JP2004132850A - 超音波検査方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】検査対象の組織に関する情報が不明な場合においても、適切な探傷条件を提供すること。
【解決手段】検査対象に関する情報として、形状情報、接合情報(接合方法、接合部の材質、作業手順)を入力し、入力した情報を基に、検査対象における超音波伝播として、金属の結晶組織の成長方向を予測し、この予測結果を基に超音波伝播径路を予測し、この予測結果を基に、検査対象に適した探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波送信位置、超音波の受信位置を決定する。
【選択図】 図1
【解決手段】検査対象に関する情報として、形状情報、接合情報(接合方法、接合部の材質、作業手順)を入力し、入力した情報を基に、検査対象における超音波伝播として、金属の結晶組織の成長方向を予測し、この予測結果を基に超音波伝播径路を予測し、この予測結果を基に、検査対象に適した探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波送信位置、超音波の受信位置を決定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、その一部が異方性を有する金属または合金等の、欠陥、き裂、きずなどについて非破壊評価する技術のうち、特に超音波を使用した技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材の検査方法として、超音波による手法(超音波探傷法)が一般に用いられている。超音波探傷法のひとつとして、被検査体に斜め方向に超音波を入射する手法(斜角探傷法)がある。斜角探傷法は、例えば、金属製の板材や管の、接合部(溶接部等)の検査に用いられている。
【0003】
斜め方向に超音波を入射する理由として、被検査体内部の反射源(欠陥等)からの反射波をより強く受信する入射角度を選択することで、反射源である欠陥を見つけ易くすることが挙げられる。一般には、横波の45度、縦波の45度などが広く用いられている。
【0004】
通常、超音波は音を伝える媒質の内部を直線的に伝播(直進)することが知られている。実際、水などの液体や、超音波検査の対象となる炭素鋼(母材及び溶接部)といった、ほとんどの媒質において超音波は直進するとして扱ってよい。しかし、金属単結晶材、オーステナイト系ステンレス鋼溶接部、炭素繊維、など一部の媒質では、音の伝播特性が等方的ではなく、方向による依存性がある(異方性がある、という)。
【0005】
オーステナイト系ステンレス鋼溶接部の場合、超音波の伝わる方向ごとに、音速や減衰率が変化する。このために、超音波による溶接部検査が困難であることが一般に知られている(非特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】
「オーステナイト系溶接部の超音波探傷」(「溶接技術」、1994年10月号)
例えば、非特許文献1によれば、オーステナイト系溶接部は配向の整った結晶組織(柱状晶という)であり、これにより、異方性特有の超音波の挙動が生じるために、異方性のない炭素鋼溶接部等に対する超音波探傷試験方法をそのまま適用しただけでは十分な検査ができない、と記載されている。異方性特有の超音波挙動としては、柱状組織の成長方向に対する音速の変化、柱状組織における散乱減衰の増大、柱状組織の成長方向に対する超音波伝播方向の曲がり、といった現象が挙げられている。
【0007】
このように、異方性を有する媒質(異方性材という)に対する超音波検査方法として、通常の異方性を有しない媒質(等方性材という)に対する方法を直接適用しても有効でない場合が多い。そこで、以前より、超音波の被検査体への入射角を工夫する探傷法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭51−140779号公報
例えば、特許文献1にでは、オーステナイト系材料の溶接部の超音波斜角探傷を行う場合、溶接金属を考慮しその結晶方向に対して35度±5度の角度で超音波が透過するように屈折角を決定する方法を提案している。
【0009】
また、柱状結晶金属材料よりなる被検査体に超音波縦波探傷を行うに当たって、探触子からの超音波が結晶方向に対してほぼ45度の角度で被検査体に透過するように屈折角を設定する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献2】
特開昭57−173750号公報
これらは、溶接部内に存在する金属結晶の結晶成長方向に対して、45度の角度で伝播する縦波超音波の減衰が小さいという実験結果に基づいて提案された手法である。
【0011】
しかし、これらの方法は、溶接部内に形成される溶接金属の組織方向を検査に先立って把握できる場合にのみ有効な手法であって、被検査体の溶接組織を予め把握するためには、溶接部の断面観察等の破壊的な手法が必要であり、予め溶接組織が不明な、被検査体に対する超音波検査には適用することができない。
さらに、通常、溶接金属内部の柱状晶の結晶成長方向は、溶接部内部及び表面における場所ごとに連続的な変化を示している。ゆえに、局所的な結晶組織を把握して、その部位に対して最適となるように超音波の入射角度を設定したとしても、溶接部は、場所ごとに結晶成長方向が連続的に変化しているため、当所設定した超音波屈折角の設定が、超音波が伝播する全ての領域、すなわち、検査したい領域にわたって有効とはならないという問題がある。
【0012】
そこで、溶接部全体の超音波伝播の状況を把握することを目的に、溶接金属における結晶組織(柱状晶)の成長方向を簡易的な数式で記述し、さらに、超音波の伝播状況を数値的に解析する技術が検討されている(非特許文献2参照)。
【0013】
【非特許文献2】
Computerized ultrasonic ray tracing in austenitic steel(J.A.Ogilvy著、NDT INTERNATIONAL誌、1985年、vol.18、No.2)
上記非特許文献2では、柱状組織の成長方向を簡単な数式で近似し、金属内部の超音波伝播状況を光線追跡法(レイトレース法)と呼ばれる近似解法を用いて、溶接部における複雑な超音波の挙動を計算している。
【0014】
これらの手法においては、単純形状溶接部に対する近似的な取り扱いのみが可能である。例えば、先の非特許文献2によると、V字型の開先の場合、溶接組織の結晶成長方向を決定する因子として、溶接部形状に起因する2つパラメータ(開先の幅D、母材と溶接部の境界での開先の傾斜角α)及び溶接組織の流れを微調整する2つのパラメータ(母材と溶接部の境界での結晶組織の流れ方向を表す角度T、結晶組織方向の連続的な変化の程度を表すパラメータη)によって特徴付けられている。
【0015】
これらの溶接組織の結晶成長方向を表すパラメータの値を決定するためには、実際の溶接組織の断面写真を用いて比較検討する作業が必要不可欠である。しかし、通常の断面写真を得るには、検査対象の一部を破壊する必要があるため、実際の超音波検査の現場においては被検査体の断面観察結果が得られない場合がほとんどである。ゆえに、該手法は、断面の組織観察が可能な被検査体の超音波検査に適用しかすることができず、そのような場合は極めてまれである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来方法では、検査に先立って、被検査体の異方性を特徴付ける情報(例えば、溶接部の断面観察写真等)が得られない場合においては、被検査体の有する異方性を把握することができず、超音波の伝播状況を予測するが困難である。
【0017】
例えば、オーステナイト系ステンレス鋼溶接部の超音波検査の場合、複雑な超音波挙動(結晶組織の成長方向に対する音速や減衰率の変化、これら音速や減衰率の変化によって引き起こされる被検査体における超音波伝播方向の曲がり、等の現象)の予想が困難なため、超音波探傷を適切な条件で実施することができないという問題点があった。
【0018】
本発明の課題は、検査対象の組織に関する情報が不明な場合においても、適切な探傷条件を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成される検査対象に超音波を所定の角度で送信し、前記検査対象の内部で反射した超音波を受信し、この受信結果から前記検査対象の健全性を評価する超音波検査方法において、前記検査対象に関する情報を入力する第1の処理と、前記第1の処理に得られた情報から前記検査対象における超音波伝播を予測する第2の処理と、前記第2の処理の処理結果を基に前記検査対象に適した探傷条件を決定する第3の処理とを含むことを特徴とする超音波検査方法を採用したものである。
【0020】
前記超音波検査方法を採用するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0021】
(1)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の形状情報を含むこと。
【0022】
(2)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の接合情報を含むこと。
【0023】
(3)前記検査対象の接合情報として、接合方法、接合部の材質、接合の作業手順のうち少なくとも1つを含むこと。
【0024】
(4)前記第2の処理として、前記検査対象の結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測処理と、前記成長方向予測処理の処理結果を基に前記予測された結晶組織における超音波伝播径路を予測する伝播径路予測処理とを含むこと。
【0025】
(5)前記伝播径路予測処理の処理結果として、前記検査対象を伝播する超音波の径路を表示する表示処理を含むこと。
【0026】
(6)前記第3の処理における探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置のうち少なくとも1つを含むこと。
【0027】
前記した手段によれば、検査対象に関する情報として、例えば、接合方法、接合部の形状、材質、接合の作業手順に関する情報が入力されたときには、検査対象に関する情報として、溶接部などの接合部における組織に関する情報が予め不明な場合においても、入力された情報に基づいて検査対象の組織の成長方向およびその溶接組織における超音波伝播径路を予測し、予測された超音波の伝播径路から、検査対象に適した探傷条件として、例えば、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置や、超音波の受信位置の情報を得ることができる。
【0028】
また、本発明は、少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成される検査対象に超音波を所定の角度で送信し、前記検査対象の内部で反射した超音波を受信し、この受信結果から前記検査対象の健全性を評価する超音波検査装置において、前記検査対象に関する情報を入力する入力手段と、前記入力手段の入力による情報から前記検査対象における超音波伝播を予測する予測手段と、前記予測手段の予測結果を基に前記検査対象に適した探傷条件を決定する決定手段とを有することを特徴とする超音波検査装置を構成したものである。
【0029】
前記超音波検査装置を構成するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0030】
(1)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の形状情報を含むこと。
【0031】
(2)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の接合情報を含むこと。
【0032】
(3)前記検査対象の接合情報として、接合方法、接合部の材質、接合の作業手順のうち少なくとも1つを含むこと。
【0033】
(4)前記予測手段による予測処理として、前記検査対象の結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測処理と、前記成長方向予測処理の処理結果を基に前記予測された結晶組織における超音波伝播径路を予測する伝播径路予測処理とを含むこと。
