JP2004020878A - 光通信部品用シール材組成物及びこれを用いた光通信部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度、光通信部品との接着強度が高く、透湿性に優れ、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材組成物、及びそれを用いた光通信部品を提供すること。
【解決手段】反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体又は白金・カルボニルビニルメチルシロキサン錯体の何れか又は双方、を含んでなる光通信部品用シール材組成物であり、さらに好ましくは疎水性無機充填材を含む光通信部品用シール材組成物である。
【選択図】 図1
【解決手段】反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体又は白金・カルボニルビニルメチルシロキサン錯体の何れか又は双方、を含んでなる光通信部品用シール材組成物であり、さらに好ましくは疎水性無機充填材を含む光通信部品用シール材組成物である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合波・分波用光カプラや光導波回路用パッケージ、レーザーダイオード、フォトダイオード、光コネクタ、光アイソレータ、光スイッチ、光変調器、光減衰器などの屋外ないしは屋内用の光通信部品で用いられる光通信部品用シール材組成物およびその光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
光センサ、光情報処理、光通信分野で用いる光通信部品は集積化、微小化、高機能化、低価格化等をめざして研究・開発が盛んに行われ、ファイバカプラ素子、石英系光導波路素子などが既に実用化されている。中でもファイバカプラ素子は簡単に合分岐、合分波が可能で、しかも安価な素子であるため、その利用が拡大してきている。このような光通信部品の一般的な構造は、光ファイバの導入口を設けた筐体(パッケージ)に光ファイバを接続した光素子を内蔵する構造となっており、光素子に接続した光ファイバは筐体に設けたファイバ導入口を通じて筐体の外部に導出されている。そして筐体内部への水分や塵や埃の侵入を阻止するため、光ファイバとファイバ導入口との間にはシーリングを施すようにしている。
【0003】
ところで、このような構造の光通信部品は、特に高温高湿(85℃以上、85%RH以上)の厳しい環境下では、光伝送損失や偏波依存性損失における性能劣化が顕著であった。そこで、この理由を調査検討したところ、多くの光通信部品において、筐体のファイバ導入口と光ファイバとの間におけるシーリングや、筐体内部での光素子の固定方法として、単なる有機系の接着剤を用いたに過ぎない未熟な実装技術を採用する例が多いことから、湿気などの水分の影響による接着剤の膨潤、劣化等が誘起されていることが判明した。
【0004】
単なる接着剤ではなく、空隙を充填する用途に用いるための一般的な有機系のシール材には、高弾性のシリコーン系材料を用いたシール材や低弾性のエポキシ系材料を用いたシール材などがある。しかしながら、前者の高弾性のシリコーン系シール材は、光通信部品に用いると、透湿度が大きく防湿機能に劣ること、また破断強度や引裂強度などの機械強度が小さいこと等の欠点があった。また、後者の低弾性のエポキシ系シール材を光通信部品に用いると、透湿度が小さく防湿機能に優れているが、硬化時や使用環境温度の変動時に大きな内部応力が発生し、特に光ファイバなどへの応力発生により、ファイバのマイクロベンド(局所的な曲がり)により光損失が増大してしまうという欠点があった。
【0005】
また、高弾性で低透湿性の材料としてポリイソブチレン化合物系のシール材があるが、光通信部品に用いると、反応性が低く硬化に時間を要したり、厚膜硬化性が悪いなどの他、シール材の強度や、光通信部品を構成する光ファイバとの接着性が十分ではなく、光通信部品用シール材組成物としての満足な効果を与えるものではなかった。
【0006】
そして、このような従来型のシール材の中には、光通信部品に適用した場合の特有の現象として、光ファイバとの接触部分で硬化阻害が発生する場合があった。硬化阻害とは、適用するシール材の標準的な硬化条件で硬化させた場合に、シール材のうち光ファイバとの接触部分だけが未硬化であったり、光ファイバとの接着性が著しく悪くなる現象をいう。この硬化阻害を回避するため、プライマーを光ファイバに予め塗工しても良いが、作業工程や製造コストが増加するために好ましい方法ではない。
【0007】
なお、シール材以外を用いる方法として、ハウメチックシール等によって水分や塵や埃を光通信部品内に侵入させないようにする実装技術もあるが、複雑で高価なシール方法となるため光通信部品のコストが高くなる欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、発明者らは、光通信部品に適用することができるシール材を開発することを目的として、特に、光通信部品に特有の現象である硬化阻害の起こらないシール材について研究することにより本発明を完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、光通信部品用のシール材として用いた場合に、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度、光通信部品との接着強度が高く、透湿性が低く、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材組成物を得ることを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、光通信部品用のシール材として用いた場合に、硬化阻害が起きず光通信部品の構成部材である光ファイバとの接着性に優れた光通信部品用シール材組成物を得ることを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、これらの光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品を提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するために、本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、を含んでなる光通信部品用シール材組成物を提供する。
【0013】
本発明の光通信部品用シール材組成物によれば、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、白金・ビニルシロキサン錯体を含んでいるため、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度が高いだけでなく、硬化阻害が起きず被着体との接着強度が高く、透湿性が低く、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材となる。
【0014】
また本発明は、さらに疎水性無機充填材を添加した光通信部品用シール材組成物である。疎水性無機充填材を含有するため、硬化阻害を軽減することができる。また、ポリマー成分との親和性が上がり、透湿度が低下し、被着体との接着性、シール性が向上し、シール材自体の機械的強度も向上する。
【0015】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物と、該反応基を有するポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)に対するヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8となるヒドロシリル基を含有する硬化剤、及び白金量が前記反応基を有するポリイソブチレン化合物に対して50〜1000ppmとなる白金・ビニルシロキサン錯体、を含んでなる光通信部品用シール材組成物を提供する。
【0016】
ポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)と硬化剤中のヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8としたため、ポリイソブチレン化合物が十分に反応しながら、硬化性の悪化や硬化物の物性変化を防止することができる。また、白金量が反応基を有する前記ポリイソブチレン化合物に対して50〜1000ppmとしたことから、85℃という比較的低温でポリイソブチレン化合物と硬化剤との反応が十分に行われ硬化させることができるため、硬化阻害が起こりにくく、光通信部品の特性を損なうことがない。そして、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度、光通信部品との接着強度が高く、透湿性が低く、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材を得ることができる。
【0017】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物100重量部に対して疎水性無機充填材を100〜500重量部含む光通信部品用シール材組成物を提供する。ポリイソブチレン化合物に対して1〜5倍量の疎水性無機充填材を含むため、シール材の機械強度を増加させることができ、作業性にも優れ、また、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、耐湿性、耐候性に優れた光通信部品用シール材組成物を得ることができる。そしてこの場合に、疎水性無機充填材が酸化アルミニウムであれば、シール材の機械的強度に優れる上、硬化阻害が起きにくく被着体との接着性に優れている。
【0018】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物における反応基がアリル基である光通信部品用シール材組成物を提供する。反応基をアリル基としたため、白金・ビニルシロキサン錯体の存在下、85℃という低温で容易にヒドロシリル基と付加反応を起こすことができる。
【0019】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物と、触媒である白金・ビニルシロキサン錯体と、を含有し、必要に応じて疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤から選択される一種以上の添加剤を加えた第1組成物と、反応基を有するポリイソブチレン化合物とヒドロシリル基を有する硬化剤を含有し、必要に応じて疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤から選択される一種以上の添加剤を加えた第2組成物と、の二液からなる光通信部品用シール材組成物を提供する。
【0020】
硬化剤と触媒を分けた二液性としたため、組成物の保存安定性を向上させるとともに、短時間での硬化や、より低温での硬化が可能となる。また、粘度が高すぎず、ポットライフも長くて作業性が良い光通信部品用シール材組成物とすることができる。さらに二液性としたため、反応抑制剤に対する要求が緩和されるとともに、反応基を有するイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤の組合せのバリエーションが豊富になる。
【0021】
さらに本発明は、光素子と、光素子に接続した光ファイバと、光素子と光ファイバにおける光素子との接続端側とを収容する筐体とを備え、光ファイバを筐体のファイバ導入口から内部に導入してある光通信部品について、前記光通信部品用シール材組成物によってファイバ導入口と光ファイバとの隙間を封止したシール部を備える光通信部品を提供する。
