JP2004043459A - TGF−β阻害活性を有する低分子化合物からなる医薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の治療剤の提供。
【解決手段】TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を含有する2型糖尿病性腎症の経口用治療剤。
【選択図】 なし
【解決手段】TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を含有する2型糖尿病性腎症の経口用治療剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2型糖尿病性腎症の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病は成因から1型糖尿病と2型糖尿病に分類される。1型糖尿病は、糖尿病患者の約10%が該当し、インスリン依存性糖尿病(IDDM)とも言われる。自己免疫性病因発生の兆候によって特徴づけられ、ウイルス感染や自己免疫反応等によって引き起こされる膵臓ランゲルハンス氏島細胞の脱落により、インスリンの分泌が減少して生じる。一般的に若年発症型糖尿病はこのタイプで、ケトーシス傾向が強く、生命に危険が及ぶ可能性もある。2型糖尿病は、糖尿病患者のほとんどが該当し、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とも言われる。近年生活水準の向上による食生活の欧米化、運動不足傾向の増加により、患者数が増加している。インスリンの作用に対する抵抗性、およびβ細胞の破壊を伴わない相対的なインスリン欠乏を特徴とし、一般に免疫介在性の病因を示さない。
糖尿病性腎症は、これら糖尿病の症状が継続され、慢性的な高血糖状態が持続されて発症する合併症である。臨床的には、タンパク尿、浮腫、高血圧、腎不全等の症状を呈する。組織学的な変化としては、まず、びまん性病変としてPAS陽性物質の蓄積による糸球体基底膜の肥厚とメサンギウム領域の拡大が観察され、更に進行するとやはりPAS陽性物質で構成される結節性病変が出現する。
【0003】
TGF−β阻害活性を有する低分子化合物の具体例としては、例えば特許文献1などに記載の化合物が知られている。
また、抗TGF−β中和抗体を2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスに腹腔内投与したところ、血清クレアチニン濃度の増加、尿クレアチニンクリアランスの減少、およびメサンギウム領域の拡大を抑制したことが報告されている(例えば、非特許文献1)。また、同論文では、同実験においてタンパク尿に対しては有効ではなかったことが記載されている。
以上の状況から、経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の治療剤が望まれていた。
【特許文献1】
国際公開第02/10131号パンフレット
【非特許文献1】
”PNAS”, July 5, 2000, Vol.97, p.8015−8020
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物が2型糖尿病性腎症、特にそのタンパク尿を治療することを見出し、本発明を完成した。本発明は以下の通りである。
[1] TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を含有する2型糖尿病性腎症の経口用治療剤。
[2] TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を含有する2型糖尿病性腎症におけるタンパク尿症状の経口用治療剤。
[3] 低分子化合物が線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験において10μMの濃度で少なくとも50%阻害する化合物である[1]または[2]記載の経口用治療剤。
[4] 低分子化合物が以下の部分構造および他の芳香環構造を有する[1]〜[3]のいずれか記載の経口用治療剤。
[式中、環Aはベンゼン環またはピリジン環を表す。]
【0006】
TGF−β阻害活性を有する化合物としては、例えば、▲1▼線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験、▲2▼細胞増殖抑制阻害試験、▲3▼TGF−β誘導レポータージーン試験、▲4▼TGF−β結合阻害試験等の試験で阻害活性が認められる化合物が挙げられる。
▲1▼線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験(試験例1)
▲2▼細胞増殖抑制阻害試験(1995, Cytokine 7:p389)
TGF−βによって細胞増殖抑制を受ける細胞を用いて、その増殖抑制効果の解除を3H−チミジンの取り込みなどを指標に評価する試験である。
▲3▼TGF−β誘導レポータージーン試験(1997, Nature 389:p631)
TGF−βによって発現が変化する遺伝子の転写調節領域を利用し、レポータージーン活性を指標にTGF−β阻害活性を評価する試験である。
▲4▼TGF−β結合阻害試験(1987, Methods Enzymol. 146:p174)
125I−TGF−βリガンドとレセプターの結合を指標にTGF−β結合阻害を評価する試験である。
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物の好ましいものとしては、試験例1に記載された線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験において10μMの濃度で少なくとも50%阻害する化合物が挙げられる。
