JP2004047457A - グロー点灯管 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射性物質を用いることなく、暗黒放電始動遅れを従来のグロー点灯管とほぼ同等にできる地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易なグロー点灯管を提供する。
【解決手段】容器10内に、希ガスが封入され、かつ2本のリード線12と少なくとも一方のリード線12の端部に取り付けられたバイメタル電極11とが設けられたグロースイッチング素子2を備え、容器10内には酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体15が封入されているとともに、この酸化物体15は電位をもつ部材、例えばリード線12に固着されている。
【選択図】 図1
【解決手段】容器10内に、希ガスが封入され、かつ2本のリード線12と少なくとも一方のリード線12の端部に取り付けられたバイメタル電極11とが設けられたグロースイッチング素子2を備え、容器10内には酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体15が封入されているとともに、この酸化物体15は電位をもつ部材、例えばリード線12に固着されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グロー点灯管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のグロー点灯管には、外囲器内に、グロースイッチング素子と、このグロースイッチング素子と並列に接続された雑音防止用コンデンサーとが収納されたものが知られている(例えば特開平10−255724号公報等)。
【0003】
グロースイッチング素子は、容器内に、2本のリード線とこのリード線の端部に取り付けられたバイメタル電極とが設けられ、かつ放射性物質および希ガスが封入されている。
【0004】
この放射性物質は、暗黒放電始動遅れを抑制するために封入されており、例えばクリプトン85やプロメシウムが用いられる。
【0005】
なお、「暗黒放電始動遅れ」とは、暗黒状態にあるグロー点灯管の始動時において、光電離や光電効果による初期電子の供給が少ない場合、始動電圧印加後から放電開始までの時間(暗黒放電始動遅れ時間)が長くなる現象を意味する。
【0006】
従来のグロー点灯管では、上記のように放射性物質が封入されたことにより、暗黒放電始動遅れ時間が約100msec以下に抑えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のグロー点灯管では、環境汚染の有害物質である放射性物質が使用されているため、環境保護の面から好ましくなく、 またその取り扱いが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、放射性物質を用いることなく、暗黒放電始動遅れを従来のグロー点灯管とほぼ同等にできる地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易なグロー点灯管を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のグロー点灯管は、容器内に、希ガスが封入され、かつ2本のリード線と少なくとも一方の前記リード線の端部に取り付けられたバイメタル電極とが設けられたグロースイッチング素子を備え、前記容器内には酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体が封入されているとともに、前記酸化物体は電位をもつ部材に固着されている構成を有している。
【0010】
これにより、容器内に存在する希ガスの電離によって発生したイオンが、グロー点灯管に電圧を印加した際に、電位をもつ部材と酸化物体との間に発生する電界によって酸化物体に衝突し、そのイオンの衝突によって、たとえ暗黒状態でかつ常温下においても仕事関数が低い酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属から2次電子が容易に放出され、初期電子が容器内の空間に供給される。その結果、暗黒状態においても、従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れとほぼ同等にでき、また従来のグロー点灯管のように放射性物質が用いられていないため、地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
本発明の第1の実施の形態である200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用グロー点灯管は、図1に示すように、円筒状の外囲器1内に、グロースイッチング素子2と、このグロースイッチング素子2と並列に接続された容量0.006μFの雑音防止用のポリエステルコンデンサー3と、グロースイッチング素子2およびポリエステルコンデンサー3を囲む円筒状の絶縁用樹脂フィルム4とが収納されている。
【0013】