【0034】
(5)前記予測手段は、前記伝播径路予測処理の処理結果として、前記検査対象を伝播する超音波の径路を表示する表示処理を実行してなる。
【0035】
(6)前記決定手段における探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置のうち少なくとも1つを含むこと。
【0036】
前記した手段によれば、検査対象に関する情報として、例えば、接合方法、接合部の形状、材質、接合の作業手順に関する情報が入力されたときには、検査対象に関する情報として、溶接部などの接合部における組織に関する情報が予め不明な場合においても、入力された情報に基づいて検査対象の組織の成長方向およびその溶接組織における超音波伝播径路を予測し、予測された超音波の伝播径路から、検査対象に適した探傷条件として、例えば、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置や、超音波の受信位置の情報を得ることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
〈実施形態1〉
本発明に係る超音波検査方法は、超音波探傷方法として、図1に示すように、検査対象に関する情報を入力するための第1の処理(ステップ100)と、入力した情報を基に検査対象における超音波伝播を予測するための第2の処理(ステップ101)と、この予測結果を基に検査対象に適した探傷条件を決定するための第3の処理(ステップ102)とを含むことを特徴とするものである。ステップ100では、検査対象に関する情報として、形状情報、接合情報(接合方法、接合部の材質、作業手順)が入力され、ステップ101では、検査対象として、少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成されている場合、金属の結晶組織の成長方向を予測し、この予測結果を基に超音波伝播径路を予測する。ステップ102では、検査対象に適した探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置を決定することとしている。
【0039】
超音波検査方法を適用した超音波検査装置は、例えば、超音波探傷装置として、図2に示すように、探傷の中心機能を果たす統合システム200と、検査対象に関する情報を入力する入力装置(入力手段)204と、最適な探傷条件に関する情報を出力する出力装置(出力手段)205とを備えて構成されており、統合システム200は、結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測部201と、超音波の伝播径路を予測する伝播径路予測部202と、最適な探傷条件を決定する探傷条件決定部203から構成されている。
【0040】
入力装置204は、例えば、キーボード、ポインティングデバイスで構成され、統合システム200は、CPUとメモリ等を有する計算機で構成され、出力装置205は、例えば、モニタ(CRT)で構成されている。
【0041】
上記3つの処理のうち第1の処理は、入力装置204および統合システム200で行われ、第2の処理のうち検査対象の結晶組織の成長方向を予測する処理は成長方向予測部201で行われ、この予測結果による結晶の成長方向と検査対象に関する情報を基に検査対象における超音波伝播径路を予測するための処理は伝播径路予測部202で行われ、第3の処理は、伝播径路予測部202の予測結果を基に検査対象に適した探傷条件を出力する探傷条件決定部203で行われる。
【0042】
以下、基本となる3つの処理の具体的内容について説明する。まず、第1の処理として、検査対象に関する情報を入力するための処理について説明する。
【0043】
検査対象に関する情報を入力するに際しては、オペレータがキーボードを操作すると、図3に示すような情報入力画面300が表示され、母材と溶接金属を含むものを検査対象としたときには、溶接部などの金属接合部に関する情報として、検査対象の形状情報や接合情報を入力することが促される。
【0044】
検査対象(被検査体)の形状情報とは、図4に示すように、接合部の断面に関して、母材10の板厚401、母材11の板厚402、母材11と溶接金属12との角度403を含むものとし、接合する母材11に段差がある場合には、高さのずれ404、405に関する寸法を含んでもよい。さらに、検査対象の形状情報としては、検査対象の寸法を記述する数値だけではなく、検査対象の接合部またはそれと同条件で接合された模擬試験体の接合部の断面マクロ観察写真など画像情報として取り扱ってもよい。
【0045】
また検査対象の接合情報とは、接合方法、すなわち、溶接の種類、例えば、ティグ溶接、アーク溶接など、接合部の材質、例えば、溶接部の場合、母材10、11の材質、溶接金属12の材質、例えば、ステンレス、接合の作業手順を含む。
【0046】
接合の作業手順とは、図5に示すように、ティグ溶接の場合、鱗状に形成されるパス(1回の溶接作業で盛られる溶接金属12)に関する情報である。図5において、パス部分501に添えられた▲1▼〜▲7▼の数字は、溶接金属を盛る順序を表す。通常、溶接金属12を盛る数は、数回から数十回程度になる。このため、接合の作業手順とは、パスの盛る手順およびパスを盛る場所、盛られる溶接金属(通常は溶接棒)の寸法(溶接棒の径)、溶接時の重力の向き(鉛直方向)502の情報を含む。
【0047】
その他、特に、検査対象が溶接部の場合、検査対象の接合情報として、溶接電圧、溶接電流、溶接速度の情報を含むこともできる。
【0048】
また検査対象の接合情報としては、図6および図7に示すように、溶接条件に関する情報がある。図6に示す溶接条件は、溶接作業者に指示される溶接条件であって、母材の種類、溶接棒の種類、シールドガスの種類、予熱温度、層間温度、母材の厚さ、溶接電圧、溶接速度に関する情報が表形式で入力される。また、図7に示す溶接条件は、溶接作業者が実施した作業に関する溶接条件であって、溶接方法、溶接棒の径、層数、予熱温度、層間温度、溶接電流、姿勢(溶接時の姿勢)、施工日に関する情報が表形式で入力される。実際の作業においは、接合作業箇所および作業ごとに、図6および図7に示したように、指示内容および作業記録が作成されるため、それらの情報が溶接部の組織方向を予測するための基本データとして入力される。
【0049】
次に、第1の処理で得られた情報を基に、結晶組織の成長方向を予測するための処理内容を図8にしたがって説明する。
【0050】
まず、パラメータの入力として、検査対象に関する情報の入力を条件として(ステップ801、802)、モデル化により結晶組織の成長方向を計算する(ステップ803)、この場合、組織方向のモデル化が行われる(ステップ804)。以下、金属の溶接部などの接合部を検査する場合について、組織方向の計算方法を説明する。
【0051】
組織方向のモデル化を行なうに際して、前記非特許文献1に記載されているように、オーステナイト系溶接部は、溶接時の熱が冷却する際に金属が凝固することで生じる、結晶配向の揃った結晶組織(柱状晶)から構成されており、この柱状晶の持つ音響的な異方性によって超音波の複雑な挙動(超音波の曲がりや減衰)が生じるために、オーステナイト系材料の超音波探傷試験が困難なものになっている方法をそのまま適用しただけでは十分な検査ができない。
【0052】
そこで、オーステナイト系材料をはじめとする異方性材料に対して、適切な超音波検査を実施するためには、検査対象の組織に関する情報を把握しなければならない。
【0053】
金属の溶接部を例にして、検査対象の情報を基にその組織方向を予測する方法を、以下の記載する。
【0054】
(1)溶接部の断面形状を作図する。このとき、母材及び溶接金属のそれぞれの寸法(板厚401〜402及び角度403)が基となるデータである。
(2)接合部の組織を予測するために、少なくとも、溶接方法の種類、母材及び溶接金属の材質、開先形状、溶接棒の種類及び径、溶接作業の姿勢金属に関する情報を入力する。
【0055】
(3)溶接組織を予測する。ここでは、まず、組織の流れを大きく分類するにとどめる。厳密な予測はパラメータが多く複雑なため、簡易的な予測方法を採用する。溶接組織は、溶接作業後の組織の冷却にともなって成長する。そのため、溶接組織の流れ方向は、およそ、冷却されていく熱の温度勾配に直交する方向になると近似できる。
【0056】
溶接部に関連するパラメータは多数存在する。例えば、V字の継手に関する溶接形状の一例を図9に示す。
【0057】
図9において、a、bは母材の板厚を示し、cは開先の角度、dは母材間のギャップ、eは母材の高さ方向のずれを示す。
【0058】
さらに、熱や電気、材質のパラメータを加えると、溶接の組織に影響を及ぼすパラメータは膨大になり、厳密な取り扱いは困難である。そこで、溶接組織のパターンを大きく2つに分類する。
【0059】
第1は、溶接金属の溶け込みが悪い場合あるいは、一回の作業で溶接する場合である。
【0060】
例えば、図10に示すようなアーク溶接による多層盛りや、図11に示すような電子ビーム溶接などがこれに該当する。これらの場合は、溶接のパスの影響がそのまま組織として残留するため、アーク溶接であれば、どの場所にどれだけの太さでいくつパスを盛ったかが分かれば、組織を予測することができる。
【0061】
例えば、アーク溶接の場合は、1回の肉盛(うろこ状)の上部中心から放射状に組織が成長し、全体としては、肉盛が数層にわたって積み重なる。また、電子ビーム溶接では、冷却が素早く行われるため、母材境界面から垂直方向に組織が成長し、開先の中心で衝突する組織となる。
【0062】
第2は、比較的、溶接金属の溶け込みがよい場合である。例えば、TIG溶接によるステンレス鋼の多層盛りの溶接(図5参照)などがこれに該当する。
【0063】
第2の場合の特徴は、多層に盛られたパスの形状がほとんど組織に影響していない点である。これは、一層盛られたその上に、新しいパスが盛られる場合、古い部分が再度溶融し再凝固するために、新しいパスによって、情報が消されていくためである。
【0064】
溶接組織が予測された後、第1の場合、すなわちアーク溶接や電子ビーム溶接の場合には、ステップ(5)へ移行し、第2の場合、すなわちティグ溶接の場合はステップ(4)へ進む。
【0065】
(4)ティグ溶接の場合、組織の流れを詳細に定量化する。ここで最も重要なパラメータは溶接姿勢である。すなわち、多層を盛る順序である。
【0066】
第1は、水平姿勢で溶接する場合である。この場合は、母材と溶接金属の間の組織母材と溶接金属の間での組織の成長方向が、境界面に垂直に組織が成長すると仮定してよい。接合部を水平に置いた姿勢で作業する場合、下から上に順々にパスが盛られていく。このため、溶接部の組織成長は、下から上に向かって成長していく。そして、最後の部分、すなわち溶接部上面においては、ほぼ垂直に傾斜した角度(φ)の組織となって、検査対象上側の面に到達する。これらの方向に線分の両端の接線を曲線として、組織の成長方向を計算する。両端の接線を補完する曲線としては、例えば、2次のベジエ曲線などを使用する。この計算過程の例を図12に示す。
【0067】
なお、ここで、2次のベジエ曲線とは、空間に3点(A、B、C)が与えられ、この3点の位置ベクトルをOA、OB、OCと書くとする。0から1までの値を取るパラメータtを用いて、(1−t)×(1−t)×OA + 2×(1−t)×OB + t×t×OC で表される位置ベクトルの軌跡として定義される。この曲線は、その両端でAおよびCを通るが、Bは通らないという特徴を持つ。
【0068】
図12に示す計算過程では、対象となる溶接部を母材に接する部分とそれ以外の領域に分ける。例えば、図12の領域(I)及び(III)は母材に接する部分であり、領域(II)は母材と接しない部分である。領域(I)及び(III)は、母材からの組織流れの影響の強い部分、領域(II)は溶接後の冷却過程による影響の強い部分を表す。これらの領域の境界である境界線6001、6002の決定方法は、例えば、以下のように行う。図12下枠内のD1及びD3は、肉盛1個の半分の大きさ、すなわち、溶接棒の半径の大きさとする。また、D2及びD4は、溶接部開先下部の距離を等分するように決定する。母材から垂直方向に、母材の影響を受けた組織方向のベクトル601を作図する。このベクトルと境界線6001の交点を求め、この交点から溶接部上部に直交する組織方向のベクトル602を作図する。組織方向を表す2つのベクトル601及び602を補完するようにベジエ曲線600を作図する。
