JP2004015534A - クロストーク抑制部材及びデジタル信号伝送線路 - Google Patents
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Abstract
【課題】クロストークが低レベルで、高周波化や高密度化が可能なクロストーク抑制部材及びデジタル信号伝送線路を提供する。
【解決手段】デジタル信号伝送線路は、誘電体基板1と、誘電体基板1において略平行に配設された複数の導体配線2a,2bと、隣接する導体配線間を電磁界的に結合させることで隣接する導体配線間で発生するクロストークと逆位相の信号を発生するクロストーク抑制部材4とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】デジタル信号伝送線路は、誘電体基板1と、誘電体基板1において略平行に配設された複数の導体配線2a,2bと、隣接する導体配線間を電磁界的に結合させることで隣接する導体配線間で発生するクロストークと逆位相の信号を発生するクロストーク抑制部材4とを備えている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル信号を扱う電子機器の回路基板等の導体配線に配設される、クロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータに代表されるデジタル機器では多くの印刷配線基板が使用され、その表面には多数のLSIが実装され、LSI間には銅などによる多数の配線が張り巡らされている。図15は従来の印刷配線基板の伝送線路構造の概略を示す斜視図である。図15において、1は誘電体材料により形成された基板、2a、2bは導体材料により形成された信号の伝送線路となる導体配線、3はグランドプレーンである。配線2a、2bの端部にはLSIが接続され(図示せず)、略矩形波のデジタル信号が伝送される。
【0003】
図15中には2a、2bの2本の配線のみ記述したが、実際にはより多くの配線が基板1上で隣接して平行に配設される場合が多く、CPUなどの処理能力向上やメモリーなどの大容量化によって、32bit、64bitといった多ビット処理が必要となり、例えば32本といった平行配線によるバス構造が形成され、高密度実装のために0.5mm以下のピッチでの配線や多層化なども行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の伝送線路構造では、配線間の電磁界的な結合により、隣接する配線へデジタル信号が漏れ出すクロストークが問題となる。
【0005】
図16は図15の伝送線路構造を等価回路に置き換え、SPICE電気回路シミュレータでデジタル信号波形のシミュレーションを行った結果を示している。配線2aにECLのロジックレベルを想定した1GHzのデジタル信号を、配線2bには配線2aとは1/4クロックサイクル遅れた1GHzのデジタル信号をそれぞれ伝送するという設定でシミュレーションを行ったところ、配線2bのデジタル信号によるクロストークの影響で配線2aの波形に乱れが生じる。ロジックスレッシュホールドを2Vとすると、図16中の点線で囲んだ箇所のように、スレッシュホールドを越える箇所が存在するので誤動作が発生し、ロジック判定のエラーが起こる。
【0006】
こうしたクロストークの問題は高速化のためにデジタル信号の周波数を1GHzを越えるような値に高周波化したり、高密度化のために配線間隔を小さくするとより顕著となるため、高速化による処理能力の向上や高密度実装による基板の小型化の障害となる。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決することにあって、クロストークが低レベルとなり、高周波化や高密度化が可能なクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、誘電体基板において略平行に配設された少なくとも1組の隣接する導体配線間を電磁界的に結合させて上記隣接する導体配線間で発生するクロストークと逆位相の信号を発生させるクロストーク抑制部材を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、上記少なくとも1組の隣接する導体配線間を電磁界的に結合させるとき、上記隣接する導体配線を容量結合により電磁界的に結合させる第1の態様に記載のクロストーク抑制部材を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、上記容量は、上記導体配線のインピーダンスと上記導体配線により伝送されるデジタル信号の周波数とに基づいて決定される第2の態様に記載のクロストーク抑制部材を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、上記少なくとも1組の隣接する導体配線上にまたがるように配置された導体層と、上記各導体配線と上記導体層との間に配置された誘電体層とを備える第1〜3のいずれか1つの態様に記載のクロストーク抑制部材を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、誘電体基板と、
上記誘電体基板において略平行に配設された複数の導体配線と、
第1〜4のいずれか1つの態様に記載のクロストーク抑制部材と、
を備えているデジタル信号伝送線路を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、上記クロストーク抑制部材は、上記導体配線により伝送されるデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で2個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材である第5の態様に記載のデジタル信号伝送線路を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、上記クロストーク抑制部材は、上記導体配線により伝送されるデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で3個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材である第5の態様に記載のデジタル信号伝送線路を提供する。
【0016】
上記構成により、クロストーク抑制部材の作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの発生が抑制される。
【0017】
また、上記クロストーク抑制部材が、伝送するデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で2個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材であるようにすれば、デジタル信号の周波数の奇数倍周波数成分に対して選択的にクロストーク抑制効果が発揮されるため、奇数倍周波数成分(1GHz,3GHz,5GHz,...といった奇数倍の周波数成分)を有する矩形波であるデジタル信号に対して特に有効にクロストーク抑制効果が発揮される。
【0018】
また、上記クロストーク抑制部材が、伝送するデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で3個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材であるようにすれば、デジタル信号の周波数の奇数倍周波数成分に対して選択的にクロストーク抑制効果が発揮される帯域が広帯域化されるため、さらに有効にクロストーク抑制効果が発揮される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図1において、1は誘電体材料により形成された基板、2a、2bは導体材料により形成された信号を伝送するための配線、3はグランドプレーンである。配線2a、2bおよびグランドプレーン3は基板1の対向面に配設されておりマイクロストリップラインを形成している。
