JP2004063039A - ディスク情報処理装置及びその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ディスク情報処理装置1は、ディスク状記録媒体2に関する情報の読み取り又は記録を行うヘッド4と、ディスク状記録媒体2のトラックに対するヘッドの位置決め機構及び駆動源を含むサーボ系を備えている。サーボ系の制御において、ヘッドを退避させることなく、シーク後のヘッド位置を維持する一時待機用の動作モードにおいて、サーボ制御特性に係る応答性を低下させるための特性制御手段を備え、トルク外乱に対する感度を低下させることで消費電力を低減するように構成した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディスク状記録媒体を用いた情報処理装置において、低消費電力化を実現するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ機器に用いられて、そのアーキテクチャーの一部を構成する装置として、ハードディスクドライブ装置(以下、「HDD」という。)が挙げられる。該装置は、映像情報や音声情報等のデータを処理する機器や、移動体通信端末装置、ゲーム機をはじめ、各種の機器、特に携帯型の電子機器(所謂、モバイル機器等)に適用されて、その用途を拡げている。
【0003】
この状況下にあって、HDDの低消費電力化が重要な要件の1つとなってきている。
【0004】
ディスク状記録媒体に対する磁気ヘッドの位置決め制御において、磁気ヘッドの制御には、ディスク上で所望のトラックに対して磁気ヘッドを移動させるためのシーク(SEEK)制御と、シーク後に磁気ヘッドを記録トラックに対して追従させるためのトラッキング(Tracking)制御が挙げられるが、このような制御を常に休みなく行っていたのでは、消費電力量(電力時間積)が嵩むので、ディスクアクセスを行う必要のないときには、ヘッドの退避により電力消費を抑えるための手段が講じられる。
【0005】
例えば、ヘッドをローダー(ヘッドアームのローディングに必要な部材)へ退避させて電力が消費されないようにするための退避モード(あるいはSLEEPモード)を用意して、不使用状態に対処する方法が挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、HDDを、例えば、携帯型機器等に搭載して使用する場合に、消費電力の低減と、必要動作(読み書き動作等)への短時間での復帰とを両立させるための有効な方法等が、これまで提案されておらず、例えば、下記に示す点で問題がある。
【0007】
一般に、HDDでは、高速化を目的としたアクセス時間の短縮化が必須要件とされているため、電源容量に関する制約を何ら考慮せずに、携帯型機器等への搭載を行う訳にはいかない。
【0008】
また、スピンドルモータの回転を停止させるとともに、駆動源(VCM)の制御も停止させ、アームをローダー(Loader)に退避してしまう、所謂SLEEPモードへの遷移による電力削減法では、確かに不要な消費電力を削減できるが、この方法では、動作復帰に要する時間が、HDDの動作開始(Start Up)に要する時間とほぼ同程度となるため、アクセス時間(アクセスタイム)が大幅に増加してしまうといった問題(ユーザーの待ち時間が長くなる等)が残る。
【0009】
従って、携帯型機器等のようにバッテリで駆動される場合には、限られた電源容量を有効に利用することが困難となったり、あるいは利便性を損う虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、ディスク情報処理装置において、省電力化と動作復帰時間の短縮化とを両立させることを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために、ヘッドを退避させることなく、シーク後のヘッド位置を維持する一時待機用の動作モードを設け、該モード時において、サーボ制御特性に係る応答性を低下させるための特性制御手段を備えたものである。
【0012】
従って、本発明によれば、トルク外乱に対する応答感度を低下させて消費電力を低減するとともに、シーク後のヘッド位置を維持したままの状態からの動作復帰により、次の動作へと短時間に移行させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、ディスク状記録媒体(磁気ディスクや光学式ディスク等)を用いて情報の読み取りや書き込みを行う情報処理装置に関するものであり、ヘッド部やディスク状記録媒体のトラックに対するヘッドの位置決め機構と駆動源を含むサーボ系を備え、該サーボ系の制御において、省電力化を実現することを目的とする。
【0014】
HDDの場合には、磁気ディスクの回転駆動用に設けられるスピンドルモータや、ヘッドのアクチュエータを構成するVCM(ボイス・コイル・モータ)等、比較的消費電力が大きい機構要素が主要部品として装置に組み込まれているため、このことが低消費電力化に支障を来たす原因となるが、本発明では、アクセス時間について比較的余裕のある機器に搭載されて用いられるHDDのように、高速アクセス性を優先する必要のない場合において、VCMのサーボ特性に係る応答性を、特定の動作モード時に制御することで低消費電力化を実現するものである。
【0015】
従って、携帯型機器のように、バッテリで駆動される場合において、本発明を適用することが好ましいが、これに限らず、省電力化を必要とする各種機器への適用が可能である。即ち、ディスク状記録媒体に対する高速なアクセス性能が常に要求されない装置であれば、携帯型機器に限らず、幅広い適用が可能である(例えば、本発明に係る電力低減方法を用いた動作モードを、ユーザーが任意に指定したり、選択することができるようにした装置等。)。
【0016】
図1は、本発明に係るディスク情報処理装置1の基本構成例について概念的に示すものであり、例えば、磁気ディスク(ハードディスク等)のドライブ装置に適用することができる。
【0017】
ディスク情報処理装置1は、ディスク状記録媒体2から情報を読み取り(あるいは読み出し)又はディスク状記録媒体2に対して情報を記録するためのヘッド部3を備えている。例えば、ディスク状記録媒体としては、磁気ディスクや、光ディスク、光磁気ディスク、相変化型ディスク等が挙げられる。
【0018】
ヘッド部3については、ディスク状記録媒体2に対するシーク(SEEK)動作によりヘッドを移動させて所望の位置に位置決めするための機構が設けられている。例えば、HDDでは、ヘッド(磁気ヘッド)4の支持アーム5を含む回動機構と、駆動源6としてVCM(ボイス・コイル・モータ)が設けられる。つまり、ディスク状記録媒体2上のトラックに対するヘッド4の位置決め機構と駆動源6を含むサーボ系を備えている。
【0019】
ヘッド部3の制御系は、コマンド処理及び設定部7と、ヘッドシーク系の制御手段8を備えている。
【0020】
コマンド処理及び設定部7は、図示しない上位の指令手段(ホスト装置等)からのコマンドを受けとり、その指令内容に従って制御手段8に信号を送出する。
【0021】
制御手段8は、加速部及び減速部、あるいは、加速部、定速部、減速部を含む速度指令プロファイルを生成し、これを制御指令としてヘッドシーク系の制御を行うものであり、指令値生成部9とサーボ制御部10を備えている。
【0022】
指令値生成部9は、加速度、速度、位置等の指令プロファイルを生成するものであり、その出力はサーボ制御部10に送られる。
【0023】
サーボ制御部10は、駆動源6に対する駆動回路(ドライバー)や、ローパスフィルタ等を含んでおり、制御対象に依存した構成をもつ部分である。尚、HDDの場合には、出力信号がVCMに供給されることで、ヘッドアームを含む回動機構の駆動制御が行われる。つまり、駆動源6を含むモータ系で発生される駆動力を利用して、ディスク状記録媒体2に対するヘッド4の位置決めが行われる。尚、図示は省略するが、ディスク状記録媒体2を回転させる駆動手段等が設けられていることは勿論である。また、本発明は、磁気ディスクに限らず、例えば、光学ヘッド(あるいは光学ピックアップ)を用いたドライブ装置への適用が可能であり、その場合には、サーボ制御部10により、光学ヘッドを搭載した移動ベース(スライドベース)の位置制御が行われる。
【0024】
図2は、HDDとそのホスト装置(コンピュータ等)を含む情報処理システムの構成例11を概略的に示す図である。
【0025】
HDD12には、磁気記録媒体(磁気ディスク)13の回転手段14が設けられており、駆動源15としてモータが用いられる。また、磁気記録媒体13へのデータの書き込みや読み出しを行うためのヘッド部16及びその駆動機構17が設けられており、駆動源18としてモータ(VCM)が使用される。
【0026】
駆動源15、18に係る駆動制御については、サーボコントロール部19からの制御信号に従って行われる。
【0027】
ヘッド部16との間でデータの受け渡しを行う信号処理手段20として、データチャンネル部21及びディスクコントロール部22が設けられている。
【0028】
データチャンネル部21は、磁気記録媒体13に対して情報信号を書き込むために記録符号化処理を行い、処理結果に対して記録再生系の特性に適したデジタルビット系列への変換を行うものである。また、再生時には、磁気記録媒体13から読み出された再生信号に対して、記録時の変換とは逆の変換を行うとともに、エラー検出及びエラー訂正処理を行う。
【0029】
ディスクコントロール部22は、磁気記録媒体13に係るデータ管理を行うために設けられており、データチャンネル部21との間でデータや必要情報の受け渡しを行ったり、あるいは、サーボコントロール部19との間で磁気ディスクの回転制御やヘッドのシーク動作等に必要な情報を互いに伝送し合う。尚、ディスクコントロール部22及びサーボコントロール部19は、前記した制御手段8を構成している。
【0030】
記憶部23には、データを一時的に記憶するために設けられたバッファメモリが含まれる。
【0031】
ホスト装置とのインターフェース部(以下、「I/F部」と記す。)24については、例えば、コンピュータ機器等に接続する場合において、SCSI(small computer system interface)コントローラ、あるいはIDE(intelligent drive electronics)コントローラ等を用いて構成される。
【0032】
ホスト装置25からのコマンド(command)がI/F部24を介してHDD12に送出され、また、ホスト装置25とI/F部24との間でデータやパラメータ等の受け渡しが行われる。例えば、ホスト装置25から発行されるコマンドをI/F部24が受けると、当該コマンドの指示内容がディスクコントロール部22に伝達される。
