JP2004135099A - マルチユーザ受信機ならびに該マルチユーザ受信機を有する無線基地局装置および移動機 - Google Patents
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Abstract
【課題】DS−CDMAシステムにおけるマルチユーザ受信機を,より小規模の回路で実現する。
【解決手段】受信信号Y(t)は,拡張拡散信号生成部12で生成される拡散信号f1(t)〜fL(t)によって整合フィルタ出力となり,その中の複数(K個)の出力y1〜yKと,拡張拡散信号生成部12で作られる変形拡散信号から重み係数生成部9で作られるK個の重み係数x1〜xKとを,線形結合部6で線形結合した結果は,1ビット分の干渉の抑圧された出力となる。重み係数x1〜xKは,拡散信号間のK×K行列である相関係数行列の逆行列の要素として求めることもできるが,図37の構成における重み係数生成部は,相関係数行列を求めるプロセスと,その逆行列を求めるプロセスを1つのプロセスで実現した結果,従来Kの3乗に比例していた回路規模をKの2乗に比例するものに減らしている。
【選択図】 図37
【解決手段】受信信号Y(t)は,拡張拡散信号生成部12で生成される拡散信号f1(t)〜fL(t)によって整合フィルタ出力となり,その中の複数(K個)の出力y1〜yKと,拡張拡散信号生成部12で作られる変形拡散信号から重み係数生成部9で作られるK個の重み係数x1〜xKとを,線形結合部6で線形結合した結果は,1ビット分の干渉の抑圧された出力となる。重み係数x1〜xKは,拡散信号間のK×K行列である相関係数行列の逆行列の要素として求めることもできるが,図37の構成における重み係数生成部は,相関係数行列を求めるプロセスと,その逆行列を求めるプロセスを1つのプロセスで実現した結果,従来Kの3乗に比例していた回路規模をKの2乗に比例するものに減らしている。
【選択図】 図37
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,同じ時間に,同じ周波数を複数のユーザが共用する符号分割多元接続(CDMA)システムにおけるマルチユーザ受信機に関するもので,特に,希望信号に対する他の信号の干渉をそれらの拡散コード情報に基づいて除去または抑制するマルチユーザ受信機に関する。また,本発明は,このようなマルチユーザ受信機を備えた基地局装置および移動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)システムでは,同じ時間における同じ周波数を複数の異なるユーザが使用する。したがって,複数の信号が相互に干渉し合う多元接続干渉(MAI:Multiple Access Interference)が発生する。
【0003】
また,送信機から送信された時点では同一の信号が,一方で直接受信機に受信され,他方で反射体(たとえばビル等)により反射された後で受信機に受信されるとマルチパス干渉(MPI:Multiple Path Interference)が発生する。これらの干渉により,受信機側では,受信したい信号(以下「希望信号」という)に対して他の信号が雑音源となる。
【0004】
このため,CDMAシステムでは,希望信号から干渉信号成分を除去または抑制することが,品質の良い希望信号を復号するために重要となる。
【0005】
このような干渉信号成分を除去または抑制する受信機の中で,特に希望信号と干渉信号の拡散コード情報を利用するものは,一般にマルチユーザ受信機と呼ばれていが,このような受信機として,従来から復相関検出器(デコリレータ:decorrelator)または最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean−Square Error)検出器がよく知られている(たとえば,非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】
Verdu,S著「マルチユーザ検出(Multiuser Detection)」ケンブリッジ大学プレス(Cambridge, U.K: Cambridge Univ. Press),1998年
【0007】
【非特許文献2】
Moshavi, S.著「DS−CDMA通信のためのマルチユーザ検出(Multi−user detection for DS−CDMA communications)」IEEEコミュニケーションマガジン(IEEE Communications Magazine),第34刊,1996年10月10日号,pp.124−136
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
復相関検出器(デコリレータ)およびMMSE検出器は,整合フィルタバンクの出力数(すなわち処理対象のビット数)をKとすると,K×K行列の相関係数行列(または相関係数行列の対角要素を背景雑音と干渉信号電力で補正した行列)の逆行列を,整合フィルタバンクからのK個の出力信号に乗じることによって,希望信号に含まれる干渉信号成分を除去または抑圧する。
【0009】
しかし,逆行列の演算は,一般に複雑で時間を要するので,通常のディジタルプロセサでこの演算を行うと,受信速度に追従した実時間処理が難しくなる。ディジタルプロセサの回路規模は,Kの3乗に比例して大きくなるので,Kが大きくなると,一定数の乗算器とメモリを使用して,同じ乗算器を繰り返し使用することになるので,受信信号の速度に合わせた実時間処理が難しくなる。その結果,干渉除去または抑制の対象となるKの値を制限することになると,干渉除去または抑制の性能が限られたものとなる。
【0010】
一方,周期の短い拡散信号を用いて,あらかじめ計算しておいた1周期分の値を繰り返し使用する方法もあるが,一般に,非同期のシステムでは,周期の長いコードを使う場合が多く,この方法は有効な解決策とはならない。
【0011】
本発明は,このような背景に鑑みなされたものであり,その目的は,拡散信号の周期の長短を問わず,多元接続干渉(MAI)の除去または抑制をリアルタイムで行うことができるマルチユーザ受信機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために,本発明の第1の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)を生成する,拡散信号生成部と,
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングして出力する整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,前記拡散信号間の相関係数を要素とする,K×K行列の相関係数行列Rを生成する相関係数生成部,または前記Rの対角要素に,背景雑音電力密度と前記対角要素に対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例する値を加えた,変形相関係数行列R´を生成する変形相関係数生成部と,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対する,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
kを希望信号のビット番号とすると,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の逆行列を演算し,前記逆行列の第k行または第k列を,前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)とし,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対応する受信信号が存在する区間を含む観測区間を,所定の長さτで均等に分割して,最も早い時間帯から順番に番号を付与し,区間1,区間2,…,区間Pと呼び,
前記拡散信号生成部は,前記拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)に対して,それぞれτの整数倍ずつ進んだ,または遅れた,複数の変形拡散信号,または前記変形拡散信号全体を,所定の時間進めるか,遅らせた信号を生成し,
前記P個の区間のひとつを区間p0とし,
p<p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の,区間pに属する部分を時間(p0−p)τだけ遅らせたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
p>p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の区間pに属する部分を時間(p−p0)τだけ進ませたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
区間p0に関しては,拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)が区間p0に属する部分を拡散信号sip(t)とし,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数または前記重み係数の演算を,前記拡散信号sip(t)(j=1,2,…,K,p=1,2,…,P)と,積分時間が前記区間長と同じτである複数の整合フィルタを使って,区間p0において行う。
【0013】
本発明の第2の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号を生成する,拡散信号生成部と
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングした値を出力する,整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)からK個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記重み係数生成部は,
前記K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)と,K個の重み係数xj(j=1,2,…,K)をそれぞれ乗算して,出力sj(t)xjを得るK個の乗算器j(j=1,2,…,K)と,それらの出力を全て加え合わせる合成器で構成される線形結合部と,
前記線形結合部の出力を前記拡散信号のおのおので乗算する第2乗算器j(j=1,2,…,K)と,
K個の整合フィルタj(j=1,2,…,K)を備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
前記線形結合部の出力から,希望信号ビットに対応する拡散信号sk(t)を減じてから,前記拡散信号sk(t)を第2乗算器kによって乗算し,その出力を反転増幅器で反転して,整合フィルタkに通した出力に所定の定数を加算した出力を重み係数xkとして,前記線形結合部の乗算器kに接続し,
前記線形結合部の出力に,前記拡散信号sk(t)と異なるK−1個の前記拡散信号sj(t)を第2乗算器jによって乗算し,その出力を反転増幅器で反転して,それぞれを整合フィルタjに通した出力をxjとして,前記線形結合部の乗算器jに接続した構成,
または,上記の構成に加えて,乗算器j(j=1,2,…,K)の出力sj(t)xjに,背景雑音電力密度とビット番号jに対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例した値を乗じて,第2乗算器j(j=1,2,…,K)の入力側に加算する構成を有する。
【0014】
本発明の第3の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号fj(t)(j=1,2,…,L)を生成する,拡散信号生成部と,
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングして出力する,整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の出力(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対応する受信信号が存在する区間を含む観測区間を,所定の長さτで均等に分割して,最も早い時間帯から順番に番号を付与し,区間1,区間2,…,区間Pと呼び,
前記拡散信号生成部は,前記拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)に対して,それぞれτの整数倍ずつ進んだ,または遅れた,複数の変形拡散信号,または前記変形拡散信号全体を,所定の時間進めるか,遅らせた信号を生成し,
前記重み係数生成部は,
積分時間が前記区間長と同じτであるK個の整合フィルタj(j=1,2,…,K)と,
多入力−1出力のP個の合成器p(p=1,2,…,P)と,
1入力−多出力のP個の分配器p(p=1,2,…,P)と,
前記P個の分配器pと前記K個の整合フィルタjとを接続する第1の接続網Lと,
前記K個の整合フィルタjと前記P個の合成器pとを接続する第2の接続網Rと,
複数の乗算器とを含み,
前記複数の乗算器を,ビット番号iと区間pに対応付けて,第1の乗算器ipおよび第2の乗算器ipと名付け,
前記P個の区間のひとつを区間p0とし,
p<p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の,区間pに属する部分を時間(p0−p)τだけ遅らせたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
p>p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の区間pに属する部分を時間(p−p0)τだけ進ませたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
区間p0に関しては,拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)が区間p0に属する部分を拡散信号sip(t)とし,
拡散信号sip(t)(j=1,2,…,K,p=1,2,…,P)と重み係数xj(j=1,2,…,K)とを,それぞれ第1の乗算器jpで乗算した結果を第2の接続網Rを経て合成器pで合成した出力を,
分配器pと,第1の接続網Lを経て出力し,
kを希望信号のビット番号とすると,
i=kであれば,前記第1の接続網Lの出力から変形拡散信号sip(t)を減じたものと拡散信号sip(t)とを,第2の乗算器ipで乗算し,
iがkと異なれば,前記第1の接続網Lの出力と拡散信号sip(t)とを第2の乗算器ipで乗算し,
前記第2の乗算器の出力を反転増幅器を経て整合フィルタiに入力し,前記整合フィルタiの出力に,i=kであれば,所定の定数を加え,
iがkと異なれば,そのままを重み係数xiとして,前記第1の乗算器ipに接続することを,全てまたは一部のpに対して行う構成を有し,
または,上記の構成に加え,
第1の乗算器ipの出力sjp(t)xjに,背景雑音電力密度とビット番号jに対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例した値を乗じて,前記第2乗算器jpの前記第1の回路網L側の入力に加算する構成とすることを,全てまたは一部のpに対して行う構成を有する。
【0015】
本発明の第4の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号を生成する,拡散信号生成部と
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングした値を出力する整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,前記拡散信号間の相関係数を要素とする,K×K行列の相関係数行列Rを生成する相関係数生成部,またはRの対角要素に,背景雑音電力密度と前記対角要素に対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比を加えた,変形相関係数行列R´を生成する変形相関係数生成部と,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対する,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の第j列または第j行(a1j,a2j,…,aKj)と,重み係数(x1,x2,…,xK)の各々の積を作り出す,K個の乗算器と,それらの出力を全て加え合わせて,a1jx1+a2jx2+…+aKjxKを作り出す合成器で構成されるK個の線形結合部j(j=1,2,…,K)とを,備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
線形結合部kの出力から第1の定数を減じ,反転増幅器で反転して低域フィルタに通し,その出力に第2の定数を加えた出力を,xkとして前記K個の線形結合部に接続し,
j≠kであるK−1個の線形結合部jの出力を反転増幅器で反転して低域フィルタに通した出力を,xjとして,前記K個の線形結合部に接続した構成を有する。
【0016】
本発明による無線基地局装置は,移動通信ネットワークシステムに設けられる無線基地局装置であって,請求項1から17のいずれか1項に記載のマルチユーザ受信機を備えている。
【0017】
また,本発明による移動機は,移動通信ネットワークに接続して無線通信を行う移動機であって,請求項1から17のいずれか1項に記載のマルチユーザ受信機を備えている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下では,本発明を移動通信ネットワークシステムにおける無線基地局装置および移動機に適用した実施の形態について説明する。
【0019】
まず,移動通信ネットワークシステムの全体構成について説明した後,符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)方式における復相関検出器(Decorrelating Detectorまたは,デコリレータ)とMMSE検出器に代表される,相関係数行列を利用したマルチユーザ受信機(復相関形受信機と総称する)の原理,ならびにこの原理を実現するための無線基地局装置および移動機のそれぞれの構成および動作について説明する。
【0020】
<移動通信ネットワークシステムの構成>
図1は,本発明の実施の形態を示す移動通信ネットワークシステムの全体構成図である。この移動通信ネットワークシステムは,大別すると,無線アクセスネットワーク(RAN)100,移動機(UE)200,およびコアネットワーク(CN)300から成り立つ。
【0021】
無線アクセスネットワーク100は,複数(図1に示した例では2つ)の無線ネットワーク制御装置(RNC)1101および1102,ならびに複数(図1に示した例では4つ)の無線基地局装置(BTS)1201〜1204から成り立つ。
【0022】
無線ネットワーク制御装置1101は,一方でコアネットワーク300に接続され,他方で無線基地局装置1201および1202に接続されている。無線ネットワーク制御1102は,一方でコアネットワーク300に接続され,他方で無線基地局装置1203および1204に接続されていると同時に,無線ネットワーク制御装置1101とも接続されている。
【0023】
無線基地局装置1201〜1204は,それぞれ1または複数のサービスエリア(セル)をカバーし,セル内に存在する移動機200と無線により通信を行う。この無線による通信は,有限の周波数帯を複数の無線装置が共有するため多元接続方式によって行われるが,CDMA方式,特に直接拡散(DS:Direct Sequence)CDMA(DS−CDMA)方式は,多元接続方式の中の代表的な方式である。
【0024】
無線基地局装置1201および1202は,無線ネットワーク制御装置1101に接続され,同装置によって制御される。また,無線基地局装置1201および1202は,コアネットワーク300からの通信データを無線ネットワーク制御装置1101から受信し,受信した通信データを宛先の移動機200に送信するとともに,移動機200からの通信データを宛先に応じて,無線ネットワーク制御装置1101を介してコアネットワーク300に送信する。同様にして,無線基地局装置1203および1204は,無線ネットワーク制御装置1102に接続され,同装置によって制御される。また,無線基地局装置1203および1204は,コアネットワーク300からの通信データを無線ネットワーク制御装置1102から受信し,受信した通信データを移動機200に送信するとともに,移動機200からの通信データを宛先に応じて,無線ネットワーク制御装置1102を介してコアネットワーク300に送信する。
【0025】
このようにして,移動機間の通信,移動機とコアネットワーク300に接続された他の端末装置との間の通信が行われる。
【0026】
なお,以下では,無線基地局装置1201〜1204を,無線基地局装置120と総称する。
【0027】
<DS−CDMA方式による信号の構成>
DS−CDMA方式による通信では,同じ時間に,同じ周波数を複数のユーザが共用し,ユーザ間の信号の分離は,それらのユーザに固有の拡散コード(または拡散信号)によって行う。 無線基地局装置120には,符号多重化変調された複数(Lとする)のビット列が受信される。個々のビット列は,すべて異なるユーザ(移動機)から送信された場合もあるし,同じユーザ(移動機)から送信された場合もある。また,同じ移動機から送信された同一の信号が,マルチパスによって無線基地局装置120に受信され,異なったビット列と見なされる場合もある。この様な訳で,ビット列とユーザとは,必ずしも,1対1に対応していないが,以下の説明では,ビット列を,慣用に倣って,“ユーザ信号”と呼ぶことにする。
【0028】
図2は,無線基地局装置120によって受信されるDS−CDMA方式による非同期,マルチレート伝送の場合の構成を示すが,ユーザ信号1,2,および3は,同一の送信レートで送信され,ユーザ信号4は,ユーザ信号1〜3の2倍の送信レートで送信されている例である。
【0029】
図3(A)に示すようにユーザ信号のビットの開始時刻が一致していないことを「非同期」といい,図3(B)に示すように,各ユーザ信号のビットの開始時刻が一致していることを「同期」と言うが,図3(A)は非同期,単一レートの場合の受信信号の構成を,図3(B)は同期,単一レートの場合の受信信号の構成をそれぞれ示している。
【0030】
復相関形受信機の動作原理を説明するには,観測窓長(Observation Window Size)という概念が必要なので,以下にそれを説明する。復相関形受信機では,希望信号のある1ビット(希望ビット)を復号するのに,そのビットの周辺の複数のビット間の相互干渉を利用して,干渉信号成分を抑圧するが,どの範囲までの周辺ビットを利用するかを示す尺度が,観測窓長である。図4は,図3(A)の,非同期,単一レートの場合の例を,周辺ビットを希望ビットからの時間差の順に従って並べ換え,各ビットに番号を付けたものである。図4(A)の例は,ユーザ数L,観測窓長2ビットで,干渉抑圧に利用する希望ビットと周辺ビットの合計は,N×L=2Lで,希望ビットは,通常,全てのビットの中間に選ぶので,ビット番号L+1またはLが希望ビットとなる。図4(B)は,観測窓長3ビットの例で,同様に,ユーザ数Lに対して,総合ビット数は,N×L=3Lとなる。図3(B)の様に,同期している場合には,希望ビットと同じ時間帯のビット(ビット番号2,5,・・・,K−1)以外のビットは干渉抑圧に寄与しないので,観測窓長は,1ビットとなる。但し,同期系では,通常,拡散コードに直交コードを用いて,ビット間の分離を行うので,観測窓長1ビットの同期系復相関形受信機は,理論上の性能比較の基準となることはあっても,実用上はあまり意味が無い。
【0031】
図2に示す,非同期かつマルチレートの場合であっても,所定のウィンドウ幅に含まれるユーザ信号(1〜4)の各ビット(番号1,2,・・・16)を独立したバースト信号として取り扱うことによって,復相関形受信アルゴリズムを適用することができる。
【0032】
<復相関形マルチユーザ受信機の原理>
通常,複数の移動機からのユーザ信号は,無線基地局装置120により受信される時点で同期していないので,以下では,非同期の場合(シングルレートとマルチレートの双方を含む。)における干渉除去または抑制の原理について説明する(同期系は,非同期系の一形態として内包される)。
【0033】
図5に示す無線基地局装置120は,受信信号を周波数変換器2によって,ベースバンド信号に変換(同期キャリアによる同期検波を含む)した後,受信信号から生成したユーザ信号(または,データ列)毎に異なる複数(L個とする)の拡散信号によって,受信信号を逆拡散し,それをL個の整合フィルタに通し,最適サンプリング時点(各ビットが整合フィルタに入力し終わる時点)でサンプリングした複数の出力(この数をK個とする)に対してそれぞれK個の重み付け係数を乗じ,それらの全てを足し合わせた結果に対して,符号判定,または離散的レベルの判定を行って,復号出力を得る(前者を硬判定,後者を軟判定と呼ぶ)。
【0034】
K個の重み付け係数は,前記判定の前の信号に,干渉信号成分が含まれないか,または,干渉成分と背景雑音の電力の和が最小になる条件から決定されるが,受信機の中で,前記重み付け係数を求める回路が最も複雑で,かつ規模も大きいものとなるので,この回路を如何にして小規模なものにできるかが,実用化の最大のポイントとなる。
【0035】
単一レートで,各ユーザ(データ列)に対して,同じ観測窓長を適用した場合には,図4に示すように整合フィルタの数Lに対して,サンプリングした出力の数は,K=N×Lとなる。L個の拡散信号は,図6(A)に示すように,連続信号であるが,以下の議論では,簡単のため。図6(B)に示すように,拡散信号も各ビットに対応した長さのバースト信号s1(t),s2(t),…,sk(t)として,話を進める。
【0036】
このようなK個のビットからなる受信信号と背景雑音の和をY(t)とし,第k番目(k=1〜K)のビットの受信振幅をWk,変調信号をdk,拡散信号をsk(t),背景雑音をn(t)とすると,Y(t)は以下の式(1)で表される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで,
【0039】
【数2】
【0040】
と置くと(j=1〜K),yj, zjおよびaijは,それぞれ,整合フィルタ(matched filter)の出力信号,整合フィルタ出力に含まれる雑音成分および相関係数を表す。
【0041】
ここで,積分区間を−∞から+∞としているが,拡散信号をバースト信号として取り扱うので,積分は,そのバースト信号のある,有限の区間で行われる。
【0042】
式(1)と式(2)から,整合フィルタの出力信号yjは以下の式(3)により表される。
【0043】
【数3】
【0044】
式(3)を行列で表せば,以下の式(4)となる。
【0045】
【数4】
【0046】
式(4)をさらにベクトルで表記すると,以下の式(5)となる。
【0047】
【数5】
【0048】
ここに,ベクトルy,R,W,d,およびzはそれぞれ以下の通りである。
【0049】
【数6】
【0050】
行列Rは相関係数行列と呼ばれ,K×K行列である。また,aij=ajiであるので,行列Rは対称行列である。
【0051】
ここで,希望信号を取り出す手法としては,デコリレータ(Decorrelator)または復相関検出器(Decorrelating Detector)のように,判定前の信号に含まれる干渉信号成分を零にする第1の方法と,MMSE検出器(Minimum Mean−SquareError Detector)のように,背景雑音も考慮して,干渉雑音および背景雑音の電力の和を最小にする第2の方法とがある。以下,これら第1および第2の方法の各原理について説明する。
【0052】
(1)第1の手法
第1の方法は干渉雑音を零にする方法である。干渉雑音を零にするためには,以下の式(6)に示すように,上記式(4)(または式(5))の両辺に相関係数行列Rの逆行列R−1を乗算すればよい。これにより,右辺の第2項で表される背景雑音を含んだ,希望信号Widiが得られる。
【0053】
【数7】
【0054】
(2)第2の手法
第1の方法では,干渉信号成分を零にするが,背景雑音がある場合には,その成分を増大させてしまう雑音増大(Noise Enhancement)と呼ばれる現象がある。第2の方法は,上記の欠点を補うために,干渉雑音および背景雑音の合計を最小にする方法で,相関行列の対角要素に,背景雑音の電力密度σ2とビット当たりの干渉信号電力Wk 2の比σ2Wk −2を加えた行列R+σ2W−2(=R´とする)を行列Rに代わって用いればよいことが知られている。すなわち,式(6)の代わりに以下の式(7)を用いるのが第2の方法(MMSE検出法)となる。
【0055】
【数8】
【0056】
以上は,復相関検出器もMMSE検出機も,K×K行列の逆行列を求め,それを整合フィルタ出力に乗じることによって,Kビットのデータを全て復号できることを示している。
【0057】
(3)希望信号の1ビットの復号に必要なK個の要素
相関検出器もMMSE検出器も,K×K行列の逆行列を求め,それを整合フィルタの出力に乗じることで,干渉信号成分を抑圧した,Kビットのデータを復号するが,希望信号の1ビット(希望ビット)の復号に関与するのは,前記逆行列の特定の1行(または1列)である。従って,復号したいビットが,前記Kビットの全部ではなく,ある特定のビットだけの場合(移動機の場合,これが当てはまる)には,逆行列を求める代わりに,逆行列の1行(または,1列)を求める方が便利である。ある行(または列)に対応するK個の要素は,K元連立方程式の解として得られることは,以下の様に示される。
