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JP2004100047A - ポリエステル熱圧着不織布の製造法 - Google Patents

ポリエステル熱圧着不織布の製造法 Download PDF

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JP2004100047A
JP2004100047A JP2002259032A JP2002259032A JP2004100047A JP 2004100047 A JP2004100047 A JP 2004100047A JP 2002259032 A JP2002259032 A JP 2002259032A JP 2002259032 A JP2002259032 A JP 2002259032A JP 2004100047 A JP2004100047 A JP 2004100047A
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polyester
nonwoven fabric
thermocompression
melting point
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JP2002259032A
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Teruhisa Miki
三木 輝久
Takanori Shinoki
篠木 孝典
Yoshihiro Takatsu
高津 良博
Katsuhiko Kurose
黒瀬 勝彦
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Miki Tokushu Paper Manufacturing Co Ltd
Original Assignee
Miki Tokushu Paper Manufacturing Co Ltd
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    • D21PAPER-MAKING; PRODUCTION OF CELLULOSE
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    • D21H13/00Pulp or paper, comprising synthetic cellulose or non-cellulose fibres or web-forming material
    • D21H13/10Organic non-cellulose fibres
    • D21H13/20Organic non-cellulose fibres from macromolecular compounds obtained otherwise than by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds
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Abstract

【課題】引張強力及び寸法安定性に優れ、プリント基板基材用や水フィルター支持体として好適な流体透過性を有する熱圧着不織布を提供する。
【解決手段】延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを加熱金属ロールと硬さがタイプAデュロメータ硬さ40〜90のゴム系弾性ロールとの間でのカレンダー加工により熱圧着して得られるフィルム化領域をまったく含まず、通気度が20〜80cc/cm/secの範囲にあるポリエステル熱圧着不織布及びその製造法。特に、熱圧着をポリエステルバインダー繊維(B)の融点以下で且つガラス転移点以上の温度で行う上記熱圧着不織布の製造法。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル熱圧着不織布に関する。特に、プリント配線基板基材分野または水フイルター支持体分野に有用なポリエステル熱圧着不織布に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来プリント配線基板基材としてガラス繊維布帛が多用されていたが、ガラス繊維は誘電率が高く且つ重いという欠点があった。近年、液晶アラミド繊維を不織布に用いることも検討されているが、アラミド繊維は吸湿性が高くその上誘電率も高いため優れた電気絶縁/通信性能の要求されるプリント配線基板基材としては満足のいくものでなかった。
【0003】
このような欠点を有するガラス繊維布帛や液晶アラミド繊維不織布に代わるものとして、特開昭62−36892号公報(特許文献1)には、低誘電率、低比重、低吸湿性の溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維から形成された基布材をプリント配線基板基材として用いることが提案されている。しかし、溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維からなる織布は、電気特性を向上するために厚さを薄くする必要があるが、そうすると腰がなくなり、工程通過性不良による生産性低下が避けられなかった。また織物の経緯糸の交点が膨れるため、得られたプリント配線基板基材の表面均一性に劣る欠点があった。
【0004】
また、国際公開第96/15306号パンフレット(特許文献2)、特開2000−303380号公報(特許文献3)、特開2001−192955号公報(特許文献4)には、スパンレース法(水流交絡法)により得られる不織布をプリント配線基板基材とすることも提案されている。しかしスパンレースによる主として繊維の絡みだけで保持される構造は、不織布の機械的性質、特に寸法安定性に劣り、その上薄物になるに従い厚さ斑等の弊害が大きくなる欠点があった。
