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JP2002526039A - 突然変異ヘルペスウイルスを増殖するための細胞系 - Google Patents

突然変異ヘルペスウイルスを増殖するための細胞系

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Publication number
JP2002526039A
JP2002526039A JP2000563817A JP2000563817A JP2002526039A JP 2002526039 A JP2002526039 A JP 2002526039A JP 2000563817 A JP2000563817 A JP 2000563817A JP 2000563817 A JP2000563817 A JP 2000563817A JP 2002526039 A JP2002526039 A JP 2002526039A
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JP
Japan
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gene
hsv
virus
herpesvirus
cell line
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Application number
JP2000563817A
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English (en)
Inventor
コフィン、ロバート、スチュアート
ラッチマン、デヴィット、シーモア
Original Assignee
バイオヴェックス リミテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by バイオヴェックス リミテッド filed Critical バイオヴェックス リミテッド
Publication of JP2002526039A publication Critical patent/JP2002526039A/ja
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    • C12N7/00Viruses; Bacteriophages; Compositions thereof; Preparation or purification thereof
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Abstract

(57)【要約】 内因性HSV VP16遺伝子または該遺伝子の相同体中に突然変異を有する突然変異ヘルペスウイルスを増殖するための方法を提供する。前記方法は、細胞系に該突然変異ヘルペスウイルスを感染させ、該細胞系を培養することを含んでなり、ここで、前記細胞系は、機能的単純ヘルペスウイルス(HSV) VP16ポリペプチドまたはその相同体をコードする核酸配列を、該細胞系での該ポリペプチドの発現を可能とする制御配列に作動可能に連結させた状態で含み、前記核酸配列は、(i)該内因性遺伝子を補足することができるが、(ii)該内因性遺伝子との相同的組換えを受けることはできないものである。さらに、本発明は、VP16またはその相同体中に突然変異を有すると共に特定の前初期遺伝子中に欠陥を有する突然変異ヘルペスウイルスを増殖させるための細胞系を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明は、突然変異ヘルペスウイルスの増殖に使用しうる細胞系に関する。本
発明は特に、必須の構造タンパク質をコードする遺伝子であって且つ不活化され
るとそのウイルスの増殖を損なうような他の機能も有している遺伝子に突然変異
を有するウイルスの増殖に関する。本発明は、このような不活化突然変異を有す
るウイルスの増殖を、該ウイルスの不活化された機能がウイルス配列とその細胞
系中の補足的配列との相同的組換えによって修復されないようにして、促進する
細胞系を提供する。さらに、本発明は、必須の構造タンパク質中に突然変異を有
するとともに特定の前初期遺伝子中に欠陥を有する突然変異ヘルペスウイルスの
増殖に使用できる細胞系も提供する。
【0002】発明の背景 ヘルペスウイルスは、遺伝子送達のための有力なベクターとして提唱されてき
た。これは例えば、遺伝子治療、ワクチン接種または他の目的のための、神経系
または体内の任意の部位への送達、あるいは培養細胞または病気の動物モデルへ
の送達が可能である。しかし、HSVは、様々な細胞型をin vitroおよびin vivoに
て感染することができ、また大きなDNAの挿入を受け入れて複数の遺伝子の送達
を可能とするという点で、ベクターとして多くの潜在的な利点を有するが、多く
の細胞型にHSVを感染させると、そのウイルスの溶菌性複製(lytic replication
)または他の毒性作用が生じる。したがってベクターとして使用するためには、
HSVのこれらの作用を防止するかまたは最小にすべく通常何らかの形でHSVを無能
化(disabled)する必要がある。
【0003】 HSVは、多くの方法で無能化することができ、これには、許容細胞中にトラン
スフェクトされた後にヘルパーウイルスの存在下で複製できるヘルペス起点およ
びパッケージング配列を含むプラスミドからなる、いわゆるアンプリコンベクタ
ーの増殖においてヘルパーウイルスとして使用する場合が含まれる。例えば、全
ての細胞型での複製に必要な遺伝子を不活化することができ、これらは培養下で
増殖する場合に補足されなければならないが、これらには、必須の前初期遺伝子
ICP4またはICP27の一方または他方またはその両方が含まれる。あるいはまた、I
CP34.5またはIPC6等のようにin vivo発病には必要であるが培養下での増殖には
必要でない遺伝子を除去することができ、同様に、欠失によりさらに毒性が低下
する更なる遺伝子も除去することができる。これらには例えば他のIE遺伝子ICP0
、ICP22およびICP47が含まれ、ICP0および/またはICP22の不活化は、ウイルス増
殖に使用される細胞系中で補足されない限りは、培養下のウイルスの複製効率を
低下させる。したがって、有効且つ実用的なベクターウイルスの産生は、標的細
胞型内での適度に最小化された毒性のバランス、および培養下で該ウイルスを増
殖させる能力に依存し、幾つかの事例では該ウイルスの不活化突然変異の少なく
とも一部を補足する細胞系の使用が必要である。一般法則として、ウイルスにお
ける突然変異の数が多いほど、そのウイルスは培養下で増殖しにくいだろう。HS
Vベクターについての概説は、CoffinおよびLatchman, 1996に記載されている。
【0004】 上述したように、HSVベクターの産生において不活化するのに特に魅力的な遺
伝子は、5つのIE遺伝子のうちの1つ以上である。これらの不活化(少なくとも
ICP0、ICP4、ICP22またはICP27の不活化)は、発現がこれらのIE遺伝子産物によ
り刺激される他のタンパク質の発現レベルをも低下させる。しかしこれらの遺伝
子が不活化されると、培養下での複製がブロックされる(ICP4およびICP27)か
または低減され(ICP0およびICP22)、したがって効率的な複製のためには、こ
れらの不活化遺伝子をウイルス増殖に使用する細胞系の中で補足する必要がある
【0005】 しかし、IE遺伝子自体の中に不活化突然変異を導入するのではなく、機能的IE
タンパク質のレベルを低下させることができる他の手段は、VP16をコードする遺
伝子に不活化突然変異を導入することである(Aceら、1988)。VP16は、感染後に
細胞因子と共にHSV IE遺伝子プロモーターのトランス活性化に関与するビリオン
タンパク質である。このように、VP16中に特定の不活化突然変異を導入すること
によリ、IE遺伝子の発現が低下しているが完全にはブロックされていないウイル
スが得られる(Aceら、1989)。これは、1つの遺伝子(VP16)における機能の
不活化が複数のIE遺伝子の発現レベルを低下させるため、HSVベクターウイルス
の産生において有利であろう。
【0006】 しかしVP16の遺伝子は、VP16が不可欠の構造タンパク質でもあるため、ウイル
スから欠失させることはできない。したがって、VP16のトランス活性化活性を低
