JP2004132015A - 剥落防止シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】コンクリート構造物やモルタル構造物の剥落防止に用いられるシートであって、該シートは、
(1)強度が20cN/dtex以上、伸度が5%以下、初期引張弾性率が700cN/dtex以上の超高分子量ポリエチレン繊維製の糸を用いた不織布または織布であり、
(2)前記糸が2以上の方向に配列された複数の配列軸を有する多軸構造であり、
(3)前記糸の交差部分が熱可塑性樹脂で接着されており、
(4)45°カンチレバー法により測定される剛軟度が10〜100cmであることを特徴とする剥落防止シートである。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にコンクリート構造物やモルタル構造体の部分的な剥落を防止するために、構造物の外面などに貼り付けて使用されるシート材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンクリート構造物やモルタル構造物の耐久年数は非常に長いものと考えられていたが、近年、コンクリートの劣化によって、トンネル内壁の剥落事故や、橋やその他の建造物の外壁などからのコンクリート破片の落下事故が多発しており、重大な問題となっている。
【0003】
こうしたコンクリート構造物やモルタル構造物からの剥落事故を防止すべく、ひび割れ部分にモルタルペーストやエポキシ樹脂を注入するといった補修方法が用いられている。しかし、これらの方法は、構造物を頻繁に点検して早期にひび割れを発見して補修する必要があり、非常に手間がかかると共に、十分な安全性が常に確保できるものではなかった。
【0004】
また、炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維、あるいはポリビニルアルコール繊維などの有機繊維を、ある程度の間隔を持って配列して熱可塑性樹脂などの接着剤でシート状に固定したものを複数枚積層してなる組布を、剥落するおそれのある構造物の外面に貼付ける方法が採用されている(例えば、特許文献1、2など)。この方法であれば、上記の補修方法のように頻繁な点検を必要としないため、比較的容易に安全性を確保できる。
【0005】
しかし、炭素繊維を用いた組布は柔軟性に欠けるため、例えば角張った部分や複雑な形状部分に適用する際には、これらの形状に合わせて裁断する必要があり、作業効率が悪いといった問題がある。
【0006】
また、ガラス繊維を用いた組布の場合は、コンクリート構造物などに適用するためアルカリ耐性を高めたガラス繊維が使用されているが、それでもアルカリによるガラス繊維劣化の懸念は払拭しきれておらず、長期安定性の面で課題を残している。
【0007】
ポリビニルアルコール繊維を用いた組布の場合は、耐久性の面に課題がある。また、繊維の強度が低いため、繊維または該繊維を束ねた糸の太さを大きくする必要があり、また、シート強度を高めるために、組布中の糸の間隔を狭めたり、糸を何重にも重ねたりする必要があるため、生産性が低下する他、組布全体の厚みが大きくなり、使用する接着剤量も増大するため、コスト面での課題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−194855号公報
【特許文献2】
特開2002−242447号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐荷重性および長期間使用安定性に優れ、取り扱い性も良好であり、コンクリート構造物やモルタル構造物の部分的な剥落防止に好適なシートを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の剥落防止シート(以下、単に「シート」という場合がある)は、コンクリート構造物やモルタル構造物の剥落防止に用いられるシートであって、該シートは、
(1)強度が20cN/dtex以上、伸度が5%以下、初期引張弾性率が700cN/dtex以上の超高分子量ポリエチレン繊維製の糸を用いた不織布または織布であり、
(2)前記糸が2以上の方向に配列された複数の配列軸を有する多軸構造であり、
(3)前記糸の交差部分が熱可塑性樹脂で接着されており、
(4)45°カンチレバー法により測定される剛軟度が10〜100cmであるところに要旨を有するものである。上記糸の交差部分の厚みは、1mm以下であることが好ましい。
