JP2004026572A - ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーン - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラスクロスの緯糸として用いられ、エアジェット製織時の毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性に優れる、ガラス繊維ヤーン用集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンを提供する。
【解決手段】平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、前記集束剤が、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有し、前記パラフィン及び前記エーテル系乳化剤に対する、前記エーテル系乳化剤の含有量が5〜40質量%であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、前記集束剤が、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有し、前記パラフィン及び前記エーテル系乳化剤に対する、前記エーテル系乳化剤の含有量が5〜40質量%であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、主としてプリント配線板の基板材料等として使用されるガラスクロスに用いられる、ガラス繊維ヤーンの集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維ヤーンは、繊維径数ミクロンのガラスフィラメント数百本〜千数百本を、集束剤を用いて集束してストランドとし、このストランドに撚りをかけて得られる。そして、このガラス繊維ヤーンは、製織工程によってガラスクロスとなり、このガラスクロスに樹脂を含浸させることによって、繊維強化プラスチック(FRP)製品の補強材として使用されている。
【0003】
近年、このガラスクロスの用途として、特にプリント配線板の基板材料への適用が注目されている。このプリント配線板の製造工程においては、ガラスクロスにエポキシ等の樹脂を含浸させてプレプリグを形成し、更に、薄い銅箔等が積層されて形成される。このため、銅箔を損傷しないように、ガラスクロスの表面には毛羽等の欠陥が非常に少ないことが要求されている。
【0004】
一方、このようなガラスクロスの製造工程としては、上記のストランドにリング撚糸機等を用いて撚りをかけてガラス繊維ヤーンとし、これをエアージェット織機等によって製織することが行なわれている。エアジェット織機は、製織時において緯糸をエアーに乗せて搬送してよこ入れすることを特徴とし、これにより高速製織を可能としている。したがって、エアジェット織機に用いられるガラス繊維ヤーンの緯糸は、このエアーによる搬送され易さ(製織性)である飛走性が要求されている。
【0005】
しかし、特に、上記のプリント配線板に使用されるガラス繊維ヤーンとしては、例えばG75(ストランドの番手で67.5tex)と呼ばれる糸のように、太めで重いヤーンが使用される場合、製織性が劣り、飛走性が劣るといった傾向がある。この場合、エアー圧を高くして製織することも考えられるが、高圧エアーによってガラス繊維ヤーンが損傷して毛羽が発生しやすくなるという問題がある。したがって、このようなガラス繊維ヤーンには適度の開繊性を付与して、これによって、飛走性を向上させる必要がある。
【0006】
このような、ガラス繊維ヤーンに適度の開繊性を付与することは、ガラスフィラメントをストランドに集束する際の集束剤の組成によって調整することができる。すなわち、一般には、ガラス繊維用の集束剤としては、澱粉等の被膜形成剤を主とし、乳化によってエマルジョン化した油剤液を混合し、集束剤溶液としてガラス繊維に付与することが行なわれているが、このうちの油剤及び乳化剤の種類と量を調整することにより、集束剤の潤滑性を調整して開繊性を調整することができる。
【0007】
このような、毛羽発生を抑制する被膜特性と、エアージェット製織に適した飛走性に優れたガラス繊維用の集束剤として、例えば、特開2000−191341号公報には、澱粉と、アルキルポリオキシエチレンエーテル又はアルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルと、必要な場合硫酸アンモニウム系化合物を含む集束剤が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら、集束剤成分を調整して開繊性を向上させると、エアジェット製織における飛走性は向上するが、逆に開繊過剰になると、エアジェット製織における、よこ入れ時に、毛羽が発生し易くなり、ガラスクロスの表面欠点が生じやすくなるという問題点がある。
【0009】
したがって、上記のプリント配線板に用いる、太いガラス繊維ヤーンの製織に適する集束剤であって、開繊性を向上させて飛走性を良好にする一方、製織時の毛羽発生も抑制するという、相反する性質を同時に満足するような集束剤を得ることは従来困難であった。
【0010】
また、上記の特開2000−191341号公報の集束剤においては、アルキルポリオキシエチレンエーテル又はアルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルが柔軟剤として付与されているものの、油剤成分との組み合わせが非限定的であるために、エアジェット製織における毛羽発生防止と飛走性の確保の両立が充分でないという問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板に使用されるガラスクロスの緯糸として用いられ、エアジェット製織時の毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性に優れる、ガラス繊維ヤーン用集束剤を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、
前記集束剤が、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有し、
前記パラフィン及び前記エーテル系乳化剤に対する、前記エーテル系乳化剤の含有量が5〜40質量%であることを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、パラフィンと、エーテル系乳化剤を用いることにより、ガラス繊維ヤーンの開繊性が向上する。しかも、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対する、エーテル系乳化剤の含有量を5〜40質量%の範囲とし、他に植物油を含有するので、過剰な開繊や毛羽の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の集束剤においては、前記エーテル系乳化剤が、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。これによれば、更にエアジェット織機における飛走性が向上するとともに、毛羽の発生を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の集束剤においては、前記乳化剤として、更にエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更にエアジェット織機における飛走性が向上するとともに、毛羽の発生を抑制することができる。