【0069】
図12で示した3つの領域において、領域(I)及び(III)においては、組織方向が母材の影響を受け曲線的に分布し、領域(II)では、組織方向が上方に直線的に組織が成長する予想結果が得られる。
【0070】
第2は、垂直姿勢で溶接する場合である。この場合は、水平姿勢の場合と異なり、接合部を縦方向に置いた姿勢で溶接作業するため、単純に下から上へ、ではなく、融けた金属が垂れ流れないように、斜め上向き方向にパスが盛られていく。そのために、斜め上向きに組織が流れる。組織の斜め方向は、パスの盛る順序に対してほぼ直交方向になる。図13に、第2の場合の組織方向を模式的に示す。第1の場合においては、被検査体上側の面に到達する組織方向は垂直であったが、第2の場合においては、大局的な組織方向を表すベクトルは、パスが増えていく方向に対して直交する方向となる。また、母材と溶接部の境界の組織方向を決定する方法を図14に示す。第1の場合と同様、母材と溶接部の境界面(境界AB)から垂直方向に伸びるベクトル2311と、大局的な組織方向を表すベクトル2312の、2つのベクトルを補完する曲線として、近似する。なお、例えばベジエ曲線で組織方向を補完する場合は、1回の肉盛の寸法の半分(例えば、溶接棒の半径の値とする)を考慮して、図14の線分A’B’と大局的な組織方向を表すベクトルの交点2310を通るようにベクトル2311を設定する。実際の溶接部では、母材に近接する肉盛部において肉盛1個のおよそ半分の範囲で組織の流れが変化している現象をみることができる。そのため、このようにベクトル2311を設定することで、境界部付近における組織方向の変化の効果を近似的に取り扱うことができる。
【0071】
(5)溶接部の断面形状の各点における組織方向が決定されるので、断面形状と併せて、予測した組織方向を表示する(ステップ805)。
【0072】
以上の処理が行われると、ティグ溶接に関する予測結果として、図15に示すように、接合部の結晶組織における結晶成長方向の予測結果が表示される。例えば、オーステナイト系、ステンレス鋼の溶接部分の場合、特定の結晶方向(結晶軸〈001〉方向)に揃って結晶が成長することが知られており、図15に示す破線701は、結晶成長方向の予想結果を破線で示したものである。
【0073】
次に、第2の処理として、検査対象に関する情報と結晶の成長方向に関する情報を基に検査対象における超音波伝播径路を算出するための処理内容を図16のフローチャートにしたがって説明する。
【0074】
まず、計算に必要な情報として、第1の処理で入力された検査対象の情報と、結晶組織の成長方向に対する予測結果が入力される(ステップ1601、1602)。ここで、検査対象の情報とは、第1の処理において説明したものと同じである。また、結晶組織の成長方向とは、前記処理の出力結果であり、特定の結晶方位を表す量と、該方位の向いている方向(または平均的な方向)を含むものである。
【0075】
例えば、ステンレス鋼などのオーステナイト系材料の溶接部の場合、結晶組織の成長方向の情報として、特定の結晶方位であるステンレス鋼の結晶粒である立方晶の〈001〉方向と、〈001〉方位が被検査体のそれぞれの点において、どの方向を向いているかという量(方向ベクトル)を少なくとも含むものとする。
超音波の伝播を把握するためには、異方性を持つ組織のミクロ的な特性とマクロ的な特性の両方を把握する必要がある。多くの異方性材料において、材料の特徴をスケールの異なる階層構造に分けて理解すると見通しがよく、モデル化も容易となる。
【0076】
例として、オーステナイト系材料の溶接部の場合について説明する。この場合は、図15(a)、(b)、(c)のように、3つの階層構造に分けて考えるとよい。
モデル化による計算を実行するに際して(ステップ1603、1604)、第1の段階では、図15(c)に示すように、最もミクロな視点で異方性材料を見る。例えば、溶接部のように複数の結晶組織から構成される複雑な組織の場合、その最も基本的な構成要素は、単一の結晶構造を持つ柱状の結晶粒(柱状晶)である。オーステナイト系材料の場合、柱状晶の長手方向は、〈001〉方向に結晶粒が揃った立方晶であることが知られている。単結晶であるがゆえに、第1段階の弾性特性を把握することは容易であり、単結晶の弾性特性から求められる最も重要な値は、位相速度(波の同位相面の進行方向及び速さを表す)、群速度(波のエネルギーの進行方向及び速さを表す)の2つベクトル量である。
【0077】
第2の段階では、図15(b)に示すように、単位構造から構成されている次の構造に注目する。溶接部においては、柱状晶の集合組織がこれに該当する。溶接部の柱状晶は、ちょうど氷の霜柱のように柱状の結晶が長手方向に揃って集まった組織になっている。この集合組織の持つ統計的な性質を利用し、柱状晶の集合組織の弾性特性を把握する。
【0078】
最後の第3段階において、図15(a)に示すように、第1の処理で予測した結晶の成長方向の情報を利用する。すなわち、第2段階の集合組織は、溶接部全体をみると、場所ごとで少しずつ長手方向の向き〈001〉が変化する。この長手方向の向きは、溶接後の熱の冷却に伴い成長する、結晶の向きを表しており、第2の処理は、この成長方向を予測するものである。少しずつ成長方向の異なる集合組織の弾性特性を把握するために、成長方向を離散化し、局所的には成長方向が一定と仮定して、弾性的特性を近似的に把握する。
【0079】
これらの3つの階層構造をそれぞれ異なった段階で考慮しながら、超音波の伝播径路を計算する。以下に、手順を説明する。
【0080】
(1)超音波が被検査体に入射される位置を決定する。
【0081】
(2)検査に使用する超音波のモード(例えば、縦波・横波)、周波数(例えば、2MHz)、入射角または屈折角を決定する。なお、ここで入射角は被検査体に入射される直前の媒質(例えば、アクリル製の屈折用のくさび等)における超音波の伝播する角度を表し、屈折角は被検査体に入射された直後の媒質における超音波の伝播する角度を表す。
【0082】
(3)検査対象の単位構造(第1の階層構造)の結晶系及び弾性定数を決定する。
【0083】
(4)単位構造の集合組織(第2の階層構造)に対して、その統計的な特徴を考慮して集合組織の弾性定数を計算する。例えば、オーステナイト系材料溶接部の集合組織の場合、柱状の結晶粒(単位構造)は、長手方向〈001〉方向には揃っているが、それと直交する方向には結晶方位がランダムである。このような統計的な特徴を考慮して、オーステナイト系の単位構造である立方晶系の弾性定数を〈001〉方向を中心軸として、この軸に回転平均を施すことで、集合組織の弾性定数を近似的に評価する。
【0084】
(5)検査対象に入射された直後の媒質の弾性乗数を決定する。なお、入射された媒質が異方性を有する場合は、単位構造である単結晶の弾性定数に対して、結晶組織の成長方向に対応する角度だけ回転させる必要がある。
【0085】
(6)微小時間ステップ超音波を直進させる。これは、本来は連続的に変化している組織に対して、微小時間で進行する極微小な領域においては、近似的に、組織の変化は無視できると仮定することに相当する。超音波の進行を求めるには、波の位相の伝播を表す位相速度と、波のエネルギー伝播を表す群速度を求める。位相速度で表される位相を持った波が、群速度方向に進行するとして計算する。
【0086】
(7)仮想的な組織境界を作成する。これは、第2の階層構造である集合組織が緩やかに成長方向を変化させていること(第3の階層構造)の影響を考慮するために、組織の変化を離散化することに相当する。なお、組織境界の決定方法は、現在超音波が伝播している媒質における群速度ベクトルを法線とする面として定義する。また、境界の先の新しい媒質における結晶方位は、第2の処理で予測された成長方向を参照する。
【0087】
(8)新しい媒質中を、微小時間ステップ超音波を直進させる。
【0088】
(9)計算領域内の計算を完了したか判定し、完了するまでステップ(6)から(8)を繰り返す。
【0089】
(10)超音波の伝播状況の計算結果として、伝播径路を図示する(ステップ1605)。
【0090】
上記処理のうち(1)、(2)の処理はオペレータ(ユーザ)の操作によって行われ、(3)〜(5)は入力された情報に基づいて決定され、(6)〜(10)は計算機の処理として行われる。
【0091】
以上の処理が行われると、図17に示すように、接合部における超音波伝播径路の予想結果が表示される。図17に示すように、溶接部の内部において超音波の伝播方向が複雑に変化する理由として、2つの現象が重要である。第1に、組織の方向に対して、波線方向(波面に垂直な方向)によって、波面の伝播する速度(位相速度)が変化するために、組織方向が変化することで、溶接内部で微小な屈折が生じ、累積的に大きな伝播方向の変化を生じる。例として、図18に示すように、オーステナイト系材料のひとつであるニッケル含有合金溶接部の結晶組織の成長方向と超音波の波線方向の関係を示す。図18に示すように、超音波の伝播する方向によって変化しており、波面の伝播する方向によって、その速度が異なるために、超音波の直進性を妨げている。さらに、このように、波面の伝播速度に角度依存性がみられる場合、波動の持つエネルギーの伝わる方向及び速度(群速度という)にも角度依存性が現われることが知られている。また、群速度は、波面の伝播速度(位相速度)とは異なった向きをもっており、このことが、さらに超音波伝播現象を複雑なものにしている。図19に、結晶組織の成長方向と、位相速度と群速度の伝播方向のなす角の関係を示す。図19に示すように、波面が進行する方向と、エネルギーとして伝播する方向が最大で約20度も異なっていることから、さらに伝播方向の挙動を複雑にしていることが分かる。
【0092】
上述の第3の階層構造で述べたように、溶接部全体をみると、場所ごとで少しずつ結晶粒の長手方向の向き〈001〉が緩やかに変化している。図15の破線701のように、場所ごとに連続的に変化している曲線のように模式的に示すことができる。
【0093】
すなわち、溶接部では、音の通りやすさの指標である屈折率が場所ごとに連続的に変化している。この連続的な結晶成長方向の変化、すなわち、屈折率の変化により、超音波伝播方向は媒質中で直進しない、すなわち、歪曲する現象が生じる。
【0094】
例えば、予想結果701に基づいて予測された超音波伝播径路801は図17の実線801のように表示される。
【0095】
次に、第3の処理、すなわち、第2の処理から得られた超音波伝播径路を基に、検査対象に適した探傷条件を出力するための処理を図20のフローチャートにしたがって説明する。
【0096】
まず、処理に必要な情報として、第1の処理で入力された検査対象の情報が入力される(ステップ2001)。次に、超音波で健全性の確認をする必要がある領域、すなわち、検査領域を設定する(ステップ2002)。ここで、検査領域の例を図21に示す。図21の例では、接合部及び接合部と母材の境界から被検査体の板厚の半分を加えた領域を検査領域として設定している。
【0097】
次に、上述した第2の処理によって、超音波の伝播状況を計算する。第2の処理では、初めに超音波が被検査体に入射される場所が設定され、その位置から被検査体に入射された超音波の伝播径路が計算される(ステップ2003)。第3の処理では、設定された検査領域の中を、超音波が有効に通過し、またどのような条件であれば、強い受信強度で識別しやすい信号として受信できるかを判定する(ステップ2004、2005)。
【0098】
すなわち、図17に示すように、送信位置802や受信位置803を任意の位置に変更し、欠陥箇所として予測される領域804から反射した超音波信号のうち受信レベルが最大のものを受信できるか否かを判定する。
最適な探傷条件の判定として、受信される超音波が最大のものを、最適な探傷条件として決定し、図17、図22に示したように、最適な探傷条件を表示する(ステップ2006)。
【0099】
