JP2004189611A - フッ化カルボニルの製造方法、および該製造に用いる中間体 - Google Patents
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Abstract
【課題】半導体CVD用の洗浄ガス等として有用なフッ化カルボニルを、工業的に容易に収率よく高純度で製造する方法および該製造に用いる中間体を提供すること。
【解決手段】下式(3)で表される化合物をフッ素化してペルフルオロ化することにより下式(4)で表される化合物を得て、該式(4)で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とするフッ化カルボニルの製造方法。
Q(COORH)n・・式(3)
Qf(COOCF3)n・・式(4)
(式中、RHは、CH3、CH2F、またはCHF2を表す。Qは、n価含フッ素有機基を表す。Qfは、ペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
【選択図】 なし
【解決手段】下式(3)で表される化合物をフッ素化してペルフルオロ化することにより下式(4)で表される化合物を得て、該式(4)で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とするフッ化カルボニルの製造方法。
Q(COORH)n・・式(3)
Qf(COOCF3)n・・式(4)
(式中、RHは、CH3、CH2F、またはCHF2を表す。Qは、n価含フッ素有機基を表す。Qfは、ペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体のCVD用の洗浄ガスやフッ素ゴムモノマー製造原料として有用なフッ化カルボニル(FCOF)を経済的に有利な方法で製造し、かつ高純度のフッ化カルボニルを得る方法、および該製造に用いうる中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ化カルボニルは、半導体のCVD用の洗浄ガスとして有用な化合物である。フッ化カルボニルの製造方法としては、二酸化炭素をフッ素ガスでフッ素化する方法(特許文献1参照)、一酸化炭素を電解フッ素化する方法(特許文献2参照)、ホスゲンをHFやフッ化アンチモンでフッ素化する方法等が知られている。また、ヘキサフルオロプロピレンの酸素酸化反応の副生成物としてもフッ化カルボニルは生成する(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−116216号公報
【特許文献2】
特開昭45−26611号公報
【非特許文献1】
“Angewandte Chemie; International Edition in English”, 1985年, 第161巻, 第24号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フッ化カルボニルを洗浄ガスとして用いる場合には、フッ化カルボニルが高純度である必要がある。例えば、半導体産業で使用される洗浄ガスの純度は一般に極めて高く、99%以上、好ましくは99.9%以上とされている。しかし、上記方法により製造されるフッ化カルボニルには、それぞれ二酸化炭素、四フッ化炭素、フッ素化クロル化カルボニル等の不純物が残留する問題があった。
【0005】
一方、炭化水素系の化合物を、液相中でペルフルオロ化する技術が知られている(WO 90/03353)。この方法により、高い収率でかつ高純度のフッ素化合物を得ることができる。
【0006】
本発明者らは、上記方法を応用して、容易に入手できる炭化水素系のカルボン酸のメチルエステルからフッ化カルボニルを製造する方法を検討した。すなわち、メチルエステルを液相フッ素化し、次いでエステル結合を分解させることによりフッ化カルボニルを製造することを試みた。
しかし、この方法でフッ素化を行った生成物中には、炭素−炭素鎖の切断反応に伴う種々の副生成物が含まれるという不具合を生じる。その上、この副生成物のいくつかはフッ化カルボニルとの沸点や化学的性質が類似しているため、通常の分離方法では、高純度のフッ化カルボニルを得ることが困難であった。
【0007】
従って、本発明の課題は、工業的に容易な方法で製造し、収率よく高純度のフッ素化カルボニルを製造する方法および該製造に用いる中間体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〈1〉 下式(3)で表される化合物をフッ素化してペルフルオロ化することにより下式(4)で表される化合物を得て、該式(4)で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とするフッ化カルボニルの製造方法。
Q(COORH)n・・式(3)
Qf(COOCF3)n・・式(4)
(式中、RHは、CH3、CH2F、またはCHF2を表す。Qは、n価含フッ素有機基を表す。Qfは、ペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
〈2〉 式(3)で表される化合物が、下式(1)で表される化合物を下式(2)で表される化合物とエステル化反応させて得た化合物である〈1〉に記載の製造方法。
RHOH・・式(1)
Q(COX)n・・式(2)
(式中、RH、Qおよびnは、前記の意味と同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
〈3〉 式(2)で表される化合物が、前記エステル結合の分解反応によって得られた生成物から回収し得た下式(2F)で表される化合物である〈2〉に記載の製造方法。
Qf(COF)n・・式(2F)
(式中、Qfおよびnは、前記の意味と同じ意味を表す。)
〈4〉 式(3)で表される化合物のフッ素含有量が20〜70質量%であり、分子量が200〜1100である〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
〈5〉 式(3)で表される化合物が、nが1〜3であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロ有機基である化合物であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載の製造方法。
〈6〉 前記フッ素化が液相フッ素化であることを特徴とする〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の製造方法。
〈7〉 塩素系有機化合物または塩酸を実質的に含まず、ガスクロマトグラフィーで分析した純度が99.9%以上であることを特徴とするフッ化カルボニル。
〈8〉 下式で表される化合物から選ばれるいずれかの化合物。
Q1(OCORH)2・・式(3−1)
Q1f(OCOCF3)2・・式(4−1)
Q2COORH・・式(3−2)
Q2fCOOCF3・・式(4−2)
(ただし、RHはCH3、CH2F、またはCHF2を表す。Q1は2価含フッ素有機基、Q1fはペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、Q2は1価含フッ素有機基、Q2fはペルフルオロ化された1価含フッ素有機基を表す。)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のフッ化カルボニルの製造方法は、式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)ともいう。他の式で表される化合物も同様に記載することがある。)をフッ素化して、ぺルフルオロ化することにより式(4)で表される化合物を得て、該化合物(4)においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、収率よく目的生成物であるフッ化カルボニルが得られる。また、本発明の製造方法において生成する副生成物および本製造方法における原料の沸点が一般に50℃以上であるために、フッ化カルボニル(沸点−83℃)との分離が容易である。また、本発明の製造方法で製造されたフッ化カルボニルは、半導体産業においても使用できる、極めて高純度のものであり、その純度は99%以上となりうる。
【0011】
本発明において「ぺルフルオロ化」とは、フッ素化されうる基中に存在するフッ素化されうる部分の実質的に全てがフッ素化されることをいう。たとえば、C−H部分を有する有機基をペルフルオロ化した基においては、C−H部分の実質的に全てがC−Fになり、炭素−炭素不飽和結合が存在する有機基をペルフルオロ化した基においては、実質的に全ての不飽和結合にフッ素原子が付加する。
【0012】
本発明における化合物(3)は、含フッ素n価有機基(Q)の結合手に、−COORHで表される基がn個結合した化合物である。nは1以上の整数を示す。nが1である化合物は、化合物の入手しやすさ、および後述する連続製造ができる点で有利であり、nが2以上である化合物(3)は、化合物(3)の分子量が大きくなるため、蒸気圧が小さく、液相フッ素化反応の反応の制御がしやすく、また、該反応の収率も容積効率の点も高くなるおいても有利である。nが2以上である場合、好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは2又は3であり、nが2であることが最も好ましい。
【0013】
本明細書における有機基とは、炭素原子を必須とする基をいう。フッ素化されうる有機基としては、C−H部分を有する有機基や、炭素−炭素不飽和結合を有する有機基が挙げられ、C−H部分を有する有機基が好ましい。特に該基のうち炭素−炭素結合が単結合のみからなる飽和有機基が好ましい。
【0014】
C−H部分を有する有機基としては、飽和炭化水素基や、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基、部分ハロゲン化飽和炭化水素基、部分ハロゲン化(エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素)基等が挙げられ、1価または2価の基が好ましい。
ここで部分ハロゲン化とは、水素原子が特定の割合で残った状態で一部がハロゲン化されていることを意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、フッ素原子または塩素原子が好ましい。さらに、フッ素化条件下で最も安定であることから、ハロゲン原子としてはフッ素原子が特に好ましい。
【0015】
本発明の有機基として用いられる1価飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、または環部分を有する1価飽和炭化水素基(たとえば、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、またはこれらの基を部分構造とする基。)等が挙げられ、なかでもアルキル基が好ましい。
また、2価飽和炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、または環部分を有する2価飽和炭化水素基(たとえば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、またはシクロアルキレン基を部分構造とする2価飽和脂肪族炭化水素基。)等が挙げられ、なかでもアルキレン基が好ましい。
