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JP2003252694A - SiC繊維複合化SiC複合材料 - Google Patents

SiC繊維複合化SiC複合材料

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Publication number
JP2003252694A
JP2003252694A JP2002055639A JP2002055639A JP2003252694A JP 2003252694 A JP2003252694 A JP 2003252694A JP 2002055639 A JP2002055639 A JP 2002055639A JP 2002055639 A JP2002055639 A JP 2002055639A JP 2003252694 A JP2003252694 A JP 2003252694A
Authority
JP
Japan
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sic
layer
metal
coating layer
carbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002055639A
Other languages
English (en)
Inventor
Giichi Matsumura
義一 松村
Kazuya Hosono
和也 細野
Akihiko Otsuka
昭彦 大塚
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Ultra High Temperature Materials Research Institute JUTEM
Original Assignee
Japan Ultra High Temperature Materials Research Institute JUTEM
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Ultra High Temperature Materials Research Institute JUTEM filed Critical Japan Ultra High Temperature Materials Research Institute JUTEM
Priority to JP2002055639A priority Critical patent/JP2003252694A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 第一に気孔やクラックを内在するSiC/S
iC基材の表面のみを緻密化すること、第二に表面近傍
のSiCマトリックスの組成をSiリッチ組成に変化さ
せてSiCマトリックスの耐酸化性を向上させること、
第三にSiC/SiC基材と酸化防止のための金属又は
セラミックスからなる被覆層との熱膨張係数差の影響を
抑制して、この被覆層での気孔やクラックの発生を防止
すること、これらの結果SiC/SiC基材内部の酸化
による強度低下を防止する。 【解決手段】 SiC/SiC10は、SiC/SiC
基材12の表面にSiリッチ炭・窒化物層14が形成さ
れ、Siリッチ炭・窒化物層14の表面に繊維複合材料
層16が形成され、繊維複合材料層16の表面にSiC
被覆層18が形成されたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主なマトリックス
としてSiC(炭化ケイ素)、主な分散質としてSiC
繊維を用い、優れた耐酸化性を有するSiC/SiC及
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維強化炭素複合材料(以下「C/
C」と略称する。)を含めて、共有結合性の高いSi
C,Siなどの炭化物系複合材料は、いずれも分
解する温度が高く、しかも高温強度が高いことから、高
温で使用される機器の構造材料として応用されている。
特に、SiC/SiCは、1300℃までの高温におい
ても強度の低下が起らず,かつ、不測の過大負荷条件に
対しても局部損傷で済む損傷許容性を有すること、及
び、耐熱衝撃性が高くSiC自体が低放射化であること
から、核融合炉やガスタービンの燃焼器やタービンブレ
ードとしての用途が期待されている。
【0003】本発明者らは、耐酸化性の優れた材料表面
の被覆法として、C/C表面に炭素繊維を複合化させた
被覆法(特開平10−90722号)などを提案し、皮
膜に繊維を複合化させることで皮膜のクラックの進行を
繊維により阻止し、この結果、大幅に耐酸化性を向上で
きることを見出している。しかし、実用に供される炭素
系材料は、詳しくは後述するが、緻密化させることが困
難であり、しかも、製造コストや耐熱衝撃などの面から
意図的に気孔率の高いものを用いる場合が多い。このよ
うな気孔率の高い材料に対して、被覆のみで耐酸化性を
向上させることは非常に困難である。そこで、簡便な材
料表面の平滑化方法に加えて、その表面を保護する耐酸
化皮膜を形成する方法が求められていた。しかしなが
ら、表面を平滑化させるだけでは、基材と皮膜との熱的
・機械的な物性の差に起因して皮膜に欠陥が生じやすい
ので、目的とする耐酸化性を付与することが困難であ
る。したがって、このような気孔率の高い炭素系材料表
面の耐酸化被覆法としては、それぞれの層に専門の機能
性を付与した多層被覆が必要であると結論付けられる。
【0004】さて、ここで、SiC/SiCの製造方法
について若干言及し、これらの材料の抽出された問題点
をここで明確にする。SiC/SiCが損傷許容性を有
するには、SiCマトリックス中をクラックが進展して
も、SiC繊維が同時に破断せずにクラックをブリッジ
ングする機構を伴うことで、靭性の向上を図る必要があ
る。そのためには、クラックをブリッジングする過程