【0022】
この光通信部品は、本発明の光通信部品用シール材組成物をシール材に用いているため、ファイバとの界面においてシール材の硬化阻害がなく、水分や塵や埃の侵入を確実に防止できるシール性に大変優れている。また、シール材自体の不良や、シール材塗工時の不良が生じにくく、歩留まりが良い生産性の高い光通信部品を得ることができる。そして、本発明の光通信部品用シール材組成物を用いた、合波・分波用光カプラや光導波回路用パッケージ、レーザーダイオード、フォトダイオード、光コネクタ、光アイソレータ、光スイッチ、光変調器、光減衰器などの屋外ないしは屋内用光通信部品を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の光通信部品用シール材組成物は、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、を含む組成物である。そして必要に応じて、疎水性無機充填材やその他の添加剤を含んでなる組成物である。以下、光通信部品用シール材組成物を形成する各成分について説明する。
【0024】
反応基を有するポリイソブチレン化合物; 反応基を有するポリイソブチレン化合物における反応基とは、ヒドロシリル基と付加反応して結合可能な反応基のことである。このような反応基としては水酸基、エポキシ基、アルケニル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基やシクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などの環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。反応基の中ではアルケニル基が好ましく、反応性に優れ、安定性が良く、入手し易いなどの点から、特にアリル基が好ましい。
【0025】
ポリイソブチレン化合物中の反応基の位置は、分子骨格の末端に存在すると、反応性が高く得られる硬化物が高強度となるなどの点から好ましい。
【0026】
ポリイソブチレン化合物主鎖の単量体単位としてはイソブチレン単位が50モル%以上であることが好ましく、防湿性、硬化性向上の観点から90モル%以上がより好ましい。
【0027】
本発明に使用される反応基を有するポリイソブチレン化合物の平均分子量は500〜10,000である。500未満では、低粘度のためシール材使用時に液ダレが生じやすく、硬化物の機械強度が低い。また、疎水性無機充填材を添加した場合に疎水性無機充填材が沈降してしまうなどの問題が生じる。また、10,000を超えると、高粘度となり、シール箇所への浸透が容易でなく常温での作業性が困難となる。
【0028】
ポリイソブチレン化合物は、目的に応じて、反応基の異なるもの、または分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0029】
ヒドロシリル基を有する硬化剤; ヒドロシリル基含有硬化剤は、一分子内に2個以上のヒドロシリル基を含有していることが好ましい。ここで、ヒドロシリル基とはSiH基のことを指すが、同一Siに水素原子が2個結合している場合はヒドロシリル基2個と数えるものとする。ヒドロシリル基が2個より少ないと、硬化が遅く硬化不良を起こす場合が多い。
【0030】
ヒドロシリル基を有する硬化剤には、鎖状又は環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン等が挙げられるが、シール材系中における相溶性あるいは分散安定性が良好なものが好ましい。鎖状又は環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ヒドロシリル基の結合部位が分子末端にあっても分子鎖の途中にあっても好ましい化合物である。ヒドロシリル基を有する硬化剤成分は単独もしくは2種類以上のものを混合して用いることができる。
【0031】
ポリイソブチレン化合物に対するヒドロシリル基を有する硬化剤の添加量は、ポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)と硬化剤中のヒドロシリル基数(Y)の比が、1≦(Y/X)≦8となる添加量が好ましく、2≦(Y/X)≦6がより好ましい。(Y/X)<1である場合は架橋が不十分であり、(Y/X)>8の場合は、硬化後に残存するヒドロシリル基の影響によりブリードが生じたり、硬化性が悪くなったり、硬化物の物性が変化するという問題が生じる可能性が高いからである。
【0032】
白金触媒; 反応基を有するポリイソブチレン化合物と、ヒドロシリル基を有する硬化剤とを付加反応させるための反応触媒は、白金・ビニルシロキサン錯体である。白金・ビニルシロキサン錯体には、白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体等の白金・ビニルメチルシロキサン錯体が挙げられる。これらの中では、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が、光通信部品用シール材組成物中の添加量を少なくできる点でより好ましい。
【0033】
通常、白金触媒と呼ばれる触媒には、白金単体や白金を活性炭素やアルミナ等に担持させた担体付白金触媒、塩化白金酸、白金オレフィン錯体等の種々の触媒が挙げられるが、光通信部品用シール材に用いる場合には、白金担体や、白金を活性炭素やアルミナ等に担持させた触媒は、シール材が硬化せず不適切である。また、塩化白金酸は、使用する際に危険が伴い好ましくなく、白金・オクチルアルデヒド/オクタノール錯体のような白金オレフィン錯体は、シール材の硬化時に発泡するため好ましくない。
【0034】
白金・ビニルシロキサン錯体の添加量は、ポリイソブチレン化合物に対して白金の重量が50〜1000ppmであることが好ましく、200〜500ppmであることがより好ましい。2000ppmを超えると、加温しなくとも短時間で硬化反応が起こり、作業性が著しく低下する。50ppm未満であると、光ファイバがナイロン系の被覆材で覆われている場合は良いが、一般的に光ファイバ用被覆材として用いられているウレタンアクリレート系の被覆材で覆われているとファイバ接着性が劣る。さらに、30ppm未満であるとポリイソブチレン化合物が硬化し難くなり硬化性、被着体との接着性が著しく低下する。
【0035】
白金・ビニルシロキサン錯体は、溶媒に溶解させた状態で用いることができる。この場合、白金触媒溶液に対する白金の重量は、1〜20wt%であることが好ましい。20wt%を超えると、溶液中の錯体が凝集したり、保存中に触媒活性が失われたりするからである。また、1wt%未満であると、白金以外の成分が多くなりすぎ、硬化反応の進行を遅くし、硬化性、被着体との接着性を著しく低下させるからである。溶媒としてはシクロビニルメチルシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0036】
無機充填材; また、本発明の光通信部品用シール材組成物には、透湿度低下、接着性向上、機械的強度の増加、硬化収縮の低減、熱膨張の低減、粘弾性の調整、硬度調整、粘度調整、硬化前の流れ特性改善、色調変化などの種々の目的のために無機充填材を配合することができる。無機充填材としては疎水性無機充填材が好ましい。疎水性無機充填材を用いることにより、ポリマー成分との親和性が上がり、充填材の配合重量部数を増加することが可能になる。それに付随してより一層の透湿度低下、接着性向上、機械的強度の向上などの効果が期待できる。また、無機充填材を疎水性にすることで、シール材の硬化阻害を軽減することができる。
【0037】
疎水性無機充填材としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミニウム、マグネシウム、炭素などの球状、塊状、粉体状、繊維状、針状、鱗片状、ペレット状などの無機充填材に表面疎水性処理を施したものが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
疎水性無機充填材の中でも透湿度低下、機械的強度向上効果の高い酸化アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウムの添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が100〜500重量部の範囲内である。100重量部未満では硬化物の機械強度向上効果が十分でなく、500重量部を超えると硬化前の粘度が高く作業性が悪い、硬化物の硬度が高くなりすぎてしまうなどの問題が生じることがある。
【0039】
可塑剤; 粘度調整及び可塑化などの目的により可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、反応基を有するポリイソブチレン化合物に対して相溶性が良好なものが好ましい。可塑剤の例としてはポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、パラフィン油、ナフテン油などの炭化水素系化合物類、塩素化パラフィン類、フタル酸エステル類、非芳香族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。可塑剤の添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が10〜100重量部とする。10重量部より少ないと無機充填材の配合のためには高粘度であり、100重量部を超えると硬化性、接着性、防湿性、物理的強度などが低下し、好ましくない。
【0040】
シラン化合物; また、接着性付与剤としてシラン化合物を添加することができる。シラン化合物とは加水分解性基と反応性有機官能基を併せ持つ有機ケイ素単量体であり、触媒を著しく不活性にしないものが用いられる。シラン化合物に含まれる反応性有機官能基には、ビニル系、エポキシ系、メタクリル系、エステル系、アミノ系などの官能基が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて含有されていても良い。シラン化合物の添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が1〜10重量部とする。1重量部より少ないと金属ケース等の筐体との接着力が劣り、10重量部を超えるとシール材の硬化性、接着性、防湿性、物理的強度などが低下したり、保存安定性が悪くなり、好ましくない。
【0041】
硬化遅延剤; また、可使時間増加、作業性向上、硬化時間調整及び保存安定性向上などの目的により硬化遅延剤を添加することができる。硬化遅延剤としては、例えば脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられる。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の例としては、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが挙げられる。有機リン化合物の例としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが挙げられる。有機硫黄化合物の例としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド、チアゾールなどが挙げられる。窒素含有化合物の例としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが挙げられる。スズ系化合物の例としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが挙げられる。有機過酸化物の例としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いても良い。硬化遅延剤の添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が0.05〜10重量部とする。0.05重量部より少ないと硬化遅延効果が低く、保存安定性が悪く、10重量部を超えるとシール材の接着性、防湿性、物理的強度などが低下したり、硬化が極端に遅くなり実用性に欠け、好ましくない。