【0016】
更に、本発明の集束剤においては、前記澱粉100質量部に対する、前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10〜30質量部であることが好ましい。本発明においては、油剤としてパラフィン及びエーテル系乳化剤を組み合わせているので、上記特定量の油剤含有量であっても開繊性を付与することができる。
【0017】
また、本発明の集束剤においては、前記パラフィン及び前記植物油に対する、前記パラフィンの含有量が70〜90質量%であることが好ましい。このように油剤におけるパラフィン量を特定量配合することで、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。
【0018】
更に、本発明の集束剤においては、前記植物油と前記パラフィンが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されており、前記パラフィンの乳化剤として、前記エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を用いることが好ましい。
【0019】
これによれば、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを一括して混合する場合と比較して、パラフィンとエーテル系乳化剤との乳化状態がより安定するので、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、本発明のガラス繊維ヤーンは、上記の本発明の集束剤を付着してなるガラス繊維ヤーンである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有する。
【0023】
澱粉はフィラメントを集束するとともに、被膜形成剤として工程中での屈曲、摩擦からガラス繊維を保護する目的として用いられる。澱粉の種類としては特に限定されず、例えばコーンスターチが好ましく用いられる。また、アミロース含量が50%以上であるハイアミロース澱粉を用いてもよい。
【0024】
更に、エーテル変性されたエーテル化澱粉を用いることも好ましい。これにより、製織時の粉落ちを抑制することができるとともに、加熱脱油時においても比較的容易に除去することができる。
【0025】
次に、本発明に用いる油剤について説明する。油剤は主にストランドに潤滑性を付与する目的として用いられる。
【0026】
本発明においては、油剤として、植物油とパラフィンとを併用することを特徴とする。植物油のみでは潤滑性が不足するので、毛羽の発生、飛走性共に好ましくなく、パラフィンを含有させることによって滑り性を付与し、これによって開繊性を付与してエアジェット織機における飛走性を向上させることができる。ただし、パラフィンのみでは、飛走性は向上するものの、逆に開繊過剰となって毛羽の発生が増加するので、両者を併用する必要がある。
【0027】
更に、前記植物油とパラフィンの他に、ラード等の動物油や、その他通常用いられる油剤を適宜採用することができる。
【0028】
植物油としては、特に限定されず、ヤシ油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油等が挙げられる。また、植物油は不飽和のままでもよく、水添して飽和植物油としてもよい。これらは、単独又は2種類以上を混合して用いてもよく、また、前記植物油は、ラード等の動物油を併用して動植物油として用いることが好ましい。なお、動植物油として用いる場合、後述に記載する植物油の量とは、動植物油の量をいうものとする。
【0029】
パラフィンとしては特に限定されず、従来公知のパラフィンワックス等を用いることができる。
【0030】
油剤の含有量としては、まず、油剤全体として、前記澱粉100質量部に対する、前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10〜30質量部であることが好ましい。本発明においては、油剤としてパラフィン及びエーテル系乳化剤を組み合わせているので、上記の特定量の油剤含有量であっても開繊性を向上させることができる。前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10質量部未満であると、飛走性が低下して毛羽発生も増加するので好ましくなく、30質量部を超えると飛走性は向上するものの、毛羽の発生が増加するので好ましくない。
【0031】
また、植物油とパラフィンとの配合割合としては、前記パラフィン及び前記植物油に対する、前記パラフィンの含有量が70〜90質量%であることが好ましい。このように油剤に対するパラフィン量を前記特定量にすることで、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。前記パラフィンの含有量が70質量%未満であると、飛走性が低下し、毛羽の発生が増加するので好ましくなく、また、90質量%を超えると飛走性は向上するものの、毛羽の発生が増加するので好ましくない。
【0032】
更に、本発明においては、上記の油剤の乳化剤として、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を含有することを特徴としている。特にパラフィンとエーテル系乳化剤を組み合わせてパラフィンエマルジョンとすることによって、ガラス繊維ヤーンの開繊性を向上させることができる。
【0033】
このようなエーテル系乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。具体的には、非イオン系の界面活性剤である、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のフェニルエーテル型の乳化剤が挙げられる。
【0034】
また、上記のエーテル系乳化剤の含有量は、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対して5〜40質量%である。これにより開繊を良好とし、毛羽の発生を抑制することができる。エーテル系乳化剤の含有量が5質量%未満であると、開繊性が不充分となり、40質量%を超えると、開繊過剰となって毛羽の発生が増加する。
【0035】
本発明においては、前記乳化剤として、更にエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更に開繊性が向上するので、少量の添加であっても、エアジェット織機における飛走性を向上させることができる。
