JP2004107260A - 脳アミロイドーシス予防・治療薬のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、HMG1を阻害してAβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法;HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを用いることを特徴とする、HMG1の発現を抑制してAβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法;上記方法により得られる物質を含有してなる脳アミロイドーシス予防・治療剤等。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、High Mobility Group Protein−1(以下、HMG1と略称する)を用いることを特徴とする、老人斑形成抑制作用を有する物質のスクリーニング手段に関する。本発明はまた、当該スクリーニングにより得られる物質の医薬用途、特にアルツハイマー病やダウン症などの脳アミロイドーシスの予防・治療用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
老人斑はアルツハイマー病の主要な神経病理学的変化の1つであり、発症過程の最も初期から検出される。老人斑を構成する主要成分はアミロイドβ(以下、Aβと略称する)ペプチドであり、アミロイド前駆体蛋白質(APP)が2種の(β−及びγ−)セクレターゼで切断されることにより産生される。その主要な分子種として、40アミノ酸残基からなるAβ40とC末端側がさらに2残基長いAβ42がある。
【0003】
Aβペプチドの沈着は、非細胞性および細胞性(グリア)の除去経路の各調節因子間の複雑な相互作用により制御されていることが、最近の研究から示唆されている。非細胞性経路には、1)ネプリライシンやインスリン分解酵素(IDE)のような、細胞外Aβペプチドを分解する分泌性ペプチダーゼや(例えば、非特許文献1)、2)脳実質から循環系への輸送・排出によるAβの流出経路がある(例えば、非特許文献2)。アルツハイマー病においてはAβペプチドの細胞外沈着が著しく蓄積し、また、ミクログリアと関連している。このようなミクログリアの関与から、それらがAβ貪食機能を果たしていること(例えば、非特許文献3)及び/又は炎症性の活性化に関与する(例えば、非特許文献4)ことが示唆されている。Aβワクチン療法により産生した抗Aβ抗体がFcレセプターを通じてミクログリアの食作用を誘起すること(例えば、非特許文献5)及び/又は血漿Aβペプチドを除去すること(例えば、非特許文献6)の発見により、Aβクリアランスの重要性が非常に注目されている。また、トランスフォーミング成長因子β1(TGF−β1)等のサイトカインが、ミクログリアによるAβクリアランスを促進する(例えば、非特許文献7)。最近、本発明者らは、Hsp90、Hsp70、Grp78等の細胞外ストレス蛋白質が、ミクログリアによる食作用の活性化とNFκBの活性化によるAβ分解とによって、及び/又はシャペロン活性によって、Aβクリアランスを促進し得ることを発見した(例えば、非特許文献8)。
【0004】
アミロイドーシスに関連する蛋白質の多くは類似した構造及び配列を共有することが知られており、それらがアミロイド線維形成に寄与すると信じられている。そのようなアミロイド形成コンセンサス配列は、アミロイドーシスとの関連性が知られていない蛋白質の中にも見出される。例えば、Kallijarviらは、非ヒストン染色体蛋白質であるHMG1はAβペプチドと相同な配列モチーフを有しており、該配列モチーフを含むHMG1フラグメントは、インビトロでアミロイド様線維を形成し、Aβ40のポリマー化を促進することを報告している(非特許文献9)。
【0005】
一方、遠山らは、孤発性アルツハイマー病(SAD)脳内に異常プレセニリン2(家族性アルツハイマー病(FAD)の原因遺伝子の1つとして知られる)蛋白質を検出、その原因はHMG1がプレセニリン2初期転写産物に結合して正常なスプライシングを妨げるためであること、及びHMG1と結合するおとり物質をアルツハイマー病の細胞モデルに作用させると正常なプレセニリン2mRNAが合成され、異常プレセニリン2蛋白質も生じないことを発表し(例えば、非特許文献10)、対症療法的な現行の治療薬を超える第二世代のアルツハイマー病治療薬の開発につながるものと期待されている。
【0006】
【非特許文献1】
ジャーナル・オヴ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),第273巻,p32730−32738(1998年)
【非特許文献2】
プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),第96巻,p14088−14093(1999年)
【非特許文献3】
アメリカン・ジャーナル・オヴ・パソロジー(Am. J. Pathol.),第148巻,p399−403(1996年)
【非特許文献4】
ニューロバイオロジカル・エイジング(Neurobiol. Aging),第21巻,p383−421(2000年)
【非特許文献5】
ネイチャー(Nature),第400巻,p173−177(1999年)
【非特許文献6】
プロシーディングズ・オヴ・ナショナル・アカデミー・オヴ・サイエンシーズ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),第98巻,p8850−8855(2001年)
【非特許文献7】
ネイチャー・メディシン(Nat. Med.),第7巻,p612−618(2001年)
【非特許文献8】
FASEB・ジャーナル(FASEB J.),第16巻,p601−603(2002年)
【非特許文献9】
バイオケミストリー(Biochemistry),第40巻,p10032−10037(2001年)
【非特許文献10】
東京読売新聞,2002年1月9日夕刊号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アルツハイマー病などの脳アミロイドーシスにおいて、既に生成したAβペプチドの凝集・沈着を阻害し、且つその分解除去を促進する有用な物質は未だに見出されておらず、そのような観点からの脳アミロイドーシス治療薬の研究開発はほとんど皆無である。
従って、本発明の目的は、▲1▼Aβの凝集を促進し、且つ▲2▼ミクログリアによるAβの貪食を抑制することによりAβの除去機構を阻害し、その結果、老人斑形成を促進し脳アミロイドーシスを引き起こす因子を同定するとともに、当該因子の作用または発現を阻害することによりAβクリアランスを促進し、脳アミロイドーシスの予防・治療効果を有する物質のスクリーニング方法及びそのためのキット等を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルツハイマー病患者の脳内でHMG1レベルが増加しており、細胞外HMG1が老人斑においてAβ42と共存していること、インビトロのミクログリア培養系においてHMG1はミクログリアによるAβ42の食作用を阻害すること、インビトロでHMG1はAβ42と複合体を形成してAβ42の凝集体形成を促進することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、アミロイドβ42凝集抑制作用及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用を促進するためのワクチン、
[2] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを含有してなる、アミロイドβ42凝集及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用異常の診断薬、
[3] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、アミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進剤、
[4] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、アミロイドβ42凝集及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用異常の診断薬、
[5] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含有するヌクレオチドを含有してなる、アミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進剤、
[6] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法、
[7] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩にアミロイドβ42および被験物質を接触させ、アミロイドβ42の凝集を検定することを特徴とする、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制作用を示す物質のスクリーニング方法、
[8] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩にアミロイドβ42を接触させた場合におけるアミロイドβ42の凝集との比較を行なうことを特徴とする、上記[7]記載の方法、
[9] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩、アミロイドβ42および被験物質をミクログリアに接触させ、ミクログリアによるアミロイドβ42食作用を検定することを特徴とする、HMG1を阻害してミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法、
[10] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩およびアミロイドβ42をミクログリアに接触させた場合におけるミクログリアによるアミロイドβ42食作用との比較を行なうことを特徴とする、上記[9]記載の方法、
[11] HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含んでなる、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング用キット、
[12] さらにアミロイドβ42を含む上記[11]記載のキット、
[13] 上記[6]記載の方法または上記[11]記載のキットを用いて得られる、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質、
[14] HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質、
[15] 上記[13]または[14]記載の物質を含有してなる医薬、
[16] アルツハイマー病、ダウン症またはアミロイドアンギオパチーの予防・治療剤である上記[15]記載の医薬、
[17] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを用いることを特徴とする、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法、
[18] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドからHMG1またはその部分ペプチドを生成し得る系に被験物質を添加し、HMG1またはその部分ペプチドの発現を検定することを特徴とする、上記[17]記載の方法、
[19] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドからHMG1またはその部分ペプチドを生成し得る系に被験物質およびアミロイドβ42を添加し、HMG1またはその部分ペプチドの発現およびアミロイドβ42の凝集を検定することを特徴とする、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制用を示す物質のスクリーニング方法、
[20] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドからHMG1またはその部分ペプチドを生成し得る系に被験物質、アミロイドβ42およびミクログリアを添加し、HMG1またはその部分ペプチドの発現およびミクログリアによるアミロイドβ42食作用を検定することを特徴とする、HMG1の発現を抑制してミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法、
[21] HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを含んでなる、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング用キット、
[22] さらにアミロイドβ42を含む上記[21]記載のキット、
[23] 上記[17]記載の方法または上記[21]記載のキットを用いて得られる、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質、
