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JP2004161685A - 卵黄関連蛋白およびその用途 - Google Patents

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JP2004161685A
JP2004161685A JP2002330226A JP2002330226A JP2004161685A JP 2004161685 A JP2004161685 A JP 2004161685A JP 2002330226 A JP2002330226 A JP 2002330226A JP 2002330226 A JP2002330226 A JP 2002330226A JP 2004161685 A JP2004161685 A JP 2004161685A
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yolk
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yrp
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JP2002330226A
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Akihiko Hara
彰彦 原
Yasuharu Nanba
靖治 難波
Keizo Ito
敬三 伊藤
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FRONTIER SCIENCE CO Ltd
BL KK
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FRONTIER SCIENCE CO Ltd
BL KK
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Abstract

【課題】メダカ由来の新規な雌特異卵黄関連蛋白(YRP)およびそれに対する抗体が提供することにより、ビテロジェニンを検出する従来の環境ホルモンの測定系の代替法を提供する。
【解決手段】メダカ由来の雌特異卵黄関連蛋白であって、ゲル濾過による分子量が実質的に460kDaであり、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が実質的に130kDaである卵黄関連蛋白、および、それに対する抗体、および、当該抗体を用いた上記卵黄関連蛋白の各種の免疫学的測定法。
【選択図】 図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エストロジェンによって誘導される新規な蛋白質およびその用途に関し、さらに詳細には、メダカから分離された新規な蛋白質およびその用途に関する。
【従来の技術】
【0002】
卵生脊椎動物では、卵母細胞は、卵黄蛋白前駆物質であるビテロジェニンを取り込むことによって急速に成長する(Wallace RA. 1985. In: Browder, editor. Developmental Biology. New York: Plenum Press. Vol. 1, p127−177.)。
【0003】
ビテロジェニン(Vg)は、エステラジオール−17(E2)の刺激により雌動物の肝臓内で合成される糖脂質蛋白であり、雌特異蛋白として血中に分泌される。血流中のビテロジェニンは、受容体を介したエンドサイトーシスにより卵母細胞に取り込まれ、酵素により2つの主要な卵黄蛋白質、すなわち、リポビテリン(lipovitellin)とホスビチン(phosvitin)に開裂する。これらの卵黄蛋白質は胚を成長させるための栄養素として役立つ。
【0004】
複数の形態のビテロジェニンが広範囲の卵生脊椎動物において既に確認されている(Wiley HS et al. 1981. J Biol Chem 256: 8626−8634.; Wang S−Y et al.1983. Biochemistry 22:6206−6212.; Wang H et al. 2000. Gene 256:303−310.)。硬骨魚では、ティラピア(Oreochromis aureus)(Lee BH et al. 1994. Biochem Mol Biol Int 34:75−83.)、マミチョグ(Fundulus heteroclitus)(LaFleur GJ et al. 1995. In:Goetz F, Thomas P, editors. Reproductive Physiology of Fish. Austin, TX: The University of Texas at Austin. p336−338.)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)(Wang H et al. 2000. Gene 256:303−310)、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)(Trichet V et al. 2000. Mol Gen Genet 263:828 837.)およびハドック(モンツキダラ Melanogrammus aeglefinus)(Reith M et al. 2001. J Exp Zool 291:58−67.)などで、ビテロジェニン遺伝子が2つ以上存在しており、このことは、多くの魚類が数種のビテロジェニン遺伝子を持つことを示唆している。
【0005】
ニジマスにはビテロジェニンをコードする遺伝子が20個存在する。しかし、それらの配列の97%は同一であるため、蛋白質としては区別がつかない。したがって、複数のビテロジェニン遺伝子が発現しているとしても、蛋白質として異なる形態のビテロジェニンが複数存在することにはならない。現在のところ、翻訳蛋白として2つの異なるビテロジェニンがティラピア(Oreochromis属)(Ding JL et al. 1989. Comp Physiol Biochem 93B:363−370.; Lee KBH et al. 1992. Exp Zool 264:100−106.; Kishida M et al. 1993. Fish Physiol Biochem 12:171−182.; Buerano C et al. 1995. J Exp Zool 273:59−69.)およびヒラメ(マツカワ Verasper moseri)(Matsubara T et al. 1999. Dev Biol 213:18−32.)において検出されている。
【0006】