【0058】
先ず,一般性を失わないので,k=1を希望信号ビットとすると,逆行列の第1行が,このビットの復号に関与する行(または列)となる。式(6)の第1行表すと,以下の式(8)となる。
【0059】
【数9】
【0060】
ここに,rijは,以下の式(9)で示される行列R−1の要素である。
【0061】
【数10】
【0062】
式(9)の左辺に現れる逆行列R−1の第1行の要素r11〜r1Kは,以下の式(10)に示すように,相関係数行列Rとその逆行列R−1との積が単位行列Eとなることから,K元連立方程式(11)の解となることが分かる。
【0063】
【数11】
【0064】
【数12】
【0065】
この式は,復相関検出器に関するものであるが,MMSE検出器とする場合は,式(7)に示す様に相関行列の対角要素に,σ2Wk −2を加えればよいことを考慮して,式(11)を両検出器を含む形に拡張して表記すると,下記の式(12)となる。
【0066】
【数13】
【0067】
ここに,
【0068】
【数14】
【0069】
今後,式(13)で定義したαk(k=1,2,…,K)をMMSE補正値,行列R+σ2W−2を変形相関行列R´と呼び,RおよびR´の逆行列を,行列R+と略記することにする。
【0070】
<無線基地局装置の構成および動作>
先ずは従来技術に基づく無線基地局装置の構成および動作について説明し,次に,本発明を同装置に適用した場合の,実施の形態を,動作原理と併せて説明する。
【0071】
図5は,無線基地局装置120として,特にマルチユーザ受信部の構成を示すブロック図で,アンテナ1,周波数変換部2,整合フィルタバンク3,拡散信号生成部4,相関係数生成部10,前述したMMSE検出法を適用するためのMMSE補正部8,K×K行列の逆行列を演算する逆行列演算部14,線形結合部6および判定回路7から構成される。
【0072】
移動機200からの無線信号(RF信号)は,アンテナ1により受信され,周波数変換部2に与えられる。周波数変換部2は,アンテナ1からの無線信号を増幅する増幅器,周波数変換を行う乗算器(ミキサ),RF信号に同期した発振器から成り,入力されたRF帯域の信号をベースバンド信号に変換する。このベースバンド信号が,前述した式(1)により表される受信信号Y(t)である。この信号Y(t)は,整合フィルタバンク3,拡散信号生成部4およびMMSE補正部に入力される。
【0073】
拡散信号生成部4(詳細は,後述する)は,受信信号から,複数(L個とする)の拡散信号f1(t)〜fL(t)と,それらに対して,すべて一定時間シフトしているL個の拡散信号g1(t)〜gL(t)を生成する。そして,生成した拡散信号f1(t)〜fL(t)を整合フィルタバンク3に与えるとともに,拡散信号g1(t)〜gL(t)を相関係数生成部10に与える。
【0074】
整合フィルタバンク3(詳細は,後述する)は,ベースバンド信号Y(t)を,L個の拡散信号f1(t)〜fL(t)によりそれぞれ逆拡散した後,逆拡散した信号を整合フィルタによりフィルタリングする。フィルタリング後の信号は,各信号ビットが整合フィルタに入力し終わるタイミングでサンプリングされ,前述した式(3)に示す,K個の信号y1〜yKとなり,線形結合部6に与えられる。
【0075】
相関係数生成部10は,入力したL個の拡散信号g1(t)〜gL(t)、または、K個の信号y1〜yKに対応する部分である,拡散信号s1(t)〜sK(t)から,K×K行列の相関係数行列を生成する。
【0076】
MMSE補正部8は,K個の信号y1〜yKに対応する受信信号の受信電力と背景雑音電力を推定し,式(7)に示したように,相関係数生成部10で生成される相関係数行列の対角要素を補正して,変形相関係数行列を生成する。なお,背景雑音電力の推定値を零と置いて,MMSE補正を行わない場合は,復相関受信機(デコリレータ,Decorrelating Detector)として機能する。
【0077】
逆行列演算部14は,相関係数生成部10で生成された,K×K行列の相関係数行列R,または変形相関係数行列R´の逆行列R+を演算する。
【0078】
線形結合部6では,式(6)または(7)に示される演算が,入力された信号y1〜yKと,逆行列演算部14から出力される行列R+の間で行われ,(信号y1〜yKの各々を行列R+の各行のK個の要素と乗算し,それらを加え合わせる演算を,以下,線形結合と呼ぶことにする),線形結合後の信号を判定回路7に与える。
【0079】
線形結合部6iにより,行列R+のi行と線形結合された結果は,式(6)または,式(7)の右辺の信号となる。
【0080】
判定回路7は,線形結合部6から与えられた信号を所定の閾値と比較し,変調信号d1〜dKから,離散的値または符号を判定して出力する。変調信号d1〜dKの値は,変調方式としてBPSK(Binary Phase Shift Keying)が使用されている場合には−1または+1となる。判定回路71〜7Kにより得られた復号信号d1〜dKは,その後,誤り訂正等の所定の処理が施されて,無線ネットワーク制御装置1101または1102に伝送されるか,あるいは,同じ基地局装置120のサービスエリア内の他の移動機に送信される。
【0081】
図7は,整合フィルタバンク3の詳細な構成図である。整合フィルタバンク3は,L個の乗算器3a1〜3aL,L個の整合フィルタ(MF:Matched Filter)3b1〜3bL,およびL個のサンプルホールド回路(SHC:Sample Hold Circuit)3c1〜3cLを有する。
【0082】
ベースバンド信号Y(t)は,L個の乗算器3a1〜3aLの第1入力端子に入力される。L個の乗算器3a1〜3aLの第2入力端子には,拡散信号生成部4により生成された拡散信号f1(t)〜fL(t)がそれぞれ入力される。 ベースバンド信号Y(t)と拡散信号f1(t)〜fL(t)とが乗算器3a1〜3aLによってそれぞれ乗算されることを,逆拡散と呼ぶが,乗算器3a1〜3aLによってそれぞれ逆拡散された信号は,MF3b1〜3bLにそれぞれ入力され,MF3b1〜3bLは,各信号の1ビット長Tの間,入力された信号をそれぞれ積分する。
【0083】
MF3b1〜3bLからそれぞれ出力された信号は,SHC3c1〜3cLにそれぞれ入力される。SHC3c1〜3cLは,MF3b1〜3bLが各受信信号の1ビット分の積分を完了した時点の出力信号の値をサンプリングし,その値を保持して,出力する。
【0084】
SHC3c1〜3cLのそれぞれからは,連続してサンプリング値が出力されるが,各整合フィルタ毎の複数のサンプリング値が,希望信号の1ビットを復号するのに利用される。図4(B)に示した単一レートの非同期系のモデルを例にとれば,図7に示したように,各整合フィルタから各々出力される3個×ユーザ数すなわち,3L(=K)個のデータが利用される。
【0085】
整合フィルタバンク3は,図5に示すように受信信号に対して作用するだけではなく,相関係数を求める際に使用される。図8に,相関係数を求めるための整合フィルタバンクの構成を示すが,前記整合フィルタバンク3と区別するために,相関係数整合フィルタバンクと呼ぶことにする。同じ拡散信号同士の相関係数,すなわち相関係数行列の対角要素は,伝送レートが決まれば定まる値で,求める必要がないので,対応する部分を省略する(点線で表示)。
【0086】
図6は,拡散信号g1(t)〜gL(t)と(バースト)拡散信号s1(t)〜sK(t)の関係を示したものである。
【0087】
相関係数整合フィルタバンクは,そこに使用されるスイッチSWの状態を明示しないと,入力と出力の関係が定まらないので,さらに図9に示す,変形整合フィルタバンクを導入する。この変形整合フィルタバンクの入力は,K個の信号y1〜yKに対応する拡散信号s1(t)〜sK(t)で,その出力である相関係数が明示的に示されるので,今後の説明は,相関係数整合フィルタバンクではなく,それと等価な変形整合フィルタバンクを使って行う。観測窓長N=2の場合には,整合フィルタの数において,両者の違いは無いので,実際に変形整合フィルタバンクを使っても実用上問題はない。但し,N>2では,整合フィルタの数の点で,実際には,相関係数整合フィルタバンクを使用する方が有利である。
【0088】
図10は,拡散信号生成部4の構成例で,受信信号に対して,同期捕捉(acquisition)および同期保持(tracking)を行って,受信信号を整合フィルタバンク3で逆拡散するための拡散信号f1(t)〜fL(t)を生成する。それと同時に,相関係数行列生成部で相関係数行列を生成するための拡散信号g1(t)〜gL(t)を生成する。拡散信号g1(t)〜gL(t)は,拡散信号f1(t)〜fL(t)に対して,一定時間シフトしているだけで,同じ拡散コードから生成される。拡散信号の時間を任意の時間シフトさせた拡散信号を生成するには,例えば,図10に示す例(周期31のM系列)の場合,線形帰還シフトレジスタの内容を,遅れまたは進めたい時間だけ基準時刻とずれた時刻で初期値を設定することにより,任意の時間だけ時間シフトした拡散信号を生成することができる。または,基準時刻におけるシフトレジスタの内容と時間シフト量との関係はあらかじめ分かっているので,基準時刻でシフトレジスタの内容を適当に書き換えても,所望の拡散信号を得ることができる。シフトされる時間の量は,復号遅延(観測窓長Nのシステムでは,平均N/2の復号遅延が生じる)と相関係数行列の逆行列の演算に要する時間を考慮して決められる。
【0089】
(1)第1の形態
図11は,第1の形態による無線基地局装置120の,特にマルチユーザ受信部の構成を示すブロック図である。この図は,図5に示した無線基地局受信装置と基本的に同じ構成であるが,図5に示した,相関係数生成部10と逆行列演算部14とが一体化され,希望信号の1ビットを復号するのに関与する,希望信号と干渉信号のビット総数をKとすると,K個の重み係数生成部51〜5K,で構成され,またK個の線形結合部(または内積部)61〜6K,およびK個の判定回路71〜7Kを有する。
【0090】
図11には,重み係数生成部,線形結合部,および判定回路をそれぞれK個ずつ設けて,K個のビットのすべてを復号する構成を示しているが,K個のビットのうちM個(1≦M<K)を復号する場合には,重み係数生成部,線形結合部,および判定回路はそれぞれM個ずつとなる。
【0091】
尚,今後は,特別に断らない限り,希望信号のビット番号を1として説明する。
【0092】
重み係数生成部51〜5Kは,入力されたL個の拡散信号g1(t)〜gL(t)のK個の受信信号ビットに対応する部分である,K個の拡散信号s1(t)〜sK(t)に基づいて行列R+の各要素rij(i=1〜K,j=1〜K)を生成し,出力する。具体的には,第i番目の重み係数生成部5iは,行列R+の第i行のK個の要素ri1〜riKを生成し,生成した要素ri1〜riKを第i番目の線形結合部6iに与える。
【0093】
図12は,重み係数生成部51〜5Kのうち,重み係数生成部51の構成を示すブロック図である。重み係数生成部51は,第1係数生成部501から第K重み係数生成部50KまでのK個の重み係数生成部を有する。
【0094】
各重み係数生成部には,K個の拡散信号s1(t)〜sK(t)が共通に入力される。また,各重み係数生成部には,全ての重み係数生成部の各出力信号が入力される。但し,それぞれの出力は,それぞれの重み係数生成部の内部で既に結合している(入力元の無い矢印がそのことを示している)。すなわち,第j重み係数生成部50j(j=1〜K)には,第j重み係数生成部50jの出力信号r1jを除く出力信号r11〜r1j−1,r1j+1〜r1Kが入力される。
【0095】
第j重み係数生成部50jは,入力されるこれらの信号と拡散信号s1(t)〜sK(t)に基づいて,行列R+の第1行第j列の要素r1jを生成し,出力する。
【0096】
MMSE補正部8は,受信信号から背景雑音電力密度σ2,と整合フィルタバンク3の出力y1〜yKに対応するビット当たりの推定受信電力の比である,上記式(13)の補正値αiを求め,重み係数生成部51〜5Kに与える。
【0097】
図13は,重み係数生成部51の第1係数生成部501の詳細な構成を示すブロック図である。第1係数生成部501は,相関係数生成部511,線形結合部512,および帰還部513からなる。
【0098】
相関係数生成部511は,前述した変形整合フィルタバンク(図9参照)と同じ機能を有し,K個の乗算器51a1〜51aK,K個のMF(整合フィルタ)51b1〜51bK,およびK個のSHC(サンプルホールド回路)51c1〜51cKを有する。線形結合部512は,線形結合部61〜6K(後に詳述)のそれぞれと同じ構成を有し,K個の乗算器51d1〜51dKおよび合成器(合成器)51eを有する。
【0099】
帰還部513は,減算器51f,反転増幅器51g,帰還ループフィルタ(低域フィルタ,LPF)51h,および合成器51mを有する。
【0100】
相関係数生成部511の乗算器51a1〜51aKのそれぞれの第1入力端子には,拡散信号s1(t)が共通に入力される一方,第2入力端子には,拡散信号s1(t)〜sK(t)がそれぞれ入力される。したがって,乗算器51ajは,拡散信号s1(t)とsj(t)とを乗算し,積s1(t)sj(t)を出力する。
【0101】
MF51b1〜51bKは,乗算器51a1〜51aKの出力信号を1ビットの長さTに亘って,それぞれ積分(フィルタリング)し,積分結果をSHC51c1〜51cKにそれぞれ出力する。SHC51c1〜51cKは,MF51b1〜51bKが1ビットの長さの積分をそれぞれ完了した時点の出力信号の値をサンプリングしその値を保持して出力する。したがって,SHC51ciの出力信号は,上記式(2)から,相関係数行列Rの第i行第1列の要素(相関係数)ai1となる。すなわち,SHC51c1〜51cKからは,相関係数行列Rの第1列の相関係数a11〜aK1が出力される。SHC51c1の出力a11は,伝送レートが決まれば定まる定数で,ビット毎に変化することが無いので乗算器51a1から,SHC51c1までの回路は省略してもよい。これらの相関係数a11〜aK1は,線形結合部512の乗算器51d1〜51dKの第1入力端子にそれぞれ入力される。HC52c1の出力は,MMSE補正値をα1とすると(1+α1)倍されて出力される。乗算器51d1〜51dKの第2入力端子には,行列R+の第1行の要素に対応するr11〜r1K(これらの値を,今後,重み係数x1〜xKとも呼ぶ)がそれぞれ入力される。
【0102】
要素r11は,第1係数生成部501の帰還部513の出力信号がフィードバックされたものである。要素r12〜r1Kは,図6に示すように,第2係数生成部502から第K重み係数生成部50Kの各出力信号である。
【0103】
乗算器51d1〜51dKは,第1入力端子および第2入力端子からそれぞれ入力された信号を乗算し,乗算結果を合成器51eに与える。合成器51eは,乗算器51d1〜51dKから与えられたK個の乗算結果を合成し,合成結果を帰還部513に与える。乗算器51d1〜51dKの乗算結果として,K個の乗算結果a11(1+α1)r11,a21r12,…,aK1r1Kが得られ,合成器51eによる合成結果として,a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1Kが得られる。この合成結果は,上記連立方程式(12)の第1式の左辺に対応する。
【0104】
合成器51eの出力信号は,減算器51fによって,定数a11が減じられて,減算結果を反転増幅器51gに入力する。反転増幅器51gは,入力信号を利得−Gで増幅(反転増幅)して出力する。
【0105】
反転増幅器51gの出力信号は,LPF51hを介して合成器51m入力され,帰還ループの初期値である,定数1/(1+α1)が加えられる。この合成結果が,第1係数生成部501の出力となるとともに,乗算器51d1の第2入力端子に入力さる。
【0106】
この結果,線形結合部512と帰還部513とは,帰還ループを形成することになり,帰還部513の出力(すなわち第1係数生成部501の出力)は,帰還ループの収れん状態で,要素r11に収れんし,式(12)で表せる連立方程式の解の1つ(要素r11)が求められる(帰還ループの動作原理は,後述する)。
【0107】
図14は,重み係数生成部51の第2係数生成部502の詳細な構成を示すブロック図である。第2係数生成部502は,相関係数生成部521,線形結合部522,および帰還部523を有する。
【0108】
相関係数生成部521は,前述した変形整合フィルタバンク(図9参照)と同じ機能を有し,K個の乗算52a1〜52aK,K個のMF52b1〜52bK,およびK個のSHC52c1〜51cKを有する。線形結合部522は,線形結合部61〜6K(後に詳述)のそれぞれと同じ機能を有し,K個の乗算器52d1〜52dKおよび合成器52eを有する。
【0109】
帰還部513は,反転増幅器52gおよび帰還ループフィルタ(低域フィルタ,LPF)52hを有する。
【0110】
相関係数生成部521の乗算器52a1〜52aKのそれぞれの第1入力端子には,拡散信号s2(t)が共通に入力される一方,第2入力端子には,拡散信号s1(t)〜sK(t)がそれぞれ入力される。したがって,乗算器52ajは,拡散信号s2(t)とsj(t)との乗算結果である積s1(t)sj(t)を出力する。
【0111】
MF52b1〜52bKは,乗算器52a1〜52aKの出力信号を1ビット長Tの間,それぞれ積分(フィルタリング)し,積分結果をSHC52c1〜52cKにそれぞれ出力する。SHC52c1〜52cKは,MF52b1〜52bKが1ビットの積分をそれぞれ完了した時点の出力信号の値をサンプリングし,保持して出力する。したがって,SHC52ciの出力信号は,上記式(2)から,相関係数行列Rの第i行第2列の要素(相関係数)ai2となる。すなわち,SHC52c1〜52cKからは,相関係数行列Rの第2列の相関係数a12〜aK2が出力される。SHC52c1の出力a22は,伝送レートが決まれば定まる定数で,ビット毎に変化することが無いので乗算器52a2から,SHC52c2までの回路は省略してもよい。但し,HC52c2の出力は,MMSE補正値をα2とすると(1+α2)倍されて出力される。
【0112】
これらの相関係数a12〜aK2は,線形結合部522の乗算器52d1〜52dKの第1入力端子にそれぞれ入力される。乗算器52d1〜52dKの第2入力端子には,行列R+の第1行の要素に対応するr11〜r1Kがそれぞれ入力される。
【0113】
要素r12(重み係数x2)は,第2係数生成部502の帰還部523の出力信号がフィードバックされたものである。要素r11,r13〜r1Kは,図12に示すように,第1係数生成部501および第3重み係数生成部503から第K重み係数生成部50Kの各出力信号である。
【0114】
乗算器52d1〜52dKは,第1入力端子および第2入力端子からそれぞれ入力された信号を乗算し,乗算結果を合成器52eに与える。合成器52eは,乗算器52d1〜52dKから与えられたK個の乗算結果を合成し,合成結果を帰還部523に出力する。乗算器52d1〜52dKの乗算結果として,K個の乗算結果a12r11,a12(1+α2)r12,…,aK2r1Kが得られ,合成器52eによる合成結果として,a12r11+a22(1+α2)r12+…+aK2r1Kが得られる。この合成結果は,上記連立方程式(12)の第2式の左辺に対応する。
【0115】
合成器52eの出力信号は,反転増幅器52gに入力され,反転増幅された後,LPF52hを介して乗算器52d2の第2入力端子に入力される。また,LPF52hの出力が第2係数生成部502の出力r12となる。
【0116】
この結果,線形結合部522と帰還部523とは,帰還ループを形成することになり,帰還部523の出力値(すなわち第2係数生成部502の出力)は,帰還ループの収れん状態で,要素r12に収れんし,式(12)で表せる連立方程式の解の1つ(要素r12)が求められる。
【0117】
第3重み係数生成部503から第K重み係数生成部50Kも第2係数生成部502とほぼ同様の構成を有し,相関係数生成部の乗算器の第1入力端子に入力される拡散信号がそれぞれs3(t)〜sK(t)となる点,および,自己の出力信号がフィードバックされる線形結合部の乗算器がそれぞれ第3番目から第K番目の乗算器になる点が異なるだけで,それぞれ要素r13〜r1Kを出力する(これらの出力を,重み係数x3〜xKとも呼ぶ)。
【0118】
したがって,これら第3重み係数生成部503から第K重み係数生成部50Kの説明は省略する。また,重み係数生成部52〜5Kについても,重み係数生成部51と同様の構成を有するので,その説明を省略する。
【0119】
図11に戻って,整合フィルタバンク3の出力y1〜yKは,線形結合部61〜6Kに共通に入力される。重み係数生成部51〜5Kの各出力は,線形結合部61〜6Kのそれぞれに入力される。すなわち,重み係数生成部5iの出力ri1〜riKは,線形結合部6iに入力される。線形結合部61〜6Kは,これら入力された信号を線形結合する。
【0120】
図15は,線形結合部61の詳細な構成を示すブロック図である。線形結合部61は,前述したように,第1係数生成部501の線形結合部512と同じ機能を有し,K個の乗算器61a1〜61aKおよび合成器61bを有する。
【0121】
乗算器61a1〜61aKの第1入力端子には,整合フィルタバンク3の出力信号y1〜yKがそれぞれ入力され,第2入力端子には,重み係数生成部51の出力信号r11〜r1Kがそれぞれ入力される。乗算器61a1〜61aKは,第1入力端子および第2入力端子に入力された信号をそれぞれ乗算し,乗算結果を合成器61bにそれぞれ出力する。
【0122】
合成器61bは,乗算器61a1〜61aKの出力信号を合成する。この合成器61bの合成結果はy1r11+y2r12+…+yKr1Kとなり,この合成結果は上記式(8)の右辺であり,その値はW1d1と雑音成分の和となる。この合成結果は,判定回路71に入力され,判定回路71からd1の判定結果D1が出力される。
【0123】
他の線形結合部62〜6Kも,線形結合部61と同じ構成で,W2d2〜WKdKとそれぞれの雑音成分の和をそれぞれ出力する。そして,これらの出力は,判定回路72〜7Kにそれぞれ入力され,判定回路72〜7Kから判定結果としてD2〜DK(d2〜dKの判定結果の値)がそれぞれ出力され,復相関形受信が行われる。
【0124】
以上,第1の形態における,無線基地局装置120の装置の構成を説明したが,次に,この様な構成で,なぜマルチユーザ受信が可能となるかについて,原理の説明を行い,シミュレーションによって動作の確認を行った結果についても言及する。
【0125】
合成器51eの出力が,a11r11+a21r12+…+aK1r1Kに,また合成器52eの出力が,a12r11+a22r12+…+aK2r1Kになることは,既に述べた。合成器51eの出力は,帰還部513において,第1の定数(ここでは,a11とする)が引かれ,反転増幅器,帰還ループフィルタを経て,第2の定数(ここでは,1+α1の逆数)が合成されて,線形結合部に戻され,全体で帰還ループを形成している。初期値として第2の定数を与えてループを起動し,一定時間が経過した後に,定常状態に達するが,このとき,線形結合部512と帰還部513とで形成される帰還ループの利得を−G1とすると,次の式(14)が成り立つ。
【0126】
−G1[a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K−a11]
=r11−1/(1+α1) (14)
【0127】
同様に,線形結合部522と帰還部523とで形成される帰還ループの利得を−G2とすると,次の式(15)が成り立つ。
【0128】
−G2[a12r11+a22(1+α2)r12+…+aK2r1K]=r12 (15)
【0129】
式(14)と式(15)の両辺をそれぞれの帰還ループ利得−G1, −G2で割って,右辺を左辺に移項すれば,次の式(16)と式(17)になる。
【0130】
[a11(1+α1)+1/G1][r11−1/(1+α1)]+a21r12+…
+aK1r1K=0 (16)
a12r11+[a22(1+α2)+1/G1]r12+…+aK2r1K=0 (17)
【0131】
式(17)を,他の第2係数生成部に関するものを含めて,一般化すると,式(18)となる。
【0132】
a1jr11+a2jr12+…+[ajj(1+αj)+1/G1]r1j+…+aK1r1K=0
(j=2,3,…,K) (18)
【0133】
式(16)および式(18)において,Gj=∞(j=1,2,…,K)と置くと,これらの式は,次の様になる。
【0134】
a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K=a11 (19)
a1jr11+a2jr12+…+ajj(1+αj)r1j+…+aK1r1K=0
(j=2,3,…,K)(20)
【0135】
受信信号の整合フィルタバンク3の出力である,K個の値(y1,y2,…,yK)と,重み係数生成部の出力である(r11,r12,…,r1K)とを線形結合部61で線形結合した結果を,B=y1r11+y2r12+…+yKr1Kとすると,Bは,干渉信号成分が零となる(復相関受信)か,抑圧されている(MMSE受信)かになることは,既に述べたがが,その理由は次の通りである。K個の値(y1,y2,…,yK)を,式(3)を使って展開し,Bを求めると,式(21)となる。
【0136】
B=W1d1[a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K]
+W2d2[a12r11+a22(1+α2)r12+…+aK2r1K]+…
+WKdK[a1Kr11+a2Kr12+…+aKK(1+αK)r1K]+…
+z1r11+z2r12+…+zKr1K (21)
【0137】
式(21)に,式(19)と式(20)を代入すると,Bは,次の式(22)になる。
【0138】
B=W1d1a11(1−α1r11)−W2d2a22α2r12−…−WKaKKαKr1KdK+z1r11+z2r12+…+zKr1K (22)
【0139】
式(22)から,α1=α2=…=αK=0,すなわち,背景雑音電力を零とおくと,式(22)の右辺の第1項の,W1d1a11,すなわち,希望信号と雑音成分だけとなって,復相関受信が行われることが分かる。αjを,背景雑音電力密度とビット番号jのビット当たりの推定受信信号電力とすると,干渉信号電力と背景雑音電力の和が最小となる,MMSE受信が行われることは,既に述べた。
【0140】
また,式(19)の右辺のa11を1と置いて,式(20)と合わせて,式(12)と比較すると,両者が一致することからも,これまで述べてきた受信機で,復相関形受信が行われることが分かる。
【0141】
a11を1と置いてよいことは,次のようにして,説明される。まず,相関係数行列の対角要素は,式(2)から,次の式(23)で表される。
【0142】
【数15】
【0143】
ここでは,希望信号ビットの始まりをt=0とした。
【0144】
式(23)から分かるように,ajjすなわち,相関係数行列の対角要素は,ビットレート(1/T)によって決まる。従って,単一レートのシステムでは,対角要素が全て同じになり,その値は,線形結合部6のレベルを相対的に変えるだけなので,通常はその値を1として取り扱う場合が多い。本発明は,単一レートのみならず,マルチレートにも適用できるので,相関係数行列の対角要素がすべて同じとは限らないので,明細書の記載は,対角要素を変数表示のまま残してある。
【0145】
相関係数行列の対角要素ajjが,ビットレート(1/Tj)によって決まる定数なので,ajjを求めるための乗算器と整合フィルタを省略できる。また,対角要素ajjまたは,それをMMSE補正した,ajj(1+αj)とr1jとの乗算を行う線形結合部における乗算器も,レベル変換器と置き換える(あるいは,低速で動作する乗算器と解釈する)ことが可能である。
【0146】
以上は,帰還ループ利得Gj=∞(j=1,2,…,K)として,話を進めた。しかし,帰還ループ利得が小さくなると,演算誤差が生じるので,次に,この誤差が生じない方法(利得補正)について述べる。
【0147】
図16(A)は,第1係数生成部に,利得補正を施したもので,合成器51nの出力をr11´とし,これを元の線形結合部に戻して,帰還ループを形成するとともに,LPF51hの出力(r11´−1/(1+α1))をc1倍し,それに1/(1+α1)を加えたものを,r11として,他のK−1個の第2係数生成部に接続している。r11´とr11の関係は,次の式(24)で表される。
【0148】
[r11´−1/(1+α1)]c1=r11−1/(1+α1) (24)
【0149】
ここに,c1は,次の式(25)で表される。
【0150】
c1=1+1/a11/(1+α1)/G1 (25)
【0151】
r11´に関しては,式(16)において,r11と置き替えたものであるから,次の式(26)が成り立つ。
【0152】
[a11(1+α1)+1/G1][r11´−1/(1+α1)]
+a21r12+…+aK1r1K=0 (26)
【0153】
式(26)に,式(24)を代入すると,次の式(27)になる。
a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K=a11 (27)
【0154】
式(27)では,G1に関する項が相殺された結果,G1が無限大である場合と同じく,誤差の無い出力が得られることが分かる。図16(B)は,図16(A)と等価な回路で,帰還部の出力をそのまま,他のK−1個の重み係数生成部に接続し,帰還ループ内の元の線形結合部へ戻す際に,そのレベルを1/c1倍したものである。
【0155】