【0021】
上記基板1は、ガラスエポキシ、紙フェノール、アルミナ、MgO、又は、絶縁性フィルムなどの誘電体材料より構成する(以下の実施形態でも同様。)。また、上記配線2の上記導体材料は、銅、金、又は、アルミニウムである(以下の実施形態でも同様。)。
【0022】
ここで、この第1実施形態の特徴は、配線2a、2bの両方に同時に接するようにクロストーク抑制部材4が配設されている点である。クロストーク抑制部材4は、導体層41と、導体層41の下層し全面でかつ配線2a、2bに接触して配置された誘電体層42とを備えるように構成されている。
【0023】
上記導体層41は、銅、金、又は、アルミニウムより構成しており、その厚さは10〜40μm程度である(以下の実施形態でも同様。)。また、上記誘電体層42は、ガラスエポキシ、紙フェノール、アルミナ、MgO、又は、空気より構成するようにしている(以下の実施形態でも同様。)。
【0024】
上記クロストーク抑制部材4は、一種のコンデンサー的な機能を持たらすものであり、そのコンデンサーの容量は、上記導体配線のインピーダンスと上記導体配線により伝送されるデジタル信号の周波数とに基づいて決定される。クロストーク抑制効果が発揮される上記クロストーク抑制部材4の容量値をCとし、かつ、導体層41と誘電体層42が導体配線2a、2bとの間で平行平板コンデンサーを構成すると仮定するとき、導体層41と誘電体層42の大きさの関係式は、平行平板コンデンサーの式より、おおよそ、C=εS/2dとなる。ここで、εは誘電体層42の誘電率、Sは導体層42と配線2a、2bが対向する部分の面積、dは誘電体層42の厚さである。
【0025】
なお、この実施形態では、誘電体層42が配線2aと2bに接触しているが、必ずしも誘電体層42を構成する固体が配線2a、2bに接触可能である必要はなく、配線2a,2bの直上では、導体層41と配線2a、2bとの間の誘電体層42を空気の層より構成するようにしてもよい。
【0026】
このクロストーク抑制部材4を設けたことによる効果を説明するために、まず、この第1実施形態のマイクロストリップラインによる信号伝送の動作について説明する。例えば、配線2aの一端にECLのドライバLSIが、他端にECLのレシーバLSIが接続されている場合、例えば、動作電圧を3.3VとするとHIGH状態で約2.3Vの略矩形波のデジタル信号が配線2aによりドライバLSIからレシーバLSIに伝送される。ここで、配線2aと2bが近接して配設される箇所では電磁界的な結合が起こり、配線2bにクロストーク信号が発生する。
【0027】
このクロストーク発生のメカニズムは集中定数を使用した近似的な等価回路モデルとして図2のように表すことができる。配線2aと2bはコイル5a、5bによって表され、クロストークはこれらのコイル間の相互誘導6による結合により発生する。ただし、コンデンサー7a〜7dは配線2a、2bとグランドプレーン3間の容量成分である。ここで、例えば、配線2の線幅0.7mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5の場合の配線2の長さ5mmあたりの値を市販電磁界シミュレータの等価回路モデル計算機能により算出すると、1GHzにおいて、図2の等価回路モデルのコイル5a、5bのインダクタンスは2.24nH、相互インダクタンスは0.05nH、コンデンサー7a〜7dのキャパシタンスはすべて0.86pFとなる。
【0028】
図2の等価回路モデルを基に、配線2の線幅0.7mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5、長さ20mmの平行伝送線路をSPICE電気回路シミュレータによりクロストークを計算したところ図3のようになる。このように、正弦波成分で考えれば配線2aを進行する正弦波の原信号より位相が約π/2遅れた正弦波がクロストークとして発生することがわかる。
【0029】
一方、クロストーク抑制部材4は導体層41と配線2が誘電体層42を挟み込むように対向しているため平行平板のコンデンサーと考えることができる。したがって、クロストーク抑制部材4を配設した場合の等価回路モデルは図4のように結合コンデンサー8が追加されたモデルとなる。ここで、結合コンデンサー8では正弦波の位相が進むため、クロストーク抑制部材4によるキャパシタンスの値を適切に設定すれば、相互誘導6による位相の遅れた正弦波であるクロストークとちょうど逆位相になり打ち消し合う信号がクロストーク抑制部材4により発生し、クロストークを抑制することが可能であると考えられる。
【0030】
例えば、図2の場合と同様のパラメータ設定で、クロストークが抑制されるクロストーク抑制部材4のキャパシタンス値を探索したところ0.42pFとなる。図5にクロストーク抑制部材4のキャパシタンス値が0.42pFの場合のSPICE電気回路シミュレータによるクロストークの計算結果を示す。図5の計算において、平行配線の形状・サイズは図3の場合と同様にしている。
【0031】
図5のようにクロストークが抑制される0.42pFの値より平行平板のコンデンサーとして逆算すればクロストーク抑制部材4の形状を決定することができる。配線2aと導体層41の組、配線2bと導体層41の組の2組の平行平板のキャパシタが直列接続されていると考えれば、例えば、導体層41は1.3mm×1.5mmの長方形、誘電体層42は厚さ0.01mm、誘電率5となる。これらの寸法・形状のクロストーク抑制部材4を使用し、モーメント法による2.5次元の電磁界シミュレータにより実際の平面回路での周波数特性をシミュレーションしたところ図6に示す結果となり、クロストーク抑制部材4を配設しない場合と比べて、遠端クロストークの5GHzの値が抑制されることがわかる。したがって、例えば、1GHzのデジタル信号は5GHzの周波数成分を持ち、クロストークも5GHz成分を持つことになるから、この第1実施形態では1GHzのデジタル信号に対するクロストーク抑制効果が実現されることになる。一方、この第1実施形態のクロストーク抑制部材は原信号そのものへの影響は少なく、デジタル信号の伝送へは影響を与えない。
【0032】
クロストーク抑制部材4を配設した場合と配設しない場合において、平行伝送線路のSPICE電気回路シミュレータでのデジタル信号波形のシミュレーションをそれぞれ行うとともにロジックスレッシュホールドを2Vとすると、クロストーク抑制部材4を配設しない場合(従来例に相当。)ではロジックスレッシュホールドの2Vを横切った誤動作を生じるのに対し、クロストーク抑制部材4を配設した場合の第1実施形態ではロジックスレッシュホールドの2Vを横切ることはなく、誤動作を起こさない。
【0033】
このように、この第1実施形態のデジタル信号伝送線路では、クロストーク抑制部材4の作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの特定周波数成分の発生を抑制することができ、クロストークの影響の少ないデジタル信号の伝送が可能となる。
【0034】
なお、この第1実施形態ではクロストークの5GHz周波数成分の抑制を例として示したが、クロストーク抑制部材4の形状を変えることにより、他の周波数成分に対しても効果を発揮することができる。
【0035】
すなわち、周波数が高いほど、同じ配線間隙でもクロストークは高レベルとなることから、本発明は、周波数は200MHz以上、配線間の間隙は1mm以下のデジタル信号伝送線路に好適であり、そのようなデジタル信号伝送線路を有する回路基板(例えば、パーソナルコンピータ用などの回路基板)で有効である。
【0036】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図7に示すように、この第2実施形態のデジタル信号伝送線路は、4a,4bの2つのクロストーク抑制部材が配設されている。2つのクロストーク抑制部材4a,4bは形状的及び材料的に同じものである必要はない。
