JP2004009804A - 車両の乗員保護装置の起動判定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】様々な衝突状態を高精度で検出し、衝突状況に適した乗員保護装置の起動判定を行う車両の乗員保護装置の起動判定装置を提供する。
【解決手段】車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサ4と、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサ5と、車体中央部に設けたECU加速度センサ3と、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行うECU(制御手段)2を備え、各加速度センサの検出結果から衝突力を推定してエアバッグ8,9の起動判定を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサ4と、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサ5と、車体中央部に設けたECU加速度センサ3と、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行うECU(制御手段)2を備え、各加速度センサの検出結果から衝突力を推定してエアバッグ8,9の起動判定を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の衝突を高い信頼性で検出して短時間のうちに起動判定を行う車両の乗員保護装置の起動判定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図22は、従来の車両の乗員保護装置の起動判定装置を示す説明図である。この図は、例えば特開平10−95305号公報に開示されている車両の乗員保護装置を備えた車両の上面を示すものである。図において、200は乗員保護装置を備えた車両である。201は車両200の中央部に取り付けられ、車両200の加速度を検出する加速度検出装置である。202は車両200の運転席に備えられ、加速度検出装置201から出力される衝突加速度信号に基づいて展開するフロントエアバッグである。203は車両200の助手席に備えられ、衝突加速度信号に基づいて展開するフロントエアバッグ、204は加速度検出装置201に備えられた加速度センサである。
【0003】
次に動作について説明する。
従来の乗員保護装置は、運転者の乗車変位に近い車体中央部に設置された加速度検出装置201に衝突加速度を検出する加速度センサ(Gセンサ)204を備えている。加速度検出装置201は、自ら備える加速度センサ204から出力された加速度検出信号に基づいて車両の速度等の状態を推定し、乗員保護装置のエアバッグ202,203を展開させるON/OFFの判定を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の車両の乗員保護装置の起動判定装置は、以上のように構成されているので、車体中央部に一つだけ備えられた加速度センサにより、衝突加速度を検出しているので、車両の前面全体が同時に壁などに衝突する全面正突は良好に検出できるが、対向車両と自車両前面の半分だけ衝突するオフセット衝突や、電柱が車両前面の一部分に衝突するポール衝突、車体が斜めに壁面に衝突する斜突などを高い信頼性で検出して乗員保護装置を起動させることができないという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、様々な車両の衝突状態を高い精度で検出し、衝突状況に適した乗員保護装置の起動判定を行う車両の乗員保護装置の起動判定装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るようにしたものである。
【0007】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力経時変化率及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるようにしたものである。
【0008】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に予め各衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶している衝突形態識別手段を備え、右側フロント加速度センサ、左側フロント加速度センサ、及び中央部加速度センサからそれぞれ検出された加速度と、当該加速度から求めた各速度及び各変位と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値と、右側変化率演算手段から出力された右側衝突力経時変化率と、左側変化率演算手段から出力された左側衝突力経時変化率が入力された衝突力演算手段が、自ら記憶している各内容と比較して衝突形態を判定し、衝突判定手段が衝突形態識別手段の判定結果に基づいて乗員保護装置の起動を制御するものである。
【0009】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に右側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する右側波形時間差演算手段と、左側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する左側波形時間差演算手段とを備え、衝突判定手段が右側波形時間差演算手段と左側波形時間差演算手段との演算結果に基づいて衝突形態を分類するものである。
【0010】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力推定値、左側衝突力推定値、右側衝突力経時変化率、及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるものである。
【0011】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0012】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0013】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体右側バック部の衝突を検出する右側バック加速度センサと、車体左側バック部の衝突を検出する左側バック加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0014】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突力を検出する右側フロント力センサと、車体左側フロント部の衝突力を検出する左側フロント力センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が中央部加速度センサの検出結果から車両に加えられた衝突力を推定する衝突力演算手段と、右側フロント力センサから出力された衝突力と左側フロント力センサから出力された衝突力と衝突力演算手段の演算結果とを用いて車体の衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図において、1は車体、2はエアバッグ展開処理を行うエレクトリックコントロールユニット(以下、ECUと記載する)(制御手段)、3はECU加速度センサ(中央部加速度センサ)、4は右側フロント加速度センサ、5は左側フロント加速度センサ、6は右側フロント加速度センサ4とECU2とを接続する右側フロント加速度センサ用通信ケーブル、7は左側フロント加速度センサ5とECU2とを接続する左側フロント加速度センサ用通信ケーブル、8は運転席エアバッグ、9は助手席エアバッグである。なお、車体1の車体全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下垂直方向をZ方向と仮定する。
【0016】
図示のようにECU2は、車体1中央部の運転者が搭乗する座席近傍に取り付けられ、ECU加速度センサ3を備えている。ECU加速度センサ3は、車体1のX方向の加速度を検出するようにECU2のプリント基板上に取り付けられている。車体1のフロント部の右側ヘッドランプ近傍には、右側フロント加速度センサ4が車体1のX方向の加速度を検出するように取り付けられている。同様に、車体1のフロント部の左側ヘッドランプ近傍には、左側フロント加速度センサ5が車体1のX方向の加速度を検出するように取り付けられている。右側フロント加速度センサ4の検出信号は、右側フロント加速度センサ用通信ケーブル6を介してECU2に入力され、また左側フロント加速度センサ5の検出信号は、左側フロント加速度センサ用通信ケーブル7を介してECU2に入力される。車体1の車室内には運転手を衝突の衝撃から保護する運転席エアバッグ8と、助手席搭乗者を衝突の衝撃から保護する助手席エアバッグ9が取り付けられている。
【0017】
図2は、実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図において、2はECU、3はECU加速度センサ、4は右側フロント加速度センサ、5は左側フロント加速度センサ、10a〜10fは一次遅れ要素で低域ドリフトを抑制した積分器、11はECU加速度信号、12はECU速度信号、13はECU変位信号、14は右側フロント加速度信号、15は右側フロント速度信号、16は右側フロント変位信号、17は左側フロント加速度信号、18は左側フロント速度信号、19は左側フロント変位信号、20は右側衝突力演算手段、21は左側衝突力演算手段、22は右側衝突力推定値、23は左側衝突力推定値、24は右側閾値判定手段(衝突判定手段)、25は左側閾値判定手段(衝突判定手段)、26は右側閾値判定信号、27は左側閾値判定信号、28は衝突判定手段、29は一段目衝突判定信号、30は二段目衝突判定信号、31は一段目エアバッグ点火装置、32は二段目エアバッグ点火装置、33は一段目点火信号、34は二段目点火信号である。
【0018】
次に、動作について説明する。
図3及び図4は、実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。図2に示した乗員保護装置の起動判定装置の動作を、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。ECU加速度センサ3は、車体1の中央部に生じたX方向の加速度を検出するとECU加速度信号11を出力する。ECU2は、このECU加速度信号11を入力し(ステップST101)、当該ECU加速度信号11を積分器10aによって積分してECU速度信号12を求め(ステップST102)、さらにECU速度信号12を積分器10bによって積分してECU変位信号13を求める(ステップST103)。
【0019】
右側フロント加速度センサ4は、車体1の右側フロント部分に生じたX方向の加速度を検出すると右側フロント加速度信号14を出力する。ECU2は、この右側フロント加速度信号14を入力し(ステップST104)、この右側フロント加速度信号14を積分器10cによって積分して右側フロント速度信号15を求め(ステップST105)、さらに右側フロント速度信号15を積分器10dによって積分して右側フロント変位信号16を求める(ステップST106)。
【0020】
左側フロント加速度センサ5は、車体1の左側フロント部に生じたX方向の加速度を検出すると左側フロント加速度信号17を出力する。ECU2は、この左側フロント加速度信号17を入力し(ステップST107)、この左側フロント加速度信号17を積分器10eによって積分して左側フロント速度信号18を求め(ステップST108)、さらに左側フロント速度信号18を積分器10fによって積分して左側フロント変位信号19を求める(ステップST109)。
【0021】
右側衝突力演算手段20は、ECU加速度信号11、ECU速度信号12、ECU変位信号13、右側フロント加速度信号14、右側フロント速度信号15、及び右側フロント変位信号16を入力して演算を行い、右側衝突力推定値22を求める(ステップST110)。同様に左側衝突力演算手段21は、ECU加速度信号11、ECU速度信号12、ECU変位信号13、左側フロント加速度信号17、左側フロント速度信号18、及び左側フロント変位信号19を入力して演算を行い、左側衝突力推定値23を求める(ステップST111)。なお、ECU加速度センサ3、右側フロント加速度センサ4、及び左側フロント加速度センサ5による検出動作が随時行われ、前述のステップST101〜ST109、その後のステップST110またはステップST111の過程が同時に、あるいは逐次処理され、上記説明の順に処理されるとは限らない。
【0022】
右側衝突力推定値22は逐次右側閾値判定手段24へ入力され、また同様に左側衝突力推定値23は逐次左側閾値判定手段25へ入力される。右側閾値判定手段24及び左側閾値判定手段25には、各エアバッグの展開レベルを多段階に制御するように複数の閾値が設定されている。
【0023】
右側閾値判定手段24は、入力した右側衝突力推定値22が所定の閾値レベルを超えているか否かを判定し、この判定結果を示す右側閾値判定信号26を衝突判定手段28へ出力する。また左側閾値判定手段27は、入力した左側衝突力推定値23が所定の閾値レベルを超えているか否かを判定し、この判定結果を示す左側閾値判定信号27を衝突判定手段28へ出力する。
【0024】
図2に示した乗員保護装置の起動判定装置は、例えば、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9の展開レベルを二段階に制御する。右側閾値判定手段24は、入力した右側衝突力推定値22が二段目閾値を超えた値か否かを判定し(ステップST201)、この閾値を超えていれば当該閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26を衝突判定手段28へ出力する。
【0025】
右側閾値判定手段24は、ステップST201の二段目閾値を超えたか否かの判定処理と共に、一段目閾値を超えたか否かを判定する(ステップST204)。一段目閾値を超えていれば当該閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26を衝突判定手段28へ出力する。
【0026】
なお、右側閾値判定手段24がステップST201の判定処理において、右側衝突力推定値22が二段目閾値を超えていないと判定した場合、またステップST204において、右側衝突力推定値22が一段目閾値を超えていないと判定した場合には、ECU2はECU加速度信号11の入力(ステップST101)、右フロント加速度信号14の入力(ステップST104)、左フロント加速度信号17の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0027】
左側閾値判定手段25は、入力した左側衝突力推定値23について前述の右側閾値判定手段24と同様に判定処理を行い、左側閾値判定信号27を衝突判定手段28へ出力する。なお、左側閾値判定手段25が、いずれの閾値も超えていないと判定した場合には、ECU2はECU加速度信号の入力(ステップST101)、右側フロント加速度信号の入力(ステップST104)、左側フロント加速度信号の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0028】
衝突判定手段28は、右側閾値判定信号26と左側閾値判定信号27とを入力して論理演算を行い、右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27のいずれか一方または両方が一段目閾値を越えた旨を示している場合には、一段目点火装置31をONとする一段目衝突判定信号29を出力し(ステップST205)、また、右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27のいずれか一方または両方が、二段目閾値を超えた旨を示している場合には、一段目点火装置31をONとする一段目衝突判定信号29と、二段目点火装置32をONとする二段目衝突判定信号30とを出力する(ステップST202)。
【0029】
衝突判定手段28は、入力した右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27が、いずれも一段目閾値を超えていない場合には、一段目衝突判定信号29及び二段目衝突判定信号30を、乗員保護装置を起動させないOFF信号として出力する。また入力した右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27の、いずれか一方、あるいは両方が一段目閾値を超えている場合には、一段目衝突判定信号29のみ乗員保護装置を起動させるON信号とし、二段目衝突判定信号30をOFF信号として出力する。また入力した右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27の、いずれか一方、あるいは両方が二段目閾値を超えている場合には、一段目衝突判定信号29及び二段目衝突判定信号30をON信号として出力する。
【0030】
一段目衝突判定信号29がON信号になると一段目点火装置31が作動し、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9が一段目のレベルで展開される(ステップST206)。このように車体1に加えられた衝撃が中程度の場合には、多少緩くエアバッグを膨らませて搭乗者を保護する。また、一段目衝突判定信号29及び二段目衝突判定信号30がON信号になると、一段目点火装置31及び二段目点火装置32が作動し、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9が一段目及び二段目のレベルで展開される(ステップST203)。このように車体1に大きな衝撃が加えられた場合には、最大限に運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9とを膨らませて搭乗者を保護する。