【0042】
疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤などの添加剤とは別に、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、補強剤、難燃剤、耐熱性向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、シラン化合物以外の接着性付与剤、チクソ性付与剤、オイル、反応性希釈剤、顔料、硬化促進剤、相溶化剤、脱水剤、などの添加剤を添加することできる。
【0043】
一液性の光通信部品用シール材組成物を製造するためには、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、必要な添加剤を加えて混合、攪拌する。また、二液性の光通信部品用シール材組成物を製造するためには、反応基を有するポリイソブチレン化合物と、触媒である白金・ビニルシロキサン錯体と、必要な疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤等の添加剤、を加えて混合攪拌して第1組成物を作製し、別に、反応基を有するポリイソブチレン化合物とヒドロシリル基を有する硬化剤、必要な疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤等の添加剤、を加えて混合攪拌して第2組成物を作製する。
【0044】
二液性の光通信部品用シール材組成物における第1組成物はヒドロシリル基を有する硬化剤が存在せず、第2組成物は触媒が存在しないため、両者を混合するまで硬化反応がほとんど進行しない。疎水性無機充填材を添加する場合は、第1組成物または第2組成物の片方のみに配合しても構わないが、粘度や配合時の体積、重量を均一にするために第1組成物及び第2組成物の両方に添加することが好ましい。
【0045】
光通信部品用シール材組成物を形成する各成分の割合は、反応基を有するポリイソブチレン化合物を100重量部としたときに、ポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)に対するヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8となるヒドロシリル基を含有する硬化剤量が好ましく、2≦(Y/X)≦6となることがより好ましい。したがって、硬化剤に含まれる溶剤等の量にもよるが、通常、硬化剤量は、5〜30重量部である。触媒量は、ポリイソブチレン化合物に対し、白金重量が50〜1000ppmとなるように添加する。添加剤として無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤等を使用する場合は、各添加量がポリイソブチレン化合物100重量部に対して、無機充填材;100重量部〜500重量部、可塑剤;10重量部〜100重量部、シラン化合物;1重量部〜10重量部、硬化遅延剤;0.05重量部〜10重量部とする。なお、二液性の光通信部品用シール材組成物では、第1組成物と第2組成物の合計量が上記割合になるようにする。
【0046】
二液性の光通信部品用シール材組成物の場合、第1組成物中のポリイソブチレン化合物と第2組成物中のポリイソブチレン化合物の重量比は特に限定されないが、作業性の点から、第1組成物と第2組成物との重量比は、第1組成物:第2組成物が10:1から1:10の範囲内になるように各構成材料量を調整することが好ましく、第1組成物:第2組成物が1:1になるように調整することが特に好ましい。また、著しく異なる粘度の組成物を混合するのは作業性が悪いため、第1組成物と第2組成物との粘度比は、第1組成物:第2組成物が10:1から1:10の範囲内になるように各構成材料量を調整することが好ましく、第1組成物:第2組成物が1:1になるように調整することが特に好ましい。
【0047】
一液性の光通信部品用シール材組成物と二液性の光通信部品用シール材組成物を比較すると、一液性の方が、シール作業が容易で、保管場所が少なくて済む等の利点があるが、保存安定性をより向上させ、短時間で熱硬化させるようなさらなる要求がある場合は、二液性とすることが好ましい。
【0048】
光通信部品用シール材組成物は、初期粘度が10,000〜500,000mPa・sであり、10,000〜200,000mPa・sであることが特に作業性の面から好ましい。
【0049】
光通信部品用シール材組成物を光通信部品に適用するには、一液性の場合はそのままシール箇所に塗布し、また、二液性の場合は第1組成物と第2組成物をよく混合攪拌した後シール箇所に塗布して、所定時間加温して固化させる。通常、100℃以下、好ましくは85℃以下の加熱下に24時間、少なくとも1時間程度おいて固化させる。このように低温で硬化させることとしたのは、光通信部品には一部に紫外線硬化性樹脂を用いているものも多く、加熱硬化性樹脂をシール材として用いる場合、高温で硬化させると紫外線硬化性樹脂が、変質、変形して紫外線硬化性樹脂の弾性率、破断伸度、硬化度、機械的強度、密着性などの諸特性が劣化するだけでなく、光通信部品の特性までが変化するおそれがあるからである。
【0050】
反応基を有するポリイソブチレン化合物は所定の触媒の存在下、上述の加熱によりヒドロシリル基を有する硬化剤と付加反応し、ゴム状硬化物となる。この硬化物は、加水分解性シリル基を有した湿気硬化性シリコーン樹脂硬化物やアルケニル基を有した加熱硬化性シリコーン樹脂硬化物と比較して、非常に低い透湿性を示し、防湿性に優れていることを特徴としている。
【0051】
次に、本発明の光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品の例を図1及び図2に示した。
【0052】
図1は、光通信部品として例示する光カプラ11の内部構造の概略を示す断面図である。保護管(筐体)12の内部で石英基板14と有機接着剤15で結合された光ファイバ13は、保護管12の両端に開口するファイバ導入口12aから外部に出ているため、ファイバ導入口12aと光ファイバ13の間(隙間)にはシール材で密封したシール部16が形成されている。このシール部16を成すシール材に本発明の光通信部品用シール材組成物を用いている。
【0053】
また図2は、光通信部品として例示する光導波路部品21の概略正面図である。金属ケース(筐体)22の内部に備えられた光素子としての光学フィルタ23、ファイバアレイ24、光導波路25に連なる光ファイバ26は、金属ケース22の両端に開口するファイバ導入口22aから外部に出ているため、ファイバ導入口22aと光ファイバ26との隙間にはシール材で密封したシール部27が形成されている。このシール部27を成すシール材に本発明の光通信部品用シール材組成物を用いている。
【0054】
光通信部品用シール材組成物の組成に関し、触媒種及びその添加量、無機充填材の添加量、ヒドロシリル基の数(Y)/アリル基の数(X)等に関する実験を行ったので説明する。
【0055】
実験1:触媒種及びその添加量
【0056】
反応基として両末端アリル基を有するポリイソブチレン化合物(鐘淵化学工業(株)製「EPION EP203A」、平均分子量:5000;プロセスオイル23wt%含有);100重量部、ヒドロシリル基を有する硬化剤(鐘淵化学工業(株)製「CR−300」);18重量部、疎水性酸化アルミニウム(昭和電工(株)製「AL−45−2」);220重量部、炭化水素系可塑剤(出光興産(株)製「PS−32」);10重量部に所定の白金触媒を添加して光通信部品用シール材組成物を作製した。添加した白金触媒の種類を次のA)〜G)に示す。また、各白金触媒は、白金濃度がポリイソブチレン化合物に対して、20ppm、50ppm、200ppm、500ppm、1000ppm、5000ppmとなるように添加した。
【0057】
A).白金−活性炭素触媒(白金含量5wt%)(和光純薬工業社製)
B).白金−アルミナ触媒(白金含量5wt%)(和光純薬工業社製)
C).ビス(アセチルアセトナト)白金触媒(和光純薬工業社製)
D).白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体(5配位)(Gelest社(米国)製「SIP6829.0」(商品コード)、Pt0・CO・(CH2=CH(Me)SiO)4 ;9.5wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)SiO)4;90.5wt%を含む)
E).白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体(4配位)(Gelest社(米国)製「SIP6832.0」(商品コード)、Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4 ;9wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)SiO)4;91wt%を含む)
F).白金・ジビニルテロラメチルジシロキサン錯体(3配位)(Gelest社(米国)製「SIP6830.0」(商品コード)、Pt0・1.5[(CH2=CH(Me)2Si)2O]4;8wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)2Si)2O;92wt%を含む)
G).白金・オクチルアルデヒド/オクタノール錯体(Gelest社(米国)製「SIP6833.0」(商品コード)、Pt0・(OHC(CH2)6CH3)X(但しX=1〜6の整数);10〜14wt% 及び溶媒 HO(CH2)7CH3 ;86〜90wt%含む)
【0058】
【表1】
【0059】
得られた光通信部品用シール材組成物について、硬化性、ファイバ接着性、発泡性、反応時間をそれぞれ調べた。試験方法及び評価方法を次に示す。
【0060】
(1)硬化性試験
光通信部品用シール材組成物を、85℃で1時間加熱して硬化させた。加熱後の光通信部品用シール材組成物について、硬化が良好であったものを○、表面がべとついたりして硬化性が不十分であるものを△、液状又はゲル状のまま硬化しないものを×とした。
【0061】
(2)ファイバ接着性試験
ステンレス管(長さ10mm、内径φ3mm)に外径125μmのウレタンアクリレート樹脂で被覆された光ファイバを通し、ステンレス管の内部に光通信部品用シール材組成物を充填し、85℃で1時間加熱し硬化させた。光ファイバの一端をプッシュプルゲージに固定し、ステンレス管をゆっくりと引っ張り(引っ張り速度5mm/分)、光ファイバが光通信部品用シール材組成物から抜ける際の強度又は光ファイバが破壊する強度を測定した。光ファイバとの接着性が良好で光ファイバが破断する(荷重が0.9kgf超)場合を○、光ファイバの破断まで至らず光ファイバが抜け易い(荷重が0.9〜0.2kgf)場合を△、光ファイバが簡単に抜ける(荷重が0.2kgfより小さい)場合を×とした。
【0062】
(3)発泡性
発泡性は、硬化後に何ら発泡しないものを○、硬化後に発泡が見受けられるものを×とした。
【0063】
(4)反応時間(作業性)
反応時間(作業性)は、作業時間として想定した20分以内に光通信部品用シール材組成物の初期粘度がほとんど変わらないものを○、加熱せずとも硬化反応が起こり硬化してしまうものを×とした。
【0064】