【0005】
特開平8−170295号公報(特許文献5)には、プリント配線基板基材の不織布を構成する主体繊維として熱処理した溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維を用い、バインダー繊維として未熱処理の同上繊維を用いた系を湿式ウエブにした後、熱カレンダー処理して接着する方法も提案されている。この提案によると不織布に強度、寸法安定性、表面均一性等を付与するため熱カレンダー処理することが必須条件であるが、かかる処理を行うと不織布表面が熱融着のためフイルム化して、プリント基板としての機械的特性の付与や積層板とするための接着層として必要な次工程での樹脂含浸性が損なわれる。
特開平10−325065号公報(特許文献6)には、溶融液晶性ポリエステル繊維からなる不織布を150〜300℃、特に200〜250℃で熱処理することが記載されている。
【0006】
不織布等を基材とするプリント配線基板基材は、最終製品にいたるまでに、一般に次のような工程にかけられる:
1)主として不織布等を基材とするプリント配線基板基材に熱硬化性樹脂および/または熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)を含浸または付着してプリプレグを製造する。
2)プリプレグを単層または複数枚積層してプリント配線基板とする。
3)プリント配線基板に金属層を積層してプリント配線板とする。
4)配線板表面に実装した電子部品固定のため、一般的には220〜260℃くらいではんだ付け処理が行われる。
このような製造工程においては、本来多孔質である不織布が熱圧着によって部分的にでもフィルム化しているとその部分では樹脂含浸が不均一となり、内部に樹脂が含浸していない空隙部分が閉じ込められる結果となる。不織布基材中にこのような閉じ込められた空隙部分が存在すると吸湿時に電気絶縁性が不安定になるばかりでなく、プリント配線板製造工程において、上述したハンダ付け工程での熱により空隙部が膨張して製品破壊にいたる危険性がある。
【0007】
その対応策として、特開平11−255908号公報(特許文献7)では、形成したフイルム上に限定された特定範囲の開孔面積を有する小孔を穿け、樹脂含浸性を向上させようという試みが提案されている。しかし特定面積を持つ有孔フイルムの作成は言うに及ばず面積を確認する方法が極めて煩雑で工業的利用が困難である。なお、この明細書には肝心の有孔フイルムを作成するための熱処理条件(加熱時間)の記述が欠けており技術的詳細が明白でない。
【0008】
また、海水の淡水化、排水処理、半導体洗浄用の超純水等の製造にはいずれも半透膜及びそれの支持体が使用されている。その支持体として主にポリ(エチレンテレフタレート)繊維からなるポリ(アルキレンアリレート)繊維の不織布が提案されている(例えば、特許文献8〜13参照)。これら支持体不織布に強度、寸法安定性を付与するために主体繊維/バインダー繊維混合ウエブが熱カレンダーで圧着されている。しかし近年半透膜フィルターの濾過生産性を向上させるため徐々に高圧濾過の方向に進んできている。その際 高圧濾過の終了あるいは途中で運転を停止すると、瞬間的に逆方向の圧力(いわゆる「リフラックス」)が働き半透膜と支持体との接着力が弱いと膜剥離を引き起こし、フィルターを破損する危険がある。その防止のため支持体不織布に半透膜樹脂を受止める細孔が無数且つ均一に分布していることが要求される。それにも拘わらず、従来の熱カレンダー加工では一部バインダー繊維溶融によるフイルム化が避けられず、均一多数の細孔の形成は困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開昭62−36892号公報
【特許文献2】
国際公開第96/15306号パンフレット
【特許文献3】
特開2000−303380号公報
【特許文献4】
特開2001−192955号公報
【特許文献5】
特開平8−170295号公報
【特許文献6】
特開平10−325065号公報([0031])
【特許文献7】
特開平11−255908号公報
【特許文献8】
特公平4−21526号公報
【特許文献9】
特公平5−35009号公報
【特許文献10】
特許第3153487号公報
【特許文献11】
特開平8−25539号公報
【特許文献12】
特開平11−347383号公報
【特許文献13】
特開2002−095937号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
プリント配線基板基材や水フィルター支持体には、寸法安定性や引張強度が必要である。不織布は本来多孔質であるため、各種樹脂を任意に含浸できる特徴がある。とりわけ、用途に応じて耐熱性、形態安定性、電気絶縁性、難燃性、撥水性等を自由に付加できる特徴がある。そのため上記のような基材や支持体として有用な素材ではあるが、通常の不織布では寸法安定性や引張強度の要件を満たすことができない。このような性能が要求される分野では、熱溶融繊維等のバインダー性能を有する材料を含有する不織布を混合し、不織布を作製した後、熱カレンダー加工によって繊維同士を接着して、寸法安定性や引張強度を付与している。しかし、このような熱カレンダー加工を加えると、どうしてもバインダー成分が溶融して、全面または少なくとも一部がフィルム化することが避けられず、含浸樹脂の均一な浸透が妨げられ、プリント配線基板中に気泡が残留したり、フィルター支持体の場合は半透膜を形成する含浸樹脂と支持体不織布間のアンカー効果不足による接着力低下が避けられなかった。