マツバラ他(Matsubara T et al. 1999. Dev Biol 213:18−32.)は、遠洋性卵を産むヒラメにおける2種のビテロジェニンの特徴を、N末端のアミノ酸配列と特異的抗体を用いて明らかにしている。ヒラメの2種のビテロジェニン(VgAおよびVgB)は、類似の分子量(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)において168kDaおよび175kDa)を有するが、卵の水和の過程において異なった役割を果たしている。
【0007】
VgA由来の卵黄蛋白質は、水和する際に遊離アミノ酸に分解され、浸透圧の上昇により卵に浮力を与えることがあるが、他方、VgB由来の卵黄蛋白質は比較的大きなペプチドとして残り、栄養素として胚に使用される。
【0008】
ヒラメとは対照的に、遠洋性卵を産まないティラピアの2種のビテロジェニン(VTG−200およびVTG−130)は異なる分子量(SDS−PAGEで200kDaおよび130kDa)を有する。これらの2種のビテロジェニンは血漿から精製され、その生体内および生体外におけるエステラジオール−17(E2)による誘導は既に研究されている(Kishida M et al. 1993. Fish Physiol Biochem 12: 171−182.; TakemuraA et al. 2001. Comp Biochem Physiol 129A:641−651.)。しかしながら、これらの卵黄形成、排卵および発生の過程における役割は未だ全く知られていない。
【0009】
数種の魚類では、卵膜(または漿膜)の蛋白の前駆物質が、雌特異蛋白として血流中に見出されている(Hamazaki T et al. 1985. J Exp Zool 235:269−279.;Hyllner SJ et al. 1991. J Endocrinol 131:229−236.)。この前駆物質はコリオジェニン(Chg)と呼ばれ、その産生はエストロゲンによって制御される(Murata K et al. 1994. Gen Comp Endocrinol 95:232−239.; Shimizu M et al. 2000. J Fish Biol 57:170−181.)。魚の卵膜蛋白の起源は種間で様々であるが、或る魚種でビテロジェニン(Vg)とコリオジェニン(Chg)がどのようにエステロゲンにより制御され、卵の成熟過程に利用されるかを理解することは非常に興味深いことである。
【0010】
メダカ(Oryzias latipes)では、ビテロジェニン(Vg)とコリオジェニン(Chg)の何れもが卵以外を起源としており、これらの雌特異蛋白の各種特性が研究されている(Yamagami K. 1996. Zool Sci 13:331−340.)。また、メダカにエストロゲンを投与すると、ビテロジェニンおよびコリオジェニンが豊富な腹水の蓄積が誘導される。かかる特徴にゆえに、メダカは、肝臓由来の雌特異蛋白による卵発生を研究するための格好のモデルとされている。
【0011】
ハラ他(Hara A et al. 1983. Comp Biochem Physiol 76A:135−141.)は、FS−1,2および3と称される3つの雌特異蛋白をメダカの血清中から免疫化学的に検出した。FS−2とFS−3は、雌特異蛋白であり、卵黄蛋白質に対する抗血清と免疫反応し、エストロゲン投与により誘導されることから、ビテロジェニンの評価基準を満たす。
【0012】
ハマザキ他(Hamazaki TS et al. 1987. J Exp Zool 242:333−341.)は、エステラジオール−17(E2)を投与されたメダカの腹水からビテロジェニンを精製し、その分子量とアミノ酸組成が他の魚のものと類似することを報告している。
【0013】
【非特許文献1】Wallace RA. In: Browder, editor. Developmental Biology. New York: Plenum Press. 1985. Vol. 1, p127−177.
【非特許文献2】Wiley HS et al. J Biol Chem 1981. 256: 8626−8634.
【非特許文献3】Wang S−Y et al. Biochemistry 1983. 22: 6206−6212.
【非特許文献4】Wang H et al. Gene 2000. 256:303−310.
【非特許文献5】Lee BH et al. Biochem Mol Biol Int 1994. 34: 75−83.
【非特許文献6】LaFleur GJ et al. In:Goetz F, Thomas P, editors. Reproductive Physiology of Fish. Austin, TX: The University of Texas at Austin. 1995. p336−338.
【非特許文献7】Trichet V et al. Mol Gen Genet 2000. 263: 828−837.
【非特許文献8】Reith M et al. J Exp Zool 2001. 291: 58−67.
【非特許文献9】Ding JL et al. Comp Physiol Biochem 1989. 93B: 363−370.
【非特許文献10】Lee KBH et al. Exp Zool 1992. 264: 100−106.
【非特許文献11】Kishida M et al. Fish Physiol Biochem 1993. 12: 171−182.
【非特許文献12】Buerano C et al. J Exp Zool 1995. 273: 59−69.
【非特許文献13】Matsubara T et al. Dev Biol 1999. 213: 18−32.
【非特許文献14】Takemura A et al. Comp Biochem Physiol 2001. 129A:641−651.
【非特許文献15】Hamazaki T et al. J Exp Zool 1985. 235: 269−279.
【非特許文献16】Hyllner SJ et al. J Endocrinol 1991. 131: 229−236.
【非特許文献17】Murata K et al. Gen Comp Endocrinol 1994. 95:232−239.
【非特許文献18】Shimizu M et al. J Fish Biol 2000. 57: 170−181.
【非特許文献19】Yamagami K. Zool Sci 1996. 13: 331−340.
【非特許文献20】Hara A et al. Comp Biochem Physiol 1983. 76A: 135−141.
【非特許文献21】Hamazaki TS et al. J Exp Zool 1987. 242: 333−341.