【0031】
図5は、実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置が行う衝突判定の対象となる衝突形態を示す説明図である。図において、1は車体、40はコンクリートなどの剛体、41は剛性を有する円柱状の柱、42はアルミハニカムなどの車体模擬、43は大型動物である。図5(a)は、車体1が壁状の剛体40に正面から衝突する正突を示すものである。図5(b)は、コンクリートブロックなどのような形状をした剛体40に、車体1のフロント部の左右いずれか半分が衝突するOffset Rigid Barrier(以下、ORBと記載する)衝突を示すものである。図5(c)はラフロード走行を示すものである。図5(d)は、コンクリートや大型トラックなどの剛体40と衝突した際に、例えば大型トラックの下側に車体1が潜り込むアンダーライド衝突を示すものである。
【0032】
図5(e)は、電柱などの柱41に正面から衝突するポール突を示すものである。図5(f)は、電柱などの柱41が車体1の中央から左右いずれかにそれて衝突するオフセットポール突である。図5(g)は、コンクリートの壁などの剛体40に車体1が斜めに衝突する斜突を示すものである。図5(h)は、反対車線を対向して走ってきた(壁などに比べて柔らかい)車体1とフロント部の半分が正面衝突するOffset Deformable Barrier(以下、ODBと記載する)衝突を示すものである。図5(i)は、牛や馬などの大型動物43と正面衝突する動物衝突を示すものである。これらの様々な衝突形態により、搭乗者へ加わる衝撃レベルは一様でないことから、その衝撃レベルに応じてエアバッグの展開時間と展開レベルを制御する必要がある。
【0033】
次に、図2に示した右側衝突力演算手段20及び左側衝突力演算手段21が行う演算の一例を説明する。
図6は、実施の形態1による乗員保護装置を備えた車両1が衝突したときに作用する要素をモデル化した説明図である。これは図1に示した車体1を四つの質点と各ばね・ダンパでモデル化したものである。図において、50は壁や対向車などの衝突物体、51はf1の値を有する右側フロント衝突力、52はf2の値を有する左側フロント衝突力、53はm1の値を有する右側フロント等価質量、54はm2の値を有する左側フロント等価質量、55はk1の定数値を有する右側フロント等価ばね、56はc1の定数値を有する右側フロント等価ダンパ、57はk2の定数値を有する左側フロント等価ばね、58はc2の定数値を有する左側フロント等価ダンパ、59はm3の値を有する車体中央部等価質量、60はk3の定数値を有する車体中央部等価ばね、61はc3の定数値を有する車体中央部等価ダンパ、62はm4の値を有する車体後方部等価質量、63はx1の値を有する右側フロント変位、64はx2の値を有する左側フロント変位、65はx3の値を有する車体中央部変位、66はx4の値を有する車体後方部変位である。このように車体1のモデルを仮定した場合、車体1が壁などの衝突物体50に衝突するときの運動方程式は、次の(1)式で記述される。
【数1】
【0034】
(1)式の第一式より、右側フロント加速度の値に右側フロント等価質量53の値m1を乗じた第一項と、右側フロント速度の値と車体中央部速度の値との差分に右側フロント等価ダンパ56の定数値c1を乗じた第二項と、右側フロント変位63の値x1と車体中央部変位65の値x3との差分に右側フロント等価ばね55の定数値k1を乗じた第三項とを加算することで、右側衝突力推定値22に相当する右側フロント衝突力51の値f1が求められる。
【0035】
同様に、(1)式の第二式より、左側フロント加速度の値に左側フロント等価質量54の値m2を乗じた第一項と、左側フロント速度の値と車体中央部速度の値との差分に左側フロント等価ダンパ58の定数値c2を乗じた第二項と、左側フロント変位64の値x2と車体中央部変位65の値x3との差分に左側フロント等価ばね57の定数値k2を乗じた第三項とを加算することで、左側衝突力推定値23に相当する左側フロント衝突力52の値f2が求められる。なお、車体1の中央部に発生する衝突力は(1)式の第三式から、また車体1の後方部に発生する衝突力は(1)式の第四式からわかるように“0”の値となる。
【0036】
以上のように、実施の形態1によれば、車体1に右側フロント加速度センサ4と左側フロント加速度センサ5とを備えたので、車体1が衝突した際に発生する右側フロント部の衝突力推定値51の値f1と、左側フロント部の衝突力推定値52の値f2とを演算で求めることができ、様々な衝突形態において、搭乗者に加えられる衝撃レベルを適正に判定してエアバッグの多段展開を適確に制御できるという効果がある。
【0037】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図2に示すものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、35は衝突判定信号、36はエアバッグ点火装置、37は点火信号、70は右側変化率演算手段、71は左側変化率演算手段、72は右側変化率信号、73は左側変化率信号、74は右側フロント加速度センサ4の検出結果から求めた右側変化率信号72に応じて閾値を変更する右側閾値判定手段(衝突判定手段)、75は左側フロント加速度センサ5の検出結果から求めた左側変化率信号73に応じて閾値を変更する左側閾値判定手段(衝突判定手段)である。
【0038】
なお、図7では図示を簡略化するため、衝突判定手段28から一段展開の衝突判定信号35を出力し、エアバッグ点火装置36が衝突判定信号35に基づいて点火信号37を運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9に出力する構成を例示しているが、図2に示す衝突判定手段28のように、多段展開の衝突判定を行って一段目点火装置31及び二段目点火装置32の制御を行うように構成してもよい。
【0039】
次に動作について説明する。
図8及び図9は、実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。図3及び図4に示したフローチャートと同一あるいは相当する過程に同じ符号を付し、その過程の動作説明を省略する。実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置は、図3及び図4に示したステップST101〜ST111の過程と同様に処理を行い、右側衝突力演算手段20を用いて右側衝突力推定値22を求めた後(ステップST110)、当該右側衝突力推定値22を右側変化率演算手段70へ入力し、所定の演算により車体1の右側フロント部に加えられた衝突力の経時変化を示す右側変化率信号72を求める(ステップST301)。
【0040】
また、左側衝突力演算手段21を用いて左側衝突力推定値23を求めた後(ステップST111)、当該左側衝突力推定値23を左側変化率演算手段71へ入力し、所定の演算により車体1の左側フロント部に加えられた衝突力の経時変化を示す左側変化率信号73を求める(ステップST302)。
【0041】
右側閾値判定手段74は、右側衝突力演算手段20から右側衝突力推定値22を入力し、また右側変化率演算手段70から右側変化率信号72を入力して、右側変化率信号72が示す変化率Gr1に基づいて、後述するように閾値を変化させ、右側衝突力推定値22の値f1が当該閾値を超えたか否かを判定する。また同様に、左側閾値判定手段75は、左側衝突力演算手段21から左側衝突力推定値23を入力し、また左側変化率演算手段71から左側変化率信号73を入力して、左側変化率信号73が示す変化率Gr2に基づいて閾値を変化させ、左側衝突力推定値23の値f2が当該閾値を超えたか否かを判定する(ステップST303)。
【0042】
右側閾値判定手段74及び左側閾値判定手段75において、各衝突推定値が閾値を超えていないと判定された場合には、ECU2はECU加速度信号11の入力(ステップST101)、右側フロント加速度信号14の入力(ステップST104)、左側フロント加速度信号17の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0043】
右側閾値判定手段74は、ステップST303において、右側衝突力推定値22が閾値を超えていると判定した場合には、閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26を出力する。同様に左側閾値判定手段75は、ステップST303において、左側衝突力推定値23が閾値を超えていると判定した場合には、閾値を超えた旨を示す左側閾値判定信号27を出力する。
【0044】
図7に示す衝突判定手段28は、右側閾値判定信号26と左側閾値判定信号27とを入力して論理演算を行い、右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27のいずれか一方または両方が閾値を越えた旨を示している場合には、エアバッグ点火装置36をONとする衝突判定信号35を出力する(ステップST304)。ONを指示する衝突判定信号35を入力したエアバッグ点火装置36は、点火信号37を出力し、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9を展開させる(ステップST305)。
【0045】
次に、右側閾値判定手段74及び左側閾値判定手段75において行われる判定処理を説明する。
図10は、車体1に加えられた衝突力の経時変化を示す説明図である。図10(a)は低速正突系の衝突として、硬い壁などに車体1のフロント部分が正面から低速で衝突した場合に車体1に加えられる力の経時波形を示し、図10(b)は高速ODB系の衝突として、対向車との正面衝突などのように、柔らかい相手と高速で衝突した場合に車体1に加えられる力の経時波形を示したものである。車体1に加えられた衝撃の大きさは、図10(a),(b)に斜線部で示した力の経時変化を示す波形の面積、即ち積分値で表される。なお、図10(a),(b)に示したグラフの縦軸に示す力の単位は、例えばニュートン[N]で、横軸の時間の単位は、例えば秒[sec.]である。
【0046】
図10(a)に示す低速正突系の力の最大値F1は、図10(b)に示す高速ODB系の最大値F2に比べて大きいが、低速正突系は力が加えられている時間がτ1で、高速ODB系で力が加えられている時間τ2に比べて短い。つまり、図10(a)に示す面積S1は、図10(b)に示す面積S2に比べて小さくなる。このような2種類の衝突系において、搭乗者が受ける衝撃は高速ODB系の衝突が低速正突系の衝突に比べて明らかに大きい。エアバッグ展開を司る衝突判定は、例えば低速正突系ではエアバッグ展開OFF、高速ODB系ではエアバッグ展開ONとなるように判定することが望ましい。
【0047】
エアバッグの起動判定を力の最大値F1,F2に基づいて行うと、低速正突系の最大値F1が、高速ODB系の最大値F2より大きいことから好ましくない判定結果が得られる。また、面積S1と面積S2を比較すると面積S2が明らかに大きいことから、好ましい判定結果が得られる反面、面積S2が求められるまで時間が掛かることから速やかな判定が難しくなる。
【0048】
実施の形態2の乗員保護装置の起動判定装置では、図10に示すように力の経時変化波形の傾き、即ち力の時間成分の変化率に着目して起動判定を行う。図10(a)に示す波形の傾きGraと、図10(b)に示す波形の傾きGrbとを比較すると、明らかに傾きGraが傾きGrbより大きく、急峻な変化を示している。このような条件を衝突判定に加味して、例えば、力の傾き、即ち変化率Grが大きい場合は硬いものに衝突したと判定し、衝突判定の閾値を上げる。一方、力の変化率Grが小さい場合は柔らかいものに衝突したと判定して、衝突判定の閾値を下げるように処理すると、適切で俊敏なエアバッグの起動が可能となる。
【0049】
以上のように、実施の形態2によれば、衝突力の時間成分の変化率を求める右側変化率演算手段70及び左側変化率演算手段71と、衝突力の変化率に基づいて閾値を変化させて衝突力推定値の判定を行う右側閾値判定手段74及び左側閾値判定手段75とを備えたので、車両が壁などの硬いものに衝突したのか、対向車線を走行してきた車両などの柔らかいものに衝突したのかを判定して、短時間で衝突形態に応じた乗員保護装置の起動判定が可能になるという効果がある。
【0050】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図2及び図7に示した乗員保護装置の起動判断装置と同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、80は衝突形態識別手段、81は右側閾値切り替え信号、82は左側閾値切り替え信号、83は右側閾値判定手段(衝突判定手段)、84は左側閾値判定手段(衝突判定手段)である。
【0051】
なお、図11では図示を簡略化するため、図7に示したものと同様に衝突判定手段28から一段展開の衝突判定信号35を出力し、エアバッグ点火装置36が衝突判定信号35に基づいて点火信号37を運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9に出力する構成を例示しているが、図2に示す衝突判定手段28のように、多段展開の衝突判定を行って一段目点火装置31及び二段目点火装置32の制御を行うように構成してもよい。
【0052】
次に、動作について説明する。
図12及び図13は、実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。図3及び図4、また図8及び図9に示したフローチャートと同一あるいは相当する過程に同じ符号を付し、その過程の動作説明を省略する。
【0053】
実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置は、図8及び図9に示したステップST101から、ステップST301・ステップST302までの過程を前述のように処理し、ECU加速度センサ3から取得したECU加速度信号11、積分器10aによって求めたECU速度信号12、積分器10bによって求めたECU変位信号13、右側フロント加速度センサ4から取得した右側フロント加速度信号14、積分器10cによって求めた右側フロント速度信号15、積分器10dによって求めた右側フロント変位信号16、左側フロント加速度センサ5から取得した左側フロント加速度信号17、積分器10eによって求めた左側フロント速度信号18、積分器10fによって求めた左側フロント変位信号19、右側衝突力演算手段20によって求めた右側衝突力推定値22、左側衝突力演算手段21によって求めた左側衝突力推定値23、右側変化率演算手段70によって求めた右側変化率信号72、及び左側変化率演算手段71によって求めた左側変化率信号73を衝突形態識別手段80へ入力し(図11では、衝突形態識別手段80へ入力される各入力信号線の図示を省略する)、当該衝突形態識別手段80において、自ら記憶している各衝突形態と対応させた加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の時間成分の変化率と前記各信号が示す値とを比較し、また所定の演算を行うことにより各加速度センサの検出結果が、いかなる衝突形態に該当するか判定する(ステップST401)。
【0054】
衝突形態識別手段80は、例えば図5に示した衝突形態の中から該当するものを選択し、当該衝突形態に適した閾値を演算によって求め、この閾値への変更を指示する右側閾値切り替え信号81と左側閾値切り替え信号82とを生成する(ステップST402)。右側閾値判定手段83は、右側閾値切り替え信号81を入力して、判定に用いる閾値を衝突形態に適したものに変更し、また右側変化率信号72を用いて右側衝突力推定値22が当該閾値を超えたか否かを判定する。また同様に、左側閾値判定手段84は、左側閾値切り替え信号82を入力して、判定に用いる閾値を衝突形態に適したものに変更し、また左側変化率信号73を用いて左側衝突力推定値23が当該閾値を超えたか否かを判定する(ステップST303)。当該閾値を超えていない場合には、ECU2はECU加速度信号11の入力(ステップST101)、右フロント加速度信号14の入力(ステップST104)、左フロント加速度信号17の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0055】
右側閾値判定手段83及び左側閾値判定手段84において、閾値を超えていると判定された場合には、前述の説明と同様に閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26・左側閾値判定信号27が、それぞれの閾値判定手段から出力され、衝突判定手段28によってエアバッグ点火装置36をONとする衝突判定信号35が生成され(ステップST304)、エアバッグ点火装置36によって運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が展開される(ステップST305)。
【0056】
以上のように、実施の形態3によれば、様々な衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶しておき、各加速度センサから検出された信号と記憶されているものとを比較演算して衝突形態を判定し、また、判定した衝突形態に適した閾値を演算によって求め、右側閾値判定手段83及び左側閾値判定手段84において用いられる閾値を衝突形態に適したものへ変更させる衝突形態識別手段80を備えたので、適切な衝突判定を短時間で行うことができるという効果がある。
【0057】
実施の形態4.