【0016】
また、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基のうち1価の基としては、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたアルキル基、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたシクロアルキル基等が挙げられる。好ましくは、アルコキシアルキル基である。
また、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基のうち2価の基としては、炭素−炭素結合間や該基の結合末端にエーテル性酸素原子が挿入されたアルキレン基、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたシクロアルキレン基等が挙げられ、オキシアルキレン基、または、ポリオキシアルキレン部分を有する基、が好ましい。エーテル性酸素原子を含有する基において、エーテル性酸素原子の数は1個であっても2個以上であってもよい。
【0017】
化合物(3)におけるn価含フッ素有機基(Q)としては、部分フッ素化された有機基であってもペルフルオロ化された有機基であってもよい。Qは、含フッ素n価飽和炭化水素基、含フッ素(エーテル性酸素原子含有n価飽和炭化水素)基が好ましい。さらに、Qはペルフルオロ化された基であるのが好ましい。すなわち、Qは後述するQfと同一の基であるのが好ましい。Qが1価の基である場合には、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基が好ましく、2価の基である場合には、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基が好ましい。Qの好ましい例としてはQfの具体例に示されるものが挙げられる。
【0018】
また、化合物(3)におけるRHは、−CH3、−CH2F、−CHF2を表し、中でも−CH3が好ましい。
【0019】
化合物(3)の具体例としては、以下の具体例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
CH3OCO(CF2)6CF3、CH3OCO(CF2)7CF3、CH3OCO(CF2)8CF3、CH3OCO(CF2)9CF3、CH3OCOCF(CF2CF3)CF2CF2CF2CF3。
CH3OCO(CF2)aCOOCH3(aは2〜8の整数を示す。)、CH3OCOCF(CF3)CF2CF2CF2COOCH3、CH3OCOCF2CF(CF3)CF2CF2COOCH3、CH3OCOCF(CF3)CF2CF2CF(CF3)COOCH3。
【0020】
CH3OCOCF(CF3)OCF(CF3)COOCH3、CF3CF2C(COOCH3)3、CH3OCOCF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは1〜5の整数を示す。)、CH3OCO(CF2)dOCF3(dは1〜8の整数を示す。)。
CH3OCOCF(CF3)O(CF2)bCOOCH3(bは1〜5の整数を示す。)、CH3OCOCF(CF3)O(CF2)bOCF(CF3)COOCH3。
さらに、化合物(3)の具体例として下記の化合物も挙げられる。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明において、化合物(3)のペルフルオロ化におけるフッ素化方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、フッ化コバルトを用いるフッ素化法、電気化学的フッ素化法、または液相フッ素化法等を採用できるが、フッ素化反応の収率が格段に高いことから、本発明においては、液相中でフッ素と反応させる液相フッ素化法によりフッ素化を行うのが好ましい。
【0023】
液相フッ素化法における液相としては、反応の基質自身であってもよいが、通常は反応に関与しない有機溶媒や生成物を液相にするのが好ましい。また、フッ素は、フッ素ガスそのままを用いるか、不活性ガスで希釈されたフッ素ガスを用いるのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガスが好ましく、経済的な理由から窒素ガスが特に好ましい。窒素ガス中のフッ素ガス量は特に限定されず、10vol%以上にするのが効率の点で好ましく、20vol%以上にするのが特に好ましい。
【0024】
液相フッ素化に有機溶媒を用いる場合には、フッ素化反応に不活性な有機溶媒を採用するのが好ましく、さらに化合物(3)の溶解性が高い溶媒を用いるのが好ましく、特に化合物(3)を1質量%以上溶解しうる溶媒が好ましく、5質量%以上溶解しうる溶媒が最も好ましい。
液相の例としては、後述の化合物(2F)、フッ素化反応の生成物である化合物(4)のほかに、液相フッ素化の溶媒として用いられる公知の溶媒が挙げられる。中でも、液相としては、化合物(2F)または化合物(4)であることが、後処理が容易になる利点があるため好ましい。
有機溶媒の量は、化合物(3)の総質量に対して、5倍質量以上が好ましく、特に1×101〜1×105倍質量が好ましい。ただし、フッ素化反応を原料を連続供給し、生成物を連続抜き出しをして行う連続方式で実施する場合には、生成物(4)が溶媒の働きをするため、反応の後期には有機溶媒の量が極めて少なくなり得る。
【0025】
液相フッ素化反応の反応形式は、特に制限されない。たとえば、反応器にフッ素化反応溶媒と化合物(3)とを仕込み、撹拌し、つぎにフッ素ガスを、フッ素化反応溶媒中に連続的に供給しながら反応させる方法が挙げられる。また、反応器にフッ素化反応溶媒を仕込んで撹拌し、つぎにフッ素ガスと化合物(3)とを、所定のモル比で連続的にフッ素化反応溶媒中に供給する方法が挙げられる。このうち、反応収率と選択率の点から、後者の方法が好ましい。ここで用いるフッ素ガスは、窒素ガス等の不活性ガスで希釈したフッ素ガスであってもよい。
【0026】
液相フッ素化反応に用いるフッ素は、化合物(3)中に含まれる水素原子量に対するフッ素の量が、反応の最初から最後まで常に過剰当量となるように保つのが好ましく、特に水素原子に対するフッ素量を1.05倍当量以上(すなわち、1.05倍モル以上)となるように保つのが選択率の点から好ましく、2倍当量以上(すなわち、2倍モル以上)となるように保つのが選択率の点からさらに好ましい。また、反応の開始時点においてもフッ素の量を過剰当量にするために、反応当初に用いるフッ素化反応溶媒には、あらかじめフッ素を充分量溶解させておくのが好ましい。
【0027】
また、液相フッ素化反応は、化合物(3)中のエステル結合を切断せずに実施する必要があることから、反応温度の下限は−60℃および化合物(3)の沸点、のうち低い方の温度にするのが好ましい。通常の場合には、反応収率、選択率、および工業的実施のしやすさの点から、反応温度は−50℃〜+100℃が好ましく、−20℃〜+50℃が特に好ましい。フッ素化反応の反応圧力は特に限定されず、常圧〜2MPa(ゲージ圧。以下、圧力はゲージ圧で表す。)にするのが、反応収率、選択率、工業的な実施のしやすさの観点から特に好ましい。
【0028】
さらに、液相フッ素化反応を効率的に進行させるために、反応系中にベンゼンやトルエン等のC−H結合含有化合物を添加する、化合物(3)を長時間反応系内に滞留させる、または、紫外線照射を行う等の操作を行ってもよい。これらの操作は液相フッ素化反応の後期に行うのが好ましい。
【0029】
液相フッ素化においては、水素原子がフッ素原子に置換されてHFが副生する。このHFを除去する目的で、反応系中にHF捕捉剤(NaFが好ましい。)を共存させる、反応器ガス出口でHF捕捉剤と出口ガスを接触させる、または出口ガスを冷却してHFを凝縮させて回収する、のが好ましい。またHFは窒素ガス等の不活性ガスに同伴させて反応系外に導き、アルカリ処理してもよい。HF捕捉剤を使用する場合の量は、化合物(3)中に存在する全水素原子量に対して1〜20倍モルが好ましく、1〜5倍モルが特に好ましい。
【0030】
フッ素化反応の反応生成物は、そのまま次の工程に用いてもよく、精製して高純度のものにしてもよい。精製方法としては、粗生成物を常圧または減圧下に蒸留する方法等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、化合物(3)で表される化合物をフッ素化する際に、液相フッ素化反応を円滑に進行させるためには、化合物(3)のフッ素含量は20〜70質量%であるのが好ましく、特に40〜70質量%であるのが好ましい。また、化合物(3)の分子量は200〜1100の範囲にあるのが好ましく、特に300〜800の範囲にあるのが好ましい。
化合物(3)がフッ素含量が20〜70質量%の範囲にある場合、フッ素化反応時の液相中への溶解性が格段に向上し、液相フッ素化反応の操作性、反応収率が向上する、経済性に優れる等の利点を有する。
また、化合物(3)の分子量が200以上である場合には、気相フッ素化反応により分解反応が起こるリスクを回避できる利点があり、分子量が1100以下である場合には、化合物の取扱いや生成物の精製がしやすい利点がある。
【0032】
次に、本発明の製造方法において、化合物(3)のフッ素化によりペルフルオロ化して得られた化合物(4)において、エステル結合の分解反応を行うことによって、フッ化カルボニルを得る。
化合物(4)におけるQfとしてはペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。1価のQfとしては、ペルフルオロアルキル基、該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基が好ましく、より好ましくは、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキル基であり、炭素数1〜18のペルフルオロ(アルコキシアルキル)基がとりわけ好ましい。また、ヘキサフルオロプロピレンのオリゴマーに由来する、1−ヘプタフルオロプロポキシ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基等を用いることも好ましい。
2価のQfとしては、ペルフルオロアルキレン基、該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基が好ましく、より好ましくは、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキレン基である。
【0033】
ペルフルオロアルキル基としては、つぎの基が挙げられる。−(CF2)6CF3、−(CF2)7CF3、−(CF2)8CF3、−(CF2)9CF3、−CF(CF2CF3)CF2CF2CF2CF3等。
【0034】
また、ペルフルオロアルキレン基としては、つぎの基が挙げられる。−(CF2)a−(aは2〜8の整数を示す。)、−CF(CF3)CF2CF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2CF2−、−CF(CF3)CF2CF2CF(CF3)−等。
【0035】
【化2】
【0036】