本発明は、上記のような問題を解決し、プリント配線基板基材用や水フィルター支持体として好適な引張強力および寸法安定性に優れた熱圧着不織布およびその製造法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを熱圧着してなる熱圧着不織布であって、フィルム化領域をまったく含まず、幅方向等間隔で測定した5測定点での通気度がいずれも20〜80cc/cm/secの範囲にあることを特徴とするポリエステル熱圧着不織布に関する。
特に、本発明は、ポリエステル主体繊維(A)が融点290℃以上の溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維、ポリエステルバインダー繊維(B)が融点290℃未満の溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維である上記のポリエステル熱圧着不織布に関する。
特に、また、本発明は、ポリエステル主体繊維(A)がポリ(アルキレン アリレート)繊維、ポリエステルバインダー繊維(B)がポリ(アルキレン アリレート)繊維の未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリ(アルキレン アリレート)繊維である上記のポリエステル熱圧着不織布に関する。
【0012】
加えて、本発明は、延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを加熱金属ロールと硬さがタイプAデュロメータ硬さ40〜90のゴム系弾性ロールとの間でカレンダー加工して熱圧着することを特徴とする上記いずれかに記載のポリエステル熱圧着不織布の製造法に関する。
特に、本発明は、熱圧着をポリエステルバインダー繊維(B)の融点以下で且つガラス転移点以上の温度で行う上記のポリエステル熱圧着不織布の製造法に関する。
また、本発明は、上記のポリエステル熱圧着不織布を複数枚積層してなるプリント配線基板に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明でいう熱圧着不織布とは、通常の乾式製造法、湿式製造法、等で製造された不織布ウエブを熱カレンダーにかけたり、熱プレスで圧着することにより不織布を構成する繊維を少なくとも部分的に溶融して繊維同士を接着したものである。繊維同士が接着しているため、熱圧着していない不織布に比べて、寸法安定性および引張強度が優れているという特徴がある。
【0014】
本発明のポリエステル熱圧着不織布は、フィルム化領域をまったく含まず、幅方向等間隔で測定した5測定点での通気度がいずれも20〜80cc/cm/secの範囲にあることを特徴とする。
本発明において「フィルム化領域」とは、バインダー繊維が溶融して主体繊維の径以上にフィルム状に広がっている領域を意味する。
さらに、「フィルム化領域をまったく含まない」とは、熱圧着不織布表面の顕微鏡写真(倍率100〜200倍)において、0.5cmの面積の中で無差別に選んだ1mmの視野5ヶ所においてフィルム化領域がまったく存在しないことを言う。顕微鏡写真の倍率は上記の評価ができさえすれば特に限定されない。
【0015】
本発明における「通気度」とは、JIS L 1079−1966に準拠して、フラジール形試験機を用いて測定したものである。この場合、目付けはほぼ100g/mとし、目付けが小さいものは3枚以下の範囲で重ねて目付けをほぼ100g/mとして測定する。通気度が20cc/cm/sec未満では樹脂が含浸しにくく、一方80cc/cm/secを越えると不織布の寸法安定性や強度が低下する。
【0016】
本発明の熱圧着不織布はポリエステルを主成分とし、主体繊維(A)とバインダー繊維(B)とからなる。主体繊維は不織布を構成する主たる繊維であり、圧着工程によっても形態や物性の変化を受けない繊維である。主体繊維として、本発明では延伸ポリエステル繊維が用いられる。
バインダー繊維は、熱圧着によって少なくとも部分的に溶融し主体繊維同士を接着することができるもので、ポリエステル未延伸糸または主体繊維よりも融点の低い低融点ポリエステル繊維が用いられる。主体繊維(A)とバインダー繊維(B)とは不織布を製造する段階で混合されて、不織布中では均一に分散している。
【0017】
主体繊維(A)とバインダー繊維(B)とは、最終用途によって異なるが、重量比で20:80〜80:20が好ましい。主体繊維の量が20%未満では不織布の強力、寸法安定性等が損なわれるし、バインダー繊維の量が20%未満になるとたとえ熱カレンダー加工しても熱圧着不足で強力不足、毛羽立ち、繊維脱落等を引き起こす。特に好ましい割合は、30:70〜70:30である。
【0018】
本発明のポリエステル熱圧着不織布には、本不織布の性能を妨げない範囲でポリエステル繊維以外の繊維を含んでもよい。例えば、酸化アクリル繊維、レーヨン系酸化繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリアミドイミド繊維あるいはポリベンツイミダゾール繊維等を挙げることができる。しかし、好ましい混率は20重量%以下である。
【0019】
本発明方法で対象とするポリエステル繊維は、ひとつの態様では、分子主鎖の総てが芳香族化合物の結合からなり溶融液晶性を示す全芳香族ポリエステル繊維であり、もうひとつの態様では、カルボン酸部分は芳香族化合物だが、グリコール部分が脂肪族化合物であるポリ(アルキレン アリレート)繊維である。
第1の態様における溶融液晶性の全芳香族ポリエステルとは、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮重合、芳香族ヒドロキシカルボン酸の単独縮重合、または上記3種のモノマーを組合せたモノマー混合物からの共縮重合によって合成されるものを指す。好適には化1、化2及び化3に示す反復構成単位の組み合わせからなるものを挙げることができる。
【0020】
【化1】
Figure 2004100047
【0021】
【化2】
Figure 2004100047
【0022】
【化3】
Figure 2004100047