図14は、この発明の実施の形態4による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図2、図7、及び図11に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、90は右側波形時間差演算手段、91は左側波形時間差演算手段、92は右側波形時間差信号、93は左側波形時間差信号、94は右側閾値判定手段(衝突判定手段)、95は左側閾値判定手段(衝突判定手段)である。
【0058】
なお、図14では図示を簡略化するため、図7に示したものと同様に衝突判定手段28から一段展開の衝突判定信号35を出力し、エアバッグ点火装置36が衝突判定信号35に基づいて点火信号37を運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9に出力する構成を例示しているが、図2に示す衝突判定手段28のように、多段展開の衝突判定を行って一段目点火装置31及び二段目点火装置32の制御を行うように構成してもよい。
【0059】
次に、動作について説明する。
実施の形態4による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態3で説明したものに右側波形時間差演算手段90と左側波形時間差演算手段91とを備えたもので、その他の部分の動作は実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置と同様である。ここでは、実施の形態3において説明したものと同様な処理動作の説明を省略し、実施の形態4による乗員保護装置の起動判定装置の特徴となる動作について説明する。
【0060】
右側波形時間差演算手段90は、右側フロント加速度センサ4から右側フロント加速度信号14を取得し、またECU加速度センサ3からECU加速度信号11を取得して、当該各加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形を求め、例えば、ECU加速度信号11がピーク値となった時間と右側フロント加速度信号14がピーク値となった時間との差を演算して右側波形時間差信号92を生成する。また同様に、左側波形時間差演算手段91は、左側フロント加速度センサ5から左側フロント加速度信号17を取得し、またECU加速度センサ3からECU加速度信号11を取得して、当該各加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形を求め、例えば、ECU加速度信号11がピーク値となった時間と左側フロント加速度信号17がピーク値となった時間との差を演算して左側波形時間差信号93を生成する。
【0061】
右側閾値判定手段94は、右側波形時間差信号92を入力し、右側変化率演算手段70から右側変化率信号72を入力して、また衝突形態識別手段80から右側閾値切り替え信号81を入力して、当該入力した各信号に基づいて閾値を変更し、右側衝突力推定値22が当該閾値を超えたか否かを判定する。また同様に、左側閾値判定手段95は、左側波形時間差信号93を入力し、左側変化率演算手段71から左側変化率信号73を入力して、また衝突形態識別手段80から左側閾値切り替え信号82を入力して、当該入力した各信号に基づいて閾値を変更し、左側衝突力推定値23が当該閾値を超えたか否かを判定する。
【0062】
次に、各加速度センサが検出した加速度を示す加速度波形の時間差に基づいて行う衝突形態の判定を説明する。
図15は、衝突形態により車体1の各部分で検出される加速度の経時変化を示す説明図である。図15(a)は車体が硬い物体と正面衝突する正突系の衝突において、また図15(b),(c)は柔らかい物体あるいは柱などに車体の一部が衝突するソフトクラッシュ系の衝突において、ECU加速度センサ3によって検出される加速度と右側フロント加速度センサ4・左側フロント加速度センサ5によってそれぞれ検出される加速度の経時変化を表す波形を示したものである。衝突形態毎に図示した波形の比較結果を次の表1にまとめて記載する。
【表1】
【0063】
図15及び表1からわかるように、例えば(a)正突系と(b)ソフトクラッシュ系(センターポール突,アンダーライド突)とを比較すると、右側フロント加速度・左側フロント加速度は同様に経時変化し差異が明確に現れない。またECU加速度は、(a)正突系の衝突では衝突初期から加速度波形が大きくなるが、(b)ソフトクラッシュ系(センターポール突,アンダーライド突)の衝突では加速度波形が衝突初期で小さく、衝突中期になって大きくなる。このように、車体1のフロント部に備えられた右側フロント加速度センサ4・左側フロント加速度センサ5によって検出された加速度波形と、車体1の中央部に備えられたECU加速度センサ3によって検出された加速度波形との時間差、即ち位相差により代表的な衝突形態が分類できる。また、右側フロント加速度センサ4によって検出された加速度波形と、左側フロント加速度センサ5によって検出された加速度波形とを比較することによって、図15及び表1に示したようにソフトクラッシュ系のうち、(b)のセンターポール突,アンダーライド突と、(c)のオフセットポール突,斜突,ODB突とを識別することができる。
【0064】
図16及び図17は、衝突力と車体1の各部分で検出される加速度との関係を示す説明図である。図16(a)は、衝突によって車体1のフロント部分に加えられる衝突力の経時変化を示したもので、時間τの間にピーク値f1を有する正弦波の半波のように変化する衝突力を表している。図16(b)は、車体1を簡単な二つの質点でモデル化した車体モデルを示したものである。
【0065】
図17は、図16(a)に示した正弦半波状の衝突力f1が、図16(b)に示した車体モデルの車体フロント部に加えられた際に、車体フロント部に発生する加速度の経時変化と車体中央部に発生する加速度の経時変化を示したものである。図17(a)は高速正突をシミュレーションしたもので、半波時間τが2msと短い間衝突力が加えられた場合の解析結果を示したものである。ここでは数値例としてm1=100kg、m2=1000kg、一次固有振動数fn=100Hz、減衰比ζ=0.2としている。図17(b)はソフト衝突をシミュレーションしたもので、半波時間τが10msと長い間衝突力が加えられた場合の解析結果を示したものである。
【0066】
図17(a),(b)からわかるように、半波時間τが長いほど、つまり車体1に長い間衝突力が加えられると、車体フロント部に発生する加速度ピーク値と車体中央部に発生する加速度ピーク値との時間差、即ち位相差が大きくなる。このことから衝突形態が判定できる。
【0067】
以上のように、実施の形態4によれば、右側フロント加速度センサ4が検出する加速度の経時変化を示す波形とECU加速度センサ3が検出する加速度の経時変化を示す波形の時間差を演算する右側波形時間差演算手段90と、左側フロント加速度センサ5が検出する加速度の経時変化を示す波形とECU加速度センサ3が検出する加速度の経時変化を示す波形の時間差を演算する左側波形時間差演算手段91とを備えたので、硬い物体への前面衝突と他の車体など柔らかい物体への衝突とを適確に識別して衝突判定が行えるという効果がある。
【0068】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5による車両の乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4で説明した、いずれかの乗員保護装置の起動判定装置のように構成されるもので、ここでは構成の説明を省略する。
【0069】
次に動作について説明する。
ここでは実施の形態1ないし実施の形態4で説明したものと同様な動作について、その説明を省略し、実施の形態5による乗員保護装置の起動判定装置の特徴となる動作を説明する。
【0070】
実施の形態5による乗員保護装置の起動判定装置が備える右側衝突力演算手段20、左側衝突力演算手段21、右側変化率演算手段70、及び左側変化率演算手段71において行われる演算を、次の(2)式に示す。
【数2】
右側衝突力演算手段20は、(2)式の第一式に示すように右側フロント速度信号15が示す値からECU速度信号12が示す値を減算した値と、予め設定されている図6に示す右側フロント等価ダンパ56の定数c1との積を求め、右側衝突力推定値22の値f1に近似する値を算出する。同様に、左側衝突力演算手段21は、(2)式の第二式に示すように左側フロント速度信号18が示す値からECU速度信号12が示す値を減算した値と、予め設定されている図6に示す左側フロント等価ダンパ58の定数c2との積を求め、左側衝突力推定値23の値f2に近似する値を算出する。
【0071】
右側変化率演算手段70は、(2)式の第三式に示すように右側フロント加速度信号14が示す値からECU加速度信号11が示す値を減算した値と、図6に示す右側フロント等価ダンパ56の定数c1との積を求め、右側変化率信号72が示す値Gr1を算出する。同様に、左側変化率演算手段71は、(2)式の第四式に示すように左側フロント加速度信号17が示す値からECU加速度信号11が示す値を減算した値と、図6に示す左側フロント等価ダンパ58の定数c2との積を求め、左側変化率信号73が示す値Gr2を算出する。
【0072】
このように、(2)式を用いて求めたf1、f2、Gr1、及びGr2の各値は、厳密に演算した場合の値に近似するものなので、各衝突力推定値の精度は低いものとなるが、衝突判定の精度を劣化させない程度のものである。
【0073】
以上のように、実施の形態5によれば、右側衝突力演算手段20が右側フロント速度信号15とECU速度信号12を用いて右側衝突力推定値22を求め、左側衝突力演算手段21が左側フロント速度信号18とECU速度信号12を用いて左側衝突力推定値23を求め、右側変化率演算手段70が右側フロント加速度信号14とECU加速度信号11を用いて右側変化率信号72を求め、左側変化率演算手段71が左側フロント加速度信号17とECU加速度信号11を用いて左側変化率信号73を求めるようにしたので、演算量が少なくなることから各演算手段の負担が軽減され、なおかつ適切な衝突判定が行えることから、安価であるところの演算処理能力が劣るECUを使用して適切な衝突判定ができるという効果がある。
【0074】
実施の形態6.
図18は、この発明の実施の形態6による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1に示した乗員保護装置の起動判定装置と同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、96は中央フロント加速度センサ、97は中央フロント加速度センサ96とECU2とを接続する中央フロント加速センサ用通信ケーブルである。なお、図18に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。また、図1に示した車体1と同様に、車体1の全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下方向をZ方向と仮定する。
【0075】
このように、実施の形態6による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4において説明した右側フロント加速度センサ4、左側フロント加速度センサ5、及びECU加速度センサ3を備えた構成に、車体1フロント部の中央にX方向の加速度を検出する中央フロント加速度センサ96を加えて構成したものである。
【0076】
次に、動作について説明する。
実施の形態6による乗員保護装置の起動判定装置が備えるECU2は、中央フロント加速度センサ96によって検出された中央フロント加速度を、右側フロント加速度センサ4あるいは左側フロント加速度センサ5によって検出されたそれぞれのフロント加速度と同様に処理し、運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9とを展開させる判定に用いる。ここでは実施の形態1ないし実施の形態5において説明したECU2と同様な処理動作について、その詳細な動作説明を省略する。
【0077】
以上のように、実施の形態6によれば、車体1フロント部に中央フロント加速度センサ96と右側フロント加速度センサ4と左側フロント加速度センサ5とを備えてECU2が衝突判定を行うようにしたので、左右のフロント加速度センサだけでは識別が困難であった車体1の前面中央部分からの正突・オフセット衝突・斜突と、柱等と車体1の中央部分との衝突を良好に検出して衝突形態を正しく識別することができ、適切な衝突判定ができるという効果がある。
【0078】
実施の形態7.
図19は、この発明の実施の形態7による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1及び図18に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。なお、図19に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。図19に示した実施の形態7による乗員保護装置の起動判定装置は、図18に示した実施の形態6による乗員保護装置の起動判定装置から右側フロント加速度センサ4及び左側フロント加速度センサ5が除かれたもので、その他の構成及び動作は図18に示したものと同様である。ここでは詳細な構成及び動作の説明を省略する。
【0079】
以上のように、実施の形態7によれば、車体1フロント部分の中央にフロント加速度センサ96を備えてECU2が衝突判定を行うようにしたので、簡素な構成として故障要因を少なくすると共にコストの低減が図れるという効果がある。
【0080】
実施の形態8.