ペルフルオロ化されたエーテル性酸素原子含有基としては、上記の基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたつぎの基が挙げられる。1価の基としては、−CF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは1〜5の整数を示す。)、−(CF2)dOCF3(dは1〜8の整数を示す。)等。2価の基としては、−CF(CF3)O(CF2)b−(bは1〜5の整数を示す。)、−CF(CF3)O(CF2)bOCF(CF3)−等。
【0037】
本発明においては、さらに化合物(4)においてエステル結合の分解反応を行う。エステル結合の分解反応は公知の技術を用いることができる。この反応により、化合物中に存在するエステル結合を切断して、フッ化カルボニルを生成させる。
エステル結合の分解反応は、熱分解反応、または求核剤もしくは求電子剤の存在下に行う分解反応、等によるのが好ましい。熱分解反応は、気相反応または液相反応で実施するのが好ましい。
【0038】
たとえば、化合物(4)が沸点が低い化合物である場合、熱分解反応は、気相熱分解法で実施するのが好ましい。気相熱分解法は、気相で連続的に分解反応を行い、生成するフッ化カルボニルを出口ガスから凝縮させ、これらを回収する方法で行うのが好ましい。気相熱分解法の反応温度は、50〜350℃が好ましく、50〜300℃が特に好ましく、とりわけ100〜250℃が好ましい。
気相熱分解法においては、金属塩触媒を使用してもよく、反応系に反応には直接は関与しない不活性ガスを共存させてもよい。金属塩触媒としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等を用いることができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。不活性ガスの添加量は、フッ素化反応生成物の総量に対して0.01〜50vol%程度であるのが好ましい。不活性ガスの添加量が多すぎると、生成物の回収量が低減することがある。
【0039】
一方、化合物(4)が沸点が高い化合物である場合、エステル結合の分解反応は、液相熱分解法で実施するのが好ましい。液相分解法は、液状にした化合物(4)を加熱する方法により実施するのが好ましい。該分解反応の生成物は、反応器中から一度に抜き出してもよい。また、フッ化カルボニルは、化合物(4)よりも通常は低沸点になることを利用して、該分解反応を蒸留塔を付けた反応装置を用いて行い、生成物を蒸留で抜き出しながら行う反応蒸留法によって行ってもよい。液相熱分解法の反応温度は50〜300℃が好ましく、特に100〜250℃が好ましい。液相熱分解法における反応圧力は特に限定されない。
液相熱分解法は、無溶媒で行っても、反応溶媒の存在下に行ってもよく、無溶媒で行うのが好ましい。反応溶媒を使用する場合には、化合物(4)に対して0.1倍〜10倍質量の溶媒を使用するのが好ましい。反応溶媒としては、ジグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル系化合物、ペルフルオロ−2,5−ビスチリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−ノナン酸フルオリド、ペルフルオロ(−2−ブチル−テトラヒドロフラン)等のペルフルオロ化合物等を用いることができる。
【0040】
エステル結合の分解反応を液相中で求核剤または求電子剤と反応させる方法で実施する場合には、無溶媒であっても、分解反応溶媒の存在下であってもよく、無溶媒で行うのが好ましい。無溶媒で反応を行ったときには、フッ素化反応生成物自身が溶媒としても作用し、反応生成物中から溶媒を分離する手間を省略できるため特に好ましい。求核剤または求電子剤を用いる方法も、蒸留塔をつけた反応装置で蒸留をしながら行うのが好ましい。
【0041】
求核剤としてはF−が好ましく、特にアルカリ金属のフッ化物由来のF−が好ましい。アルカリ金属のフッ化物としては、NaF、NaHF2、KF、CsFが好ましく、経済性の点ではNaFが、反応活性の点ではKFが特に好ましい。また、反応の最初の求核剤量は触媒量であってもよく、過剰量であってもよい。F−等の求核剤の量は化合物(4)に対して1〜500モル%が好ましく、1〜100モル%が特に好ましく、とりわけ5〜50モル%が好ましい。反応温度の下限は−30℃が好ましく、上限は−20℃〜250℃であるのが好ましい。
【0042】
化合物(4)のエステル結合の分解反応では、フッ化カルボニルと化合物(2F)が生成する。本発明においては、分解反応生成物中のフッ化カルボニルと化合物(2F)とを分離するのが好ましい。分離方法としては、蒸留法が好ましい。さらに、エステル結合の分解反応は反応蒸留法で行うのが特に好ましい。該方法によれば、エステル結合の分解反応性生物を改めて分離生成することなしに、きわめて高純度のCOF2を得ることができる。
【0043】
以上のように、本発明の製造方法によれば、きわめて高純度のフッ化カルボニルを製造できる。また、本発明の製造方法により製造されたフッ化カルボニルは、副生成物をほとんど含まず、または含んでいたとしても通常の分離方法で分離できる不純物であるため、容易に分離して高純度のフッ化カルボニルとすることができる。すなわち、本発明の製造方法により製造されるフッ化カルボニルは、CF4、CO2、CF3COF、SiF4、COFCl、およびHCl等の不純物を実質的に含まないフッ化カルボニルとなり得る。このうち、特にCOFCl等の塩素系有機化合物や塩酸は、反応装置への腐食や、各用途において問題となり得る化合物であり、本発明によれば、これらの塩素系有機化合物や塩酸を実質的に含まないフッ化カルボニルを得ることができる。
ここで、本発明において、「実質的に塩素系有機化合物または塩酸を含まない」とは、生成物中に含まれる塩素系有機化合物または塩酸の含有率が0.1%未満であることを言い、好ましくは、その含有率は0.01%未満であることをいう。また、塩素系有機化合物や塩酸の量は、イオンクロマト法で塩素量を測定することにより定量できる。
【0044】
また、本発明における反応は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことができる。生成物であるフッ化カルボニルの常圧における沸点が−83℃と低いため、回収率を高めるために加圧下で行うことが好ましい。
【0045】
本発明における化合物(3)は、化合物(1)を化合物(2)とエステル化反応させることにより得られた化合物であることが好ましい。化合物(2)としては、上記化合物(3)エステル結合の分解反応生成物から得た下式(2F)で表される化合物であることが好ましい。ただし、Q、nおよびQfは前記と同じ意味を示す。
RHOH・・式(1)
Q(COF)n・・式(2)
Qf(COF)n・・式(2F)
【0046】
化合物(1)は、公知の化合物であり、公知の方法により製造できる。
また、化合物(2)又は化合物(2F)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0047】
nが1である化合物(2)の例;
FCO(CF2)6CF3、FCO(CF2)7CF3、FCO(CF2)8CF3、FCO(CF2)9CF3、FCOCF(CF2CF3)CF2CF2CF2CF3、FCOCF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは1〜5の整数を示す。)
nが2である化合物(2)の例;
FCOCF(CF3)CF2CF2CF2COF、FCOCF2CF(CF3)CF2CF2FOCCF(CF3)CF2CF2CF(CF3)COF、FCOCF(CF3)O(CF2)bCOF(bは1〜5の整数を示す。)、FCOCF(CF3)O(CF2)bOCF(CF3)COF。
【0048】
【化3】
【0049】
化合物(1)と化合物(2)とのエステル化反応は、公知のエステル化反応の条件により実施できる。反応温度の下限は通常は−50℃であるのが好ましく、上限は+100℃であるのが好ましい。また、該反応の反応時間は、原料の供給速度と実際に反応する化合物量に応じて適宜変更されうる。反応圧力は常圧〜2MPaであるのが好ましい。
エステル化反応では、フッ酸(HF)が発生するため、アルカリ金属フッ化物(NaF、KF等が好ましい。)、またはトリアルキルアミン等をHF捕捉剤として反応系中に存在させてもよい。HF捕捉剤の量は、化合物(1)に対して1n倍モル〜10n倍モルであるのが好ましい。HF捕捉剤を使用しない場合には、HFが気化しうる反応温度で反応を行い、HFを窒素気流に同伴させて反応系外に排出するのが好ましい。
【0050】
化合物(1)の量は、化合物(2)に対してn倍モル(nは、化合物(2)中の−COFで表される基の数(n)に対応する。)以下であるのが好ましい。化合物(1)の量をn倍モル以下にすることにより、エステル化反応の反応生成物中に、未反応の化合物(1)が残って該化合物(1)が次のフッ素化反応時に好ましくない反応を引き起こす問題を回避でき、かつ、化合物(3)の精製の手間を省略できる。特に該化合物(1)の量は化合物(2)に対して0.5n倍〜n倍モルであるのが特に好ましく、0.9n倍〜n倍モルであるのがとりわけ好ましい。
【0051】
nが2以上である場合には、エステル化反応の生成物中には未反応の−COF基が残った下記化合物(3−A)が反応生成物中に存在しうる。この化合物(3−A)はエステル化反応生成物中に存在させたまま、つぎのフッ素化反応を行ってもよい。ただし、下式中のn、Q、は上記と同じ意味を示し、mは1以上n未満の整数を示す。nが2である場合のmは1である。また、nが3以上である場合はの化合物(3−A)は、2種以上の混合物となり得る。
Q(COORH)n−m(COF)m・・式(3−A)
【0052】
なお、上記エステル化反応で得られた化合物(3)において、上記液相フッ素化をおこなう場合、フッ素化反応を円滑に行う観点から、エステル化反応の生成物を精製するのが好ましい。特にエステル化反応の生成物が化合物(1)を含む場合には、精製により化合物(1)を除去しておくのが好ましい。精製方法としては、蒸留法、生成物を水などで処理した後に分液する方法、適当な有機溶媒で抽出した後に蒸留する方法、シリカゲルカラムクロマトグラフィ等が挙げられる。
【0053】
本発明の方法で得られるフッ化カルボニルは、半導体CVDのクリーニングガス、フッ素ゴム用モノマーのペルフルオロ(メチルビニルエーテル)の原料等としても有用な化合物である。本発明のフッ化カルボニルを半導体CVDのクリーニングガスとして用いる場合、その純度は99.9%以上であることが好ましい。
たとえば、フッ化カルボニルは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと反応させた後に、熱分解反応を行うことによってフッ素ゴム用モノマーとして有用なペルフルオロメチルビニルエーテルに導くことができる。
【0054】
本発明の製造方法の好ましい態様としては、以下の態様が挙げられる。
[態様1]
nが2であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキレン基である製造方法。
【0055】
[態様2]
nが1であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキル基である製造方法。
【0056】
[態様3]
