.7gあり、その中に8.2gのCHE、54.8gのCDEが含有されていた。
【0033】
実施例2
実施例1のシュウ酸カリウム一水和物の代わりに実施例1で得られた蒸留後の残渣72.7gを使用した以外は、実施例1と同様な操作を行った。
反応液(758.9g)の分析を行った結果、反応液の組成はCL10.7wt%、EC0wt%、HEP67.5wt%、DEB20.5wt%であり、CL転化率83.7%、CHE選択率(CL基準)86.1%、CHE収率(CL基準)72.0%であった。次にこの反応液の蒸留精製を行った結果、CL74.4gを回収し、470.7gのCHE(3mmHg、139〜141℃)を得た。CHEの純度は99.0%であり、蒸留精製後のCHE選択率(CL基準)は79.0%、CHE収率(CL基準)は67.2%であった。
【0034】
実施例3
実施例1において、シュウ酸カリウム一水和物の代わりに、リン酸水素二カリウム 3.95g(0.023mol)を使用し、反応温度を170℃とした以外は、同様な操作を行った。
【0035】
実施例4
実施例1において、シュウ酸カリウム一水和物の代わりに、酢酸カリウム2.23g(0.023mol)を使用し、反応温度を180℃にした以外は、同様な操作を行った。
【0036】
実施例5
実施例1において、ECの量を279.9gに変更し、シュウ酸カリウム一水和物の代わりに、塩化ナトリウム1.34g(0.023mol)を使用し、反応温度180℃とした以外は同様な操作を行った。
【0037】
実施例6
実施例1において、ECの量を200.1gに変更し、反応温度を170℃とした以外は同様な操作を行った。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】
本発明により、ジヒドロキシベンゼンのモノヒドロキシエチル化を、反応後に環境保護の観点から望ましくないアルカリ性廃液を生じる事無く、短時間に高選択率で効率良く行うことができる。
Claims (3)
- ジヒドロキシベンゼンとエチレンカーボネートを、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から成る群より選択される少なくとも1種の触媒の存在下に反応させることを特徴とするジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法。
- 触媒が、リン酸水素アルカリ金属塩、炭素原子数1〜4の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩、又はハロゲン化アルカリ金属塩である請求項1記載のジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法。
- 触媒が、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、蓚酸カリウム、酢酸カリウム、蓚酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又は塩化カリウムである請求項1記載のジヒドロキシベンゼンモノ(ヒドロキシエチル)エーテルの製法。
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