【0023】
特に、パラヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシ6−ナフトエ酸の構成単位からなる部分が60モル%以上である溶融異方性全芳香族ポリエステルが好ましい。全芳香族ポリエステル繊維は、例えば溶融異方性全芳香族ポリエステル溶融紡糸法で溶融押出しした後必要に応じ延伸及び/又は熱固定する公知の方法で製造することができる。これら溶融液晶性全芳香族ポリエステルは、紡糸後緊張熱処理されることにより融点が290℃以上の主体繊維となる。
【0024】
本明細書でいう「溶融液晶性」とは、別名「溶融異方性」とも称せられ溶融相において光学液晶(異方)性を示すことをいう。ポリマーが「溶融液晶性」を有するか否かは公知の方法により容易に知ることができ、例えばホットステージに載せた試料(ポリマー)を窒素雰囲気下で昇温加熱してその透過光をクロスニコル下で観測する方法などのような公知の方法によって溶融液晶化の有無を調べることができる。
【0025】
バインダー繊維には、全芳香族ポリエステル繊維の未延伸糸または主体繊維よりも融点の低いポリエステル繊維が用いられる。特に好ましいバインダー繊維は主体繊維として用いられる繊維の未延伸糸である。
緊張熱処理(この段階でポリエステルは固相重合を引き起こし得る)される前の未延伸糸は、融点が延伸繊維である主体繊維の融点よりも通常40〜60℃低く、従来の全芳香族ポリエステル繊維不織布の製造は、この融点差を利用して主体繊維は溶融しないが未延伸糸が溶融する両者の融点の間の温度で熱圧成形するよう提案されていた。これに対して、本発明者らは、繊維中に存在する非晶質部分の熱可塑性を利用してバインダー繊維のガラス転移点(Tg)と融点(Tm)との間の温度で熱圧着可能なことを見出し、それによって本発明に到ったものであり、好ましくは本発明で用いる不織布ウエブは、バインダー繊維(B)の融点以下で且つガラス転移点以上の温度で熱圧着が行われる。
ここで融点(Tm)とは、示差走査型熱量計(DSC)による昇温速度20℃/分での測定で観察される主吸熱ピークをいう。また、ガラス転移点(Tg)は、ディラトメーターを用いて、試料の体積を温度を上げながら測定し、体積−温度曲線を作成して、その勾配が急変する温度をTgとした。また、Tgが測定困難な樹脂の場合は、「絶対温度ベースでTgはTmの2/3になる」という理論に基づいてTm値から求めた(参考文献:古川淳二著「高分子物性」p.63、化学同人1985年出版)。
【0026】
また、主体繊維よりも融点が低い低融点糸としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂にフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等の酸成分あるいはp−ヒドロキシ安息香酸のようなオキシカルボン酸またはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール等のグリコール成分の1種または2種以上から選ばれた化合物の共重合体を挙げることができる。
この主体繊維とバインダー繊維とは所定の長さに切断した後、所望の割合に混合、抄造して不織布ウエブが作成される。
【0027】
第2の態様で用いられるポリ(アルキレン アリレート)繊維には、好ましくは一般的にエチレングリコール単位および/または1,4−ブタンジオール単位よりなるグリコール単位とテレフタル酸単位および/またはナフタレン ジカルボン酸単位から主としてなるポリマーを挙げることができる。特に好ましいポリマーとして、ポリ(エチレン テレフタレート)が例示できる。
本発明で対象とするポリ(アルキレン アリレート)繊維不織布には、乾式不織布と湿式不織布とがあるが、得られるウエブの均一性からして湿式不織布が特に好ましい。
【0028】
上記で説明した本発明のポリエステル熱圧着不織布は、延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを加熱金属ロールと硬さがタイプAデュロメータ硬さ40〜90のゴム系弾性ロールとの間でカレンダー加工して熱圧着することによって製造することができる。
本発明のポリエステル熱圧着不織布の製造法の特徴は、加熱金属ロールと硬さがタイプAデュロメータ硬さ40〜90のゴム系弾性ロールとの間でカレンダー加工するところにある。
【0029】
本発明のような熱圧着加工を行うに当たっては、一般にカレンダー加工設備が用いられているが、その加圧用ロールとしては、対になった加熱金属ロールからなる設備あるいは加熱金属ロールと弾性ロールとの組合せが多く用いられている。弾性ロール素材としては、例えばセルロース系からなるペーパーロール(コットン ロール)あるいはフッ素樹脂、ナイロン樹脂等からなるプラスチックロール、更に軟質、中質、硬質ゴム等からなるゴム系ロールが用いられている。
加熱金属ロール対のタイプであれ、加熱金属ロールと弾性ロールとの組み合わせのタイプであれ、このような従来のカレンダー加工装置を用いて、バインダー繊維を含有している不織布ウエブを熱圧着すると、バインダー繊維の溶融により、得られた熱圧着不織布中にはフィルム化した部分が生成することが避けられず、本発明の特性を備えた熱圧着不織布を得ることは不可能であった。
【0030】
本発明らは、加熱金属ロール/弾性ロールの組合せでさえ生じるフィルム化の要因は、弾性ロール表面硬さの影響が最も大きいことを発見した。表面硬さの大きい弾性ロールの場合、いくらニップ圧(押え圧)を下げてもフイルム化する量は殆ど減少しない。それに対して、驚くべきことに、本発明で提案する範囲の表面硬さを有するゴムロールを使用すると、ニップ圧を材質破損限界近くまで増加してもフイルム化が殆ど進行しないことを発見した。しかもかかる現象が、後述する如くポリエステル製不織布との組合せでのみで観察され、ポリ(プロピレン)不織布のような、他の繊維素材からなる不織布の場合には見出せなかった。