評価結果を表1に記載する。触媒として、白金−活性炭素、白金−アルミナ、ビス(アセチルアセトナト)白金、を用いた場合は、白金濃度に関係なく、シール材が硬化せず、光通信部品用シール材組成物としては不適であった。また、白金−オレフィン錯体を用いた場合は、硬化性及びファイバ接着性については良好であるけれども、硬化によって発泡し、また黒っぽく呈色してしまい実用に耐えうるものではなかった。しかし、白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体は、硬化性、ファイバ接着性、発泡性、作業性の全てにおいて優れており、光通信部品用シール材組成物用の触媒として適していた。また、これらの触媒の白金濃度は、白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体を用いた場合は500〜1000ppm、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体を用いた場合は200〜500ppm、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を用いた場合は50〜500ppmにおいてそれぞれ良好な結果であった。
【0065】
実験2:疎水性無機充填材の添加量
【0066】
疎水性無機充填材である酸化アルミニウムの添加量を変える実験を行った。即ち、実験1において酸化アルミニウムの添加量が220重量部であったものを、0重量部、80重量部、100重量部に代えた実験を行った。触媒添加量は200ppmとした。その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2からもわかるように、疎水性である酸化アルミニウムは、ポリイソブチレン化合物100重量部に対して、100重量部添加すれば、ファイバ接着性は良好であるが、80重量部では、硬化性は良いものの、ファイバ接着性において劣っていた。
【0069】
実験3:白金触媒溶液中の白金濃度
【0070】
白金触媒を溶剤に溶解させた白金触媒溶液として添加する場合の白金触媒溶液中の白金濃度による影響を調べる実験を行った。反応基として両末端アリル基を有するポリイソブチレン化合物(鐘淵化学工業(株)製「EPION EP203A」、平均分子量:5000;プロセスオイル23wt%含有);100重量部、ヒドロシリル基を有する硬化剤(鐘淵化学工業(株)製「CR−100」);16重量部(ヒドロシリル基の数(Y)/アリル基の数(X)=4)、疎水性酸化アルミニウム(昭和電工(株)製「AL−170」);200重量部に対して、白金触媒溶液中の白金濃度を変えた種々の白金触媒を添加して試料1〜試料5の種々の光通信部品用シール材組成物を作製した。白金触媒は、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体(4配位)(Gelest社(米国)製「SIP6832.0」(商品コード)、Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4 ;9wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)SiO)4;91wt%を含む)を、白金濃度が、0.5wt%、1wt%、3wt%、12wt%、20wt%となるようにシクロビニルメチルシロキサン溶媒の量を調整したものを白金触媒溶液として調製して添加した。なお、いずれの白金触媒の添加においても、ポリイソブチレン化合物に対する白金の重量割合は、400ppmとしている。その結果を表3に示す。なお、試験方法、評価方法は、実験1と同じである。
【0071】
【表3】
【0072】
白金触媒溶液に対する白金濃度は、1wt%以上であれば、ファイバ接着性に適するが、0.5wt%ではファイバ接着性が劣っていた。
【0073】
実験4:硬化剤の添加量(ヒドロシリル基数(Y)/アリル基数(X)の比)
【0074】
実験1の白金濃度が200ppmである場合において、硬化剤の添加量が18重量部であったものを、45部、9部、6部、3部に代えた実験を行った。硬化剤量を変更した以外は実験1と同様である。試験方法及び評価方法も実験1と同じである。その結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
この結果から、白金の配位数が少ない白金触媒の方が、硬化剤量を減らした場合にでも効果的であることがわかる。また、ヒドロシリル基数(Y)/アリル基数(X)の値は、0.7や10では硬化性、ファイバ接着性とも不十分であった。
【0077】
実験5:シラン化合物、硬化遅延剤の添加
【0078】
シラン化合物、硬化遅延剤を加える実験を行った。反応基として両末端アリル基を有するポリイソブチレン化合物(鐘淵化学工業(株)製「EPION EP200A」、平均分子量:5000)、ヒドロシリル基を有する硬化剤(鐘淵化学工業(株)製「CR−100」)、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体(Gelest社製「SIP6832.0」(商品コード)、白金濃度:3〜3.5wt%/錯体)、疎水性酸化アルミニウム(昭和電工(株)製「AL−170」)、可塑剤(出光興産(株)製「PS−32」)、シラン化合物(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製「SZ6300」)、硬化遅延剤(GE東芝シリコーン(株)製「ME75」)を表5に示した所定の比率で配合し、試料6〜試料8の各々の光通信部品用シール材組成物を作製した。
【0079】
【表5】
【0080】
得られた光通信部品用シール材組成物についてのファイバ接着性試験は実験1で示した方法とした。また、初期粘度については回転粘度計を使用して測定した。せん断強度試験は、SUS板(1mm厚)に接着面積25×15mmにて光通信部品用シール材組成物を塗布し、85℃で、1時間硬化させた後、引っ張りスピード5mm/min.にて室温で測定したものである。硬度は、85℃で1時間硬化後のショアA硬度を測定した。各測定結果も表5に示す。
【0081】
酸化アルミニウムを添加すると光通信部品用シール材組成物の初期粘度が上がり、シラン化合物の添加でせん断強度が向上した。
【0082】
【実施例】
以下に、本発明の光通信部品用シール材組成物を種々の光通信部品に適用したうちの一例について説明する。
【0083】
実施例1:
【0084】
実験5で得られた試料8のシール材(透湿度=4.66g/24h/m2)を、図1に示す光ファイバカプラの防湿シール(外径3mm、内径2.6mm、長さ100mmのSUSパイプ、UV被覆シングルモード単心線)に適用すると、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動0.2dB以下、また、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後においても、光損失増0.2dB以下を示し、耐久信頼性に優れた光通信部品を実現した。
【0085】
実施例2:
【0086】
また、試料8のシール材(透湿度=4.66g/24h/m2)を、図2に示すフィルタを挿入する光導波路型合分波素子の防湿シール(外寸8×10mm、内寸6×8mm、長さ100mmのアルミ製ボックス、UV被覆シングルモードテープ心線)に適用すると、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動0.3dB以下、また、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後においても、光損失増0.2dB以下を示し、耐久信頼性に優れた光通信部品を実現した。
【0087】
比較例1:
【0088】
比較のため、エポキシ系シール材(弾性率=3×10+10dyn/cm2、硬度=ショアD85、Tg=150℃、透湿度=6.18g/24h/m2)を、図1に示す光ファイバカプラの防湿シール(外径3mm、内径2.6mm、長さ100mmのSUSパイプ、UV被覆シングルモード単心線)に適用すると、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後において、光損失増0.3dB以下の良好な耐湿信頼性を示したが、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動2dB以上となり、耐ヒートサイクル信頼性が劣っていた。
【0089】
比較例2:
【0090】
また、比較のため、シリコーン系シール材(弾性率=5×10+7dyn/cm2、硬度=ショアA21、Tg=−55℃、透湿度=152g/24h/m2)を、図1に示す光ファイバカプラの防湿シール(外径3mm、内径2.6mm、長さ100mmのSUSパイプ、UV被覆シングルモード単心線)に適用すると、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動0.2dB以上となった。また、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後において、光ファイバ固定部の接着剤が剥がれ、光損失増5dB以上を示し、光部品としての耐久信頼性が劣っていた。
【0091】
高温高湿(75℃、90%RH)環境下での、本発明の光通信部品用シール材組成物(試料8)を用いた光通信部品と従来のシール材(比較例2で用いたシリコーン系シール材)を用いた光通信部品(光カプラ)のそれぞれの内部の湿度変化を測定し、図3に示した。図3より、本発明の光通信部品用シール材は優れた防湿信頼性と、良好な耐湿信頼性を示す。
【0092】
【発明の効果】
本発明の光通信部品用シール材組成物は、85℃以下という比較的低温で硬化することができ、硬化性が良好であるだけでなく、光通信部品との接触面においてシール材の硬化阻害が起きず、被着体との接着性に優れ、光通信部品の特性を損なわないシール材となる。また、保管安定性に優れ、塗工作業が容易である。
【0093】
また、本発明の光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品は、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、透湿性がほとんどないことから耐湿信頼性に優れた光通信部品である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光通信部品の一実施形態である光カプラの内部構造の概略を示す断面図である。
【図2】本発明の光通信部品の一実施形態である光導波路の内部構造の概略を示す断面図である。
【図3】光通信部品内の湿度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
11 光カプラ
12 保護管(筐体)
12a ファイバ導入口
13 光ファイバ
14 石英基板
15 有機接着剤
16 シール部
21 光導波路部品
22 金属ケース(筐体)
22a ファイバ導入口
23 光学フィルタ
24 ファイバアレイ
25 光導波路
26 光ファイバ
27 シール部
【発明の属する技術分野】
本発明は、合波・分波用光カプラや光導波回路用パッケージ、レーザーダイオード、フォトダイオード、光コネクタ、光アイソレータ、光スイッチ、光変調器、光減衰器などの屋外ないしは屋内用の光通信部品で用いられる光通信部品用シール材組成物およびその光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