外囲器1は、一端部が閉塞したアルミニウム製または樹脂製のキャップ5と、このキャップ5の他端部に嵌合された樹脂製の底面基板6とからなる。
【0014】
底面基板6には押しピン状の2つの端子7が設けられている。
【0015】
グロースイッチング素子2は、図2に示すように、長さLが26.5mm、外径Rが0.3mmであり、一端部が閉塞されたバルブ8とこのバルブ8の他端部に封着されたステム9とからなる軟質ガラス製の容器10内に、後述の導入体が設けられている。また、この容器10内には、ネオン、アルゴン、およびヘリウムの混合ガスが約3kPa封入されている。
【0016】
導入体は、互いに向かい合い、かつその先端部同士が接離する長さ8mm、幅2mm、厚さ0.25mmの板状の2つのバイメタル電極11と、このバイメタル電極11の端部に溶接によって電気的に接続されたリード線12とからなる。
【0017】
リード線12は、容器10内に位置し、かつ直径0.8mmのニッケル線からなる内部リード線13と、一端部が内部リード線13に接続されているとともにステム9に封止され、かつ他端部が容器10の外部に導出して底面基板6の端子7(図2には図示せず)に接続されている直径0.35mmのジュメット線からなる外部リード線14とを有している。
【0018】
電位をもつ部材である内部リード線13の容器10内の空間に露出している表面には、酸化アルカリ金属(Li2O、Na2O、K2O、Cs2O)および酸化アルカリ土類金属(BaO、MgO、CaO、SrO等)のうち少なくとも一種を含む酸化物体15の連続膜が固着されている。
【0019】
ここで、内部リード線13の表面に酸化物体15を形成するための方法の一例について説明する。
【0020】
まず、溶媒である水に、酸化物体の原料となるアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化塩または炭酸塩と、アルミニウム微粉末等の低融点の金属粉末からなる結着剤とを混合、分散した水溶液を作製する。この水溶液中に内部リード線13を浸し、その表面に水溶液を塗布する(ディッピング方法)。その後、表面に前記水溶液が塗布された内部リード線13をアルゴン雰囲気の焼成炉内に入れ、焼成温度を1000℃〜1100℃、焼成時間を10min〜20minに設定し、水酸化塩または炭酸塩を加熱分解するとともに、結着剤を溶融し、内部リード線13の表面に酸化物体15を焼き付ける。次に、内部リード線13のバイメタル電極11と溶接される部分等に付着した不要な酸化物体15をブラッシングによって除去する。このようにして内部リード線13の表面に酸化物体15を形成する。
【0021】
次に、このようなグロー点灯管の暗黒放電始動遅れについて検討した。
【0022】
まず、酸化物体15として、酸化リチウム(Li2O)(実施例1)、酸化ナトリウム(Na2O)(実施例2)、酸化カリウム(K2O)(実施例3)、酸化セシウム(Cs2O)(実施例4)、酸化バリウム(BaO)(実施例5)、酸化マグネシウム(MgO)(実施例6)、酸化カルシウム(CaO)(実施例7)、酸化ストロンチウム(SrO)(実施例8)を単体でそれぞれ用いたグロー点灯管を各50個ずつ作製し、作製した各々のグロー点灯管を内部温度が室温で保たれた暗箱内に入れ、グロー点灯管の端子7間に200Vの交流電圧を印加し、暗黒放電始動遅れ時間を測定したところ、表1に示すとおりの結果が得られた。
【0023】
なお、酸化アルカリ金属からなる酸化物体の原料には水酸化塩を、酸化アルカリ土類金属からなる酸化物体の原料には炭酸塩をそれぞれ用い、また結着剤としてはアルミニウム微粉末を水溶液に対して15重量%添加した。さらに、使用した酸化物体15の量は各々3mg〜5mgであり、酸化物体15の表面積は各々10mm2である。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、実施例1の暗黒放電始動遅れ時間は28msec〜90msec、実施例2の暗黒放電始動遅れ時間は30msec〜108msec、実施例3の暗黒放電始動遅れ時間は40msec〜122msec、実施例4の暗黒放電始動遅れ時間は30msec〜74msec、実施例5の暗黒放電始動遅れ時間は50msec〜140msec、実施例6の暗黒放電始動遅れ時間は68msec〜180msec、実施例7の暗黒放電始動遅れ時間は68msec〜174msec、実施例8の暗黒放電始動遅れ時間は80msec〜180msecであった。このように各実施例の暗黒放電始動遅れ時間は、従来の放射性物質が封入されたグロー点灯管の暗黒放電始動遅れ時間(約100msec)とほぼ同程度であることが確認された。
【0026】
通常、容器10内には、暗黒状態でかつグロー点灯管に電圧が印加されていない状態においても、宇宙線等による希ガスの電離によって発生したイオンが存在している。このイオンは、グロー点灯管に電圧を印加した際、バイメタル電極11または内部リード線13と酸化物体15との間に発生する電界によって酸化物体15に衝突する。したがって、上記のように暗黒放電始動遅れ時間を従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れ時間とほぼ同程度にできたのは、そのイオンの衝突によって、たとえ暗黒状態でかつ常温下においても仕事関数が低い酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属からは2次電子が容易に放出され、初期電子(2次電子)が容器10内の空間に供給されたためであると考えられる。
