JP2004203991A - 樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】スチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂を使用した場合でも、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することを可能とする樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品を提供する。
【解決手段】テトラヒドロフラン不溶解分を50〜95重量%含有する下記(a−1)成分、下記(a−2)成分、及び下記(a−3)成分を含む着色用組成物(A)と、スチレン系樹脂(b)を主成分とするベース樹脂組成物(B)と、から構成され、木目模様を発現できる樹脂組成物を提供する。
(a−1):(メタ)アクリレート系重合体
(a−2):芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリロニトリルとの共重合体
(a−3):着色剤
【選択図】 なし
【解決手段】テトラヒドロフラン不溶解分を50〜95重量%含有する下記(a−1)成分、下記(a−2)成分、及び下記(a−3)成分を含む着色用組成物(A)と、スチレン系樹脂(b)を主成分とするベース樹脂組成物(B)と、から構成され、木目模様を発現できる樹脂組成物を提供する。
(a−1):(メタ)アクリレート系重合体
(a−2):芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリロニトリルとの共重合体
(a−3):着色剤
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鮮明できれいな木目模様を有する成形品を得ることができる樹脂組成物及びその組成物を用いた樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅内装部材として木材を使用する代わりに樹脂製の材料が使用されている。このような樹脂としては、成形性、物性、コスト等の理由から主として塩化ビニル樹脂が使用されてきた。しかしながら、焼却時のダイオキシン発生等、環境面での問題がクローズアップされるに至り、塩化ビニル樹脂を代替えする樹脂材料の検討がなされている。
【0003】
かかる代替え材料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂や、アクリロニトニル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂などのスチレン系樹脂などが候補として挙げられる。これらの中でもスチレン系樹脂は、木材代替え材料として必要な成形加工性、線膨張係数、耐衝撃性などの点で優れており、比較的よく用いられてきた。
【0004】
ところで、住宅内装部材の用途によっては、その部材表面に木目模様を施す必要がある。このような場合には、一般に部材表面に木目模様を直接印刷する方法、予め木目模様を印刷したシートを貼着する方法などが採用されてきた。また、スチレン系樹脂を主材料とするベース材料樹脂(以下において「ベース樹脂」という。)に、所定成分の樹脂等と着色剤とを含む着色用組成物を少量混合して押出し成形や、射出成形により、成形と同時に木目模様の発現をはかろうとするものが特許文献1〜4に開示されている。
【特許文献1】
特開平11−310683
【特許文献2】
特開2001−139743
【特許文献3】
特開2001−220475
【特許文献4】
特開2002−128976
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、成形品の表面に印刷を施したり、シールを貼着したりする方法では、木目模様の高級感に欠けるという問題があった。また、成形と同時に木目模様を発現させる成形法においては、木目調や木質感を自由にコントロールすることが難しいという問題があった。すなわち、一般的にスチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂と、併用する着色用組成物との相溶性が良好過ぎるため、木目模様を発現すべき着色用組成物がベース樹脂に一様に溶融しすぎて、木目として視認されるべき色の濃淡が現れないという問題があった。
【0006】
一方、ベース樹脂に対して相溶性の悪い着色用組成物を使用した場合、着色用組成物が粒状のまま現れて成形品表面に所望の木目模様を発現させることができず、さらには成形品の強度が低下するという別の問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、スチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂を使用した場合でも、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することを可能とする樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ベース樹脂と着色用組成物との適度な相溶性を得るために、着色用組成物を構成する重合体が備える諸物性のうち、テトラヒドロフラン不溶解分に着目した。そして、そのテトラヒドロフラン不溶解分を適切な範囲にコントロールすることにより、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することが容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の観点にかかる発明によれば、テトラヒドロフラン不溶解分を50〜95重量%含有する下記(a−1)成分、下記(a−2)成分、及び下記(a−3)成分を含む着色用組成物(A)と、スチレン系樹脂(b)を主成分とするベース樹脂組成物(B)と、から構成され、木目模様を発現できる樹脂組成物が提供される。
(a−1):(メタ)アクリレート系重合体
(a−2):芳香族ビニル化合物とアクリロニトリルとの共重合体
(a−3):着色剤
【0010】
ここに前記「テトラヒドロフラン不溶解分」は、次のようにして求められる。すなわち、2gの重合体を120mlのテトラヒドロフラン(以下においてTHFと称することがある。)に室温で分散溶解した溶液を9000rpmで30分間遠心分離して沈殿物を得る。得られた沈殿物を再度120mlのTHFに分散溶解して、同条件下で遠心分離する。この操作をさらに2回繰り返し、最終的に得られた沈殿物を40℃で真空乾燥し、その重量を初期重量(2g)で除して求められる重量分率(%)である。
【0011】
上記の木目模様を発現できる樹脂組成物は、着色用組成物(A)1〜10重量部と、ベース樹脂組成物(B)100重量部と、から構成されることが好ましい。
【0012】
前記スチレン系樹脂(b)が、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、及びポリスチレン(PS樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第二の観点にかかる発明によれば、上記の樹脂組成物を成形してなる、木目模様を有する樹脂成形品が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の木目模様を発現できる樹脂組成物は、着色用組成物(A)と、ベース樹脂組成物(B)とから構成される。
【0015】
(1)着色用組成物(A)
着色用組成物(A)は、(a−1)成分、(a−2)成分、及び(a−3)成分を含む。以下に各(a−1)〜(a−3)成分について説明する。
【0016】
<(a−1)成分> (a−1)成分は、(メタ)アクリレート系重合体であって、該重合体はTHF不溶解分を50〜95重量%含有することが必須である。
【0017】
前記(メタ)アクリレート系重合体は、アクリレート系およびメタアクリレート系重合体を表し、(メタ)アクリル酸単量体および/またはその誘導体を(共)重合して得られる重合体を意味する。このような(メタ)アクリレート系重合体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの重合体および共重合体が挙げられる。前記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するエステル化合物、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。前記メタクリル酸エステルも同様に炭素数1〜8のアルキル基を有するエステル化合物、グリシジルメタアクリレートなどが挙げられる。