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
このビテロジェニンは、繁殖期におけるサイズ、相対量および外見からFS−3に相当すると考えられ、FS−1およびFS−2については未だ同定されていない。したがって、本発明は、メダカにおける他の雌特異蛋白を同定し、その特徴を明らかにすることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的の下に鋭意研究した結果、本発明者らは、卵黄抽出物に対する抗血清と免疫反応する成分を検出した。この成分は、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)における分子量が130kDaであり、抗原性および分子量の点でも以前に報告されたビテロジェニンおよびコリオジェニンと異なるものである。
【0016】
かくして、本発明の第1局面によれば、メダカ由来の雌特異卵黄関連蛋白であって、ゲル濾過による分子量が実質的に460kDaであり、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が実質的に130kDaであることを特徴とする卵黄関連蛋白が提供される。
【0017】
本発明において、ゲル濾過による分子量は、例えば、スーパーローズ6(Superose 6)(Pharmacia, Uppsala, Sweden)などを用いて0.02Mのトリス−塩酸(Tris−HCl;pH8.0、2%NaCl、0.1%NaN)により30ml/hr、フラクションサイズ0.5mlの条件下に適当な分子量マーカーとの対比で測定することができ、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)における分子量は、例えば、7.5%ゲルを用いて適当な分子量マーカーとの対比で測定することができ、「実質的に」とは、適当な分子量マーカーとの対比で測定されたことを意味する。
【0018】
本発明の卵黄関連蛋白は抗原性を有している。したがって、本発明の卵黄関連蛋白に対する各種の抗体は公知の方法により容易に取得できる。かくして、本発明の第二の局面によれば、本発明の卵黄関連蛋白に対する抗体が提供される。
【0019】
当該各種抗体を用いることにより、本発明の卵黄関連蛋白を免疫学的測定法によって容易に測定できる。かくして、本発明の第三の局面によれば、上記卵黄関連蛋白に対する第一の抗体を担体に固定し、被験試料を前記担体に接触させて該被験試料中に含まれる前記卵黄関連蛋白を担体に固定された前記第一の抗体に捕捉させた後、前記卵黄関連蛋白に対する第二の抗体を適当な標識物質で標識して前記担体と接触させることにより、前記第二の抗体を担体に捕捉された前記卵黄関連蛋白に捕捉させ、担体に捕捉された第二の抗体を検出することにより前記被験試料中の卵黄関連蛋白を検出する免疫学的測定法が提供される。
【0020】
さらに、本発明の第四の局面によれば、上記卵黄関連蛋白に対する第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体を用意し、前記卵黄関連蛋白に対する第二の抗体と所定量の被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記被験試料中に含まれる蛋白と第二の抗体との複合体を前記捕捉部位に捕捉させることによって前記卵黄関連蛋白を検出することを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法が提供される。
【0021】
さらに、本発明の第四の局面によれば、上記卵黄関連蛋白に対する第一の抗体と、前記卵黄関連蛋白に対する第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記抗体の何れか一方は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記抗体の他方は適当な標識物質で標識され、かつ、前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されてなる前記卵黄関連蛋白検出用イムノクロマト法テストストリップが提供される。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の卵黄関連蛋白(以下 YRP とも言う)は、雌のメダカに特異的な蛋白であり、雌メダカの血液、腹水などの体液から分離・精製できる。YRPはエステラジオール−17(E2)などのエストロゲンを投与することによって腹水に大量に蓄積されることから、エストロゲン投与された雌メダカの腹水から分離・精製することが好ましい。
【0023】
体液からのYRPの精製は、常法にしたがって行うことができる。例えば、腹水をリン酸緩衝食塩水などと混合して遠心分離し、さらに、透析、カラムクロマトグラフィー、限外濾過、ゲル濾過などの各種精製法を組み合わせることにより行える。透析は、各種の塩類水溶液を用いて行うことができ、塩類水溶液としてはリン酸カリ水溶液が好ましい。カラムクロマトグラフィーに用いられる充填剤としては、ヒドロキシアパタイトが好ましい。カラムクロマトグラフィーの操作条件は、カラムの充填剤の種類、充填層の系および長さ、YRPの濃度、不純物の種類および濃度などに応じて、適宜、決定される。溶出液としては、通常は、リン酸カリウム水溶液が好適に使用されるが、リン酸カリウム水溶液以外の溶出液を使用することを妨げない。なお、溶出はステップワイズ法によることが好ましい。ゲル濾過に使用されるゲルとしては、スーパーローズ6(Superose 6)(ファルマシア、ウプサラ、スエーデン Pharmacia, Upsara, Sweden)などが挙げらる。
【0024】
YRPは、アプロチニンなどの適当な助剤を所望により添加し、−35℃のような低温で凍結または凍結乾燥して保存できる。
【0025】
YRPは、ビテロジェニンと同様に、エストロゲンによって誘導される雌特異蛋白であり、環境ホルモンに曝露された雄メダカにおいても誘導される。また、YRPは、ビテロジェニンよりも、エストロゲンおよびそれに類似の環境ホルモンに対する感受性が高いと考えられる。したがって、メダカの抗YRP抗体を用いてメダカのYRPを測定することにより、高感度の環境ホルモン免疫測定系を構築できる。免疫測定系としては、例えば、ELISA測定系やイムノクロマトグラフィー測定法が挙げられ、これらの測定法に基づく各種免疫学的測定キットを作成することにより、メダカ血中のYRPの検出を容易に行うことができる。抗YRP抗体は、公知の方法に従い、YRPを用いて動物を免疫し、その抗血清を得ることにより容易に調製できる。
【0026】