図20は、この発明の実施の形態8による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、100は右側バック加速度センサ、101は左側バック加速度センサ、102は右側バック加速度センサ100とECU2とを接続する右側バック加速度センサ用通信ケーブル、103は左側バック加速度センサ101とECU2とを接続する左側バック加速度センサ用通信ケーブルである。なお、図20に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。また、図1に示した車体1と同様に、車体1の全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下方向をZ方向と仮定する。
【0081】
このように、実施の形態8による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4において説明した右側フロント加速度センサ4、左側フロント加速度センサ5、及びECU加速度センサ3を備えた構成に、車体1後方部にX方向の加速度を検出する右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101を加えて構成したものである。また、実施の形態8による乗員保護装置の起動判定装置に用いられるECU2は、右側フロント加速度センサ4または左側フロント加速度センサ5によって検出された各フロント加速度を処理する積分器10a〜10f、右側衝突力演算手段20、左側衝突力演算手段21、右側変化率演算手段70、左側変化率演算手段71、及び各実施の形態において説明された左右の閾値判定手段と同様に、右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101によって検出された各バック加速度を処理する各手段を備えている。
【0082】
次に、動作について説明する。
実施の形態8による乗員保護装置の起動判定装置は、右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101によって検出された左右のバック加速度を示す信号をECU2へ入力し、右側フロント加速度センサ4または左側フロント加速センサ5によって検出された左右のフロント加速度と同様に演算処理を行い、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9の起動判定を行う。ここでは実施の形態1ないし実施の形態5において説明したECU2の処理動作と同様に行われる詳細な動作説明を省略する。
【0083】
以上のように、実施の形態8によれば、車体1のフロント部に右側フロント加速度センサ4及び左側フロント加速度センサ5を、また車体中央部にECU加速度センサ3を、また車体後方部に右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101を備えたので、車体1の前方衝突だけでなく後方衝突についても衝突力が推定でき、衝突形態に適した衝突判定ができるという効果がある。
【0084】
実施の形態9.
図21は、この発明の実施の形態9による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、110は車体フロント部フレーム構造体、111は右側フロント力センサ、112は左側フロント力センサ、113は右側フロント力センサ111とECU2とを接続する右側フロント力センサ用通信ケーブル、114は左側フロント力センサ112とECU2とを接続する左側フロント力センサ用通信ケーブルである。なお、図21に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。また、図1に示した車体1と同様に、車体1の全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下方向をZ方向と仮定する。
【0085】
このように、実施の形態9による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4において説明した右側フロント加速度センサ4、左側フロント加速度センサ5に代えて、車体1フロント部を構成する車体フロント部フレーム構造体110の左右側方部位に、X方向に作用する衝突力を検出する右側フロント力センサ111及び左側フロント力センサ112を備えたものである。
【0086】
次に、動作について説明する。
実施の形態9による乗員保護装置の起動判定装置は、右側フロント力センサ111及び左側フロント力センサ112を用いて車体1に加えられた衝突力を測定し、この測定値を入力したECU2が、実施の形態1ないし実施の形態4において説明したECU2と同様に閾値判定及び衝突判定を行い、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9を展開させるもので、ここでは当該ECU2の詳細な動作説明を省略する。
【0087】
ECU加速度センサ3が検出したECU加速度信号11から、例えば積分器10aによってECU速度信号12を求め、さらにECU速度信号12から積分気10bによってECU変位信号13を求める。これらのECU加速度信号11、ECU速度信号12、ECU変位信号13及び右側フロント力センサ111から出力された衝突力を右側衝突力演算手段20へ入力し、右側衝突力推定値を所定の演算によって求める。あるいは右側フロント力センサ111から出力された右側フロント衝突力を、例えば直接右側閾値判定手段24へ入力する。右側閾値判定手段24以降の処理・動作は実施の形態1ないし実施の形態4と同様あるいは相当するように行われる。これは左側フロント力センサ112から出力された左側フロント衝突力についても同様に処理・動作がなされ、衝突判定手段28が行う衝突判定に用いられる。
【0088】
以上のように、実施の形態9によれば、車体フロント部フレーム構造体110に右側フロント力センサ111及び左側フロント力センサ112を備えたので、直接車体1に加えられた衝突力が測定でき、測定精度が良好になることから様々な衝突形態に応じて適切な衝突判定を短時間で行えるという効果がある。
【0089】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るように構成したので、対向車両や電柱と車体前面の半分が衝突した場合や、壁面に車体が斜めに衝突した場合を的確に検出して乗員保護装置を起動させることができるという効果がある。
【0090】
この発明によれば、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力経時変化率及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるように構成したので、衝突した対象物を判定して適切な乗員保護装置の起動判定が行なえるという効果がある。
【0091】
この発明によれば、制御手段に予め各衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶している衝突形態識別手段を備え、右側フロント加速度センサ、左側フロント加速度センサ、及び中央部加速度センサからそれぞれ検出された加速度と、当該加速度から求めた各速度及び各変位と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値と、右側変化率演算手段から出力された右側衝突力経時変化率と、左側変化率演算手段から出力された左側衝突力経時変化率が入力された衝突力演算手段が、自ら記憶している各内容と比較して衝突形態を判定し、衝突判定手段が衝突形態識別手段の判定結果に基づいて乗員保護装置の起動を制御するように構成したので、様々な衝突形態に応じて適切な乗員保護装置の起動判定を短時間で行うことができるという効果がある。
【0092】
この発明によれば、制御手段に右側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する右側波形時間差演算手段と、左側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する左側波形時間差演算手段とを備え、衝突判定手段が右側波形時間差演算手段と左側波形時間差演算手段との演算結果に基づいて衝突形態を分類するように構成したので、硬い物体への前面衝突と他の車両等の柔らかい物体への衝突が的確に判定できるという効果がある。
【0093】
この発明によれば、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力推定値、左側衝突力推定値、右側衝突力経時変化率、及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるように構成したので、演算量を少なくすることで各演算手段の負担を低減することができるという効果がある。
【0094】
この発明によれば、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るように構成したので、対向車両や電柱と車体前面の半分が衝突した場合や、壁面に車体が斜めに衝突した場合を的確に検出して乗員保護装置を起動させることができるという効果がある。
【0095】
この発明によれば、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るように構成したので、コスト低減を図ると共に装置構成を簡素化することで故障要因を縮小することができるという効果がある。
【0096】
この発明によれば、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体右側バック部の衝突を検出する右側バック加速度センサと、車体左側バック部の衝突を検出する左側バック加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成る構成としたので、車体後方部に衝突が生じた場合にも適切な衝突判定を行うことができるという効果がある。
【0097】
この発明によれば、車体右側フロント部の衝突力を検出する右側フロント力センサと、車体左側フロント部の衝突力を検出する左側フロント力センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が中央部加速度センサの検出結果から車両に加えられた衝突力を推定する衝突力演算手段と、右側フロント力センサから出力された衝突力と左側フロント力センサから出力された衝突力と衝突力演算手段の演算結果とを用いて車体の衝突判定を行う衝突判定手段から成る構成としたので、衝突力を直接測定することにより、様々な衝突形態に応じて精度よく短時間で適切な衝突判定を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置が行う衝突判定の対象となる衝突形態を示す説明図である。
【図6】実施の形態1による乗員保護装置を備えた車両が衝突したときに作用する要素をモデル化した説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2による車両の乗員保護装置の起動判断装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】衝突によって車体に加わる力の時間変化を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態3による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態4による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図15】衝突形態により車体の各部分で検出される加速度の経時変化を示す説明図である。
【図16】衝突力と車体の各部分で検出される加速度との関係を示す説明図である。
【図17】衝突力と車体の各部分で検出される加速度との関係を示す説明図である。
【図18】この発明の実施の形態6による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図19】この発明の実施の形態7による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図20】この発明の実施の形態8による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図21】この発明の実施の形態9による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図22】従来の車両の乗員保護装置の起動判定装置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 車体、2 ECU(制御手段)、3 ECU加速度センサ(中央部加速度センサ)、4 右側フロント加速度センサ、5 左側フロント加速度センサ、6右側フロント加速度センサ用通信ケーブル、7 左側フロント加速度センサ用通信ケーブル、8 運転席エアバッグ、9 助手席エアバッグ、10 積分器、11 ECU加速度信号、12 ECU速度信号、13 ECU変位信号、14右側フロント加速度信号、15 右側フロント速度信号、16 右側フロント変位信号、17 左側フロント加速度信号、18 左側フロント速度信号、19左側フロント変位信号、20 右側衝突力演算手段、21 左側衝突力演算手段、22 右側衝突力推定値、23 左側衝突力推定値、24 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、25 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、26 右側閾値判定信号、27 左側閾値判定信号、28 衝突判定手段、29 一段目衝突判定信号、30 二段目衝突判定信号、31 一段目エアバッグ点火装置、32二段目エアバッグ点火装置、33 一段目点火信号、34 二段目点火信号、35 衝突判定信号、36 エアバッグ点火装置、37 点火信号、40 剛体、41 柱、42 車体模擬、43 大型動物、50 衝突物体、51 右側フロント衝突力、52 左側フロント衝突力、53 右側フロント等価質量、54左側フロント等価質量、55 右側フロント等価ばね、56 右側フロント等価ダンパ、57 左側フロント等価ばね、58 左側フロント等価ダンパ、59車体中央部等価質量、60 車体中央部等価ばね、61 車体中央部等価ダンパ、62 車体後方部等価質量、63 右側フロント等価変位、64 左側フロント等価変位、65 車体中央部変位、66 車体後方部変位、70 右側変化率演算手段、71 左側変化率演算手段、72 右側変化率信号、73 左側変化率信号、74 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、75 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、80 衝突形態識別手段、81 右側閾値切り替え信号、82 左側閾値切り替え信号、83 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、84 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、90 右側波形時間差演算手段、91 左側波形時間差演算手段、92 右側波形時間差信号、93 左側波形時間差信号、94 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、95 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、96 中央フロント加速度センサ、97 中央フロント加速度センサ用通信ケーブル、100 右側バック加速度センサ、101 左側バック加速度センサ、102 右側バック加速度センサ用通信ケーブル、103 左側バック加速度センサ用通信ケーブル、110 車体フロントフレーム構造体、111 右側フロント力センサ、112 左側フロント力センサ、113 右側フロント力センサ用通信ケーブル、114 左側フロント力センサ用通信ケーブル。
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の衝突を高い信頼性で検出して短時間のうちに起動判定を行う車両の乗員保護装置の起動判定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図22は、従来の車両の乗員保護装置の起動判定装置を示す説明図である。この図は、例えば特開平10−95305号公報に開示されている車両の乗員保護装置を備えた車両の上面を示すものである。図において、200は乗員保護装置を備えた車両である。201は車両200の中央部に取り付けられ、車両200の加速度を検出する加速度検出装置である。202は車両200の運転席に備えられ、加速度検出装置201から出力される衝突加速度信号に基づいて展開するフロントエアバッグである。203は車両200の助手席に備えられ、衝突加速度信号に基づいて展開するフロントエアバッグ、204は加速度検出装置201に備えられた加速度センサである。