【0011】
上記糸は、横断面において、厚みTと幅Hの比:H/Tが5以上であることが好ましく、また、いずれの配列軸においても、上記糸が5〜50mmの間隔で配列されてなるものであることが推奨される。さらに、上記糸100質量部に対し、上記熱可塑性樹脂の付着量が10〜100質量部であることが望ましい。
【0012】
このような上記剥落防止シートの有する多軸構造は、上記糸の配列軸の交差角度が0°/90°の2軸、0°/60°/−60°の3軸、または0°/45°/−45°/90°の4軸であることが推奨される。
【0013】
【発明の実施の形態】
コンクリート構造物やモルタル構造物(以下、まとめて単に「構造物」という場合がある)の剥落を防止するためのシートは、これらの構造物が主に屋外環境に曝されるものであるため、こうした厳しい環境下での使用に耐え得るものでなければならない。本発明者等は、種々の優れた特性を有する超高分子量ポリエチレン繊維に着目し、これを剥落防止シートの構成繊維として使用することで、極めて優れたシートとすることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
超高分子量ポリエチレン繊維は、高強度・高弾性率繊維として知られており、これらの特性は市販の繊維の中でも最高レベルである。また、耐候性や耐薬品性にも優れている。さらに、密度が小さく(例えば、0.97g/cm3程度)、柔軟性に富むものである。よって、剥落防止シートの構成素材として超高分子量ポリエチレン繊維を用いた場合は、アルカリ性を有するコンクリート構造物に直接接着しても侵され難く、雨風や太陽光に曝されても脆化の懸念が無く、軽量で運搬性や取り扱い性に優れ、構造物外面の種々の形状に合わせて変形させ得る柔軟性と、高質量の剥離物の落下も防止し得る強度を確保し得るのである。以下、本発明の剥落防止シートの詳細について説明する。
【0015】
本発明のシートは、超高分子量ポリエチレン繊維製の糸(以下、単に「糸」という場合がある)を用いた不織布または織布である。超高分子量ポリエチレン繊維とは、重量平均分子量が60万以上、好ましくは100万以上で、分岐鎖をほとんど有さないポリエチレンを、ゲル紡糸法によって繊維化したものである。超高分子量ポリエチレン繊維製の糸とは、上記超高分子量ポリエチレン繊維を素材とする糸であり、2本以上の超高分子量ポリエチレン繊維から構成される糸の他、超高分子量ポリエチレン繊維のモノフィラメントも含む。また、超高分子量ポリエチレン繊維製の糸には、本発明の剥落防止シートに要求される諸物性を損なわない範囲で、他の素材からなる繊維を含有していてもよい。
【0016】
また、上記糸は、1本で用いてもよく、例えば繊度が小さい場合などでは、2本以上の糸を束ねて恰も1本の糸の如く使用してもよい。以後、糸自体の特定(繊度、機械的特性、形状)の説明を除き、上記いずれの態様も含むものとする。
【0017】
上記超高分子量ポリエチレン繊維製の糸としては、強度(破断強度)が20cN/dtex以上、伸度(破断伸度)が5%以下、初期引張弾性率が700cN/dtex以上の高強度・高弾性率のものを使用する。このような糸を構成要素に用いることで、高質量の剥離物の落下も防止し得る剥落防止シートとすることができる。より好ましい強度は25cN/dtex以上、より好ましい引張初期弾性率は800cN/dtex以上である。
【0018】
上記糸の繊度は、400dtex以上、好ましくは1000dtex以上であって、10000dtex以下、好ましくは5000dtex以下であることが推奨される。糸の繊度が上記範囲を下回る場合には、シートの腰が無くなる傾向にあるため、形状保持が困難となり、シート製造時や構造物への貼付け時の作業性が低下する。他方、糸の繊度が上記範囲を超える場合には、シートの厚みが増大し、シート製造用の熱可塑性樹脂や構造物へ貼り付けるための接着剤の必要量が増大する傾向にあり、好ましくない。
【0019】
また、上記糸は、横断面が扁平形状であることが好ましく、具体的には、横断面において、厚みTと幅Hの比:H/Tが5以上、好ましくは10以上であることが推奨される。糸の断面が上記形状であることで、該糸とシートを形成するための熱可塑性樹脂や、シートを構造物に貼り付けるための接着剤との接触面積を大きくすることができるため、シート強度、およびシートと構造物との接着強度を高めることが可能となり、結果、剥落防止効果が増大する。
【0020】
なお、上記の各特性を有する糸は、例えば、東洋紡績株式会社から「ダイニーマ」の商品名で上市されている。