利得補正の他の方法を図17に示す。式(16)に戻ると,利得G1の影響を除くには,この式の左辺に,−[r11−1/(1+α1)]/G1を加えるのでもよいことが分かる。但し,加える場所は,合成器の入力から反転増幅器の入力の間とするか,または,−[r11−1/(1+α1)]/G1を−G1倍して反転増幅器の出力に加えても同じであって,図17は,この考えに基づいて構成したものである。尚,LPF51hの入出力で局所的にループが形成されるので,各所のレベル合わせを行って,帰還利得を調整する必要がある。増幅器51qは,LPFには損失があって,それを補うために挿入したが,LPFがアクティブ素子で構成されていて利得があれば,増幅器51qは,減衰器となる場合もある。
【0156】
以上で,帰還ループ利得が小さい場合にも,逆行列要素の演算誤差が生じない方法について述べたが,次は,線形結合部に関する,いくつかの変形例について説明する。
【0157】
図18(A)と図13では,a11(1+α1)r11を乗算器51d1で作り出すのに,(1+α1)の乗算をどちらの入力側で行うか,が違っている。図13では,相関係数行列生成部側で行い,図18(A)では,重み係数生成部側で行っているが,何れも,式で表せば同じであるので,等価回路と言える。
【0158】
図18(A)と(B)とは,MMSE補正を,帰還ループの中で行うか,求まった重み係数を,他のK−1個の重み係数部に分配する側で行うかの違いであるが,これも式で表せば同じなので,互いに等価である。
【0159】
図19も,MMSE補正に関する変形例で,a11(1+α1)r11を作り出すのに,a11r11とa11α1r11とを加え合わせる(図19)か,a11r11と乗じるか(図13)の相違であって,式で表せば同じなので,互いに等価である。
【0160】
図20は,図13に示した,第1係数生成部の変形例である。図13においては,線形結合部の合成器51eの出力から,減算器51fで,第1の定数a11を減じてから,LPF51hの出力で,第2の定数を加える構成になっているが,図20においては,合成器51eの出力から,第1の定数を減じないで,帰還ループを形成し,第2の定数の合成を,帰還ループの外で行った結果を,他のK−1この,重み係数生成部に結合している。両者が等価であることは,次のように説明できる。
【0161】
先ず,LPF51hの出力を,r11´とすると,次の式(28)が成り立つ。
a11(1+α1)r11´+a21r12+…+aK1r1K=0 (28)
r11´とr11との差は,合成器51mによる,第2の定数1/(1+α1)の違いであるから,次の式(29)が成り立つ。
r11´=r11−1/(1+α1) (29)
式(29)式を式(28)に代入し,左辺に生じたa11を右辺に移項すれば,式(19)となるので,図13と図20の回路は,互いに等価である。
図16,図17,図18および図19を使った説明は,希望信号ビットに対する重み係数r11(x1)を求める回路に付いてであったが,干渉信号ビットに対応する重み係数を求める回路に付いては,減算器51fと合成器51mに相当する部分がないだけで,同じ手法が適用できるので,説明と図示を省略した。
【0162】
次に,第1の形態で説明した構成によって,回路が正しく動作するかどうかをシミュレーションによって確認した結果について,図21,図22,図23,図24および図25を使って説明する。
【0163】
モデルは,観測窓長N=2, ユーザ数L=2, K=NL=4(ビットd1〜d4),帰還ループ利得補正は,図20に示した手法を用いた,簡単な場合で,逆行列の要素r11,r12,r13およびr13(重み係数x1〜x4)の収れんの様子を調べたものである。
【0164】
図21は,ビットd1〜d4とそれに対応する拡散信号s1(t)〜s4(t)ならびに相関係数を求めるのに必要な,拡散信号の積s1(t)s2(t),s2(t)s3(t),s3(t)s4(t)の波形を示している。図22(a)は,拡散信号s1(t)〜s4(t)を,図22(b)は,に拡散信号の積s1(t)s2(t),s2(t)s3(t)およびs2(t)s3(t)をそれぞれ数値により示している。図22(c)は,あらかじめコンピュータで求めた相関係数行列Rとその逆行列R−1の具体的な数値を示している。
【0165】
ここでは,希望信号のビット番号を3とし,時刻t=0で,重み係数x3の初期値を1,他の重み係数の初期値を0と置いて帰還ループを動作したときの,重み係数x1〜x4(r11,r12,r13およびr14)の時間変化を,シミュレーションにより求めると,図23に示すグラフとなる。横軸の時間τは帰還ループフィルタの時定数により正規化した時間を示している。モデルが簡単なので,収れん値と初期値の差が小さく,収れん状況が分かりにくいので,重み係数x1〜x4そのそれぞれの厳密解からの偏差を示したのが,図24である。この図から,帰還ループフィルタの時定数の数倍の時間をかければ,全ての重み係数が厳密解に収れんすることが分かる。図25は,重み係数を,帰還ループの外,すなわち他の重み係数回路に与える場合に,一部を帰還ループフィルタの入力から,取り出して,高速化を図った例である。図24および図25から,帰還ループフィルタの時定数を充分小さい値を選べば,重み係数を求める時間を1ビット長以下にすることが可能なことが分かる。
【0166】
(2)第2の形態
重み係数生成部51〜5Kのそれぞれは,第1係数生成部501から第K重み係数生成部50Kを有する(図12参照)。これら第1係数生成部501から第K重み係数生成部50Kのそれぞれは,相関係数生成部511または521を有し,相関係数行列の第1列の要素a11〜aK1から第K列の要素a11〜aK1をそれぞれ出力する。すなわち,重み係数生成部51〜5Kのいずれもが,相関係数行列の第1列の要素a11〜aK1から第K列の要素a11〜aK1(すなわち相関係数行列のすべての相関係数)を生成する。
【0167】
したがって,重み係数生成部51〜5Kにおける相関係数生成部を1つの回路にまとめることができるので,重み係数生成部51〜5Kに代えて,相関係数生成部10およびK個の重み係数演算部111〜11Kで構成したのが図26に示した第2の形態である。尚,整合フィルタバンクについては,これまで,変形整合フィルタバンク(図9)を使って説明したが,これからは,相関係数整合フィルタバンク(図8)を使って説明する。
【0168】
相関係数生成部10は,K×K個の相関係数a11〜aKKを生成し,生成した相関係数a11〜aKKを重み係数演算部111〜11Kに共通に与える。重み係数演算部111〜11Kは,相関係数生成部10から与えられた相関係数a11〜aKKに基づいて行列R+の第1行の要素r11〜r1Kから第K行の要素rK1〜rKKをそれぞれ求め,線形結合部61〜6Kにそれぞれ与える。
【0169】
図27は,相関係数生成部10の詳細な構成を示すブロック図である。相関係数生成部10は,L個の相関係数整合フィルタバンク10a1〜10aLを有する。
【0170】
これらの相関係数整合フィルタバンク10a1〜10aLには,拡散信号g1(t)〜gL(t)が入力され,相関係数整合フィルタバンク10a1〜10aは,入力された拡散信号に基づいて第1列の相関係数a11〜aK1から第K列の相関係数a1K〜aKKまでを出力する。回路10sは,これらの出力を並べ替えて出力する。
【0171】
図28は,重み係数演算部111の詳細な構成を示すブロック図である。重み係数演算部111は,K個の線形結合部11a1〜11aKおよびK個の帰還部11b1〜11bKを有する。
【0172】
線形結合部11a1は図13に示す第1係数生成部501の線形結合部512と同じ構成を有し,帰還部11b1は図12に示す帰還部513と同じ構成を有する。また,線形結合部11a1に入力される信号も,線形結合部512に入力される信号と同じである。したがって,帰還部11b1からは,行列R+の要素r11が出力される。
【0173】
線形結合部11a2および帰還部11b2は,図14に示す線形結合部522および帰還部523とそれぞれ同じ構成を有し,線形結合部11a2に入力される信号も線形結合部522に入力されるものと同じである。したがって,帰還部11b2からは,要素r12が出力される。
【0174】
同様にして,線形結合部11a3(図28には図示略)〜11aKはいずれも,線形結合部522と同じ構成を有し,帰還部11b3〜11bKはいずれも,帰還部523と同じ構成を有する。したがって,帰還部11b3〜11bkからは,要素r13〜r1Kがそれぞれ出力される。
【0175】
(3)第3の形態
第3の形態における,無線基地局の構成は,図11に示した第1の形態による無線基地局装置の構成と基本的に同じであるが,重み係数生成部51〜5Kを変換し,回路規模を更に小さくしたものである。
【0176】
まず,第1の形態における重み係数生成部と,第3の形態における重み係数生成部の違いを理解するために,前者から後者への回路の変換の過程を順を追って説明し,後に式を使って動作原理の説明を行う。
【0177】
図29から図32は,重み係数生成部51の第1係数生成部501の変換のステップを示している。
【0178】
まず,第1ステップとして,図13に示すSHC51c1〜51cKを除去し,第1係数生成部501を図29に示す構成に変形する。SHC51c1〜51cKの除去によっても除去前と等価な動作を行わせるためには,MF51b1〜51bKの積分時間が,SHC51c1〜51cKによって積分結果が保持される時間だけ延長すればよい。
【0179】
続いて,第2ステップとして,図30に示すように,MF51b1〜51bKと乗算器51d1〜51dKとの順序を入れ替える。重み係数x1(r11)の値が,MF51b1〜51bKの積分時間(0≦t≦T)内で一定であれば,この変換は等価変換であるが,実際には,x1の値は,時間と共に変化するので,この変換は,等価でなく近似変換である。但し,後述する手法を用いることで,発生する近似誤差は,実用上問題ない範囲に抑えることができる。MF51b10
は,図29には無かったものであるが,図30では,減算器51fの入力を作り出すために追加した。
【0180】
続いて,第3ステップとして,図31に示すように,加算器51eの前段にあるMF51b1〜51bKを加算器51eの後段に移動し,後段にあるLPF51hと置き換える。このことによって,K個のMF51b1〜51bKを1つのMF51bに削減することができる。LPF51hをMF51bに置き換えることによって,帰還ループの処理時間が長くなるが,後述するように,このことも問題とならない。
【0181】
続いて,第4ステップとして,図32に示すように,乗算器51a1〜51aKが加算器51eの後段に移動される。移動の結果,K個の乗算器51a1〜51aKを1つの乗算器51aに削減することができる。これにより,第1係数生成部501の変換が終了する。
【0182】
第2係数生成部502についても同様の変換を行うことにより,図33に示す回路が得られ,第3係数生成部503から第K係数生成部50Kについても,図33と同様の回路が得られる。
【0183】
図32と図33を比較すると,第1係数生成部501の乗算器51d1〜51dKおよび加算器51eと,第2係数生成部502の乗算器52d1〜52dKおよび加算器52eは共通となるので,この共通部分については,全体で1つ使うだけでよいことになる。また,図示を省略するが,第3係数生成部503から第K係数生成部50Kも図33に示す第2係数生成部502と同じ構成を有するので,これらの乗算器および加算器の部分は共通にできる。
【0184】
したがって,第1係数生成部501から第K係数生成部50KのそれぞれにおけるK個の乗算器および1つの加算器は1つにまとめることができる。図34は,これらを1つにまとめた第3の形態による重み係数生成部51の詳細な構成を示すブロック図である。
【0185】
この重み係数生成部は,各係数生成部の乗算器および加算器が1つにまとめられた線形結合部500と,重み係数x1〜xK(r11〜r1K)をそれぞれ出力する帰還部5011〜501Kを有する。
【0186】
帰還部5011は,図32の加算器51eの後段に配置された加算器51pから加算器51mまでの構成要素を有する。帰還部5022は,図33の加算器52eの後段の加算器52pからMF52までの構成要素を有する。他の帰還部5013〜501Kも帰還部5012と同じ構成を有する。
【0187】
他の重み係数生成部52〜5Kについても,同様の構成とすることができる。ただし,第j係数生成部5jでは,帰還部5011と同じ構成を有する帰還部がj番目の要素rjjを出力する部分に配置され,それ以外の要素を出力する部分に帰還部5012と同じ構成を有する帰還部が配置される。また,この帰還部では,定数1/(1+α1) に代えて定数1/(1+αj) が加算器に入力される。
【0188】
図33に示す重み係数生成部は,帰還部5011〜501Kおよび線形結合部500の左右の配置を入れ替えることにより,図34にように表すこともできる。式(12)において,r11=x1,r12=x2,…,r1K=xKと置きかえ,相関係数を積分表示にもどしてみると,次の式(30)になる。
【0189】
【数16】
【0190】
積分区間は,となっているが,拡散信号s1(t)〜sK(t)は,ある有限な区間で−1か+1(非零)であるが,その前後で零であるから,積分はある有限な区間で行われる。
式(100)において,重み係数x1,x2,…,xKが,時間によって変化しない場合は,積分の内側にいれて見ると,次の式(31)になる。
【0191】
【数17】
【0192】
次に,拡散信号と重み係数を線形結合したものを,拡張拡散信号と定義すると,拡張拡散信号は,次の式(32)で表せる。
【0193】
【数18】
【0194】
式(32)を使って,式(31)を表すと,次の式(33)になる。
【0195】
【数19】
【0196】
第1の形態で用いた手法では,式(12)を,図13および図14に示す回路形式によって,式(14)および式(15)の様に変形し,r11(x1),r12(x2),…,r1K(xK)を求めた。同じ考えを,式(33)に適用すると,次の式(34)となる。
【0197】
【数20】
【0198】
式(34)は,図35に対応していて,線形結合部500が拡張拡散信号q1(t)を出力し,帰還部5011の出力が,式(34)の第1行の左辺と対応している。帰還部5011〜501Kの出力は,式(34)の第2行の左辺に対応している。
【0199】
図35の回路が,最初は,整合フィルタの出力が零の状態から起動し,定常状態に達するまでの間,重み係数x1,x2,…,xKの値は,初期値から収れん値まで,変化する。
【0200】
式(30)を式(31)に変形(図29から図30への変換に対応)できたのは,重み係数x1,x2,…,xKすが,時間によって変化しないと仮定したからである。
【0201】
従って,図13および図14に示す回路形式によって求められる重み係数x1,x2,…,xKが,厳密解であるのに対して,図34または図35に示す回路形式から求まる重み係数x1,x2,…,xKは,近似解である。
近似解であっても,それらの値を用いることで,復相関受信が可能なことと,近似解を厳密解に近づける方法について説明する。
【0202】
式(1)で表される受信信号Y(t)に,式(32)で表される拡張拡散信号q1(t)を乗じて整合フィルタに通した結果をSとすると,Sは,次の式(35)で表せる。
【0203】
【数21】
【0204】
式(34)は,G=∞とすると,式(33)になるが,Gが小さい場合にも,利得補正を行えば,式(33)で表せるので,式(35)に,式(33)を代入すると,次の式(36)になる。
【0205】
【数22】
【0206】
式(36)から,α1=α2=…=αK=0の場合には,整合フィルタ出力には,干渉信号成分が現れないことが分かる。但し,雑音成分については,積分期間中(すなわち,整合フィルタを通過中),重み係数が変化するので,従来方式によるものとは,異なってくる。
【0207】
α1,α2,…,αKが零で無い場合には,同様の理由で,従来のMMSE受信機によるものと雑音成分が,変わってくる。
【0208】
次は,近似的に求まる重み係数を,厳密解に近づける方法について説明する。第1の方法は,観測窓長をNとすると,整合フィルタの積分時間を(N+1)Tとし,第1回の演算を,拡散信号gj(t)(j=1,2,…,L)を使って0≦t≦(N+1)Tで行った後,第1回目の収れん値を第2回目の初期値とし,拡散信号として,第1回目で使った拡散信号よりも,(N+1)T遅れた拡散信号gj(t−(N+1)T)(j=1,2,…,L)を使って,(N+1)T≦t≦2(N+1)Tの間,第2回目の演算を行う。得られた重み係数の近似度が充分であれば,ここで演算を終えるが,近似度が充分でなければ,同じように,拡散信号gj(t−2(N+1)T)(j=1,2,…,L)を使って,第3回目の演算を行う。このようにすると,初期値として,前回よりもより厳密解に近い値を使うので,収れん値としては,前回よりもより厳密解に近いものが得られる。反復回数を増やせば,より厳密解に近い値を得ることができる。ただし,この方法だと,演算に要する時間は(N+1)T×反復数となる。
【0209】
第2の方法は,整合フィルタとして,積分時間をビット長と同じTとし,第一回の演算に要する時間帯を,長さTの複数の区間,区間1,区間2,区間Pに分割し,区間毎に拡張拡散信号を生成した上,区間pの拡散信号の時間区間pと区間p0の時間差だけシフトして,1回目の演算を区間p0で行った後,周期Tで,演算を反復する方法である。この方法だと,1回の演算に要する時間はTであり,全体の時間はT×反復数となり,第1の方法に比べて,演算時間が(N+1)分の1に短縮される。第1の方法と,第2の方法に要する時間を比較したのが,図36である。尚,この図においては,数字はビット番号ではなく,区間番号を表す。
【0210】
(4)第4の形態
第4の形態の無線基地局120の受信装置の構成図を図37に示す。
【0211】
この装置の構成は,基本的に,第1の形態および第2の形態と同様であるが,変形拡散信号生成部12を備え,前記2つの形態に使用した技術を基に,更に重み係数生成部の高速演算と装置の小型化を達成するものである。
【0212】
変形拡散信号生成部12では,拡散信号生成部で生成される,相関係数生成用の拡散信号g1(t),g2(t),…,gL(t)の他に,それらの拡散信号に対して,所定の時間だけ時間シフトした複数の拡散信号信号を生成する。時間シフトした拡散信号の生成方法に付いては,図10を使って説明した方法と同様の方法が用いられる。これらの複数の拡散信号を,変形拡散信号Σgj(t)と呼ぶことにする。
【0213】
図4を,再び用いて説明すると,この図は,単一レートで,ユーザ数Lの受信信号間の非同期状態を図示したもので,受信信号の受信時刻は特定の時刻に集中することなく,一様に分布している場合のモデルで,受信機への到達時刻の早い順にビット番号が付与されている。図4(A)は,観測窓長(Observation Window Size)N=2で,K=2Lの場合を,図4(B)は,観測窓長N=3で,K=3Lの場合を示している。
【0214】
ここで,図4(A)において,希望信号ビットを第(L+1)番目のビット(以下「ビットL+1」と表す)とすると,観測窓長N=2のシステムでは,希望ビットを復号するのに,ビット1の先頭からビット2Lの末尾まで,合計3ビットの時間を要することとなる。
【0215】
したがって,ビット1,L+1,2L+1,3L+1というように,ユーザ信号1のビット列を連続的に復号するには,前述した無線基地局装置120における重み係数生成部の規模が3倍必要となる。同様に,観測窓長Nのシステムでは,希望信号ビットを復調するのに,N+1ビットの時間を要するので,あるユーザ信号のビット列を連続的に復号するには,重み係数生成部の規模をN+1倍必要になる。
【0216】
一方,受信される各ユーザ信号は,N+1ビットの区間に広がっているものの,重み係数の演算時間帯は必ずしも受信信号と同期している必要がないことに着目し,変形拡散信号Σgj(t)を利用して重み係数の演算時間を特定の時間帯に集約して,1ビットの復号に要する時間を短縮した所に,第4の形態の特徴がある。
【0217】
第4の形態について,一例として,第3の形態で説明した技術に基づいて実施の形態を説明するが,第1,第2の形態で説明した相関係数生成にも同じように適用できる。
【0218】
まず,第4の形態の原理について,まず簡単なモデルで説明し,後に一般化する。
【0219】
図38(a)は,一例として,非同期に受信されるシングルレートの2つのユーザ信号1および2のそれぞれ2つのビット(ビット1および3ならびにビット2および4)に対応する拡散信号を示している。ユーザ信号1のビットとユーザ信号2のビットとは,時間τだけずれている。すなわち,ビット2はビット1の開始から時間τ遅れて開始し,ビット3はビット2の開始から時間τ遅れて開始する。
【0220】
ビット1〜4のそれぞれの拡散信号をs1(t)〜s4(t)とし,重み係数をr11(x1)〜r1K(x4)とすると,前述した式(10)から,希望信号のビット番号を3として,以下の式(37)が得られる。
【0221】
【数23】
【0222】
式(18)を相関係数を求める積分表示のまま表すと,以下の式(38)になる。
【0223】
【数24】
【0224】
式(38)では,積分区間が−TからT+τに亘っている。このことは,受信信号に同期した拡散信号s1(t)〜s4(t)を使用して重み係数を求めようとすると,積分時間2T+τ(τがTに近い値を有する場合には約3T)を要することを意味する。また,ユーザ信号1のビット列を連続的に復号するには,前述したように,重み係数生成部としては,3倍の規模の回路が必要となる。
【0225】
一方,被積分関数(すなわち拡散信号)を時間的にシフトさせても,積分区間の始点と終点をそのシフト量だけ変化させれば,積分結果は同じになることを利用すると,積分の時間を特定の時間帯に集約させれば,全体の処理時間を短縮することができる。
【0226】
たとえば上記式(38)の第1式左辺の第2項は次のようになる。
【0227】
【数25】
【0228】
同ようにして,式(38)の第4式左辺の第2項は次のようになる。
【0229】
【数26】
【0230】
これら2つの式は拡散信号を1ビット時間Tだけ進めるか遅らせるかして,積分時間を0≦t≦Tにシフトした例である。式(38)のすべてについて,積分区間を0≦t≦Tにすると,式(38)は以下の式(39)になる。
【0231】
【数27】
【0232】
このような時間のシフトを図38によって説明すると,−T≦t≦0の範囲にある拡散信号s1(t)のすべておよび拡散信号s2(t)の一部分は,時間Tだけ遅らされ,図38(c)の位置にシフトする。0≦t≦Tの範囲にある拡散信号s3(t)のすべて,拡散信号s2(t)の残り部分,および拡散信号s4(t)の一部分は,図38(b)に示すようにシフトされず,そのままとされる。T≦tの範囲にある拡散信号s4(t)の残りの部分は,時間Tだけ進められ,図38(d)に示すようにシフトされる。尚,説明は,時間Tだけ“進められ”たり“遅らされ”たりと言う表現をしたが,実際の回路で行うのは,変形拡散信号生成部より,連続信号として送られてくる,変形拡散信号Σgj(t)の,対称ビットと区間に応じて特定の部分を,スイッチで選択することである。
【0233】
このように,積分区間を0≦t≦T内にシフトする変換をより一般化するために,積分区間のシフトを,図4(A)に示す観測窓長N=2,ユーザ信号数Lの受信信号に適用すると,以下の式(40)から(42)になる。(図39(a)〜(d)参照)
1≦k≦Lについては,
【0234】
【数28】
【0235】
L+2≦k≦2Lについては,
【0236】
【数29】
【0237】
希望ビットL+1については,
【0238】
【数30】
【0239】
ここで,tkは,ビット番号kのビットの0≦t≦Tにおける変換点の時刻である。
【0240】
次に,このような原理を図34または図35に示す重み係数生成部に適用した実施の形態について説明する。受信信号は,図39(a)に示すものとする。
【0241】
上記式(40)〜(42)から,図34(または,図35)に示す帰還部5012〜501K(干渉ビットに関する帰還部)の乗算器52a〜5Kaのそれぞれの第1入力端子および第2入力端子に入力される拡散信号を,0≦t≦tkとtk≦t≦Tとで元のままのを入力するか,または,遅れた,もしくは進んだものを入力させるかで切り替えることにより,シフト処理を行うことができる。
【0242】
図40は,干渉ビットに関する帰還部の1部を図示したもので,その乗算器の第1入力端子(入力1)および第2入力端子(入力2)に入力される拡散信号の対応関係を表に示したものである。
【0243】
図41は,図40に基づいて構成した重み係数生成部の構成を示すブロック図で,図35に示す重み係数生成部を基に,必要な機能追加を行ったものである。但し,図41では,図が煩雑になるのを避けるために,MMSE補正部,帰還ループ利得補正の表示を省略している。
【0244】
この重み係数生成部では,干渉ビット1〜L,L+2〜Lをそれぞれ処理する帰還部の乗算器の前段に,スイッチV1〜VL,VL+2〜V2Lがそれぞれ設けられる。
【0245】
k=1〜LのスイッチVkは,時刻tkにおいて,破線で示す第1入力端子から実線で示す第2入力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,分配器801の出力信号を後段の乗算器に出力し,tk≦t≦Tでは,分配器802の出力信号を後段の乗算器に出力する。
【0246】
k=L+2〜2LのスイッチVkは,時刻tkにおいて,破線で示す第2入力端子から実線で示す第1入力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,分配器803の出力信号を後段の乗算器に出力し,tk≦t≦Tでは,分配器801の出力信号を後段の乗算器に出力する。
【0247】
干渉ビット1〜L,L+2〜Lをそれぞれ処理する帰還部の後段に配置された乗算器(線形結合部の乗算器)の出力側には,スイッチW1〜WL,WL+2〜W2Lがそれぞれ設けられる。
【0248】
k=1〜LのスイッチWkは,時刻tkにおいて,破線で示す第1出力端子から実線で示す第2入力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,前段の乗算器の出力信号を合成器(加算器)701に出力し,tk≦t≦Tでは,前段の乗算器の出力信号を合成器(加算器)702に出力する。
【0249】
k=L+2〜2LのスイッチWkは,時刻tkにおいて,破線で示す第2出力端子から実線で示す第1出力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,前段の乗算器の出力信号を合成器703に出力し,tk≦t≦Tでは,前段の乗算器の出力信号を合成器701に出力する。
【0250】
合成器(加算器)701〜703が入力された信号を合成し,合成結果を分配器801〜803にそれぞれフィードバックする。合成器701は図39(a)の区間2に対応し,合成器702は区間1に対応し,合成器703は区間3に対応する。このように合成器の個数および区間数はN+1となる。
【0251】
合成器701〜703のそれぞれの出力信号は以下の式により表される。
【0252】
【数31】
【0253】
分配器801〜803は,入力された信号を減算器またはスイッチに分配する。
【0254】
干渉ビット1〜Lに関する帰還部の2つの乗算器の入力2には,拡散信号sk(t)の他に,sk(t−T)が入力される。また,干渉ビットL+2〜2Lに関する帰還部の2つの乗算器の入力2には,拡散信号sk(t)の他に,sk(t+T)が入力される。また,各帰還部のMFの積分時間は0〜Tまでとされる。
【0255】
以上により,第2の形態では,3T(Tはビット長)掛かっていた重み係数演算の1周期(前述したように,重み係数の演算精度を上げるためには,演算を複数周期反復する必要がある)を,第3側面ではTに縮めることができ,その結果,回路規模をさらに縮小することができる。
【0256】
以上は,処理区間をビット長(T)単位でシフトし,処理時間を短縮する原理と実施の形態について述べたが,処理区間をT/Q (Qは整数)とすると,Q>1とすることで,処理時間をさらに短縮することができる。
【0257】
まずは,Q=2の場合を説明し,Q=1と異なる側面について説明し,後に,Q>2である任意の整数に対しての実施の形態について説明する。
【0258】
図42(a)は,図38(a)と同じ拡散信号の配置を示しているが,区間の長さT/2ごとに6区間に分割している点が異なる。また,図44(b)〜(d)は,全ての拡散信号を区間3にシフトされる様子を示している。
【0259】
希望信号のビット番号を3とし,対応する拡散信号をs3(t)とする。干渉ビットに対応する拡散信号s2(t)とs4(t)の境界,すなわち干渉信号のビットの変換点が,区間3にあるか,区間4にあるかにより,取り扱いが異なる。したがって,ビット番号kが1≦k≦Mのときに,変換が区間3に存在し,ビット番号kが,M+1≦k≦Lのときに,変換点が,区間4に存在するものとすると,ビット番号kがL+2≦k≦L+Mの場合の変換点も区間3に,また,ビット番号kL+M+1≦k≦2Lのときも,変換点が区間4に存在することになる。
【0260】
図39に示すユーザ数L,観測窓長N=2の場合における,上記式(40)〜(42)に相当する式を求めると,以下の式(43)〜(47)となる。
【0261】
1≦k≦Mについては,
【0262】
【数32】
【0263】
M+1≦k≦Lについては,
【0264】
【数33】
【0265】
L+2≦k≦L+Mについては,
【0266】
【数34】
【0267】
L+M+1≦k≦2Lについては,
【0268】
【数35】
【0269】
希望ビットについては,
【0270】
【数36】
【0271】
ここで,tkは,ビット番号kのビットの変換点の時刻であり,0≦tk≦Tである。
【0272】
