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JP2004186027A - 有機el素子 - Google Patents

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JP2004186027A
JP2004186027A JP2002352620A JP2002352620A JP2004186027A JP 2004186027 A JP2004186027 A JP 2004186027A JP 2002352620 A JP2002352620 A JP 2002352620A JP 2002352620 A JP2002352620 A JP 2002352620A JP 2004186027 A JP2004186027 A JP 2004186027A
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JP
Japan
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organic
film
cupc
crystallinity
temperature
Prior art date
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Withdrawn
Application number
JP2002352620A
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English (en)
Inventor
Tetsuya Kato
哲弥 加藤
Kazue Kojima
和重 小島
Masahiko Ishii
昌彦 石井
Tomohiko Mori
朋彦 森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denso Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Denso Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Publication date
Application filed by Denso Corp, Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Denso Corp
Priority to JP2002352620A priority Critical patent/JP2004186027A/ja
Publication of JP2004186027A publication Critical patent/JP2004186027A/ja
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Abstract

【課題】一対の電極間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図る。
【解決手段】一対の電極20、80間に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層50を挟んでなる有機EL素子において、ホール輸送性材料は、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基が存在する箇所の総数が1個もしくは0であり、且つガラス転移温度が100℃以上であるような3級アミン化合物である。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に関し、更に詳しくは、熱安定性及び発光安定性に優れた有機EL素子に関し、高輝度で高視野角などの高視認性を有した薄膜型ディスプレイや照明器具及び高温環境にさらされる車載用ディスプレイ等に適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、自己発光のため、視認性に優れ、かつ数V〜数十Vの低電圧駆動が可能なため駆動回路を含めた軽量化が可能である。そこで薄膜型ディスプレイ、照明、バックライトとしての活用が期待できる。また、有機EL素子は色バリエ−ションが豊富であることも特徴である。
【0003】
特に、高視野角・高コントラスト・低温作動性といった性能は車載用ディスプレイとして極めて有望である。しかしながら車載用途においては極めて品質基準が厳しく、有機EL特有の輝度低下や耐熱性といった問題により、実用化が難しかった。
【0004】
輝度寿命を改善する方法としては、ホスト材料としてのホール輸送性材料および電子輸送性材料とドーパントとしての発光添加材料とを混合してなる発光層を適用する手法が従来より提案されている(特許文献1参照)
しかし、この手法においては、本発明者らの検討では、材料によってはホール輸送材料の耐熱性が不足しており、そのため、例えば100℃のような高温環境下に曝すとダークスポット等の発生が顕著となり、その結果、輝度低下に至ることが確認された。
【0005】
また、従来より、発光層のホスト材料として種々なホール注入輸送性材料が開示されている(特許文献2、3参照)が、これら特許文献2、3では、開示されているホール注入輸送性材料を電子輸送材料および発光添加材料と混合して発光層にするという記載はまったくない。
【0006】
高温での輝度寿命を向上させるために必要な要因として、材料の耐熱性の向上があげられる。少なくとも有機EL素子が曝される環境における最高温度よりも構成材料のガラス転移温度が高くなければならない。ガラス転移温度が低い場合には有機EL素子を構成するアモルファス材料の結晶化等に起因するダークスポットの発生や、電極界面での膜の剥離が発生し輝度低下に至る。
【0007】
従来より、材料のガラス転移温度を向上させる方法としては、ホール輸送性材料を多量体化して分子量を大きくする方法が挙げられる(特許文献4参照)。しかし、このように多量体化したものを発光層のホスト材料に用いると、本発明者らの検討では、輝度寿命が低いことが確認された。
【0008】
このように、従来では、ホール輸送性材料と電子輸送性材料および発光添加材料を混合してなる発光層を有する有機EL素子において、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を達成できるものは無かった。
【0009】
また、この有機EL素子における耐熱性の確保という点については、高温環境下での安定性を向上させるために、各層の密着性が重要である。特に、有機EL素子においては、インジウム−錫の酸化物(ITO)等からなる正孔注入電極としての陽極と有機層との界面が弱い。これは、両者の線膨張係数の差が大きいためと考えられる。
【0010】
そこで、陽極と接する有機層すなわち正孔注入層として、銅フタロシアニン(CuPc)等の結晶性の材料を設け、陽極と有機層との線膨張係数の差を小さくすることが望ましい。ちなみに、通常アモルファス性の有機薄膜を用いる有機EL素子において、結晶構造の有機薄膜を用いた例としては、従来より、正孔輸送層や発光層を結晶構造としたものが提案されている(特許文献5、6参照)
しかしながら、本発明者らの検討によれば、有機EL素子における耐熱性を確保するために、陽極の上に結晶性の有機材料を使用する場合には、結晶性の有機材料が高温環境下で結晶化が進行するという形態変化を示し、正孔の注入特性が劣化するという問題があることがわかった。
【0011】
【特許文献1】
特開平8−48656号公報
【0012】
【特許文献2】
特開2000−156290号公報
【0013】
【特許文献3】
国際公開第98/3007号パンフレット
【0014】
【特許文献4】
特開平07−126226号公報
【0015】
【特許文献5】
特開平3−173095号公報
【0016】
【特許文献6】
特開平5−182764号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、一対の電極間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討を行い、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を有する有機EL素子において、発光層のホスト材料となるホール輸送性材料に3級アミン化合物を用いることに着目した。
【0019】
そして、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を有する有機EL素子において、ホール輸送性材料の分子構造により輝度低下が抑制されることを実験的に見出した(図6参照)。特に、輝度低下を抑制し且つ高い耐熱性との両立を達成するためには、高いガラス転移温度を有する特定の3級アミン化合物が効果的であることを発見した(図7参照)。
【0020】
請求項1に記載の発明では、一対の電極間に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を挟んでなる有機EL素子において、ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または下記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が1個もしくは0であり、且つガラス転移温度が100℃以上のものであることを特徴とする。
【0021】
【化10】
Figure 2004186027
ここで、上記構造式(1)において、L1、L2は1環以上のフェニレン基であり、M1、M2は芳香族基または脂肪族基を表す。なお、M1、M2は結合する炭素原子を含めて例えばフルオレン基やシクロヘキサン基のように互いに環構造を形成しているものでもよい。
【0022】
本発明のような3級アミン化合物を、発光層を構成するホール輸送性材料に用いることにより、従来に比べて大幅な輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
【0023】
ここで、請求項1に記載のホール輸送性材料として、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が0である3級アミン化合物としては、請求項2の発明に記載のものにできる。
【0024】