で、マトリックスが繊維から引き抜けることが重要であ
る。例えば、新エネルギー・産業技術総合開発機構によ
る平成8年度独創的産業技術研究開発プロジェクトの一
つであるフェイルセーフ型超高温繊維強化セラミックス
の開発に関する研究では、BN(窒化ホウ素)をコーテ
ィングしたSiC繊維を用いたり、SiC繊維製造時の
熱処理によりCとSiCに富む表面層を形成させた繊維
をSiCプリフォームとして用いたりすることにより、
SiC繊維とSiCマトリックスとの界面力学特性を最
適化していた。
【0005】しかし、このように工夫を施した繊維を用
いても、比較的、工業化の容易なポリマー含浸法(PI
P法:Polymer Infiltration Pyrolysis)によりSiC
マトリックスを形成した場合には、SiC繊維とマトリ
ックスとの熱的特性の差に起因してSiCマトリックス
にクラックや気孔(ボイド)が発生する。また、この場
合のポリマーには、ポリカルボシラン又はポリシラザン
など(以下「PCS」という。)の有機ケイ素化合物が
用いられる。このポリマーが通常の高温熱処理工程で無
機質化して生ずるSiCマトリックスは、PCSの不溶
化の工程からもたらされる酸素や窒素を含み、かつ、P
CSの熱分解工程に起因する炭素リッチにずれたSiC
組成であるため、化学量論的組成のSiCに比べて耐酸
化性に劣る。
【0006】さて、前述したSiC/SiC中のクラッ
クや気孔は、SiC/SiCを高温で長時間加熱した場
合に、酸素のSiC/SiC内部への拡散経路となる。
そのため、酸素がSiCと反応してSiOを形成し、
そのSiOがBNと反応してホウケイ酸ガラスを形成
する。このガラスは、高温では粘性体となって界面を保
護するので繊維及びマトリックス表面への酸素の供給を
妨げて酸化を防止するものの室温ではもろい相となるの
で、破壊により生じたクラックは容易に繊維にまで伝播
する。すなわち、材料の靭性向上に必要な最適な繊維と
マトリックスとの界面構造が酸化により失われる。この
酸化による劣化は、BNを用いずにSiC繊維表面にC
とSiCとに富む表面層を形成させた場合でも、SiO
ガラスがSiC繊維表面に生成するため同様な結果を
生じる。なお、この場合は、ホウケイ酸ガラス中よりも
SiOガラス中の酸素の拡散速度が小さいことから酸
化による劣化が抑制される傾向があるものの、長時間の
加熱では繊維とマトリックスとの界面の酸化が進行する
ため、上述した最適な界面構造が失われてしまう。
【0007】繊維の酸化を防ぐための緻密なSiCマト
リックスを形成する手法としては、特開平8−2680
63号公報や特開平10−59780号公報などに記載
の方法が提案されている。これらの方法は、いずれも反
応焼結法を応用するものであって、SiC繊維を束ねて
SiC繊維束とし、この繊維束又は中間プリフォームに
対してBNを被覆し、その後に繊維束又は中間プリフォ
ームから最終プリフォームを形成し、この最終プリフォ
ームにC粉末を含浸させた後に溶融Siを含浸させて反
応焼結を施すことにより、比較的緻密なSiCを主相と
するマトリックスを形成する方法である。しかし、一方
向又は二方向に繊維を配位したプリフォームに対してC
粉末又は溶融Siを含浸するのは容易なものの、直交す
る三軸方向に編んだプリフォームにそれらを含浸するこ
とは困難である。そのため、このような多次元織物によ
るプリフォームに対して、ボイド及びクラックの発生を
抑制することは困難であった。すなわち、多次元に繊維
強化したSiC/SiCでは、酸化による劣化を抑制す
ることが、この手法を適用しても困難であった。
【0008】これまで述べたように、高温酸化に対し安
定であるとされているSiC/SiCについては、その
製造方法を改良することによって、マトリックスを緻密
化して耐酸化性を向上させるには限界がある。したがっ
て、このような材料の耐酸化性を向上させるためには、
材料表面の被覆に頼らざるを得ない。
【0009】さて、SiC/SiCの酸化を抑制する手
法としては、新エネルギー・産業技術総合開発機構によ
る“水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(W
E−NET)“のサブタスクである水素燃焼タービンの
研究開発「超高温材料の開発」では、酸素の拡散係数の
小さいAlを用いて、SiC/SiC表面にCV
D法、プラズマ溶射法、及び塗布法を用いてAl
皮膜の形成を検討している。この結果では、皮肉にも、
気孔又はクラックを内包するポーラス型のSiC/Si
C基材では、いずれの皮膜を用いてもSiCの高温酸化
抑制効果を得ることはできないので、SiC/SiC基
材の緻密化が必要であり、ホットプレスの手法を用いて
SiC/SiC基材を緻密化した場合にのみ耐高温酸化
性が向上する、と報告されている。また、1300℃以
上で長時間加熱した場合には、いずれの方法でもAl
皮膜とSiCとの界面にAlSi13なる反
応生成物が生じることも報告されている(平成9年度成
果報告書NEDO−WE−NET9785)。
【0010】SiC/SiCの用途は、燃焼器やラジア
ントチューブなど円筒形状などの複雑な形状の部材であ
る。そのため、ホットプレスでこれらの部材を緻密化す
ることは現実的な方法ではない。また、AlとS
iCとの熱膨張係数の差が大きいため、Al皮膜
を厚くすれば剥離する。一方、剥離を防止するためにA
皮膜の気孔率を増大させると、Al皮膜
とSiC/SiC基材との界面でSiCが酸化すること
によって生ずるSiOがAlと反応するので、
低融点でかつ酸素拡散速度の大きなアルミノシリケート
系の反応生成物が生ずる結果となる。
【0011】また、SiC/SiC以外の他の複合材料
の耐酸化性を向上させる方法について調べると、例えば
特開平6−116069号公報では、C/Cの表面にセ
ラミックス繊維(SiC又はSi−Ti−C−O)を配
置した後、炭素繊維やセラミック繊維を用いてセラミッ
ク繊維層を固定し、石油系ピッチやフェノール樹脂を含