【0018】
また、前記(メタ)アクリレート系重合体は、(メタ)アクリル酸単量体および/またはその誘導体を、それらと共重合可能な他の単量体と共重合させて得られる共重合体であってもよい。前記共重合可能な他の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物;アクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどの不飽和ニトリル類;2−ヒドロキシエチルフマレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。
【0019】
(a−1)成分はこれらの重合体を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。(a−1)成分は、THF不溶解分を50〜95重量%含有することが必須であるが、さらに好ましくは60〜95重量%含有する。(a−1)成分のTHF不溶解分が50%未満では、着色用組成物(A)のベース樹脂組成物(B)に対する相溶性が良くなりすぎて、成形の際に木目が明瞭に発現しない。(a−1)成分のTHF不溶解分が95%を超えると、着色用組成物(A)のベース樹脂組成物(B)に対する相溶性が不足して、成形の際に着色用組成物(A)が粒状のまま現れてしまったり、成形品の強度が低下したりする。
【0020】
<(a−2)成分> (a−2)成分は、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリロニトリルとの共重合体であれば特に限定されるものではない。上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。(a−2)成分としては、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンと、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルとの共重合体を好ましく使用することができる。
【0021】
<(a−3)成分> (a−3)成分は着色剤である。着色剤としては染料および/または顔料を使用することができる。染料および/または顔料としては、樹脂やゴムの着色に用いられる公知の染料、有機顔料、無機顔料が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組合わせて使用することができる。
【0022】
染料としては、例えば、複素環系、アンスラキノン系、アゾ系、ペリノン系などの染料が挙げられる。
【0023】
また顔料として有機顔料および無機顔料を使用することができる。有機顔料として、例えばペリノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、パーマネントレッド、レーキレッド、ファーストイエロー、ジスアゾイエローなどのアゾ系、ニトロソ系、ニトロ系などの有機顔料が挙げられる。これらの中では、アゾ系やフタロシアニン系などを好ましく使用することができる。
【0024】
一方、無機顔料として、亜鉛華などの酸化亜鉛、チタンイエロー、チタン白などの酸化チタン系、群青系、コバルトブルー系、ベンガラなどの酸化鉄系、カーボンブラック系、硫化鉄、硫化カドミウムなどの硫化物系、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛などのクロム酸塩系、炭酸塩系、金属粉系などを使用することが可能である。これらの中では、酸化鉄系、カーボンブラック系、群青系などが好ましく使用できる。
【0025】
本発明において、着色用組成物(A)中における(a−1)成分の含有量は特に限定されるものではないが、20〜70重量部であることが好ましく、さらに好ましくは30〜60重量部である。該組成物(A)中における(a−1)成分の含有量を上記範囲に設定することにより、成形品表面に鮮明な木目模様を得ることができる。(a−1)成分の量が20重量部未満であると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しすぎて成形品表面に鮮明な木目が得られない。(a−1)成分の量が70重量部を越えると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しにくいため成形品表面の着色剤のコントラストが強すぎ、また木目模様になりにくいなどの問題が生じる。
【0026】
また、本発明において、着色用組成物(A)中における(a−2)成分の含有量は特に限定されるものではないが、80〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは70〜40重量部である。着色用組成物(A)中における(a−2)成分の含有量を上記範囲に設定することにより、成形品表面に鮮明な木目模様を得ることができるという利点が得られる。(a−2)成分の量が80重量部を越えると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しすぎて成形品表面に鮮明な木目が得られない。(a−2)成分の量が30重量部未満であると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しにくいため成形品表面の着色剤のコントラストが強すぎ、また木目模様になりにくいなどの問題が生じる。
【0027】
さらに、本発明において、着色用組成物(A)中における(a−3)成分の含有量は特に限定されるものではないが、3〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20重量部である。該組成物(A)中における(a−3)成分の含有量をこのような範囲に設定することによって、成形品に鮮明な木目模様を与えることが可能となる。
【0028】
ただし、以上の着色用組成物(A)中における(a−1)〜(a−3)成分の含有量に関する説明の前提として、(a−1)成分と(a−2)成分との合計量が100重量部である。
【0029】
なお、着色用組成物(A)は、1種単独で使用、あるいは2種以上を別々に調整して併用することもできる。2種以上を併用することにより、木目模様の色調を変化させたり、複雑な木目模様を得ることが可能である。
【0030】
(2)ベース樹脂組成物(B)
本発明において、ベース樹脂組成物(B)は、スチレン系樹脂(b)を主成分とする。
【0031】
<スチレン系樹脂(b)> 本発明におけるスチレン系樹脂(b)は特に限定するものではないが、スチレン,α−メチルスチレンまたはビニルトルエンの単独重合体、またはこれらの共重合体、またはこれらを50重量%以上含有した、これらと共重合可能な他の不飽和単量体との共重合体を使用することができる。代表的なものとしては、ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)、耐熱性AS樹脂(スチレン−N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体)等が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0032】
前記の共重合可能な不飽和単量体の例としては、エチレン、プロピレン等のオレフィン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル等の不飽和モノカルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;マレイン酸、フマール酸等の不飽和ジカルボン酸;これらのエステルおよびこれらの無水物;N−置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;更に塩化ビニリデン等のビニリデン化合物等を挙げることができ、これらの1種以上を合計50重量%以下で使用する。
【0033】
それらの中でも特に、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、及びポリスチレン(PS樹脂)等のスチレン系樹脂であることが好ましい。これらのスチレン系樹脂(b)をベース樹脂として使用することにより、成形加工性や寸法精度に優れ、着色も容易で耐水性が高い成形品が得られる。
