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JP2004010741A - 撥水性被膜の形成方法および該方法で形成される撥水性被膜 - Google Patents

撥水性被膜の形成方法および該方法で形成される撥水性被膜 Download PDF

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JP2004010741A
JP2004010741A JP2002165326A JP2002165326A JP2004010741A JP 2004010741 A JP2004010741 A JP 2004010741A JP 2002165326 A JP2002165326 A JP 2002165326A JP 2002165326 A JP2002165326 A JP 2002165326A JP 2004010741 A JP2004010741 A JP 2004010741A
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Kazuhiko Oda
織田 一彦
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

【課題】撥水性、表面硬度および耐久性に優れた被膜を提供する。
【解決手段】本発明の撥水性被膜の形成方法は、真空容器内において、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で固体アルミニウムを蒸発させ、負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。また、本発明の撥水性被膜の別の形成方法は、真空容器内において、固体アルミニウムおよび固体炭素を蒸発させ、プラズマを発生させて、プラズマの雰囲気中で負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。さらに、本発明の撥水性被膜の別の形成方法は、真空容器内において、有機アルミニウム化合物ガスのプラズマを発生させ、または有機アルミニウム化合物ガスと炭化水素ガスとのプラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた撥水性を示す被膜及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
撥水性は、日用品から産業用材料に至るまで広い範囲において要求されることの多い特性であり、撥水性を有する材料としては、テフロン(R)、コーティング用フッ素樹脂などが挙げられる。撥水性の指標には、水の接触角が用いられ、テフロン(R)の場合、接触角は110°と高い値を有する。また、特開平9−272859号公報には接触角180°のフッ化グラファイトが紹介されており、特開昭58−45372号公報には接触角120°のフッ化グラファイトが紹介されている。これらの材料は、テフロン(R)のようにバルク材として使用されるもの、または金属などの基材の表面に被膜として形成されて使用されるものなどがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、テフロン(R)は非常に広範囲に利用されている材料であるが、比較的やわらかく、耐熱性が低いなどの問題を有するため、適用できる用途が限られている。コーティング用フッ素樹脂も同様の問題を有し、また剥離が発生しやすい。フッ素樹脂に硬質粒子を添加して耐擦傷性を上げる試みもなされているが、まだ十分ではないため更なる改善が強く望まれている。また、テフロン(R)やフッ素樹脂の接触角を現状の120°からさらに高める要求も強く、接触角が極めて高いフッ化グラファイトに関しても、耐久性がまだまだ不十分で、ごく限られた用途にしか利用されていない。
【0004】
本発明の課題は、撥水性、表面硬度および耐久性の各特性において優れた被膜を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の撥水性被膜の形成方法は、真空容器内において、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で固体アルミニウムを蒸発させ、負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。
【0006】
本発明の撥水性被膜の別の形成方法は、真空容器内において、固体アルミニウムおよび固体炭素を蒸発させ、プラズマを発生させて、プラズマの雰囲気中で負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の撥水性被膜の別の形成方法は、真空容器内において、有機アルミニウム化合物ガスのプラズマを発生させ、または有機アルミニウム化合物ガスと炭化水素ガスとのプラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。