浸させて焼成することにより、繊維を複合材料化した皮
膜を形成する方法が提案されている。更に、本発明者ら
による前述した発明(特開平10−90722号公報)
では、基材表面に配置した炭素繊維に対して粒径が1μ
m以下の耐火性物質を含浸させることにより、繊維を複
合化した皮膜を形成する手法が提案されている。しか
し、基材表面に長繊維で構成される複合層を形成した場
合には、SiC/SiCの製造の問題点でも記述したよ
うに、これをガスを遮断可能なまで緻密化することが非
常に困難である。そのため、十分な耐酸化性をこれらの
繊維複合化皮膜に付与することが困難であった。また、
気孔率の高い材料に対して単一の皮膜のみでは、基材と
皮膜との熱的特性の差から皮膜に欠陥が生じやすいの
で、十分な耐酸化性を付与することが困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】直交する三軸方向に編
んだプリフォームを利用して複雑な形状のSiC/Si
Cを製造する方法において、プリフォーム内部へSiC
マトリックスを形成する方法としては、従来のPIP法
が最適である。しかしながら、耐酸化性を向上させるべ
くマトリックスを緻密化させるには、含浸及び焼成の工
程を繰り返す必要があるため、非常に長い時間やコスト
を必要とする。また、前述のように、ポリマーから形成
されるマトリックスSiCは、通常の焼成温度範囲内で
化学組成が炭素リッチになることにより、蒸気圧が増大
して表面の酸化皮膜が破壊されやすくなる。したがっ
て、PIPによるマトリックスSiCでは、耐酸化性に
ついて所望する性能が得られない。
【0013】一方、実用面では、密度の高いSiC/S
iCは必ずしも必要ではなく、気孔やクラックが内在す
るPIP法による低密度のSiC/SiCの方が、耐熱
衝撃性やコストの面からも望ましい場合が多い。したが
って、気孔やクラックを内在するとともに、炭素リッチ
な組成のSiCマトリックスで形成されるSiC/Si
C表面に対しても、有効な耐酸化皮膜を形成する必要が
ある。
【0014】
【発明の目的】そこで、本発明の目的は、第一に気孔や
クラックを内在するSiC/SiC基材の表面のみを緻
密化すること、第二に表面近傍のSiCマトリックスの
組成をSiリッチ組成に変化させてSiCマトリックス
の耐酸化性を向上させること、第三にSiC/SiC基
材と酸化防止のための金属又はセラミックスからなる被
覆層との熱膨張係数差の影響を抑制して、この被覆層で
の気孔やクラックの発生を防止すること、これらの結果
SiC/SiC基材内部の酸化による強度低下を防止で
きるSiC/SiCを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係るSiC/S
iCは、SiC/SiC基材表面に金属又はセラミック
スからなる被覆層が形成されたSiC/SiCにおい
て、SiC/SiC基材表面と被覆層との間に、SiC
/SiC基材表面の気孔を充填し平滑化させるとともに
SiC/SiC基材と被覆層との間で発生する熱応力を
吸収する中間層が形成されたことを特徴とするものであ
る(請求項1)。例えば、中間層は、SiC/SiC基
材側の金属リッチ炭・窒化物層と、被覆層側の繊維複合
材料層との、二層からなる(請求項2)。ここで金属リ
ッチ炭・窒化物層とは、金属と炭素及び窒素の少なくと
も一方との化合物であり、金属の組成比が化学量論的組
成比よりも大きいものをいう。
【0016】多孔質なSiC/SiC基材において、そ
の表面が緻密な金属リッチ炭・窒化物層で覆われてお
り、かつ、その上部が繊維複合材料層により覆われてい
る。そのため、SiC/SiC基材と被覆層との間に発
生する熱膨張係数差による熱応力は、これらの中間層に
よって吸収される。したがって、被覆層では、熱応力に
よるクラックの発生が抑制される。
【0017】SiC/SiC基材としては、例えば10
00本のSiC繊維束で三次元的に強化されたものが望
ましい。SiC/SiC基材表面の気孔を充填し平滑化
させる金属リッチ炭・窒化物層としては、Si粉末とポ
リアセタール構造を持つ有機化合物とを用い、Si粉末
とSiC/SiC基材の炭素リッチなSiCマトリック
スとの化学反応を利用してSiリッチのSiC又はSi
表面層を形成させたものが望ましい。金属リッチ
炭・窒化物層とは、金属をMとするとMC、MN、MC
N等の化学式で表され、かつMがその化学量論的組成比
よりも大きい比率になっている物質をいう。被覆層とし
ては、SiC、Si、ムライトなどのセラミック
ス、Mo−Si、Re−Ir、Ir−Al,Ta−Al
などの二層構造又は両者の金属間化合物などが望まし
い。
【0018】請求項3記載のSiC/SiCは、請求項
2記載のSiC/SiCにおいて、繊維複合層が炭化物
繊維と炭化物及び金属の少なくとも一方のマトリックス
とからなる。炭化物繊維としては、高温強度特性の優れ
た炭素繊維やSiC繊維、又は製造工程で炭素繊維をS
iC繊維に転化したものが望ましい。マトリックスは、
金属粉末と、一部の炭素繊維又はバインダー中の固形分
と、の反応焼結により容易に得られる。
【0019】請求項4記載のSiC/SiCは、請求項
3記載のSiC/SiCにおいて、炭化物繊維及びマト
リックスのそれぞれの融点又は分解点が1600℃以上
である。この場合は、前述したホウケイ酸ガラスを形成
する現行の技術による場合よりも、高温でのSiC/S
iCの用途が開ける。
【0020】請求項5記載のSiC/SiCは、請求項
2乃至4のいずれかに記載のSiC/SiCにおいて、
繊維複合材料層が、長さ3mm以下の炭素繊維と金属粉
末とを原料とし、反応焼結法によって形成されたもので
ある。この場合は、長繊維を配置するよりも、より緻密
でかつ寸法精度の良い皮膜が容易に得られる。これらの
炭化物の繊維複合材料層は、優れた耐熱性を有する。
【0021】請求項6記載のSiC/SiCは、請求項
3乃至5のいずれかに記載のSiC/SiCにおいて、
被覆層に対する繊維複合材料層の熱膨張係数差が−0.