【0033】
尚、ホスト装置について、図2には、制御中枢としてのCPU(中央処理装置)26と、記憶部27(管理用情報等を含むシステムデータを記憶するためのシステムメモリ等)だけを示している(つまり、それら以外の構成形態の如何は問わない。)。
【0034】
磁気記録媒体13の記録面には、複数のトラックが同心円状に形成されており、各トラックについてはそれぞれ固定長の複数のセクタに分割されている。そして、各トラックには磁気ディスクの最外周から最内周に向かう方向に沿ってトラックの識別番号(0から始まるトラック番号)が付与されている。
【0035】
ハードディスクでは、論理アドレスがディスク外周から内周へと連続的に割り当てられて配置されており、時系列データについては、ディスク外周側のトラックから内周側のトラックへと順次に記録される。
【0036】
また、HDDでは、ディスクへのアクセス速度を優先して、CAV(ConstantAngular Velocity)方式が採用されている。最近では、さらに記録容量の大容量化を図るために、ディスクの外周から内周に向かって記録域を複数のゾーンに分け、ゾーン毎に1トラック当たりのセクタ数を変える方法、つまり、1トラック当たりのセクタ数が、ディスクの外周に向かうほど多くなるようにし、記録周波数を可変制御して、効率良くデータを詰め込む方式(所謂ゾーンビットレコーディング)が採用されている。
【0037】
次に、HDDにおけるデータの読み出しや書き込みの動作について簡単に説明する。尚、以下の例では、ディスク状記録媒体上で、ファイルを管理するためのフォーマットとしてMS−DOS(マイクロソフト社の商標)互換FAT(FileAllocation Table)ファイルシステムを使って説明する(本発明の適用において、ファイルシステムの如何には依存しないので、各種フォーマットへの対応が可能であることは勿論である。)。
【0038】
図3は、FATファイルシステムの構成(ディスク・レイアウト)を簡略化して例示したものである。
【0039】
システムエリアは3種類のエリアで構成されており、ブートデータエリアには、ディスクの構造を定義するデータが格納されている。
【0040】
そして、FATエリアには、クラスタの状態を示す情報が記録され、例えば、16ビットFATにおける設定値(16進表示)の意味は下記の通りである。
【0041】
・「0000h」=対応するクラスタが「空き」状態であることを示す
・「0002h〜FFF6h」=対応するクラスタが「割り当て済み」の状態であることを示す(値は次に続くクラスタ番号を意味する。)
・「FFF7h」=「欠陥クラスタ」であることを示す
・「FFF8h〜FFFFh」=対応するクラスタが「割り当て済み」の状態であることを示す(値はファイル末端(EOF)を意味する。)。
【0042】
また、ディレクトリエリアにはファイル管理情報が記録されている。さらにデータエリア内にもディレクトリエリアを構成することが可能である。尚、ディレクトリエントリの構造については、ファイル名(ベース名)、拡張子、属性、予約領域、記録時刻、記録日時、クラスタ番号、ファイル長が含まれる。
【0043】
「セクタ」はデータを記録する最小単位であり(通常512バイトに設定されている。)、本例に示すディスクオペレーティングシステム(DOS)では、「論理セクタ」と「クラスタ」という二つの記録単位を使ってHDDを管理している。尚、論理セクタ番号については、ドライブの先頭を0セクタとした連続番号で表わされ、論理セクタ番号と、物理アドレス(面番号、トラック番号、セクタ番号)の関係を、数式で示すと下記のようになる。
【0044】
「論理セクタ番号=1トラック当たりのセクタ数×(面番号+面の数×トラック番号)+セクタ番号−1」
他方、クラスタについては、複数の論理セクタから成り、FAT(File Allocation Table)でファイル位置を指定する単位である。クラスタの大きさは、論理セクタの2のべき乗(=2^n=1,2,4,8,16,…)個でなければいけない。尚、クラスタ番号に関しては、ファイル領域の先頭を「2」とする連続番号で表わす。
【0045】
データエリアには、クラスタ単位で、ファイルのデータ本体やサブディレクトリの情報が分割されて記録されるので、ファイルの最小サイズは1クラスタとなる。
【0046】
ファイルアクセスの手順を簡単に説明すると、以下のようになる。
【0047】
先ず、ファイル読み出しの基本的な流れを下記に示す。
【0048】
(1)実行ファイル名を指定する
(2)指定されたディレクトリのファイル名を検索(ディレクトリサーチ)する
(3)ファイルが見つかると先頭FATの指定値に従い、FATをアクセスする
(4)FATの値を確認し、EOF(エンド・オブ・ファイル)でなければ、1クラスタサイズ分のファイルを読み込んでから次の指定FATの位置へとヘッドを移動させる
(5)EOFに到達するまでの間、(4)の処理を繰り返し、FAT位置がEOFになるとファイル読み込みが終了する。
【0049】
図3を使って具体的に説明すると、対象となる「File1」について、ディレクトリエリア内のファイル情報で、第一クラスタのFATが「1234h」であると分かるので、先ずは、FATアドレス1234hの値を見る。そこには「1235h」が入っており、よって、データが継続している事が分かる。次に連結するFATアドレス位置は、FATアドレス「1235h」の格納値を見れば良い(本例では、「1236h」である。)。以下、同様にして処理を行っていくと、FATアドレス「1240h」に達する。そのアドレスの示す場所には、データ値としてEOFが入っているので、ここがファイル(「File1」)の最終位置である。
【0050】
ファイルの書込み手順については、先ず、ファイルの書込み位置を検出するために、FATエリアを先頭番地から順番に探索する(空き領域の探索)。つまり、空きクラスタを示す値「0000h」を、先頭のクラスタからサーチしていき、最初に検出されたアドレスが書込み位置情報となる。そして、さらにこの探索を継続していくことで、順次に書込み動作が行われる(尚、上記したファイル読み出しとの違いは、書き込んだファイルを後で探せるように、FATエリアに割り当て済みクラスタの連鎖を記録して管理する必要があること等である。)。
【0051】
上記のFATファイルシステムを利用すれば、例えば、映像情報や音声情報に係るストリームデータをディスクに記録した場合でも、任意の時間長のデータをファイル化して、ディレクトリエリアにファイル登録を行うことで、当該ファイルの先頭位置を検索することが可能である。また、FATエリアに記録されている連結アドレス情報(上記「0002h〜FFF6h」)に基いてデータを再生することができる。このように、FATシステムを使っても、ストリームデータの記録や再生が可能である。
【0052】
オペレーティングシステム等のシステム部分がロードされた後、ホスト装置25内の記憶部27を構成するシステムメモリ領域には、ディスク上のシステムエリア(FAT、ディレクトリ)のデータが読み出されて、書き込まれる。これは、コマンドの発行時に必要な管理用情報等を事前に取得しておくためであり、例えば、ホスト装置25は、ファイルの読み出し命令を発行する際に、ディレクトリのFATエントリ番号(ファイルの先頭クラスタアドレス)と転送長をパラメータとしてHDD12に送信する。このように、読み書き制御については、ホスト装置25がFATとディレクトリの情報を基に行っている。
【0053】
HDDに関しては、今後さらに高密度化が進み、それに伴って、磁気ディスクのトラックピッチが益々狭くなって行く傾向にある。従って、シーク動作及びトラッキング動作共にサーボ制御の広帯域化が必要とされる。
【0054】
このことは、VCMに入る様々な外乱に対する高い抑圧能力を要求されることを意味し、VCMの消費電力が増大することにも繋がる。
【0055】
一方、HDDの使用環境として携帯型機器等への用途が益々増えてくると、VCMの動作に対しても低消費電力化が重要な要件となってくる。
【0056】
VCMの動作モードについては、例えば、以下に示すモードが挙げられる。
【0057】
a)退避(あるいはSLEEP)モード
ヘッドの退避(ヘッドを所定の退避位置に移動させること)により、消費電力の無駄を削減するためのモードである。HDDでは、高密度化につれてヘッドの浮上量が益々小さくなるのに伴い、従来のCSS(Contact Start Stop)方式から、ランプロード(RampLoad)方式(「Ramp」は、ローダーの機械的な形状に由来し、該ローダーの構造において一様な勾配を有する。)の採用が一般的になって来ている。従って、本モード時には、ヘッド部のローダーへの退避により、電力を消費しない。
【0058】
b)待機(あるいはアイドリング:Idling)モード
上記退避モードのようにヘッドを退避させることなく、サーボ系の制御においてシーク後のヘッド位置を維持するための一時待機用の動作モードである。本モードは、記録媒体上の、対象トラックからヘッドが外れないように、単にトラッキングを行っているモードであり、VCMの制御に対して影響を及ぼす各種外乱を抑圧制御している。この為、VCMには外乱の大小に応じた電流が流れる。尚、本モードでのVCM電流については、特別に大きい訳ではないが、このモードの継続時間は比較的長いので、バッテリの寿命を左右する電力積[W・H]上での負担は大きい。
【0059】
尚、ここで、「電力積」(あるいは電力時間積)とは、単位時間でのエネルギー消費を示す消費電力W([ジュール/時間]の次元を持つ)に時間を掛けた量([ジュール]の次元を持つ)であり、以下、「WH」で表す。例えば、バッテリの寿命については、トータルの消費エネルギー[単位:ジュール]でその大きさが表現され、これは「消費電力W × 時間」に相当する。
【0060】
c)退避モードと待機モードとの間での遷移(モード)
これは両モード間で遷移(あるいは移行)する場合の動作モードである。例えば、「RampLoad」方式の場合、VCMに電流を流す必要があり、ヘッドのアンロード(unload)時には、ある程度の電力を消費する。
【0061】
d)シーク(SEEK)モード
記録媒体上の、あるトラックから他のトラックにヘッド移動を行う場合のモードであり、VCMの加速時又は減速時において、最も多くの電流が流れる。但し、一般には、シーク継続時間は数十ミリ秒以下であるため、電流値の大きさ程には消費される電力積は大きくない。尚、シークモード時の電力積低減方法としては、例えば、シーク速度の可変設定に応じて速度プロファイルを生成すること(意図的にシーク時間をひき延ばすこと)で省電力化を図る方法等が挙げられる。
【0062】
e)R/Wモード