【0008】
本発明の撥水性被膜は、上述のいずれかの方法により形成されることを特徴とする。この被膜の主成分は、炭素とアルミニウム、または炭素とアルミニウムと水素であり、被膜の厚さは0.05μm以上10μm以下が好ましい。また、アルミニウムと炭素との原子数による組成比(Al/C)は、0.01以上10以下が好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
(撥水性被膜の形成方法)
本発明の撥水性被膜の形成方法は、真空容器内において、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で固体アルミニウムを蒸発させ、負の直流電圧(以下、「DC」という。)、負のパルスDCまたは高周波交流電圧(以下、「高周波電圧」という。)が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。
【0010】
従来の撥水性被膜は、スプレーや塗布によりコートするものが多いため、被膜が基材表面から剥がれ易い。そのため、本発明の撥水性被膜の形成方法では、界面の密着性を上げるべく、真空装置を用いた気相合成法を採用する。具体的には、イオンプレーティング法、スパッタリング法またはプラズマCVD法などを採用する。
【0011】
イオンプレーティング法は、電界により発生したプラズマを利用し、蒸発源から発生した蒸発粒子をイオン化し、または励起して、負の電圧を印加した基板上に付着、堆積させる方法であり、基板と被膜との結合力が真空蒸着より大きいという特性を有する。
【0012】
スパッタリング法は、真空容器内に導入したArやNeなどの不活性ガスをイオン化し、そのイオンを金属などからなるターゲットに衝突させて、金属の原子などを中性状態で弾き出し、弾き出した金属の粒子を基板上に堆積させて被膜を形成する方法であり、多種類の材料を使用することができ、また基板と被膜との結合力も大きいという特性を有する。
【0013】
プラズマCVD( chemical vapor deposition)法は、被膜材料のガスを基板上に供給し、基板表面でプラズマにより分解、還元、酸化、窒化などの化学反応を起こさせてから、基板上に付着、堆積させる方法であり、広範囲にわたる材料を使用することができ、その材料の融点よりもはるかに低い温度で被膜を形成することができるという特性を有する。
【0014】
プラズマを発生させるには、DC、パルス(アーク)DC、高周波電圧などを利用し、これらの電界により炭化水素ガスなどをプラズマ化する。蒸発源や基板ホルダに印加する電圧と共用することもできる。一方、固体アルミニウムは、電子ビームまたは通電加熱などにより、ルツボ、スパッタカソードまたはアークカソードなどの蒸発源より蒸発させ、炭化水素ガスと同様にプラズマ化する。基板に印加される負のDC、パルスDCまたは高周波電圧により、プラズマ中のイオンを引き込み、基板に被膜を形成する。
【0015】
炭化水素ガスとしては、メタン、アセチレン、ベンゼン、シクロへキサンなどの炭化水素のガスが適用可能である。基板温度は室温から300℃以下の範囲が好ましい。
【0016】
本発明の撥水性被膜の形成方法は、炭化水素ガスを導入する機構と、炭化水素ガスのプラズマを発生させる機構と、固体アルミニウムを蒸発させる機構と、負のDC、負のパルスDCまたは高周波電圧を基板に印加する機構と、を有する真空容器内において実施することができる。具体的には、イオンプレーティング装置、スパッタリング装置などを使用することができる。
【0017】
本発明の撥水性被膜の別の形成方法は、真空容器内において、固体アルミニウムおよび固体炭素を蒸発させ、プラズマを発生させて、プラズマの雰囲気中で負のDC、負のパルスDCまたは高周波電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。
【0018】
炭素の供給源として炭化水素ガスの代わりに固体炭素を利用する点に特徴があり、固体炭素は蒸発させてから利用する。炭化水素を原料にしないため、被膜中に水素原子が存在しない。したがって、より高硬度の被膜が得られる。原料に固体を使用することに特徴があるが、放電安定性のための補助ガスを加えてもよく、炭素やアルミニウム、水素を含むガスを添加して膜質を制御することもできる。
【0019】
固体炭素としては、典型的には黒鉛などがあり、固体炭素の蒸発方法は、固体アルミニウムの蒸発方法と同様である。また、固体アルミニウム、固体アルミニウムの蒸発方法、プラズマの発生方法および基板への印加方法などは前述の方法と同様である。
【0020】
この撥水性被膜の形成方法は、固体アルミニウムおよび固体炭素を蒸発させる機構と、プラズマを発生させる機構と、負のDC、負のパルスDCまたは高周波電圧を基板に印加する機構と、を有する真空容器内において実施することができる。具体的には、イオンプレーティング装置、スパッタリング装置などの固体蒸発源を有する装置を使用する。