【0007】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物としては、例えば、以下の部分構造および他の芳香環構造を有する低分子化合物を挙げることができる。
[式中、環Aはベンゼン環またはピリジン環を表す。]
他の芳香環構造としては、例えば、5員または6員の芳香環構造が挙げられる。5員芳香環としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から任意に選ばれる1から3個のヘテロ原子を含む5員複素芳香環が挙げられ、具体的には、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール等が挙げられる。6員芳香環としては、ベンゼン環、および1から3個の窒素原子を含む6員複素芳香環が挙げられ、具体的には、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン等が挙げられる。好ましい他の芳香環構造としては、ベンゼン環、ピロール環等が挙げられる。
【0008】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物の具体例としては、以下に挙げるものが挙げられる。
(1) ピロール誘導体(WO 02/10131)
[式中、W4は、−CO−、−CONR−またはメチレンを表す。
Rは、水素原子またはアルキルを表す。
R2は、ハロゲン原子、シアノ、置換されてもよいアルコキシまたは置換されてもよいアルキルを表す。
R3は、水酸基、アルコキシ、アルキル置換されてもよいアミノ、環状アミノまたはアルキルスルホニルアミノを表す。
R4は、水素原子、ハロゲン原子またはアルキルを表す。
R5は、置換されてもよいアルコキシまたは置換されてもよいアルキルを表す。]
で表されるピロール誘導体、そのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩等。
【0009】
(2) トリアリールイミダゾール誘導体(J. Med. Chem., 2002, 45, 999−1001; WO01/72737)
[式中、R1はナフチルを表す。または、R1はハロゲン、−O−C1−6アルキル、−S−C1−6アルキル、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、−O−(CH2)n−Ph、−S−(CH2)n−Ph、シアノ、フェニルおよびCO2Rからなる群から任意に選ばれる1個または複数の置換基で置換されてもよいフェニルを表す(Rは水素原子またはC1−6アルキルを表し、nは0、1、2または3を表す)。または、R1は5員〜7員の芳香環または非芳香環と縮環したフェニルを表す(ここで、芳香環または非芳香環は窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から独立して選ばれる最多で3個までのヘテロ原子を含んでもよい)。
R2は、水素原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェニル、NH(CH2)n−Ph、NH−C1−6アルキル、ハロゲン原子またはアルコキシを表す。
R3は、COOH、テトラゾール、CN、NO2、OH、−S−C1−6アルキル、−SO−C1−6アルキル、−O−C1−6アルキル、SONH2、CHO、CH2OH、(CH2)nNH2、CONHOR’、O(CH2)nCO2R’、O(CH2)nCONHR’、CONHR’、(CH2)nCO2R’または(CH2)nCONHR’を表す(R’は水素原子またはC1−6アルキルを表し、nは0、1、2または3を表す)。
X1およびX2の一方はNまたはCR”を表し、他方はNR”またはCHR”を表す(R”は水素原子、C1−6アルキルまたはC3−7シクロアルキルを表す)。または、X1およびX2の一方がNまたはCR”である場合、他方は硫黄原子または酸素原子であってもよい。
ただし、R1、R2およびR3が下記の通りである化合物は除く。
{R1はナフチルを表す。または、R1はハロゲン、−O−C1−6アルキル、−S−C1−6アルキル、C1−6アルキル、−O−(CH2)n−Ph、−S−(CH2)n−Ph、シアノ、フェニルおよびCO2Rからなる群から任意に選ばれる1個または複数の置換基で置換されてもよいフェニルを表す(Rは水素原子またはC1−6アルキルを表し、nは0、1、2または3を表す)。または、R1は5員〜7員の芳香環または非芳香環と縮環したフェニルを表す(ここで、芳香環または非芳香環は窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から独立して選ばれる最多で2個までのヘテロ原子を含んでもよい)。
R2は、水素原子、NH(CH2)n−PhまたはNH−C1−6アルキルを表す。
R3は、CO2H、CONH2、CN、NO2、C1−6アルキルチオ、−SO2−C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、SONH2、CONHOH、NH2、CHO、CH2OH、CH2NH2またはCO2Rを表す(Rは水素原子またはC1−6アルキルを表す)。}]
で表される化合物またはその薬学上許容される塩。
代表的化合物として、以下のトリアリールイミダゾール誘導体が挙げられる。
【0010】
(3) ピリジルアクリル酸アミド誘導体(WO 99/05109)
[式中、Ar1は置換又は非置換のピリジル基を表す。
Ar2は置換又は非置換のフェニル基を表す。
R1は水素原子、C1−6アルキル基又はアリール基を表す。
R2は水素原子、C1−6アルキル基、シアノ基又はC1−6アルコキシ−カルボニル基を表す。