イムノクロマトグラフィー測定法は、公知のイムノクロマト法テストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。一般に、イムノクロマト法テストストリップは、抗原の第一の抗原決定基にて抗体抗原反応可能な第一の抗体と、前記抗原の第二の抗原決定基にて抗体抗原反応可能で且つ標識された第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されて構成される。具体的には、例えば、図8に示されるイムノクロマト法テストストリップが挙げられる。第一および第二の抗体は何れもポリクローナル抗体(抗血清)であってもよく、また、何れか一方または両方がモノクローナル抗体であってもよい。
【0027】
図8において、数字1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、31は捕捉部位、4は吸収用部材、5は試料添加用部材を示している。図示の例では、膜担体3は、幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンフィルターで作成されている。該膜担体3には、そのクロマト展開始点側の末端から7.5mmの位置に、第一の抗体が固定され、検体の捕捉部位31が形成される。図示の例では、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いているが、被験試料に含まれる検体をクロマト展開可能で、かつ、上記捕捉部位31を形成する抗体を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。
【0028】
含浸部材2は、第二の抗体を含浸せしめた部材からなる。当該第二の抗体は、適当な標識物質で予め標識される。図示の例では、含浸部材2として、5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類なども使用できる。
【0029】
第二の抗体の標識物質としては、使用可能なものであればいかなる物質であってもよく、呈色標識物質、酵素標識物質、放射線標識物質などが挙げられる。このうち、捕捉部位31での色の変化を肉眼で観察することにより迅速かつ簡便にに判定できる点から、呈色標識物質を用いることが好ましい。呈色標識物質としては、金コロイド、白金コロイド等の金属コロイドの他、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスや、天然ゴムラテックスなどのラテックスが挙げられ、このうち、金コロイドなどの金属コロイドが特に好ましい。当該含浸部材2は、標識された第二の抗体の懸濁液を前記ガラス繊維不織布等の部材に含浸せしめ、これを乾燥させることなどによって作製できる。
【0030】
図8に示されるように、膜担体3を粘着シート1の中程に貼着し、該膜担体3のクロマト展開の開始点側(すなわち図8の左側、以下「上流側」と記す、また、その逆の側、すなわち図8の右側を、以下「下流側」と記す)の末端の上に、含浸部材2の下流側末端を重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して本発明のイムノクロマト法テストストリップを作成できる。さらに、必要に応じて、含浸部材2の上面に試料添加用部材5の下流側部分を載置するとともに、該試料添加用部材5の上流側部分を粘着シート1に貼着してもよく、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収用部材4の上流側部分を載置するとともに、該吸収用部材4の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめることもできる。
【0031】
試料添加用部材5としては、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、ならびに、濾紙および綿布などのようなセルロース製の紙または織布もしくは不織布を用いることができる。吸収用部材4は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。
【0032】
さらに、市販品の場合、図8のイムノクロマト法テストストリップは、試料添加用部材5と捕捉部位31の上方にそれぞれ被験試料注入部と判定部が開口された適当なプラスチック製ケース内に収容されて提供される。
【0033】
かくして、適当な展開溶媒中に所定量の生体試料を混合してクロマト展開可能な混合液を被験試料として得た後、当該混合液を図8に示されるイムノクロマト法テストストリップの試料添加用部材5上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材5を通過して含浸部材2において、標識された第二の抗体と混合する。その際、該混合液中に検体が存在すれば、抗原抗体反応により検体と第二の抗体との複合体が形成される。この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位31に到達し、そこに固定された第一の抗体と抗原抗体反応して捕捉される。このとき、標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が使用されていれば、当該呈色標識物質の集積により発色するので、直ちに、検体の有無を判定することができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の実験操作は、下記に従った。
【0035】
抗血清の調製
メダカ腹水及び卵抽出物に対する抗血清(抗腹水及び抗卵抽出物抗体)は市販の製品を用いた。
メダカのビテロジェニンとYRPに対する抗血清は、1mgの精製蛋白質全量をフロインド完全アジュバント(Iatron; Tokyo, Japan)に乳化して、ウサギに皮内注射して得た。注射は1週間間隔で4回行った。抗血清は、最後の注射の1週間後に、耳の静脈から採取した。幾らかの交差反応が、ビテロジェニンに対する抗血清はYRPとの間で、YPRに対する抗血清はビテロジェニンとの間で存在したので、ビテロジェニンおよびYRPに対する特異的抗血清は、それらを精製されたYRPおよびビテロジェニンのそれぞれに吸収させることにより調製した。
【0036】
電気泳動
レムリの方法(Laemmli UK. 1970. Nature 227:680−685.)に従い、3%のスタッキングゲルおよび7.5%または5〜22.5%のグラジエント分離ゲルを用いたドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により行った。サンプルは、2%SDS、10%グリセロールを含有する等量のサンプル緩衝液(必要に応じ5%の2−メルカプトエタノールを含有)で、100℃、10分間処理した。50mMトリス(Tris)、400mMグリシンおよび0.1%SDSを含有する溶液中で、スタッキングゲルでは16mA、分離ゲルでは24mAにて、ブロモフェノールブルー染料先端がゲルの底に達するまで泳動を行った。ゲルは、40%エタノール−10%酢酸溶液中の0.1%クーマシー(Coomassie)ブリリアントブルーR250(CBB; Bio−Rad)により1時間染色し、20%エタノール−5%酢酸−2.5%グリセロール溶液で、一晩、脱色した。場合により、ゲルは、市販キット(Atto; Tokyo, Japan)を使用した銀染色により可視化した。