下または排除するが、それでもなお該タンパク質にその構造的機能を果たさせる
、特定の突然変異が使用される(Aceら、1988)。このタイプの突然変異(ウイ
ルス突然変異体in1814のようにV16の遺伝子中へのリンカー配列の特異的挿入(A
ceら、1989))を含むウイルスは、実質的にin vivoで非病原性であり、in vivo
および培養下の両方で増殖の低下をもたらす(Aceら、1989)。したがって、こ
のような突然変異を含むウイルス株の増殖は、この突然変異を持たないウイルス
に比べて効率が低い。VP16における突然変異は、HMBAを培地中に含ませることに
より一部補うことができる(MacFarlaneら、1992)が、VP16の未改変コピーを発
現するよう遺伝子操作された細胞系を使用すると必ず、該突然変異が修復された
ウイルスが培養下で産生されてしまう。これは、該遺伝子がその重要な構造的役
割によりウイルスから欠失させることができないので、ウイルス増殖に使用され
る細胞系中にVP16の遺伝子の未改変コピーを含ませると、該ウイルス中の突然変
異VP16配列と該細胞系中の未改変VP16配列との間で相同的組換えが起こり、該未
改変VP16配列を含むウイルスが産生されるためである。さらに、このような細胞
系によるVP16突然変異の補足は、いずれにせよ、完全に機能的なVP16を含む新し
いビリオンの産生をもたらし、これは、非補足細胞中でベクターとして使用した
場合に、まさにVP16の突然変異を低減させただけ、IE遺伝子の発現を活性化する
だろう。
【0007】 したがって、PV16の遺伝子中に、該タンパク質のトランス活性化特性に影響を
及ぼす突然変異を含むHSV株を、該ウイルスの突然変異がウイルス増殖中に修復
されないように、どのように効率的に増殖させるか、という問題が依然として存
在している。
【0008】発明の概要 VP16中に該タンパク質のトランス活性化特性を低減させる突然変異を有するHS
Vは、特に他のHSV遺伝子中の不活化突然変異と共に組み合わせると、ベクターと
して特に魅力的である(CoffinおよびLatchman, 1996を参照されたい)。しかし
、このようなウイルスは、VP16を補足する細胞系を使用する場合は、該突然変異
を修復せずに培養下で効率的に増殖させることが簡単にはできない(上記参照)
。VP16の主な機能およびその構造的な役割は、感染後にHSV IEプロモーターをト
ランス活性化することである。本発明者らは、他のヘルペスウイルス、ウマヘル
ペスウイルス1型(EHV 1)において同様の役割を有するタンパク質がHSV IEプロ
モーターをトランス活性化させるだけでなく、該タンパク質が、ウイルス増殖に
使用される細胞中に安定にトランスフェクトされたときに、VP16に突然変異を有
するHSVの増殖を非常に促進し得ることも見出した。VP16のEHV1同等物(遺伝子1
2、Lewisら、1997を参照、本明細書中ではEHV-VP16と呼ぶ)とHSV-VP16との間に
はヌクレオチド配列の類似性がほとんどない。したがって、該ウイルス中の突然
変異を修復する相同的組換えが起こり得ない。このように本発明は、VP16中に突
然変異を有するHSVを効率的に増殖させてそのトランス活性化特性を低減する一
方で、相同的組換えによる該突然変異の修復を不可能とする細胞系を、初めて提
供するものである。
【0009】 また、本発明は、あるウイルス中の相同な機能を有するタンパク質を使用して
他のウイルス中の同等なタンパク質の欠陥を補足することにより培養下で増殖さ
せるために、HSV中の必須の構造ポリペプチドをコードする遺伝子または他のウ
イルス中の相同遺伝子における突然変異を補足することができる、一般的な方法
論も提供する。例えばVP16におけるHSV突然変異は、EHV-VP16同等物(本明細書
に記載のとおり)、または他のヘルペスウイルスに由来する相同なタンパク質(
例えばウシヘルペスウイルス(BHV; Misraら、1994)に由来するBTIFまたは水
痘帯状疱疹ウイルス(VZV;Moriuchiら、1993)に由来するORF10遺伝子産物等)
を用いて補足することができる。
【0010】 したがって本発明は、内因性HSV VP16遺伝子または該遺伝子の相同体中に突然
変異を有する突然変異ヘルペスウイルスを増殖する方法であって、細胞系に該突
然変異ヘルペスウイルスを感染させ、該細胞系を培養することを含んでなり、該
細胞系は、機能的単純ヘルペスウイルス(HSV) VP16ポリペプチドまたはその相
同体をコードする核酸配列を、前記細胞系での該ポリペプチドの発現を可能とす
る制御配列に作動可能に連結させた状態で含み、該核酸配列は、(i)該内因性
遺伝子を補足することができるが、(ii)該内因性遺伝子との相同的組換えを受
けることができないものである、上記方法を提供する。
【0011】 好ましくは、該突然変異は、前記内因性遺伝子のウイルス転写活性化能を低下
または破壊する突然変異である。
【0012】 好ましくは、該機能的HSV VP16相同体は、ヘルペスウイルス遺伝子、より好ま
しくはウマヘルペスウイルス遺伝子(例えば遺伝子12)、またはウシヘルペスウ
イルス遺伝子(例えばBTIF)によりコードされる。突然変異ヘルペスウイルスは
、好ましくは単純ヘルペスウイルス(HSV)、より好ましくはHSV-1もしくはHSV-
2ウイルス、またはその誘導体である。
【0013】 また、該突然変異ヘルペスウイルスは、該ウイルスのさらなる内因性遺伝子を
機能的に不活化し、且つ細胞系でのウイルス増殖を可能にするために該細胞系に
より補足される必要のある追加の突然変異を含み得る。この場合、該細胞系は、
機能的に不活化された内因性遺伝子を補足する機能的ヘルペスウイルス遺伝子を
コードする追加の核酸配列を含む。例えば、好適な実施形態において、該突然変
異ウイルスは、ICP4および/またはICP27などの機能的に不可欠な前初期遺伝子を
持たない単純ヘルペスウイルスである。したがって、本発明の細胞系は、機能的
なICP4および/またはICP27を提供するために、適宜に、機能的なICP4および/ま
たはICP遺伝子を含み、これにより無能化されたウイルスを培養下で増殖させる
ことができる。
【0014】 特に好適な実施形態においては、VP16中にin1814不活化突然変異をさらに有す
るHSV突然変異体からICP4および/またはICP27の遺伝子が欠失される(Aceら、19
89)。これらの突然変異体は、EHV-VP16遺伝子を含み、さらにICP4および/また
はICP27遺伝子をも含む細胞系上で培養されるが、その際、該細胞系中に挿入さ
れた配列と該ウイルス内に残っている配列との間にオーバーラップは無い。これ
は、ウイルス増殖中に該細胞系の配列と該ウイルスの配列との間の相同的組換え
による該ウイルス中のあらゆる突然変異の修復を妨げる。本発明者らは、このよ
うな実施形態において、細胞内のICP4およびICP27の発現を駆動するプロモータ
ーの選択が、EHV-VP16および/またはICP27を含む補足細胞の確実な生成にとって
重要であることを見出した。したがって、本発明は、このようなプロモーターの
選択が最適になされた細胞系も提供する。このような実施形態において、ICP27
遺伝子の発現がICP27プロモーターにより駆動され、そしてICP4遺伝子の発現がI
CP4プロモーターまたはより好ましくはMMTV LTRプロモーターにより駆動される
ことが好ましい。
【0015】 本発明の方法により産生される突然変異ヘルペスウイルスは、培養した細胞系
から単離し、場合によりさらに精製することができる。該ウイルスは、製薬上許
容可能な担体または希釈剤を用いて医薬組成物として調製することもできる。
【0016】 また本発明は、機能的単純ヘルペスウイルス(HSV)VP16ポリペプチド相同体
をコードする核酸配列を、細胞系での該ポリペプチドの発現を可能とする制御配
列に作動可能に連結させた状態で含む細胞系を提供する。該核酸配列は、(i)HSV
VP16遺伝子を補足することができるが、(ii)HSV VP16遺伝子との相同的組換
えを受けることができないものである。
【0017】 好ましくは、該機能的HSV VP16相同体は、ヘルペスウイルス遺伝子、より好ま
しくはウマヘルペスウイルス遺伝子(例えば遺伝子12)またはウシヘルペスウイ
ルス遺伝子(例えばBTIF)によりコードされる。該突然変異ヘルペスウイルスは
、好ましくは単純ヘルペスウイルス(HSV)、より好ましくは、HSV-1もしくはHS
V-2ウイルス、またはこれらの誘導体である。