光センサ、光情報処理、光通信分野で用いる光通信部品は集積化、微小化、高機能化、低価格化等をめざして研究・開発が盛んに行われ、ファイバカプラ素子、石英系光導波路素子などが既に実用化されている。中でもファイバカプラ素子は簡単に合分岐、合分波が可能で、しかも安価な素子であるため、その利用が拡大してきている。このような光通信部品の一般的な構造は、光ファイバの導入口を設けた筐体(パッケージ)に光ファイバを接続した光素子を内蔵する構造となっており、光素子に接続した光ファイバは筐体に設けたファイバ導入口を通じて筐体の外部に導出されている。そして筐体内部への水分や塵や埃の侵入を阻止するため、光ファイバとファイバ導入口との間にはシーリングを施すようにしている。
【0003】
ところで、このような構造の光通信部品は、特に高温高湿(85℃以上、85%RH以上)の厳しい環境下では、光伝送損失や偏波依存性損失における性能劣化が顕著であった。そこで、この理由を調査検討したところ、多くの光通信部品において、筐体のファイバ導入口と光ファイバとの間におけるシーリングや、筐体内部での光素子の固定方法として、単なる有機系の接着剤を用いたに過ぎない未熟な実装技術を採用する例が多いことから、湿気などの水分の影響による接着剤の膨潤、劣化等が誘起されていることが判明した。
【0004】
単なる接着剤ではなく、空隙を充填する用途に用いるための一般的な有機系のシール材には、高弾性のシリコーン系材料を用いたシール材や低弾性のエポキシ系材料を用いたシール材などがある。しかしながら、前者の高弾性のシリコーン系シール材は、光通信部品に用いると、透湿度が大きく防湿機能に劣ること、また破断強度や引裂強度などの機械強度が小さいこと等の欠点があった。また、後者の低弾性のエポキシ系シール材を光通信部品に用いると、透湿度が小さく防湿機能に優れているが、硬化時や使用環境温度の変動時に大きな内部応力が発生し、特に光ファイバなどへの応力発生により、ファイバのマイクロベンド(局所的な曲がり)により光損失が増大してしまうという欠点があった。
【0005】
また、高弾性で低透湿性の材料としてポリイソブチレン化合物系のシール材があるが、光通信部品に用いると、反応性が低く硬化に時間を要したり、厚膜硬化性が悪いなどの他、シール材の強度や、光通信部品を構成する光ファイバとの接着性が十分ではなく、光通信部品用シール材組成物としての満足な効果を与えるものではなかった。
【0006】
そして、このような従来型のシール材の中には、光通信部品に適用した場合の特有の現象として、光ファイバとの接触部分で硬化阻害が発生する場合があった。硬化阻害とは、適用するシール材の標準的な硬化条件で硬化させた場合に、シール材のうち光ファイバとの接触部分だけが未硬化であったり、光ファイバとの接着性が著しく悪くなる現象をいう。この硬化阻害を回避するため、プライマーを光ファイバに予め塗工しても良いが、作業工程や製造コストが増加するために好ましい方法ではない。
【0007】
なお、シール材以外を用いる方法として、ハウメチックシール等によって水分や塵や埃を光通信部品内に侵入させないようにする実装技術もあるが、複雑で高価なシール方法となるため光通信部品のコストが高くなる欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、発明者らは、光通信部品に適用することができるシール材を開発することを目的として、特に、光通信部品に特有の現象である硬化阻害の起こらないシール材について研究することにより本発明を完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、光通信部品用のシール材として用いた場合に、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度、光通信部品との接着強度が高く、透湿性が低く、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材組成物を得ることを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、光通信部品用のシール材として用いた場合に、硬化阻害が起きず光通信部品の構成部材である光ファイバとの接着性に優れた光通信部品用シール材組成物を得ることを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、これらの光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品を提供することも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するために、本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、を含んでなる光通信部品用シール材組成物を提供する。
【0013】
本発明の光通信部品用シール材組成物によれば、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、白金・ビニルシロキサン錯体を含んでいるため、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度が高いだけでなく、硬化阻害が起きず被着体との接着強度が高く、透湿性が低く、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材となる。
【0014】
また本発明は、さらに疎水性無機充填材を添加した光通信部品用シール材組成物である。疎水性無機充填材を含有するため、硬化阻害を軽減することができる。また、ポリマー成分との親和性が上がり、透湿度が低下し、被着体との接着性、シール性が向上し、シール材自体の機械的強度も向上する。
【0015】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物と、該反応基を有するポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)に対するヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8となるヒドロシリル基を含有する硬化剤、及び白金量が前記反応基を有するポリイソブチレン化合物に対して50〜1000ppmとなる白金・ビニルシロキサン錯体、を含んでなる光通信部品用シール材組成物を提供する。
【0016】
ポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)と硬化剤中のヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8としたため、ポリイソブチレン化合物が十分に反応しながら、硬化性の悪化や硬化物の物性変化を防止することができる。また、白金量が反応基を有する前記ポリイソブチレン化合物に対して50〜1000ppmとしたことから、85℃という比較的低温でポリイソブチレン化合物と硬化剤との反応が十分に行われ硬化させることができるため、硬化阻害が起こりにくく、光通信部品の特性を損なうことがない。そして、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、シール材自体の機械強度、光通信部品との接着強度が高く、透湿性が低く、また、保存安定性や作業性にも優れた光通信部品用シール材を得ることができる。
【0017】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物100重量部に対して疎水性無機充填材を100〜500重量部含む光通信部品用シール材組成物を提供する。ポリイソブチレン化合物に対して1〜5倍量の疎水性無機充填材を含むため、シール材の機械強度を増加させることができ、作業性にも優れ、また、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、耐湿性、耐候性に優れた光通信部品用シール材組成物を得ることができる。そしてこの場合に、疎水性無機充填材が酸化アルミニウムであれば、シール材の機械的強度に優れる上、硬化阻害が起きにくく被着体との接着性に優れている。
【0018】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物における反応基がアリル基である光通信部品用シール材組成物を提供する。反応基をアリル基としたため、白金・ビニルシロキサン錯体の存在下、85℃という低温で容易にヒドロシリル基と付加反応を起こすことができる。
【0019】
また本発明は、反応基を有するポリイソブチレン化合物と、触媒である白金・ビニルシロキサン錯体と、を含有し、必要に応じて疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤から選択される一種以上の添加剤を加えた第1組成物と、反応基を有するポリイソブチレン化合物とヒドロシリル基を有する硬化剤を含有し、必要に応じて疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤から選択される一種以上の添加剤を加えた第2組成物と、の二液からなる光通信部品用シール材組成物を提供する。
【0020】
硬化剤と触媒を分けた二液性としたため、組成物の保存安定性を向上させるとともに、短時間での硬化や、より低温での硬化が可能となる。また、粘度が高すぎず、ポットライフも長くて作業性が良い光通信部品用シール材組成物とすることができる。さらに二液性としたため、反応抑制剤に対する要求が緩和されるとともに、反応基を有するイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤の組合せのバリエーションが豊富になる。
【0021】
さらに本発明は、光素子と、光素子に接続した光ファイバと、光素子と光ファイバにおける光素子との接続端側とを収容する筐体とを備え、光ファイバを筐体のファイバ導入口から内部に導入してある光通信部品について、前記光通信部品用シール材組成物によってファイバ導入口と光ファイバとの隙間を封止したシール部を備える光通信部品を提供する。
【0022】
この光通信部品は、本発明の光通信部品用シール材組成物をシール材に用いているため、ファイバとの界面においてシール材の硬化阻害がなく、水分や塵や埃の侵入を確実に防止できるシール性に大変優れている。また、シール材自体の不良や、シール材塗工時の不良が生じにくく、歩留まりが良い生産性の高い光通信部品を得ることができる。そして、本発明の光通信部品用シール材組成物を用いた、合波・分波用光カプラや光導波回路用パッケージ、レーザーダイオード、フォトダイオード、光コネクタ、光アイソレータ、光スイッチ、光変調器、光減衰器などの屋外ないしは屋内用光通信部品を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の光通信部品用シール材組成物は、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、を含む組成物である。そして必要に応じて、疎水性無機充填材やその他の添加剤を含んでなる組成物である。以下、光通信部品用シール材組成物を形成する各成分について説明する。
【0024】
反応基を有するポリイソブチレン化合物; 反応基を有するポリイソブチレン化合物における反応基とは、ヒドロシリル基と付加反応して結合可能な反応基のことである。このような反応基としては水酸基、エポキシ基、アルケニル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基やシクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などの環式不飽和炭化水素基などが挙げられる。反応基の中ではアルケニル基が好ましく、反応性に優れ、安定性が良く、入手し易いなどの点から、特にアリル基が好ましい。
【0025】
ポリイソブチレン化合物中の反応基の位置は、分子骨格の末端に存在すると、反応性が高く得られる硬化物が高強度となるなどの点から好ましい。
【0026】