すなわち、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物が、下記構造式(2)で表される骨格を有する化合物であることを特徴とする。
【0025】
【化11】
Figure 2004186027
ここで、構造式(2)において、R1〜R20は、水素や下記構造式(3)、(4)、(5)で表される構造であるか、または、R1〜R20のうちの隣接する基同士によって芳香族環を形成した構造であり、且つ、R1〜R20のうち少なくとも1つは、下記構造式(3)、(4)、(5)のいずれかの構造を有するものである。
【0026】
【化12】
Figure 2004186027
【0027】
【化13】
Figure 2004186027
【0028】
【化14】
Figure 2004186027
ここで、上記構造式(3)〜(5)において、B1〜B2、C1〜C3、D1〜D4は、置換または非置換のアリール基を表す。
【0029】
また、請求項1に記載のホール輸送性材料として、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が1個である3級アミン化合物としては、請求項3の発明に記載のものにできる。
【0030】
すなわち、請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物が、下記構造式(6)で表される骨格を有する化合物であることを特徴とする。
【0031】
【化15】
Figure 2004186027
ここで、構造式(6)において、Aは2個以上のフェニレン基、脂肪族基または前記構造式(1)で示される基である。なお、構造式(6)において、Aは置換基を有していてもよい。
【0032】
また、R1〜R20は、水素や下記構造式(3)、(4)、(5)で表される構造であるか、または、R1〜R20のうちの隣接する基同士によって芳香族環を形成した構造であり、且つ、R1〜R20のうち少なくとも1つは構造式(3)、(4)、(5)のいずれかの構造を有するものである。
【0033】
【化16】
Figure 2004186027
【0034】
【化17】
Figure 2004186027
【0035】
【化18】
Figure 2004186027
ここで、上記構造式(3)〜(5)において、B1〜B2、C1〜C3、D1〜D4は、置換または非置換のアリール基を表す。
【0036】
さらに、有機EL素子における高温環境下での耐熱性を向上させるために、陽極と接する有機層すなわち正孔注入層として、銅フタロシアニン(CuPc)等の結晶性の材料を設け、陽極と有機層との密着性を高めることについて、検討を進めた。
【0037】
単純に、陽極の上に結晶性の有機材料を使用すると、上述したように、結晶性の有機材料が高温環境下で結晶化が進行するという形態変化を示し、正孔の注入特性が劣化するという問題がある。この問題の発生原因について、本発明者等が行った実験のデータを基に、具体的に説明する。
【0038】
ガラス基板上に陽極ITO(透明電極)を形成し、アルゴンと酸素混合のプラズマによる表面処理を施した後、正孔注入層としてCuPcを材料加熱温度420℃で膜厚10nmにて成膜した後、正孔輸送層にトリフェニルアミン4量体、発光層としてジメチルキナクリドンが添加されたAlq、電子輸送層にAlq、電子注入層にLiF、陰極にAlを順次成膜し、封止缶で密封した有機EL素子を試作した。
【0039】
この試作した素子は一般的な有機EL素子であり、以下、これを試作品という。ここで、上記有機薄膜のうちCuPcは結晶性であり、それ以外の層はアモルファスである。
【0040】
この試作品を100℃にて12時間、高温放置した時の電圧−輝度特性(V−I特性)を図16に示す。図16に示すように、V−I特性は、上記高温放置前である初期に比べて、上記高温放置後では約3V程度プラス側にシフトしていることがわかった。
【0041】
これは、駆動回路への負担を増加させることになり、回路設計上コストアップにつながる。また、同一素子内で部分的に発生するため、電流の流れやすい領域とそうでない領域を形成する結果、輝度ムラとして認識されることになる。
【0042】
上記試作品における層すなわち有機薄膜のうちで最もTg点が低い材料は、トリフェニルアミン4量体であり、約144℃である。100℃の放置はこのトリフェニルアミン4量体のTg点よりも40℃以上低い環境下での放置なので、上記シフト現象に対して、CuPc以外のアモルファス膜の微結晶凝集構造の進行による影響は少ないと考えられる。
【0043】
そこで、結晶性を有する有機材料であるCuPc膜(正孔注入層)において、その結晶状態の変化に着目した。その結果、高温環境下の放置前後で、このCuPc膜の結晶状態が大きく異なることを見出した。このCuPc膜の結晶状態の変化について、具体的に調べた結果を示す。
【0044】
この結晶状態変化の確認は効率良く行うため、放置環境温度を120℃と高くして加速し、放置時間は2Hrで評価することとした。以下、この条件における放置を加速高温放置という。
【0045】
上記したようにV−I特性に3V程度のシフトが発生した上記試作品と同じ条件で、ITO付きガラス基板上にCuPcを成膜した。この場合におけるCuPc膜の結晶性の状態を、上記加速高温放置の前と後でX線回折によって分析した結果を図17に示す。
【0046】
図17に示すように、回折ピークにおいて、2θ=6.68°に発生しているピークがCuPcの結晶構造に由来している。図17では、このピークにおいて実線で図示するものが加速高温放置の前のピークすなわち初期のピークであり、破線で図示するものが加速高温放置の後のピークすなわち120℃、2Hr後のピークである。
【0047】
そして、このピーク値の積分値が大きい、すなわちピーク値が高いほど、結晶性が高いことを示している。つまり、120℃、2Hrの加速高温放置によって、当該ピーク値(積分値)が加速高温放置前の1.5倍に変化している。
【0048】
このことから、本発明者等は、上記試作品において、正孔注入層であるCuPc膜上に正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極等が成膜された後、つまり、発光素子形態になってから、CuPc膜がこのような結晶状態の変化を起こすことが、正孔の注入特性を劣化させ、高温環境下でのV−I特性変化を誘発し、輝度低下や輝度ムラを引き起こす大きな原因であると考えた。
【0049】
そこで、本発明者等は、上記請求項1〜3に記載の有機EL素子において、陽極と接する有機層すなわち正孔注入層として結晶性の材料を使用する場合、高温環境下での有機材料の結晶状態の変化に対する対策としては、結晶性を有する有機材料を、成膜時にできるだけ結晶性が高くなるように成膜することが重要であると考えた。
【0050】
請求項4に記載の発明は、このような考えに基づいて創出されたものであり、請求項1〜3に記載の有機EL素子において、一対の電極のどちらか一方と発光層との間に正孔注入層が介在されており、正孔注入層は、結晶性を示す有機材料からなり、結晶性を示す有機材料のX線回折法により現れる回折ピークの値において、有機EL素子の使用温度内の加熱による回折ピーク値の変化量が、加熱前の回折ピーク値の±25%以内となっていることを特徴とする。
【0051】
本発明のように、結晶性を示す有機材料のX線回折法により現れる回折ピークの値において、有機EL素子の使用温度内の加熱による回折ピーク値の変化量を、加熱前の回折ピーク値の±25%以内と小さくすれば、高温環境下で使用しても、輝度の低下や輝度ムラが発生しない程度にまで、有機材料の結晶状態の変化を小さくすることができる。
【0052】
よって、本発明によれば、一対の電極間に、ホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を挟んでなる有機EL素子において、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図るという効果を、より高いレベルにて実現することができる。
【0053】
ここで、請求項5に記載の発明のように、基板上にインジウム−錫の酸化物からなるITO膜が形成されており、結晶性を示す有機材料は、ITO膜の上に形成された有機膜として構成されているものにできる。
【0054】
さらに、請求項6に記載の発明のように、結晶性特性を示す有機材料は、銅フタロシアニン膜にすることができ、この場合、回折ピーク値は銅フタロシアニン膜における基板に平行な(200)面の回折ピーク値である。
【0055】
また、請求項7に記載の発明では、ITO膜の平均表面粗さRaが2nm以下であり、10点平均表面粗さRzが20nm以下であることを特徴とする。
【0056】
また、陽極の上に位置する結晶性の有機材料を、結晶性が高く安定した膜に成膜するためには、陽極の表面粗度が重要となる。具体的には、本発明のように、正孔注入層と接する陽極としてのITO膜のRaを2nm以下、Rzを20nm以下とすることが望ましい。
【0057】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る有機EL素子S1の概略断面構成を示す図である。
【0058】
透明なガラス等からなる基板10の上に、インジウム−錫の酸化物(以下、ITOという)からなる陽極20が形成されている。陽極20の上には、結晶性を有する有機材料としてCuPc(銅フタロシアニン)からなる正孔注入層30が形成され、正孔注入層30の上には、ホール輸送性材料からなる正孔輸送層40が形成されている。
【0059】
正孔輸送層40の上には、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料とをホスト材料とし、これにドーパントとして発光添加材料を混合してなる発光層50が形成され、発光層50の上には、電子輸送性材料からなる電子輸送層60が形成されている。さらに、電子輸送層60の上には、LiFからなる電子注入層70が形成され、その上には、Alからなる陰極80が形成されている。
【0060】
こうして、一対の電極20、80の間には、結晶性を有する有機材料からなる正孔注入層30、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60および電子注入層70が積層されて挟まれており、有機EL素子S1が形成されている。
【0061】