【0003】
次に動作について説明する。
従来の乗員保護装置は、運転者の乗車変位に近い車体中央部に設置された加速度検出装置201に衝突加速度を検出する加速度センサ(Gセンサ)204を備えている。加速度検出装置201は、自ら備える加速度センサ204から出力された加速度検出信号に基づいて車両の速度等の状態を推定し、乗員保護装置のエアバッグ202,203を展開させるON/OFFの判定を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の車両の乗員保護装置の起動判定装置は、以上のように構成されているので、車体中央部に一つだけ備えられた加速度センサにより、衝突加速度を検出しているので、車両の前面全体が同時に壁などに衝突する全面正突は良好に検出できるが、対向車両と自車両前面の半分だけ衝突するオフセット衝突や、電柱が車両前面の一部分に衝突するポール衝突、車体が斜めに壁面に衝突する斜突などを高い信頼性で検出して乗員保護装置を起動させることができないという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、様々な車両の衝突状態を高い精度で検出し、衝突状況に適した乗員保護装置の起動判定を行う車両の乗員保護装置の起動判定装置を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るようにしたものである。
【0007】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力経時変化率及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるようにしたものである。
【0008】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に予め各衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶している衝突形態識別手段を備え、右側フロント加速度センサ、左側フロント加速度センサ、及び中央部加速度センサからそれぞれ検出された加速度と、当該加速度から求めた各速度及び各変位と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値と、右側変化率演算手段から出力された右側衝突力経時変化率と、左側変化率演算手段から出力された左側衝突力経時変化率が入力された衝突力演算手段が、自ら記憶している各内容と比較して衝突形態を判定し、衝突判定手段が衝突形態識別手段の判定結果に基づいて乗員保護装置の起動を制御するものである。
【0009】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に右側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する右側波形時間差演算手段と、左側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する左側波形時間差演算手段とを備え、衝突判定手段が右側波形時間差演算手段と左側波形時間差演算手段との演算結果に基づいて衝突形態を分類するものである。
【0010】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力推定値、左側衝突力推定値、右側衝突力経時変化率、及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるものである。
【0011】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0012】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0013】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体右側バック部の衝突を検出する右側バック加速度センサと、車体左側バック部の衝突を検出する左側バック加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0014】
この発明に係る車両の乗員保護装置の起動判定装置は、車体右側フロント部の衝突力を検出する右側フロント力センサと、車体左側フロント部の衝突力を検出する左側フロント力センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が中央部加速度センサの検出結果から車両に加えられた衝突力を推定する衝突力演算手段と、右側フロント力センサから出力された衝突力と左側フロント力センサから出力された衝突力と衝突力演算手段の演算結果とを用いて車体の衝突判定を行う衝突判定手段から成るものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図において、1は車体、2はエアバッグ展開処理を行うエレクトリックコントロールユニット(以下、ECUと記載する)(制御手段)、3はECU加速度センサ(中央部加速度センサ)、4は右側フロント加速度センサ、5は左側フロント加速度センサ、6は右側フロント加速度センサ4とECU2とを接続する右側フロント加速度センサ用通信ケーブル、7は左側フロント加速度センサ5とECU2とを接続する左側フロント加速度センサ用通信ケーブル、8は運転席エアバッグ、9は助手席エアバッグである。なお、車体1の車体全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下垂直方向をZ方向と仮定する。
【0016】
図示のようにECU2は、車体1中央部の運転者が搭乗する座席近傍に取り付けられ、ECU加速度センサ3を備えている。ECU加速度センサ3は、車体1のX方向の加速度を検出するようにECU2のプリント基板上に取り付けられている。車体1のフロント部の右側ヘッドランプ近傍には、右側フロント加速度センサ4が車体1のX方向の加速度を検出するように取り付けられている。同様に、車体1のフロント部の左側ヘッドランプ近傍には、左側フロント加速度センサ5が車体1のX方向の加速度を検出するように取り付けられている。右側フロント加速度センサ4の検出信号は、右側フロント加速度センサ用通信ケーブル6を介してECU2に入力され、また左側フロント加速度センサ5の検出信号は、左側フロント加速度センサ用通信ケーブル7を介してECU2に入力される。車体1の車室内には運転手を衝突の衝撃から保護する運転席エアバッグ8と、助手席搭乗者を衝突の衝撃から保護する助手席エアバッグ9が取り付けられている。
【0017】
図2は、実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図において、2はECU、3はECU加速度センサ、4は右側フロント加速度センサ、5は左側フロント加速度センサ、10a〜10fは一次遅れ要素で低域ドリフトを抑制した積分器、11はECU加速度信号、12はECU速度信号、13はECU変位信号、14は右側フロント加速度信号、15は右側フロント速度信号、16は右側フロント変位信号、17は左側フロント加速度信号、18は左側フロント速度信号、19は左側フロント変位信号、20は右側衝突力演算手段、21は左側衝突力演算手段、22は右側衝突力推定値、23は左側衝突力推定値、24は右側閾値判定手段(衝突判定手段)、25は左側閾値判定手段(衝突判定手段)、26は右側閾値判定信号、27は左側閾値判定信号、28は衝突判定手段、29は一段目衝突判定信号、30は二段目衝突判定信号、31は一段目エアバッグ点火装置、32は二段目エアバッグ点火装置、33は一段目点火信号、34は二段目点火信号である。
【0018】
次に、動作について説明する。
図3及び図4は、実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。図2に示した乗員保護装置の起動判定装置の動作を、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。ECU加速度センサ3は、車体1の中央部に生じたX方向の加速度を検出するとECU加速度信号11を出力する。ECU2は、このECU加速度信号11を入力し(ステップST101)、当該ECU加速度信号11を積分器10aによって積分してECU速度信号12を求め(ステップST102)、さらにECU速度信号12を積分器10bによって積分してECU変位信号13を求める(ステップST103)。
【0019】
右側フロント加速度センサ4は、車体1の右側フロント部分に生じたX方向の加速度を検出すると右側フロント加速度信号14を出力する。ECU2は、この右側フロント加速度信号14を入力し(ステップST104)、この右側フロント加速度信号14を積分器10cによって積分して右側フロント速度信号15を求め(ステップST105)、さらに右側フロント速度信号15を積分器10dによって積分して右側フロント変位信号16を求める(ステップST106)。
【0020】
左側フロント加速度センサ5は、車体1の左側フロント部に生じたX方向の加速度を検出すると左側フロント加速度信号17を出力する。ECU2は、この左側フロント加速度信号17を入力し(ステップST107)、この左側フロント加速度信号17を積分器10eによって積分して左側フロント速度信号18を求め(ステップST108)、さらに左側フロント速度信号18を積分器10fによって積分して左側フロント変位信号19を求める(ステップST109)。
【0021】
右側衝突力演算手段20は、ECU加速度信号11、ECU速度信号12、ECU変位信号13、右側フロント加速度信号14、右側フロント速度信号15、及び右側フロント変位信号16を入力して演算を行い、右側衝突力推定値22を求める(ステップST110)。同様に左側衝突力演算手段21は、ECU加速度信号11、ECU速度信号12、ECU変位信号13、左側フロント加速度信号17、左側フロント速度信号18、及び左側フロント変位信号19を入力して演算を行い、左側衝突力推定値23を求める(ステップST111)。なお、ECU加速度センサ3、右側フロント加速度センサ4、及び左側フロント加速度センサ5による検出動作が随時行われ、前述のステップST101〜ST109、その後のステップST110またはステップST111の過程が同時に、あるいは逐次処理され、上記説明の順に処理されるとは限らない。
【0022】
右側衝突力推定値22は逐次右側閾値判定手段24へ入力され、また同様に左側衝突力推定値23は逐次左側閾値判定手段25へ入力される。右側閾値判定手段24及び左側閾値判定手段25には、各エアバッグの展開レベルを多段階に制御するように複数の閾値が設定されている。
【0023】
右側閾値判定手段24は、入力した右側衝突力推定値22が所定の閾値レベルを超えているか否かを判定し、この判定結果を示す右側閾値判定信号26を衝突判定手段28へ出力する。また左側閾値判定手段27は、入力した左側衝突力推定値23が所定の閾値レベルを超えているか否かを判定し、この判定結果を示す左側閾値判定信号27を衝突判定手段28へ出力する。
【0024】
図2に示した乗員保護装置の起動判定装置は、例えば、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9の展開レベルを二段階に制御する。右側閾値判定手段24は、入力した右側衝突力推定値22が二段目閾値を超えた値か否かを判定し(ステップST201)、この閾値を超えていれば当該閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26を衝突判定手段28へ出力する。
【0025】
右側閾値判定手段24は、ステップST201の二段目閾値を超えたか否かの判定処理と共に、一段目閾値を超えたか否かを判定する(ステップST204)。一段目閾値を超えていれば当該閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26を衝突判定手段28へ出力する。
【0026】
なお、右側閾値判定手段24がステップST201の判定処理において、右側衝突力推定値22が二段目閾値を超えていないと判定した場合、またステップST204において、右側衝突力推定値22が一段目閾値を超えていないと判定した場合には、ECU2はECU加速度信号11の入力(ステップST101)、右フロント加速度信号14の入力(ステップST104)、左フロント加速度信号17の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0027】
左側閾値判定手段25は、入力した左側衝突力推定値23について前述の右側閾値判定手段24と同様に判定処理を行い、左側閾値判定信号27を衝突判定手段28へ出力する。なお、左側閾値判定手段25が、いずれの閾値も超えていないと判定した場合には、ECU2はECU加速度信号の入力(ステップST101)、右側フロント加速度信号の入力(ステップST104)、左側フロント加速度信号の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0028】
衝突判定手段28は、右側閾値判定信号26と左側閾値判定信号27とを入力して論理演算を行い、右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27のいずれか一方または両方が一段目閾値を越えた旨を示している場合には、一段目点火装置31をONとする一段目衝突判定信号29を出力し(ステップST205)、また、右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27のいずれか一方または両方が、二段目閾値を超えた旨を示している場合には、一段目点火装置31をONとする一段目衝突判定信号29と、二段目点火装置32をONとする二段目衝突判定信号30とを出力する(ステップST202)。
【0029】
衝突判定手段28は、入力した右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27が、いずれも一段目閾値を超えていない場合には、一段目衝突判定信号29及び二段目衝突判定信号30を、乗員保護装置を起動させないOFF信号として出力する。また入力した右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27の、いずれか一方、あるいは両方が一段目閾値を超えている場合には、一段目衝突判定信号29のみ乗員保護装置を起動させるON信号とし、二段目衝突判定信号30をOFF信号として出力する。また入力した右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27の、いずれか一方、あるいは両方が二段目閾値を超えている場合には、一段目衝突判定信号29及び二段目衝突判定信号30をON信号として出力する。
【0030】
一段目衝突判定信号29がON信号になると一段目点火装置31が作動し、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9が一段目のレベルで展開される(ステップST206)。このように車体1に加えられた衝撃が中程度の場合には、多少緩くエアバッグを膨らませて搭乗者を保護する。また、一段目衝突判定信号29及び二段目衝突判定信号30がON信号になると、一段目点火装置31及び二段目点火装置32が作動し、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9が一段目及び二段目のレベルで展開される(ステップST203)。このように車体1に大きな衝撃が加えられた場合には、最大限に運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9とを膨らませて搭乗者を保護する。
【0031】
図5は、実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置が行う衝突判定の対象となる衝突形態を示す説明図である。図において、1は車体、40はコンクリートなどの剛体、41は剛性を有する円柱状の柱、42はアルミハニカムなどの車体模擬、43は大型動物である。図5(a)は、車体1が壁状の剛体40に正面から衝突する正突を示すものである。図5(b)は、コンクリートブロックなどのような形状をした剛体40に、車体1のフロント部の左右いずれか半分が衝突するOffset Rigid Barrier(以下、ORBと記載する)衝突を示すものである。図5(c)はラフロード走行を示すものである。図5(d)は、コンクリートや大型トラックなどの剛体40と衝突した際に、例えば大型トラックの下側に車体1が潜り込むアンダーライド衝突を示すものである。