ポリイソブチレン化合物主鎖の単量体単位としてはイソブチレン単位が50モル%以上であることが好ましく、防湿性、硬化性向上の観点から90モル%以上がより好ましい。
【0027】
本発明に使用される反応基を有するポリイソブチレン化合物の平均分子量は500〜10,000である。500未満では、低粘度のためシール材使用時に液ダレが生じやすく、硬化物の機械強度が低い。また、疎水性無機充填材を添加した場合に疎水性無機充填材が沈降してしまうなどの問題が生じる。また、10,000を超えると、高粘度となり、シール箇所への浸透が容易でなく常温での作業性が困難となる。
【0028】
ポリイソブチレン化合物は、目的に応じて、反応基の異なるもの、または分子量の異なるものを2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
【0029】
ヒドロシリル基を有する硬化剤; ヒドロシリル基含有硬化剤は、一分子内に2個以上のヒドロシリル基を含有していることが好ましい。ここで、ヒドロシリル基とはSiH基のことを指すが、同一Siに水素原子が2個結合している場合はヒドロシリル基2個と数えるものとする。ヒドロシリル基が2個より少ないと、硬化が遅く硬化不良を起こす場合が多い。
【0030】
ヒドロシリル基を有する硬化剤には、鎖状又は環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサン等が挙げられるが、シール材系中における相溶性あるいは分散安定性が良好なものが好ましい。鎖状又は環状のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ヒドロシリル基の結合部位が分子末端にあっても分子鎖の途中にあっても好ましい化合物である。ヒドロシリル基を有する硬化剤成分は単独もしくは2種類以上のものを混合して用いることができる。
【0031】
ポリイソブチレン化合物に対するヒドロシリル基を有する硬化剤の添加量は、ポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)と硬化剤中のヒドロシリル基数(Y)の比が、1≦(Y/X)≦8となる添加量が好ましく、2≦(Y/X)≦6がより好ましい。(Y/X)<1である場合は架橋が不十分であり、(Y/X)>8の場合は、硬化後に残存するヒドロシリル基の影響によりブリードが生じたり、硬化性が悪くなったり、硬化物の物性が変化するという問題が生じる可能性が高いからである。
【0032】
白金触媒; 反応基を有するポリイソブチレン化合物と、ヒドロシリル基を有する硬化剤とを付加反応させるための反応触媒は、白金・ビニルシロキサン錯体である。白金・ビニルシロキサン錯体には、白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体等の白金・ビニルメチルシロキサン錯体が挙げられる。これらの中では、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が、光通信部品用シール材組成物中の添加量を少なくできる点でより好ましい。
【0033】
通常、白金触媒と呼ばれる触媒には、白金単体や白金を活性炭素やアルミナ等に担持させた担体付白金触媒、塩化白金酸、白金オレフィン錯体等の種々の触媒が挙げられるが、光通信部品用シール材に用いる場合には、白金担体や、白金を活性炭素やアルミナ等に担持させた触媒は、シール材が硬化せず不適切である。また、塩化白金酸は、使用する際に危険が伴い好ましくなく、白金・オクチルアルデヒド/オクタノール錯体のような白金オレフィン錯体は、シール材の硬化時に発泡するため好ましくない。
【0034】
白金・ビニルシロキサン錯体の添加量は、ポリイソブチレン化合物に対して白金の重量が50〜1000ppmであることが好ましく、200〜500ppmであることがより好ましい。2000ppmを超えると、加温しなくとも短時間で硬化反応が起こり、作業性が著しく低下する。50ppm未満であると、光ファイバがナイロン系の被覆材で覆われている場合は良いが、一般的に光ファイバ用被覆材として用いられているウレタンアクリレート系の被覆材で覆われているとファイバ接着性が劣る。さらに、30ppm未満であるとポリイソブチレン化合物が硬化し難くなり硬化性、被着体との接着性が著しく低下する。
【0035】
白金・ビニルシロキサン錯体は、溶媒に溶解させた状態で用いることができる。この場合、白金触媒溶液に対する白金の重量は、1〜20wt%であることが好ましい。20wt%を超えると、溶液中の錯体が凝集したり、保存中に触媒活性が失われたりするからである。また、1wt%未満であると、白金以外の成分が多くなりすぎ、硬化反応の進行を遅くし、硬化性、被着体との接着性を著しく低下させるからである。溶媒としてはシクロビニルメチルシロキサン、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0036】
無機充填材; また、本発明の光通信部品用シール材組成物には、透湿度低下、接着性向上、機械的強度の増加、硬化収縮の低減、熱膨張の低減、粘弾性の調整、硬度調整、粘度調整、硬化前の流れ特性改善、色調変化などの種々の目的のために無機充填材を配合することができる。無機充填材としては疎水性無機充填材が好ましい。疎水性無機充填材を用いることにより、ポリマー成分との親和性が上がり、充填材の配合重量部数を増加することが可能になる。それに付随してより一層の透湿度低下、接着性向上、機械的強度の向上などの効果が期待できる。また、無機充填材を疎水性にすることで、シール材の硬化阻害を軽減することができる。
【0037】
疎水性無機充填材としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミニウム、マグネシウム、炭素などの球状、塊状、粉体状、繊維状、針状、鱗片状、ペレット状などの無機充填材に表面疎水性処理を施したものが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
疎水性無機充填材の中でも透湿度低下、機械的強度向上効果の高い酸化アルミニウムが好ましい。酸化アルミニウムの添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が100〜500重量部の範囲内である。100重量部未満では硬化物の機械強度向上効果が十分でなく、500重量部を超えると硬化前の粘度が高く作業性が悪い、硬化物の硬度が高くなりすぎてしまうなどの問題が生じることがある。
【0039】
可塑剤; 粘度調整及び可塑化などの目的により可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、反応基を有するポリイソブチレン化合物に対して相溶性が良好なものが好ましい。可塑剤の例としてはポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、パラフィン油、ナフテン油などの炭化水素系化合物類、塩素化パラフィン類、フタル酸エステル類、非芳香族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。可塑剤の添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が10〜100重量部とする。10重量部より少ないと無機充填材の配合のためには高粘度であり、100重量部を超えると硬化性、接着性、防湿性、物理的強度などが低下し、好ましくない。
【0040】
シラン化合物; また、接着性付与剤としてシラン化合物を添加することができる。シラン化合物とは加水分解性基と反応性有機官能基を併せ持つ有機ケイ素単量体であり、触媒を著しく不活性にしないものが用いられる。シラン化合物に含まれる反応性有機官能基には、ビニル系、エポキシ系、メタクリル系、エステル系、アミノ系などの官能基が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて含有されていても良い。シラン化合物の添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が1〜10重量部とする。1重量部より少ないと金属ケース等の筐体との接着力が劣り、10重量部を超えるとシール材の硬化性、接着性、防湿性、物理的強度などが低下したり、保存安定性が悪くなり、好ましくない。
【0041】
硬化遅延剤; また、可使時間増加、作業性向上、硬化時間調整及び保存安定性向上などの目的により硬化遅延剤を添加することができる。硬化遅延剤としては、例えば脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられる。脂肪族不飽和結合を含有する化合物の例としては、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが挙げられる。有機リン化合物の例としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが挙げられる。有機硫黄化合物の例としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド、チアゾールなどが挙げられる。窒素含有化合物の例としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが挙げられる。スズ系化合物の例としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが挙げられる。有機過酸化物の例としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上組み合わせて用いても良い。硬化遅延剤の添加量はポリイソブチレン化合物100重量部に対して総重量が0.05〜10重量部とする。0.05重量部より少ないと硬化遅延効果が低く、保存安定性が悪く、10重量部を超えるとシール材の接着性、防湿性、物理的強度などが低下したり、硬化が極端に遅くなり実用性に欠け、好ましくない。
【0042】
疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤などの添加剤とは別に、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、補強剤、難燃剤、耐熱性向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、シラン化合物以外の接着性付与剤、チクソ性付与剤、オイル、反応性希釈剤、顔料、硬化促進剤、相溶化剤、脱水剤、などの添加剤を添加することできる。
【0043】
一液性の光通信部品用シール材組成物を製造するためには、反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、必要な添加剤を加えて混合、攪拌する。また、二液性の光通信部品用シール材組成物を製造するためには、反応基を有するポリイソブチレン化合物と、触媒である白金・ビニルシロキサン錯体と、必要な疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤等の添加剤、を加えて混合攪拌して第1組成物を作製し、別に、反応基を有するポリイソブチレン化合物とヒドロシリル基を有する硬化剤、必要な疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤等の添加剤、を加えて混合攪拌して第2組成物を作製する。
【0044】
二液性の光通信部品用シール材組成物における第1組成物はヒドロシリル基を有する硬化剤が存在せず、第2組成物は触媒が存在しないため、両者を混合するまで硬化反応がほとんど進行しない。疎水性無機充填材を添加する場合は、第1組成物または第2組成物の片方のみに配合しても構わないが、粘度や配合時の体積、重量を均一にするために第1組成物及び第2組成物の両方に添加することが好ましい。