【0037】
分子量の測定はプレシジョン マーカー(Precision marker;Bio−Rad)を使用して行った。
【0038】
リポ蛋白質、糖蛋白質およびリン蛋白質を染色する際には、3%スタッキングゲルと7.5%分離ゲルを用いたPAGE(native−PAGE)を行った。サンプルは40%蔗糖と混合し、SDS−PAGEと同じ操作条件で、50mMトリス(Tris)−400mMグリシンの溶液中で泳動させた。リポ蛋白質はスーダンブラックB(Merck; Darmstadt, Germany)で染色した。糖蛋白質はZachariusおよびZellの方法(Zacharius RM, Zell TE. 1969. Anal Biochem 30:148−152.)に従い、過ヨウ素酸−シッフ試薬(Merck)で染色した。リン蛋白質はCuttingおよびRothの方法(Cutting JA, Roth TF. 1973. Anal Biochem 54:386−394.)により、メチル グリーン(Nacalai Tesque; Kyoto, Japan)で染色した。
【0039】
ウェスターンブロット法
SDS−PAGEによって分離した蛋白質を、Towbinらの方法(Towbin H et al. 1979. Proc Natl Acad Sci USA 76:4350−4354.)によって、ニトロセルロース膜(Bio−Rad)の上に電気ブロットした。その後、膜を30分間振盪しつつトリス(Tris)−緩衝食塩水(20mMトリスおよび500mM NaCl, pH7.5;以下「TBS」という)中の5%スキムミルクでブロックした。次いで、この膜を、TBSで1:500−4000に希釈した1次抗血清とともに、室温で2時間インキュベートし、0.05%ツィーン(Tween)20を含有するTBSで5分間の洗浄を2回、TBSでの洗浄を1回行った。次いで、この膜を、2次抗体としての西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギIgG(Bio−Rad)とともに室温で1時間インキュベートした。上記と同様に洗浄した後、抗原−抗体反応を、HRP発色試薬(0.06%の4−クロロ−1−ナフトールおよび0.02%の過酸化水素を含有するTBS)により可視化した。
【0040】
実施例1(魚とホルモンの投与)
市販のメダカ稚魚を、天然の光周期および環境温度の下に水槽に入れて数週間馴致した。魚には、1日に1回、市販飼料を与えた。魚が成熟したときに、雄および雌のそれぞれから、尾を切りマイクロヘマトクリットピペット(Drummond;Broomall,PA)で血液を採取した。これを4500g(gは重力の加速度。以下同様)で5分間遠心分離して血清を取得し、使用するまで−35℃にて保存した。また、飼育中の雌から卵を採取した。
【0041】
ホルモン投与のため、ハラ他(Hara A et al. 1983. Comp Biochem Physiol 76A:135−141.)に記載されているように、エステラジオール−17(E2)を含有する飼料を魚に与えた。E2投与の結果、腹水が蓄積した。この腹水をシリンジで採取し、アプロチニン(Takara; Shiga, Japan)を0.84TIU/ml添加した後、使用するまで−35℃で保存した。
【0042】
得られた雌と雄の血清及び腹水を電気泳動にかけ、泳動パターンを比較した。その結果を、図1に示す。図1において、「male serum」、「female serum」および「ascites」はそれぞれ、「雄の血清」、「雌の血清」および「腹水」を示す。
【0043】
図1(a)は、ゲルを銀染色した結果を示し、図1(b)は、ウエスタンブロット法によりゲルをニトロセルロース膜に転写し、卵抽出物に対する抗血清を用いて免疫染色した結果を示す。なお、電気泳動は、およそ0.1Lの血清と腹水を非還元条件のもとで7.5%のゲルを用いて行った。ウェスタンブロット法において、卵抽出物に対する抗血清は4000倍希釈して一次抗体として使用した。矢印はビテロジェニン(Vg)と本発明の卵黄関連蛋白(YRP)の移動位置を示し、
【0044】
図1において、矢印Vgは220kDaのバンドを示し、矢印YRPは130kDaのバンドを示す。これらのバンドは、雌の血清および腹水中にのみ検出され、雄の血清中には検出されなかった。220kDaのバンドはメダカのビテロジェニン(Hamazaki TS et al. 1987. J Exp Zool 242:333−341.)として知られている。しかし、130kDaのバンドは、従来、確認されてない雌特異蛋白であり、それが卵抽出物に対する抗血清と免疫反応することから、卵黄関連蛋白(YRP)と考えられる。
【0045】
実施例2(腹水からの卵黄関連蛋白の精製)
実施例1で得られた腹水4ml(蛋白量58mg/ml)を、等量の0.01Mのリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.0、0.084TIUのアプロチニンを含む)と混合し、4500gで10分間、遠心分離した。精製された腹水を0.05Mリン酸カリウム(以下 KP と記すこともある)溶液(pH6.8、0.0375TIU/mlのアプロチニンを含む)で透析し、2.5×8cmのヒドロキシアパタイトカラム(Bio−Rad; Hercules, CA)に注入し、4℃にてヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを実施した。100ml/hrの流速でステップワイズ法によりKPの濃度を下げることにより蛋白を溶出させた。図2(a)にその溶出パターンを示す。図2(a)において斜線領域は、それぞれ、ビテロジェニンおよびYRPのフラクションを示す。
【0046】
1.2MのKPで溶出されたビテロジェニンを含むフラクションを、透析チューブを使用した限外濾過によって濃縮し、スーパーローズ6(Superose 6)(Pharmacia, Uppsala, Sweden)にかけた。カラムからの溶出は、室温でFPLCシステム(Pharmacia)を用い、0.02Mのトリス−塩酸(Tris−HCl)(pH8.0、2%NaCl、0.1%のNaNを含む)により通過速度30ml/hr、フラクションサイズ0.5mlで行った。図2(b)にその溶出パターンを示す。ビテロジェニンは570kDaの分子量に対応する主要なピークとして溶出された。ゲル濾過では、ビテロジェニンは570kDaの主要なピークとして、上昇部分のショルダーで溶出された。したがってピークの山が下りきるまでの部分は分析のため、精製されたメダカビテロジェニンとして使用された。
