JP2004143038A - セメント強化用ポリプロピレン繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与でき、セメントとの分散性やセメントとの物理的結合が良好で、セメント成形物の曲げタフネスを向上させるセメント補強用ポリプロピレン繊維を提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリプロピレン100重量部に対し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント50〜10重量%とから構成されている複合構造グラフト共重合体1〜10重量部を含有してなる組成物を紡糸し、表面に凹凸を付形した単糸繊度200dt以上のモノフィラメントを繊維長さ5mm以上に切断してなるセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリプロピレン100重量部に対し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント50〜10重量%とから構成されている複合構造グラフト共重合体1〜10重量部を含有してなる組成物を紡糸し、表面に凹凸を付形した単糸繊度200dt以上のモノフィラメントを繊維長さ5mm以上に切断してなるセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、コンクリートやモルタルの補強効果に優れたセメント補強用ポリプロピレン繊維に関するものである。
従来よりモルタルやコンクリートを用いたセメント成形品、または建築物の外壁、トンネルの内壁、傾斜法面などが構築されているが、これらは成形体としては比較的脆性が大で、引張強度、曲げ耐力、曲げタフネス、耐衝撃性などの物性が充分でないと壁面のひび割れによる水漏れや外壁の剥離落下事故などが生じる危険性がある。そして、コンクリートの補強を目的として、鋼繊維やポリビニルアルコール繊維(例えば、特許文献1)を混入することは広く行われている。また、吹付けコンクリートにおいて曲げ強度やタフネスを要求される場合には、補強金網を設置する。
しかし、鋼繊維を混入したコンクリートは、鋼繊維の比重が7.8と重いために材料の運搬や混入作業が困難であり、また、吹付けコンクリートにおいては吹付け時のはね返りにより落下した鋼繊維の踏み抜きによる怪我のおそれが大きく、さらに鋼繊維が錆びる等の欠点が指摘されている。また、ポリビニルアルコール繊維を混入したコンクリートは、繊維自身が吸水性を有し、また、繊維がアルカリで高温になると加水分解を起こし、さらに繊維を混入しないものに対してスランプが著しく低下する傾向にあり、吹付けに必要なスランプを確保するために単位水量を増加させる必要がある等の不都合が生じる。
このような問題を解決するために、近年、鋼繊維やポリビニルアルコール繊維に代替して、成形性が良好で軽量、低廉などの理由でポリオレフィン系繊維を使用する試みがある(例えば、特許文献2)。
ポリオレフィン系繊維としては、一般的に繊度が100dt以下、繊維長さが5mm以下の単糸や集束糸、あるいはスプリット糸の短繊維が用いられることが多い。この繊維形状から性状として、低繊度でかつ短い繊維は、ファイバーボールという繊維塊が生成したり、嵩高となりセメント中への均一分散がし難いという欠点があり、そのため分散性を良くするために繊度を太くすると、セメントとの接着性が劣り曲げ応力がかかると繊維が引き抜けてしまうなど充分な補強効果が得られない傾向にある。
ポリオレフィン系繊維としては、一般的に繊度が100dt以下、繊維長さが5mm以下の単糸や集束糸、あるいはスプリット糸の短繊維が用いられることが多い。この繊維形状から性状として、低繊度でかつ短い繊維は、ファイバーボールという繊維塊が生成したり、嵩高となりセメント中への均一分散がし難いという欠点があり、そのため分散性を良くするために繊度を太くすると、セメントとの接着性が劣り曲げ応力がかかると繊維が引き抜けてしまうなど充分な補強効果が得られない傾向にある。
かかるポリオレフィン樹脂繊維のセメントとの親水性を改良するために、繊維断面に特定の平均偏平率の凹凸を付形した単糸繊度200dt以上の太いモノフィラメントを繊維長さ5mm以上に長く切断してなるポリプロピレン繊維に、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステルとポリオキシアルキレン脂肪酸エステルからなる界面活性剤等をそれぞれ塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
しかしながら、上記提案の界面活性剤はポリオレフィン系樹脂繊維との接着性がないため、セメントマトリックスと界面活性剤が接着したとしても、ポリオレフィン系樹脂繊維とマトリックス間で十分接着力が得られず、セメント成形物の曲げタフネスが十分でないという問題があった。