【0027】
以上のように本発明の第1の実施の形態にかかるグロー点灯管の構成によれば、酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体15が容器10内に封入され、かつ電位をもつ部材、例えば内部リード線13の表面に固着されているため、暗黒状態においても、酸化物体15から2次電子が容易に放出されて初期電子が容器10内の空間に供給されるので、暗黒放電始動遅れを抑制することができ、つまり従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れとほぼ同等にでき、また従来のグロー点灯管のように放射性物質が用いられていないため、地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易となる。
【0028】
また、特に、酸化物体15がリード線12の表面に固着されていることにより、特別な部材を用いることなく、酸化物体15を、電位をもつ部材に固着させることができるので、材料コストを低く抑えることができ、またその特別な部材の取り付け作業等によって製造工程が煩雑化するのを避けることができる。
【0029】
なお、上記第1の実施の形態では、酸化物体15が内部リード線13の表面に固着されている場合について説明したが、酸化物体15が同じく電位をもつ部材であるバイメタル電極11の表面に固着されている場合でも上記と同様の効果を得ることができる。ただし、この場合、酸化物体15は、バイメタル電極11同士の電気的接触不良を引き起こさないようにバイメタル電極11の先端部、特に相手のバイメタル電極11と接離する部分には固着されてはならない。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態である200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用のグロー点灯管は、図3に示すように、酸化物体15が内部リード線13の表面に溶接等によって機械的かつ電気的に接続された電位をもつ部材、例えば長さ4mm、幅2mmのステンレス製の板状のメッシュリボンからなる金属部材16の表面全体に固着されている点を除いて本発明の第1の実施の形態である200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用のグロー点灯管と同じ構成を有している。
【0031】
ところで、酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属は、上記第1の実施の形態で説明した方法、つまり水酸化塩または炭酸塩の加熱分解によって生成された場合、大気中に長時間放置しておくと還元されてしまう。よって、製造工程において、酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体15は、生成された後、より短時間で容器10(図3には図示せず)内に封入されることが好ましい。しかし、上記第1の実施の形態のように酸化物体15を内部リード線13の表面に固着する場合、内部リード線13の表面に酸化物体15を固着した後にバイメタル電極11と内部リード線13との溶接作業等を行うため、酸化物体15を容器10内に短時間で封入しにくい。
【0032】
そこで、上記本発明の第2の実施の形態にかかるグロー点灯管の構成によれば、暗黒状態においても、酸化物体15から2次電子が容易に放出されて初期電子が容器10内の空間に供給されるので、従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れとほぼ同等に抑えることができ、また従来のグロー点灯管のように放射性物質が用いられていないため、地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易であるという本発明の第1の実施の形態にかかるグロー点灯管の作用効果に加えて、酸化物体15が別の部材である金属部材16に固着され、かつこの金属部材16が例えば内部リード線13に接続されているため、製造工程において、金属部材16に酸化物体15を固着して直ちに容器10内に封入することができるので、酸化物体15に含まれる酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属が還元されて、2次電子放出の効果が損なわれるのを防止することができる。
【0033】
特に、金属部材として、メッシュ状の金属部材16を用い、かつその目の粗さを適宜選択することにより、酸化物体15の表面積を大きくすることができ、初期電子を容器10内に一層多く供給することができ、また酸化物体15を金属部材16に強固に保持させることができる。
【0034】