【0037】
この第2実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、2つのクロストーク抑制部材4a,4bが配設されてい点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図7においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
この第2実施形態のデジタル信号伝送線路の基本的な動作は、上述の第1実施形態のデジタル信号伝送線路の基本動作と同じであが、2つのクロストーク抑制部材4a,4bが配設されることで、2つのクロストーク抑制部材4a,4b間の相互作用により、複数の周波数でクロストークの減衰が発生する。しかも、クロストークの減衰が発生する周波数は2つのクロストーク抑制部材4a,4bを配設する間隔により制御可能である。
【0039】
図8は2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の2.5次元電磁界シミュレータでの周波数特性の計算結果である。図8では、配線2の線幅0.7mm、配線長50mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5、クロストーク抑制部材4a,4bの形状を導体層41を1mm(配線長方向)×1.5mm(配線幅方向)、誘電体層42の厚さ0.01mm、誘電率5とし、クロストーク抑制部材4a,4bの中心線間の間隔を39mmとして計算している。ここで、この39mmという間隔は、上記寸法の配線2等で形成されるマイクロストリップラインでの1GHzの正弦波の管内波長の1/4(λg/4=3.93mm)とほぼ同じ長さである。図8を見ればわかるように、近端クロストーク、遠端クロストークともに1GHz,3GHz,5GHz,7GHzの近傍で減衰極が存在する。したがって、デジタル信号は基本周波数の奇数倍成分を持つことから、1GHzのデジタル信号であれば上記減衰極と合致する1GHz,3GHz,5GHz,7GHz,・・・の周波数成分を持ち、同じ周波数成分を持つクロストークの複数の周波数成分に関して同時に抑制の効果が発揮されることになる。また、原信号自体は1GHz,3GHz,5GHz,7GHz近傍でピークを持ち、減衰していないことからデジタル信号そのものへの影響は少ない。
【0040】
図9は、2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路のSPICE電気回路シミュレータでのデジタル信号波形のシミュレーション結果である。図9のシミュレーションでは平行伝送線路の形状などの設定は図8のシミュレーションと同様の設定とし、それらを等価回路に置き換え、配線2aにECLのロジックレベルを想定した1GHzのデジタル信号を、配線2bには配線2aとは1/4クロックサイクル遅れたデジタル信号を伝送するという設定で行った。図9中に点線で示した従来例ではロジックスレッシュホールドを2Vとすると、2Vを横切る誤動作を生じるのに対し、実線で示したこの第2実施形態ではロジックスレッシュホールドの2Vを横切ることはなく、誤動作を起こさない。
【0041】
このように、この第2実施形態のデジタル信号伝送線路では、2つのクロストーク抑制部材4a,4bの作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの複数の周波数成分の発生を抑制することができ、クロストークの影響のより少ないデジタル信号の伝送が可能となる。特に、2つのクロストーク抑制部材4a,4bの配設間隔をデジタル信号の周波数に相当する正弦波の管内波長の凡そ1/4とすることで、より高いクロストーク抑制効果を発揮することができる。
【0042】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図10に示すように、この第3実施形態のデジタル信号伝送線路は、4a,4b,4cの3つのクロストーク抑制部材が配設されている。この場合は、真ん中のクロストーク抑制部材4bを他のクロストーク抑制部材4a,4cより大きくしている。このように、真ん中のクロストーク抑制部材4bを大きくすることにより、各周波数に現れるクロストーク減衰の帯域幅を変化させることができる。
【0043】
この第3実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cが配設されてい点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図10においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
この第3実施形態のデジタル信号伝送線路の基本的な動作は、上述の第1実施形態のデジタル信号伝送線路の基本動作と同じであるが、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cが配設されることで、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4c間の相互作用により、複数の周波数でクロストークの減衰が発生する。しかも、クロストークの減衰が発生する周波数は3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cを配設する間隔により制御可能である。
【0045】
図11は3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cを配設した場合の結合伝送線路の2.5次元電磁界シミュレータでの周波数特性の計算結果である。図11では、配線2の線幅0.7mm、配線長90mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5、クロストーク抑制部材4aおよび4cの導体層41aおよび41cの形状を1mm(配線長方向)×1.5mm(配線幅方向)、クロストーク抑制部材4bの導体層41bの形状を2mm(配線長方向)×1.5mm(配線幅方向)、誘電体層42a、42bおよび42cの厚さ0.01mm、誘電率5とし、クロストーク抑制部材4a,4bの中心線間の間隔および4b、4cの中心線間の間隔をともに39.5mmとして計算している。図11を見ればわかるように、上記第2実施形態の場合と同様に、近端クロストーク、遠端クロストークともに1GHz,3GHz,5GHz,7GHzの近傍で減衰極が存在する。さらに、この第3実施形態の場合は、1つの周波数あたり2つの減衰極が近接して現れ、1つの周波数の減衰範囲が広帯域化しており、周波数のずれなく、より確実に抑制効果を発揮することができる。この減衰範囲の広帯域化の度合いは、例えば、中央に配設されたクロストーク抑制部材4bの導体層41bの配線長方向の長さによって制御可能である。
【0046】
このように、この第3実施形態のデジタル信号伝送線路では、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cの作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの複数の周波数成分の発生をより確実に抑制することができ、クロストークの影響のより少ないデジタル信号の伝送が可能となる。特に、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cの配設間隔をデジタル信号の周波数に相当する正弦波の管内波長の凡そ1/4とすることで、より高いクロストーク抑制効果を発揮することができる。