【0018】 また、(HSVの場合は)他のヘルペスウイルスに由来するVP16同等物を用いてV
P16の遺伝子中の不活化突然変異を補足すると共に、該ウイルス中で不活化され
た他の遺伝子がウイルス増殖のために細胞系中で補足される細胞系も作製される
。例えば、ICP4および/またはICP27が不活化される場合、ICP4および/またはICP
27をさらに含む細胞系を使用することができる。この実施形態において、該細胞
におけるICP4およびICP27の発現を駆動するプロモーターの選択は重要であり、
したがって、本発明は、このようなプロモーターの選択が最適になされた細胞系
も提供する。ICP27遺伝子発現を駆動するのに好適なプロモーターにはICP27プロ
モーターが含まれ、ICP4遺伝子発現を駆動するのに好適なプロモーターには、MM
TV LTRおよびICP4プロモーターが含まれる。
【0019】発明の説明 A. ヘルペスウイルス ヘルペスウイルスとしては、ヘルペスウイルス科のメンバーであるあらゆるウ
イルスが含まれる。例えば、ウマヘルペスウイルス、ウシヘルペスウイルス、な
らびにヒト単純ヘルペスウイルス群、特にHSV1およびHSV2が挙げられる。
【0020】 本発明のウイルスが単純ヘルペスウイルスである場合、該ウイルスは、例えば
HSV1もしくはHSV2株、またはその誘導体から得ることができるが、好ましくはHS
V1から得られる。誘導体には、HSV1およびHSV2株に由来するDNAを含むタイプ間
組換え体(inter-type recombinants)が含まれる。誘導体は、好ましくはHSV1
またはHSV2ゲノムのいずれかに、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80
%、さらに好ましくは少なくとも90%もしくは95%の配列相同性を有する。本発
明のウイルスを得るために使用できる他の誘導体としては、遺伝子中に既に突然
変異(特にそのウイルスの弱毒化につながる遺伝子の突然変異)を有している株
が含まれる。このようなウイルスの例としては、1716株(MacLeanら、1991)、R
3616株およびR4009株(ChouおよびRoizman、1992)およびR930(Chouら、1994)
(これらは全て、ICP34.5に突然変異を有する)、ICP4中に欠失を有するd120株
(DeLucaら、1985)、ICP27に欠失を有するd27-1株(RiceおよびKnipe, 1990)
、またはICP27およびICP4の両方に欠失を有するd92株(Samaniegoら、1995)が
含まれる。
【0021】 様々なHSV遺伝子を記載する際に使用される用語は、CoffinおよびLatchman, 1
996に記載されている。
【0022】 B. 構造遺伝子の突然変異 本発明の概念における突然変異ヘルペスウイルスは典型的には、2次的な非構
造機能(例えば転写活性化または酵素活性)を有する必須の構造ポリペプチドを
コードする遺伝子中に突然変異を有する。この突然変異は、該タンパク質の2次
的な機能(典型的には転写活性化)に影響を及ぼし、ウイルス増殖の効率を低下
させるが、該ポリペプチドの発現を妨げないので、該ポリペプチドがその構造的
な役割を果たすことができる。前記構造遺伝子における突然変異は一般に、該遺
伝子によりコードされる該ポリペプチドのウイルス転写(特に前初期プロモータ
ーから始まる転写)活性化能を低下または破壊する。構造ポリペプチドにより媒
介されるウイルス転写の低下は、一般的には少なくとも50%、より好ましくは少
なくとも70%、80%または90%である。
【0023】 本発明の好適な実施形態において、構造遺伝子は、VP16をコードするHSV遺伝
子(UL48)または他のヘルペスウイルスに見られるその相同体(例えばウマヘル
ペスウイルス遺伝子12またはウシヘルペスウイルス遺伝子BTIF)である。HSV VP
16遺伝子は典型的にはそのトランス活性化能力を破壊する挿入を有する(例えば
Aceら、1989を参照されたい)。HSV VP16の酸性活性化ドメイン(acidic activa
tion domain)の切断(トランケーション)を含む同様の特性をもつ他の突然変
異体も既に記載されている(例えばSmiley、J.R.,およびJ. Duncan. 1997を参照
されたい)。このような突然変異体も、本発明で使用するのに適している。
【0024】 「相同体」とは、増殖を希望する突然変異ヘルペスウイルスにおいて突然変異
させる対応する構造ヘルペスウイルス遺伝子に、アミノ酸レベルで配列相同性を
示すウイルス遺伝子を意味する。典型的には、例えばHSV遺伝子の相同体は、少
なくとも20、好ましくは少なくとも30、例えば少なくとも40、60または100以上
連続したアミノ酸からなる領域にわたって、アミノ酸レベルで対応するHSV遺伝
子と少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%同一である。相同体は、増殖さ
せたい突然変異ヘルペスウイルスのゲノム中に存在する突然変異内因性遺伝子の
機能を補足することができるものでなければならない。しかし、補足細胞系中に
存在する機能的構造ヘルペスウイルス遺伝子とヘルペスウイルスのゲノム中に存
在する突然変異遺伝子との間で相同的組換えが起こるのを避けるために、該機能
的遺伝子は、コード配列全体にわたり、該ヘルペスウイルス中に存在する対応す
る突然変異遺伝子との同一性が核酸レベルで50%以下、好ましくは40%もしくは
30%以下でなければならない。
【0025】 タンパク質およびヌクレオチドの相同性を測定する方法は、当分野では公知で
あり、当業者であれば、タンパク質相同性はアミノ酸の同一性(しばしば「ハー
ドホモロジー(hard homology)」と呼ばれる)に基づいて計算されることが理
解されよう。
【0026】 核酸およびタンパク質の相同性を測定する方法は、当分野では公知である。相
同性は、例えば相同性を計算するために使用できるBESTFITプログラムを提供す
るUWGCGパッケージを用いて計算することができる(Devereuxら(1994), Nucle
ic Acids Research 12 p.387-395)。同様に、PILEUPおよびBLASTアルゴリズム
は、配列を整列させるのに使用することができる(例えばAltschul S.F. (1993)
, H. Mol. Evol. 36: 290-300; Altschul, S.F.ら(1990) J. Mol. Biol. 215:
403-10に記載されている)。このようなプログラムには多くの異なる設定が可
能である。本発明にしたがって、デフォルト設定を使用することもできる。
【0027】 さらに、細胞系中に存在する機能的遺伝子とヘルペスウイルス中に存在する突
然変異遺伝子との相同性の程度を低下させて組換えが起こる確率を低くするため
に、機能的構造遺伝子の配列を、例えば置換によりヌクレオチドレベルで改変す
ることができる。これは、遺伝子コードの縮重の結果、機能的遺伝子のアミノ酸
配列を変化させることなく行うことができる。
【0028】 例えば以下の表にしたがって保存的置換を行うことができる。2列目の同じブ
ロックにあるアミノ酸および好ましくは3列目の同じ行のアミノ酸は、互いに置
換することができる。
【0029】
【表1】
【0030】 特定のヘルペスウイルス(例えばHSV)に由来するヘルペスウイルス遺伝子の
相同性は、他のウイルス中において様々な方法で(例えば中程度から高度のスト
リンジェンシー条件(約40℃〜約55℃の0.2×SSC/0.1% SDS)下でHSV遺伝子の
全てまたは一部を含むプローブを用いて、他のウイルスから作製したゲノムもし
くはcDNAライブラリーを探索することにより)同定することができる。あるいは
、種相同体は、保存されたアミノ酸配列をコードする変異体および相同体中の配
列を標的とするように設計されたプライマーを使用する縮重PCRを用いて得るこ
ともできる。該プライマーは、1以上の縮重位置を含み、既知の配列に対する単
一の配列プライマーを用いて配列をクローニングするために使用される条件より
も低いストリンジェンシー条件(例えば60℃で2×SSC)で使用される。
【0031】 HSV1およびHSV2の場合、このような株は特にVP16の遺伝子(UL48)中に突然変
異を含み、この突然変異は、該タンパク質のトランス活性化活性を破壊または低
下するが、その構造的な役割には影響を及ぼさないものである(例えばAceら、1
998を参照されたい)。これらのウイルス株には、さらなる突然変異が導入され
