JP2004190070A - 素地露出部の被覆方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】被覆金属材の素地露出部を容易に被覆することができ、かつ被覆膜への密着性及び耐食性に優れた皮膜を形成することのできる素地露出部の被覆方法を提供すること。
【解決手段】被覆金属材の素地露出部を、
(A)加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液、並びに
(B)有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア、及び有機塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してなるチタン系金属表面処理剤により被覆することを特徴とする素地露出部の被覆方法。
【選択図】 なし
【解決手段】被覆金属材の素地露出部を、
(A)加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液、並びに
(B)有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア、及び有機塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してなるチタン系金属表面処理剤により被覆することを特徴とする素地露出部の被覆方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被覆鋼板を加工又は切断した時にできる素地露出部、金属材を電着塗装した時にできるエアーポケット部、袋部、エッジ部等の素地露出部の被覆方法に関するものである。
【0002】
【従来技術及びその課題】
近年、プレコート鋼板及びフィルムラミネート鋼板が塗装ラインの合理化、生産性の向上、公害防止、作業環境改善等の諸問題を解決するために多く用いられるようになってきた。特に金属屋根材、家電製品の分野では多用され、自動車などの分野でも一部使用されている。しかしながら、これらプレコート鋼板及びフィルムラミネート鋼板は、切断された箇所(以下、端面という)、施工時に発生した被膜層の傷つき部又は厳しい加工が施された部分の皮膜の割れ部において素地金属が露出し、フクレや錆びを生じて被覆材としての機能を大きく損なうという問題があり、用途を広げる際の大きな障害となっている。
【0003】
また、自動車車体などに用いる電着塗装においては、エアーポケット部や袋部に皮膜が十分に形成されずに素地金属が露出したり、エッジ部が焼付後に素地金属が露出したりして被覆材の耐食性が低下するという問題がある。エッジ部は塗装膜を焼付けた際に、表面張力などにより膜が引っ張られてエッジ部の素地が露出してしまうものであり、エアーポケット部は、電着浴に浸漬された際、その部分に空気が残って塗り残しとなってしまうものであり、袋部は電流密度が回り込まないために付きまわり不足となり塗り残しとなってしまうものである。
【0004】
かかる問題を解決するために電着塗料の改良が色々と行なわれているが十分とはいえない(例えば、特許文献1など参照)。
【0005】
そこで人手をかけて特殊なシーラーをエッジ部に塗布することも行なわれており、ポリオールとポリイソシアネートからなる2液型ポリウレタン塗料をアミン蒸気若しくはアミン霧化物を硬化触媒として介在させた中で塗布し、急速に硬化させるという方法が開示されている(例えば、特許文献2など参照)。
【0006】
しかしながら、この方法では手間がかかるだけでなく、アミン蒸気を介在させるための特殊な装置を必要とする。
【0007】
また、自動車を製造する時の傷や塗装不良、自動車事故などで塗装金属板を補修する場合、不良部を研磨して素地金属を露出させた後、一般的には表面処理を行わずに直接塗料が塗装されるため、補修部の付着性や耐食性が低いという問題がある。作業環境上無害な表面処理剤が求められているが、今のところクロム等の有害物質を含有しないもので十分な性能のものは得られていない。
【0008】
本発明は、被覆金属材の素地露出部を容易に被覆することができ、かつ被覆膜への密着性及び耐食性に優れた皮膜を形成することのできる素地露出部の被覆方法を提供することである。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−173089号公報
【特許文献2】
特開平5−220446号公報
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を改善するために鋭意研究を重ねた結果、素地露出部に特定のチタン系金属表面処理剤による処理を行うことにより上記問題点を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、被覆金属材の素地露出部を、
(A)加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液、並びに
(B)有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア、及び有機塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してなるチタン系金属表面処理剤により被覆することを特徴とする素地露出部の被覆方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の被覆方法は、被覆金属材の素地露出部、特にプレコート鋼板、フィルムラミネート鋼板などの被覆鋼板を切断した時にできる端面部、被覆鋼板を加工した時にできる擦り傷や加工部のワレ、金属材を電着した時にできるエアーポケット部や袋部などの素地露出部、焼付け後に生じるエッジ部の素地露出部をチタン系金属表面処理剤を用いて被覆するものである。
【0013】
まず、本発明の素地露出部の被覆方法に使用するチタン系金属表面処理剤について、以下詳細に説明する。
【0014】
チタン系金属表面処理剤
チタン系金属表面処理剤は、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタン含有水性液(A)、及び無機リン酸系化合物、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、有機酸、アンモニア、有機塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含有するものである。
【0015】
チタン含有水性液(A)
本発明に用いられるチタン系金属表面処理剤の(A)成分である、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを混合して得られるチタン含有水性液としては、従来から公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0016】
上記加水分解性チタン化合物は、チタン原子に直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタン化合物において、チタン原子に結合する基の全てが加水分解性基であっても、又加水分解性基の1部が加水分解された水酸基になっていてもどちらでも構わない。
【0017】
上記加水分解性基としては、水分と反応することにより水酸基を生成するものであれば特に制限されないが、例えば、低級アルコキシル基やチタン原子と塩を形成する基等が挙げられる。チタン原子と塩を形成する基としては、例えば、ハロゲン原子(塩素等)、水素原子、硫酸イオン等が挙げられる。
【0018】
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタン化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン等が代表的なものとして挙げられる。
【0019】
また、加水分解性チタン化合物の低縮合物は、上記した加水分解性チタン化合物同士の低縮合物である。該低縮合物は、チタン原子に結合する基の全てが加水分解性基であっても、又加水分解性基の一部が加水分解された水酸基となっていてもどちらでも構わない。
【0020】
水酸化チタンの低縮合物としては、例えば、塩化チタン、硫酸チタン等の水溶液とアンモニア、苛性ソーダ等のアルカリ溶液との反応により得られるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)等を使用できる。
【0021】
上記加水分解性チタン化合物の低縮合物又は水酸化チタンの低縮合物における縮合度は、2〜30の化合物が使用でき、特に縮合度2〜10の範囲内のものを使用することが好ましい。
【0022】
前記水性液(A)としては、上記チタン化合物と過酸化水素水とを反応させることにより得られるチタン含有水性液であれば、従来から公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には、下記のものを使用できる。
【0023】
▲1▼含水酸化チタンのゲル又はゾルに過酸化水素水を添加して得られるペルオキソチタン酸水溶液(特開昭63−35419号及び特開平1−224220号公報参照)。
【0024】
▲2▼塩化チタン、硫酸チタン等の水溶液とアンモニア、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液とを反応させてオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させ、次いでデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離、水洗し、これに過酸化水素水を加えることにより得られる黄色透明粘性液体である酸化チタン膜形成用水性液。
【0025】
▲3▼塩化チタン、硫酸チタン等の無機チタン化合物の水溶液に過酸化水素水を加えてぺルオキソチタン水和物を形成し、これに塩基性物質を添加し、水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られる酸化チタン膜形成用水性液(特開2000−247638号及び特開2000−247639号公報参照)。
【0026】
チタン含有水性液(A)としては、加水分解性チタン化合物及び/又はその低縮合物を過酸化水素水と混合して得られるペルオキソチタン酸水溶液(A1)を用いるのが好ましい。
【0027】
該チタン化合物としては、特に一般式
Ti(OR)4 (1)
(式中、Rは同一もしくは異なって炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表わされるテトラアルコキシチタンが好ましい。Rで示される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0028】
また、上記チタン化合物の低縮合物としては、上記一般式(1)の化合物をお互いに縮合反応させてなる縮合度2〜30のものを使用するのが好ましく、縮合度2〜10のものを使用することがより好ましい。
【0029】
加水分解性チタン化合物及び/又はその低縮合物(以下、これらのものを単に「加水分解性チタン化合物(a)」と略す)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタン化合物(a)10重量部に対して過酸化水素水が過酸化水素換算で0.1〜100重量部、特に1〜20重量部の範囲内が好ましい。過酸化水素水が、過酸化水素換算で0.1重量部未満になるとペルオキソチタン酸の形成が十分でなく白濁沈殿が生じるので好ましくない。一方、100重量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0030】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30重量%の範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分濃度等の点で好ましい。
【0031】
また、上記ペルオキソチタン酸水溶液は、通常、加水分解性チタン化合物(a)を、温度1〜70℃の範囲内で10分〜20時間程度、過酸化水素水と攪拌下に混合することにより調整できる。この混合の際、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の水可溶性溶媒を使用することもできる。
【0032】
上記ペルオキソチタン酸水溶液(A1)は、加水分解性チタン化合物(a)を過酸化水素水と混合させることにより、加水分解性チタン化合物が水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いでこの水酸基含有チタン化合物に過酸化水素が直ちに配位してペルオキソチタン酸を形成することにより得られるものと推察される。このペルオキソチタン酸水溶液は、室温域で安定性が高く、長期の保存に耐える。