5×10−6/K〜1.0×10−6/Kの範囲であ
る。一般に脆性破壊を示すセラミックスは、圧縮残留応
力(正応力)には優れた抵抗性を示すものの、引張残留
応力(負応力)には弱く容易にクラックを生じやすい。
したがって、熱応力の発生に対しては、負応力に該当す
る引張残留応力をできるだけ軽減するような材料構成に
することが望ましく、本発明では−0.5×10−6
K〜1.0×10 −6/Kの範囲内になるように設定す
る。なお、−0.5×10−6/K以下では、熱膨張係
数の差から被覆層に好ましくない引張残留応力が増大す
るので、被覆層にクラックが生じやすくなる。一方、
1.0×10−6/K以上では、逆に被覆層に対して圧
縮残留応力が増大するので、被覆層のバックリングによ
る剥離を生じやすくなる。
【0022】請求項7記載のSiC/SiCの製造方法
は、請求項2乃至6のいずれかに記載のSiC/SiC
を製造する方法であって、SiC/SiC基材表面に金
属粉末を含むスラリーを塗布し、不活性雰囲気中で熱処
理して金属リッチ炭・窒化物層を形成する工程と、この
金属リッチ炭・窒化物層表面に長さ3mm以下の炭素繊
維と金属粉末とを含むスラリーを塗布し、これを加熱す
ると同時に被覆層を成膜することにより繊維複合材料層
及び被覆層を形成する工程とを備えている。被覆層の成
膜には、例えば熱CVD法を用いる。この製造方法によ
れば、高品質の繊維複合材料層及び被覆層が簡単に得ら
れる。
【0023】請求項8記載のSiC/SiCの製造方法
は、請求項7記載のSiC/SiCの製造方法におい
て、金属リッチ炭・窒化物層を形成する工程におけるス
ラリーのバインダーがポリアセタール構造を持つ有機化
合物であり、かつ、金属リッチ炭・窒化物層を形成する
工程並びに繊維複合材料層及び被覆層を形成する工程に
おける金属粉末の粒径が44μm以下である。粒径を4
4μm以下とすることで多孔質な基材表面を簡単に緻密
にかつ平滑化でき、かつ、スラリーの均質性及び塗布性
を向上させ塗布を容易にする。この製造方法によれば、
請求項2乃至6記載のSiC/SiCが簡単に得られ
る。
【0024】
【発明の実施の形態】図1[1]は、本発明に係るSi
C/SiCの一実施形態を示す概略断面図である。以
下、この図面に基づき説明する。
【0025】本実施形態のSiC/SiC10は、Si
C/SiC基材12の表面にSiリッチ炭・窒化物層1
4が形成され、Siリッチ炭・窒化物層14の表面に繊
維複合材料層16が形成され、更に、繊維複合材料層1
6の表面にSiC被覆層18が形成されたものである。
【0026】SiC/SiC基材12の表面にスラリー
A(図示せず)を塗布し、1500℃以上の温度で熱処
理することにより、SiC/SiC基材12表面のSi
リッチ炭・窒化物層14が形成される。このスラリーA
は、44μm以下のSi金属の粉末と、ポリアセタール
構造からなる有機物の水溶液からなるバインダーと、か
ら構成されている。このポリアセタール構造を持つ有機
物は、例えばポリビニルアルコールのような[−CH
CHOH−]nの分子式で示されるように酸素を持つ構
造であり、Ar又はN中などの不活性雰囲気中でも3
50℃程度の比較的低温で容易に分解して炭素がほとん
ど残らない。一方、炭素系材料とSi粉末との反応は、
Siの溶融温度近傍で急激に進行する。したがって、S
i粉末を分散させたスラリーAをSiC/SiC基材1
2に塗布して窒素気流中で熱処理することにより、初期
にスラリーAが水分及びバインダーを消失し、残された
Si粉末が溶融してSiC/SiC基材12の表面を覆
う。この時、Si粉末は、PIP法により形成されたS
iC/SiC基材12の炭素リッチのSiCマトリック
スと反応してSiリッチ炭・窒化物層14を形成すると
同時に、繊維束間の隙間に由来する表面の窪みや、PI
P法に起因するSiCマトリックスのクラックに充填さ
れる。これにより、SiC/SiC基材12の表面の緻
密性及び平滑性が実現されるので、SiC/SiC10
表面の耐酸化性を向上できる。
【0027】Siリッチ炭・窒化物層14の表面には、
繊維複合材料層16が設けられている。繊維複合材料層
16は、Siリッチ炭・窒化物層14の表面を、スラリ
ーB(図示せず)を塗布することにより形成される。こ
のスラリーBは、3mm以下の炭素繊維と金属粉末との
組み合わせからなる粉末と、フェノールレジンなどのエ
タノール溶液からなる有機バインダーとから構成されて
いる。
【0028】繊維複合材料層16の繊維複合化に用いら
れる炭素繊維は、組み合わせる金属粉末によっては、そ
の後の高温プロセスにより炭化物繊維に変化する。ま
た、このスラリーBに用いたフェノールレジンは、高温
プロセスにより炭化するが、これと金属粉末とを反応焼
結させて炭化物マトリックスを形成することもできる。
【0029】スラリーBとして、SiCよりも熱膨張係
数の大きい金属の粉末を炭素繊維と組み合わせることに
より、繊維複合材料層16の熱膨張係数を増大させるこ
とができる。この場合、金属粉末の種類を選択したり、
金属粉末と炭素繊維との比率を調整したりすることで、
繊維複合材料層16の熱膨張係数を自由に設計すること
が可能である。例えば、SiC被覆層18に代えてIr
被覆層18を用いた場合には、Irの熱膨張係数は約1