エステル結合の分解反応で生成した化合物(2F)の一部または全部を回収して、化合物(1)と反応させる化合物(2)として用いる製造方法。
【0057】
また、本発明の製造方法における中間体として提供される下記化合物は、新規化合物である。
Q1(OCORH)2・・式(3−1)
Q1f(OCOCF3)2・・式(4−1)
Q2COORH・・式(3−2)
Q2fCOOCF3・・式(4−2)
ただし、RHは前記の意味と同じ意味を示す。Q1は2価含フッ素有機基、Q1fはペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、Q2は1価含フッ素有機基、Q2fはペルフルオロ化された1価含フッ素有機基を示す。
【0058】
Q1で示される2価含フッ素有機基、およびQ2が示す1価含フッ素有機基としては、それぞれ、前記Qが示す1価の含フッ素有機基、および2価の含フッ素有機基に挙げた基を用いることができる。
Q1fで示されるペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、およびQ2fで示されるペルフルオロ化された1価含フッ素有機基としては、それぞれ、前記Qfが示す1価の含フッ素有機基、および2価の含フッ素有機基に挙げた基のうちペルフルオロ化された基を用いることができる。
【0059】
【実施例】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下において、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンをR−113と記す。また、ガスクロマトグラフィをGCと記し、GC分析におけるピーク面積比をGC分析値とする。また、ガスクロマトグラフィ−質量分析をGC−MSと記す。
【0060】
[実施例1]FCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3を用いたCOF2の製造例
(例1−1)エステル化反応によるCH3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3の製造例
ハステロイC製の2LのオートクレーブにFCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3(2400g)を入れ、反応器を冷却した。常圧下に、内温が30℃以下に保たれるようにCH3OH(150g)をゆっくり導入した。同時に充分に撹拌して、窒素ガスをバブリングさせ、反応により生じたHFを系外に追い出した。CH3OHの全量を投入後、さらに50℃で5時間反応させて生成物を得た。生成物をGC分析した結果、CH3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3が99.9%生成していた。未反応のCH3OHは検出されなかった。この生成物は精製することなく、以下の反応に使用した。
【0061】
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm):3.9(3H)。
19F−NMR(282.6MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−79.2〜−80.6(4F)、−81.8〜−82.8(8F)、−85.0〜−86.5(1F)、−130.1(2F)、−132.2(1F)、−145.8(1F)。
【0062】
(例1−2)フッ素化反応によるCF3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3の製造例
500mLのニッケル製オートクレーブに、R−113(312g)を加えた後に撹拌して25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。また−10℃に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。オートクレーブに窒素ガスを室温で1時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、20%希釈フッ素ガスと記す。)を室温で流速8.48L/hで1時間吹き込んだ。つぎに20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1−1で得た生成物(10g)をR−113(50g)に溶解した溶液を1.6時間かけて注入した。
つぎに、20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながらオートクレーブ内圧力を0.15MPaまで昇圧して、ベンゼン濃度が0.01g/mLであるR−113溶液を25℃から40℃にまで昇温しながら9mL注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉め、0.3時間撹拌を続けた。
つぎに反応器内圧力を0.15MPaに、反応器内温度を40℃に保ちながら、前記ベンゼン溶液を6mL注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉め、0.3時間撹拌を続けた。さらに同様の操作を3回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.34g、R−113の注入総量は33mLであった。
【0063】
さらに20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら1時間撹拌を続けた。つぎに、反応器内圧力を常圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。生成物を19F−NMRで分析した結果、標記化合物が収率95%で含まれていることを確認した。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−58.9(3F)、−78.6〜−80.5(4F)、−82.3(8F)、−84.8〜−86.1(1F)、−130.3(2F)、−132.8(1F)、−145.5(1F)。
【0064】
(例1−3)エステル結合の分解反応によるCOF2の製造例
蒸留塔およびその上部に−10℃の冷却水が循環するような還流器を備えた300mLのオートクレーブを準備した。オートクレーブに、例1−2で得たKF(2g)、CF3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3(100g)を仕込み、熱媒温度を100〜130℃に保って加熱し、撹拌をした。反応器の圧力が0.3MPa以上になったときに、還流器上部より生成ガスを抜き出し、液体窒素で冷却したステンレス製(SUS316製)トラップでガスを回収した。生成するガスは、液体窒素で冷却したステンレス(SUS316)製トラップにて回収した。反応が進行してガスの生成が見られなくなったところで反応を終了した。反応後にトラップの重量測定、およびGC分析を行った結果、COF2(純度99.9%、9.4g、収率80%)の生成が認められた。得られたCOF2を分析した結果、塩素の存在は認められなかった。
【0065】
[実施例2]ペルフルオロシクロヘキサン−1,4ジアシルフルオリド(下記化合物(2−A))を用いたCOF2の製造例
(例2−1)エステル化反応による下記化合物(2−B1)の製造例
【0066】
【化4】
【0067】
100mLの丸底フラスコに上記化合物(2−A)(12.35g)を取り、反応容器を氷浴に浸して冷却した。常圧で内温が30℃以下に保たれるようにゆっくりとCH3OH(2.18g)を滴下した。充分に撹拌しながら、同時に窒素ガスをバブリングさせ、反応により生じたHFを系外に追い出した。滴下途中から白色沈殿が大量に生成したが、撹拌を続けた。全量滴下後、氷浴を外し、ゆっくりと室温まで昇温しながら約2時間撹拌を続けた。生成物を19F−NMR分析した結果、化合物(2−B1)(粗収率85%)を得た。生成物をtert−ブチルメチルエーテルに溶解させて再結晶による精製を行った。これを次工程に使用した。
【0068】
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm):4.04(6H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−116.7〜−117.8(4F)、−128.8〜−129.8(4F)、−179.3(2F)。
【0069】
(例2−2)フッ素化反応による化合物(2−C)の製造例
【0070】
【化5】
【0071】
例2−1で使用したものと同じオートクレーブを準備し、20%希釈フッ素ガスの流速を6.36L/hに設定した。ここに例2−1で得た化合物(2−B1)(2.48g)をR−113(50g)に溶解した溶液を1.4時間かけて注入した。さらに、例1−2と同様に20%希釈フッ素ガスを吹き込み、ベンゼンの注入を行い、反応を終了させた。ベンゼンの注入総量は0.33g、R−113の注入総量は33mLであった。生成物を19F−NMRで分析した結果、標記化合物が98%で含まれていることを確認した。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−58.2(6F)、−116.7〜−117.5(4F)、−127.8〜−128.6(4F)、−179.3(2F)。
【0072】
例2−3エステル結合の分解反応によるCOF2の製造例
例1−3におけるフラスコの容量を30mLに変更し、KF量を0.1gに変更し、化合物(2−C)を2.5g用いること以外は、例1−3と同様の方法で反応を行った。反応後にトラップの重量測定、およびGC分析を行った結果、COF2(純度99.1%、0.61g、収率90%)の生成が認められた。生成したCOF2をイオンクロマトグラフィーで分析した結果、塩素の存在は認められなかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、高い収率で極めて高純度のフッ化カルボニルを製造できる。本発明の製造方法は、安価な原料から収率よくフッ化カルボニルを製造できる経済的に有利な方法である。また、本発明の製造方法においては、従来のフッ化カルボニルと異なり、塩素系化合物や分離しにくい副生成物が混入することがないため、高純度のフッ化カルボニルを得ることができ、該高純度のフッ化カルボニルはCVD用の洗浄ガスとして有用に用いうる。また、本発明の製造方法によれば、フッ化カルボニルの製造用中間体等として有用な新規化合物を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体のCVD用の洗浄ガスやフッ素ゴムモノマー製造原料として有用なフッ化カルボニル(FCOF)を経済的に有利な方法で製造し、かつ高純度のフッ化カルボニルを得る方法、および該製造に用いうる中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ化カルボニルは、半導体のCVD用の洗浄ガスとして有用な化合物である。フッ化カルボニルの製造方法としては、二酸化炭素をフッ素ガスでフッ素化する方法(特許文献1参照)、一酸化炭素を電解フッ素化する方法(特許文献2参照)、ホスゲンをHFやフッ化アンチモンでフッ素化する方法等が知られている。また、ヘキサフルオロプロピレンの酸素酸化反応の副生成物としてもフッ化カルボニルは生成する(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−116216号公報