弾性ロールに使用するゴム材質は、用途により選択可能であるが本発明のカレンダー加工には比較的高温熱接着を行う機会が多いため耐熱性のシリコンゴム系あるいはフッ素ゴム系を用いるのが好ましい。
【0031】
本発明では、延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを、上記熱カレンダー設備の加熱金属ロール/弾性ゴム組合せ装置で加圧圧着することによって、フィルム化領域をまったく含まず、通気度が20〜80cc/cm/secの範囲にあるポリエステル熱圧着不織布を製造することができる。
【0032】
本発明で使用する弾性ゴムロールの硬さ範囲は、タイプAデュロメータで測定して40〜90(以後、A40〜A90と略記する)である必要がある。ゴム硬さがA40未満の場合、不織布の圧着が充分でなく得られる熱圧着不織布の性能、特に引張強力、形態安定性が不足する。一方A90を超えるとバインダー繊維の融着によるフイルム化が観察される。特に好ましい弾性ロールの硬さはA65〜A85である。
【0033】
本発明で言う弾性ロールの硬さはJIS K 6253−1997(「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」)のデュロメータ硬さ試験に準拠して測定したものである。硬さはタイプAデュロメータでロール組立て後のロール表面硬さを測定している。タイプAデュロメータの加圧面がゴム表面に密着してから1/sec以内の見掛け硬さを読み5点測定でその中央値を「ゴム硬さ」とした。
【0034】
また、本発明の方法では、カレンダー加工の際、加工設備の前後に余熱装置及び/または冷却装置を配置してもよい。
また本発明のような加熱金属ロールとゴム系弾性ロールとの組合せの場合、1回片面のみのニップ加工のほか表裏各1回あるいはそれ以上の回数のカレンダー通しも可能である。特に表裏各1回加工が不織布の両面からの毛羽立ち防止あるいは繊維脱落の防止、更に厚み減少、表面平滑性の均等化等の見地から望ましい。2回以上のカレンダー加工の場合、第2回目の温度、圧力の条件は、第1回目と同じであっても異なっても差し支えない。
【0035】
熱圧着するためのニップ圧は、熱圧着が可能な圧以上であれば特に限定はない。好ましくは線圧10kg/cm以上、より好ましくは20〜30kg/cmである。加工圧力は、材質の機械的強度から線圧30kg/cm以下に押えることが好ましい。
【0036】
カレンダー条件は種々設定可能であるが、カレンダー加工は、バインダー繊維の融点以下の温度で熱圧着することが好ましい。それにより溶融したバインダー繊維の不要な流動によるフィルム形成を阻止することができる。好ましい温度条件は、熱圧着をポリエステルバインダー繊維の融点以下でガラス転移点以上の温度である。即ち、好ましい熱圧着温度は、第1の態様、すなわちポリエステル主体繊維が溶融液晶全芳香族ポリエステル繊維の場合は、成分構成によって多少の変動はあるがおよそ160〜240℃、第2の態様、すなわちポリエステル主体繊維がポリ(アルキレンアリレート)繊維の場合は、150〜240℃が最も好ましい。
【0037】
溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維であれポリ(アルキレン アリレート)繊維であれ、これらのポリエステル繊維は必ず結晶部分と非晶部分からなっており特にバインダー繊維は非晶部分の比率が高くなるように設計されている。本発明のポイントの一つは、バインダー繊維の融点以下で非晶部分の熱可塑性を利用して主体繊維の熱接着を行うもので、その結果主体繊維とバインダー繊維との交絡点以外は結晶部分の融解によるフイルム化が全然進行しない好ましい構造になるものと推測している。理論的には繊維内非晶部分で分子運動の始まる、ポリマーのガラス転移点以上の温度であればよい。
【0038】
本発明の製造方法で製造された本発明の熱圧着不織布の表面を電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図1に示すように、バインダー繊維の溶融は主体繊維とバインダー繊維とが交絡している部分でのみ起こっており、溶融バインダー繊維がフイルム化している個所は一切観察されなかった。比較として、図2には、同じ不織布ウエブを従来の方法(金属ロールとペーパーロールとの間で熱圧着;比較例8)で熱圧着した熱圧着不織布の電子顕微鏡写真を示した。図2の不織布には多数のフィルム化部分が観察される。
また、更に必要ならこの熱圧着不織布を熱処理して固相重合を促進させることも可能である。固相重合により、特にバインダー繊維部分の分子量が増大するため不織布全体の強力、形態安定性が向上する。
【0039】
以上述べてきた方法でフイルム状融解物を全く含まない樹脂含浸性、水透過性に優れた不織布が得られる。更に用途、例えばプリント配線基板基材でより薄肉化が望まれる場合、本発明の不織布を再度一対の金属ロールを備えたカレンダー加工設備あるいは金属ロール/ペーパーロール組合せのカレンダー加工設備等で圧縮加工することも可能である。その際、ロール加圧の線圧は100kg/cm以下、好ましくは10〜50kg/cm、温度は実質的にバインダー繊維のガラス転移点未満であるのが好ましい。
【0040】
かくして得られた溶融異方性全芳香族ポリエステル繊維不織布を、固相重合して、バインダー繊維側に含まれる低分子量成分の重合度を上げることが好ましい。固相重合の進行によりバインダー繊維の見掛けの融点も主体繊維並に上昇し、不織布の耐熱性(寸法安定性)が向上する。固相重合反応は、バインダー繊維の融点(Tm)〜融点+60℃の温度範囲で、20〜60時間、好ましくは24〜48時間、例えば熱風循環加熱炉中で処理することによって可能である。また、含浸させる樹脂との接着性、樹脂による濡れ性を向上させるため、必要に応じて本不織布基板基材をコロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸素雰囲気中での熱処理等、物理的処理あるいはスパッタリングなどの化学的処理などを施すこともできる。