【0034】
<滑剤(c)> 上記ベース樹脂組成物(B)には、滑剤(c)を適宜配合することができる。滑剤(c)としては、公知の滑剤を使用することができる。具体的には、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、エステル系滑剤、脂肪アルコール系滑剤、多価アルコール系滑剤、脂肪酸と多価アルコール部分エステル系滑剤、金属石鹸系滑剤及びこれらの複合系滑剤からなる群から選択される少なくとも1種以上の滑剤が用いられる。これらの滑剤の配合量はスチレン系樹脂(b)100重量部当たり1〜15重量部であり、好ましくは3〜10重量部である。滑剤(c)の含有量がスチレン系樹脂(b)100重量部当たり1重量部未満であると、成形時の溶融樹脂のすべりが悪く、例えば、押出機の押出トルクが上がり、安定した木目模様が得難くなる傾向がある。滑剤(c)の含有量が15重量部を超えると、十分な溶融状態が得られずに、成形時にサージングなどの問題を生じやすくなる。
【0035】
さらに上記ベース樹脂(B)には本発明の目的を害さない範囲で必要に応じて、セルロース系物質(d)、無機フィラー(e)、難燃剤(f)、高分子加工助剤(g)、発泡剤(h)、樹脂改質剤(i)等を配合することができる。
【0036】
<セルロース系物質(d)> セルロース系物質(d)としては、木粉、紙、パルプ、モミガラ、バガスなどの植物性物質、またはこれらの粉砕品が挙げられる。セルロース系物質(d)の形状としては、粉末や繊維状など、すべての形状が含まれる。このうち、木粉としては平均粒径30〜500μm、好ましくは50〜100μmの木粉が好ましい。木粉の含有量は、スチレン系樹脂(b)100重量部当たり5〜150重量部、好ましくは20〜120重量部、さらに好ましくは30〜100重量部である。
【0037】
<無機フィラー(e)> 無機フィラー(e)としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、ワラストナイト、ガラスのミルドファイバー、ロックフィラー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ガラスバルーン、セラミックバルーンなどを使用することができ、これらの中でも、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、チタン酸カリウムウィスカーなどを使用することが好ましい。これらの無機フィラーのうち、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、6〜60μmの繊維径と30μm以上の繊維長を有するものが好ましい。これらの無機フィラーは、1種単独で使用、あるいは2種以上を併用することができる。
【0038】
<難燃剤(f)> 難燃化剤(f)としては、例えば、樹脂等の難燃化に通常用いられるハロゲン化合物、及びアンチモン化合物等の無機系難燃剤を使用することが可能である。ハロゲン化合物としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAや臭素化エポキシ系、ハロゲン化ポリカーボネート等が挙げられる。無機系難燃剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの難燃剤の配合量は、前記スチレン系樹脂(b)100重量部に対して1〜35重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0039】
<高分子加工助剤(g)> 高分子加工助剤(g)としては、例えば、アルキルメタクリレート、芳香族ビニルとシアン化ビニルの共重合体等が挙げられる。これらの高分子加工助剤は、スチレン系樹脂(b)100重量部に対して通常0.1〜20重量部の範囲で配合される。
【0040】
<発泡剤(h)> 発泡成形品を得ようとする場合には、発泡剤(h)として、熱分解型発泡剤をスチレン系樹脂(b)に配合することができる。熱分解型発泡剤としては熱分解型有機発泡剤又は/及び熱分解型無機発泡剤が用いられる。前者の例としては、N´−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類等が挙げられる。また、後者の例としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。上記の有機の又は/及び無機の熱分解型発泡剤の群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。これら熱分解型発泡剤の含有量は、スチレン系樹脂(b)100重量部あたり0.1〜5重量部であり、好ましくは0.5〜3重量部である。熱分解型発泡剤の含有量がスチレン系樹脂(b)100重量部あたり0.1重量部未満であると、有効な発泡倍率が得られ難い。また熱分解型発泡剤の含有量がスチレン系樹脂(b)100重量部あたり5重量部を超えると、成形品表面が荒れたり、表面硬度が低下したりする傾向がある。
【0041】
<樹脂改質剤(i)> スチレン系樹脂組成物(b)の耐衝撃性や加工性などを向上させるために、公知の樹脂改質剤(i)を適宜配合することができる。そのような樹脂改質剤としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂、スチレン系熱可塑性エラスマー(SBS、SIS、SEBS、SEPSなど)が挙げられる。これらの使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0042】
なお、以上の説明においては、滑剤(c)、及びセルロース系物質(d)、無機フィラー(e)、難燃剤(f)、高分子加工助剤(g)、発泡剤(h)、樹脂改質剤(i)等の任意成分をベース樹脂組成物(B)に配合するものとして説明したが、これらを着色用組成物(A)に配合することも可能である。またさらに、前記に挙げた各成分に加えて、着色用組成物(A)またはベース樹脂組成物(B)には、公知の可塑剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、充填剤、カップリング剤などが適宜添加される。
【0043】
本発明において、以上のように構成された着色用組成物(A)と、ベース樹脂組成物(B)との配合比は特に限定されるものではないが、着色用組成物(A)1〜10重量部と、ベース樹脂組成物(B)100重量部とから構成されることが好ましい。着色用組成物(A)と、ベース樹脂組成物(B)との配合比を上記範囲に設定することにより、木目に近い模様を表現することができる。
【0044】
(3)着色用組成物(A)、及びベース樹脂組成物(B)の調製方法
着色用組成物(A)を調製する典型的な手順としては、(a−1)、(a−2)、及び(a−3)成分を一括してヘンシェルミキサー等の混合機に投入し、激しく攪拌混合しつつ80℃〜130℃に昇温する。上記温度に到達したら、混合物をクーリングミキサーに移して、50℃〜60℃に温度を下げる。取出された粉末状の混合物は、通常、ペレット化する。ペレット化の方法としては、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどが挙げられるが、通常、二軸押出機を用いて170℃〜190℃にて押し出してペレットを製造する方法が好ましい。
【0045】
ベース樹脂組成物(B)についてもスチレン系樹脂(b)、滑剤(c)、及び必要により、セルロース系物質(d)、無機フィラー(e)、難燃剤(f)、高分子加工助剤(g)、発泡剤(h)、樹脂改質剤(i)等の任意成分を混合して同様に行う。
【0046】
(4)成形方法
本発明にかかる樹脂組成物を用いて、木目模様を有する樹脂成形品を得るための成形方法としては、例えば、着色用組成物(A)、及びベース樹脂組成物(B)のペレットとをタンブラーなどの混合機で均一に混合し、次いで、この混合物を所望の形状に成形する。その成形方法は特に限定されないが、通常、射出成形法(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法など公知の方法が用いられる。これらの成形方法の中でも、押出成形法が好ましく採用され、通常の押出機、例えば、単軸、二軸、二軸異方向、二軸同方向押出機等を用いて、前記混合物が押出成形される。二軸押出機を用いて成形する場合は、着色用組成物(A)のペレットを予めベース樹脂組成物(B)に混合して押出機のホッパーに入れて成形する方法と、ベース樹脂組成物(B)のみを押出機のホッパーに入れて押出成形しつつ、着色用組成物(A)のペレットをベント孔から投入し、混入させて成形する方法とがある。
