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JP2000280490A - インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置

Info

Publication number
JP2000280490A
JP2000280490A JP8934699A JP8934699A JP2000280490A JP 2000280490 A JP2000280490 A JP 2000280490A JP 8934699 A JP8934699 A JP 8934699A JP 8934699 A JP8934699 A JP 8934699A JP 2000280490 A JP2000280490 A JP 2000280490A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
recording head
jet recording
ink jet
flow path
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8934699A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroaki Sato
博昭 佐藤
Yasushi Oki
靖 大木
Susumu Hirakata
進 平潟
Yasushi Suwabe
恭史 諏訪部
Yuji Suemitsu
裕治 末光
Megumi Hasebe
恵 長谷部
Satoru Mori
哲 毛利
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Xerox Co Ltd filed Critical Fuji Xerox Co Ltd
Priority to JP8934699A priority Critical patent/JP2000280490A/ja
Publication of JP2000280490A publication Critical patent/JP2000280490A/ja
Pending legal-status Critical Current

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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
    • B41J2002/14419Manifold

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェット記録ヘッド内の気泡に起因す
る問題点を、バキューム吸引方式を用いることなく解決
し得るインクジェット記録ヘッド、およびインクジェッ
ト記録装置を提供すること。 【解決手段】 画像記録材料110にインク102を吐
出するインク吐出口106と、インク吐出口106に連
通するインク流路112と、画像信号に応じてインク1
02を吐出するインク吐出手段104と、からなるイン
クジェット記録ヘッドにおいて、インク流路112側壁
に、対向する少なくとも一対の電極114a,114b
を配設してなり、該電極114a,114bの少なくと
も一方が起電力発生部材であることを特徴とするインク
ジェット記録ヘッドである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクを吐出させ
て画像の記録を行うインクジェット記録ヘッド、および
該インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記
録装置に関し、特にインク中に含まれる気泡が、インク
ジェット記録ヘッドのインク吐出口近傍への流入を防止
可能なインクジェット記録ヘッド、および該インクジェ
ット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】被印字面に液滴、特にインクドロップを
吐出して印字を行うインクジェット記録方式の代表的な
ものとして、従来、オンデマンド型と連続流型とがあ
る。オンデマンド型は、記録情報に対応してノズルから
間欠的にインクを吐出させて印字を行う方式で、代表的
なものとして、圧電素子方式とサーマル方式とがある。
圧電素子方式は、インク室に付設した圧電素子にパルス
電圧を印加して圧電素子を変形させることにより、イン
ク室内のインク液圧を変化させ、ノズルからインクドロ
ップを吐出させて、記録紙上にドットを記録するもので
ある。サーマル方式は、インク室内に設けた加熱素子に
よりインクを加熱し、これにより発生したバブルにより
ノズルからインクドロップを吐出させて、記録紙上にド
ットを記録するものである。
【0003】一方、連続流型は、インクに圧力を加えて
ノズルから連続的にインクを吐出させると同時に、ピエ
ゾ振動子などにより振動を加えて突出インク柱を液滴化