なお、上記第2の実施の形態では、金属部材16を内部リード線13に電気的に接続した場合について説明したが、金属部材16をバイメタル電極11に電気的に接続した場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、上記第2の実施の形態では、金属部材として、メッシュ状の金属部材16を用いた場合について説明したが、例えばニッケル等の金属粉末をプレス成型した焼結部材からなる金属部材を用い、その焼結部材中に酸化物体15を含浸させたものを用いた場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、上記第1および第2の実施の形態では、酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち一種のみからなる酸化物体15を用いた場合について説明したが、酸化物体15として酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち二種以上を混合したものを用いた場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、上記第1および第2の実施の形態では、2つのバイメタル電極11を用いた場合について説明したが、一方は同じバイメタル電極11を用い、他方はバイメタル電極11の代わりに例えばタングステン、ニッケル、モリブデン等の金属部材を用いても上記と同様の効果を得ることができる。
【0038】
さらに、上記第1および第2の実施の形態では、200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用のグロー点灯管を例示して説明したが、本発明は他の一般照明用蛍光ランプやメタルハライドランプ等のグロー点灯管にも適用することができるものである。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、放射性物質を用いることなく、暗黒放電始動遅れを従来のグロー点灯管とほぼ同等にできる地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易なグロー点灯管を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるグロー点灯管の一部切欠正面図
【図2】同じくグロー点灯管のグロースイッチング素子の正面断面図
【図3】本発明の第2の実施の形態であるグロー点灯管の要部拡大断面図
【符号の説明】
1 外囲器
2 グロースイッチング素子
3 ポリエステルコンデンサー
4 樹脂フィルム
5 キャップ
6 底面基板
7 端子
8 バルブ
9 ステム
10 容器
11 バイメタル電極
12 リード線
13 内部リード線
14 外部リード線
15 酸化物体
16 金属部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、グロー点灯管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のグロー点灯管には、外囲器内に、グロースイッチング素子と、このグロースイッチング素子と並列に接続された雑音防止用コンデンサーとが収納されたものが知られている(例えば特開平10−255724号公報等)。
【0003】
グロースイッチング素子は、容器内に、2本のリード線とこのリード線の端部に取り付けられたバイメタル電極とが設けられ、かつ放射性物質および希ガスが封入されている。
【0004】
この放射性物質は、暗黒放電始動遅れを抑制するために封入されており、例えばクリプトン85やプロメシウムが用いられる。
【0005】
なお、「暗黒放電始動遅れ」とは、暗黒状態にあるグロー点灯管の始動時において、光電離や光電効果による初期電子の供給が少ない場合、始動電圧印加後から放電開始までの時間(暗黒放電始動遅れ時間)が長くなる現象を意味する。
【0006】
従来のグロー点灯管では、上記のように放射性物質が封入されたことにより、暗黒放電始動遅れ時間が約100msec以下に抑えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のグロー点灯管では、環境汚染の有害物質である放射性物質が使用されているため、環境保護の面から好ましくなく、 またその取り扱いが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、放射性物質を用いることなく、暗黒放電始動遅れを従来のグロー点灯管とほぼ同等にできる地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易なグロー点灯管を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のグロー点灯管は、容器内に、希ガスが封入され、かつ2本のリード線と少なくとも一方の前記リード線の端部に取り付けられたバイメタル電極とが設けられたグロースイッチング素子を備え、前記容器内には酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体が封入されているとともに、前記酸化物体は電位をもつ部材に固着されている構成を有している。
【0010】