【0041】
上記により得られる本発明のプリント配線基板基材はそのままで流通、販売することができる。また、該基材に熱硬化性および/または熱可塑性樹脂(マトリックス樹脂)を含浸または付着してプリプレグを製造し、これを単層で用いるかまたは複数枚積層してプリント配線基板を製造することもできる。
【0042】
本発明で用いることのできる熱硬化性樹脂の種類は何ら制限がない。従来から使用されてきている公知の熱硬化性樹脂をそのまま使用することができる。本発明で使用することができる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シアナート樹脂、マレイミド樹脂、もしくはポリイミド樹脂などから選ばれる1種または2種以上の熱硬化性樹脂が挙げられる。さらに上記熱硬化性樹脂の1種または2種以上にポリビニルブチラール、アクリロニトリル−ブタジエンゴムまたは多官能性アクリレート化合物などを加えて変性したものや、架橋ポリエチレン、架橋ポリエチレン変性エポキシ樹脂、架橋ポリエチレン変性シアナート樹脂、ポリフェニレンエーテル変性シアナート樹脂などの熱可塑性樹脂で変性した熱硬化性樹脂(いわゆるIPM型ポリマーアロイまたはセミIPM型ポリマーアロイ)などもマトリックス樹脂として用いることができる。中でも、溶融異方性全芳香族ポリエステルとして、p−ヒドロキシ安息香酸と2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸とから主としてなるポリマーからなる繊維を使用した場合、この繊維との接着性、電気絶縁性および耐熱性に優れるビスマレイミド−トリアジン系樹脂が好適に使用できる。
【0043】
上記の熱硬化性樹脂を本発明のプリント配線基板基材に公知の方法で付与してプリプレグを製造することができる。熱硬化性樹脂を基材に付与するには、例えば、含浸法、塗布法、または溶融転写法を用いることができる。具体的には、熱硬化性樹脂を溶剤に溶解したワニスとして基材に含浸させて乾燥する方法、無溶剤で常温もしくは加温下で調製した液状熱硬化性樹脂を含浸させる方法、粉体状熱硬化性樹脂を本発明の基材に固定する方法、離型性を有するフィルムやシート状物に熱硬化性樹脂層形成した後、これを本発明の基材に溶融転写する方法等である。
【0044】
回路用積層板に含まれる熱硬化性樹脂量も特に限定されるものではないが、回路用積層板全体の30重量%〜95重量%であるのが好ましい。なかでも40重量%〜80重量%の範囲が特に好ましい。樹脂量が回路用積層板全体の30重量%未満になると成形不良となり、95重量%を越えると成形が困難になる。
こうして得られた熱硬化性樹脂担持不織布を、例えば、縦型ドライヤーによって非接触状態で乾燥してプリプレグを調製することができる。
【0045】
かかる方法で得られたプリプレグを少なくとも1枚以上用いてプリント配線板を製造することができる。具体的には、上記プリプレグの単層からなるプリント配線基板、上記プリプレグを2枚以上積層してなるプリント配線基板、上記プリプレグ1枚以上と他の素材(例えば、ガラスクロス、ガラス不織布、その他の繊維布帛や多孔質基材、プラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチック板など)を積層してなるプリント配線基板などが挙げられる。本発明の効果を十分に達成するためには、実質的に本発明のプリント配線基板に樹脂を含浸してなるプリプレグのみからプリント配線基板を構成するのが好ましく、その際、機械的性能、電気特性、加工性などを考慮すると、該プリプレグを2〜5枚程度積層してプリプレグ配線基板を製造するのがより好ましい。
【0046】
かかる配線基板に金属層を積層することによりはプリント配線板が得られる。金属層は単層であってもまた複数層形成されていてもよい。金属層としては、金属箔、金属シート、金属板、金属網などが挙げられ、場合によってはこれらの2種以上を併用してもよい。また、金属層に表面処理などが施されていてもよい。金属相を構成する金属としては、銅、鉄、アルミニウムなどが好適であり、なかでも銅を用いるのが工業上好ましい。勿論、上記した金属の2種以上を併用することもできる。金属層の厚さは、取り扱い性、電気特性などの点から10〜50μm程度とするのが好ましい。金属層とプリント配線基板との接着は、場合により接着剤を用いて行ってもよい。
【0047】
プリント配線板の製造方法は特に限定されない。従来公知の方法と同様にして製造することができる。例えば、本発明のプリント配線基板基材に樹脂を含浸したプリプレグを1枚または2枚以上用い、必要に応じてさらに他の材料も併用してこれらと金属層を重ね合わせて加熱加圧し、マトリックス樹脂を硬化および/または固化すると共に層間の接着を行って、目的とするプリント配線板を製造することができる。その際の加熱温度、圧力などはマトリックス樹脂の種類、積層する材料の種類、層数などに応じて適当な条件を採用すればよい。勿論、予め複数のプリプレグを積層一体化した後に金属層を積層一体化してもよい。
【0048】
【実施例】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお実施例中「部」、「%」とあるのは、特に断らない限り「重量部」、「重量%」を意味する。
本実施例で採用した試験方法、評価方法は次の通りである。
〔熱圧着不織布の性能評価方法〕
1.不織布の引張強度:
得られた熱圧着不織布から縦×横=200mm×15mmの試験片を採取し、JIS P 8113−1976に準拠して、不織布の縦方向及び横方向の引張強度を求めた(単位:kg/15mm)。
2.不織布の通気度:
得られた不織布から縦×横=200mm×500mmの試験片を採取し、JIS L 1079−1966に準拠して、フラジール形試験機を用いて通気度を測定した。