し、さらに液滴に対して選択的に帯電、偏向を行うこと
によって、記録を行うものである。
【0004】インクジェット記録ヘッド内のインク中に
は、周囲環境の大気が気体のインクに対する溶解度に依
存して溶解し、溶存気体として存在している。従って、
周囲環境の温度変化や圧力変化により、溶存気体が過飽
和状態になるとインクジェット記録ヘッド内で気泡化す
る。
【0005】気泡の発生は、インクジェット記録ヘッド
の印字性能に関し以下およびに示す如く、様々な悪
影響を及ぼす。 気泡がインク流路に滞留し、気泡のサイズが、インク
ジェット記録ヘッド内に設けられたインク流路のサイズ
と同程度以上になると、インク供給が不十分となり、最
悪の場合印字不能に陥る。
【0006】圧力室に配された発熱素子や電歪素子等
の圧力発生手段によりインクを加圧して、インク吐出口
からインクドロップを吐出させるインクジェット記録方
式では、気泡が圧力室に存在すると、本来インクに作用
すべき圧力が気泡の圧縮によりインク吐出口付近のイン
クに十分に伝わらずインクの吐出不良を起こす事があ
る。
【0007】これらインクジェット記録ヘッド内のイン
ク中に存在する気泡に起因する問題点を解消する手段と
して、特開昭62−113556号、同63−2952
65号公報等で提案されている所謂バキューム吸引方式
がある。これは、インクジェット記録ヘッド本体の各ノ
ズル(インク吐出口)面のインクが露出する端面全域を
キャップで覆い、キャップ内部を負圧状態として、イン
クジェット記録ヘッド内の気泡をインクごと吸引除去す
るものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】バキューム吸引方式に
は以下に示す〜のような課題がある。 キャップ内部を負圧状態にするためのポンプ機構が必
要になるため、装置の小型化の障害となり、また高コス
ト化につながる。 気泡を吸引すると同時に大量のインクを吸引するの
で、排インクを保持する排インクタンクが必要になるた
め、装置の小型化の障害となる。 排インクをインクジェット記録ヘッドに戻して、再度
印字に使用する事も可能ではあるが、そのための機構が
複雑になるので通常は廃棄されており、印字コストの上
昇につながっている。
【0009】キャップで密閉しインクジェット記録ヘ
ッド内の気泡をインクごと吸引するため、吸引終了後の
ノズル面にはインクが付着する。ノズル面に付着したイ
ンクは、ワイパ部材により拭き取られる(ワイピング工
程)。しかしながら、このワイピング工程が新たな問題
を引き起こす事が知られている。即ち、ノズル面には通
常撥液処理薄層や親液処理薄層の類が設けられるが、こ
れら処理薄層がワイピングによって摩耗したり、あるい
は、剥離することがあるという問題である。また、ノズ
ル面に密着して摺動させる結果、不要物(ゴミ、汚れた
インク等)をノズル内に押し込んでしまうことがあると
いう問題もある。
【0010】停止状態、特に長時間(数日以上)停止
状態にあったプリンタを起動して記録動作をさせる場
合、気泡除去のための上記一連の工程が複雑で時間を要
するので、1枚目のプリントを得るまでの待機時間が長
くなるという問題がある。
【0011】従って本発明は、以上の技術的課題を解決
するためになされたものであって、インクジェット記録
ヘッド内の気泡に起因する問題点を、バキューム吸引方
式を用いることなく解決し得るインクジェット記録ヘッ
ド、および該インクジェット記録ヘッドを用いたインク
ジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は以下の本発明
により達成される。即ち、第1の本発明は、画像記録材
料にインクを吐出するインク吐出口と、該インク吐出口
に連通するインク流路と、画像信号に応じてインクを吐
出するインク吐出手段と、からなるインクジェット記録
ヘッドにおいて、インク流路側壁に、対向する少なくと
も一対の電極を配設してなり、該電極の少なくとも一方
が起電力発生部材であることを特徴とするインクジェッ
ト記録ヘッドである。
【0013】第1の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、起電力発生部材からなる電極表面に自身の電
位差が生じ、その結果一対の電極間に電位差を形成し、
インク流路に電界を生じさせることにより、インク中に
存在する気泡は、その表面に誘電分極による電荷の偏り
が生じ、一対の電極からの電界(以下、「気泡流入防止
電界」という場合がある。)による斥力を受け、インク
の流れ方向への進行が妨げられる。従って、圧力室等の
インク吐出口付近への気泡の侵入が防止される。
【0014】なお、本発明において起電力発生部材と
は、電圧の印加を受けることなしに、それ自身が部材内
に電荷の偏りを生じるものをいい、具体的には、例えば
エレクトレット、焦電部材、圧電素子、光電素子等が挙
げられる。従って、第1の本発明によれば、電源手段等
の電圧印加手段を設けることなく、インク中に存在する
気泡のインク吐出口付近への侵入が防止される。