た株も含まれ、これらはおそらく、遺伝子の一方または他方またはその両方が不
活化突然変異を含む場合は、これらの突然変異(例えばHSV1のICP4および/また
はICP27、またはHSV2におけるこれらの機能的同等物等)をも補足する細胞系の
使用を必要とするだろう。好適なウイルスとしては、VP16のトランス活性化機能
を破壊する突然変異を含むと共に、ICP4および/またはICP27(またはHSV2におけ
るその同等物)の遺伝子が完全に欠失され、該ウイルス内に残っているDNAとウ
イルス増殖に使用される細胞系中のDNAとの間にオーバーラップが無いような、H
SV1またはHSV2が挙げられる。ウイルス中(例えばICP34.5、vhs、および/または
ICP6中)に他の不活化突然変異を生じさせることもできる。特に好適なウイルス
は、これらの遺伝子の全てに不活化突然変異を含むだろう。
【0032】 ここで言及したその他の種々のウイルス遺伝子も当業界では公知のいくつかの
技法によってその機能を不活化することができる。例えば、それらの遺伝子は欠
失、置換、または挿入、好ましくは欠失によって機能を不活化することができる
。欠失は遺伝子の一部の除去、または遺伝子全体の除去で行うことができる。例
えば、ただ1つのヌクレオチドのみを欠失させても、フレームシフトが引き起こ
される。しかし、より大規模な欠失、例えばコード配列および非コード配列全体
の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%の欠失を行うことが好ましい(
あるいはまた、絶対量として少なくとも10個のヌクレオチド、より好ましくは少
なくとも100個のヌクレオチド、最も好ましくは100個のヌクレオチドを欠失する
)。その遺伝子全体、および隣接配列のいくつかを除去することが特に好ましい
。挿入する配列には下記の異種遺伝子を含ませることができる。とりわけ、異種
遺伝子をICP4中に挿入することが好ましい。
【0033】 必須の構造ポリペプチドをコードする遺伝子の場合には、その遺伝子の大きな
部分を欠失することが望ましくないのは明らかである。しかし、その遺伝子の所
望の活性、例えばトランス活性化などを阻害するために適切であると考えられる
小規模の欠失、挿入、および/または置換を行うことができる(例えば、Aceら, 1
989を参照せよ)。
【0034】 当業者には公知の相同組換え法によってヘルペスウイルス中に変異を起こさせ
ることができる。例えば、HSVゲノムDNAは、相同なHSV配列が隣接している変異
配列を含んでいるベクター、好ましくはプラスミドベクターとともにトランスフ
ェクトされる。その変異配列は欠失、挿入、または置換を含むことができ、それ
ら全ては通常の技法で構築することができる。挿入物としては、例えば、組換え
ウイルスを例えばβ-ガラクトシダーゼ活性によってスクリーニングするためのl
acZなどの選択可能なマーカーが挙げられる。
【0035】 C. 異種遺伝子およびプロモーター 本発明のウイルスは異種遺伝子を担持できる。「異種遺伝子」という用語は、
いかなる遺伝子をも含むものである。異種遺伝子は典型的にはヘルペスウイルス
のゲノム中には存在しない遺伝子であるが、コード配列が、それと天然の状態で
は連結しているウイルス性制御配列と作動可能に連結された状態にない場合には
、ヘルペスウイルスの遺伝子を用いることができる。異種遺伝子は野生型遺伝子
の対立遺伝子変異体のいずれか、または変異遺伝子とすることができる。「遺伝
子」という用語は、少なくとも転写はされうるような核酸配列をも包含すること
を意図している。従って、mRNA、tRNA、およびrRNAをコードする配列はこの定義
内に含まれる。核酸は、例えば、リボ核酸(RNA)、またはデオキシリボ核酸(DNA
)またはそれらの類似体であり得る。mRNAをコードする配列は、翻訳されるコー
ド配列に天然に、または人為的に連結された5'および/または3'の転写はされる
が翻訳されない隣接配列のいくつかまたは全てを任意で含ませることができる。
mRNAをコードする配列はさらに、転写される配列に通常関連する転写制御配列、
例えば転写停止シグナル、ポリアデニル酸部位、および下流エンハンサーエレメ
ントなどを任意で含ませることができる。
【0036】 異種遺伝子は、HSV株を、例えばHSV配列が隣接した異種遺伝子を持つプラスミ
ドベクターと相同組換えさせることによってウイルスゲノム中に挿入することが
できる。異種遺伝子は、ヘルペスウイルスの配列を含む適切なプラスミドベクタ
ー中に、当業界ではよく知られたクローニング技法を用いて導入することができ
る。その異種遺伝子はウイルスゲノム中のどの位置にでも、そのウイルスが挿入
後にも増殖しうるような場所であれば挿入することができる。異種遺伝子は必須
遺伝子中に挿入することが好ましい。
【0037】 異種遺伝子の転写される配列は、その異種遺伝子が哺乳動物細胞、好ましくは
中枢神経および末梢神経系の細胞中で発現させる制御配列と作動可能に連結され
た状態にあることが好ましい。「作動可能に連結された状態にある」という用語
は、前述の構成物が意図した様式で機能しうる関係にあるように配置されている
ことを意味する。コード配列と「作動可能に連結された状態にある」制御配列と
は、制御配列が共存し得る条件下でコード配列の発現を可能とするように連結さ
れているものである。
【0038】 制御配列は異種遺伝子を発現させるプロモーターおよび転写終結のためのシグ
ナルを含んでいる。プロモーターは哺乳動物、好ましくはヒトの細胞で機能しう
るプロモーターから選択される。プロモーターは、真核細胞遺伝子のプロモータ
ー配列から由来するものである場合もある。例えばプロモーターは、異種遺伝子
の発現を起こそうとする細胞、好ましくは哺乳動物中枢神経または末梢神経系の
細胞のゲノムに由来するプロモーターとすることができる。真核細胞プロモータ
ーについては、遍在的様式で機能するプロモーター(α-アクチン、チューブリン
などのプロモーター)、あるいはまた組織特異的様式で機能するプロモーター(ピ
ルビン酸キナーゼの遺伝子のプロモーターなど)を用いることができる。ある特
定の神経細胞のタイプ内のみで活性のあるプロモーターは特に好ましい(例えば
、チロシン水酸化酵素(TH)、L7、または神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモータ
ーなど)。またプロモーターは特異的刺激に応答するプロモーターとすることが
でき、例えばステロイドホルモン受容体と結合するプロモーターが挙げられる。
ウイルスのプロモーター、例えばモロニーマウス白血病ウイルス長末端反復(MML
V LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、またはヒトサイトメガロウ
イルス(CMV)IEプロモーターなども用いることができる。
【0039】 HSV LATプロモーター、およびLATプロモーター領域のエレメントを含んでいる
プロモーターは、潜伏期の間、異種遺伝子の発現が長期にわたって行いうる可能
性があるので、特に好ましい。とりわけ、本質的にLAT P2領域からなる発現カセ
ットであって、これ自身はプロモーターとして作用しないものであるが、プロモ
ーターと異種遺伝子とにこの順番で連結されたカセットは特に好ましい(WO98/30
707)。
【0040】 「長期にわたる発現」という用語は、本発明の単純ヘルペスウイルスで感染さ
せた細胞中での異種遺伝子の発現が、その単純ヘルペスウイルスが潜伏期に入っ
た後ですら起こることを意味している。好ましくは少なくとも2週間、より好ま
しくは少なくとも感染後1または2か月、さらにより好ましくはその細胞の生存期
間にわたってその発現が行われることである。
【0041】 発現カセットにはさらに、前述のHSV LAT P2領域に、第1のプロモーターおよ
び第1の異種遺伝子とは反対の方向に、この順序で作動可能に連結した状態にあ
る第2のプロモーターおよび第2の異種遺伝子を含ませることができるが、そこで
は第2のプロモーターと第2の異種遺伝子は第1のプロモーターおよび第1の異種遺
伝子と同じまたは異なるものである。このようにプロモーター/異種遺伝子構築
物のペアが単一のLAT P2領域に反対方向で隣接していると、異種遺伝子のペアの
長期にわたる発現がなされる。それらの遺伝子はおなじものでも異なるものであ
ってもよく、同じまたは異なるプロモーターで駆動されるものである。さらに、
適切な生理学的条件下では、第1の異種遺伝子の産物は第2の遺伝子の発現を制御
する(またはその逆)ことができる。