【0021】
本発明の撥水性被膜の別の形成方法は、真空容器内において、有機アルミニウム化合物ガスのプラズマを発生させ、または有機アルミニウム化合物ガスと炭化水素ガスとのプラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で負のDC、負のパルスDCまたは高周波電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする。原料を全てガスの状態で供給するため、多種類の形状の基材への付きまわり性がよい点で優位にある。
【0022】
有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどのようにAlとCとHとから構成されるものを使用することができ、AlとCとHに他の元素が加わった化合物も使用できる。炭化水素ガス、プラズマの発生方法および基板への印加などは前述と同様である。また、水素や希ガスなどを添加してもよいし、他の元素を含む添加ガスを微量導入してもよい。
【0023】
この撥水性被膜の形成方法は、有機アルミニウム化合物ガス、または有機アルミニウム化合物ガスと炭化水素ガスを導入する機構と、プラズマを発生させる機構と、負のDC、負のパルスDCまたは高周波電圧を基板に印加する機構と、を有する真空容器内において実施することができる。具体的には、プラズマCVD装置を使用する。
【0024】
(撥水性被膜)
本発明の撥水性被膜は、前述のいずれかの方法により形成されることを特徴とする。これらの方法で得られる被膜は、極めて高い撥水性を示すと同時に、密着性もよく、表面硬度および耐久性に優れる。また、撥水性被膜と基材との間に公知の中間層を入れて密着性を更に上げたり、表面硬度を高めることもできる。
【0025】
撥水性被膜の厚さは、0.05μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上3μm以下がより好ましく、0.5μm以上1.5μm以下が特に好ましい。0.05μm未満では耐久性が十分でなく、10μmより大きくなると逆に内部応力による剥離が発生しやすくなる。一般のコーティング用フッ素樹脂膜は、炭素とフッ素を主成分とし、スプレーなどによりコートするため、膜厚は数十μm以上である。これに対して、本発明の撥水性被膜は、主成分としてフッ素を含まず、炭素とアルミニウム、または炭素とアルミニウムと水素を主成分とし、真空装置を用いて気相合成法により形成される。このため、界面の密着性が大きく、耐久性にも優れるため、膜厚は0.05μmから10μmと薄くても十分な性能と寿命を得ることができる。
【0026】
本発明の撥水性被膜においては、アルミニウムと炭素との原子数による組成比(Al/C)は、0.01以上10以下であることが好ましく、0.1以上6以下がより好ましく、0.5以上2以下が特に好ましい。Al/Cが0.01未満では、十分な撥水性を得にくく、Al/Cが10より大きくなると、硬度が著しく小さくなり、耐久性が悪くなる。本発明の被膜の撥水性が極めて高い理由は、表面エネルギーが小さいこと、および被膜の表面に微細な凹凸が存在することなどによるものと考えられる。
【0027】
【実施例】
実施例1
電子ビーム蒸発源と、高周波プラズマ励起機構と、基板ホルダへのDCバイアス印加機構を備えた真空容器内において、高周波イオンプレーティングを行ない、ステンレス基板に被膜を形成した。基板ホルダは設定値200℃に加熱した。容器内にCHガスを4×10−4Torrまで導入し、高周波コイルに13.56MHz、400Wの高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、蒸発源に入れた固体アルミニウムを300mAの電子ビームで溶融、蒸発させた。基板ホルダにはマイナス300VのDCを印加し、被膜を形成した。被膜の厚さおよび水の接触角の測定結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004010741
【0029】
表1の結果から明らかなとおり、20分間の処理により、厚さ1.5μmの被膜が形成された。未コートのステンレス基板は、水の接触角が80°であり、被膜上では150°であった。コーティングフッ素樹脂膜の接触角は120°であることから、コーティングフッ素樹脂膜よりも撥水性の大きい被膜が形成されていることがわかった。
【0030】
実施例2
幅10mmの固体アルミニウムと黒鉛とを交互に配置し一体化した複合ターゲットと、基板ホルダにパルスDCバイアスを印加できる機構を備えた真空容器内においてスパッタリングし、アルミニウム合金基板上に被膜を形成した。基板ホルダの加熱は特に行なわなかった。雰囲気に20mTorrのArガスを導入し、スパッタターゲットに800Wの負のDCをを印加した。基板ホルダには周波数20kHz、反転時間10%で、マイナス400VのパルスDCを印加し、被膜を形成した。被膜の厚さ、水の接触角およびヌープ硬度(JIS−Z2251)の測定結果を表1に示す。