上記式(24)〜(28)から明らかなように,すべての積分(すなわちMFによる処理)は,0からT/2の間で完了する。
【0273】
同様にして,Q>2である整数Qに対して,1/Qビット長の区間に拡散信号をシフトさせ,T/Qの時間に処理を短縮することもできる。以下,この手法を1/Qビット法と名付けて,その手法の実施の形態について説明する。
【0274】
図45は,1/Qビット法による重み係数生成部における干渉ビットに関する帰還部および線形結合部の乗算器の部分を示すブロック図である。既に説明した1ビット法との比較を容易にするために,図46(a)に,1ビット法による重み係数生成部(図43参照)における干渉ビットに関する帰還部および線形結合部の乗算器の部分を示す。
【0275】
1/Qビット法では,反転増幅器の前段にQ個の乗算器が必要となる。また,MFの後段にも同じくQ個の乗算器が必要となる。一方,1ビット法では,図46(a)に示すように,MFの前後にスイッチViおよびWiを設けることで,MFの前後の乗算器を1つにまとめることができる。
【0276】
この理由は,1/Qビット法では,異なる拡散信号同士の乗算結果を同じ時刻で,MFに入力する必要があることによる。たとえば,式(26)の左辺の第2項および第3項において,tk≦t≦T/2では拡散信号sk(t)と,このtk≦t≦T/2と一部重なる0≦t≦T/2の時間帯では,拡散信号sk(t)を時間T/2進ませた拡散信号sk(t+T/2)の2つの拡散信号を同時にMFに入力する必要がある。一方,1ビット法では,ある拡散信号とそれを時間的にシフトさせた拡散信号とを,同じ時間帯にMFに入力することがない。
【0277】
図44を用い,L+2≦k≦L+Mの場合を例にとってさらに具体的に説明する。拡散信号s4(t)を区間3にシフトするために,拡散信号s4(t)の区間4の部分をT/2進ませ,同信号の区間5の部分の時間をT進ませる必要がある。これにより,拡散信号s4(t)は,符号▲1▼〜▲3▼で示す3つの部分に分割される。部分▲1▼および▲2▼は,時間帯が重ならないので,MFの前段および後段の乗算器を共用でき,したがって,乗算器は前段および後段のそれぞれに1つずつで足りる。
【0278】
一方,部分▲2▼は,0≦t≦T/2の時間帯を占有するので,他の部分▲1▼および▲3▼により使用される乗算器を共用できない。したがって,部分▲2▼の乗算を行う乗算器が別途必要となる。その結果,部分▲1▼および▲3▼により共用される乗算器と,部分▲2▼により使用される乗算器との,計2個の乗算器が必要となる。
【0279】
1/Qビット法に一般化すると,1/Qビット法では,1ビットに対応する拡散信号が(Q+1)個の部分に分割される。これらの部分のうち,(Q−1)個の部分の長さ(時間)はT/Qである。残りの2つの部分は,時間的にオーバラップせず,両者を合わせて調度T/Qの長さになるので,これら2つの部分を処理する乗算器が,図45における最上段の乗算器7001および8001に対応する。乗算器7001の前段および8001の後段には,スイッチがそれぞれ設けられ,2つの部分が切り替えられて処理される。乗算器7002〜700Qおよび8002〜800Qは,(Q−1)個の部分を処理する乗算器である。このようにして,1/Qビット法では,乗算器が合計2Q個必要となる。
【0280】
なお,2つのスイッチをなくして,時間がオーバラップしない2つの部分を個別に処理する2つの乗算器を設けることもできる。この場合は,乗算器の数は合計2Q+2個となる。また,1ビット法においても同ようにして,図46(b)に示すように,スイッチをなくして,2つの乗算器を設けることもできる。
【0281】
図45の破線で囲まれた回路を回路Jとすると,1/Qビット法による重み係数生成部は,図47に示す構成となる。この重み係数生成部は,K個の回路J1〜JK,P個の合成器9001〜900P,およびP個の分配器9011〜901Pを有する。図面が煩雑になるのを避けるために,回路J1〜JKと合成器9001〜900Pとの結線を接続網Rとして示している。分配器9011〜901Pと回路J1〜JKとの続接も続接網Lとして示している。
【0282】
ここで,Pは観測区間(観測窓長Nの場合にはN+1ビットの範囲)の分割数であり,図44の例では,P=6である。
【0283】
回路J1〜JKの接続網Rへの出力信号は,図45から明らかなように,シフトされた拡散信号と重み係数との乗算結果である。この出力信号は,シフト前の拡散信号が属する区間に対応する合成器に接続される。したがって,接続網Rの結線は,拡散信号の配置が決まれば,一意に定まる。
【0284】
分配器9011〜901Kには,合成器9001〜900Pの出力信号がフィードバック信号をして入力される。そして,分配器9011〜901Kは,合成器の出力を接続網Lを介して回路J1〜JKに分配する。右側の合成器と左側の分配器は,同じ区間同士のものが1対1に接続され,系全体が帰還ループを形成する。接続網Lの結線構造は,接続網Rと対称となる。
【0285】
変形拡散信号部12からは、拡散信号g1(t)〜gL(t)の他に、それらに対して、整合フィルタの積分時間の1/Qの整数倍だけ進んだ、または遅れた複数の信号(変形拡散信号g1(t)〜gL(t)または、変形拡散信号Σgj(t))が出力され、回路網Sに入力する。回路網Sの出力は、重み係数生成部の乗算器(図43では、乗算器7001〜700Qおよび乗算器8001〜800Q)に接続される。前記乗算器に入力する拡散信号の長さは、1/Qビットまたはそれ以下なので、変形拡散信号s1(t)〜sK(t)または変形拡散信号Σsj(t)と名付けるが、変形拡散信号Σsj(t)は、回路網Sの入出力間に設けられたスイッチの接続のタイミングと長さを変えることで生成される。スイッチの制御は、(図37には図示されない)外部の制御回路によって行われる。
【0286】
非同期系のシステムにおいては、受信信号が特定の区間に集中することがあり得る。従って、合成器への入力数は、対応する区間によって大きかったり、小さかったりする。その場合には、回路網Rの入出力の端子数を増やし、入出力の端子間にスイッチを設け、合成器への必要な経路の数を確保するよう(図37には図示されない)、外部の制御回路によって行われる。回路網Lに対しても、同様な処置が施される。
【0287】
次に,第4の形態の説明で示した,装置構成に基づいてで,実際の動作をシミュレーションによって確認したので,その結果を説明する。
シミュレーションのモデルは,N=2,L=2,K=N×L=4,ビット配置と拡散信号パターンは,図21に示した,第1,第2の形態に即して行ったシミュレーションと同じである。第4の形態として説明した,1ビット法を適用して,希望信号ビット(ビット番号3)の区間を区間2,とし,その前の区間である区間1と,後の区間である区間3にある拡散信号を,全て区間2にシフトした。装置構成は,図41に示すものである。乗算器の入力(図40で定義した入力2)には,各拡散信号を周期Tで繰り返し入力し,帰還ループが定常状態に達し,正しい重み係数が求まるまでの様子を図46に示す。縦軸は,重み係数の値で,横軸は,ビット長Tで規格化した時間で,希望信号ビット(ビット番号3)の始まりをt=0とした。モデルが単純なため,収れんの様子が分かり難いので,重み係数の厳密解(相関係数行列の逆行列として,求まる。図22(c)参照)からの偏差を示したのが,図47である。この図から,第3,第4の形態で示した技術によって,相関形受信に必要な重み係数が求まることが分かる。
【0288】
<移動機の構成>
次に,本発明の実施の形態による移動機200について説明する(第5の形態)。移動機200の受信装置の構成は,基本的には無線基地局装置120と変わらないが,異なる点は,自局宛の信号のみを復号すればよいので,逆行列要素生成部,線形結合部,および判定回路の数は少なくなる。また,同じ基地局から送られる自局宛と他局宛の信号は,通常,同期して送られ,かつそれらは直交している(逆拡散後の信号に干渉信号として現れない)ので,それらの信号の,伝送経路が異なり,遅延時間が違ってきた場合のみ,干渉信号源となる。
【0289】
逆行列要素生成部51についても,無線基地局装置120について述べた種々の形態の何れも適用することができるが,図35の線形結合部の出力である拡張拡散信号q1(t)を,重み付け係数を求めると同時に,受信信号の逆拡散に使用することが,整合フィルタ3の構成を簡略化するので,その方法について説明する。
【0290】
図48は,移動機200の構成を示すブロック図である。この図では,ユーザ信号数(ユーザ数)L=1の復号に必要な部分のみを示している。また,第1〜4の形態による無線基地局装置120と同じ構成要素には同じ符号を付し,その詳細な説明を省略する。
【0291】
図48に示す移動機200には,逆行列要素生成部51〜5Kに代えて,(N+1)個の重み係数生成部191,19L+1,192L+1,…,19NL+1が設けられ,整合フィルタバンク3に代えて拡張整合フィルタバンク13が設けられる。また,線形結合部61〜6Kは省略される。
【0292】
ここで,Nは図4に示す受信信号の観測窓長(図4(A)ではN=2,(B)ではN=3),Lはユーザ信号数(ユーザ数)であり,拡散信号生成部4の符号の下付き符号“1”,“L+1”,“NL+1”等は,各ユーザ信号の観測窓内におけるビット番号に対応している。
【0293】
図49は,拡張整合フィルタバンク13の構成を示すブロック図である。合成部13は,(N+1)個の乗算器1301,130L+1,1302L+1,…,130NL+1,(N+1)個のMF1311,131L+1,1312L+1,…,131NL+1,(N+1)個のSHC1321,132L+1,1322L+2,…,132NL+1,を有する。
【0294】
重み係数生成部191,19L+1,192L+1,…,19NL+1は,拡張拡散信号q1(t),qL+1(t),q2L+1(t),…,qNL+1(t)をそれぞれ出力する。ここで,拡張拡散信号qi(t)は,式(32)により表される。
【0295】
拡張拡散信号q1(t),qL+1(t),q2L+1(t),…,qNL+1(t)は,合成部13の乗算器1301,130L+1,1302L+1,…,130NL+1の第2入力端子にそれぞれ入力される。乗算器1301,130L+1,1302L+1,…,130NL+1は,第1入力端子に入力されたベースバンド信号Y(t)と第2入力端子にそれぞれ入力された拡張拡散信号q1(t)〜qNL+1(t)をそれぞれ乗算し,乗算結果をMF1311〜131NL+1にそれぞれ与える。乗算結果は,MF1311〜131NL+1によってそれぞれ積分される。積分時間は,ビット長をTとすると,(N+1)Tである。積分結果はSHC1321〜132NL+1に与えられる。
【0296】
SHC1321〜132NL+1は,それぞれの観測窓の終端でサンプリングした値を出力する。
【0297】
拡張整合フィルタバンク13の出力は,判定回路71によって,離散的値または,符号が識別される。
【0298】
尚,ここで使用する拡散信号は,重み付け係数を求めるためだけではなく,受信信号の逆拡散にも使用するので,受信信号に対して,チップ同期(チップ長の数分の1以下の精度で同期している)している必要がある。重み付け係数の演算精度を高めるために,複数回反復する場合は,最終回を受信信号と同期させる。図36の例では,(a)の場合は,第3回目が受信信号とチップ同期させる。ただし,最終回を除いては,(b)に示した,時間シフトした変形拡散信号を用いて,演算を行い,その収れん値を最終回の初期値として演算を反復することは可能である。
【0299】
以上,第1の形態から第5の形態まで説明したが,それらに対して共通の変形例について,説明する。
【0300】
希望信号のビット番号をkとし,希望ビットに対する重み係数xkで,他のすべての重み係数を割った値を,新たな重み係数xj´=xj/xk(j=1,2,…,K)として,線形結合部6に入力すると,その出力は,x1,x2,…,xKを入力した場合に比べて,1/xK倍されたものとなる。従って,xkをビット毎に求める代わりに,予測される平均値を用いてレベルの変化を無視するか,送信される変調信号に振幅情報がない(例えば,BPSK)場合には,xkを定数(例えば1)とすることができる。この場合,希望信号ビットに対する重み係数を求める装置(図13に示した第1係数生成部,図34に示した,希望ビットに対する帰還部5011)を省略することができる。
【0301】
図17に示した帰還ループの利得に応じた誤差の補正(利得補正),は,図34(または図35)に示した整合フィルタ(MF)51b,52b,…,5Kbに対して適用しても,同じ効果がある。すなわち,整合フィルタ(MF)51b,52b,…,5Kbの出力をそれぞれの入力に加える。このとき,フィルタの入出力で形成される局所的帰還ループの利得は,それぞれの整合フィルタの出力から入力へのパスに,増幅器か減衰器を入れて調整する。
【0302】
帰還部と線形結合部で形成される帰還ループにおいて,反転増幅器とLPF(または整合フィルタ)の接続順を変えることができる(図13の例では、増幅器51gとLPF51hの接続順を変える。図14の例では、増幅器52gとLPF52hの接続順を変える)。また,反転増幅器は,帰還ループ内であれば位置を変えることができる。ただし,帰還ループ内で,加算復は,減算を行う箇所があれば,そのレベルと符号を変える必要がある。
【0303】
図34に示した回路で,合成器51eの出力から,帰還部5011〜501Kるの入力までの間に,増幅器または,反転増幅器を挿入し,各帰還部(5011〜501K)内の反転増幅器の一部または全部を省略することができる。但し,増幅器を入れた場合は,帰還ループ内の何れかの箇所に反転器を挿入して,負帰還ループとして動作させる必要がある。
【0304】
帰還ループ内の何れかのコンポーネント(例えば、図13、図34の乗算器51d1〜51dk、図34の乗算器51a〜5Ka,MF51b〜MF5Kb)が能動素子で形成され,反転増幅器なしで,帰還ループの利得が確保できる場合は,反転増幅器を反転減衰器に置き換えることができる。
【0305】
これまで述べた実施の形態は本発明を無線通信に適用したものであるが,本発明は無線通信だけでなく,有線通信にも適用することができる。
【0306】
【発明の効果】
本発明の,特に請求項1〜3に記載の手法を用いた場合には,干渉除去の対象となるビット数をKとすると,従来Kの3乗に比例していた回路規模を,Kの2乗に比例した規模に縮小できる。
【0307】
また,希望信号1ビットの復号に必要なK個の重み係数を求める時間を短縮でき,相関係数を求める整合フィルタの積分時間も短縮できる。
【0308】
さらに,Kに比べ,復号するデータ列数Mが小さい場合(移動機に適用した場合がこれに該当する)には,整合フィルタの数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による移動通信ネットワークシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】無線基地局装置により受信される非同期かつマルチレートの場合のDS−CDMA方式による信号の構成を示す。
【図3】無線基地局装置により受信されるDS−CDMA方式による信号の構成を示し,(A)は非同期の場合の受信信号の構成を,(B)は同期している場合の受信信号の構成をそれぞれ示す。
【図4】観測窓の概念を示す図で,(A)は観測窓長N=2,ユーザ数Lのビット列を示し,(B)は観測窓長N=3,ユーザ数Lのビット列を示す。
【図5】無線基地局のマルチユーザ受信装置の構成を示すブロック図である。
【図6】拡散信号とバースト拡散信号の関係を示す。
【図7】整合フィルタバンクの詳細な構成を示すブロック図である。
【図8】相関係数を求めるための整合フィルタバンクの構成を示すブロック図である。
【図9】相関係数を求めるための整合フィルタバンクの他の構成を示すブロック図である。
【図10】拡散信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図11】第1の形態による無線基地局装置(特にマルチユーザ受信部)の構成を示すブロック図である。
【図12】第1の形態における重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図13】重み係数生成部の第1係数生成部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図14】重み係数生成部の第2係数生成部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図15】線形結合部の構成を示すブロック図である。
【図16】利得補正を行った第1係数生成部の帰還部の構成を示す図である。
【図17】利得補正を行った第1係数生成部の帰還部の他の構成を示す図である。
【図18】MMSE補正を行う箇所を変更した第1係数生成部の帰還部の構成を示す図である。
【図19】MMSE補正を行う箇所を変更した第1係数生成部の帰還部の他の構成を示す図である。
【図20】図13に示した第1係数生成部の帰還部の他の構成を示す図である。
【図21】シミュレーションに用いたユーザ信号とそれに対応する拡散信号の波形を示す図である。
【図22】シミュレーションに用いた拡散信号のチップ列と相関係数行列の逆行列の具体的数値を示す図である。
【図23】シミュレーションの結果である,重み係数の時間変化を示す図である。
【図24】シミュレーションの結果である,重み係数の厳密解からの偏差の時間変化を示す図である。
【図25】シミュレーションの結果である,重み係数の厳密解からの偏差の時間変化を示す図である。
【図26】第1の形態(変形例)による無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図27】相関係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図28】重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図29】第1係数生成部の変換の第1ステップで,サンプル保持回路を除去した構成を示す。
【図30】第1係数生成部の変換の第2ステップで,重み係数を乗じる位置をMFの出力から入力に変更した構成を示す。
【図31】第1係数生成部の変換の第3ステップで,MFと帰還ループフィルタを置換した構成を示す。
【図32】第1係数生成部の変換の第4ステップで,乗算器による乗算の順序を入れ換えた構成を示す。
【図33】第2係数生成部の変換後の構成を示すブロック図である
【図34】重み係数生成部(第2の形態)の詳細な構成を示すブロック図である。
【図35】重み係数生成部(第2の形態)の詳細な構成を示すブロック図である。
【図36】重み係数生成部における反復演算についての2つの手法を示す図である。
【図37】変形拡散信号生成部を有する第3の形態による無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図38】(a)は,非同期に受信されるシングルレートの2つのユーザ信号のそれぞれ2つのビットに対応する拡散信号の位置を示し,(b)〜(d)は,これらの拡散信号を希望信号ビットのある区間(1ビット長)にシフトさせたものを示している。
【図39】(a)は,L個のユーザ信号の各ビットに対応する拡散信号の位置を示し,(b)〜(d)は,各拡散信号を希望信号ビットのある区間(1ビット長)へシフトした状態を示す。
【図40】重み係数生成部(第2の形態)の帰還部における乗算器の2つの入力と区間の対応関係を示す。
【図41】第3の形態における重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図42】(a)は,図38(a)と同じ拡散信号の配置を示し,区間を1/2ビットごとに6区間に分割している点が異なる。(b)〜(d)は,各区間の拡散信号を希望信号ビットの前半である区間3にシフトされた様子を示す。
【図43】1/Qビット法による重み係数生成部における帰還部および線形結合部の乗算器の構成を示すブロック図である。
【図44】(a)および(b)は1ビット法による帰還部および線形結合部の乗算器の構成を示す。
【図45】1/Qビット法による重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図46】1ビット法を検証するために行ったシミュレーションの結果(重み係数の時間変化)を示すグラフである。
【図47】シミュレーションの結果を重み係数の厳密解からの偏差で示したグラフである。
【図48】本発明の実施の形態による移動機の構成を示すブロック図である。
【図49】拡張拡散信号による逆拡散を行うための整合フィルタバンクの構成を示す図である。
【符号の説明】
1201〜1204 無線基地局装置。
200 移動機
3 整合フィルタバンク
4 拡散信号生成部
51〜5K,91〜9K,181〜18K,191〜19NL+1 重み係数生成部
61〜6K,512,522,11a1〜11aK 線形結合部
8 MMSE補正部
10,511,521 相関係数生成部
11 重み係数演算部
12 変形拡散信号生成部
13 拡張整合フィルタバンク
14 逆行列演算部
15,10a1〜10aK 相関係数整合フィルタバンク
16 変形整合フィルタバンク
513,523,11b1〜11bK 帰還部
3a1〜3aK,51a1〜51aK,51d1〜51dK 乗算器
3b1〜3bK,51b1〜51bK 整合フィルタ(MF)
51g,52g 反転増幅器
51e,52e,701〜70p 合成器
801〜80p 分配器
【発明の属する技術分野】
本発明は,同じ時間に,同じ周波数を複数のユーザが共用する符号分割多元接続(CDMA)システムにおけるマルチユーザ受信機に関するもので,特に,希望信号に対する他の信号の干渉をそれらの拡散コード情報に基づいて除去または抑制するマルチユーザ受信機に関する。また,本発明は,このようなマルチユーザ受信機を備えた基地局装置および移動機に関する。
【0002】
【従来の技術】
符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)システムでは,同じ時間における同じ周波数を複数の異なるユーザが使用する。したがって,複数の信号が相互に干渉し合う多元接続干渉(MAI:Multiple Access Interference)が発生する。
【0003】
また,送信機から送信された時点では同一の信号が,一方で直接受信機に受信され,他方で反射体(たとえばビル等)により反射された後で受信機に受信されるとマルチパス干渉(MPI:Multiple Path Interference)が発生する。これらの干渉により,受信機側では,受信したい信号(以下「希望信号」という)に対して他の信号が雑音源となる。
【0004】
このため,CDMAシステムでは,希望信号から干渉信号成分を除去または抑制することが,品質の良い希望信号を復号するために重要となる。
【0005】
このような干渉信号成分を除去または抑制する受信機の中で,特に希望信号と干渉信号の拡散コード情報を利用するものは,一般にマルチユーザ受信機と呼ばれていが,このような受信機として,従来から復相関検出器(デコリレータ:decorrelator)または最小平均二乗誤差(MMSE:Minimum Mean−Square Error)検出器がよく知られている(たとえば,非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0006】
【非特許文献1】
Verdu,S著「マルチユーザ検出(Multiuser Detection)」ケンブリッジ大学プレス(Cambridge, U.K: Cambridge Univ. Press),1998年
【0007】
【非特許文献2】
Moshavi, S.著「DS−CDMA通信のためのマルチユーザ検出(Multi−user detection for DS−CDMA communications)」IEEEコミュニケーションマガジン(IEEE Communications Magazine),第34刊,1996年10月10日号,pp.124−136
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
復相関検出器(デコリレータ)およびMMSE検出器は,整合フィルタバンクの出力数(すなわち処理対象のビット数)をKとすると,K×K行列の相関係数行列(または相関係数行列の対角要素を背景雑音と干渉信号電力で補正した行列)の逆行列を,整合フィルタバンクからのK個の出力信号に乗じることによって,希望信号に含まれる干渉信号成分を除去または抑圧する。
【0009】
しかし,逆行列の演算は,一般に複雑で時間を要するので,通常のディジタルプロセサでこの演算を行うと,受信速度に追従した実時間処理が難しくなる。ディジタルプロセサの回路規模は,Kの3乗に比例して大きくなるので,Kが大きくなると,一定数の乗算器とメモリを使用して,同じ乗算器を繰り返し使用することになるので,受信信号の速度に合わせた実時間処理が難しくなる。その結果,干渉除去または抑制の対象となるKの値を制限することになると,干渉除去または抑制の性能が限られたものとなる。
【0010】
一方,周期の短い拡散信号を用いて,あらかじめ計算しておいた1周期分の値を繰り返し使用する方法もあるが,一般に,非同期のシステムでは,周期の長いコードを使う場合が多く,この方法は有効な解決策とはならない。
【0011】
本発明は,このような背景に鑑みなされたものであり,その目的は,拡散信号の周期の長短を問わず,多元接続干渉(MAI)の除去または抑制をリアルタイムで行うことができるマルチユーザ受信機を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために,本発明の第1の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)を生成する,拡散信号生成部と,
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングして出力する整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,前記拡散信号間の相関係数を要素とする,K×K行列の相関係数行列Rを生成する相関係数生成部,または前記Rの対角要素に,背景雑音電力密度と前記対角要素に対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例する値を加えた,変形相関係数行列R´を生成する変形相関係数生成部と,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対する,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
kを希望信号のビット番号とすると,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の逆行列を演算し,前記逆行列の第k行または第k列を,前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)とし,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対応する受信信号が存在する区間を含む観測区間を,所定の長さτで均等に分割して,最も早い時間帯から順番に番号を付与し,区間1,区間2,…,区間Pと呼び,
前記拡散信号生成部は,前記拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)に対して,それぞれτの整数倍ずつ進んだ,または遅れた,複数の変形拡散信号,または前記変形拡散信号全体を,所定の時間進めるか,遅らせた信号を生成し,
前記P個の区間のひとつを区間p0とし,
p<p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の,区間pに属する部分を時間(p0−p)τだけ遅らせたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
p>p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の区間pに属する部分を時間(p−p0)τだけ進ませたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
区間p0に関しては,拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)が区間p0に属する部分を拡散信号sip(t)とし,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数または前記重み係数の演算を,前記拡散信号sip(t)(j=1,2,…,K,p=1,2,…,P)と,積分時間が前記区間長と同じτである複数の整合フィルタを使って,区間p0において行う。
【0013】
本発明の第2の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号を生成する,拡散信号生成部と
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングした値を出力する,整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)からK個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記重み係数生成部は,
前記K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)と,K個の重み係数xj(j=1,2,…,K)をそれぞれ乗算して,出力sj(t)xjを得るK個の乗算器j(j=1,2,…,K)と,それらの出力を全て加え合わせる合成器で構成される線形結合部と,