【0021】
本発明のシートは、該糸の配列軸が2以上存在する多軸構造であれば、不織布であっても織布であっても構わない。ここで、不織布とは、異なる配列軸方向に配列された2以上の糸が、その交差部分で単に重なり合う構造を有するものを意味し、織布とは、異なる配列軸方向に配列された2以上の糸が、単に重なり合うのではなく、織り合わされた構造を有するものを意味する。本発明のシートが不織布の場合は、糸を直線的に配列しているため、該糸の強度を最も効果的に利用することができる利点がある。他方、織布の場合は、糸の交差部分が織り合わされた状態で接着されるため、糸ズレが生じ難く、ハンドリング性に優れるといった利点がある。
【0022】
本発明で使用する糸は、上記の通り、高強度・高弾性率のものであるため、このような糸から構成されるシートでは、糸の配列軸方向の強度・弾性率が、該配列軸方向とは異なる方向に対して、非常に大きくなるといった異方性を示す。本発明では、糸の配列軸が2以上の多軸構造とすることで、異方性の解消を図っている。
【0023】
本発明のシートが有する多軸構造としては、最も単純なものとして、0°/90°の2方向に糸が配列した2軸構造、すなわち、2つの配列軸を有し、これらの配列軸が互いに直交する構造が挙げられる(図1)。また、糸の配列軸が3つであり、これらの配列軸が0°/60°/−60°の角度で交差する3軸構造(図2)や、糸の配列軸が4つであり、これらの配列軸が0°/45°/−45°/90°の角度で交差する4軸構造(図3)も好ましい。これら3軸構造や4軸構造の不織布または織布から構成されるシートの場合は、バイアス方向の荷重にも耐え得る効果が期待できる。
【0024】
上記シートでは、いずれの配列軸においても、上記糸が5mm以上、好ましくは10mm以上であって、50mm以下、好ましくは30mm以下の間隔で配列されていることが望ましい。配列された糸の間隔が上記範囲を下回ると、糸の使用量が増大するため補強効果は向上するが、コストも増大してしまう。他方、配列された糸の間隔が上記範囲を超えると、構造物外面で剥離が生じた場合に、各々の糸に掛かる応力が増大するため、シートの破壊が生じ易くなり、剥落防止効果が低下する傾向にある。
【0025】
本発明のシートは、上記の多軸構造を取り得るように糸を配列するか、あるいは織り、該糸の交差部分を熱可塑性樹脂で接着して得られる。糸の交差部分の接着に熱可塑性樹脂を用いるのは、加工性や取り扱い性が良好であり、また、本発明のシートを、少なくとも構造物外面に貼り付けるまでの間、シートの形状が保持され得る程度の接着力が確保できれば十分だからである。熱可塑性樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル酸系;ポリビニルアルコール系;ポリウレタン系;などの各種熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、上記熱可塑性樹脂は、少なくとも糸の交差部分を接着する程度に用いられていればよいが、さらに複数の糸が形成する空間をある程度狭めるように、該交差部分以外の部分に付着していてもよい。
【0026】
糸の交差部分の接着に用いる熱可塑性樹脂量は、シートに用いる糸100質量部に対し、10質量部以上、好ましくは20質量部以上であって、100質量部以下、好ましくは50質量部以下であることが推奨される。熱可塑性樹脂の使用量が上記範囲を下回ると、糸同士の接着が不十分となる傾向にあり、施工時(構造物外面への貼付け時)に糸が剥がれるなどの不具合が生じ易くなる。また、シートの硬さも低下し、取り扱い性が低下する傾向にある。他方、熱可塑性樹脂の使用量が上記範囲を超えると、シート質量が増大して作業性が低下する。また、同一目付当たりの繊維質量が低下するため、シート全体の剛性が低くなり、結果、剥落防止効果が低下する傾向にある。
【0027】
なお、上記シートでは、糸の交差部分の厚みが1mm以下、好ましくは0.8mm以下である。糸の交差部分は、シート中で最も厚みのある部分となるが、該部分の厚みが1mmを超えると、構造物へ貼り付けるための接着剤の必要量が増大する。
【0028】
このようにして得られる本発明のシートでは、45°カンチレバー法により測定される剛軟度が10cm以上、好ましくは15cm以上であって、100cm以下、好ましくは80cm以下であることが要求される。このような範囲の剛軟度を有するシートであれば、適度な柔軟性と形状保持性を備えており、例えば、炭素繊維製シートのように、構造物の外面形状に合わせて裁断する必要も無く、施工性が良好である。なお、上記45°カンチレバー法とは、JIS L 1096の「8.19.1 A法」に規定されている45°カンチレバー法を意味する。
