JP2004037841A - 偏光板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造工程中において剥がれや浮きを発生せず、初期接着力の発現が速く、しかも高温環境下や高温高湿環境下においても優れた接着力、優れた耐久性および優れた光学特性を発現する偏光板の製造方法を提供する。
【解決手段】偏光子と偏光子の保護フィルムとを接着積層する偏光板の製造方法において、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、上記偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートすることを特徴とする偏光板の製造方法、保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする上記偏光板の製造方法、保護フィルムの透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることを特徴とする上記偏光板の製造方法、および、水性エマルジョンがポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする上記偏光板の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】偏光子と偏光子の保護フィルムとを接着積層する偏光板の製造方法において、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、上記偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートすることを特徴とする偏光板の製造方法、保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする上記偏光板の製造方法、保護フィルムの透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることを特徴とする上記偏光板の製造方法、および、水性エマルジョンがポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする上記偏光板の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイは車載用や携帯情報機器用として用いられることが多くなり、液晶ディスプレイの高温環境下および高温高湿環境下における信頼性が強く要望されている。
【0003】
液晶ディスプレイを構成する偏光板としては、延伸配向したポリビニルアルコールにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させて作製した偏光子の両面にトリアセチルセルロース(TAC)を保護フィルムとして接着積層したものが一般的に用いられ、この偏光板は、透明電極を形成した2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの片側もしくは両側に貼り付けて用いられる。
【0004】
上記TACは、そのままでは偏光子との接着性が悪いため、アルカリ処理したTAC(以下、「鹸化TAC」と記す)として用いられている。しかし、鹸化TACを保護フィルムとして用いた偏光板は、鹸化TACの透湿度が高すぎるため、高温高湿環境下において偏光性能の低下を起こすという問題点がある。また、TACは光弾性係数が高いので、高温環境下に放置した後の偏光板をクロスニコル状態で観察すると画面の周囲が額縁状に光り漏れを起こす現象、いわゆる“白抜け現象”が起きるという問題点もある。
【0005】
これらの問題点に対応するために種々の試みがなされており、例えば、特開平5−212828号公報では、ポリビニルアルコール系シート(偏光子)の少なくとも片面にアクリル系粘着剤層を介して熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シート(保護フィルム)が積層され、加熱圧着されてなる複合シート(偏光板)が開示されている。また、特開平10−130402号公報では、光線透過率が80%以上、水蒸気透過度が100g/m2 ・24h以下、かつ、偏光膜(偏光子)との接着強度が5.5kg/cm2 以上である、偏光子に積層するための高分子フィルム(保護フィルム)が開示されている。
【0006】
しかし、特開平5−212828号公報に開示されている偏光板や特開平10−130402号公報に開示されている保護フィルムを用いた偏光板には、加熱圧着に起因する偏光度の低下や褪色が避けられないという問題点や、接着力が不十分であり、耐久性も低いという問題点がある。また、従来の製造工程をそのまま適用することはできないという問題点もある。
【0007】
上記従来の製造工程とは、偏光子と保護フィルムとの接着工程を指し、保護フィルムとして透湿度の高い鹸化TACを用いて、偏光子にこの保護フィルムを水系のPVA系接着剤でウェットラミネートする工程であるが、上記特開平5−212828号公報に開示されている偏光板や特開平10−130402号公報に開示されている保護フィルムを用いた偏光板の場合、偏光子と保護フィルムとをドライラミネート法で接着する必要があり、さらに加熱圧着装置を必要とすることから、従来の製造工程をそのまま適用することは困難である。
【0008】
これらの問題点に対応するために、例えば、特開2000−321432号公報では、ポリビニルアルコールからなる偏光子と熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムとがポリウレタン系接着剤により接着されている偏光板が開示されている。
【0009】
上記公報に開示されている偏光板は、十分な接着力および耐久性を発現するものの、ポリウレタン系接着剤にウレタンプレポリマー(一液型)やイソシアネート系硬化剤(二液型)を用いているため、初期接着力の発現が遅く、次工程に移行できる程度の接着力を発現させるためには相応の養生時間が必要であるという問題点がある。また、上記ポリウレタン系接着剤が粘度の低い水系のポリウレタン系接着剤である場合、製造工程中において、乾燥するまでの間に偏光子もしくは保護フィルムの剥がれや浮きが発生するという問題点もある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、製造工程中において剥がれや浮きを発生せず、初期接着力の発現が速く、しかも高温環境下や高温高湿環境下においても優れた接着力、優れた耐久性および優れた光学特性を発現する偏光板の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明による偏光板の製造方法は、偏光子と偏光子の保護フィルムとを接着積層する偏光板の製造方法において、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、上記偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートすることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明による偏光板の製造方法は、上記請求項1に記載の偏光板の製造方法において、保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明による偏光板の製造方法は、上記請求項1または請求項2に記載の偏光板の製造方法において、保護フィルムの透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明による偏光板の製造方法は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法において、水性エマルジョンがポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明における偏光板とは、偏光子に偏光子の保護フィルムが接着積層されてなるものであり、上記保護フィルムは、偏光子の少なくとも片面に接着積層されていれば良いが、偏光板の耐久性をより向上させるためには、偏光子の両面に接着積層されていることが好ましい。
【0016】
本発明で用いられる偏光子とは、偏光子としての機能を有するフィルム(シートも含む)のことであり、その具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸したPVA・ヨウ素系偏光子、PVAフィルムに二色性の高い直接染料を拡散吸着させた後、一軸延伸したPVA・染料系偏光子、一軸延伸PVAの脱水処理物や一軸延伸ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0017】
本発明で用いられる保護フィルムとは、上記偏光子を保護する機能を有する透明な熱可塑性樹脂フィルムのことであり、偏光子の片面もしくは両面に接着積層されることにより、保護フィルムとしての機能を発揮する。