これにより、容器内に存在する希ガスの電離によって発生したイオンが、グロー点灯管に電圧を印加した際に、電位をもつ部材と酸化物体との間に発生する電界によって酸化物体に衝突し、そのイオンの衝突によって、たとえ暗黒状態でかつ常温下においても仕事関数が低い酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属から2次電子が容易に放出され、初期電子が容器内の空間に供給される。その結果、暗黒状態においても、従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れとほぼ同等にでき、また従来のグロー点灯管のように放射性物質が用いられていないため、地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
本発明の第1の実施の形態である200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用グロー点灯管は、図1に示すように、円筒状の外囲器1内に、グロースイッチング素子2と、このグロースイッチング素子2と並列に接続された容量0.006μFの雑音防止用のポリエステルコンデンサー3と、グロースイッチング素子2およびポリエステルコンデンサー3を囲む円筒状の絶縁用樹脂フィルム4とが収納されている。
【0013】
外囲器1は、一端部が閉塞したアルミニウム製または樹脂製のキャップ5と、このキャップ5の他端部に嵌合された樹脂製の底面基板6とからなる。
【0014】
底面基板6には押しピン状の2つの端子7が設けられている。
【0015】
グロースイッチング素子2は、図2に示すように、長さLが26.5mm、外径Rが0.3mmであり、一端部が閉塞されたバルブ8とこのバルブ8の他端部に封着されたステム9とからなる軟質ガラス製の容器10内に、後述の導入体が設けられている。また、この容器10内には、ネオン、アルゴン、およびヘリウムの混合ガスが約3kPa封入されている。
【0016】
導入体は、互いに向かい合い、かつその先端部同士が接離する長さ8mm、幅2mm、厚さ0.25mmの板状の2つのバイメタル電極11と、このバイメタル電極11の端部に溶接によって電気的に接続されたリード線12とからなる。
【0017】
リード線12は、容器10内に位置し、かつ直径0.8mmのニッケル線からなる内部リード線13と、一端部が内部リード線13に接続されているとともにステム9に封止され、かつ他端部が容器10の外部に導出して底面基板6の端子7(図2には図示せず)に接続されている直径0.35mmのジュメット線からなる外部リード線14とを有している。
【0018】
電位をもつ部材である内部リード線13の容器10内の空間に露出している表面には、酸化アルカリ金属(Li2O、Na2O、K2O、Cs2O)および酸化アルカリ土類金属(BaO、MgO、CaO、SrO等)のうち少なくとも一種を含む酸化物体15の連続膜が固着されている。
【0019】
ここで、内部リード線13の表面に酸化物体15を形成するための方法の一例について説明する。
【0020】
まず、溶媒である水に、酸化物体の原料となるアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化塩または炭酸塩と、アルミニウム微粉末等の低融点の金属粉末からなる結着剤とを混合、分散した水溶液を作製する。この水溶液中に内部リード線13を浸し、その表面に水溶液を塗布する(ディッピング方法)。その後、表面に前記水溶液が塗布された内部リード線13をアルゴン雰囲気の焼成炉内に入れ、焼成温度を1000℃〜1100℃、焼成時間を10min〜20minに設定し、水酸化塩または炭酸塩を加熱分解するとともに、結着剤を溶融し、内部リード線13の表面に酸化物体15を焼き付ける。次に、内部リード線13のバイメタル電極11と溶接される部分等に付着した不要な酸化物体15をブラッシングによって除去する。このようにして内部リード線13の表面に酸化物体15を形成する。
【0021】
次に、このようなグロー点灯管の暗黒放電始動遅れについて検討した。
【0022】
まず、酸化物体15として、酸化リチウム(Li2O)(実施例1)、酸化ナトリウム(Na2O)(実施例2)、酸化カリウム(K2O)(実施例3)、酸化セシウム(Cs2O)(実施例4)、酸化バリウム(BaO)(実施例5)、酸化マグネシウム(MgO)(実施例6)、酸化カルシウム(CaO)(実施例7)、酸化ストロンチウム(SrO)(実施例8)を単体でそれぞれ用いたグロー点灯管を各50個ずつ作製し、作製した各々のグロー点灯管を内部温度が室温で保たれた暗箱内に入れ、グロー点灯管の端子7間に200Vの交流電圧を印加し、暗黒放電始動遅れ時間を測定したところ、表1に示すとおりの結果が得られた。
【0023】
なお、酸化アルカリ金属からなる酸化物体の原料には水酸化塩を、酸化アルカリ土類金属からなる酸化物体の原料には炭酸塩をそれぞれ用い、また結着剤としてはアルミニウム微粉末を水溶液に対して15重量%添加した。さらに、使用した酸化物体15の量は各々3mg〜5mgであり、酸化物体15の表面積は各々10mm2である。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、実施例1の暗黒放電始動遅れ時間は28msec〜90msec、実施例2の暗黒放電始動遅れ時間は30msec〜108msec、実施例3の暗黒放電始動遅れ時間は40msec〜122msec、実施例4の暗黒放電始動遅れ時間は30msec〜74msec、実施例5の暗黒放電始動遅れ時間は50msec〜140msec、実施例6の暗黒放電始動遅れ時間は68msec〜180msec、実施例7の暗黒放電始動遅れ時間は68msec〜174msec、実施例8の暗黒放電始動遅れ時間は80msec〜180msecであった。このように各実施例の暗黒放電始動遅れ時間は、従来の放射性物質が封入されたグロー点灯管の暗黒放電始動遅れ時間(約100msec)とほぼ同程度であることが確認された。