×10−5/Kであるから、Ir被覆層18とSiリッ
チ炭・窒化物層14との高温反応を抑制しつつ、Re粉
末と炭素繊維とを用いて繊維複合材料層16を形成し、
かつ、両者の熱膨張係数の差を−0.5〜1×10−6
/Kの範囲内に設計することにより、SiC/SiC基
材12とIr被覆層18との熱膨張係数の差の影響を軽
減することができる。
【0030】Irなどの金属は、放射化するので核融合
炉用材料としては好ましくない。したがって、核融合炉
用の材料はSiCのみに限定される。この場合は、炭素
繊維とSi粉末とを組み合わせたスラリーを用いて、反
応焼結を利用してSiC繊維及びSiCマトリックスを
形成することにより、亀裂の生じにくい繊維複合材料層
16を形成できるので、SiC被覆層18との熱膨張係
数の差の影響を軽減することができる。
【0031】SiC/SiC基材12と繊維複合材料層
16との熱膨張係数差に起因する熱応力は、繊維複合材
料層16を起点として皮膜にクラックを発生させる。こ
のとき、複合材料層16で発生するクラックは、繊維の
存在でクラックの進行が屈曲する。このため、酸化性ガ
スの浸入を抑制する効果を発揮するので、SiC/Si
C基材12の耐酸化性を向上させる。
【0032】また、SiC/SiC基材12は、平らな
ものには限定されない。例えば、ガスタービンに用いら
れるラジアントチューブなどの場合には、チューブ内面
の酸化が著しいが、この場合に、SiCよりも熱膨張係
数が大きくなるように繊維複合材料層16及び被覆層1
8を設計することにより、高温使用時に被覆層18が熱
膨張して被覆層18自体に圧縮応力が作用するため、更
にクラックの発生しにくい被覆層18とすることができ
る。
【0033】図1[2]は、図1[1]におけるSiC
/SiC基材12を構成するSiC繊維束の三次元配置
構造の一部を示す概念図である。以下、図1[1],
[2]に基づき説明する。
【0034】SiC繊維121は、その径が10μm前
後のものが、一般的であり市場での入手が可能である。
三次元にSiC繊維121を配置する場合、様々な繊維
の織り方がある。x,y,zのいずれの方向にも等方的
な機械的特性を付与する場合には、図1[2]に示す直
交三軸の配置がよく用いられる。このとき、図では6本
〜16本のSiC繊維束122x,…が描かれている
が、織物製造の簡略化の都合から、実際にはもっと繊維
数の多い1000本以上のSiC繊維束が用いられる。
図1[2]からわかるように、SiC繊維束122x,
122y,122zの断面積が大きくなればなるほど、
表面に露出する繊維束間の隙間123は大きくなる。ま
た、当然のことながら、SiC織物120内部のx方
向、y方向及びz方向のSiC繊維束に閉じ込められた
空間(図示せず)も大きくなる。例えば、1000本の
繊維を繊維束として用いた場合、繊維束で囲まれた隙間
は、一辺が約300μmで囲まれた立方体となる。
【0035】ここで、このSiC織物120の表面の窪
みに注目する。SiC/SiC基材12を製造する場合
に、PIP法が用いられることを前述した。含浸に用い
られる樹脂は、内部の繊維束間の隙間123を充填する
ことが必要であることから、隙間に浸透しやすくするた
め粘性の小さいものが利用される。しかし、内部の隙間
の充填と表面の平滑化とは技術的に相反する。つまり、
表面の平滑化は粘性の高い樹脂によって成されるが、こ
のような粘性の高い樹脂を用いた場合には、織物の表面
でSiCマトリックスが形成されて隙間が狭くなること
から、内部の充填が困難となる。このため、SiC/S
iC基材12の製造プロセスにおいては、SiC織物1
20内部の隙間の充填に主眼が置かれるので、得られる
SiC/SiC基材12は表面の凹凸が顕著なものとな
る。
【0036】以下、実施例及び比較例について、それぞ
れの実験結果に基づき説明する。
【0037】
【実施例】(1).SiC/SiC基材表面に、選択し
た金属粉末を含みポリビニルアルコールをバインダーと
するスラリーを塗布した。続いて、150℃で溶媒の水
を蒸発させることにより、SiC/SiC基材表面にス
ラリーを固着させた。SiC/SiC基材としては、宇
部興産株式会社製の1000本のチラノ繊維(商品名)
束を三次元に配置し、ポリカルボシラン樹脂によるPI
P法によってSiCマトリックスを充填したものを用い
た。
【0038】図2は、SiC/SiC基材表面に塗布す
るスラリーの組成及び粉末の物性を示す図表である。以
下、この図面に基づき説明する。
【0039】スラリーAを構成するバインダーには、積
水化学工業株式会社製エスレックKW−1(商品名)を
用いた。このバインダーの詳細は不明であるが、一般に
変性ポリアセタール樹脂と呼ばれるものであり、ポリビ
ニルアルコールの水溶液の一種であると考えてよい。基
本的には、不活性雰囲気中でも比較的低温で燃焼して消
失する有機物バインダーである。なお、フェノールレジ
ン等をバインダーに用いた場合には、バインダーから生
ずる炭素とSi粉末との反応により多孔質で脆弱な皮膜
となるため、本発明で得られる緻密な平滑化表面が得ら
れないので注意を要する。
【0040】Si粉末は、純度99.999%の高純度
で、かつ、中心粒径が10μm程度のものを用いた。S
i粉末は、水よりも比重が大きいため、スラリーの塗布