R3は水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を表す。
Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。
A及びBは、同一又は異なり、それぞれ水素原子、水酸基、C1−6アルコキシ基又はC1−6アルキルチオ基を表すか、共同してオキソ基、チオキソ基、式: =N−Y
(Yはジ(C1−6アルキル)アミノ基、水酸基、アラルキルオキシ基又はC1−6アルコキシ基を表す。)
で示される基又は式: −Z1−M−Z2−
(Z1及びZ2は、同一又は異なり、それぞれ酸素原子、硫黄原子又はC1−6アルキル基で置換されていてもよいイミノ基を表し、Mは鎖員2〜4のアルキレン基又は1,2−フェニレン基を表す。)
で示される基を表し、また、Aが水酸基で、Bが1−C1−6アルキル−イミダゾール−2−イル基であってもよい。
nは1〜3の整数を表す。]
で示されるピリジルアクリル酸アミド誘導体又はその薬学上許容される塩。
【0011】
(4) インドールカルボキサミド誘導体(WO 00/44743)
[式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アシル、アリール、芳香族複素環基、又はアリールアルキルを表す(かかるアリール、芳香族複素環基、及びアリールアルキルのアリール部分は、1〜3個の同一又は異なる、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、又はニトロで置換されていてもよい。)。
R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルキル、シアノ、又はニトロを表す。又は、R3、R4、R5、R6の中で隣接する2個の基が一緒になって、メチレンジオキシはエチレンジオキシを形成していてもよい。
R7は、R8で置換されていてもよい環状アミノ、又はR9で置換されていてもよいアザビシクロアルキルアミノを表す。
R8は、アルキル、ハロアルキル、アシル、アリール、芳香族複素環基、又はアリールアルキルを表す(かかるアリール、芳香族複素環基、及びアリールアルキルのアリール部分は、1〜3個の同一又は異なる、ハロゲン、アルキル、アリールアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アシルアミノ、ジアルキルアミノスルホニルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、ジカルバモイル、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、又はニトロで置換されていてもよい。)
で示されるインドールカルボキサミド誘導体又はその薬学上許容される塩。
【0012】
(5) トラニラスト(Atherosclerosis. 118(2): 213−21, 1995 Dec.)
(6) Pirfenidone (5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドン:細胞, Vol.33(1), 20−23 (2001))
(7) ウルソール酸、オレアノール酸およびそれらの薬学上許容される塩(特開2000−15673、特開2000−159793)
【0013】
「薬学上許容される塩」としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土金属塩、亜鉛塩等の無機金属塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノ酸等有機塩基塩等、並びに塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0014】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口的に投与するための剤型としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、カシェ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等が挙げられる。非経口的に投与するための剤型としては、注射剤(静脈内投与用、筋肉内投与用等)、経皮剤(クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、パッチ剤、マトリクス剤等)、経鼻剤、直腸投与剤(坐剤等)等が挙げられる。これらの製剤は、通常の方法に従って製造することができる。
錠剤等の経口固体製剤は、例えば、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を、賦形剤(乳糖、D−マンニトール、ショ糖、トウモロコシ澱粉、セルロース、リン酸水素カルシウム等)、崩壊剤(カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムや澱粉グリコール酸ナトリウム等)、結合剤(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドキシプルピルメチルセルロース、メチルセルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム等)、矯味矯臭剤、安定化剤、着色剤等と混合し、常法により、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とすることができる。