【0036】
このような、エステル系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートのポリオキシエチレンモノアルキルエステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステルや、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等の脂肪酸グリセリンエステルを用いることができる。なかでも脂肪酸グリセリンエステルを用いることが好ましい。
【0037】
本発明の集束剤においては、上記の成分以外に他の成分を含んでいても良い。このような成分としては、例えば、カチオン潤滑剤や、防カビ剤の他、シランカップリング剤、その他各種添加剤が挙げられる。
【0038】
上記の集束剤の製造方法としては、従来公知の方法により、澱粉に、油剤を乳化してエマルジョン化したものを加え、更にその他の成分を混合することにより製造できる。
【0039】
ここで、本発明においては、油剤と乳化剤との乳化工程において、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを一括して乳化してエマルジョン化してもよいが、植物油とパラフィンとが、それぞれ別々に乳化されてエマルジョン化しており、パラフィンの乳化剤として、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を用いることが好ましい。
【0040】
すなわち、植物油と乳化剤をあらかじめ混合して植物油エマルジョンを形成し、これとは別途、パラフィンとエーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を混合してパラフィンエマルジョンを形成し、その後、澱粉、植物油エマルジョン、パラフィンエマルジョンの混合を行なうことが好ましい。なお、パラフィンとエーテル系乳化剤を少なくとも含むパラフィンエマルジョンとしては、既に乳化されている市販のパラフィンエマルジョンを用いてもよい。また、植物油の乳化剤としては、従来公知のエーテル型、エステル型、エーテルエステル型の乳化剤が使用でき、特に限定されない。
【0041】
これによれば、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを一括して乳化する場合と比較して、パラフィンとエーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤、及び植物油と乳化剤との乳化状態がより安定するので、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。
【0042】
次に、上記の集束剤を用いて得られる、本発明のガラス繊維ヤーン、及びガラスクロスについて説明する。
【0043】
上記の本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してストランドを得る際に、集束剤として付着される。このような平均繊維径、集束数のストランドとしては、例えば22〜135tex番手のストランドが挙げられる。
【0044】
ガラス繊維に集束剤を付着させる方法としては、ロールアプリケーターなどを用いて塗布することができる。集束剤の付着量は、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で0.3〜2.0質量%の範囲が好ましい。また、集束剤を付着させるタイミングは、繊維化後であればいつでも良いが、効率的に付着させるために繊維化直後に付着させた方が好ましい。
【0045】
上記の集束剤が付着したストランドは、更に、撚りがかけられてガラス繊維ヤーンとされ、ガラスクロスの緯糸として用いられる。ここで、撚糸には従来公知のリング撚糸機等が使用可能である。撚り数も特に限定されないが、0.1〜2.0回/25mmが好ましく、0.5〜1.0回/25mmが特に好ましい。
【0046】
このようにして得られる代表的なガラス繊維ヤーンの種類としては、例えば、JIS−R3413におけるECG75(75は1ポンド当たりのヤード数の1/100を表わす)のガラス糸が例示できる。
【0047】
上記のガラス繊維ヤーンは、ガラスクロスの緯糸として用いられる。織機としては、高速で製織できることからエアジェット織機を用いることが好ましい。そして、本発明の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは開繊性が向上しているので、エアジェット織機のよこ入れ時における飛走性に優れ、低圧エアーでの搬送が可能となる。
【0048】
上記の製織条件としては、従来公知の条件が使用でき特に限定されない。また、織構造としては特に限定されないが、例えばプリント配線板の基板材料として用いる場合には、平織が好ましく用いられる。
【0049】
このようにして得られる上記のガラスクロスは、表面に毛羽等の欠陥が非常に少なく、主としてプリント配線板の用途に好適に用いることができる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例における、各原料の配合量は、最終的に得られる集束剤を100質量%とした場合の固形分量、すなわち、後記する表1の集束剤全体の組成中における固形分量で記載されている。
【0051】
実施例1
<澱粉糊化液の調整>
エーテル化澱粉であるヒドロキシプロピル化コーンスターチ4.4質量%(集束剤全体を100質量%とした場合の固形分量を意味する。以下の実施例及び比較例における配合量についても同じ。)を水に分散させ、加熱し、95℃で30分間糊化し糊化液を得た。
<植物油(動植物油)エマルジョンの調整>
次に、パーム油・ラード・コーン油からなる動植物油0.2質量%と、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート0.03質量%、及びポリエチレングリコールモノオレエート0.02質量%とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、植物油エマルジョンを得た。
<パラフィンワックスエマルジョンの調整>
次に、パラフィンワックス0.8質量%と、乳化剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル0.3質量%、ポリグリセリンステアリン酸エステル0.1質量%とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、パラフィンワックスエマルジョンを得た。
<その他添加成分の調整>
次に、テトラエチレンペンタミン(TEPA)及びステアリン酸縮合物酢酸塩からなるカチオン潤滑剤0.2質量%、防カビ剤0.01質量%となるように熱水に分散した。
<集束剤の調整>
上記のコーンスターチ糊化液と、植物油エマルジョンと、パラフィンワックスエマルジョンと、カチオン潤滑剤及び防カビ剤とを混合し、温水を加えて、表1(固形分)に示す実施例1の集束剤を得た。