前記線形結合部の出力を前記拡散信号のおのおので乗算する第2乗算器j(j=1,2,…,K)と,
K個の整合フィルタj(j=1,2,…,K)を備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
前記線形結合部の出力から,希望信号ビットに対応する拡散信号sk(t)を減じてから,前記拡散信号sk(t)を第2乗算器kによって乗算し,その出力を反転増幅器で反転して,整合フィルタkに通した出力に所定の定数を加算した出力を重み係数xkとして,前記線形結合部の乗算器kに接続し,
前記線形結合部の出力に,前記拡散信号sk(t)と異なるK−1個の前記拡散信号sj(t)を第2乗算器jによって乗算し,その出力を反転増幅器で反転して,それぞれを整合フィルタjに通した出力をxjとして,前記線形結合部の乗算器jに接続した構成,
または,上記の構成に加えて,乗算器j(j=1,2,…,K)の出力sj(t)xjに,背景雑音電力密度とビット番号jに対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例した値を乗じて,第2乗算器j(j=1,2,…,K)の入力側に加算する構成を有する。
【0014】
本発明の第3の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号fj(t)(j=1,2,…,L)を生成する,拡散信号生成部と,
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングして出力する,整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の出力(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対応する受信信号が存在する区間を含む観測区間を,所定の長さτで均等に分割して,最も早い時間帯から順番に番号を付与し,区間1,区間2,…,区間Pと呼び,
前記拡散信号生成部は,前記拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)に対して,それぞれτの整数倍ずつ進んだ,または遅れた,複数の変形拡散信号,または前記変形拡散信号全体を,所定の時間進めるか,遅らせた信号を生成し,
前記重み係数生成部は,
積分時間が前記区間長と同じτであるK個の整合フィルタj(j=1,2,…,K)と,
多入力−1出力のP個の合成器p(p=1,2,…,P)と,
1入力−多出力のP個の分配器p(p=1,2,…,P)と,
前記P個の分配器pと前記K個の整合フィルタjとを接続する第1の接続網Lと,
前記K個の整合フィルタjと前記P個の合成器pとを接続する第2の接続網Rと,
複数の乗算器とを含み,
前記複数の乗算器を,ビット番号iと区間pに対応付けて,第1の乗算器ipおよび第2の乗算器ipと名付け,
前記P個の区間のひとつを区間p0とし,
p<p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の,区間pに属する部分を時間(p0−p)τだけ遅らせたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
p>p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の区間pに属する部分を時間(p−p0)τだけ進ませたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
区間p0に関しては,拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)が区間p0に属する部分を拡散信号sip(t)とし,
拡散信号sip(t)(j=1,2,…,K,p=1,2,…,P)と重み係数xj(j=1,2,…,K)とを,それぞれ第1の乗算器jpで乗算した結果を第2の接続網Rを経て合成器pで合成した出力を,
分配器pと,第1の接続網Lを経て出力し,
kを希望信号のビット番号とすると,
i=kであれば,前記第1の接続網Lの出力から変形拡散信号sip(t)を減じたものと拡散信号sip(t)とを,第2の乗算器ipで乗算し,
iがkと異なれば,前記第1の接続網Lの出力と拡散信号sip(t)とを第2の乗算器ipで乗算し,
前記第2の乗算器の出力を反転増幅器を経て整合フィルタiに入力し,前記整合フィルタiの出力に,i=kであれば,所定の定数を加え,
iがkと異なれば,そのままを重み係数xiとして,前記第1の乗算器ipに接続することを,全てまたは一部のpに対して行う構成を有し,
または,上記の構成に加え,
第1の乗算器ipの出力sjp(t)xjに,背景雑音電力密度とビット番号jに対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例した値を乗じて,前記第2乗算器jpの前記第1の回路網L側の入力に加算する構成とすることを,全てまたは一部のpに対して行う構成を有する。
【0015】
本発明の第4の側面によるマルチユーザ受信機は,DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号を生成する,拡散信号生成部と
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングした値を出力する整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,前記拡散信号間の相関係数を要素とする,K×K行列の相関係数行列Rを生成する相関係数生成部,またはRの対角要素に,背景雑音電力密度と前記対角要素に対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比を加えた,変形相関係数行列R´を生成する変形相関係数生成部と,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対する,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の第j列または第j行(a1j,a2j,…,aKj)と,重み係数(x1,x2,…,xK)の各々の積を作り出す,K個の乗算器と,それらの出力を全て加え合わせて,a1jx1+a2jx2+…+aKjxKを作り出す合成器で構成されるK個の線形結合部j(j=1,2,…,K)とを,備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
線形結合部kの出力から第1の定数を減じ,反転増幅器で反転して低域フィルタに通し,その出力に第2の定数を加えた出力を,xkとして前記K個の線形結合部に接続し,
j≠kであるK−1個の線形結合部jの出力を反転増幅器で反転して低域フィルタに通した出力を,xjとして,前記K個の線形結合部に接続した構成を有する。
【0016】
本発明による無線基地局装置は,移動通信ネットワークシステムに設けられる無線基地局装置であって,請求項1から17のいずれか1項に記載のマルチユーザ受信機を備えている。
【0017】
また,本発明による移動機は,移動通信ネットワークに接続して無線通信を行う移動機であって,請求項1から17のいずれか1項に記載のマルチユーザ受信機を備えている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下では,本発明を移動通信ネットワークシステムにおける無線基地局装置および移動機に適用した実施の形態について説明する。
【0019】
まず,移動通信ネットワークシステムの全体構成について説明した後,符号分割多元接続(CDMA:Code Division Multiple Access)方式における復相関検出器(Decorrelating Detectorまたは,デコリレータ)とMMSE検出器に代表される,相関係数行列を利用したマルチユーザ受信機(復相関形受信機と総称する)の原理,ならびにこの原理を実現するための無線基地局装置および移動機のそれぞれの構成および動作について説明する。
【0020】
<移動通信ネットワークシステムの構成>
図1は,本発明の実施の形態を示す移動通信ネットワークシステムの全体構成図である。この移動通信ネットワークシステムは,大別すると,無線アクセスネットワーク(RAN)100,移動機(UE)200,およびコアネットワーク(CN)300から成り立つ。
【0021】
無線アクセスネットワーク100は,複数(図1に示した例では2つ)の無線ネットワーク制御装置(RNC)1101および1102,ならびに複数(図1に示した例では4つ)の無線基地局装置(BTS)1201〜1204から成り立つ。
【0022】
無線ネットワーク制御装置1101は,一方でコアネットワーク300に接続され,他方で無線基地局装置1201および1202に接続されている。無線ネットワーク制御1102は,一方でコアネットワーク300に接続され,他方で無線基地局装置1203および1204に接続されていると同時に,無線ネットワーク制御装置1101とも接続されている。
【0023】
無線基地局装置1201〜1204は,それぞれ1または複数のサービスエリア(セル)をカバーし,セル内に存在する移動機200と無線により通信を行う。この無線による通信は,有限の周波数帯を複数の無線装置が共有するため多元接続方式によって行われるが,CDMA方式,特に直接拡散(DS:Direct Sequence)CDMA(DS−CDMA)方式は,多元接続方式の中の代表的な方式である。
【0024】
無線基地局装置1201および1202は,無線ネットワーク制御装置1101に接続され,同装置によって制御される。また,無線基地局装置1201および1202は,コアネットワーク300からの通信データを無線ネットワーク制御装置1101から受信し,受信した通信データを宛先の移動機200に送信するとともに,移動機200からの通信データを宛先に応じて,無線ネットワーク制御装置1101を介してコアネットワーク300に送信する。同様にして,無線基地局装置1203および1204は,無線ネットワーク制御装置1102に接続され,同装置によって制御される。また,無線基地局装置1203および1204は,コアネットワーク300からの通信データを無線ネットワーク制御装置1102から受信し,受信した通信データを移動機200に送信するとともに,移動機200からの通信データを宛先に応じて,無線ネットワーク制御装置1102を介してコアネットワーク300に送信する。
【0025】
このようにして,移動機間の通信,移動機とコアネットワーク300に接続された他の端末装置との間の通信が行われる。
【0026】
なお,以下では,無線基地局装置1201〜1204を,無線基地局装置120と総称する。
【0027】
<DS−CDMA方式による信号の構成>
DS−CDMA方式による通信では,同じ時間に,同じ周波数を複数のユーザが共用し,ユーザ間の信号の分離は,それらのユーザに固有の拡散コード(または拡散信号)によって行う。 無線基地局装置120には,符号多重化変調された複数(Lとする)のビット列が受信される。個々のビット列は,すべて異なるユーザ(移動機)から送信された場合もあるし,同じユーザ(移動機)から送信された場合もある。また,同じ移動機から送信された同一の信号が,マルチパスによって無線基地局装置120に受信され,異なったビット列と見なされる場合もある。この様な訳で,ビット列とユーザとは,必ずしも,1対1に対応していないが,以下の説明では,ビット列を,慣用に倣って,“ユーザ信号”と呼ぶことにする。
【0028】
図2は,無線基地局装置120によって受信されるDS−CDMA方式による非同期,マルチレート伝送の場合の構成を示すが,ユーザ信号1,2,および3は,同一の送信レートで送信され,ユーザ信号4は,ユーザ信号1〜3の2倍の送信レートで送信されている例である。
【0029】
図3(A)に示すようにユーザ信号のビットの開始時刻が一致していないことを「非同期」といい,図3(B)に示すように,各ユーザ信号のビットの開始時刻が一致していることを「同期」と言うが,図3(A)は非同期,単一レートの場合の受信信号の構成を,図3(B)は同期,単一レートの場合の受信信号の構成をそれぞれ示している。
【0030】
復相関形受信機の動作原理を説明するには,観測窓長(Observation Window Size)という概念が必要なので,以下にそれを説明する。復相関形受信機では,希望信号のある1ビット(希望ビット)を復号するのに,そのビットの周辺の複数のビット間の相互干渉を利用して,干渉信号成分を抑圧するが,どの範囲までの周辺ビットを利用するかを示す尺度が,観測窓長である。図4は,図3(A)の,非同期,単一レートの場合の例を,周辺ビットを希望ビットからの時間差の順に従って並べ換え,各ビットに番号を付けたものである。図4(A)の例は,ユーザ数L,観測窓長2ビットで,干渉抑圧に利用する希望ビットと周辺ビットの合計は,N×L=2Lで,希望ビットは,通常,全てのビットの中間に選ぶので,ビット番号L+1またはLが希望ビットとなる。図4(B)は,観測窓長3ビットの例で,同様に,ユーザ数Lに対して,総合ビット数は,N×L=3Lとなる。図3(B)の様に,同期している場合には,希望ビットと同じ時間帯のビット(ビット番号2,5,・・・,K−1)以外のビットは干渉抑圧に寄与しないので,観測窓長は,1ビットとなる。但し,同期系では,通常,拡散コードに直交コードを用いて,ビット間の分離を行うので,観測窓長1ビットの同期系復相関形受信機は,理論上の性能比較の基準となることはあっても,実用上はあまり意味が無い。
【0031】
図2に示す,非同期かつマルチレートの場合であっても,所定のウィンドウ幅に含まれるユーザ信号(1〜4)の各ビット(番号1,2,・・・16)を独立したバースト信号として取り扱うことによって,復相関形受信アルゴリズムを適用することができる。
【0032】
<復相関形マルチユーザ受信機の原理>
通常,複数の移動機からのユーザ信号は,無線基地局装置120により受信される時点で同期していないので,以下では,非同期の場合(シングルレートとマルチレートの双方を含む。)における干渉除去または抑制の原理について説明する(同期系は,非同期系の一形態として内包される)。
【0033】
図5に示す無線基地局装置120は,受信信号を周波数変換器2によって,ベースバンド信号に変換(同期キャリアによる同期検波を含む)した後,受信信号から生成したユーザ信号(または,データ列)毎に異なる複数(L個とする)の拡散信号によって,受信信号を逆拡散し,それをL個の整合フィルタに通し,最適サンプリング時点(各ビットが整合フィルタに入力し終わる時点)でサンプリングした複数の出力(この数をK個とする)に対してそれぞれK個の重み付け係数を乗じ,それらの全てを足し合わせた結果に対して,符号判定,または離散的レベルの判定を行って,復号出力を得る(前者を硬判定,後者を軟判定と呼ぶ)。
【0034】
K個の重み付け係数は,前記判定の前の信号に,干渉信号成分が含まれないか,または,干渉成分と背景雑音の電力の和が最小になる条件から決定されるが,受信機の中で,前記重み付け係数を求める回路が最も複雑で,かつ規模も大きいものとなるので,この回路を如何にして小規模なものにできるかが,実用化の最大のポイントとなる。
【0035】
単一レートで,各ユーザ(データ列)に対して,同じ観測窓長を適用した場合には,図4に示すように整合フィルタの数Lに対して,サンプリングした出力の数は,K=N×Lとなる。L個の拡散信号は,図6(A)に示すように,連続信号であるが,以下の議論では,簡単のため。図6(B)に示すように,拡散信号も各ビットに対応した長さのバースト信号s1(t),s2(t),…,sk(t)として,話を進める。
【0036】
このようなK個のビットからなる受信信号と背景雑音の和をY(t)とし,第k番目(k=1〜K)のビットの受信振幅をWk,変調信号をdk,拡散信号をsk(t),背景雑音をn(t)とすると,Y(t)は以下の式(1)で表される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで,
【0039】
【数2】
【0040】
と置くと(j=1〜K),yj, zjおよびaijは,それぞれ,整合フィルタ(matched filter)の出力信号,整合フィルタ出力に含まれる雑音成分および相関係数を表す。
【0041】
ここで,積分区間を−∞から+∞としているが,拡散信号をバースト信号として取り扱うので,積分は,そのバースト信号のある,有限の区間で行われる。
【0042】
式(1)と式(2)から,整合フィルタの出力信号yjは以下の式(3)により表される。
【0043】
【数3】
【0044】
式(3)を行列で表せば,以下の式(4)となる。
【0045】
【数4】
【0046】
式(4)をさらにベクトルで表記すると,以下の式(5)となる。
【0047】
【数5】
【0048】
ここに,ベクトルy,R,W,d,およびzはそれぞれ以下の通りである。
【0049】
【数6】
【0050】
行列Rは相関係数行列と呼ばれ,K×K行列である。また,aij=ajiであるので,行列Rは対称行列である。
【0051】
ここで,希望信号を取り出す手法としては,デコリレータ(Decorrelator)または復相関検出器(Decorrelating Detector)のように,判定前の信号に含まれる干渉信号成分を零にする第1の方法と,MMSE検出器(Minimum Mean−SquareError Detector)のように,背景雑音も考慮して,干渉雑音および背景雑音の電力の和を最小にする第2の方法とがある。以下,これら第1および第2の方法の各原理について説明する。
【0052】
(1)第1の手法
第1の方法は干渉雑音を零にする方法である。干渉雑音を零にするためには,以下の式(6)に示すように,上記式(4)(または式(5))の両辺に相関係数行列Rの逆行列R−1を乗算すればよい。これにより,右辺の第2項で表される背景雑音を含んだ,希望信号Widiが得られる。
【0053】
【数7】
【0054】
(2)第2の手法
第1の方法では,干渉信号成分を零にするが,背景雑音がある場合には,その成分を増大させてしまう雑音増大(Noise Enhancement)と呼ばれる現象がある。第2の方法は,上記の欠点を補うために,干渉雑音および背景雑音の合計を最小にする方法で,相関行列の対角要素に,背景雑音の電力密度σ2とビット当たりの干渉信号電力Wk 2の比σ2Wk −2を加えた行列R+σ2W−2(=R´とする)を行列Rに代わって用いればよいことが知られている。すなわち,式(6)の代わりに以下の式(7)を用いるのが第2の方法(MMSE検出法)となる。
【0055】
【数8】
【0056】
以上は,復相関検出器もMMSE検出機も,K×K行列の逆行列を求め,それを整合フィルタ出力に乗じることによって,Kビットのデータを全て復号できることを示している。
【0057】
(3)希望信号の1ビットの復号に必要なK個の要素
相関検出器もMMSE検出器も,K×K行列の逆行列を求め,それを整合フィルタの出力に乗じることで,干渉信号成分を抑圧した,Kビットのデータを復号するが,希望信号の1ビット(希望ビット)の復号に関与するのは,前記逆行列の特定の1行(または1列)である。従って,復号したいビットが,前記Kビットの全部ではなく,ある特定のビットだけの場合(移動機の場合,これが当てはまる)には,逆行列を求める代わりに,逆行列の1行(または,1列)を求める方が便利である。ある行(または列)に対応するK個の要素は,K元連立方程式の解として得られることは,以下の様に示される。
【0058】
先ず,一般性を失わないので,k=1を希望信号ビットとすると,逆行列の第1行が,このビットの復号に関与する行(または列)となる。式(6)の第1行表すと,以下の式(8)となる。
【0059】
【数9】
【0060】
ここに,rijは,以下の式(9)で示される行列R−1の要素である。
【0061】
【数10】
【0062】
式(9)の左辺に現れる逆行列R−1の第1行の要素r11〜r1Kは,以下の式(10)に示すように,相関係数行列Rとその逆行列R−1との積が単位行列Eとなることから,K元連立方程式(11)の解となることが分かる。
【0063】
【数11】
【0064】
【数12】
【0065】
この式は,復相関検出器に関するものであるが,MMSE検出器とする場合は,式(7)に示す様に相関行列の対角要素に,σ2Wk −2を加えればよいことを考慮して,式(11)を両検出器を含む形に拡張して表記すると,下記の式(12)となる。
【0066】
【数13】
【0067】
ここに,
【0068】
【数14】
【0069】
今後,式(13)で定義したαk(k=1,2,…,K)をMMSE補正値,行列R+σ2W−2を変形相関行列R´と呼び,RおよびR´の逆行列を,行列R+と略記することにする。
【0070】
<無線基地局装置の構成および動作>
先ずは従来技術に基づく無線基地局装置の構成および動作について説明し,次に,本発明を同装置に適用した場合の,実施の形態を,動作原理と併せて説明する。
【0071】
図5は,無線基地局装置120として,特にマルチユーザ受信部の構成を示すブロック図で,アンテナ1,周波数変換部2,整合フィルタバンク3,拡散信号生成部4,相関係数生成部10,前述したMMSE検出法を適用するためのMMSE補正部8,K×K行列の逆行列を演算する逆行列演算部14,線形結合部6および判定回路7から構成される。
【0072】
移動機200からの無線信号(RF信号)は,アンテナ1により受信され,周波数変換部2に与えられる。周波数変換部2は,アンテナ1からの無線信号を増幅する増幅器,周波数変換を行う乗算器(ミキサ),RF信号に同期した発振器から成り,入力されたRF帯域の信号をベースバンド信号に変換する。このベースバンド信号が,前述した式(1)により表される受信信号Y(t)である。この信号Y(t)は,整合フィルタバンク3,拡散信号生成部4およびMMSE補正部に入力される。
【0073】
拡散信号生成部4(詳細は,後述する)は,受信信号から,複数(L個とする)の拡散信号f1(t)〜fL(t)と,それらに対して,すべて一定時間シフトしているL個の拡散信号g1(t)〜gL(t)を生成する。そして,生成した拡散信号f1(t)〜fL(t)を整合フィルタバンク3に与えるとともに,拡散信号g1(t)〜gL(t)を相関係数生成部10に与える。
【0074】
整合フィルタバンク3(詳細は,後述する)は,ベースバンド信号Y(t)を,L個の拡散信号f1(t)〜fL(t)によりそれぞれ逆拡散した後,逆拡散した信号を整合フィルタによりフィルタリングする。フィルタリング後の信号は,各信号ビットが整合フィルタに入力し終わるタイミングでサンプリングされ,前述した式(3)に示す,K個の信号y1〜yKとなり,線形結合部6に与えられる。
【0075】
相関係数生成部10は,入力したL個の拡散信号g1(t)〜gL(t)、または、K個の信号y1〜yKに対応する部分である,拡散信号s1(t)〜sK(t)から,K×K行列の相関係数行列を生成する。
【0076】
MMSE補正部8は,K個の信号y1〜yKに対応する受信信号の受信電力と背景雑音電力を推定し,式(7)に示したように,相関係数生成部10で生成される相関係数行列の対角要素を補正して,変形相関係数行列を生成する。なお,背景雑音電力の推定値を零と置いて,MMSE補正を行わない場合は,復相関受信機(デコリレータ,Decorrelating Detector)として機能する。
【0077】
逆行列演算部14は,相関係数生成部10で生成された,K×K行列の相関係数行列R,または変形相関係数行列R´の逆行列R+を演算する。
【0078】
線形結合部6では,式(6)または(7)に示される演算が,入力された信号y1〜yKと,逆行列演算部14から出力される行列R+の間で行われ,(信号y1〜yKの各々を行列R+の各行のK個の要素と乗算し,それらを加え合わせる演算を,以下,線形結合と呼ぶことにする),線形結合後の信号を判定回路7に与える。
【0079】
線形結合部6iにより,行列R+のi行と線形結合された結果は,式(6)または,式(7)の右辺の信号となる。
【0080】
判定回路7は,線形結合部6から与えられた信号を所定の閾値と比較し,変調信号d1〜dKから,離散的値または符号を判定して出力する。変調信号d1〜dKの値は,変調方式としてBPSK(Binary Phase Shift Keying)が使用されている場合には−1または+1となる。判定回路71〜7Kにより得られた復号信号d1〜dKは,その後,誤り訂正等の所定の処理が施されて,無線ネットワーク制御装置1101または1102に伝送されるか,あるいは,同じ基地局装置120のサービスエリア内の他の移動機に送信される。
【0081】
図7は,整合フィルタバンク3の詳細な構成図である。整合フィルタバンク3は,L個の乗算器3a1〜3aL,L個の整合フィルタ(MF:Matched Filter)3b1〜3bL,およびL個のサンプルホールド回路(SHC:Sample Hold Circuit)3c1〜3cLを有する。
【0082】
ベースバンド信号Y(t)は,L個の乗算器3a1〜3aLの第1入力端子に入力される。L個の乗算器3a1〜3aLの第2入力端子には,拡散信号生成部4により生成された拡散信号f1(t)〜fL(t)がそれぞれ入力される。 ベースバンド信号Y(t)と拡散信号f1(t)〜fL(t)とが乗算器3a1〜3aLによってそれぞれ乗算されることを,逆拡散と呼ぶが,乗算器3a1〜3aLによってそれぞれ逆拡散された信号は,MF3b1〜3bLにそれぞれ入力され,MF3b1〜3bLは,各信号の1ビット長Tの間,入力された信号をそれぞれ積分する。
【0083】
MF3b1〜3bLからそれぞれ出力された信号は,SHC3c1〜3cLにそれぞれ入力される。SHC3c1〜3cLは,MF3b1〜3bLが各受信信号の1ビット分の積分を完了した時点の出力信号の値をサンプリングし,その値を保持して,出力する。
【0084】
SHC3c1〜3cLのそれぞれからは,連続してサンプリング値が出力されるが,各整合フィルタ毎の複数のサンプリング値が,希望信号の1ビットを復号するのに利用される。図4(B)に示した単一レートの非同期系のモデルを例にとれば,図7に示したように,各整合フィルタから各々出力される3個×ユーザ数すなわち,3L(=K)個のデータが利用される。
【0085】
整合フィルタバンク3は,図5に示すように受信信号に対して作用するだけではなく,相関係数を求める際に使用される。図8に,相関係数を求めるための整合フィルタバンクの構成を示すが,前記整合フィルタバンク3と区別するために,相関係数整合フィルタバンクと呼ぶことにする。同じ拡散信号同士の相関係数,すなわち相関係数行列の対角要素は,伝送レートが決まれば定まる値で,求める必要がないので,対応する部分を省略する(点線で表示)。
【0086】
図6は,拡散信号g1(t)〜gL(t)と(バースト)拡散信号s1(t)〜sK(t)の関係を示したものである。
【0087】
相関係数整合フィルタバンクは,そこに使用されるスイッチSWの状態を明示しないと,入力と出力の関係が定まらないので,さらに図9に示す,変形整合フィルタバンクを導入する。この変形整合フィルタバンクの入力は,K個の信号y1〜yKに対応する拡散信号s1(t)〜sK(t)で,その出力である相関係数が明示的に示されるので,今後の説明は,相関係数整合フィルタバンクではなく,それと等価な変形整合フィルタバンクを使って行う。観測窓長N=2の場合には,整合フィルタの数において,両者の違いは無いので,実際に変形整合フィルタバンクを使っても実用上問題はない。但し,N>2では,整合フィルタの数の点で,実際には,相関係数整合フィルタバンクを使用する方が有利である。
【0088】
図10は,拡散信号生成部4の構成例で,受信信号に対して,同期捕捉(acquisition)および同期保持(tracking)を行って,受信信号を整合フィルタバンク3で逆拡散するための拡散信号f1(t)〜fL(t)を生成する。それと同時に,相関係数行列生成部で相関係数行列を生成するための拡散信号g1(t)〜gL(t)を生成する。拡散信号g1(t)〜gL(t)は,拡散信号f1(t)〜fL(t)に対して,一定時間シフトしているだけで,同じ拡散コードから生成される。拡散信号の時間を任意の時間シフトさせた拡散信号を生成するには,例えば,図10に示す例(周期31のM系列)の場合,線形帰還シフトレジスタの内容を,遅れまたは進めたい時間だけ基準時刻とずれた時刻で初期値を設定することにより,任意の時間だけ時間シフトした拡散信号を生成することができる。または,基準時刻におけるシフトレジスタの内容と時間シフト量との関係はあらかじめ分かっているので,基準時刻でシフトレジスタの内容を適当に書き換えても,所望の拡散信号を得ることができる。シフトされる時間の量は,復号遅延(観測窓長Nのシステムでは,平均N/2の復号遅延が生じる)と相関係数行列の逆行列の演算に要する時間を考慮して決められる。
【0089】
(1)第1の形態
図11は,第1の形態による無線基地局装置120の,特にマルチユーザ受信部の構成を示すブロック図である。この図は,図5に示した無線基地局受信装置と基本的に同じ構成であるが,図5に示した,相関係数生成部10と逆行列演算部14とが一体化され,希望信号の1ビットを復号するのに関与する,希望信号と干渉信号のビット総数をKとすると,K個の重み係数生成部51〜5K,で構成され,またK個の線形結合部(または内積部)61〜6K,およびK個の判定回路71〜7Kを有する。
【0090】
図11には,重み係数生成部,線形結合部,および判定回路をそれぞれK個ずつ設けて,K個のビットのすべてを復号する構成を示しているが,K個のビットのうちM個(1≦M<K)を復号する場合には,重み係数生成部,線形結合部,および判定回路はそれぞれM個ずつとなる。
【0091】