【0029】
上述の糸の繊度、糸の配列間隔、熱可塑性樹脂付着量、糸の配列軸の数を踏まえて求められる本発明のシートの好適な目付は2〜1778g/m2であり、8〜300g/m2であることがより好ましい。
【0030】
本発明の剥落防止シートは、従来の剥落防止シートと同様の方法で、構造物の外面などに貼り付けて用いられる。構造物外面との接着に用いられる接着剤も特に限定されず、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルオリゴマー樹脂などの有機系素材や、セメント系から作られるモルタルなどの無機系素材など、当該分野で通常用いられる公知の接着剤が使用可能である。
【0031】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0032】
実施例1
繊度:1320dtex、破断強度:28.1cN/dtex、破断伸度:4.0%、初期引張弾性率:972cN/dtexの特性を有する超高分子量ポリエチレン繊維糸(東洋紡績株式会社製「ダイニーマ」)を用いた。なお、超高分子量ポリエチレン繊維糸の破断強度、破断伸度および初期引張弾性率は、株式会社オリエンテックス社製「5tテンシロン(UTM−1T)」を用い、チャック間距離:200mm、温度:20℃、引張速度:1000mm/分の条件で引張試験を行って求めた値である。
【0033】
また、上記超高分子量ポリエチレン繊維糸については、扁平度(幅寸法/厚さ寸法の比)も求めた。超高分子量ポリエチレン繊維糸から任意に10箇所選択し、ノギスを用いて夫々の幅寸法と厚み寸法を測定して各箇所の扁平度を算出し、10箇所の平均値を求めて糸の扁平度とした。結果を表1に示す。
【0034】
上記の超高分子量ポリエチレン繊維糸を、無撚の状態で10mm間隔で一方向に配列し、この上に、配列軸の交差角度が90°となるように、前記超高分子量ポリエチレン繊維糸を無撚の状態で10mm間隔で配列し、糸の交差部分をウレタン系接着剤で接着して、図1に示すような2軸構造のシートとした。得られたシートについて、下記の測定を行った。結果を表1に示す。
【0035】
[糸の交差部分の厚み]
上記シートの糸の交差部分の厚みを、シックネスゲージを用い、任意に10箇所選択して測定し、その平均値をシートの糸の交差部分の厚みとした。
【0036】
[目付]
シートを1m2の寸法に裁断し(5枚)、夫々の質量を測定し、その平均値をシートの目付とした。
【0037】
[剛軟度]
シートの剛軟度は、JIS L 1096の「8.19.1」A法(45°カンチレバー法)の規定に準じて測定した。一方の糸の配列軸方向に沿ってシートの測定サンプルをカンチレバー形試験機にセットし、サンプルを斜面方向にずらし、片方の端が試験機の斜面と接触した時点でスライドさせた距離を測定した。実施例1のシートでは、糸の配列軸が2つあるため、各配列軸方向について5回ずつ測定を行い、夫々の平均値を求めた。
【0038】
[コンクリート押し抜き試験]
この試験は、シートを構造物外面などに貼付けて使用した際の特性を確認するためのものである。試験は、シートをコンクリート供試体の下面にエポキシ樹脂(三精塗料工業株式会社製「E−1300」)を用いて貼付け、日本道路公団規格の「繊維シート接着工に使用する材料の試験法」JHS412の規格に準じて実施した。結果を図4に示す。
【0039】
実施例2
繊度:1320dtex、破断強度:28.1cN/dtex、破断伸度:4.0%、初期引張弾性率:972cN/dtexの特性を有する超高分子量ポリエチレン繊維糸(東洋紡績株式会社製「ダイニーマ」)を無撚の状態で10mm間隔で配列し、この上に、配列軸の交差角度が60°となるように、前記超高分子量ポリエチレン繊維糸を無撚の状態で10mm間隔で配列し、さらにこの上に、重なり合う糸同士の配列軸の交差角度が60°となるように、前記超高分子量ポリエチレン繊維糸を無撚の状態で10mm間隔で配列し、糸の交差部分をポリビニルアルコール樹脂で接着して、図2に示すような3軸構造のシートとした。なお、超高分子量ポリエチレン繊維糸の各機械的特性は、実施例1と同じ方法で測定したものである。
【0040】