【0015】第2の本発明は、第1の本発明のインクジ
ェット記録ヘッドであって、さらに、前記起電力発生部
材の少なくとも一部が、少なくともエレクトレット層と
導電層との積層体であり、該積層体の導電層側の面がイ
ンク流路側壁に面するように配設され、導電層が接地電
位に接続されていることを特徴とする。
【0016】第2の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、エレクトレットの内部分極による表面電位を
用い、かつ、導電層を接地電位に接続し、エレクトレッ
トの分極による電位差を絶対的な電位として確定させる
ことにより、電圧印加手段その他何ら特別な外部エネル
ギー付与手段を要さず、有効にインク流路中に電界を生
じさせることができ、インク中に存在する気泡のインク
吐出口付近への侵入が防止される。
【0017】第3の本発明は、第2の本発明のインクジ
ェット記録ヘッドであって、さらに前記エレクトレット
層と導電層との積層体のエレクトレット層側の面に、第
2の導電層が形成されてなることを特徴とする。
【0018】第3の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、第2の導電層が電気的にフロート状態で設け
られるので、エレクトレット層の分極電位が場所によっ
てばらついても、前記第2の導電層で均一化され、イン
ク流路内に気泡流入防止電界を形成するための電極の表
面電位を均一化できる。
【0019】第4の本発明は、第1の本発明のインクジ
ェット記録ヘッドであって、さらに前記起電力発生部材
の少なくとも一部が、少なくとも焦電部材層と導電層と
の積層体であり、該積層体の導電層側の面がインク流路
側壁に面するように配設され、導電層が接地電位に接続
されていることを特徴とする。
【0020】第4の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、別途設けられた加熱手段により、あるいは、
印字により発生する熱により焦電部材が昇温し、該昇温
部材が内部分極する。そして、この内部分極した焦電部
材の表面電位を用い、かつ、導電層を接地電位に接続
し、焦電部材の分極による電位差を絶対的な電位として
確定させることにより、電圧印加手段を要さず、有効に
インク流路中に電界を生じさせることができ、インク中
に存在する気泡のインク吐出口付近への侵入が防止され
る。
【0021】第5の本発明は、第4の本発明のインクジ
ェット記録ヘッドであって、さらに前記焦電部材層と導
電層との積層体の焦電部材層側の面に、第2の導電層が
形成されてなることを特徴とする。
【0022】第5の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、第2の導電層が電気的にフロート状態で設け
られるので、焦電部材層の分極電位が場所によってばら
ついても、前記第2の導電層で均一化され、インク流路
内に気泡流入防止電界を形成するための電極の表面電位
を均一化できる。
【0023】第6の本発明は、第4または第5の本発明
のインクジェット記録ヘッドであって、さらに前記焦電
部材層と導電層との積層体に接触または近接して、発熱
部材が配されてなることを特徴とする。
【0024】第6の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、焦電部材層を加熱する発熱部材が配されてい
るため、発熱部材への通電等を制御することにより、焦
電部材の焦電作用を制御することができ、インク流路内
に適正な気泡流入防止電界を高精度でかつ安定に形成す
ることができる。
【0025】なお、ここで「積層体に接触または近接し
て、発熱部材が配される」とは、積層体に完全に接触し
て発熱部材が配される場合のみならず、発熱部材からの
発熱により積層体中の焦電部材層を加熱して焦電作用を
引き出せるように発熱部材が配される場合を含むものと
する。
【0026】第7の本発明は、第4または第5の本発明
のインクジェット記録ヘッドであって、複数のインク吐
出口と、該複数のインク吐出口にそれぞれ連通するイン
ク流路と、前記複数のインク吐出口に対応するインク吐
出手段と、前記複数のインク流路側壁にそれぞれ配設さ
れる少なくとも一対の電極と、を有し、前記複数配設さ
れた一対の電極のうち焦電部材層と導電層との積層体か
らなる電極に、それぞれ接触または近接して発熱部材が
配されてなることを特徴とする。
【0027】第7の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、複数のインク吐出口にそれぞれ連通するイン
ク流路のそれぞれに発熱部材が配されているため、イン
ク吐出手段が駆動し気泡流入防止電界を形成したいイン
ク流路にのみ発熱部材により熱を与えることができ、効
率的である。個々のインク吐出口に連通するインク流路
一つ一つは微小であり、エネルギーコストの削減を図る
ことができる。
【0028】第8の本発明は、第7の本発明のインクジ