しかしながら、上記提案の界面活性剤はポリオレフィン系樹脂繊維との接着性がないため、セメントマトリックスと界面活性剤が接着したとしても、ポリオレフィン系樹脂繊維とマトリックス間で十分接着力が得られず、セメント成形物の曲げタフネスが十分でないという問題があった。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与でき、セメントとの分散性やセメントとの物理的結合が良好で、セメント成形物の曲げタフネスを向上させるセメント補強用ポリプロピレン繊維を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を技術的に解決するために、ポリオレフィン樹脂に対して特定の界面活性剤を配合して繊維とすることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、ポリプロピレン100重量部に対し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント50〜10重量%とから構成されている複合構造グラフト共重合体1〜10重量部を含有してなる組成物を紡糸し、表面に凹凸を付形した単糸繊度200dt以上のモノフィラメントを繊維長さ5mm以上に切断してなるセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
すなわち、本発明の要旨は、ポリプロピレン100重量部に対し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント50〜10重量%とから構成されている複合構造グラフト共重合体1〜10重量部を含有してなる組成物を紡糸し、表面に凹凸を付形した単糸繊度200dt以上のモノフィラメントを繊維長さ5mm以上に切断してなるセメント強化用ポリプロピレン繊維、に存する。
本発明のセメント強化用ポリプロピレン繊維は、ポリプロピレンに対して、特定の複合構造グラフト共重合体を配合したものであって、ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与でき、セメントとの分散性やセメントとの物理的結合が良好で、セメント成形物の曲げタフネスに優れたセメント成形物の製造が可能となるポリプロピレン繊維を得ることができる。
本発明において繊維原料に用いられるポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体あるいはランダム共重合体などのポリプロピレン共重合体またはそれらの混合物を使用することができる。これらの中では高強度、耐熱性を要求されるセメント強化用としてプロピレン単独重合体が望ましく、特にアイソタクチックペンタッド率0.95以上のものを選択することが望ましい。このポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと略す)は、連続的な安定生産性の点で0.1〜30g/10分の範囲、より好ましくは1〜10g/10分の範囲から選択するのがよい。
ポリプロピレン系樹脂には、その紡糸の過程において必要に応じ他のポリオレフィンが添加されてもよい。ここでの他のポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ポリブテン−1等である。
次に、複合構造グラフト共重合体について説明する。
このグラフト共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント(以下、Aセグメントと略記する)50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント(以下、Bセグメントと略記する)50〜10重量%とから構成されている。Aセグメントは通常グラフト共重合体の主鎖となり、Bセグメントはグラフト共重合体の側鎖となる。
このグラフト共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント(以下、Aセグメントと略記する)50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント(以下、Bセグメントと略記する)50〜10重量%とから構成されている。Aセグメントは通常グラフト共重合体の主鎖となり、Bセグメントはグラフト共重合体の側鎖となる。
