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JP2002262872A - ホウ素輸送に関与する遺伝子 - Google Patents

ホウ素輸送に関与する遺伝子

Info

Publication number
JP2002262872A
JP2002262872A JP2001062191A JP2001062191A JP2002262872A JP 2002262872 A JP2002262872 A JP 2002262872A JP 2001062191 A JP2001062191 A JP 2001062191A JP 2001062191 A JP2001062191 A JP 2001062191A JP 2002262872 A JP2002262872 A JP 2002262872A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
boron
bor1
amino acid
leu
gene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001062191A
Other languages
English (en)
Inventor
Junpei Takano
順平 高野
Masaharu Kobayashi
正治 小林
Kyotaro Noguchi
享太郎 野口
Miho Yasumori
美帆 安森
Toru Fujiwara
徹 藤原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2001062191A priority Critical patent/JP2002262872A/ja
Publication of JP2002262872A publication Critical patent/JP2002262872A/ja
Pending legal-status Critical Current

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Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 シロイヌナズナbor1-1変異株のホウ素輸送に
関与する遺伝子及びその利用方法の提供。 【解決手段】 下記の何れかの塩基配列を有する遺伝
子。 (A)Arabidopsis thaliana由来
の特定のアミノ酸配列をコードする塩基配列; (B)前記配列において1から複数個のアミノ酸が欠
失、付加又は置換されているアミノ酸配列で、ホウ素輸
送活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列; (C)前記配列と少なくとも60%以上の相同性を有す
るアミノ酸配列で、ホウ素輸送活性を有するアミノ酸配
列をコードする塩基配列; (D)Arabidopsis thaliana由来
の特定の塩基配列; (E)前記配列において1から複数個の塩基が欠失、付
加又は置換されている塩基配列で、ホウ素輸送活性を有
するタンパク質をコードする塩基配列;又は (F)前記配列とストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズする塩基配列でホウ素輸送活性を有するタンパク
質をコードする塩基配列:

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホウ素輸送遺伝子
に関する。より詳細には、本発明は植物におけるホウ素
の輸送に関与する遺伝子、並びにその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】ホウ素(B)は高等植物の微量必須元素
の一つである(Loomis, W.D. 他 (1992), Biofactors
3: 229-239)。ホウ素欠乏は、この60年間で80以上の国
で130種以上の農作物で報告されており(Shorrocks, V.
M. (1997) Plant and Soil 193:121-148)、農業上主要
な問題点の一つといえる。しかし、ホウ素栄養の生理機
能や植物体中での動態については不明な点が多く、特に
分子レベルの知見が非常に少ない。
【0003】ホウ素欠乏症は、一般に生長点から現れ
る。例として、根の伸長の急速な停止、葉の展開抑制、
稔性の低下が挙げられる(Loomis, W.D. 他 (1992), Bi
o-factors 3: 229-239;Marschner, H. (1995) 2nd ed.
Academic Press, San Diego,CA;Dell, B. and Huang,
L. (1997) Plant and Soil 193: 103-120)。古くより
なされてきたホウ素欠乏症の観察は、ホウ素欠乏の一次
影響が細胞の伸長の低下にあることを示している(Del
l, B. 他 (1997) Plant and Soil 193: 103-120)。最
近になって、ホウ素は細胞壁に局在し、ペクチン質多糖
ラムノガラクツロナンIIと結合した形態で存在すること
が示された(Kobayashi, M.,他 (1996) Plant Physiol.
110: 1017-1020; Ishii, T. 他 (1996) Carbohydr, Re
s. 284: 1-9; O'Neill, M.A., 他 (1996) J.Biol. Che
m. 271: 22923-22930)。さらに、数種の植物において
ホウ素要求性は、細胞壁のペクチン含量と相関すること
が示された(Matoh, T., 他 (1993) Plant Cell Physio
l. 34: 639-642; Hu, H., 他 (1996) J. Exp. Bot. 47:
227-232)。これらの報告は、ホウ素の生理機能の一つ
が細胞壁の構造維持にあることを強く示唆している。し
かしその他のホウ素の生理機能については推定の域をで
ていない。
【0004】また、ホウ素の植物体中での動態について
も不明な点が多く残されている。ホウ素の吸収・移行は
古くより、蒸散流に従う受動的なプロセスであると説明
されてきた(Marschner, H. (1995) 2nd ed. Academic
Press, San Diego, CA)。近年の研究においても、タバ
コの培養細胞、カボチャとヒマワリの根におけるホウ素
の安定同位体を用いたトレーサー実験によって、培地中
のホウ素濃度の上昇に比例してホウ素の吸収も直線的に
上昇することや、これらの植物によるホウ素の吸収が、
代謝阻害剤や、高温または低温処理により抑制されない
ことが示されている(Brown, P.H., 他 (1994) Physio
l. Plant. 91: 435-441)。これは、ホウ素の吸収が受
動拡散によってなされていることを示唆している。
【0005】ところが、ホウ素の積極輸送を示唆する実
験結果も報告されている。つい最近Dannel, F., 他 (20
00) J.Plant Physiol. 156: 756-761は、ヒマワリにお
いて安定同位体10Bを用いた短時間のトレーサー実験を
行い、水耕液中トレーサーホウ素濃度の上昇に対して根
の水溶性画分と導管液のトレーサーホウ素濃度は、直線
的な成分と飽和する成分からなる曲線を示して上昇する
ことを報告した。飽和する成分は、2,4−ジニトロフ
ェノール処理や根圏の低温処理によって抑制され、直線
的な成分のみとなった。直線的な成分は受動拡散を、飽
和する成分は未知のキャリアーあるいはチャネルによる
膜輸送を示していると考えられる。根の水溶性画分のホ
ウ素は、主にシンプラストに存在するホウ素を示してい
ると考えられている(Dannel, F., 他 (1998) J.Plant
Physiol. 153: 615-622)。植物の根において水と溶質
が中心柱の導管へ輸送される際、アポプラスト経由の移
行は内皮細胞の細胞壁に形成されているカスパリー線に
よって妨げられているため、少なくとも内皮細胞より外
側において細胞内へ入り、シンプラストを通過しなけれ
ばならない。内皮細胞の内側では再びアポプラストへ放
出され、導管によって地上部へ輸送される(植物生理
学)。したがってヒマワリは低ホウ素条件下で、根の細
胞への吸収と中心柱における細胞外への放出という二つ
のプロセスにおいて、受動拡散と、未知のキャリアーあ
るいはチャネルによる膜輸送の二つのメカニズムでホウ
素を輸送していると考えられる。
【0006】また、地上部における移行性については、
ホウ素は大部分の植物種において篩管転流をしないある
いはわずかしかしない元素であり、主に蒸散流に従って
分配されると考えられてきた(Oertli, J.J. 他 (1970)
Physiol. Plant. 23: 108-116)。一例として、ホウ素
過剰症の見られるトマトをホウ素欠乏条件に移すと、若
い組織がホウ素欠乏症状を示すようになるのに対し、古
い葉のホウ素量は減少しないことが示された(Oertli,
J.J. (1994) Commun. Soil Sci Plant Anal. 25: 1133-
1147)。これは、トマトではホウ素の若い組織への再移
動がほとんどおこらないことを示している。
【0007】一方、マンニトールやソルビトールといっ
た糖アルコールを篩管転流させる植物種においては、ホ
ウ素が器官間を再移動することが示された(Brown, P.
H.,他 (1996) Annal. Bot, 77: 497-505;Brown, P.H.
他 (1998) Botanic. Acta 111: 331-335)。また、ホウ
素は篩管の中でこれら糖アルコールとホウ酸エステルと
して結合して存在していることが示された(Hu, H., 他
(1997) Plant andSoil 193: 49-58)。これらの報告
は、ホウ素は糖アルコールと複合体を形成し、篩管を転
流しうることを示唆している。
【0008】シロイヌナズナ突然変異株bor1-1は、地上
部のホウ素含量が低く、正常な成長に高濃度のホウ素を
必要とする。その表現型として、培地のホウ素濃度が3
μMで頂芽優性の喪失を伴うロゼット葉の展開抑制を示
し、30μMで雌性不稔を示す。また遺伝解析とマッピン
グの結果、劣性−遺伝子変異を二番染色体下腕にもつこ
とが明らかになっている(Noguchi, K., 他 (1997b) Pl
ant Physiol. 115: 901-906)。bor1-1変異株の生理解
析によって、シロイヌナズナ野生型株は低ホウ素条件に
おいて根から茎葉へホウ素を輸送する段階にホウ素の濃
縮機構をもっており、bor1-1変異株はそのプロセスに欠
損をもつことが示唆されている(Noguchi, K., 他 (200
0) J. Plant Physiol. 156: 756-761)。シロイヌナズ
ナの根におけるホウ素の輸送については、安定同位体10
Bを用いたトレーサー実験によりさらに詳細に解析され
ている。bor1-1変異株および野生型株の両ラインにおい
て、培地中トレーサーホウ素濃度の上昇に対して、根の
水溶性画分のトレーサーホウ素濃度は直線的に上昇し
た。また、野生型株における導管液のトレーサーホウ素
濃度は、飽和する成分と直線的な成分の二つの成分から
なる曲線を示して上昇した。一方、bor1-1変異株では飽
和する成分はみられなかった。また、野生型株の導管液
のトレーサーホウ素濃度は低pH処理で減少し、bor1-1
変異株では減少しなかった。これらの結果は、シロイヌ
ナズナにおけるホウ素輸送は、根の細胞への吸収は受動
拡散によって、中心柱における細胞外への放出は受動拡
散と濃縮機構の二つのメカニズムによってなされている
ことを示唆している。濃縮機構は、未知のキャリアーあ
るいはチャネルによるものと考えられる。したがってシ
ロイヌナズナでは、Dannelらが示したヒマワリの根にお
けるメカニズムとは少なくとも一部は異なる可能性があ
るものの、未知のキャリアーあるいはチャネルによるホ
ウ素輸送がなされており、そのメカニズムにBOR1遺
伝子が関与していると考えられる。しかしながら、BO
R1遺伝子は未だ同定されておらず、その遺伝子断片も
クローニングされていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、シロイヌナズナbor1-1変異株の生理解析を行うこと
である。本発明の第2の目的は、BOR1遺伝子を同定
およびクローニングし、その構造と機能を解析すること
である。本発明の第3の目的は、BOR1遺伝子の関わ
るホウ素輸送の分子機構を解明することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記課題を解
決するために鋭意検討した結果、ホウ素輸送に関与する
BOR1遺伝子のクローニングに成功し、本発明を完成
するに至った。即ち、本発明によれば、下記の何れかの
塩基配列を有する遺伝子が提供される。 (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする塩
基配列; (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から
複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているア
ミノ酸配列であって、ホウ素輸送活性を有するアミノ酸
配列をコードする塩基配列; (C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも6
0%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホウ
素輸送活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配
列; (D)配列番号2に記載の塩基配列; (E)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数
個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列で
あって、ホウ素輸送活性を有するタンパク質をコードす
る塩基配列;又は (F)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェント
な条件下でハイブリダイズする塩基配列であってホウ素
輸送活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【0011】本発明の別の側面によれば、下記の何れか
のアミノ酸配列を有するタンパク質が提供される。 (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列; (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から
複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているア
ミノ酸配列であってホウ素輸送活性を有するアミノ酸配
列;又は (C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも6
0%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホウ
素輸送活性を有するアミノ酸配列:
【0012】本発明のさらに別の側面によれば、本発明
の遺伝子を含む組み換えベクターが提供される。本発明
のさらに別の側面によれば、本発明の遺伝子又は組み換
えベクターを有する形質転換体が提供される。形質転換
体は好ましくは植物である。
【0013】本発明のさらに別の側面によれば、ホウ素
輸送遺伝子としての本発明の遺伝子の使用が提供され
る。本発明のさらに別の側面によれば、本発明の遺伝子
をホウ素欠乏感受性植物へ導入することを特徴とする、
当該ホウ素欠乏感受性植物におけるホウ素輸送の欠損を
補う方法、並びに当該方法により作製される、ホウ素輸
送の欠損を補った植物が提供される。
【0014】本発明のさらに別の側面によれば、本発明
の遺伝子を強発現させることを特徴とする、ホウ素欠乏
に対する耐性を有する植物を作製する方法、並びに当該
方法により作製される、ホウ素欠乏に対する耐性を有す
る植物が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。(1)本発明の遺伝子 本発明は、下記の何れかの塩基配列を有する遺伝子に関
する。 (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする塩
基配列; (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から
複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているア
ミノ酸配列であって、ホウ素輸送活性を有するアミノ酸
配列をコードする塩基配列; (C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも6
0%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホウ
素輸送活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配
列; (D)配列番号2に記載の塩基配列; (E)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数
個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列で
あって、ホウ素輸送活性を有するタンパク質をコードす
る塩基配列;又は (F)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェント
な条件下でハイブリダイズする塩基配列であってホウ素
輸送活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
【0016】本明細書において「1から複数個のアミノ
酸が欠失、付加または置換されている」とは、例えば1
〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜
10個、さらに好ましくは1〜5個の任意の数のアミノ
酸が欠失、付加または置換されていることを意味する。
本明細書において「1から複数個の塩基が欠失、付加ま
たは置換されている」とは、例えば1〜20個、好まし
くは1〜15個、より好ましくは1〜10個、さらに好
ましくは1〜5個の任意の数の塩基が欠失、付加または
置換されていることを意味する。
【0017】本明細書において、「配列番号1に記載の
アミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有する
アミノ酸配列」とは、配列番号1のアミノ酸配列との相
同性は60%以上であれば特に制限はなく、例えば、6
0%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80
%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは
95%以上、最も好ましくは98%以上であることを意
味する。