[24] HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質、
[25] 上記[23]または[24]記載の物質を含有してなる医薬、
[26] アルツハイマー病、ダウン症またはアミロイドアンギオパチーの予防・治療剤である上記[25]記載の医薬等を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるHMG1は、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質である。HMG1は、例えば、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来する蛋白質であってもよく、また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。あるいはHMG1をコードするポリヌクレオチドを導入された形質転換体から産生された組換え蛋白質であってもよい。
【0011】
「配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と約85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の同一性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
あるいは「配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」としては、a)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、b)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、c)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、またはd)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども用いられる。
本発明の「配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質」とは、「配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列」を有し、且つ配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質をいう。
「実質的に同質の活性」としては、例えば、Aβ42の凝集促進活性、ミクログリアによるAβ42食作用抑制活性が挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、上記活性が同等であることが好ましいが、これらの活性の程度(例:約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
Aβ42の凝集促進活性、ミクログリアによるAβ42食作用抑制活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述の本発明のスクリーニング方法において記載する方法に従って測定することができる。
【0012】
本明細書においてHMG1は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するヒトHMG1をはじめとするHMG1は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
HMG1がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものもHMG1に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、HMG1には、上記した蛋白質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
HMG1の具体例としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するヒト由来のHMG1などが用いられる。ヒトHMG1は、ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.),第17巻,第3号,p1197−1214(1989年)に記載され、GenBankに登録番号CAA31110.1(cDNAはX12597)を付されて登録・公開されている公知の蛋白質である。
【0013】
HMG1の部分ペプチド(以下、単に「本発明の部分ペプチド」と略称する場合もある)としては、上記したHMG1の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つHMG1と実質的に同質の活性を有する限り、何れのものであってもよいが、例えば、HMG1蛋白質分子のうち、上記非特許文献9に記載のAβペプチドのアミロイド形成コンセンサス配列と相同な配列モチーフを含む部分アミノ酸配列をを有するものなどが用いられる。
本発明の部分ペプチドのアミノ酸の数は、HMG1の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。また、「実質的に同質の活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
【0014】
また、本発明の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記したHMG1と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
HMG1またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0015】
HMG1またはその塩は、上記したヒトや他の哺乳動物の細胞または組織から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載するHMG1をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載する蛋白質合成法またはこれに準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0016】
HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩またはそのアミド体の合成には、通常市販の蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とする蛋白質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂から蛋白質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的の蛋白質またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0017】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0018】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0019】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0020】
蛋白質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(蛋白質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いた蛋白質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去した蛋白質とを製造し、この両蛋白質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護蛋白質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗蛋白質を得ることができる。この粗蛋白質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望の蛋白質のアミド体を得ることができる。
蛋白質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、蛋白質のアミド体と同様にして、所望の蛋白質のエステル体を得ることができる。
【0021】
HMG1の部分ペプチドまたはその塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいはHMG1を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、HMG1を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下のa)〜e)に記載された方法が挙げられる。
a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)b)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0022】
HMG1をコードする塩基配列を含有するヌクレオチド(以下、「本発明のヌクレオチド」と略称する場合もある)としては、上記したHMG1蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよく、DNA、RNAあるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該ヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であってもよい。
【0023】
HMG1をコードする塩基配列を含有するDNA(以下、「本発明のDNA」と略称する場合もある)としては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0024】
具体的には、HMG1をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:1で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、HMG1と実質的に同質の活性(例:Aβ42の凝集促進活性、ミクログリアによるAβ42食作用抑制活性など)を有する蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。配列番号:1で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0025】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
【0026】
より具体的には、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するヒト由来HMG1をコードするDNAとしては、配列番号:1で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0027】
目的核酸の標的領域と相補的な塩基配列を含むヌクレオチド、即ち、目的核酸とハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、該目的核酸に対して「アンチセンス」であるということができる。一方、目的核酸の標的領域と相同性を有する塩基配列を含むヌクレオチド(即ち、目的核酸が蛋白質をコードする場合、その蛋白質の部分ペプチドをコードするヌクレオチド)は、該目的核酸に対して「センス」であるということができる。本明細書で用いる用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ここで「相同性を有する」または「相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性または相補性を有することをいう。また、ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、そのペプチド(蛋白質)がヌクレオチド(核酸)またはその相補体の配列から翻訳されるアミノ酸配列を有することを通常指している。
【0028】
本発明のヌクレオチドと相補的な塩基配列の全部または一部を含有してなるヌクレオチド(以下、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定された本発明のヌクレオチドの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたヌクレオチドは、本発明のヌクレオチドの塩基配列を含む遺伝子の複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンスヌクレオチドは、HMG1遺伝子から転写されるRNAとハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができるか、あるいはHMG1関連RNAとの相互作用を介してHMG1遺伝子の発現を調節・制御することができる。HMG1関連RNAの選択された配列に相補的なヌクレオチド、およびHMG1関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、生体内および生体外でHMG1遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。