【0033】
また、酸化チタンゾルの存在化で、加水分解性チタン化合物(a)を過酸化水素水と混合して得られるペルオキソチタン酸水溶液(A2)は、該水溶液の貯蔵安定性、得られる酸化チタン膜の耐食性等が向上しているので好ましい。その理由は、該水溶液の調整において、加水分解性チタン化合物(a)が酸化チタンゾル粒子に吸着され、この吸着された加水分解性チタン化合物(a)が該粒子表面に生じた水酸基と縮合反応して化学結合すると共に、該加水分解性チタン化合物自体も縮合反応して高分子化され、次いで過酸化水素水と混合されることにより、得られた該水溶液が安定化され、貯蔵中のゲル化や増粘が顕著に防止されるものと推測される。
【0034】
上記酸化チタンゾルは、無定型酸化チタン微粒子やアナターゼ型酸化チタン微粒子が水に分散したゾルである。酸化チタンゾルとしては、アナターゼ型酸化チタンの水分散液が、耐食性の点から好ましい。酸化チタンゾルは、水以外に、必要に応じて、例えば、アルコール系、アルコールエーテル系等の水性有機溶剤を含有しても構わない。
【0035】
上記酸化チタンゾルとしては、従来から公知のものを使用することができる。該酸化チタンゾルとしては、例えば、酸化チタン凝集物を水に分散した酸化チタン微粒子や、該酸化チタン凝集物を焼成してアナターゼ型酸化チタン微粒子とし、これを水に分散したものを使用することができる。無定型酸化チタンの焼成は、少なくともアナターゼの結晶化温度以上の温度、通常、200℃以上の温度で焼成すれば、無定形酸化チタンをアナターゼ型酸化チタンに変換させることができる。上記酸化チタン凝集物としては、例えば、(1)硫酸チタン、硫酸チタニル等の無機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(2)チタンアルコキシド等の有機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(3)四塩化チタン等のハロゲン化チタン溶液を加水分解又は中和して得られるもの等を挙げることができる。
【0036】
上記酸化チタンゾルの市販品としては、例えば、「TKS−201」(テイカ(株)製、商品名、平均粒子径6nmのアナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)、「TKS−203」(テイカ(株)製、商品名、平均粒子径6nmのアナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)、「TA−15」(日産化学(株)製、商品名、アナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)、「STS−11」(石原産業(株)製、商品名、アナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)等が挙げられる。
【0037】
加水分解性チタン化合物(a)と過酸化水素水を混合する際に、存在させる酸化チタンゾルの使用量は、通常、加水分解性チタン化合物(a)1重量部に対して、固形分で0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部の範囲である。酸化チタンゾルの使用量が0.01重量部未満になると塗布剤の貯蔵安定性、得られる酸化チタン膜の耐食性等の向上という酸化チタンゾルを添加した効果が得られず、一方10重量部を超えると塗布剤の造膜性が劣るので好ましくない。
【0038】
チタン含有水性液(A)は、必要に応じて酸化チタンゾルの存在化で、加水分解性チタン化合物(a)を過酸化水素水と混合して得られるペルオキソチタン酸水溶液を、更に80℃以上の温度で加熱処理又はオートクレーブ処理して平均粒子径が10nm以下の酸化チタン微粒子の分散液としてから使用することもできる。この分散液の外観は、通常半透明状である。
【0039】
加熱処理又はオートクレーブ処理の温度が80℃未満では、十分に酸化チタンの結晶化が進まない。上記処理により得られる酸化チタン微粒子は、粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。また、該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下して、被膜の乾燥重量1g/m2以上でワレを生じるので好ましくない。
【0040】
チタン含有水性液(A)が、前記水性液(A1)である場合は、上記乾燥条件下で、通常、水酸基を若干含むアモルファス酸化チタン膜を形成する。アモルファス酸化チタン膜は、ガスバリヤー性が優れるという利点がある。また、チタン含有水性液(A2)の場合は、上記乾燥条件下で、通常、水酸基を若干含むアナターゼ型酸化チタン膜を形成する。
【0041】
化合物(B)
上記チタン含有水性液(A)に、有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア及び有機塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を添加することにより、チタン系金属表面処理剤の液安定性が大幅に向上することができる。
【0042】
上記有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等の有機カルボン酸;メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、p−ベンゼンスルフォン酸等の有機スルフォン酸;2−アミノ−エタンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸等の有機スルフィン酸;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロピオン酸、ニトロカテコール、2−ニトロレソルシノール、ニトロ安息香酸等の有機ニトロ化合物;フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、サリチル酸、没食子酸、安息香酸、チオフェノール、2−アミノチオフェノール、4−エチルチオフェノール等のフェノール類;1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロ(アミノ)トリメチレンホスホン酸、ニトリロ(アミノ)トリエチレンホスホン酸、ニトリロ(アミノ)トリプロピレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラエチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラプロピレンホスホン酸、N,N−ビス(2−ホスホエチル)ヒドロキシアミン、N,N−ビス(2−ホスホメチル)ヒドロキシアミン、2−ヒドロキシエチルホスホン酸ジメチルエーテルの加水分解物、2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等の有機リン酸化合物が挙げられる。
【0043】
また、有機酸の塩としては、上記有機酸にアルカリ化合物を加えることにより形成される有機酸の塩を使用することができる。該アルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等を含有する有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。
【0044】
有機酸又は有機酸塩としては、水に溶解性のあるものを使用することが好ましい。
【0045】
有機酸又は有機酸塩としては、特に、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸;1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸等のヒドロキシル基含有有機亜リン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等のカルボキシル基含有有機亜リン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが、塗布剤の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐食性等に優れた効果を発揮することから、好ましい。
【0046】
上記金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩としては、例えば、ジルコニウム弗化水素酸、チタン弗化水素酸、珪弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩、チタン弗化塩、珪弗化塩などを挙げることができる。金属弗化水素酸の塩を形成するものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等が挙げられるが、中でもアンモニウムが好ましく、具体例として、ジルコニウム弗化アンモニウム、チタン弗化アンモニウム、珪弗化アンモニウムなどが挙げられる。
【0047】
上記有機塩基性化合物としては、沸点200℃以下の有機塩基性化合物で中和可能なものであれば特に制限なく用いることができる。望ましいものとしては、特に、ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、モルホリン等が挙げられる。
【0048】
化合物(B)としては、得られるチタン系金属表面処理剤の貯蔵安定性向上に効果の大きい有機酸及び有機酸塩が好ましく、中でも特にヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシル基含有有機亜リン酸及びカルボキシル基含有有機亜リン酸が好ましく、さらに特に1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0049】
有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア及び有機塩基性化合物は1種で又は2種以上混合して用いることができ、チタン含有水性液(A)及び化合物(B)の含有割合が、チタン含有水性液(A)の固形分100重量部に対して、化合物(B)が0.1〜400重量部、特に1〜200重量部の範囲内が好ましい。
【0050】
チタン系金属表面処理剤は、中性もしくは酸性領域で安定な液体となるので、特にPH1〜10、特に1〜9の範囲が好ましい。
【0051】
チタン系金属表面処理剤には、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の親水性溶剤を含んでもよい。また、本処理剤は、必要に応じて、水又は親水性溶剤を用いて、希釈して使用できる。
【0052】
チタン系金属表面処理剤には、処理剤の貯蔵安定性を向上させる目的で、必要に応じて、無機リン酸化合物を添加することができる。
【0053】
無機リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、亞リン酸、メタ亞リン酸、次リン酸、次亞リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラリン酸、ヘキサリン酸、トリメタリン酸、ピロ亞リン酸、及びリン酸誘導体等が挙げられる。これらの化合物は1種もしくは2種以上組合せて使用することができる。また、これらのリン酸化合物はアルカリ化合物と塩を形成していてもよく、該アルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等を含有する有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。
【0054】
無機リン酸化合物としては、水に溶解性のあるものを使用することが好ましい。
【0055】
無機リン酸化合物としては、特に、オルトリン酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸アンモニウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を使用することが、塗布剤の貯蔵安定性、得られた塗膜の耐食性等に優れた効果を発揮することから、好ましい。
【0056】
本発明塗布剤に、上記無機リン酸化合物を含有させる場合の含有割合は、通常、チタン含有水性液(A)の固形分100重量部に対して、1〜400重量部程度の範囲、特に10〜200重量部程度の範囲であるのが好ましい。
【0057】