上記Aセグメントを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、酢酸ビニル含量が10重量%以上、好ましくは10〜80重量%の範囲であり、さらに好ましくは20〜50重量%の範囲のである。酢酸ビニル含量が10重量%未満では、親水性が不十分であり望ましくない。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は、1000〜100万、好ましくは5000〜60万である。重量平均分子量が1000未満の場合には、耐熱性が低下する望ましない。また、重量平均分子量が100万を越えると、成形加工性が低下したりするので望ましくない。
次に、グラフト共重合体のBセグメントを形成するビニル系重合体としては、不飽和カルボン酸またはこれらの不飽和カルボン酸エステルの一種又は二種以上を重合して得られるものである。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸及びその金属塩が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル等を挙げられる。
これらのうち、メタクリル酸及びそのメタクリル酸メチルの組み合わせが好適である。
また、ビニル系重合体の重量平均分子量は1,000〜100万、好ましくは5,000〜50万である。重量平均分子量が1,000未満の場合には、被改質樹脂との相溶性が低下するので望ましくない。また、100万を越える場合にも同様の理由から望ましくない。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸及びその金属塩が挙げられる。
また、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル等を挙げられる。
これらのうち、メタクリル酸及びそのメタクリル酸メチルの組み合わせが好適である。
また、ビニル系重合体の重量平均分子量は1,000〜100万、好ましくは5,000〜50万である。重量平均分子量が1,000未満の場合には、被改質樹脂との相溶性が低下するので望ましくない。また、100万を越える場合にも同様の理由から望ましくない。
複合構造グラフト共重合体中に占めるAセグメントの割合は、50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%である。従って、複合構造グラフト共重合体中に占めるBセグメントの割合は50〜10重量%、好ましくは40〜20重量%である。Aセグメントの割合が50重量%未満であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体の改良効果が不十分となるので、好ましくない。また、Aセグメントが90重量%を越えるとセメントマトリックスとの接着性が低下し、セメント成形物の衝撃強度や曲げ強度を向上させことができないので、好ましくない。
分散している重合体の粒子径は0.001〜10μm、好ましくは0.01〜5μmである。分散粒子径が0.001μ未満の場合又は10μmを越える場合には、分散性が低く、例えば得られる成形品の外観の悪化或いは機械的物性が低下する。
複合構造グラフト共重合体を製造する際のグラフト化法は、一般に知られている連鎖移動法、電離性放射線照射法等いずれの方法でもよいが、下記に示す方法によるものが好ましい。すなわち、それは、グラフト効率が高く、熱による二次的凝集が起こらないため、性能の発現がより効果的であり、また製造方法が簡便であるためである。
次に、複合相構造グラフト共重合体の製造方法を具体的に説明する。まず、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部を水に懸濁させ、そこへ少なくとも1種のビニル系単量体1〜400重量部に、ラジカル重合性有機過酸化物の1種又は2種以上の混合物を該ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜20重量部と、10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃である重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100重量部に対して0.01〜5重量部とを溶解せしめた混合溶液を加える。
次いで、重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱し、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物及び重合開始剤をエチレン−酢酸ビニル共重合体に含浸せしめ、次いで、この水性懸濁液の温度を上昇せしめる。そして、ビニル系単量体及びラジカル重合性有機過酸化物をエチレン−酢酸ビニル共重合体中で共重合せしめて、グラフト化前駆体を得る。
このグラフト化前駆体を溶融下、混練することにより、複合構造グラフト共重合体を得ることができる。このときグラフト化前駆体中に、エチレン−酢酸ビニル共重合体を混合し、溶融下に混練しても複合構造グラフト共重合体を得ることができる。