【0032】
図5(e)は、電柱などの柱41に正面から衝突するポール突を示すものである。図5(f)は、電柱などの柱41が車体1の中央から左右いずれかにそれて衝突するオフセットポール突である。図5(g)は、コンクリートの壁などの剛体40に車体1が斜めに衝突する斜突を示すものである。図5(h)は、反対車線を対向して走ってきた(壁などに比べて柔らかい)車体1とフロント部の半分が正面衝突するOffset Deformable Barrier(以下、ODBと記載する)衝突を示すものである。図5(i)は、牛や馬などの大型動物43と正面衝突する動物衝突を示すものである。これらの様々な衝突形態により、搭乗者へ加わる衝撃レベルは一様でないことから、その衝撃レベルに応じてエアバッグの展開時間と展開レベルを制御する必要がある。
【0033】
次に、図2に示した右側衝突力演算手段20及び左側衝突力演算手段21が行う演算の一例を説明する。
図6は、実施の形態1による乗員保護装置を備えた車両1が衝突したときに作用する要素をモデル化した説明図である。これは図1に示した車体1を四つの質点と各ばね・ダンパでモデル化したものである。図において、50は壁や対向車などの衝突物体、51はf1の値を有する右側フロント衝突力、52はf2の値を有する左側フロント衝突力、53はm1の値を有する右側フロント等価質量、54はm2の値を有する左側フロント等価質量、55はk1の定数値を有する右側フロント等価ばね、56はc1の定数値を有する右側フロント等価ダンパ、57はk2の定数値を有する左側フロント等価ばね、58はc2の定数値を有する左側フロント等価ダンパ、59はm3の値を有する車体中央部等価質量、60はk3の定数値を有する車体中央部等価ばね、61はc3の定数値を有する車体中央部等価ダンパ、62はm4の値を有する車体後方部等価質量、63はx1の値を有する右側フロント変位、64はx2の値を有する左側フロント変位、65はx3の値を有する車体中央部変位、66はx4の値を有する車体後方部変位である。このように車体1のモデルを仮定した場合、車体1が壁などの衝突物体50に衝突するときの運動方程式は、次の(1)式で記述される。
【数1】
【0034】
(1)式の第一式より、右側フロント加速度の値に右側フロント等価質量53の値m1を乗じた第一項と、右側フロント速度の値と車体中央部速度の値との差分に右側フロント等価ダンパ56の定数値c1を乗じた第二項と、右側フロント変位63の値x1と車体中央部変位65の値x3との差分に右側フロント等価ばね55の定数値k1を乗じた第三項とを加算することで、右側衝突力推定値22に相当する右側フロント衝突力51の値f1が求められる。
【0035】
同様に、(1)式の第二式より、左側フロント加速度の値に左側フロント等価質量54の値m2を乗じた第一項と、左側フロント速度の値と車体中央部速度の値との差分に左側フロント等価ダンパ58の定数値c2を乗じた第二項と、左側フロント変位64の値x2と車体中央部変位65の値x3との差分に左側フロント等価ばね57の定数値k2を乗じた第三項とを加算することで、左側衝突力推定値23に相当する左側フロント衝突力52の値f2が求められる。なお、車体1の中央部に発生する衝突力は(1)式の第三式から、また車体1の後方部に発生する衝突力は(1)式の第四式からわかるように“0”の値となる。
【0036】
以上のように、実施の形態1によれば、車体1に右側フロント加速度センサ4と左側フロント加速度センサ5とを備えたので、車体1が衝突した際に発生する右側フロント部の衝突力推定値51の値f1と、左側フロント部の衝突力推定値52の値f2とを演算で求めることができ、様々な衝突形態において、搭乗者に加えられる衝撃レベルを適正に判定してエアバッグの多段展開を適確に制御できるという効果がある。
【0037】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図2に示すものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、35は衝突判定信号、36はエアバッグ点火装置、37は点火信号、70は右側変化率演算手段、71は左側変化率演算手段、72は右側変化率信号、73は左側変化率信号、74は右側フロント加速度センサ4の検出結果から求めた右側変化率信号72に応じて閾値を変更する右側閾値判定手段(衝突判定手段)、75は左側フロント加速度センサ5の検出結果から求めた左側変化率信号73に応じて閾値を変更する左側閾値判定手段(衝突判定手段)である。
【0038】
なお、図7では図示を簡略化するため、衝突判定手段28から一段展開の衝突判定信号35を出力し、エアバッグ点火装置36が衝突判定信号35に基づいて点火信号37を運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9に出力する構成を例示しているが、図2に示す衝突判定手段28のように、多段展開の衝突判定を行って一段目点火装置31及び二段目点火装置32の制御を行うように構成してもよい。
【0039】
次に動作について説明する。
図8及び図9は、実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。図3及び図4に示したフローチャートと同一あるいは相当する過程に同じ符号を付し、その過程の動作説明を省略する。実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置は、図3及び図4に示したステップST101〜ST111の過程と同様に処理を行い、右側衝突力演算手段20を用いて右側衝突力推定値22を求めた後(ステップST110)、当該右側衝突力推定値22を右側変化率演算手段70へ入力し、所定の演算により車体1の右側フロント部に加えられた衝突力の経時変化を示す右側変化率信号72を求める(ステップST301)。
【0040】
また、左側衝突力演算手段21を用いて左側衝突力推定値23を求めた後(ステップST111)、当該左側衝突力推定値23を左側変化率演算手段71へ入力し、所定の演算により車体1の左側フロント部に加えられた衝突力の経時変化を示す左側変化率信号73を求める(ステップST302)。
【0041】
右側閾値判定手段74は、右側衝突力演算手段20から右側衝突力推定値22を入力し、また右側変化率演算手段70から右側変化率信号72を入力して、右側変化率信号72が示す変化率Gr1に基づいて、後述するように閾値を変化させ、右側衝突力推定値22の値f1が当該閾値を超えたか否かを判定する。また同様に、左側閾値判定手段75は、左側衝突力演算手段21から左側衝突力推定値23を入力し、また左側変化率演算手段71から左側変化率信号73を入力して、左側変化率信号73が示す変化率Gr2に基づいて閾値を変化させ、左側衝突力推定値23の値f2が当該閾値を超えたか否かを判定する(ステップST303)。
【0042】
右側閾値判定手段74及び左側閾値判定手段75において、各衝突推定値が閾値を超えていないと判定された場合には、ECU2はECU加速度信号11の入力(ステップST101)、右側フロント加速度信号14の入力(ステップST104)、左側フロント加速度信号17の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0043】
右側閾値判定手段74は、ステップST303において、右側衝突力推定値22が閾値を超えていると判定した場合には、閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26を出力する。同様に左側閾値判定手段75は、ステップST303において、左側衝突力推定値23が閾値を超えていると判定した場合には、閾値を超えた旨を示す左側閾値判定信号27を出力する。
【0044】
図7に示す衝突判定手段28は、右側閾値判定信号26と左側閾値判定信号27とを入力して論理演算を行い、右側閾値判定信号26及び左側閾値判定信号27のいずれか一方または両方が閾値を越えた旨を示している場合には、エアバッグ点火装置36をONとする衝突判定信号35を出力する(ステップST304)。ONを指示する衝突判定信号35を入力したエアバッグ点火装置36は、点火信号37を出力し、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9を展開させる(ステップST305)。
【0045】
次に、右側閾値判定手段74及び左側閾値判定手段75において行われる判定処理を説明する。
図10は、車体1に加えられた衝突力の経時変化を示す説明図である。図10(a)は低速正突系の衝突として、硬い壁などに車体1のフロント部分が正面から低速で衝突した場合に車体1に加えられる力の経時波形を示し、図10(b)は高速ODB系の衝突として、対向車との正面衝突などのように、柔らかい相手と高速で衝突した場合に車体1に加えられる力の経時波形を示したものである。車体1に加えられた衝撃の大きさは、図10(a),(b)に斜線部で示した力の経時変化を示す波形の面積、即ち積分値で表される。なお、図10(a),(b)に示したグラフの縦軸に示す力の単位は、例えばニュートン[N]で、横軸の時間の単位は、例えば秒[sec.]である。
【0046】
図10(a)に示す低速正突系の力の最大値F1は、図10(b)に示す高速ODB系の最大値F2に比べて大きいが、低速正突系は力が加えられている時間がτ1で、高速ODB系で力が加えられている時間τ2に比べて短い。つまり、図10(a)に示す面積S1は、図10(b)に示す面積S2に比べて小さくなる。このような2種類の衝突系において、搭乗者が受ける衝撃は高速ODB系の衝突が低速正突系の衝突に比べて明らかに大きい。エアバッグ展開を司る衝突判定は、例えば低速正突系ではエアバッグ展開OFF、高速ODB系ではエアバッグ展開ONとなるように判定することが望ましい。
【0047】
エアバッグの起動判定を力の最大値F1,F2に基づいて行うと、低速正突系の最大値F1が、高速ODB系の最大値F2より大きいことから好ましくない判定結果が得られる。また、面積S1と面積S2を比較すると面積S2が明らかに大きいことから、好ましい判定結果が得られる反面、面積S2が求められるまで時間が掛かることから速やかな判定が難しくなる。
【0048】
実施の形態2の乗員保護装置の起動判定装置では、図10に示すように力の経時変化波形の傾き、即ち力の時間成分の変化率に着目して起動判定を行う。図10(a)に示す波形の傾きGraと、図10(b)に示す波形の傾きGrbとを比較すると、明らかに傾きGraが傾きGrbより大きく、急峻な変化を示している。このような条件を衝突判定に加味して、例えば、力の傾き、即ち変化率Grが大きい場合は硬いものに衝突したと判定し、衝突判定の閾値を上げる。一方、力の変化率Grが小さい場合は柔らかいものに衝突したと判定して、衝突判定の閾値を下げるように処理すると、適切で俊敏なエアバッグの起動が可能となる。
【0049】
以上のように、実施の形態2によれば、衝突力の時間成分の変化率を求める右側変化率演算手段70及び左側変化率演算手段71と、衝突力の変化率に基づいて閾値を変化させて衝突力推定値の判定を行う右側閾値判定手段74及び左側閾値判定手段75とを備えたので、車両が壁などの硬いものに衝突したのか、対向車線を走行してきた車両などの柔らかいものに衝突したのかを判定して、短時間で衝突形態に応じた乗員保護装置の起動判定が可能になるという効果がある。
【0050】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図2及び図7に示した乗員保護装置の起動判断装置と同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、80は衝突形態識別手段、81は右側閾値切り替え信号、82は左側閾値切り替え信号、83は右側閾値判定手段(衝突判定手段)、84は左側閾値判定手段(衝突判定手段)である。
【0051】
なお、図11では図示を簡略化するため、図7に示したものと同様に衝突判定手段28から一段展開の衝突判定信号35を出力し、エアバッグ点火装置36が衝突判定信号35に基づいて点火信号37を運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9に出力する構成を例示しているが、図2に示す衝突判定手段28のように、多段展開の衝突判定を行って一段目点火装置31及び二段目点火装置32の制御を行うように構成してもよい。
【0052】
次に、動作について説明する。
図12及び図13は、実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。図3及び図4、また図8及び図9に示したフローチャートと同一あるいは相当する過程に同じ符号を付し、その過程の動作説明を省略する。
【0053】
実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置は、図8及び図9に示したステップST101から、ステップST301・ステップST302までの過程を前述のように処理し、ECU加速度センサ3から取得したECU加速度信号11、積分器10aによって求めたECU速度信号12、積分器10bによって求めたECU変位信号13、右側フロント加速度センサ4から取得した右側フロント加速度信号14、積分器10cによって求めた右側フロント速度信号15、積分器10dによって求めた右側フロント変位信号16、左側フロント加速度センサ5から取得した左側フロント加速度信号17、積分器10eによって求めた左側フロント速度信号18、積分器10fによって求めた左側フロント変位信号19、右側衝突力演算手段20によって求めた右側衝突力推定値22、左側衝突力演算手段21によって求めた左側衝突力推定値23、右側変化率演算手段70によって求めた右側変化率信号72、及び左側変化率演算手段71によって求めた左側変化率信号73を衝突形態識別手段80へ入力し(図11では、衝突形態識別手段80へ入力される各入力信号線の図示を省略する)、当該衝突形態識別手段80において、自ら記憶している各衝突形態と対応させた加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の時間成分の変化率と前記各信号が示す値とを比較し、また所定の演算を行うことにより各加速度センサの検出結果が、いかなる衝突形態に該当するか判定する(ステップST401)。
【0054】
衝突形態識別手段80は、例えば図5に示した衝突形態の中から該当するものを選択し、当該衝突形態に適した閾値を演算によって求め、この閾値への変更を指示する右側閾値切り替え信号81と左側閾値切り替え信号82とを生成する(ステップST402)。右側閾値判定手段83は、右側閾値切り替え信号81を入力して、判定に用いる閾値を衝突形態に適したものに変更し、また右側変化率信号72を用いて右側衝突力推定値22が当該閾値を超えたか否かを判定する。また同様に、左側閾値判定手段84は、左側閾値切り替え信号82を入力して、判定に用いる閾値を衝突形態に適したものに変更し、また左側変化率信号73を用いて左側衝突力推定値23が当該閾値を超えたか否かを判定する(ステップST303)。当該閾値を超えていない場合には、ECU2はECU加速度信号11の入力(ステップST101)、右フロント加速度信号14の入力(ステップST104)、左フロント加速度信号17の入力(ステップST107)の各過程と、それ以降の過程を順次繰り返す。
【0055】
右側閾値判定手段83及び左側閾値判定手段84において、閾値を超えていると判定された場合には、前述の説明と同様に閾値を超えた旨を示す右側閾値判定信号26・左側閾値判定信号27が、それぞれの閾値判定手段から出力され、衝突判定手段28によってエアバッグ点火装置36をONとする衝突判定信号35が生成され(ステップST304)、エアバッグ点火装置36によって運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が展開される(ステップST305)。
【0056】
以上のように、実施の形態3によれば、様々な衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶しておき、各加速度センサから検出された信号と記憶されているものとを比較演算して衝突形態を判定し、また、判定した衝突形態に適した閾値を演算によって求め、右側閾値判定手段83及び左側閾値判定手段84において用いられる閾値を衝突形態に適したものへ変更させる衝突形態識別手段80を備えたので、適切な衝突判定を短時間で行うことができるという効果がある。
【0057】
実施の形態4.