中に液−固の分離が起こるので、組成を均一にすること
が困難である。これを防止するため、分散剤として及び
スラリーの静止状態でのアンチ固化剤として、そして塗
布に必要なチクソトロピー性を付与するため、SiO
超微粒子である日本アエロジル株式会社製アエロジル2
00(商品名)を用いた。SiC/SiC基材表面への
スラリーの塗布量は、固形分に換算して約0.13g/
cmである。
【0041】SiC/SiC基材表面にスラリーをドク
ターブレード法により塗布した後、150℃で乾燥させ
てスラリーを固着させ、Ar気流中で1500℃かつ3
0分加熱して、スラリー中のバインダーを除去するとと
もにSi粉末を溶融させ、溶融SiをSiC/SiC基
材表面のSiCマトリックスと反応焼結させることによ
り、表面が平滑化でかつ金属リッチな組成を持つSiC
/SiC基材表面の炭化物層を得た。
【0042】なお、PIP法によるマトリックス形成の
ための樹脂としてポリカルボシラザンを用いた場合、又
はポリカルボシラザンを原料とするSiC繊維を用いた
場合のSiC/SiCについては、Si−C−Nマトリ
ックス又はSi−C−N繊維の高温熱分解を抑制するた
め、熱処理の雰囲気はArよりもNが好ましい。この
場合、N気流中で熱処理した場合には、溶融Siの一
部がNと反応して炭・窒化物を生成する。ただし、真
空中で加熱した場合には、酸素分圧によって、アクティ
ブ酸化と呼ばれるSiOガスの発生によるSiC/Si
C基材の熱分解が起こることがあるため、注意を要す
る。
【0043】(2).次に、(1)の工程により得られ
たSiリッチ炭・窒化物層の表面に、スラリーBをドク
ターブレード法により塗布した。スラリーBを構成する
バインダーには、日本カーボン工業株式会社製のポリカ
ルボシラン(PCS)の25%キシレン溶液を用いた。
また、炭素繊維には、炭素繊維をミリングにより粉砕し
粉末状とした東邦レーヨン株式会社製の炭素繊維ミルド
ファイバーHTA-CMF-0160-0H(商品名)を用いた。この
ミルドファイバーは、直径が7μmで、平均長が170
μmのものである。この炭素繊維は、塗布条件によって
長い物を使うことが可能であり、例えば3mm以下にチ
ョップした繊維などを用いることも可能である。むし
ろ、繊維の長い方が、スラリー製造時の人体等に与える
影響がより少ないと考えられるので好ましい。スラリー
Bの塗布量は、固形分に換算して約0.2g/cm
ある。
【0044】(3).次に、(2)の工程によって得ら
れたコンポジットグリーン体に対して、1250℃の反
応温度条件下で、熱CVD(化学的気相析出)法により
SiC被覆層を形成した。熱CVD法の条件は、温度1
250℃、圧力1.3kPa、SiCl流量0.5リ
ットル/min、CH流量0.5リットル/min、
などである。この条件下で8時間をかけて、平均膜厚が
約90μmのSiC被覆層を形成した。炭素繊維とSi
粉末との燃焼合成によりSiCマトリックス形成を考え
た場合、この熱CVD温度は1500℃以上が望まし
い。しかし、1500℃を超えた温度域で製造すると、
ポリカルボシラン(PCS)などを由来とするSiC/
SiC基材のマトリックスは、不融化のための酸素の架
橋に起因するアモルファス相で形成されていることか
ら、SiOガスなどの発生を伴う熱分解を起こして所期
の材料強度が低下することがある。したがって、このよ
うなSiC/SiC基材を用いる場合には、熱CVDの
処理温度を最高1500℃までとする必要がある。熱C
VDは緻密な皮膜を形成する上で必須の工程であるが、
同様な緻密質の皮膜を形成できれば、反応性スパッタリ
ングなどの手法を用いても構わない。
【0045】図3は、本実施例おけるSiC/SiCの
優れた耐酸化性を示す例として、メタン燃焼排ガス組成
(N:73%、CO:9%、HO:18%)を模
擬した混合ガス中(流量200ml/min)におい
て、1700℃に加熱して合計10時間保持したSiC
/SiC試験片の表面近傍の断面を示す電子線プローブ
マイクロ分析(EPMA)による酸素及びSiの特性X
線の強度マップ像である。以下、この図面に基づき説明
する。
【0046】図3のSiC/SiC表面の断面に示すク
ラックを挟む白い二本の平行なラインは、この間をプロ
ーブをスキャニングしてO及びSiそれぞれの特性X線
の強度を分析したことを示す。O及びSiのマップ像か
ら、本発明に係るSiC/SiCの皮膜に発生した典型
的なクラックが見られる。しかも、このクラックは、繊
維複合材料層内で屈曲している様子がわかる。図3
[1]に示すOの特性X線マップ像では、表面近傍で酸
素の特性X線強度が高いことがわかる。クラックは、表
面近傍で酸化によってその幅が狭まっている。そして、
基材表面に近づくにつれてクラックの幅が増大するもの
の、酸素の特性X線強度が低下していることから、酸素
が内部まで侵入していないことがわかる。すなわち、ク
ラックが屈曲することで、酸化性ガスの浸入経路が延長
され、これによりクラックの壁面でSiOが生成して
クラックを閉鎖するので、耐酸化性が向上する。一方、
図3[2]に示すSiの特性X線マップ像では、SiC
/SiC基材表面でSi濃度が高濃度であることを示し
ている。一般にSiリッチなSiCは、炭素リッチなS