上記ラジカル重合性有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、t−アミルペルオキシアクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、t−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、クミルペルオキシアクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、t−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、t−アミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト、t−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエチルカ−ボネ−ト 、t−ブチルペルオキシアリルカ−ボネ−ト、t−ブチルペルオキシメタリルカ−ボネ−ト等が好適に用いられる。
上記複合構造グラフト共重合体のMFR(190℃、2160g荷重、JIS K6922−1)としては、0.1〜20g/10分の範囲であり、好ましくは0.5〜10g/10分に範囲である。
本発明のセメント強化用ポリプロピレ繊維は、ポリプロピレン100重量部に対し、複合構造グラフト共重合体1〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部の範囲である。複合構造グラフト共重合体の配合割合が1重量部未満では、ポリオレフィン樹脂繊維に対して親水性を付与させる効果が低下し、しかもセメントマトリックスとの接着性の改良効果が低下するので、好ましくない。一方、10重量部を越える場合、ポリオレフィン樹脂繊維に対する機械的強度が低下するので、望ましくない。
上記ポリプロピレン組成物には、その使用目的により本発明の主旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機充填材、有機充填材、架橋剤、発泡剤、核剤等の添加剤を配合してもよい。
本発明で紡糸されるポリプロピレン繊維は、その主体となる繊維形状は比較的に太いモノフィラメントを切断した短繊維であって、その製造方法としては特に限定されるものではなく円形や楕円形、異型、その他連糸形状のダイスからフィラメントを押し出す製造技術を採用することができる。
また、このモノフィラメントの構成として基本的な単層フィラメントの他に、ポリプロピレン高融点成分を芯層とし、ポリプロピレン低融点成分を鞘層とする複合モノフィラメントを使用することもできる。この製造方法は、各層のポリプロピレンを押出機で溶融混練し、2層の吐出孔が略同心円上に設けられたダイスの中心吐出孔から高融点成分からなる芯層を供給し、その外面に低融点成分からなる鞘層を押出して被覆して複合モノフィラメントを得るものである。この場合に実質的な強力が芯層の物性に依存するため、高融点成分としてプロピレン単独重合体、アイソタクチックポリプロピレンなどを使用することが好ましく、一方低融点成分としては、プロピレン−エチレンブロック共重合体及びランダム共重合体、シンジオタクチックポリプロピレンなどが好ましい。こうして得られる複合モノフィラメントを使用することで、コンクリート成形時の加熱養生におけるポリプロピレン繊維の熱劣化を抑制することができる。
次に、モノフィラメントは熱延伸及び熱弛緩処理を施し、この熱処理によってフィラメントの剛性を高めて、伸びの小さいセメント強化用として好適なポリプロピレンモノフィラメントが得られる。この熱延伸はポリプロピレンの融点以下、軟化点以上の温度下に行われ、通常は延伸温度が90〜150℃、延伸倍率は通常5〜12倍、好ましくは7〜9倍である。熱延伸法としては、熱ロール式、熱板式、赤外線照射式、熱風オーブン式、熱水式などの方式が採用できる。
形成されるポリプロピレンモノフィラメントの単糸繊度は200〜10,000dtの範囲であり、好ましくは2,000〜6,500dtの範囲である。単糸繊度が200dt未満では繊維が細すぎてコンクリート混和物中の分散が不均一でファイバーボールになり易く、施工性や補強性の点で問題となり、一方、単糸繊度が10,000dtを超えると繊維のコンクリート混和物との接触面積が減少し曲げ応力に対して引き抜け易くなり補強効果が劣り好ましくない。
ポリプロピレンフィラメントの引張強度は5g/dt以上であり、好ましくは、6g/dt以上である。また、引張伸度は20%以下であり、好ましくは、15%以下である。引張強度、引張伸度がこれらの範囲を外れるとセメント強化用ポリプロピレン繊維としての強力が不充分となり好ましくない。