【0026】
通常、容器10内には、暗黒状態でかつグロー点灯管に電圧が印加されていない状態においても、宇宙線等による希ガスの電離によって発生したイオンが存在している。このイオンは、グロー点灯管に電圧を印加した際、バイメタル電極11または内部リード線13と酸化物体15との間に発生する電界によって酸化物体15に衝突する。したがって、上記のように暗黒放電始動遅れ時間を従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れ時間とほぼ同程度にできたのは、そのイオンの衝突によって、たとえ暗黒状態でかつ常温下においても仕事関数が低い酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属からは2次電子が容易に放出され、初期電子(2次電子)が容器10内の空間に供給されたためであると考えられる。
【0027】
以上のように本発明の第1の実施の形態にかかるグロー点灯管の構成によれば、酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体15が容器10内に封入され、かつ電位をもつ部材、例えば内部リード線13の表面に固着されているため、暗黒状態においても、酸化物体15から2次電子が容易に放出されて初期電子が容器10内の空間に供給されるので、暗黒放電始動遅れを抑制することができ、つまり従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れとほぼ同等にでき、また従来のグロー点灯管のように放射性物質が用いられていないため、地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易となる。
【0028】
また、特に、酸化物体15がリード線12の表面に固着されていることにより、特別な部材を用いることなく、酸化物体15を、電位をもつ部材に固着させることができるので、材料コストを低く抑えることができ、またその特別な部材の取り付け作業等によって製造工程が煩雑化するのを避けることができる。
【0029】
なお、上記第1の実施の形態では、酸化物体15が内部リード線13の表面に固着されている場合について説明したが、酸化物体15が同じく電位をもつ部材であるバイメタル電極11の表面に固着されている場合でも上記と同様の効果を得ることができる。ただし、この場合、酸化物体15は、バイメタル電極11同士の電気的接触不良を引き起こさないようにバイメタル電極11の先端部、特に相手のバイメタル電極11と接離する部分には固着されてはならない。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態である200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用のグロー点灯管は、図3に示すように、酸化物体15が内部リード線13の表面に溶接等によって機械的かつ電気的に接続された電位をもつ部材、例えば長さ4mm、幅2mmのステンレス製の板状のメッシュリボンからなる金属部材16の表面全体に固着されている点を除いて本発明の第1の実施の形態である200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用のグロー点灯管と同じ構成を有している。
【0031】
ところで、酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属は、上記第1の実施の形態で説明した方法、つまり水酸化塩または炭酸塩の加熱分解によって生成された場合、大気中に長時間放置しておくと還元されてしまう。よって、製造工程において、酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体15は、生成された後、より短時間で容器10(図3には図示せず)内に封入されることが好ましい。しかし、上記第1の実施の形態のように酸化物体15を内部リード線13の表面に固着する場合、内部リード線13の表面に酸化物体15を固着した後にバイメタル電極11と内部リード線13との溶接作業等を行うため、酸化物体15を容器10内に短時間で封入しにくい。
【0032】
そこで、上記本発明の第2の実施の形態にかかるグロー点灯管の構成によれば、暗黒状態においても、酸化物体15から2次電子が容易に放出されて初期電子が容器10内の空間に供給されるので、従来のグロー点灯管の暗黒放電始動遅れとほぼ同等に抑えることができ、また従来のグロー点灯管のように放射性物質が用いられていないため、地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易であるという本発明の第1の実施の形態にかかるグロー点灯管の作用効果に加えて、酸化物体15が別の部材である金属部材16に固着され、かつこの金属部材16が例えば内部リード線13に接続されているため、製造工程において、金属部材16に酸化物体15を固着して直ちに容器10内に封入することができるので、酸化物体15に含まれる酸化アルカリ金属や酸化アルカリ土類金属が還元されて、2次電子放出の効果が損なわれるのを防止することができる。