【0047】
かくして、得られる木目模様を有する樹脂成形品の形状は、一般に板状、シート状、角柱状、円柱状、異型などが挙げられる。本発明による木目模様を有する樹脂成形品は、自然かつ美麗な木目模様があり、木質感に富み、かつ機械的強度に優れるので、OA・家電、車輌・船舶、家具・建材、サニタリー機器、玩具・スポーツ用品、その他雑貨などの各分野で用途に応じて使用される。
【0048】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明のスチレン系樹脂組成物について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、部数および%は重量基準である。
【0049】
(1)着色用組成物(A)、及びベース樹脂組成物(B)の調製
表1に配合を示す着色用組成物A1〜A5、及びAA1〜AA3、並びに表2に配合を示すベース樹脂組成物B1〜B6について、各成分をヘンシェルミキサーにて混合し、温度が上昇して130℃になった時点で混合物をクーリングミキサーに移して混合し、50℃まで温度を下げた。得られた粉末状の混合物を、シリンダー径40mmの二軸押出機を用いて下記条件にてペレットにした。ベース樹脂組成物B4については、ベント孔から木粉に残る水分を揮発させた。
【0050】
なお、(a−1)成分のTHF不溶解分は、2gの試料を120mlのTHFに室温で分散溶解し、9000rpmで30分間遠心分離して得られる沈殿物を再度120mlのTHFに分散溶解し、同条件で遠心分離して、得られた沈殿物をさらに同一条件にてTHF分散溶解と遠心分離を2回繰り返し(遠心分離は合計4回行うことになる。)、最終的に得られた沈殿物の重量を測定し、その重量を初期重量(2g)で除して重量分率(%)として表したものである。
<ペレットの調製条件>
設定温度 :シリンダーC1=160℃、C2=170℃、C3=180℃:アダプター=180℃、ダイス=180℃
スクリュー:回転数20rpm
フィードスクリュー:回転数7rpm
ダイス:3mmφ×60穴
【表1】
【0051】
a−1成分
(アクリル系共重合体1)
n−ブチルアクリレート79.6重量部、ジビニルベンゼン0.4重量部、ソジウムドデシルサルフェート(界面活性剤)1.0重量部、過硫酸カリウム(触媒)0.1重量部を水150重量部に添加した。70℃で180分攪拌し乳化重合を行ない、コアのポリマーを作成した。次いでメチルメタクリレート20.0重量部を添加し70℃で180分攪拌しコアシェルポリマーを作成した。得られたコアシェルポリマーのラテックスを3%硫酸アルミニウム水溶液に添加して凝固し、固形分を分取して気流乾燥した。得られたアクリル系共重合体1のTHF不溶解分は77%であった。
(アクリル系共重合体2)
コアモノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート69.5重量部、ジビニルベンゼン0.5重量部、シェルモノマーとしてメチルメタクリレート29.0重量部、グリシジルメタクリレート1.0重量部を使用したこと以外は、上記のアクリル系共重合体1の調製と同様の条件で乳化重合と乾燥処理を行なった。得られたアクリル系共重合体2のTHF不溶解分は84%であった。
(アクリル系共重合体3)
コアモノマーとしてn−ブチルアクリレート39.8重量部、ジビニルベンゼン0.2重量部、シェルモノマーとしてアクリロニトリル14.0重量部、スチレン46.0重量部を使用したこと以外は、上記のアクリル系共重合体1と同様の条件で乳化重合と乾燥処理を行なった。得られたアクリル系共重合体3のTHF不溶解分は40%であった。
(アクリル系共重合体4)
メチルメタクリレート90.0重量部、グリシジルメタクリレート10.0重量部、ソジウムドデシルサルフェート1.0重量部、過硫酸カリウム0.1重量部を水150重量部に添加した。70℃で180分攪拌し乳化重合を行なった。得られたラテックスを噴霧乾燥してアクリル系共重合体4を調製した。この共重合体4のTHF不溶解分は85%であった。
【0052】
a−2成分
(スチレン系樹脂1):宇部サイコン社製のS700N(耐熱AS樹脂)
(スチレン系樹脂2):三菱レイヨン社製のAP−50(AS樹脂、重量平均分子量:173000、スチレン単位含有量:70%、アクリロニトリル単位含有量:30%)
【0053】
a−3成分
大日精化工業社製のディスコールK−6820(茶色顔料、ジスアゾイエロー)
【表2】
【0054】
b成分
(AS樹脂): 三菱レイヨン社製のAP−50(AS樹脂、重量平均分子量:173000、スチレン単位含有量:70%、アクリロニトリル単位含有量:30重量%)
(ABS樹脂): 三菱レイヨン社製のR−50(アクリロニトリル単位含有量14%、ブタジエン単位含有量40%、スチレン単位含有量46%)
(AAS樹脂): 宇部サイコン社製のA400N(アクリロニトリル単位含有量14%、ブチルアクリレート単位含有量40%、スチレン単位含有量46%)
(AES樹脂): 宇部サイコン社製のE500N(アクリロニトリル単位含有量12%、エチレンプロピレンゴム含有量50%、スチレン単位含有量38%)
(PS樹脂): エイアンドエムスチレン社製のHI4750
【0055】
c成分
(滑剤1): アライドケミカル社製のACPE6A(ポリエチレンワックス)
(滑剤2): 堺化学工業社製のSM−1000(ステアリン酸マグネシウム)
【0056】
d成分
(木粉): 島田商会社製のセルユント(平均粒径80μm)
【0057】
h成分
(発泡剤): 永和化成社製のビニホールAC#3(アゾジカルボンアミド)
【0058】
(2)樹脂組成物の押出
こうして得られたペレットを、表3(実施例1〜11)、及び表4(比較例1〜3)に示す比率で混合し、シリンダー径40mmの一軸押出機により下記条件にて押出成形した。
【0059】
<押出成形の条件>
スクリュー:L/D=24、圧縮比2.5、回転数20rpm
設定温度:シリンダーC1=140℃、C2=150℃、C3=155℃、C4=165℃:ヘッド170℃:ダイスD1=175℃、D2=175℃
ダイス:厚み2mm×幅40mm
ダイスランド長さ:10mm
【表3】
【表4】
【0060】
(3)評価
上記の各押出し成形品について目視により「木目柄鮮明性」及び「木目柄持続性」について評価した。各評価項目の評価基準は以下のとおりである。
【表5】
【0061】
各実施例、及び比較例に対する評価結果を表6、及び表7に示す。
【表6】
評価(実施例)
【表7】
評価(比較例)
【0062】
(4)結論
本発明にかかる実施例1〜11の各樹脂組成物は、「木目柄鮮明性」、及び「木目柄持続性」の各項目について、良好な評価結果を示した。
【0063】
これに対して、比較例1の樹脂組成物は、着色用組成物においてTHF不溶解分が本願発明の範囲より小さなアクリル系共重合体を使用したため、「木目柄鮮明性」、及び「木目柄持続性」に関して満足な評価結果を得ることができなかった。
【0064】
比較例2の樹脂組成物は、本発明で規定される(a−1)成分を配合しなかったため、また、比較例3の樹脂組成物は(a−2)成分を配合しなかったため、「木目柄鮮明性」、及び「木目柄持続性」に関して満足な評価結果を得ることができなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明により、スチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂組成物を使用した場合でも、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することを可能とする樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品を得ることが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、鮮明できれいな木目模様を有する成形品を得ることができる樹脂組成物及びその組成物を用いた樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、住宅内装部材として木材を使用する代わりに樹脂製の材料が使用されている。このような樹脂としては、成形性、物性、コスト等の理由から主として塩化ビニル樹脂が使用されてきた。しかしながら、焼却時のダイオキシン発生等、環境面での問題がクローズアップされるに至り、塩化ビニル樹脂を代替えする樹脂材料の検討がなされている。