【0029】
本発明のアンチセンスヌクレオチドの標的領域は、アンチセンスヌクレオチドがハイブリダイズすることにより、結果としてHMG1蛋白質の翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、HMG1 mRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいがそれに限定されない。具体的には、例えば、HMG1 mRNAの5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループが標的領域として選択しうるが、HMG1遺伝子内の如何なる領域も標的として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもまた好ましい。
さらに、本発明のアンチセンスヌクレオチドは、HMG1 mRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるHMG1遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。
【0030】
アンチセンスヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0031】
アンチセンスヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
【0032】
アンチセンスヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0033】
HMG1 mRNAもしくはHMG1遺伝子の初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、本発明のアンチセンスヌクレオチドに包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。本発明のヌクレオチドに対応するmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572−5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780−2788 (2001)]。
【0034】
HMG1 mRNAもしくはHMG1遺伝子の初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴRNAもまた、本発明のアンチセンスヌクレオチドに包含され得る。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が哺乳動物細胞でも起こることが確認されたことから[Nature, 411(6836): 494−498 (2001)]、リボザイムの代替技術として注目されている。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、HMG1のcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列情報に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的領域を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。RNAi活性を有する二本鎖オリゴRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中で、例えば、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
【0035】
本発明のアンチセンスヌクレオチドのHMG1遺伝子発現阻害活性は、本発明のヌクレオチドを含有する形質転換体、生体内や生体外のHMG1遺伝子発現系またはHMG1蛋白質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。
【0036】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上記した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT−PCR法によって増幅することもできる。
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:1で表される塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または(2)配列番号:1で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、HMG1と実質的に同質の活性(例:Aβ42の凝集促進活性、ミクログリアによるAβ42食作用抑制活性など)を有する蛋白質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:1で表される塩基配列ハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0037】
HMG1またはその部分ペプチド(以下、包括的に「HMG1」と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、HMG1の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAをHMG1の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0038】
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))などを用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法などの自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたHMG1をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
HMG1の発現ベクターは、例えば、(イ)HMG1をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0039】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0040】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、CHO(dhfr−)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のレセプター蛋白質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築されたHMG1をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0041】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D、20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。
【0042】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、ヒトHEK293細胞などが用いられる。
【0043】
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メッソズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology), 6, 47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、HMG1をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0044】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0045】
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., ネイチャー(Nature), 195, 788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外にHMG1を生成せしめることができる。
【0046】
上記培養物からHMG1を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
HMG1を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりHMG1の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にHMG1が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるHMG1の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的新和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0047】
かくして得られるHMG1が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するHMG1を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成するHMG1の活性は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0048】
HMG1に対する抗体は、HMG1を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
HMG1に対する抗体は、HMG1を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0049】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
HMG1は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化HMG1と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0050】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、HMG1抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したHMG1を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0051】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0052】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(HMG1抗原)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物からHMG1に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0053】
HMG1は、アルツハイマー病脳の粒子画分(核、膜及び不溶性蛋白質を含む)及び細胞質画分(細胞質ゾル及び細胞外可溶性蛋白質を含む)の両方において発現がアップレギュレートされ、細胞外HMG1は老人斑と共存する。さらに、HMG1はミクログリアによるAβ42の食作用を阻害し、また、Aβ42と結合してAβ42の凝集体形成を促進する。従って、HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「HMG1等」ともいう)、HMG1等をコードするDNA、本発明のアンチセンスヌクレオチド、HMG1等に対する抗体(以下、「本発明の抗体」と略記する場合がある)は、以下の用途を有している。
【0054】
[1]HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩の用途
(a)Aβ42凝集抑制作用及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進するためのワクチン
HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩をワクチンとして投与すると、体内に抗HMG1抗体を生成させることができる。抗HMG1抗体は、HMG1のAβ42凝集促進作用及びミクログリアによるAβ42食作用阻害作用を中和することができるので、HMG1ワクチンは、Aβ42凝集抑制作用及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
HMG1等を上記疾患の予防・治療用に使用する場合は、常套手段に従ってワクチン化することができる。
例えば、a)HMG1等は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、b)HMG1等を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0055】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0056】