【0042】 異種遺伝子および制御配列を含んでいる発現カセットおよびその他の適切な構
築物は、当業者には公知の、通常行われているクローニング技法を用いて作製す
ることができる(例えば、Sambrookら, 1989, Molecular Cloning-a laboratory
manual, Cold Spring Harbor Pressを参照)。本明細書ではLAT P2領域はHSV1株1
7+のHSV1ヌクレオチド118866〜120219(GenBank HE1GC:PstI-BstXI部位から)、
この領域の断片または誘導体、と定義され、他のHSV1株およびHSV2の相同な領域
であって、それらに連結されるプロモーターに対して長期にわたる発現能を与え
得るものが含まれる。
【0043】 異種遺伝子の発現レベルをその細胞の生存期間にわたって制御できるように、
誘導可能であることもプロモーターには有利であろう。誘導可能とはそのプロモ
ーターを用いて得られる発現レベルを制御できることを意味する。例えば、1つ
以上の異種遺伝子がHSVゲノム中に挿入される好ましい実施形態においては、1つ
のプロモーターはtetリプレッサー/VP16転写アクチベーター融合タンパク質に対
して応答するプロモーターを含み、発現が制御される異種遺伝子を駆動する。第
2のプロモーターは、tetリプレッサー/VP16融合タンパク質の発現を駆動する強
力なプロモーター(例えば、CMV IEプロモーター)を含み得る。このように、この
例においては、第1の異種遺伝子の発現はテトラサイクリンの存在または不在に
依存することとなろう。
【0044】 さらに、これらのプロモーターの任意のものを、さらに制御配列、例えばエン
ハンサー配列(LAT領域のエレメントを含む)を付加することによって改変するこ
とができる。上述の2種以上の異なるプロモーターから得た配列エレメントを含
むキメラプロモーター、例えばMMLV LTR/LAT融合プロモーター(Lokensgardら, 1
994)またはLAT領域のエレメントを含むプロモーター(上記参照)も用いることが
できる。
【0045】 異種遺伝子は、例えば細胞分裂の制御に関連するタンパク質、例えば、神経栄
養性成長因子(脳由来神経栄養因子、グリア細胞由来神経栄養因子、NGF、NT3、N
T4、およびNT5、GAP43など)を含む分裂促進性成長因子、サイトカイン(α、β、
もしくはγインターフェロン、IL-1、IL-2を含むインターロイキン、腫瘍壊死因
子、またはインシュリン様成長因子IもしくはII)、プロテインキナーゼ(MAPキナ
ーゼなど)、プロテインホスファターゼ、ならびに上記のいずれかのものの細胞
性受容体をコードすることができる。異種遺伝子はまた、細胞性代謝経路に関与
する酵素、例えばアミノ酸生合成もしくは分解に関与する酵素(チロシン水酸化
酵素もしくはGTP-シクロヒドロラーゼなど)、プリンもしくはピリミジン生合成
もしくは分解、ならびにドパミンなどの神経伝達物質の生合成もしくは分解、ま
たはそのような経路の制御に関与するタンパク質、例えばプロテインキナーゼお
よびホスファターゼをコードすることもできる。異種遺伝子はまた、転写因子ま
たはそれらの因子の制御に関与するタンパク質、例えばBrn3ファミリーまたはRb
もしくはp107などのRbファミリーのポケットタンパク質のメンバー、膜タンパク
質(ロドプシンなど)、構造タンパク質(ジストロフィンなど)またはhsp70などの
ヒートショックタンパク質などをコードすることもできる。
【0046】 好ましくは、異種遺伝子は治療用のポリペプチドをコードする。例えば、上述
のタンパク質のうち、チロシンヒドロキシラーゼおよびグリア細胞由来神経栄養
因子はパーキンソン病の治療に用いることができ、ロドプシンは眼の障害の治療
に用いることができ、ジストロフィンは筋ジストロフィーの治療に用いることが
でき、ヒートショックタンパク質は虚血ストレスに伴う心臓および脳の障害の治
療に用いることができる。治療に用いられるポリペプチドにはまた、リシンなど
の細胞傷害性ポリペプチド、あるいは、例えばウイルス指向性酵素プロドラッグ
療法または遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法での使用のための前駆体プロドラ
ッグを細胞傷害性化合物へ変換できる酵素も含まれる。後者では、その酵素を細
胞表面へと向かわせるための適切なシグナル配列、好ましくはその酵素が細胞膜
につなぎ止められている一方で細胞表面の外部に暴露されるものとするシグナル
配列を有していることを確認することが望ましい。適切な酵素としては、WO93/0
8288に開示されている大腸菌(E.coli)のニトロレダクターゼなどの細菌性ニトロ
レダクターゼ、またはカルボキシペプチダーゼ、特にWO88/07378で開示されてい
るカルボキシペプチダーゼCPG2が挙げられる。他の酵素もまた、EP-A-415731を
参照すると見出し得る。適切なプロドラッグとしてはナイトロジェンマスタード
プロドラッグ、およびその他WO88/07378、WO89/10140、W090/02729、およびWO93
/08288に述べられているものなどの化合物が挙げられるが、これらを参照により
本明細書中に組み入れることとする。
【0047】 異種遺伝子はまた、ワクチンとして用いるための抗原性ポリペプチドをコード
することもできる。好ましくはそのような抗原性ポリペプチドは病原性の生物体
、例えば細菌またはウイルスから誘導される。
【0048】 異種遺伝子はまた、マーカー遺伝子(例えばβ-ガラクトシダーゼもしくはグリ
ーン蛍光タンパク質をコードする)、または遺伝子産物が他の遺伝子の発現を制
御する(例えば、上述のtetリプレッサー/VP16転写活性化因子融合タンパク質を
含む転写制御因子)遺伝子も含み得る。
【0049】 遺伝子治療およびその他の治療での応用においては複数の遺伝子の投与がおそ
らく必要となるであろう。複数の遺伝子の発現は種々の病状の治療のために有益
であろう。ヘルペスウイルスは他のウイルスベクターシステムが持つようなパッ
ケージング能の制限がないので、ユニークに好適である。従って、そのゲノム中
に複数の異種遺伝子を収めることができる。例えば、このことを行うには少なく
とも2つの方法がある。例えば1つ以上の異種遺伝子およびそれに関連する制御配
列を特定のHSV株中に導入しうる。また、上述のとおり、中央に配置したLAT P2
エレメントから反対の方向に向いた、プロモーターのペア(同じものまたは異な
るもの、これらのプロモーター各々が1つの異種遺伝子(同じまたは異なる異種遺
伝子)の発現を駆動する)も使用できる。
【0050】 E. 構造遺伝子の補足 本発明の細胞系中に存在する核酸配列は、機能的な構造ヘルペスウイルスポリ
ペプチドをコードしており、トランスで増殖させようとしている変異体ヘルペス
ウイルス中の対応する変異型内在性遺伝子の活性を補足することができる。典型
的には、機能を補足する遺伝子は変異型内在性遺伝子の相同体となるであろう。
既知のものではない、適切な相同体の同定は上述の通りである。しかし、上記で
考察したとおり、機能的構造遺伝子は、変異型ウイルス中に存在する変異型内在
性遺伝子での相同的組換えにより、その変異が修復されるようには組換えを受け
ないものでなければならない。従って、これら2つの遺伝子間のヌクレオチドの
同一性のレベルは、この2つの配列間の相同組換えが起きえないようなものでな
ければならない。このことを達成するために必要なヌクレオチド相同性の適切な
レベルについては上に述べている。
【0051】 故に、機能的構造遺伝子は、典型的には、異なるウイルス種などの変異型内在
性遺伝子とは異なるウイルスを起源とするものである。従って例えば、変異体ヘ
ルペスウイルスが、その内在性VP16遺伝子中に変異のあるHSVである場合には、
機能的遺伝子は異なるウイルスからのVP16相同体となろう。そのようなものとし
ては例えばウマヘルペスウイルスの遺伝子12、ウシヘルペスウイルスのBTIF遺伝
子、またはVZV ORF10遺伝子が挙げられる。特に好ましいVP16配列はEHV1からの
遺伝子12をコードするものである(完全なEHV1ゲノムのnts 13505-14944[GenBank
file HSECOMGEN])。
【0052】 同様に、内在性遺伝子12またはBTIGにそれぞれ変異のあるウマまたはウシヘル
ペスウイルスを増殖させることが望ましい場合には、それらの細胞系に機能的HS
V VP16コード配列を含ませることができる。