最適な探傷条件として、被検査体の検査したい領域804、その領域804に最適な送信位置802、受信位置803が図として表示される。また、この最適な探傷条件は、図22に示すように、文字情報としても表示され、伝播径路801に対応する送信の角度901、送信位置802に対応する座標902、受信位置803に対応する座標903が示される。
【0100】
次に、本発明に係る超音波検査装置の第1の組込み例を図23にしたがって説明する。本実施形態における統合システム200は、検査条件創出部210と、自動探傷部220とを備えて構成されており、自動探傷部220は、探触子走査機構206を介して超音波探触子207に接続されている。
【0101】
検査条件創出部210は、素子遅延時間計測部211、演算処理部212、表示部213、記憶装置214を備えて構成されている。記憶装置214には、入力装置(入力手段)204から検査対象に関する情報が記録されるようになっている。演算処理部212は、記憶装置214に記憶された情報に基づいて、検査対象における超音波伝播径路を予測し、この予測結果を基に検査対象に最適な超音波探傷条件を決定するように構成されており、演算処理部212の演算結果がそれぞれ記憶装置214に記憶されるようになっている。さらに表示部213には、記憶装置214に記憶された各種情報が表示されるようになっている。
【0102】
一方、自動探傷部220は、探触子位置制御部221、表示部222、表示処理部223、記憶装置224、モータドライバ225、モータ226、A/D変換器227、探傷器228を備えて構成されている。探傷器228は、超音波探触子207に対して超音波による電気信号を送信するとともに、超音波探触子207からの電気信号を受信する送受信機能を備えており、探傷器228の受信による受信信号はA/D変換器227でデジタル化され、デジタル化された受信信号は記憶装置224に記録されるようになっている。探触子位置制御部221は、記憶装置224に記憶された情報を基に、制御信号を生成し、この制御信号をモータドライバ225を介してモータ226に出力するようになっている。制御信号にしたがってモータ226が正転または逆回転駆動されると、モータ226の回転に伴って、探触子走査機構206が駆動され、探触子走査機構206の駆動に伴って超音波探触子207が母材10、11または溶接金属12の表面上を移動するようになっている。
【0103】
すなわち、検査条件創出部210によって決定された探傷条件を満足するために、自動探傷部222において、最適な探触子位置が決定され、決定された最適な探触子位置に超音波探触子207を移動させるための制御信号が生成され、この制御信号がモータドライバ225を介してモータ226に出力され、探触子走査機構206の駆動が制御され、検査に最適な位置として指定された探触子位置に超音波探触子207が移動するようになっている。この場合の最適な位置は、超音波を送信するための送信位置と超音波を受信するための受信位置となる。具体的には、単一の超音波探触子207から検査対象に対して超音波が送信され、検査対象で反射した超音波が超音波探触子207によって受信されるようになっている。
【0104】
なお、超音波探触子207を2個用意し、一方の超音波探触子207を超音送信用の探触子として用い、他方の超音波探触子207を超音波受信用の探触子として用い、各超音波探触子207をそれぞれ探傷器228に接続し、各超音波探触子207を任意に位置に配置することで、送信位置と受信位置を任意の位置に設定することもできる。また、送信位置と受信位置を別の場所にするために、2つの探触子を、独立した2つの走査機構、あるいは、送信用の探触子と受信用の探触子を固定して、1つの走査機構によって、探傷を行ってもよい。
【0105】
次に、本発明に係る超音波検査装置の第2の組込み例を図24にしたがって説明する。本実施形態は、単一の超音波探触子207を用いる代わりに、複数の超音波振動子(圧電素子等)から構成されるアレイセンサ208を用い、自動探傷部220の代わりに、多チャンネル探傷部230を用いたものであり、他の構成は図23のものと同様である。
【0106】
多チャンネル探傷部230は、アレイセンサ208に印加される電気信号を授受する送受信器237と、送受信器237に対して電気信号をシフトされる遅延器236と、遅延された電気信号を加算する加算器239と、加算された電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器238と、アレイセンサ208を構成する各素子の遅延時間を設定する素子遅延時間設定部231と、受信信号の表示処理を行う表示処理部234と、表示処理部234の処理結果を表示する表示部232と、遅延時間および受信信号を記録する記憶装置235とを備えて構成されている。
【0107】
多チャンネル探傷部230においては、検査条件創出部210によって決定された探傷条件を満足するために、素子遅延時間設定部231において遅延時間が設定され、設定された遅延時間により、アレイセンサ208から検査対象に対して、推奨される送受信角度および送受信位置で超音波信号が送信される。例えば、アレイセンサ208を構成する複数の超音波振動子のうち特定の超音波振動子から順次送信信号が出力されると、送信された信号は、他の超音波振動子によって順次受信されるようになっている。
【0108】
本実施形態においては、検査対象における結晶組織の成長方向から、超音波の伝播径路までを計算によって予測し、予め結晶組織が不明な任意の接合部においても、最適な探傷条件を決定することができる。
【0109】
〈実施形態2〉
次に、本発明の第2実施形態を図25にしたがって説明する。
【0110】
前記実施形態では溶接部上面における成長方向を、角度φと設定しているのに対して、本実施形態では、組織の流れ方向のなす角φが不明な場合に、角φを実測し、実測した値を基に、検査対象表面での結晶組織の成長方向を補完するようにしたものである。
【0111】
具体的には、検査対象内部に深さ位置の異なる反射源が複数存在する場合の探傷を行うに際して、検査対象表面に、縦波超音波センサ207a、207bを互いに離して配置する。そして送信側の超音波センサ207aから検査対象に対して超音波を送信すると、検査対象表面近傍で縦波1003が伝播し、超音波センサ207bによって受信される。この場合、結晶組織の成長方向に対して、縦波音速(位相速度)は、次の(数1)で表されることが知られている。
【0112】
【数1】
よって、2つのセンサ207aと207bを、その間隔を一定に保ちながら、検査対象上面で配置の向きを回転させることで、組織方向に対する超音波伝播方向を変化させる。
【0113】
2つのセンサ間の表面を縦波が伝播する時間を計測することで、検査対象表面において、組織の成長方向すなわち、角度φの大きさを計測、評価することができる。
【0114】
特別な例を図26(a)、(b)に示す。図26(a)は、向き合った超音波センサの伝播方向ψと縦波音速の関係を示したグラフであり、図26(b)は、受信用センサと送信用センサの関係を示す図である。なお、例えば、組織方向が表面に完全に直交している場合、即ち、φ=0度の場合、伝播方向ψを回転させても、音速は変化しない。逆に、φ=90度の場合、伝播方向ψを変化させると、音速が極端に変化する。実際の組織は、φ=0と90の間にあるので、音速の変化を示すグラフの凹凸の程度から、φの値を予想することができる。
【0115】
本実施形態においては、検査対象における結晶組織の成長方向から、超音波の伝播径路までを計算によって予測し、予め結晶組織が不明な任意の接合においても、前記実施形態よりも最適な探傷条件を高精度に決定することができる。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、部分的に異方性を有する金属等から構成される検査対象において、結晶組織の成長方向を予測し、その成長方向に基づき、超音波の伝播径路を予測することにより、予め溶接部の組織に関する情報が不明な場合においても、適切な探傷条件を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波検査方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明に係る超音波検査装置のブロック構成図である。
【図3】情報入力画面の構成説明図である。
【図4】接合部の断面形状を説明するための図である。
【図5】ティグ溶接における作業手順を説明するための図である。
【図6】作業指示に伴う溶接条件を説明するための図である。
【図7】作業記録による溶接条件を説明するための図である。
【図8】結晶組織の成長方向を予測するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】V字の継手に関する溶接形状を説明するための図である。
【図10】アーク溶接の多層盛りを説明するための図である。
【図11】電子ビーム溶接を説明するための図である。
【図12】接合部における結晶組織の成長方向を予測する過程を説明するための図である。
【図13】垂直姿勢において溶接が行われたときの結晶組織の成長方向を説明するための図である。
【図14】母材と溶接部の境界の組織方向を決定する方法を説明するための図である。
【図15】ティグ溶接が行われたときの結晶組織の成長方向の予測結果を説明するための図である。
【図16】超音波の伝播径路を予測するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図17】接合部における超音波伝播径路の表示結果を説明するための図である。
【図18】伝播方向による音速変化を説明するための特性図である。
【図19】伝播方向による音速変化を説明するための他の特性図である。
【図20】最適な探傷条件を決定するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図21】検査領域の設定方法を説明するための図である。
【図22】最適な探傷条件の表示例を説明するための図である。
【図23】超音波検査装置の第1の組込み例を示すブロック図である。
【図24】超音波検査装置の第2の組込み例を示すブロック構成図である。
【図25】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【図26】(a)は、向き合った超音波センサの伝播方向ψと縦波音速の関係を示したグラフであり、(b)は、受信用センサと送信用センサの関係を示す図である。
【符号の説明】
200 統合システム
201 成長方向予測部
202 伝播径路予測部
203 探傷条件決定部
204 入力装置
205 出力装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、その一部が異方性を有する金属または合金等の、欠陥、き裂、きずなどについて非破壊評価する技術のうち、特に超音波を使用した技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼材の検査方法として、超音波による手法(超音波探傷法)が一般に用いられている。超音波探傷法のひとつとして、被検査体に斜め方向に超音波を入射する手法(斜角探傷法)がある。斜角探傷法は、例えば、金属製の板材や管の、接合部(溶接部等)の検査に用いられている。
【0003】
斜め方向に超音波を入射する理由として、被検査体内部の反射源(欠陥等)からの反射波をより強く受信する入射角度を選択することで、反射源である欠陥を見つけ易くすることが挙げられる。一般には、横波の45度、縦波の45度などが広く用いられている。
【0004】
通常、超音波は音を伝える媒質の内部を直線的に伝播(直進)することが知られている。実際、水などの液体や、超音波検査の対象となる炭素鋼(母材及び溶接部)といった、ほとんどの媒質において超音波は直進するとして扱ってよい。しかし、金属単結晶材、オーステナイト系ステンレス鋼溶接部、炭素繊維、など一部の媒質では、音の伝播特性が等方的ではなく、方向による依存性がある(異方性がある、という)。
【0005】
オーステナイト系ステンレス鋼溶接部の場合、超音波の伝わる方向ごとに、音速や減衰率が変化する。このために、超音波による溶接部検査が困難であることが一般に知られている(非特許文献1参照)。
【0006】
【非特許文献1】
「オーステナイト系溶接部の超音波探傷」(「溶接技術」、1994年10月号)