この有機EL素子S1においては、陽極20と陰極80との間に電界を印加し、陽極20から正孔が、一方、陰極80から電子がそれぞれ発光層50へ注入、輸送され、発光層50にて電子と正孔とが再結合し、そのときのエネルギーによって発光層50が発光するものである。そして、その発光は例えば、基板10側から取り出され視認されるようになっている。
【0062】
ここで、本実施形態の発光層50は、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなるが、用いられるホール輸送性材料は、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または下記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が1個もしくは0であり、且つガラス転移温度が100℃以上であるような3級アミン化合物である。
【0063】
【化19】
Figure 2004186027
ここで、上記構造式(1)において、L1、L2は1環以上のフェニレン基であり、M1、M2は芳香族基または脂肪族基を表す。なお、M1、M2は結合する炭素原子を含めて例えばフルオレン基やシクロヘキサン基のように互いに環構造を形成しているものでもよい。
【0064】
また、脂肪族基としては、例えば、メチレン基やエチレン基のような直鎖炭化水素基やシクロヘキサンのような環状炭化水素基等が挙げられる。
【0065】
より具体的なホール輸送性材料として、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が0である3級アミン化合物としては、下記構造式(2)で表される骨格を有する化合物であるものにできる。
【0066】
【化20】
Figure 2004186027
ここで、構造式(2)において、R1〜R20は、水素や下記構造式(3)、(4)、(5)で表される構造であるか、または、R1〜R20のうちの隣接する基同士によって芳香族環を形成した構造であり、且つ、R1〜R20のうち少なくとも1つは、下記構造式(3)、(4)、(5)のいずれかの構造を有するものである。
【0067】
【化21】
Figure 2004186027
【0068】
【化22】
Figure 2004186027
【0069】
【化23】
Figure 2004186027
ここで、上記構造式(3)〜(5)において、B1〜B2、C1〜C3、D1〜D4は、置換または非置換のアリール基を表す。
【0070】
また、より具体的なホール輸送性材料として、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が1個である3級アミン化合物としては、下記構造式(6)で表される骨格を有する化合物であるものにできる。
【0071】
【化24】
Figure 2004186027
ここで、構造式(6)において、Aは2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)で示される基である。なお、構造式(6)において、Aは置換基を有していてもよい。また、構造式(6)におけるR1〜R20は、上記構造式(2)におけるR1〜R20と同様のものにできる。
【0072】
このような3級アミン化合物を、発光層50を構成するホール輸送性材料に用いることにより、従来に比べて大幅な輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図ることができる。
【0073】
ところで、本実施形態の有機EL素子は、例えば、車載用のディスプレイ等に採用されるものであり、その使用温度は−40℃〜120℃程度のものである。
【0074】
また、結晶性を示す有機材料であるCuPcからなる正孔注入層30すなわちCuPc膜30をX線回折法により測定したとき、基板10と平行なCuPc膜30の(200)面の回折ピークは、CuPc膜20の結晶性を示す回折ピークである。この回折ピークは、上記図17に示した2θ=6.68°に発生しているピークに相当するものであり、以下、CuPc結晶性ピークという。
【0075】
そして、本実施形態では、好ましい形態として、このCuPc結晶性ピーク(2θ=6.68°)の値つまりピークの積分値において、有機EL素子S1の使用温度(例えば−40℃〜120℃)内の加熱による当該CuPc結晶性ピーク値の変化量が、加熱前の当該CuPc結晶性ピークの±25%以内となっている。
【0076】
このCuPc結晶性ピーク値の加熱前後における変化量を±25%以内に小さく抑えることにより、高温環境下で使用しても、輝度の低下や輝度ムラが発生しない程度にまで、有機材料の結晶状態の変化を小さくすることができる。そして、使用温度内において良好な輝度特性を実現することができ、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図るという効果をより高いレベルにて実現することができる。
【0077】
ちなみに、上述したように、従来の結晶性を有する有機材料を有する有機EL素子では、上記図17に示したように、加熱前のCuPc結晶性ピーク値に比べ、加熱後のCuPc結晶性ピーク値は1.5倍と大きく変化しており、ITOとCuPc、CuPcと発光層の界面の密着性の低下が発生し、上記図16に示したように、V−I特性が大きくシフトして輝度の低下や輝度ムラを発生させている。
【0078】
また、本実施形態では、陽極20としてのITO膜の平均表面粗さRaが2nm以下であり、10点平均表面粗さRzが20nm以下であることが好ましい。これらRa、RzはJIS(日本工業規格)に定義されたものである。
【0079】
陽極20の上に位置する結晶性の有機材料としての正孔注入層30を、結晶性が高く安定した膜に成膜するためには、陽極20の表面粗度が重要となる。当該ITO膜のRaを2nm以下、Rzを20nm以下とすることは本発明者らの検討の結果によるものである。
【0080】
次に、本実施形態について、以下のような具体例および本発明の比較例を参照して、より具体的に説明する。
【0081】
発光層50のホール輸送材料となる3級アミン化合物について、これら具体例および比較例に用いた化合物の化学構造式を図2、図3、図4に示す。これらのうち化合物1、2、7、8が本実施形態の化合物である。まず、これら図2〜図4に示す3級アミン化合物の製法等について述べる。
【0082】
[化合物1](図2参照)
化合物1:N,N’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル)}−N,N’−ジフェニルベンジジンの合成について。
【0083】
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と1、4−ジヨードベンゼン59.4g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
【0084】
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド30.3g(収率60%)を得た。
【0085】
続いて、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド10.8g(0.032モル)、(1−ナフチル)フェニルアミン8.0g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
【0086】
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。
【0087】
水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.6g(収率70.0%)を得た。
【0088】
さらに、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.11g(0.021モル)、4,4’−ジヨードビフェニル4.06g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
【0089】
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル)}−N,N’−ジフェニルベンジジン4.2g(収率;45.0%)を得た。ガラス転移温度は136℃であった。
【0090】
[化合物2](図2参照)
化合物2:4,4’,4”−トリス[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミンの合成について。
【0091】
200mlの反応容器に4,4’,4”−トリヨードトリフェニルアミン28.7g(0.046モル)とN−(1−ナフチル)−アニリン50.4g(0.23モル)と無水炭酸カリウム44.2g(0.32モル)、銅粉4.32g(0.068モル)とデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度220℃で24時間加熱した。
【0092】
反応終了後、トルエンを200ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後、この濾液より溶媒を留去し、残査を4回シリカゲルカラム精製(展開溶媒:n−ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、ヘキサン/トルエン混合溶媒、酢酸エチルより再結晶を繰り返し、真空乾燥後、4,4’,4”−トリス[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン24.7g(収率60.0%)を得た。
【0093】
昇華精製により、高純度な4,4’,4”−トリス[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミンを得た(昇華精製収率:70.0%)。ガラス転移温度は110℃であった。
【0094】
[化合物3](図2参照)
化合物3:N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジンの合成について。
【0095】
(1−ナフチル)フェニルアミン4.6g(0.021モル)、4,4’−ジヨードビフェニル4.06g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
【0096】