【特許文献2】
特開昭45−26611号公報
【非特許文献1】
“Angewandte Chemie; International Edition in English”, 1985年, 第161巻, 第24号
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フッ化カルボニルを洗浄ガスとして用いる場合には、フッ化カルボニルが高純度である必要がある。例えば、半導体産業で使用される洗浄ガスの純度は一般に極めて高く、99%以上、好ましくは99.9%以上とされている。しかし、上記方法により製造されるフッ化カルボニルには、それぞれ二酸化炭素、四フッ化炭素、フッ素化クロル化カルボニル等の不純物が残留する問題があった。
【0005】
一方、炭化水素系の化合物を、液相中でペルフルオロ化する技術が知られている(WO 90/03353)。この方法により、高い収率でかつ高純度のフッ素化合物を得ることができる。
【0006】
本発明者らは、上記方法を応用して、容易に入手できる炭化水素系のカルボン酸のメチルエステルからフッ化カルボニルを製造する方法を検討した。すなわち、メチルエステルを液相フッ素化し、次いでエステル結合を分解させることによりフッ化カルボニルを製造することを試みた。
しかし、この方法でフッ素化を行った生成物中には、炭素−炭素鎖の切断反応に伴う種々の副生成物が含まれるという不具合を生じる。その上、この副生成物のいくつかはフッ化カルボニルとの沸点や化学的性質が類似しているため、通常の分離方法では、高純度のフッ化カルボニルを得ることが困難であった。
【0007】
従って、本発明の課題は、工業的に容易な方法で製造し、収率よく高純度のフッ素化カルボニルを製造する方法および該製造に用いる中間体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〈1〉 下式(3)で表される化合物をフッ素化してペルフルオロ化することにより下式(4)で表される化合物を得て、該式(4)で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とするフッ化カルボニルの製造方法。
Q(COORH)n・・式(3)
Qf(COOCF3)n・・式(4)
(式中、RHは、CH3、CH2F、またはCHF2を表す。Qは、n価含フッ素有機基を表す。Qfは、ペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。)
〈2〉 式(3)で表される化合物が、下式(1)で表される化合物を下式(2)で表される化合物とエステル化反応させて得た化合物である〈1〉に記載の製造方法。
RHOH・・式(1)
Q(COX)n・・式(2)
(式中、RH、Qおよびnは、前記の意味と同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
〈3〉 式(2)で表される化合物が、前記エステル結合の分解反応によって得られた生成物から回収し得た下式(2F)で表される化合物である〈2〉に記載の製造方法。
Qf(COF)n・・式(2F)
(式中、Qfおよびnは、前記の意味と同じ意味を表す。)
〈4〉 式(3)で表される化合物のフッ素含有量が20〜70質量%であり、分子量が200〜1100である〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の製造方法。
【0009】
〈5〉 式(3)で表される化合物が、nが1〜3であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロ有機基である化合物であることを特徴とする〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載の製造方法。
〈6〉 前記フッ素化が液相フッ素化であることを特徴とする〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の製造方法。
〈7〉 塩素系有機化合物または塩酸を実質的に含まず、ガスクロマトグラフィーで分析した純度が99.9%以上であることを特徴とするフッ化カルボニル。
〈8〉 下式で表される化合物から選ばれるいずれかの化合物。
Q1(OCORH)2・・式(3−1)
Q1f(OCOCF3)2・・式(4−1)
Q2COORH・・式(3−2)
Q2fCOOCF3・・式(4−2)
(ただし、RHはCH3、CH2F、またはCHF2を表す。Q1は2価含フッ素有機基、Q1fはペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、Q2は1価含フッ素有機基、Q2fはペルフルオロ化された1価含フッ素有機基を表す。)
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のフッ化カルボニルの製造方法は、式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)ともいう。他の式で表される化合物も同様に記載することがある。)をフッ素化して、ぺルフルオロ化することにより式(4)で表される化合物を得て、該化合物(4)においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、収率よく目的生成物であるフッ化カルボニルが得られる。また、本発明の製造方法において生成する副生成物および本製造方法における原料の沸点が一般に50℃以上であるために、フッ化カルボニル(沸点−83℃)との分離が容易である。また、本発明の製造方法で製造されたフッ化カルボニルは、半導体産業においても使用できる、極めて高純度のものであり、その純度は99%以上となりうる。
【0011】
本発明において「ぺルフルオロ化」とは、フッ素化されうる基中に存在するフッ素化されうる部分の実質的に全てがフッ素化されることをいう。たとえば、C−H部分を有する有機基をペルフルオロ化した基においては、C−H部分の実質的に全てがC−Fになり、炭素−炭素不飽和結合が存在する有機基をペルフルオロ化した基においては、実質的に全ての不飽和結合にフッ素原子が付加する。
【0012】
本発明における化合物(3)は、含フッ素n価有機基(Q)の結合手に、−COORHで表される基がn個結合した化合物である。nは1以上の整数を示す。nが1である化合物は、化合物の入手しやすさ、および後述する連続製造ができる点で有利であり、nが2以上である化合物(3)は、化合物(3)の分子量が大きくなるため、蒸気圧が小さく、液相フッ素化反応の反応の制御がしやすく、また、該反応の収率も容積効率の点も高くなるおいても有利である。nが2以上である場合、好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは2又は3であり、nが2であることが最も好ましい。
【0013】
本明細書における有機基とは、炭素原子を必須とする基をいう。フッ素化されうる有機基としては、C−H部分を有する有機基や、炭素−炭素不飽和結合を有する有機基が挙げられ、C−H部分を有する有機基が好ましい。特に該基のうち炭素−炭素結合が単結合のみからなる飽和有機基が好ましい。
【0014】
C−H部分を有する有機基としては、飽和炭化水素基や、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基、部分ハロゲン化飽和炭化水素基、部分ハロゲン化(エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素)基等が挙げられ、1価または2価の基が好ましい。
ここで部分ハロゲン化とは、水素原子が特定の割合で残った状態で一部がハロゲン化されていることを意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子であり、フッ素原子または塩素原子が好ましい。さらに、フッ素化条件下で最も安定であることから、ハロゲン原子としてはフッ素原子が特に好ましい。
【0015】
本発明の有機基として用いられる1価飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、または環部分を有する1価飽和炭化水素基(たとえば、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、またはこれらの基を部分構造とする基。)等が挙げられ、なかでもアルキル基が好ましい。
また、2価飽和炭化水素基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、または環部分を有する2価飽和炭化水素基(たとえば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、またはシクロアルキレン基を部分構造とする2価飽和脂肪族炭化水素基。)等が挙げられ、なかでもアルキレン基が好ましい。
【0016】
また、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基のうち1価の基としては、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたアルキル基、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたシクロアルキル基等が挙げられる。好ましくは、アルコキシアルキル基である。
また、エーテル性酸素原子含有飽和炭化水素基のうち2価の基としては、炭素−炭素結合間や該基の結合末端にエーテル性酸素原子が挿入されたアルキレン基、または、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されたシクロアルキレン基等が挙げられ、オキシアルキレン基、または、ポリオキシアルキレン部分を有する基、が好ましい。エーテル性酸素原子を含有する基において、エーテル性酸素原子の数は1個であっても2個以上であってもよい。
【0017】
化合物(3)におけるn価含フッ素有機基(Q)としては、部分フッ素化された有機基であってもペルフルオロ化された有機基であってもよい。Qは、含フッ素n価飽和炭化水素基、含フッ素(エーテル性酸素原子含有n価飽和炭化水素)基が好ましい。さらに、Qはペルフルオロ化された基であるのが好ましい。すなわち、Qは後述するQfと同一の基であるのが好ましい。Qが1価の基である場合には、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキル)基が好ましく、2価の基である場合には、ペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキレン)基が好ましい。Qの好ましい例としてはQfの具体例に示されるものが挙げられる。
【0018】
また、化合物(3)におけるRHは、−CH3、−CH2F、−CHF2を表し、中でも−CH3が好ましい。
【0019】
化合物(3)の具体例としては、以下の具体例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
CH3OCO(CF2)6CF3、CH3OCO(CF2)7CF3、CH3OCO(CF2)8CF3、CH3OCO(CF2)9CF3、CH3OCOCF(CF2CF3)CF2CF2CF2CF3。