【0003】
かかる代替え材料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂や、アクリロニトニル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂などのスチレン系樹脂などが候補として挙げられる。これらの中でもスチレン系樹脂は、木材代替え材料として必要な成形加工性、線膨張係数、耐衝撃性などの点で優れており、比較的よく用いられてきた。
【0004】
ところで、住宅内装部材の用途によっては、その部材表面に木目模様を施す必要がある。このような場合には、一般に部材表面に木目模様を直接印刷する方法、予め木目模様を印刷したシートを貼着する方法などが採用されてきた。また、スチレン系樹脂を主材料とするベース材料樹脂(以下において「ベース樹脂」という。)に、所定成分の樹脂等と着色剤とを含む着色用組成物を少量混合して押出し成形や、射出成形により、成形と同時に木目模様の発現をはかろうとするものが特許文献1〜4に開示されている。
【特許文献1】
特開平11−310683
【特許文献2】
特開2001−139743
【特許文献3】
特開2001−220475
【特許文献4】
特開2002−128976
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、成形品の表面に印刷を施したり、シールを貼着したりする方法では、木目模様の高級感に欠けるという問題があった。また、成形と同時に木目模様を発現させる成形法においては、木目調や木質感を自由にコントロールすることが難しいという問題があった。すなわち、一般的にスチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂と、併用する着色用組成物との相溶性が良好過ぎるため、木目模様を発現すべき着色用組成物がベース樹脂に一様に溶融しすぎて、木目として視認されるべき色の濃淡が現れないという問題があった。
【0006】
一方、ベース樹脂に対して相溶性の悪い着色用組成物を使用した場合、着色用組成物が粒状のまま現れて成形品表面に所望の木目模様を発現させることができず、さらには成形品の強度が低下するという別の問題もあった。
【0007】
そこで本発明は、スチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂を使用した場合でも、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することを可能とする樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ベース樹脂と着色用組成物との適度な相溶性を得るために、着色用組成物を構成する重合体が備える諸物性のうち、テトラヒドロフラン不溶解分に着目した。そして、そのテトラヒドロフラン不溶解分を適切な範囲にコントロールすることにより、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することが容易となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第一の観点にかかる発明によれば、テトラヒドロフラン不溶解分を50〜95重量%含有する下記(a−1)成分、下記(a−2)成分、及び下記(a−3)成分を含む着色用組成物(A)と、スチレン系樹脂(b)を主成分とするベース樹脂組成物(B)と、から構成され、木目模様を発現できる樹脂組成物が提供される。
(a−1):(メタ)アクリレート系重合体
(a−2):芳香族ビニル化合物とアクリロニトリルとの共重合体
(a−3):着色剤
【0010】
ここに前記「テトラヒドロフラン不溶解分」は、次のようにして求められる。すなわち、2gの重合体を120mlのテトラヒドロフラン(以下においてTHFと称することがある。)に室温で分散溶解した溶液を9000rpmで30分間遠心分離して沈殿物を得る。得られた沈殿物を再度120mlのTHFに分散溶解して、同条件下で遠心分離する。この操作をさらに2回繰り返し、最終的に得られた沈殿物を40℃で真空乾燥し、その重量を初期重量(2g)で除して求められる重量分率(%)である。
【0011】
上記の木目模様を発現できる樹脂組成物は、着色用組成物(A)1〜10重量部と、ベース樹脂組成物(B)100重量部と、から構成されることが好ましい。
【0012】
前記スチレン系樹脂(b)が、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、及びポリスチレン(PS樹脂)からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第二の観点にかかる発明によれば、上記の樹脂組成物を成形してなる、木目模様を有する樹脂成形品が提供される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の木目模様を発現できる樹脂組成物は、着色用組成物(A)と、ベース樹脂組成物(B)とから構成される。
【0015】
(1)着色用組成物(A)
着色用組成物(A)は、(a−1)成分、(a−2)成分、及び(a−3)成分を含む。以下に各(a−1)〜(a−3)成分について説明する。
【0016】
<(a−1)成分> (a−1)成分は、(メタ)アクリレート系重合体であって、該重合体はTHF不溶解分を50〜95重量%含有することが必須である。
【0017】
前記(メタ)アクリレート系重合体は、アクリレート系およびメタアクリレート系重合体を表し、(メタ)アクリル酸単量体および/またはその誘導体を(共)重合して得られる重合体を意味する。このような(メタ)アクリレート系重合体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの重合体および共重合体が挙げられる。前記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するエステル化合物、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。前記メタクリル酸エステルも同様に炭素数1〜8のアルキル基を有するエステル化合物、グリシジルメタアクリレートなどが挙げられる。
【0018】
また、前記(メタ)アクリレート系重合体は、(メタ)アクリル酸単量体および/またはその誘導体を、それらと共重合可能な他の単量体と共重合させて得られる共重合体であってもよい。前記共重合可能な他の単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物;アクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどの不飽和ニトリル類;2−ヒドロキシエチルフマレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸モノブチルなどが挙げられる。
【0019】
(a−1)成分はこれらの重合体を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。(a−1)成分は、THF不溶解分を50〜95重量%含有することが必須であるが、さらに好ましくは60〜95重量%含有する。(a−1)成分のTHF不溶解分が50%未満では、着色用組成物(A)のベース樹脂組成物(B)に対する相溶性が良くなりすぎて、成形の際に木目が明瞭に発現しない。(a−1)成分のTHF不溶解分が95%を超えると、着色用組成物(A)のベース樹脂組成物(B)に対する相溶性が不足して、成形の際に着色用組成物(A)が粒状のまま現れてしまったり、成形品の強度が低下したりする。
【0020】
<(a−2)成分> (a−2)成分は、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリロニトリルとの共重合体であれば特に限定されるものではない。上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロルスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。(a−2)成分としては、スチレンおよび/またはα−メチルスチレンと、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルとの共重合体を好ましく使用することができる。