チタン系金属表面処理剤には、耐酸性、耐アルカリ性を向上させる目的で、必要に応じて、例えば、上記した成分以外に、Al、Ca、Ti、V、Mn、Co、Fe、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ta、W等2価以上の金属イオンを含有することもできる。
【0058】
また、チタン系金属表面処理剤には、有機高分子化合物を含有することもできる。有機高分子化合物としては、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン−カルボン酸系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。
【0059】
チタン系金属表面処理剤には、必要に応じて、更に、各種の添加物を含有することもできる。例えば、増粘剤、界面活性剤、防菌剤、防錆剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、酸化チタンゾル、酸化チタン粉末、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等を挙げることができる。防錆剤としては、例えば、タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾール、メタバナジン酸アンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム等を挙げることができる。体質顔料としては、例えば、マイカ、タルク、シリカ、微粉シリカ、バリタ、クレー等を挙げることができる。
【0060】
チタン系金属表面処理剤による処理方法
上記チタン系金属表面処理剤は金属及び有機皮膜への密着性に極めて優れており、被覆金属材の素地金属露出部とその周辺の皮膜に均一に塗布することにより被覆金属材の耐食性を大幅に向上させる。また、該表面処理膜は上塗り付着性に優れているため、該チタン系金属表面処理剤で被覆した後、必要に応じて下塗り及び/又は中塗りを介して上塗り塗料を塗装することにより、耐候性、耐食性などに優れた塗装金属材を製造することができる。
【0061】
被覆金属材の素地金属露出部に塗装されるチタン系金属表面処理剤の塗膜厚は、乾燥塗膜として0.01〜10μm、特に0.1〜5μmの範囲が好ましい。
【0062】
チタン系金属表面処理剤の乾燥は、常温乾燥もしくは、例えば、通常の乾燥炉、熱風乾燥炉、ジェットヒーターなどで、雰囲気温度40℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃で1分〜60分、好ましくは2分〜50分程度で加熱させるのがよい。
【0063】
被覆金属材の材質としては特に制限はなく、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、亜鉛、錫、マグネシウム、これら2種以上の金属が組合わさったものなどが挙げられ、これらの金属がめっきされた鋼材も含まれる。めっき鋼材としては、例えば溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、鉄/亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル/亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板(例えば、「ガルバリウム」、「ガルファン」という商品名で販売されている合金めっき鋼板)などを挙げることができる。
【0064】
上記金属材は一般に、クロム酸塩処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化膜処理などの化成処理を施した後、塗装又はフィルムラミネートされて被覆金属材となる。
【0065】
上記被覆金属材の素地金属露出部としては、一例としてプレコート鋼板又はフィルムラミネート鋼板の切断面(端面)、加工部の皮膜割れ部、加工時の傷つき部などが挙げられる。これらの素地露出部には刷毛、スプレー、浸漬などにより塗装することができる。
【0066】
また、自動車補修など被覆金属材の一部を補修するために不良部を研磨して素地が露出するような場合にも本発明の方法は有効であり、これらの素地露出部およびその周辺に刷毛、スプレーなどによりチタン系金属表面処理剤を塗装して乾燥させた後、通常の補修用塗料を用いて補修することができる。本発明に用いるチタン系金属表面処理剤は素地だけでなく有機皮膜との密着性に優れているため、プライマーを省くことも可能である。
【0067】
さらに、被覆金属材の素地金属露出部の一例として、金属材に電着塗装を施した場合のエッジ部、エアーポケット部、袋部などの素地金属露出部を挙げることができる。この場合、チタン系金属表面処理剤の塗布は電着塗膜を焼付ける前でも、焼付けた後でもよい。
【0068】
チタン系金属表面処理剤を電着塗膜を焼付ける前に塗布する場合には、金属材に電着塗料を電着塗装し、水洗した後、エアーポケット部、袋部などの素地金属露出部やエッジ部に刷毛やスプレーで塗布すればよく、塗装後電着塗膜とチタン系金属表面処理剤による皮膜とを同時に焼付け硬化させる。従って、この場合には焼付け条件は電着塗膜を焼付ける条件に合わせる。また、チタン系金属表面処理剤を電着塗膜を焼付けた後に塗布する場合には、上記同様チタン系金属表面処理剤をエッジ部、エアーポケット部、袋部などの素地金属露出部に刷毛やスプレーで塗布した後、チタン系金属表面処理剤だけを乾燥させればよい。エッジ部における未硬化の電着塗膜は素地まで露出していることは少ないが、塗膜を焼き付けることにより素地露出する。エッジ部の未硬化電着塗膜上にチタン系金属表面処理剤を塗布することにより、塗膜を焼き付けた場合の素地の露出は著しく抑えられる。
【0069】
上記電着塗料は、アニオン型及びカチオン型いずれであってもよいが、一般には、耐食性の点からカチオン型が好ましく、また基体樹脂としては、エポキシ系、アクリル系、ポリブタジエン系、アルキド系、ポリエステル系等いずれの樹脂でも使用することができるが、なかでも例えばアミン付加エポキシ樹脂に代表されるポリアミン樹脂が好ましい。
【0070】
硬化剤としては、ブロック化ポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂等の従来から知られた硬化剤を用いることができ、特にブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0071】
カチオン電着塗装は、通常、浴温15〜35℃に調整し、印可電圧100〜400Vの条件で行なうことができる。電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般には、硬化塗膜に基いて10〜40μmの範囲内が好ましい。また、塗膜の焼付け硬化温度は、一般に100〜200℃の範囲内で5〜90分間が適している。
【0072】
チタン系金属表面処理剤で被覆された電着塗装金属材はそのままで用いることができるが、自動車などに用いる場合には該電着塗膜の上に必要に応じて中塗りが塗装された後、上塗り塗料が塗装される。チタン系金属表面処理剤から得られる皮膜は上塗り密着性に優れるため、中塗り又は上塗り塗料に特に制限はなく、通常公知の塗料系を用いることができる。
【0073】
【発明の効果】
本発明の素地露出部の被覆方法を用いることにより、被覆金属材の素地露出部を容易に被覆することができ、かつ被覆膜への上塗り塗料の密着性及び耐食性に優れた皮膜を形成することができるため、特にプレコート鋼板の端面、傷部及び皮膜割れ部の被覆、自動車補修など被覆金属材の一部の補修、並びに自動車等の電着塗装におけるエッジ部、エアーポケット部、袋部などの素地露出部の被覆に極めて有用なものである。
【0074】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「%」は「重量%」を示す。
【0075】
チタン系金属表面処理剤の製造
製造例1
四塩化チタン60%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10cc加えかき混ぜ、黄色半透明の粘性のある固形分2%のチタン含有水性液(T1)70ccを得た。該水性液(T1)70ccに、更に、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸2g及び脱イオン水28gを配合し、チタン系金属表面処理剤S1を得た。
【0076】
製造例2
テトラiso−プロポキシチタン10gとiso−プロパノール10gの混合物を30%過酸化水素水10gと脱イオン水100gの混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し黄色透明の少し粘性のあるチタン含有水性液(T2)を得た。該水性液(T2)50gに、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 2g、85%オルトリン酸 1g、脱イオン水47gを配合し、チタン系金属表面処理剤S2を得た。
【0077】
製造例3
製造例2の60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 2gの代わりにリンゴ酸 0.5gを配合し、チタン系金属表面処理剤S3を得た。
【0078】
製造例4
製造例2のオルトリン酸の代わりにジルコン弗化アンモニウム 1gを配合しチタン系金属表面処理剤S4を得た。
【0079】
製造例5
製造例2のオルトリン酸の代わりにリンゴ酸 0.5gを配合しチタン系金属表面処理剤S5を得た。
【0080】
製造例6
製造例2のオルトリン酸の代わりに10%アンモニア水 0.2gを配合しチタン系金属表面処理剤S6を得た。
【0081】
製造例7
製造例2の製造途中で得られるチタン含有水性液(T2)50gに、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 0.05g及び脱イオン水 50gを配合し分散してチタン系金属表面処理剤S7を得た。
【0082】
製造例8
製造例2の製造途中で得られるチタン含有水性液(T2)50gに、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸2g、85%オルトリン酸1g、iso−プロパノール47gを配合してよく攪拌した後、更に固形分20%のポリビニルブチラ−ル(積水化学工業社製BL−SH)のiso−プロパノール溶液を40g及びアエロジル380(日本アエロジル社製、シリカ)2g配合し、チタン系金属表面処理剤S8を得た。
【0083】
表1に製造例1〜8のチタン系金属表面処理剤の配合をまとめて示す。
【0084】
【表1】
【0085】
エッジ部試験用塗板の作成および耐食性試験結果
実施例1〜7及び比較例1
上記製造例1〜7で得たチタン系金属表面処理剤を用いてそれぞれ下記A〜Dの4種類の試験用塗板を作成し、各々の試験用塗板に合わせた耐食性試験を行った。4種類の試験用塗板の作成方法及び耐食性試験方法を下記に示す。また、チタン系金属表面処理剤を全く塗布しないものを比較例1として記載した。耐食性試験の結果を後記表2に示す。
【0086】
試験用塗板Aの作成及び耐食性試験A
試験用塗板Aの作成:板厚0.6mmの冷間圧延軟鋼板(SPCC−SD)をアルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂、水洗した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にアミラック#1000ホワイト(関西ペイント社製、熱硬化型アルキド樹脂塗料、白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、130℃で20分間焼き付けて上塗塗装板を得た。該上塗塗装板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、各チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Aを得た。
【0087】
耐食性試験A:上記試験用塗板AについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を1時間行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
〇:赤錆の発生が認められない、
△:赤錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
×:赤錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0088】
試験用塗板Bの作成及び耐食性試験B