CH3OCO(CF2)aCOOCH3(aは2〜8の整数を示す。)、CH3OCOCF(CF3)CF2CF2CF2COOCH3、CH3OCOCF2CF(CF3)CF2CF2COOCH3、CH3OCOCF(CF3)CF2CF2CF(CF3)COOCH3。
【0020】
CH3OCOCF(CF3)OCF(CF3)COOCH3、CF3CF2C(COOCH3)3、CH3OCOCF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは1〜5の整数を示す。)、CH3OCO(CF2)dOCF3(dは1〜8の整数を示す。)。
CH3OCOCF(CF3)O(CF2)bCOOCH3(bは1〜5の整数を示す。)、CH3OCOCF(CF3)O(CF2)bOCF(CF3)COOCH3。
さらに、化合物(3)の具体例として下記の化合物も挙げられる。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明において、化合物(3)のペルフルオロ化におけるフッ素化方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、フッ化コバルトを用いるフッ素化法、電気化学的フッ素化法、または液相フッ素化法等を採用できるが、フッ素化反応の収率が格段に高いことから、本発明においては、液相中でフッ素と反応させる液相フッ素化法によりフッ素化を行うのが好ましい。
【0023】
液相フッ素化法における液相としては、反応の基質自身であってもよいが、通常は反応に関与しない有機溶媒や生成物を液相にするのが好ましい。また、フッ素は、フッ素ガスそのままを用いるか、不活性ガスで希釈されたフッ素ガスを用いるのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガスが好ましく、経済的な理由から窒素ガスが特に好ましい。窒素ガス中のフッ素ガス量は特に限定されず、10vol%以上にするのが効率の点で好ましく、20vol%以上にするのが特に好ましい。
【0024】
液相フッ素化に有機溶媒を用いる場合には、フッ素化反応に不活性な有機溶媒を採用するのが好ましく、さらに化合物(3)の溶解性が高い溶媒を用いるのが好ましく、特に化合物(3)を1質量%以上溶解しうる溶媒が好ましく、5質量%以上溶解しうる溶媒が最も好ましい。
液相の例としては、後述の化合物(2F)、フッ素化反応の生成物である化合物(4)のほかに、液相フッ素化の溶媒として用いられる公知の溶媒が挙げられる。中でも、液相としては、化合物(2F)または化合物(4)であることが、後処理が容易になる利点があるため好ましい。
有機溶媒の量は、化合物(3)の総質量に対して、5倍質量以上が好ましく、特に1×101〜1×105倍質量が好ましい。ただし、フッ素化反応を原料を連続供給し、生成物を連続抜き出しをして行う連続方式で実施する場合には、生成物(4)が溶媒の働きをするため、反応の後期には有機溶媒の量が極めて少なくなり得る。
【0025】
液相フッ素化反応の反応形式は、特に制限されない。たとえば、反応器にフッ素化反応溶媒と化合物(3)とを仕込み、撹拌し、つぎにフッ素ガスを、フッ素化反応溶媒中に連続的に供給しながら反応させる方法が挙げられる。また、反応器にフッ素化反応溶媒を仕込んで撹拌し、つぎにフッ素ガスと化合物(3)とを、所定のモル比で連続的にフッ素化反応溶媒中に供給する方法が挙げられる。このうち、反応収率と選択率の点から、後者の方法が好ましい。ここで用いるフッ素ガスは、窒素ガス等の不活性ガスで希釈したフッ素ガスであってもよい。
【0026】
液相フッ素化反応に用いるフッ素は、化合物(3)中に含まれる水素原子量に対するフッ素の量が、反応の最初から最後まで常に過剰当量となるように保つのが好ましく、特に水素原子に対するフッ素量を1.05倍当量以上(すなわち、1.05倍モル以上)となるように保つのが選択率の点から好ましく、2倍当量以上(すなわち、2倍モル以上)となるように保つのが選択率の点からさらに好ましい。また、反応の開始時点においてもフッ素の量を過剰当量にするために、反応当初に用いるフッ素化反応溶媒には、あらかじめフッ素を充分量溶解させておくのが好ましい。
【0027】
また、液相フッ素化反応は、化合物(3)中のエステル結合を切断せずに実施する必要があることから、反応温度の下限は−60℃および化合物(3)の沸点、のうち低い方の温度にするのが好ましい。通常の場合には、反応収率、選択率、および工業的実施のしやすさの点から、反応温度は−50℃〜+100℃が好ましく、−20℃〜+50℃が特に好ましい。フッ素化反応の反応圧力は特に限定されず、常圧〜2MPa(ゲージ圧。以下、圧力はゲージ圧で表す。)にするのが、反応収率、選択率、工業的な実施のしやすさの観点から特に好ましい。
【0028】
さらに、液相フッ素化反応を効率的に進行させるために、反応系中にベンゼンやトルエン等のC−H結合含有化合物を添加する、化合物(3)を長時間反応系内に滞留させる、または、紫外線照射を行う等の操作を行ってもよい。これらの操作は液相フッ素化反応の後期に行うのが好ましい。
【0029】
液相フッ素化においては、水素原子がフッ素原子に置換されてHFが副生する。このHFを除去する目的で、反応系中にHF捕捉剤(NaFが好ましい。)を共存させる、反応器ガス出口でHF捕捉剤と出口ガスを接触させる、または出口ガスを冷却してHFを凝縮させて回収する、のが好ましい。またHFは窒素ガス等の不活性ガスに同伴させて反応系外に導き、アルカリ処理してもよい。HF捕捉剤を使用する場合の量は、化合物(3)中に存在する全水素原子量に対して1〜20倍モルが好ましく、1〜5倍モルが特に好ましい。
【0030】
フッ素化反応の反応生成物は、そのまま次の工程に用いてもよく、精製して高純度のものにしてもよい。精製方法としては、粗生成物を常圧または減圧下に蒸留する方法等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、化合物(3)で表される化合物をフッ素化する際に、液相フッ素化反応を円滑に進行させるためには、化合物(3)のフッ素含量は20〜70質量%であるのが好ましく、特に40〜70質量%であるのが好ましい。また、化合物(3)の分子量は200〜1100の範囲にあるのが好ましく、特に300〜800の範囲にあるのが好ましい。
化合物(3)がフッ素含量が20〜70質量%の範囲にある場合、フッ素化反応時の液相中への溶解性が格段に向上し、液相フッ素化反応の操作性、反応収率が向上する、経済性に優れる等の利点を有する。
また、化合物(3)の分子量が200以上である場合には、気相フッ素化反応により分解反応が起こるリスクを回避できる利点があり、分子量が1100以下である場合には、化合物の取扱いや生成物の精製がしやすい利点がある。
【0032】
次に、本発明の製造方法において、化合物(3)のフッ素化によりペルフルオロ化して得られた化合物(4)において、エステル結合の分解反応を行うことによって、フッ化カルボニルを得る。
化合物(4)におけるQfとしてはペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。1価のQfとしては、ペルフルオロアルキル基、該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基が好ましく、より好ましくは、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキル基であり、炭素数1〜18のペルフルオロ(アルコキシアルキル)基がとりわけ好ましい。また、ヘキサフルオロプロピレンのオリゴマーに由来する、1−ヘプタフルオロプロポキシ−1,2,2,2−テトラフルオロエチル基等を用いることも好ましい。
2価のQfとしては、ペルフルオロアルキレン基、該基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基が好ましく、より好ましくは、炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキレン基である。
【0033】
ペルフルオロアルキル基としては、つぎの基が挙げられる。−(CF2)6CF3、−(CF2)7CF3、−(CF2)8CF3、−(CF2)9CF3、−CF(CF2CF3)CF2CF2CF2CF3等。
【0034】
また、ペルフルオロアルキレン基としては、つぎの基が挙げられる。−(CF2)a−(aは2〜8の整数を示す。)、−CF(CF3)CF2CF2CF2−、−CF2CF(CF3)CF2CF2−、−CF(CF3)CF2CF2CF(CF3)−等。
【0035】
【化2】
【0036】
ペルフルオロ化されたエーテル性酸素原子含有基としては、上記の基の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されたつぎの基が挙げられる。1価の基としては、−CF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは1〜5の整数を示す。)、−(CF2)dOCF3(dは1〜8の整数を示す。)等。2価の基としては、−CF(CF3)O(CF2)b−(bは1〜5の整数を示す。)、−CF(CF3)O(CF2)bOCF(CF3)−等。
【0037】
本発明においては、さらに化合物(4)においてエステル結合の分解反応を行う。エステル結合の分解反応は公知の技術を用いることができる。この反応により、化合物中に存在するエステル結合を切断して、フッ化カルボニルを生成させる。
エステル結合の分解反応は、熱分解反応、または求核剤もしくは求電子剤の存在下に行う分解反応、等によるのが好ましい。熱分解反応は、気相反応または液相反応で実施するのが好ましい。
【0038】
たとえば、化合物(4)が沸点が低い化合物である場合、熱分解反応は、気相熱分解法で実施するのが好ましい。気相熱分解法は、気相で連続的に分解反応を行い、生成するフッ化カルボニルを出口ガスから凝縮させ、これらを回収する方法で行うのが好ましい。気相熱分解法の反応温度は、50〜350℃が好ましく、50〜300℃が特に好ましく、とりわけ100〜250℃が好ましい。
気相熱分解法においては、金属塩触媒を使用してもよく、反応系に反応には直接は関与しない不活性ガスを共存させてもよい。金属塩触媒としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等を用いることができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。不活性ガスの添加量は、フッ素化反応生成物の総量に対して0.01〜50vol%程度であるのが好ましい。不活性ガスの添加量が多すぎると、生成物の回収量が低減することがある。
【0039】
一方、化合物(4)が沸点が高い化合物である場合、エステル結合の分解反応は、液相熱分解法で実施するのが好ましい。液相分解法は、液状にした化合物(4)を加熱する方法により実施するのが好ましい。該分解反応の生成物は、反応器中から一度に抜き出してもよい。また、フッ化カルボニルは、化合物(4)よりも通常は低沸点になることを利用して、該分解反応を蒸留塔を付けた反応装置を用いて行い、生成物を蒸留で抜き出しながら行う反応蒸留法によって行ってもよい。液相熱分解法の反応温度は50〜300℃が好ましく、特に100〜250℃が好ましい。液相熱分解法における反応圧力は特に限定されない。