また、上記ワクチンは、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
HMG1等の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えばアルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一回につき約0.01〜1000mg、好ましくは約0.1〜100mg、より好ましくは約1〜50mgである。非経口的に投与する場合は、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の形では、例えばアルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一回につき約0.01〜1000mg程度、好ましくは約0.1〜100mg程度、より好ましくは約1〜50mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。投与は1〜21日間隔で1〜10回行うことができる。
【0057】
[2]HMG1またはその部分ペプチドをコードするヌクレオチドの用途
(a)遺伝子診断剤
本発明のヌクレオチドおよびアンチセンスヌクレオチドは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)におけるHMG1またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
本発明のヌクレオチドまたはアンチセンスヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences ofthe United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
また、ノーザンハイブリダイゼーションによりHMG1の発現過多が検出された場合は、例えば、HMG1の過剰発現により、Aβ42の凝集及び/又はミクログリアによるAβ42食作用異常、ひいては老人斑の形成・蓄積が起こっている可能性が高い、従って、老人斑が関与する疾患、例えば、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)に罹患している可能性が高いと診断することができる。
【0058】
[3]HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の用途
(a)HMG1の定量並びにAβ42凝集及び/又はミクログリアによるAβ42食作用異常の診断
本発明の抗体は、HMG1を特異的に認識することができるので、細胞外HMG1を検出することによる、Aβ42凝集及び/又はミクログリアによるAβ42食作用異常の診断などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化されたHMG1とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたHMG1の割合を測定することを特徴とする被検液中の該レセプターの定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のHMG1の定量法を提供する。
【0059】
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体がHMG1のN端部を認識する抗体である場合、他方の抗体がHMG1の他の部分、例えばC端部を認識する抗体であることが望ましい。
また、HMG1に対するモノクローナル抗体を用いて該蛋白質の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)2、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。
【0060】
本発明の抗体を用いるHMG1の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、HMG1量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
【0061】
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中のHMG1量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0062】
本発明のサンドイッチ法によるHMG1の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、HMG1の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、HMG1のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてHMG1の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、HMG1を感度良く定量することができる。
【0063】
本発明の抗体を用いる上記の定量法において、脳実質や脳血管壁の細胞外液を被検液とし、脳実質や脳血管壁における細胞外HMG1の濃度を定量することによって、該蛋白質の濃度の増加が検出された場合、例えば、HMG1の過剰産生及び/又は漏出により、Aβ42の凝集及び/又はミクログリアによるAβ42食作用異常、ひいては老人斑の形成・蓄積が起こっている可能性が高い、従って、老人斑が関与する疾患、例えば、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)に罹患している可能性が高いと診断することができる。
【0064】
(b)Aβ42の凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用促進剤本発明の抗体は、HMG1のAβ42凝集促進作用及びミクログリアによるAβ42食作用阻害作用を中和することができるので、Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
本発明の抗体を上記疾患の予防・治療用に使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、a)本発明の抗体は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、b)本発明の抗体を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0065】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0066】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
本発明の抗体の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えばアルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば注射剤の形では、例えばアルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0067】
さらに、本発明の抗体は、HMG1を特異的に認識するので、後述のHMG1阻害剤と組み合わせてそれらの薬剤をHMG1に送達するためのターゲッティング薬として使用することもできる。
【0068】
[4]本発明のアンチセンスヌクレオチドの用途
(a)Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用促進剤
本発明のアンチセンスヌクレオチドは、HMG1 mRNAの合成及びHMG1蛋白質への翻訳を阻害するので、Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
本発明のアンチセンスヌクレオチドを上記予防・治療剤として用いる場合、該アンチセンスヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該アンチセンスヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
【0069】
例えば、該ヌクレオチドは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該ヌクレオチドを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0070】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0071】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0072】
該アンチセンスヌクレオチドの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0073】
[5]HMG1阻害剤のクリーニング方法・スクリーニング用キット
HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性(例:Aβ42凝集促進活性、ミクログリアによるAβ42食作用阻害活性)を阻害する化合物またはその塩は、Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
したがって、HMG1等は、HMG1等の活性(例:Aβ42凝集促進活性、ミクログリアによるAβ42食作用阻害活性)を阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
【0074】
すなわち、本発明は、
(1)HMG1等を用いることを特徴とするHMG1のAβ42凝集促進活性及び/又はミクログリアによるAβ42食作用阻害活性を促進する物質(以下、単に「HMG1阻害剤」と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供し、より具体的には、例えば、
(2a)(i)HMG1等にAβ42を接触させた場合と(ii)HMG1等にAβ42及び被験物質を接触させた場合とにおけるAβ42の凝集を比較することを特徴とする、HMG1阻害剤のスクリーニング方法、及び
(2b)(i)HMG1等及びAβ42をミクログリアに接触させた場合と(ii)HMG1等、Aβ42及び被験物質をミクログリアに接触させた場合とにおけるミクログリアによるAβ42食作用を比較することを特徴とする、HMG1阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
【0075】
本発明のスクリーニング方法(2a)の具体的な説明を以下にする。
HMG1、その部分ペプチドまたはそれらの塩は、上記した通りのものであれば何れのものでもよい。Aβ42は、ヒトまたは他の哺乳動物の脳実質または脳血管壁などから自体公知の方法により単離・精製されたもの、公知のAβ42アミノ酸配列に基づいて化学的に合成されたもの、Aβ42をコードする塩基配列を有するヌクレオチドを用い、組換え細胞もしくは無細胞蛋白質合成系を用いて産生されたもののいずれであってもよい。
被験物質としては、例えば、ペプチド、蛋白質、核酸、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、HMG1等をスクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりHMG1等の標品を調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどの、HMG1等とAβ42との結合及び/又はAβ42の凝集を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
HMG1等のAβ42凝集促進活性は、例えば、HMG1とAβ42(及び被験物質)とを室温〜約40℃で約1〜約48時間インキュベートした後、反応液を抗Aβ抗体によるイムノブロッティングにかけることにより測定することができる。
例えば、上記(ii)の場合において、上記(i)の場合に比べてAβ42凝集促進活性を約20%以上、好ましくは50%以上阻害する被験物質をHMG1等のAβ42凝集促進活性を阻害する物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング用キットは、HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有するものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
〔スクリーニング用試薬〕
▲1▼測定用緩衝液
pH7.0のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
▲2▼タンパク質標品
精製HMG1(例えば、仔ウシ胸腺由来)
▲3▼Aβ42
10μM PBS溶液
▲4▼抗Aβポリクローナル抗体(ウサギ由来)
【0076】
本発明のスクリーニング方法(2b)の具体的な説明を以下にする。