【0018】本明細書において「ストリンジェントな条
件下でハイブリダイズすることができる」とは、DNA
又はRNAなどの核酸をプローブとして使用し、コロニ
ー・ハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイ
ゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼ
ーション法等を用いることにより得られる核酸を意味
し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDN
Aまたは該DNAの断片を固定化したフィルターを用い
て、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダ
イゼーションを行った後、0.1〜2倍程度のSSC溶液
(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウ
ム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下
でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあ
げることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecu
lar Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold S
pring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1
989.以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)
等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0019】ストリンジェントな条件下でハイブリダイ
ズすることができるDNAとしては、プローブとして使
用するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有するD
NAが挙げられ、相同性は、例えば60%以上、好まし
くは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好
ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も
好ましくは98%以上である。
【0020】本明細書において言う「ホウ素輸送活性を
有する」とは、植物などの生体内でホウ素の輸送に何ら
かの形で関与することを意味し、その具体的な作用機構
は特に限定されない。本発明の遺伝子の、具体的な作用
機構の一例としては、低濃度のホウ素供給時の若い葉へ
の優先的ホウ素輸送機構を挙げることができるが、これ
に限定されるものではない。
【0021】本発明の遺伝子の取得方法は特に限定され
ない。本明細書中に開示した配列番号1または配列番号
2に記載のアミノ酸配列または塩基配列の情報に基づい
て適当なブローブやプライマーを調製し、それらを用い
て当該遺伝子が存在することが予測されるcDNAライ
ブラリーをスクリーニングすることにより目的の遺伝子
を単離することができる。
【0022】具体的には、本発明の遺伝子が単離された
シロイヌナズナより、常法に従ってcDNAライブラリ
ーを調製する。次いで、当該ライブラリーから、本発明
の遺伝子に特有の適当なプローブを用いて所望クローン
を選抜する。上記において、cDNAの起源としては、
上記植物由来の各種の細胞または組織を例示することが
できる。また、これらの細胞又は組織からの全RNAの
分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのク
ローニングなどはいずれも常法に従って実施することが
できる。本発明の遺伝子をcDNAライブラリーからス
クリーニングする方法は、例えば、Molecular Cloning,
second edition, Cold Springer HoborLaboratory Pre
ss, book 2 ,8.3-8.86,1989に記載の方法等、当業者に
より常用される方法を挙げることができる。
【0023】さらに、本発明は、(B)配列番号1に記
載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠
失、付加または置換されているアミノ酸配列であって、
ホウ素輸送活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基
配列;(C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なく
とも60%以上の相同性を有するアミノ酸配列であっ
て、ホウ素輸送活性を有するアミノ酸配列をコードする
塩基配列;(E)配列番号2に記載の塩基配列において
1から複数個の塩基が欠失、付加または置換されている
塩基配列であって、ホウ素輸送活性を有するタンパク質
をコードする塩基配列;又は(F)配列番号2に記載の
塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズ
する塩基配列であってホウ素輸送活性を有するタンパク
質をコードする塩基配列:を有する変異遺伝子又は相同
遺伝子もその範囲内に包含する。このような変異遺伝子
や相同遺伝子は、配列番号2に記載の塩基配列又はその
一部を有するDNA断片を利用し、他の生物体等より、
該DNAのホモログを適当な条件下でスクリーニングす
ることにより単離することができる。
【0024】あるいは、上記したような変異DNAは、
化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業
者に既知の任意の方法で作製することもできる。具体的
には、配列番号2の塩基配列を有するDNAを利用し、
これらDNAに変異を導入することにより変異DNAを
取得することができる。例えば、配列番号2の塩基配列
を有するDNAに対し、変異原となる薬剤と接触作用さ
せる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的手法等
を用いて行うことができる。遺伝子工学的手法の一つで
ある部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を
導入できる手法であることから有用であり、モレキュラ
ークローニング第2版、Current Protocols in Molecul
ar Biology, Supplement 1〜38,John Wiley & Sons (19
87-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。
【0025】(2)本発明のタンパク質 本発明は、下記の何れかのアミノ酸配列を有するタンパ
ク質に関する。 (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列; (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から
複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているア
ミノ酸配列であってホウ素輸送活性を有するアミノ酸配
列;又は (C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも6
0%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホウ
素輸送活性を有するアミノ酸配列:
【0026】本発明のタンパク質の入手・製造方法は特
に限定されず、天然由来のタンパク質でも、化学合成し
たタンパク質でも、遺伝子組み換え技術により作製した
組み換えタンパク質の何れでもよい。比較的容易な操作
でかつ大量に製造できるという点では、組み換えタンパ
ク質が好ましい。
【0027】天然由来のタンパク質を入手する場合に
は、該タンパク質を発現している細胞または組織からタ
ンパク質の単離・精製方法を適宜組み合わせて単離する
ことができる。化学合成タンパク質を入手する場合に
は、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボ
ニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化
学合成法に従って本発明のタンパク質を合成することが
できる。また、各種の市販のペプチド合成機(例えば、
桑和貿易(米国Advanced Chem Tech社製)、パーキンェル
マージャバン(米国Perkin−Elmer社製)、ファルマシア
バイオテク(スウェーデンPharmacia Biotech社製)、ア
ロカ(米国Protein Technology Instrument社製)、クラ
ボウ(米国Synthecell-Vega社製)、日本パーセプティブ
・リミテッド(米国PerSeptive社製)、島津製作所等)を
利用して本発明のタンパク質を合成することもできる。
【0028】本発明のタンパク質を組み換えタンパク質
として産生するには、該タンパク質をコードする塩基配
列(例えば、配列番号2に記載の塩基配列)を有するD
NAまたはその変異体または相同体を入手し、これを好
適な発現系に導入することにより本発明のタンパク質を
製造することができる。発現ベクターおよび形質転換体
の作成およびそれを用いた組み換えタンパク質の産生に
ついては本明細書中後記する。
【0029】なお、配列番号1に記載のアミノ酸配列に
おいて1から数個のアミノ酸が欠失、置換又は挿入した
アミノ酸配列を有するタンパク質、又は配列番号1に記
載のアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ
酸配列を有するタンパク質は、配列番号1に記載のアミ
ノ酸配列をコードするDNA配列の一例を示す配列番号
2に記載の塩基配列の情報に基づいて当業者であれば適
宜製造または入手することができる。
【0030】例えば、配列番号2に記載の塩基配列又は
その一部を有するDNAプローブとしてシロイヌナズナ
以外の生物より、該DNAのホモログを適当な条件下で
スクリーニングすることにより単離することができる。
このホモログDNAの全長DNAをクローニング後、発
現ベクターに組み込み適当な宿主で発現させることによ
り、該ホモログDNAによりコードされるタンパク質を
製造することができる。
【0031】(3)本発明の遺伝子を含む組み換えベク
ター、及び本発明の遺伝子を有する形質転換体 本発明の遺伝子は適当なベクターに組み込んで使用する
ことができる。ベクターの種類は特に限定されず、発現
ベクターでも非発現ベクターでもよいが、本発明のタン
パク質を利用する場合には、該タンパク質を発現できる
ような発現ベクターを使用することが好ましい。
【0032】クローニングベクターとしては、大腸菌K
12株中で自律複製できるものが好ましく、ファージベ
クター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる、
具体的には、ZAP Express〔ストラタジーン社製、Strat
egies, 5, 58 (1992)〕、pBluescrlpt II SK(+)〔Nucle
lc Acids Research, 17, 9494(1989)〕、Lambda ZAPII
(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11〔DNA Cloning,
A Practical Approach, 1, 49(1985)〕、λTriplEx(ク
ローンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7
T318U(ファルマシア社製)、pcD2〔Mo1. Cen. Bio1., 3,
280 (1983)〕、pMW218(和光純薬社製)、pUC118(宝酒造
社製)、pEG400〔J.Bac., 172, 2392 (1990)〕、pQE-30
(QIAGEN社製)等をあげることができる。
【0033】発現ベクターとしては、好ましくは宿主細
胞において自立複製可能であるか、あるいは宿主細胞の
染色体中へ組込み可能であるものを使用する。また、発
現ベクターとしては、本発明の遺伝子を発現できる位置
にプロモーターを含有しているものが使用される。
【0034】細菌を宿主細胞として用いる場合は、本発
明の遺伝子を発現させるための発現ベクターは該細菌中
で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソ
ーム結合配列、上記DNAおよび転写終結配列より構成さ
れた組換えベクターであることが好ましい。プロモータ
ーを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0035】細菌用の発現ベクターとしては、例えば、
pBTrP2、pBTac1、pBTac2(いずれもべ一リンガーマンハ
イム社より市販)、pKK233-2(Pharmacia社製)、pSE280(I
nvitrogen社製)、pGEMEX-1(Promega社製)、pQE-8(QIAGE
N社製)、pQE-30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58-11060
0)、pKYP200〔Agrc.Biol.Chem., 48, 669(1984)〕、PLS
A1〔Agrc. Blo1. Chem., 53, 277(1989)〕、pGEL1〔Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)〕、pBlues
crlptII SK+、pBluescriptII SK(-)(Stratagene社製)、
pTrS30(FERMBP-5407)、pTrS32(FERM BP-5408)、pGEX(Ph
armacia社製)、pET-3(Novagen社製)、pTerm2(US468619
1、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC
194、pUC18〔Gene, 33, 103(1985)〕、pUC19〔Gene, 3
3, 103(1985)〕、pSTV28(宝酒造社製)、pSTV29(宝酒造
社製)、pUC118(宝酒造社製)、pQE-30(QIAGEN社製)等が
挙げられる。細菌用のプロモーターとしては、例えば、
trpプロモーター(P trp)、lacプロモーター(P lac)、PL
プロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等
の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SP01
プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等
を挙げることができる。
【0036】酵母用の発現ベクターとして、例えば、YE
p13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、Ycp5O(ATCC3741
9)、pHS19、pHS15等を例示することができる。酵母用の
プロモーターとしては、例えば、PHO5プロモーター、PG
Kプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、g
al1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショック
タンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プ
ロモーター等のプロモーターを挙げることができる。
【0037】動物細胞用の発現ベクターとして、例え
ば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107〔特
開平3-22979; Cytotechnology, 3, 133,(1990)〕、pAS3
-3(特開平2-227075)、pCDM8〔Nature, 329, 840,(198
7)〕、pcDNAI/AmP(Invitrogen社製)、pREP4(Invitrogen
社製)、pAGE103〔J.Blochem., 101, 1307(1987)〕、pAG
E210等を例示することができる。動物細胞用のプロモー
ターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCM
V)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40
の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、
メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモ
ーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。
【0038】植物細胞用の発現ベクターとしては、例え
ば、pIG121-Hm〔Plant Cell Report, 15, 809-814(199
5)〕、pBI121〔EMBO J. 6, 3901-3907(1987)〕等を例示
することができる。植物細胞用のプロモーターとして
は、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロ
モーター〔Mol.Gen.Genet (1990) 220, 389-392〕、ル
ブロースビスフォスフェートカルボキシラーゼスモール
サブユニットプロモーター等を挙げることができる。
【0039】本発明の遺伝子を有する形質転換体は、上
記した組み換えベクターを宿主に導入することにより作
製することができる。細菌の宿主細胞の具体例として
は、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacteri
um属、Bacillus属、Microbacterium属、Serratia属、Ps
eudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、
Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter
属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、P
hormidium属、Rhodobacter属、Rhodopseudomonas属、Rh
odospiri11um属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Syn
necoccus属、Zymomonas属等に属する微生物をあげるこ
とができる。細菌宿主へ組換えベクターを導入する方法
としては、例えば、カルシウムイオンを用いる方法やプ
ロトプラスト法等を挙げることができる。
【0040】酵母宿主の具体例としては、サッカロミセ
ス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッ
カロミセス・ボンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ク
リュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、
トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pu11ulan
s)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces a1
1uvius)等を挙げることができる。酵母宿主への組み換
えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポ
レーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法等
を挙げることができる。
【0041】動物細胞宿主としては、ナマルバ細胞、CO
S1細胞、COS7細胞、CHO細胞等を挙げることができる。
動物細胞への組み換えベクターの導入方法としては、例
えば、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム
法、リポフェクション法等を用いることができる。
【0042】昆虫細胞を宿主として用いる場合には、組
換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫
細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルス
を得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染さ
せ、タンパク質を発現させることができる(例えば、Ba
culovirus Expression Vectors, A Laboratory Manua
1;及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラ
ー・バイオロジー、Bio/Technology, 6, 47(1988)等に
記載)。
【0043】バキュロウイルスとしては、例えば、ヨト
ウガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・
カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイル
ス(Autographa californica nuclear polyhedrosis vir
us)等を用いることができる。昆虫細胞としては、Spodo
ptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21
〔バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクター
ズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイ
チ・フリーマン・アンド・カンパニー(W. H. Freeman a
nd Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Tri
choplusia niの卵巣細胞であるHiFive(インビト
ロジェン社製)等を用いることができる。組換えウイル
スを調製するための、昆虫細胞への組換え遺伝子導入ベ
クターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、
例えば、リン酸カルシウム法又はリポフェクション法等
を挙げることができる。
【0044】本発明の遺伝子の発現方法としては、直接
発現以外に、モレキュラークローニング第2版に記載さ
れている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発
現等を行うことができる。酵母、動物細胞または昆虫細
胞により発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加さ
れたタンパク質を得ることができる。本発明の遺伝子を
保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明
のタンパク質を生成蓄積させ、該培養物より該タンパク
質を採取することにより、本発明のホウ素輸送に関与す
るタンパク質を製造することができる。
【0045】なお、本発明の遺伝子を保持する形質転換
体を培地で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通
常の方法に従って行うことができる。また、形質転換体
の培養物から、本発明のタンパク質を単離精製するに
は、通常の酵素の単離、精製法を用いればよい。例え
ば、本発明のタンパク質が、細胞内に溶解状態で発現し
た場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し
水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機などの適当な手段に
より細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出
液を遠心分離することにより得られた上清から、通常の
タンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等に
よる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチル
アミノエチル(DEAE)セファロース、DIAION HPA-75(三菱
化成社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラ
フィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジ
ンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチル
セファロース、フェニルセファロース等のレジンを用い
た疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ
過法、アフィニティークロマトグラフィ一法、クロマト
フォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の
手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得る
ことができる。
【0046】また、本発明のタンパク質が細胞内に不溶
体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕
し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、
通常の方法により該タンパク質を回収後、該タンパク質
の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液
を、タンパク質変性剤を含まないあるいはタンパク質変
性剤の濃度がタンパク質が変性しない程度に希薄な溶液
に希釈、あるいは透析し、該タンパク質を正常な立体構
造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製
標品を得ることができる。
【0047】(4)本発明の遺伝子の利用 本発明は、ホウ素輸送遺伝子としての本発明の遺伝子の
使用にも関する。ホウ素輸送遺伝子としての本発明の遺
伝子の使用の具体的態様としては、例えば、本発明の遺
伝子をホウ素欠乏感受性植物へ導入することを特徴とす
る、当該ホウ素欠乏感受性植物におけるホウ素輸送の欠
損を補う方法、あるいは、本発明の遺伝子を強発現させ
ることを特徴とする、ホウ素欠乏に対する耐性を有する
植物を作製する方法などが挙げられる。このような方法
により作製される植物も本発明の範囲内である。
【0048】上記した目的で、本発明の遺伝子を植物細
胞に形質転換する場合には、その宿主は形質転換体の目
的等に応じて任意に選択できる。本発明によれば、本発
明の遺伝子を用いて植物体を形質転換することにより、
植物体内中に本発明のホウ素輸送に関与するタンパク質
を蓄積させることができ、それによりホウ素の輸送能を
向上させることができる。本発明において形質転換の対
象となる植物は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花
弁、茎、根、種子等)、植物組織(例えば表皮、師部、柔
組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織等)又は植
物培養細胞のいずれをでもよい。形質転換に用いられる
植物の種類は特に限定されず、例えばナス科、イネ科、
アブラナ科、キク科、ゴマ科、モクセイ科、フトモモ
科、バラ科、マメ科、ヤシ科又はアカネ科に属する植物
が挙げられる。これらの科に属する植物の具体例を以下
に記載するが、これらの植物に限定されるものではな
い。
【0049】ナス科:タバコ、ジャガイモ、トマト、コ
ショウなど イネ科:トウモロコシ 、イネ、コムギなど アオイ科:ワタ 、オクラなど アブラナ科:キャベツ、ハツカダイコン、シロイヌナズ
ナ、ナタネなど ウリ科:メロン、キューリなど セリ科:ニンジン、セロリー、アメリカボウフウなど キク科:ヒマワリ 、キクなど ゴマ科:ゴマ 、ヒマなど モクセイ科:オリーブなど フトモモ科:ユーカリ、グアバなど バラ科:バラなど ツバキ科:ツバキなど マメ科:レンゲソウ、ダイズ、アルファルファ、ダイズ
など ヤシ科:ココナツなど アオギリ科:ココアなど アカネ科:コーヒーの木など
【0050】本明細書において、形質転換植物源として
は、種子、芽生え、苗、カルス、培養細胞、植物体など
が挙げられ、例えば、ナタネの場合には芽生えまたはプ
ロトプラスト;ダイズの場合には芽生え、カルスまたは
培養細胞;ヒマワリの場合には芽生え;パーム椰子の場
合にはカルスまたは培養細胞;イネの場合には、芽生
え、カルス、培養細胞またはプロトプラスト;トウモロ
コシには、芽生え、苗、カルス、培養細胞またはプロト
プラスト;コムギの場合には、芽生え、カルスまたは培
養細胞;キャベツの場合には、芽生え、カルス、培養細
胞またはプロトプラスト;レタスの場合には、芽生え、
カルス、培養細胞またはプロトプラスト等と言ったよう
に、当業者が通常行うように、対象植物によって適宜好
ましい部位を選択して行えばよい。
【0051】本発明の遺伝子を植物体に形質転換するた
めのベクターの種類は特に限定されないが、特定の組織
でのみ発現可能な組織特異的なプロモーターを含むベク
ターを使用することもできる。例えば、種子特異的に所
望の遺伝子を発現するプロモーターを有するベクター、
または葉で所望の遺伝子を発現するプロモーターを有す
るベクターなどである。例えば、種子特異的な発現に
は、ナピン、クルシフェリン、グルテリン、プロラミ
ン、グリシニンなど種子貯蔵タンパク質のプロモーター
など用いることができる。葉で発現するプロモーターに
は、例えばカリフラワーモザイクウィルスの35Sタンパ
ク質、Rubisco small subunitのプロモーターなどの
プロモーターを用いることができる。
【0052】植物への形質転換法は常法に従って行うこ
とができ、例えば、アグロバクテリアによる方法、エレ
クトロポーレイション法、DEAEデキストラン法、リ
ン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、パーテ
ィクルガン法などを用いた細胞へのDNA直接導入法を
挙げることができる。組み込む発現カセットは公知のプ
ラスミドを用い、常法により作製することができる。ま
た、BOR1遺伝子はホウ素の吸収移行に重要な役割を持っ
ており、この遺伝子に変異が起こると植物のホウ素の吸
収移行効率が低下することが本発明より明らかになっ
た。アブラナ科をはじめとする各種の作物ではホウ素の
欠乏は重大な収量と品質の低下をもたらす。BOR1遺伝子
の配列(変異の有無)や発現量を各種作物において調べ
ることで、作物のホウ素吸収移行効率を推定することが
できる可能性がある。このような技術は新品種の育種に
際して有用であると思われる。また、すでに存在する品
種の栽培に当って、BOR1遺伝子の発現量や配列を調べる
ことで、ホウ素肥料の施肥管理が容易になる可能性があ
る。
【0053】さらに、BOR1遺伝子はホウ素の吸収移行に
かかわるだけでなく、ゲルマニウムやケイ素の吸収移行
にも関与する可能性がある。ゲルマニウムはケイ素のア
ナログであることが知られており、BOR1遺伝子やその相
同遺伝子はホウ素だけでなくゲルマニウムやケイ素の吸
収移行にかかわっている可能性がある。ケイ素はイネや
ムギの生育には重要な元素で、ケイ素が欠乏すると、光
合成活性が落ちたり、病害虫に侵されやすくなるので、
本発明の遺伝子を用いてイネやムギの品種改良を行うこ
とができる。以下の実施例により本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明の範囲は実施例によって限定され
るものではない。
【0054】
【実施例】実施例1:bor1-1変異株の生理解析 bor1-1変異株の地上部のホウ素欠乏症状は、野生型株の
それとはいくぶん異なっていた(Noguchi, K., 他 (199
7b) Plant Physiol. 115: 901-906)。bor1-1変異株で
は、根から地上部へのホウ素の濃縮輸送機構に欠損があ
ることが示されているが(Noguchi, K., 他 (2000) J.
Plant Physiol. 156: 756-761)、これだけでは地上部
におけるホウ素欠乏症状の野生型株との差異は説明でき
ない。そこで、bor1-1変異株と野生型株のホウ素欠乏症
状を調べ、地上部におけるホウ素の分配について検討し
た。
【0055】(A)方法植物材料および栽培法 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(L.)Heynh.)の
ecotype Columbia、Col-0株(野生型株)とbor1-1変異株
(Noguchi, K., 他 (1997b) Plant Physiol. 115: 901-
906)を用いた。特に記述がない場合は、植物は気温が
約22℃に制御された自然光型温室内で蛍光灯による補光
を行いながら、MGRL水耕液(Fujiwara, T., 他 (19
92) Plant Physiol. 99: 263-268)を用いた水耕栽培法
(Hirai,M.Y., 他 (1995) Plant Cell Physiol. 36: 13
31-1339)により生育させた。植物は、底を切断した1.5
mlのプラスチックチューブ内に固定した円柱状のロック
ウールの上で栽培した。本研究では、1.6リットルの水
耕液を入れたプラスチックタッパーの蓋に25本の1.5ml
チューブを固定して用いた。水耕液は通気し週に二度交
換した。水耕液中のホウ素濃度は、ホウ酸添加量により
調節した。この際pHに影響はなかった。以下、ホウ素
濃度3μMの実験区は3μM B区の様に記述する。栽
培には、二つのイオン交換カラム(デミエース DX−
10型 栗田テクニカルサービス、Autostill WG220
ヤマト科学)と活性炭を通した脱イオン水を使用した。
【0056】生長解析 シロイヌナズナ種子は表面滅菌し、発芽率を増加させる
ため滅菌水中で4℃二日間保存した。低温処理後、2%
(w/v)ショ糖と1.5%(w/v)ゲランガム(Wako Pu
re Chemical Industries Ltd., Osaka, Japan)を含む
MGRL培地のプレート(9x15cm2 )上に一枚につき
10粒播種した。ホウ素濃度はホウ酸添加量によって調節
した。この際pHに影響はなかった。22℃、白色蛍光灯
下で16/8hrs of light/dark cycleに制御した人工気象
器(NK System Biotron, NipponMedical and Chemical
Instrument, Tokyo, Japan)内にプレートを垂直に立て
て栽培した。地上部重量は、刈り取って新鮮重を測定し
た。根長は、根をゆっくりと培地から引き抜いて測定し
た。
【0057】葉組織の観察 観察に用いた葉は、水耕栽培によって生育させた。葉
は、FAA(5%(v/v)酢酸、60%(v/v)エタノ
ール、5%(v/v)ホルムアルデヒド)に常温で数時
間浸した後、中央部を小片に切り取った。サンプルは、
常温下でエタノールシリーズによって脱水し、Technovi
t 7100 resin(Kulzer & Co. GmbH, Wehrheim, German
y)に包埋した。包埋したサンプルは、ガラスナイフに
よって3から5μmの厚さにスライスし、50℃に設定し
たホットプレート上でトルイジンブルー染色液(0.1%
(w/v)toluidine blue in 0.1M potassium phosphat
e buffer(pH7.0))で約30秒間染色した。染色像は
光学顕微鏡にて観察し、写真撮影した。
【0058】ロゼット葉の元素組成分析 植物は3あるいは30μMのホウ素濃度の水耕液で18日間
栽培した。第一、第二ロゼット葉を古い葉として、第
三、第四、第五ロゼット葉を若い葉として別々にサンプ
リングした。葉は脱イオン水で数秒すすぎ、60℃に設定
した乾熱器で60時間以上乾燥させた。サンプルは乾燥重
量を測定し8-mlテフロン(登録商標)チューブ(Nalgen
e, Rochester, New York, USA)に移し、1mgにつき約
0.3mlの硝酸(61%)を加えた。サンプルは120から130
℃に設定したヒートブロックで分解し完全に乾燥させ、
8mlの0.5M硝酸に溶解した。これらをさらに分析に適
当な濃度に0.5M硝酸によって希釈し、ICP-MS(SPQ-900
0, Seiko Instrument Inc., Chiba, Japan)にてB、M
n、Cu、Zn、Mo含量を、ICP-AES(SPS1200VR, Sei
ko InstrumentInc., Chiba, Japan)にてP含量を定量し
た。Mg、K、Ca含量については0.1M塩酸で適当な
濃度に希釈し、flame atomic absorption spectroscopy
(Z-8100,Hitachi, Ltd., Tokyo, Japan)によって定量し
た。分析にはプラスチック製容器を用いた。容器は希硝
酸あるいは希塩酸で洗浄後使用した。
【0059】安定同位体10Bを用いたトレーサー実験 植物は自然同位体比のホウ素(10B:11B=19.9:80.1)
を30μM含む水耕液で22日間生育させた。これら植物
は、10B含量の高いホウ酸(10B:11B=95.9:4.1)(ト
レーサーホウ素と呼ぶ)を0.3、1、3、10、30、およ
び100μMの濃度に含む水耕液に移し、人工気象器内で2
4時間インキュベートした。サンプリング時、植物は7
から10枚のロゼット葉をもっていた。本実施例では、第
一、第二ロゼット葉(古い葉)と、3mm以上の長さの第
六から第九ロゼット葉のうちから若い順に二枚(若い
葉)をそれぞれまとめてサンプリングした。サンプルは
上記と同様の方法で、Be 10μg liter-1を内部標準に
用いICP-MSによって10Bと11Bの含量を測定した。サン
プル中のトレーサーホウ素濃度の算出は以下の計算式に
したがった(Noguchi, K., 他 (1997b) Plant Physiol.