データの読み出し(Read)又は書き込み(Write)を行うモードである。VCMの消費電力としては待機モード時の消費電力と殆ど同じである。
【0063】
図4には各モード間での遷移図を示す。
【0064】
例えば、HDDにおいて、スタンバイ・モード(モータの未起動状態)と、下記に示す2つのアイドリング・モードが用意されている場合には、第二のモードが上記の待機モードに相当する。
【0065】
・第一のアイドリング・モード=モータが起動された状態で、ヘッドが退避されているモード
・第二のアイドリング・モード=モータが起動された状態で、ヘッドがロードされてトラッキングされているモード。
【0066】
上記の待機モードや、R/Wモード時等において問題となるのは、VCMへの様々な外乱であり、これらの外乱をトルク換算で見た場合に、主なものとして、下記に示す外乱が挙げられる。
【0067】
・電気外乱(以下、「DTe」と記す。)
電源や各種電気素子からのノイズをVCMトルクに換算した外乱。
【0068】
・スピンドルモータ回転同期外乱(以下、「DTrro」と記す。)
磁気ディスクの回転中心と、同心円状トラック(Track)の幾何学的中心との偏差、及びトラックの幾何学的偏差に基づく外乱(幾何外乱)を、VCMトルクに換算したもので、その周波数はスピンドルモータ回転数(これを「Fz」と記す。)と同じである。
【0069】
・人的外乱(以下、「DTmb」と記す。)
例えば、HDDが搭載された携帯機器等を持ち歩く場合に、人の動作(歩行等)に伴って発生する外乱。一般にその周波数成分は低いがトルク外乱としては、かなり大きくなる場合がある。サーボ特性上、低域のゲインは大きいので補償能力が高く、電力積に関して高負担な成分である。
【0070】
・スピンドルモータ回転非同期外乱(以下、「DTnrro」と記す。)
上記した回転同期性の外乱「DTrro」以外の外乱。尚、分類の仕方によっては、上記DTeやDTmbをここに含めても構わない。
【0071】
この様にVCMへのトルク外乱については、「DTrro」と「DTnrro」の2種類に大別することができる。そして、VCMを含むサーボ系では、待機モード、シークモード、R/Wモード時に、これら外乱を圧縮すべく電流を流して補償している。
【0072】
高速なアクセス性が重要な要件の一つとなっている機器、例えば、コンピュータ機器に搭載されるHDD(PC用HDD)とは異なり、携帯用途等のHDDでは、データの読み書きを開始する迄に、ある程度の時間的な余裕が存在する場合が多い。
【0073】
そこで、VCMを含むサーボ系に関して、サーボ制御特性に対し待機(Idling)モード時における、サーボ周波数特性(F特)を支障が無い範囲で大幅に低減することにより、VCMトルク外乱に無反応化させた場合に、VCM消費電力を低減することが可能となる。つまり、本発明では、待機モード時における電力積低減方法を提案するものであり、当該モード中のサーボ特性について応答性を意図的に落とす(低減させる)ことで、VCMに係る消費電力の大幅な低減が可能である。
【0074】
図5は、サーボ応答制御についての概念的な説明図であり、図の横方向に示す矢印「t」が時間経過の方向を示し、縦方向の矢印が応答性に係る方向を示している(矢印の向きが応答性の高い方向を示す。)。
【0075】
図中に示す各記号の意味は下記の通りである。
【0076】
・「Tidl」=待機モード中の期間
・「Twh」=サーボ制御特性に係る応答性を低下させている制御モード(以下、「電力積低減モード」という。)を示す期間
・「Ta」=「Tidl」から「Twh」への移行期間
・「Tb」=「Twh」から「Tidl」への移行期間。
【0077】
待機モード時に、サーボ制御特性に係る応答性(時定数、応答周波数、サーボパラメータ等)を低下させることにより、トルク外乱に対する感度を低下させて消費電力を低減することができるが、移行期間「Ta」、「Tb」において応答性を変える場合には、図5のように連続的に行う方法には限定されない。
【0078】
つまり、VCMを含むサーボ系について、サーボ制御特性の変更方法(応答性の低下や上昇(回復)の両方を含む。)としては以下の方法が挙げられる。
【0079】
(A)段階的な変更方法
(B)連続的な変更方法
(C)(A)と(B)を併用した方法。
【0080】
先ず、方法(A)は、応答性について、複数の段階に亘って変更する方法であり、例えば、上記移行期間「Ta」では、サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータが段階的に低減され、また、上記移行期間「Tb」では、サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータが段階的に高くなっていくことで、応答性を回復させる。
【0081】
この方法には、最も簡単な2段階での変更が含まれる。即ち、これは、あるタイミングをもって一挙に応答周波数やサーボパラメータを切り替える方法である。尚、「あるタイミング」に関して、そのトリガー要因の如何は問わない。例えば、ユーザー操作に基いてコマンドを発行する方法においては、当該コマンドをHDDが受けた時点から特性が変更される。あるいは、HDDが、予め決められている条件(例えば、一定時間内に、シークや読み書きが行われない場合等。)との照合結果に基づき、自動的に特性変更のタイミングを判断する方法では、該HDD自身のもつ判断機能により、変更タイミングが決定される。
【0082】
切替前後における周波数特性(F特)については、互いの周波数間でスケーリング関係にあることが好ましい。これは、切替の前後で全く相関の無い別々のパラメータを持つのでなく、一方から他方を容易に演算して導出できるようにした方が、特性上も、またパラメータ管理の面やシステム構成上でも便利であって、簡素化に適するからである。
【0083】
尚、ここで、「スケーリング(周波数スケーリング)」とは、制御則の如何に関わりなく、変更前後で各々のサーボ周波数特性(ゲイン及び位相)の形が、周波数に関係なく同じになることを意味する。HDDのVCM制御則としては様々なものが採用されており、例えば、PID(P:比例、I:積分、D:微分)制御、最適制御、オブザーバー(observer)制御、その他(H無限大制御等)、あるいはこれらを組み合わせた制御等が挙げられる。サーボ周波数特性の変更前後での周波数スケーリングは、サーボパラメータ管理上やサーボパラメータ演算上において、大変便利で実際的ではあるが、場合によっては、特性変更の前後で必要に応じて異なる特性(スケーリング関係にない特性)を採用しても構わないことは勿論である。
【0084】
サーボパラメータ等の切替による遷移状態では、VCMについて過渡応答による挙動の変動(所謂、サーボの暴れ)を起こす虞があり、その結果、各種の不都合が発生する虞があるので、そのような場合の対処方法について考慮する必要があるときには、3以上の複数段階に分けてサーボパラメータ等を切り替える方法が有効である。この場合、例えば、ヘッドの位置が許容範囲内に収まるか否かや、切替前後における駆動電流(VCM電流等)の変化を指針として、段階数や各段階の幅、切替時間等を決定することが好ましい。つまり、ヘッド位置の変動は、ヘッドアームと周辺部品との衝突や干渉等を引き起こす原因となり、また、駆動電流の増大は、所期の目的(電力積低減)に反する結果を招くので、これらに注意して切替条件を設定する必要がある。
【0085】
上記方法(B)は、応答性について連続的に変更する方法である。例えば、上記移行期間「Ta」では、サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータが連続的に低減され、また、上記移行期間「Tb」では、サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータの値を連続的に高くしていくことで、応答性を回復させる。
【0086】
この方法では、あるタイミングをもってサーボパラメータ等の値を徐々に変更して別の値に変更していくに際して、これを直線的な変化(一次関数に従う線形変化)として指定する方法と、曲線的な変化として指定する方法が挙げられる。また、電力積低減モードの指定又は該モードへの移行コマンドの発行時等において、予め決められている連続関数に従って応答性を変更する方法と、何らかの入手情報、例えば、サーボ系の状態を関する情報(サーボエラー信号等)を監視しながら、状況に応じて応答性を変更する方法等が挙げられる(この場合に、サーボ系の状態如何によっては、応答性を変更しないという制御も含まれる。)。
【0087】
尚、本方法においても、特性変更時における各瞬間でのサーボパラメータについては、変更開始前のサーボパラメータを周波数軸上でスケ―リング関係にしておくのが便利である。また、応答性に係る変更後におけるヘッド位置の変動や、変更前後における駆動電流の変化を指針として、応答周波数等を変化させることが好ましい。
【0088】
方法(C)については、例えば、状況に応じて方法(A)と(B)とを使い分ける方法と、両方法を時間的な区分に応じて使い分ける方法が挙げられる。例えば、後者の例としては、応答性を下げる場合に方法(A)を用い、応答性を上げる場合に方法(B)を用いる方法、あるいは、応答性を下げる(又は上げる)場合において、ある区間では方法(A)を用い、別の区間では方法(B)を用いる方法等、実情に応じて各種の形態を採用することが可能である。
【0089】
HDDのヘッド制御系については、例えば、シーク速度制御系とトラッキング位置制御系が挙げられ、各種の制御則を採用した構成形態が知られている。
【0090】
近年では、記録媒体の高密度化に伴い、トラックピッチ(Tp)については、0.1μm(ミクロン)を切る勢いである。また、スピンドルモータ軸にディスクを固定した後に、STW(Servo Track Writer)を用いて、サーボフォーマットを書き込む従来の方式から、マスタリング技術や半導体製造技術を用いてサーボフォーマットを刻印したスタンパを作り、射出成形や磁気転写にてメディアを製造する方式(プリエンボス方式)の研究開発が進められている。
【0091】
記録媒体上のサーボフォーマットパターンから見た場合、VCMへの外乱(DTrro)の大きさに係る尺度を表現する用語として、従来のSTW方式を「自己録」と呼び、プリエンボス方式(あるいはPERM方式)を「他己録」と呼んで区別している。尚、他己録の外乱DTrroについては、最大で自己録の凡そ50倍にもなってしまう場合もある。
【0092】
以上の状況も考慮して、VCMの制御では、例えば、以下に示す制御則が検討されて採用されている。
【0093】
(a)PID制御則、DTrro圧縮制御及びフィードフォワード(Feed Forward)制御の組み合わせ