【0047】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図17はその一部の拡大図である。この第4実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、クロストーク抑制部材4の形状が異なる点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図12においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図13はこの第4実施形態のデジタル信号伝送線路の等価回路モデルである。この第4実施形態におけるデジタル信号伝送線路のクロストーク抑制部材4のモデルは、図13の点線9内に示したようにコイル9a(図17の配線2a,2b間の隙間に対応して配置された抵抗部41bに相当。)と、コイル9aの両端に配置された2つのコンデンサー9b(図17の配線2a,2b上に対応して配置されたコンデンサ部41aに相当。)により構成される。
【0049】
このような構成でも、クロストーク抑制部材4の作用で、位相が進んだ正弦波信号を伝送することが可能であり、この伝送された正弦波信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの周波数成分の発生をより確実に抑制することができ、クロストークの影響のより少ないデジタル信号の伝送が可能となり、第1実施形態の場合と同様にクロストーク抑制の効果を発揮することができる。このように、クロストーク抑制部材の形状は、第1実施形態で示した長方形形状だけではなく、他の形状の結合構造であってもクロストーク抑制の効果を発揮することが可能である。
【0050】
(第5実施形態)
図14は、本発明の第5実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的にかつ透視的に示す斜視図である。図14に示すように、この第5実施形態のデジタル信号伝送線路は、下側グランドプレーン31と上側グランドプレーン32の上下両面のグランドプレーンが配設されたストリップライン構造となっており、配線2及びクロストーク抑制部材4は基板1内に配設されている。この場合、上側グランドプレーン32より上側にさらに基板を配置して多層構造の基板を構成しても、上側グランドプレーン32と下側グランドプレーン31との間に挟み込まれた基板1内の配線2により発生するクロストークはクロストーク抑制部材4により抑制されかつ上側グランドプレーン32の存在により、上側グランドプレーン32の上側の基板には何らクロストークの悪影響を及ぼすことはない。なお、クロストーク抑制部材4は、上側グランドプレーン32と下側グランドプレーン31とには非接触状態となっており、上側グランドプレーン32と下側グランドプレーン31と配線2a,2bとの間隔でインピーダンスが決まる。
【0051】
この第5実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、ストリップライン構造である点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図14においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。また、構造をわかりやすくするため、上側グランドプレーン32と基板1を透明に描いている。
【0052】
このように、図14に示すように、伝送線路構造はマイクロストリップラインだけではなく、ストリップライン構造でも同様の効果を発揮することができる。
【0053】
なお、第1〜第5実施形態においては、2本1組の平行伝送線路を例に採っているが、3本以上の平行伝送線路であっても隣り合う2本の平行伝送線路に対し、それぞれ本発明によるクロストーク抑制部材4を配設することで効果を発揮することができる。
【0054】
また、第1〜第5実施形態においては、周波数1GHzのデジタル信号を例に採っているが、他の周波数であってもクロストーク抑制部材4の形状や配設間隔を調節することにより同様の効果を発揮することができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0056】
例えば、上記クロストーク抑制部材4が一種のコンデンサー的な機能を持たらすときのコンデンサーの容量の調整のため、導体層41と誘電体層42、又は、導体層41をレーザなどで削り取るようにしてもよい。この場合、当該デジタル信号伝送線路に必要と予想される容量よりも大きな容量となるような大きさの導体層41と誘電体層42、又は、導体層41を当該デジタル信号伝送線路に配設したのち、導体層41と誘電体層42の一部、又は、導体層41の一部をレーザなどで削り取ることにより、容量調整を行うようにする。
【0057】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明のクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路によれば、クロストーク抑制部材を隣接配線間にまたがるように設けることにより、クロストーク抑制部材の作用で発生する逆位相信号が、隣接配線間の電磁界的な結合により生じるクロストークと打ち消し合うため、上記クロストークを抑制することができ、クロストークによる誤動作の発生しない、高速で高密度なデジタル回路基板を提供することができる。すなわち、クロストークが低レベルとなり、デジタル信号伝送線路の高周波化や高密度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設したデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図2】平行伝送線路の等価回路モデルを示す図である。
【図3】平行伝送線路で発生するクロストークのSPICE電気回路シミュレータによる計算結果である。
【図4】クロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路の等価回路モデルを示す図である。
【図5】クロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路で発生するクロストークのSPICE電気回路シミュレータによるシミュレーション結果を示す図である。
【図6】クロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図8】2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路におけるデジタル信号波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図11】3つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図13】クロストーク抑制部材の他の形態の等価回路モデルを示す図である。
【図14】本発明の第5実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的かつ透視的に示す斜視図である。
【図15】従来のデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図16】クロストークのシミュレーション結果を示す図である。
【図17】図12の一部の拡大図である。
【符号の説明】
1…基板、2…配線、3…グランドプレーン、31…下側グランドプレーン、32…上側グランドプレーン、4…クロストーク抑制部材、41…導体層、41a…コンデンサ部、41b…抵抗部、42…誘電体層、5…コイル、6…コイル間の相互誘導、7…コンデンサ、8…結合コンデンサ、9…点線、9a…コイル、9b…コンデンサー。