【0031】
表1の結果から明らかなとおり、90分間の処理により、厚さ2.2μmの被膜が形成された。未コートのアルミニウム合金基板は、水の接触角が72°であり、被膜上では145°であった。コーティングフッ素樹脂膜の接触角は120°であることから、コーティングフッ素樹脂膜よりも撥水性の大きい被膜が形成されていることがわかった。また、被膜の表面の硬さは、ヌープ硬度でHk700であり、コーティングフッ素樹脂膜のHk150より大幅に高い硬度を示した。
【0032】
実施例3
基板ホルダに高周波電圧印加機構を備えた真空容器内において、高周波プラズマCVD法により、ステンレス基板およびコイルバネ(外径30mm、内径26mm、ピッチ8mm)に被膜を形成した。基板は180℃に加熱し、トリメチルアルミニウムガスを50mTorr導入し、プラズマを発生させ、プラズマ雰囲気中で、基板ホルダに13.56MHz、1kWの高周波電圧を印加し、被膜を形成した。被膜の厚さおよび水の接触角の測定結果を表1に示す。
【0033】
表1の結果から明らかなとおり、20分間の処理で膜厚0.2μmの被膜が得られた。未コートのステンレス基板は、水の接触角が80°であり、被膜では160°であった。コーティングフッ素樹脂膜の接触角は120°であることから、コーティングフッ素樹脂膜よりも撥水性の大きい被膜が形成されていることがわかった。また、コイルバネには、外周、内周ともに均一な被膜が形成されていた。
【0034】
実施例4
固体アルミニウムと黒鉛のカソードを配置し、基板ホルダにDCバイアスを印加できる機構を備えた真空装置内において、カソードアークイオンプレーティングを行ない、チタン合金基板上に被膜を形成した。基板ホルダの加熱は特に行なわなかった。アルミニウムカソードに80A、黒鉛カソードに60Aのアーク電流を流し、蒸発させ、プラズマを発生させて、プラズマの雰囲気中でアーク蒸着を行なった。基板ホルダにはマイナス50VのDCを印加し、被膜を形成した。被膜の厚さ、水の接触角およびヌープ硬度(JIS−Z2251)の測定結果を表1に示す。
【0035】
表1の結果から明らかなとおり、10分間の処理により、厚さ1.5μmの被膜が形成された。未コートのチタン合金基板は、水の接触角が65°であり、被膜上では130°であった。コーティングフッ素樹脂膜の接触角は120°であることから、コーティングフッ素樹脂膜よりも撥水性の大きい被膜が形成されていることがわかった。また、被膜の表面の硬さは、ヌープ硬度でHk1200であり、コーティングフッ素樹脂膜のHk150より大幅に高い硬度を示した。
【0036】
実施例5
被膜の厚さと耐久性との関係を調べるために、高周波イオンプレーティング法、DCマグネトロンスパッタリング法および高周波プラズマCVD法の各種方法で、アルミニウム合金基板上に膜厚を変化させて撥水性被膜を形成した。
【0037】
高周波イオンプレーティング法では、真空容器内においてメタンガスを8×10−4Torr導入し、プラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で固体アルミニウムを400mAの電子ビームで溶融し、蒸発させた。励起用の高周波電圧は、基板ホルダに直接印加し、印加した高周波電圧は13.56MHz、600Wとし、被膜を形成した。基板ホルダの加熱は特に行なわなかった。
【0038】
DCマグネトロンスパッタリング法では、真空容器内に70mTorrのArガスを導入し、固体アルミニウムと黒鉛からなるモザイク状スパッタカソードに1kWの負のDCを印加し、蒸発させ、プラズマを発生させた。プラズマの雰囲気中で基板ホルダには周波数1kHz、反転時間1%で、マイナス200VのパルスDCを印加し、被膜を形成した。基板は200℃に加熱した。
【0039】
高周波プラズマCVD法では、真空容器内にトリエチルアルミニウムガスを200mTorr導入し、プラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で基板ホルダに500Wの高周波電圧を導入し、被膜を形成した。基板加熱は特に行なわず、被膜の形成時間を変化させることにより膜厚を調整した。
【0040】
得られた被膜について、ピン・オン・ディスク試験(JIS−T0303)で耐久性の試験を行なった。耐久性試験において、相手材は先端曲率半径R3のSUJ2とし、荷重1N、摺動速度100mm/sec、摺動回数1万回とし、試験後の被膜の有無で耐久性を判断した。膜圧および耐久性試験の測定結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
Figure 2004010741
【0042】