【0033】
特に、金属部材として、メッシュ状の金属部材16を用い、かつその目の粗さを適宜選択することにより、酸化物体15の表面積を大きくすることができ、初期電子を容器10内に一層多く供給することができ、また酸化物体15を金属部材16に強固に保持させることができる。
【0034】
なお、上記第2の実施の形態では、金属部材16を内部リード線13に電気的に接続した場合について説明したが、金属部材16をバイメタル電極11に電気的に接続した場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、上記第2の実施の形態では、金属部材として、メッシュ状の金属部材16を用いた場合について説明したが、例えばニッケル等の金属粉末をプレス成型した焼結部材からなる金属部材を用い、その焼結部材中に酸化物体15を含浸させたものを用いた場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、上記第1および第2の実施の形態では、酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち一種のみからなる酸化物体15を用いた場合について説明したが、酸化物体15として酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち二種以上を混合したものを用いた場合でも上記と同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、上記第1および第2の実施の形態では、2つのバイメタル電極11を用いた場合について説明したが、一方は同じバイメタル電極11を用い、他方はバイメタル電極11の代わりに例えばタングステン、ニッケル、モリブデン等の金属部材を用いても上記と同様の効果を得ることができる。
【0038】
さらに、上記第1および第2の実施の形態では、200V電源仕様の40W形蛍光ランプ用のグロー点灯管を例示して説明したが、本発明は他の一般照明用蛍光ランプやメタルハライドランプ等のグロー点灯管にも適用することができるものである。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、放射性物質を用いることなく、暗黒放電始動遅れを従来のグロー点灯管とほぼ同等にできる地球環境に優しく、かつ取り扱いが容易なグロー点灯管を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるグロー点灯管の一部切欠正面図
【図2】同じくグロー点灯管のグロースイッチング素子の正面断面図
【図3】本発明の第2の実施の形態であるグロー点灯管の要部拡大断面図
【符号の説明】
1 外囲器
2 グロースイッチング素子
3 ポリエステルコンデンサー
4 樹脂フィルム
5 キャップ
6 底面基板
7 端子
8 バルブ
9 ステム
10 容器
11 バイメタル電極
12 リード線
13 内部リード線
14 外部リード線
15 酸化物体
16 金属部材
Claims (4)
- 容器内に、希ガスが封入され、かつ2本のリード線と少なくとも一方の前記リード線の端部に取り付けられたバイメタル電極とが設けられたグロースイッチング素子を備え、前記容器内には酸化アルカリ金属および酸化アルカリ土類金属のうち少なくとも一種を含む酸化物体が封入されているとともに、前記酸化物体はアルミニウム微粉末の結着剤により電位をもつ部材に固着されていることを特徴とするグロー点灯管。
- 前記電位をもつ部材が前記リード線または前記バイメタル電極からなり、前記酸化物体は前記電位をもつ部材の表面に固着されていることを特徴とする請求項1記載のグロー点灯管。
- 前記電位をもつ部材が前記リード線または前記バイメタル電極に接続された金属部材からなり、前記酸化物体は前記金属部材に固着されていることを特徴とする請求項1記載のグロー点灯管。
- 前記金属部材は、メッシュ状の部材または焼結部材からなることを特徴とする請求項3記載のグロー点灯管。
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WO2006046598A1 (ja) * | 2004-10-27 | 2006-05-04 | Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. | グロー点灯管およびその製造方法 |
JP2006127865A (ja) * | 2004-10-27 | 2006-05-18 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | グロー点灯管およびその製造方法 |
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