試験用塗板Bの作成: 板厚0.6mm、片面のめっき付着量20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板を上記アルカリ脱脂、水洗した後、表面調整(日本パーカライジング社製の「プレパレンZ」を用いたスプレー処理)を行い、さらにリン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3308」を用いたスプレー処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は1.5g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にマジクロン#1000ホワイト(関西ペイント社製、熱硬化型アクリル樹脂塗料、白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、150℃で20分間焼き付けて上塗塗装板を得た。該上塗塗装板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Bを得た。
【0089】
耐食性試験B:上記試験用塗板BについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面部面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面部面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面部面積の50%以上、
f:赤錆発生。
【0090】
試験用塗板Cの作成及び耐食性試験C
試験用塗板Cの作成: 板厚0.4mm、片面のめっき付着量120g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を上記アルカリ脱脂、水洗した後、その上にクロム酸系処理剤(関西ペイント社製、商品名「コスマー150」)を乾燥皮膜重量が0.1g/m2となるように塗布し、素材到達温度が60℃になるようにして20秒間焼付けて表面処理板を得た。ついで、この処理板上にKPカラー8000プライマー(関西ペイント社製、変性エポキシ系塗料)を乾燥膜厚が5μmとなるように塗装し、20秒間でPMTが210℃となる条件で塗膜を形成し、ついでこのプライマー被膜上にKPカラー1580ホワイト(関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系塗料、白色)を乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、40秒間でPMTが215℃となる条件で焼付けて上層塗膜を有する各試験塗板を作成した。該試験塗板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、60℃で10分乾燥して試験用塗板Cを得た。
【0091】
耐食性試験C:上記試験用塗板CについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面部面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面部面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面部面積の50%以上、
f:赤錆発生。
【0092】
試験用塗板Dの作成及び耐食性試験D
試験用塗板Dの作成: 板厚0.8mmのアルミニウム板(A1050)を、上記アルカリ脱脂、水洗した後、クロム酸系処理剤(関西ペイント社製、商品名「コスマー150」を乾燥皮膜重量が0.1g/m2となるように塗布し、素材到達温度が60℃になるようにして20秒間焼付けて表面処理板を得た。該表面処理板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、60℃で10分乾燥して試験用塗板Dを得た。
【0093】
耐食性試験D:上記試験用塗板DについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面部面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面部面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0094】
【表2】
【0095】
電着塗板の作成および耐食性試験結果
実施例8〜14及び比較例2
前記製造例1〜7で得たチタン系金属表面処理剤を用いてそれぞれ下記E〜Hの4種類の試験用塗板を作成し、各々の試験用塗板に合わせた耐食性試験を行った。4種類の試験用塗板の作成方法及び耐食性試験方法を下記に示す。また、チタン系金属表面処理剤を全く塗布しない以外は実施例と同様にして作成したものを比較例2とした。耐食性試験の結果を後記表3に示す。
【0096】
試験用塗板Eの作成及び耐食性試験E
試験用塗板Eの作成:板厚0.8mmの冷間圧延軟鋼板(SPCC−SD)をアルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂、水洗した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にカチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、水洗し、170℃で20分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗装板の端面をカットした後、各チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Eを得た。
【0097】
耐食性試験E:上記試験用塗板EについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を1時間行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
〇:赤錆の発生が認められない、
△:赤錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
×:赤錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0098】
試験用塗板Fの作成及び耐食性試験F
試験用塗板Fの作成: 板厚0.8mm、片面のめっき付着量120g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を上記アルカリ脱脂、水洗した後、表面調整(日本パーカライジング社製の「プレパレンZ」を用いたスプレー処理)を行い、さらにリン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にカチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、水洗し、170℃で20分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗装板の端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Fを得た。
【0099】
耐食性試験F:上記試験用塗板FについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面面積の50%以上、
f:赤錆発生。
【0100】
試験用塗板Gの作成及び耐食性試験G
試験用塗板Gの作成: 板厚0.8mmのアルミニウム板(A1050)を、上記アルカリ脱脂、水洗した後、カチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、水洗し、170℃で20分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗装板の端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、60℃で10分乾燥して試験用塗板Gを得た。
【0101】
耐食性試験G:上記試験用塗板GについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を上記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面面積の50%以上。
【0102】
袋部試験用塗装物Hの作成及び耐食性試験H
試験用塗板Hの作成:横70mm×縦150mm×板厚0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)をアルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂、水洗した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。このリン酸亜鉛処理熱間圧延鋼板4枚のうちの3枚に、底辺から縦方向45mmの位置で左右対称となる位置に穴の中心がくるようにして8mmφの穴を開け、穴のない鋼板が一方の端になるようにして、4枚の鋼板を20mm間隔で平行に配置し、開放された側面及び底面をリン酸亜鉛処理鋼板で遮蔽して、上面が開放された縦60mm×横70mm×高さ150mmの箱状構造体を作成した。この箱状構造体は一つの面だけに8mmφの穴があり、電着浴中に浸漬した時には、その8mmφの穴を通じてのみ電着塗料が出入するものである。
【0103】
この箱状構造体を、カチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を用いた電着浴中に、開放された面を上にして浸漬深さ90mm、対極との距離が110mmとなるように、かつ8mmφの穴の開いた面が対極に面するように浸漬し、被塗物を陰極として通電し電着塗装を行なった。
【0104】
通電条件は試験用塗板Eと同様である。電着塗装されたそれぞれの被塗物は、水洗後、170℃で20分間焼付けて電着塗装物を得た。得られた電着塗装物は各チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗装物Hを得た。
【0105】
耐食性試験H:上記試験用塗装物HについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を1時間行い、錆の程度を下記基準により評価した。
〇:赤錆の発生が認められない、
△:赤錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
×:赤錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0106】
【表3】
【0107】
自動車補修試験用塗板の作成および耐湿性試験
実施例15
板厚0.6mmの冷間圧延軟鋼板(SPCC−SB)を用いてなる白色の自動車塗装鋼板を、耐水研磨紙280番でJIS−K5400に従い研磨し、素地を露出させた。この素地露出部に上記製造例8で得たチタン系金属表面処理剤S8を乾燥膜厚が1μmとなるようにしてスプレー塗布を行ない、1時間常温乾燥した後、SUウレタンプラサフA(関西ペイント社製、2液型ウレタン塗料、灰色)を乾燥膜厚30μmになるようにスプレー塗装し、1時間常温乾燥し、さらにその上にPGソロ#531(関西ペイント社製、2液型ウレタン塗料、白色)を90μmになるようにスプレー塗装し試験用塗板を得た。得られた試験用塗板について下記試験方法に従って耐水性試験を実施した。
【0108】
比較例3
実施例15において、素地露出部にチタン系金属表面処理剤で塗布する工程を省いた以外は実施例15と同様にして試験用塗板を得た。
【0109】
比較例4
実施例15においてチタン系金属表面処理剤S8の代わりに自動車補修用クロム酸系エッチングプライマ−(関西ペイント社製メタラクトH−5)を乾燥膜厚が5μmになるようにスプレー塗布した以外は実施例15と同様にして試験用塗板を作成した。
【0110】
実施例15並びに比較例3及び比較例4で得られた試験用塗板を用いて下記試験方法に従って耐水性試験を実施した。結果を後記表4に示す。
【0111】
耐水性試験:上記試験用塗板について、7日間室温に放置したものを、40℃の温水中に10日間浸漬した後とり出し、補修部のフクレの程度を下記基準により評価した。
〇:フクレの発生が全く認められない。
△:フクレの発生が認められるが、フクレの発生は補修部面積の50%未満。
×:フクレの発生が補修部面積の50%以上で認められる。
【0112】
【表4】
【発明の属する技術分野】本発明は、被覆鋼板を加工又は切断した時にできる素地露出部、金属材を電着塗装した時にできるエアーポケット部、袋部、エッジ部等の素地露出部の被覆方法に関するものである。
【0002】
【従来技術及びその課題】