HMG1等、Aβ42及び被験物質については、上記(2a)の方法と同様のものが用いられる。ミクログリアは、例えば、ラット等の哺乳動物から切除した脳半球より調製した混合グリア細胞(アストロサイトとミクログリアの混合物)をFBSを添加したDMEMなどの培地中に懸濁し、培養皿等にプレートして、例えば、5%CO2/95%大気中、約30〜約40℃で培養し、浮遊ミクログリアを混合グリア培養から回収することにより得る。
上記のスクリーニング方法を実施するには、HMG1等をスクリーニングに適したバッファーまたは培地に懸濁することによりHMG1等の標品を調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどが、また培地にはMEM、DMEM等のミクログリアの培養用培地が好ましく用いられる。
HMG1等のミクログリアによるAβ42食作用阻害活性は、例えば、HMG1とAβ42(及び被験物質)とをミクログリアの懸濁培養液に添加し、例えば5%CO2/95%大気中、約30〜約40℃で約1〜約48時間インキュベートした後、ミクログリアを回収して溶解し、該ライセートを抗Aβ抗体によるイムノブロッティングにかけることにより測定することができる。
例えば、上記(ii)の場合において、上記(i)の場合に比べてミクログリアによるAβ42食作用阻害活性を約20%以上、好ましくは50%以上阻害する被験物質をHMG1等のミクログリアによるAβ42食作用阻害活性を阻害する物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング用キットは、HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有するものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
〔スクリーニング用試薬〕
▲1▼測定用緩衝液
pH7.0のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)
▲2▼タンパク質標品
精製HMG1(例えば、仔ウシ胸腺由来)
▲3▼Aβ42
10μM PBS溶液
▲4▼ミクログリア培養用培地
10%FBS添加DMEM
▲5▼抗Aβポリクローナル抗体(ウサギ由来)
【0077】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる物質は、上記した被験物質から選ばれた化合物またはその塩であり、HMG1等のAβ42凝集促進活性及び/又はミクログリアによるAβ42食作用阻害活性を阻害する化合物である。このような化合物の代表例としては、HMG1結合性核酸が挙げられる。HMG1は非ヒストン性の染色体蛋白質であり、そのアミノ酸配列中にDNA結合ドメインを有する。したがって、HMG1と結合し得る塩基配列を有する核酸は、HMG1を捕捉することによりHMG1のAβ42凝集促進活性及び/又はミクログリアによるAβ42食作用阻害活性を阻害する。
HMG1阻害剤である化合物の塩としては、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0078】
[6]HMG1阻害剤の用途
HMG1等のAβ42凝集促進活性及び/又はミクログリアによるAβ42食作用阻害活性を阻害する化合物は、Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
【0079】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるHMG1阻害剤を上記予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
【0080】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0081】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0082】
HMG1阻害剤の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)に対してHMG1阻害剤を一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)に対してHMG1阻害剤を一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0083】
[7]HMG1等の発現抑制剤のスクリーニング方法・スクリーニング用キットさらに、本発明は、HMG1等の発現を抑制してAβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用促進作用を示す物質(以下、「HMG1発現抑制剤」ともいう)のスクリーニング方法及びそのためのキットを提供する。本方法では、上記のHMG1等をコードする塩基配列を含むヌクレオチドをプローブもしくはプライマーとして用いてHMG1等のmRNA量の変化を測定する。好ましくは、さらに上記のHMG1阻害剤のスクリーニング方法について記載した同様の方法により、HMG1等のAβ42凝集促進活性又はミクログリアによるAβ42食作用阻害活性の変化を測定する。
【0084】
HMG1等のmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には、痴呆ラットなど)に対して被験物質を投与し、一定時間経過した後(例えば30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)に脳実質や脳血管などの特定の組織を切除し、該組織中にに含まれるHMG1等のmRNAを、例えば、通常の方法により細胞からmRNAを抽出し、例えば、TaqMan PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、自体公知の手段によりノザンブロットを行うことにより解析することもできる。
(ii)上記の方法に従って作製したHMG1等を発現する形質転換体を被験物質の存在下に培養し、一定時間経過した後(例えば1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは1日後〜3日後)に該形質転換体に含まれるHMG1等のmRNAを同様にして定量、解析することができる。
(iii)上記の方法に従って作製したHMG1等をコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを、被験物質の存在下に自体公知のインビトロ転写系に添加し、一定時間インキュベートした後(例えば30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)に反応液に含まれるHMG1等のmRNAを同様にして定量、解析することができる。
【0085】
HMG1等のAβ42凝集促進活性をさらに測定する場合、被験物質に加えてAβ42を投与(添加)し、細胞抽出液または反応液の一部を抗Aβ抗体によるイムノブロッティングにかければよい。ミクログリアによるAβ42食作用阻害活性をさらに測定する場合、(i)被験物質に加えてAβ42を投与し、一定時間経過した後に脳実質などの組織からミクログリアを分離して溶解し、該ライセートを抗Aβ抗体によるイムノブロッティングにかけるか、あるいは脳薄片を調製して免疫組織化学的染色(例えば、後記実施例参照)によりミクログリア中におけるAβ42の存在を検出する、(ii)(iii)被験物質に加えてAβ42及びミクログリアを添加し、一定時間経過した後にミクログリアを回収して溶解し、該ライセートを抗Aβ抗体によるイムノブロッティングにかければよい。
【0086】
上記スクリーニング方法に使用されるスクリーニング用キットは、HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを含んでなるものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
〔スクリーニング用試薬〕
▲1▼ヌクレオチド標品
単離HMG1 cDNA(例えば、仔ウシ胸腺mRNA由来)
▲2▼Aβ42
10μM PBS溶液
▲3▼ミクログリア培養用培地
10%FBS添加DMEM
▲4▼抗Aβポリクローナル抗体(ウサギ由来)
【0087】
このスクリーニング方法・スクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、HMG1等の発現を抑制してAβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用促進作用を示す化合物である。
HMG1発現抑制剤である化合物の塩としては、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0088】
[8]HMG1発現抑制剤の用途
HMG1等の発現を抑制する化合物は、Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
【0089】
HMG1発現抑制剤を上記予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記したHMG1阻害剤を含有する製剤と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0090】
HMG1発現抑制剤の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に、例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)に対してHMG1発現抑制剤を一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)に対してHMG1発現抑制剤を一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0091】
[9]HMG1プロモーターのプロモーター活性を低下させる化合物のスクリーニング方法
さらに、本発明は、HMG1プロモーターを用いたレポーター遺伝子アッセイ方法において、被験物質を投与した場合と投与しない場合の当該プロモーター活性を測定することを特徴とする当該プロモーター活性を調節する化合物またはその塩のスクリーニング法を提供する。
レポーター遺伝子アッセイは、自体公知の方法、例えば、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.B.C.)、第272巻、22800−22808項、1997年、デベロプメント、第124巻、793−804項、1997年)などに記載の方法を用いることができる。
被験物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、生体由来非ペプチド性化合物(糖質、脂質など)、合成化合物、微生物培養物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
プロモーター活性は、レポーター遺伝子の発現量を調べることによって測定することができる。例えば、ノーザンブロッティングやReverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)やTaqMan polymerase chain reactionなどの方法あるいはそれに準じる方法に従って、レポーター遺伝子の発現量を測定することができる。
この方法において、被験物質を投与しない場合に比べて、被験物質を投与した場合のレポーター遺伝子の発現量が、約20%上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上低下させる化合物を、HMG1プロモーターのプロモーター活性を低下させる化合物として選択することができる。
【0092】
HMG1プロモーターのプロモーター活性を低下させる化合物またはその塩は、Aβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるAβ42食作用を促進する効果を有し、Aβ42をシード(seed)とするAβ沈着による老人斑形成が関与する疾患、具体的には、脳アミロイドーシス(例:アルツハイマー病、ダウン症、アミロイドアンギオパチー等)の予防・治療剤として有用である。
【0093】
HMG1プロモーターのプロモーター活性を低下させる化合物またはその塩を上記予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記したHMG1阻害剤を含有する製剤と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0094】
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に、例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)に対してHMG1プロモーターのプロモーター活性を低下させる化合物を一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、アルツハイマー病患者(60kgとして)に対してHMG1プロモーターのプロモーター活性を低下させる化合物を一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0095】
[10]本発明のDNA導入動物の作製
本発明は、外来性の本発明のDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0096】