【0049】
3.樹脂含浸不織布の耐熱性の評価
1)含浸樹脂の調製:
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン900部とビス(4−マレイミドフェニル)メタン100部とを混合して150℃で130分間予備反応させ、その生成物をメチルエチルケトンとN,N’−ジメチルホルムアミドの混合溶剤に溶解した。得られた溶液にビスフェノールAエポキシ樹脂(エポキシ当量=450〜500)700部及びオクチル酸亜鉛0.02部を溶解して含浸樹脂ワニスを得た。
2)樹脂ワニス含浸不織布の耐熱性評価(ハンダ耐熱性の代替評価法):
得られた不織布から正方形(50mm×50mm)の試験片を切り取り、これを上記の方法で調製した室温(通常25℃)の含浸樹脂ワニスに100秒浸漬した。不織布を取り出し、150℃で6分間乾燥し樹脂含量66〜68%の樹脂含浸不織布を調製した。
この樹脂含浸不織布を沸水中に投入し6時間煮沸した後取り出し、空気中で240℃で、180秒間加熱した。室温に冷却した後、この試験片の表面、裏面、端面を目視観察し、次の基準に基づいて評価した:
○(良好):いずれの面にも膨れが生じてない、
×(不良):1箇所でも膨れが生じている。
本試験はハンダ耐熱性を評価するための代替法である。
本試験における沸水中での6時間煮沸は、溶融したハンダそのものに対する材料自体の耐熱性の経時加速試験を狙ったものである。
また、煮沸後の240℃での加熱試験はハンダ付け工程における熱による膨れの発生を評価する代替試験である。
【0050】
4.不織布表面のフイルム化程度の評価
得られた不織布表面を倍率100倍で電子顕微鏡観察(SEM)し、その顕微鏡写真から、フイルム形成の有無を目視観察した。
評価を次の基準で行った:
○(良好) :フイルム化領域が全く認められない
△(中程度):主体繊維の端部で樹脂が少し広がりがっている
×(不良) :バインダー繊維がフィルム状に広がっている
【0051】。
〔弾性ロールの表面硬さ〕
実験に使用した弾性ロールを(有)エラストロン社(京都)製ESA型(タイプAデュロメータ用)及びペーパーロールについてはESD型(タイプDデュロメータ用)硬度計を用いJIS K 6253−1997に準拠して測定した。デュロメータの加圧面を衝撃が加わらない程度になるだけ速やかにゴムロール表面に密着させ、1秒以内に目盛りを読んで求めた。押針の接点が6mm以上離れた位置で5回測定し、その中央値をゴムロールの硬さとした。(単位:無単位)
【0052】
実施例   1〜3
(1)繊度2.5デニール、繊維長5mmの溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維〔(株)クラレ製:商品名「ベクトランHA」(延伸糸);融点320℃、ガラス点移転120℃〕を主体繊維(A)とした。次いで繊度2.5デニール、繊維長5mmの溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維〔(株)クラレ製:商品名「ベクトランNT」(未延伸糸);融点280℃、ガラス移転点120℃〕を水中に分散させて水中懸濁液をつくり、汎用のディスクリファイナーにより叩解して繊維径1〜5μm程度の繊維状のバインダー繊維(B)を調製した。(カナディアン標準濾水度CSF≒500ml)
この(A)と(B)を表1に記載のように異なる割合(A/B)で混合し、0.1%の水性スラリー(紙料)を調製した。この紙料を円網ヤンキー抄紙機で10m/minの速度で湿式抄造、105℃で乾燥して坪量約100g/mの不織布ウエブ(原反)を得た。
(2)この原反を240℃に設定した加熱金属ロールと硬さA80のシリコンゴムロールを備えたカレンダー加工機で線圧30kg/cm、速度5m/minで通過させることで熱圧着した。次いで表裏反転させて(即ち、第1回目でゴムロールに接していた側を加熱金属ロールに接するようにして)第1回目と全く同一条件で第2回目のカレンダー加工を行ない、熱圧着不織布を製造した。
(3)この繊維(A)と(B)との混率が異なる各熱圧着不織布について、上記評価法にしたがって坪量、引張強度(縦/横)、通気度、樹脂含浸後の耐熱性およびフイルム化状態を測定しその結果を表1に示した。
【0053】
比較例   1〜3
(1)シリコンゴムロールを硬さクラスDデュロメータ82(D82)(クラスAデュロメータでは上限目盛り100を越えるため測定不能)のペーパーロールに交換した以外は、実施例1〜3の(2)と同じ方法で、実施例1〜3の(1)で得た各不織布ウエブから熱圧着不織布を製造した。
【0054】
比較例  
カレンダー加工での加圧線圧を10kg/cmに落とした以外は比較例3と同様加工して熱圧着不織布を得た。
比較例1〜4で製造した各熱圧着不織布の性質を表1に併記した。
【0055】
【表1】
Figure 2004100047
【0056】
表1に示す結果からわかるように、弾性ロールの硬さが高過ぎると、強度等の機械的性質は優れるが、樹脂含浸後の耐熱性、気体ひいては液体の透過性を大きく損なうことが示された。線圧を落としても、この傾向は殆ど変わらない。このような樹脂含浸後の耐熱性の低い比較例1〜4の熱圧着不織布は、プリント配線基板製造工程のはんだ含浸工程での熱の印加によって基板の破損を引き起こすことになり、プリント配線基板用基材として不適切である。
【0057】
実施例   4〜6
(1)繊度3.0デニール、繊維長5mmのポリ(エチレンテレフタレート)繊維〔(株)クラレ製:商品名「EP303」(延伸糸);融点256℃、ガラス移転点69℃〕の主体繊維(A)と繊度1.1デニール、繊維長5mmのポリ(エチレンテレフタレート)〔帝人(株)製:商品名「TA07N SD1.1×5」(未延伸糸);融点256℃、ガラス移転点69℃〕のバインダー繊維(B)とを第2表記載のように異なる割合(A/B)で混合し、実施例1〜3と同様の方法で抄造し坪量約100g/mの不織布ウエブ(原反)を得た。