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン2.6g(収率;45.0%)を得た。ガラス転移温度は96℃であった。
【0097】
[化合物4](図3参照)
化合物4:4,4’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル}トリフェニルアミンの合成について。
【0098】
200mlの反応容器に4,4’−ビス[4−ヨード)フェニル]トリフェニルアミン29.9g(0.046モル)と(1−ナフチル)フェニルアミン30.7g(0.14モル)と無水炭酸カリウム27.6g(0.20モル)、銅粉2.73g(0.043モル)とデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度220℃で24時間加熱した。
【0099】
反応終了後、トルエンを200ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を4回シリカゲルカラム精製(展開溶媒:n−ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、ヘキサン/トルエン混合溶媒、酢酸エチルより再結晶を繰り返し、真空乾燥後、4,4’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル}トリフェニルアミン24.8g(収率65.0%)を得た。
【0100】
昇華精製により、高純度な4,4’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル}トリフェニルアミンを得た(昇華精製収率:75.0%)。ガラス転移温度は133℃であった。
【0101】
[化合物5](図3参照)
化合物5:N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニルベンジジンの合成について。
【0102】
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4′−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
【0103】
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド40.2g(収率64.8%)を得た。
【0104】
続いてN−[4−(4’−ヨードビフェニル)]アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
【0105】
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
【0106】
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N,N’−トリフェニルベンジジン10.5g(収率72.2%)を得た。
【0107】
更に、N,N,N’−トリフェニルベンジジン8.66g(0.021モル)、4,4’−ジヨードビフェニル4.06g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
【0108】
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス[4−(4’−ジフェニルアミノビフェニル)]−N,N’−ジフェニルベンジジン4.73g(収率;48.5%)を得た。ガラス転移温度は143℃であった。
【0109】
[化合物6](図3参照)
化合物6:9,9−ビス{4−[4’−(4−ジフェニルアミノフェニル)トリフェニルアミノ]}フルオレンの合成について。
【0110】
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と4,4’−ジヨードビフェニル73.1g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
【0111】
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4’−ヨード−4−ビフェニル)アセトアニリド40.2g(収率64.8%)を得た。
【0112】
続いて、N−(4’−ヨード−4−ビフェニル)アセトアニリド13.2g(0.032モル)、ジフェニルアミン6.60g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
【0113】
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
【0114】
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N,N’−トリフェニルベンジジン10.5g(収率72.2%)を得た。
【0115】
更に、N,N,N’−トリフェニルベンジジン8.66g(0.021モル)、9,9−ビス−(4−ヨードフェニル)フルオレン5.7g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
【0116】
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、9,9−ビス{4−[4’−(4−ジフェニルアミノフェニル)トリフェニルアミノ]}フルオレン5.7g(収率;50.0%)を得た。ガラス転移温度は161℃であった。
【0117】
[化合物7](図4参照)
化合物7:N,N’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル)}−N,N’−ジフェニルエチレンジアミンの合成について。
【0118】
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と1、4−ジヨードベンゼン59.4g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
【0119】
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド30.3g(収率60%)を得た。
【0120】
続いて、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド10.8g(0.032モル)、(1−ナフチル)フェニルアミン8.0g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
【0121】
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。
【0122】
水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.6g(収率70.0%)を得た。
【0123】
さらに、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.11g(0.021モル)、4,4’−ジヨードエチレン2.82g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
【0124】
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ビス{4−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]フェニル)}−N,N’−ジフェニルエチレンジアミン4.1g(収率;45.0%)を得た。ガラス転移温度は100℃以上であった。
【0125】
[化合物8](図4参照)
化合物8:9,9−ビス{4−{4’−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミノ}}フルオレンの合成について。
【0126】
アセトアニリド20.3g(0.15モル)と1,4’−ジヨードベンゼン59.4g(0.18モル)、無水炭酸カリウム22.1g(0.16モル)、銅粉2.16g(0.034モル)、ニトロベンゼン35mlを混合し、190〜205℃で10時間反応させた。
【0127】
反応生成物をトルエン200mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮乾固した。これをカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/酢酸エチル=6/1)、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド30.3g(収率60%)を得た。
【0128】
続いて、N−(4−ヨードフェニル)アセトアニリド10.8g(0.032モル)、(1−ナフチル)フェニルアミン8.0g(0.039モル)、無水炭酸カリウム5.53g(0.040モル)及び銅粉0.45g(0.007モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、200〜212℃で15時間反応させた。
【0129】
反応生成物をトルエン100mlで抽出し、不溶分をろ別除去後、濃縮してオイル状物とした。オイル状物はイソアミルアルコール60mlに溶解し、水1ml、85%水酸化カリウム2.64g(0.040モル)を加え、130℃で加水分解した。水蒸気蒸留でイソアミルアルコールを留去後、トルエン250mlで抽出し、水洗、乾燥して濃縮した。
【0130】
濃縮物はカラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.6g(収率70.0%)を得た。
【0131】
更に、N,N’−ジフェニル−N−(1−ナフチル)−1,4−フェニレンジアミン8.11g(0.021モル)、9,9−ビス−(4−ヨードフェニル)フルオレン5.7g(0.01モル)、無水炭酸カリウム2.90g(0.021モル)、銅粉0.32g(0.005モル)、ニトロベンゼン10mlを混合し、195〜210℃で20時間反応させた。
【0132】
反応生成物をトルエン140mlで抽出し、不溶分をろ別、濃縮後、n−ヘキサン120mlを加えて粗結晶を取りだした。粗結晶は、カラムクロマトにより精製して(担体;シリカゲル、溶離液;トルエン/n−ヘキサン=1/2)、9,9−ビス{4−{4’−[(1−ナフチル)フェニルアミノ]トリフェニルアミノ}}フルオレン5.43g(収率;50.0%)を得た。ガラス転移温度は100℃以上であった。