経口液剤は、例えば、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を水に加え、着色剤、香料、安定化剤、甘味剤、溶解剤、増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。増粘剤としては、例えば、薬学的に許容される天然または合成ガム、レジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたは公知の懸濁化剤等が挙げられる。
注射剤は、例えば、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を、水、生理食塩水、油、ブドウ糖水溶液などの生理的に許容しうる担体に溶解または懸濁し、さらに補助剤としてpH調製剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、乳化剤等を必要に応じて加えることで製造することができる。
【0015】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物の投与量、投与回数は、疾患、年齢、体重、投与形態等によって異なる。例えば、経口的に投与する場合は、通常、成人(60Kg)に対し1日あたり約1〜約500mg、好ましくは約3〜約300mg、特に好ましくは約5〜約100mgを1回または数回に分けて投与することができる。注射剤として投与する場合は、成人(60Kg)に対し1日あたり約0.1〜約300mg、好ましくは約1〜約100mgを1回または数回に分けて、あるいは継続的に投与することができる。
【0016】
【実施例】
以下、試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例では、被験化合物としてWO 02/10131に記載の製法で製造された下記ピロール誘導体を用いた。
【0017】
試験例1
TGF−βによる細胞外基質産生に対する効果
線維芽細胞にTGF−βを添加した時のプロテオグリカン産生に対する作用を評価した。
NRK−49F細胞(ラット線維芽細胞)を10%仔ウシ血清含有Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM:GIBCO社)で培養し、実験に供した。2.5×104個/100μL/wellの割合で細胞を96穴プレートにまき込み、翌日、3ng/mL TGF−β(ナカライテスク株式会社)、0.5μCi/well [35S]−Na2SO4、被験化合物を含むDMEM培地に交換した。24時間後に培養上清を回収し、常法に従いSDS−PAGEを行った。電気泳動後のゲルをゲルドライヤーにて乾燥させた後、イメージングプレートに露光し、BSA2000(富士フィルム社)で解析を行った。電気泳動されたプロテオグリカンの放射活性を定量し、以下の計算式によりTGF−β阻害率を計算した。
TGF−β阻害率(%)=(A−B)×100/(A−C)
A:TGF−β添加、被験化合物非添加時の放射活性
B:TGF−β、被験化合物添加時の放射活性
C:TGF−β、被験化合物非添加時の放射活性
ピロール誘導体の作用を評価したところ、そのTGF−β阻害率(%)は、3μMで87%であり、10μMで88%であった。
【0018】
試験例2
2型糖尿病性腎症モデルを用いた評価
db/dbマウスは肥満、糖尿病を自然発症するモデルとして知られているが、長期間飼育を継続することで腎機能が低下し、2型糖尿病性腎症モデルとなることが知られている。当該モデルを用いて、評価を行った。
雄性C57BL/KsJ−db/db(以下db/db)マウスを日本クレア(株)より6週齢で購入し、予備飼育の後、十分糖尿病が発症した9週齢の時点より実験を開始した。飼育室は温度20℃以上26℃以下、相対湿度30%以上70%以下に制御され、照明は12時間点灯(8:00〜20:00)、12時間消灯(20:00〜8:00)のサイクルで制御された。飼料はCE−2(日本クレア)を自由摂食させた。飲料水は滅菌水道水あるいは化合物を溶解させた水を自由摂取させた。
db/dbマウスの体重および長期の血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)により、以下の4群に群分けした。ピロール誘導体は飲水中に溶解し、マウスに投与した。
1.対照群
2.低用量群:ピロール誘導体(1mg/kg)を投与した群
3.中用量群:ピロール誘導体(3mg/kg)を投与した群
4.高用量群:ピロール誘導体(10mg/kg)を投与した群
4ヶ月間投与した後、db/dbマウスを代謝ケージにて飼育し、尿を回収した。糖尿病性腎症の発症程度を尿中のアルブミン量を測定することにより評価した。尿中アルブミンは市販ELISAキット(Exocell社)を用いた。
【0019】
その結果を表1に示す。値は各群の平均値±標準偏差を示す(n=10〜12)。血糖値は4群間で差が認められないにも関わらず、尿中アルブミン排泄量は対照群と比較して、各用量群において顕著に低下していた。すなわち、ピロール誘導体等のTGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を投与することにより、血糖値は高いままであるにも関わらず、2型糖尿病性腎症のタンパク尿が治療され、その病変が改善され、2型糖尿病性腎症を治療できると考えられた。
【表1】表1
投与群 血糖値( mg/dl ) 尿中アルブミン排泄量(μ g/24h )
対象群 539.3±43.1 926±320
低用量群 524.0±63.5 466±206 **
中用量群 493.5±52.9 529±191 **
高用量群 518.3±62.8 484±250 **
**はWilliamsの検定において、対照群に対してP<0.01であることを示す。
【0020】
【発明の効果】