近年、プレコート鋼板及びフィルムラミネート鋼板が塗装ラインの合理化、生産性の向上、公害防止、作業環境改善等の諸問題を解決するために多く用いられるようになってきた。特に金属屋根材、家電製品の分野では多用され、自動車などの分野でも一部使用されている。しかしながら、これらプレコート鋼板及びフィルムラミネート鋼板は、切断された箇所(以下、端面という)、施工時に発生した被膜層の傷つき部又は厳しい加工が施された部分の皮膜の割れ部において素地金属が露出し、フクレや錆びを生じて被覆材としての機能を大きく損なうという問題があり、用途を広げる際の大きな障害となっている。
【0003】
また、自動車車体などに用いる電着塗装においては、エアーポケット部や袋部に皮膜が十分に形成されずに素地金属が露出したり、エッジ部が焼付後に素地金属が露出したりして被覆材の耐食性が低下するという問題がある。エッジ部は塗装膜を焼付けた際に、表面張力などにより膜が引っ張られてエッジ部の素地が露出してしまうものであり、エアーポケット部は、電着浴に浸漬された際、その部分に空気が残って塗り残しとなってしまうものであり、袋部は電流密度が回り込まないために付きまわり不足となり塗り残しとなってしまうものである。
【0004】
かかる問題を解決するために電着塗料の改良が色々と行なわれているが十分とはいえない(例えば、特許文献1など参照)。
【0005】
そこで人手をかけて特殊なシーラーをエッジ部に塗布することも行なわれており、ポリオールとポリイソシアネートからなる2液型ポリウレタン塗料をアミン蒸気若しくはアミン霧化物を硬化触媒として介在させた中で塗布し、急速に硬化させるという方法が開示されている(例えば、特許文献2など参照)。
【0006】
しかしながら、この方法では手間がかかるだけでなく、アミン蒸気を介在させるための特殊な装置を必要とする。
【0007】
また、自動車を製造する時の傷や塗装不良、自動車事故などで塗装金属板を補修する場合、不良部を研磨して素地金属を露出させた後、一般的には表面処理を行わずに直接塗料が塗装されるため、補修部の付着性や耐食性が低いという問題がある。作業環境上無害な表面処理剤が求められているが、今のところクロム等の有害物質を含有しないもので十分な性能のものは得られていない。
【0008】
本発明は、被覆金属材の素地露出部を容易に被覆することができ、かつ被覆膜への密着性及び耐食性に優れた皮膜を形成することのできる素地露出部の被覆方法を提供することである。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−173089号公報
【特許文献2】
特開平5−220446号公報
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を改善するために鋭意研究を重ねた結果、素地露出部に特定のチタン系金属表面処理剤による処理を行うことにより上記問題点を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、被覆金属材の素地露出部を、
(A)加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液、並びに
(B)有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア、及び有機塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してなるチタン系金属表面処理剤により被覆することを特徴とする素地露出部の被覆方法に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の被覆方法は、被覆金属材の素地露出部、特にプレコート鋼板、フィルムラミネート鋼板などの被覆鋼板を切断した時にできる端面部、被覆鋼板を加工した時にできる擦り傷や加工部のワレ、金属材を電着した時にできるエアーポケット部や袋部などの素地露出部、焼付け後に生じるエッジ部の素地露出部をチタン系金属表面処理剤を用いて被覆するものである。
【0013】
まず、本発明の素地露出部の被覆方法に使用するチタン系金属表面処理剤について、以下詳細に説明する。
【0014】
チタン系金属表面処理剤
チタン系金属表面処理剤は、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタン低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを反応させて得られるチタン含有水性液(A)、及び無機リン酸系化合物、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、有機酸、アンモニア、有機塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含有するものである。
【0015】
チタン含有水性液(A)
本発明に用いられるチタン系金属表面処理剤の(A)成分である、加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物と過酸化水素水とを混合して得られるチタン含有水性液としては、従来から公知のものを適宜選択して使用することができる。
【0016】
上記加水分解性チタン化合物は、チタン原子に直接結合する加水分解性基を有するチタン化合物であって、水、水蒸気などの水分と反応することにより水酸化チタンを生成するものである。また、加水分解性チタン化合物において、チタン原子に結合する基の全てが加水分解性基であっても、又加水分解性基の1部が加水分解された水酸基になっていてもどちらでも構わない。
【0017】
上記加水分解性基としては、水分と反応することにより水酸基を生成するものであれば特に制限されないが、例えば、低級アルコキシル基やチタン原子と塩を形成する基等が挙げられる。チタン原子と塩を形成する基としては、例えば、ハロゲン原子(塩素等)、水素原子、硫酸イオン等が挙げられる。
【0018】
加水分解性基として、チタンと塩を形成する基を有する加水分解性チタン化合物としては、塩化チタン、硫酸チタン等が代表的なものとして挙げられる。
【0019】
また、加水分解性チタン化合物の低縮合物は、上記した加水分解性チタン化合物同士の低縮合物である。該低縮合物は、チタン原子に結合する基の全てが加水分解性基であっても、又加水分解性基の一部が加水分解された水酸基となっていてもどちらでも構わない。
【0020】
水酸化チタンの低縮合物としては、例えば、塩化チタン、硫酸チタン等の水溶液とアンモニア、苛性ソーダ等のアルカリ溶液との反応により得られるオルトチタン酸(水酸化チタンゲル)等を使用できる。
【0021】
上記加水分解性チタン化合物の低縮合物又は水酸化チタンの低縮合物における縮合度は、2〜30の化合物が使用でき、特に縮合度2〜10の範囲内のものを使用することが好ましい。
【0022】
前記水性液(A)としては、上記チタン化合物と過酸化水素水とを反応させることにより得られるチタン含有水性液であれば、従来から公知のものを特に制限なしに使用することができる。具体的には、下記のものを使用できる。
【0023】
▲1▼含水酸化チタンのゲル又はゾルに過酸化水素水を添加して得られるペルオキソチタン酸水溶液(特開昭63−35419号及び特開平1−224220号公報参照)。
【0024】
▲2▼塩化チタン、硫酸チタン等の水溶液とアンモニア、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液とを反応させてオルトチタン酸と呼ばれる水酸化チタンゲルを沈殿させ、次いでデカンテーションによって水酸化チタンゲルを分離、水洗し、これに過酸化水素水を加えることにより得られる黄色透明粘性液体である酸化チタン膜形成用水性液。
【0025】
▲3▼塩化チタン、硫酸チタン等の無機チタン化合物の水溶液に過酸化水素水を加えてぺルオキソチタン水和物を形成し、これに塩基性物質を添加し、水以外の溶解成分を除去した後に過酸化水素を作用させて得られる酸化チタン膜形成用水性液(特開2000−247638号及び特開2000−247639号公報参照)。
【0026】
チタン含有水性液(A)としては、加水分解性チタン化合物及び/又はその低縮合物を過酸化水素水と混合して得られるペルオキソチタン酸水溶液(A1)を用いるのが好ましい。
【0027】
該チタン化合物としては、特に一般式
Ti(OR)4 (1)
(式中、Rは同一もしくは異なって炭素数1〜5のアルキル基を示す)で表わされるテトラアルコキシチタンが好ましい。Rで示される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0028】
また、上記チタン化合物の低縮合物としては、上記一般式(1)の化合物をお互いに縮合反応させてなる縮合度2〜30のものを使用するのが好ましく、縮合度2〜10のものを使用することがより好ましい。
【0029】
加水分解性チタン化合物及び/又はその低縮合物(以下、これらのものを単に「加水分解性チタン化合物(a)」と略す)と過酸化水素水との混合割合は、加水分解性チタン化合物(a)10重量部に対して過酸化水素水が過酸化水素換算で0.1〜100重量部、特に1〜20重量部の範囲内が好ましい。過酸化水素水が、過酸化水素換算で0.1重量部未満になるとペルオキソチタン酸の形成が十分でなく白濁沈殿が生じるので好ましくない。一方、100重量部を超えると未反応の過酸化水素が残存し易く貯蔵中に危険な活性酸素を放出するので好ましくない。
【0030】
過酸化水素水の過酸化水素濃度は特に限定されないが3〜30重量%の範囲内であることが取り扱いやすさ、塗装作業性に関係する生成液の固形分濃度等の点で好ましい。
【0031】
また、上記ペルオキソチタン酸水溶液は、通常、加水分解性チタン化合物(a)を、温度1〜70℃の範囲内で10分〜20時間程度、過酸化水素水と攪拌下に混合することにより調整できる。この混合の際、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の水可溶性溶媒を使用することもできる。
【0032】
上記ペルオキソチタン酸水溶液(A1)は、加水分解性チタン化合物(a)を過酸化水素水と混合させることにより、加水分解性チタン化合物が水で加水分解されて水酸基含有チタン化合物を生成し、次いでこの水酸基含有チタン化合物に過酸化水素が直ちに配位してペルオキソチタン酸を形成することにより得られるものと推察される。このペルオキソチタン酸水溶液は、室温域で安定性が高く、長期の保存に耐える。
【0033】
また、酸化チタンゾルの存在化で、加水分解性チタン化合物(a)を過酸化水素水と混合して得られるペルオキソチタン酸水溶液(A2)は、該水溶液の貯蔵安定性、得られる酸化チタン膜の耐食性等が向上しているので好ましい。その理由は、該水溶液の調整において、加水分解性チタン化合物(a)が酸化チタンゾル粒子に吸着され、この吸着された加水分解性チタン化合物(a)が該粒子表面に生じた水酸基と縮合反応して化学結合すると共に、該加水分解性チタン化合物自体も縮合反応して高分子化され、次いで過酸化水素水と混合されることにより、得られた該水溶液が安定化され、貯蔵中のゲル化や増粘が顕著に防止されるものと推測される。
【0034】
上記酸化チタンゾルは、無定型酸化チタン微粒子やアナターゼ型酸化チタン微粒子が水に分散したゾルである。酸化チタンゾルとしては、アナターゼ型酸化チタンの水分散液が、耐食性の点から好ましい。酸化チタンゾルは、水以外に、必要に応じて、例えば、アルコール系、アルコールエーテル系等の水性有機溶剤を含有しても構わない。
【0035】
上記酸化チタンゾルとしては、従来から公知のものを使用することができる。該酸化チタンゾルとしては、例えば、酸化チタン凝集物を水に分散した酸化チタン微粒子や、該酸化チタン凝集物を焼成してアナターゼ型酸化チタン微粒子とし、これを水に分散したものを使用することができる。無定型酸化チタンの焼成は、少なくともアナターゼの結晶化温度以上の温度、通常、200℃以上の温度で焼成すれば、無定形酸化チタンをアナターゼ型酸化チタンに変換させることができる。上記酸化チタン凝集物としては、例えば、(1)硫酸チタン、硫酸チタニル等の無機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(2)チタンアルコキシド等の有機チタン化合物を加水分解して得られるもの、(3)四塩化チタン等のハロゲン化チタン溶液を加水分解又は中和して得られるもの等を挙げることができる。
【0036】