【0018】
上記保護フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられ、なかでも、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系樹脂などのシクロオレフィン系樹脂や、オレフィンと無水マレイン酸やN−アルキルマレイミドなどとの共重合体等が挙げられ、なかでも、ノルボルネン系樹脂が好適に用いられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0020】
また、上記アクリル系樹脂としては、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体または共重合体や、ノルボルネン骨格を有するアルコールとアクリル酸とをエステル化して得られるアクリル酸エステルの単独重合体または共重合体等が挙げられる。これらのアクリル系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】
本発明においては、上記ノルボルネン系樹脂のなかでも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が特に好適に用いられる。
【0022】
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやエチレン以外のα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーとを付加共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環を有するモノマーであれば良いが、なかでも、耐熱性に優れ、線膨張率の低いノルボルネン系樹脂や保護フィルムを得られることから、三環体以上の多環体ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。
【0024】
上記ノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体モノマー;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体モノマー;テトラシクロドデセンなどの四環体モノマー;シクロペンタジエン三量体などの五環体モノマー;テトラシクロペンタジエンなどの七環体モノマー;これらのメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、エチリデン基などのアルキリデン基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基等による置換体;これらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素および水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基による置換体等が挙げられる。また、上記ノルボルネン系モノマーのなかでも、入手が容易であって、優れた反応性を有し、耐熱性に優れることから、三環体モノマー、四環体モノマー、五環体モノマー等が好適に用いられる。これらのノルボルネン系モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0025】
これらのノルボルネン系モノマーから得られる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、公知であり、また、商業的に入手できる。公知の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、特開平1−240517号公報に記載されているもの等が挙げられる。また、商業的に入手できる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ジェイエスアール社製の商品名「アートンG」、日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア#1600」や「ゼオノア#1420」、三井化学社製の商品名「APEL」等が挙げられる。これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0026】
保護フィルムを形成する熱可塑性樹脂、特に好ましくは上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、フェノール系やリン系などの酸化防止剤(老化防止剤)、フェノール系などの熱安定剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系などの紫外線吸収剤、脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系、多価アルコールの部分エーテル系などの滑剤、アミン系などの帯電防止剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0027】
熱可塑性樹脂、特に好ましくは熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂から保護フィルムを作製する方法は、例えば、溶液流延法や溶融押出法等の公知のフィルム作製法で良い。
【0028】
本発明で用いられる保護フィルムは、透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることが好ましく、より好ましくは7〜180g/m2 ・24hであり、さらに好ましくは10〜150g/m2 ・24hである。なお、本発明で言う透湿度とは、JIS Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して測定された、保護フィルムの厚みにおける透湿度を意味する。
【0029】
保護フィルムの上記透湿度が5g/m2 ・24h未満であると、水性ウレタン系接着剤を用いて偏光子に保護フィルムをウエットラミネートした後の乾燥が順調に進展せず、初期接着力の発現が遅くなったり、得られる偏光板が高温環境下において変色等の不具合を起こすことがあり、逆に200g/m2 ・24hを超えると、得られる偏光板が高温高湿環境下において褪色や光学特性の低下等の不具合を起こすことがある。
【0030】
また、本発明で用いられる保護フィルムは、透明性が優れたものとなることから、光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上であり、また、耐熱性が優れたものとなることから、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。
【0031】
本発明で用いられる保護フィルムの厚みは、5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは20〜80μmである。
【0032】
保護フィルムの厚みが5μm未満であると、保護フィルムの強度が不十分となったり、得られる偏光板の耐久性が不十分となって、経時的に反り等の不具合を起こすことがあり、逆に200μmを超えると、保護フィルムの透明性が不十分となったり、保護フィルムの透湿度が低下して、水性ウレタン系接着剤を用いて偏光子に保護フィルムをウエットラミネートした後の乾燥が順調に進展せず、初期接着力の発現が遅くなることがある。
【0033】
上記保護フィルムの偏光子と接着積層される表面には、偏光子に対する接着力をより向上させるために、予めコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理等の表面処理が施されていても良い。上記表面処理の程度は、保護フィルム表面の水滴の接触角で65°以下であることが好ましく、より好ましくは60°以下であり、さらに好ましくは55°以下である。
【0034】
本発明の偏光板の製造方法においては、水性ウレタン系接着剤を用いて、上記保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の表面にウェットラミネートすることにより接着積層する。上記保護フィルムを偏光子の一方の表面にのみ接着積層する場合には、偏光子の非液晶セル側の表面に接着積層する。この場合、偏光子の他方の表面(液晶セル側の表面)に接着積層する保護フィルムは、上記保護フィルムであることが好ましいが、上記保護フィルムとは異なる保護フィルムであっても良い。
【0035】
また、偏光子の他方の表面に接着積層する保護フィルムとしては、光弾性係数が1.5×10−11 Pa−1以下である保護フィルムを用いることが好ましい。偏光子の他方の表面に接着積層する保護フィルムの光弾性係数が1.5×10−11 Pa−1を超えると、得られる偏光板を高温環境下に放置した後にクロスニコル状態で観察すると画面の周囲が額縁状に光り漏れする白抜け現象が起きることがある。