本発明によって、経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の経口用治療剤を供給することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、2型糖尿病性腎症の治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病は成因から1型糖尿病と2型糖尿病に分類される。1型糖尿病は、糖尿病患者の約10%が該当し、インスリン依存性糖尿病(IDDM)とも言われる。自己免疫性病因発生の兆候によって特徴づけられ、ウイルス感染や自己免疫反応等によって引き起こされる膵臓ランゲルハンス氏島細胞の脱落により、インスリンの分泌が減少して生じる。一般的に若年発症型糖尿病はこのタイプで、ケトーシス傾向が強く、生命に危険が及ぶ可能性もある。2型糖尿病は、糖尿病患者のほとんどが該当し、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とも言われる。近年生活水準の向上による食生活の欧米化、運動不足傾向の増加により、患者数が増加している。インスリンの作用に対する抵抗性、およびβ細胞の破壊を伴わない相対的なインスリン欠乏を特徴とし、一般に免疫介在性の病因を示さない。
糖尿病性腎症は、これら糖尿病の症状が継続され、慢性的な高血糖状態が持続されて発症する合併症である。臨床的には、タンパク尿、浮腫、高血圧、腎不全等の症状を呈する。組織学的な変化としては、まず、びまん性病変としてPAS陽性物質の蓄積による糸球体基底膜の肥厚とメサンギウム領域の拡大が観察され、更に進行するとやはりPAS陽性物質で構成される結節性病変が出現する。
【0003】
TGF−β阻害活性を有する低分子化合物の具体例としては、例えば特許文献1などに記載の化合物が知られている。
また、抗TGF−β中和抗体を2型糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスに腹腔内投与したところ、血清クレアチニン濃度の増加、尿クレアチニンクリアランスの減少、およびメサンギウム領域の拡大を抑制したことが報告されている(例えば、非特許文献1)。また、同論文では、同実験においてタンパク尿に対しては有効ではなかったことが記載されている。
以上の状況から、経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の治療剤が望まれていた。
【特許文献1】
国際公開第02/10131号パンフレット
【非特許文献1】
”PNAS”, July 5, 2000, Vol.97, p.8015−8020
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の治療剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物が2型糖尿病性腎症、特にそのタンパク尿を治療することを見出し、本発明を完成した。本発明は以下の通りである。
[1] TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を含有する2型糖尿病性腎症の経口用治療剤。
[2] TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を含有する2型糖尿病性腎症におけるタンパク尿症状の経口用治療剤。
[3] 低分子化合物が線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験において10μMの濃度で少なくとも50%阻害する化合物である[1]または[2]記載の経口用治療剤。
[4] 低分子化合物が以下の部分構造および他の芳香環構造を有する[1]〜[3]のいずれか記載の経口用治療剤。
[式中、環Aはベンゼン環またはピリジン環を表す。]
【0006】
TGF−β阻害活性を有する化合物としては、例えば、▲1▼線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験、▲2▼細胞増殖抑制阻害試験、▲3▼TGF−β誘導レポータージーン試験、▲4▼TGF−β結合阻害試験等の試験で阻害活性が認められる化合物が挙げられる。
▲1▼線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験(試験例1)
▲2▼細胞増殖抑制阻害試験(1995, Cytokine 7:p389)
TGF−βによって細胞増殖抑制を受ける細胞を用いて、その増殖抑制効果の解除を3H−チミジンの取り込みなどを指標に評価する試験である。
▲3▼TGF−β誘導レポータージーン試験(1997, Nature 389:p631)
TGF−βによって発現が変化する遺伝子の転写調節領域を利用し、レポータージーン活性を指標にTGF−β阻害活性を評価する試験である。
▲4▼TGF−β結合阻害試験(1987, Methods Enzymol. 146:p174)
125I−TGF−βリガンドとレセプターの結合を指標にTGF−β結合阻害を評価する試験である。
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物の好ましいものとしては、試験例1に記載された線維芽細胞の細胞外基質産生阻害試験において10μMの濃度で少なくとも50%阻害する化合物が挙げられる。
【0007】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物としては、例えば、以下の部分構造および他の芳香環構造を有する低分子化合物を挙げることができる。
[式中、環Aはベンゼン環またはピリジン環を表す。]