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常なHMG1を発現させるDNAを意味し、例えば、正常なHMG1の機能を抑制する蛋白質を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0097】
HMG1の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存蛋白質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎蛋白質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0098】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流に連結することも目的により可能である。
また、翻訳領域の5’上流に分泌シグナルをコードする配列を付加することにより、外来性DNAの翻訳産物を細胞外に分泌させることができる(HMG1をコードするDNAの核移行シグナル部分を除去しておくことが好ましい)。外来性HMG1を細胞外に分泌するトランスジェニック動物は、従来公知のPS1マウスやPS/APPマウスよりもアルツハイマー病における病理学的変化をよく反映したアルツハイマー病モデルとなり得る点で極めて有用であろう。
【0099】
正常なHMG1の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なHMG1の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0100】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的にHMG1の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、HMG1の機能亢進症や、HMG1が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離したHMG1の増加症状を有することから、HMG1に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0101】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的にHMG1の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、HMG1の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、HMG1の機能不活性型不応症における本発明の異常HMG1による正常HMG1の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離したHMG1の増加症状を有することから、HMG1の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたHMG1を分析することによる、HMG1により特異的に発現あるいは活性化する蛋白質とHMG1との関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異HMG1を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、HMG1の機能不活性型不応症などを含む、HMG1に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、HMG1に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどの蛋白質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、HMG1産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、HMG1およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、HMG1の機能不活性型不応症を含む、HMG1に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、HMG1が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0102】
[11]ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしているHMG1の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的にHMG1の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0103】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0104】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおけるHMG1またはHMG1の細胞生物学的検討において有用である。
【0105】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、HMG1のヘテロ発現不全個体であり、HMG1のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からHMG1のホモ発現不全個体を得ることができる。
【0106】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、HMG1により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、HMG1の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0107】
(11a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0108】
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の指標値が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上変化した場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、HMG1の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したHMG1阻害剤を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0109】
(11b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を低下させる化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を低下させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、HMG1をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、HMG1の発現する組織で、HMG1の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にHMG1の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、HMG1欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を低下させる化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0110】
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を低下させる化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現過多が関与する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
【0111】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
【0112】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
* :終止コドンに対応する
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
【0113】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
【0114】
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
配列番号:1
ヒト由来HMG1をコードするcDNAの塩基配列を示す。
配列番号:2
ヒト由来HMG1のアミノ酸配列を示す。
【0115】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。尚、イムノブロットのデンシトメトリー分析に関する結果は平均±標準誤差として示す。差の統計学的有意性は分散分析(ANOVA)により決定した。事後比較のためのさらなる統計学的分析はBonferroni/Dunnテスト(StatView, Abacus Concepts, Berkley, CA)を用いて行なった。また、共焦点顕微鏡観察は以下のように行った。AD脳切片は、HMG1及びHLA−DRに対する抗体と室温で一晩インキュベートし、Aβ42を注射したラット由来の海馬切片はAβ及びCD11bに対する抗体とインキュベートした。一次抗体はローダミンもしくはFITC標識した抗ウサギIgG抗体及び抗マウスIgG抗体で検出し、蛍光をレーザー走査共焦点顕微鏡LSM410(Carl Zeiss, Germany)を用いて観察した。
【0116】
実施例1 アルツハイマー病(AD)脳におけるHMG1のアップレギュレーション
臨床的且つ組織病理学的にADと診断された6人の患者(年齢81.2±3.5歳;検死の遅れ3.8±0.7時間)及び脳病変の臨床的且つ形態学的証拠のない6人のコントロール(年齢71.0±4.2歳;検死の遅れ8.0±2.9時間)から検死により脳組織を得た。年齢及び検死の遅れはAD及びコントロール群間で有意に相違していなかった。実験には側頭皮質を用いた。ADの神経病理学的評価は、Consortium to Establish a Registry for Alzheimer’s Disease (CERAD) の判断基準に従って行なった。細胞質画分(細胞質ゾル及び細胞外可溶性蛋白質を含む)及び粒子画分(核、膜及び不溶性蛋白質を含む)は、Brain Res. 780: 260−269 (1998)に記載した方法に準じて調製した。両画分(10μg蛋白質)をSDS−PAGEにかけた。HMG1又はHMG2に対する抗体(BD Pharmingan, San Diego, CA)でイムノブロットした後、ケミルミネッセンスアッセイ(ECL kit, Amersham Pharmacia Biotech, Buckinghamshire, U.K.)を用いて蛋白質のバンドを検出した。蛋白質バンドの半定量的分析のため、X線フィルムをCCDカラースキャナー(DuoScan, AGFA)でスキャンし、濃さを測定した。
免疫組織化学的分析も、本質的にはBrain Res. 780: 260−269 (1998)に記載した方法に準じて行なった。即ち、脳薄片を0.3%過酸化水素含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で30分間インキュベートし、0.3%トライトンX−100含有PBS(PBS−T)で洗浄後、HMG1に対する抗体、Aβ(Chemicon, Temecula, CA)及びHLA−DR(Dako, Glostrup, Denmark)を含有するPBS−Tとともに室温で一晩インキュベートした。PBS−Tで洗浄し、Vectastatin ABC elite kit(Vector Laboratories, Burlingame, CA)とインキュベートした後、ニッケル増強及び過酸化水素とともに3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を用いて該脳薄片を可視化した。
その結果、29kDaのHMG1はコントロール及びAD脳の側頭皮質の細胞質画分と粒子画分の両方で検出された(図1)。粒子画分よりも細胞質画分に多く存在した。AD脳においては、細胞質画分及び粒子画分ともHMG1の発現レベルは、コントロール脳よりも有意に高く(図1a及びb,それぞれP<0.05及びP<0.01)、AD脳ではHMG1発現がアップレギュレートされていることを示している。28kDaのHMG2もまた細胞質画分と粒子画分の両方で検出されるが、その発現(HMG1よりも低い)は、AD脳において顕著な相違はなかった(データは示さず)。