得られたシートについて、実施例1と同様にして上記の各測定を行った。なお、剛軟度測定については、実施例2のシートは糸の配列軸が3つあるが、任意の一方向を選択して5回測定を行うと共に、該測定軸方向に直交する方向の測定も5回行い、夫々の平均値を求めた。コンクリート押し抜き試験結果を図5に、その他の結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
なお、表1の剛軟度の欄において、aは任意に選択した糸の配列軸方向での測定値を、bはa方向と直交する方向での測定値を示す。よって、実施例1では、b方向は、a方向とは異なる他方の配列軸である。
【0043】
比較例
市販の2軸組布(クラレ社製「ビニロンネットVK1070」)を比較例として用いた。この2軸組布はポリビニルアルコール繊維から構成されており、該繊維が10mm間隔で配列されているものである。この比較例シートに用いられているポリビニルアルコール繊維の扁平度、および比較例シートの目付並びに剛軟度を実施例1と同様にして測定すると共に、実施例1と同様にしてコンクリート押し抜き試験を行った。結果を表1および図6に示す。
【0044】
図4〜6の結果から、実施例1および2のシートは、例えば、変位量:10mmにおける荷重値が1.5kNを超えており、従来品に当たる比較例シートに比べて優れた耐荷重を有していることが分かる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の剥落防止シートは以上のように構成されており、優れた耐荷重性能と良好な剛軟度を有している。よって、高度な剥落防止性能を有すると共に、取り扱い性が良好で、例えば構造物の折れ曲がった部分にも容易にフィットさせることができ、施工性にも優れている。さらに、素材に、耐薬品性(耐アルカリ性)に優れる超高分子量ポリエチレン繊維を用いており、長期安定性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】0°/90°の2軸構造を有する本発明の剥落防止シートの模式図である。
【図2】0°/60°/−60°の3軸構造を有する本発明の剥落防止シートの模式図である。
【図3】0°/45°/−45°/90°の4軸構造を有する本発明の剥落防止シートの模式図である。
【図4】実施例1のシートのコンクリート押し抜き試験の結果を示すグラフである。
【図5】実施例2のシートのコンクリート押し抜き試験の結果を示すグラフである。
【図6】比較例シートのコンクリート押し抜き試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 超高分子量ポリエチレン繊維製の糸
Claims (6)
- コンクリート構造物やモルタル構造物の剥落防止に用いられるシートであって、該シートは、
(1)強度が20cN/dtex以上、伸度が5%以下、初期引張弾性率が700cN/dtex以上の超高分子量ポリエチレン繊維製の糸を用いた不織布または織布であり、
(2)前記糸が2以上の方向に配列された複数の配列軸を有する多軸構造であり、
(3)前記糸の交差部分が熱可塑性樹脂で接着されており、
(4)45°カンチレバー法により測定される剛軟度が10〜100cmであることを特徴とする剥落防止シート。 - 上記糸の交差部分の厚みが1mm以下である請求項1に記載の剥落防止シート。
- 上記糸は、横断面において、厚みTと幅Hの比:H/Tが5以上である請求項1または2に記載の剥落防止シート。
- いずれの配列軸においても、上記糸が5〜50mmの間隔で配列されてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の剥落防止シート。
- 上記糸100質量部に対し、上記熱可塑性樹脂の付着量が10〜100質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の剥落防止シート。
- 上記シートの有する多軸構造は、上記糸の配列軸の交差角度が0°/90°の2軸、0°/60°/−60°の3軸、または0°/45°/−45°/90°の4軸である請求項1〜5のいずれかに記載の剥落防止シート。
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- 2002-10-09 JP JP2002296559A patent/JP2004132015A/ja active Pending
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