上記酸化チタンゾルの市販品としては、例えば、「TKS−201」(テイカ(株)製、商品名、平均粒子径6nmのアナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)、「TKS−203」(テイカ(株)製、商品名、平均粒子径6nmのアナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)、「TA−15」(日産化学(株)製、商品名、アナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)、「STS−11」(石原産業(株)製、商品名、アナターゼ型酸化チタン微粒子の水性ゾル)等が挙げられる。
【0037】
加水分解性チタン化合物(a)と過酸化水素水を混合する際に、存在させる酸化チタンゾルの使用量は、通常、加水分解性チタン化合物(a)1重量部に対して、固形分で0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部の範囲である。酸化チタンゾルの使用量が0.01重量部未満になると塗布剤の貯蔵安定性、得られる酸化チタン膜の耐食性等の向上という酸化チタンゾルを添加した効果が得られず、一方10重量部を超えると塗布剤の造膜性が劣るので好ましくない。
【0038】
チタン含有水性液(A)は、必要に応じて酸化チタンゾルの存在化で、加水分解性チタン化合物(a)を過酸化水素水と混合して得られるペルオキソチタン酸水溶液を、更に80℃以上の温度で加熱処理又はオートクレーブ処理して平均粒子径が10nm以下の酸化チタン微粒子の分散液としてから使用することもできる。この分散液の外観は、通常半透明状である。
【0039】
加熱処理又はオートクレーブ処理の温度が80℃未満では、十分に酸化チタンの結晶化が進まない。上記処理により得られる酸化チタン微粒子は、粒子径が10nm以下、好ましくは1nm〜6nmの範囲である。また、該粒子径が10nmより大きくなると造膜性が低下して、被膜の乾燥重量1g/m2以上でワレを生じるので好ましくない。
【0040】
チタン含有水性液(A)が、前記水性液(A1)である場合は、上記乾燥条件下で、通常、水酸基を若干含むアモルファス酸化チタン膜を形成する。アモルファス酸化チタン膜は、ガスバリヤー性が優れるという利点がある。また、チタン含有水性液(A2)の場合は、上記乾燥条件下で、通常、水酸基を若干含むアナターゼ型酸化チタン膜を形成する。
【0041】
化合物(B)
上記チタン含有水性液(A)に、有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア及び有機塩基性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を添加することにより、チタン系金属表面処理剤の液安定性が大幅に向上することができる。
【0042】
上記有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等の有機カルボン酸;メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、p−ベンゼンスルフォン酸等の有機スルフォン酸;2−アミノ−エタンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸等の有機スルフィン酸;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロピオン酸、ニトロカテコール、2−ニトロレソルシノール、ニトロ安息香酸等の有機ニトロ化合物;フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、サリチル酸、没食子酸、安息香酸、チオフェノール、2−アミノチオフェノール、4−エチルチオフェノール等のフェノール類;1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、ニトリロ(アミノ)トリメチレンホスホン酸、ニトリロ(アミノ)トリエチレンホスホン酸、ニトリロ(アミノ)トリプロピレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラエチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラプロピレンホスホン酸、N,N−ビス(2−ホスホエチル)ヒドロキシアミン、N,N−ビス(2−ホスホメチル)ヒドロキシアミン、2−ヒドロキシエチルホスホン酸ジメチルエーテルの加水分解物、2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等の有機リン酸化合物が挙げられる。
【0043】
また、有機酸の塩としては、上記有機酸にアルカリ化合物を加えることにより形成される有機酸の塩を使用することができる。該アルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等を含有する有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。
【0044】
有機酸又は有機酸塩としては、水に溶解性のあるものを使用することが好ましい。
【0045】
有機酸又は有機酸塩としては、特に、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸;1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸等のヒドロキシル基含有有機亜リン酸;2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等のカルボキシル基含有有機亜リン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することが、塗布剤の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐食性等に優れた効果を発揮することから、好ましい。
【0046】
上記金属弗化水素酸及び金属弗化水素酸塩としては、例えば、ジルコニウム弗化水素酸、チタン弗化水素酸、珪弗化水素酸、ジルコニウム弗化塩、チタン弗化塩、珪弗化塩などを挙げることができる。金属弗化水素酸の塩を形成するものとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム等が挙げられるが、中でもアンモニウムが好ましく、具体例として、ジルコニウム弗化アンモニウム、チタン弗化アンモニウム、珪弗化アンモニウムなどが挙げられる。
【0047】
上記有機塩基性化合物としては、沸点200℃以下の有機塩基性化合物で中和可能なものであれば特に制限なく用いることができる。望ましいものとしては、特に、ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリエチルアミン、モルホリン等が挙げられる。
【0048】
化合物(B)としては、得られるチタン系金属表面処理剤の貯蔵安定性向上に効果の大きい有機酸及び有機酸塩が好ましく、中でも特にヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシル基含有有機亜リン酸及びカルボキシル基含有有機亜リン酸が好ましく、さらに特に1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0049】
有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア及び有機塩基性化合物は1種で又は2種以上混合して用いることができ、チタン含有水性液(A)及び化合物(B)の含有割合が、チタン含有水性液(A)の固形分100重量部に対して、化合物(B)が0.1〜400重量部、特に1〜200重量部の範囲内が好ましい。
【0050】
チタン系金属表面処理剤は、中性もしくは酸性領域で安定な液体となるので、特にPH1〜10、特に1〜9の範囲が好ましい。
【0051】
チタン系金属表面処理剤には、必要に応じて、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の親水性溶剤を含んでもよい。また、本処理剤は、必要に応じて、水又は親水性溶剤を用いて、希釈して使用できる。
【0052】
チタン系金属表面処理剤には、処理剤の貯蔵安定性を向上させる目的で、必要に応じて、無機リン酸化合物を添加することができる。
【0053】
無機リン酸化合物としては、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、亞リン酸、メタ亞リン酸、次リン酸、次亞リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラリン酸、ヘキサリン酸、トリメタリン酸、ピロ亞リン酸、及びリン酸誘導体等が挙げられる。これらの化合物は1種もしくは2種以上組合せて使用することができる。また、これらのリン酸化合物はアルカリ化合物と塩を形成していてもよく、該アルカリ化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム等を含有する有機又は無機アルカリ化合物が挙げられる。
【0054】
無機リン酸化合物としては、水に溶解性のあるものを使用することが好ましい。
【0055】
無機リン酸化合物としては、特に、オルトリン酸、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸アンモニウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を使用することが、塗布剤の貯蔵安定性、得られた塗膜の耐食性等に優れた効果を発揮することから、好ましい。
【0056】
本発明塗布剤に、上記無機リン酸化合物を含有させる場合の含有割合は、通常、チタン含有水性液(A)の固形分100重量部に対して、1〜400重量部程度の範囲、特に10〜200重量部程度の範囲であるのが好ましい。
【0057】
チタン系金属表面処理剤には、耐酸性、耐アルカリ性を向上させる目的で、必要に応じて、例えば、上記した成分以外に、Al、Ca、Ti、V、Mn、Co、Fe、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Ta、W等2価以上の金属イオンを含有することもできる。
【0058】
また、チタン系金属表面処理剤には、有機高分子化合物を含有することもできる。有機高分子化合物としては、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン−カルボン酸系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。
【0059】
チタン系金属表面処理剤には、必要に応じて、更に、各種の添加物を含有することもできる。例えば、増粘剤、界面活性剤、防菌剤、防錆剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、酸化チタンゾル、酸化チタン粉末、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等を挙げることができる。防錆剤としては、例えば、タンニン酸、フィチン酸、ベンゾトリアゾール、メタバナジン酸アンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム等を挙げることができる。体質顔料としては、例えば、マイカ、タルク、シリカ、微粉シリカ、バリタ、クレー等を挙げることができる。
【0060】
チタン系金属表面処理剤による処理方法
上記チタン系金属表面処理剤は金属及び有機皮膜への密着性に極めて優れており、被覆金属材の素地金属露出部とその周辺の皮膜に均一に塗布することにより被覆金属材の耐食性を大幅に向上させる。また、該表面処理膜は上塗り付着性に優れているため、該チタン系金属表面処理剤で被覆した後、必要に応じて下塗り及び/又は中塗りを介して上塗り塗料を塗装することにより、耐候性、耐食性などに優れた塗装金属材を製造することができる。
【0061】
被覆金属材の素地金属露出部に塗装されるチタン系金属表面処理剤の塗膜厚は、乾燥塗膜として0.01〜10μm、特に0.1〜5μmの範囲が好ましい。
【0062】
チタン系金属表面処理剤の乾燥は、常温乾燥もしくは、例えば、通常の乾燥炉、熱風乾燥炉、ジェットヒーターなどで、雰囲気温度40℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃で1分〜60分、好ましくは2分〜50分程度で加熱させるのがよい。
【0063】