115: 901-906)。
【0060】10Bt:トレーサーホウ素に含まれる10
の同位体比(%)10 Bc:10Bの自然同位体比(%)10 Bs:サンプル中の10Bの同位体比(%) X:植物体中のトレーサーホウ素濃度(mol/g) Y:植物体中のトレーサー由来ではないホウ素の濃度
(mol/g) totalB:トレーサー処理後の植物体中全ホウ素濃度(m
ol/g)10 Bt*X+10Bc*Y=10Bs*totalB X+Y=totalB この連立方程式を解くと、 X=(10Bs-10Bc)/(10Bt-10Bc)* totalB 本実施例では、10Bt=95.9、10Bc=19.9として計算し
た。
【0061】(B)結果地上部と根の成長 0、0.03、0.3、3、30、および300μMのホウ素を含む
固形培地において15日間生育させた植物の茎葉新鮮重と
根長を測定した(図1)。ホウ素は植物の生育に必須な
元素のため、0μM B区における成長は実験上のホウ
素の微量な混入によるものと推測される。30μM B区
以上では、茎葉新鮮重と根長は両ラインで同程度であっ
た(Student's t-testにより有意差が無かった)。3μ
M B区以下では、bor1-1変異株の茎葉新鮮重と根長は
その程度は異なるもののCol-0野生型株よりも有意に低
い値を示した(Student's t-test,p<0.01)。茎葉新鮮
重は、根長と比べ両ライン間で大きな差を示した。Col-
0野生型株では、茎葉新鮮重は0.3μM B区で30μM B
区でと同様であったが、根長は0.3μM B区で30μM
B区での約50%であった(図1)。これは、野生型株で
は、根の伸長は茎葉の成長よりもホウ素欠乏により感受
性が高いことを示している。一方、bor1-1変異株では茎
葉新鮮重は、3μMと0.3μM B区でそれぞれ30μM
B区の60%と40%であった(図1のA)。bor1-1変異株
の根長は3μMと0.3μM B区でそれぞれ30μM B区
の80%と70%を維持していた(図1のB)。以上の結果
は、野生型株とは異なり、bor1-1変異株は茎葉により強
くホウ素欠乏症状を示すことを示している。
【0062】bor1-1変異株の形態 上記の「地上部と根の成長」に示した各ホウ素濃度にお
ける15日間の生育では、bor1-1変異株の根の形態は実体
顕微鏡による観察の範囲ではCol-0野生型株と特に差異
を示さなかったが、茎葉の形態には大きな差異を示した
(図2のA及びB)。Col-0野生型株の成長は30μM B
区と3μM B区で同様であった(図2のA及びB)。
一方、bor1-1変異株は3μM B区でロゼット葉の展開
に顕著な抑制がみられた。この展開抑制は、第一ロゼッ
ト葉と第ニロゼット葉にはみられなかった。また3μM
B区で根の伸長には30μM B区と比べ大きな抑制がみ
られることはなかった(図2のA及びB)。
【0063】さらに詳細な観察をするために水耕栽培を
用いてbor1-1変異株のロゼット葉の展開抑制をCol-0野
生型株のそれと比較した。Col-0野生型株は30μM B区
と3μM B区で同様に成長した(図2のC及びD)
が、0.03μM B区で茎葉全体の生育抑制がみられた。
その際、葉の形態に特に異常は見られず、全体的に小さ
くなるだけであった(図2のE)。一方、bor1-1変異株
は特徴のある表現型を示した。3μM B区では、第一
ロゼット葉と第二ロゼット葉の展開は外見上正常であっ
たが、第三ロゼット葉以降の葉は小さく、濃緑色で異常
な形態を示した(図2のG)。このような表現型は30μ
M B区のbor1-1変異株(図2のF)や0.03μM B区の
野生型株(図2のE)では見られなかった。
【0064】さらに、より長期間のホウ素欠乏処理を施
し生殖成長への影響を比較した。51日間生育させた植物
の茎葉を図2のH及びIに示した。0.03μM B区のCol
-0野生型株では花茎の伸長がみられた(図2のH)。一
方、3μM B区のbor1-1変異株では花茎の伸長は確認
できなかった(図2のI)。0.03μM B区のCol-0野生
型株と3μM B区のbor1-1変異株では共に多数の小さ
く濃緑色の葉が現れた。これらの結果は、bor1-1変異株
と野生型株のホウ素欠乏症状では、症状が現れる生育段
階と症状が出始める培地中のホウ素濃度に違いがあるこ
とを示している。
【0065】葉の組織観察 栄養成長期(生育22日)のbor1-1変異株およびCol-0野
生型株の若いロゼット葉(第5あるいは第6ロゼット
葉)、古いロゼット葉(第1あるいは第2ロゼット葉)
の切片を作製し、光学顕微鏡による組織観察を行った
(図3ののAからF)。3μM B区と0.03μM B区の
Col-0野生型株の若いロゼット葉(図3のA及びB)、3
0μM B区のbor1-1変異株の若いロゼット葉(図3の
C)、3μMB区のCol-0野生型株とbor1-1変異株の古
いロゼット葉(図3のE及びF)では、葉肉細胞の伸長
と細胞間隙の発達が観察された。一方、図2のG及びI
で示したように展開抑制を示した3μM B区のbor1-1
変異株の若いロゼット葉の組織では葉肉細胞は小さく密
に並び、細胞間隙の発達は観察されなかった(図3の
D)
【0066】さらにbor1-1変異株とCol-0野生型株のホ
ウ素欠乏症状を比較するために、生殖成長期(生育39
日)のCol-0野生型株のカウリン葉の切片の観察を行っ
た(図3のG及びH)。30μM B区のCo1-0野生型株の
カウリン葉の切片では、葉肉細胞の伸長と細胞間隙の発
達が観察された(図3のG)。一方、図2のHで示した
ように展開抑制を示していた0.03μM B区のCol-0野生
型株のカウリン葉の組織では葉肉細胞は密に並び、細胞
間隙の発達が観察されなかった(図3のH)。これらの
結果は、ホウ素欠乏による展開抑制を示した葉では、野
生型株とbor1-1変異株で同様に細胞伸長が抑制されてい
ることを示唆している。
【0067】ロゼット葉の元素組成 30μMあるいは3μMのホウ素を供給し18日間生育さ
せた植物のロゼット葉を、古い葉(第一、第二ロゼット
葉)と若い葉(第三、第四、第五ロゼット葉)にわけ
て、数元素の濃度を測定した(表1)。
【0068】
【表1】
【0069】サンプリング時、図2で示した植物と同様
に3μM B区のbor1-1変異株の若い葉は展開抑制を受
けており、その他の葉は正常な成長が観察された。全て
の条件において、bor1-1変異株のホウ素濃度はCol-0野
生型株を下回っていた(表1)。特に、3μM B区のb
or1-1変異株の若い葉ではホウ素濃度は5.9mgB/kgdry
weightと、Col-0野生型株の14%に相当する非常に低い
値を示した。bor1-1変異株のCu、Zn、Mo、Mg、
Pの濃度はCol-0野生型株と有意な差を示さなかった
が、K、Ca、Mnといった数元素では統計的に有意な
差を示した(Student's t-test, p<0.01)。これらの元
素濃度はCol-0野生型株の約80%に相当した。
【0070】ホウ素濃度は、bor1-1変異株で低下がみら
れただけでなく、古い葉の濃度に対する若い葉の濃度の
比もまた低下していた。その比は30μM B区のbor1-1
変異株とCol-0野生型株でそれぞれ54%と55%であった
が、3μM B区ではそれぞれ35%及び66%であった。
これらの結果は、野生型株は低濃度のホウ素供給時によ
り若い部位へホウ素を蓄積する傾向があり、bor1-1変異
株ではそのような傾向が弱いことを示唆している。
【0071】若い葉と古い葉へのホウ素の分配 茎葉におけるホウ素の分配を検討するため、30μMのホ
ウ素を供給し、22日間生育した植物を用い、ホウ素の安
定同位体10Bによるトレーサー実験を行った。0.3、1、
3、10、30、および100μMのトレーサーホウ素による処
理を24時間行い、その間の若い葉と古い葉(分類は1-2:
方法に記した)への取り込みを比較した。 結果を図4
に示す。
【0072】0.3および1μMトレーサーB区ではbor1-
1変異株とCol-0野生型株の古い葉ではトレーサーホウ素
は検出されなかった。30μMトレーサーホウ素区以下で
は、bor1-1変異株の若い葉と古い葉の両部位でトレーサ
ーホウ素濃度はCol-0野生型株を有意に下回っていた(S
tudent's t-test, p<0.05; 図4)。100μMトレーサー
ホウ素区では、bor1-1変異株とCol-0野生型株の両ライ
ンで若い葉と古い葉のトレーサーホウ素濃度の間に有意
な差はなかった(Student's t-test)。ところが、Col-
0野生型株において30μMホウ素区以下では若い葉のト
レーサーホウ素濃度は古い葉のそれを上回った(図
4)。若い葉のトレーサーホウ素濃度の古い葉に対する
比は、100、30、10、および3μMのトレーサーホウ素
区でそれぞれ1.0±0.2、1.7±0.3、2.4±0.4、3.5±1.2
(average±standard deviation)であった。これは、
野生型株は低濃度のホウ素供給時にホウ素は若い葉へ優
先的に輸送されていることを示している。一方、そのよ
うな傾向はbor1-1変異株ではみられなかった。若い葉の
トレーサーホウ素濃度の古い葉に対する比は、100、3
0、10、および3μMのトレーサーホウ素区でそれぞれ
1.0±0.0、1.2±0.2、1.6±0.4、0.8±0.1であった。こ
れらの結果は、bor1-1変異株は低濃度のホウ素供給時の
若い葉への優先的ホウ素輸送機構に欠損を持つことを示
している。
【0073】(C)考察 これまでのbor1-1変異株の生理解析を通して、シロイヌ
ナズナではホウ素は根へ受動拡散によって吸収され、根
から茎葉への輸送のプロセスにおいて濃縮されること、
bor1-1変異株はその濃縮輸送に欠損を持つことが示唆さ
れている(Noguchi, K., 他 (2000) J. Plant Physiol.
156: 756-761)。実施例1ではさらに、シロイヌナズ
ナは古い葉よりも若い葉へ優先してホウ素を輸送してお
り、bor1-1変異株ではその輸送機構にも欠損を持つこと
を示唆する結果を得た(図4)。また、ホウ素は本実施
例で分析した中では野生型とbor1-1変異株の茎葉の間で
大幅な濃度の差異が現れた唯一の元素であった(表
1)。これは、bor1-1変異株はホウ素のみの十分な供給
で正常な表現形に回復することと合わせて、ホウ素の優
先的輸送機構の欠損が新葉の展開抑制(図2)の主要な
原因であることを示唆している。ホウ素の優先的輸送は
低濃度のホウ素供給時にのみ起こることは(図4)、bo
r1-1表現型は低濃度のホウ素供給時にのみ観察されるこ
とをよく説明している。
【0074】実施例1では、bor1-1変異株のホウ素欠乏
症状は、野生型株のそれとは異なっていることを示した
(図2)。栄養成長期において、bor1-1変異株は3μM
B区で新葉の展開抑制という特徴的なホウ素欠乏症状
を示した(図2のG)。野生型株では、0.03M B区で
全ての葉が正常な形態を保ったまま大きさの減少を示
し、特に新葉に展開抑制を示すことはなかった(図2の
E)。野口ら(Noguchi,K., 他 (1997b) Plant Physio
l. 115: 901-906)は頂芽優勢の喪失がbor1-1変異株の
特徴的な表現型と報告しているが、本実施例では葉の展
開抑制が頂芽優勢の喪失に先行することを示した。した
がって、頂芽優勢の喪失はBOR1遺伝子機能の欠損に
よる一次的な影響ではないと考えられる。
【0075】葉の組織観察では、3μM B区のbor1-1
変異株では細胞伸長と細胞間隙の発達が抑制されている
ことが示された(図3のD)。同様の現象は0.03μMの
ホウ素を供給し長期間生育したCol-0野生型株の葉にお
いても観察された(図3のH)。これらの組織は、成長
初期の第5ロゼット葉(Col-0株)の組織(Tsuge, T.,
他 (1996) Heynh. Development 122: 1589-1600)とよ
く似ていた。したがって、3μM B区のbor1-1変異株
の新葉では、正常な葉の発達が停止していると考えられ
る。Hu, H. 他 (1994) Plant Physiol. 105: 681-689
は、カボチャの葉身と葉柄においてホウ素欠乏は正常な
細胞伸長を抑制することを報告している。さらに、ホウ
素の生理機能の一つは、細胞壁の構造維持であることが
明らかにされてきている(Matoh. T. (1997) Plant and
Soil 193: 59-70)。したがって、実施例1の観察結果
はホウ素欠乏によって引き起こされた正常な細胞伸長の
抑制と解釈することができる。細胞間隙の発達の抑制
は、おそらく細胞伸長の抑制の二次的影響であろう。
【0076】bor1-1変異株では根の伸長は野生型株と比
べホウ素欠乏の影響を大きく受けることはなかった(図
1及び図2)。これは、根のホウ素濃度はbor1-1変異株
で野生型と大差がないこと(Noguchi, K., 他 (2000)
J. Plant Physiol. 156: 756-761)により説明される。
【0077】ロゼット葉の元素組成分析では、ホウ素は
bor1-1変異株で大幅な低下を示した唯一の元素であった
(表1)。Brassica napus (oilseed rape)では、最も
若い展開葉が最大のバイオマス(重量)の90%に達する
ために10-14mg/kg dry weightのホウ素を必要とする(H
u, H., 他 (1996) J. Exp. Bot. 47: 227-232)。ダイ
ズでは、若い葉の最大伸長の90%に達するために12mg/k
g dry weightのホウ素濃度を必要とする(Kirk, G.J.
他 (1988) Agron. J. 80: 758-762)。したがって、5.9
mgB/kg dry weight(表1)はシロイヌナズナの若い葉
にとってホウ素欠乏状態と推測される。さらに、ホウ素
を十分に供給することによってbor1-1変異株の成長抑制
は回復することから、葉のホウ素濃度低下がbor1-1変異
株の成長抑制の一次的な原因と結論した。bor1-1変異株
では他のいくつかの元素も野生型株との間に統計的な有
意な濃度差を示した(表1)が、これらの濃度は欠乏状
態を示す程度のものではなく、おそらくホウ素欠乏症状
の二次的影響であろう。
【0078】実施例1で検討した全ての条件において、
若い葉のホウ素濃度は古い葉を下回っていた(表1)。
これは、ホウ素の器官間の再転流は制限されていること
を示唆している。しかしながら、若い葉のホウ素濃度の
古い葉のそれに対する比は、低濃度のホウ素供給時の野
生型株で高い値を示した。これは、野口ら(Noguchi.
K., 他 (1997a) In Boron in Soils and Plants. Edite
d by Bell, R.W. and Rerkasem, B.eds. pp197-202. Kl
uwer Academic Publishers, Dordrech)による、Col-0
野生型株において花茎頂端部のホウ素濃度の古い葉のそ
れに対する比は供給するホウ素濃度を低下させるにした
がって増加した、という報告と適合している。また、ハ
ツカダイコン(Shelp, B.J., 他 (1987) Radish. Commu
n. SoilSci. Plant Anal. 18: 203-220)、スウェーデ
ンカブ(Shelp, B.J. 他 (1987a)Commun. Soil Sci. Pl
ant Anal. 18: 187-202)、カリフラワー(Shelp, B.J.
他 (1987b) J.Plant Nutr. 10: 143-162)、ブロッコリ
(Shelp, B.J. (1988) Annal. Bot. 61: 83-92)におい
て、developing sinksのホウ素濃度の古い葉のそれに対
する比は、低濃度のホウ素の継続的供給時に高濃度の供
給時と比べ高い値を示すことが報告されている。
【0079】実施例1のトレーサー実験では、このよう
なホウ素濃度の分布を説明しうるホウ素分配パターンが
示された。野生型株において根から取り込まれたホウ素
は、供給するホウ素濃度の低下にしたがって、若い葉へ
より優先的に輸送された(図4)。このような優先的輸
送が低濃度のホウ素供給時にも正常な新葉の成長をもた
らしているのであろう。一方bor1-1変異株では優先的輸
送を示す傾向はなく、若い葉と古い葉のトレーサーホウ
素の濃度は全ての条件で同程度であった。これは葉の若
さに関わらず葉面積にほぼ比例してホウ素を取り込んだ
ことを示しており、主に蒸散流による受動輸送がなされ
たことを示唆している。したがって、優先的輸送機構の
欠損が新葉の展開抑制という特徴的な表現型の原因と考
えられる。これらの結果は、蒸散流による受動的な輸送
とは別に未知のメカニズムによる若い葉へのホウ素輸送
がなされており、そのメカニズムにBOR1遺伝子が重
要な役割を果たしていることを示唆している。
【0080】実施例2:BOR1遺伝子の単離と解析 BOR1遺伝子の生理機能は根から地上部へのホウ素の
濃縮輸送(Noguchi, K., 他 (2000) J. Plant Physiol.
156: 756-761)、および地上部の生長部位への優先的
輸送(実施例1で示した通り)にあることが示された。
実施例2では、BOR1遺伝子のポジショナルクローニ
ング法による同定を行なった。bor1-1変異株(Col-0 ba
ckground)と、Col-0とは異なったecotypeであるLer株
を交配させてF1種子を取得し、F1植物から自家受粉
によってF2種子を大量に取得した。F2種子約50個体
をロックウールに播種し、ホウ素濃度3μMのMGRL
水耕液を与えて育てた。それぞれの個体のBor表現型
(葉の展開抑制の有無)を記録するとともに、ロゼット
葉よりDNAを抽出した。これらF2約50個体のDNA
について、5対の染色体のそれぞれにつき約2つのSimp
le Sequence length Polymorphism(SSLP)マーカーの遺
伝子型(Col-0型であるかLer型であるか)を決定した。
表現型と各マーカーの遺伝子型の連鎖解析によって、B
OR1遺伝子は第二染色体下腕にマップされた。
【0081】さらに、同様にしてF2植物を育て、Bo
- 表現型を示すもの(bor1-1 mutationをhomoにもつ
と考えられる)のみを約800株選抜し、それぞれよりD
NAを抽出した。これらのDNAについて、第二染色体
上の数個のSSLPマーカーの遺伝子型を調べ、bor1-1
mutation(Col-0 background)の位置と各マーカーの
間での組み換えの有無を検討した。マーカーの遺伝子型
がLer型、あるいはヘテロをしめせばbor1-1 mutatio
nの位置とそのマーカーとの間に組み換えが存在するこ
とを示している。最終的に、<FM1>と命名したマー
カーでヘテロの遺伝子型を示し<TB1>と命名したマ
ーカーでCol-0遺伝子型を示す植物が一株(図5のB
(2))、逆に<FM1>でCol-0遺伝子型を示し<TB
1>でヘテロの遺伝子型を示す植物が一株(図5のB
(3))得られた。つまり、bor1-1 mutationの位置は
その二つのマーカーの間約155kbpの領域内に存在するこ
とが明らかになっていた(図5のA及びB)。
【0082】(A)方法植物材料および栽培法 シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana(L.)Heynh.)