【0021】
<(a−3)成分> (a−3)成分は着色剤である。着色剤としては染料および/または顔料を使用することができる。染料および/または顔料としては、樹脂やゴムの着色に用いられる公知の染料、有機顔料、無機顔料が挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上を組合わせて使用することができる。
【0022】
染料としては、例えば、複素環系、アンスラキノン系、アゾ系、ペリノン系などの染料が挙げられる。
【0023】
また顔料として有機顔料および無機顔料を使用することができる。有機顔料として、例えばペリノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、パーマネントレッド、レーキレッド、ファーストイエロー、ジスアゾイエローなどのアゾ系、ニトロソ系、ニトロ系などの有機顔料が挙げられる。これらの中では、アゾ系やフタロシアニン系などを好ましく使用することができる。
【0024】
一方、無機顔料として、亜鉛華などの酸化亜鉛、チタンイエロー、チタン白などの酸化チタン系、群青系、コバルトブルー系、ベンガラなどの酸化鉄系、カーボンブラック系、硫化鉄、硫化カドミウムなどの硫化物系、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛などのクロム酸塩系、炭酸塩系、金属粉系などを使用することが可能である。これらの中では、酸化鉄系、カーボンブラック系、群青系などが好ましく使用できる。
【0025】
本発明において、着色用組成物(A)中における(a−1)成分の含有量は特に限定されるものではないが、20〜70重量部であることが好ましく、さらに好ましくは30〜60重量部である。該組成物(A)中における(a−1)成分の含有量を上記範囲に設定することにより、成形品表面に鮮明な木目模様を得ることができる。(a−1)成分の量が20重量部未満であると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しすぎて成形品表面に鮮明な木目が得られない。(a−1)成分の量が70重量部を越えると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しにくいため成形品表面の着色剤のコントラストが強すぎ、また木目模様になりにくいなどの問題が生じる。
【0026】
また、本発明において、着色用組成物(A)中における(a−2)成分の含有量は特に限定されるものではないが、80〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは70〜40重量部である。着色用組成物(A)中における(a−2)成分の含有量を上記範囲に設定することにより、成形品表面に鮮明な木目模様を得ることができるという利点が得られる。(a−2)成分の量が80重量部を越えると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しすぎて成形品表面に鮮明な木目が得られない。(a−2)成分の量が30重量部未満であると、ベース樹脂組成物(B)に着色用組成物(A)が溶融しにくいため成形品表面の着色剤のコントラストが強すぎ、また木目模様になりにくいなどの問題が生じる。
【0027】
さらに、本発明において、着色用組成物(A)中における(a−3)成分の含有量は特に限定されるものではないが、3〜30重量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20重量部である。該組成物(A)中における(a−3)成分の含有量をこのような範囲に設定することによって、成形品に鮮明な木目模様を与えることが可能となる。
【0028】
ただし、以上の着色用組成物(A)中における(a−1)〜(a−3)成分の含有量に関する説明の前提として、(a−1)成分と(a−2)成分との合計量が100重量部である。
【0029】
なお、着色用組成物(A)は、1種単独で使用、あるいは2種以上を別々に調整して併用することもできる。2種以上を併用することにより、木目模様の色調を変化させたり、複雑な木目模様を得ることが可能である。
【0030】
(2)ベース樹脂組成物(B)
本発明において、ベース樹脂組成物(B)は、スチレン系樹脂(b)を主成分とする。
【0031】
<スチレン系樹脂(b)> 本発明におけるスチレン系樹脂(b)は特に限定するものではないが、スチレン,α−メチルスチレンまたはビニルトルエンの単独重合体、またはこれらの共重合体、またはこれらを50重量%以上含有した、これらと共重合可能な他の不飽和単量体との共重合体を使用することができる。代表的なものとしては、ポリスチレン、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)、耐熱性AS樹脂(スチレン−N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体)等が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0032】
前記の共重合可能な不飽和単量体の例としては、エチレン、プロピレン等のオレフィン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル等の不飽和モノカルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;マレイン酸、フマール酸等の不飽和ジカルボン酸;これらのエステルおよびこれらの無水物;N−置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル;更に塩化ビニリデン等のビニリデン化合物等を挙げることができ、これらの1種以上を合計50重量%以下で使用する。
【0033】
それらの中でも特に、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、及びポリスチレン(PS樹脂)等のスチレン系樹脂であることが好ましい。これらのスチレン系樹脂(b)をベース樹脂として使用することにより、成形加工性や寸法精度に優れ、着色も容易で耐水性が高い成形品が得られる。
【0034】
<滑剤(c)> 上記ベース樹脂組成物(B)には、滑剤(c)を適宜配合することができる。滑剤(c)としては、公知の滑剤を使用することができる。具体的には、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、エステル系滑剤、脂肪アルコール系滑剤、多価アルコール系滑剤、脂肪酸と多価アルコール部分エステル系滑剤、金属石鹸系滑剤及びこれらの複合系滑剤からなる群から選択される少なくとも1種以上の滑剤が用いられる。これらの滑剤の配合量はスチレン系樹脂(b)100重量部当たり1〜15重量部であり、好ましくは3〜10重量部である。滑剤(c)の含有量がスチレン系樹脂(b)100重量部当たり1重量部未満であると、成形時の溶融樹脂のすべりが悪く、例えば、押出機の押出トルクが上がり、安定した木目模様が得難くなる傾向がある。滑剤(c)の含有量が15重量部を超えると、十分な溶融状態が得られずに、成形時にサージングなどの問題を生じやすくなる。
【0035】
さらに上記ベース樹脂(B)には本発明の目的を害さない範囲で必要に応じて、セルロース系物質(d)、無機フィラー(e)、難燃剤(f)、高分子加工助剤(g)、発泡剤(h)、樹脂改質剤(i)等を配合することができる。
【0036】
<セルロース系物質(d)> セルロース系物質(d)としては、木粉、紙、パルプ、モミガラ、バガスなどの植物性物質、またはこれらの粉砕品が挙げられる。セルロース系物質(d)の形状としては、粉末や繊維状など、すべての形状が含まれる。このうち、木粉としては平均粒径30〜500μm、好ましくは50〜100μmの木粉が好ましい。木粉の含有量は、スチレン系樹脂(b)100重量部当たり5〜150重量部、好ましくは20〜120重量部、さらに好ましくは30〜100重量部である。
【0037】