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル信号を扱う電子機器の回路基板等の導体配線に配設される、クロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータに代表されるデジタル機器では多くの印刷配線基板が使用され、その表面には多数のLSIが実装され、LSI間には銅などによる多数の配線が張り巡らされている。図15は従来の印刷配線基板の伝送線路構造の概略を示す斜視図である。図15において、1は誘電体材料により形成された基板、2a、2bは導体材料により形成された信号の伝送線路となる導体配線、3はグランドプレーンである。配線2a、2bの端部にはLSIが接続され(図示せず)、略矩形波のデジタル信号が伝送される。
【0003】
図15中には2a、2bの2本の配線のみ記述したが、実際にはより多くの配線が基板1上で隣接して平行に配設される場合が多く、CPUなどの処理能力向上やメモリーなどの大容量化によって、32bit、64bitといった多ビット処理が必要となり、例えば32本といった平行配線によるバス構造が形成され、高密度実装のために0.5mm以下のピッチでの配線や多層化なども行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の伝送線路構造では、配線間の電磁界的な結合により、隣接する配線へデジタル信号が漏れ出すクロストークが問題となる。
【0005】
図16は図15の伝送線路構造を等価回路に置き換え、SPICE電気回路シミュレータでデジタル信号波形のシミュレーションを行った結果を示している。配線2aにECLのロジックレベルを想定した1GHzのデジタル信号を、配線2bには配線2aとは1/4クロックサイクル遅れた1GHzのデジタル信号をそれぞれ伝送するという設定でシミュレーションを行ったところ、配線2bのデジタル信号によるクロストークの影響で配線2aの波形に乱れが生じる。ロジックスレッシュホールドを2Vとすると、図16中の点線で囲んだ箇所のように、スレッシュホールドを越える箇所が存在するので誤動作が発生し、ロジック判定のエラーが起こる。
【0006】
こうしたクロストークの問題は高速化のためにデジタル信号の周波数を1GHzを越えるような値に高周波化したり、高密度化のために配線間隔を小さくするとより顕著となるため、高速化による処理能力の向上や高密度実装による基板の小型化の障害となる。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決することにあって、クロストークが低レベルとなり、高周波化や高密度化が可能なクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0009】
本発明の第1態様によれば、誘電体基板において略平行に配設された少なくとも1組の隣接する導体配線間を電磁界的に結合させて上記隣接する導体配線間で発生するクロストークと逆位相の信号を発生させるクロストーク抑制部材を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、上記少なくとも1組の隣接する導体配線間を電磁界的に結合させるとき、上記隣接する導体配線を容量結合により電磁界的に結合させる第1の態様に記載のクロストーク抑制部材を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、上記容量は、上記導体配線のインピーダンスと上記導体配線により伝送されるデジタル信号の周波数とに基づいて決定される第2の態様に記載のクロストーク抑制部材を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、上記少なくとも1組の隣接する導体配線上にまたがるように配置された導体層と、上記各導体配線と上記導体層との間に配置された誘電体層とを備える第1〜3のいずれか1つの態様に記載のクロストーク抑制部材を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、誘電体基板と、
上記誘電体基板において略平行に配設された複数の導体配線と、
第1〜4のいずれか1つの態様に記載のクロストーク抑制部材と、
を備えているデジタル信号伝送線路を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、上記クロストーク抑制部材は、上記導体配線により伝送されるデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で2個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材である第5の態様に記載のデジタル信号伝送線路を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、上記クロストーク抑制部材は、上記導体配線により伝送されるデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で3個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材である第5の態様に記載のデジタル信号伝送線路を提供する。
【0016】
上記構成により、クロストーク抑制部材の作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの発生が抑制される。
【0017】
また、上記クロストーク抑制部材が、伝送するデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で2個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材であるようにすれば、デジタル信号の周波数の奇数倍周波数成分に対して選択的にクロストーク抑制効果が発揮されるため、奇数倍周波数成分(1GHz,3GHz,5GHz,...といった奇数倍の周波数成分)を有する矩形波であるデジタル信号に対して特に有効にクロストーク抑制効果が発揮される。
【0018】
また、上記クロストーク抑制部材が、伝送するデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で3個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材であるようにすれば、デジタル信号の周波数の奇数倍周波数成分に対して選択的にクロストーク抑制効果が発揮される帯域が広帯域化されるため、さらに有効にクロストーク抑制効果が発揮される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図1において、1は誘電体材料により形成された基板、2a、2bは導体材料により形成された信号を伝送するための配線、3はグランドプレーンである。配線2a、2bおよびグランドプレーン3は基板1の対向面に配設されておりマイクロストリップラインを形成している。
【0021】
上記基板1は、ガラスエポキシ、紙フェノール、アルミナ、MgO、又は、絶縁性フィルムなどの誘電体材料より構成する(以下の実施形態でも同様。)。また、上記配線2の上記導体材料は、銅、金、又は、アルミニウムである(以下の実施形態でも同様。)。
【0022】
ここで、この第1実施形態の特徴は、配線2a、2bの両方に同時に接するようにクロストーク抑制部材4が配設されている点である。クロストーク抑制部材4は、導体層41と、導体層41の下層し全面でかつ配線2a、2bに接触して配置された誘電体層42とを備えるように構成されている。
【0023】
上記導体層41は、銅、金、又は、アルミニウムより構成しており、その厚さは10〜40μm程度である(以下の実施形態でも同様。)。また、上記誘電体層42は、ガラスエポキシ、紙フェノール、アルミナ、MgO、又は、空気より構成するようにしている(以下の実施形態でも同様。)。
【0024】