ェット記録ヘッドであって、さらに前記インク吐出手段
と前記発熱部材とが、1のインク流路中で電気的に接続
されていることを特徴とする。
【0029】第8の本発明のインクジェット記録ヘッド
によれば、複数のインク吐出口にそれぞれ連通するイン
ク流路のそれぞれに配される発熱部材とインク吐出手段
とが電気的に接続されているため、インク吐出時に連動
して気泡流入防止電界が形成される。すなわち、インク
吐出後に必ず生ずるインク補充の流れに対して、効果的
に気泡流入防止電界が作用し、気泡がインク流路を塞い
だり、圧力室等のインク吐出口付近へ気泡が侵入するこ
とを効果的に防止することができる。
【0030】第9の本発明は、第1ないし第8のいずれ
か1の本発明のインクジェット記録ヘッドであって、さ
らに前記インク吐出手段が、インク流路側壁であってイ
ンク吐出口近傍に配された発熱素子により、画像信号に
応じてインクを加熱して発泡させ、吐出圧力を形成する
手段であることを特徴とする。
【0031】第9の本発明のインクジェット記録ヘッド
は、インク吐出手段に発熱素子を用いたいわゆるサーマ
ル方式であるため、インクの温度が上昇しインク中の溶
存気体が気泡になりやすく、第1ないし第8のいずれか
1の本発明の構成を適用することにより、圧力室等のイ
ンク吐出口付近への気泡の侵入が効果的に防止される。
【0032】特に、起電力発生部材に焦電部材を用いた
場合、発熱素子から発生する熱により前記焦電部材が昇
温されるので、発熱部材等の加熱手段を別途設ける必要
がなく、あるいは、加熱手段による加熱を少なくするこ
とができ、簡易かつ低コストで気泡流入防止電界を形成
することができる。
【0033】第10の本発明は、第1ないし第9のいず
れか1の本発明のインクジェット記録ヘッドであって、
インク流路における一対の電極が配設される区間の形状
が、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開
口面積が連続的に減少するような形状であることを特徴
とする。
【0034】第10の本発明のインクジェット記録ヘッ
ドによれば、インクの流れ方向に進むにしたがいインク
流路の開口面積が連続的に減少するような形状のインク
流路側壁に一対の電極が配設されているため、両電極の
間隙がインクの流れ方向に進むにしたがい狭まり、両電
極間の電位差によって生ずる電界が、インクの流れ方向
上流側程弱電界となる。このような不均一電界が形成さ
れることにより、インク中に存在する気泡が一対の電極
からの電界による斥力をより強く受け、インクの流れ方
向への進行が妨げられ、圧力室等のインク吐出口付近へ
の気泡の侵入がより有効に防止される。
【0035】第11の本発明は、画像記録媒体を搬送す
る搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記画像
記録媒体に対しインクを吐出して画像を記録するインク
ジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッド
に画像信号を入力する画像信号入力手段と、を備えるイ
ンクジェット記録装置において、前記インクジェット記
録ヘッドが第1ないし第10のいずれか1の本発明のイ
ンクジェット記録ヘッドであることを特徴とするインク
ジェット記録装置である。
【0036】第11の本発明のインクジェット記録装置
によれば、使用するインクジェット記録ヘッドが第1な
いし第10のいずれか1の本発明のインクジェット記録
ヘッドであるため、圧力室等の吐出口付近への気泡の侵
入が防止され、気泡によるインク吐出不良等の不具合が
生じにくい。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明を実施の形態を挙げて詳細
に説明する。 (第1の実施の形態)図1は、本発明のインクジェット
記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」と略す場合がある)
の一例として、第1の実施の形態である記録ヘッド10
0の動作状態を表す拡大断面図である。
【0038】記録ヘッド100の内部には、インクタン
ク(不図示)からインク吐出口106までを繋ぐインク
流路112が形成され、矢印A方向にインクの流れが生
ずるようになっている(図1では、インク流路112を
示すのにその領域のみを指して符号を付しているが、イ
ンク流路112は、当該領域におけるインク102が流
れる記録ヘッド100内部の連通孔を指す。以下、「イ
ンク流路」といった場合に同様。)。
【0039】このインク流路112は、矢印A方向下流
側で隔壁122により仕切られ、各インク吐出口106
に対応して設けられた個別インク流路112bに分割さ
れている。なお、隔壁122が設けられる位置よりも上
流側の分割されていないインク流路112は、共通イン
ク流路112aと称することとする。また個別インク流
路112bの数は、図1では3本となっているが、必要