(2)この原反を230℃設定の加熱金属ロールと硬さが A72 の加硫ゴムロールを備えたカレンダー加工機を線圧25kg/cm、速度5m/minで通過させることで熱圧着した。次いで表裏反転させ第1回目と同一条件で第2回目のカレンダー加工を行ない、熱圧着不織布を製造した。
(3)この繊維(A)と(B)との混率が異なる各熱圧着不織布について、同様に評価を行い結果を表2に記した。
【0058】
比較例   5〜8
(1)実施例4〜6の(1)で得た各原反を弾性ロールをD80のペーパーロールに取替えた以外は実施例4〜6の(2)と同一条件で表裏各1回カレンダー加工を実施した。但し、比較例8は、比較例7において線圧を10kg/cmに落として実施したものである。なお、硬さD80はクラスAデュロメータでは100を越えるため測定不能であった。
得られた不織布の性質を表2に併記する。
【0059】
【表2】
Figure 2004100047
【0060】
実施例4〜6および比較例5〜8の結果から、不織布を構成するポリエステル繊維がポリ(アルキレン アリレート)繊維の場合も、カレンダー加工において本発明で定める所定の表面硬さを持ったゴムロールを使用することが、不織布の樹脂含浸後の耐熱性あるいは気体ひいては液体の透過性向上に有用であることが示された。
【0061】
比較例   9〜11
繊度2.0デニール、繊維長5mmのポリ(プロピレン)繊維〔大和紡績(株)製:商品名「ダイワボウポリプロPZ」〕を主体繊維(A)とし、繊度2.0デニール、繊維長5mmのポリ(プロピレン)複合繊維〔大和紡績(株)製:商品名「ダイワボウNBF(H)」〕をバインダー繊維(B)とし、(A)と(B)とをそれぞれ表3に記載の割合で混合し、0.1%の水性スラリー(紙料)を調製した。この紙料を円網ホーマー抄紙機で10m/minの速度で湿式抄造し、100℃のヤンキードライヤーで乾燥、坪量約100g/mの不織布ウエブ(原反)を得た。
(2)この原反を95℃設定の加熱金属ロールとA72の加硫ゴムロールを備えたカレンダー加工機に、線圧20kg/cm、速度5m/minで通過させることで熱圧着した。次いで表裏反転させて第1回目と全く同一条件で第2回目のカレンダー加工を行ない、熱圧着不織布を製造した。
得られたポリ(プロピレン)製熱圧着不織布の性質を表3に示す。
【0062】
【表3】
Figure 2004100047
【0063】
この比較例9〜11は、カレンダー加工機の弾性ロールの樹脂含浸後の耐熱性、気体ひいては液体透過性に有効なのは、繊維骨格が比較的硬いポリエステル繊維に限定されており、分子鎖の比較的柔らかいポリプロピレン繊維には必ずしも成り立たないことを示している。
【0064】
【発明の効果】
本発明の熱圧着不織布は、優れた引張強度および寸法安定性を持っていることに加えて、微細な多数の気孔を均一に有しているため流体の透過性に優れ、またプリント配線基板として用いる場合に必要な含浸樹脂液をよく含浸するため、プリント配線基板用基材として、また水処理用の濾過支持体としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱圧着不織布(実施例6)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)。
【図2】比較例8の熱圧着不織布の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率100倍)。

Claims (7)

  1. 延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを熱圧着してなる熱圧着不織布であって、フィルム化領域をまったく含まず、幅方向等間隔で測定した5測定点での通気度がいずれも20〜80cc/cm/secの範囲にあることを特徴とするポリエステル熱圧着不織布。
  2. ポリエステル主体繊維(A)が融点290℃以上の溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維、ポリエステルバインダー繊維(B)が融点290℃未満の溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維である請求項1に記載のポリエステル熱圧着不織布。
  3. ポリエステル主体繊維(A)がポリ(アルキレン アリレート)繊維、ポリエステルバインダー繊維(B)がポリ(アルキレン アリレート)繊維の未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリ(アルキレン アリレート)繊維である請求項1に記載のポリエステル熱圧着不織布。
  4. 延伸糸からなるポリエステル主体繊維(A)と未延伸糸または主体繊維より融点の低い低融点糸であるポリエステルバインダー繊維(B)とを主成分としてなる不織布ウエブを加熱金属ロールと硬さがタイプAデュロメータ硬さ40〜90のゴム系弾性ロールとの間でカレンダー加工して熱圧着することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル熱圧着不織布の製造法。
  5. 熱圧着をポリエステルバインダー繊維(B)の融点以下で且つガラス転移点以上の温度で行う請求項4に記載のポリエステル熱圧着不織布の製造法。
  6. 主体繊維(A)とバインダー繊維(B)の配合比(重量)が20:80〜80:20である請求項4または5に記載のポリエステル熱圧着不織布の製造法。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル熱圧着不織布を複数枚積層してなるプリント配線基板。
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