【0053】 機能的構造ポリペプチドのコード配列は制御配列と作動可能に連結させた状態
でそのポリペプチドを本発明の細胞系内で発現させる。本発明の細胞系は典型的
には哺乳動物細胞で、それ故に制御配列は哺乳動物細胞中で機能し得る制御配列
である。その制御配列はその細胞系の中で構成的に活性なものであってもよく、
または誘導可能なものであってもよい。適切な制御配列についは上述のとおりで
ある。
【0054】 F. 細胞系 本発明で用いられる細胞系としては、細胞系内でポリペプチドの発現ができる
ように制御配列と作動可能に連結させた状態で機能的構造ヘルペスウイルスポリ
ペプチドをコードする配列を含んでいるいかなる細胞系も含むものである。適切
な細胞系はヘルペスウイルスの宿主となりコロニーを形成する細胞系である。典
型的には細胞系はげっ歯類またはヒト細胞系などの哺乳動物細胞系である。
【0055】 機能的構造ヘルペスウイルスポリペプチドは、相同性ポリペプチドの遺伝子が
変異されている別のウイルスの増殖を補足できる特定のウイルスに由来するポリ
ペプチドである。好ましいポリペプチドはウイルス中で必須な構造的役割を果た
し、また、第2の機能としてその機能の不活化によってウイルス増殖の効率が低
減するようなものである。HSV1またはHSV2の場合には、好ましい変異としては、
VP16の遺伝子中でのAceら, 1988またはSmileyとDuncan, 1997に述べられている
タイプのものが挙げられる。このように、本発明の好ましい細胞系は別のウイル
ス由来のVP16と機能的同等物の遺伝子を含有しているもので、例えばEHV1からの
遺伝子12、BHVからのBTIF、またはVZVからのORF10などがある。
【0056】 機能的ヘルペスウイルス構造ポリペプチドを発現している細胞系は、その構造
ポリペプチドをコードする核酸を含んでいるベクター、好ましくはプラスミドベ
クター、および選択可能なマーカー、例えばネオマイシン耐性をコードするベク
ター、好ましくはプラスミドベクターを用いて哺乳動物細胞、例えばVero細胞ま
たはBHK細胞を同時トランスフェクションするなどの標準的な方法によって産生
できる。次いで、選択可能なマーカーを有しているクローンをさらにスクリーニ
ングし、どのクローンが機能的ポリペプチドを発現しているかを決定する。この
ことは、例えば、当業者には公知の方法を用いて、それらのクローンについての
VP16変異体HSV株の増殖をサポートする能力に基づいて行われる(RiceとKnipe, 1
990に記載のように、など)。
【0057】 特に好ましい細胞系はBHK細胞またはVero細胞に基づいたもので、EHV1遺伝子1
2配列を、ICP27および/またはICP4、あるいはHSV2由来の同等物の遺伝子ととも
に含んでおり、それによってVP16に不活化変異を有し、それとともにICP27およ
び/またはICP4の遺伝子にさらに不活化変異を有するHSVの増殖が可能となる。細
胞系中のDNAと増殖させるウイルス中に残存しているDNAとの間にオーバーラップ
がなく、それ故にウイルス中のDNAと細胞系中のDNAとの間の相同組換えによる、
増殖させるウイルス中での不活化変異の修復が防止されることが好ましい。
【0058】 ICP27および/またはICP4を発現している細胞系は当業界では公知である。例え
ばV27細胞(RiceおよびKnipe, 1990)、B130/2細胞(WO98/30707)、またはE26細胞(
Samaniegoら, 1995)が挙げられる。これらの細胞系を利用して、本発明の細胞系
を産生できる。しかし本発明者らは、そのような実施形態においてICP4およびIC
P27を駆動するプロモーターの選択が重要であることを見出したので、本発明は
また、ICP4発現をICP4プロモーターまたはMMLV LTRプロモーターにより駆動させ
、ICP27発現をICP27プロモーターにより駆動させることにより、かかるプロモー
ター選択が最適化されている細胞系をも提供する。
【0059】 本発明を下記の実施例を参照して記述するが、これらの実施例は説明の目的の
みを意図したもので限定するものではない。
【0060】実施例 下記の実施例中で用いているHSV-1のヌクレオチド番号は、GenBankファイルHE
1CGの番号を意味している。実施例1 EHV-VP16はHSVの前初期遺伝子プロモーターをトランス誘導できる HSV1 ICP4、ICP0、またはICP27のいずれかの制御下にあるクロラムフェニコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子を有するプラスミド構築物(それぞれpIGA1
02、pIGA65、pIGA95; GelmanおよびSilverstein, 1987)を、対照プラスミド(pcD
NA3; Invitron)、あるいはHSV-VP16(pCMV16; Moriuchiら, 1995)またはEHV-VP16
配列のいずれかが挿入された類似のプラスミドとともにBHK細胞中に同時トラン
スフェクションし、CATアッセイを行った(Gorman, 1985の方法によって)。6ウエ
ルのプレート中への1回のトランスフェクションあたり各プラスミド5μgを用い
た。実験を2回行った。EHV-VP16発現構築物(pcDNA3/E)は、元来EHV-VP16配列が
クローン化されていたpcDNA1/ampからEcoRIおよびXbaIで消化してEHV-VP16配列
を遊離させた後、pcDNA3(Invitrogen)のEcoRVおよびXbaI部位中へ挿入すること
によって構築した。
【0061】結果 結果は、14C標識クロラムフェニコールの、非アセチル化型からアセチル化型
への転換を、得られたTLCプレートのリン酸イメージ(phoshorimagery)によって%
で示している。2回の実験の各々の結果を示す。供試プロモーター アクチベーター 転換率% ICP0 対照 31,33 ICP0 HSV-VP16 83,83 ICP0 EHV-VP16 82,84 ICP27 対照 15,16 ICP27 HSV-VP16 44,38 ICP27 EHV-VP16 27,34 ICP4 対照 34,30 ICP4 HSV-VP16 75,76 ICP4 EHV-VP16 75,63
【0062】 これらの結果は、EHV-VP16が、ICP0およびICP4プロモーターについてはHSV-VP
16と同程度に、ICP27プロモーターではやや低い程度に(いずれの場合でもHSV-V
P16に対しての反応性はその他の2つの供試プロモーターよりも低かった)、HSV
1 IEプロモーターをトランスで活性化しうることを示している。このことはEHV-
VP16が、ウイルス増殖に用いられる細胞中で発現されれば、in1814(Aceら, 1989
)などの、内部でトランス活性化活性が減少されたHSV-VP16変異体を機能的に補
足することがあり得、かかるウイルスがより効率的に増殖しうる細胞系を提供す
ることを示唆している。
【0063】実施例2: EHV-VP16を含有する細胞系はVP16に不活化変異を有するHSVの増殖を
促進し得る EHV-VP16を含む細胞系が、VP16遺伝子の変異(補足されなければIEプロモータ
ーの効率的なトランス活性化を妨げて低いウイルス増殖しか起こらないようにす
るもの)に起因するウイルス増殖の欠損を補足しうるか調べるための実験を行っ
た。
【0064】 BHK細胞(37℃/5% CO2、DMEM+10% FCS(双方ともGibco)中で増殖させたもの)を
10cmのプレート中で、ネオマイシン(neo)耐性選択可能マーカー遺伝子のみを含
むプラスミド(pcDNA3)、またはneoをCMVプロモーターおよびBGHpA配列の制御下
にあるEHV-VP16と共に含むプラスミド(pcDNA3/E)のいずれかでトランスフェクト
した(Gorman, 1985の方法による)。トランスフェクション後、G418(800μg/ml;G
ibco)を用いて安定的にトランスフェクトされなかった細胞を殺滅させ、プレー
トを増殖させた。細胞をトリプシン処理して24ウエルのプレートに移し、ウイル
ス変異体および野生型対照ウイルスについて評価するために増殖させた。この方
法によって対照(neoのみ)およびEHV-VP16遺伝子の供試変異体に対する「平均の
」効果が得られた。この結果は、各場合において単一のトランスフェクタントか
ら得られるコロニーをクローン化した場合には生じ得るクローンごとの変動を有
することなく得られた。結果は、感染後24時間の1ウェルあたりの総ウイルス収
率を、MOI 0.01での感染の倍数で示している。実験は培地中にHMBA(3mM)を含め