他の芳香環構造としては、例えば、5員または6員の芳香環構造が挙げられる。5員芳香環としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から任意に選ばれる1から3個のヘテロ原子を含む5員複素芳香環が挙げられ、具体的には、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール等が挙げられる。6員芳香環としては、ベンゼン環、および1から3個の窒素原子を含む6員複素芳香環が挙げられ、具体的には、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン等が挙げられる。好ましい他の芳香環構造としては、ベンゼン環、ピロール環等が挙げられる。
【0008】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物の具体例としては、以下に挙げるものが挙げられる。
(1) ピロール誘導体(WO 02/10131)
[式中、W4は、−CO−、−CONR−またはメチレンを表す。
Rは、水素原子またはアルキルを表す。
R2は、ハロゲン原子、シアノ、置換されてもよいアルコキシまたは置換されてもよいアルキルを表す。
R3は、水酸基、アルコキシ、アルキル置換されてもよいアミノ、環状アミノまたはアルキルスルホニルアミノを表す。
R4は、水素原子、ハロゲン原子またはアルキルを表す。
R5は、置換されてもよいアルコキシまたは置換されてもよいアルキルを表す。]
で表されるピロール誘導体、そのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩等。
【0009】
(2) トリアリールイミダゾール誘導体(J. Med. Chem., 2002, 45, 999−1001; WO01/72737)
[式中、R1はナフチルを表す。または、R1はハロゲン、−O−C1−6アルキル、−S−C1−6アルキル、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、−O−(CH2)n−Ph、−S−(CH2)n−Ph、シアノ、フェニルおよびCO2Rからなる群から任意に選ばれる1個または複数の置換基で置換されてもよいフェニルを表す(Rは水素原子またはC1−6アルキルを表し、nは0、1、2または3を表す)。または、R1は5員〜7員の芳香環または非芳香環と縮環したフェニルを表す(ここで、芳香環または非芳香環は窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から独立して選ばれる最多で3個までのヘテロ原子を含んでもよい)。
R2は、水素原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、フェニル、NH(CH2)n−Ph、NH−C1−6アルキル、ハロゲン原子またはアルコキシを表す。
R3は、COOH、テトラゾール、CN、NO2、OH、−S−C1−6アルキル、−SO−C1−6アルキル、−O−C1−6アルキル、SONH2、CHO、CH2OH、(CH2)nNH2、CONHOR’、O(CH2)nCO2R’、O(CH2)nCONHR’、CONHR’、(CH2)nCO2R’または(CH2)nCONHR’を表す(R’は水素原子またはC1−6アルキルを表し、nは0、1、2または3を表す)。
X1およびX2の一方はNまたはCR”を表し、他方はNR”またはCHR”を表す(R”は水素原子、C1−6アルキルまたはC3−7シクロアルキルを表す)。または、X1およびX2の一方がNまたはCR”である場合、他方は硫黄原子または酸素原子であってもよい。
ただし、R1、R2およびR3が下記の通りである化合物は除く。
{R1はナフチルを表す。または、R1はハロゲン、−O−C1−6アルキル、−S−C1−6アルキル、C1−6アルキル、−O−(CH2)n−Ph、−S−(CH2)n−Ph、シアノ、フェニルおよびCO2Rからなる群から任意に選ばれる1個または複数の置換基で置換されてもよいフェニルを表す(Rは水素原子またはC1−6アルキルを表し、nは0、1、2または3を表す)。または、R1は5員〜7員の芳香環または非芳香環と縮環したフェニルを表す(ここで、芳香環または非芳香環は窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から独立して選ばれる最多で2個までのヘテロ原子を含んでもよい)。
R2は、水素原子、NH(CH2)n−PhまたはNH−C1−6アルキルを表す。
R3は、CO2H、CONH2、CN、NO2、C1−6アルキルチオ、−SO2−C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、SONH2、CONHOH、NH2、CHO、CH2OH、CH2NH2またはCO2Rを表す(Rは水素原子またはC1−6アルキルを表す)。}]
で表される化合物またはその薬学上許容される塩。
代表的化合物として、以下のトリアリールイミダゾール誘導体が挙げられる。
【0010】
(3) ピリジルアクリル酸アミド誘導体(WO 99/05109)
[式中、Ar1は置換又は非置換のピリジル基を表す。
Ar2は置換又は非置換のフェニル基を表す。
R1は水素原子、C1−6アルキル基又はアリール基を表す。
R2は水素原子、C1−6アルキル基、シアノ基又はC1−6アルコキシ−カルボニル基を表す。
R3は水素原子又は置換されていてもよいC1−6アルキル基を表す。
Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。
A及びBは、同一又は異なり、それぞれ水素原子、水酸基、C1−6アルコキシ基又はC1−6アルキルチオ基を表すか、共同してオキソ基、チオキソ基、式: =N−Y
(Yはジ(C1−6アルキル)アミノ基、水酸基、アラルキルオキシ基又はC1−6アルコキシ基を表す。)
で示される基又は式: −Z1−M−Z2−
(Z1及びZ2は、同一又は異なり、それぞれ酸素原子、硫黄原子又はC1−6アルキル基で置換されていてもよいイミノ基を表し、Mは鎖員2〜4のアルキレン基又は1,2−フェニレン基を表す。)