被覆金属材の材質としては特に制限はなく、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、亜鉛、錫、マグネシウム、これら2種以上の金属が組合わさったものなどが挙げられ、これらの金属がめっきされた鋼材も含まれる。めっき鋼材としては、例えば溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、鉄/亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル/亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板(例えば、「ガルバリウム」、「ガルファン」という商品名で販売されている合金めっき鋼板)などを挙げることができる。
【0064】
上記金属材は一般に、クロム酸塩処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化膜処理などの化成処理を施した後、塗装又はフィルムラミネートされて被覆金属材となる。
【0065】
上記被覆金属材の素地金属露出部としては、一例としてプレコート鋼板又はフィルムラミネート鋼板の切断面(端面)、加工部の皮膜割れ部、加工時の傷つき部などが挙げられる。これらの素地露出部には刷毛、スプレー、浸漬などにより塗装することができる。
【0066】
また、自動車補修など被覆金属材の一部を補修するために不良部を研磨して素地が露出するような場合にも本発明の方法は有効であり、これらの素地露出部およびその周辺に刷毛、スプレーなどによりチタン系金属表面処理剤を塗装して乾燥させた後、通常の補修用塗料を用いて補修することができる。本発明に用いるチタン系金属表面処理剤は素地だけでなく有機皮膜との密着性に優れているため、プライマーを省くことも可能である。
【0067】
さらに、被覆金属材の素地金属露出部の一例として、金属材に電着塗装を施した場合のエッジ部、エアーポケット部、袋部などの素地金属露出部を挙げることができる。この場合、チタン系金属表面処理剤の塗布は電着塗膜を焼付ける前でも、焼付けた後でもよい。
【0068】
チタン系金属表面処理剤を電着塗膜を焼付ける前に塗布する場合には、金属材に電着塗料を電着塗装し、水洗した後、エアーポケット部、袋部などの素地金属露出部やエッジ部に刷毛やスプレーで塗布すればよく、塗装後電着塗膜とチタン系金属表面処理剤による皮膜とを同時に焼付け硬化させる。従って、この場合には焼付け条件は電着塗膜を焼付ける条件に合わせる。また、チタン系金属表面処理剤を電着塗膜を焼付けた後に塗布する場合には、上記同様チタン系金属表面処理剤をエッジ部、エアーポケット部、袋部などの素地金属露出部に刷毛やスプレーで塗布した後、チタン系金属表面処理剤だけを乾燥させればよい。エッジ部における未硬化の電着塗膜は素地まで露出していることは少ないが、塗膜を焼き付けることにより素地露出する。エッジ部の未硬化電着塗膜上にチタン系金属表面処理剤を塗布することにより、塗膜を焼き付けた場合の素地の露出は著しく抑えられる。
【0069】
上記電着塗料は、アニオン型及びカチオン型いずれであってもよいが、一般には、耐食性の点からカチオン型が好ましく、また基体樹脂としては、エポキシ系、アクリル系、ポリブタジエン系、アルキド系、ポリエステル系等いずれの樹脂でも使用することができるが、なかでも例えばアミン付加エポキシ樹脂に代表されるポリアミン樹脂が好ましい。
【0070】
硬化剤としては、ブロック化ポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂等の従来から知られた硬化剤を用いることができ、特にブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0071】
カチオン電着塗装は、通常、浴温15〜35℃に調整し、印可電圧100〜400Vの条件で行なうことができる。電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般には、硬化塗膜に基いて10〜40μmの範囲内が好ましい。また、塗膜の焼付け硬化温度は、一般に100〜200℃の範囲内で5〜90分間が適している。
【0072】
チタン系金属表面処理剤で被覆された電着塗装金属材はそのままで用いることができるが、自動車などに用いる場合には該電着塗膜の上に必要に応じて中塗りが塗装された後、上塗り塗料が塗装される。チタン系金属表面処理剤から得られる皮膜は上塗り密着性に優れるため、中塗り又は上塗り塗料に特に制限はなく、通常公知の塗料系を用いることができる。
【0073】
【発明の効果】
本発明の素地露出部の被覆方法を用いることにより、被覆金属材の素地露出部を容易に被覆することができ、かつ被覆膜への上塗り塗料の密着性及び耐食性に優れた皮膜を形成することができるため、特にプレコート鋼板の端面、傷部及び皮膜割れ部の被覆、自動車補修など被覆金属材の一部の補修、並びに自動車等の電着塗装におけるエッジ部、エアーポケット部、袋部などの素地露出部の被覆に極めて有用なものである。
【0074】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「%」は「重量%」を示す。
【0075】
チタン系金属表面処理剤の製造
製造例1
四塩化チタン60%溶液5ccを蒸留水で500ccとした溶液にアンモニア水(1:9)を滴下し、水酸化チタンを沈殿させた。蒸留水で洗浄後、過酸化水素水30%溶液を10cc加えかき混ぜ、黄色半透明の粘性のある固形分2%のチタン含有水性液(T1)70ccを得た。該水性液(T1)70ccに、更に、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸2g及び脱イオン水28gを配合し、チタン系金属表面処理剤S1を得た。
【0076】
製造例2
テトラiso−プロポキシチタン10gとiso−プロパノール10gの混合物を30%過酸化水素水10gと脱イオン水100gの混合物中に20℃で1時間かけて撹拌しながら滴下した。その後25℃で2時間熟成し黄色透明の少し粘性のあるチタン含有水性液(T2)を得た。該水性液(T2)50gに、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 2g、85%オルトリン酸 1g、脱イオン水47gを配合し、チタン系金属表面処理剤S2を得た。
【0077】
製造例3
製造例2の60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 2gの代わりにリンゴ酸 0.5gを配合し、チタン系金属表面処理剤S3を得た。
【0078】
製造例4
製造例2のオルトリン酸の代わりにジルコン弗化アンモニウム 1gを配合しチタン系金属表面処理剤S4を得た。
【0079】
製造例5
製造例2のオルトリン酸の代わりにリンゴ酸 0.5gを配合しチタン系金属表面処理剤S5を得た。
【0080】
製造例6
製造例2のオルトリン酸の代わりに10%アンモニア水 0.2gを配合しチタン系金属表面処理剤S6を得た。
【0081】
製造例7
製造例2の製造途中で得られるチタン含有水性液(T2)50gに、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸 0.05g及び脱イオン水 50gを配合し分散してチタン系金属表面処理剤S7を得た。
【0082】
製造例8
製造例2の製造途中で得られるチタン含有水性液(T2)50gに、60%1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸2g、85%オルトリン酸1g、iso−プロパノール47gを配合してよく攪拌した後、更に固形分20%のポリビニルブチラ−ル(積水化学工業社製BL−SH)のiso−プロパノール溶液を40g及びアエロジル380(日本アエロジル社製、シリカ)2g配合し、チタン系金属表面処理剤S8を得た。
【0083】
表1に製造例1〜8のチタン系金属表面処理剤の配合をまとめて示す。
【0084】
【表1】
【0085】
エッジ部試験用塗板の作成および耐食性試験結果
実施例1〜7及び比較例1
上記製造例1〜7で得たチタン系金属表面処理剤を用いてそれぞれ下記A〜Dの4種類の試験用塗板を作成し、各々の試験用塗板に合わせた耐食性試験を行った。4種類の試験用塗板の作成方法及び耐食性試験方法を下記に示す。また、チタン系金属表面処理剤を全く塗布しないものを比較例1として記載した。耐食性試験の結果を後記表2に示す。
【0086】
試験用塗板Aの作成及び耐食性試験A
試験用塗板Aの作成:板厚0.6mmの冷間圧延軟鋼板(SPCC−SD)をアルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂、水洗した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にアミラック#1000ホワイト(関西ペイント社製、熱硬化型アルキド樹脂塗料、白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、130℃で20分間焼き付けて上塗塗装板を得た。該上塗塗装板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、各チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Aを得た。
【0087】
耐食性試験A:上記試験用塗板AについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を1時間行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
〇:赤錆の発生が認められない、
△:赤錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
×:赤錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0088】
試験用塗板Bの作成及び耐食性試験B
試験用塗板Bの作成: 板厚0.6mm、片面のめっき付着量20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板を上記アルカリ脱脂、水洗した後、表面調整(日本パーカライジング社製の「プレパレンZ」を用いたスプレー処理)を行い、さらにリン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3308」を用いたスプレー処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は1.5g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にマジクロン#1000ホワイト(関西ペイント社製、熱硬化型アクリル樹脂塗料、白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、150℃で20分間焼き付けて上塗塗装板を得た。該上塗塗装板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Bを得た。
【0089】
耐食性試験B:上記試験用塗板BについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面部面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面部面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面部面積の50%以上、
f:赤錆発生。
【0090】
試験用塗板Cの作成及び耐食性試験C
試験用塗板Cの作成: 板厚0.4mm、片面のめっき付着量120g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を上記アルカリ脱脂、水洗した後、その上にクロム酸系処理剤(関西ペイント社製、商品名「コスマー150」)を乾燥皮膜重量が0.1g/m2となるように塗布し、素材到達温度が60℃になるようにして20秒間焼付けて表面処理板を得た。ついで、この処理板上にKPカラー8000プライマー(関西ペイント社製、変性エポキシ系塗料)を乾燥膜厚が5μmとなるように塗装し、20秒間でPMTが210℃となる条件で塗膜を形成し、ついでこのプライマー被膜上にKPカラー1580ホワイト(関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系塗料、白色)を乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、40秒間でPMTが215℃となる条件で焼付けて上層塗膜を有する各試験塗板を作成した。該試験塗板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、60℃で10分乾燥して試験用塗板Cを得た。
【0091】