上記クロストーク抑制部材4は、一種のコンデンサー的な機能を持たらすものであり、そのコンデンサーの容量は、上記導体配線のインピーダンスと上記導体配線により伝送されるデジタル信号の周波数とに基づいて決定される。クロストーク抑制効果が発揮される上記クロストーク抑制部材4の容量値をCとし、かつ、導体層41と誘電体層42が導体配線2a、2bとの間で平行平板コンデンサーを構成すると仮定するとき、導体層41と誘電体層42の大きさの関係式は、平行平板コンデンサーの式より、おおよそ、C=εS/2dとなる。ここで、εは誘電体層42の誘電率、Sは導体層42と配線2a、2bが対向する部分の面積、dは誘電体層42の厚さである。
【0025】
なお、この実施形態では、誘電体層42が配線2aと2bに接触しているが、必ずしも誘電体層42を構成する固体が配線2a、2bに接触可能である必要はなく、配線2a,2bの直上では、導体層41と配線2a、2bとの間の誘電体層42を空気の層より構成するようにしてもよい。
【0026】
このクロストーク抑制部材4を設けたことによる効果を説明するために、まず、この第1実施形態のマイクロストリップラインによる信号伝送の動作について説明する。例えば、配線2aの一端にECLのドライバLSIが、他端にECLのレシーバLSIが接続されている場合、例えば、動作電圧を3.3VとするとHIGH状態で約2.3Vの略矩形波のデジタル信号が配線2aによりドライバLSIからレシーバLSIに伝送される。ここで、配線2aと2bが近接して配設される箇所では電磁界的な結合が起こり、配線2bにクロストーク信号が発生する。
【0027】
このクロストーク発生のメカニズムは集中定数を使用した近似的な等価回路モデルとして図2のように表すことができる。配線2aと2bはコイル5a、5bによって表され、クロストークはこれらのコイル間の相互誘導6による結合により発生する。ただし、コンデンサー7a〜7dは配線2a、2bとグランドプレーン3間の容量成分である。ここで、例えば、配線2の線幅0.7mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5の場合の配線2の長さ5mmあたりの値を市販電磁界シミュレータの等価回路モデル計算機能により算出すると、1GHzにおいて、図2の等価回路モデルのコイル5a、5bのインダクタンスは2.24nH、相互インダクタンスは0.05nH、コンデンサー7a〜7dのキャパシタンスはすべて0.86pFとなる。
【0028】
図2の等価回路モデルを基に、配線2の線幅0.7mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5、長さ20mmの平行伝送線路をSPICE電気回路シミュレータによりクロストークを計算したところ図3のようになる。このように、正弦波成分で考えれば配線2aを進行する正弦波の原信号より位相が約π/2遅れた正弦波がクロストークとして発生することがわかる。
【0029】
一方、クロストーク抑制部材4は導体層41と配線2が誘電体層42を挟み込むように対向しているため平行平板のコンデンサーと考えることができる。したがって、クロストーク抑制部材4を配設した場合の等価回路モデルは図4のように結合コンデンサー8が追加されたモデルとなる。ここで、結合コンデンサー8では正弦波の位相が進むため、クロストーク抑制部材4によるキャパシタンスの値を適切に設定すれば、相互誘導6による位相の遅れた正弦波であるクロストークとちょうど逆位相になり打ち消し合う信号がクロストーク抑制部材4により発生し、クロストークを抑制することが可能であると考えられる。
【0030】
例えば、図2の場合と同様のパラメータ設定で、クロストークが抑制されるクロストーク抑制部材4のキャパシタンス値を探索したところ0.42pFとなる。図5にクロストーク抑制部材4のキャパシタンス値が0.42pFの場合のSPICE電気回路シミュレータによるクロストークの計算結果を示す。図5の計算において、平行配線の形状・サイズは図3の場合と同様にしている。
【0031】
図5のようにクロストークが抑制される0.42pFの値より平行平板のコンデンサーとして逆算すればクロストーク抑制部材4の形状を決定することができる。配線2aと導体層41の組、配線2bと導体層41の組の2組の平行平板のキャパシタが直列接続されていると考えれば、例えば、導体層41は1.3mm×1.5mmの長方形、誘電体層42は厚さ0.01mm、誘電率5となる。これらの寸法・形状のクロストーク抑制部材4を使用し、モーメント法による2.5次元の電磁界シミュレータにより実際の平面回路での周波数特性をシミュレーションしたところ図6に示す結果となり、クロストーク抑制部材4を配設しない場合と比べて、遠端クロストークの5GHzの値が抑制されることがわかる。したがって、例えば、1GHzのデジタル信号は5GHzの周波数成分を持ち、クロストークも5GHz成分を持つことになるから、この第1実施形態では1GHzのデジタル信号に対するクロストーク抑制効果が実現されることになる。一方、この第1実施形態のクロストーク抑制部材は原信号そのものへの影響は少なく、デジタル信号の伝送へは影響を与えない。
【0032】
クロストーク抑制部材4を配設した場合と配設しない場合において、平行伝送線路のSPICE電気回路シミュレータでのデジタル信号波形のシミュレーションをそれぞれ行うとともにロジックスレッシュホールドを2Vとすると、クロストーク抑制部材4を配設しない場合(従来例に相当。)ではロジックスレッシュホールドの2Vを横切った誤動作を生じるのに対し、クロストーク抑制部材4を配設した場合の第1実施形態ではロジックスレッシュホールドの2Vを横切ることはなく、誤動作を起こさない。
【0033】
このように、この第1実施形態のデジタル信号伝送線路では、クロストーク抑制部材4の作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの特定周波数成分の発生を抑制することができ、クロストークの影響の少ないデジタル信号の伝送が可能となる。
【0034】
なお、この第1実施形態ではクロストークの5GHz周波数成分の抑制を例として示したが、クロストーク抑制部材4の形状を変えることにより、他の周波数成分に対しても効果を発揮することができる。
【0035】
すなわち、周波数が高いほど、同じ配線間隙でもクロストークは高レベルとなることから、本発明は、周波数は200MHz以上、配線間の間隙は1mm以下のデジタル信号伝送線路に好適であり、そのようなデジタル信号伝送線路を有する回路基板(例えば、パーソナルコンピータ用などの回路基板)で有効である。
【0036】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図7に示すように、この第2実施形態のデジタル信号伝送線路は、4a,4bの2つのクロストーク抑制部材が配設されている。2つのクロストーク抑制部材4a,4bは形状的及び材料的に同じものである必要はない。
【0037】
この第2実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、2つのクロストーク抑制部材4a,4bが配設されてい点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図7においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
この第2実施形態のデジタル信号伝送線路の基本的な動作は、上述の第1実施形態のデジタル信号伝送線路の基本動作と同じであが、2つのクロストーク抑制部材4a,4bが配設されることで、2つのクロストーク抑制部材4a,4b間の相互作用により、複数の周波数でクロストークの減衰が発生する。しかも、クロストークの減衰が発生する周波数は2つのクロストーク抑制部材4a,4bを配設する間隔により制御可能である。
【0039】