【0133】
このような図2〜図4に示す3級アミン化合物を用いて、以下の具体例および比較例を行った。また、これら各例における耐久試験の結果は、図6に示されている。
【0134】
(具体例1)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、その表面を研磨して、Raを約1nm、Rzを約10nmとした。陽極20の上に、結晶性を有する有機材料としてのCuPcからなる正孔注入層30を10nm形成した。
【0135】
正孔注入層30の上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物を20nm、発光層50として3級アミン化合物と図5に示される電子輸送性材料及びルブレンを60:20:3の重量比により20nm形成した。
【0136】
電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。3級アミン化合物としては、上記化合物1(図2参照)で示されるものを使用した。
【0137】
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図6に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
【0138】
(具体例2)
上記具体例1の素子構造において、3級アミン化合物として上記化合物2(図2参照)で示されるようなスターバースト系トリフェニルアミン誘導体を使用し、素子を作製した。
【0139】
この素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図6に示すとおりであった。さらに、100℃環境下での保存試験においては、500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
【0140】
(比較例1)
上記具体例1の素子構造において、3級アミン化合物として上記化合物3(図2参照)、化合物4(図3参照)、化合物5(図3参照)で示されるようなトリフェニルアミン誘導体を使用し、素子をそれぞれ作製した。
【0141】
これらの素子を、85℃環境下において初期輝度400cd/m、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図6に示すとおりであった。また、100℃環境下での保存試験においては、化合物3でのみダークスポットが発生し、化合物4及び5については500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
【0142】
(比較例2)
上記具体例1の素子構造において、3級アミン化合物として上記化合物6(図3参照)で示されるようなトリフェニルアミン誘導体を使用し、素子をそれぞれ作製した。
【0143】
これらの素子を、85℃環境化において初期輝度400cd/m、1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は図6に示すとおりであった。また、100℃環境下での保存試験においては500hrを超えても顕著なダークスポットの発生はなかった。
【0144】
以上の具体例1、2および比較例1、2の結果を、各3級アミン化合物材料の物性値を含めて、図7の表にまとめた。
【0145】
図7において、輝度寿命については図6と同様に、初期を1として規格化し、耐久試験後400hrでの規格化輝度で示している。高温保存については、100℃での保存試験によりダークスポットが発生したものについては×、発生しなかったものについては○としている。
【0146】
Tgはガラス転移温度を示す。また、分子構造欄の数値は、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)(化学式19参照)で示される基が存在する箇所の総数を示している。
【0147】
この結果から、輝度低下については分子構造との相関が確認できる。特に、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が、1箇所もしくは0の場合において輝度寿命がよい。
【0148】
高温保存については、3級アミン化合物材料のガラス転移温度で理解できる。すなわち、環境温度(保存試験温度)よりもガラス転移温度が低いものの場合、ダークスポットが発生する。
【0149】
ここまでの結果から、化合物1や2のような3級アミン化合物材料を発光層3のホスト材料として使用することで、輝度低下の抑制と耐熱性とを両立できることが判明した。
【0150】
なお、上記具体例1の素子構造において、3級アミン化合物として上記化合物7、8(図4参照)で示されるような3級アミン化合物を使用し、素子を作製し、同様に、耐久試験および保存試験を行ったところ、具体例1と同様の結果が得られ、輝度低下の抑制と耐熱性とが両立できた。
【0151】
[輝度低下抑制の推定メカニズム]
ここで、発光層50を混合ホスト層すなわち3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる層とした本実施形態の有機EL素子において、化合物1〜3のような3級アミン化合物を用いた場合に、輝度低下が抑制されるメカニズムは、次のように推定される。
【0152】
発光層が単一ホスト材料の場合には下記式によって発光すると考えられる。
【0153】
【化25】
+H+D →(H*+D)→ H+D* → H+D
ここで、Hは電荷(ホールまたは電子)輸送材料分子、Dは発光添加材料分子、*は一重項励起状態を示す。
【0154】
ホスト材料が単一のため、ホスト材料分子の各極性イオンH、Hからゲスト材料分子Dに電荷移動し発光するか、もしくはホスト材料分子の励起状態H*からゲスト材料分子Dに電荷移動する結果、ゲスト分子が励起状態D*になり発光する。
【0155】
一方、発光層が混合ホスト層の場合には下記式によって発光すると考えられる。
【0156】
【化26】
Ha+Hb+D → Ha+Hb+D* → Ha+Hb+D
ここで、Ha、Hbは電荷輸送材料分子であり一方がホール輸送性、他方が電子輸送性である。また、Dは発光添加材料分子、*は一重項励起状態を示す。
【0157】
ホスト材料であるHaとHbはエネルギーバンドのずれが非常に大きいため、相互の電荷移動は発生しない。このためホスト材料は励起状態になることなく、ゲスト材料分子Dに電荷移動する結果、ゲスト分子が励起状態D*になり発光する。
【0158】
このように、混合ホスト層では、ホスト分子Ha、Hbは励起状態にならないので、ホスト材料の劣化が起こりにくい。このことが、混合ホスト層としたことによる輝度寿命向上の一つの原因と推定される。
【0159】
しかしながら、発光層を混合ホスト層とした場合は、単一ホストの場合よりも、低減されてはいるものの、ホストの励起は起こっていると推定している。この混合ホスト層内で起こるホール輸送性材料の励起については、詳細メカニズムは明確になっていないが、分子構造に依存すると考えられる。
【0160】
[ダークスポットの原因検討]
図8は、上記化合物3を使用した素子について、120℃で500hr保存した後の断面形状を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真に基づいて模式的に表した図である。
【0161】
観察結果から、ホール輸送材料が存在する層(正孔輸送層40、発光層50)が部分的に空洞化していることが判明した。空洞化部分K1では、電流が流れないため非発光領域となり、ダークスポットとして認識されると考えられる。これは、環境温度が材料のガラス転移温度よりも高いため、体積変化を伴う結晶化が進行したためであると推定される。
【0162】
上記具体例1、2および比較例1、2では、発光層50のホスト材料としての電子輸送性材料が、上記図5に示される化合物であった。この電子輸送性材料以外でも、ホール輸送性材料の分子構造に依存した輝度低下の存在を確認するため、下記の比較実験を行った。
【0163】
(比較例3)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、アルゴンと酸素混合のプラズマによる表面処理を施した後、正孔注入層30としてCuPcを膜厚10nm成膜した。
【0164】
その上に、正孔輸送層40として上記化合物3(図2参照)を50nm、発光層50としてこの化合物3とトリス(8−キノリノラト)アルミニウム及びジメチルキナクリドンを50:50:1の重量比により20nm成膜した。
【0165】
その上に、電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
【0166】
この素子を、85℃環境下において初期輝度2400cd/m、直流駆動で耐久試験を行ったところ、輝度半減寿命は78時間であった。
【0167】
(比較例4)
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、アルゴンと酸素混合のプラズマによる表面処理を施した後、正孔注入層30としてCuPcを膜厚10nm成膜した。
【0168】
その上に、正孔輸送層40として上記化合物5(図2参照)を50nm、発光層50としてこの化合物5とトリス(8−キノリノラト)アルミニウム及びジメチルキナクリドンを50:50:1の重量比により20nm成膜した。
【0169】
その上に、電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
【0170】
この素子を、85℃環境下において初期輝度2400cd/m、直流駆動で耐久試験を行ったところ、輝度半減寿命は25時間であった。
【0171】
これら比較例3、4の結果を、図9の表にまとめた。ここで、輝度寿命については輝度半減時間で示している。分子構造欄の数値は、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または上記構造式(1)(化学式19参照)で示される基が存在する箇所の総数を示している。
【0172】
この結果から、電子輸送材料及び発光添加材料が異なる場合においても、輝度低下がホール輸送材料の分子構造に依存していることが確認された。
【0173】
(比較例5)