【0047】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにより0.1MのKPで溶出されたYRPを含むフラクションを、セントリコン プラスCentricon Plus−20(Millipore; Bedford, MA)を使用して、20分間、1800gで遠心分離することで濃縮した。次いで、アプロチニン0.02TIUを添加後、YRPフラクションをスーパーローズ6を用いたゲル濾過によって分離した。YRPはメインピークとして溶出された。これを、同じカラムを使用して再クロマトグラフィーすることによりさらに精製した。図2(c)にその溶出パターンを示す。精製されたYRPの分子量はゲル濾過において460kDaであった。
【0048】
実施例3(精製されたビテロジェニンおよびYRPの抗原性の比較)
実施例2で精製されたビテロジェニンおよびYRPの抗原性を比較するために、腹水に対する抗血清(a−AS)を用い、1%アガロースゲル中でOuchterlonyの方法(Ouchterlony O. 1953. Acta Path Microbiol Scand 32:231−240.)に従い、二重免疫拡散法を行った。その結果を図3に示す。なお、図3において、ASは実施例1で得られた腹水を示す。
【0049】
図3から明らかなように、ビテロジェニンおよびYRPは、それぞれ、抗血清(a−AS)に対して、単一の沈降素線を形成し、これらの線は互いに交差した。したがって、ビテロジェニンおよびYRPは互いに異なる抗原性を持つことが示された。
【0050】
実施例4(ビテロジェニン及びYRPの非還元条件下および還元条件下における性状の対比)
実施例1で得られた腹水、実施例2で精製されたビテロジェニン及びYRP、並びに、卵抽出物を、非還元条件(左パネル)と還元条件(右パネル)でSDS−PAGEにかけて対比した。なお、サンプル(10−17g)は7.5%ゲルによって分離し、クマシーブリリアントブルーR−250により染色した。その結果を図4に示す。なお、図4中、左パネルは非還元条件(2ME(−):2−メルカプトエタノール未処理)における結果を示し、右パネルは還元条件(2ME(+):2−メルカプトエタノール処理)における結果を示す。矢印は精製されたビテロジェニン及びYRP、並びに、卵抽出物の分子量を示す。
【0051】
図4から、SDS−PAGEにおいて、精製されたビテロジェニンおよびYRPは、それぞれ、非還元条件下および還元条件下のいずれにおいても、220kDaおよび130kDaで主要なバンドを形成することがわかる。
【0052】
実施例5(ビテロジェニン及びYRPの物性の対比)
実施例2で精製されたビテロジェニンおよびYRPを、7.5%ゲルを用いたSDSを含まないネイティブ−PAGE(native−PAGE)により分離し、クマシーブリリアントブルーR−250(蛋白検出用)、スーダンブラックB(脂質検出用)、過ヨウ素酸−Schiff(糖検出用)およびメチルグリーン(リン検出用)のそれぞれで染色した。結果を図5に示す。図5中、矢印Vgはビテロジェニンの移動位置を示し、矢印YRPはYRPの移動位置を示し、パネル「CBB」はクーマシーブリリアントブルーR−250による結果、パネル「SB」はスーダンブラックBによる結果、パネル「Schiff’s」は過ヨウ素酸シッフ試薬による結果、パネル「MG」はメチル グリーンによる結果を示す。
【0053】
図5から、ビテロジェニンおよびYRPの両者において、脂質、糖類およびリンが染色されたこと示され、YRPが糖脂質蛋白であることがわかる。
【0054】
さらに、精製されたビテロジェニンおよびYRPのアミノ酸組成(モル%)およびリン含有量(w/w%)を下記の方法で分析した。
【0055】
アミノ酸分析
精製されたビテロジェニンとYRPのそれぞれの凡そ200gをアミノ酸分析のために凍結乾燥した。これを6N HCl中で、110℃で24時間、加水分解した。そして、ビテロジェニンとYRPのアミノ酸組成を、日立Model KAL−3自動アミノ酸分析計(日立;東京、日本)で測定した。
【0056】
リン含有量
精製されたビテロジェニンとYRPのリン含有量を、サンプルの調製法を修正した以外GamstおよびTryの方法(Gamst O, Try K. 1980. Scand J Clin Lab Invest 40:483−486.)に従い測定した。すなわち、精製されたビテロジェニンとYRPのそれぞれ約500gを凍結乾燥した後、0.2Mの重炭酸アンモニウム溶液で透析し、150Lの2N NaOHに再溶解した。これに150Lの2N HClを添加した後、4500gで20分間、遠心分離した。その後、上清の100Lを新しいチューブに移し、リン含有量を測定した。
分析結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
Figure 2004161685
【0058】
表1によれば、YRPにおいてセリンが比較的低い含有率であったことを除けば、ビテロジェニンとYRPとの間ではアミノ酸組成は似ており、また、YRPのリン含有量はビテロジェニンのものの1/30であることが示された。
【0059】
実施例6(ビテロジェニン及びYRPの抗原性の対比)
実施例1で得られた腹水、実施例2で精製されたビテロジェニンおよびYRP、並びに、卵抽出物を、非還元条件下で5〜22.5%グラジエントゲルを用いて電気泳動を行うことにより分離し、ウエスタンブロット法に従い、ニトロセルロース膜へ転写し、ビテロジェニンに対する抗体の2000倍希釈液、および、YRPに対する抗体の500倍希釈液の夫々を用いてインキュベートし、免疫染色した。その結果を図6に示す。図6中、矢印に隣接する数字は免疫反応による染色バンドの分子量を示し、パネル「anti−Vg」(左パネル)は抗ビテロジェニン抗体を用いた結果を示し、パネル「anti−YRP」(右パネル)は抗YRP抗体を用いた結果を示し、レーン「ascites」は腹水、レーン「Vg」はビテロジェニン、レーン「YRP」はYRP、レーン「egg ext.」は「卵抽出物」の結果を示す。
【0060】
図6から、抗ビテロジェニン抗体はビテロジェニンを認識するが、腹水中のYRPおよび精製されたYRPを認識しなかった。また、抗ビテロジェニン抗体は卵抽出物中の分子量120、96、67および36kDaのバンドを認識した。これに反し、抗YRP抗体は、YRPを認識したが、腹水中のビテロジェニンおよび精製されたビテロジェニンの何れも認識しなかった。また、卵抽出物中の29kDaのバンドは抗YRP抗体と免疫反応した。以上から、ビテロジェニンおよびYRPは免疫学的に互いに異なることが示された。