コントロール脳において、HMG1免疫反応性はニューロンとグリア細胞の細胞質及び核でかすかに検出可能であった(図1c)。AD脳では、HMG1免疫反応性はこれらの位置で増大していた(図1d)。さらに、HMG1免疫反応性はプラーク様に拡散して観察されAβ免疫反応性の領域で強く検出された(図1eを図1gと比較のこと)。活性化されたミクログリアのマーカーであるヒト白血球抗原(HLA)−DRもまた同様に観察された(図1f)。二重免疫染色により、HMG1は、HLA−DRを発現するミクログリア細胞内とその周辺の細胞外の両方に位置することが分かった(図1h)。これらの免疫細胞化学的結果は、細胞外HMG1が、老人斑においてミクログリアが蓄積する領域の周辺に蓄積することを示している。
【0117】
参考例1 トランスジェニックマウスにおけるHMG1の分布
最近、Aβペプチドを過剰生産するいくつかのトランスジェニックマウスが作出された。Tg2576マウス及び変異プレセニリン−1(PS1)マウスは、それぞれK670N/M671L(スウェーデン型)変異ヒトアミロイド前駆蛋白質(APP)及びM146L変異ヒトPS1を発現する。さらにTg2576マウスとPS1マウスを交配してダブルトランスジェニックPS/APP系が作出されている。PS1マウスでは、マウスAβ42の産生は増加するが、Aβ沈着は形成されないのに対し、PS/APPマウスではヒト及びマウスのAβ40及びAβ42の著しい産生とAβ沈着形成の加速が起こる。しかしながら、広範なニューロンの脱落はPS1マウス及びPS/APPマウスのいずれでも検出されない。そこで、ニューロンの脱落なしにAβ42の甚大な産生を示すモデルとしてのトランスジェニックマウスにおけるHMG1及びAβの免疫反応性を調べた。
実験には12月齢のPS1及びPS/APPマウスを用いた。これらのマウス由来の前頭脳切片を Am.J.Pathol.,158:1345−1354(2001)に記載したようにして調製した後、HMG1、Aβ及びCD11bに対する抗体(MAC1, Caltag Laboratories, San Francisco, CA)で免疫染色した。二重標識した免疫組織化学的染色には、脳切片を、PBS−T中で、マウスモノクローナルAβ抗体とともにウサギ抗HMG1抗体と4℃、4日間インキュベートした。洗浄後、切片を抗ウサギIgG抗体とインキュベートし、DAB及びニッケルアンモニウムを用いてHMG1免疫反応性を検出した。HMG1免疫染色完了後、切片を0.5%過酸化水素含有PBS−Tで30分間処理して第1のサイクルからの残余のペルオキシダーゼを破壊した。その後、切片と抗マウスIgG抗体との第2の免疫組織化学サイクルを実施した。DAB反応はニッケル増強なしで行なった。
その結果、PS1マウスにおいては、ラット抗CD11b抗体(MAC1)によって免疫染色される分枝型ミクログリアは観察されたが、Aβ沈着及び反応性ミクログリアは12月齢でさえ検出されなかった(図2a,c及びe)。12月齢のPS/APPマウスでは、ブッシュ及びアメーバ型ミクログリアに付随した過大なAβ沈着が、AD脳におけるAβ及びHLA−DRの免疫反応性と類似したパターンで検出された(図2b,d及びfを図1f及びgと比較のこと)。しかしながら、これらのトランスジェニックマウスにおけるHMG1免疫反応性は、AD脳におけるそれとはわずかに異なっていた。即ち、PS1及びPS/APPマウスの両方で、HMG1免疫反応性はニューロン及びグリアの核で顕著に検出された(図2g及びh)。PS/APPマウスではAβ沈着の周辺でも観察されたが、この免疫反応性は、おそらく細胞外ではなくグリア小核に見出されたものであろう(図2h)。即ち、PS/APPマウスはAβ沈着を示すが、瀰漫性のHMG1免疫反応性は検出されなかった。これらの結果は、PS/APPマウスにおけるAβ沈着の形成は、主として細胞外HMG1の関与しないAβペプチドの過剰産生によって引き起こされ得ることを示唆している。
【0118】
参考例2 ラットモデルにおけるHMG1の分布
脳内の細胞外HMG1とAβとの関連を明らかにするために、我々は、さらに2つのラットモデル:1)カイニン酸(KA)の脳室内(i.c.v.)注射の結果、Aβ沈着なしに海馬CA3に甚大なニューロン脱落を生ずるラット及び2)Aβ42の海馬内注射の結果、中程度のニューロン脱落とともに大きなAβ沈着を生ずるラットにおけるHMG1免疫反応性を調べた。ニューロン生存の指標として微小管関連蛋白質−2(MAP2)を用いた。
体重約280gの雄性Wistarラットを自由給水で一晩絶食させた。定位脳固定の顕微注入のためにラットを麻酔し(ペントバルビタールナトリウム50mg/kgを腹腔内注射)、Kopf定位脳固定フレームに固定した。その後、1μg/2μl KAを右側脳室(即ち、ブレグマから3.8mm尾側、1.2mm右側、3.8mm下面)に注射した。あるいは、ラットの右海馬(即ち、ブレグマから0.2mm尾側、2.0mm右側、4.0mm下面)にモーター駆動の10μlハミルトンシリンジを介してAβ42(AnaSpec, San Jose, CA)4.5μg/2μlを注射した。3日後、処理したラットに動脈を通じて10mM リン酸緩衝生理食塩水(PBS)150mlを、続いて4% パラホルムアルデヒド、0.35% グルタルアルデヒド及び0.2% ピクリン酸(100mM リン酸緩衝液中)からなる冷固定液300mlを、ペントバルビタール(100mg/kg腹腔内)による深麻酔下に灌流した。灌流後、速やかに脳を除去し、100mM PB中のパラホルムアルデヒドで2日間後固定した後、4℃で、15%シュークロース溶液(0.1% アジ化ナトリウム含有100mM PB中)に移した。脳片をクリオスタット中で20μmの切片に切り、PBS−T中で集めた。その後、海馬切片を、MAP2、HMG1、Aβ、CD11b(OX42、Harlan Sera−Lab, Loughbrough, U.K.)及びGFAP(Chemicon International, Temecula, CA)に対する抗体で免疫染色した。
その結果、KAのi.c.v.注射は3日後に同側の海馬CA3におけるニューロン脱落を引き起こしたが(図3b)、対側では引き起こさなかった(図3a)。Aβ沈着は観察されなかったが(図3f及びh)、活性化されたミクログリア及びアストロサイト(それらは、それぞれCD11b(OX42)に対する抗体及びグリア線維酸性蛋白質(GFAP)に対する抗体により免疫染色される)はCA3に蓄積していた(図3i−l)。HMG1免疫反応性はニューロン及びグリアの核で顕著に検出された(図3e,g及びi−l)。HMG1免疫反応性はまた、神経変性CA3のグリア突起でも検出されたが(図3g,k及びl)、瀰漫性の染色は検出されなかった。
Aβ42を海馬に顕微注入されたラットでは、マウス抗CD11b抗体により免疫染色されるアメーバ状ミクログリア(図4d,f及びg)が海馬内の大きなAβ沈着(図4a,e及びg)の周辺に観察された。さらに、MAP2免疫反応性の中程度の喪失がAβ沈着周辺の海馬歯状回(DG)で検出された(図4b)。HMG1免疫反応性はニューロン及びグリアの核、並びにグリア突起で観察された(図4c,e及びf)。さらに、HMG1免疫反応性はAβ沈着周辺の細胞外瀰漫性染色として検出された(図4c,e及びf)。これらの観察から、細胞外HMG1は死滅したニューロンから主に漏出し、瀰漫性のHMG1沈着は甚大なニューロンの死滅とAβ蓄積の両方によって引き起こされるのであろう。
【0119】
実施例2 HMG1により誘導されるミクログリアによるAβ42食作用の阻害
HMG1が存在することのメカニズム的意義を検討するため、ラットミクログリアの純粋培養を用いてミクログリアの機能に及ぼすHMG1の効果を調べた。実験では、Aβ40やAβ42は、トリフルオロ酢酸(TFA)塩ではなく、容易に凝集する塩酸塩を用いた。本発明者らは、最近、Aβ40が10μMで腫瘍壊死因子α(TNF−α)及びインターロイキン−6(IL−6)の産生を誘導することを見出した(FASEB J. 16:601−603 (2002))。対照的に、細胞外Aβ42は、Aβ42曝露から6−24時間後に、より低濃度(0.03−0.3μM)でミクログリアによる貪食を顕著に引き起こした。インスリン又はペプスタチンAは3日後のミクログリアにおけるAβ42レベルの減少を抑制したが、ホスホラミドン(ネプリライシンインヒビター)は抑制せず、貪食されたAβ42はミクログリア内でIDE様ペプチダーゼ及び/又はカテプシンD様アスパラギン酸プロテイナーゼにより分解されるであろうことを示唆している。比較的低濃度(1μM未満)のAβ40曝露はミクログリアによる取込みを引き起こさなかったが、より高濃度(3−10μM)では、ミクログリアはAβ40を貪食するようになった。このように、ラットミクログリアはAβ40とAβ42に異なる応答を示す。
混合グリア細胞(アストロサイトとミクログリアの混合物)を、新生Wistarラット(SLC Inc., Shizuoka, Japan)の髄膜から注意深く除去した脳半球から調製した。該組織懸濁液を50μm径のナイロンメッシュ(cell strainers、 Falcon)を通して、50mlチューブ中に濾過し、200×gで10分間遠心して細胞を集めた。細胞を10%ウシ胎仔血清添加ダルベッコ改変イーグル培地中に再懸濁し、100mm径のディッシュにプレートして5% CO2/95%大気中、37℃でインキュベートした。エンドトキシンによるコンタミネーションを避けるため十分注意を払いながら、浮遊ミクログリアを混合グリア培養から回収して新しい培養皿にプレートした。
得られたラットミクログリア(純度97%超)を、0.015−1.5μM精製仔ウシHMG1及び/又は0.4nM組換えヒトTGF−β1(Gibco BRL, Life Technologies, Tokyo, Japan)の存在下又は非存在下に、0.3μM Aβ42又は3μM Aβ40とインキュベートした。24時間後、ミクログリアを集めて溶解した後、サンプルを抗Aβ抗体(Chemicon, Temecula, CA)によるイムロブロットにかけた。モノマー及び凝集Aβをケミルミネッセンスアッセイを用いて検出した後、Aβの総量をデンシトメーターで測定した。
仔ウシ胸腺から精製したHMG1を低濃度(0.3μM)のAβ42を含むラットミクログリア培養に添加すると、HMG1は60%を超えるまで濃度依存的にAβ42の貪食を阻害した(図5a及びb)。アストロサイト由来TGF−β1がAβクリアランスに重要であることが報告されているので、さらにTGF−β1により誘導されるAβクリアランスに及ぼすHMG1の影響を調べた。0.4nMの組換えヒトTGF−β1はAβ42の貪食を有意に増大させたが、HMG1は、TGF−β1非存在下でのHMG1処理により生ずるレベルまで、TGF−β1により誘導されるAβ貪食を顕著に阻害した(図5c及びd)。対照的に、Aβ40の貪食は、高濃度(3μM)で、TGF−β1及びHMG1によっては変化しなかった(図6a及びb)。これらの結果は、もし老人斑に細胞外HMG1が蓄積すれば、TGF−β1のようなミクログリア賦活剤によるAβ42クリアランスは阻害されるが、Aβ40のクリアランスは阻害されないであろうことを示唆している。
【0120】
参考例3 Aβ40により誘導されるミクログリア活性化に及ぼすHMG1の影響
仔ウシ胸腺から精製した1.5μM HMG1(和光純薬)存在下又は非存在下に、ミクログリアを10μM Aβ40(AnaSpec)で処理した。処理から24時間後に各ウェルから培地を除去した。NO2 −量は、Griess試薬を用いて分光光学的に(DU−640分光光度計、Beckman)測定した。細胞から放出されたTNF−α及びIL−6の量は、ラットTNF−α及びIL−6用のELISAキット(BioSource, Camarillo, CA)を製造業者の指示に従って用いて測定した。
その結果、10μMのAβ40は、亜硝酸塩(NO2 −)の蓄積とともに誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の発現を誘導し、また、TNF−α及びIL−6の産生を誘導した(図6c,d及びe)。しかしながら、HMG1は、Aβ40の存在下及び非存在下でこれらの化合物の産生に影響を与えなかった(図6c,d及びe)。したがって、HMG1は、Aβ40の存在下及び非存在下でミクログリアによるNO、TNF−α及びIL−6の産生に影響しない。
【0121】
実施例3 HMG1のインビトロでのAβペプチドとの結合及びそれらの凝集
精製仔ウシHMG1(1.5μg)を、3μgのAβ40又はAβ42(PBS(最終容量20μl)中)と37℃でインキュベートした。0、6及び24時間後に、サンプルをHMG1又はAβに対する抗体によるイムノブロットにかけた。また、1.5μgのHMG1を3μgのAβ40又はAβ42と37℃で24時間インキュベート後、HMG1又はAβに対する抗体(10μg)を混合物に添加して、さらに2時間、4℃でインキュベートした。次いで、プロテインA−セファロース(50%スラリー50μl)を加えて、4℃で一晩インキュベートした。遠心後、免疫沈降物を冷緩衝液1ml中で3回洗浄し、Laemmliのサンプル緩衝液に再懸濁して、SDS−PAGE及びHMG1又はAβに対する抗体によるイムノブロットにかけた。
HMG1をAβ42とインキュベートすると、これらの蛋白質の複合体(およそ33kDa)が6時間後に検出された(図7a及びb)。Aβ42をHMG1とインキュベートすると、24時間後、そのオリゴマーの形成は変化せず、より高分子の凝集体の形成が顕著に増加した(図7b)。対照的に、Aβ42単独でインキュベートすると、6時間後にそのオリゴマーのレベルは減少し、凝集体は増加した。反対に、24時間後、Aβ40のオリゴマー及び凝集体は検出されなかったが、HMG1とAβ40の複合体は検出された(図7a及びb)。