【0052】
実施例2
実施例1のパラフィンワックスエマルジョンの調整において、乳化剤が、脂肪酸グリセリンエステルを含有せず、ポリオキシエチレンステアリルエーテルのみであるパラフィンワックスエマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例2の集束剤を得た。
【0053】
実施例3
実施例1の植物油エマルジョン及びパラフィンワックスエマルジョンの調整工程において、パーム油・ラード・コーン油からなる植物油と、パラフィンワックスと、乳化剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとを同時に溶融、混合し熱水で乳化した以外は、実施例2と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例3の集束剤を得た。
【0054】
実施例4
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例4の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及び植物油に対する、パラフィンの含有量が95質量%)。
【0055】
実施例5
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例5の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及び植物油に対する、パラフィンの含有量が60質量%)。
【0056】
実施例6
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例6の集束剤を得た(固形分換算で、澱粉100質量部に対する、パラフィン及び植物油の含有量が5質量部)。
【0057】
実施例7
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例7の集束剤を得た(固形分換算で、澱粉100質量部に対する、パラフィン及び植物油の含有量が40質量部)。
【0058】
比較例1
実施例1において、パラフィンワックスエマルジョンを使用しない以外は実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例1の集束剤を得た。
【0059】
比較例2
実施例1において、植物油エマルジョンを使用しない以外は実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例2の集束剤を得た。
【0060】
比較例3
実施例1のパラフィンワックスエマルジョンの調整において、乳化剤が、ポリオキシエチレンステアリルエーテルを含有せず、ポリグリセリンステアリン酸エステルのみである以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例3の集束剤を得た。
【0061】
比較例4
実施例1において、パラフィンワックスエマルジョンの乳化剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)量を0.03質量%とした以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例4の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対する、エーテル系乳化剤の割合が3.6質量%)。
【0062】
比較例5
実施例1において、パラフィンワックスエマルジョンの乳化剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)量を0.7質量%とした以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例5の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対する、エーテル系乳化剤の割合が46.7質量%)。
【0063】
【表1】
【0064】
試験例
実施例1〜7、及び比較例1〜5の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンを使用してガラスクロスを製織し、エアジェット製織時の飛走性、及び、ガラスクロス表面の毛羽本数について調べた。
【0065】
なお、ガラス繊維ヤーン及びガラスクロスは以下の条件で製造した。
まず、平均径9μmであるガラスフィラメント400本を集束してストランドを製造し、上記の集束剤を、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.0質量%となるように繊維化直後に付着させた。
【0066】
次に、このストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、JIS−R3413におけるECG75 1/0 0.7 Zのガラス繊維ヤーンを得た。
【0067】
更に、このガラス繊維ヤーンを緯糸として、エアジェット織機を用いてガラスクロスを得た。
【0068】
なお、エアジェット織機における飛走性の測定は、ボビンからガラス繊維ヤーンを解舒し、ガラス繊維ヤーンをエアーノズルに通し、エアー圧1kgf/cm2で、1分間にエアノズルを通過するガラス繊維ヤーンの質量(g/min)を測定した。
【0069】
また、毛羽本数はガラスクロス1m2当たりの、緯糸由来の毛羽本数を目視で観察して測定した。その結果を表2にまとめて示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の結果より、本発明の実施例1〜7においては、飛走性がすべて70g/min以上、100g/min以下であり、しかも毛羽本数は20本以下で良好であった。
【0072】
これに対して、植物油エマルジョンのみでパラフィンエマルジョンを含有しない比較例1においては、飛走性が大幅に低下し、毛羽本数も増加した。また、パラフィンエマルジョンのみで植物油エマルジョンを含有しない比較例2においては、飛走性は向上するものの、逆に開繊過剰となり毛羽本数も増加した。また、乳化剤としてエステル系乳化剤を使用した比較例3においては、飛走性が大幅に低下し、毛羽本数も増加した。
【0073】
更に、パラフィンワックスエマルジョンにおける乳化剤量が本発明の範囲である5〜40質量%の下限値未満である比較例4においては、飛走性が低下し、毛羽本数も増加した。また、上限値を超える比較例5においては、飛走性は向上するものの、逆に開繊過剰となり毛羽本数が増加した。
【0074】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンのエアジェット製織時の毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性にも優れる集束剤を提供できる。したがって、この集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは、プリント配線板に用られるガラスクロスに好適に使用できる。