のecotype Columbia、Col-0(野生型株)、bor1-1変異
株(Noguchi, K., 他 (1997b) Plant Physiol. 115: 90
1-906)、ecotype Landsberg erecta、Ler、bor1-2変異
株(Yasumori, M., 他 (1999) In Plant Nutrition;Mo
lecular Biology and Genetics, Edited by Nielsen,
G.G. and Jensen, A. eds, pp269-275. Kluwer Academi
c Publishers, Dordrecht)、bor1-1変異株とLer株をか
けあわせて得たF2世代を用いた。F2植物は、バーミ
キュライトを敷き詰めた容器上でロックウール播種しホ
ウ素濃度3μMのMGRL水耕液を与えて育てた。本葉
が数枚あらわれた段階でBor- 表現型(葉の展開抑制)
を確認し、野生型表現型を示した株は除去した。Bor -
表現型を示した株からはDNA抽出を行うとともに、ホ
ウ素濃度150μMのMGRL水耕液を与え回復させ、F
3種子を採取した。
【0083】DNA抽出 葉組織より劉の方法(劉耀光 (1995)植物のPCR実
験プロトコール 秀潤社 p37-39)にしたがってDN
A抽出を行なった。また、PCR markerを用いたF2
recombinantsの選抜の一部にはより簡便なAlkaline lys
is(Klimyuk, V.I., 他 (1993) Plant J. 3: 493-494)を
用いた。
【0084】PCRマーカーの作製 詳細なマッピングを進めるため、<FM1>と<TB1
>の間に5つのPCRマーカーを作製した。マーカー設
計には、2000年5月に公表されたCEREONcollecti
on of polymorphisms (http:/www.arabidopsis.org/cer
eon)の情報を用いた。マーカーのPhysical map上の位置
は図5のAに示した。なお、マーカー作製はマッピング
の進行に応じて順次おこなった。遺伝子型の判定は、F
2植物から抽出したゲノムDNAをテンプレートとしそ
れぞれのマーカーに対応したprimerを用いたPCRを行
い、PCR産物のアガロースゲル電気泳動の泳動パター
ンよりgenotypeを判定した。作製したマーカーは全てヘ
テロ型をホモ型から区別できる共優性マーカーである。
それぞれのPCRprimerと遺伝子型の判定法については
以下に記した。Physical map上での位置は図5のAに示
した。図5のAにおいて、四角で囲った部分がBOR1
ローカスを示し、開いたバーはGenebankのアクセッショ
ンのBACクローンを示す。矢印はBOR1遺伝子の向
きを示す。PCRマーカーの位置も示す。
【0085】<TI1> Forward 5'-AAAGGCCAGTCTGAGTTTTGAT-3'(配列番号
3) Reverse 5'-GATCAGATATTGCCAACAATGC-3'(配列番号
4) Cleaved amplified polymorphic sequences(CAPS)
(Konieczny and Ausubel1993)マーカー。Col-0ゲノムと
Lerゲノム間の1塩基置換により、Col-0型配列由来のP
CR産物は制限酵素XhoIIで切断され、Ler型由来では切
断されない。
【0086】<TI2> Forward 5'-GTCGGCTATTACCATGGAGTAT-3'(配列番号
5) Reverse 5'-TCACGTAACACGTTCAAATTCT-3'(配列番号
6) SSLPマーカー。Col-0ゲノムとLerゲノム間の7塩基
挿入/欠失により、Col-0型配列由来のPCR産物はLer
型由来よりも7塩基長い。
【0087】<TI3> Col-0-Forward 5'-CACGCGGTTTAAGAAAATGC-3'(配列番
号7) Ler-Forward 5'-TCTCACGCGGTTTAAGAAAATAA-3'(配
列番号8) Reverse 5'-TTTGAGAATAGGAAACAACAATACG-3'
(配列番号9) Col-0型あるいはLer型の塩基配列しか増幅しない二種の
プライマーセットを用いたマーカー。Col-0ゲノムとLer
ゲノム間の2塩基置換を利用し、置換されている2塩基
を、Forwardプライマーの3’末端に配置した。
【0088】<FM2> Forward 5'-CGCTAACGGGAATCCTAGTG-3'(配列番号1
0) Reverse 5'-CATGGCTTACGAGGCTCTTC-3'(配列番号1
1) CAPSマーカー。Col-0ゲノムとLerゲノム間の1塩基
置換により、Col-0型配列由来のPCR産物は制限酵素M
slIで3つの断片へ切断され、Ler型由来では2つへ切
断される。
【0089】<FM3> Forward 5'-GCCTGCTTCAGGTTTTCAGT-3'(配列番号1
2) Reverse 5'-AACAATGTCGCAAAGCAAGT-3'(配列番号1
3) CAPSマーカー。Col-0ゲノムとLerゲノム間の1塩基
置換により、Col-0型配列由来のPCR産物は制限酵素M
seIで5つの断片へ切断され、Ler型由来では4つへ切
断される。
【0090】塩基配列決定 以下の結果に示したbor1-1変異株、bor1-2変異株、cD
NAの配列決定は、(株)日立サイエンスシステムズ
テクノリサーチセンターDNA解析室で行った。
【0091】cDNAの取得 cDNAは、表2に示した各ESTの配列より、5’側
と3’側の両方にESTをもち、その他のcDNAより
も長い配列を持つと考えられたRZ119b07をかずさDNA
研究所より取得した。
【0092】
【表2】
【0093】配列解析 Col-0 株の塩基配置およびアノテーションの情報は Th
e Arabidopsis Infor-mation Resouce(TAIR)( HYPE
RLINK http://www.arabidopsis.org) http://www.arabi
dopsis.org)より入手した。相同配列の検索は、FAS
TA(Lipman, D.J. 他 (1985) Science 227: 1435-144
1; Pearson, W.R., 他 (1988) Proc. Natl. Acad, Sc
i. USA 85: 2444-2448)およびBLAST(Altschul,
S.F.,他(1997) Nucleic Acids Research 25; 3389-340
2)プログラム、配列のalignmentおよび系統樹の作製
は、CLASTALW(Thomopson, J.D., 他 (1994) Nu
cleic Acids Res. 22,4673-4680)プログラムを用いた(
HYPERLINK http://www.arabidopsis.org) http://www.d
dbj.nig.ac.jp)。Hydrophobicity plotの作製とmolecul
arweightの推測は、DNASIS-Mac v2.0を用いた。タンパ
ク質の膜貫通領域の推測は、TM pred toolを用いた(
HYPERLINK http://www.arabidopsis.org) http://www.c
h.embnet.org/software/TMPRED#form.html)。
【0094】(B)結果組み換え体の選抜およびPCRマーカーにおける遺伝子
型決定 ライン(2)および(3)について、<TI11>、<TI2
>、<TI3>の3つのマーカーについて遺伝子型を決定
した。その結果、両ラインともに、3つのマーカーにお
いてCol-0型を示した(図5のB(2)、(3);なお、図5
において、CはCol-0遺伝子型を示し、Hはヘテロ遺伝
子型を示し、/は未決定を示す)。したがって、bor1-1
mutationの存在する可能性をもつ領域が狭まることは
なかった。
【0095】そこで、詳細なマッピングを進めるため
に、Bor表現型を示すF2植物のうちから、新たな組み
換え体の選抜を行なった。具体的には、F2植物を新た
に栽培し、Bor表現型を示した437株からDNAを抽出
し、PCRによる組み換え体の選抜をおこなった。ま
た、既に選抜をおこなった601株についても、見落とし
が考えられたため再びPCRによる選抜をおこなった。
大部分の株については<FM1>と<TB1>を用いて選抜を
行なったが、マッピングの進行に応じてより内側のマー
カーを用いた選抜も行なった。その結果、新たにDNA
を抽出した437株から2株(ライン(1)、(6))、再選
抜を行なった601株から2株(ライン(4)、(5))の組
み換え体を取得した。これらについて、各マーカーにつ
いて遺伝型を決定した(図5のB)。そのうちライン
(6)では、<FM3>でCol-0型、<TI1>でヘテロ型を
示した。また、ライン(2)では、<FM3>でヘテロ
型、<TI1>でCol-0型を示した。したがって、bor1-1 m
utationは、<FM3>と<TI1>の間約15kbpの領域内に存
在することが明らかになった(図5のA及びB)。
【0096】bor1-1 mutationの決定 bor1-1変異株のゲノムにおいて<FM3>と<TI1>の間15
197bpの塩基配列を決定した。これとCol-0の塩基配列の
比較を行った結果、1塩基置換が二ヶ所みつかった。こ
のうち一方はintergenic regionと推定されていた領域
にあり、もう一方は、T3D7.3(putative anion exchange
protein)と推定されていた領域に存在した。さらに、b
or1-1とallelicな変異株であるbor1-2変異株(Yasumor
i, M.,他 (1999) In Plant Nutrition ? Molecular Bi
ology and Genetics, Editedby Nielsen, G.G. and Jen
sen, A. eds, pp269-275. Kluwer Academic Publisher
s, Dordrecht)においてこの推定された遺伝子の配列を
決定した結果、bor1-1とは異なった位置に1塩基置換が
みつかった。したがって、この遺伝子をBOR1遺伝子
と決定した。bor1-1ではCがTへ、bor1-2ではGがAへ
置換していた(図5のC)。図5のCは、Bor1-1及びBor
1-2におけるBOR1遺伝子およびその変異の構造を示
す。開始コドン(ATG)及びストップコドン(TG
A)を示す。ヌクレオチド位置はエクソン内の開始コド
ンに対するものである。黒い部分はコード配列を示し、
白い部分は5’および3’未翻訳領域を示し、黒い部分
の間の線はイントロンを示す。
【0097】BOR1遺伝子の構造 BOR1転写産物に相当するcDNA RZ119b07をかず
さDNA研究所より取得し、塩基配列を決定した(配列
番号2に記載)。その塩基配列とゲノムの配列を比較
し、open reading frame(ORF)およびイントロンの
領域を決定した。また、5’および3’untranlslated
region(UTR)の領域を推定した(図5のC)。bor1-1
およびbor1-2変異株における塩基置換はいずれも5’側
より3つめのエキソンに存在し、それぞれinitiation c
odon(ATG)のAより407、370塩基の位置であった
(図5のC)。
【0098】BOR1タンパクの構造 BOR1は704アミノ酸からなるポリペプチド(配列番
号1に記載)で、そのmolecular weightは78.6kDaと予
想された。BOR1の推定アミノ酸配列を図6のAに示
す。太字は10個の推定上の膜通過ドメインのアミノ酸
を示す。星印はbor1変異体アレルにおける置換残基を示
す。膜通過ドメインは、 HYPERLINK "http://www.ch.em
bnet.org/software/TMPRED#form.html" http://www.ch.