液相熱分解法は、無溶媒で行っても、反応溶媒の存在下に行ってもよく、無溶媒で行うのが好ましい。反応溶媒を使用する場合には、化合物(4)に対して0.1倍〜10倍質量の溶媒を使用するのが好ましい。反応溶媒としては、ジグライム、テトラグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル系化合物、ペルフルオロ−2,5−ビスチリフルオロメチル−3,6−ジオキサ−ノナン酸フルオリド、ペルフルオロ(−2−ブチル−テトラヒドロフラン)等のペルフルオロ化合物等を用いることができる。
【0040】
エステル結合の分解反応を液相中で求核剤または求電子剤と反応させる方法で実施する場合には、無溶媒であっても、分解反応溶媒の存在下であってもよく、無溶媒で行うのが好ましい。無溶媒で反応を行ったときには、フッ素化反応生成物自身が溶媒としても作用し、反応生成物中から溶媒を分離する手間を省略できるため特に好ましい。求核剤または求電子剤を用いる方法も、蒸留塔をつけた反応装置で蒸留をしながら行うのが好ましい。
【0041】
求核剤としてはF−が好ましく、特にアルカリ金属のフッ化物由来のF−が好ましい。アルカリ金属のフッ化物としては、NaF、NaHF2、KF、CsFが好ましく、経済性の点ではNaFが、反応活性の点ではKFが特に好ましい。また、反応の最初の求核剤量は触媒量であってもよく、過剰量であってもよい。F−等の求核剤の量は化合物(4)に対して1〜500モル%が好ましく、1〜100モル%が特に好ましく、とりわけ5〜50モル%が好ましい。反応温度の下限は−30℃が好ましく、上限は−20℃〜250℃であるのが好ましい。
【0042】
化合物(4)のエステル結合の分解反応では、フッ化カルボニルと化合物(2F)が生成する。本発明においては、分解反応生成物中のフッ化カルボニルと化合物(2F)とを分離するのが好ましい。分離方法としては、蒸留法が好ましい。さらに、エステル結合の分解反応は反応蒸留法で行うのが特に好ましい。該方法によれば、エステル結合の分解反応性生物を改めて分離生成することなしに、きわめて高純度のCOF2を得ることができる。
【0043】
以上のように、本発明の製造方法によれば、きわめて高純度のフッ化カルボニルを製造できる。また、本発明の製造方法により製造されたフッ化カルボニルは、副生成物をほとんど含まず、または含んでいたとしても通常の分離方法で分離できる不純物であるため、容易に分離して高純度のフッ化カルボニルとすることができる。すなわち、本発明の製造方法により製造されるフッ化カルボニルは、CF4、CO2、CF3COF、SiF4、COFCl、およびHCl等の不純物を実質的に含まないフッ化カルボニルとなり得る。このうち、特にCOFCl等の塩素系有機化合物や塩酸は、反応装置への腐食や、各用途において問題となり得る化合物であり、本発明によれば、これらの塩素系有機化合物や塩酸を実質的に含まないフッ化カルボニルを得ることができる。
ここで、本発明において、「実質的に塩素系有機化合物または塩酸を含まない」とは、生成物中に含まれる塩素系有機化合物または塩酸の含有率が0.1%未満であることを言い、好ましくは、その含有率は0.01%未満であることをいう。また、塩素系有機化合物や塩酸の量は、イオンクロマト法で塩素量を測定することにより定量できる。
【0044】
また、本発明における反応は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことができる。生成物であるフッ化カルボニルの常圧における沸点が−83℃と低いため、回収率を高めるために加圧下で行うことが好ましい。
【0045】
本発明における化合物(3)は、化合物(1)を化合物(2)とエステル化反応させることにより得られた化合物であることが好ましい。化合物(2)としては、上記化合物(3)エステル結合の分解反応生成物から得た下式(2F)で表される化合物であることが好ましい。ただし、Q、nおよびQfは前記と同じ意味を示す。
RHOH・・式(1)
Q(COF)n・・式(2)
Qf(COF)n・・式(2F)
【0046】
化合物(1)は、公知の化合物であり、公知の方法により製造できる。
また、化合物(2)又は化合物(2F)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0047】
nが1である化合物(2)の例;
FCO(CF2)6CF3、FCO(CF2)7CF3、FCO(CF2)8CF3、FCO(CF2)9CF3、FCOCF(CF2CF3)CF2CF2CF2CF3、FCOCF(CF3)[OCF2CF(CF3)]bOCF2CF2CF3(bは1〜5の整数を示す。)
nが2である化合物(2)の例;
FCOCF(CF3)CF2CF2CF2COF、FCOCF2CF(CF3)CF2CF2FOCCF(CF3)CF2CF2CF(CF3)COF、FCOCF(CF3)O(CF2)bCOF(bは1〜5の整数を示す。)、FCOCF(CF3)O(CF2)bOCF(CF3)COF。
【0048】
【化3】
【0049】
化合物(1)と化合物(2)とのエステル化反応は、公知のエステル化反応の条件により実施できる。反応温度の下限は通常は−50℃であるのが好ましく、上限は+100℃であるのが好ましい。また、該反応の反応時間は、原料の供給速度と実際に反応する化合物量に応じて適宜変更されうる。反応圧力は常圧〜2MPaであるのが好ましい。
エステル化反応では、フッ酸(HF)が発生するため、アルカリ金属フッ化物(NaF、KF等が好ましい。)、またはトリアルキルアミン等をHF捕捉剤として反応系中に存在させてもよい。HF捕捉剤の量は、化合物(1)に対して1n倍モル〜10n倍モルであるのが好ましい。HF捕捉剤を使用しない場合には、HFが気化しうる反応温度で反応を行い、HFを窒素気流に同伴させて反応系外に排出するのが好ましい。
【0050】
化合物(1)の量は、化合物(2)に対してn倍モル(nは、化合物(2)中の−COFで表される基の数(n)に対応する。)以下であるのが好ましい。化合物(1)の量をn倍モル以下にすることにより、エステル化反応の反応生成物中に、未反応の化合物(1)が残って該化合物(1)が次のフッ素化反応時に好ましくない反応を引き起こす問題を回避でき、かつ、化合物(3)の精製の手間を省略できる。特に該化合物(1)の量は化合物(2)に対して0.5n倍〜n倍モルであるのが特に好ましく、0.9n倍〜n倍モルであるのがとりわけ好ましい。
【0051】
nが2以上である場合には、エステル化反応の生成物中には未反応の−COF基が残った下記化合物(3−A)が反応生成物中に存在しうる。この化合物(3−A)はエステル化反応生成物中に存在させたまま、つぎのフッ素化反応を行ってもよい。ただし、下式中のn、Q、は上記と同じ意味を示し、mは1以上n未満の整数を示す。nが2である場合のmは1である。また、nが3以上である場合はの化合物(3−A)は、2種以上の混合物となり得る。
Q(COORH)n−m(COF)m・・式(3−A)
【0052】
なお、上記エステル化反応で得られた化合物(3)において、上記液相フッ素化をおこなう場合、フッ素化反応を円滑に行う観点から、エステル化反応の生成物を精製するのが好ましい。特にエステル化反応の生成物が化合物(1)を含む場合には、精製により化合物(1)を除去しておくのが好ましい。精製方法としては、蒸留法、生成物を水などで処理した後に分液する方法、適当な有機溶媒で抽出した後に蒸留する方法、シリカゲルカラムクロマトグラフィ等が挙げられる。
【0053】
本発明の方法で得られるフッ化カルボニルは、半導体CVDのクリーニングガス、フッ素ゴム用モノマーのペルフルオロ(メチルビニルエーテル)の原料等としても有用な化合物である。本発明のフッ化カルボニルを半導体CVDのクリーニングガスとして用いる場合、その純度は99.9%以上であることが好ましい。
たとえば、フッ化カルボニルは、ヘキサフルオロプロピレンオキシドと反応させた後に、熱分解反応を行うことによってフッ素ゴム用モノマーとして有用なペルフルオロメチルビニルエーテルに導くことができる。
【0054】
本発明の製造方法の好ましい態様としては、以下の態様が挙げられる。
[態様1]
nが2であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキレン基である製造方法。
【0055】
[態様2]
nが1であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロアルキル基である製造方法。
【0056】
[態様3]
エステル結合の分解反応で生成した化合物(2F)の一部または全部を回収して、化合物(1)と反応させる化合物(2)として用いる製造方法。
【0057】
また、本発明の製造方法における中間体として提供される下記化合物は、新規化合物である。
Q1(OCORH)2・・式(3−1)
Q1f(OCOCF3)2・・式(4−1)
Q2COORH・・式(3−2)
Q2fCOOCF3・・式(4−2)
ただし、RHは前記の意味と同じ意味を示す。Q1は2価含フッ素有機基、Q1fはペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、Q2は1価含フッ素有機基、Q2fはペルフルオロ化された1価含フッ素有機基を示す。
【0058】
Q1で示される2価含フッ素有機基、およびQ2が示す1価含フッ素有機基としては、それぞれ、前記Qが示す1価の含フッ素有機基、および2価の含フッ素有機基に挙げた基を用いることができる。
Q1fで示されるペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、およびQ2fで示されるペルフルオロ化された1価含フッ素有機基としては、それぞれ、前記Qfが示す1価の含フッ素有機基、および2価の含フッ素有機基に挙げた基のうちペルフルオロ化された基を用いることができる。
【0059】
【実施例】
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、以下において、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンをR−113と記す。また、ガスクロマトグラフィをGCと記し、GC分析におけるピーク面積比をGC分析値とする。また、ガスクロマトグラフィ−質量分析をGC−MSと記す。
【0060】
[実施例1]FCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3を用いたCOF2の製造例
(例1−1)エステル化反応によるCH3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3の製造例
ハステロイC製の2LのオートクレーブにFCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3(2400g)を入れ、反応器を冷却した。常圧下に、内温が30℃以下に保たれるようにCH3OH(150g)をゆっくり導入した。同時に充分に撹拌して、窒素ガスをバブリングさせ、反応により生じたHFを系外に追い出した。CH3OHの全量を投入後、さらに50℃で5時間反応させて生成物を得た。生成物をGC分析した結果、CH3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3が99.9%生成していた。未反応のCH3OHは検出されなかった。この生成物は精製することなく、以下の反応に使用した。