例えば、非特許文献1によれば、オーステナイト系溶接部は配向の整った結晶組織(柱状晶という)であり、これにより、異方性特有の超音波の挙動が生じるために、異方性のない炭素鋼溶接部等に対する超音波探傷試験方法をそのまま適用しただけでは十分な検査ができない、と記載されている。異方性特有の超音波挙動としては、柱状組織の成長方向に対する音速の変化、柱状組織における散乱減衰の増大、柱状組織の成長方向に対する超音波伝播方向の曲がり、といった現象が挙げられている。
【0007】
このように、異方性を有する媒質(異方性材という)に対する超音波検査方法として、通常の異方性を有しない媒質(等方性材という)に対する方法を直接適用しても有効でない場合が多い。そこで、以前より、超音波の被検査体への入射角を工夫する探傷法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭51−140779号公報
例えば、特許文献1にでは、オーステナイト系材料の溶接部の超音波斜角探傷を行う場合、溶接金属を考慮しその結晶方向に対して35度±5度の角度で超音波が透過するように屈折角を決定する方法を提案している。
【0009】
また、柱状結晶金属材料よりなる被検査体に超音波縦波探傷を行うに当たって、探触子からの超音波が結晶方向に対してほぼ45度の角度で被検査体に透過するように屈折角を設定する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
【特許文献2】
特開昭57−173750号公報
これらは、溶接部内に存在する金属結晶の結晶成長方向に対して、45度の角度で伝播する縦波超音波の減衰が小さいという実験結果に基づいて提案された手法である。
【0011】
しかし、これらの方法は、溶接部内に形成される溶接金属の組織方向を検査に先立って把握できる場合にのみ有効な手法であって、被検査体の溶接組織を予め把握するためには、溶接部の断面観察等の破壊的な手法が必要であり、予め溶接組織が不明な、被検査体に対する超音波検査には適用することができない。
さらに、通常、溶接金属内部の柱状晶の結晶成長方向は、溶接部内部及び表面における場所ごとに連続的な変化を示している。ゆえに、局所的な結晶組織を把握して、その部位に対して最適となるように超音波の入射角度を設定したとしても、溶接部は、場所ごとに結晶成長方向が連続的に変化しているため、当所設定した超音波屈折角の設定が、超音波が伝播する全ての領域、すなわち、検査したい領域にわたって有効とはならないという問題がある。
【0012】
そこで、溶接部全体の超音波伝播の状況を把握することを目的に、溶接金属における結晶組織(柱状晶)の成長方向を簡易的な数式で記述し、さらに、超音波の伝播状況を数値的に解析する技術が検討されている(非特許文献2参照)。
【0013】
【非特許文献2】
Computerized ultrasonic ray tracing in austenitic steel(J.A.Ogilvy著、NDT INTERNATIONAL誌、1985年、vol.18、No.2)
上記非特許文献2では、柱状組織の成長方向を簡単な数式で近似し、金属内部の超音波伝播状況を光線追跡法(レイトレース法)と呼ばれる近似解法を用いて、溶接部における複雑な超音波の挙動を計算している。
【0014】
これらの手法においては、単純形状溶接部に対する近似的な取り扱いのみが可能である。例えば、先の非特許文献2によると、V字型の開先の場合、溶接組織の結晶成長方向を決定する因子として、溶接部形状に起因する2つパラメータ(開先の幅D、母材と溶接部の境界での開先の傾斜角α)及び溶接組織の流れを微調整する2つのパラメータ(母材と溶接部の境界での結晶組織の流れ方向を表す角度T、結晶組織方向の連続的な変化の程度を表すパラメータη)によって特徴付けられている。
【0015】
これらの溶接組織の結晶成長方向を表すパラメータの値を決定するためには、実際の溶接組織の断面写真を用いて比較検討する作業が必要不可欠である。しかし、通常の断面写真を得るには、検査対象の一部を破壊する必要があるため、実際の超音波検査の現場においては被検査体の断面観察結果が得られない場合がほとんどである。ゆえに、該手法は、断面の組織観察が可能な被検査体の超音波検査に適用しかすることができず、そのような場合は極めてまれである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来方法では、検査に先立って、被検査体の異方性を特徴付ける情報(例えば、溶接部の断面観察写真等)が得られない場合においては、被検査体の有する異方性を把握することができず、超音波の伝播状況を予測するが困難である。
【0017】
例えば、オーステナイト系ステンレス鋼溶接部の超音波検査の場合、複雑な超音波挙動(結晶組織の成長方向に対する音速や減衰率の変化、これら音速や減衰率の変化によって引き起こされる被検査体における超音波伝播方向の曲がり、等の現象)の予想が困難なため、超音波探傷を適切な条件で実施することができないという問題点があった。
【0018】
本発明の課題は、検査対象の組織に関する情報が不明な場合においても、適切な探傷条件を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成される検査対象に超音波を所定の角度で送信し、前記検査対象の内部で反射した超音波を受信し、この受信結果から前記検査対象の健全性を評価する超音波検査方法において、前記検査対象に関する情報を入力する第1の処理と、前記第1の処理に得られた情報から前記検査対象における超音波伝播を予測する第2の処理と、前記第2の処理の処理結果を基に前記検査対象に適した探傷条件を決定する第3の処理とを含むことを特徴とする超音波検査方法を採用したものである。
【0020】
前記超音波検査方法を採用するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0021】
(1)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の形状情報を含むこと。
【0022】
(2)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の接合情報を含むこと。
【0023】
(3)前記検査対象の接合情報として、接合方法、接合部の材質、接合の作業手順のうち少なくとも1つを含むこと。
【0024】
(4)前記第2の処理として、前記検査対象の結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測処理と、前記成長方向予測処理の処理結果を基に前記予測された結晶組織における超音波伝播径路を予測する伝播径路予測処理とを含むこと。
【0025】
(5)前記伝播径路予測処理の処理結果として、前記検査対象を伝播する超音波の径路を表示する表示処理を含むこと。
【0026】
(6)前記第3の処理における探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置のうち少なくとも1つを含むこと。
【0027】
前記した手段によれば、検査対象に関する情報として、例えば、接合方法、接合部の形状、材質、接合の作業手順に関する情報が入力されたときには、検査対象に関する情報として、溶接部などの接合部における組織に関する情報が予め不明な場合においても、入力された情報に基づいて検査対象の組織の成長方向およびその溶接組織における超音波伝播径路を予測し、予測された超音波の伝播径路から、検査対象に適した探傷条件として、例えば、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置や、超音波の受信位置の情報を得ることができる。
【0028】
また、本発明は、少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成される検査対象に超音波を所定の角度で送信し、前記検査対象の内部で反射した超音波を受信し、この受信結果から前記検査対象の健全性を評価する超音波検査装置において、前記検査対象に関する情報を入力する入力手段と、前記入力手段の入力による情報から前記検査対象における超音波伝播を予測する予測手段と、前記予測手段の予測結果を基に前記検査対象に適した探傷条件を決定する決定手段とを有することを特徴とする超音波検査装置を構成したものである。
【0029】
前記超音波検査装置を構成するに際しては、以下の要素を付加することができる。
【0030】
(1)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の形状情報を含むこと。
【0031】
(2)前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の接合情報を含むこと。
【0032】
(3)前記検査対象の接合情報として、接合方法、接合部の材質、接合の作業手順のうち少なくとも1つを含むこと。
【0033】
(4)前記予測手段による予測処理として、前記検査対象の結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測処理と、前記成長方向予測処理の処理結果を基に前記予測された結晶組織における超音波伝播径路を予測する伝播径路予測処理とを含むこと。
【0034】
(5)前記予測手段は、前記伝播径路予測処理の処理結果として、前記検査対象を伝播する超音波の径路を表示する表示処理を実行してなる。
【0035】
(6)前記決定手段における探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置のうち少なくとも1つを含むこと。
【0036】
前記した手段によれば、検査対象に関する情報として、例えば、接合方法、接合部の形状、材質、接合の作業手順に関する情報が入力されたときには、検査対象に関する情報として、溶接部などの接合部における組織に関する情報が予め不明な場合においても、入力された情報に基づいて検査対象の組織の成長方向およびその溶接組織における超音波伝播径路を予測し、予測された超音波の伝播径路から、検査対象に適した探傷条件として、例えば、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置や、超音波の受信位置の情報を得ることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0038】
〈実施形態1〉
本発明に係る超音波検査方法は、超音波探傷方法として、図1に示すように、検査対象に関する情報を入力するための第1の処理(ステップ100)と、入力した情報を基に検査対象における超音波伝播を予測するための第2の処理(ステップ101)と、この予測結果を基に検査対象に適した探傷条件を決定するための第3の処理(ステップ102)とを含むことを特徴とするものである。ステップ100では、検査対象に関する情報として、形状情報、接合情報(接合方法、接合部の材質、作業手順)が入力され、ステップ101では、検査対象として、少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成されている場合、金属の結晶組織の成長方向を予測し、この予測結果を基に超音波伝播径路を予測する。ステップ102では、検査対象に適した探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置を決定することとしている。
【0039】
超音波検査方法を適用した超音波検査装置は、例えば、超音波探傷装置として、図2に示すように、探傷の中心機能を果たす統合システム200と、検査対象に関する情報を入力する入力装置(入力手段)204と、最適な探傷条件に関する情報を出力する出力装置(出力手段)205とを備えて構成されており、統合システム200は、結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測部201と、超音波の伝播径路を予測する伝播径路予測部202と、最適な探傷条件を決定する探傷条件決定部203から構成されている。
【0040】
入力装置204は、例えば、キーボード、ポインティングデバイスで構成され、統合システム200は、CPUとメモリ等を有する計算機で構成され、出力装置205は、例えば、モニタ(CRT)で構成されている。