embnet.org/software/TMPRED#form.htmlから入手可能な
プログラムTMPREDで推定した。bor1-1およびbor1
-2変異株における塩基置換はそれぞれ、86番目のGlyをG
luに、74番目のSerをProに置換していると考えられた
(図6のA)。
【0099】BOR1のHydrophobicity plot解析の結
果を図6のBに示す。この解析によると、ポリペプチド
は、C末側の約100残基をのぞきほぼ全域に渡って疎水
性が高く、10の膜貫通ドメインを持つ膜タンパク質と予
想された(図6および図7)。bor1-1およびbor1-2変異
株におけるアミノ酸置換はともに二つ目の膜貫通領域と
予想される領域に存在した(図6のA及びB)。
【0100】BOR1ポリペプチドに対して、FAST
AおよびBLASTプログラムを用いたhomology searc
hを行なった結果、シロイヌナズナにおいて非常に相同
性の高い5つのputative polypeptideが存在し、遺伝子
ファミリーをなしていることが明らかになった(表
2)。図7に、BOR1と、シロイヌナズナにおける相
同性の高い5つのputative polypeptideの配列の比較を
示す。特にT17J13.230(703aa)とは非常に相同性が高
く、708アミノ酸残基(1-704:1-702)に渡って90%のiden
tityを示した。bor1-1およびbor1-2変異株においてアミ
ノ酸置換が存在した86番目のGlyと74番目のSerはシロイ
ヌナズナの6つの配列の全てにおいて保存されていた
(図7)。
【0101】また、図8に、BOR1と、ヒト、イネお
よび酵母の相同タンパク質との配列の比較を示す。植物
においてBOR1ポリペプチドは、イネのgenomic clon
e P0013F10の配列内に予想されるポリペプチドP0013F1
0.1と650アミノ酸残基(1-647:1-550)に渡って53%のi
dentityを示した(図8)。また、BOR1転写産物のh
omology searchにより、コムギ、トウモロコシ、トマ
ト、ダイズ、綿花、ソルガム、ミヤコグサ、カブ、マ
ツ、オオムギといった各種植物に相同性をもつESTが
みつかった。またその存在部位も、根から花芽や穂まで
多岐に渡っていた。イネのESTで有意に相同性を示す
ものはみつからなかった。植物の相同配列のうち機能解
析がなされているものは存在しなかったが、少なくとも
種子植物においては広くBOR1に相同な遺伝子が存在
しており、様々な部位にて発現していることが明らかに
なった。
【0102】一方動物においては、BOR1ポリペプチ
ドはそのほぼ全長に渡って、bicarbonate transporter
superfamilyに属する各メンバーのC末側のポリペプチ
ドと相同性をもつことが明らかになった。一例では、hu
man band 3 protein(anion exchange protein 1)(911a
a)(accession number X12609-1)と、615アミノ酸残基
(1-599:372-888)にわたって26%のidentityを示し
た。FASTAおよびBLASTプログラムのいずれに
よっても、bicarbonate transporter superfamilyのな
か最も高い相同性を示したのはanion exchange protein
1であった。
【0103】相同性を示すproteinあるいはputative po
lypeptideは植物、動物(mouse、rat、human、Rainbow
trout、Caenorhabditis elegans、Drosophila melanoga
sterなど)、酵母(Saccharomyces cerevisiae、Schizo
saccharomyces pomble)といった真核生物がみられた
が、bacteriaではみられなかった。
【0104】新芽におけるGe蓄積 シロイヌナズナの野生株及びbor-1変異株を10μmo
l/LのGeを含むゲル化培地で生育させ、その新芽
(shoots)におけるGe含量を測定した。その結果、野
生株では13.16±2.38(mg/kg)であるの
に対し、bor-1変異株では6.2±0.77(mg/k
g)であった(平均±SD)。結果を図11に示す。野
生型の新芽のGe含量はbor-1変異株の場合より約2倍
高かった。
【0105】(C)考察ポジショナルクローニング 約1000株のF2植物の解析によってBOR1遺伝子の存
在領域を約15kbpに収めた。現在までにシロイヌナズナ
において報告されているポジショナルクローニングの例
では、約1000株のF2解析によって約10から40kbpに収
めた例が多い(Lukowitz, W., 他 (2000) Plant Physio
l 123: 795-805)。実施例2においてもほぼ同様の結果
が得られ、比較的効率的なマッピングを行なえたと考え
られる。約15kbpの領域内では新たなPCRマーカーの
設計が困難であったため、マッピングはこの時点で終了
した(図6のA及びB)。約15kbpの領域内には、The A
rabidopsis Information Resouce(TAIR),genomeannotat
ionにより三つの遺伝子の存在が予想されていた。従っ
て、bor1-1変異を発見するためにはbor1-1ゲノムにおい
て予想される3つの遺伝子のみ配列決定することが効率
的と考えられる。しかし、一般にエチルメタンスルホン
酸(EMS)による変異源処理では複数の遺伝子座に塩
基置換や欠失・挿入といった変異が導入されることが知
られており、EMS変異株であるbor1-1変異株では4回
戻し交雑されているもののbor1-1変異の近傍にその他の
変異が残っている可能性が高い。つまり、約15kbpの領
域内に複数の変異が存在する可能性が考えられる。ある
予想される遺伝子の配列上に変異がみつかったとしても
それがbor1-1変異と決定するには至らないと考えた。し
たがって、本研究では約15kbpの領域全ての塩基配列を
決定した。
【0106】その結果、発見した二ヶ所の一塩基置換の
うち一方はintergenic regionと推定されていた領域に
あり、もう一方は、T3D7.3(putative anion exchange p
rotein)と推定されていた領域に存在した。また独立に
単離されよく似た表現型を示すbor1-2変異株においてT3
D7.3領域の配列決定の結果、bor1-1変異とは異なるがそ
のごく近傍に一塩基置換がみつかった(図5のC)。こ
れらの変異はエキソン上に存在し、アミノ酸置換を引き
起こしていることが明らかになった。これら二つのアミ
ノ酸は、ともに二つ目の膜貫通領域と予想される領域に
存在し(図6)、相同遺伝子の間で保存されていた(図
7及び図8)。したがって、bor1-1およびbor1-2変異は
何らかの重要な役割を果たしているアミノ酸に置換を起
こし、BOR1の機能を抑制していると考えられた。以
上より、T3D7.3をBOR1遺伝子と決定した。
【0107】BOR1に相同なタンパク質 BOR1において、C末端側約100アミノ酸残基を除く
ほぼ全長の領域は疎水性が高く、動物のbicarbonate tr
ansporter superfamilyのメンバーのC末側ポリペプチ
ドと高い相同性を示した。炭酸水素イオン(bicarbonat
e)はCO2 ガスと水溶液中で共存し、生体のpH buff
erとして働いている(CO2 +H2 O=HCO3 -+H
+ )。bicarbonate transporter superfamilyに属する
タンパク質は、bicarbonateの細胞膜輸送を行い、pH
i reguratorとして機能していると考えられている(Ro
meo and Boron 1999)。bicarbonate transporter supe
rfamilyはさらに機能によって、Na+-indipendent C
-/HCO3-exchanger(Anion exchanger(AE)),Na+-
HCO3 -cotranporter(NBC),K+-HCO3 -cotranporte
r,Na+-driven Cl-/HCO3 -exchangerの5つのグル
ープに分けられる(Romeo and Boron 1999)。
【0108】BLASTおよびFASTAプログラムによるDataba
se searchでは、BOR1はsuperfamilyの中でもAE
に、AE familyの中ではAE1に最も高い相同性を示
した。AE familyは、AE1(band3)、AE2、AE
3の三つのメンバーからなり、さらにそれぞれからisof
ormsが様々な動物の組織からクローニングされ解析され
ている。アミノ酸配列の比較によると、cytoplasmic po
rtionを構成するN末側domainはAE isoformsの間で配列
が大きく異なっているが、membrane-associatedtranspo
rt domainを構成するC末側domainは、アミノ酸配列のi
dentityが64-69%と非常に相同性が高い。AEは、細胞
膜を介し電気的に中性なCl-/HCO3 -の交換を行い、
様々な生理機能をになうことが知られている。一例とし
て赤血球では、細胞内でカルボニックアンヒドラーゼが
CO2 からHCO3 -への反応を触媒し、AE1(band3)
がHCO3 -を細胞外(血漿)へ排出することによって、
血液の二酸化炭素輸送量を大幅に増加させている。また
AEは様々な細胞において様々なtransport systemとの
協同により細胞内pH(pHi)、Cl-concentration、
cell volumeの制御等に寄与している(Alper, S.L. (19
91) Annu, Rev. Physiol. 53: 549-564)。
【0109】系統解析(図9)によると動物のbicarbon
ate transporter superfamilyの遺伝子の分岐は植物、
動物、酵母への種の分岐の後と考えられ、BOR1が機
能的にNBCsやNa+-driven Cl-/HCO3 -exchang
erよりもAEに近いとは結論できない。
【0110】BOR1の分子機能 (1)ホウ素のトランスポーターとしてのBOR1 BOR1はbicarbonate transporter superfamilyの各
メンバーのmembrane-associated transport domainと相
同性を示した。そのうち最も相同性の高いanionexchang
e protein 1は、炭酸水素イオンと塩化物イオンに限ら
ず多様なアニオンを輸送することが報告されている(Jen
nings, M.L. (1989) A. Rev. Biophys.Biophys. Chem.
18: 397-430)。BOR1の生理機能は、導管液における
ホウ素の濃縮にあることが示されている(Noguchi, K.,
他 (2000) J. Plant Physiol.156: 756-761)。したが
って、BOR1はアニオンの形態をしたホウ素を(少な
くとも根の中心柱においては)アポプラストへ輸送する
トランスポーターである可能性が考えられる。
【0111】根の中心柱において特定の溶質をアポプラ
ストへ輸送していると考えられている分子としては、シ
ロイヌナズナのカリウムチャネルSKORの解析が報告
されている。アフリカツメガエルの卵母細胞を用いた電
気生理学的手法によって、SKORはカリウムを細胞外
へ放出することが示されている。また根の中心柱におけ
る発現が示されている。その遺伝子破壊株skor-1におけ
るカリウムイオン濃度は、野生型株と比較して根では影
響がなく、地上部と導管液において減少した(Gaymard,
F., 他 (1998) Cell 94: 647-655)。bor1-1と野生型
株におけるホウ素濃度もこれと同様の傾向を示したこと
(Noguchi, K., 他 (2000) J. Plant Physiol. 156: 75
6-761)は、BOR1は根の中心柱においてホウ素をア
ポプラストへ輸送するトランスポーターである可能性を
支持している。
【0112】(1−a)BOR1はホウ酸アニオントラ
ンスポーター ホウ素は水溶液中で主にほう酸として存在する。ほう酸
は水溶液中で(B(OH)3 +H2 O=B(OH)4 -
+ pKa=9.25)の平衡にしたがう非常に弱い酸で
ある(Power, P.P., 他 (1997) Plant and Soil 193:
49-58)。したがって生理的pHにおいてほとんどが解
離せず電荷を持たないほう酸の状態で存在し、高pH条
件下でホウ酸アニオンを生成する。ところで、二酸化炭
素もまた非常に弱い酸で、水溶液中で(CO2 +H2
=HCO3 -+H+ pKa=6.51)の平衡にしたがって
いる。以上のホウ酸アニオンと炭酸水素イオンの化学的
性質の類似と、炭酸水素イオンのトランスポーターとの
相同性は、BOR1がホウ酸アニオンのトランスポータ
ーであることを想像させる。しかし二酸化炭素のpKa
は6.51と、ホウ酸のpKaと比べて低い。さらに、生体
内で炭酸水素イオンとの反応はカルボニックアンヒドラ
ーゼにより触媒される(Sly, W.S., 他 (1995) Annu. Re
v. Biochem. 64: 375-401)。そのため細胞内には二酸化
炭素に対して相当量の炭酸水素イオンが存在する。一方
ホウ酸のpKaは9.25と非常に高い。植物では一般に細
胞内の原形質のpHは7前後、アポプラストのpHは5
〜6.5である(Kurkdjian, A., 他 (1989) Annu. Rev. P
lant Physiol. Plant Mol. Biol. 40: 271-303; Grigno
n, C., 他 (1991) Annu.Rev.Plant Physiol. Plant Mo
l.Biol. 42: 103-128)。したがって、根の中心柱で原
形質のpHを仮に7.1としたとき、ホウ酸アニオンはホ
ウ酸の1/100しか存在しない。さらに、アポプラストへ
放出されたホウ酸アニオンは、低pHのために大部分が
またホウ酸へ変換されると考えられる。電気的に中性で
小さな分子であるホウ酸は、生体膜を容易にかつ可逆的
に透過する。最近、カボチャの根から単離したplasma m
embrane vesiclesにおけるホウ酸のpermeability coeff
icientが3×10-7+−1.4×10-8cm s- 1と報告され、実
験的にも高い膜透過性が示されている(Dordas, C., 他
(2000)Plant Physiol. 124: 1349-1361)。したがっ
て、ホウ酸アニオンの輸送によって根の中心柱の細胞の
原形質とアポプラストの間でホウ素の濃度勾配が生じる
とは考えにくい。しかし、BOR1によるホウ酸アニオ
ン輸送の可能性が全く否定されるわけではない。Dordas
らの実験で用いたホウ素濃度は400mMと非常に高く、実
際濃縮輸送がなされるμMレベルのホウ酸の膜透過性は
不明である。また、電気的に中性で分子が小さい単糖や
ショ糖において、トランスポーターによる濃度勾配の形
成と維持が報告されている(Bush, D.R. (1999) Curren
t Opinion inPlant Biology. 2: 187-191)。BOR1
によるホウ酸アニオンの輸送効率が非常に高いならば濃
度勾配の形成と維持は可能かもしれない。
【0113】(1−b)BOR1はホウ酸エステルトラ
ンスポーター 根の細胞へ吸収されるホウ素の形態は主にホウ酸である
ことが示唆されている(Hu, H., 他 (1997) Plant Phys
iol. 113: 649-655)。しかしBOR1が関与するのは
植物体内での移行であるため、植物体内でのホウ素の存
在形態を考慮しなければならない。ホウ酸は、シスジオ
ール基を持つ化合物(ジヒドロキシ化合物)と安定なモ
ノエステル錯体(1:1)およびジエステル錯体(1:2)を
形成することが知られている。これらのエステルは、マ
イナス一価の電荷をもつ。エステル結合をなす反応のp
Kaはホウ酸のpKaよりも低い。一例としてホウ酸と
マンニトールの反応(B(OH)3 +2C6 6 14
[(C6 6 12)B(C 6 6 12-]+H3 +
+2H2 O)のpKaは約5.2であり、ホウ酸のpKa
(9.1)よりも約4桁も低い。したがって古くより、ホ
ウ酸は植物体内でこれら化合物とエステルを生成してい
るという予想はなされていた。
【0114】最近になって、Hu, H., 他 (1997) Plant
Physiol. 113: 649-655は、マトリクス支援レーザー脱
離−フーリエ変換質量分析法で、セロリーの篩管液中に
ホウ酸−マンニトールジエステルの存在を証明した。セ
ロリーをはじめ糖アルコールを光合成産物として転流さ
せる植物では、ホウ素は糖アルコールとのエステルとし
て篩管転流すると考えられる。またMatsunaga, T. 他
(1995) Anal. Sci. 11:889-892は、ダイコン、リンゴ、
キャベツ、およびコマツナの組織のin vivo 11B NM
Rによって、フリーのホウ酸、ホウ酸ジエステル、およ
びホウ酸モノエステルを検出した。ダイコン根のジュー
スの11B NMRと、ダイコン根のin vivo 11B NMR
のスペクトルを比較した結果、in vivo 11B NMRに
みられたホウ酸エステルは植物組織の水溶性画分に由来
していた。ダイコン根のジュース(pH6.2)の11B N
MRスペクトルは、ホウ酸2mMとフラクトース200m
M水溶液のpH6前後のスペクトルと良く似ていた。安
定なホウ酸エステルを生成することが知られている化合
物(van Duin, M., 他 (1984) Tetrahedron 40: 2901-2
911; Makkee, M., 他 (1985) Recl. Trav. Chim. Phys-
Bas 104: 230-235)の中で、フラクトースは野菜に多く
含まれる(Morvai, M., 他 (1991) J Chromatogr. Amst
erdam 552: 337-344)。したがって、ダイコン根でホウ
酸がエステル結合しているジヒドロキシ化合物の候補と
してフラクトースが考えられた。また、Pfefferら(Pfe
ffer, H., 他 (1999a) J.Plant Physiol. 155: 34-40;
Pfeffer, H., 他 (1999b) J.Plant Physiol. 154: 283-
288)は、ゲル濾過クロマトグラフィーによってヒマワ
リとの根と葉の水溶性画分と導管液、およびcurly kale
の葉の水溶性画分からホウ酸複合体を検出している。こ
れらの結果は、セロリーやリンゴなど糖アルコールを篩
管転流させる植物種にかぎらず、幅広い植物の組織にお
いて水溶性のホウ酸エステルが存在していることを示唆
している。
【0115】ホウ酸エステルはマイナス一価の電荷とあ
る程度の大きさを持つ分子であり膜透過性は低い。その
ため細胞内外でホウ素の濃度勾配の形成と維持に関与し
ている可能性が考えられる。したがってBOR1が輸送
するアニオンとして、ホウ酸エステルの可能性が考えら
れる。シロイヌナズナでは低ホウ素条件において、培地
と根の水溶性画分のホウ素濃度に大きな差はないが、導
管液のホウ素濃度はそれらよりも高く濃縮されている
(Noguchi, K., 他 (2000) J. Plant Physiol. 156: 75
6-761)。これは、図10に記載する以下のモデルによ
って説明が可能である。
【0116】図10のモデルでは、ホウ素はホウ酸の受
動拡散により根の細胞へ吸収され、細胞内でホウ酸エス
テルが生成される。ホウ酸およびホウ酸エステルは、シ
ンプラスト経由で中心柱に達しBOR1によってアポプ
ラストへ輸送される。この際ホウ酸は細胞内外で平衡に
達するが、ホウ酸エステルが濃度勾配を形成する。
【0117】一方ヒマワリでは、根の細胞への吸収と中
心柱における細胞外への放出の両プロセスにおいてホウ
素の濃縮が示唆されている(Dannel, F., 他 (2000) J.