図8は2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の2.5次元電磁界シミュレータでの周波数特性の計算結果である。図8では、配線2の線幅0.7mm、配線長50mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5、クロストーク抑制部材4a,4bの形状を導体層41を1mm(配線長方向)×1.5mm(配線幅方向)、誘電体層42の厚さ0.01mm、誘電率5とし、クロストーク抑制部材4a,4bの中心線間の間隔を39mmとして計算している。ここで、この39mmという間隔は、上記寸法の配線2等で形成されるマイクロストリップラインでの1GHzの正弦波の管内波長の1/4(λg/4=3.93mm)とほぼ同じ長さである。図8を見ればわかるように、近端クロストーク、遠端クロストークともに1GHz,3GHz,5GHz,7GHzの近傍で減衰極が存在する。したがって、デジタル信号は基本周波数の奇数倍成分を持つことから、1GHzのデジタル信号であれば上記減衰極と合致する1GHz,3GHz,5GHz,7GHz,・・・の周波数成分を持ち、同じ周波数成分を持つクロストークの複数の周波数成分に関して同時に抑制の効果が発揮されることになる。また、原信号自体は1GHz,3GHz,5GHz,7GHz近傍でピークを持ち、減衰していないことからデジタル信号そのものへの影響は少ない。
【0040】
図9は、2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路のSPICE電気回路シミュレータでのデジタル信号波形のシミュレーション結果である。図9のシミュレーションでは平行伝送線路の形状などの設定は図8のシミュレーションと同様の設定とし、それらを等価回路に置き換え、配線2aにECLのロジックレベルを想定した1GHzのデジタル信号を、配線2bには配線2aとは1/4クロックサイクル遅れたデジタル信号を伝送するという設定で行った。図9中に点線で示した従来例ではロジックスレッシュホールドを2Vとすると、2Vを横切る誤動作を生じるのに対し、実線で示したこの第2実施形態ではロジックスレッシュホールドの2Vを横切ることはなく、誤動作を起こさない。
【0041】
このように、この第2実施形態のデジタル信号伝送線路では、2つのクロストーク抑制部材4a,4bの作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの複数の周波数成分の発生を抑制することができ、クロストークの影響のより少ないデジタル信号の伝送が可能となる。特に、2つのクロストーク抑制部材4a,4bの配設間隔をデジタル信号の周波数に相当する正弦波の管内波長の凡そ1/4とすることで、より高いクロストーク抑制効果を発揮することができる。
【0042】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図10に示すように、この第3実施形態のデジタル信号伝送線路は、4a,4b,4cの3つのクロストーク抑制部材が配設されている。この場合は、真ん中のクロストーク抑制部材4bを他のクロストーク抑制部材4a,4cより大きくしている。このように、真ん中のクロストーク抑制部材4bを大きくすることにより、各周波数に現れるクロストーク減衰の帯域幅を変化させることができる。
【0043】
この第3実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cが配設されてい点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図10においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0044】
この第3実施形態のデジタル信号伝送線路の基本的な動作は、上述の第1実施形態のデジタル信号伝送線路の基本動作と同じであるが、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cが配設されることで、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4c間の相互作用により、複数の周波数でクロストークの減衰が発生する。しかも、クロストークの減衰が発生する周波数は3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cを配設する間隔により制御可能である。
【0045】
図11は3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cを配設した場合の結合伝送線路の2.5次元電磁界シミュレータでの周波数特性の計算結果である。図11では、配線2の線幅0.7mm、配線長90mm、配線間隔0.1mm、基板1の厚み0.4mm、誘電率5、クロストーク抑制部材4aおよび4cの導体層41aおよび41cの形状を1mm(配線長方向)×1.5mm(配線幅方向)、クロストーク抑制部材4bの導体層41bの形状を2mm(配線長方向)×1.5mm(配線幅方向)、誘電体層42a、42bおよび42cの厚さ0.01mm、誘電率5とし、クロストーク抑制部材4a,4bの中心線間の間隔および4b、4cの中心線間の間隔をともに39.5mmとして計算している。図11を見ればわかるように、上記第2実施形態の場合と同様に、近端クロストーク、遠端クロストークともに1GHz,3GHz,5GHz,7GHzの近傍で減衰極が存在する。さらに、この第3実施形態の場合は、1つの周波数あたり2つの減衰極が近接して現れ、1つの周波数の減衰範囲が広帯域化しており、周波数のずれなく、より確実に抑制効果を発揮することができる。この減衰範囲の広帯域化の度合いは、例えば、中央に配設されたクロストーク抑制部材4bの導体層41bの配線長方向の長さによって制御可能である。
【0046】
このように、この第3実施形態のデジタル信号伝送線路では、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cの作用で発生する逆位相信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの複数の周波数成分の発生をより確実に抑制することができ、クロストークの影響のより少ないデジタル信号の伝送が可能となる。特に、3つのクロストーク抑制部材4a,4b,4cの配設間隔をデジタル信号の周波数に相当する正弦波の管内波長の凡そ1/4とすることで、より高いクロストーク抑制効果を発揮することができる。
【0047】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。図17はその一部の拡大図である。この第4実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、クロストーク抑制部材4の形状が異なる点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図12においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図13はこの第4実施形態のデジタル信号伝送線路の等価回路モデルである。この第4実施形態におけるデジタル信号伝送線路のクロストーク抑制部材4のモデルは、図13の点線9内に示したようにコイル9a(図17の配線2a,2b間の隙間に対応して配置された抵抗部41bに相当。)と、コイル9aの両端に配置された2つのコンデンサー9b(図17の配線2a,2b上に対応して配置されたコンデンサ部41aに相当。)により構成される。
【0049】
このような構成でも、クロストーク抑制部材4の作用で、位相が進んだ正弦波信号を伝送することが可能であり、この伝送された正弦波信号がクロストークと打ち消し合うため、クロストークの周波数成分の発生をより確実に抑制することができ、クロストークの影響のより少ないデジタル信号の伝送が可能となり、第1実施形態の場合と同様にクロストーク抑制の効果を発揮することができる。このように、クロストーク抑制部材の形状は、第1実施形態で示した長方形形状だけではなく、他の形状の結合構造であってもクロストーク抑制の効果を発揮することが可能である。
【0050】
(第5実施形態)