尚,今後は,特別に断らない限り,希望信号のビット番号を1として説明する。
【0092】
重み係数生成部51〜5Kは,入力されたL個の拡散信号g1(t)〜gL(t)のK個の受信信号ビットに対応する部分である,K個の拡散信号s1(t)〜sK(t)に基づいて行列R+の各要素rij(i=1〜K,j=1〜K)を生成し,出力する。具体的には,第i番目の重み係数生成部5iは,行列R+の第i行のK個の要素ri1〜riKを生成し,生成した要素ri1〜riKを第i番目の線形結合部6iに与える。
【0093】
図12は,重み係数生成部51〜5Kのうち,重み係数生成部51の構成を示すブロック図である。重み係数生成部51は,第1係数生成部501から第K重み係数生成部50KまでのK個の重み係数生成部を有する。
【0094】
各重み係数生成部には,K個の拡散信号s1(t)〜sK(t)が共通に入力される。また,各重み係数生成部には,全ての重み係数生成部の各出力信号が入力される。但し,それぞれの出力は,それぞれの重み係数生成部の内部で既に結合している(入力元の無い矢印がそのことを示している)。すなわち,第j重み係数生成部50j(j=1〜K)には,第j重み係数生成部50jの出力信号r1jを除く出力信号r11〜r1j−1,r1j+1〜r1Kが入力される。
【0095】
第j重み係数生成部50jは,入力されるこれらの信号と拡散信号s1(t)〜sK(t)に基づいて,行列R+の第1行第j列の要素r1jを生成し,出力する。
【0096】
MMSE補正部8は,受信信号から背景雑音電力密度σ2,と整合フィルタバンク3の出力y1〜yKに対応するビット当たりの推定受信電力の比である,上記式(13)の補正値αiを求め,重み係数生成部51〜5Kに与える。
【0097】
図13は,重み係数生成部51の第1係数生成部501の詳細な構成を示すブロック図である。第1係数生成部501は,相関係数生成部511,線形結合部512,および帰還部513からなる。
【0098】
相関係数生成部511は,前述した変形整合フィルタバンク(図9参照)と同じ機能を有し,K個の乗算器51a1〜51aK,K個のMF(整合フィルタ)51b1〜51bK,およびK個のSHC(サンプルホールド回路)51c1〜51cKを有する。線形結合部512は,線形結合部61〜6K(後に詳述)のそれぞれと同じ構成を有し,K個の乗算器51d1〜51dKおよび合成器(合成器)51eを有する。
【0099】
帰還部513は,減算器51f,反転増幅器51g,帰還ループフィルタ(低域フィルタ,LPF)51h,および合成器51mを有する。
【0100】
相関係数生成部511の乗算器51a1〜51aKのそれぞれの第1入力端子には,拡散信号s1(t)が共通に入力される一方,第2入力端子には,拡散信号s1(t)〜sK(t)がそれぞれ入力される。したがって,乗算器51ajは,拡散信号s1(t)とsj(t)とを乗算し,積s1(t)sj(t)を出力する。
【0101】
MF51b1〜51bKは,乗算器51a1〜51aKの出力信号を1ビットの長さTに亘って,それぞれ積分(フィルタリング)し,積分結果をSHC51c1〜51cKにそれぞれ出力する。SHC51c1〜51cKは,MF51b1〜51bKが1ビットの長さの積分をそれぞれ完了した時点の出力信号の値をサンプリングしその値を保持して出力する。したがって,SHC51ciの出力信号は,上記式(2)から,相関係数行列Rの第i行第1列の要素(相関係数)ai1となる。すなわち,SHC51c1〜51cKからは,相関係数行列Rの第1列の相関係数a11〜aK1が出力される。SHC51c1の出力a11は,伝送レートが決まれば定まる定数で,ビット毎に変化することが無いので乗算器51a1から,SHC51c1までの回路は省略してもよい。これらの相関係数a11〜aK1は,線形結合部512の乗算器51d1〜51dKの第1入力端子にそれぞれ入力される。HC52c1の出力は,MMSE補正値をα1とすると(1+α1)倍されて出力される。乗算器51d1〜51dKの第2入力端子には,行列R+の第1行の要素に対応するr11〜r1K(これらの値を,今後,重み係数x1〜xKとも呼ぶ)がそれぞれ入力される。
【0102】
要素r11は,第1係数生成部501の帰還部513の出力信号がフィードバックされたものである。要素r12〜r1Kは,図6に示すように,第2係数生成部502から第K重み係数生成部50Kの各出力信号である。
【0103】
乗算器51d1〜51dKは,第1入力端子および第2入力端子からそれぞれ入力された信号を乗算し,乗算結果を合成器51eに与える。合成器51eは,乗算器51d1〜51dKから与えられたK個の乗算結果を合成し,合成結果を帰還部513に与える。乗算器51d1〜51dKの乗算結果として,K個の乗算結果a11(1+α1)r11,a21r12,…,aK1r1Kが得られ,合成器51eによる合成結果として,a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1Kが得られる。この合成結果は,上記連立方程式(12)の第1式の左辺に対応する。
【0104】
合成器51eの出力信号は,減算器51fによって,定数a11が減じられて,減算結果を反転増幅器51gに入力する。反転増幅器51gは,入力信号を利得−Gで増幅(反転増幅)して出力する。
【0105】
反転増幅器51gの出力信号は,LPF51hを介して合成器51m入力され,帰還ループの初期値である,定数1/(1+α1)が加えられる。この合成結果が,第1係数生成部501の出力となるとともに,乗算器51d1の第2入力端子に入力さる。
【0106】
この結果,線形結合部512と帰還部513とは,帰還ループを形成することになり,帰還部513の出力(すなわち第1係数生成部501の出力)は,帰還ループの収れん状態で,要素r11に収れんし,式(12)で表せる連立方程式の解の1つ(要素r11)が求められる(帰還ループの動作原理は,後述する)。
【0107】
図14は,重み係数生成部51の第2係数生成部502の詳細な構成を示すブロック図である。第2係数生成部502は,相関係数生成部521,線形結合部522,および帰還部523を有する。
【0108】
相関係数生成部521は,前述した変形整合フィルタバンク(図9参照)と同じ機能を有し,K個の乗算52a1〜52aK,K個のMF52b1〜52bK,およびK個のSHC52c1〜51cKを有する。線形結合部522は,線形結合部61〜6K(後に詳述)のそれぞれと同じ機能を有し,K個の乗算器52d1〜52dKおよび合成器52eを有する。
【0109】
帰還部513は,反転増幅器52gおよび帰還ループフィルタ(低域フィルタ,LPF)52hを有する。
【0110】
相関係数生成部521の乗算器52a1〜52aKのそれぞれの第1入力端子には,拡散信号s2(t)が共通に入力される一方,第2入力端子には,拡散信号s1(t)〜sK(t)がそれぞれ入力される。したがって,乗算器52ajは,拡散信号s2(t)とsj(t)との乗算結果である積s1(t)sj(t)を出力する。
【0111】
MF52b1〜52bKは,乗算器52a1〜52aKの出力信号を1ビット長Tの間,それぞれ積分(フィルタリング)し,積分結果をSHC52c1〜52cKにそれぞれ出力する。SHC52c1〜52cKは,MF52b1〜52bKが1ビットの積分をそれぞれ完了した時点の出力信号の値をサンプリングし,保持して出力する。したがって,SHC52ciの出力信号は,上記式(2)から,相関係数行列Rの第i行第2列の要素(相関係数)ai2となる。すなわち,SHC52c1〜52cKからは,相関係数行列Rの第2列の相関係数a12〜aK2が出力される。SHC52c1の出力a22は,伝送レートが決まれば定まる定数で,ビット毎に変化することが無いので乗算器52a2から,SHC52c2までの回路は省略してもよい。但し,HC52c2の出力は,MMSE補正値をα2とすると(1+α2)倍されて出力される。
【0112】
これらの相関係数a12〜aK2は,線形結合部522の乗算器52d1〜52dKの第1入力端子にそれぞれ入力される。乗算器52d1〜52dKの第2入力端子には,行列R+の第1行の要素に対応するr11〜r1Kがそれぞれ入力される。
【0113】
要素r12(重み係数x2)は,第2係数生成部502の帰還部523の出力信号がフィードバックされたものである。要素r11,r13〜r1Kは,図12に示すように,第1係数生成部501および第3重み係数生成部503から第K重み係数生成部50Kの各出力信号である。
【0114】
乗算器52d1〜52dKは,第1入力端子および第2入力端子からそれぞれ入力された信号を乗算し,乗算結果を合成器52eに与える。合成器52eは,乗算器52d1〜52dKから与えられたK個の乗算結果を合成し,合成結果を帰還部523に出力する。乗算器52d1〜52dKの乗算結果として,K個の乗算結果a12r11,a12(1+α2)r12,…,aK2r1Kが得られ,合成器52eによる合成結果として,a12r11+a22(1+α2)r12+…+aK2r1Kが得られる。この合成結果は,上記連立方程式(12)の第2式の左辺に対応する。
【0115】
合成器52eの出力信号は,反転増幅器52gに入力され,反転増幅された後,LPF52hを介して乗算器52d2の第2入力端子に入力される。また,LPF52hの出力が第2係数生成部502の出力r12となる。
【0116】
この結果,線形結合部522と帰還部523とは,帰還ループを形成することになり,帰還部523の出力値(すなわち第2係数生成部502の出力)は,帰還ループの収れん状態で,要素r12に収れんし,式(12)で表せる連立方程式の解の1つ(要素r12)が求められる。
【0117】
第3重み係数生成部503から第K重み係数生成部50Kも第2係数生成部502とほぼ同様の構成を有し,相関係数生成部の乗算器の第1入力端子に入力される拡散信号がそれぞれs3(t)〜sK(t)となる点,および,自己の出力信号がフィードバックされる線形結合部の乗算器がそれぞれ第3番目から第K番目の乗算器になる点が異なるだけで,それぞれ要素r13〜r1Kを出力する(これらの出力を,重み係数x3〜xKとも呼ぶ)。
【0118】
したがって,これら第3重み係数生成部503から第K重み係数生成部50Kの説明は省略する。また,重み係数生成部52〜5Kについても,重み係数生成部51と同様の構成を有するので,その説明を省略する。
【0119】
図11に戻って,整合フィルタバンク3の出力y1〜yKは,線形結合部61〜6Kに共通に入力される。重み係数生成部51〜5Kの各出力は,線形結合部61〜6Kのそれぞれに入力される。すなわち,重み係数生成部5iの出力ri1〜riKは,線形結合部6iに入力される。線形結合部61〜6Kは,これら入力された信号を線形結合する。
【0120】
図15は,線形結合部61の詳細な構成を示すブロック図である。線形結合部61は,前述したように,第1係数生成部501の線形結合部512と同じ機能を有し,K個の乗算器61a1〜61aKおよび合成器61bを有する。
【0121】
乗算器61a1〜61aKの第1入力端子には,整合フィルタバンク3の出力信号y1〜yKがそれぞれ入力され,第2入力端子には,重み係数生成部51の出力信号r11〜r1Kがそれぞれ入力される。乗算器61a1〜61aKは,第1入力端子および第2入力端子に入力された信号をそれぞれ乗算し,乗算結果を合成器61bにそれぞれ出力する。
【0122】
合成器61bは,乗算器61a1〜61aKの出力信号を合成する。この合成器61bの合成結果はy1r11+y2r12+…+yKr1Kとなり,この合成結果は上記式(8)の右辺であり,その値はW1d1と雑音成分の和となる。この合成結果は,判定回路71に入力され,判定回路71からd1の判定結果D1が出力される。
【0123】
他の線形結合部62〜6Kも,線形結合部61と同じ構成で,W2d2〜WKdKとそれぞれの雑音成分の和をそれぞれ出力する。そして,これらの出力は,判定回路72〜7Kにそれぞれ入力され,判定回路72〜7Kから判定結果としてD2〜DK(d2〜dKの判定結果の値)がそれぞれ出力され,復相関形受信が行われる。
【0124】
以上,第1の形態における,無線基地局装置120の装置の構成を説明したが,次に,この様な構成で,なぜマルチユーザ受信が可能となるかについて,原理の説明を行い,シミュレーションによって動作の確認を行った結果についても言及する。
【0125】
合成器51eの出力が,a11r11+a21r12+…+aK1r1Kに,また合成器52eの出力が,a12r11+a22r12+…+aK2r1Kになることは,既に述べた。合成器51eの出力は,帰還部513において,第1の定数(ここでは,a11とする)が引かれ,反転増幅器,帰還ループフィルタを経て,第2の定数(ここでは,1+α1の逆数)が合成されて,線形結合部に戻され,全体で帰還ループを形成している。初期値として第2の定数を与えてループを起動し,一定時間が経過した後に,定常状態に達するが,このとき,線形結合部512と帰還部513とで形成される帰還ループの利得を−G1とすると,次の式(14)が成り立つ。
【0126】
−G1[a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K−a11]
=r11−1/(1+α1) (14)
【0127】
同様に,線形結合部522と帰還部523とで形成される帰還ループの利得を−G2とすると,次の式(15)が成り立つ。
【0128】
−G2[a12r11+a22(1+α2)r12+…+aK2r1K]=r12 (15)
【0129】
式(14)と式(15)の両辺をそれぞれの帰還ループ利得−G1, −G2で割って,右辺を左辺に移項すれば,次の式(16)と式(17)になる。
【0130】
[a11(1+α1)+1/G1][r11−1/(1+α1)]+a21r12+…
+aK1r1K=0 (16)
a12r11+[a22(1+α2)+1/G1]r12+…+aK2r1K=0 (17)
【0131】
式(17)を,他の第2係数生成部に関するものを含めて,一般化すると,式(18)となる。
【0132】
a1jr11+a2jr12+…+[ajj(1+αj)+1/G1]r1j+…+aK1r1K=0
(j=2,3,…,K) (18)
【0133】
式(16)および式(18)において,Gj=∞(j=1,2,…,K)と置くと,これらの式は,次の様になる。
【0134】
a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K=a11 (19)
a1jr11+a2jr12+…+ajj(1+αj)r1j+…+aK1r1K=0
(j=2,3,…,K)(20)
【0135】
受信信号の整合フィルタバンク3の出力である,K個の値(y1,y2,…,yK)と,重み係数生成部の出力である(r11,r12,…,r1K)とを線形結合部61で線形結合した結果を,B=y1r11+y2r12+…+yKr1Kとすると,Bは,干渉信号成分が零となる(復相関受信)か,抑圧されている(MMSE受信)かになることは,既に述べたがが,その理由は次の通りである。K個の値(y1,y2,…,yK)を,式(3)を使って展開し,Bを求めると,式(21)となる。
【0136】
B=W1d1[a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K]
+W2d2[a12r11+a22(1+α2)r12+…+aK2r1K]+…
+WKdK[a1Kr11+a2Kr12+…+aKK(1+αK)r1K]+…
+z1r11+z2r12+…+zKr1K (21)
【0137】
式(21)に,式(19)と式(20)を代入すると,Bは,次の式(22)になる。
【0138】
B=W1d1a11(1−α1r11)−W2d2a22α2r12−…−WKaKKαKr1KdK+z1r11+z2r12+…+zKr1K (22)
【0139】
式(22)から,α1=α2=…=αK=0,すなわち,背景雑音電力を零とおくと,式(22)の右辺の第1項の,W1d1a11,すなわち,希望信号と雑音成分だけとなって,復相関受信が行われることが分かる。αjを,背景雑音電力密度とビット番号jのビット当たりの推定受信信号電力とすると,干渉信号電力と背景雑音電力の和が最小となる,MMSE受信が行われることは,既に述べた。
【0140】
また,式(19)の右辺のa11を1と置いて,式(20)と合わせて,式(12)と比較すると,両者が一致することからも,これまで述べてきた受信機で,復相関形受信が行われることが分かる。
【0141】
a11を1と置いてよいことは,次のようにして,説明される。まず,相関係数行列の対角要素は,式(2)から,次の式(23)で表される。
【0142】
【数15】
【0143】
ここでは,希望信号ビットの始まりをt=0とした。
【0144】
式(23)から分かるように,ajjすなわち,相関係数行列の対角要素は,ビットレート(1/T)によって決まる。従って,単一レートのシステムでは,対角要素が全て同じになり,その値は,線形結合部6のレベルを相対的に変えるだけなので,通常はその値を1として取り扱う場合が多い。本発明は,単一レートのみならず,マルチレートにも適用できるので,相関係数行列の対角要素がすべて同じとは限らないので,明細書の記載は,対角要素を変数表示のまま残してある。
【0145】
相関係数行列の対角要素ajjが,ビットレート(1/Tj)によって決まる定数なので,ajjを求めるための乗算器と整合フィルタを省略できる。また,対角要素ajjまたは,それをMMSE補正した,ajj(1+αj)とr1jとの乗算を行う線形結合部における乗算器も,レベル変換器と置き換える(あるいは,低速で動作する乗算器と解釈する)ことが可能である。
【0146】
以上は,帰還ループ利得Gj=∞(j=1,2,…,K)として,話を進めた。しかし,帰還ループ利得が小さくなると,演算誤差が生じるので,次に,この誤差が生じない方法(利得補正)について述べる。
【0147】
図16(A)は,第1係数生成部に,利得補正を施したもので,合成器51nの出力をr11´とし,これを元の線形結合部に戻して,帰還ループを形成するとともに,LPF51hの出力(r11´−1/(1+α1))をc1倍し,それに1/(1+α1)を加えたものを,r11として,他のK−1個の第2係数生成部に接続している。r11´とr11の関係は,次の式(24)で表される。
【0148】
[r11´−1/(1+α1)]c1=r11−1/(1+α1) (24)
【0149】
ここに,c1は,次の式(25)で表される。
【0150】
c1=1+1/a11/(1+α1)/G1 (25)
【0151】
r11´に関しては,式(16)において,r11と置き替えたものであるから,次の式(26)が成り立つ。
【0152】
[a11(1+α1)+1/G1][r11´−1/(1+α1)]
+a21r12+…+aK1r1K=0 (26)
【0153】
式(26)に,式(24)を代入すると,次の式(27)になる。
a11(1+α1)r11+a21r12+…+aK1r1K=a11 (27)
【0154】
式(27)では,G1に関する項が相殺された結果,G1が無限大である場合と同じく,誤差の無い出力が得られることが分かる。図16(B)は,図16(A)と等価な回路で,帰還部の出力をそのまま,他のK−1個の重み係数生成部に接続し,帰還ループ内の元の線形結合部へ戻す際に,そのレベルを1/c1倍したものである。
【0155】
利得補正の他の方法を図17に示す。式(16)に戻ると,利得G1の影響を除くには,この式の左辺に,−[r11−1/(1+α1)]/G1を加えるのでもよいことが分かる。但し,加える場所は,合成器の入力から反転増幅器の入力の間とするか,または,−[r11−1/(1+α1)]/G1を−G1倍して反転増幅器の出力に加えても同じであって,図17は,この考えに基づいて構成したものである。尚,LPF51hの入出力で局所的にループが形成されるので,各所のレベル合わせを行って,帰還利得を調整する必要がある。増幅器51qは,LPFには損失があって,それを補うために挿入したが,LPFがアクティブ素子で構成されていて利得があれば,増幅器51qは,減衰器となる場合もある。
【0156】
以上で,帰還ループ利得が小さい場合にも,逆行列要素の演算誤差が生じない方法について述べたが,次は,線形結合部に関する,いくつかの変形例について説明する。
【0157】
図18(A)と図13では,a11(1+α1)r11を乗算器51d1で作り出すのに,(1+α1)の乗算をどちらの入力側で行うか,が違っている。図13では,相関係数行列生成部側で行い,図18(A)では,重み係数生成部側で行っているが,何れも,式で表せば同じであるので,等価回路と言える。
【0158】
図18(A)と(B)とは,MMSE補正を,帰還ループの中で行うか,求まった重み係数を,他のK−1個の重み係数部に分配する側で行うかの違いであるが,これも式で表せば同じなので,互いに等価である。
【0159】
図19も,MMSE補正に関する変形例で,a11(1+α1)r11を作り出すのに,a11r11とa11α1r11とを加え合わせる(図19)か,a11r11と乗じるか(図13)の相違であって,式で表せば同じなので,互いに等価である。
【0160】
図20は,図13に示した,第1係数生成部の変形例である。図13においては,線形結合部の合成器51eの出力から,減算器51fで,第1の定数a11を減じてから,LPF51hの出力で,第2の定数を加える構成になっているが,図20においては,合成器51eの出力から,第1の定数を減じないで,帰還ループを形成し,第2の定数の合成を,帰還ループの外で行った結果を,他のK−1この,重み係数生成部に結合している。両者が等価であることは,次のように説明できる。
【0161】
先ず,LPF51hの出力を,r11´とすると,次の式(28)が成り立つ。
a11(1+α1)r11´+a21r12+…+aK1r1K=0 (28)
r11´とr11との差は,合成器51mによる,第2の定数1/(1+α1)の違いであるから,次の式(29)が成り立つ。
r11´=r11−1/(1+α1) (29)
式(29)式を式(28)に代入し,左辺に生じたa11を右辺に移項すれば,式(19)となるので,図13と図20の回路は,互いに等価である。
図16,図17,図18および図19を使った説明は,希望信号ビットに対する重み係数r11(x1)を求める回路に付いてであったが,干渉信号ビットに対応する重み係数を求める回路に付いては,減算器51fと合成器51mに相当する部分がないだけで,同じ手法が適用できるので,説明と図示を省略した。
【0162】
次に,第1の形態で説明した構成によって,回路が正しく動作するかどうかをシミュレーションによって確認した結果について,図21,図22,図23,図24および図25を使って説明する。
【0163】
モデルは,観測窓長N=2, ユーザ数L=2, K=NL=4(ビットd1〜d4),帰還ループ利得補正は,図20に示した手法を用いた,簡単な場合で,逆行列の要素r11,r12,r13およびr13(重み係数x1〜x4)の収れんの様子を調べたものである。
【0164】
図21は,ビットd1〜d4とそれに対応する拡散信号s1(t)〜s4(t)ならびに相関係数を求めるのに必要な,拡散信号の積s1(t)s2(t),s2(t)s3(t),s3(t)s4(t)の波形を示している。図22(a)は,拡散信号s1(t)〜s4(t)を,図22(b)は,に拡散信号の積s1(t)s2(t),s2(t)s3(t)およびs2(t)s3(t)をそれぞれ数値により示している。図22(c)は,あらかじめコンピュータで求めた相関係数行列Rとその逆行列R−1の具体的な数値を示している。
【0165】
ここでは,希望信号のビット番号を3とし,時刻t=0で,重み係数x3の初期値を1,他の重み係数の初期値を0と置いて帰還ループを動作したときの,重み係数x1〜x4(r11,r12,r13およびr14)の時間変化を,シミュレーションにより求めると,図23に示すグラフとなる。横軸の時間τは帰還ループフィルタの時定数により正規化した時間を示している。モデルが簡単なので,収れん値と初期値の差が小さく,収れん状況が分かりにくいので,重み係数x1〜x4そのそれぞれの厳密解からの偏差を示したのが,図24である。この図から,帰還ループフィルタの時定数の数倍の時間をかければ,全ての重み係数が厳密解に収れんすることが分かる。図25は,重み係数を,帰還ループの外,すなわち他の重み係数回路に与える場合に,一部を帰還ループフィルタの入力から,取り出して,高速化を図った例である。図24および図25から,帰還ループフィルタの時定数を充分小さい値を選べば,重み係数を求める時間を1ビット長以下にすることが可能なことが分かる。
【0166】
(2)第2の形態
重み係数生成部51〜5Kのそれぞれは,第1係数生成部501から第K重み係数生成部50Kを有する(図12参照)。これら第1係数生成部501から第K重み係数生成部50Kのそれぞれは,相関係数生成部511または521を有し,相関係数行列の第1列の要素a11〜aK1から第K列の要素a11〜aK1をそれぞれ出力する。すなわち,重み係数生成部51〜5Kのいずれもが,相関係数行列の第1列の要素a11〜aK1から第K列の要素a11〜aK1(すなわち相関係数行列のすべての相関係数)を生成する。
【0167】
したがって,重み係数生成部51〜5Kにおける相関係数生成部を1つの回路にまとめることができるので,重み係数生成部51〜5Kに代えて,相関係数生成部10およびK個の重み係数演算部111〜11Kで構成したのが図26に示した第2の形態である。尚,整合フィルタバンクについては,これまで,変形整合フィルタバンク(図9)を使って説明したが,これからは,相関係数整合フィルタバンク(図8)を使って説明する。
【0168】
相関係数生成部10は,K×K個の相関係数a11〜aKKを生成し,生成した相関係数a11〜aKKを重み係数演算部111〜11Kに共通に与える。重み係数演算部111〜11Kは,相関係数生成部10から与えられた相関係数a11〜aKKに基づいて行列R+の第1行の要素r11〜r1Kから第K行の要素rK1〜rKKをそれぞれ求め,線形結合部61〜6Kにそれぞれ与える。
【0169】
図27は,相関係数生成部10の詳細な構成を示すブロック図である。相関係数生成部10は,L個の相関係数整合フィルタバンク10a1〜10aLを有する。
【0170】
これらの相関係数整合フィルタバンク10a1〜10aLには,拡散信号g1(t)〜gL(t)が入力され,相関係数整合フィルタバンク10a1〜10aは,入力された拡散信号に基づいて第1列の相関係数a11〜aK1から第K列の相関係数a1K〜aKKまでを出力する。回路10sは,これらの出力を並べ替えて出力する。
【0171】
図28は,重み係数演算部111の詳細な構成を示すブロック図である。重み係数演算部111は,K個の線形結合部11a1〜11aKおよびK個の帰還部11b1〜11bKを有する。
【0172】
線形結合部11a1は図13に示す第1係数生成部501の線形結合部512と同じ構成を有し,帰還部11b1は図12に示す帰還部513と同じ構成を有する。また,線形結合部11a1に入力される信号も,線形結合部512に入力される信号と同じである。したがって,帰還部11b1からは,行列R+の要素r11が出力される。
【0173】
線形結合部11a2および帰還部11b2は,図14に示す線形結合部522および帰還部523とそれぞれ同じ構成を有し,線形結合部11a2に入力される信号も線形結合部522に入力されるものと同じである。したがって,帰還部11b2からは,要素r12が出力される。
【0174】
同様にして,線形結合部11a3(図28には図示略)〜11aKはいずれも,線形結合部522と同じ構成を有し,帰還部11b3〜11bKはいずれも,帰還部523と同じ構成を有する。したがって,帰還部11b3〜11bkからは,要素r13〜r1Kがそれぞれ出力される。
【0175】
(3)第3の形態
第3の形態における,無線基地局の構成は,図11に示した第1の形態による無線基地局装置の構成と基本的に同じであるが,重み係数生成部51〜5Kを変換し,回路規模を更に小さくしたものである。
【0176】
まず,第1の形態における重み係数生成部と,第3の形態における重み係数生成部の違いを理解するために,前者から後者への回路の変換の過程を順を追って説明し,後に式を使って動作原理の説明を行う。
【0177】
図29から図32は,重み係数生成部51の第1係数生成部501の変換のステップを示している。
【0178】
まず,第1ステップとして,図13に示すSHC51c1〜51cKを除去し,第1係数生成部501を図29に示す構成に変形する。SHC51c1〜51cKの除去によっても除去前と等価な動作を行わせるためには,MF51b1〜51bKの積分時間が,SHC51c1〜51cKによって積分結果が保持される時間だけ延長すればよい。
【0179】
続いて,第2ステップとして,図30に示すように,MF51b1〜51bKと乗算器51d1〜51dKとの順序を入れ替える。重み係数x1(r11)の値が,MF51b1〜51bKの積分時間(0≦t≦T)内で一定であれば,この変換は等価変換であるが,実際には,x1の値は,時間と共に変化するので,この変換は,等価でなく近似変換である。但し,後述する手法を用いることで,発生する近似誤差は,実用上問題ない範囲に抑えることができる。MF51b10
は,図29には無かったものであるが,図30では,減算器51fの入力を作り出すために追加した。
【0180】
続いて,第3ステップとして,図31に示すように,加算器51eの前段にあるMF51b1〜51bKを加算器51eの後段に移動し,後段にあるLPF51hと置き換える。このことによって,K個のMF51b1〜51bKを1つのMF51bに削減することができる。LPF51hをMF51bに置き換えることによって,帰還ループの処理時間が長くなるが,後述するように,このことも問題とならない。
【0181】