に応じて適宜設定することができる。なお、インク流路
112の開口(矢印A方向と垂直な断面)の形状は、円
形、矩形、三角形等任意の形状とすることができる。
【0040】個別インク流路112bの矢印A方向イン
ク吐出口106手前側壁には、インク吐出手段である発
熱素子104が配されている(個別インク流路112b
中の発熱素子104周辺を圧力室120という場合があ
る)。なお、本実施の形態においては、インク吐出手段
として、発熱素子104を用いたが、本発明はこれに限
定されるものではなく、電歪素子や、静電気力を利用し
たもの(特開平5−506014号公報等)、静電吸引
方式によるもの(特開平10−138494号公報
等)、波動集中方式によるもの(特開平6−11506
9号公報等)等従来公知のインクジェット記録における
あらゆるインク吐出手段を採用することができる。これ
らのうち、静電吸引方式や波動集中方式によるものは、
加圧による吐出方式ではないので、気泡が圧力室に混入
することによる致命的な吐出不良の問題は生じないが、
インク流路に気泡が滞留してインクの供給を阻害する可
能性があり、本発明を適用することにより、そのような
問題が解決される。
【0041】記録ヘッド100内のインク流路112に
はインク102が満たされ、発熱素子104から吐出エ
ネルギー(圧力)を得たインク102がインク吐出口1
06でドロップ化し、インク滴108となって、被記録
材(画像記録材料)110に着弾することで画像を記録
する。
【0042】本実施の形態では、個別インク流路112
bの最も矢印A方向上流側に、対向する一対の電極11
4a,114bが配設されている。なお、本発明におい
て一対の電極114a,114bの少なくとも一方は、
起電力発生部材となっている。電極114a,114b
が配設される区間の個別インク流路112bの形状は、
矢印A方向へ進むにしたがいインク流路の開口面積が連
続的に減少するような形状となっており、かかる形状の
個別インク流路112b側壁に電極114a,114b
が配設されている。従って、電極114a,114b間
の間隙は、矢印A方向へ進むにしたがい狭まっている。
そして、電極114a,114bのそれぞれの表面に保
護層116a,116bが形成されている。(なお、図
1では図面の複雑化を避けるべく、図面上の最上段の個
別インク流路112bに配された電極および保護層にの
み符号を付しているが、他の個別インク流路112bに
配されたものにも同一の符号が付される)
【0043】本実施の形態の記録ヘッド100を用いて
インクジェット記録を行う際、電極114a,114b
間には所定の電位差が形成され(詳細は後述)、その結
果インク流路中に不均一電界である気泡流入防止電界が
形成される。本実施の形態における気泡流入防止電界
は、インクの流れ方向(図1中矢印A方向)に対して、
インク流路112の下流側(インク吐出口側)の電界が
強く、上流側(共通インク流路112a側)が弱く形成
される。
【0044】気泡流入防止電界の作用について、個別イ
ンク流路112bの電極114a,114b周辺の模式
拡大図である図2を用いて説明する。図2では、上方の
電極114aを相対的に正電位とするケースを模式的に
示している。
【0045】電極114a,114b間の電位差により
形成された気泡流入防止電界の影響を受けて、個別イン
ク流路112bに流入した気泡118の表面には、誘電
分極による電荷の偏りが生じ、気泡118表面の正電位
側(電極114a側)には正電荷が、負電位側(電極1
14b側)には負電荷が分布する。これは気泡118を
取り囲むインク102の誘電率が気泡118の誘電率よ
り大きいことに起因する。その結果、気泡118は両方
の電極114a,114bから斥力を受け、合力として
強電界側から弱電界側へ向かう力(誘電泳動力と呼ばれ
る)を受ける。したがって、気泡流入防止電界は、気泡
118に対し常に強電界側から弱電界側に向かう作用力
を発生するものである。このように、気泡流入防止電界
が気泡118に作用し、気泡118は弱電界側、即ちイ
ンクの流れ方向上流側への力を受け、インクの流れ方向
への進行が妨げられ、圧力室(図1における個別インク
流路112b中の電極114a,114b右端部からイ
ンク吐出口106までの間)等のインク吐出口106付
近への気泡118の侵入が防止される。
【0046】本実施の形態では、電極114a,114
b間の間隙をインクの流れ方向で連続的に変化させるこ
とにより、強電界側と弱電界側とからなる強い気泡流入
防止電界を強制的に形成させているため、インク102
中に存在する気泡118が電極114a,114bから
の電界による斥力をより強く受け、インクの流れ方向
(図1中矢印A方向)への進行が妨げられ、圧力室12
0等のインク吐出口106付近への気泡118の侵入が
より有効に防止される。本実施の形態では、電極114
bが起電力発生部材としてのエレクトレットを用いて形
成されている。このため、エレクトレット自身が部材内
に電荷の偏りを生じ、これを利用して電極114a,1