ポリプロピレンモノフィラメントは、紡糸、熱延伸の次工程として、表面に凹凸が付形されることが必要である。これによって、繊維とコンクリートとの接触面積を増加させて、コンクリート硬化後の繊維の引き抜けを抑制して補強効果を高めることができるのである。この表面に凹凸を付形する方法としては、モノフィラメントをエンボス加工する方法が挙げられる。エンボス加工は、モノフィラメントを延伸前または延伸後にエンボスロールを通すことにより行なうもので、モノフィラメントの長手方向に連続して凹凸が形成されるものである。
ここで、エンボスの長さ及び深さ等の形状は任意のものでよいが、押し潰しによる繊維断面の平均偏平率1.5/1〜7/1の範囲、好ましくは1.8/1〜7/1のであることが必要とされる。この平均偏平率とは、付形された多様な形状の繊維断面における幅と高さの平均的な比率を示した数値であり、平均偏平率が1.5/1未満であると繊維表面に対する凹凸付形が少ないため平滑表面繊維と補強効果の差が認められなく、一方、平均偏平率が7/1を超えると付形による強度劣化が著しく、また前記所定繊度の繊維においてはコンクリート中への分散性が悪化する傾向にあり問題となる。
こうして得られたポリプロピレンモノフィラメントは、所定長さにカットされセメント強化用の短繊維となる。短繊維の長さは5〜100mm、好ましくは20〜70mmである。繊維長が5mm未満では、セメントからの抜けが生じ、100mmを越えると分散性が不良となり好ましくない。
本発明のセメント強化用ポリプロピレン繊維は、コンクリートに混合して、種々の実施態様で使用することができる。例えば、ポリプロピレン繊維を混入して、打設、塗布によりコンクリート構造物を施工する方法、ポリプロピレン繊維をコンクリートに混入し、吹付けによりモルタル構造物又はコンクリート構造物を施工する方法等が挙げられる。
ポリプロピレン繊維をコンクリートに混合する場合は、セメント、細骨材、粗骨材、水及び適量のコンクリート混和剤に配合して用いられる。ここで、セメントとしてはポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント等の水硬性セメントまたは石膏、石灰等の気硬性セメント等のセメント類が挙げられ、細骨材としては川砂、海砂、山砂、珪砂、ガラス砂、鉄砂、灰砂、その他人工砂などが挙げられ、粗骨材としてはレキ、砂利、砕石、スラグ、各種人工軽量骨材などが代表的に挙げられる。
コンクリート構造物を施工する際には、セメント、細骨材、粗骨材、水、適量のコンクリート混和剤とともに同時、或いはコンクリートが練り上がった状態でポリプロピレン繊維を混入して攪拌し、これを打設、塗布することによりコンクリート構造物を施工する。
また、吹付けコンクリート工法に用いる場合、この配合量は、セメント、細骨材、粗骨材、水等よりなるコンクリート混合物1m3に対してポリプロピレン繊維を4〜19kg、好ましくは6〜14kgを配合して分散させることが肝要である。これは、ポリプロピレン繊維の配合量が19kgを超えてもコンクリート中に繊維が均一に分布しないために曲げタフネスは増大しないし、一方、配合量が4kg未満では吹付け時のはね返りが大きく、また硬化後補強効果が小さい。
この場合の混合する方法としては、セメント、細骨材、粗骨材、水等よりなるコンクリート混合物を投入してベースコンクリートとし、このベースコンクリートを混練後に、ポリプロピレン繊維を投入し混練を行なうことが好ましく、混練時間は1回当たりの混合量によるが、一般的にベースコンクリートの混練は45〜90秒、ポリプロピレン繊維を投入後の混練についても45〜90秒の範囲が適当とされる。
加えて、吹付けコンクリート工法においては、本発明のポリプロピレン繊維を前記配合量で使用する場合、スランプの範囲を8〜21cmに調整するのが好ましい。これは、スランプが8cm未満では吹付け作業が困難となり、21cmを超えるとはね返りが大きくなるので好ましくない。このようなスランプの範囲で吹付けコンクリート工法を実施するための吹付けノズルは、ノズルを吹付け面に直角に配置すること、及びノズルと吹付け面の距離を0.5〜1.5mとすることが有効となる。
本発明のポリプロピレン繊維を混合させたコンクリート混合物は、吹付けコンクリートとして、トンネル(斜抗、立抗を含む)や大空洞構造物の覆工、法面、斜面あるいは壁面の風化や剥離・剥落の防止、トンネル、ダム及び橋梁の補修・補強工事等に使用される。
以下、実施例によって本発明のポリプロピレン繊維の有効性を説明する。
実施例1:
複合構造グラフト共重合体として、エチレンー酢酸ビニル共重合体とメタクリル酸エステルーメタクリル酸とのグラフト共重合体(エチレンー酢酸ビニル共重合体/メタクリル酸エステル/メタクリル酸=80/10/10の組成割合)であって、MFR(190℃、21.18N荷重、JIS K6922−1)が2.0g/10分のものを使用した。但し、エチレンー酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は28重量%であった。