上記混合ホスト層での輝度低下の推定メカニズムによれば、混合ホスト層を用いない構造では、ホール輸送材料の分子構造に依存した差異は発現しないはずである。このため、混合ホスト層を用いずに単一ホスト層の発光層構造において検証を行った。
【0174】
ガラス基板10上に陽極20としてITO膜(透明電極)を形成し、アルゴンと酸素混合のプラズマによる表面処理を施した後、正孔注入層30としてCuPcを膜厚10nm成膜した。
【0175】
その上に、正孔輸送層40として3級アミン化合物を20nm、発光層50として上記図5に示される電子輸送性材料及びルブレンを20:1の重量比により40nm、電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で密封し有機EL素子を得た。
【0176】
ここで、3級アミン化合物としては、上記化合物1、2、3、4、5(図2、図3参照)を適用した。この素子を、85℃環境化において初期輝度400cd/m2 1/64デューティー駆動で耐久試験を行った。その結果は、図10の表に示される。上記図7の表と同様に輝度寿命については耐久試験後400hrでの規格化輝度で示している。
【0177】
この結果から、混合ホスト層に見られたホール輸送材料の分子構造との相関は見られない。このことから、本発明における上記した課題が混合ホスト層固有の問題であり、この問題を睨んで発明に至ったことが確認された。
【0178】
以上のように、本実施形態の3級アミン化合物を、発光層50を構成するホール輸送性材料に用いることにより、従来に比べて大幅な輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図れることが確認された。
【0179】
[CuPc結晶性ピークについて]
次に、本実施形態の好ましい形態として、正孔注入層30を構成するCuPcにおいて、有機EL素子S1の使用温度(例えば−40℃〜120℃)内の加熱によるCuPc結晶性ピーク(2θ=6.68°)値の変化量が、加熱前の当該CuPc結晶性ピークの±25%以内となるようにした根拠について、そのようなCuPc膜30の製造方法等も含めて具体的に述べる。
【0180】
[第1の製造方法]
ガラス基板10の上に、陽極としてのITO膜20をスパッタ等により成膜し、ITO膜20の表面を300℃に加熱しながら紫外線照射した。以下、このITO膜20に対する処理をUV−300℃処理という。
【0181】
このUV−300℃処理を行った後に、正孔注入層としてのCuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度420℃で膜厚10nmにて成膜した。その後は、上記具体例1と同様に、正孔輸送層40として3級アミン化合物である化合物1(図2参照)を20nm、発光層50として化合物1と図5に示される電子輸送性材料及びルブレンを60:20:3の重量比により20nm形成した。
【0182】
さらに、電子輸送層60としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウムを20nm、電子注入層70にLiF、陰極80にAlを順次成膜し、上記図1に示したような有機EL素子を得た。
【0183】
ここで、このUV−300℃処理を行ったITO膜20にCuPc膜30を成膜したものについて、「手段」の欄にて述べたのと同様に、加速高温放置(120℃、2hr)を行う前と後とで、X線回折分析を行った。
【0184】
その結果、2θ=6.68°に発生しているCuPc結晶性ピークは、放置処理前の値に比べて放置処理後の値の比は1.02と非常に小さいことが確認された。言い換えれば、本製造方法の成膜時のCuPc膜30の結晶性は、非常に高く安定であったことを示す。
【0185】
さらに、できあがった有機EL素子を封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した結果、V−I特性のシフトはほとんど無く、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。
【0186】
つまり、本第1の製造方法により製造された有機EL素子は、使用温度内においてCuPcと発光層の密着性が向上し、V−I特性のシフトはほとんど無く、輝度低下や輝度ムラのない特性を実現することができた。
【0187】
このような効果は、本製造方法におけるUV−300℃処理によるものであり、当該処理による効果の実現メカニズムについて、より詳細に説明する。
【0188】
陽極としてのITO膜20から、正孔注入層としてのCuPc膜30に効率良く正孔が注入されるためには、ITO膜表面の洗浄処理は重要であることは以前から公知である。しかし、一般的には洗浄後のITO膜表面のイオン化ポテンシャル(Ip)で評価されており、本発明者等は、正孔注入特性等を鑑みてITO膜20の洗浄処理直後にITO膜20のIpが5.5eV以下であれば問題無しという判断をしていた。
【0189】
しかし、本発明者等の検討では、アルゴンと酸素(比率1:1)のプラズマ洗浄処理を5分間行った時のITO膜20のIpは5.45eV、UV処理のみを20分間行った時のIpは5.5eV、上記UV−300℃処理を20分間行った時のIpは5.46eVと大きな差は見られなかった。
【0190】
それにもかかわらず、UV−300℃処理を行った素子のみが、高温放置後のV−I特性シフトすなわち輝度低下や輝度ムラが発生しないという結果を得た。つまり、ITO上に成膜される結晶性有機材料の結晶性はITO膜20のIpのみによって決定されるのではなく、他の要因も存在することを示している。
【0191】
そこで、UV−300℃処理では、加熱処理が関係していることから、ITO表面の水分に着目し、昇温脱離法(thermal desorption method、以下、TDS法という)により、各温度での水分発生量すなわちITO膜20の表面からの水分離脱量を測定した。
【0192】
図11は、ガラス基板10の上にITO膜20を成膜した直後のTDS法による測定結果である。このTDSスペクトルは、分子量つまりTDS法で言うM/zが18であるHOまたは17であるOHのスペクトルを測定したものである。
【0193】
図11に示す結果より、70℃と330℃に水分離脱のピークがあることがわかる。前者はITO膜20に表面に物理的に吸着している吸着水として存在する分であり、後者はITO膜20の表面にてITOと化学的に結合している結合水として存在する水分であると考えられる。従って、ITO膜20の表面の結合水がCuPc膜30の成膜時における結晶性を決める一要因ではないかと考えられる。
【0194】
実際に、ガラス基板10の上にITO膜20を成膜したものを、窒素雰囲気中で300℃の温度にて加熱処理した場合のTDSスペクトルを図12に示す。この加熱処理を行わない場合すなわち上記図11に示すTDSスペクトルと比較して、330℃のピーク値が50%程度まで低減している。さらに、この300℃の加熱処理を真空中で行った場合のTDSスペクトルを図13に示す。この場合には、330℃のピークはほとんど認められない。
【0195】
これら窒素雰囲気中または真空中での300℃での加熱処理により作成した有機EL素子を、封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した結果、V−I特性のシフトはほとんど無く、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。
【0196】
以上のことから、基板10上にITO膜20を形成し、CuPc膜30等の結晶性を示す有機材料をITO膜20の上に成膜する有機EL素子の製造方法においては、当該有機材料を成膜する前に、ITO膜20の表面の結合水を脱離処理することが有効であることがわかった。
【0197】
それによって、結晶性を有する有機材料の下地となるITO膜20の表面において、吸着水とともに結合水を低減することができるため、成膜された有機材料の結晶性を高いものにすることができ、使用温度内において良好な輝度特性を実現することができる。
【0198】
ここで、上記図12に示したように、脱離処理後のITO膜20の表面における水分起因のTDSスペクトルにおいて、330℃付近の結合水ピーク値が、脱離処理前のITO膜20の表面における結合水ピーク値と比較して50%以内となるようにすることが好ましい。
【0199】
さらには、上記図13に示したように、脱離処理後のITO膜20の表面における水分起因のTDSスペクトルにおいて、330℃付近の結合水ピークが無くなるようにすれば、いっそう好ましい。
【0200】
なお、ITO膜20の表面に存在する結合水を50%以内程度にまで低減するには、CuPc膜30等の結晶性の有機材料をITO膜20の上に成膜する前に、ITO膜20の加熱処理温度を250℃以上とすることが好ましい。
【0201】
また、本第1の製造方法によれば、基板10上にインジウム−錫の酸化物からなるITO膜20を形成し、CuPc膜30等の結晶性を示す有機材料を、ITO膜の20上に成膜してなる有機EL素子であって、ITO膜20は、その表面におけるTDS法により測定された水分起因のスペクトルにおける330℃付近の結合水ピークが無いものであることを特徴とした有機EL素子S1が提供される。
【0202】
そして、それによれば、使用温度内において、陽極ITOからの正孔注入特性が安定し、輝度低下や輝度ムラが抑制された、安定した輝度特性を実現することができる。
【0203】
[第2の製造方法]
上記した本実施形態の第1の製造方法では、結晶性を示す有機材料であるCuPc膜30等の下地となるITO膜20を加熱処理することにより、CuPc膜30の結晶性を高めるようにしていた。
【0204】
本実施形態の第2の製造方法では、CuPc膜30の成膜時の材料温度に着目した。ガラス基板10の上に、陽極としてのITO膜20をスパッタ等により成膜する。このITO膜付きガラス基板において、上述したアルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理を行い、ITO膜20の上に、正孔注入層としてのCuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度420℃で成膜した。これを、420℃成膜品ということにする。
【0205】