表2の結果から明らかなとおり、膜厚が薄過ぎると被膜は無くなった。また、膜厚が厚過ぎると、被膜形成後、試験前に被膜が剥離したり、試験中に剥離した。したがって、被膜の厚さは、0.05μm以上10μm以下が好ましいことがわかった。
【0043】
実施例6
水の接触角、ヌープ硬度および耐久性の各特性に及ぼすAl/C組成比およびH原子の影響について調べるために、高周波イオンプレーティング法、カソードアークイオンプレーティング法および高周波プラズマCVD法の各種方法で、アルミニウム合金上に被膜を形成した。膜厚は1μmとした。
【0044】
高周波イオンプレーティング法では、真空容器内にメタンガスを1.5×10−3Torr導入し、プラズマを発生させた。また、電子ビームで蒸発源の固体アルミニウムを溶融し、プラズマの雰囲気中で蒸発させた。高周波コイルには13.56MHz、500Wの高周波電圧を印加し、基板ホルダにはマイナス400VのDCを印加し、基板ホルダを200℃に加熱して、被膜を形成した。Al/Cの組成は、電子ビームの電流値を変えることにより変化させた。
【0045】
カソードアーク法では、固体アルミニウムのカソードと黒鉛のカソードから同時に蒸発させ、プラズマを発生させて、プラズマの雰囲気中でアーク蒸着を行なった。基板ホルダにはマイナス30VのDCを印加し、基板加熱は行なわなかった。Al/Cの組成は、二つのカソードのアーク電流とカソード/基材間の距離を変えることにより変化させた。
【0046】
高周波プラズマCVD法では、トリメチルアルミニウムガスとメタンガスを100mTorr導入し、プラズマを発生させ、プラズマの雰囲気中で基板ホルダに400Wの高周波電圧を付加し、基板を200℃に加熱した。Al/Cの組成は、導入するトリメチルアルミニウムガスとメタンガスとの容積比を変えることにより変化させた。
【0047】
得られた被膜について、Al/C組成、H原子の有無、水の接触角、ヌープ硬度および耐久性を測定した。Al/C組成は、XPS法で分析した。H原子の有無については、赤外線吸収スペクトルを取り、炭化水素に起因する吸収の有無を調べてH原子の有無を判断した。ヌープ強度および耐久性は、前述の方法と同様とした。測定結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
Figure 2004010741
【0049】
表3の結果から明らかなとおり、Al/C組成は、水の接触角が大きくなる点で、0.01以上10以下が好ましく、ヌープ硬度は、Al/Cの比が大きいほど小さくなった。耐久性は、Al/Cの比が大きく、硬度が低いほど低下する傾向があり、10を超えると耐久性が悪かった。
【0050】
H原子については、炭化水素ガスを原料として使用する高周波イオンプレーティング法とプラズマCVD法では、被膜中にH原子が認められた。原料中の炭化水素に起因するものと思われる。一方、カソードアークイオンプレーティング法では被膜中に水素の存在は確認されなかった。また、同様のAl/C組成では、特にAl<Cの場合において、H原子を有しない方が、高い表面硬度の得られることがわかった。
【0051】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、撥水性、表面硬度および耐久性において優れた特性を発揮する被膜を提供することができる。

Claims (6)

  1. 真空容器内において、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、該プラズマの雰囲気中で固体アルミニウムを蒸発させ、負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする撥水性被膜の形成方法。
  2. 真空容器内において、固体アルミニウムおよび固体炭素を蒸発させ、プラズマを発生させて、該プラズマの雰囲気中で負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする撥水性被膜の形成方法。
  3. 真空容器内において、有機アルミニウム化合物ガスのプラズマを発生させ、または有機アルミニウム化合物ガスと炭化水素ガスとのプラズマを発生させ、該プラズマの雰囲気中で負の直流電圧、負のパルス直流電圧または高周波交流電圧が印加された基板に被膜を形成することを特徴とする撥水性被膜の形成方法。
  4. 請求項1〜3に記載のいずれかの方法で形成されることを特徴とする撥水性被膜。
  5. 前記被膜の厚さが0.05μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の撥水性被膜。
  6. アルミニウムと炭素との原子数による組成比(Al/C)が、0.01以上10以下であることを特徴とする請求項4に記載の撥水性被膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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