続いて,第4ステップとして,図32に示すように,乗算器51a1〜51aKが加算器51eの後段に移動される。移動の結果,K個の乗算器51a1〜51aKを1つの乗算器51aに削減することができる。これにより,第1係数生成部501の変換が終了する。
【0182】
第2係数生成部502についても同様の変換を行うことにより,図33に示す回路が得られ,第3係数生成部503から第K係数生成部50Kについても,図33と同様の回路が得られる。
【0183】
図32と図33を比較すると,第1係数生成部501の乗算器51d1〜51dKおよび加算器51eと,第2係数生成部502の乗算器52d1〜52dKおよび加算器52eは共通となるので,この共通部分については,全体で1つ使うだけでよいことになる。また,図示を省略するが,第3係数生成部503から第K係数生成部50Kも図33に示す第2係数生成部502と同じ構成を有するので,これらの乗算器および加算器の部分は共通にできる。
【0184】
したがって,第1係数生成部501から第K係数生成部50KのそれぞれにおけるK個の乗算器および1つの加算器は1つにまとめることができる。図34は,これらを1つにまとめた第3の形態による重み係数生成部51の詳細な構成を示すブロック図である。
【0185】
この重み係数生成部は,各係数生成部の乗算器および加算器が1つにまとめられた線形結合部500と,重み係数x1〜xK(r11〜r1K)をそれぞれ出力する帰還部5011〜501Kを有する。
【0186】
帰還部5011は,図32の加算器51eの後段に配置された加算器51pから加算器51mまでの構成要素を有する。帰還部5022は,図33の加算器52eの後段の加算器52pからMF52までの構成要素を有する。他の帰還部5013〜501Kも帰還部5012と同じ構成を有する。
【0187】
他の重み係数生成部52〜5Kについても,同様の構成とすることができる。ただし,第j係数生成部5jでは,帰還部5011と同じ構成を有する帰還部がj番目の要素rjjを出力する部分に配置され,それ以外の要素を出力する部分に帰還部5012と同じ構成を有する帰還部が配置される。また,この帰還部では,定数1/(1+α1) に代えて定数1/(1+αj) が加算器に入力される。
【0188】
図33に示す重み係数生成部は,帰還部5011〜501Kおよび線形結合部500の左右の配置を入れ替えることにより,図34にように表すこともできる。式(12)において,r11=x1,r12=x2,…,r1K=xKと置きかえ,相関係数を積分表示にもどしてみると,次の式(30)になる。
【0189】
【数16】
【0190】
積分区間は,となっているが,拡散信号s1(t)〜sK(t)は,ある有限な区間で−1か+1(非零)であるが,その前後で零であるから,積分はある有限な区間で行われる。
式(100)において,重み係数x1,x2,…,xKが,時間によって変化しない場合は,積分の内側にいれて見ると,次の式(31)になる。
【0191】
【数17】
【0192】
次に,拡散信号と重み係数を線形結合したものを,拡張拡散信号と定義すると,拡張拡散信号は,次の式(32)で表せる。
【0193】
【数18】
【0194】
式(32)を使って,式(31)を表すと,次の式(33)になる。
【0195】
【数19】
【0196】
第1の形態で用いた手法では,式(12)を,図13および図14に示す回路形式によって,式(14)および式(15)の様に変形し,r11(x1),r12(x2),…,r1K(xK)を求めた。同じ考えを,式(33)に適用すると,次の式(34)となる。
【0197】
【数20】
【0198】
式(34)は,図35に対応していて,線形結合部500が拡張拡散信号q1(t)を出力し,帰還部5011の出力が,式(34)の第1行の左辺と対応している。帰還部5011〜501Kの出力は,式(34)の第2行の左辺に対応している。
【0199】
図35の回路が,最初は,整合フィルタの出力が零の状態から起動し,定常状態に達するまでの間,重み係数x1,x2,…,xKの値は,初期値から収れん値まで,変化する。
【0200】
式(30)を式(31)に変形(図29から図30への変換に対応)できたのは,重み係数x1,x2,…,xKすが,時間によって変化しないと仮定したからである。
【0201】
従って,図13および図14に示す回路形式によって求められる重み係数x1,x2,…,xKが,厳密解であるのに対して,図34または図35に示す回路形式から求まる重み係数x1,x2,…,xKは,近似解である。
近似解であっても,それらの値を用いることで,復相関受信が可能なことと,近似解を厳密解に近づける方法について説明する。
【0202】
式(1)で表される受信信号Y(t)に,式(32)で表される拡張拡散信号q1(t)を乗じて整合フィルタに通した結果をSとすると,Sは,次の式(35)で表せる。
【0203】
【数21】
【0204】
式(34)は,G=∞とすると,式(33)になるが,Gが小さい場合にも,利得補正を行えば,式(33)で表せるので,式(35)に,式(33)を代入すると,次の式(36)になる。
【0205】
【数22】
【0206】
式(36)から,α1=α2=…=αK=0の場合には,整合フィルタ出力には,干渉信号成分が現れないことが分かる。但し,雑音成分については,積分期間中(すなわち,整合フィルタを通過中),重み係数が変化するので,従来方式によるものとは,異なってくる。
【0207】
α1,α2,…,αKが零で無い場合には,同様の理由で,従来のMMSE受信機によるものと雑音成分が,変わってくる。
【0208】
次は,近似的に求まる重み係数を,厳密解に近づける方法について説明する。第1の方法は,観測窓長をNとすると,整合フィルタの積分時間を(N+1)Tとし,第1回の演算を,拡散信号gj(t)(j=1,2,…,L)を使って0≦t≦(N+1)Tで行った後,第1回目の収れん値を第2回目の初期値とし,拡散信号として,第1回目で使った拡散信号よりも,(N+1)T遅れた拡散信号gj(t−(N+1)T)(j=1,2,…,L)を使って,(N+1)T≦t≦2(N+1)Tの間,第2回目の演算を行う。得られた重み係数の近似度が充分であれば,ここで演算を終えるが,近似度が充分でなければ,同じように,拡散信号gj(t−2(N+1)T)(j=1,2,…,L)を使って,第3回目の演算を行う。このようにすると,初期値として,前回よりもより厳密解に近い値を使うので,収れん値としては,前回よりもより厳密解に近いものが得られる。反復回数を増やせば,より厳密解に近い値を得ることができる。ただし,この方法だと,演算に要する時間は(N+1)T×反復数となる。
【0209】
第2の方法は,整合フィルタとして,積分時間をビット長と同じTとし,第一回の演算に要する時間帯を,長さTの複数の区間,区間1,区間2,区間Pに分割し,区間毎に拡張拡散信号を生成した上,区間pの拡散信号の時間区間pと区間p0の時間差だけシフトして,1回目の演算を区間p0で行った後,周期Tで,演算を反復する方法である。この方法だと,1回の演算に要する時間はTであり,全体の時間はT×反復数となり,第1の方法に比べて,演算時間が(N+1)分の1に短縮される。第1の方法と,第2の方法に要する時間を比較したのが,図36である。尚,この図においては,数字はビット番号ではなく,区間番号を表す。
【0210】
(4)第4の形態
第4の形態の無線基地局120の受信装置の構成図を図37に示す。
【0211】
この装置の構成は,基本的に,第1の形態および第2の形態と同様であるが,変形拡散信号生成部12を備え,前記2つの形態に使用した技術を基に,更に重み係数生成部の高速演算と装置の小型化を達成するものである。
【0212】
変形拡散信号生成部12では,拡散信号生成部で生成される,相関係数生成用の拡散信号g1(t),g2(t),…,gL(t)の他に,それらの拡散信号に対して,所定の時間だけ時間シフトした複数の拡散信号信号を生成する。時間シフトした拡散信号の生成方法に付いては,図10を使って説明した方法と同様の方法が用いられる。これらの複数の拡散信号を,変形拡散信号Σgj(t)と呼ぶことにする。
【0213】
図4を,再び用いて説明すると,この図は,単一レートで,ユーザ数Lの受信信号間の非同期状態を図示したもので,受信信号の受信時刻は特定の時刻に集中することなく,一様に分布している場合のモデルで,受信機への到達時刻の早い順にビット番号が付与されている。図4(A)は,観測窓長(Observation Window Size)N=2で,K=2Lの場合を,図4(B)は,観測窓長N=3で,K=3Lの場合を示している。
【0214】
ここで,図4(A)において,希望信号ビットを第(L+1)番目のビット(以下「ビットL+1」と表す)とすると,観測窓長N=2のシステムでは,希望ビットを復号するのに,ビット1の先頭からビット2Lの末尾まで,合計3ビットの時間を要することとなる。
【0215】
したがって,ビット1,L+1,2L+1,3L+1というように,ユーザ信号1のビット列を連続的に復号するには,前述した無線基地局装置120における重み係数生成部の規模が3倍必要となる。同様に,観測窓長Nのシステムでは,希望信号ビットを復調するのに,N+1ビットの時間を要するので,あるユーザ信号のビット列を連続的に復号するには,重み係数生成部の規模をN+1倍必要になる。
【0216】
一方,受信される各ユーザ信号は,N+1ビットの区間に広がっているものの,重み係数の演算時間帯は必ずしも受信信号と同期している必要がないことに着目し,変形拡散信号Σgj(t)を利用して重み係数の演算時間を特定の時間帯に集約して,1ビットの復号に要する時間を短縮した所に,第4の形態の特徴がある。
【0217】
第4の形態について,一例として,第3の形態で説明した技術に基づいて実施の形態を説明するが,第1,第2の形態で説明した相関係数生成にも同じように適用できる。
【0218】
まず,第4の形態の原理について,まず簡単なモデルで説明し,後に一般化する。
【0219】
図38(a)は,一例として,非同期に受信されるシングルレートの2つのユーザ信号1および2のそれぞれ2つのビット(ビット1および3ならびにビット2および4)に対応する拡散信号を示している。ユーザ信号1のビットとユーザ信号2のビットとは,時間τだけずれている。すなわち,ビット2はビット1の開始から時間τ遅れて開始し,ビット3はビット2の開始から時間τ遅れて開始する。
【0220】
ビット1〜4のそれぞれの拡散信号をs1(t)〜s4(t)とし,重み係数をr11(x1)〜r1K(x4)とすると,前述した式(10)から,希望信号のビット番号を3として,以下の式(37)が得られる。
【0221】
【数23】
【0222】
式(18)を相関係数を求める積分表示のまま表すと,以下の式(38)になる。
【0223】
【数24】
【0224】
式(38)では,積分区間が−TからT+τに亘っている。このことは,受信信号に同期した拡散信号s1(t)〜s4(t)を使用して重み係数を求めようとすると,積分時間2T+τ(τがTに近い値を有する場合には約3T)を要することを意味する。また,ユーザ信号1のビット列を連続的に復号するには,前述したように,重み係数生成部としては,3倍の規模の回路が必要となる。
【0225】
一方,被積分関数(すなわち拡散信号)を時間的にシフトさせても,積分区間の始点と終点をそのシフト量だけ変化させれば,積分結果は同じになることを利用すると,積分の時間を特定の時間帯に集約させれば,全体の処理時間を短縮することができる。
【0226】
たとえば上記式(38)の第1式左辺の第2項は次のようになる。
【0227】
【数25】
【0228】
同ようにして,式(38)の第4式左辺の第2項は次のようになる。
【0229】
【数26】
【0230】
これら2つの式は拡散信号を1ビット時間Tだけ進めるか遅らせるかして,積分時間を0≦t≦Tにシフトした例である。式(38)のすべてについて,積分区間を0≦t≦Tにすると,式(38)は以下の式(39)になる。
【0231】
【数27】
【0232】
このような時間のシフトを図38によって説明すると,−T≦t≦0の範囲にある拡散信号s1(t)のすべておよび拡散信号s2(t)の一部分は,時間Tだけ遅らされ,図38(c)の位置にシフトする。0≦t≦Tの範囲にある拡散信号s3(t)のすべて,拡散信号s2(t)の残り部分,および拡散信号s4(t)の一部分は,図38(b)に示すようにシフトされず,そのままとされる。T≦tの範囲にある拡散信号s4(t)の残りの部分は,時間Tだけ進められ,図38(d)に示すようにシフトされる。尚,説明は,時間Tだけ“進められ”たり“遅らされ”たりと言う表現をしたが,実際の回路で行うのは,変形拡散信号生成部より,連続信号として送られてくる,変形拡散信号Σgj(t)の,対称ビットと区間に応じて特定の部分を,スイッチで選択することである。
【0233】
このように,積分区間を0≦t≦T内にシフトする変換をより一般化するために,積分区間のシフトを,図4(A)に示す観測窓長N=2,ユーザ信号数Lの受信信号に適用すると,以下の式(40)から(42)になる。(図39(a)〜(d)参照)
1≦k≦Lについては,
【0234】
【数28】
【0235】
L+2≦k≦2Lについては,
【0236】
【数29】
【0237】
希望ビットL+1については,
【0238】
【数30】
【0239】
ここで,tkは,ビット番号kのビットの0≦t≦Tにおける変換点の時刻である。
【0240】
次に,このような原理を図34または図35に示す重み係数生成部に適用した実施の形態について説明する。受信信号は,図39(a)に示すものとする。
【0241】
上記式(40)〜(42)から,図34(または,図35)に示す帰還部5012〜501K(干渉ビットに関する帰還部)の乗算器52a〜5Kaのそれぞれの第1入力端子および第2入力端子に入力される拡散信号を,0≦t≦tkとtk≦t≦Tとで元のままのを入力するか,または,遅れた,もしくは進んだものを入力させるかで切り替えることにより,シフト処理を行うことができる。
【0242】
図40は,干渉ビットに関する帰還部の1部を図示したもので,その乗算器の第1入力端子(入力1)および第2入力端子(入力2)に入力される拡散信号の対応関係を表に示したものである。
【0243】
図41は,図40に基づいて構成した重み係数生成部の構成を示すブロック図で,図35に示す重み係数生成部を基に,必要な機能追加を行ったものである。但し,図41では,図が煩雑になるのを避けるために,MMSE補正部,帰還ループ利得補正の表示を省略している。
【0244】
この重み係数生成部では,干渉ビット1〜L,L+2〜Lをそれぞれ処理する帰還部の乗算器の前段に,スイッチV1〜VL,VL+2〜V2Lがそれぞれ設けられる。
【0245】
k=1〜LのスイッチVkは,時刻tkにおいて,破線で示す第1入力端子から実線で示す第2入力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,分配器801の出力信号を後段の乗算器に出力し,tk≦t≦Tでは,分配器802の出力信号を後段の乗算器に出力する。
【0246】
k=L+2〜2LのスイッチVkは,時刻tkにおいて,破線で示す第2入力端子から実線で示す第1入力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,分配器803の出力信号を後段の乗算器に出力し,tk≦t≦Tでは,分配器801の出力信号を後段の乗算器に出力する。
【0247】
干渉ビット1〜L,L+2〜Lをそれぞれ処理する帰還部の後段に配置された乗算器(線形結合部の乗算器)の出力側には,スイッチW1〜WL,WL+2〜W2Lがそれぞれ設けられる。
【0248】
k=1〜LのスイッチWkは,時刻tkにおいて,破線で示す第1出力端子から実線で示す第2入力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,前段の乗算器の出力信号を合成器(加算器)701に出力し,tk≦t≦Tでは,前段の乗算器の出力信号を合成器(加算器)702に出力する。
【0249】
k=L+2〜2LのスイッチWkは,時刻tkにおいて,破線で示す第2出力端子から実線で示す第1出力端子に切り替えられ,0≦t≦tkでは,前段の乗算器の出力信号を合成器703に出力し,tk≦t≦Tでは,前段の乗算器の出力信号を合成器701に出力する。
【0250】
合成器(加算器)701〜703が入力された信号を合成し,合成結果を分配器801〜803にそれぞれフィードバックする。合成器701は図39(a)の区間2に対応し,合成器702は区間1に対応し,合成器703は区間3に対応する。このように合成器の個数および区間数はN+1となる。
【0251】
合成器701〜703のそれぞれの出力信号は以下の式により表される。
【0252】
【数31】
【0253】
分配器801〜803は,入力された信号を減算器またはスイッチに分配する。
【0254】
干渉ビット1〜Lに関する帰還部の2つの乗算器の入力2には,拡散信号sk(t)の他に,sk(t−T)が入力される。また,干渉ビットL+2〜2Lに関する帰還部の2つの乗算器の入力2には,拡散信号sk(t)の他に,sk(t+T)が入力される。また,各帰還部のMFの積分時間は0〜Tまでとされる。
【0255】
以上により,第2の形態では,3T(Tはビット長)掛かっていた重み係数演算の1周期(前述したように,重み係数の演算精度を上げるためには,演算を複数周期反復する必要がある)を,第3側面ではTに縮めることができ,その結果,回路規模をさらに縮小することができる。
【0256】
以上は,処理区間をビット長(T)単位でシフトし,処理時間を短縮する原理と実施の形態について述べたが,処理区間をT/Q (Qは整数)とすると,Q>1とすることで,処理時間をさらに短縮することができる。
【0257】
まずは,Q=2の場合を説明し,Q=1と異なる側面について説明し,後に,Q>2である任意の整数に対しての実施の形態について説明する。
【0258】
図42(a)は,図38(a)と同じ拡散信号の配置を示しているが,区間の長さT/2ごとに6区間に分割している点が異なる。また,図44(b)〜(d)は,全ての拡散信号を区間3にシフトされる様子を示している。
【0259】
希望信号のビット番号を3とし,対応する拡散信号をs3(t)とする。干渉ビットに対応する拡散信号s2(t)とs4(t)の境界,すなわち干渉信号のビットの変換点が,区間3にあるか,区間4にあるかにより,取り扱いが異なる。したがって,ビット番号kが1≦k≦Mのときに,変換が区間3に存在し,ビット番号kが,M+1≦k≦Lのときに,変換点が,区間4に存在するものとすると,ビット番号kがL+2≦k≦L+Mの場合の変換点も区間3に,また,ビット番号kL+M+1≦k≦2Lのときも,変換点が区間4に存在することになる。
【0260】
図39に示すユーザ数L,観測窓長N=2の場合における,上記式(40)〜(42)に相当する式を求めると,以下の式(43)〜(47)となる。
【0261】
1≦k≦Mについては,
【0262】
【数32】
【0263】
M+1≦k≦Lについては,
【0264】
【数33】
【0265】
L+2≦k≦L+Mについては,
【0266】
【数34】
【0267】
L+M+1≦k≦2Lについては,
【0268】
【数35】
【0269】
希望ビットについては,
【0270】
【数36】
【0271】
ここで,tkは,ビット番号kのビットの変換点の時刻であり,0≦tk≦Tである。
【0272】
上記式(24)〜(28)から明らかなように,すべての積分(すなわちMFによる処理)は,0からT/2の間で完了する。
【0273】
同様にして,Q>2である整数Qに対して,1/Qビット長の区間に拡散信号をシフトさせ,T/Qの時間に処理を短縮することもできる。以下,この手法を1/Qビット法と名付けて,その手法の実施の形態について説明する。
【0274】
図45は,1/Qビット法による重み係数生成部における干渉ビットに関する帰還部および線形結合部の乗算器の部分を示すブロック図である。既に説明した1ビット法との比較を容易にするために,図46(a)に,1ビット法による重み係数生成部(図43参照)における干渉ビットに関する帰還部および線形結合部の乗算器の部分を示す。
【0275】
1/Qビット法では,反転増幅器の前段にQ個の乗算器が必要となる。また,MFの後段にも同じくQ個の乗算器が必要となる。一方,1ビット法では,図46(a)に示すように,MFの前後にスイッチViおよびWiを設けることで,MFの前後の乗算器を1つにまとめることができる。
【0276】
この理由は,1/Qビット法では,異なる拡散信号同士の乗算結果を同じ時刻で,MFに入力する必要があることによる。たとえば,式(26)の左辺の第2項および第3項において,tk≦t≦T/2では拡散信号sk(t)と,このtk≦t≦T/2と一部重なる0≦t≦T/2の時間帯では,拡散信号sk(t)を時間T/2進ませた拡散信号sk(t+T/2)の2つの拡散信号を同時にMFに入力する必要がある。一方,1ビット法では,ある拡散信号とそれを時間的にシフトさせた拡散信号とを,同じ時間帯にMFに入力することがない。
【0277】
図44を用い,L+2≦k≦L+Mの場合を例にとってさらに具体的に説明する。拡散信号s4(t)を区間3にシフトするために,拡散信号s4(t)の区間4の部分をT/2進ませ,同信号の区間5の部分の時間をT進ませる必要がある。これにより,拡散信号s4(t)は,符号▲1▼〜▲3▼で示す3つの部分に分割される。部分▲1▼および▲2▼は,時間帯が重ならないので,MFの前段および後段の乗算器を共用でき,したがって,乗算器は前段および後段のそれぞれに1つずつで足りる。
【0278】
一方,部分▲2▼は,0≦t≦T/2の時間帯を占有するので,他の部分▲1▼および▲3▼により使用される乗算器を共用できない。したがって,部分▲2▼の乗算を行う乗算器が別途必要となる。その結果,部分▲1▼および▲3▼により共用される乗算器と,部分▲2▼により使用される乗算器との,計2個の乗算器が必要となる。
【0279】
1/Qビット法に一般化すると,1/Qビット法では,1ビットに対応する拡散信号が(Q+1)個の部分に分割される。これらの部分のうち,(Q−1)個の部分の長さ(時間)はT/Qである。残りの2つの部分は,時間的にオーバラップせず,両者を合わせて調度T/Qの長さになるので,これら2つの部分を処理する乗算器が,図45における最上段の乗算器7001および8001に対応する。乗算器7001の前段および8001の後段には,スイッチがそれぞれ設けられ,2つの部分が切り替えられて処理される。乗算器7002〜700Qおよび8002〜800Qは,(Q−1)個の部分を処理する乗算器である。このようにして,1/Qビット法では,乗算器が合計2Q個必要となる。
【0280】
なお,2つのスイッチをなくして,時間がオーバラップしない2つの部分を個別に処理する2つの乗算器を設けることもできる。この場合は,乗算器の数は合計2Q+2個となる。また,1ビット法においても同ようにして,図46(b)に示すように,スイッチをなくして,2つの乗算器を設けることもできる。
【0281】
図45の破線で囲まれた回路を回路Jとすると,1/Qビット法による重み係数生成部は,図47に示す構成となる。この重み係数生成部は,K個の回路J1〜JK,P個の合成器9001〜900P,およびP個の分配器9011〜901Pを有する。図面が煩雑になるのを避けるために,回路J1〜JKと合成器9001〜900Pとの結線を接続網Rとして示している。分配器9011〜901Pと回路J1〜JKとの続接も続接網Lとして示している。
【0282】
ここで,Pは観測区間(観測窓長Nの場合にはN+1ビットの範囲)の分割数であり,図44の例では,P=6である。
【0283】
回路J1〜JKの接続網Rへの出力信号は,図45から明らかなように,シフトされた拡散信号と重み係数との乗算結果である。この出力信号は,シフト前の拡散信号が属する区間に対応する合成器に接続される。したがって,接続網Rの結線は,拡散信号の配置が決まれば,一意に定まる。
【0284】
分配器9011〜901Kには,合成器9001〜900Pの出力信号がフィードバック信号をして入力される。そして,分配器9011〜901Kは,合成器の出力を接続網Lを介して回路J1〜JKに分配する。右側の合成器と左側の分配器は,同じ区間同士のものが1対1に接続され,系全体が帰還ループを形成する。接続網Lの結線構造は,接続網Rと対称となる。
【0285】
変形拡散信号部12からは、拡散信号g1(t)〜gL(t)の他に、それらに対して、整合フィルタの積分時間の1/Qの整数倍だけ進んだ、または遅れた複数の信号(変形拡散信号g1(t)〜gL(t)または、変形拡散信号Σgj(t))が出力され、回路網Sに入力する。回路網Sの出力は、重み係数生成部の乗算器(図43では、乗算器7001〜700Qおよび乗算器8001〜800Q)に接続される。前記乗算器に入力する拡散信号の長さは、1/Qビットまたはそれ以下なので、変形拡散信号s1(t)〜sK(t)または変形拡散信号Σsj(t)と名付けるが、変形拡散信号Σsj(t)は、回路網Sの入出力間に設けられたスイッチの接続のタイミングと長さを変えることで生成される。スイッチの制御は、(図37には図示されない)外部の制御回路によって行われる。
【0286】
非同期系のシステムにおいては、受信信号が特定の区間に集中することがあり得る。従って、合成器への入力数は、対応する区間によって大きかったり、小さかったりする。その場合には、回路網Rの入出力の端子数を増やし、入出力の端子間にスイッチを設け、合成器への必要な経路の数を確保するよう(図37には図示されない)、外部の制御回路によって行われる。回路網Lに対しても、同様な処置が施される。
【0287】
次に,第4の形態の説明で示した,装置構成に基づいてで,実際の動作をシミュレーションによって確認したので,その結果を説明する。
シミュレーションのモデルは,N=2,L=2,K=N×L=4,ビット配置と拡散信号パターンは,図21に示した,第1,第2の形態に即して行ったシミュレーションと同じである。第4の形態として説明した,1ビット法を適用して,希望信号ビット(ビット番号3)の区間を区間2,とし,その前の区間である区間1と,後の区間である区間3にある拡散信号を,全て区間2にシフトした。装置構成は,図41に示すものである。乗算器の入力(図40で定義した入力2)には,各拡散信号を周期Tで繰り返し入力し,帰還ループが定常状態に達し,正しい重み係数が求まるまでの様子を図46に示す。縦軸は,重み係数の値で,横軸は,ビット長Tで規格化した時間で,希望信号ビット(ビット番号3)の始まりをt=0とした。モデルが単純なため,収れんの様子が分かり難いので,重み係数の厳密解(相関係数行列の逆行列として,求まる。図22(c)参照)からの偏差を示したのが,図47である。この図から,第3,第4の形態で示した技術によって,相関形受信に必要な重み係数が求まることが分かる。
【0288】
<移動機の構成>
次に,本発明の実施の形態による移動機200について説明する(第5の形態)。移動機200の受信装置の構成は,基本的には無線基地局装置120と変わらないが,異なる点は,自局宛の信号のみを復号すればよいので,逆行列要素生成部,線形結合部,および判定回路の数は少なくなる。また,同じ基地局から送られる自局宛と他局宛の信号は,通常,同期して送られ,かつそれらは直交している(逆拡散後の信号に干渉信号として現れない)ので,それらの信号の,伝送経路が異なり,遅延時間が違ってきた場合のみ,干渉信号源となる。
【0289】
逆行列要素生成部51についても,無線基地局装置120について述べた種々の形態の何れも適用することができるが,図35の線形結合部の出力である拡張拡散信号q1(t)を,重み付け係数を求めると同時に,受信信号の逆拡散に使用することが,整合フィルタ3の構成を簡略化するので,その方法について説明する。
【0290】
図48は,移動機200の構成を示すブロック図である。この図では,ユーザ信号数(ユーザ数)L=1の復号に必要な部分のみを示している。また,第1〜4の形態による無線基地局装置120と同じ構成要素には同じ符号を付し,その詳細な説明を省略する。
【0291】
図48に示す移動機200には,逆行列要素生成部51〜5Kに代えて,(N+1)個の重み係数生成部191,19L+1,192L+1,…,19NL+1が設けられ,整合フィルタバンク3に代えて拡張整合フィルタバンク13が設けられる。また,線形結合部61〜6Kは省略される。
【0292】
ここで,Nは図4に示す受信信号の観測窓長(図4(A)ではN=2,(B)ではN=3),Lはユーザ信号数(ユーザ数)であり,拡散信号生成部4の符号の下付き符号“1”,“L+1”,“NL+1”等は,各ユーザ信号の観測窓内におけるビット番号に対応している。
【0293】
図49は,拡張整合フィルタバンク13の構成を示すブロック図である。合成部13は,(N+1)個の乗算器1301,130L+1,1302L+1,…,130NL+1,(N+1)個のMF1311,131L+1,1312L+1,…,131NL+1,(N+1)個のSHC1321,132L+1,1322L+2,…,132NL+1,を有する。
【0294】
重み係数生成部191,19L+1,192L+1,…,19NL+1は,拡張拡散信号q1(t),qL+1(t),q2L+1(t),…,qNL+1(t)をそれぞれ出力する。ここで,拡張拡散信号qi(t)は,式(32)により表される。
【0295】
拡張拡散信号q1(t),qL+1(t),q2L+1(t),…,qNL+1(t)は,合成部13の乗算器1301,130L+1,1302L+1,…,130NL+1の第2入力端子にそれぞれ入力される。乗算器1301,130L+1,1302L+1,…,130NL+1は,第1入力端子に入力されたベースバンド信号Y(t)と第2入力端子にそれぞれ入力された拡張拡散信号q1(t)〜qNL+1(t)をそれぞれ乗算し,乗算結果をMF1311〜131NL+1にそれぞれ与える。乗算結果は,MF1311〜131NL+1によってそれぞれ積分される。積分時間は,ビット長をTとすると,(N+1)Tである。積分結果はSHC1321〜132NL+1に与えられる。