一方、ITO膜付きガラス基板において、上述したアルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理を行い、ITO膜20の上に、正孔注入層としてのCuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度520℃で成膜した。これを、520℃成膜品ということにする。
【0206】
その後、420℃成膜品および520℃成膜品それぞれにおいて、CuPc膜30の上に、上記第1の製造方法(つまり、上記具体例1)と同様、正孔輸送層40、化合物1を用いた混合ホスト層である発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を順次成膜し、有機EL素子S1を製造した。
【0207】
ここで、420℃成膜品および520℃成膜品それぞれについて、上記した加速高温放置(120℃、2hr)を行う前と後とで、X線回折分析によるCuPc結晶ピーク値の比を調べた。また、素子を封止缶で密封して上記した加速高温放置の前後におけるV−I特性のシフトを調べた。
【0208】
420℃成膜品の場合、「手段」の欄にて述べた試作品と同様に、CuPc結晶性ピークの比は約1.5(上記図17参照)でシフト量は約3V(上記図16参照)であったのに対し、520℃成膜品の場合、CuPc結晶性ピークの比が約1.15でシフト量は約1Vと良好であった。
【0209】
さらに、第2の製造方法の他の例を示す。ガラス基板10の上に、陽極としてのITO膜20をスパッタ等により成膜した。その表面を研磨して、Raは約1nm、Rzは約10nmとした。このITO膜付きガラス基板におけるITO膜20の表面を150℃に加熱しながら紫外線照射した(UV−150℃処理)。
【0210】
続いて、ITO膜20の上に、正孔注入層としてのCuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度520℃で成膜する。その後は、上記具体例1と同様に、正孔輸送層40、化合物1を用いた混合ホスト層である発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を順次成膜し、乾燥窒素雰囲気内で封止缶で封止した有機EL素子を得た。
【0211】
このようにして得られた有機EL素子を封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した結果、V−I特性のシフトは小さく、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。ちなみに、加速高温放置の前後におけるV−I特性のシフト量は1.2Vであり、CuPc結晶性ピークの比は1.21であった。
【0212】
本第2の製造方法のもう一つの他の例では、上記同様に形成したITO膜付きガラス基板におけるITO膜20の表面を常温にて紫外線照射した(UV−常温処理)。続いて、ITO膜20の上に、正孔注入層としてのCuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度520℃で成膜した。
【0213】
その後、上記同様、上層40〜80を順次成膜して得られた有機EL素子を封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した。
【0214】
その結果、V−I特性のシフトは小さく、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。本例では、加速高温放置の前後におけるV−I特性のシフト量は1.5Vであり、CuPc結晶性ピークの比は1.21であった。
【0215】
このようにCuPc膜30の成膜温度を520℃とする第2の製造方法によれば、ITO膜20の表面処理方法に依らず、上記第1の製造方法で採用したUV−300℃処理を行わなくても、必要特性を満足する有機EL素子が得られる。このことは、CuPcの結晶性に影響する因子がITO表面のみならず、成膜方法にも存在することを示すものである。
【0216】
つまり、本実施形態の第2の製造方法によっても、CuPc膜30の結晶性が非常に高く安定であり、それにより製造された有機EL素子S1は、使用温度内において良好な輝度特性を実現することができる。
【0217】
[第3の製造方法]
本実施形態の第3の製造方法は、結晶性を示す有機材料の膜であるCuPc膜30をITO膜20の上に形成した後、真空もしくは不活性ガス雰囲気中で加熱処理することにより、CuPc膜30の成膜を完了させたものである。
【0218】
つまり、ガラス基板10の上にITO膜20を形成し、その上に蒸着法等によりCuPc膜30を形成し、このCuPc膜30を加熱処理した後、その上の正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を順次成膜し、有機EL素子S1を製造する。この第3の製造方法について実施した応用例を述べる。
【0219】
(第3の製造方法の応用例1)
ガラス基板10の上に、陽極としてのITO膜20をスパッタ等により成膜した。このITO膜付きガラス基板におけるITO膜20の表面を研磨して、Raは約1nm、Rzは約10nmとした。さらに当該表面に対して、上述したアルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理を施した。
【0220】
その後、ITO膜20の上に、正孔注入層としてのCuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度420℃で膜厚10nmにて形成した。続いて、真空中にて基板温度150℃で20分間加熱処理を行った。
【0221】
その後、CuPc膜30の上に、上記第1の製造方法(つまり、上記具体例1)と同様、正孔輸送層40、化合物1を用いた混合ホスト層である発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を順次成膜し、有機EL素子を得た。
【0222】
このようにして得られた有機EL素子を封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した結果、V−I特性のシフトは小さく、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。ちなみに、加速高温放置の前後におけるV−I特性のシフト量は1.0Vであり、CuPc結晶性ピークの比は1.13であった。
【0223】
(第3の製造方法の応用例2)
上記第3の製造方法の応用例1と同様に、ガラス基板10の上にITO膜20を成膜し、アルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理を施した後、CuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度420℃で膜厚10nmにて形成した。続いて、本例では真空中にて基板温度100℃で20分間加熱処理を行った。
【0224】
その後、CuPc膜30の上に、上記第1の製造方法(つまり、上記具体例1)と同様、正孔輸送層40、化合物1を用いた混合ホスト層である発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を順次成膜し、有機EL素子を得た。
【0225】
その有機EL素子を封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した。その結果、V−I特性のシフトは小さく、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。本例では、加速高温放置の前後におけるV−I特性のシフト量は1.0Vであり、CuPc結晶性ピークの比は1.15であった。
【0226】
(第3の製造方法の応用例3)
上記第3の製造方法の応用例1と同様に、ガラス基板10の上にITO膜20を成膜し、アルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理を施した後、CuPc膜30を蒸着法により材料加熱温度420℃で膜厚10nmにて形成した。続いて、本例では真空中にて基板温度70℃で20分間加熱処理を行った。
【0227】
その後、CuPc膜30の上に、上記第1の製造方法(つまり、上記具体例1)と同様、正孔輸送層40、化合物1を用いた混合ホスト層である発光層50、電子輸送層60、電子注入層70、陰極80を順次成膜し、有機EL素子を得た。
【0228】
その有機EL素子を封止缶で密封した密封素子を、120℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した。その結果、V−I特性のシフトは小さく、輝度低下や輝度ムラは見られなかった。本例では、加速高温放置の前後におけるV−I特性のシフト量は1.6Vであり、CuPc結晶性ピークの比は1.25であった。
【0229】
このように、第3の製造方法によれば、結晶性を示す有機材料の膜であるCuPc膜30をITO膜20の上に形成した後、真空もしくは不活性ガス雰囲気中で加熱処理することにより、成膜されたCuPc膜30の結晶性が当該加熱処理によって高められたものにすることができる。
【0230】
これは、CuPc膜30中の分子が熱による活性化エネルギーによって振動し、固体状態がより安定な相へ移行するためと考えられる。このことは温度と強い相関がある。本発明者らの検討では、実際に、加熱処理する前よりも後の方が、X線回折によるCuPc膜30の結晶ピークが大きくなり、結晶性が向上していることが確認できている。
【0231】
そして、上記応用例1〜3より、第3の製造方法においてCuPc膜30を加熱処理する温度は70℃以上であれば、十分にCuPc膜30の結晶性が高まり、高温環境下で使用しても、輝度の低下や輝度ムラさらにはショートやリークが発生しない程度にまで、CuPc膜30の結晶状態の変化を小さくすることができる。
【0232】
このように第3の製造方法によっても、結晶性を有する有機材料を含む有機EL素子において、使用温度内において電流のショートおよびリークを防止し良好な輝度特性を実現することができる。なお、当該加熱処理によって、加熱される膜が再離脱しては元も子もないので、加熱処理温度の上限は加熱対象となる膜のの蒸発温度または昇華温度以下であることは勿論である。
【0233】