iCよりも蒸気圧が低いため、より優れた耐熱性を示す
ことがわかる。
【0047】
【比較例】図4は、コーティングを施していないSiC
/SiC(試料イ)、SiC/SiC基材表面に繊維複
合材料層のみを形成し、その表面にSiCコーティング
を行ったSiC/SiC(試料ロ)、及び本発明に係る
二層からなる中間層を形成したSiC/SiC(試料
ハ)の三種について、耐酸化性を比較した結果である。
酸化試験の試験条件は、上述したメタン燃焼排ガスを模
擬した雰囲気中で1700℃かつ2時間の加熱の繰り返
しとした。図4からわかるように、試料イでは、SiC
の酸化によりSiOが生成するので、質量が大幅に増
加する。このSiOの生成は、SiC/SiC内部へ
の酸化性ガスの拡散によるもので、温度と時間により増
加する傾向がある。一方、試料ロでは、試料イよりも質
量増加が抑制されている、すなわちSiCの酸化が抑制
されている。これらに対し、試料ハでは、質量変化が検
出限界以下であった。
【0048】水蒸気を多量に含む高温ガス中でSiCを
酸化した場合、SiOの生成による質量増加と、高温
水蒸気とSiOとが反応してSi(OH)ガスを生
成することによる質量減少とが同時に起る。また、生成
したSi(OH)は、酸化性雰囲気により再酸化さ
れ、SiOスモークとして表面に最析出することもあ
る。
【0049】本試験では、すべての試料においてその表
面に発達したSiO酸化皮膜が形成されていた。試料
ハでは、質量変化が見られないが、これはSi(OH)
ガスの生成による質量減少とSiCの酸化に伴うSi
の形成による質量増加とが相殺された結果、質量が
見かけ上変化しなかったことによるものである。しか
し、試料イ、ロは、明らかに質量が増加しているので、
質量変化の機構が試料ハとは異なる。
【0050】一般にSiCを含めたSiC/SiC材料
の酸化の機構は、雰囲気中の酸化性ガスの分圧や、雰囲
気ガスの流速に起因するガス境界層の厚さ、SiCの純
度、気孔率、生成するSiOの結晶化度などの違いに
より大きく変化する。また、燃焼排ガスなどHOやC
の酸化性ガスを大量に含む高速・高圧の気流中で
は、SiO皮膜を形成するパッシブ酸化が起こる。こ
の酸化の機構では、材料の表面積が大きければSiO
の生成量は増大することから、材料内部に気孔やクラッ
クの多い試験片では質量が増加する。これは、前述した
“水素利用国際クリーンエネルギーシステム技術(WE
−NET)”による高温のHO中の暴露によるSiC
の酸化の実験結果でも明らかである。
【0051】また、耐熱衝撃性の高いSiCとはいえ、
繰り返し熱衝撃の回数が増加するにつれてSiC皮膜に
はクラックが発生する。クラックは、SiC/SiC基
材への酸化性ガスの浸入経路となる。そのため、SiC
皮膜のクラックの発生に伴って、SiC/SiC基材の
内部酸化が進行する結果、質量増加が加速される。更
に、HOガスは、Oガスと比べて酸化物セラミック
ス中での拡散速度が高速である。そのため、仮に同じ酸
化防止性能を持つ皮膜であったとしても、内部に気孔が
多いSiC/SiC基材の場合には、SiC/SiC基
材の内部酸化が進行して質量増加がより大きくなる。す
なわち、これらの結果は、材料表面におけるSi(O
H)の生成による質量減少よりも、SiC皮膜の欠陥
を通してSiC/SiC内部に拡散し生成するSiO
による質量増加が支配的であることを示している。この
ように、本発明以外の試料では、SiOの生成による
質量増加が質量変化を支配しているものと考えられる。
したがって、本発明の優れた耐酸化性を立証することが
できる。
【0052】
【発明の効果】本発明に係るSiC/SiCによれば、
SiC/SiC基材表面の気孔を充填し平滑化させると
ともにSiC/SiC基材と被覆層との間で発生する熱
応力を吸収する中間層を設けたことにより、SiC/S
iC基材表面を緻密化でき、かつSiC/SiC基材と
被覆層との間で発生する熱応力を抑制することにより被
覆層での気孔やクラックの発生を防止でき、これらの相
乗作用によってSiC/SiC基材内部の酸化による強
度低下を防止できる。
【0053】請求項2記載のSiC/SiCによれば、
金属リッチ炭・窒化物層を設けたことにより、気孔率の
高いSiC/SiCでもその表面のみを緻密化すること
ができる。また、繊維複合材料層を設けたことにより、
熱衝撃などで皮膜に発生したクラックが屈曲するので、
クラック内壁に生ずるSiO皮膜を通してSiC/S
iC基材に達する酸化性ガスの浸入を抑制することがで
きる。
【0054】請求項3記載のSiC/SiCによれば、
繊維複合材料層が炭化物繊維と炭化物及び金属の少なく
とも一方のマトリックスとからなるので、繊維複合材料
層の耐熱性を向上できる。
【0055】請求項4記載のSiC/SiCによれば、
炭化物繊維及びマトリックスの分解点又は融点が160
0℃以上あるので、より高温で使用できる。
【0056】請求項5記載のSiC/SiCによれば、
長さ3mm以下の炭素繊維と金属粉末とを組み合わせた
スラリーを用いることから塗布性を向上できると同時
に、反応焼結法を用いることから簡便に繊維複合層の厚
膜を形成することができる。
【0057】請求項6記載のSiC/SiCによれば、
被覆層に対する繊維複合材料層の熱膨張係数差を−0.