るかまたは含めずに各2回行った(MacFarlaneら, 1992)。
【0065】 ウイルス17+は野生型ウイルスであり、in1814はVP16中に不活化変異を含んで
おり(Aceら, 1989)、ウイルス1764はVP16の不活化変異と共にICP34.5の双方のコ
ピーを欠失しているが、それ自体はBHK細胞中のHSVの増殖に顕著な影響を及ぼさ
ない(Coffinら, 1996を参照せよ)。
【0066】結果 供試ウイルス トランスフェクトした 収率 +HMBA 収率 −HMBA プラスミド 17+ neo 150000/250000 400000/250000 in1814 neo 10000/15000 1000/1500 EHV-VP16 200000/90000 80000/65000 1764 neo 35000/45000 5000/4500 EHV-VP16 400000/300000 100000/250000
【0067】 これらの結果はEHV-VP16が、VP16の遺伝子中に不活化変異が含まれていること
に起因するウイルス増殖の欠損(in1814ウイルス中で見られるようなもの(Aceら
, 1989)など)をEHV-VP16が補足し得ることを示していた。そのようなウイルス
はほぼ野生型のレベルにまで増殖させることができ、その補足のレベルは、VP16
に変異のあるHSVの増殖効率を増大させるとして以前に報告された、培地中への
HMBAの添加によって達成されたレベル(MacFarlaneら, 1992)を超えていた。
【0068】実施例3: EHV-VP16およびICP27を含んでいる細胞系はVP16およびICP27に欠損
のあるHSV変異体の増殖を増大させる 上述の方法で調製されたBHK細胞系を、ICP27のみを含んでいるプラスミド(pSG
130BS[Sekulovichら, 1988]からSacIおよびSphIで切除しpPGKneo[Sorianoら, 19
91]のEcoRIおよびSalI部位の間に挿入したICP27コード配列プロモーターおよび
ポリA)、またはICP27を含んでいるプラスミドをpcDNA3/Eと共に用いてトランス
フェクトした後にクローン化した。この実験では、2重トランスフェクションで
得られたクローンを用いると、ほとんどの場合、ICP27およびvmw65(VP16; HSV1
変異体1764/27/−/pR20)中に欠損のあるウイルスの、増殖曲線で評価したものと
してのより良い増殖が得られることを示していた。これらの実験ではまた、vmw6
5(VP16)が不活化され、かつICP27が除去されたかまたは除去されていないHSV1変
異体をEHV遺伝子12を含んでいる細胞で増殖させる場合には、かなり大きなプラ
ークとなることを示していた。
【0069】 ウイルス1764/27/−/pR20は、ウイルス株1764の全ICP27コード配列、nts 118,
866-120,219 [PstI-BstXI])/CMV/lacZカセット、UL55、UL56(双方とも非必須遺
伝子; Roizman, R.およびA. Sears, 1996)およびLAT領域の一部(Coffinら, 1996
)を欠失させるために、隣接領域(固有BgIII部位を挟んで分離されたnts 110,095
-113,229[EcoRI-NdeI]および120,468-125068[HpaI-SacI])およびB130/2細胞上で
のX-gal染色プラークの選択と精製(Howardら, 1998)を用いて挿入された、HSV1
LATを含んでいる。
【0070】実施例4: ICP4を駆動するプロモーターの選択は、VP16、ICP27、およびICP4を
欠失した各HSV変異体を効果的に増殖する細胞系の作製に重要である VP16に欠損があり、ICP27およびICP4の双方も欠失されているウイルスの効果
的な増殖を行うことのできる細胞系を作製した。
【0071】 上述のとおり、本発明者らはICP27の発現を駆動するICP27プロモーターは、細
胞がEHV遺伝子12をさらに含む場合にはICP27を欠失したウイルスを補足する、効
果的な細胞系を提供することを見出した。従って、ICP27プロモーターは、VP16
、ICP27、およびICP4を補足する細胞においてICP4の最適な制御もまた提供する
ものと期待された。そこで、フレオマイシン耐性をコードするプラスミド(プラ
スミドp27/4zeo)中でIVP27プロモーターおよびポリ-Aの制御下にあるICP4を、IC
P27を欠きVP16に欠損のあるウイルスの増殖を効果的に行い得る細胞(上述の実施
例3で作製した細胞系)中にトランスフェクトした細胞系を産生させた。フレオマ
イシン/ネオマイシン耐性のコロニーを取りだしクローン化した。しかし、これ
らは通常はVP16、ICP27、およびICP4に欠損のあるHSV-1変異体(ウイルス1764/27
/−4−/pR20.5)の非常に低い増殖しか示さず、取り上げた140個のコロニーのう
ち顕著な増殖の見られたものは5個のみであった。プラスミドp27/4zeoは、プラ
スミドp4/2zeo中のICP4プロモーター(BstEII部位の上流[HSBV-1 nt 131,187];下
記参照)を、pSG130BS由来のBamHI-DrdI(HSV-1 nts 113,322-113,728)プロモータ
ー断片で置換して構築した。ICP4ポリA配列を、MseI部位(HSV-1 nt 127,167)の
後ろの配列を除去して、ICP27ポリA配列をコードするpSG130BSからのEcoNI-SacI
(HSV-1 nts 115,267-115,743)断片で置換した。
【0072】 ウイルス株1764/27-/4-/pR20.5を、HSV-1 LAT配列(実施例3のPstI-BstXI)によ
って隔てられ、背中合わせの方向にある、CMVプロモーターおよびRSVプロモータ
ーによってそれぞれ駆動されるGFP(E-GFP; Clontech)とlacZからなるカセットを
ICP4隣接領域(HSV-1 nts 123,459-126,774[Sau3aI-Sau3aI]および131,730-13479
2[SphI-KpnI]、ただしnts 124,945-125,723[NotI-NotI; これはICP34.5をコード
する]が欠失しており、プラスミドpDICP4中の固有XbaIおよびSalI部位によって
隔てられている)に挿入し、ウイルス株1764/27-w(lacZ挿入部分が空のICP27隣接
配列との組換えによって除去されたウイルス株1764/27-/pR20)中にICP27およびI
CP4の双方を補足するB4/27細胞を用いて組換えることによって構築した。X-gal
染色/グリーン蛍光プラークを選択し、さらに精製した。細胞系B4/27は、pSG130
BS、プラスミドp4/2(下記参照)、およびpMAMneo (Invitrogen)をBHK細胞中に同
時トランスフェクションすることによって調製した。次いでネオマイシン耐性ク
ローンを選択した。
【0073】 これらの失望的な結果が得られた後、他のプロモーターのICP4の駆動を試験し
た。こうして、フレオマイシン/ネオマイシン耐性の細胞系をさらに作り、その
細胞系では、ICP4は、ICP4プロモーターおよびポリA(プラスミドp4/2zeoを用い
て)、またはデキサメタゾンで誘導可能なMMTVプロモーターとSV40のポリA(プラ
スミドpMAMzeo/ICP4を用いて)によって駆動された。この実験では、ICP4プロモ
ーターによるICP4発現の正確な制御またはデキサメタゾンによって誘導可能なIC
P4発現は、VP16、ICP27、およびICP4を欠損しているHSV-1変異体の増殖を改善す
る能力のある細胞系を提供し得ることが期待された。
【0074】 p4/2zeoの構築のために、フレオマイシン耐性遺伝子カセットをプラスミドpVg
RxR(Invitrogen)からBamHI断片として切り出し、プラスミドp4/2の固有BglII部
位中に挿入してプラスミドp4/2zeoを作製した。p4/2はpSP72(Promega)中に挿入
されたICP4プロモーター、コード領域、およびポリA(HSV-1 nts 126,764-131,73
0[DdeI-SphI])を含んでいる。pMAMzeo/ICP4の構築のために、プラスミドpMAMneo
(Invitrogen)中のネオマイシン耐性遺伝子(BamHI断片として切り出したもの)を
、上述のフレオマイシン耐性遺伝子(これもBamHI断片である)と置換した。次