(b)オブザーバー制御則、DTrro圧縮制御及びフィードフォワード制御の組み合わせ
(c)H無限大制御則、DTrro圧縮制御及びフィードフォワード制御の組み合わせ。
【0094】
尚、ここで「DTrro圧縮制御」とは、ノッチフィルタ(Notch Filter)の一種を用いた制御であり、その機能が的確に発揮された場合には、外乱DTrroに対してこれをキャンセルする様にVCMが駆動される。その結果として、ヘッドによる正確なトラッキングが可能となる。但し、これはDTrroに対応する電流をVCMに流すことで実現されるため、消費電力上での負担は重い。
【0095】
本発明は、制御則自体に関するものではなく、また、本発明の適用に関する限りにおいて、制御則の如何を問わないが、以後の説明では、便宜上、(a)の構成形態をとり上げて、VCMに係る電力積低減効果について検討する(尚、これ以外の制御則を採用した場合であっても、以下に示す考え方をそのまま適用できることは勿論である。)。
【0096】
以下では、PID制御則を採用した場合におけるVCMの消費電力について、シミュレーション結果を用いて説明する。尚、図示したシミュレーション結果については、VCMのモデル定数としてある試作VCMを採用したので、結果の絶対値自体にあまり意味は無く、本例を適用した場合における結果との差異(あるいは比率)にのみ意味がある。また、DTrro圧縮制御モデル(Notch Filter法を採用したモデル)まではシミュレーションに含めていないが、このことは、より厳しく評価するためのシミュレーション結果となっている(つまり、DTrro圧縮制御による改善効果はないものとしている。)。
【0097】
先ず、シミュレーションモデルについて図6、図7に従って説明する。尚、図6は、VCM部に係るPID制御系(上記サーボ制御部10に含まれる。)のモデルについてブロック図を示し、図7はVCM部自身のモデルのブロック図を示したものである。これらのモデルではVCMについて電流制御ドライブ方式とされ、VCMモデルの要部については「1/S2」(S:ラプラス変数)と簡略化している。
【0098】
図6に示す構成例において、「Θref」は指令値を示し、これは加算器28に正入力として供給されるとともに、微分器(時間tによる1階の微分要素であり、図には、「d/dt」で示す。)29に供給される。
【0099】
加算器28には、後述するVCM部(38)の出力(Θ)が負入力(逆相入力)として供給され、該加算器の出力は係数「Ki」の乗数器30を介して加算器34への正入力(正相入力)とされる。尚、「加算器」による演算には加算のみならず、減算(負値の加算)を含むものとし、加算の場合には、2入力としてそれぞれに「+」を付すこととし、減算の場合には、一方の入力として「+」、他方の入力として「−」を付すことにより区別することにする(このことは、以下に示す加算器において同じである。)。例えば、加算器28の出力は、「Θref−Θ」である。
【0100】
微分器29の出力は、加算器31の正入力として該加算器に供給される。この加算器には、VCM部(38)の速度出力(「Θ」の上にドット「・」を付して示す。)が負入力として供給される。そして、加算器31の出力については、係数「Kp」の乗数器32を介して加算器34への正入力とされるとともに、係数「Kd」の乗数器33を介して加算器36への正入力とされる。
【0101】
加算器34の出力は、乗数器30、32の各出力の和(算術和)として得られ、後段の積分器(時間による1階の積分要素であり、図には、「1/S」で示す。)35に送られる。そして、積分器35の出力は、加算器36への正入力として該加算器に供給される。
【0102】
加算器36の出力は、所定係数(規格化ゲイン)の乗数器37を経て、VCM部38への入力(Vin)として送られる。
【0103】
尚、「Kp」、「Ki」、「Kd」がPIDパラメータをそれぞれ示し(後述の[数1]乃至[数4]式参照。)、「Kp」が比例制御、「Ki」が積分制御、「Kd」が微分制御に係るそれぞれのパラメータである。
【0104】
図7に示すVCM部38の構成例において、「Vin1」で示す入力については、加算器39に正入力として供給され、該加算器には、係数「Kt」の乗数器40の出力が負入力として供給される。尚、「Kt」は、VCMに係るモータトルク係数に相当する。
【0105】
加算器39の出力(減算結果)は、係数「K」の乗数器41を経て切替部「SW」に送られる。この「K」はVCMのイナーシャ(慣性モーメント)に対応するゲイン(イナーシャの逆数)を示す。
【0106】
「Vin2」で示す入力については、係数「1」の乗数器42を経て切替部「SW」に送られる。
【0107】
切替部「SW」は、乗数器41、42から送られてくる各出力のうち、一方を選択して、係数「Kt」の乗数器43に送る。そして、乗数器43の出力は、加算器44への正入力として供給される。加算器44には、係数「Dm」の乗数器48の出力が負入力として供給されるようになっており、加算器44の出力(減算結果)は、係数「K」の乗数器45に送られる。尚、「Dm」は、VCMに係る軸の粘性係数に相当する(速度に比例して粘性トルクが発生するため。)。
【0108】
乗数器45の出力は、「1/S」で示す積分要素46、47をこの順に経て出力「Θ」となる。つまり、直列接続とされた積分要素46、47が理想的なVCM「1/S2」に相当している。
【0109】
積分要素46と47との間から得られる速度出力(Θの上に「・」を付して示す。)は、係数「Kt」の乗数器40を介して加算器39への負入力して送られるとともに、係数「Dm」の乗数器48を介して加算器44への負入力として送られる。
【0110】
尚、切替部「SW」において選択された信号については、「ImOut」から取り出すことができるので、例えば、図6に示すVCM部の「Vin」として、「Vin2」が接続されている場合には、切替部「SW」で乗数器42の出力を選べば、これをそのまま「ImOut」から取得できる。
【0111】
図6に示したPIDパラメータ(Kp、Ki、Kd)の設計法については、一例として、図8に示すようにS平面上の円周上に3個の極を配する極配置法を採用することにする。
【0112】
本例では、極の1つが実軸(負軸)上にあり、他の2つが極角「φ」をもって実軸に関して対称に配置されている。
【0113】
VCM(モータ部)に関して、「1/S2」に規格化した場合に、PID制御系のオープン特性に係る伝達関数(これを、「Gop(S)」と記す。)は、下式の通りである。
【0114】
【数1】
【0115】
極方程式(あるいは特性方程式)「1+Gop(S)=0」から次式が得られる。
【0116】
【数2】
【0117】
図示のように、S平面上で、半径「F1」の円周上に3個の極を配置した場合、下式のようになる。
【0118】
【数3】
【0119】
尚、ここで、F1(単位:Hz)は、系の時定数に対応する応答周波数を示す。また、「Cφ」は極角φの余弦関数(cosφ)を示す。
【0120】
[数2]式と、[数3]式との比較から、下式を得る。
【0121】
【数4】
【0122】
各係数(Kp、Ki、Kd)は、φを一定とした場合にF1のみの関数である。
【0123】
例えば、F1=1000[Hz]、φ=0[度]を指定した場合には、指数表示で、「Kd=3×10^(+3)、Kp=3×10^(+6)、Ki=10^(+9)」である(「^」は累乗を示す。)。そのボーデ線図を示したものが図9(上方に振幅特性、下方に位相特性を示す。)であり、0dB(デシベル)カットオフ周波数が約500Hz、位相余裕はほぼ60度である。
【0124】
上記の方法を用いて、PIDパラメータを決定してサーボ系を設計する場合において、下記のシミュレーション条件を想定する。
【0125】
・RRO成分(スピンドルモータの回転に伴う同期性の成分)がトラックピッチ(Tp)換算で、該ピッチの100倍、「100・Tp」p−p(Peek to Peek)相当存在すること
・RRO成分については、歪なしの正弦波(sin波)とされ、その周波数はスピンドルモータ回転周波数(Fz=75Hz)に等しいこと。また、モデルのブロック図では等価的にVCMの位置指令として入力すること。
【0126】
・PID制御系の周波数特性(F特)については、F1=1000[Hz]、0dBカットオフ周波数は500[Hz]であり、位相余裕が60[度](図9参照)であること。
【0127】
図10は、PID制御系がこの外乱に対して忠実に追従している状況下(所謂、Justトラッキングの状態)でのVCM電流値(時間的変化)を例示したものであり、この場合、約30[mA]p−pの電流が流れていることが分かる。
【0128】
前記したように、本発明のHDDへの適用においては、待機モード時に、サーボ制御系のF特を低減して、RRO外乱とNRRO外乱両方に対してVCMの応答感度を低減することで、該モード時に流れるVCM電流を小さくし、VCMの消費電力を低減するものである。
【0129】
そのための方法として、例えば、前記した方法(A)に属する、下記の(A1)、(A2)と、前記した方法(B)が挙げられる。
【0130】
(A1)制御F特(F1)を、所定のタイミングで一挙に「F1/n」(但し、n>1) に切り替える形態(図11参照)
(A2)VCMの過渡応答を考慮して、制御F特(F1)を、多段階に亘って切り替える形態(図12参照)
(B)(A2)の多段階切替を究極化し、制御F特(F1)を無段階、つまり連続的に変更する形態(図13参照)。
【0131】
尚、図11乃至図13において、矢印「t」が時間経過方向を示し、「f1」は、t=t1の時点におけるF1の値を示し、「f2」は、t=t2の時点におけるF1の値を示している。また、F1値変更による応答性の回復の場合には、矢印「t」の向きを反転させ、t1とt2との置換及びf1とf2とを置換を行えば良い。
【0132】
上記(A1)、(A2)は、CPUの処理負担の軽減という観点から好ましい方法であり、特に、(A1)は、最も容易で簡便な方法である。また、(A2)については、(A1)との比較において、VCMに与える衝撃等を少なくすることができる(反面、段階数や切替間隔を決定するための、実験等が必要となり、管理すべきパラメータ数が増える。)。
【0133】
上記(B)は、CPUに関する演算時間への負担が許容範囲内である場合には、理想的な方法であり、過渡応答に係る変動が少なく、また、必要ならばF1の変更時間について調整することが可能である。
【0134】