【0036】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤は、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなる。
【0037】
上記水性ウレタン系接着剤は、少なくとも水性エマルジョンとPVAとを含有する主剤とポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤とからなる2液型の水性ウレタン系接着剤であっても良いし、少なくとも水性エマルジョンを含有する主剤とポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤とからなる2液型の接着剤に、後からPVA水溶液を添加する3液型の水性ウレタン系接着剤であっても良い。
【0038】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤に含有される水性エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリオレフィン系樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョン、イソシアネート基を有しないポリウレタン系樹脂エマルジョンなどの樹脂エマルジョンや、天然ゴム系ラテックス、合成ゴム系ラテックスなどのゴム(エラストマー)ラテックス等が挙げられる。これらの水性エマルジョンは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
本発明においては、水性ウレタン系接着剤や偏光板の耐久性をより向上させるために、上記水性エマルジョンにポリエステル系樹脂を含有させることが好ましい。
【0040】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールが挙げられ、その具体例としては、例えば、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ポリカプロラクトン、ジオールと二塩基酸とから得られるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂としてのポリエステルポリオールは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0041】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらのジオールは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0042】
また、上記二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらの二塩基酸は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
本発明においては、水性エマルジョンに含有させるポリエステル系樹脂として、例えば東洋モートン社製の商品名「EL−436A」などのような市販のポリエステル系樹脂エマルジョンの1種類もしくは2種類以上を用いても良い。
【0044】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤に含有されるPVAとしては、公知の如何なるPVAであっても良いが、なかでも、偏光板の耐久性をより向上させるために、例えば、鹸化度が94モル%以上であり、重合度が500以上であるPVAを用いることが好ましい。これらのPVAは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0045】
上記水性ウレタン系接着剤において、水性エマルジョンに対するPVAの配合量は、水性エマルジョンの樹脂分100重量部に対して、PVA0.1〜30重量部であることが好ましい。
【0046】
水性エマルジョンの樹脂分100重量部に対するPVAの配合量が0.1重量部未満であると、水性ウレタン系接着剤の初期接着力が不十分となることがあり、逆に30重量部を超えると、水性ウレタン系接着剤の保護フィルムに対する接着力が不十分となることがある。
【0047】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤に含有されるポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する公知の如何なる化合物であっても良く、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどのイソシアネート単量体;イソシアネート単量体の二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート、ビュレット、ウレア変性体などのイソシアネート変性体;ウレタンプレポリマー;ブロックイソシアネート等が挙げられ、なかでもウレタンプレポリマーが好適に用いられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0048】
上記ウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物とヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリエステルなどの水酸基含有化合物との部分的反応で得られる末端にイソシアネート基を有する化合物、ポリイソシアネート化合物の単量体が過剰に含まれるセミプレポリマー(quashプレポリマー)、ポリイソシアネート化合物とポリオールの単量体とからなる末端にイソシアネート基を有するウレタン変性体等が挙げられる。これらのウレタンプレポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0049】
本発明においては、上記ポリイソシアネート化合物のなかでも、前記水性エマルジョンやPVAとの混合性や相溶性に優れることから、水に分散できる自己乳化型ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0050】
上記自己乳化型ポリイソシアネート化合物としては、例えば、分子中にイオン性基を含有するポリイソシアネート化合物、分子中に非イオン性親水基を含有するポリイソシアネート化合物、分子中にイオン性基および非イオン性親水基を含有するポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの自己乳化型ポリイソシアネート化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0051】
上記イオン性基としては、例えば、第4級アンモニウム塩、第3級アミノ基、カルボキシレート基、カルボキシル基、スルホネート基、スルホン酸基、ホスホニウム基、ホスフォン酸基、硫酸エステル基等が挙げられる。これらのイオン性基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
上記非イオン性親水基としては、例えば、ポリオキシエチレン単位等が挙げられる。これらの非イオン性親水基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記イオン性基および非イオン性親水基は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0053】
上記自己乳化型ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、東洋モートン社製の商品名「EL−436B」などのような市販品が挙げられる。
【0054】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、無機充填剤、有機充填剤、増量剤、軟化剤(可塑剤)、接着性付与剤、カップリング剤、界面活性剤、希釈剤、増粘剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0055】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤は、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整されていることが必要であり、好ましくは0.03〜0.8Pa・sであり、より好ましくは0.03〜0.6Pa・sである。
【0056】
水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を上記範囲に調整する方法は、必要に応じて、例えば、水で希釈する方法を採っても良いし、また、水溶性増粘剤を添加して増粘させる方法を採っても良い。
【0057】