で示される基を表し、また、Aが水酸基で、Bが1−C1−6アルキル−イミダゾール−2−イル基であってもよい。
nは1〜3の整数を表す。]
で示されるピリジルアクリル酸アミド誘導体又はその薬学上許容される塩。
【0011】
(4) インドールカルボキサミド誘導体(WO 00/44743)
[式中、R1、R2は、同一又は異なって、水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アシル、アリール、芳香族複素環基、又はアリールアルキルを表す(かかるアリール、芳香族複素環基、及びアリールアルキルのアリール部分は、1〜3個の同一又は異なる、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、シアノ、又はニトロで置換されていてもよい。)。
R3、R4、R5、R6は、同一又は異なって、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルキル、シアノ、又はニトロを表す。又は、R3、R4、R5、R6の中で隣接する2個の基が一緒になって、メチレンジオキシはエチレンジオキシを形成していてもよい。
R7は、R8で置換されていてもよい環状アミノ、又はR9で置換されていてもよいアザビシクロアルキルアミノを表す。
R8は、アルキル、ハロアルキル、アシル、アリール、芳香族複素環基、又はアリールアルキルを表す(かかるアリール、芳香族複素環基、及びアリールアルキルのアリール部分は、1〜3個の同一又は異なる、ハロゲン、アルキル、アリールアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アシルアミノ、ジアルキルアミノスルホニルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、ジカルバモイル、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、ジアルキルアミノスルホニル、又はニトロで置換されていてもよい。)
で示されるインドールカルボキサミド誘導体又はその薬学上許容される塩。
【0012】
(5) トラニラスト(Atherosclerosis. 118(2): 213−21, 1995 Dec.)
(6) Pirfenidone (5−メチル−1−フェニル−2−(1H)−ピリドン:細胞, Vol.33(1), 20−23 (2001))
(7) ウルソール酸、オレアノール酸およびそれらの薬学上許容される塩(特開2000−15673、特開2000−159793)
【0013】
「薬学上許容される塩」としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土金属塩、亜鉛塩等の無機金属塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシメチルアミノメタン、アミノ酸等有機塩基塩等、並びに塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0014】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物は、経口的または非経口的に投与することができる。経口的に投与するための剤型としては、例えば、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、カシェ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等が挙げられる。非経口的に投与するための剤型としては、注射剤(静脈内投与用、筋肉内投与用等)、経皮剤(クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、パッチ剤、マトリクス剤等)、経鼻剤、直腸投与剤(坐剤等)等が挙げられる。これらの製剤は、通常の方法に従って製造することができる。
錠剤等の経口固体製剤は、例えば、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を、賦形剤(乳糖、D−マンニトール、ショ糖、トウモロコシ澱粉、セルロース、リン酸水素カルシウム等)、崩壊剤(カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムや澱粉グリコール酸ナトリウム等)、結合剤(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドキシプルピルメチルセルロース、メチルセルロース等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム等)、矯味矯臭剤、安定化剤、着色剤等と混合し、常法により、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とすることができる。
経口液剤は、例えば、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を水に加え、着色剤、香料、安定化剤、甘味剤、溶解剤、増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。増粘剤としては、例えば、薬学的に許容される天然または合成ガム、レジン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースまたは公知の懸濁化剤等が挙げられる。