HMG1をAβ40又はAβ42と24時間インビトロでインキュベートした後、混合物をHMG1に対する抗体又はAβに対する抗体で免疫沈降させた。これらの抗体はHMG1とAβペプチドの両方を沈降させた(図7c)。さらに、HMG1とAβ40又はAβ42のいずれかとの複合体もまた免疫沈降した。したがって、HMG1はAβペプチドと結合してAβ42の凝集体の形成を促進したが、Aβ40の凝集体形成は促進しなかった。
【0122】
結論として、HMG1蛋白質のレベルはAD脳の細胞質画分と粒子画分の両方でアップレギュレートされ、HMG1は老人斑と共存する。瀰漫性のHMG1免疫反応性はAβ42を注射したラットの海馬で観察されたが、KAを注射したラットの海馬及びPS/APPマウスでは観察されず、細胞外HMG1とAβ42が相乗的に相互作用して老人斑を形成することを示唆している。細胞外HMG1は、TGF−β1の存在下及び非存在下にミクログリアによるAβ42の貪食を阻害した。さらに、HMG1はAβペプチドと結合してAβ42凝集体の形成を促進した(図8)。これらの結果は、HMG1のアップレギュレーションがミクログリアによるAβ42クリアランスを阻害し、その結果Aβ沈着が維持されることを示唆している。このように、細胞外HMG1は、ミクログリアによるAβクリアランスの阻害とAβ凝集の促進を通じてADにおける病原的役割を果たしているであろうことが示された。
【0123】
【発明の効果】
HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、アルツハイマー病等の脳アミロイドーシスの予防・治療用のワクチンとして、また、HMG1等をコードするヌクレオチドに相補的なヌクレオチド及びHMG1等に対する抗体は脳アミロイドーシスの予防・治療剤として有用である。
HMG1等をコードするヌクレオチド及びHMG1等に対する抗体は脳アミロイドーシスの診断薬として有用である。
HMG1等を用いるHMG1阻害剤のスクリーニング法及びHMG1等をコードするヌクレオチドを用いるHMG1発現抑制剤のスクリーニング法は、脳アミロイドーシスの予防・治療活性を有する化合物の探索ツールとして有用である。
【0124】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】コントロール及びAD脳におけるHMG1の発現レベル及び分布を示す図及び写真である。a及びb:側頭皮質の細胞質(a)及び粒子(b)画分のイムノブロット写真(上図)及び29kDaのバンド濃度を示すグラフ(下図;縦軸はコントロールに対する%割合;各数値は6検体の平均±標準誤差;個々の数値は丸印で示す)。c−h:コントロール及びAD脳切片のHMG1(c−e,h)、HLA−DR(f,h)又はAβ(g)に対する抗体を用いた免疫染色写真。切片(e−h)は同一個体由来の一連のものであり、*(e−g)は同一の脈管を示す。矢印はインセットに高倍率で示されたと同じ老人斑を示す。hはHMG1及びHLA−DRに対する抗体を用いた老人斑の二重染色。スケールバー:250μm(e−g)及び50μm(h及びe−gのインセット)。
【図2】トランスジェニックマウス脳におけるHMG1の局在性を示す写真である。12月齢のPS1(a,c,e,g)及びPS/APPマウス(b,d,f,h)の前頭脳切片のCD11b(MAC1,a−d)、Aβ(e−h)又はHMG1(g,h)に対する抗体を用いた免疫染色。ボックスの高倍率像をインセットで示す(c−h)。スケールバー:1mm(a,b)、200μm(c−h)及び50μm(c−h中のインセット)。
【図3】KAを注射したラット脳におけるHMG1の局在性を示す写真である。海馬切片のMAP2(a,b)、HMG1(c−e,g,i−l)、Aβ(f,h)、CD11b(OX42,j,l)又はGFAP(i,k)に対する抗体を用いた免疫染色。脳室内KA注射と対側(a,c,e,f,i,j)及び同側(b,d,g,h,k,l)。海馬CA3中のボックスの高倍率像(e−l)。i−l:HMG1及びCD11b(j,l)又はGFAP(i,k)に対する抗体を用いた二重染色。スケールバー:500μm(a−d)及び50μm(e−l)。
【図4】Aβ42を注射したラット海馬におけるHMG1の局在性を示す写真である。海馬切片のAβ(a,e,g)HMG1(c,e,f)、MAP2(b)又はCD11b(OX42,d,f,g)に対する抗体を用いた免疫染色。e,f:HMG1及びAβ(e)又はCD11b(f)に対する抗体を用いた二重染色。免疫染色された各切片(a−f)中のボックスの高倍率像をインセットで示す。矢印は抗HMG1抗体による瀰漫性染色を示す。g:Aβ及びCD11bに対する抗体を用いた海馬中のAβ沈着周辺の二重染色の共焦点顕微鏡像。スケールバー:500μm(a−f)及び50μm(a−f中のインセット,g)。
【図5】ミクログリアによるAβ42食作用に対するHMG1の阻害作用を示す写真及び図である。a及びb:ビヒクル(a中のレーンC及びb中のControl)又は種々の濃度のHMG1の存在下でAβ42とインキュベートしたラットミクログリアライセートのイムノブロット写真(a)及び総Aβ42量を示すグラフ(縦軸はコントロールに対する%割合;各数値は3つの実験の平均±標準誤差;**、***はコントロールの数値に対してそれぞれp<0.01及びp<0.001を示す)。c及びd:ビヒクル(c中のレーンTGF−β1(−)及びd中のVehicle)又はTGF−β1(c中のレーンTGF−β1(+)及びd中のTGF−β1)の存在下で、Aβ42(c中のHMG1(−)及びd中のControl)又はAβ42及びHMG1(c中のHMG1(+)及びd中のHMG1)とインキュベートしたラットミクログリアライセートのイムノブロット写真(a)及び総Aβ42量を示すグラフ(縦軸はコントロールに対する%割合;各数値は3つの実験の平均±標準誤差;***、†††はそれぞれビヒクル及びTGF−β1単独の数値に対してp<0.001を示す)。
【図6】ミクログリアにおけるAβ40の取込み及びAβ40による活性化に及ぼすHMG1の影響を示す写真及び図である。a及びb:ビヒクル、TGF−β1又はHMG1存在下でAβ40とインキュベートしたラットミクログリアのライセートのイムノブロット写真(a)及び総Aβ40量を示すグラフ(縦軸はビヒクルに対する%割合;各数値は3つの実験の平均±標準誤差を示す)。c−e:Aβ40存在下又は非存在下で、ビヒクル(HMG1(−))又はHMG1(HMG1(+))とインキュベートしたラットミクログリアのライセートの抗iNOS抗体に対するイムノブロット写真(c上図)、並びに培養上清中のNO2 −量(c下図)TNF−α量(d)及びIL−6量(e)を示すグラフ(各数値は3つの実験の平均±標準誤差;***、†††は、それぞれビヒクル及びAβ40処理の数値に対してp<0.001であることを示す)。
【図7】インビトロでのHMG1とAβペプチドとの結合及びAβペプチドの凝集を示す写真である。a及びb:Aβ40又はAβ42の存在下又は非存在下でHMG1をインキュベートしたサンプルについてのHMG1(a)又はAβに対する抗体を用いたイムノブロット(矢印はHMG1とAβ40又はAβ42との複合体を示す)。c:Aβ40又はAβ42とHMG1とをインキュベートした後、反応液のHMG1(上図)又はAβ(下図)に対する抗体によって免疫沈降させ、HMG1又はAβに対する抗体を用いてイムノブロットしたもの。
【図8】老人斑形成過程における細胞外HMG1の関与を示す模式図である。
Claims (26)
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、アミロイドβ42凝集抑制作用及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用を促進するためのワクチン。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを含有してなる、アミロイドβ42凝集及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用異常の診断薬。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、アミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進剤。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、アミロイドβ42凝集及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用異常の診断薬。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含有するヌクレオチドを含有してなる、アミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進剤。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩にアミロイドβ42および被験物質を接触させ、アミロイドβ42の凝集を検定することを特徴とする、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制作用を示す物質のスクリーニング方法。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩にアミロイドβ42を接触させた場合におけるアミロイドβ42の凝集との比較を行なうことを特徴とする、請求項7記載の方法。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩、アミロイドβ42および被験物質をミクログリアに接触させ、ミクログリアによるアミロイドβ42食作用を検定することを特徴とする、HMG1を阻害してミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩およびアミロイドβ42をミクログリアに接触させた場合におけるミクログリアによるアミロイドβ42食作用との比較を行なうことを特徴とする、請求項9記載の方法。
- HMG1もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含んでなる、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング用キット。
- さらにアミロイドβ42を含む請求項11記載のキット。
- 請求項6記載の方法または請求項11記載のキットを用いて得られる、HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質。
- HMG1を阻害してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質。
- 請求項13または14記載の物質を含有してなる医薬。
- アルツハイマー病、ダウン症またはアミロイドアンギオパチーの予防・治療剤である請求項15記載の医薬。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを用いることを特徴とする、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドからHMG1またはその部分ペプチドを生成し得る系に被験物質を添加し、HMG1またはその部分ペプチドの発現を検定することを特徴とする、請求項17記載の方法。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドからHMG1またはその部分ペプチドを生成し得る系に被験物質およびアミロイドβ42を添加し、HMG1またはその部分ペプチドの発現およびアミロイドβ42の凝集を検定することを特徴とする、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制用を示す物質のスクリーニング方法。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドからHMG1またはその部分ペプチドを生成し得る系に被験物質、アミロイドβ42およびミクログリアを添加し、HMG1またはその部分ペプチドの発現およびミクログリアによるアミロイドβ42食作用を検定することを特徴とする、HMG1の発現を抑制してミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング方法。
- HMG1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するヌクレオチドを含んでなる、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質のスクリーニング用キット。
- さらにアミロイドβ42を含む請求項21記載のキット。
- 請求項17記載の方法または請求項21記載のキットを用いて得られる、HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質。
- HMG1の発現を抑制してアミロイドβ42凝集抑制及び/又はミクログリアによるアミロイドβ42食作用促進作用を示す物質。
- 請求項23または24記載の物質を含有してなる医薬。
- アルツハイマー病、ダウン症またはアミロイドアンギオパチーの予防・治療剤である請求項25記載の医薬。
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