【発明の属する分野】
本発明は、主としてプリント配線板の基板材料等として使用されるガラスクロスに用いられる、ガラス繊維ヤーンの集束剤及びそれを用いたガラス繊維ヤーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維ヤーンは、繊維径数ミクロンのガラスフィラメント数百本〜千数百本を、集束剤を用いて集束してストランドとし、このストランドに撚りをかけて得られる。そして、このガラス繊維ヤーンは、製織工程によってガラスクロスとなり、このガラスクロスに樹脂を含浸させることによって、繊維強化プラスチック(FRP)製品の補強材として使用されている。
【0003】
近年、このガラスクロスの用途として、特にプリント配線板の基板材料への適用が注目されている。このプリント配線板の製造工程においては、ガラスクロスにエポキシ等の樹脂を含浸させてプレプリグを形成し、更に、薄い銅箔等が積層されて形成される。このため、銅箔を損傷しないように、ガラスクロスの表面には毛羽等の欠陥が非常に少ないことが要求されている。
【0004】
一方、このようなガラスクロスの製造工程としては、上記のストランドにリング撚糸機等を用いて撚りをかけてガラス繊維ヤーンとし、これをエアージェット織機等によって製織することが行なわれている。エアジェット織機は、製織時において緯糸をエアーに乗せて搬送してよこ入れすることを特徴とし、これにより高速製織を可能としている。したがって、エアジェット織機に用いられるガラス繊維ヤーンの緯糸は、このエアーによる搬送され易さ(製織性)である飛走性が要求されている。
【0005】
しかし、特に、上記のプリント配線板に使用されるガラス繊維ヤーンとしては、例えばG75(ストランドの番手で67.5tex)と呼ばれる糸のように、太めで重いヤーンが使用される場合、製織性が劣り、飛走性が劣るといった傾向がある。この場合、エアー圧を高くして製織することも考えられるが、高圧エアーによってガラス繊維ヤーンが損傷して毛羽が発生しやすくなるという問題がある。したがって、このようなガラス繊維ヤーンには適度の開繊性を付与して、これによって、飛走性を向上させる必要がある。
【0006】
このような、ガラス繊維ヤーンに適度の開繊性を付与することは、ガラスフィラメントをストランドに集束する際の集束剤の組成によって調整することができる。すなわち、一般には、ガラス繊維用の集束剤としては、澱粉等の被膜形成剤を主とし、乳化によってエマルジョン化した油剤液を混合し、集束剤溶液としてガラス繊維に付与することが行なわれているが、このうちの油剤及び乳化剤の種類と量を調整することにより、集束剤の潤滑性を調整して開繊性を調整することができる。
【0007】
このような、毛羽発生を抑制する被膜特性と、エアージェット製織に適した飛走性に優れたガラス繊維用の集束剤として、例えば、特開2000−191341号公報には、澱粉と、アルキルポリオキシエチレンエーテル又はアルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルと、必要な場合硫酸アンモニウム系化合物を含む集束剤が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら、集束剤成分を調整して開繊性を向上させると、エアジェット製織における飛走性は向上するが、逆に開繊過剰になると、エアジェット製織における、よこ入れ時に、毛羽が発生し易くなり、ガラスクロスの表面欠点が生じやすくなるという問題点がある。
【0009】
したがって、上記のプリント配線板に用いる、太いガラス繊維ヤーンの製織に適する集束剤であって、開繊性を向上させて飛走性を良好にする一方、製織時の毛羽発生も抑制するという、相反する性質を同時に満足するような集束剤を得ることは従来困難であった。
【0010】
また、上記の特開2000−191341号公報の集束剤においては、アルキルポリオキシエチレンエーテル又はアルキルフェニルポリオキシエチレンエーテルが柔軟剤として付与されているものの、油剤成分との組み合わせが非限定的であるために、エアジェット製織における毛羽発生防止と飛走性の確保の両立が充分でないという問題があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、プリント配線板に使用されるガラスクロスの緯糸として用いられ、エアジェット製織時の毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性に優れる、ガラス繊維ヤーン用集束剤を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、
前記集束剤が、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有し、
前記パラフィン及び前記エーテル系乳化剤に対する、前記エーテル系乳化剤の含有量が5〜40質量%であることを特徴とする。
【0013】
上記発明によれば、パラフィンと、エーテル系乳化剤を用いることにより、ガラス繊維ヤーンの開繊性が向上する。しかも、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対する、エーテル系乳化剤の含有量を5〜40質量%の範囲とし、他に植物油を含有するので、過剰な開繊や毛羽の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の集束剤においては、前記エーテル系乳化剤が、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。これによれば、更にエアジェット織機における飛走性が向上するとともに、毛羽の発生を抑制することができる。
【0015】
また、本発明の集束剤においては、前記乳化剤として、更にエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更にエアジェット織機における飛走性が向上するとともに、毛羽の発生を抑制することができる。
【0016】
更に、本発明の集束剤においては、前記澱粉100質量部に対する、前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10〜30質量部であることが好ましい。本発明においては、油剤としてパラフィン及びエーテル系乳化剤を組み合わせているので、上記特定量の油剤含有量であっても開繊性を付与することができる。
【0017】
また、本発明の集束剤においては、前記パラフィン及び前記植物油に対する、前記パラフィンの含有量が70〜90質量%であることが好ましい。このように油剤におけるパラフィン量を特定量配合することで、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。
【0018】