水性ウレタン系接着剤の上記粘度(20℃)が0.03Pa・s未満であると、ウェットラミネートされた偏光子と保護フィルムとの乾燥後の初期接着力が不十分となったり、製造工程中において剥がれや浮きが発生する等の不具合が生じ、逆に1Pa・sを超えると、水性ウレタン系接着剤の調製時に混入した気泡の除去に時間がかかり、作業性が悪くなる。また、水性ウレタン系接着剤の上記粘度(20℃)を1Pa・s超とするためには、多量のPVAを配合する必要が生じ、PVAの配合量が増えると、保護フィルムに対する接着力が不十分となる。
【0058】
上記水性ウレタン系接着剤を用いて、偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートする方法は、例えば、塗工の円滑性、乾燥後の塗工厚み等を考慮して、水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)が上記範囲を逸脱しない前提で、必要に応じて水性ウレタン系接着剤の樹脂分もしくは固形分を例えば1〜70重量%に調整し、例えばグラビアコーター、マイクログラビアコーター、フローコーター(カーテンコーター)等の公知の塗工機を用いて、偏光子もしくは保護フィルムの所定の表面に塗工してウェットラミネートした後、熱風等を用いて乾燥することにより、接着積層すれば良い。
【0059】
水性ウレタン系接着剤の塗工量は、0.05〜10g/m2 であることが好ましい。
【0060】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
1.偏光子の作製
鹸化度が99モル%であり、厚みが75μmであるPVA未延伸フィルムを室温の水で洗浄した後、縦一軸に5倍延伸を行った。次いで、このPVAフィルムを緊張状態を保持したまま、ヨウ素0.5重量%およびヨウ化カリウム5重量%を含有する水溶液中に浸漬し、二色性色素を吸着させた後、さらにホウ酸10重量%およびヨウ化カリウム10重量%を含有する50℃の水溶液中に浸漬し、5分間架橋処理を行って、偏光子を作製した。
【0062】
2.保護フィルムの作製
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(商品名「アートン」、ジェイエスアール社製)を樹脂分が35重量%となるようにトルエンに溶解した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)製工程フィルム上に流延し、80℃で5分間および120℃で5分間乾燥した。次に、上記流延フィルムを工程フィルムから剥離した後、さらに150℃で3分間乾燥して、厚みが40μmの保護フィルムを作製した。次いで、得られた保護フィルムの一方の表面にコロナ放電処理を施した後、蒸留水を用いて同表面の接触角を測定したところ、接触角で48°であった。
【0063】
(実施例1)
東洋モートン社製の市販の2液型水性ウレタン系接着剤の主剤(商品名「EL−436A」、固形分35重量%)、硬化剤(商品名「EL−436B」、固形分100重量%)、PVA(商品名「クラレポバールPVA−117」、クラレ社製)水溶液(固形分10重量%)および水を、重量比で、主剤/硬化剤/PVA水溶液/水=7/3/3/30で混合し、水性ウレタン系接着剤を調製した。得られた水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)をB8U型回転粘度計(東京計器社製)を用いて測定したところ、0.03Pa・sであった。
【0064】
次いで、上記水性ウレタン系接着剤を保護フィルムのコロナ放電処理面にメイヤーバー#8を用いて塗工し、ラミネーターを用いて偏光子の両面にウェットラミネートした後、80℃で20分間乾燥し、さらに45℃で48時間養生して、偏光板を作製した。
【0065】
(実施例2)
市販の2液型水性ウレタン系接着剤の主剤「EL−436A」、硬化剤「EL−436B」、PVA「クラレポバールPVA−117」水溶液(固形分10重量%)および水を、重量比で、主剤/硬化剤/PVA水溶液/水=1/1/9/2で混合し、水性ウレタン系接着剤を調製した。得られた水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を実施例1の場合と同様にして測定したところ、0.75Pa・sであった。上記水性ウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、偏光板を作製した。
【0066】
(比較例1)
市販の2液型水性ウレタン系接着剤「EL−436A」および「EL−436B」を重量比で主剤/硬化剤=10/3で混合し、水で固形分が20重量%となるように希釈した。PVAを配合することなく、上記水性ウレタン系接着剤の混合希釈液をそのまま水性ウレタン系接着剤として用いた。この水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を実施例1の場合と同様にして測定したところ、0.02Pa・sであった。上記水性ウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、偏光板を作製した。
【0067】
(比較例2)
市販の2液型水性ウレタン系接着剤の主剤「EL−436A」、硬化剤「EL−436B」、PVA「クラレポバールPVA−117」水溶液(固形分10重量%)および水を、重量比で、主剤/硬化剤/PVA水溶液/水=0.3/0.5/12/1で混合し、水性ウレタン系接着剤を調製した。得られた水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を実施例1の場合と同様にして測定したところ、1.25Pa・sであった。上記水性ウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、偏光板を作製した。
【0068】
実施例1および実施例2、ならびに、比較例1および比較例2で得られた偏光板の性能(▲1▼光線透過率、▲2▼偏光度、▲3▼乾燥工程適応性、▲4▼初期接着力、▲5▼養生後接着力)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示した。
【0069】
▲1▼光線透過率
偏光板を50mm×50mmの正方形に打ち抜いて測定用試料を作製した。次いで、分光測色計(型式「TC−1800」、東京電色工業社製)を用いて、上記測定用試料の初期光線透過率をY値で測定した。また、上記測定用試料を90℃および60℃−90%RHの二つの環境下にそれぞれ500時間放置した後、上記と同様にしてそれぞれの耐久光線透過率をY値で測定し、Y値の変化量を算出した。
【0070】
▲2▼偏光度
偏光板を50mm×50mmの正方形に打ち抜いて測定用試料を作製した。次いで、上記測定用試料2枚を用いて、平行光線透過率および直交光線透過率を測定し、下式により初期偏光度を求めた。また、上記測定用試料を90℃および60℃−90%RHの二つの環境下にそれぞれ500時間放置した後、上記と同様にしてそれぞれの耐久偏光度を求め、偏光度の変化量を算出した。
偏光度=[(H1−H2)/(H1+H2)]1/2
式中、H1は平行光線透過率を示し、H2は直交光線透過率を示す。
【0071】
▲3▼乾燥工程適応性
偏光板作製時の乾燥工程(80℃で20分間)中における剥がれや浮きの発生の有無を目視で観察し、下記判定基準により乾燥工程適応性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥乾燥工程において、剥がれや浮きの発生は全く認められなかった。
×‥‥乾燥工程において、剥がれや浮きの発生が認められた。
▲4▼初期接着力
上記乾燥工程(80℃で20分間)を経た後の偏光板を25mm幅に切り出し、剥離速度300mm/分でT型剥離試験を行って、初期接着力を測定した。
▲5▼養生後接着力
偏光板作製時の養生工程(45℃で48時間)を経た後の偏光板のコーナーにカッター刃を入れて、指で剥離を試み、下記判定基準により養生後接着力を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥剥離することは困難であった。
×‥‥容易に剥離することができた。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明の偏光板の製造方法によれば、少なくとも水性エマルジョンとPVAとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度が特定の範囲となるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、偏光子と偏光子の保護フィルムとをウェットラミネートすることにより接着積層するので、製造工程中において剥がれや浮きを発生せず、初期接着力の発現が速く、しかも高温環境下や高温高湿環境下においても優れた接着力、優れた耐久性および優れた光学特性を発現する偏光板を効率的かつ簡便に得ることができる。