【0296】
SHC1321〜132NL+1は,それぞれの観測窓の終端でサンプリングした値を出力する。
【0297】
拡張整合フィルタバンク13の出力は,判定回路71によって,離散的値または,符号が識別される。
【0298】
尚,ここで使用する拡散信号は,重み付け係数を求めるためだけではなく,受信信号の逆拡散にも使用するので,受信信号に対して,チップ同期(チップ長の数分の1以下の精度で同期している)している必要がある。重み付け係数の演算精度を高めるために,複数回反復する場合は,最終回を受信信号と同期させる。図36の例では,(a)の場合は,第3回目が受信信号とチップ同期させる。ただし,最終回を除いては,(b)に示した,時間シフトした変形拡散信号を用いて,演算を行い,その収れん値を最終回の初期値として演算を反復することは可能である。
【0299】
以上,第1の形態から第5の形態まで説明したが,それらに対して共通の変形例について,説明する。
【0300】
希望信号のビット番号をkとし,希望ビットに対する重み係数xkで,他のすべての重み係数を割った値を,新たな重み係数xj´=xj/xk(j=1,2,…,K)として,線形結合部6に入力すると,その出力は,x1,x2,…,xKを入力した場合に比べて,1/xK倍されたものとなる。従って,xkをビット毎に求める代わりに,予測される平均値を用いてレベルの変化を無視するか,送信される変調信号に振幅情報がない(例えば,BPSK)場合には,xkを定数(例えば1)とすることができる。この場合,希望信号ビットに対する重み係数を求める装置(図13に示した第1係数生成部,図34に示した,希望ビットに対する帰還部5011)を省略することができる。
【0301】
図17に示した帰還ループの利得に応じた誤差の補正(利得補正),は,図34(または図35)に示した整合フィルタ(MF)51b,52b,…,5Kbに対して適用しても,同じ効果がある。すなわち,整合フィルタ(MF)51b,52b,…,5Kbの出力をそれぞれの入力に加える。このとき,フィルタの入出力で形成される局所的帰還ループの利得は,それぞれの整合フィルタの出力から入力へのパスに,増幅器か減衰器を入れて調整する。
【0302】
帰還部と線形結合部で形成される帰還ループにおいて,反転増幅器とLPF(または整合フィルタ)の接続順を変えることができる(図13の例では、増幅器51gとLPF51hの接続順を変える。図14の例では、増幅器52gとLPF52hの接続順を変える)。また,反転増幅器は,帰還ループ内であれば位置を変えることができる。ただし,帰還ループ内で,加算復は,減算を行う箇所があれば,そのレベルと符号を変える必要がある。
【0303】
図34に示した回路で,合成器51eの出力から,帰還部5011〜501Kるの入力までの間に,増幅器または,反転増幅器を挿入し,各帰還部(5011〜501K)内の反転増幅器の一部または全部を省略することができる。但し,増幅器を入れた場合は,帰還ループ内の何れかの箇所に反転器を挿入して,負帰還ループとして動作させる必要がある。
【0304】
帰還ループ内の何れかのコンポーネント(例えば、図13、図34の乗算器51d1〜51dk、図34の乗算器51a〜5Ka,MF51b〜MF5Kb)が能動素子で形成され,反転増幅器なしで,帰還ループの利得が確保できる場合は,反転増幅器を反転減衰器に置き換えることができる。
【0305】
これまで述べた実施の形態は本発明を無線通信に適用したものであるが,本発明は無線通信だけでなく,有線通信にも適用することができる。
【0306】
【発明の効果】
本発明の,特に請求項1〜3に記載の手法を用いた場合には,干渉除去の対象となるビット数をKとすると,従来Kの3乗に比例していた回路規模を,Kの2乗に比例した規模に縮小できる。
【0307】
また,希望信号1ビットの復号に必要なK個の重み係数を求める時間を短縮でき,相関係数を求める整合フィルタの積分時間も短縮できる。
【0308】
さらに,Kに比べ,復号するデータ列数Mが小さい場合(移動機に適用した場合がこれに該当する)には,整合フィルタの数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による移動通信ネットワークシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】無線基地局装置により受信される非同期かつマルチレートの場合のDS−CDMA方式による信号の構成を示す。
【図3】無線基地局装置により受信されるDS−CDMA方式による信号の構成を示し,(A)は非同期の場合の受信信号の構成を,(B)は同期している場合の受信信号の構成をそれぞれ示す。
【図4】観測窓の概念を示す図で,(A)は観測窓長N=2,ユーザ数Lのビット列を示し,(B)は観測窓長N=3,ユーザ数Lのビット列を示す。
【図5】無線基地局のマルチユーザ受信装置の構成を示すブロック図である。
【図6】拡散信号とバースト拡散信号の関係を示す。
【図7】整合フィルタバンクの詳細な構成を示すブロック図である。
【図8】相関係数を求めるための整合フィルタバンクの構成を示すブロック図である。
【図9】相関係数を求めるための整合フィルタバンクの他の構成を示すブロック図である。
【図10】拡散信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図11】第1の形態による無線基地局装置(特にマルチユーザ受信部)の構成を示すブロック図である。
【図12】第1の形態における重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図13】重み係数生成部の第1係数生成部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図14】重み係数生成部の第2係数生成部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図15】線形結合部の構成を示すブロック図である。
【図16】利得補正を行った第1係数生成部の帰還部の構成を示す図である。
【図17】利得補正を行った第1係数生成部の帰還部の他の構成を示す図である。
【図18】MMSE補正を行う箇所を変更した第1係数生成部の帰還部の構成を示す図である。
【図19】MMSE補正を行う箇所を変更した第1係数生成部の帰還部の他の構成を示す図である。
【図20】図13に示した第1係数生成部の帰還部の他の構成を示す図である。
【図21】シミュレーションに用いたユーザ信号とそれに対応する拡散信号の波形を示す図である。
【図22】シミュレーションに用いた拡散信号のチップ列と相関係数行列の逆行列の具体的数値を示す図である。
【図23】シミュレーションの結果である,重み係数の時間変化を示す図である。
【図24】シミュレーションの結果である,重み係数の厳密解からの偏差の時間変化を示す図である。
【図25】シミュレーションの結果である,重み係数の厳密解からの偏差の時間変化を示す図である。
【図26】第1の形態(変形例)による無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図27】相関係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図28】重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図29】第1係数生成部の変換の第1ステップで,サンプル保持回路を除去した構成を示す。
【図30】第1係数生成部の変換の第2ステップで,重み係数を乗じる位置をMFの出力から入力に変更した構成を示す。
【図31】第1係数生成部の変換の第3ステップで,MFと帰還ループフィルタを置換した構成を示す。
【図32】第1係数生成部の変換の第4ステップで,乗算器による乗算の順序を入れ換えた構成を示す。
【図33】第2係数生成部の変換後の構成を示すブロック図である
【図34】重み係数生成部(第2の形態)の詳細な構成を示すブロック図である。
【図35】重み係数生成部(第2の形態)の詳細な構成を示すブロック図である。
【図36】重み係数生成部における反復演算についての2つの手法を示す図である。
【図37】変形拡散信号生成部を有する第3の形態による無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図38】(a)は,非同期に受信されるシングルレートの2つのユーザ信号のそれぞれ2つのビットに対応する拡散信号の位置を示し,(b)〜(d)は,これらの拡散信号を希望信号ビットのある区間(1ビット長)にシフトさせたものを示している。
【図39】(a)は,L個のユーザ信号の各ビットに対応する拡散信号の位置を示し,(b)〜(d)は,各拡散信号を希望信号ビットのある区間(1ビット長)へシフトした状態を示す。
【図40】重み係数生成部(第2の形態)の帰還部における乗算器の2つの入力と区間の対応関係を示す。
【図41】第3の形態における重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図42】(a)は,図38(a)と同じ拡散信号の配置を示し,区間を1/2ビットごとに6区間に分割している点が異なる。(b)〜(d)は,各区間の拡散信号を希望信号ビットの前半である区間3にシフトされた様子を示す。
【図43】1/Qビット法による重み係数生成部における帰還部および線形結合部の乗算器の構成を示すブロック図である。
【図44】(a)および(b)は1ビット法による帰還部および線形結合部の乗算器の構成を示す。
【図45】1/Qビット法による重み係数生成部の構成を示すブロック図である。
【図46】1ビット法を検証するために行ったシミュレーションの結果(重み係数の時間変化)を示すグラフである。
【図47】シミュレーションの結果を重み係数の厳密解からの偏差で示したグラフである。
【図48】本発明の実施の形態による移動機の構成を示すブロック図である。
【図49】拡張拡散信号による逆拡散を行うための整合フィルタバンクの構成を示す図である。
【符号の説明】
1201〜1204 無線基地局装置。
200 移動機
3 整合フィルタバンク
4 拡散信号生成部
51〜5K,91〜9K,181〜18K,191〜19NL+1 重み係数生成部
61〜6K,512,522,11a1〜11aK 線形結合部
8 MMSE補正部
10,511,521 相関係数生成部
11 重み係数演算部
12 変形拡散信号生成部
13 拡張整合フィルタバンク
14 逆行列演算部
15,10a1〜10aK 相関係数整合フィルタバンク
16 変形整合フィルタバンク
513,523,11b1〜11bK 帰還部
3a1〜3aK,51a1〜51aK,51d1〜51dK 乗算器
3b1〜3bK,51b1〜51bK 整合フィルタ(MF)
51g,52g 反転増幅器
51e,52e,701〜70p 合成器
801〜80p 分配器
Claims (19)
- DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)を生成する,拡散信号生成部と,
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングして出力する整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,前記拡散信号間の相関係数を要素とする,K×K行列の相関係数行列Rを生成する相関係数生成部,または前記Rの対角要素に,背景雑音電力密度と前記対角要素に対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例する値を加えた,変形相関係数行列R´を生成する変形相関係数生成部と,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対する,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
kを希望信号のビット番号とすると,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の逆行列を演算し,前記逆行列の第k行または第k列を,前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)とし,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対応する受信信号が存在する区間を含む観測区間を,所定の長さτで均等に分割して,最も早い時間帯から順番に番号を付与し,区間1,区間2,…,区間Pと呼び,
前記拡散信号生成部は,前記拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)に対して,それぞれτの整数倍ずつ進んだ,または遅れた,複数の変形拡散信号,または前記変形拡散信号全体を,所定の時間進めるか,遅らせた信号を生成し,
前記P個の区間のひとつを区間p0とし,
p<p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の,区間pに属する部分を時間(p0−p)τだけ遅らせたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
p>p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の区間pに属する部分を時間(p−p0)τだけ進ませたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
区間p0に関しては,拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)が区間p0に属する部分を拡散信号sip(t)とし,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数または前記重み係数の演算を,前記拡散信号sip(t)(j=1,2,…,K,p=1,2,…,P)と,積分時間が前記区間長と同じτである複数の整合フィルタを使って,区間p0において行う,
マルチユーザ受信機。 - DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号を生成する,拡散信号生成部と
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングした値を出力する,整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)からK個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記重み係数生成部は,
前記K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)と,K個の重み係数xj(j=1,2,…,K)をそれぞれ乗算して,出力sj(t)xjを得るK個の乗算器j(j=1,2,…,K)と,それらの出力を全て加え合わせる合成器で構成される線形結合部と,
前記線形結合部の出力を前記拡散信号のおのおので乗算する第2乗算器j(j=1,2,…,K)と,
K個の整合フィルタj(j=1,2,…,K)を備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
前記線形結合部の出力から,希望信号ビットに対応する拡散信号sk(t)を減じてから,前記拡散信号sk(t)を第2乗算器kによって乗算し,その出力を反転増幅器で反転して,整合フィルタkに通した出力に所定の定数を加算した出力を重み係数xkとして,前記線形結合部の乗算器kに接続し,
前記線形結合部の出力に,前記拡散信号sk(t)と異なるK−1個の前記拡散信号sj(t)を第2乗算器jによって乗算し,その出力を反転増幅器で反転して,それぞれを整合フィルタjに通した出力をxjとして,前記線形結合部の乗算器jに接続した構成,
または,上記の構成に加えて,乗算器j(j=1,2,…,K)の出力sj(t)xjに,背景雑音電力密度とビット番号jに対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例した値を乗じて,第2乗算器j(j=1,2,…,K)の入力側に加算する構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号fj(t)(j=1,2,…,L)を生成する,拡散信号生成部と,
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングして出力する,整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の出力(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対応する受信信号が存在する区間を含む観測区間を,所定の長さτで均等に分割して,最も早い時間帯から順番に番号を付与し,区間1,区間2,…,区間Pと呼び,
前記拡散信号生成部は,前記拡散信号fi(t)(i=1,2,…,L)に対して,それぞれτの整数倍ずつ進んだ,または遅れた,複数の変形拡散信号,または前記変形拡散信号全体を,所定の時間進めるか,遅らせた信号を生成し,
前記重み係数生成部は,
積分時間が前記区間長と同じτであるK個の整合フィルタj(j=1,2,…,K)と,
多入力−1出力のP個の合成器p(p=1,2,…,P)と,
1入力−多出力のP個の分配器p(p=1,2,…,P)と,
前記P個の分配器pと前記K個の整合フィルタjとを接続する第1の接続網Lと,
前記K個の整合フィルタjと前記P個の合成器pとを接続する第2の接続網Rと,
複数の乗算器とを含み,
前記複数の乗算器を,ビット番号iと区間pに対応付けて,第1の乗算器ipおよび第2の乗算器ipと名付け,
前記P個の区間のひとつを区間p0とし,
p<p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の,区間pに属する部分を時間(p0−p)τだけ遅らせたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
p>p0である区間pに関して,拡散信号si(t)(j=1,2,…,K)の区間pに属する部分を時間(p−p0)τだけ進ませたものと,前記変形拡張信号とで一致する部分を拡散信号sip(t)とし,
区間p0に関しては,拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)が区間p0に属する部分を拡散信号sip(t)とし,
拡散信号sip(t)(j=1,2,…,K,p=1,2,…,P)と重み係数xj(j=1,2,…,K)とを,それぞれ第1の乗算器jpで乗算した結果を第2の接続網Rを経て合成器pで合成した出力を,
分配器pと,第1の接続網Lを経て出力し,
kを希望信号のビット番号とすると,
i=kであれば,前記第1の接続網Lの出力から変形拡散信号sip(t)を減じたものと拡散信号sip(t)とを,第2の乗算器ipで乗算し,
iがkと異なれば,前記第1の接続網Lの出力と拡散信号sip(t)とを第2の乗算器ipで乗算し,
前記第2の乗算器の出力を反転増幅器を経て整合フィルタiに入力し,前記整合フィルタiの出力に,i=kであれば,所定の定数を加え,
iがkと異なれば,そのままを重み係数xiとして,前記第1の乗算器ipに接続することを,全てまたは一部のpに対して行う構成を有し,
または,上記の構成に加え,
第1の乗算器ipの出力sjp(t)xjに,背景雑音電力密度とビット番号jに対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比に比例した値を乗じて,前記第2乗算器jpの前記第1の回路網L側の入力に加算する構成とすることを,全てまたは一部のpに対して行う構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項2または3において、
前記重み係数生成部は,前記重み係数生成部の前記整合フィルタの積分時間の周期で,上記演算を複数回反復する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項3において,
前記重み係数生成部は,
p≠qとすると,拡散信号sip(t)と拡散信号siq(t)とが,一方が零で,他方が零でない場合に,前記第1の乗算器ipと前記第1の乗算器iqの2つの乗算器が,1つの乗算器に置き換えられ,その出力が,1対2極のスイッチで,第2の回路網Rを経由して,合成器pと合成器qとに繋がれ,
前記第2の乗算器ipと前記第2の乗算器iqの2つの乗算器が,1つの乗算器に置き換えられ,その入力が,1対2極のスイッチで,第1の回路網Lを経由して,分配器pと分配器qとに繋がれた構成を有するか,
または,前記第1の乗算器ipと前記第1の乗算器iqを1つの乗算器に置き換えない構成とするか,
または,前記第2の乗算器ipと前記第2の乗算器iqを1つの乗算器に置き換えない構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項3において,
前記重み係数生成部は,希望信号のビット番号をkとすると,拡散信号sk(t)が零で,かつ,p<p0である区間pに関する拡散信号sip(t)を使って前記重み係数(x1,x2,…,xK)を求める構成とし,
K個の整合フィルタのすべて,または一部の電荷が零になるか,強制的に零にした時点で帰還ループを起動する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項3において,
前記重み係数生成部の構成要素である前記P個の合成器pの入力端子数と前記P個の分配器pの出力端子数と,第1の回路網Lと第2の回路網Rの入出力の端子数と,を増やし,第1の回路網Lと第2の回路網Rの入出力間に複数のスイッチを設け,受信信号が特定の区間に集中しても,K個の整合フィルタとP個の合成器pとP個の分配器pとで形成される帰還ループの必要な数の経路を確保するように,外部の制御装置によって制御する構成とした,
マルチユーザ受信機。 - 請求項3において,
前記重み係数生成部の構成要素であるの出力と前記第1の乗算器jpと前記第2の乗算器jpの入力と前記拡散信号生成部の出力との間に第3の回路網Sを設け,その入出力間に複数のスイッチを設け,前記拡散信号生成部の出力の一部が,第1の乗算器jpおよび第2の乗算器jpの入力に,選択的または共通に接続されるよう,外部の制御装置によって制御する構成とした,
マルチユーザ受信機。 - DS−CDMAシステムの受信信号から複数(L個とする)の拡散信号を生成する,拡散信号生成部と
前記受信信号を前記拡散信号によって逆拡散して得られる出力を複数の整合フィルタに入力し,該整合フィルタの出力をサンプリングした値を出力する整合フィルタバンクと,
前記整合フィルタバンクの出力の中の複数(K個とする)の値(y1,y2,…,yK)に対応する,K個の拡散信号sj(t)(j=1,2,…,K)から,前記拡散信号間の相関係数を要素とする,K×K行列の相関係数行列Rを生成する相関係数生成部,またはRの対角要素に,背景雑音電力密度と前記対角要素に対応する受信信号のビット当たりの推定受信電力の比を加えた,変形相関係数行列R´を生成する変形相関係数生成部と,
前記K個の値(y1,y2,…,yK)に対する,K個の重み係数(x1,x2,…,xK)を算出する,重み係数生成部と,
前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)と前記K個の値(y1,y2,…,yK)の各々の積の総和y1x1+y2x2+…+yKxKを求める線形結合部と,を備え,
前記線形結合部の出力について,離散的レベルまたは符号を判定することで,希望信号ビットを復号するマルチユーザ受信機において,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の第j列または第j行(a1j,a2j,…,aKj)と,重み係数(x1,x2,…,xK)の各々の積を作り出す,K個の乗算器と,それらの出力を全て加え合わせて,a1jx1+a2jx2+…+aKjxKを作り出す合成器で構成されるK個の線形結合部j(j=1,2,…,K)とを,備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
線形結合部kの出力から第1の定数を減じ,反転増幅器で反転して低域フィルタに通し,その出力に第2の定数を加えた出力を,xkとして前記K個の線形結合部に接続し,
j≠kであるK−1個の線形結合部jの出力を反転増幅器で反転して低域フィルタに通した出力を,xjとして,前記K個の線形結合部に接続した構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項9において,
前記重み係数生成部は,
前記相関係数行列Rまたは前記変形相関係数行列R´の第j列または第行(a´1j,a´2j,…,a´Kj)と,重み係数(x1,x2,…,xK)との内積(a´1jx1+a´2jx2+…+a´KjxK)を作り出す,K個の乗算器とそれらの出力を全て加え合わせる合成器で構成されるK個の線形結合部j(j=1,2,…,K)を,備え,
kを希望信号のビット番号とすると,
線形結合部kの出力を反転増幅器で反転して低域フィルタに通した出力を,xk´として,
線形結合部kの中でykとxkの乗算を行う乗算器に,xkの代わりに接続し,
xk´に定数を加えた出力をxkとして,j≠kであるK−1個の線形結合部jに接続し,
j≠kであるK−1個の線形結合部jの出力を反転増幅器で反転して低域フィルタに通した出力をxjとして,前記K個の線形結合部に接続する構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項9において,
前記重み係数生成部は,
前記K個の線形結合部の後段の低域フィルタの出力から,全ての線形結合部の乗算器に分配されていた前記K個の重み係数(x1,x2,…,xK)の一部を,前記低域フィルタの入力から取り出す構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項2から11の何れか1項において,
前記重み係数生成部は,
前記線形結合器に接続された低域フィルタまたは整合フィルタの一部または全部の出力を前記フィルタのそれぞれの入力に加え合わせ,前記フィルタの入力と出力で局所的に正帰還ループが形成される構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項2から12の何れか1項において,
前記重み係数生成部を,
kを希望信号のビット番号とすると,重み係数xkを,定数として全ての線形結合器の乗算器に与え,前記重み係数xkを変数として求める場合に必要であった構成要素を除去した構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項2から13の何れか1項において,
前記重み係数生成部の構成要素である前記反転増幅器の全てまたは一部の位置が前記反転増幅器を構成要素とする帰還ループの任意の位置に変えられた
マルチユーザ受信機。 - 請求項2から14の何れか1項において,
前記重み係数生成部の構成要素である前記反転増幅器の全てまたは一部の位置が前記反転増幅器を構成要素とする複数の帰還ループの共通の経路の中に変えられた
マルチユーザ受信機。 - 請求項2から15の何れかの1項において,
前記重み係数生成部の構成要素である,反転増幅器を,反転器または反転減衰器に変え,前記反転器または反転減衰器を含む帰還ループを形成する何れかの回路を利得のある回路に変更した構成を有する,
マルチユーザ受信機。 - 請求項2から16の何れか1項において,
前記重み係数生成部は,
背景雑音電力密度とビット当たりの受信信号電力比の値を零として,前記値を推定する回路を有しない,
マルチユーザ受信機。 - 移動通信ネットワークシステムに設けられる無線基地局装置であって,
請求項1から17のいずれか1項に記載のマルチユーザ受信機を備えている無線基地局装置。 - 移動通信ネットワークに接続して無線通信を行う移動機であって,
請求項1から17のいずれか1項に記載のマルチユーザ受信機を備えている移動機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002298015A JP2004135099A (ja) | 2002-10-10 | 2002-10-10 | マルチユーザ受信機ならびに該マルチユーザ受信機を有する無線基地局装置および移動機 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010515324A (ja) * | 2006-12-28 | 2010-05-06 | セントル ナショナル デチュード スパシアル (セー.エヌ.エ.エス) | Boc変調無線航法信号を受信する方法および装置 |
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2002
- 2002-10-10 JP JP2002298015A patent/JP2004135099A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010515324A (ja) * | 2006-12-28 | 2010-05-06 | セントル ナショナル デチュード スパシアル (セー.エヌ.エ.エス) | Boc変調無線航法信号を受信する方法および装置 |
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