【0045】
光通信部品用シール材組成物を形成する各成分の割合は、反応基を有するポリイソブチレン化合物を100重量部としたときに、ポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)に対するヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8となるヒドロシリル基を含有する硬化剤量が好ましく、2≦(Y/X)≦6となることがより好ましい。したがって、硬化剤に含まれる溶剤等の量にもよるが、通常、硬化剤量は、5〜30重量部である。触媒量は、ポリイソブチレン化合物に対し、白金重量が50〜1000ppmとなるように添加する。添加剤として無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤等を使用する場合は、各添加量がポリイソブチレン化合物100重量部に対して、無機充填材;100重量部〜500重量部、可塑剤;10重量部〜100重量部、シラン化合物;1重量部〜10重量部、硬化遅延剤;0.05重量部〜10重量部とする。なお、二液性の光通信部品用シール材組成物では、第1組成物と第2組成物の合計量が上記割合になるようにする。
【0046】
二液性の光通信部品用シール材組成物の場合、第1組成物中のポリイソブチレン化合物と第2組成物中のポリイソブチレン化合物の重量比は特に限定されないが、作業性の点から、第1組成物と第2組成物との重量比は、第1組成物:第2組成物が10:1から1:10の範囲内になるように各構成材料量を調整することが好ましく、第1組成物:第2組成物が1:1になるように調整することが特に好ましい。また、著しく異なる粘度の組成物を混合するのは作業性が悪いため、第1組成物と第2組成物との粘度比は、第1組成物:第2組成物が10:1から1:10の範囲内になるように各構成材料量を調整することが好ましく、第1組成物:第2組成物が1:1になるように調整することが特に好ましい。
【0047】
一液性の光通信部品用シール材組成物と二液性の光通信部品用シール材組成物を比較すると、一液性の方が、シール作業が容易で、保管場所が少なくて済む等の利点があるが、保存安定性をより向上させ、短時間で熱硬化させるようなさらなる要求がある場合は、二液性とすることが好ましい。
【0048】
光通信部品用シール材組成物は、初期粘度が10,000〜500,000mPa・sであり、10,000〜200,000mPa・sであることが特に作業性の面から好ましい。
【0049】
光通信部品用シール材組成物を光通信部品に適用するには、一液性の場合はそのままシール箇所に塗布し、また、二液性の場合は第1組成物と第2組成物をよく混合攪拌した後シール箇所に塗布して、所定時間加温して固化させる。通常、100℃以下、好ましくは85℃以下の加熱下に24時間、少なくとも1時間程度おいて固化させる。このように低温で硬化させることとしたのは、光通信部品には一部に紫外線硬化性樹脂を用いているものも多く、加熱硬化性樹脂をシール材として用いる場合、高温で硬化させると紫外線硬化性樹脂が、変質、変形して紫外線硬化性樹脂の弾性率、破断伸度、硬化度、機械的強度、密着性などの諸特性が劣化するだけでなく、光通信部品の特性までが変化するおそれがあるからである。
【0050】
反応基を有するポリイソブチレン化合物は所定の触媒の存在下、上述の加熱によりヒドロシリル基を有する硬化剤と付加反応し、ゴム状硬化物となる。この硬化物は、加水分解性シリル基を有した湿気硬化性シリコーン樹脂硬化物やアルケニル基を有した加熱硬化性シリコーン樹脂硬化物と比較して、非常に低い透湿性を示し、防湿性に優れていることを特徴としている。
【0051】
次に、本発明の光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品の例を図1及び図2に示した。
【0052】
図1は、光通信部品として例示する光カプラ11の内部構造の概略を示す断面図である。保護管(筐体)12の内部で石英基板14と有機接着剤15で結合された光ファイバ13は、保護管12の両端に開口するファイバ導入口12aから外部に出ているため、ファイバ導入口12aと光ファイバ13の間(隙間)にはシール材で密封したシール部16が形成されている。このシール部16を成すシール材に本発明の光通信部品用シール材組成物を用いている。
【0053】
また図2は、光通信部品として例示する光導波路部品21の概略正面図である。金属ケース(筐体)22の内部に備えられた光素子としての光学フィルタ23、ファイバアレイ24、光導波路25に連なる光ファイバ26は、金属ケース22の両端に開口するファイバ導入口22aから外部に出ているため、ファイバ導入口22aと光ファイバ26との隙間にはシール材で密封したシール部27が形成されている。このシール部27を成すシール材に本発明の光通信部品用シール材組成物を用いている。
【0054】
光通信部品用シール材組成物の組成に関し、触媒種及びその添加量、無機充填材の添加量、ヒドロシリル基の数(Y)/アリル基の数(X)等に関する実験を行ったので説明する。
【0055】
実験1:触媒種及びその添加量
【0056】
反応基として両末端アリル基を有するポリイソブチレン化合物(鐘淵化学工業(株)製「EPION EP203A」、平均分子量:5000;プロセスオイル23wt%含有);100重量部、ヒドロシリル基を有する硬化剤(鐘淵化学工業(株)製「CR−300」);18重量部、疎水性酸化アルミニウム(昭和電工(株)製「AL−45−2」);220重量部、炭化水素系可塑剤(出光興産(株)製「PS−32」);10重量部に所定の白金触媒を添加して光通信部品用シール材組成物を作製した。添加した白金触媒の種類を次のA)〜G)に示す。また、各白金触媒は、白金濃度がポリイソブチレン化合物に対して、20ppm、50ppm、200ppm、500ppm、1000ppm、5000ppmとなるように添加した。
【0057】
A).白金−活性炭素触媒(白金含量5wt%)(和光純薬工業社製)
B).白金−アルミナ触媒(白金含量5wt%)(和光純薬工業社製)
C).ビス(アセチルアセトナト)白金触媒(和光純薬工業社製)
D).白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体(5配位)(Gelest社(米国)製「SIP6829.0」(商品コード)、Pt0・CO・(CH2=CH(Me)SiO)4 ;9.5wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)SiO)4;90.5wt%を含む)
E).白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体(4配位)(Gelest社(米国)製「SIP6832.0」(商品コード)、Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4 ;9wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)SiO)4;91wt%を含む)
F).白金・ジビニルテロラメチルジシロキサン錯体(3配位)(Gelest社(米国)製「SIP6830.0」(商品コード)、Pt0・1.5[(CH2=CH(Me)2Si)2O]4;8wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)2Si)2O;92wt%を含む)
G).白金・オクチルアルデヒド/オクタノール錯体(Gelest社(米国)製「SIP6833.0」(商品コード)、Pt0・(OHC(CH2)6CH3)X(但しX=1〜6の整数);10〜14wt% 及び溶媒 HO(CH2)7CH3 ;86〜90wt%含む)
【0058】
【表1】
【0059】
得られた光通信部品用シール材組成物について、硬化性、ファイバ接着性、発泡性、反応時間をそれぞれ調べた。試験方法及び評価方法を次に示す。
【0060】
(1)硬化性試験
光通信部品用シール材組成物を、85℃で1時間加熱して硬化させた。加熱後の光通信部品用シール材組成物について、硬化が良好であったものを○、表面がべとついたりして硬化性が不十分であるものを△、液状又はゲル状のまま硬化しないものを×とした。
【0061】
(2)ファイバ接着性試験
ステンレス管(長さ10mm、内径φ3mm)に外径125μmのウレタンアクリレート樹脂で被覆された光ファイバを通し、ステンレス管の内部に光通信部品用シール材組成物を充填し、85℃で1時間加熱し硬化させた。光ファイバの一端をプッシュプルゲージに固定し、ステンレス管をゆっくりと引っ張り(引っ張り速度5mm/分)、光ファイバが光通信部品用シール材組成物から抜ける際の強度又は光ファイバが破壊する強度を測定した。光ファイバとの接着性が良好で光ファイバが破断する(荷重が0.9kgf超)場合を○、光ファイバの破断まで至らず光ファイバが抜け易い(荷重が0.9〜0.2kgf)場合を△、光ファイバが簡単に抜ける(荷重が0.2kgfより小さい)場合を×とした。
【0062】
(3)発泡性
発泡性は、硬化後に何ら発泡しないものを○、硬化後に発泡が見受けられるものを×とした。
【0063】
(4)反応時間(作業性)
反応時間(作業性)は、作業時間として想定した20分以内に光通信部品用シール材組成物の初期粘度がほとんど変わらないものを○、加熱せずとも硬化反応が起こり硬化してしまうものを×とした。
【0064】
評価結果を表1に記載する。触媒として、白金−活性炭素、白金−アルミナ、ビス(アセチルアセトナト)白金、を用いた場合は、白金濃度に関係なく、シール材が硬化せず、光通信部品用シール材組成物としては不適であった。また、白金−オレフィン錯体を用いた場合は、硬化性及びファイバ接着性については良好であるけれども、硬化によって発泡し、また黒っぽく呈色してしまい実用に耐えうるものではなかった。しかし、白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体は、硬化性、ファイバ接着性、発泡性、作業性の全てにおいて優れており、光通信部品用シール材組成物用の触媒として適していた。また、これらの触媒の白金濃度は、白金・カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体を用いた場合は500〜1000ppm、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体を用いた場合は200〜500ppm、白金・ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を用いた場合は50〜500ppmにおいてそれぞれ良好な結果であった。
【0065】
実験2:疎水性無機充填材の添加量
【0066】
疎水性無機充填材である酸化アルミニウムの添加量を変える実験を行った。即ち、実験1において酸化アルミニウムの添加量が220重量部であったものを、0重量部、80重量部、100重量部に代えた実験を行った。触媒添加量は200ppmとした。その結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2からもわかるように、疎水性である酸化アルミニウムは、ポリイソブチレン化合物100重量部に対して、100重量部添加すれば、ファイバ接着性は良好であるが、80重量部では、硬化性は良いものの、ファイバ接着性において劣っていた。
【0069】
実験3:白金触媒溶液中の白金濃度
【0070】