【0074】
また、本発明の偏光板の製造方法において、保護フィルムとして熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムおよび/または特定の透湿度を有する保護フィルムを用いることにより、および/または、水性ウレタン系接着剤を構成する水性エマルジョンとしてポリエステル系樹脂を含有する水性エマルジョンを用いることにより、得られる偏光板の上記性能はさらに向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶ディスプレイは車載用や携帯情報機器用として用いられることが多くなり、液晶ディスプレイの高温環境下および高温高湿環境下における信頼性が強く要望されている。
【0003】
液晶ディスプレイを構成する偏光板としては、延伸配向したポリビニルアルコールにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させて作製した偏光子の両面にトリアセチルセルロース(TAC)を保護フィルムとして接着積層したものが一般的に用いられ、この偏光板は、透明電極を形成した2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの片側もしくは両側に貼り付けて用いられる。
【0004】
上記TACは、そのままでは偏光子との接着性が悪いため、アルカリ処理したTAC(以下、「鹸化TAC」と記す)として用いられている。しかし、鹸化TACを保護フィルムとして用いた偏光板は、鹸化TACの透湿度が高すぎるため、高温高湿環境下において偏光性能の低下を起こすという問題点がある。また、TACは光弾性係数が高いので、高温環境下に放置した後の偏光板をクロスニコル状態で観察すると画面の周囲が額縁状に光り漏れを起こす現象、いわゆる“白抜け現象”が起きるという問題点もある。
【0005】
これらの問題点に対応するために種々の試みがなされており、例えば、特開平5−212828号公報では、ポリビニルアルコール系シート(偏光子)の少なくとも片面にアクリル系粘着剤層を介して熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂シート(保護フィルム)が積層され、加熱圧着されてなる複合シート(偏光板)が開示されている。また、特開平10−130402号公報では、光線透過率が80%以上、水蒸気透過度が100g/m2 ・24h以下、かつ、偏光膜(偏光子)との接着強度が5.5kg/cm2 以上である、偏光子に積層するための高分子フィルム(保護フィルム)が開示されている。
【0006】
しかし、特開平5−212828号公報に開示されている偏光板や特開平10−130402号公報に開示されている保護フィルムを用いた偏光板には、加熱圧着に起因する偏光度の低下や褪色が避けられないという問題点や、接着力が不十分であり、耐久性も低いという問題点がある。また、従来の製造工程をそのまま適用することはできないという問題点もある。
【0007】
上記従来の製造工程とは、偏光子と保護フィルムとの接着工程を指し、保護フィルムとして透湿度の高い鹸化TACを用いて、偏光子にこの保護フィルムを水系のPVA系接着剤でウェットラミネートする工程であるが、上記特開平5−212828号公報に開示されている偏光板や特開平10−130402号公報に開示されている保護フィルムを用いた偏光板の場合、偏光子と保護フィルムとをドライラミネート法で接着する必要があり、さらに加熱圧着装置を必要とすることから、従来の製造工程をそのまま適用することは困難である。
【0008】
これらの問題点に対応するために、例えば、特開2000−321432号公報では、ポリビニルアルコールからなる偏光子と熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムとがポリウレタン系接着剤により接着されている偏光板が開示されている。
【0009】
上記公報に開示されている偏光板は、十分な接着力および耐久性を発現するものの、ポリウレタン系接着剤にウレタンプレポリマー(一液型)やイソシアネート系硬化剤(二液型)を用いているため、初期接着力の発現が遅く、次工程に移行できる程度の接着力を発現させるためには相応の養生時間が必要であるという問題点がある。また、上記ポリウレタン系接着剤が粘度の低い水系のポリウレタン系接着剤である場合、製造工程中において、乾燥するまでの間に偏光子もしくは保護フィルムの剥がれや浮きが発生するという問題点もある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、製造工程中において剥がれや浮きを発生せず、初期接着力の発現が速く、しかも高温環境下や高温高湿環境下においても優れた接着力、優れた耐久性および優れた光学特性を発現する偏光板の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明による偏光板の製造方法は、偏光子と偏光子の保護フィルムとを接着積層する偏光板の製造方法において、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、上記偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートすることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明による偏光板の製造方法は、上記請求項1に記載の偏光板の製造方法において、保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明による偏光板の製造方法は、上記請求項1または請求項2に記載の偏光板の製造方法において、保護フィルムの透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明による偏光板の製造方法は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法において、水性エマルジョンがポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする。
【0015】
本発明における偏光板とは、偏光子に偏光子の保護フィルムが接着積層されてなるものであり、上記保護フィルムは、偏光子の少なくとも片面に接着積層されていれば良いが、偏光板の耐久性をより向上させるためには、偏光子の両面に接着積層されていることが好ましい。
【0016】
本発明で用いられる偏光子とは、偏光子としての機能を有するフィルム(シートも含む)のことであり、その具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムにヨウ素を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸したPVA・ヨウ素系偏光子、PVAフィルムに二色性の高い直接染料を拡散吸着させた後、一軸延伸したPVA・染料系偏光子、一軸延伸PVAの脱水処理物や一軸延伸ポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向偏光子等が挙げられる。これらの偏光子は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0017】
本発明で用いられる保護フィルムとは、上記偏光子を保護する機能を有する透明な熱可塑性樹脂フィルムのことであり、偏光子の片面もしくは両面に接着積層されることにより、保護フィルムとしての機能を発揮する。
【0018】
上記保護フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられ、なかでも、ポリオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系樹脂などのシクロオレフィン系樹脂や、オレフィンと無水マレイン酸やN−アルキルマレイミドなどとの共重合体等が挙げられ、なかでも、ノルボルネン系樹脂が好適に用いられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0020】
また、上記アクリル系樹脂としては、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体または共重合体や、ノルボルネン骨格を有するアルコールとアクリル酸とをエステル化して得られるアクリル酸エステルの単独重合体または共重合体等が挙げられる。これらのアクリル系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】
本発明においては、上記ノルボルネン系樹脂のなかでも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂が特に好適に用いられる。
【0022】