【0041】
上記3つの処理のうち第1の処理は、入力装置204および統合システム200で行われ、第2の処理のうち検査対象の結晶組織の成長方向を予測する処理は成長方向予測部201で行われ、この予測結果による結晶の成長方向と検査対象に関する情報を基に検査対象における超音波伝播径路を予測するための処理は伝播径路予測部202で行われ、第3の処理は、伝播径路予測部202の予測結果を基に検査対象に適した探傷条件を出力する探傷条件決定部203で行われる。
【0042】
以下、基本となる3つの処理の具体的内容について説明する。まず、第1の処理として、検査対象に関する情報を入力するための処理について説明する。
【0043】
検査対象に関する情報を入力するに際しては、オペレータがキーボードを操作すると、図3に示すような情報入力画面300が表示され、母材と溶接金属を含むものを検査対象としたときには、溶接部などの金属接合部に関する情報として、検査対象の形状情報や接合情報を入力することが促される。
【0044】
検査対象(被検査体)の形状情報とは、図4に示すように、接合部の断面に関して、母材10の板厚401、母材11の板厚402、母材11と溶接金属12との角度403を含むものとし、接合する母材11に段差がある場合には、高さのずれ404、405に関する寸法を含んでもよい。さらに、検査対象の形状情報としては、検査対象の寸法を記述する数値だけではなく、検査対象の接合部またはそれと同条件で接合された模擬試験体の接合部の断面マクロ観察写真など画像情報として取り扱ってもよい。
【0045】
また検査対象の接合情報とは、接合方法、すなわち、溶接の種類、例えば、ティグ溶接、アーク溶接など、接合部の材質、例えば、溶接部の場合、母材10、11の材質、溶接金属12の材質、例えば、ステンレス、接合の作業手順を含む。
【0046】
接合の作業手順とは、図5に示すように、ティグ溶接の場合、鱗状に形成されるパス(1回の溶接作業で盛られる溶接金属12)に関する情報である。図5において、パス部分501に添えられた▲1▼〜▲7▼の数字は、溶接金属を盛る順序を表す。通常、溶接金属12を盛る数は、数回から数十回程度になる。このため、接合の作業手順とは、パスの盛る手順およびパスを盛る場所、盛られる溶接金属(通常は溶接棒)の寸法(溶接棒の径)、溶接時の重力の向き(鉛直方向)502の情報を含む。
【0047】
その他、特に、検査対象が溶接部の場合、検査対象の接合情報として、溶接電圧、溶接電流、溶接速度の情報を含むこともできる。
【0048】
また検査対象の接合情報としては、図6および図7に示すように、溶接条件に関する情報がある。図6に示す溶接条件は、溶接作業者に指示される溶接条件であって、母材の種類、溶接棒の種類、シールドガスの種類、予熱温度、層間温度、母材の厚さ、溶接電圧、溶接速度に関する情報が表形式で入力される。また、図7に示す溶接条件は、溶接作業者が実施した作業に関する溶接条件であって、溶接方法、溶接棒の径、層数、予熱温度、層間温度、溶接電流、姿勢(溶接時の姿勢)、施工日に関する情報が表形式で入力される。実際の作業においは、接合作業箇所および作業ごとに、図6および図7に示したように、指示内容および作業記録が作成されるため、それらの情報が溶接部の組織方向を予測するための基本データとして入力される。
【0049】
次に、第1の処理で得られた情報を基に、結晶組織の成長方向を予測するための処理内容を図8にしたがって説明する。
【0050】
まず、パラメータの入力として、検査対象に関する情報の入力を条件として(ステップ801、802)、モデル化により結晶組織の成長方向を計算する(ステップ803)、この場合、組織方向のモデル化が行われる(ステップ804)。以下、金属の溶接部などの接合部を検査する場合について、組織方向の計算方法を説明する。
【0051】
組織方向のモデル化を行なうに際して、前記非特許文献1に記載されているように、オーステナイト系溶接部は、溶接時の熱が冷却する際に金属が凝固することで生じる、結晶配向の揃った結晶組織(柱状晶)から構成されており、この柱状晶の持つ音響的な異方性によって超音波の複雑な挙動(超音波の曲がりや減衰)が生じるために、オーステナイト系材料の超音波探傷試験が困難なものになっている方法をそのまま適用しただけでは十分な検査ができない。
【0052】
そこで、オーステナイト系材料をはじめとする異方性材料に対して、適切な超音波検査を実施するためには、検査対象の組織に関する情報を把握しなければならない。
【0053】
金属の溶接部を例にして、検査対象の情報を基にその組織方向を予測する方法を、以下の記載する。
【0054】
(1)溶接部の断面形状を作図する。このとき、母材及び溶接金属のそれぞれの寸法(板厚401〜402及び角度403)が基となるデータである。
(2)接合部の組織を予測するために、少なくとも、溶接方法の種類、母材及び溶接金属の材質、開先形状、溶接棒の種類及び径、溶接作業の姿勢金属に関する情報を入力する。
【0055】
(3)溶接組織を予測する。ここでは、まず、組織の流れを大きく分類するにとどめる。厳密な予測はパラメータが多く複雑なため、簡易的な予測方法を採用する。溶接組織は、溶接作業後の組織の冷却にともなって成長する。そのため、溶接組織の流れ方向は、およそ、冷却されていく熱の温度勾配に直交する方向になると近似できる。
【0056】
溶接部に関連するパラメータは多数存在する。例えば、V字の継手に関する溶接形状の一例を図9に示す。
【0057】
図9において、a、bは母材の板厚を示し、cは開先の角度、dは母材間のギャップ、eは母材の高さ方向のずれを示す。
【0058】
さらに、熱や電気、材質のパラメータを加えると、溶接の組織に影響を及ぼすパラメータは膨大になり、厳密な取り扱いは困難である。そこで、溶接組織のパターンを大きく2つに分類する。
【0059】
第1は、溶接金属の溶け込みが悪い場合あるいは、一回の作業で溶接する場合である。
【0060】
例えば、図10に示すようなアーク溶接による多層盛りや、図11に示すような電子ビーム溶接などがこれに該当する。これらの場合は、溶接のパスの影響がそのまま組織として残留するため、アーク溶接であれば、どの場所にどれだけの太さでいくつパスを盛ったかが分かれば、組織を予測することができる。
【0061】
例えば、アーク溶接の場合は、1回の肉盛(うろこ状)の上部中心から放射状に組織が成長し、全体としては、肉盛が数層にわたって積み重なる。また、電子ビーム溶接では、冷却が素早く行われるため、母材境界面から垂直方向に組織が成長し、開先の中心で衝突する組織となる。
【0062】
第2は、比較的、溶接金属の溶け込みがよい場合である。例えば、TIG溶接によるステンレス鋼の多層盛りの溶接(図5参照)などがこれに該当する。
【0063】
第2の場合の特徴は、多層に盛られたパスの形状がほとんど組織に影響していない点である。これは、一層盛られたその上に、新しいパスが盛られる場合、古い部分が再度溶融し再凝固するために、新しいパスによって、情報が消されていくためである。
【0064】
溶接組織が予測された後、第1の場合、すなわちアーク溶接や電子ビーム溶接の場合には、ステップ(5)へ移行し、第2の場合、すなわちティグ溶接の場合はステップ(4)へ進む。
【0065】
(4)ティグ溶接の場合、組織の流れを詳細に定量化する。ここで最も重要なパラメータは溶接姿勢である。すなわち、多層を盛る順序である。
【0066】
第1は、水平姿勢で溶接する場合である。この場合は、母材と溶接金属の間の組織母材と溶接金属の間での組織の成長方向が、境界面に垂直に組織が成長すると仮定してよい。接合部を水平に置いた姿勢で作業する場合、下から上に順々にパスが盛られていく。このため、溶接部の組織成長は、下から上に向かって成長していく。そして、最後の部分、すなわち溶接部上面においては、ほぼ垂直に傾斜した角度(φ)の組織となって、検査対象上側の面に到達する。これらの方向に線分の両端の接線を曲線として、組織の成長方向を計算する。両端の接線を補完する曲線としては、例えば、2次のベジエ曲線などを使用する。この計算過程の例を図12に示す。
【0067】
なお、ここで、2次のベジエ曲線とは、空間に3点(A、B、C)が与えられ、この3点の位置ベクトルをOA、OB、OCと書くとする。0から1までの値を取るパラメータtを用いて、(1−t)×(1−t)×OA + 2×(1−t)×OB + t×t×OC で表される位置ベクトルの軌跡として定義される。この曲線は、その両端でAおよびCを通るが、Bは通らないという特徴を持つ。
【0068】
図12に示す計算過程では、対象となる溶接部を母材に接する部分とそれ以外の領域に分ける。例えば、図12の領域(I)及び(III)は母材に接する部分であり、領域(II)は母材と接しない部分である。領域(I)及び(III)は、母材からの組織流れの影響の強い部分、領域(II)は溶接後の冷却過程による影響の強い部分を表す。これらの領域の境界である境界線6001、6002の決定方法は、例えば、以下のように行う。図12下枠内のD1及びD3は、肉盛1個の半分の大きさ、すなわち、溶接棒の半径の大きさとする。また、D2及びD4は、溶接部開先下部の距離を等分するように決定する。母材から垂直方向に、母材の影響を受けた組織方向のベクトル601を作図する。このベクトルと境界線6001の交点を求め、この交点から溶接部上部に直交する組織方向のベクトル602を作図する。組織方向を表す2つのベクトル601及び602を補完するようにベジエ曲線600を作図する。
【0069】
図12で示した3つの領域において、領域(I)及び(III)においては、組織方向が母材の影響を受け曲線的に分布し、領域(II)では、組織方向が上方に直線的に組織が成長する予想結果が得られる。
【0070】
第2は、垂直姿勢で溶接する場合である。この場合は、水平姿勢の場合と異なり、接合部を縦方向に置いた姿勢で溶接作業するため、単純に下から上へ、ではなく、融けた金属が垂れ流れないように、斜め上向き方向にパスが盛られていく。そのために、斜め上向きに組織が流れる。組織の斜め方向は、パスの盛る順序に対してほぼ直交方向になる。図13に、第2の場合の組織方向を模式的に示す。第1の場合においては、被検査体上側の面に到達する組織方向は垂直であったが、第2の場合においては、大局的な組織方向を表すベクトルは、パスが増えていく方向に対して直交する方向となる。また、母材と溶接部の境界の組織方向を決定する方法を図14に示す。第1の場合と同様、母材と溶接部の境界面(境界AB)から垂直方向に伸びるベクトル2311と、大局的な組織方向を表すベクトル2312の、2つのベクトルを補完する曲線として、近似する。なお、例えばベジエ曲線で組織方向を補完する場合は、1回の肉盛の寸法の半分(例えば、溶接棒の半径の値とする)を考慮して、図14の線分A’B’と大局的な組織方向を表すベクトルの交点2310を通るようにベクトル2311を設定する。実際の溶接部では、母材に近接する肉盛部において肉盛1個のおよそ半分の範囲で組織の流れが変化している現象をみることができる。そのため、このようにベクトル2311を設定することで、境界部付近における組織方向の変化の効果を近似的に取り扱うことができる。
【0071】
(5)溶接部の断面形状の各点における組織方向が決定されるので、断面形状と併せて、予測した組織方向を表示する(ステップ805)。
【0072】
以上の処理が行われると、ティグ溶接に関する予測結果として、図15に示すように、接合部の結晶組織における結晶成長方向の予測結果が表示される。例えば、オーステナイト系、ステンレス鋼の溶接部分の場合、特定の結晶方向(結晶軸〈001〉方向)に揃って結晶が成長することが知られており、図15に示す破線701は、結晶成長方向の予想結果を破線で示したものである。
【0073】
次に、第2の処理として、検査対象に関する情報と結晶の成長方向に関する情報を基に検査対象における超音波伝播径路を算出するための処理内容を図16のフローチャートにしたがって説明する。
【0074】
まず、計算に必要な情報として、第1の処理で入力された検査対象の情報と、結晶組織の成長方向に対する予測結果が入力される(ステップ1601、1602)。ここで、検査対象の情報とは、第1の処理において説明したものと同じである。また、結晶組織の成長方向とは、前記処理の出力結果であり、特定の結晶方位を表す量と、該方位の向いている方向(または平均的な方向)を含むものである。