ポリプロピレン(MFR=4.0g/10分、Tm=163℃)100重量部に対し、上記複合構造グラフト共重合体4重量部を配合したものを押出機に投入して円形ノズルから紡糸して冷却した後に熱風オーブン式延伸法により、熱延伸温度115℃、熱弛緩温度120℃、延伸倍率7〜8倍で延伸を行い、数種の繊度のモノフィラメントを形成し、次いで、傾斜格子柄のエンボスロールと硬質ゴムロールを用いてエンボスニップ圧を変えて平均偏平率も異なる表面に凹凸を付形したポリプロピレンモノフィラメントを得た後、その繊維長が30mmとなるように切断してポリプロピレン繊維とした。
実施例1:
複合構造グラフト共重合体として、エチレンー酢酸ビニル共重合体とメタクリル酸エステルーメタクリル酸とのグラフト共重合体(エチレンー酢酸ビニル共重合体/メタクリル酸エステル/メタクリル酸=80/10/10の組成割合)であって、MFR(190℃、21.18N荷重、JIS K6922−1)が2.0g/10分のものを使用した。但し、エチレンー酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含有量は28重量%であった。
ポリプロピレン(MFR=4.0g/10分、Tm=163℃)100重量部に対し、上記複合構造グラフト共重合体4重量部を配合したものを押出機に投入して円形ノズルから紡糸して冷却した後に熱風オーブン式延伸法により、熱延伸温度115℃、熱弛緩温度120℃、延伸倍率7〜8倍で延伸を行い、数種の繊度のモノフィラメントを形成し、次いで、傾斜格子柄のエンボスロールと硬質ゴムロールを用いてエンボスニップ圧を変えて平均偏平率も異なる表面に凹凸を付形したポリプロピレンモノフィラメントを得た後、その繊維長が30mmとなるように切断してポリプロピレン繊維とした。
(2)評価試験
得られたポリプロピレン繊維につき、下記方法にてコンクリートの補強効果を試験した。その結果を表1に示す。
得られたポリプロピレン繊維につき、下記方法にてコンクリートの補強効果を試験した。その結果を表1に示す。
1)使用材料と配合割合
セメント:早強ポルトランドセメント(比重=3.12) 430kg/m3
細骨材:木更津産山砂(表乾比重=2.60) 1123kg/m3
粗骨材:青梅産砕石1505(表乾比重=2.65) 491kg/m3
水:水道水 215kg/m3
繊維:容積として1%
セメント:早強ポルトランドセメント(比重=3.12) 430kg/m3
細骨材:木更津産山砂(表乾比重=2.60) 1123kg/m3
粗骨材:青梅産砕石1505(表乾比重=2.65) 491kg/m3
水:水道水 215kg/m3
繊維:容積として1%
2)コンクリートの混練方法
混練容量100リットルの強制パン型ミキサを使用し、1バッチ60リットルで行う。コンクリートの練り上がり時の温度は約20℃とした。混練方法は細骨材、セメント、水、粗骨材を投入して45秒間の混練を行った後、ミキサを回転しながら補強繊維を添加して60秒間混練を行い排出する。
混練容量100リットルの強制パン型ミキサを使用し、1バッチ60リットルで行う。コンクリートの練り上がり時の温度は約20℃とした。混練方法は細骨材、セメント、水、粗骨材を投入して45秒間の混練を行った後、ミキサを回転しながら補強繊維を添加して60秒間混練を行い排出する。
3)供試体の作成
土木学会基準「鋼繊維補強コンクリートの強度およびタフネス試験用供試体の作り方」(JSCE F552-1983)に準じた。尚、供試体は24時間後に脱型し、材齢7日まで水中養生を実施した。
土木学会基準「鋼繊維補強コンクリートの強度およびタフネス試験用供試体の作り方」(JSCE F552-1983)に準じた。尚、供試体は24時間後に脱型し、材齢7日まで水中養生を実施した。
4)試験方法
土木学会基準「鋼繊維補強コンクリートの圧縮強度および圧縮タフネス試験方法」(JSCE G551-1983)、および土木学会基準「鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法」(JSCE G552-1983)に準じた。
土木学会基準「鋼繊維補強コンクリートの圧縮強度および圧縮タフネス試験方法」(JSCE G551-1983)、および土木学会基準「鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法」(JSCE G552-1983)に準じた。
実施例2〜4
ポリプロピレン繊維の繊度及び偏平率を表1のように変えて行ったこと以外は実施例1と同様にして行った。その結果を表1に示す。
ポリプロピレン繊維の繊度及び偏平率を表1のように変えて行ったこと以外は実施例1と同様にして行った。その結果を表1に示す。