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂、ノルボルネン系モノマーとエチレンやエチレン以外のα−オレフィンなどのオレフィン系モノマーとを付加共重合させた樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環を有するモノマーであれば良いが、なかでも、耐熱性に優れ、線膨張率の低いノルボルネン系樹脂や保護フィルムを得られることから、三環体以上の多環体ノルボルネン系モノマーを用いることが好ましい。
【0024】
上記ノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体モノマー;ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体モノマー;テトラシクロドデセンなどの四環体モノマー;シクロペンタジエン三量体などの五環体モノマー;テトラシクロペンタジエンなどの七環体モノマー;これらのメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、エチリデン基などのアルキリデン基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのアリール基等による置換体;これらのエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、水酸基、カルボン酸基、アミノ基、無水酸基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等の炭素および水素以外の元素を含有する基、いわゆる極性基による置換体等が挙げられる。また、上記ノルボルネン系モノマーのなかでも、入手が容易であって、優れた反応性を有し、耐熱性に優れることから、三環体モノマー、四環体モノマー、五環体モノマー等が好適に用いられる。これらのノルボルネン系モノマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0025】
これらのノルボルネン系モノマーから得られる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、公知であり、また、商業的に入手できる。公知の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、特開平1−240517号公報に記載されているもの等が挙げられる。また、商業的に入手できる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては、例えば、ジェイエスアール社製の商品名「アートンG」、日本ゼオン社製の商品名「ゼオノア#1600」や「ゼオノア#1420」、三井化学社製の商品名「APEL」等が挙げられる。これらの熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0026】
保護フィルムを形成する熱可塑性樹脂、特に好ましくは上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、フェノール系やリン系などの酸化防止剤(老化防止剤)、フェノール系などの熱安定剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系などの紫外線吸収剤、脂肪族アルコールのエステル系、多価アルコールの部分エステル系、多価アルコールの部分エーテル系などの滑剤、アミン系などの帯電防止剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0027】
熱可塑性樹脂、特に好ましくは熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂から保護フィルムを作製する方法は、例えば、溶液流延法や溶融押出法等の公知のフィルム作製法で良い。
【0028】
本発明で用いられる保護フィルムは、透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることが好ましく、より好ましくは7〜180g/m2 ・24hであり、さらに好ましくは10〜150g/m2 ・24hである。なお、本発明で言う透湿度とは、JIS Z−0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して測定された、保護フィルムの厚みにおける透湿度を意味する。
【0029】
保護フィルムの上記透湿度が5g/m2 ・24h未満であると、水性ウレタン系接着剤を用いて偏光子に保護フィルムをウエットラミネートした後の乾燥が順調に進展せず、初期接着力の発現が遅くなったり、得られる偏光板が高温環境下において変色等の不具合を起こすことがあり、逆に200g/m2 ・24hを超えると、得られる偏光板が高温高湿環境下において褪色や光学特性の低下等の不具合を起こすことがある。
【0030】
また、本発明で用いられる保護フィルムは、透明性が優れたものとなることから、光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上であり、また、耐熱性が優れたものとなることから、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。
【0031】
本発明で用いられる保護フィルムの厚みは、5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは20〜80μmである。
【0032】
保護フィルムの厚みが5μm未満であると、保護フィルムの強度が不十分となったり、得られる偏光板の耐久性が不十分となって、経時的に反り等の不具合を起こすことがあり、逆に200μmを超えると、保護フィルムの透明性が不十分となったり、保護フィルムの透湿度が低下して、水性ウレタン系接着剤を用いて偏光子に保護フィルムをウエットラミネートした後の乾燥が順調に進展せず、初期接着力の発現が遅くなることがある。
【0033】
上記保護フィルムの偏光子と接着積層される表面には、偏光子に対する接着力をより向上させるために、予めコロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線照射処理等の表面処理が施されていても良い。上記表面処理の程度は、保護フィルム表面の水滴の接触角で65°以下であることが好ましく、より好ましくは60°以下であり、さらに好ましくは55°以下である。
【0034】
本発明の偏光板の製造方法においては、水性ウレタン系接着剤を用いて、上記保護フィルムを偏光子の少なくとも一方の表面にウェットラミネートすることにより接着積層する。上記保護フィルムを偏光子の一方の表面にのみ接着積層する場合には、偏光子の非液晶セル側の表面に接着積層する。この場合、偏光子の他方の表面(液晶セル側の表面)に接着積層する保護フィルムは、上記保護フィルムであることが好ましいが、上記保護フィルムとは異なる保護フィルムであっても良い。
【0035】
また、偏光子の他方の表面に接着積層する保護フィルムとしては、光弾性係数が1.5×10−11 Pa−1以下である保護フィルムを用いることが好ましい。偏光子の他方の表面に接着積層する保護フィルムの光弾性係数が1.5×10−11 Pa−1を超えると、得られる偏光板を高温環境下に放置した後にクロスニコル状態で観察すると画面の周囲が額縁状に光り漏れする白抜け現象が起きることがある。
【0036】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤は、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなる。
【0037】
上記水性ウレタン系接着剤は、少なくとも水性エマルジョンとPVAとを含有する主剤とポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤とからなる2液型の水性ウレタン系接着剤であっても良いし、少なくとも水性エマルジョンを含有する主剤とポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤とからなる2液型の接着剤に、後からPVA水溶液を添加する3液型の水性ウレタン系接着剤であっても良い。
【0038】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤に含有される水性エマルジョンとしては、例えば、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、ポリオレフィン系樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂エマルジョン、イソシアネート基を有しないポリウレタン系樹脂エマルジョンなどの樹脂エマルジョンや、天然ゴム系ラテックス、合成ゴム系ラテックスなどのゴム(エラストマー)ラテックス等が挙げられる。これらの水性エマルジョンは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