Plant Physiol. 156: 756-761)。これも基本的にはシ
ロイヌナズナと同じモデルが考えられる。ヒマワリでは
根の細胞内で比較的多量のホウ酸エステルが生成される
ために、外液との濃度勾配が検出されているのではない
であろうか。あるいは液胞にホウ酸エステルを蓄積して
いるのかもしれない。
【0118】また、実施例1の考察では、シロイヌナズ
ナにおけるホウ素の成長部位への優先的輸送が、篩管を
介した輸送に依存している可能性を主張した。ホウ酸は
膜透過性が高いため篩管内に入ってもすぐにアポプラス
トに漏れでてしまうと考えられる。一方ホウ酸エステル
は膜透過性が低く篩管内を移動することができると考え
られている(Hu, H., 他 (1997) Plant and Soil 193:
49-58;Hu, H., 他 (1997) Plant Physiol. 113: 649-6
55)。BOR1によるホウ酸エステルの膜輸送は、現在
のところそのどのプロセスにおいてか定かでないが、篩
管を介したホウ素輸送に重要な役割を果たしている可能
性がある。
【0119】ソルビトールを合成する形質転換タバコで
は、若い組織へのホウ素の再転流が示された(Brown,
P.H., 他 (1999) Plant Physiol. 119: 17-20)。ま
た、植物体へのホウ素の吸収量が増加した(Bellaloui,
N., 他 (1999) Plant Physiol.119: 735-741)。これ
は、ホウ素と結合するジヒドロキシ化合物は、ホウ素の
吸収、移行の両プロセスにおいて重要な役割を果たして
いることを示している。さらに、タバコは元来ジヒドロ
キシ化合物を利用したホウ素の有効な吸収、移行のメカ
ニズムを保有していることを示唆している。タバコやシ
ロイヌナズナを含め、高濃度の糖アルコールを生産しな
い植物は、別のジヒドロキシ化合物を利用したホウ素輸
送を行っている可能性がある。糖アルコールを転流させ
る植物種も含め、ホウ酸とエステルを形成するジヒドロ
キシ化合物の種類、存在量、および植物組織のpH等の
差異が、ホウ素輸送の種間差を決定する大きなファクタ
ーであると考えられる。そして、BOR1はそれらジヒ
ドロキシ化合物とホウ酸のエステルのトランスポーター
として機能している可能性がある。
【0120】(2)pHi regulatorとしてのBOR1 BOR1はbicarbonate transporter superfamilyの各
メンバーのmembrane-associated transport domainと相
同性を示した。bicarbonate transporter superfamily
に属するタンパク質の共通の機能として、炭酸水素イオ
ンの細胞膜輸送を行い、pHi regulatorとして機能して
いることが知られている(Romero M.F. 他(1999) Annu.
Rev. Physiol. 61: 699-723)。したがって、BOR1
もまた炭酸水素イオン輸送によりpHi regulatorとして
機能している可能性が考えられる。この場合、bor1-1変
異株におけるpHiの変化がホウ素輸送量の低下をもたら
すと考えられる。上記において、ホウ酸エステルの生成
がホウ素輸送に重要であることを述べた。ホウ酸エステ
ルが生成される平衡反応を考慮すると、細胞内pHの低
下は細胞内でのホウ酸エステルの生成量低下をもたらす
と考えられる。したがって仮にbor1-1変異株において細
胞内pHが低下しているならば、ホウ酸エステルの生成
量が低下し輸送されるホウ素量の低下につながるかもし
れない。しかし、低ホウ素条件下におけるbor1-1変異株
と野生型株のホウ素輸送能の明らかな差異(Noguchi,
K., 他 (2000) J. Plant Physiol. 156: 756-761)を説
明するには、相当大幅なpH変化が必要である。このよ
うな大幅なpH変化は様々な生理現象を引き起こすと考
えられる。bor1-1変異株の低ホウ素条件下の表現型(No
guchi. K., 他 (1997a) In Boron in Soils and Plant
s. Edited by Bell, R.W. and Rerkasem, B.eds. pp197
-202. Kluwer Academic Publishers, Dordrecht;Noguc
hi, K., 他 (1997b) Plant Physiol. 115: 901-906;及
び本明細書の実施例1)は、ホウ素の導管における濃縮
(Noguchi, K., 他 (2000) J. Plant Physiol. 156: 75
6-761)と成長部位への優先的輸送(本明細書の実施例
1)によって説明された。またbor1-1変異株は高濃度の
ホウ素供給下では野生型株と同様正常な成長を示す(No
guchi et al.1997,及び本明細書の実施例1)。したが
ってbor1-1変異株の組織において大幅なpH変化が起こ
っているとは考えにくい。BOR1が炭酸水素イオン輸
送によりpHi regulatorとして機能している可能性は低
いと考えられる。
【0121】シロイヌナズナにおけるBOR1に相同な
遺伝子ファミリー シロイヌナズナにおいてBOR1の相同遺伝子が5つ存
在し、6つのメンバーからなる遺伝子ファミリーを形成
している(表2)。それにもかかわらず、BOR1遺伝
子のみに変異をもつbor1-1およびbor1-2変異株は明らか
な表現型を示す。これは、少なくともホウ素の導管への
濃縮輸送と地上部における優先的分配の二つの機能は主
にBOR1遺伝子によってなされていることを示してい
る。また、BOR1転写産物に相当するESTは根、地
上部全体、花芽のcDNA libraryから単離されている
(表2)。これは、BOR1は植物体のあるゆる組織に
おいて発現していることを示しており、同じ機能を持ち
組織特異性が異なる遺伝子が存在していると考えにく
い。したがって、各相同ポリペプチドについては、発現
量が少ない、機能していない、BOR1とは機能が異な
る等の可能性が有力と考えられる。
【0122】
【発明の効果】ホウ素は作物にとって、至適濃度範囲の
狭い元素として知られている。また至適濃度範囲は、種
によって、さらに品種によって異なることが知られてい
る。一例として、トマトとホウ素欠乏感受性の品種T323
8について研究がなされている。T3238は近縁の品種Rutg
erがホウ素欠乏を示さない条件で、頂端分裂組織と成長
中の葉にホウ素欠乏症状をしめした(Brown, J.C.,他
(1973) Soil Sci. Soc,Amer, Proc. 37: 63-66)。T323
8は、Rutgerと比較して地上部と導管液のホウ素濃度が
低く、根の水溶性画分のホウ素濃度は同程度であった
(Brown, J.C.,他 (1971) Physiol. Plant, 25: 279-28
2)。さらに近年、安定同位体を用いたトレーサー実験
により、RutgerはT3238よりも効率的にホウ素を根から
地上部へ輸送することが明らかになった(Bellaloui,
N.,他 (1998) Plant and Soil. 1-98: 153-158)。また
遺伝解析によってT3238のホウ素欠乏感受性は劣性の一
遺伝子によることが示されている(Wall,J.C., 他 (196
2) Amer, J. bot. 49: 758-762)。以上のT3238の性質
はbor1-1変異株に非常に似ている。また、BOR1転写
産物と相同なESTは各種作物で存在し、トマトにおい
ても存在した。したがって、T3238はBOR1遺伝子の
相同遺伝子に変異をもつ可能性が高い。同様に、様々な
作物におけるホウ素欠乏感受性の品種間格差の遺伝的な
原因も、BOR1遺伝子の相同遺伝子にある可能性が考
えられる。従って、ホウ素欠乏感受性の作物へ本発明の
BOR1遺伝子を導入することによって、ホウ素輸送の
欠損を補うことができる。また、本発明のBOR1遺伝
子を強発現させることによってホウ素欠乏に対して強い
品種を作ることも可能である。
【0123】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Fujiwara Toru <120> A gene involved in boron toransportation <130> A11019A <160> 13
【0124】 <210> 1 <211> 704 <212> PRT <213> Arabidopsis thaliana <400> 1 Met Glu Glu Thr Phe Val Pro Phe Glu Gly Ile Lys Asn Asp Leu Lys 1 5 10 15 Gly Arg Leu Met Cys Tyr Lys Gln Asp Trp Thr Gly Gly Phe Lys Ala 20 25 30 Gly Phe Arg Ile Leu Ala Pro Thr Thr Tyr Ile Phe Phe Ala Ser Ala 35 40 45 Ile Pro Val Ile Ser Phe Gly Glu Gln Leu Glu Arg Ser Thr Asp Gly 50 55 60 Val Leu Thr Ala Val Gln Thr Leu Ala Ser Thr Ala Ile Cys Gly Met 65 70 75 80 Ile His Ser Ile Ile Gly Gly Gln Pro Leu Leu Ile Leu Gly Val Ala 85 90 95 Glu Pro Thr Val Ile Met Tyr Thr Phe Met Phe Asn Phe Ala Lys Ala 100 105 110 Arg Pro Glu Leu Gly Arg Asp Leu Phe Leu Ala Trp Ser Gly Trp Val 115 120 125 Cys Val Trp Thr Ala Leu Met Leu Phe Val Leu Ala Ile Cys Gly Ala 130 135 140 Cys Ser Ile Ile Asn Arg Phe Thr Arg Val Ala Gly Glu Leu Phe Gly 145 150 155 160 Leu Leu Ile Ala Met Leu Phe Met Gln Gln Ala Ile Lys Gly Leu Val 165 170 175 Asp Glu Phe Arg Ile Pro Glu Arg Glu Asn Gln Lys Leu Lys Glu Phe 180 185 190 Leu Pro Ser Trp Arg Phe Ala Asn Gly Met Phe Ala Leu Val Leu Ser 195 200 205 Phe Gly Leu Leu Leu Thr Gly Leu Arg Ser Arg Lys Ala Arg Ser Trp 210 215 220 Arg Tyr Gly Thr Gly Trp Leu Arg Ser Leu Ile Ala Asp Tyr Gly Val 225 230 235 240 Pro Leu Met Val Leu Val Trp Thr Gly Val Ser Tyr Ile Pro Ala Gly 245 250 255 Asp Val Pro Lys Gly Ile Pro Arg Arg Leu Phe Ser Pro Asn Pro Trp 260 265 270 Ser Pro Gly Ala Tyr Gly Asn Trp Thr Val Val Lys Glu Met Leu Asp 275 280 285 Val Pro Ile Val Tyr Ile Ile Gly Ala Phe Ile Pro Ala Ser Met Ile 290 295 300 Ala Val Leu Tyr Tyr Phe Asp His Ser Val Ala Ser Gln Leu Ala Gln 305 310 315 320 Gln Lys Glu Phe Asn Leu Arg Lys Pro Ser Ser Tyr His Tyr Asp Leu 325 330 335 Leu Leu Leu Gly Phe Leu Thr Leu Met Cys Gly Leu Leu Gly Val Pro 340 345 350 Pro Ser Asn Gly Val Ile Pro Gln Ser Pro Met His Thr Lys Ser Leu 355 360 365 Ala Thr Leu Lys Tyr Gln Leu Leu Arg Asn Arg Leu Val Ala Thr Ala 370 375 380 Arg Arg Ser Ile Lys Thr Asn Ala Ser Leu Gly Gln Leu Tyr Asp Asn 385 390 395 400 Met Gln Glu Ala Tyr His His Met Gln Thr Pro Leu Val Tyr Gln Gln 405 410 415 Pro Gln Gly Leu Lys Glu Leu Lys Glu Ser Thr Ile Gln Ala Thr Thr 420 425 430 Phe Thr Gly Asn Leu Asn Ala Pro Val Asp Glu Thr Leu Phe Asp Ile 435 440 445 Glu Lys Glu Ile Asp Asp Leu Leu Pro Val Glu Val Lys Glu Gln Arg 450 455 460 Val Ser Asn Leu Leu Gln Ser Thr Met Val Gly Gly Cys Val Ala Ala 465 470 475 480 Met Pro Ile Leu Lys Met Ile Pro Thr Ser Val Leu Trp Gly Tyr Phe 485 490 495 Ala Phe Met Ala Ile Glu Ser Leu Pro Gly Asn Gln Phe Trp Glu Arg 500 505 510 Ile Leu Leu Leu Phe Thr Ala Pro Ser Arg Arg Phe Lys Val Leu Glu 515 520 525 Asp Tyr His Ala Thr Phe Val Glu Thr Val Pro Phe Lys Thr Ile Ala 530 535 540 Met Phe Thr Leu Phe Gln Thr Thr Tyr Leu Leu Ile Cys Phe Gly Leu 545 550 555 560 Thr Trp Ile Pro Ile Ala Gly Val Met Phe Pro Leu Met Ile Met Phe 565 570 575 Leu Ile Pro Val Arg Gln Tyr Leu Leu Pro Arg Phe Phe Lys Gly Ala 580 585 590 His Leu Gln Asp Leu Asp Ala Ala Glu Tyr Glu Glu Ala Pro Ala Leu 595 600 605 Pro Phe Asn Leu Ala Ala Glu Thr Glu Ile Gly Ser Thr Thr Ser Tyr 610 615 620 Pro Gly Asp Leu Glu Ile Leu Asp Glu Val Met Thr Arg Ser Arg Gly 625 630 635 640 Glu Phe Arg His Thr Ser Ser Pro Lys Val Thr Ser Ser Ser Ser Thr 645 650 655 Pro Val Asn Asn Arg Ser Leu Ser Gln Val Phe Ser Pro Arg Val Ser 660 665 670 Gly Ile Arg Leu Gly Gln Met Ser Pro Arg Val Val Gly Asn Ser Pro 675 680 685 Lys Pro Ala Ser Cys Gly Arg Ser Pro Leu Asn Gln Ser Ser Ser Asn 690 695 700
【0125】 <210> 2 <211> 2115 <212> DNA <213> Arabidopsis thaliana <400> 2 atg gaa gag act ttt gtg ccg ttt gaa gga atc aag aat gat ctt aaa 48 Met Glu Glu Thr Phe Val Pro Phe Glu Gly Ile Lys Asn Asp Leu Lys 1 5 10 15 gga aga ttg atg tgc tat aag caa gat tgg act ggt gga ttc aaa gct 96 Gly Arg Leu Met Cys Tyr Lys Gln Asp Trp Thr Gly Gly Phe Lys Ala 20 25 30 gga ttt agg att ctg gct ccc acc act tac ata ttt ttc gct tct gcg 144 Gly Phe Arg Ile Leu Ala Pro Thr Thr Tyr Ile Phe Phe Ala Ser Ala 35 40 45 att cct gtc atc tca ttt ggt gaa caa ctc gaa aga agc acc gat gga 192 Ile Pro Val Ile Ser Phe Gly Glu Gln Leu Glu Arg Ser Thr Asp Gly 50 55 60 gtt ctc acg gct gtt caa acc tta gca tct aca gcc att tgc ggt atg 240 Val Leu Thr Ala Val Gln Thr Leu Ala Ser Thr Ala Ile Cys Gly Met 65 70 75 80 ata cat tcg att atc gga ggt cag cca ctg ctt att ctc ggt gtt gca 288 Ile His Ser Ile Ile Gly Gly Gln Pro Leu Leu Ile Leu Gly Val Ala 85 90 95 gag cct act gtg att atg tac aca ttc atg ttt aac ttt gca aag gcc 336 Glu Pro Thr Val Ile Met Tyr Thr Phe Met Phe Asn Phe Ala Lys Ala 100 105 110 aga cct gaa ttg gga cga gac ctg ttc ttg gcg tgg tct gga tgg gtt 384 Arg Pro Glu Leu Gly Arg Asp Leu Phe Leu Ala Trp Ser Gly Trp Val 115 120 125 tgt gtt tgg act gct ttg atg ctg ttt gtg ttg gca ata tgt gga gct 432 Cys Val Trp Thr Ala Leu Met Leu Phe Val Leu Ala Ile Cys Gly Ala 130 135 140 tgt tct atc atc aat agg ttt act cga gta gct gga gaa ttg ttt gga 480 Cys Ser Ile Ile Asn Arg Phe Thr Arg Val Ala Gly Glu Leu Phe Gly 145 150 155 160 ctg ctt att gct atg ctt