5×10−6〜1×10−6/Kとしたことにより、被
覆層と繊維複合材料層との間に発生する熱応力を緩和で
きるので、クラックの発生を抑制することができる。し
かも、クラックが発生しても、繊維複合材料層内でクラ
ックが屈曲するので、耐酸化性を保持することができ
る。
【0058】請求項7記載のSiC/SiCの製造方法
によれば、多孔質なSiC/SiC基材表面の表面のみ
を金属粉末のスラリーを用いて被覆し、不活性な雰囲気
中で熱処理することにより平滑な金属リッチの炭・窒化
物を形成することができ、続いて炭素製の短繊維と金属
粉末とを混合したスラリーを塗布した上で例えば熱CV
D法を用いて繊維複合材料層を形成するとともに、この
繊維複合材料層の表面に被覆層を形成することにより、
特別な設備を必要とすることなく、ありふれた設備を用
いて本発明に係るSiC/SiCを簡単に製造でき、複
雑な形状のものにも対応することができる。
【0059】請求項8記載のSiC/SiCの製造方法
によれば、多孔質SiC/SiC基材の表面処理のスラ
リーにポリアセタール構造を持つ有機化合物を用い、か
つ、金属粉末の粒径を44μm以下としたので、緻密で
かつ均一な表面処理を実現でき、及び金属リッチな炭・
窒化物層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1[1]は、本発明に係るSiC/SiCの
一実施形態を示す概略断面図である。図1[2]は、図
1[1]におけるSiC/SiC基材のSiC織物の構
造を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例における、中間層を形成するた
めのスラリーの組成及び粉末の物性を示す図表である。
【図3】本発明の実施例における酸化試験後の試料断面
の特性X線像を示す写真であり、図3[1]はO(酸
素)を示し、図3[2]はSi(ケイ素)を示す。
【図4】本発明及び従来技術のSiC/SiCの酸化に
よる質量変化を示す図表である。
【符号の説明】
10 SiC/SiC 12 SiC/SiC基材 14 金属リッチ炭・窒化物層 16 繊維複合材料層 18 SiC被覆層 120 SiC織物 121 SiC繊維 122x,122y,122z SiC繊維束 123 繊維束の隙間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C04B 41/90 C04B 35/56 101X 101L (72)発明者 大塚 昭彦 山口県宇部市大字沖宇部573番地の3 株 式会社超高温材料研究所内 Fターム(参考) 4F100 AA32C AB01A AB01B AB01D AD00B AD05C AD08A AD08C AH02G AK21G AK52 AK54K AR00C AS00C BA02 BA03 BA04 BA07 BA41B DE01A DE01D DG01A DG01C DG03A DG03D EG002 EH462 EJ423 EJ48A EJ48D EJ483 GB31 GB51 JA02 JA04A JA04D JB03 JJ05C JK14 JM01C 4G001 BA22 BA86 BB22 BB86 BC72 BD07

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SiC繊維複合化SiC複合材料(以
    下、「SiC/SiC」と略称する。)基材表面に金属
    又はセラミックスからなる被覆層が形成されたSiC/
    SiCにおいて、 前記SiC/SiC基材表面と前記被覆層との間に、当
    該SiC/SiC基材表面の気孔を充填し平滑化させる
    とともに当該SiC/SiC基材と当該被覆層との間で
    発生する熱応力を吸収する中間層が形成された、 ことを特徴とするSiC/SiC。
  2. 【請求項2】 前記中間層は、前記SiC/SiC基材
    側の金属リッチ炭・窒化物層と前記被覆層側の繊維複合
    材料層との二層からなり、 前記金属リッチ炭・窒化物層は、金属と炭素及び窒素の
    少なくとも一方との化合物であり、当該金属の組成比が
    化学量論的組成比よりも大きい、 請求項1記載のSiC/SiC。
  3. 【請求項3】 前記繊維複合材料層は、炭化物繊維と、
    炭化物及び金属の少なくとも一方のマトリックスとから
    なる、 請求項2記載のSiC/SiC。
  4. 【請求項4】 前記炭化物繊維及び前記マトリックス
    は、それぞれ融点又は分解点が1600℃以上である、 請求項3記載のSiC/SiC。
  5. 【請求項5】 前記繊維複合材料層は、長さ3mm以下
    の炭素繊維と金属粉末とを原料とし、反応焼結法によっ
    て形成された、 請求項2乃至4のいずれかに記載のSiC/SiC。
  6. 【請求項6】 前記被覆層に対する前記マトリックスの
    熱膨張係数差が−0.5×10−6/K〜1×10−6
    /Kの範囲内である、 請求項3乃至5のいずれかに記載のSiC/SiC。
  7. 【請求項7】 請求項2乃至6のいずれかに記載のSi
    C/SiCを製造する方法であって、 前記SiC/SiC基材表面に金属粉末を含むスラリー
    を塗布し、不活性雰囲気中で熱処理して前記金属リッチ
    炭・窒化物層を形成する工程と、 この金属リッチ炭・窒化物層表面に長さ3mm以下の炭
    素繊維と金属粉末とを含むスラリーを塗布し、これを加
    熱すると同時に前記被覆層を成膜することにより前記繊
    維複合材料層及び前記被覆層を形成する工程と、 を備えたSiC/SiCの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記金属リッチ炭・窒化物層を形成する
    工程における前記スラリーのバインダーがポリアセター
    ル構造を持つ有機化合物であり、かつ、前記金属リッチ
    炭・窒化物層を形成する工程並びに前記繊維複合材料層
    及び前記被覆層を形成する工程における前記金属粉末の
    粒径が44μm以下である、 請求項7記載のSiC/SiCの製造方法。
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