注射剤は、例えば、TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を、水、生理食塩水、油、ブドウ糖水溶液などの生理的に許容しうる担体に溶解または懸濁し、さらに補助剤としてpH調製剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、乳化剤等を必要に応じて加えることで製造することができる。
【0015】
TGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物の投与量、投与回数は、疾患、年齢、体重、投与形態等によって異なる。例えば、経口的に投与する場合は、通常、成人(60Kg)に対し1日あたり約1〜約500mg、好ましくは約3〜約300mg、特に好ましくは約5〜約100mgを1回または数回に分けて投与することができる。注射剤として投与する場合は、成人(60Kg)に対し1日あたり約0.1〜約300mg、好ましくは約1〜約100mgを1回または数回に分けて、あるいは継続的に投与することができる。
【0016】
【実施例】
以下、試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例では、被験化合物としてWO 02/10131に記載の製法で製造された下記ピロール誘導体を用いた。
【0017】
試験例1
TGF−βによる細胞外基質産生に対する効果
線維芽細胞にTGF−βを添加した時のプロテオグリカン産生に対する作用を評価した。
NRK−49F細胞(ラット線維芽細胞)を10%仔ウシ血清含有Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM:GIBCO社)で培養し、実験に供した。2.5×104個/100μL/wellの割合で細胞を96穴プレートにまき込み、翌日、3ng/mL TGF−β(ナカライテスク株式会社)、0.5μCi/well [35S]−Na2SO4、被験化合物を含むDMEM培地に交換した。24時間後に培養上清を回収し、常法に従いSDS−PAGEを行った。電気泳動後のゲルをゲルドライヤーにて乾燥させた後、イメージングプレートに露光し、BSA2000(富士フィルム社)で解析を行った。電気泳動されたプロテオグリカンの放射活性を定量し、以下の計算式によりTGF−β阻害率を計算した。
TGF−β阻害率(%)=(A−B)×100/(A−C)
A:TGF−β添加、被験化合物非添加時の放射活性
B:TGF−β、被験化合物添加時の放射活性
C:TGF−β、被験化合物非添加時の放射活性
ピロール誘導体の作用を評価したところ、そのTGF−β阻害率(%)は、3μMで87%であり、10μMで88%であった。
【0018】
試験例2
2型糖尿病性腎症モデルを用いた評価
db/dbマウスは肥満、糖尿病を自然発症するモデルとして知られているが、長期間飼育を継続することで腎機能が低下し、2型糖尿病性腎症モデルとなることが知られている。当該モデルを用いて、評価を行った。
雄性C57BL/KsJ−db/db(以下db/db)マウスを日本クレア(株)より6週齢で購入し、予備飼育の後、十分糖尿病が発症した9週齢の時点より実験を開始した。飼育室は温度20℃以上26℃以下、相対湿度30%以上70%以下に制御され、照明は12時間点灯(8:00〜20:00)、12時間消灯(20:00〜8:00)のサイクルで制御された。飼料はCE−2(日本クレア)を自由摂食させた。飲料水は滅菌水道水あるいは化合物を溶解させた水を自由摂取させた。
db/dbマウスの体重および長期の血糖コントロールの指標であるHbA1c(ヘモグロビンA1c)により、以下の4群に群分けした。ピロール誘導体は飲水中に溶解し、マウスに投与した。
1.対照群
2.低用量群:ピロール誘導体(1mg/kg)を投与した群
3.中用量群:ピロール誘導体(3mg/kg)を投与した群
4.高用量群:ピロール誘導体(10mg/kg)を投与した群
4ヶ月間投与した後、db/dbマウスを代謝ケージにて飼育し、尿を回収した。糖尿病性腎症の発症程度を尿中のアルブミン量を測定することにより評価した。尿中アルブミンは市販ELISAキット(Exocell社)を用いた。
【0019】
その結果を表1に示す。値は各群の平均値±標準偏差を示す(n=10〜12)。血糖値は4群間で差が認められないにも関わらず、尿中アルブミン排泄量は対照群と比較して、各用量群において顕著に低下していた。すなわち、ピロール誘導体等のTGF−β阻害活性を有する分子量が600以下の低分子化合物を投与することにより、血糖値は高いままであるにも関わらず、2型糖尿病性腎症のタンパク尿が治療され、その病変が改善され、2型糖尿病性腎症を治療できると考えられた。
【表1】表1
投与群 血糖値( mg/dl ) 尿中アルブミン排泄量(μ g/24h )
対象群 539.3±43.1 926±320
低用量群 524.0±63.5 466±206 **
中用量群 493.5±52.9 529±191 **
高用量群 518.3±62.8 484±250 **
**はWilliamsの検定において、対照群に対してP<0.01であることを示す。
【0020】
【発明の効果】
本発明によって、経口投与が可能な2型糖尿病性腎症の経口用治療剤を供給することができる。
Claims (4)
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-
2003
- 2003-05-22 JP JP2003144418A patent/JP2004043459A/ja active Pending
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KR20130121813A (ko) | 2010-06-17 | 2013-11-06 | 닛토덴코 가부시키가이샤 | 신장 섬유증 치료 물질 |
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