【0061】
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm):3.9(3H)。
19F−NMR(282.6MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−79.2〜−80.6(4F)、−81.8〜−82.8(8F)、−85.0〜−86.5(1F)、−130.1(2F)、−132.2(1F)、−145.8(1F)。
【0062】
(例1−2)フッ素化反応によるCF3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3の製造例
500mLのニッケル製オートクレーブに、R−113(312g)を加えた後に撹拌して25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。また−10℃に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。オートクレーブに窒素ガスを室温で1時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、20%希釈フッ素ガスと記す。)を室温で流速8.48L/hで1時間吹き込んだ。つぎに20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1−1で得た生成物(10g)をR−113(50g)に溶解した溶液を1.6時間かけて注入した。
つぎに、20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながらオートクレーブ内圧力を0.15MPaまで昇圧して、ベンゼン濃度が0.01g/mLであるR−113溶液を25℃から40℃にまで昇温しながら9mL注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉め、0.3時間撹拌を続けた。
つぎに反応器内圧力を0.15MPaに、反応器内温度を40℃に保ちながら、前記ベンゼン溶液を6mL注入し、オートクレーブのベンゼン溶液注入口を閉め、0.3時間撹拌を続けた。さらに同様の操作を3回繰り返した。ベンゼンの注入総量は0.34g、R−113の注入総量は33mLであった。
【0063】
さらに20%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら1時間撹拌を続けた。つぎに、反応器内圧力を常圧にして、窒素ガスを1時間吹き込んだ。生成物を19F−NMRで分析した結果、標記化合物が収率95%で含まれていることを確認した。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−58.9(3F)、−78.6〜−80.5(4F)、−82.3(8F)、−84.8〜−86.1(1F)、−130.3(2F)、−132.8(1F)、−145.5(1F)。
【0064】
(例1−3)エステル結合の分解反応によるCOF2の製造例
蒸留塔およびその上部に−10℃の冷却水が循環するような還流器を備えた300mLのオートクレーブを準備した。オートクレーブに、例1−2で得たKF(2g)、CF3OCOCF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3(100g)を仕込み、熱媒温度を100〜130℃に保って加熱し、撹拌をした。反応器の圧力が0.3MPa以上になったときに、還流器上部より生成ガスを抜き出し、液体窒素で冷却したステンレス製(SUS316製)トラップでガスを回収した。生成するガスは、液体窒素で冷却したステンレス(SUS316)製トラップにて回収した。反応が進行してガスの生成が見られなくなったところで反応を終了した。反応後にトラップの重量測定、およびGC分析を行った結果、COF2(純度99.9%、9.4g、収率80%)の生成が認められた。得られたCOF2を分析した結果、塩素の存在は認められなかった。
【0065】
[実施例2]ペルフルオロシクロヘキサン−1,4ジアシルフルオリド(下記化合物(2−A))を用いたCOF2の製造例
(例2−1)エステル化反応による下記化合物(2−B1)の製造例
【0066】
【化4】
【0067】
100mLの丸底フラスコに上記化合物(2−A)(12.35g)を取り、反応容器を氷浴に浸して冷却した。常圧で内温が30℃以下に保たれるようにゆっくりとCH3OH(2.18g)を滴下した。充分に撹拌しながら、同時に窒素ガスをバブリングさせ、反応により生じたHFを系外に追い出した。滴下途中から白色沈殿が大量に生成したが、撹拌を続けた。全量滴下後、氷浴を外し、ゆっくりと室温まで昇温しながら約2時間撹拌を続けた。生成物を19F−NMR分析した結果、化合物(2−B1)(粗収率85%)を得た。生成物をtert−ブチルメチルエーテルに溶解させて再結晶による精製を行った。これを次工程に使用した。
【0068】
1H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl3、基準:TMS)δ(ppm):4.04(6H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−116.7〜−117.8(4F)、−128.8〜−129.8(4F)、−179.3(2F)。
【0069】
(例2−2)フッ素化反応による化合物(2−C)の製造例
【0070】
【化5】
【0071】
例2−1で使用したものと同じオートクレーブを準備し、20%希釈フッ素ガスの流速を6.36L/hに設定した。ここに例2−1で得た化合物(2−B1)(2.48g)をR−113(50g)に溶解した溶液を1.4時間かけて注入した。さらに、例1−2と同様に20%希釈フッ素ガスを吹き込み、ベンゼンの注入を行い、反応を終了させた。ベンゼンの注入総量は0.33g、R−113の注入総量は33mLであった。生成物を19F−NMRで分析した結果、標記化合物が98%で含まれていることを確認した。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl3、基準:CFCl3)δ(ppm):−58.2(6F)、−116.7〜−117.5(4F)、−127.8〜−128.6(4F)、−179.3(2F)。
【0072】
例2−3エステル結合の分解反応によるCOF2の製造例
例1−3におけるフラスコの容量を30mLに変更し、KF量を0.1gに変更し、化合物(2−C)を2.5g用いること以外は、例1−3と同様の方法で反応を行った。反応後にトラップの重量測定、およびGC分析を行った結果、COF2(純度99.1%、0.61g、収率90%)の生成が認められた。生成したCOF2をイオンクロマトグラフィーで分析した結果、塩素の存在は認められなかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、高い収率で極めて高純度のフッ化カルボニルを製造できる。本発明の製造方法は、安価な原料から収率よくフッ化カルボニルを製造できる経済的に有利な方法である。また、本発明の製造方法においては、従来のフッ化カルボニルと異なり、塩素系化合物や分離しにくい副生成物が混入することがないため、高純度のフッ化カルボニルを得ることができ、該高純度のフッ化カルボニルはCVD用の洗浄ガスとして有用に用いうる。また、本発明の製造方法によれば、フッ化カルボニルの製造用中間体等として有用な新規化合物を提供することができる。
Claims (8)
- 下式(3)で表される化合物をフッ素化してペルフルオロ化することにより下式(4)で表される化合物を得て、該式(4)で表される化合物においてエステル結合の分解反応を行うことを特徴とするフッ化カルボニルの製造方法。
Q(COORH)n・・式(3)
Qf(COOCF3)n・・式(4)
(式中、RHは、CH3、CH2F、またはCHF2を表す。Qは、n価含フッ素有機基を表す。Qfは、ペルフルオロ化されたn価の有機基を表す。nは、1以上の整数を表す。) - 式(3)で表される化合物が、下式(1)で表される化合物を下式(2)で表される化合物とエステル化反応させて得た化合物である請求項1に記載の製造方法。
RHOH・・式(1)
Q(COX)n・・式(2)
(式中、RH、Qおよびnは、前記の意味と同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表す。) - 式(2)で表される化合物が、前記エステル結合の分解反応によって得られた生成物から回収し得た下式(2F)で表される化合物である請求項2に記載の製造方法。
Qf(COF)n・・式(2F)
(式中、Qfおよびnは、前記の意味と同じ意味を表す。) - 式(3)で表される化合物のフッ素含有量が20〜70質量%であり、分子量が200〜1100である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 式(3)で表される化合物が、nが1〜3であり、Qfが、炭素−炭素結合間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよい炭素数1〜18のペルフルオロ有機基である化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 前記フッ素化が液相フッ素化であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 塩素系有機化合物または塩酸を実質的に含まず、ガスクロマトグラフィーで分析した純度が99.9%以上であることを特徴とするフッ化カルボニル。
- 下式で表される化合物から選ばれるいずれかの化合物。
Q1(OCORH)2・・式(3−1)
Q1f(OCOCF3)2・・式(4−1)
Q2COORH・・式(3−2)
Q2fCOOCF3・・式(4−2)
(ただし、RHはCH3、CH2F、またはCHF2を表す。Q1は2価含フッ素有機基、Q1fはペルフルオロ化された2価含フッ素有機基、Q2は1価含フッ素有機基、Q2fはペルフルオロ化された1価含フッ素有機基を表す。)
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JP2002355671A JP2004189611A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | フッ化カルボニルの製造方法、および該製造に用いる中間体 |
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JP2016047817A (ja) * | 2014-08-25 | 2016-04-07 | 住友化学株式会社 | 化合物、樹脂、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法 |
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2002
- 2002-12-06 JP JP2002355671A patent/JP2004189611A/ja active Pending
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