図14は、本発明の第5実施形態におけるクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路を概略的にかつ透視的に示す斜視図である。図14に示すように、この第5実施形態のデジタル信号伝送線路は、下側グランドプレーン31と上側グランドプレーン32の上下両面のグランドプレーンが配設されたストリップライン構造となっており、配線2及びクロストーク抑制部材4は基板1内に配設されている。この場合、上側グランドプレーン32より上側にさらに基板を配置して多層構造の基板を構成しても、上側グランドプレーン32と下側グランドプレーン31との間に挟み込まれた基板1内の配線2により発生するクロストークはクロストーク抑制部材4により抑制されかつ上側グランドプレーン32の存在により、上側グランドプレーン32の上側の基板には何らクロストークの悪影響を及ぼすことはない。なお、クロストーク抑制部材4は、上側グランドプレーン32と下側グランドプレーン31とには非接触状態となっており、上側グランドプレーン32と下側グランドプレーン31と配線2a,2bとの間隔でインピーダンスが決まる。
【0051】
この第5実施形態におけるデジタル信号伝送線路の構造は、ストリップライン構造である点を除くと、すでに説明した図1に示す第1実施形態のデジタル信号伝送線路の構造と同じであるので、図14においては第1実施形態と同じ機能の部材には図1と同じ符号を付して、その説明を省略する。また、構造をわかりやすくするため、上側グランドプレーン32と基板1を透明に描いている。
【0052】
このように、図14に示すように、伝送線路構造はマイクロストリップラインだけではなく、ストリップライン構造でも同様の効果を発揮することができる。
【0053】
なお、第1〜第5実施形態においては、2本1組の平行伝送線路を例に採っているが、3本以上の平行伝送線路であっても隣り合う2本の平行伝送線路に対し、それぞれ本発明によるクロストーク抑制部材4を配設することで効果を発揮することができる。
【0054】
また、第1〜第5実施形態においては、周波数1GHzのデジタル信号を例に採っているが、他の周波数であってもクロストーク抑制部材4の形状や配設間隔を調節することにより同様の効果を発揮することができる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0056】
例えば、上記クロストーク抑制部材4が一種のコンデンサー的な機能を持たらすときのコンデンサーの容量の調整のため、導体層41と誘電体層42、又は、導体層41をレーザなどで削り取るようにしてもよい。この場合、当該デジタル信号伝送線路に必要と予想される容量よりも大きな容量となるような大きさの導体層41と誘電体層42、又は、導体層41を当該デジタル信号伝送線路に配設したのち、導体層41と誘電体層42の一部、又は、導体層41の一部をレーザなどで削り取ることにより、容量調整を行うようにする。
【0057】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0058】
【発明の効果】
本発明のクロストーク抑制部材と該クロストーク抑制部材を備えるデジタル信号伝送線路によれば、クロストーク抑制部材を隣接配線間にまたがるように設けることにより、クロストーク抑制部材の作用で発生する逆位相信号が、隣接配線間の電磁界的な結合により生じるクロストークと打ち消し合うため、上記クロストークを抑制することができ、クロストークによる誤動作の発生しない、高速で高密度なデジタル回路基板を提供することができる。すなわち、クロストークが低レベルとなり、デジタル信号伝送線路の高周波化や高密度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設したデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図2】平行伝送線路の等価回路モデルを示す図である。
【図3】平行伝送線路で発生するクロストークのSPICE電気回路シミュレータによる計算結果である。
【図4】クロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路の等価回路モデルを示す図である。
【図5】クロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路で発生するクロストークのSPICE電気回路シミュレータによるシミュレーション結果を示す図である。
【図6】クロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図8】2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】2つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路におけるデジタル信号波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図11】3つのクロストーク抑制部材を配設した場合の平行伝送線路の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】本発明の第4実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図13】クロストーク抑制部材の他の形態の等価回路モデルを示す図である。
【図14】本発明の第5実施形態におけるクロストーク抑制部材を配設した平行伝送線路を概略的かつ透視的に示す斜視図である。
【図15】従来のデジタル信号伝送線路を概略的に示す斜視図である。
【図16】クロストークのシミュレーション結果を示す図である。
【図17】図12の一部の拡大図である。
【符号の説明】
1…基板、2…配線、3…グランドプレーン、31…下側グランドプレーン、32…上側グランドプレーン、4…クロストーク抑制部材、41…導体層、41a…コンデンサ部、41b…抵抗部、42…誘電体層、5…コイル、6…コイル間の相互誘導、7…コンデンサ、8…結合コンデンサ、9…点線、9a…コイル、9b…コンデンサー。
Claims (7)
- 誘電体基板(1)において略平行に配設された少なくとも1組の隣接する導体配線(2)間を電磁界的に結合させて上記隣接する導体配線間で発生するクロストークと逆位相の信号を発生させるクロストーク抑制部材。
- 上記少なくとも1組の隣接する導体配線(2)間を電磁界的に結合させるとき、上記隣接する導体配線を容量結合により電磁界的に結合させる請求項1に記載のクロストーク抑制部材。
- 上記容量は、上記導体配線のインピーダンスと上記導体配線により伝送されるデジタル信号の周波数とに基づいて決定される請求項2に記載のクロストーク抑制部材。
- 上記少なくとも1組の隣接する導体配線上にまたがるように配置された導体層(41)と、上記各導体配線と上記導体層との間に配置された誘電体層(42)とを備える請求項1〜3のいずれか1つに記載のクロストーク抑制部材。
- 誘電体基板(1)と、
上記誘電体基板において略平行に配設された複数の導体配線(2)と、
請求項1〜4のいずれか1つに記載のクロストーク抑制部材(4,4a,4b,4c)と、
を備えているデジタル信号伝送線路。 - 上記クロストーク抑制部材(4a,4b)は、上記導体配線により伝送されるデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で2個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材である請求項5に記載のデジタル信号伝送線路。
- 上記クロストーク抑制部材(4a,4b,4c)は、上記導体配線により伝送されるデジタル信号と同じ周波数の正弦波の管内波長の略1/4の間隔で3個1組で配設された少なくとも1組のクロストーク抑制部材である請求項5に記載のデジタル信号伝送線路。
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