ttc atg cag caa gcc atc aaa ggg cta gtt 528 Leu Leu Ile Ala Met Leu Phe Met Gln Gln Ala Ile Lys Gly Leu Val 165 170 175 gat gaa ttc cgc att cct gaa cga gaa aat cag aag ctg aag gag ttc 576 Asp Glu Phe Arg Ile Pro Glu Arg Glu Asn Gln Lys Leu Lys Glu Phe 180 185 190 tta cct tcc tgg agg ttt gct aat ggg atg ttt gct ctg gtt ctc tcc 624 Leu Pro Ser Trp Arg Phe Ala Asn Gly Met Phe Ala Leu Val Leu Ser 195 200 205 ttt ggc ctt ctt ctg act gga ctt aga agc aga aaa gcc aga tca tgg 672 Phe Gly Leu Leu Leu Thr Gly Leu Arg Ser Arg Lys Ala Arg Ser Trp 210 215 220 cgg tac gga act ggc tgg ctc aga agc tta ata gct gac tat ggt gta 720 Arg Tyr Gly Thr Gly Trp Leu Arg Ser Leu Ile Ala Asp Tyr Gly Val 225 230 235 240 cca ctc atg gtg ctc gtg tgg acc ggt gtc tcc tac att cca gca gga 768 Pro Leu Met Val Leu Val Trp Thr Gly Val Ser Tyr Ile Pro Ala Gly 245 250 255 gat gtt cca aaa gga att cct cgg cga ctt ttt agc cca aat cct tgg 816 Asp Val Pro Lys Gly Ile Pro Arg Arg Leu Phe Ser Pro Asn Pro Trp 260 265 270 tct cct ggt gct tat ggg aac tgg acc gta gta aag gag atg ctt gat 864 Ser Pro Gly Ala Tyr Gly Asn Trp Thr Val Val Lys Glu Met Leu Asp 275 280 285 gtt cca atc gtc tac ata att gga gct ttc att cca gca tca atg att 912 Val Pro Ile Val Tyr Ile Ile Gly Ala Phe Ile Pro Ala Ser Met Ile 290 295 300 gct gtg ctt tac tac ttc gac cat agt gta gct tca cag ctc gcg cag 960 Ala Val Leu Tyr Tyr Phe Asp His Ser Val Ala Ser Gln Leu Ala Gln 305 310 315 320 cag aaa gaa ttc aat ttg aga aaa ccg tct tct tac cac tat gac ttg 1008 Gln Lys Glu Phe Asn Leu Arg Lys Pro Ser Ser Tyr His Tyr Asp Leu 325 330 335 ctt ctt ctt ggg ttt ctg aca tta atg tgt ggt cta ctt gga gtc cct 1056 Leu Leu Leu Gly Phe Leu Thr Leu Met Cys Gly Leu Leu Gly Val Pro 340 345 350 cca tca aac ggt gtc att cct caa tct cca atg cat acc aag agc tta 1104 Pro Ser Asn Gly Val Ile Pro Gln Ser Pro Met His Thr Lys Ser Leu 355 360 365 gca act ctt aaa tac cag ttg ctt cgt aac aga ctg gtc gca aca gca 1152 Ala Thr Leu Lys Tyr Gln Leu Leu Arg Asn Arg Leu Val Ala Thr Ala 370 375 380 cga aga agt atc aaa aca aat gcg agt ttg ggt caa ctc tat gac aat 1200 Arg Arg Ser Ile Lys Thr Asn Ala Ser Leu Gly Gln Leu Tyr Asp Asn 385 390 395 400 atg caa gaa gct tac cat cac atg cag aca cca tta gta tac cag caa 1248 Met Gln Glu Ala Tyr His His Met Gln Thr Pro Leu Val Tyr Gln Gln 405 410 415 ccc caa ggt cta aaa gag ctc aag gaa tcg aca atc caa gct act aca 1296 Pro Gln Gly Leu Lys Glu Leu Lys Glu Ser Thr Ile Gln Ala Thr Thr 420 425 430 ttc acc gga aac ctc aat gct cca gtt gat gaa act ctg ttc gac ata 1344 Phe Thr Gly Asn Leu Asn Ala Pro Val Asp Glu Thr Leu Phe Asp Ile 435 440 445 gag aaa gaa ata gat gat tta cta cca gtt gaa gtc aaa gaa caa cgg 1392 Glu Lys Glu Ile Asp Asp Leu Leu Pro Val Glu Val Lys Glu Gln Arg 450 455 460 gta agc aac ttg ctt cag tct aca atg gta gga gga tgc gtt gca gct 1440 Val Ser Asn Leu Leu Gln Ser Thr Met Val Gly Gly Cys Val Ala Ala 465 470 475 480 atg cct atc ctt aaa atg atc cca aca tca gtc ctt tgg ggc tat ttt 1488 Met Pro Ile Leu Lys Met Ile Pro Thr Ser Val Leu Trp Gly Tyr Phe 485 490 495 gcc ttc atg gcc atc gaa agc tta ccc gga aac caa ttc tgg gaa aga 1536 Ala Phe Met Ala Ile Glu Ser Leu Pro Gly Asn Gln Phe Trp Glu Arg 500 505 510 atc tta ctt ctg ttc acc gcc cca agt cgc cgc ttc aag gtt ctt gaa 1584 Ile Leu Leu Leu Phe Thr Ala Pro Ser Arg Arg Phe Lys Val Leu Glu 515 520 525 gat tac cac gcg aca ttc gtg gaa acc gtt cca ttc aag acg att gca 1632 Asp Tyr His Ala Thr Phe Val Glu Thr Val Pro Phe Lys Thr Ile Ala 530 535 540 atg ttt act ctt ttc caa acg act tat ctc ttg atc tgc ttt ggt ctc 1680 Met Phe Thr Leu Phe Gln Thr Thr Tyr Leu Leu Ile Cys Phe Gly Leu 545 550 555 560 aca tgg ata cca atc gca gga gtc atg ttc cct tta atg atc atg ttc 1728 Thr Trp Ile Pro Ile Ala Gly Val Met Phe Pro Leu Met Ile Met Phe 565 570 575 tta atc ccc gta cga caa tat ctc ctc cct aga ttc ttc aaa gga gct 1776 Leu Ile Pro Val Arg Gln Tyr Leu Leu Pro Arg Phe Phe Lys Gly Ala 580 585 590 cat ctt cag gac tta gat gca gca gag tat gaa gaa gct cca gct tta 1824 His Leu Gln Asp Leu Asp Ala Ala Glu Tyr Glu Glu Ala Pro Ala Leu 595 600 605 ccc ttc aat ctc gca gcg gaa acg gag att gga tcc aca aca tcg tat 1872 Pro Phe Asn Leu Ala Ala Glu Thr Glu Ile Gly Ser Thr Thr Ser Tyr 610 615 620 ccg gga gat ttg gag att ctt gat gag gtt atg acc cga agc aga gga 1920 Pro Gly Asp Leu Glu Ile Leu Asp Glu Val Met Thr Arg Ser Arg Gly 625 630 635 640 gag ttt aga cac acg agt agt cct aag gtg aca agt tca agt tcg act 1968 Glu Phe Arg His Thr Ser Ser Pro Lys Val Thr Ser Ser Ser Ser Thr 645 650 655 cca gtc aat aat cgg agt ttg tca caa gtg ttt agt cca aga gtg agt 2016 Pro Val Asn Asn Arg Ser Leu Ser Gln Val Phe Ser Pro Arg Val Ser 660 665 670 gga atc agg ttg ggt cag atg agt cct cga gtc gtc ggg aat agt cca 2064 Gly Ile Arg Leu Gly Gln Met Ser Pro Arg Val Val Gly Asn Ser Pro 675 680 685 aag ccg gcg agt tgt ggg agg agt ccc ttg aac cag tcg tca tcg aac 2112 Lys Pro Ala Ser Cys Gly Arg Ser Pro Leu Asn Gln Ser Ser Ser Asn 690 695 700 tga 2115
【0126】 <210> 3 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 3 aaaggccagt ctgagttttg at 22
【0127】 <210> 4 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 4 gatcagatat tgccaacaat gc 22
【0128】 <210> 5 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 5 gtcggctatt accatggagt at 22
【0129】 <210> 6 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 6 tcacgtaaca cgttcaaatt ct 22
【0130】 <210> 7 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 7 cacgcggttt aagaaaatgc 20
【0131】 <210> 8 <211> 23 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 8 tctcacgcgg tttaagaaaa taa 23
【0132】 <210> 9 <211> 25 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 9 tttgagaata ggaaacaaca atacg 25
【0133】 <210> 10 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 10 cgctaacggg aatcctagtg 20
【0134】 <210> 11 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 11 catggcttac gaggctcttc 20
【0135】 <210> 12 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 12 gcctgcttca ggttttcagt 20
【0136】 <210> 13 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: an artificially synthesized pr imer sequence <400> 13 aacaatgtcg caaagcaagt 20
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ホウ素の供給量を変化させた場合のCo
l-0(黒いバー)及びbor1-1(白いバー)の茎葉(図1
のA)及び根(図1のB)の成長を示す。平均±標準偏
差を示す(n=10)。
【図2】図2は、ホウ素の供給量を変化させた場合のCo
l-0及びbor1-1の生育を示す。
【図3】図3は、bor1-1変異株およびCol-0野生型株の
葉の組織観察の結果を示す。バーは50μmを示す。
【図4】図4は、ホウ素の安定同位体10Bによるトレー
サー実験の結果を示す。
【図5】図5は、BOR1遺伝子の分子同定を示す。
【図6】図6は、BOR1のアミノ酸配列と、Hydropho
bicity plot解析の結果を示す。
【図7】図7は、BOR1と、シロイヌナズナにおける
相同性の高い5つのputative polypeptideとの配列の比
較を示す。
【図8】図8は、BOR1と、ヒト、イネおよび酵母の
相同タンパク質との配列の比較を示す。
【図9】図9は、BOR1および相同タンパク質の系統
分析を示す。
【図10】図10は、シロイヌナズナの根におけるホウ
素輸送の仮説モデルを示す。
【図11】図11は、シロイヌナズナの野生株及びbor-
1変異株の新芽におけるGe含量を測定した結果を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤原 徹 東京都文京区向丘1−18−3−202 Fターム(参考) 2B030 AA02 AB03 AD20 CA06 CA17 CA19 CB02 CD03 CD07 CD09 CD12 CD13 CD14 CD17 4B024 AA08 BA80 CA04 DA01 GA11 GA17 4B065 AA01X AA26X AA72X AA80X AA88X AA88Y AA89X AA90X AB01 BA02 CA24 CA53 4H045 AA10 AA30 BA10 CA30 EA05 FA72 FA73 FA74 HA06

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の何れかの塩基配列を有する遺伝
    子。 (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする塩
    基配列; (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から
    複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているア
    ミノ酸配列であって、ホウ素輸送活性を有するアミノ酸
    配列をコードする塩基配列; (C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも6
    0%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホウ
    素輸送活性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配
    列; (D)配列番号2に記載の塩基配列; (E)配列番号2に記載の塩基配列において1から複数
    個の塩基が欠失、付加または置換されている塩基配列で
    あって、ホウ素輸送活性を有するタンパク質をコードす
    る塩基配列;又は (F)配列番号2に記載の塩基配列とストリンジェント
    な条件下でハイブリダイズする塩基配列であってホウ素
    輸送活性を有するタンパク質をコードする塩基配列:
  2. 【請求項2】 下記の何れかのアミノ酸配列を有するタ
    ンパク質。 (A)配列番号1に記載のアミノ酸配列; (B)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から
    複数個のアミノ酸が欠失、付加または置換されているア
    ミノ酸配列であってホウ素輸送活性を有するアミノ酸配
    列;又は (C)配列番号1に記載のアミノ酸配列と少なくとも6
    0%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ホウ
    素輸送活性を有するアミノ酸配列:
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の遺伝子を含む組み換え
    ベクター。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の遺伝子又は請求項3に
    記載の組み換えベクターを有する形質転換体。
  5. 【請求項5】 形質転換体が植物である、請求項4に記
    載の形質転換体。
  6. 【請求項6】 ホウ素輸送遺伝子としての請求項1に記
    載の遺伝子の使用。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の遺伝子をホウ素欠乏感
    受性植物へ導入することを特徴とする、当該ホウ素欠乏
    感受性植物におけるホウ素輸送の欠損を補う方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の方法により作製され
    る、ホウ素輸送の欠損を補った植物。
  9. 【請求項9】 請求項1に記載の遺伝子を強発現させる
    ことを特徴とする、ホウ素欠乏に対する耐性を有する植
    物を作製する方法。
  10. 【請求項10】 請求項9に記載の方法により作製され
    る、ホウ素欠乏に対する耐性を有する植物。
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