また、YRPはE2投与によるメダカの腹水からだけでなく、飼育されている雌メダカの血清にも存在することが確認された。したがって、YRPはE2投与による人為物ではない。その上、ウエスタンブロット法において抗−YRP抗体は卵抽出物と交叉反応性を示した。これらを総合すると、E2投与により発現される腹水中のYRPは雌特異蛋白であり、卵黄蛋白質と抗原性を共にすると考えられる。
【0061】
実施例7(ビテロジェニンおよびYRPの雌特異性の検討)
実施例1で得れらた雄血清およびメス血清のそれぞれを、非還元条件下で7.5%ゲルを用いて電気泳動を行うことにより分離し、ウエスタンブロット法に従い、ニトロセルロース膜へ転写し、ビテロジェニンに対する抗体の2000倍希釈液、および、YRPに対する抗体の500倍希釈液の夫々を用いてインキュベートし、免疫染色した。その結果を図7に示す。図7において、パネル「a−Vg」およびパネル「a−YRP」は、それぞれ、「抗ビテロジェニン抗体」および「抗YRP抗体」を用いた結果を示し、レーン「male serum」およびレーン「female serum」は、それぞれ、「雄血清」および「雌血清」の結果を示し、矢印は、ビテロジェニン(Vg)およびYRPの移動位置を示す。
【0062】
図7から、ビテロジェニンおよびYRPは、雌血清中で検出されたが、雄血清中では検出されないことがわかる。したがって、YPRは雌特異蛋白であることが示された。
【0063】
実施例8(金コロイド標識抗YRP抗体溶液の作成)
(1)抗YRP抗体の調製
上記の方法によって得られた抗血清を、さらに、常法によりプロテインG吸着体を用いたIgG精製を行い、抗YRP抗体とした。
【0064】
(2)金コロイド溶液の調製
加熱によって沸騰させた超純水99mlに、1%(v/w)塩化金酸水溶液1mlを加え、さらに、その1分後に1%(v/w)クエン酸ナトリウム水溶液1.5mlを加えて加熱し5分間沸騰させた後、室温に放置して冷却した。次いで、この溶液に200mM炭酸カリウム水溶液を加えてpH9.0に調製し、これに超純水を加えて全量を100mlとして金コロイド溶液を得た。
【0065】
(3)金コロイド標識抗YRP抗体溶液の調製
上記で得られた抗YRP抗体の蛋白換算重量1μg(以下、抗体の蛋白換算重量を示すとき、単に、その精製蛋白質の重量分析による重量数値で示す)と上記の金コロイド溶液1mlとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体のことごとくを金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%となるように10%ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と記す)水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をことごとくこのBSAでブロックして、金コロイド標識抗YRP抗体(以下、「金コロイド標識抗体」と記す)溶液を調製した。この溶液を遠心分離(5600×G、30分間)して金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%トリトン(Triton)−X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して金コロイド標識抗体溶液を得た。
【0066】
実施例9(YRP測定用クロマト法テストストリップの作成)
(1)YRPと金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位
幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース膜をクロマトグラフ媒体のクロマト展開用膜担体として用意した。
【0067】
抗YRP抗体2.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、このクロマト展開用膜担体におけるクロマト展開開始点側の末端から7.5mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥し、YRPと金コロイド標識抗体との複合体の捕捉部位とした。
【0068】
(2)金コロイド標識抗体含浸部材
5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布に、実施例1で得られた金コロイド標識抗体溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて金コロイド標識抗体含浸部材とした。
【0069】
(4)クロマト法テストストリップの作成
上記クロマト展開用膜担体、上記標識抗体含浸部材の他に、被験試料注入部材として綿布と、吸収用部材として濾紙を用意した。そして、これらの部材を用いて、図8を参照して上述したクロマト法テストストリップを作成した。
【0070】
実施例10(被験試料中の抗YRP抗体の検出)
実施例2で得られた精製YRPを生理食塩水で希釈して、各濃度に調整し、被験試料とした。そして、被験試料100μlを実施例9で得られたテストストリップの被験試料注入部にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15〜30分放置後、上記捕捉部位で捕捉されたYRPと金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを肉眼で、−(着色なし)、+(微弱な着色)、++(明確な着色)、+++(顕著な着色)の4段階に区分して判定した。その結果を表1に示した。
【0071】
また、同様の被験試料について、ELISA法で測定した。すなわち、抗YRP抗体を0.1mol/L炭酸緩衝液(pH9.5)にタンパク濃度10μg/mlになるように溶解し、96ウェルのポリスチレン製マイクロタイタープレートの各ウェルに50μl入れ、室温で一夜静置した。0.05%Tween20を含むリン酸生理食塩緩衝液で3回洗浄した後、上記で調製された各濃度の試料を50μl各ウェルに入れ、37℃3時間静置した。3回洗浄した後、POD(ペルオキシダーゼ)標識抗YRP抗体のタンパク濃度1mg/ml溶液を50μl入れ、各ウェルを洗浄後、ペルオキシダーゼ発色キットSTの構成品であるTMBZ液(株式会社タウンズの製品)を100μlを加え25℃で20分反応させた後、2N硫酸を100μlずつ加え、反応を停止させ、各ウェルの色度をマイクロプレートリーダーで測定した。測定波長は450nmであった。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