白金触媒を溶剤に溶解させた白金触媒溶液として添加する場合の白金触媒溶液中の白金濃度による影響を調べる実験を行った。反応基として両末端アリル基を有するポリイソブチレン化合物(鐘淵化学工業(株)製「EPION EP203A」、平均分子量:5000;プロセスオイル23wt%含有);100重量部、ヒドロシリル基を有する硬化剤(鐘淵化学工業(株)製「CR−100」);16重量部(ヒドロシリル基の数(Y)/アリル基の数(X)=4)、疎水性酸化アルミニウム(昭和電工(株)製「AL−170」);200重量部に対して、白金触媒溶液中の白金濃度を変えた種々の白金触媒を添加して試料1〜試料5の種々の光通信部品用シール材組成物を作製した。白金触媒は、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体(4配位)(Gelest社(米国)製「SIP6832.0」(商品コード)、Pt0・(CH2=CH(Me)SiO)4 ;9wt% 及び溶媒(CH2=CH(Me)SiO)4;91wt%を含む)を、白金濃度が、0.5wt%、1wt%、3wt%、12wt%、20wt%となるようにシクロビニルメチルシロキサン溶媒の量を調整したものを白金触媒溶液として調製して添加した。なお、いずれの白金触媒の添加においても、ポリイソブチレン化合物に対する白金の重量割合は、400ppmとしている。その結果を表3に示す。なお、試験方法、評価方法は、実験1と同じである。
【0071】
【表3】
【0072】
白金触媒溶液に対する白金濃度は、1wt%以上であれば、ファイバ接着性に適するが、0.5wt%ではファイバ接着性が劣っていた。
【0073】
実験4:硬化剤の添加量(ヒドロシリル基数(Y)/アリル基数(X)の比)
【0074】
実験1の白金濃度が200ppmである場合において、硬化剤の添加量が18重量部であったものを、45部、9部、6部、3部に代えた実験を行った。硬化剤量を変更した以外は実験1と同様である。試験方法及び評価方法も実験1と同じである。その結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
この結果から、白金の配位数が少ない白金触媒の方が、硬化剤量を減らした場合にでも効果的であることがわかる。また、ヒドロシリル基数(Y)/アリル基数(X)の値は、0.7や10では硬化性、ファイバ接着性とも不十分であった。
【0077】
実験5:シラン化合物、硬化遅延剤の添加
【0078】
シラン化合物、硬化遅延剤を加える実験を行った。反応基として両末端アリル基を有するポリイソブチレン化合物(鐘淵化学工業(株)製「EPION EP200A」、平均分子量:5000)、ヒドロシリル基を有する硬化剤(鐘淵化学工業(株)製「CR−100」)、白金・シクロビニルメチルシロキサン錯体(Gelest社製「SIP6832.0」(商品コード)、白金濃度:3〜3.5wt%/錯体)、疎水性酸化アルミニウム(昭和電工(株)製「AL−170」)、可塑剤(出光興産(株)製「PS−32」)、シラン化合物(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製「SZ6300」)、硬化遅延剤(GE東芝シリコーン(株)製「ME75」)を表5に示した所定の比率で配合し、試料6〜試料8の各々の光通信部品用シール材組成物を作製した。
【0079】
【表5】
【0080】
得られた光通信部品用シール材組成物についてのファイバ接着性試験は実験1で示した方法とした。また、初期粘度については回転粘度計を使用して測定した。せん断強度試験は、SUS板(1mm厚)に接着面積25×15mmにて光通信部品用シール材組成物を塗布し、85℃で、1時間硬化させた後、引っ張りスピード5mm/min.にて室温で測定したものである。硬度は、85℃で1時間硬化後のショアA硬度を測定した。各測定結果も表5に示す。
【0081】
酸化アルミニウムを添加すると光通信部品用シール材組成物の初期粘度が上がり、シラン化合物の添加でせん断強度が向上した。
【0082】
【実施例】
以下に、本発明の光通信部品用シール材組成物を種々の光通信部品に適用したうちの一例について説明する。
【0083】
実施例1:
【0084】
実験5で得られた試料8のシール材(透湿度=4.66g/24h/m2)を、図1に示す光ファイバカプラの防湿シール(外径3mm、内径2.6mm、長さ100mmのSUSパイプ、UV被覆シングルモード単心線)に適用すると、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動0.2dB以下、また、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後においても、光損失増0.2dB以下を示し、耐久信頼性に優れた光通信部品を実現した。
【0085】
実施例2:
【0086】
また、試料8のシール材(透湿度=4.66g/24h/m2)を、図2に示すフィルタを挿入する光導波路型合分波素子の防湿シール(外寸8×10mm、内寸6×8mm、長さ100mmのアルミ製ボックス、UV被覆シングルモードテープ心線)に適用すると、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動0.3dB以下、また、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後においても、光損失増0.2dB以下を示し、耐久信頼性に優れた光通信部品を実現した。
【0087】
比較例1:
【0088】
比較のため、エポキシ系シール材(弾性率=3×10+10dyn/cm2、硬度=ショアD85、Tg=150℃、透湿度=6.18g/24h/m2)を、図1に示す光ファイバカプラの防湿シール(外径3mm、内径2.6mm、長さ100mmのSUSパイプ、UV被覆シングルモード単心線)に適用すると、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後において、光損失増0.3dB以下の良好な耐湿信頼性を示したが、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動2dB以上となり、耐ヒートサイクル信頼性が劣っていた。
【0089】
比較例2:
【0090】
また、比較のため、シリコーン系シール材(弾性率=5×10+7dyn/cm2、硬度=ショアA21、Tg=−55℃、透湿度=152g/24h/m2)を、図1に示す光ファイバカプラの防湿シール(外径3mm、内径2.6mm、長さ100mmのSUSパイプ、UV被覆シングルモード単心線)に適用すると、−40〜+85℃のヒートサイクル試験500サイクルにおいて、最大光損失変動0.2dB以上となった。また、85℃、85%RHの高温高湿試験5000時間後において、光ファイバ固定部の接着剤が剥がれ、光損失増5dB以上を示し、光部品としての耐久信頼性が劣っていた。
【0091】
高温高湿(75℃、90%RH)環境下での、本発明の光通信部品用シール材組成物(試料8)を用いた光通信部品と従来のシール材(比較例2で用いたシリコーン系シール材)を用いた光通信部品(光カプラ)のそれぞれの内部の湿度変化を測定し、図3に示した。図3より、本発明の光通信部品用シール材は優れた防湿信頼性と、良好な耐湿信頼性を示す。
【0092】
【発明の効果】
本発明の光通信部品用シール材組成物は、85℃以下という比較的低温で硬化することができ、硬化性が良好であるだけでなく、光通信部品との接触面においてシール材の硬化阻害が起きず、被着体との接着性に優れ、光通信部品の特性を損なわないシール材となる。また、保管安定性に優れ、塗工作業が容易である。
【0093】
また、本発明の光通信部品用シール材組成物を用いた光通信部品は、環境変化による内部応力がほとんど発生せず、透湿性がほとんどないことから耐湿信頼性に優れた光通信部品である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光通信部品の一実施形態である光カプラの内部構造の概略を示す断面図である。
【図2】本発明の光通信部品の一実施形態である光導波路の内部構造の概略を示す断面図である。
【図3】光通信部品内の湿度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
11 光カプラ
12 保護管(筐体)
12a ファイバ導入口
13 光ファイバ
14 石英基板
15 有機接着剤
16 シール部
21 光導波路部品
22 金属ケース(筐体)
22a ファイバ導入口
23 光学フィルタ
24 ファイバアレイ
25 光導波路
26 光ファイバ
27 シール部
Claims (9)
- 反応基を有するポリイソブチレン化合物、ヒドロシリル基を有する硬化剤、及び触媒としての白金・ビニルシロキサン錯体、を含んでなる光通信部品用シール材組成物。
- さらに疎水性無機充填材を含む請求項1記載の光通信部品用シール材組成物。
- 反応基を有するポリイソブチレン化合物と、該反応基を有するポリイソブチレン化合物中の反応基数(X)に対するヒドロシリル基数(Y)の比が1≦(Y/X)≦8となるヒドロシリル基を含有する硬化剤、及び白金量が前記反応基を有するポリイソブチレン化合物に対して50〜1000ppmとなる白金・ビニルシロキサン錯体、を含んでなる光通信部品用シール材組成物。
- 前記反応基を有するポリイソブチレン化合物100重量部に対して、さらに疎水性無機充填材を100〜500重量部含む請求項3記載の光通信部品用シール材組成物。
- 前記疎水性無機充填材が酸化アルミニウムである請求項2又は請求項4記載の光通信部品用シール材組成物。
- 前記反応基がアリル基である請求項1〜5の何れか1項記載の光通信部品用シール材組成物。
- 反応基を有するポリイソブチレン化合物と、触媒である白金・ビニルシロキサン錯体と、を含有し、必要に応じて疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤から選択される一種以上の添加剤を加えた第1組成物と、
反応基を有するポリイソブチレン化合物とヒドロシリル基を有する硬化剤を含有し、必要に応じて疎水性無機充填材、可塑剤、シラン化合物、硬化遅延剤から選択される一種以上の添加剤を加えた第2組成物と、
の二液からなる請求項1〜6の何れか1項記載の光通信部品用シール材組成物。 - 光素子と、当該光素子に接続した光ファイバと、光素子と光ファイバにおける光素子との接続端側とを収容する筐体とを備え、光ファイバが筐体のファイバ導入口を通じて内部に導入されている光通信部品において、
請求項1〜7の何れか1項に記載の光通信部品用シール材組成物によりファイバ導入口と光ファイバとの隙間を封止したシール部を備えることを特徴とする光通信部品。 - 前記光素子が、光カプラ素子又は光導波路である請求項8記載の光通信部品。
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JP2002175099A JP2004020878A (ja) | 2002-06-14 | 2002-06-14 | 光通信部品用シール材組成物及びこれを用いた光通信部品 |
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JP2006011243A (ja) * | 2004-06-29 | 2006-01-12 | Fujikura Ltd | 光部品保護構造及びレンズ型光部品 |
CN114335591A (zh) * | 2021-12-28 | 2022-04-12 | 郝建强 | 氢燃料电池用低硬度热固化聚异丁烯密封胶 |
CN114651032A (zh) * | 2019-11-08 | 2022-06-21 | 汉高股份有限及两合公司 | 耐高温双组分有机硅粘合剂 |
-
2002
- 2002-06-14 JP JP2002175099A patent/JP2004020878A/ja not_active Withdrawn
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