耐食性試験C:上記試験用塗板CについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面部面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面部面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面部面積の50%以上、
f:赤錆発生。
【0092】
試験用塗板Dの作成及び耐食性試験D
試験用塗板Dの作成: 板厚0.8mmのアルミニウム板(A1050)を、上記アルカリ脱脂、水洗した後、クロム酸系処理剤(関西ペイント社製、商品名「コスマー150」を乾燥皮膜重量が0.1g/m2となるように塗布し、素材到達温度が60℃になるようにして20秒間焼付けて表面処理板を得た。該表面処理板の端面部及び裏面部をシ−ルした板の片端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、60℃で10分乾燥して試験用塗板Dを得た。
【0093】
耐食性試験D:上記試験用塗板DについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面部面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面部面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0094】
【表2】
【0095】
電着塗板の作成および耐食性試験結果
実施例8〜14及び比較例2
前記製造例1〜7で得たチタン系金属表面処理剤を用いてそれぞれ下記E〜Hの4種類の試験用塗板を作成し、各々の試験用塗板に合わせた耐食性試験を行った。4種類の試験用塗板の作成方法及び耐食性試験方法を下記に示す。また、チタン系金属表面処理剤を全く塗布しない以外は実施例と同様にして作成したものを比較例2とした。耐食性試験の結果を後記表3に示す。
【0096】
試験用塗板Eの作成及び耐食性試験E
試験用塗板Eの作成:板厚0.8mmの冷間圧延軟鋼板(SPCC−SD)をアルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂、水洗した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にカチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、水洗し、170℃で20分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗装板の端面をカットした後、各チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Eを得た。
【0097】
耐食性試験E:上記試験用塗板EについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を1時間行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
〇:赤錆の発生が認められない、
△:赤錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
×:赤錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0098】
試験用塗板Fの作成及び耐食性試験F
試験用塗板Fの作成: 板厚0.8mm、片面のめっき付着量120g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を上記アルカリ脱脂、水洗した後、表面調整(日本パーカライジング社製の「プレパレンZ」を用いたスプレー処理)を行い、さらにリン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。リン酸亜鉛処理板にカチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、水洗し、170℃で20分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗装板の端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗板Fを得た。
【0099】
耐食性試験F:上記試験用塗板FについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を下記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面面積の50%以上、
f:赤錆発生。
【0100】
試験用塗板Gの作成及び耐食性試験G
試験用塗板Gの作成: 板厚0.8mmのアルミニウム板(A1050)を、上記アルカリ脱脂、水洗した後、カチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、水洗し、170℃で20分間焼き付けて電着塗装板を得た。得られた電着塗装板の端面をカットした後、上記チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、60℃で10分乾燥して試験用塗板Gを得た。
【0101】
耐食性試験G:上記試験用塗板GについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を120時間まで行い、端面の錆の程度を上記基準により評価した。
a:白錆の発生が認められない、
b:白錆の発生程度が端面面積の5%未満、
c:白錆の発生程度が端面面積の5%以上で10%未満、
d:白錆の発生程度が端面面積の10%以上で50%未満、
e:白錆の発生程度が端面面積の50%以上。
【0102】
袋部試験用塗装物Hの作成及び耐食性試験H
試験用塗板Hの作成:横70mm×縦150mm×板厚0.8mmの冷間圧延鋼板(SPCC)をアルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して脱脂、水洗した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング社製の「パルボンド3020」を用いた浸漬処理)を行った後、水洗、乾燥してリン酸亜鉛処理板を得た。リン酸亜鉛処理皮膜の付着量は3.0g/m2とした。このリン酸亜鉛処理熱間圧延鋼板4枚のうちの3枚に、底辺から縦方向45mmの位置で左右対称となる位置に穴の中心がくるようにして8mmφの穴を開け、穴のない鋼板が一方の端になるようにして、4枚の鋼板を20mm間隔で平行に配置し、開放された側面及び底面をリン酸亜鉛処理鋼板で遮蔽して、上面が開放された縦60mm×横70mm×高さ150mmの箱状構造体を作成した。この箱状構造体は一つの面だけに8mmφの穴があり、電着浴中に浸漬した時には、その8mmφの穴を通じてのみ電着塗料が出入するものである。
【0103】
この箱状構造体を、カチオン電着塗料エレクロン2000(関西ペイント社製、エポキシポリアミド系カチオン型電着塗料)を用いた電着浴中に、開放された面を上にして浸漬深さ90mm、対極との距離が110mmとなるように、かつ8mmφの穴の開いた面が対極に面するように浸漬し、被塗物を陰極として通電し電着塗装を行なった。
【0104】
通電条件は試験用塗板Eと同様である。電着塗装されたそれぞれの被塗物は、水洗後、170℃で20分間焼付けて電着塗装物を得た。得られた電着塗装物は各チタン系金属表面処理剤を用いて20℃で浸漬塗布を行ない、24時間常温乾燥して試験用塗装物Hを得た。
【0105】
耐食性試験H:上記試験用塗装物HについてJIS Z2371に規定する塩水噴霧試験を1時間行い、錆の程度を下記基準により評価した。
〇:赤錆の発生が認められない、
△:赤錆の発生程度が端面部面積の10%以上で50%未満、
×:赤錆の発生程度が端面部面積の50%以上。
【0106】
【表3】
【0107】
自動車補修試験用塗板の作成および耐湿性試験
実施例15
板厚0.6mmの冷間圧延軟鋼板(SPCC−SB)を用いてなる白色の自動車塗装鋼板を、耐水研磨紙280番でJIS−K5400に従い研磨し、素地を露出させた。この素地露出部に上記製造例8で得たチタン系金属表面処理剤S8を乾燥膜厚が1μmとなるようにしてスプレー塗布を行ない、1時間常温乾燥した後、SUウレタンプラサフA(関西ペイント社製、2液型ウレタン塗料、灰色)を乾燥膜厚30μmになるようにスプレー塗装し、1時間常温乾燥し、さらにその上にPGソロ#531(関西ペイント社製、2液型ウレタン塗料、白色)を90μmになるようにスプレー塗装し試験用塗板を得た。得られた試験用塗板について下記試験方法に従って耐水性試験を実施した。
【0108】
比較例3
実施例15において、素地露出部にチタン系金属表面処理剤で塗布する工程を省いた以外は実施例15と同様にして試験用塗板を得た。
【0109】
比較例4
実施例15においてチタン系金属表面処理剤S8の代わりに自動車補修用クロム酸系エッチングプライマ−(関西ペイント社製メタラクトH−5)を乾燥膜厚が5μmになるようにスプレー塗布した以外は実施例15と同様にして試験用塗板を作成した。
【0110】
実施例15並びに比較例3及び比較例4で得られた試験用塗板を用いて下記試験方法に従って耐水性試験を実施した。結果を後記表4に示す。
【0111】
耐水性試験:上記試験用塗板について、7日間室温に放置したものを、40℃の温水中に10日間浸漬した後とり出し、補修部のフクレの程度を下記基準により評価した。
〇:フクレの発生が全く認められない。
△:フクレの発生が認められるが、フクレの発生は補修部面積の50%未満。
×:フクレの発生が補修部面積の50%以上で認められる。
【0112】
【表4】
Claims (11)
- 被覆金属材の素地露出部を、
(A)加水分解性チタン化合物、加水分解性チタン化合物の低縮合物、水酸化チタン及び水酸化チタンの低縮合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のチタン化合物を過酸化水素水と混合して得られるチタン含有水性液、並びに
(B)有機酸、有機酸塩、金属弗化水素酸、金属弗化水素酸塩、アンモニア、及び有機塩基性化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有してなるチタン系金属表面処理剤により被覆することを特徴とする素地露出部の被覆方法。 - 素地露出部が、被覆金属材の切断面である請求項1に記載の素地露出部の被覆方法。
- 素地露出部が、被覆金属材の研磨面である請求項1に記載の素地露出部の被覆方法。
- 素地露出部が、金属材を電着塗装した際に金属材のエアーポケット部及び/又は袋部にできる素地露出部である請求項1に記載の素地露出部の被覆方法。
- 金属材を電着塗装した後、水洗し、該電着塗装金属材のエアーポケット部及び/又は袋部に上記チタン系金属表面処理剤を塗布し、電着塗膜及びチタン系金属表面処理剤による表面処理膜を同時に焼付ることを特徴とする請求項1又は4に記載の素地露出部の被覆方法。
- 金属材を電着塗装し、水洗して焼付けた後、該電着塗装金属材のエッジ部に上記チタン系金属表面処理剤を塗布して焼付ることを特徴とする請求項1に記載の素地露出部の被覆方法。
- 化合物(B)が、有機酸及び/又は有機酸塩である請求項1〜6のいずれか一項に記載の素地露出部の被覆方法。
- 化合物(B)が、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシル基含有有機亜リン酸及びカルボキシル基含有有機亜リン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の素地露出部の被覆方法。
- 化合物(B)が、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸である請求項1〜8のいずれか一項に記載の素地露出部の被覆方法。
- チタン含有水性液(A)及び化合物(B)の含有割合が、チタン含有水性液(A)の固形分100重量部に対して、化合物(B)が0.1〜400重量部である請求項1〜9のいずれか一項に記載の素地露出部の被覆方法。
- チタン系表面処理剤により形成される皮膜の乾燥膜厚が、0.001〜10μmの範囲内である請求項1〜10のいずれか一項に記載の素地露出部の被覆方法。
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KR20150071648A (ko) * | 2013-12-18 | 2015-06-26 | 니혼 파커라이징 가부시키가이샤 | 수계 금속 표면 처리제, 금속 표면 처리 피막 및 금속 표면 처리 피막이 형성된 금속 재료 |
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