Figure 2004161685
【0073】
表2から、クロマトストリップ捕捉部による判定結果は、ELISA法による判定結果と同等であり、したがって、本発明の測定法は、メダカのYRPの検出に有用であることが示された。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、メダカ由来の新規な雌特異卵黄関連蛋白(YRP)およびそれに対する抗体が提供される。本発明の雌特異卵黄関連蛋白(YRP)は、ビテロジェニンと同様にエストロゲンによって誘導されるので、ビテロジェニンを検出する従来の環境ホルモンの測定系の代替法を構成するのに有用である。また、本発明の雌特異卵黄関連蛋白(YRP)は、ビテロジェニンよりもエストロゲンに対する感受性が高いと考えられるため、従来の環境ホルモン測定系よりも感度の高い測定系を提供でき、さらには、ELISAやイムノクロマトグラフィーなどの各種の免疫学的測定法に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】メダカの雄の血清((レーン「male serum」)および雌の血清(レーン「female serum」)ならびに腹水(レーン「ascites」)の電気泳動パターンを示す写真であり、(a)は、ゲルを銀染色した結果を示し、(b)は、ウエスタンブロット法により卵抽出物に対する抗血清を用いて免疫染色した結果を示す。
【図2】(a)はメダカの腹水のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる溶出パターンであり、(b)は(a)で得られたビテロジェニンを含むフラクションのゲル濾過による溶出パターンであり、(c)は(a)で得られたYRPを含むフラクションのゲル濾過による溶出パターンである。
【図3】精製されたビテロジェニン(Vg)およびYRPならびに腹水(AS:対照)の、腹水に対する抗血清(a−AS)を用いた二重免疫拡散法のチャート。
【図4】腹水(レーン「ascites」)、精製されたビテロジェニン(レーン「Vg」)およびYRP(レーン「YRP」)、並びに、卵抽出物(レーン「egg ext.」)のSDS−PAGEパターンを示す写真であり、左パネル(2ME(−))は非還元条件における結果を示し、右パネル(2ME(+))は還元条件における結果を示す。
【図5】精製されたビテロジェニン(レーン「Vg」)およびYRP(レーン「YRP」)をネイティブ−PAGE(native−PAGE)にかけ、クーマシーブリリアントブルーR−250(パネル「CBB」)、スーダンブラックB(パネル「SB」)、過ヨウ素酸シッフ試薬(パネル「Schiff’s」)、メチル グリーンパターン(パネル「MG」)によって染色した結果を示す写真。
【図6】腹水(レーン「ascites」)、精製されたビテロジェニン(レーン「Vg」)およびYRP(レーン「YRP」)、並びに、卵抽出物(レーン「egg ext.」)を、非還元条件下で電気泳動した写真であり、ウエスタンブロット法により、ビテロジェニンに対する抗体(左パネル「anti−Vg」)、および、YRPに対する抗体(右パネル「anti−YRP」)の夫々を用いて免疫染色した結果を示す。
【図7】メダカの雄血清(レーン「male serum」)およびメス血清(レーン「female serum」)のそれぞれを、非還元条件下で電気泳動した写真であり、ウエスタンブロット法により、ビテロジェニンに対する抗体(左パネル「anti−Vg」)、および、YRPに対する抗体(右パネル「anti−YRP」)の夫々を用いて免疫染色した結果を示す。
【図8】aはイムノクロマト法テストストリップの平面図、bはaで示されたイムノクロマト法テストストリップの縦断面図。
【符号の説明】
1 粘着シート
2 含浸部材
3 膜担体
31 捕捉部位
4 吸収用部材
5 試料添加用部材

Claims (11)

  1. メダカ由来の雌特異卵黄関連蛋白であって、ゲル濾過による分子量が実質的に460kDaであり、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動における分子量が実質的に130kDaであることを特徴とする卵黄関連蛋白。
  2. 請求項1の卵黄関連蛋白に対する抗体。
  3. 請求項1の卵黄関連蛋白に対する第一の抗体を担体に固定し、被験試料を前記担体に接触させて該被験試料中に含まれる前記卵黄関連蛋白を担体に固定された前記第一の抗体に捕捉させた後、前記卵黄関連蛋白に対する第二の抗体を適当な標識物質で標識して前記担体と接触させることにより、前記第二の抗体を担体に捕捉された前記卵黄関連蛋白に捕捉させ、担体に捕捉された第二の抗体を検出することにより前記被験試料中の卵黄関連蛋白を検出する免疫学的測定法。
  4. 請求項1の卵黄関連蛋白に対する第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された捕捉部位を備える膜担体を用意し、前記卵黄関連蛋白に対する第二の抗体と所定量の被験試料との混合液を、前記捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記被験試料中に含まれる蛋白と第二の抗体との複合体を前記捕捉部位に捕捉させることによって前記卵黄関連蛋白を検出することを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法。
  5. 前記第二の抗体は金属コロイドまたはラテックスで標識されている請求項4に記載の測定法。
  6. 前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項4に記載の測定法。
  7. 前記第一および第二の抗体は抗血清である請求項4に記載の測定法。
  8. 請求項1の卵黄関連蛋白に対する第一の抗体と、前記卵黄関連蛋白に対する第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記抗体の何れか一方は前記膜担体の所定位置に予め固定されて捕捉部位を形成し、前記抗体の他方は適当な標識物質で標識され、かつ、前記捕捉部位から離隔した位置で前記膜担体にてクロマト展開可能なように配置されてなる前記卵黄関連蛋白検出用イムノクロマト法テストストリップ。
  9. 前記標識物質が金コロイドまたはラテックスである請求項8に記載のイムノクロマト法テストストリップ。
  10. 前記膜担体がニトロセルロース膜である請求項8に記載のイムノクロマト法テストストリップ。
  11. 前記第一および第二の抗体は抗血清である請求項8に記載のイムノクロマト法テストストリップ。
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