更に、本発明の集束剤においては、前記植物油と前記パラフィンが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されており、前記パラフィンの乳化剤として、前記エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を用いることが好ましい。
【0019】
これによれば、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを一括して混合する場合と比較して、パラフィンとエーテル系乳化剤との乳化状態がより安定するので、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。
【0020】
また、本発明のガラス繊維ヤーンは、上記の本発明の集束剤を付着してなるガラス繊維ヤーンである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有する。
【0023】
澱粉はフィラメントを集束するとともに、被膜形成剤として工程中での屈曲、摩擦からガラス繊維を保護する目的として用いられる。澱粉の種類としては特に限定されず、例えばコーンスターチが好ましく用いられる。また、アミロース含量が50%以上であるハイアミロース澱粉を用いてもよい。
【0024】
更に、エーテル変性されたエーテル化澱粉を用いることも好ましい。これにより、製織時の粉落ちを抑制することができるとともに、加熱脱油時においても比較的容易に除去することができる。
【0025】
次に、本発明に用いる油剤について説明する。油剤は主にストランドに潤滑性を付与する目的として用いられる。
【0026】
本発明においては、油剤として、植物油とパラフィンとを併用することを特徴とする。植物油のみでは潤滑性が不足するので、毛羽の発生、飛走性共に好ましくなく、パラフィンを含有させることによって滑り性を付与し、これによって開繊性を付与してエアジェット織機における飛走性を向上させることができる。ただし、パラフィンのみでは、飛走性は向上するものの、逆に開繊過剰となって毛羽の発生が増加するので、両者を併用する必要がある。
【0027】
更に、前記植物油とパラフィンの他に、ラード等の動物油や、その他通常用いられる油剤を適宜採用することができる。
【0028】
植物油としては、特に限定されず、ヤシ油、パーム油、パーム核油、コーン油、綿実油等が挙げられる。また、植物油は不飽和のままでもよく、水添して飽和植物油としてもよい。これらは、単独又は2種類以上を混合して用いてもよく、また、前記植物油は、ラード等の動物油を併用して動植物油として用いることが好ましい。なお、動植物油として用いる場合、後述に記載する植物油の量とは、動植物油の量をいうものとする。
【0029】
パラフィンとしては特に限定されず、従来公知のパラフィンワックス等を用いることができる。
【0030】
油剤の含有量としては、まず、油剤全体として、前記澱粉100質量部に対する、前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10〜30質量部であることが好ましい。本発明においては、油剤としてパラフィン及びエーテル系乳化剤を組み合わせているので、上記の特定量の油剤含有量であっても開繊性を向上させることができる。前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10質量部未満であると、飛走性が低下して毛羽発生も増加するので好ましくなく、30質量部を超えると飛走性は向上するものの、毛羽の発生が増加するので好ましくない。
【0031】
また、植物油とパラフィンとの配合割合としては、前記パラフィン及び前記植物油に対する、前記パラフィンの含有量が70〜90質量%であることが好ましい。このように油剤に対するパラフィン量を前記特定量にすることで、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。前記パラフィンの含有量が70質量%未満であると、飛走性が低下し、毛羽の発生が増加するので好ましくなく、また、90質量%を超えると飛走性は向上するものの、毛羽の発生が増加するので好ましくない。
【0032】
更に、本発明においては、上記の油剤の乳化剤として、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を含有することを特徴としている。特にパラフィンとエーテル系乳化剤を組み合わせてパラフィンエマルジョンとすることによって、ガラス繊維ヤーンの開繊性を向上させることができる。
【0033】
このようなエーテル系乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。具体的には、非イオン系の界面活性剤である、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のフェニルエーテル型の乳化剤が挙げられる。
【0034】
また、上記のエーテル系乳化剤の含有量は、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対して5〜40質量%である。これにより開繊を良好とし、毛羽の発生を抑制することができる。エーテル系乳化剤の含有量が5質量%未満であると、開繊性が不充分となり、40質量%を超えると、開繊過剰となって毛羽の発生が増加する。
【0035】
本発明においては、前記乳化剤として、更にエステル系乳化剤を含有することが好ましい。これによれば、更に開繊性が向上するので、少量の添加であっても、エアジェット織機における飛走性を向上させることができる。
【0036】
このような、エステル系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートのポリオキシエチレンモノアルキルエステルや、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンエステルや、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル等の脂肪酸グリセリンエステルを用いることができる。なかでも脂肪酸グリセリンエステルを用いることが好ましい。
【0037】
本発明の集束剤においては、上記の成分以外に他の成分を含んでいても良い。このような成分としては、例えば、カチオン潤滑剤や、防カビ剤の他、シランカップリング剤、その他各種添加剤が挙げられる。
【0038】
上記の集束剤の製造方法としては、従来公知の方法により、澱粉に、油剤を乳化してエマルジョン化したものを加え、更にその他の成分を混合することにより製造できる。
【0039】
ここで、本発明においては、油剤と乳化剤との乳化工程において、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを一括して乳化してエマルジョン化してもよいが、植物油とパラフィンとが、それぞれ別々に乳化されてエマルジョン化しており、パラフィンの乳化剤として、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を用いることが好ましい。