このように、CuPc結晶性ピークについて上記第1〜第3の製造方法に分けて述べてきたが、ここで、上記加速高温放置(120℃、2hr)の前と後でのCuPc結晶性ピークの比とV−I特性シフト量との関係についてまとめておく。
【0234】
同関係を図14にグラフとして示し、図14の基となるデータを図15に示す。なお、図14、図15ではCuPc結晶性ピーク値の比は「X線回折ピーク比」、V−I特性シフト量は「V−Iシフト」として記載してある。
【0235】
上述したが、CuPc結晶性ピーク値の比は、加速高温放置の前のCuPc結晶性ピークの積分値に対する加速高温放置の後のCuPc結晶性ピークの積分値の比であり、当該比が1より大ならば加速高温放置によってCuPc膜の結晶性が高くなり、1未満ならば低くなったことを示す。
【0236】
また、V−I特性シフト量は、加速高温放置の前のV−I特性を基準として加速高温放置の後のV−I特性が何ボルト、シフトしたかを見たものである。具体的には、上記図17において、CuPc結晶性ピークの比が1.5と結晶性が大幅に高く変化したため、上記図16に示したように、V−I特性シフト量が約3Vと大きくなっていた。
【0237】
また、図15において、「洗浄前処理条件」は、ガラス基板10の上に成膜したITO膜20をCuPc膜30の成膜前に洗浄する条件であり、「プラズマ」は上記アルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理、「UV300℃」、「UV250℃」、「UV150℃」、「UV常温」はそれぞれの温度で紫外線照射を行った処理を意味する。また、図15において「材料加熱温度」はCuPc膜30の成膜時の材料温度である。
【0238】
さらに、図15において、「成膜手法」には、上記第3の製造方法を採用した場合について、その条件が示されている。「成膜後加熱(150℃真空中)」、「成膜後加熱(100℃真空中)」、「成膜後加熱(70℃真空中)」はそれぞれ、上述した第3の製造方法の応用例1、応用例2、応用例3の場合である。
【0239】
図14のグラフに示されている、X線回折ピーク比が1.25、V−Iシフトが1.6Vの有機EL素子においては輝度ムラが明確に認識されなかった。しかし、X線回折ピーク比が約1.3、V−Iシフトが約2.0Vの有機EL素子では輝度ムラが明確に認識された。
【0240】
このことにより、商品性から考えるとX線回折ピーク比のしきい値は約1.25で、V−Iシフトのしきい値は約1.6Vにあると言える。
【0241】
つまり、上述したように、CuPc結晶性ピークにおいて、有機EL素子S1の使用温度(例えば−40℃〜120℃)内の加熱による当該CuPc結晶性ピーク値の変化量を、加熱前の当該CuPc結晶性ピークの±25%以内に小さく抑えることにより、使用温度内において、実用レベルにて良好な輝度特性を実現することができる。
【0242】
また、図15から、ITO膜20の加熱処理温度を250℃以上とすれば、下地となるITO膜の表面において、吸着水とともに結合水を効果的に低減することができ、上記効果を達成すべく結晶性を高めた有機材料を成膜できることがわかる。
【0243】
また、加熱によるCuPc結晶性ピーク値の変化は、増加する方向でなくても減少する方向であっても良い。つまり、当該変化量が、加熱前のCuPc結晶性ピークの+25%以下かもしくは−25%以上であればよく、図14に示すように、X線回折ピーク比は0.75以上でも良い。例えば、X線回折ピーク比が0.68の場合、V−Iシフトは2.8Vであり、輝度ムラが認識された。
【0244】
以上が、本実施形態の好ましい形態として、正孔注入層30を構成するCuPcにおいて、有機EL素子S1の使用温度(例えば−40℃〜120℃)内の加熱によるCuPc結晶性ピーク(2θ=6.68°)値の変化量が、加熱前の当該CuPc結晶性ピークの±25%以内となるようにした根拠である。
【0245】
そして、この好ましい形態を採用して、CuPc結晶性ピーク値の加熱前後における変化量を±25%以内に小さく抑えることにより、高温環境下で使用しても、輝度の低下や輝度ムラが発生しない程度にまで、有機材料の結晶状態の変化を小さくすることができる。
【0246】
それにより、使用温度内において良好な輝度特性を実現することができ、輝度寿命の向上と100℃以上の耐熱性の確保との両立を図るという本実施形態の効果をより高いレベルにて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る有機EL素子の概略断面図である。
【図2】具体例および比較例に用いた3級アミン化合物1〜3の化学構造を示す図である。
【図3】具体例および比較例に用いた3級アミン化合物4〜6の化学構造を示す図である。
【図4】具体例および比較例に用いた3級アミン化合物7、8の化学構造を示す図である。
【図5】具体例および比較例に用いた電子輸送性材料の化学構造を示す図である。
【図6】具体例1、2および比較例1、2における耐久試験の結果を示す図である。
【図7】具体例1、2および比較例1、2の結果を各3級アミン化合物材料の物性値を含めて示す図表である。
【図8】化合物3を使用した素子について、120℃で500hr保存した後の断面形状を模式的に表した図である。
【図9】比較例3、4の結果を示す図表である。
【図10】比較例5の結果を示す図表である。
【図11】ガラス基板の上にITO膜を成膜した直後のTDSスペクトルを示す図である。
【図12】窒素雰囲気中で300℃の温度にて加熱処理した場合のITO膜の表面のTDSスペクトルを示す図である。
【図13】真空中で300℃の温度にて加熱処理した場合のITO膜の表面のTDSスペクトルを示す図である。
【図14】120℃、2hrで高温処理放置する前と後でのCuPc結晶性ピークの比とV−I特性シフト量との関係を示す図である。
【図15】図14の基となるデータを示す図表である。
【図16】本発明者等の試作品における100℃、12hrで高温放置する前と後でのV−I特性シフトの様子を示す図である。
【図17】本発明者等の試作品における100℃、12hrで高温放置する前と後でのCuPc膜のX線回折スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
10…基板、20…陽極、30…正孔注入層、50…発光層、80…陰極。

Claims (7)

  1. 一対の電極間に、3級アミン化合物からなるホール輸送性材料と電子輸送性材料と発光添加材料とを混合してなる発光層を挟んでなる有機EL素子において、
    前記ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物は、分子構造内の窒素原子の間に2個以上のフェニレン基、脂肪族基または下記構造式(1)で示される基が存在する箇所の総数が1個もしくは0であり、且つガラス転移温度が100℃以上のものであることを特徴とする有機EL素子。
    Figure 2004186027
    (構造式(1)において、L1、L2は1環以上のフェニレン基であり、M1、M2は芳香族基または脂肪族基を表す。)
  2. 前記ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物が、下記構造式(2)で表される骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
    Figure 2004186027
    (構造式(2)において、R1〜R20は、水素や下記構造式(3)、(4)、(5)で表される構造であるか、
    Figure 2004186027
    Figure 2004186027
    Figure 2004186027
    または、R1〜R20のうちの隣接する基同士によって芳香族環を形成した構造であり、
    且つ、R1〜R20のうち少なくとも1つは構造式(3)、(4)、(5)のいずれかの構造を有するものである。
    ここで、B1〜B2、C1〜C3、D1〜D4は、置換または非置換のアリール基を表す。)
  3. 前記ホール輸送性材料を構成する3級アミン化合物が、下記構造式(6)で表される骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
    Figure 2004186027
    (構造式(6)において、Aは2個以上のフェニレン基、脂肪族基または前記構造式(1)で示される基であり、
    R1〜R20は、水素や下記構造式(3)、(4)、(5)で表される構造であるか、
    Figure 2004186027
    Figure 2004186027
    Figure 2004186027
    または、R1〜R20のうちの隣接する基同士によって芳香族環を形成した構造であり、
    且つ、R1〜R20のうち少なくとも1つは構造式(3)、(4)、(5)のいずれかの構造を有するものである。
    ここで、B1〜B2、C1〜C3、D1〜D4は、置換または非置換のアリール基を表す。)
  4. 前記一対の電極のどちらか一方と前記発光層との間に正孔注入層が介在されており、
    前記正孔注入層は、結晶性を示す有機材料からなり、
    前記結晶性を示す有機材料のX線回折法により現れる回折ピークの値において、前記有機EL素子の使用温度内の加熱による前記回折ピーク値の変化量が、前記加熱前の前記回折ピーク値の±25%以内となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の有機EL素子。
  5. 基板上にインジウム−錫の酸化物からなるITO膜が形成されており、前記結晶性を示す有機材料は、前記ITO膜の上に形成された有機膜として構成されていることを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子。
  6. 前記結晶性特性を示す有機材料は、銅フタロシアニン膜であり、前記回折ピーク値は前記銅フタロシアニン膜における前記基板に平行な(200)面の回折ピーク値であることを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子。
  7. 前記ITO膜の平均表面粗さRaが2nm以下であり、10点平均表面粗さRzが20nm以下であることを特徴とする請求項5または6に記載の有機EL素子。
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