【0075】
例えば、ステンレス鋼などのオーステナイト系材料の溶接部の場合、結晶組織の成長方向の情報として、特定の結晶方位であるステンレス鋼の結晶粒である立方晶の〈001〉方向と、〈001〉方位が被検査体のそれぞれの点において、どの方向を向いているかという量(方向ベクトル)を少なくとも含むものとする。
超音波の伝播を把握するためには、異方性を持つ組織のミクロ的な特性とマクロ的な特性の両方を把握する必要がある。多くの異方性材料において、材料の特徴をスケールの異なる階層構造に分けて理解すると見通しがよく、モデル化も容易となる。
【0076】
例として、オーステナイト系材料の溶接部の場合について説明する。この場合は、図15(a)、(b)、(c)のように、3つの階層構造に分けて考えるとよい。
モデル化による計算を実行するに際して(ステップ1603、1604)、第1の段階では、図15(c)に示すように、最もミクロな視点で異方性材料を見る。例えば、溶接部のように複数の結晶組織から構成される複雑な組織の場合、その最も基本的な構成要素は、単一の結晶構造を持つ柱状の結晶粒(柱状晶)である。オーステナイト系材料の場合、柱状晶の長手方向は、〈001〉方向に結晶粒が揃った立方晶であることが知られている。単結晶であるがゆえに、第1段階の弾性特性を把握することは容易であり、単結晶の弾性特性から求められる最も重要な値は、位相速度(波の同位相面の進行方向及び速さを表す)、群速度(波のエネルギーの進行方向及び速さを表す)の2つベクトル量である。
【0077】
第2の段階では、図15(b)に示すように、単位構造から構成されている次の構造に注目する。溶接部においては、柱状晶の集合組織がこれに該当する。溶接部の柱状晶は、ちょうど氷の霜柱のように柱状の結晶が長手方向に揃って集まった組織になっている。この集合組織の持つ統計的な性質を利用し、柱状晶の集合組織の弾性特性を把握する。
【0078】
最後の第3段階において、図15(a)に示すように、第1の処理で予測した結晶の成長方向の情報を利用する。すなわち、第2段階の集合組織は、溶接部全体をみると、場所ごとで少しずつ長手方向の向き〈001〉が変化する。この長手方向の向きは、溶接後の熱の冷却に伴い成長する、結晶の向きを表しており、第2の処理は、この成長方向を予測するものである。少しずつ成長方向の異なる集合組織の弾性特性を把握するために、成長方向を離散化し、局所的には成長方向が一定と仮定して、弾性的特性を近似的に把握する。
【0079】
これらの3つの階層構造をそれぞれ異なった段階で考慮しながら、超音波の伝播径路を計算する。以下に、手順を説明する。
【0080】
(1)超音波が被検査体に入射される位置を決定する。
【0081】
(2)検査に使用する超音波のモード(例えば、縦波・横波)、周波数(例えば、2MHz)、入射角または屈折角を決定する。なお、ここで入射角は被検査体に入射される直前の媒質(例えば、アクリル製の屈折用のくさび等)における超音波の伝播する角度を表し、屈折角は被検査体に入射された直後の媒質における超音波の伝播する角度を表す。
【0082】
(3)検査対象の単位構造(第1の階層構造)の結晶系及び弾性定数を決定する。
【0083】
(4)単位構造の集合組織(第2の階層構造)に対して、その統計的な特徴を考慮して集合組織の弾性定数を計算する。例えば、オーステナイト系材料溶接部の集合組織の場合、柱状の結晶粒(単位構造)は、長手方向〈001〉方向には揃っているが、それと直交する方向には結晶方位がランダムである。このような統計的な特徴を考慮して、オーステナイト系の単位構造である立方晶系の弾性定数を〈001〉方向を中心軸として、この軸に回転平均を施すことで、集合組織の弾性定数を近似的に評価する。
【0084】
(5)検査対象に入射された直後の媒質の弾性乗数を決定する。なお、入射された媒質が異方性を有する場合は、単位構造である単結晶の弾性定数に対して、結晶組織の成長方向に対応する角度だけ回転させる必要がある。
【0085】
(6)微小時間ステップ超音波を直進させる。これは、本来は連続的に変化している組織に対して、微小時間で進行する極微小な領域においては、近似的に、組織の変化は無視できると仮定することに相当する。超音波の進行を求めるには、波の位相の伝播を表す位相速度と、波のエネルギー伝播を表す群速度を求める。位相速度で表される位相を持った波が、群速度方向に進行するとして計算する。
【0086】
(7)仮想的な組織境界を作成する。これは、第2の階層構造である集合組織が緩やかに成長方向を変化させていること(第3の階層構造)の影響を考慮するために、組織の変化を離散化することに相当する。なお、組織境界の決定方法は、現在超音波が伝播している媒質における群速度ベクトルを法線とする面として定義する。また、境界の先の新しい媒質における結晶方位は、第2の処理で予測された成長方向を参照する。
【0087】
(8)新しい媒質中を、微小時間ステップ超音波を直進させる。
【0088】
(9)計算領域内の計算を完了したか判定し、完了するまでステップ(6)から(8)を繰り返す。
【0089】
(10)超音波の伝播状況の計算結果として、伝播径路を図示する(ステップ1605)。
【0090】
上記処理のうち(1)、(2)の処理はオペレータ(ユーザ)の操作によって行われ、(3)〜(5)は入力された情報に基づいて決定され、(6)〜(10)は計算機の処理として行われる。
【0091】
以上の処理が行われると、図17に示すように、接合部における超音波伝播径路の予想結果が表示される。図17に示すように、溶接部の内部において超音波の伝播方向が複雑に変化する理由として、2つの現象が重要である。第1に、組織の方向に対して、波線方向(波面に垂直な方向)によって、波面の伝播する速度(位相速度)が変化するために、組織方向が変化することで、溶接内部で微小な屈折が生じ、累積的に大きな伝播方向の変化を生じる。例として、図18に示すように、オーステナイト系材料のひとつであるニッケル含有合金溶接部の結晶組織の成長方向と超音波の波線方向の関係を示す。図18に示すように、超音波の伝播する方向によって変化しており、波面の伝播する方向によって、その速度が異なるために、超音波の直進性を妨げている。さらに、このように、波面の伝播速度に角度依存性がみられる場合、波動の持つエネルギーの伝わる方向及び速度(群速度という)にも角度依存性が現われることが知られている。また、群速度は、波面の伝播速度(位相速度)とは異なった向きをもっており、このことが、さらに超音波伝播現象を複雑なものにしている。図19に、結晶組織の成長方向と、位相速度と群速度の伝播方向のなす角の関係を示す。図19に示すように、波面が進行する方向と、エネルギーとして伝播する方向が最大で約20度も異なっていることから、さらに伝播方向の挙動を複雑にしていることが分かる。
【0092】
上述の第3の階層構造で述べたように、溶接部全体をみると、場所ごとで少しずつ結晶粒の長手方向の向き〈001〉が緩やかに変化している。図15の破線701のように、場所ごとに連続的に変化している曲線のように模式的に示すことができる。
【0093】
すなわち、溶接部では、音の通りやすさの指標である屈折率が場所ごとに連続的に変化している。この連続的な結晶成長方向の変化、すなわち、屈折率の変化により、超音波伝播方向は媒質中で直進しない、すなわち、歪曲する現象が生じる。
【0094】
例えば、予想結果701に基づいて予測された超音波伝播径路801は図17の実線801のように表示される。
【0095】
次に、第3の処理、すなわち、第2の処理から得られた超音波伝播径路を基に、検査対象に適した探傷条件を出力するための処理を図20のフローチャートにしたがって説明する。
【0096】
まず、処理に必要な情報として、第1の処理で入力された検査対象の情報が入力される(ステップ2001)。次に、超音波で健全性の確認をする必要がある領域、すなわち、検査領域を設定する(ステップ2002)。ここで、検査領域の例を図21に示す。図21の例では、接合部及び接合部と母材の境界から被検査体の板厚の半分を加えた領域を検査領域として設定している。
【0097】
次に、上述した第2の処理によって、超音波の伝播状況を計算する。第2の処理では、初めに超音波が被検査体に入射される場所が設定され、その位置から被検査体に入射された超音波の伝播径路が計算される(ステップ2003)。第3の処理では、設定された検査領域の中を、超音波が有効に通過し、またどのような条件であれば、強い受信強度で識別しやすい信号として受信できるかを判定する(ステップ2004、2005)。
【0098】
すなわち、図17に示すように、送信位置802や受信位置803を任意の位置に変更し、欠陥箇所として予測される領域804から反射した超音波信号のうち受信レベルが最大のものを受信できるか否かを判定する。
最適な探傷条件の判定として、受信される超音波が最大のものを、最適な探傷条件として決定し、図17、図22に示したように、最適な探傷条件を表示する(ステップ2006)。
【0099】
最適な探傷条件として、被検査体の検査したい領域804、その領域804に最適な送信位置802、受信位置803が図として表示される。また、この最適な探傷条件は、図22に示すように、文字情報としても表示され、伝播径路801に対応する送信の角度901、送信位置802に対応する座標902、受信位置803に対応する座標903が示される。
【0100】
次に、本発明に係る超音波検査装置の第1の組込み例を図23にしたがって説明する。本実施形態における統合システム200は、検査条件創出部210と、自動探傷部220とを備えて構成されており、自動探傷部220は、探触子走査機構206を介して超音波探触子207に接続されている。
【0101】
検査条件創出部210は、素子遅延時間計測部211、演算処理部212、表示部213、記憶装置214を備えて構成されている。記憶装置214には、入力装置(入力手段)204から検査対象に関する情報が記録されるようになっている。演算処理部212は、記憶装置214に記憶された情報に基づいて、検査対象における超音波伝播径路を予測し、この予測結果を基に検査対象に最適な超音波探傷条件を決定するように構成されており、演算処理部212の演算結果がそれぞれ記憶装置214に記憶されるようになっている。さらに表示部213には、記憶装置214に記憶された各種情報が表示されるようになっている。
【0102】
一方、自動探傷部220は、探触子位置制御部221、表示部222、表示処理部223、記憶装置224、モータドライバ225、モータ226、A/D変換器227、探傷器228を備えて構成されている。探傷器228は、超音波探触子207に対して超音波による電気信号を送信するとともに、超音波探触子207からの電気信号を受信する送受信機能を備えており、探傷器228の受信による受信信号はA/D変換器227でデジタル化され、デジタル化された受信信号は記憶装置224に記録されるようになっている。探触子位置制御部221は、記憶装置224に記憶された情報を基に、制御信号を生成し、この制御信号をモータドライバ225を介してモータ226に出力するようになっている。制御信号にしたがってモータ226が正転または逆回転駆動されると、モータ226の回転に伴って、探触子走査機構206が駆動され、探触子走査機構206の駆動に伴って超音波探触子207が母材10、11または溶接金属12の表面上を移動するようになっている。
【0103】
すなわち、検査条件創出部210によって決定された探傷条件を満足するために、自動探傷部222において、最適な探触子位置が決定され、決定された最適な探触子位置に超音波探触子207を移動させるための制御信号が生成され、この制御信号がモータドライバ225を介してモータ226に出力され、探触子走査機構206の駆動が制御され、検査に最適な位置として指定された探触子位置に超音波探触子207が移動するようになっている。この場合の最適な位置は、超音波を送信するための送信位置と超音波を受信するための受信位置となる。具体的には、単一の超音波探触子207から検査対象に対して超音波が送信され、検査対象で反射した超音波が超音波探触子207によって受信されるようになっている。
【0104】