<無機フィラー(e)> 無機フィラー(e)としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、ワラストナイト、ガラスのミルドファイバー、ロックフィラー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、黒鉛、二硫化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛ウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ガラスバルーン、セラミックバルーンなどを使用することができ、これらの中でも、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、チタン酸カリウムウィスカーなどを使用することが好ましい。これらの無機フィラーのうち、ガラス繊維、炭素繊維の形状としては、6〜60μmの繊維径と30μm以上の繊維長を有するものが好ましい。これらの無機フィラーは、1種単独で使用、あるいは2種以上を併用することができる。
【0038】
<難燃剤(f)> 難燃化剤(f)としては、例えば、樹脂等の難燃化に通常用いられるハロゲン化合物、及びアンチモン化合物等の無機系難燃剤を使用することが可能である。ハロゲン化合物としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAや臭素化エポキシ系、ハロゲン化ポリカーボネート等が挙げられる。無機系難燃剤としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ピロアンチモン酸ソーダ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの難燃剤の配合量は、前記スチレン系樹脂(b)100重量部に対して1〜35重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0039】
<高分子加工助剤(g)> 高分子加工助剤(g)としては、例えば、アルキルメタクリレート、芳香族ビニルとシアン化ビニルの共重合体等が挙げられる。これらの高分子加工助剤は、スチレン系樹脂(b)100重量部に対して通常0.1〜20重量部の範囲で配合される。
【0040】
<発泡剤(h)> 発泡成形品を得ようとする場合には、発泡剤(h)として、熱分解型発泡剤をスチレン系樹脂(b)に配合することができる。熱分解型発泡剤としては熱分解型有機発泡剤又は/及び熱分解型無機発泡剤が用いられる。前者の例としては、N´−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド類等が挙げられる。また、後者の例としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。上記の有機の又は/及び無機の熱分解型発泡剤の群から選択される1種または2種以上を用いることが好ましい。これら熱分解型発泡剤の含有量は、スチレン系樹脂(b)100重量部あたり0.1〜5重量部であり、好ましくは0.5〜3重量部である。熱分解型発泡剤の含有量がスチレン系樹脂(b)100重量部あたり0.1重量部未満であると、有効な発泡倍率が得られ難い。また熱分解型発泡剤の含有量がスチレン系樹脂(b)100重量部あたり5重量部を超えると、成形品表面が荒れたり、表面硬度が低下したりする傾向がある。
【0041】
<樹脂改質剤(i)> スチレン系樹脂組成物(b)の耐衝撃性や加工性などを向上させるために、公知の樹脂改質剤(i)を適宜配合することができる。そのような樹脂改質剤としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂、スチレン系熱可塑性エラスマー(SBS、SIS、SEBS、SEPSなど)が挙げられる。これらの使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0042】
なお、以上の説明においては、滑剤(c)、及びセルロース系物質(d)、無機フィラー(e)、難燃剤(f)、高分子加工助剤(g)、発泡剤(h)、樹脂改質剤(i)等の任意成分をベース樹脂組成物(B)に配合するものとして説明したが、これらを着色用組成物(A)に配合することも可能である。またさらに、前記に挙げた各成分に加えて、着色用組成物(A)またはベース樹脂組成物(B)には、公知の可塑剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、充填剤、カップリング剤などが適宜添加される。
【0043】
本発明において、以上のように構成された着色用組成物(A)と、ベース樹脂組成物(B)との配合比は特に限定されるものではないが、着色用組成物(A)1〜10重量部と、ベース樹脂組成物(B)100重量部とから構成されることが好ましい。着色用組成物(A)と、ベース樹脂組成物(B)との配合比を上記範囲に設定することにより、木目に近い模様を表現することができる。
【0044】
(3)着色用組成物(A)、及びベース樹脂組成物(B)の調製方法
着色用組成物(A)を調製する典型的な手順としては、(a−1)、(a−2)、及び(a−3)成分を一括してヘンシェルミキサー等の混合機に投入し、激しく攪拌混合しつつ80℃〜130℃に昇温する。上記温度に到達したら、混合物をクーリングミキサーに移して、50℃〜60℃に温度を下げる。取出された粉末状の混合物は、通常、ペレット化する。ペレット化の方法としては、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどが挙げられるが、通常、二軸押出機を用いて170℃〜190℃にて押し出してペレットを製造する方法が好ましい。
【0045】
ベース樹脂組成物(B)についてもスチレン系樹脂(b)、滑剤(c)、及び必要により、セルロース系物質(d)、無機フィラー(e)、難燃剤(f)、高分子加工助剤(g)、発泡剤(h)、樹脂改質剤(i)等の任意成分を混合して同様に行う。
【0046】
(4)成形方法
本発明にかかる樹脂組成物を用いて、木目模様を有する樹脂成形品を得るための成形方法としては、例えば、着色用組成物(A)、及びベース樹脂組成物(B)のペレットとをタンブラーなどの混合機で均一に混合し、次いで、この混合物を所望の形状に成形する。その成形方法は特に限定されないが、通常、射出成形法(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法など公知の方法が用いられる。これらの成形方法の中でも、押出成形法が好ましく採用され、通常の押出機、例えば、単軸、二軸、二軸異方向、二軸同方向押出機等を用いて、前記混合物が押出成形される。二軸押出機を用いて成形する場合は、着色用組成物(A)のペレットを予めベース樹脂組成物(B)に混合して押出機のホッパーに入れて成形する方法と、ベース樹脂組成物(B)のみを押出機のホッパーに入れて押出成形しつつ、着色用組成物(A)のペレットをベント孔から投入し、混入させて成形する方法とがある。
【0047】
かくして、得られる木目模様を有する樹脂成形品の形状は、一般に板状、シート状、角柱状、円柱状、異型などが挙げられる。本発明による木目模様を有する樹脂成形品は、自然かつ美麗な木目模様があり、木質感に富み、かつ機械的強度に優れるので、OA・家電、車輌・船舶、家具・建材、サニタリー機器、玩具・スポーツ用品、その他雑貨などの各分野で用途に応じて使用される。
【0048】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて、本発明のスチレン系樹脂組成物について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、部数および%は重量基準である。
【0049】
(1)着色用組成物(A)、及びベース樹脂組成物(B)の調製
表1に配合を示す着色用組成物A1〜A5、及びAA1〜AA3、並びに表2に配合を示すベース樹脂組成物B1〜B6について、各成分をヘンシェルミキサーにて混合し、温度が上昇して130℃になった時点で混合物をクーリングミキサーに移して混合し、50℃まで温度を下げた。得られた粉末状の混合物を、シリンダー径40mmの二軸押出機を用いて下記条件にてペレットにした。ベース樹脂組成物B4については、ベント孔から木粉に残る水分を揮発させた。
【0050】