尚、各形態において、変更前のf1からf2(<f1)へと値を変更する場合には、f2値が小さい程、電力積の低減効果がより得られることは明らかであるが、その最小値(下限)について考慮する必要がある。つまり、f2値が小さくなると、制御系はRRO外乱やNRRO外乱を抑えられなくなりヘッド位置が大きく振れてしまう虞がある。そして、この振れ(変動)については、NRRO外乱の大きさにほぼ比例しその周波数成分に依存すると考えられるので、正確にこの振れを知る為には、NRRO成分を正確に把握する必要がある。また、現実問題として、HDDが携帯機器等に搭載された場合、人の歩行等で発生する人的外乱(DTmb)が最も大きな値を示すと考えられるので、この場合には、携帯機器の動作環境を良く調査してデータを収集するとともに、該データに基いてf2値を決める必要がある。一般的には、ディスク最外周と最内周での位置偏差(VCMの暴れ)の如何によっては、アームの衝突等、VCMの障害を起こす可能性があることを考慮して、電力積低減モードの開始時点における半径値(ディスク半径方向におけるヘッド位置)に応じてf2値を変更する等の対策を講じることが望ましい。
【0135】
また、方法(B)あるいは(A2)では、変更時間「t2−t1」の設定にも注意する必要がある。つまり、「t2−t1」が短い程、過渡応答に係る変動の度合いが大きくなり、逆に、「t2−t1」が長い程、過渡応答に係る変動の度合いが緩やかとなる傾向を示す。従って、「t2−t1」を過度に長くすると、電力積低減モードから待機モードへの復帰に要する時間(復帰時間)がかかり過ぎるといった不都合が起き得る。また、復帰時間はHDD(携帯機器搭載用HDD等)のアクセス時間にも直接的な影響を及ぼすので、ユーザーが許容できる待ち時間よりも短くする必要がある。尚、ここにいうアクセス時間の長さについては、その用途や目的からして、高速性を要求されるHDD(PC用HDD等)のアクセス時間と比較した場合に、これよりは、かなり長めの時間で構わない。
【0136】
上記したいずれの形態でも制御系の安定は必要条件であるので、ここではF1の変更前後において周波数軸に関してスケーリング変換した特性を持たせる方法を採用する。つまり、ボーデ線図の形はゲイン及び位相共に、変更前後で全く同じであって周波数のみの大小が変化する様に変更することとする。具体的には、[数4]式において極角φの値を固定したままでF1値のみを連続的に変更することで実現される。尚、以下では、周波数軸に関してスケーリング変換でのみ対応する方式に限定して検討するが、必要に応じてF1と極角φを自由に変更する方式を採用しても構わないことは勿論である。
【0137】
図14はシミュレーションに用いたブロック図を示す。
【0138】
PID制御構造に関する部分については、図6に示した通りである(よって、図6の各部と同じ部分については当該部分に付した符号と同じ符号を付すことにより説明を省略する。)ので、主に相違点や追加部分等について説明する。
【0139】
「REF」は、アーム変位に関する指令(入力)ノードを示しており、定係数の乗数器(アンプ)49を介することで、位置変位から角度変位に変換された上で、設定部(あるいは指令値設定ノード)50に送られる。
【0140】
設定部50は、Θref及びその速度指令(図には、「Θref」における「Θ」の上にドット「・」を付して示す。)を、各部(加算器28、30等)に送出する。尚、速度指令は、Θrefの時間微分である(よって、前記した微分器29は、設定部50に含まれている。)。
【0141】
特性制御手段51は、サーボ制御特性に係る応答性に関して、時定数、応答周波数、サーボパラメータ等を変更するために設けられている(実際の制御では、ソフトウェア処理としてCPUの計算により実現される。)。本例では、F1値の変更によって、PIDパラメータ(Kp、Ki、Kd)を変更するとともに、該パラメータに係る時間的変化の形態について変更することにより、サーボ制御特性を制御する手段である。即ち、電力積低減モード時において、サーボ制御特性に係る応答性を低下させることにより、トルク外乱に対する感度を低下させる。
【0142】
特性制御手段51の支配下で変更されるPIDパラメータについては、係数「Ki」の値を示す信号が乗算器(あるいは掛算器)52に送られる。そして、「Kp」の値を示す信号が乗算器53に送られ、「Kd」の値を示す信号が乗算器54に送られる。
【0143】
つまり、乗算器52では、加算器28の出力に対して、係数「Ki」の掛け算が行われ、演算結果が加算器34に送られる(図6において、乗数器30の係数「Ki」の値が変化すると考えれば良い。)。
【0144】
同様に、乗算器53では、加算器31の出力に対して、係数「Kp」の掛け算が行われ、演算結果が加算器34に送られる(図6において、乗数器32の係数「Kp」の値が変化すると考えれば良い。)。また、乗算器54では、加算器31の出力に対して、係数「Kd」の掛け算が行われ、演算結果が加算器36に送られる(図6において、乗数器33の係数「Kd」の値が変化すると考えれば良い。)。
【0145】
乗数器37の出力は、切替部55、リミッタ56を介してVCM部38に送られる。尚、切替部55において、「▲1▼in」で示す入力端子が選択された状態において外乱が供給され、乗数器37の出力端子が選択された状態において、該乗数器の出力がリミッタ56を介してVCM部38に送られる。そして、「▲1▼out」で示す出力端子から一巡伝達関数に係る出力が取得される。また、リミッタ56は、モータ電流の最大値及び最小値を規定することで許容範囲(あるいは振幅)について制限するために設けられている。
【0146】
VCM部38の出力Θは、モニター部57に送られて表示される。尚、モニター部57には、設定部50からのΘrefも入力されるので、ΘrefとΘとを比較しながら観測することができる。また、VCM部38の速度出力(「Θ」の上に「・」を付して示す。)は、モニター部58に送られて表示され、該モニター部には、設定部50からの速度指令も入力されるので、両者を比較しながら観測することができる。VCM部38の出力「ImOut」は、アンプを含むモニター部59で表示される。
【0147】
この他、加算器28の出力(「pes」で示すポジションエラー信号)は、アンプを含むモニター部60で表示される。
【0148】
尚、「フィードフォワード制御」を考慮する場合には、例えば、Θrefに所定の係数値を掛けて、乗数器37の出力に加算したものを切替部55、リミッタ56を経てVCM部38に送出すれば良い。
【0149】
[数4]式に示したように、サーボ制御特性に係る応答周波数F1の値を変更すると、PIDパラメータの値が変化し、F1値を小さくすれば、トルク外乱に対するサーボ系の応答感度が低くなる。例えば、上記方法(A1)の場合は、F1の値を、f1からf2へと瞬時に変更している。
【0150】
図15及び図16は、上記方法(A1)を採用した場合のシミュレーション結果を示すものである。
【0151】
各パラメータの設定については以下の通りである。
【0152】
(i)待機(Idling)モード時、f1=1000[Hz]
F1はトラッキング能力を決定する重要なパラメータであるため、変更前の値(f1)は可能な限り大きいことが望ましい。
【0153】
(ii)電力積低減モードへの変更後のF1値、つまり、f2=f1/100=10[Hz]
f2値については、VCMの動作上支障が無い範囲において極力小さい値とする(本例では、n=100としている。)。
【0154】
(iii)待機モード時及び電力積低減モード時の極角φ=0[度]
この値については、待機モード時(電力積低減モードでない場合)における、トラッキング性能を可能な限り引き出せる値に設定する。つまり、VCM特性、ヘッドアームを含む機構要素の特性等を、総合的に判断してφ値を決定しなければならないが、ここでは位相余裕を十分に確保することのできる値として、0度とする。
【0155】
(iv)F1の変更時刻「t1=1[sec] 」
(v)外乱DTrroについては、歪なしの正弦波(sin関数で表される)とし、その周波数「Frro」はスピンドルモータ回転周波数(Fz)と等しく、「Frro=Fz=75[Hz]」とする。
(vi)外乱DTrroの大きさは、トラックピッチ(Tp)の100倍(p−p値)とし、Tp=0.5[μm]として、50[μm]p−pとする。
【0156】
(vii)アーム長は、4.85[mm]とする。
【0157】
図15は、切替前後におけるVCM位置偏差(ヘッドの位置偏差に相当する。)の時間的変化について一例を示すものである(モニター部60で観測される。)。
【0158】
t=t1の時点迄は、位置偏差が約20[μm]p−pであったものが、切替直後の過渡応答で730μmにも達している。
【0159】
尚、本例では、見易いように、位置偏差の大きい場合を示しているが、この値が大きすぎて問題となる場合には、切替後のf2値を、もう少し大きい値に変更すれば良い。
【0160】
図16は、切替前後のVCM電流について、時間的変化の一例を示すものである(モニター部59で観測される。)。
【0161】
切替前には、60[mA]p−p程度、流れていたVCM電流が、切替直後から6[mA]p−pとなり、約10分の1に低減していることが分かる。
【0162】
また、このシミュレーション結果において、電流の過渡応答は殆ど見られない。
【0163】
以上のシミュレーション結果より、応答周波数F1についての切替前後における各ノード(VCM電流や、VCM位置偏差等)の過渡応答がシステムにとって問題とならない範囲に収まっている場合には、方法(A1)は簡便であって、かなり有効である。
【0164】
勿論、(A1)の採用において、もしも何らかの問題がある場合には、切替前後のPID制御系の周波数特性変化量(|f1−f2|)を、より小さい値に設定したり、あるいは方法(A2)に示す多段階切替方式を採用することで対応が可能である。
【0165】
次に、方法(B)について説明する。
【0166】
周波数特性に係るF1値の変更方法については各種考えられるが、ここでは時間tの一次関数(これを「F1(t)」と記す。)に従って変更する方式を示す。尚、F1(t)の形として一次関数以外の各種関数形「F1(t,t1,t2,f1,f2)」を用いることも勿論可能であるが、分かり易さを考慮して、以下では、下式に示す一次関数F1(t)を用いることにする。
【0167】
【数5】
【0168】
尚、本式は変更開始時刻「t=t1」での周波数が「f1」であって、変更終了時刻「t=t2」での周波数が「f2」である場合を示しており、「f1>f2」が、周波数を小さくする場合(電力積低減モード時)を表すが、これとは逆に、「f1<f2」は、周波数を大きくする場合(待機モードへの回復)を表す(つまり、上式は両方の場合を包含する表現である。よって、以下では、f1とf2との大小関係に関わらず、f1が変更前の値、f2が変更後の値を示すものと定義する。)。
【0169】
各パラメータの設定について、以下に示す(iv’)以外は、上記(i)乃至(iii)、(v)乃至(vii)と同じである。
【0170】