【0040】
すなわち、植物油と乳化剤をあらかじめ混合して植物油エマルジョンを形成し、これとは別途、パラフィンとエーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を混合してパラフィンエマルジョンを形成し、その後、澱粉、植物油エマルジョン、パラフィンエマルジョンの混合を行なうことが好ましい。なお、パラフィンとエーテル系乳化剤を少なくとも含むパラフィンエマルジョンとしては、既に乳化されている市販のパラフィンエマルジョンを用いてもよい。また、植物油の乳化剤としては、従来公知のエーテル型、エステル型、エーテルエステル型の乳化剤が使用でき、特に限定されない。
【0041】
これによれば、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを一括して乳化する場合と比較して、パラフィンとエーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤、及び植物油と乳化剤との乳化状態がより安定するので、開繊性を良好にするとともに、毛羽を効果的に抑制することができる。
【0042】
次に、上記の集束剤を用いて得られる、本発明のガラス繊維ヤーン、及びガラスクロスについて説明する。
【0043】
上記の本発明のガラス繊維ヤーン用集束剤は、平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してストランドを得る際に、集束剤として付着される。このような平均繊維径、集束数のストランドとしては、例えば22〜135tex番手のストランドが挙げられる。
【0044】
ガラス繊維に集束剤を付着させる方法としては、ロールアプリケーターなどを用いて塗布することができる。集束剤の付着量は、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として、固形分量で0.3〜2.0質量%の範囲が好ましい。また、集束剤を付着させるタイミングは、繊維化後であればいつでも良いが、効率的に付着させるために繊維化直後に付着させた方が好ましい。
【0045】
上記の集束剤が付着したストランドは、更に、撚りがかけられてガラス繊維ヤーンとされ、ガラスクロスの緯糸として用いられる。ここで、撚糸には従来公知のリング撚糸機等が使用可能である。撚り数も特に限定されないが、0.1〜2.0回/25mmが好ましく、0.5〜1.0回/25mmが特に好ましい。
【0046】
このようにして得られる代表的なガラス繊維ヤーンの種類としては、例えば、JIS−R3413におけるECG75(75は1ポンド当たりのヤード数の1/100を表わす)のガラス糸が例示できる。
【0047】
上記のガラス繊維ヤーンは、ガラスクロスの緯糸として用いられる。織機としては、高速で製織できることからエアジェット織機を用いることが好ましい。そして、本発明の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは開繊性が向上しているので、エアジェット織機のよこ入れ時における飛走性に優れ、低圧エアーでの搬送が可能となる。
【0048】
上記の製織条件としては、従来公知の条件が使用でき特に限定されない。また、織構造としては特に限定されないが、例えばプリント配線板の基板材料として用いる場合には、平織が好ましく用いられる。
【0049】
このようにして得られる上記のガラスクロスは、表面に毛羽等の欠陥が非常に少なく、主としてプリント配線板の用途に好適に用いることができる。
【0050】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例における、各原料の配合量は、最終的に得られる集束剤を100質量%とした場合の固形分量、すなわち、後記する表1の集束剤全体の組成中における固形分量で記載されている。
【0051】
実施例1
<澱粉糊化液の調整>
エーテル化澱粉であるヒドロキシプロピル化コーンスターチ4.4質量%(集束剤全体を100質量%とした場合の固形分量を意味する。以下の実施例及び比較例における配合量についても同じ。)を水に分散させ、加熱し、95℃で30分間糊化し糊化液を得た。
<植物油(動植物油)エマルジョンの調整>
次に、パーム油・ラード・コーン油からなる動植物油0.2質量%と、界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート0.03質量%、及びポリエチレングリコールモノオレエート0.02質量%とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、植物油エマルジョンを得た。
<パラフィンワックスエマルジョンの調整>
次に、パラフィンワックス0.8質量%と、乳化剤であるポリオキシエチレンステアリルエーテル0.3質量%、ポリグリセリンステアリン酸エステル0.1質量%とを溶融、混合し、80℃の熱水で乳化し、パラフィンワックスエマルジョンを得た。
<その他添加成分の調整>
次に、テトラエチレンペンタミン(TEPA)及びステアリン酸縮合物酢酸塩からなるカチオン潤滑剤0.2質量%、防カビ剤0.01質量%となるように熱水に分散した。
<集束剤の調整>
上記のコーンスターチ糊化液と、植物油エマルジョンと、パラフィンワックスエマルジョンと、カチオン潤滑剤及び防カビ剤とを混合し、温水を加えて、表1(固形分)に示す実施例1の集束剤を得た。
【0052】
実施例2
実施例1のパラフィンワックスエマルジョンの調整において、乳化剤が、脂肪酸グリセリンエステルを含有せず、ポリオキシエチレンステアリルエーテルのみであるパラフィンワックスエマルジョンを用いた以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例2の集束剤を得た。
【0053】
実施例3
実施例1の植物油エマルジョン及びパラフィンワックスエマルジョンの調整工程において、パーム油・ラード・コーン油からなる植物油と、パラフィンワックスと、乳化剤であるポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとを同時に溶融、混合し熱水で乳化した以外は、実施例2と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例3の集束剤を得た。
【0054】
実施例4
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例4の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及び植物油に対する、パラフィンの含有量が95質量%)。
【0055】
実施例5
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例5の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及び植物油に対する、パラフィンの含有量が60質量%)。
【0056】