なお、(a−1)成分のTHF不溶解分は、2gの試料を120mlのTHFに室温で分散溶解し、9000rpmで30分間遠心分離して得られる沈殿物を再度120mlのTHFに分散溶解し、同条件で遠心分離して、得られた沈殿物をさらに同一条件にてTHF分散溶解と遠心分離を2回繰り返し(遠心分離は合計4回行うことになる。)、最終的に得られた沈殿物の重量を測定し、その重量を初期重量(2g)で除して重量分率(%)として表したものである。
<ペレットの調製条件>
設定温度 :シリンダーC1=160℃、C2=170℃、C3=180℃:アダプター=180℃、ダイス=180℃
スクリュー:回転数20rpm
フィードスクリュー:回転数7rpm
ダイス:3mmφ×60穴
【表1】
【0051】
a−1成分
(アクリル系共重合体1)
n−ブチルアクリレート79.6重量部、ジビニルベンゼン0.4重量部、ソジウムドデシルサルフェート(界面活性剤)1.0重量部、過硫酸カリウム(触媒)0.1重量部を水150重量部に添加した。70℃で180分攪拌し乳化重合を行ない、コアのポリマーを作成した。次いでメチルメタクリレート20.0重量部を添加し70℃で180分攪拌しコアシェルポリマーを作成した。得られたコアシェルポリマーのラテックスを3%硫酸アルミニウム水溶液に添加して凝固し、固形分を分取して気流乾燥した。得られたアクリル系共重合体1のTHF不溶解分は77%であった。
(アクリル系共重合体2)
コアモノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート69.5重量部、ジビニルベンゼン0.5重量部、シェルモノマーとしてメチルメタクリレート29.0重量部、グリシジルメタクリレート1.0重量部を使用したこと以外は、上記のアクリル系共重合体1の調製と同様の条件で乳化重合と乾燥処理を行なった。得られたアクリル系共重合体2のTHF不溶解分は84%であった。
(アクリル系共重合体3)
コアモノマーとしてn−ブチルアクリレート39.8重量部、ジビニルベンゼン0.2重量部、シェルモノマーとしてアクリロニトリル14.0重量部、スチレン46.0重量部を使用したこと以外は、上記のアクリル系共重合体1と同様の条件で乳化重合と乾燥処理を行なった。得られたアクリル系共重合体3のTHF不溶解分は40%であった。
(アクリル系共重合体4)
メチルメタクリレート90.0重量部、グリシジルメタクリレート10.0重量部、ソジウムドデシルサルフェート1.0重量部、過硫酸カリウム0.1重量部を水150重量部に添加した。70℃で180分攪拌し乳化重合を行なった。得られたラテックスを噴霧乾燥してアクリル系共重合体4を調製した。この共重合体4のTHF不溶解分は85%であった。
【0052】
a−2成分
(スチレン系樹脂1):宇部サイコン社製のS700N(耐熱AS樹脂)
(スチレン系樹脂2):三菱レイヨン社製のAP−50(AS樹脂、重量平均分子量:173000、スチレン単位含有量:70%、アクリロニトリル単位含有量:30%)
【0053】
a−3成分
大日精化工業社製のディスコールK−6820(茶色顔料、ジスアゾイエロー)
【表2】
【0054】
b成分
(AS樹脂): 三菱レイヨン社製のAP−50(AS樹脂、重量平均分子量:173000、スチレン単位含有量:70%、アクリロニトリル単位含有量:30重量%)
(ABS樹脂): 三菱レイヨン社製のR−50(アクリロニトリル単位含有量14%、ブタジエン単位含有量40%、スチレン単位含有量46%)
(AAS樹脂): 宇部サイコン社製のA400N(アクリロニトリル単位含有量14%、ブチルアクリレート単位含有量40%、スチレン単位含有量46%)
(AES樹脂): 宇部サイコン社製のE500N(アクリロニトリル単位含有量12%、エチレンプロピレンゴム含有量50%、スチレン単位含有量38%)
(PS樹脂): エイアンドエムスチレン社製のHI4750
【0055】
c成分
(滑剤1): アライドケミカル社製のACPE6A(ポリエチレンワックス)
(滑剤2): 堺化学工業社製のSM−1000(ステアリン酸マグネシウム)
【0056】
d成分
(木粉): 島田商会社製のセルユント(平均粒径80μm)
【0057】
h成分
(発泡剤): 永和化成社製のビニホールAC#3(アゾジカルボンアミド)
【0058】
(2)樹脂組成物の押出
こうして得られたペレットを、表3(実施例1〜11)、及び表4(比較例1〜3)に示す比率で混合し、シリンダー径40mmの一軸押出機により下記条件にて押出成形した。
【0059】
<押出成形の条件>
スクリュー:L/D=24、圧縮比2.5、回転数20rpm
設定温度:シリンダーC1=140℃、C2=150℃、C3=155℃、C4=165℃:ヘッド170℃:ダイスD1=175℃、D2=175℃
ダイス:厚み2mm×幅40mm
ダイスランド長さ:10mm
【表3】
【表4】
【0060】
(3)評価
上記の各押出し成形品について目視により「木目柄鮮明性」及び「木目柄持続性」について評価した。各評価項目の評価基準は以下のとおりである。
【表5】
【0061】
各実施例、及び比較例に対する評価結果を表6、及び表7に示す。
【表6】
評価(実施例)
【表7】
評価(比較例)
【0062】
(4)結論
本発明にかかる実施例1〜11の各樹脂組成物は、「木目柄鮮明性」、及び「木目柄持続性」の各項目について、良好な評価結果を示した。
【0063】
これに対して、比較例1の樹脂組成物は、着色用組成物においてTHF不溶解分が本願発明の範囲より小さなアクリル系共重合体を使用したため、「木目柄鮮明性」、及び「木目柄持続性」に関して満足な評価結果を得ることができなかった。
【0064】
比較例2の樹脂組成物は、本発明で規定される(a−1)成分を配合しなかったため、また、比較例3の樹脂組成物は(a−2)成分を配合しなかったため、「木目柄鮮明性」、及び「木目柄持続性」に関して満足な評価結果を得ることができなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明により、スチレン系樹脂を主成分とするベース樹脂組成物を使用した場合でも、木材に似た明瞭な木目模様と木質感とを有する成形品を安定的に製造することを可能とする樹脂組成物および木目模様を有する樹脂成形品を得ることが可能となる。
Claims (4)
- テトラヒドロフラン不溶解分を50〜95重量%含有する下記(a−1)成分、下記(a−2)成分、及び下記(a−3)成分を含む着色用組成物(A)と、スチレン系樹脂(b)を主成分とするベース樹脂組成物(B)と、から構成され、木目模様を発現できる樹脂組成物。
(a−1):(メタ)アクリレート系重合体、
(a−2):芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリロニトリルとの共重合体
(a−3):着色剤 - 前記着色用組成物(A)1〜10重量部と、
前記ベース樹脂組成物(B)100重量部と、から構成される請求項1に記載の樹脂組成物。 - 前記スチレン系樹脂(b)が、
アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、
アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、
アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、及び
ポリスチレン(PS樹脂)
からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる、木目模様を有する樹脂成形品。
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JP2007169384A (ja) * | 2005-12-20 | 2007-07-05 | Techno Polymer Co Ltd | 木目調模様を発現する低蓄熱性樹脂組成物 |
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JP2010510381A (ja) * | 2006-11-21 | 2010-04-02 | アーケマ・インコーポレイテッド | 半透明および不透明なポリ乳酸用耐衝撃性改良剤 |
CN111925621A (zh) * | 2020-06-29 | 2020-11-13 | 上海金发科技发展有限公司 | 一种高光耐候仿石纹组合物及其制备方法 |
-
2002
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