図14は、この発明の実施の形態4による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。図2、図7、及び図11に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、90は右側波形時間差演算手段、91は左側波形時間差演算手段、92は右側波形時間差信号、93は左側波形時間差信号、94は右側閾値判定手段(衝突判定手段)、95は左側閾値判定手段(衝突判定手段)である。
【0058】
なお、図14では図示を簡略化するため、図7に示したものと同様に衝突判定手段28から一段展開の衝突判定信号35を出力し、エアバッグ点火装置36が衝突判定信号35に基づいて点火信号37を運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9に出力する構成を例示しているが、図2に示す衝突判定手段28のように、多段展開の衝突判定を行って一段目点火装置31及び二段目点火装置32の制御を行うように構成してもよい。
【0059】
次に、動作について説明する。
実施の形態4による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態3で説明したものに右側波形時間差演算手段90と左側波形時間差演算手段91とを備えたもので、その他の部分の動作は実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置と同様である。ここでは、実施の形態3において説明したものと同様な処理動作の説明を省略し、実施の形態4による乗員保護装置の起動判定装置の特徴となる動作について説明する。
【0060】
右側波形時間差演算手段90は、右側フロント加速度センサ4から右側フロント加速度信号14を取得し、またECU加速度センサ3からECU加速度信号11を取得して、当該各加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形を求め、例えば、ECU加速度信号11がピーク値となった時間と右側フロント加速度信号14がピーク値となった時間との差を演算して右側波形時間差信号92を生成する。また同様に、左側波形時間差演算手段91は、左側フロント加速度センサ5から左側フロント加速度信号17を取得し、またECU加速度センサ3からECU加速度信号11を取得して、当該各加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形を求め、例えば、ECU加速度信号11がピーク値となった時間と左側フロント加速度信号17がピーク値となった時間との差を演算して左側波形時間差信号93を生成する。
【0061】
右側閾値判定手段94は、右側波形時間差信号92を入力し、右側変化率演算手段70から右側変化率信号72を入力して、また衝突形態識別手段80から右側閾値切り替え信号81を入力して、当該入力した各信号に基づいて閾値を変更し、右側衝突力推定値22が当該閾値を超えたか否かを判定する。また同様に、左側閾値判定手段95は、左側波形時間差信号93を入力し、左側変化率演算手段71から左側変化率信号73を入力して、また衝突形態識別手段80から左側閾値切り替え信号82を入力して、当該入力した各信号に基づいて閾値を変更し、左側衝突力推定値23が当該閾値を超えたか否かを判定する。
【0062】
次に、各加速度センサが検出した加速度を示す加速度波形の時間差に基づいて行う衝突形態の判定を説明する。
図15は、衝突形態により車体1の各部分で検出される加速度の経時変化を示す説明図である。図15(a)は車体が硬い物体と正面衝突する正突系の衝突において、また図15(b),(c)は柔らかい物体あるいは柱などに車体の一部が衝突するソフトクラッシュ系の衝突において、ECU加速度センサ3によって検出される加速度と右側フロント加速度センサ4・左側フロント加速度センサ5によってそれぞれ検出される加速度の経時変化を表す波形を示したものである。衝突形態毎に図示した波形の比較結果を次の表1にまとめて記載する。
【表1】
【0063】
図15及び表1からわかるように、例えば(a)正突系と(b)ソフトクラッシュ系(センターポール突,アンダーライド突)とを比較すると、右側フロント加速度・左側フロント加速度は同様に経時変化し差異が明確に現れない。またECU加速度は、(a)正突系の衝突では衝突初期から加速度波形が大きくなるが、(b)ソフトクラッシュ系(センターポール突,アンダーライド突)の衝突では加速度波形が衝突初期で小さく、衝突中期になって大きくなる。このように、車体1のフロント部に備えられた右側フロント加速度センサ4・左側フロント加速度センサ5によって検出された加速度波形と、車体1の中央部に備えられたECU加速度センサ3によって検出された加速度波形との時間差、即ち位相差により代表的な衝突形態が分類できる。また、右側フロント加速度センサ4によって検出された加速度波形と、左側フロント加速度センサ5によって検出された加速度波形とを比較することによって、図15及び表1に示したようにソフトクラッシュ系のうち、(b)のセンターポール突,アンダーライド突と、(c)のオフセットポール突,斜突,ODB突とを識別することができる。
【0064】
図16及び図17は、衝突力と車体1の各部分で検出される加速度との関係を示す説明図である。図16(a)は、衝突によって車体1のフロント部分に加えられる衝突力の経時変化を示したもので、時間τの間にピーク値f1を有する正弦波の半波のように変化する衝突力を表している。図16(b)は、車体1を簡単な二つの質点でモデル化した車体モデルを示したものである。
【0065】
図17は、図16(a)に示した正弦半波状の衝突力f1が、図16(b)に示した車体モデルの車体フロント部に加えられた際に、車体フロント部に発生する加速度の経時変化と車体中央部に発生する加速度の経時変化を示したものである。図17(a)は高速正突をシミュレーションしたもので、半波時間τが2msと短い間衝突力が加えられた場合の解析結果を示したものである。ここでは数値例としてm1=100kg、m2=1000kg、一次固有振動数fn=100Hz、減衰比ζ=0.2としている。図17(b)はソフト衝突をシミュレーションしたもので、半波時間τが10msと長い間衝突力が加えられた場合の解析結果を示したものである。
【0066】
図17(a),(b)からわかるように、半波時間τが長いほど、つまり車体1に長い間衝突力が加えられると、車体フロント部に発生する加速度ピーク値と車体中央部に発生する加速度ピーク値との時間差、即ち位相差が大きくなる。このことから衝突形態が判定できる。
【0067】
以上のように、実施の形態4によれば、右側フロント加速度センサ4が検出する加速度の経時変化を示す波形とECU加速度センサ3が検出する加速度の経時変化を示す波形の時間差を演算する右側波形時間差演算手段90と、左側フロント加速度センサ5が検出する加速度の経時変化を示す波形とECU加速度センサ3が検出する加速度の経時変化を示す波形の時間差を演算する左側波形時間差演算手段91とを備えたので、硬い物体への前面衝突と他の車体など柔らかい物体への衝突とを適確に識別して衝突判定が行えるという効果がある。
【0068】
実施の形態5.
この発明の実施の形態5による車両の乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4で説明した、いずれかの乗員保護装置の起動判定装置のように構成されるもので、ここでは構成の説明を省略する。
【0069】
次に動作について説明する。
ここでは実施の形態1ないし実施の形態4で説明したものと同様な動作について、その説明を省略し、実施の形態5による乗員保護装置の起動判定装置の特徴となる動作を説明する。
【0070】
実施の形態5による乗員保護装置の起動判定装置が備える右側衝突力演算手段20、左側衝突力演算手段21、右側変化率演算手段70、及び左側変化率演算手段71において行われる演算を、次の(2)式に示す。
【数2】
右側衝突力演算手段20は、(2)式の第一式に示すように右側フロント速度信号15が示す値からECU速度信号12が示す値を減算した値と、予め設定されている図6に示す右側フロント等価ダンパ56の定数c1との積を求め、右側衝突力推定値22の値f1に近似する値を算出する。同様に、左側衝突力演算手段21は、(2)式の第二式に示すように左側フロント速度信号18が示す値からECU速度信号12が示す値を減算した値と、予め設定されている図6に示す左側フロント等価ダンパ58の定数c2との積を求め、左側衝突力推定値23の値f2に近似する値を算出する。
【0071】
右側変化率演算手段70は、(2)式の第三式に示すように右側フロント加速度信号14が示す値からECU加速度信号11が示す値を減算した値と、図6に示す右側フロント等価ダンパ56の定数c1との積を求め、右側変化率信号72が示す値Gr1を算出する。同様に、左側変化率演算手段71は、(2)式の第四式に示すように左側フロント加速度信号17が示す値からECU加速度信号11が示す値を減算した値と、図6に示す左側フロント等価ダンパ58の定数c2との積を求め、左側変化率信号73が示す値Gr2を算出する。
【0072】
このように、(2)式を用いて求めたf1、f2、Gr1、及びGr2の各値は、厳密に演算した場合の値に近似するものなので、各衝突力推定値の精度は低いものとなるが、衝突判定の精度を劣化させない程度のものである。
【0073】
以上のように、実施の形態5によれば、右側衝突力演算手段20が右側フロント速度信号15とECU速度信号12を用いて右側衝突力推定値22を求め、左側衝突力演算手段21が左側フロント速度信号18とECU速度信号12を用いて左側衝突力推定値23を求め、右側変化率演算手段70が右側フロント加速度信号14とECU加速度信号11を用いて右側変化率信号72を求め、左側変化率演算手段71が左側フロント加速度信号17とECU加速度信号11を用いて左側変化率信号73を求めるようにしたので、演算量が少なくなることから各演算手段の負担が軽減され、なおかつ適切な衝突判定が行えることから、安価であるところの演算処理能力が劣るECUを使用して適切な衝突判定ができるという効果がある。
【0074】
実施の形態6.
図18は、この発明の実施の形態6による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1に示した乗員保護装置の起動判定装置と同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、96は中央フロント加速度センサ、97は中央フロント加速度センサ96とECU2とを接続する中央フロント加速センサ用通信ケーブルである。なお、図18に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。また、図1に示した車体1と同様に、車体1の全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下方向をZ方向と仮定する。
【0075】
このように、実施の形態6による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4において説明した右側フロント加速度センサ4、左側フロント加速度センサ5、及びECU加速度センサ3を備えた構成に、車体1フロント部の中央にX方向の加速度を検出する中央フロント加速度センサ96を加えて構成したものである。
【0076】
次に、動作について説明する。
実施の形態6による乗員保護装置の起動判定装置が備えるECU2は、中央フロント加速度センサ96によって検出された中央フロント加速度を、右側フロント加速度センサ4あるいは左側フロント加速度センサ5によって検出されたそれぞれのフロント加速度と同様に処理し、運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9とを展開させる判定に用いる。ここでは実施の形態1ないし実施の形態5において説明したECU2と同様な処理動作について、その詳細な動作説明を省略する。
【0077】
以上のように、実施の形態6によれば、車体1フロント部に中央フロント加速度センサ96と右側フロント加速度センサ4と左側フロント加速度センサ5とを備えてECU2が衝突判定を行うようにしたので、左右のフロント加速度センサだけでは識別が困難であった車体1の前面中央部分からの正突・オフセット衝突・斜突と、柱等と車体1の中央部分との衝突を良好に検出して衝突形態を正しく識別することができ、適切な衝突判定ができるという効果がある。
【0078】
実施の形態7.
図19は、この発明の実施の形態7による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1及び図18に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。なお、図19に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。図19に示した実施の形態7による乗員保護装置の起動判定装置は、図18に示した実施の形態6による乗員保護装置の起動判定装置から右側フロント加速度センサ4及び左側フロント加速度センサ5が除かれたもので、その他の構成及び動作は図18に示したものと同様である。ここでは詳細な構成及び動作の説明を省略する。
【0079】
以上のように、実施の形態7によれば、車体1フロント部分の中央にフロント加速度センサ96を備えてECU2が衝突判定を行うようにしたので、簡素な構成として故障要因を少なくすると共にコストの低減が図れるという効果がある。
【0080】
実施の形態8.
図20は、この発明の実施の形態8による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、100は右側バック加速度センサ、101は左側バック加速度センサ、102は右側バック加速度センサ100とECU2とを接続する右側バック加速度センサ用通信ケーブル、103は左側バック加速度センサ101とECU2とを接続する左側バック加速度センサ用通信ケーブルである。なお、図20に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。また、図1に示した車体1と同様に、車体1の全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下方向をZ方向と仮定する。
【0081】
このように、実施の形態8による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4において説明した右側フロント加速度センサ4、左側フロント加速度センサ5、及びECU加速度センサ3を備えた構成に、車体1後方部にX方向の加速度を検出する右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101を加えて構成したものである。また、実施の形態8による乗員保護装置の起動判定装置に用いられるECU2は、右側フロント加速度センサ4または左側フロント加速度センサ5によって検出された各フロント加速度を処理する積分器10a〜10f、右側衝突力演算手段20、左側衝突力演算手段21、右側変化率演算手段70、左側変化率演算手段71、及び各実施の形態において説明された左右の閾値判定手段と同様に、右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101によって検出された各バック加速度を処理する各手段を備えている。
【0082】
次に、動作について説明する。
実施の形態8による乗員保護装置の起動判定装置は、右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101によって検出された左右のバック加速度を示す信号をECU2へ入力し、右側フロント加速度センサ4または左側フロント加速センサ5によって検出された左右のフロント加速度と同様に演算処理を行い、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9の起動判定を行う。ここでは実施の形態1ないし実施の形態5において説明したECU2の処理動作と同様に行われる詳細な動作説明を省略する。
【0083】
以上のように、実施の形態8によれば、車体1のフロント部に右側フロント加速度センサ4及び左側フロント加速度センサ5を、また車体中央部にECU加速度センサ3を、また車体後方部に右側バック加速度センサ100及び左側バック加速度センサ101を備えたので、車体1の前方衝突だけでなく後方衝突についても衝突力が推定でき、衝突形態に適した衝突判定ができるという効果がある。
【0084】
実施の形態9.