実施例6
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例6の集束剤を得た(固形分換算で、澱粉100質量部に対する、パラフィン及び植物油の含有量が5質量部)。
【0057】
実施例7
実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す実施例7の集束剤を得た(固形分換算で、澱粉100質量部に対する、パラフィン及び植物油の含有量が40質量部)。
【0058】
比較例1
実施例1において、パラフィンワックスエマルジョンを使用しない以外は実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例1の集束剤を得た。
【0059】
比較例2
実施例1において、植物油エマルジョンを使用しない以外は実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例2の集束剤を得た。
【0060】
比較例3
実施例1のパラフィンワックスエマルジョンの調整において、乳化剤が、ポリオキシエチレンステアリルエーテルを含有せず、ポリグリセリンステアリン酸エステルのみである以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例3の集束剤を得た。
【0061】
比較例4
実施例1において、パラフィンワックスエマルジョンの乳化剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)量を0.03質量%とした以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例4の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対する、エーテル系乳化剤の割合が3.6質量%)。
【0062】
比較例5
実施例1において、パラフィンワックスエマルジョンの乳化剤(ポリオキシエチレンステアリルエーテル)量を0.7質量%とした以外は、実施例1と同様の調整方法で、表1(固形分)に示す比較例5の集束剤を得た(固形分換算で、パラフィン及びエーテル系乳化剤に対する、エーテル系乳化剤の割合が46.7質量%)。
【0063】
【表1】
【0064】
試験例
実施例1〜7、及び比較例1〜5の集束剤を用いたガラス繊維ヤーンを使用してガラスクロスを製織し、エアジェット製織時の飛走性、及び、ガラスクロス表面の毛羽本数について調べた。
【0065】
なお、ガラス繊維ヤーン及びガラスクロスは以下の条件で製造した。
まず、平均径9μmであるガラスフィラメント400本を集束してストランドを製造し、上記の集束剤を、集束剤付着後のガラス繊維ストランドの質量を基準として固形分量で1.0質量%となるように繊維化直後に付着させた。
【0066】
次に、このストランドをリング撚糸機を用いて撚糸し、JIS−R3413におけるECG75 1/0 0.7 Zのガラス繊維ヤーンを得た。
【0067】
更に、このガラス繊維ヤーンを緯糸として、エアジェット織機を用いてガラスクロスを得た。
【0068】
なお、エアジェット織機における飛走性の測定は、ボビンからガラス繊維ヤーンを解舒し、ガラス繊維ヤーンをエアーノズルに通し、エアー圧1kgf/cm2で、1分間にエアノズルを通過するガラス繊維ヤーンの質量(g/min)を測定した。
【0069】
また、毛羽本数はガラスクロス1m2当たりの、緯糸由来の毛羽本数を目視で観察して測定した。その結果を表2にまとめて示す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の結果より、本発明の実施例1〜7においては、飛走性がすべて70g/min以上、100g/min以下であり、しかも毛羽本数は20本以下で良好であった。
【0072】
これに対して、植物油エマルジョンのみでパラフィンエマルジョンを含有しない比較例1においては、飛走性が大幅に低下し、毛羽本数も増加した。また、パラフィンエマルジョンのみで植物油エマルジョンを含有しない比較例2においては、飛走性は向上するものの、逆に開繊過剰となり毛羽本数も増加した。また、乳化剤としてエステル系乳化剤を使用した比較例3においては、飛走性が大幅に低下し、毛羽本数も増加した。
【0073】
更に、パラフィンワックスエマルジョンにおける乳化剤量が本発明の範囲である5〜40質量%の下限値未満である比較例4においては、飛走性が低下し、毛羽本数も増加した。また、上限値を超える比較例5においては、飛走性は向上するものの、逆に開繊過剰となり毛羽本数が増加した。
【0074】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンのエアジェット製織時の毛羽発生を防止し、かつ、エアジェット製織における飛走性にも優れる集束剤を提供できる。したがって、この集束剤を用いたガラス繊維ヤーンは、プリント配線板に用られるガラスクロスに好適に使用できる。
Claims (7)
- 平均径7〜10μmであるガラスフィラメント200〜800本を集束してなるストランドに撚りをかけてなり、ガラスクロスの緯糸として用いられるガラス繊維ヤーンの前記ストランドの集束に用いる集束剤であって、
前記集束剤が、澱粉と、植物油と、パラフィンと、エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤とを含有し、
前記パラフィン及び前記エーテル系乳化剤に対する、前記エーテル系乳化剤の含有量が5〜40質量%であることを特徴とするガラス繊維ヤーン用集束剤。 - 前記エーテル系乳化剤が、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物である請求項1記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 前記乳化剤として、更にエステル系乳化剤を含有する請求項1又は2記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 前記澱粉100質量部に対する、前記パラフィン及び前記植物油の含有量が10〜30質量部である請求項1〜3のいずれか一つに記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 前記パラフィン及び前記植物油に対する、前記パラフィンの含有量が70〜90質量%である請求項1〜4のいずれか一つに記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 前記植物油と前記パラフィンが、それぞれに別々に乳化された状態で混合されており、前記パラフィンの乳化剤として、前記エーテル系乳化剤を少なくとも含む乳化剤を用いる請求項1〜5のいずれか一つに記載のガラス繊維ヤーン用集束剤。
- 請求項1〜6のいずれか一つに記載の集束剤を付着してなるガラス繊維ヤーン
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