(iv’)F1値の変更開始時刻は、「t1=0.5[sec]」であり、F1値の変更終了時刻は、「t2=t1+0.5=1[sec]」である。
【0171】
F1値を連続的に変更する場合において、シミュレーションに用いるブロック図については、図14に示す特性制御手段51において、[数4]式及び[数5]式に従って変化するPIDパラメータが、対応する乗算器52、53、54にそれぞれ供給される(それ以外の事項は、既述した通りである。)。
【0172】
図17乃至図19は、上記方法(B)を採用した場合のシミュレーション結果を示すものである。
【0173】
図17は、F1(t)の時間的変化を示しており、t=0.5からt=1にかけてF1の値が100分の1に低減される様子を示す。
【0174】
図18は、変更前後におけるVCM位置偏差の時間的変化について一例を示すものである。
【0175】
t1=0.5の時点迄の、待機モードにおける位置偏差は、約5μmであり、変更直後(t2=1)において、それ程大きな過渡応答は見られない。また、変更後の位置偏差は最大で250μm程度とされる。
【0176】
尚、本例では、見易いように、位置偏差の大きい場合を示しているが、F1値変更後の偏差に関して、これがシステム上問題であるならば、f2値をもっと大きい値にすれば良い(あるいは、これとは逆に、システム上許容されるのであれば、f2値をもっと小さい値にすることも可能である。)。また、移行時間(あるいは変更時間)を示す、「t2−t1」の長さを変更することにより、詳細な調整を行うことが可能である。即ち、周波数の比率又は変更時間(移行時間)の一方、あるいは両者について調整を行えるという利点がある。
【0177】
図19は、変更前後におけるVCM電流について時間的変化の一例を示すものである。
【0178】
F1値の変更前には、66[mA]p−p流れていた電流が変更直後から2[mA]p−pとなり、約33分の1に低減していることが分る。
【0179】
また、本方式での電流の過渡応答についても、上記(A1)の場合と同様に小さい。
【0180】
システム上許容される範囲内において、可能であればf2値をさらに小さくして、VCM電流を低減しても良い。
【0181】
以上のシミュレーション結果より、PID制御での周波数特性(F特)を落とすことでVCM電流を、数十分の1程度も低減できることが分る。
【0182】
尚、ここでは、RRO外乱に対する電力低減効果について検討したが、現実にはNRRO成分(スピンドルモータの回転に対する非同期性成分)についても同様の電力低減効果が得られるので、電力積低減モードにおいて、さらに省電力化を実現することが可能である。
【0183】
以上の例では、待機モードにおけるサーボ系の周波数特性(F特:F1)に関して、電力積低減モードへと移行する際に、F1値を下げる方法につき説明したが、待機モードへの回復において応答性を元に戻したり、又は、R/Wモードへの遷移が必要になった場合には、F1値を上げる必要が生じる。
【0184】
図20乃至図22は、そのような状況について、上記方法(B)を採用した場合のシミュレーション結果を例示したものである。
【0185】
図20は、F1の値について、その変更前後及び変更中の値を示す図である。
【0186】
図示のよう、f1=10[Hz]からf2=1000[Hz]に向かって直線的に増加していることが分かる。尚、図示は省略するが、応答周波数の変化に伴って、PIDパラメータも増加して所定値(f2に対応する値であり、[数4]式でF1=f2としたときの値。)に到達する。
【0187】
図21は、F1値の変更前後におけるVCM位置偏差について一例を示したものである。
【0188】
t1=2の時点迄は位置偏差が、約130μmであり、変更直後で大きな過渡応答は見られず、5μm程度となっている。
【0189】
図22は、F1値の変更前後におけるVCM電流について一例を示したものである。
【0190】
変更前には、3[mA]p−p程度流れていた電流が、変更後からやや時間が経つとほぼ66[mA]p−pとなり、約20倍に増加していることが分かる。また、電流値の過渡応答についても小さい。
【0191】
次に、電力積低減モードに関する計算処理とタイミングについて説明する。
【0192】
既述した様に、他己録メデイアを採用するHDDでは、RRO成分が大きいので高精度のトラッキングを実現する為には、RRO成分に対応するスピンドルモータの一回転分のパターン(1周期分の検出パターン)をメモリに記憶させておき、この記憶されたパターンを用いて、RRO成分を打ち消す制御方法(所謂Notch Filter法)の採用が好ましい。
【0193】
RRO成分をキャンセルする上記パターンの記録法としては、例えば、下記に示す方法がある。
【0194】
・パターン記録モードを別途に用意して、キャンセル用のパターンを1回だけ記録させる静的(スタティック)な方法(例えば、スタート・アップ直後にパターンの記録を実行してしまう方法等。)
・待機モードや、R/Wモード時には、常に上記パターンに対応したデータを更新して記録する動的(ダイナミック)な方法。
【0195】
いずれの方法であっても、ディスクトラック上のセクタ番号(以下、「SEC_No」と記す。)をインデックス(指標)としてRRO成分に対応するパターンがメモリに記憶される。
【0196】
但し、電力積低減モード時には、上記パターンに対応するデータが正確に得られなくなることに注意する必要がある。つまり、ノッチフィルタを用いたDTrro圧縮制御については、本モードの開始と共に機能を停止する必要がある。従って、待機モードにおける電力積低減モードへの移行時や、該モードから別モードへの移行時において、移行の開始や終了のタイミングと、ノッチフィルタのオン動作/オフ動作(あるいは機能回復/機能停止)のタイミングとの間で同期を取ることが必要である。そのためにはセクタ番号(ここではトラック毎に、同一トラック上での起点となるセクタを、セクタ番号「0」のセクタとして定義し、該セクタをトリガセクタとする。)でトリガするのが良い。
【0197】
具体的には、サーボ制御処理への割り込みトリガについても、セクタ検出信号から生成されることを利用して同期取りを行うことができる。
【0198】
図23乃至図26は、電力積低減モードへの移行や、該モードの終了についてシーケンス例を示したものであり、ホスト装置、HDD制御系、PID制御系(図6、図7参照)の三者間での信号や情報の流れを概略的に示したものである。尚、HDD制御系(PID制御系を除く。)については、待機モード時での処理とし、また、PID制御系については割り込み処理とする。また、「On動作」とは電力積低減モードへの移行時の動作を示し、「Off動作」とは電力積低減モードの終了時の動作を示す。
【0199】
HDDにおいて、電力積低減モードへの移行又は待機モードへの復帰を開始するためのトリガ方法については、下記の2種類が挙げられる。
【0200】
・ユーザーがホスト装置を経由してコマンドを発行する方法
・HDD自身が状態をチェックして自動的にモード遷移を行う方法。
【0201】
つまり、電力積低減モードからの復帰時に、アクセス時間を極力短くしたい場合等では、コマンドをユーザーが発行する方法が好ましい。
【0202】
また、HDD制御系において、ホスト装置からVCM部へのシークモードやR/Wモードへの遷移コマンド等を常に監視していて、予め決められている時間内に、これらのコマンドがホスト装置からHDDに送られて来ない場合に、HDD自らが判断して、電力積低減モードに入るように構成すると、ユーザーの操作手間を省くことができる。そして、待機モードへの復帰時間及び別モードへの遷移に要する時間を短くすることができる(結果として、ユーザーの待ち時間を短くすることが可能となる。)。
【0203】
図23は、上記の方法(A1)又は方法(A2)を採用する場合における、シーケンス例を示す。
【0204】
先ず、「On動作」の場合には、ホスト装置からHDD制御系に対して電力積低減モードの開始コマンドが発行され、これを受けてHDD制御系では、電力積低減モードの開始を示すフラグ(以下、これを「STT_Flg」と記す。)をオン(あるいはセット)とする。PID制御系では、「SEC_No==0」(「==」は等値の比較演算子を意味する。)をガード条件として、該条件が成立する場合に、PIDパラメータ(Kp、Ki、Kd)を段階的(2段階以上)に変更するとともに、ノッチフィルタをオフにする(機能停止)。尚、ここで、「ガード条件」とは、「A ならば B」において、「B」に進むための条件「A」を意味し、例えば、『「X>0」ならば「Y=1」とする』の場合に、条件「X>0」を示す。
【0205】
PID制御系での演算結果が、VCM部38に出力された後、該制御系からHDD制御系に対する信号により、電力積低減モードの停止を示すフラグ(以下、これを「STP_Flg」と記す。)がオフ(あるいはリセット)とされ、ホスト装置には、電力積低減モードが開始されたことを示す連絡がステータス情報等によって行われる。
【0206】
「Off動作」の場合には、ホスト装置からHDD制御系に対して電力積低減モードの停止コマンドが発行され、これを受けてHDD制御系では、電力積低減モードの停止を示すフラグSTP_Flgをオン(あるいはセット)とする。PID制御系では、「SEC_No==0」をガード条件として、該条件が成立する場合に、PIDパラメータ(Kp、Ki、Kd)を段階的に変更する(所定値又は電力積低減モードへの移行前の値への復帰)とともに、ノッチフィルタをオンにする(機能回復)。
【0207】
PID制御系での演算結果が、VCM部38に出力された後、該制御系からHDD制御系に対する信号により、STT_Flgがオフ(あるいはリセット)とされ、ホスト装置には、電力積低減モードが停止されたことを示す連絡がステータス情報等によって行われる。
【0208】
図24及び図25は、上記の方法(B)を採用する場合における、シーケンス例を示す。
【0209】
先ず、図24に示す「On動作」の場合には、ホスト装置からHDD制御系に対して電力積低減モードの開始コマンドが発行され、これを受けてHDD制御系では、STT_Flgをオン(あるいはセット)とする。そして、時間tの起点(t=0)が決定される。
【0210】
PID制御系では、「SEC_No==0 && STT_Flg==On」をガード条件として、該条件が成立する場合(「&&」は論理積演算を示す。)に、下記の処理を行う。
【0211】
(a)「t++」(時刻のインクリメント)
(b)F1(t)の計算([数5]式参照)
(c)PIDパラメータの計算([数4]式参照)
(d)ノッチフィルタのオフ(機能停止)。
【0212】
尚、時間「t」については、サーボサンプリングタイム「Ts」を単位時間とする離散時間処理系を採用し、「t2−t1=n・Ts」(nは自然数を示す。)に同期化している。