なお、超音波探触子207を2個用意し、一方の超音波探触子207を超音送信用の探触子として用い、他方の超音波探触子207を超音波受信用の探触子として用い、各超音波探触子207をそれぞれ探傷器228に接続し、各超音波探触子207を任意に位置に配置することで、送信位置と受信位置を任意の位置に設定することもできる。また、送信位置と受信位置を別の場所にするために、2つの探触子を、独立した2つの走査機構、あるいは、送信用の探触子と受信用の探触子を固定して、1つの走査機構によって、探傷を行ってもよい。
【0105】
次に、本発明に係る超音波検査装置の第2の組込み例を図24にしたがって説明する。本実施形態は、単一の超音波探触子207を用いる代わりに、複数の超音波振動子(圧電素子等)から構成されるアレイセンサ208を用い、自動探傷部220の代わりに、多チャンネル探傷部230を用いたものであり、他の構成は図23のものと同様である。
【0106】
多チャンネル探傷部230は、アレイセンサ208に印加される電気信号を授受する送受信器237と、送受信器237に対して電気信号をシフトされる遅延器236と、遅延された電気信号を加算する加算器239と、加算された電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器238と、アレイセンサ208を構成する各素子の遅延時間を設定する素子遅延時間設定部231と、受信信号の表示処理を行う表示処理部234と、表示処理部234の処理結果を表示する表示部232と、遅延時間および受信信号を記録する記憶装置235とを備えて構成されている。
【0107】
多チャンネル探傷部230においては、検査条件創出部210によって決定された探傷条件を満足するために、素子遅延時間設定部231において遅延時間が設定され、設定された遅延時間により、アレイセンサ208から検査対象に対して、推奨される送受信角度および送受信位置で超音波信号が送信される。例えば、アレイセンサ208を構成する複数の超音波振動子のうち特定の超音波振動子から順次送信信号が出力されると、送信された信号は、他の超音波振動子によって順次受信されるようになっている。
【0108】
本実施形態においては、検査対象における結晶組織の成長方向から、超音波の伝播径路までを計算によって予測し、予め結晶組織が不明な任意の接合部においても、最適な探傷条件を決定することができる。
【0109】
〈実施形態2〉
次に、本発明の第2実施形態を図25にしたがって説明する。
【0110】
前記実施形態では溶接部上面における成長方向を、角度φと設定しているのに対して、本実施形態では、組織の流れ方向のなす角φが不明な場合に、角φを実測し、実測した値を基に、検査対象表面での結晶組織の成長方向を補完するようにしたものである。
【0111】
具体的には、検査対象内部に深さ位置の異なる反射源が複数存在する場合の探傷を行うに際して、検査対象表面に、縦波超音波センサ207a、207bを互いに離して配置する。そして送信側の超音波センサ207aから検査対象に対して超音波を送信すると、検査対象表面近傍で縦波1003が伝播し、超音波センサ207bによって受信される。この場合、結晶組織の成長方向に対して、縦波音速(位相速度)は、次の(数1)で表されることが知られている。
【0112】
【数1】
よって、2つのセンサ207aと207bを、その間隔を一定に保ちながら、検査対象上面で配置の向きを回転させることで、組織方向に対する超音波伝播方向を変化させる。
【0113】
2つのセンサ間の表面を縦波が伝播する時間を計測することで、検査対象表面において、組織の成長方向すなわち、角度φの大きさを計測、評価することができる。
【0114】
特別な例を図26(a)、(b)に示す。図26(a)は、向き合った超音波センサの伝播方向ψと縦波音速の関係を示したグラフであり、図26(b)は、受信用センサと送信用センサの関係を示す図である。なお、例えば、組織方向が表面に完全に直交している場合、即ち、φ=0度の場合、伝播方向ψを回転させても、音速は変化しない。逆に、φ=90度の場合、伝播方向ψを変化させると、音速が極端に変化する。実際の組織は、φ=0と90の間にあるので、音速の変化を示すグラフの凹凸の程度から、φの値を予想することができる。
【0115】
本実施形態においては、検査対象における結晶組織の成長方向から、超音波の伝播径路までを計算によって予測し、予め結晶組織が不明な任意の接合においても、前記実施形態よりも最適な探傷条件を高精度に決定することができる。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、部分的に異方性を有する金属等から構成される検査対象において、結晶組織の成長方向を予測し、その成長方向に基づき、超音波の伝播径路を予測することにより、予め溶接部の組織に関する情報が不明な場合においても、適切な探傷条件を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波検査方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明に係る超音波検査装置のブロック構成図である。
【図3】情報入力画面の構成説明図である。
【図4】接合部の断面形状を説明するための図である。
【図5】ティグ溶接における作業手順を説明するための図である。
【図6】作業指示に伴う溶接条件を説明するための図である。
【図7】作業記録による溶接条件を説明するための図である。
【図8】結晶組織の成長方向を予測するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】V字の継手に関する溶接形状を説明するための図である。
【図10】アーク溶接の多層盛りを説明するための図である。
【図11】電子ビーム溶接を説明するための図である。
【図12】接合部における結晶組織の成長方向を予測する過程を説明するための図である。
【図13】垂直姿勢において溶接が行われたときの結晶組織の成長方向を説明するための図である。
【図14】母材と溶接部の境界の組織方向を決定する方法を説明するための図である。
【図15】ティグ溶接が行われたときの結晶組織の成長方向の予測結果を説明するための図である。
【図16】超音波の伝播径路を予測するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図17】接合部における超音波伝播径路の表示結果を説明するための図である。
【図18】伝播方向による音速変化を説明するための特性図である。
【図19】伝播方向による音速変化を説明するための他の特性図である。
【図20】最適な探傷条件を決定するための処理を説明するためのフローチャートである。
【図21】検査領域の設定方法を説明するための図である。
【図22】最適な探傷条件の表示例を説明するための図である。
【図23】超音波検査装置の第1の組込み例を示すブロック図である。
【図24】超音波検査装置の第2の組込み例を示すブロック構成図である。
【図25】本発明の第2実施形態を説明するための図である。
【図26】(a)は、向き合った超音波センサの伝播方向ψと縦波音速の関係を示したグラフであり、(b)は、受信用センサと送信用センサの関係を示す図である。
【符号の説明】
200 統合システム
201 成長方向予測部
202 伝播径路予測部
203 探傷条件決定部
204 入力装置
205 出力装置
Claims (14)
- 少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成される検査対象に超音波を所定の角度で送信し、前記検査対象の内部で反射した超音波を受信し、この受信結果から前記検査対象の健全性を評価する超音波検査方法において、前記検査対象に関する情報を入力する第1の処理と、前記第1の処理により得られた情報から前記検査対象における超音波伝播を予測する第2の処理と、前記第2の処理の処理結果を基に前記検査対象に適した探傷条件を決定する第3の処理とを含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項1に記載の超音波検査方法において、前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の形状情報を含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項1に記載の超音波検査方法において、前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の接合情報を含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項3に記載の超音波検査方法において、前記検査対象の接合情報として、接合方法、接合部の材質、接合の作業手順のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項1、2、3または4のうちいずれか1項に記載の超音波検査方法において、前記第2の処理として、前記検査対象の結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測処理と、前記成長方向予測処理の処理結果を基に前記予測された結晶組織における超音波伝播径路を予測する伝播径路予測処理とを含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項5に記載の超音波検査方法において、前記伝播径路予測処理の処理結果として、前記検査対象を伝播する超音波の径路を表示する表示処理を含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項1、2、3、4、5または6のうちいずれか1項に記載の超音波検査方法において、前記第3の処理における探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波検査方法。
- 少なくともその一部が異方性を有する金属または合金で構成される検査対象に超音波を所定の角度で送信し、前記検査対象の内部で反射した超音波を受信し、この受信結果から前記検査対象の健全性を評価する超音波検査装置において、前記検査対象に関する情報を入力する入力手段と、前記入力手段の入力による情報から前記検査対象における超音波伝播を予測する予測手段と、前記予測手段の予測結果を基に前記検査対象に適した探傷条件を決定する決定手段とを有することを特徴とする超音波検査装置。
- 請求項8に記載の超音波検査装置において、前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の形状情報を含むことを特徴とする超音波検査装置。
- 請求項8に記載の超音波検査装置において、前記検査対象に関する情報として、前記検査対象の接合情報を含むことを特徴とする超音波検査装置。
- 請求項10に記載の超音波検査装置において、前記検査対象の接合情報として、接合方法、接合部の材質、接合の作業手順のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波検査装置。
- 請求項8、9、10または11のうちいずれか1項に記載の超音波検査装置において、前記予測手段による予測処理として、前記検査対象の結晶組織の成長方向を予測する成長方向予測処理と、前記成長方向予測処理の処理結果を基に前記予測された結晶組織における超音波伝播径路を予測する伝播径路予測処理とを含むことを特徴とする超音波検査装置。
- 請求項12に記載の超音波検査装置において、前記予測手段は、前記伝播径路予測処理の処理結果として、前記検査対象を伝播する超音波の径路を表示する表示処理を実行してなることを特徴とする超音波検査方法。
- 請求項8、9、10、11、12または13のうちいずれか1項に記載の超音波検査装置において、前記決定手段における探傷条件として、超音波信号の送信角度、超音波の送信位置、超音波の受信位置のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする超音波検査装置。
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JP2009097876A (ja) | 超音波探傷方法 |
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