いで、ICP4コード領域(HSV-1 nts 127,167-131,187[MseI-BstEII])をMMTVプロモ
ーターの後ろのXhoI部位に挿入した。
【0075】 ICP4およびMMTVプロモーターをそれぞれ用いている138および88クローンを取
り、ウイルス増殖特性を分析した。ICP4プロモーターで駆動されるクローンのう
ち、大多数はVP16/ICP27/ICP4欠損ウイルスの増殖に対する許容性は限られてい
たが、2つのクローンは効率的な増殖が可能であった。この相違はおそらく、VP1
6/ICP27/ICP4欠損ウイルスの効率的な増殖が可能ないくつかのまれな場合におい
ては、EHV遺伝子12を発現している細胞のコンテクストにおいてICP4プロモータ
ーの制御を変更するような位置の効果を反映したものと考えられた。しかし、IC
P4がMMTVプロモーターによって制御されているクローンの88個のうち60個に効率
的な増殖が認められ、少なくともICP4プロモーターを含有している2つの細胞系
での増殖と同等であった。このことは、ICP4プロモーターを用いた場合と異なり
、MMTVプロモーターについては、位置効果はEHV遺伝子12を含む細胞系のコンテ
クストにおいて効果的なICP4制御には最小限の重要性しかないことを示している
。しかし、ICP4をMMTVプロモーターの制御下に含んでいる細胞を用いて、接種時
にデキサメタゾンを培地中に添加するとVP16/ICP27/ICP4欠損ウイルスの収量は
増大しなかった。参照文献
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年11月27日(2000.11.27)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) //(C12N 5/10 C12R 1:93) C12R 1:91) C12N 15/00 A (C12N 7/04 5/00 B C12R 1:93) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CR, CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G D,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN ,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC, LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,M K,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO ,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ, TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,Y U,ZA,ZW (72)発明者 コフィン、ロバート、スチュアート イギリス国 ダブリュ1ピー 6ディーピ ー ロンドン、クリーブランド ストリー ト 46、ザ ウィンデイヤー ビルディン グ、デパートメント オブ モレキュラー パソロジー、デヴィジョン オブ パソ ロジー、ユーシーエル メディカル スク ール (72)発明者 ラッチマン、デヴィット、シーモア イギリス国 ダブリュ1ピー 6ディーピ ー ロンドン、クリーブランド ストリー ト 46、ザ ウィンデイヤー ビルディン グ、デパートメント オブ モレキュラー パソロジー、デヴィジョン オブ パソ ロジー、ユーシーエル メディカル スク ール Fターム(参考) 4B024 AA01 CA02 DA02 EA02 FA02 FA11 GA25 HA03 4B065 AA90 AA95 AB04 BA02 BA14 CA44 4C084 AA13 NA01 NA07 NA14 ZB012 ZB212 4C087 AA01 AA02 AA03 AA05 BB64 BB65 BC83 NA01 NA14 ZB33

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内因性HSV VP16遺伝子または該遺伝子の相同体中に突然変異
    を有する突然変異ヘルペスウイルスを増殖するための方法であって、細胞系に該
    突然変異ヘルペスウイルスを感染させ、該細胞系を培養することを含んでなり、 前記細胞系は、機能的単純ヘルペスウイルス(HSV) VP16ポリペプチドまたはそ
    の相同体をコードする核酸配列を、該細胞系での該ポリペプチドの発現を可能と
    する制御配列に作動可能に連結させた状態で含み、前記核酸配列は、(i)該内
    因性遺伝子を補足することができるが、(ii)該内因性遺伝子との相同的組換え
    を受けることはできないものである、上記方法。
  2. 【請求項2】 前記突然変異が、前記内因性遺伝子のウイルス転写活性化能
    を低下または破壊する、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 機能的HSV VP16相同体が、ウシヘルペスウイルス遺伝子およ
    びウマヘルペスウイルス遺伝子より選択されるヘルペスウイルス遺伝子によりコ
    ードされる、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記ヘルペスウイルス遺伝子が、ウマヘルペスウイルス1型
    遺伝子12、またはウシヘルペスウイルス遺伝子BTIFである、請求項3記載の方法
  5. 【請求項5】 前記制御配列が、構成的に活性なプロモーターまたは誘導プ
    ロモーターを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記突然変異ヘルペスウイルスが単純ヘルペスウイルス(HS
    V)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記HSVがHSV-1またはHSV-2である、請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記突然変異ヘルペスウイルスが、該ウイルスの1以上の追
    加の内因性遺伝子を機能的に不活化する追加の突然変異を含み、前記細胞系が、
    該追加の機能的に不活性な内因性遺伝子を補足する機能的ヘルペスウイルス遺伝
    子をコードする追加の核酸配列を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方
    法。
  9. 【請求項9】 前記追加の核酸配列が、HSV-1 ICP27および/またはICP4、ま
    たはHSV-2もしくは他のヘルペスウイルスにおけるこれらの同等物をコードする
    、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 HSV-1 ICP27またはその同等物が、ICP27プロモーターによ
    り駆動され、かつ/またはHSV-1 ICP4またはその同等物がMMTV LTRプロモーター
    により駆動される、請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記培養した細胞系から突然変異ヘルペスウイルスを単離
    し、場合により前記突然変異ヘルペスウイルスを精製することをさらに含む、請
    求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 製薬上許容可能な担体または希釈剤を用いて前記突然変異
    ヘルペスウイルスを医薬組成物として調製することをさらに含む、請求項11記
    載の方法。
  13. 【請求項13】 請求項1、2、6または7のいずれか1項に規定される突
    然変異ヘルペスウイルスを増殖するための、請求項1、3〜5、8、9または1
    0のいずれか1項に規定される細胞系の使用。
  14. 【請求項14】 請求項1、3〜5、8、9または10のいずれか1項に記
    載の細胞系。
  15. 【請求項15】 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により得られ
    るウイルス。
  16. 【請求項16】 請求項12記載の方法により得られる医薬組成物。
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