【0213】
その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。
【0214】
次のガード条件は、「t>0 && t<t2 && STT_Flg==On」であり、該条件の成立時に行われる処理は上記(a)、(b)、(c)とされ、その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。
【0215】
次に来るガード条件は、「SEC_No==0 && t==t2 && STT_Flg==On」であり、該条件の成立時に行われる処理は上記(b)、(c)とされ、その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。
【0216】
それから、PID制御系からHDD制御系への信号により、STP_Flgがオフ(あるいはリセット)とされ、ホスト装置には、電力積低減モードが開始されたことを示す連絡がステータス情報等によって行われる。
【0217】
図25に示す「Off動作」の場合には、ホスト装置からHDD制御系に対して電力積低減モードの停止コマンドが発行され、これを受けてHDD制御系では、STP_Flgをオン(あるいはセット)とする。そして、時間tの起点(t=0)が決定される。
【0218】
PID制御系では、「SEC_No==0 && STP_Flg==On」をガード条件として、該条件が成立する場合に、上記(a)、(b)、(c)の処理が行われ、その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。
【0219】
次のガード条件は、「t>0 && t<t2 && STP_Flg==On」であり、該条件の成立時に行われる処理は上記(a)、(b)、(c)とされ(但し、この場合には、F1値を経過時間とともに上げる処理を行う。)、その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。
【0220】
次に来るガード条件は、「SEC_No==0 && t==t2 && STP_Flg==On」であり、該条件の成立時に行われる処理は上記(b)、(c)の他に、下記に示す(e)である。
【0221】
(e)ノッチフィルタのオン(機能回復)。
【0222】
その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力され、PID制御系からHDD制御系に対する信号により、STT_Flgがオフ(あるいはリセット)とされ、ホスト装置には、電力積低減モードが停止(あるいは終了)されたことを示す連絡がステータス情報等によって行われる。
【0223】
本例のように、[数4]式及び[数5]式の計算処理については、PID制御系の演算処理が行われる割り込み処理の中で行うのが好ましい。こうすれば、F1値等の変更時間「t1−t2」の制御を精度良くリアルタイム処理に従って実現することができるとともに、PIDパラメータ(Kp,Ki,Kd)について各々の同期を確保することができる。
【0224】
しかしながら、PID制御系に係る演算処理用CPUについて充分な処理速度や処理時間が得られない場合、例えば、処理時間に課された条件が厳しい場合には、HDD制御系における待機モード時のループ処理内で、[数4]式と[数5]式を用いてF1やPIDパタメータの値を計算し、その結果をバッファ(KdBuf,KiBuf,KpBuf)に先ず格納しておく。そして、3個のPIDパラメータ全てについての計算が終わったら、これをPID制御系の割り込み処理に伝え(フラグ等を用いる。)、割り込み処理の中で一挙に、バッファの格納値をPID変数(Kp,Ki,Kd)に複写(copy)する方法を採用すれば良い。
【0225】
図26は、この方式に従う処理シーケンスを例示したものである(On動作の場合だけを示す。)。
【0226】
ホスト装置からHDD制御系に対して電力積低減モードの開始コマンドが発行され、これを受けてHDD制御系では、下記に示す処理を行う。
【0227】
(f)「t=t1」及び「CAL_Flg=0」(但し、「=」は代入演算子を示す。)
(b)F1(t)の計算([数5]式参照)
(c)PIDパラメータの計算([数4]式参照)
(g)(c)の計算結果についてバッファへの格納
尚、(f)では、t1のセットが行われ、また、(b)、(c)、(g)の計算終了を示すフラグ「CAL_Flg」には「0」がセット(リセット)される(計算未終了を意味する。)。
【0228】
そして、STT_Flgをオン(あるいはセット)とし、上記計算の終了によりCAL_Flgが「1」にセットされて、PID制御系に通知される。
【0229】
PID制御系では、「SEC_No==0 && CAL_Flg==1」をガード条件として、該条件が成立する場合に、下記の処理を行う。
【0230】
(h)バッファ格納値のPIDパラメータへのコピー
(d)ノッチフィルタのオフ(機能停止)。
【0231】
尚、(h)では、Kp、Ki、Kdに対応する各バッファをKpBuf、KiBuf、KdBufと記すとき、KpBufからKpへ、KiBufからKiへ、KdBufからKdへの数値データの代入がそれぞれ行われる。
【0232】
その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力され、CAL_FlgがゼロにリセットされてHDD制御系に通知される。
【0233】
次に行う処理は、上記(a)、(b)、(c)、(g)である。
【0234】
そして、上記(b)、(c)の計算終了によりCAL_Flgが「1」にセットされて、PID制御系に通知される。
【0235】
次のガード条件は、「t<t2 && CAL_Flg==1」であり、該条件の成立時に行われる処理は、上記(h)とされ、その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。そして、CAL_FlgがゼロにリセットされてHDD制御系に通知される。
【0236】
次に行う処理は、上記(a)、(b)、(c)、(g)である。
【0237】
そして、上記(b)、(c)の計算終了によりCAL_Flgが「1」にセットされて、PID制御系に通知される。
【0238】
次のガード条件は、「SEC_No==0 && t==t2 && CAL_Flg==1」であり、該条件の成立時に行われる処理は、上記(h)とされ、その後、PID演算の結果が、VCM部38に出力される。そして、CAL_FlgがゼロにリセットされてHDD制御系に通知される。
【0239】
STP_Flgのリセットにより、ホスト装置には、電力積低減モードが開始されたことを示す連絡がステータス情報等によって行われる。
【0240】
尚、Off動作については、フラグ(STT_Flg、STP_FLg)の設定等の違いを除いて基本的な手順は同様である(従って、図示及び説明を省略する。)。
【0241】
次に、データの読み出しや書き込みを開始するまでの待ち時間について、これを少しでも短くするための工夫として、計算処理の開始及び終了のタイミングについて説明する。
【0242】
先ず、上記方法(A1)又は(A2)を採用する場合には、HDDがホスト装置からVCMに係る電力積低減モードの開始コマンドを受け取って、対象トラックにおける最初のセクタ番号0を検出した時点での割り込みの中で応答周波数F1の値を段階的に切り替える。切替後におけるPIDパラメータ値は事前に知られているので、[数4]式や[数5]式のような計算を、割り込み処理の中で行う必要はない。また、RRO用ノッチフィルタのオン動作/オフ動作についても同じタイミングをもって切り替えることで両者の同期を取ることができる(図23には、このタイミング処理についても示してある。)。
【0243】
方法(B)を採用する場合の電力積低減モードの開始や終了のタイミング(割り込み処理内)については、HDDがホスト装置から電力積低減モードへの開始コマンドを受け取って、対象トラックにおける最初のセクタ番号0を検出した時点での割り込みの中で、上記[数4]式、[数5]式を用いてPIDパラメータ(Kp,Ki,Kd)の値について、各々の計算を開始すると共に、ノッチフィルタをオフ動作とする(機能停止)。
【0244】
一方、電力積低減モードの終了時点(待機モードへと復帰する時)の後、応答周波数F1がf2に達した直後(この場合には、「f1<f2」である。)に、最初のセクタ番号0を検出した時点での割り込み処理中でノッチフィルタをオン動作とする。
【0245】
ノッチフィルタのオン動作や、待機モードへの回復のタイミングをできるだけ早くするための工夫としては、電力積低減モードの終了時点(t=t2)でちょうどヘッド位置がセクタ番号0を読めるように遷移時間を「t2−t1=n・Ts」(「Ts」はサーボサンプリングタイムを示す、「n」は正整数を示す。)のように同期化しておくことが好ましい。これは、スピンドルモータの回転待ち時間をゼロにして、HDDのアクセス時間を少なくする為である。
【0246】
この意味では、セクタ番号0のタイミングで同期するのでは無く、HDDのアクセス時間が最小となるセクタ番号kで同期とった方が良い場合も勿論考えられる。
【0247】
尚、図26に示す例においても、基本的には、割り込み内での処理と同様、できる限りセクタ番号0と同期を取ることが好ましい。しかし、待機モード時のループ処理内での他の処理に時間をとられる場合や、CPUの処理時間に余裕のない場合には、完全な同期取りが難しくなる。
【0248】
そこで、補助的な手段ではあるが、VCMに係る電力積低減モードの終了時点、つまり、「t=t2」の時点が、ちょうどセクタ番号0の一つ(あるいは二つ)手前に相当する時点となるように、遷移時間「t2−t1=(n−1)・Ts」又は「t2−t1=(n−2)・Ts」(「Ts」はサーボサンプリングタイムを示し、「n」は自然数を示す。)と同期化しておく方法が挙げられる。こうすれば、セクタ番号0のタイミングにて、ノッチフィルタとの間で同期化が可能となる。
【0249】
以上、各方法における制御シーケンスについて説明したが、例えば、バッテリ駆動式の携帯機器等では、バッテリ寿命(残量)を左右する電力積が重要な指標であり、電力積をどれくらい低減できるかが問題となる。
【0250】
VCMの消費電力を「Wvcm」とし、VCMの電流値を「Ivcm」、印可電圧を「Vvcm」と記すとき、下式が成り立つ。
【0251】
【数6】
【0252】
今、待機モード及びR/Wモードの継続時間(各モードの時間和)を「Tall」と記し、これに対応する電力積を「WHvcm」とすると、これは下式で定義される。
【0253】
【数7】
【0254】