図21は、この発明の実施の形態9による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を付し、その説明を省略する。図において、110は車体フロント部フレーム構造体、111は右側フロント力センサ、112は左側フロント力センサ、113は右側フロント力センサ111とECU2とを接続する右側フロント力センサ用通信ケーブル、114は左側フロント力センサ112とECU2とを接続する左側フロント力センサ用通信ケーブルである。なお、図21に示した車体1には、図1に示したものと同様に図示されない運転席エアバッグ8と助手席エアバッグ9が備えられている。また、図1に示した車体1と同様に、車体1の全長を表す方向をX方向とし、車体1の車幅を表す方向をY方向とし、車体1の車高を表す上下方向をZ方向と仮定する。
【0085】
このように、実施の形態9による乗員保護装置の起動判定装置は、実施の形態1ないし実施の形態4において説明した右側フロント加速度センサ4、左側フロント加速度センサ5に代えて、車体1フロント部を構成する車体フロント部フレーム構造体110の左右側方部位に、X方向に作用する衝突力を検出する右側フロント力センサ111及び左側フロント力センサ112を備えたものである。
【0086】
次に、動作について説明する。
実施の形態9による乗員保護装置の起動判定装置は、右側フロント力センサ111及び左側フロント力センサ112を用いて車体1に加えられた衝突力を測定し、この測定値を入力したECU2が、実施の形態1ないし実施の形態4において説明したECU2と同様に閾値判定及び衝突判定を行い、運転席エアバッグ8及び助手席エアバッグ9を展開させるもので、ここでは当該ECU2の詳細な動作説明を省略する。
【0087】
ECU加速度センサ3が検出したECU加速度信号11から、例えば積分器10aによってECU速度信号12を求め、さらにECU速度信号12から積分気10bによってECU変位信号13を求める。これらのECU加速度信号11、ECU速度信号12、ECU変位信号13及び右側フロント力センサ111から出力された衝突力を右側衝突力演算手段20へ入力し、右側衝突力推定値を所定の演算によって求める。あるいは右側フロント力センサ111から出力された右側フロント衝突力を、例えば直接右側閾値判定手段24へ入力する。右側閾値判定手段24以降の処理・動作は実施の形態1ないし実施の形態4と同様あるいは相当するように行われる。これは左側フロント力センサ112から出力された左側フロント衝突力についても同様に処理・動作がなされ、衝突判定手段28が行う衝突判定に用いられる。
【0088】
以上のように、実施の形態9によれば、車体フロント部フレーム構造体110に右側フロント力センサ111及び左側フロント力センサ112を備えたので、直接車体1に加えられた衝突力が測定でき、測定精度が良好になることから様々な衝突形態に応じて適切な衝突判定を短時間で行えるという効果がある。
【0089】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るように構成したので、対向車両や電柱と車体前面の半分が衝突した場合や、壁面に車体が斜めに衝突した場合を的確に検出して乗員保護装置を起動させることができるという効果がある。
【0090】
この発明によれば、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力経時変化率及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるように構成したので、衝突した対象物を判定して適切な乗員保護装置の起動判定が行なえるという効果がある。
【0091】
この発明によれば、制御手段に予め各衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶している衝突形態識別手段を備え、右側フロント加速度センサ、左側フロント加速度センサ、及び中央部加速度センサからそれぞれ検出された加速度と、当該加速度から求めた各速度及び各変位と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値と、右側変化率演算手段から出力された右側衝突力経時変化率と、左側変化率演算手段から出力された左側衝突力経時変化率が入力された衝突力演算手段が、自ら記憶している各内容と比較して衝突形態を判定し、衝突判定手段が衝突形態識別手段の判定結果に基づいて乗員保護装置の起動を制御するように構成したので、様々な衝突形態に応じて適切な乗員保護装置の起動判定を短時間で行うことができるという効果がある。
【0092】
この発明によれば、制御手段に右側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する右側波形時間差演算手段と、左側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する左側波形時間差演算手段とを備え、衝突判定手段が右側波形時間差演算手段と左側波形時間差演算手段との演算結果に基づいて衝突形態を分類するように構成したので、硬い物体への前面衝突と他の車両等の柔らかい物体への衝突が的確に判定できるという効果がある。
【0093】
この発明によれば、制御手段に右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、衝突判定手段が右側衝突力推定値、左側衝突力推定値、右側衝突力経時変化率、及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させるように構成したので、演算量を少なくすることで各演算手段の負担を低減することができるという効果がある。
【0094】
この発明によれば、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るように構成したので、対向車両や電柱と車体前面の半分が衝突した場合や、壁面に車体が斜めに衝突した場合を的確に検出して乗員保護装置を起動させることができるという効果がある。
【0095】
この発明によれば、車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成るように構成したので、コスト低減を図ると共に装置構成を簡素化することで故障要因を縮小することができるという効果がある。
【0096】
この発明によれば、車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、車体右側バック部の衝突を検出する右側バック加速度センサと、車体左側バック部の衝突を検出する左側バック加速度センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成る構成としたので、車体後方部に衝突が生じた場合にも適切な衝突判定を行うことができるという効果がある。
【0097】
この発明によれば、車体右側フロント部の衝突力を検出する右側フロント力センサと、車体左側フロント部の衝突力を検出する左側フロント力センサと、車体中央部に設けた中央部加速度センサと、各センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、制御手段が中央部加速度センサの検出結果から車両に加えられた衝突力を推定する衝突力演算手段と、右側フロント力センサから出力された衝突力と左側フロント力センサから出力された衝突力と衝突力演算手段の演算結果とを用いて車体の衝突判定を行う衝突判定手段から成る構成としたので、衝突力を直接測定することにより、様々な衝突形態に応じて精度よく短時間で適切な衝突判定を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態1による乗員保護装置の起動判定装置が行う衝突判定の対象となる衝突形態を示す説明図である。
【図6】実施の形態1による乗員保護装置を備えた車両が衝突したときに作用する要素をモデル化した説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2による車両の乗員保護装置の起動判断装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】衝突によって車体に加わる力の時間変化を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態3による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態3による乗員保護装置の起動判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】この発明の実施の形態4による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示すブロック図である。
【図15】衝突形態により車体の各部分で検出される加速度の経時変化を示す説明図である。
【図16】衝突力と車体の各部分で検出される加速度との関係を示す説明図である。
【図17】衝突力と車体の各部分で検出される加速度との関係を示す説明図である。
【図18】この発明の実施の形態6による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図19】この発明の実施の形態7による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図20】この発明の実施の形態8による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図21】この発明の実施の形態9による車両の乗員保護装置の起動判定装置の構成を示す説明図である。
【図22】従来の車両の乗員保護装置の起動判定装置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 車体、2 ECU(制御手段)、3 ECU加速度センサ(中央部加速度センサ)、4 右側フロント加速度センサ、5 左側フロント加速度センサ、6右側フロント加速度センサ用通信ケーブル、7 左側フロント加速度センサ用通信ケーブル、8 運転席エアバッグ、9 助手席エアバッグ、10 積分器、11 ECU加速度信号、12 ECU速度信号、13 ECU変位信号、14右側フロント加速度信号、15 右側フロント速度信号、16 右側フロント変位信号、17 左側フロント加速度信号、18 左側フロント速度信号、19左側フロント変位信号、20 右側衝突力演算手段、21 左側衝突力演算手段、22 右側衝突力推定値、23 左側衝突力推定値、24 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、25 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、26 右側閾値判定信号、27 左側閾値判定信号、28 衝突判定手段、29 一段目衝突判定信号、30 二段目衝突判定信号、31 一段目エアバッグ点火装置、32二段目エアバッグ点火装置、33 一段目点火信号、34 二段目点火信号、35 衝突判定信号、36 エアバッグ点火装置、37 点火信号、40 剛体、41 柱、42 車体模擬、43 大型動物、50 衝突物体、51 右側フロント衝突力、52 左側フロント衝突力、53 右側フロント等価質量、54左側フロント等価質量、55 右側フロント等価ばね、56 右側フロント等価ダンパ、57 左側フロント等価ばね、58 左側フロント等価ダンパ、59車体中央部等価質量、60 車体中央部等価ばね、61 車体中央部等価ダンパ、62 車体後方部等価質量、63 右側フロント等価変位、64 左側フロント等価変位、65 車体中央部変位、66 車体後方部変位、70 右側変化率演算手段、71 左側変化率演算手段、72 右側変化率信号、73 左側変化率信号、74 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、75 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、80 衝突形態識別手段、81 右側閾値切り替え信号、82 左側閾値切り替え信号、83 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、84 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、90 右側波形時間差演算手段、91 左側波形時間差演算手段、92 右側波形時間差信号、93 左側波形時間差信号、94 右側閾値判定手段(衝突判定手段)、95 左側閾値判定手段(衝突判定手段)、96 中央フロント加速度センサ、97 中央フロント加速度センサ用通信ケーブル、100 右側バック加速度センサ、101 左側バック加速度センサ、102 右側バック加速度センサ用通信ケーブル、103 左側バック加速度センサ用通信ケーブル、110 車体フロントフレーム構造体、111 右側フロント力センサ、112 左側フロント力センサ、113 右側フロント力センサ用通信ケーブル、114 左側フロント力センサ用通信ケーブル。
Claims (9)
- 車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、
車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、
車体中央部に設けた中央部加速度センサと、
前記各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成ることを特徴とする車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 制御手段は、右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、
左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度と当該加速度から求めた速度と変位とを用いて左側衝突力推定値を求める左側衝突力演算手段と、
前記右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、
前記左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、
衝突判定手段が前記右側衝突力経時変化率及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させることを特徴とする請求項1記載の車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 制御手段は、予め各衝突形態を示す加速度、速度、変位、衝突力、及び衝突力の経時変化率を記憶している衝突形態識別手段を備え、
前記衝突形態識別手段が、右側フロント加速度センサ、左側フロント加速度センサ、及び中央部加速度センサからそれぞれ検出された加速度と、当該加速度から求めた各速度及び各変位と、右側衝突力演算手段から出力された右側衝突力推定値と、左側衝突力演算手段から出力された左側衝突力推定値と、右側変化率演算手段から出力された右側衝突力経時変化率と、左側変化率演算手段から出力された左側衝突力経時変化率とを入力して、前記自ら記憶している各内容と比較して衝突形態を判定し、
衝突判定手段が前記衝突形態識別手段の判定結果に基づいて乗員保護装置の起動を制御することを特徴とする請求項2記載の車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 制御手段は、右側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する右側波形時間差演算手段と、
左側フロント加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形と中央部加速度センサが検出した加速度の経時変化を示す波形との時間差を演算する左側波形時間差演算手段とを備え、
衝突判定手段が前記右側波形時間差演算手段と左側波形時間差演算手段との演算結果に基づいて衝突形態を分類することを特徴とする請求項1記載の車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 制御手段は、右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、
左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した加速度から求めた各速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値を求める右側衝突力演算手段と、
前記右側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて右側衝突力推定値の経時変化率を求める右側変化率演算手段と、
前記左側フロント加速度センサ及び中央部加速度センサが検出した各加速度と所定の定数とを用いて左側衝突力推定値の経時変化率を求める左側変化率演算手段とを備え、
衝突判定手段が前記右側衝突力推定値、左側衝突力推定値、右側衝突力経時変化率、及び左側衝突力経時変化率を用いて衝突形態を判定し、当該衝突形態に応じた制御により乗員保護装置を起動させることを特徴とする請求項1記載の車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、
車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、
車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、
車体中央部に設けた中央部加速度センサと、
前記各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成ることを特徴とする車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 車体中央フロント部の衝突を検出する中央フロント加速度センサと、
車体中央部に設けた中央部加速度センサと、
前記各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成ることを特徴とする車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 車体右側フロント部の衝突を検出する右側フロント加速度センサと、
車体左側フロント部の衝突を検出する左側フロント加速度センサと、
車体右側バック部の衝突を検出する右側バック加速度センサと、
車体左側バック部の衝突を検出する左側バック加速度センサと、
車体中央部に設けた中央部加速度センサと、
前記各加速度センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記各加速度センサの検出結果から衝突力を演算により推定する衝突力演算手段と、当該演算によって求めた衝突力に基づいて衝突判定を行う衝突判定手段から成ることを特徴とする車両の乗員保護装置の起動判定装置。 - 車体右側フロント部の衝突力を検出する右側フロント力センサと、
車体左側フロント部の衝突力を検出する左側フロント力センサと、
車体中央部に設けた中央部加速度センサと、
前記各センサの検出結果に基づいて乗員保護装置の起動制御を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記中央部加速度センサの検出結果から車両に加えられた衝突力を推定する衝突力演算手段と、前記右側フロント力センサから出力された衝突力と前記左側フロント力センサから出力された衝突力と前記衝突力演算手段の演算結果とを用いて前記車体の衝突判定を行う衝突判定手段から成ることを特徴とする車両の乗員保護装置の起動判定装置。
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