本発明においては、水性ウレタン系接着剤や偏光板の耐久性をより向上させるために、上記水性エマルジョンにポリエステル系樹脂を含有させることが好ましい。
【0040】
上記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステルポリオールが挙げられ、その具体例としては、例えば、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ポリカプロラクトン、ジオールと二塩基酸とから得られるポリエステル等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂としてのポリエステルポリオールは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0041】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらのジオールは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0042】
また、上記二塩基酸としては、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。これらの二塩基酸は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
本発明においては、水性エマルジョンに含有させるポリエステル系樹脂として、例えば東洋モートン社製の商品名「EL−436A」などのような市販のポリエステル系樹脂エマルジョンの1種類もしくは2種類以上を用いても良い。
【0044】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤に含有されるPVAとしては、公知の如何なるPVAであっても良いが、なかでも、偏光板の耐久性をより向上させるために、例えば、鹸化度が94モル%以上であり、重合度が500以上であるPVAを用いることが好ましい。これらのPVAは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0045】
上記水性ウレタン系接着剤において、水性エマルジョンに対するPVAの配合量は、水性エマルジョンの樹脂分100重量部に対して、PVA0.1〜30重量部であることが好ましい。
【0046】
水性エマルジョンの樹脂分100重量部に対するPVAの配合量が0.1重量部未満であると、水性ウレタン系接着剤の初期接着力が不十分となることがあり、逆に30重量部を超えると、水性ウレタン系接着剤の保護フィルムに対する接着力が不十分となることがある。
【0047】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤に含有されるポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する公知の如何なる化合物であっても良く、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニルメタン)、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートなどのイソシアネート単量体;イソシアネート単量体の二量体、三量体、カルボジイミド体、アロハネート、ビュレット、ウレア変性体などのイソシアネート変性体;ウレタンプレポリマー;ブロックイソシアネート等が挙げられ、なかでもウレタンプレポリマーが好適に用いられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0048】
上記ウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物とヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリエステルなどの水酸基含有化合物との部分的反応で得られる末端にイソシアネート基を有する化合物、ポリイソシアネート化合物の単量体が過剰に含まれるセミプレポリマー(quashプレポリマー)、ポリイソシアネート化合物とポリオールの単量体とからなる末端にイソシアネート基を有するウレタン変性体等が挙げられる。これらのウレタンプレポリマーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0049】
本発明においては、上記ポリイソシアネート化合物のなかでも、前記水性エマルジョンやPVAとの混合性や相溶性に優れることから、水に分散できる自己乳化型ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。
【0050】
上記自己乳化型ポリイソシアネート化合物としては、例えば、分子中にイオン性基を含有するポリイソシアネート化合物、分子中に非イオン性親水基を含有するポリイソシアネート化合物、分子中にイオン性基および非イオン性親水基を含有するポリイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの自己乳化型ポリイソシアネート化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0051】
上記イオン性基としては、例えば、第4級アンモニウム塩、第3級アミノ基、カルボキシレート基、カルボキシル基、スルホネート基、スルホン酸基、ホスホニウム基、ホスフォン酸基、硫酸エステル基等が挙げられる。これらのイオン性基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
上記非イオン性親水基としては、例えば、ポリオキシエチレン単位等が挙げられる。これらの非イオン性親水基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記イオン性基および非イオン性親水基は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0053】
上記自己乳化型ポリイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、東洋モートン社製の商品名「EL−436B」などのような市販品が挙げられる。
【0054】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、無機充填剤、有機充填剤、増量剤、軟化剤(可塑剤)、接着性付与剤、カップリング剤、界面活性剤、希釈剤、増粘剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が添加されていても良い。
【0055】
本発明で用いられる水性ウレタン系接着剤は、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整されていることが必要であり、好ましくは0.03〜0.8Pa・sであり、より好ましくは0.03〜0.6Pa・sである。
【0056】
水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を上記範囲に調整する方法は、必要に応じて、例えば、水で希釈する方法を採っても良いし、また、水溶性増粘剤を添加して増粘させる方法を採っても良い。
【0057】
水性ウレタン系接着剤の上記粘度(20℃)が0.03Pa・s未満であると、ウェットラミネートされた偏光子と保護フィルムとの乾燥後の初期接着力が不十分となったり、製造工程中において剥がれや浮きが発生する等の不具合が生じ、逆に1Pa・sを超えると、水性ウレタン系接着剤の調製時に混入した気泡の除去に時間がかかり、作業性が悪くなる。また、水性ウレタン系接着剤の上記粘度(20℃)を1Pa・s超とするためには、多量のPVAを配合する必要が生じ、PVAの配合量が増えると、保護フィルムに対する接着力が不十分となる。
【0058】
上記水性ウレタン系接着剤を用いて、偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートする方法は、例えば、塗工の円滑性、乾燥後の塗工厚み等を考慮して、水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)が上記範囲を逸脱しない前提で、必要に応じて水性ウレタン系接着剤の樹脂分もしくは固形分を例えば1〜70重量%に調整し、例えばグラビアコーター、マイクログラビアコーター、フローコーター(カーテンコーター)等の公知の塗工機を用いて、偏光子もしくは保護フィルムの所定の表面に塗工してウェットラミネートした後、熱風等を用いて乾燥することにより、接着積層すれば良い。
【0059】
水性ウレタン系接着剤の塗工量は、0.05〜10g/m2 であることが好ましい。