尚、本式から分かるように、WHvcmがTallに比例するので、この値がある程度大きくなった時点で、バッテリ切れとなる。
【0255】
前記した電力積低減モードを導入するとともに、待機モード及びR/Wモードの継続時間から、電力積低減モードの継続時間を除いた期間長を、Tallのα倍(0<α<1)とする。そして、電力積低減モード時におけるVCM電流が、Ivcmのβ倍(0<β≦1)であるとき、[数7]式を基準としたVCMに係る電力積の比率を「γ」と記すと、下式が得られる。
【0256】
【数8】
【0257】
例えば、電力積低減モードとされる期間長が、Tallの75%を占めるものとし(α=0.25)、電力積低減モードでのVCM電流の低減率が3%(β=0.03)である場合には、γ=0.2725となる(つまり、72.75%もの電力積削減が可能である。)。
【0258】
最後に、HDDにおける、特定のモードから待機モードに移行して、電力積低減モードに入るべきであるのか、又は、特定モード又は待機モードから退避モードに入るべきであるかの判断基準について説明する。
【0259】
先ず、待機モードに遷移する必要性が長時間に亘って無いことが、所定の情報(ユーザー操作等により退避モードへの移行コマンドを発行する場合を含む。)や設定条件等から明らかな場合には、電力積低減モードには入らずに、退避モードに入ってしまう方がVCMの電力消費の観点からは最も有利である。しかしながら、この場合、退避モードから待機モードに戻る際には、HDDの開始動作(Start Up)と殆ど同じで、データの読み出し又は書き込み動作が可能となるまでに時間がかかる。
【0260】
また、退避モードへの移行を許可するに足る情報が得られない場合や、当該モードに移行しても良いと判断しかねる場合には、待機モードから電力積低減モードに入る方が好ましい。即ち、電力積低減モードの終了により、元の待機モードへと比較的短時間で復帰することが可能であるため、待ち時間が短くて済む。 そして、ホスト装置側での工夫として、電力積低減モードから待機モードへの移行コマンド(ホスト装置が発行する)については、他のコマンドに優先して発行することが有効である。また、HDD側での工夫としては前述した様に、「t2−t1=n・Ts」として同期をとり、スピンドルモータの回転待ち時間を極力減らすことが好ましい。
【0261】
尚、PID制御系の電流指令ノードに対してリミッタ(図14参照)で制限する方法、つまり、VCM部への電流指令ノードにリミッタを設けるだけでも、VCMの電流(や電力)を低減することが、ある程度は可能である。しかしながら、この方法では、VCMが制御不能の状態に陥った結果として、VCMに係る位置が大きく変動した場合(所謂非線形発振を起こした場合)、実用上の問題があるので、リミッタを用いた場合でも、本発明に係る制御方法を採用することが好ましい。
【0262】
しかして、以上に説明した構成によれば、例えば、下記に示す利点が得られる。
【0263】
・携帯機器に搭載されるHDDや、高速アクセス性よりも省電力化が重視される機器等に搭載されるHDDにおいて、VCMの電力積を低減し、バッテリの寿命を延ばすことが可能である。
【0264】
・上記の方法(A2)、(B)では、VCMの電力積低減モードへの切替時間を制御することが可能であり、過渡応答量について制御することができる。
【0265】
・HDDの動作モードとして、最も運転時間が長い待機(Idling)モード時において、消費電力の低減が可能であるので、効果的である。
【0266】
・電力積低減モードの採用により、HDDの温度上昇を、ある程度抑えることができる。
【0267】
・HDDでは、該HDDが本質的に抱えるRRO外乱に対して、ノッチフィルタ等を用いた外乱圧縮制御系を有するが、該制御系との間で干渉を起こさず(つまり、電力積低減モード時に、外乱圧縮制御系の機能を一時的に停止させることに依る。)に電力積の低減が可能である。
【0268】
【発明の効果】
以上に記載したところから明らかなように、請求項1や請求項6に係る発明によれば、一時待機用の動作モードにおいて、トルク外乱に対する感度を低下させて消費電力を低減することができる。そして、該動作モードでは、シーク後のヘッド位置を維持したままの状態であり、動作復帰を短時間に行うことができるので、退避モードからの復帰に比してアクセス時間の増加を防止することができる。
【0269】
請求項2に係る発明によれば、一時待機用の動作モードにおいてサーボ制御特性に係る応答周波数を低減することによって、制御構造の複雑化等を伴わずに制御を行うことができる。
【0270】
請求項3や請求項7に係る発明によれば、応答性についての段階的な変更により、計算処理上の負担を軽減することができる。
【0271】
請求項4や請求項8に係る発明によれば、応答性についての連続的な変更によって、円滑な特性制御を行えるので、過渡応答性の悪化等を防ぐことができる。
【0272】
請求項5に係る発明によれば、バッテリ駆動の携帯型機器への適用において、バッテリの消耗を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスク情報処理装置の基本構成例を示す説明図である。
【図2】装置構成の一例を示す図である。
【図3】FATファイルシステムの説明図である。
【図4】モード間の遷移図である。
【図5】サーボ応答制御についての概念的な説明図である。
【図6】図7とともに、サーボ制御系の構成例を示すブロック図であり、本図はPID制御構造をもった例を示す。
【図7】VCM部の構成例を示す図である。
【図8】S平面上での極配置例を示す図である。
【図9】ボーデ線図の一例を示す。
【図10】VCM電流値の時間的変化を例示した図である。
【図11】図12、図13とともに、F1値の変更方法について説明するための図であり、本図は2段階の変更方法を示す。
【図12】多段階のF1値変更方法を示す図である。
【図13】連続的なF1値変更方法を示す図である。
【図14】シミュレーションに用いた制御構成例を示すブロック図である。
【図15】図16とともに、段階的なF1値の変更に関するシミュレーション結果を示すものであり、本図は位置偏差の時間的変化を示す。
【図16】VCM電流の時間的変化を示す図である。
【図17】図18、図19とともに、連続的なF1値の変更に関するシミュレーション結果を示すものであり、本図はF1値の時間的変化を示す。
【図18】位置偏差の時間的変化を示す。
【図19】VCM電流の時間的変化を示す図である。
【図20】図21、図22とともに、連続的なF1値変更(応答性の回復)に関するシミュレーション結果を示すものであり、本図はF1値の時間的変化を示す。
【図21】位置偏差の時間的変化を示す。
【図22】VCM電流の時間的変化を示す図である。
【図23】段階的なF1値の変更方法を採用した場合において、電力積低減モードへの移行又は該モードの終了について処理の流れを例示した説明図である。
【図24】連続的なF1値の変更方法を採用した場合において、電力積低減モードへの移行について処理の流れを例示した説明図である。
【図25】連続的なF1値の変更方法を採用した場合において、電力積低減モードの終了について処理の流れを例示した説明図である。
【図26】図24とは別の処理例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…ディスク情報処理装置、2…ディスク状記録媒体、4…ヘッド、6…駆動源、51…特性制御手段
Claims (8)
- ディスク状記録媒体に関する情報の読み取り又は記録を行うヘッドと、ディスク状記録媒体のトラックに対するヘッドの位置決め機構と駆動源を含むサーボ系を備え、該サーボ系の制御において、ヘッドを退避させることなく、シーク後のヘッド位置を維持する一時待機用の動作モードを有するディスク情報処理装置であって、
上記一時待機用の動作モード時にサーボ制御特性に係る応答性を低下させるための特性制御手段を備えている
ことを特徴とするディスク情報処理装置。 - 請求項1に記載のディスク情報処理装置において、
上記一時待機用の動作モード時には、上記特性制御手段によってサーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータが低減されて、上記駆動源へのトルク外乱に対するサーボ系の応答感度が低下する
ことを特徴とするディスク情報処理装置。 - 請求項2に記載のディスク情報処理装置において、
サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータの値が段階的に低減される
ことを特徴とするディスク情報処理装置。 - 請求項2に記載のディスク情報処理装置において、
サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータの値が連続的に低減される
ことを特徴とするディスク情報処理装置。 - 請求項1に記載のディスク情報処理装置において、
バッテリを用いて駆動される携帯型機器に適用した
ことを特徴とするディスク情報処理装置。 - ディスク状記録媒体に関する情報の読み取り又は記録を行うヘッドと、ディスク状記録媒体のトラックに対するヘッドの位置決め機構と駆動源を含むサーボ系を備え、該サーボ系の制御において、ヘッドを退避させることなく、シーク後のヘッド位置を維持する一時待機用の動作モードを有するディスク情報処理装置の制御方法であって、
上記一時待機用の動作モード時に、サーボ制御特性に係る応答性を低下させることにより、上記駆動源へのトルク外乱に対する感度を低下させる
ことを特徴とするディスク情報処理装置の制御方法。 - 請求項6に記載したディスク情報処理装置の制御方法において、
サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータの値を段階的に低減させるようにした
ことを特徴とするディスク情報処理装置の制御方法。 - 請求項6に記載したディスク情報処理装置の制御方法において、
サーボ制御特性に係る応答周波数又はサーボパラメータの値を連続的に低減させるようにした
ことを特徴とするディスク情報処理装置の制御方法。
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Legal Events
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A521 | Written amendment |
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A02 | Decision of refusal |
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