実施例5
複合構造グラフト共重合体として、エチレンー酢酸ビニル共重合体とメタクリル酸エステルーメタクリル酸とのグラフト共重合体(エチレンー酢酸ビニル共重合体/メタクリル酸エステル/メタクリル酸=70/20/10の組成割合)を用い、ポリプロピレン100重量%に対して2重量%を配合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
複合構造グラフト共重合体として、エチレンー酢酸ビニル共重合体とメタクリル酸エステルーメタクリル酸とのグラフト共重合体(エチレンー酢酸ビニル共重合体/メタクリル酸エステル/メタクリル酸=70/20/10の組成割合)を用い、ポリプロピレン100重量%に対して2重量%を配合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして行った。
比較例1〜3
複合構造グラフト共重合体のかわりに界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル(HLB=9)50重量部およびポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(HLB=12)50重量部を混合して表面処理剤水溶液を用いて、ポリプロピレンモノフィラメントを上記界面活性剤に浸漬し乾燥させることで、総繊維に対して0.28重量%を付着させたこと以外は、実施例1〜3と同様にして行った。その結果を表1に示す。
複合構造グラフト共重合体のかわりに界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル(HLB=9)50重量部およびポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(HLB=12)50重量部を混合して表面処理剤水溶液を用いて、ポリプロピレンモノフィラメントを上記界面活性剤に浸漬し乾燥させることで、総繊維に対して0.28重量%を付着させたこと以外は、実施例1〜3と同様にして行った。その結果を表1に示す。
比較例4及び5
ポリプロピレン繊維のかわりに鋼繊維またはポリビニルアルコール繊維(繊維長30mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を表1に示す。
ポリプロピレン繊維のかわりに鋼繊維またはポリビニルアルコール繊維(繊維長30mm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして行った。その結果を表1に示す。
Claims (3)
- ポリプロピレン100重量部に対し、エチレン−酢酸ビニル共重合体のセグメント50〜90重量%と、ビニル系重合体のセグメント50〜10重量%とから構成されている複合構造グラフト共重合体1〜10重量部を含有してなる組成物を紡糸し、表面に凹凸を付形した単糸繊度200dt以上のモノフィラメントを繊維長さ5mm以上に切断してなるセメント強化用ポリプロピレン繊維。
- ビニル系重合体が不飽和カルボン酸またはその不飽和カルボン酸エステルの一種又は二種以上を重合して得られる重合体である請求項1に記載のセメント強化用ポリプロピレン繊維。
- ビニル系重合体がメタクリル酸及びそのメタクリル酸メチルを重合して得られる重合体である請求項1に記載のセメント強化用ポリプロピレン繊維。
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Cited By (2)
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JP2005289707A (ja) * | 2004-03-31 | 2005-10-20 | Hagihara Industries Inc | セメント補強繊維 |
JP2009509899A (ja) * | 2005-09-30 | 2009-03-12 | アイトゲネーシッシュ・マテリアールプリューフングス−ウント・フォルシュングスアンシュタルト | セメント結合建築材料に利用するための2成分プラスチック繊維 |
-
2003
- 2003-09-29 JP JP2003338329A patent/JP2004143038A/ja active Pending
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KR101332036B1 (ko) | 2005-09-30 | 2013-11-22 | 피브로테크 아게 | 시멘트-결합된 건축재에 사용하기 위한 2-성분 합성 섬유 |
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