【0060】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0061】
1.偏光子の作製
鹸化度が99モル%であり、厚みが75μmであるPVA未延伸フィルムを室温の水で洗浄した後、縦一軸に5倍延伸を行った。次いで、このPVAフィルムを緊張状態を保持したまま、ヨウ素0.5重量%およびヨウ化カリウム5重量%を含有する水溶液中に浸漬し、二色性色素を吸着させた後、さらにホウ酸10重量%およびヨウ化カリウム10重量%を含有する50℃の水溶液中に浸漬し、5分間架橋処理を行って、偏光子を作製した。
【0062】
2.保護フィルムの作製
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(商品名「アートン」、ジェイエスアール社製)を樹脂分が35重量%となるようにトルエンに溶解した後、ポリエチレンテレフタレート(PET)製工程フィルム上に流延し、80℃で5分間および120℃で5分間乾燥した。次に、上記流延フィルムを工程フィルムから剥離した後、さらに150℃で3分間乾燥して、厚みが40μmの保護フィルムを作製した。次いで、得られた保護フィルムの一方の表面にコロナ放電処理を施した後、蒸留水を用いて同表面の接触角を測定したところ、接触角で48°であった。
【0063】
(実施例1)
東洋モートン社製の市販の2液型水性ウレタン系接着剤の主剤(商品名「EL−436A」、固形分35重量%)、硬化剤(商品名「EL−436B」、固形分100重量%)、PVA(商品名「クラレポバールPVA−117」、クラレ社製)水溶液(固形分10重量%)および水を、重量比で、主剤/硬化剤/PVA水溶液/水=7/3/3/30で混合し、水性ウレタン系接着剤を調製した。得られた水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)をB8U型回転粘度計(東京計器社製)を用いて測定したところ、0.03Pa・sであった。
【0064】
次いで、上記水性ウレタン系接着剤を保護フィルムのコロナ放電処理面にメイヤーバー#8を用いて塗工し、ラミネーターを用いて偏光子の両面にウェットラミネートした後、80℃で20分間乾燥し、さらに45℃で48時間養生して、偏光板を作製した。
【0065】
(実施例2)
市販の2液型水性ウレタン系接着剤の主剤「EL−436A」、硬化剤「EL−436B」、PVA「クラレポバールPVA−117」水溶液(固形分10重量%)および水を、重量比で、主剤/硬化剤/PVA水溶液/水=1/1/9/2で混合し、水性ウレタン系接着剤を調製した。得られた水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を実施例1の場合と同様にして測定したところ、0.75Pa・sであった。上記水性ウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、偏光板を作製した。
【0066】
(比較例1)
市販の2液型水性ウレタン系接着剤「EL−436A」および「EL−436B」を重量比で主剤/硬化剤=10/3で混合し、水で固形分が20重量%となるように希釈した。PVAを配合することなく、上記水性ウレタン系接着剤の混合希釈液をそのまま水性ウレタン系接着剤として用いた。この水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を実施例1の場合と同様にして測定したところ、0.02Pa・sであった。上記水性ウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、偏光板を作製した。
【0067】
(比較例2)
市販の2液型水性ウレタン系接着剤の主剤「EL−436A」、硬化剤「EL−436B」、PVA「クラレポバールPVA−117」水溶液(固形分10重量%)および水を、重量比で、主剤/硬化剤/PVA水溶液/水=0.3/0.5/12/1で混合し、水性ウレタン系接着剤を調製した。得られた水性ウレタン系接着剤の粘度(20℃)を実施例1の場合と同様にして測定したところ、1.25Pa・sであった。上記水性ウレタン系接着剤を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、偏光板を作製した。
【0068】
実施例1および実施例2、ならびに、比較例1および比較例2で得られた偏光板の性能(▲1▼光線透過率、▲2▼偏光度、▲3▼乾燥工程適応性、▲4▼初期接着力、▲5▼養生後接着力)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示した。
【0069】
▲1▼光線透過率
偏光板を50mm×50mmの正方形に打ち抜いて測定用試料を作製した。次いで、分光測色計(型式「TC−1800」、東京電色工業社製)を用いて、上記測定用試料の初期光線透過率をY値で測定した。また、上記測定用試料を90℃および60℃−90%RHの二つの環境下にそれぞれ500時間放置した後、上記と同様にしてそれぞれの耐久光線透過率をY値で測定し、Y値の変化量を算出した。
【0070】
▲2▼偏光度
偏光板を50mm×50mmの正方形に打ち抜いて測定用試料を作製した。次いで、上記測定用試料2枚を用いて、平行光線透過率および直交光線透過率を測定し、下式により初期偏光度を求めた。また、上記測定用試料を90℃および60℃−90%RHの二つの環境下にそれぞれ500時間放置した後、上記と同様にしてそれぞれの耐久偏光度を求め、偏光度の変化量を算出した。
偏光度=[(H1−H2)/(H1+H2)]1/2
式中、H1は平行光線透過率を示し、H2は直交光線透過率を示す。
【0071】
▲3▼乾燥工程適応性
偏光板作製時の乾燥工程(80℃で20分間)中における剥がれや浮きの発生の有無を目視で観察し、下記判定基準により乾燥工程適応性を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥乾燥工程において、剥がれや浮きの発生は全く認められなかった。
×‥‥乾燥工程において、剥がれや浮きの発生が認められた。
▲4▼初期接着力
上記乾燥工程(80℃で20分間)を経た後の偏光板を25mm幅に切り出し、剥離速度300mm/分でT型剥離試験を行って、初期接着力を測定した。
▲5▼養生後接着力
偏光板作製時の養生工程(45℃で48時間)を経た後の偏光板のコーナーにカッター刃を入れて、指で剥離を試み、下記判定基準により養生後接着力を評価した。
〔判定基準〕
○‥‥剥離することは困難であった。
×‥‥容易に剥離することができた。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明の偏光板の製造方法によれば、少なくとも水性エマルジョンとPVAとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度が特定の範囲となるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、偏光子と偏光子の保護フィルムとをウェットラミネートすることにより接着積層するので、製造工程中において剥がれや浮きを発生せず、初期接着力の発現が速く、しかも高温環境下や高温高湿環境下においても優れた接着力、優れた耐久性および優れた光学特性を発現する偏光板を効率的かつ簡便に得ることができる。
【0074】
また、本発明の偏光板の製造方法において、保護フィルムとして熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる保護フィルムおよび/または特定の透湿度を有する保護フィルムを用いることにより、および/または、水性ウレタン系接着剤を構成する水性エマルジョンとしてポリエステル系樹脂を含有する水性エマルジョンを用いることにより、得られる偏光板の上記性能はさらに向上する。
Claims (4)
- 偏光子と偏光子の保護フィルムとを接着積層する偏光板の製造方法において、少なくとも水性エマルジョンとポリビニルアルコールとポリイソシアネート化合物とを含有してなり、B型粘度計による粘度(20℃)が0.03〜1Pa・sとなるように調整された水性ウレタン系接着剤を用いて、上記偏光子と保護フィルムとをウェットラミネートすることを特徴とする偏光板の製造方法。
- 保護フィルムが熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造方法。
- 保護フィルムの透湿度が5〜200g/m2 ・24hであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の偏光板の製造方法。
- 水性エマルジョンがポリエステル系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
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