14b間に電位差を生じさせているので、電源手段が不
要となる。
【0047】図3に電極114a,114b周辺の拡大
図を示す。電極114bは、エレクトレット層130と
導電層132との積層体となっている。そして、電極1
14aを接地電極とし、導電層132も接地した。エレ
クトレット層130は、事前の分極処理により、導電層
132側と保護層116b側とに永久分極しており、電
極114bに所定の表面電位が形成されている。従っ
て、エレクトレット層130表裏の電位差が、そのまま
電極114aと電極114bとの電位差となり、両電極
114a,114b間に電界が生じている。両電極11
4a,114b間の間隙は、矢印A方向へ進むにしたが
い狭まっているため、電界は、既述の如く矢印A方向に
対して、下流側(インク吐出口側)の電界が強く、上流
側(共通インク流路112a側)が弱く形成され、有効
な気泡流入防止電界となる。
【0048】エレクトレット層130に適用可能なエレ
クトレット材料としては、ポリ4フッ化エチレン(PT
FE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ6フ
ッ化ポリプロピレン(FEP−テフロン)等のふっ素系
高分子材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)や
ポリプロピレン(PP)等の合成ポリマー材料が挙げら
れる。これらは成形加工が容易であり、材料を溶融状態
で塗布した後冷却してもよいし、フィルム状素材をラミ
ネートすることもできる。さらに、LiTaO 3、PZ
T、LiNbO3、PbTiO3等の無機材料もすること
が使用できる。SiO2、Si34、SiO2とSi34
の複合体(SION)等の珪素系無機材料でエレクトレ
ットを構成しても同様の効果が期待できる。
【0049】無機材料については蒸着法、CVD法、ス
パッタリング法、印刷焼成法など公知の膜形成法とパタ
ーニング法で本発明におけるエレクトレット層130を
形成することができる。近年のインクジェット記録ヘッ
ドは単結晶Si基板上にLSIプロセスを適用してイン
ク流路等の構造を高密度かつ高精度に形成しているが、
SiO2等の珪素系材料はそれら成膜プロセスおよびパ
ターニングプロセスと共通化しやすいので好適である。
エレクトレット層130の厚みとしては、通常0.1〜
100μm程度であり、好ましくは0.5〜10μm程
度である。
【0050】エレクトレット材料には、ほぼ永久的に分
極状態を保持させるために分極処理が施される。この分
極処理としては、エレクトレット材料を軟化点または溶
融温度まで加熱して直流電圧を印加してから冷却する熱
エレクトレット法、エレクトレット材料の表面に直流コ
ロナ放電を照射するエレクトロエレクトレット法、ガン
マ線や電子線等の高エネルギー放射線を照射するラジオ
エレクトレット法等が適用可能である。これらの中でも
特に簡易な装置で、短時間で処理ができて、エレクトレ
ット化する領域を容易に制御できるコロナ放電照射する
エレクトロエレクトレット法が好ましい。
【0051】導電層132に適用可能な材料としては、
Al、Fe、Cu、Ag、Pt、Au、Ti等の金属や
それらの合金からなる薄膜が挙げられるが、導電性を有
する材料であれば特に制限されることなく、いずれも用
いることができる。電極114aとしては、特に限定さ
れるものではなく、従来から電極の材料として用いられ
ている材料を適宜選択して用いることができる。導電層
132の厚みとしては、通常0.1〜5μm程度であ
り、好ましくは0.2〜2μm程度である。
【0052】本実施の形態において、電極114a,1
14bの表面には、保護層116a,116bが形成さ
れているが、これはインク102と電極114a,11
4bとの反応を防ぐためのものであり、またインク10
2が比較的電気抵抗が低い場合に、インク102中に不
要な電流が流れることを防ぐためのものである。インク
102の電気抵抗が十分に高く、かつ電極114a,1
14bとインク102とが電界の存在下で接触しても反
応を起こさないような材料の組み合わせを選択できる場
合には、保護層116a,116bは必要ない(本発明
における全ての電極において同様)。
【0053】保護層116a,116bは、電極とイン
クとの接触を遮断可能な緻密な層形成が可能で、電極と
インクとの電気的絶縁性を確保し得る電気抵抗を有し、
かつ、インクに対して溶け出さない材料で形成されれば
よい。このような性質の材料としては、ポリイミド樹
脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリスルホ
ン樹脂、シリコーン樹脂、含フッ素樹脂等の高分子材
料;酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素およびその化合物;
アルミナ、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン等の無
機化合物等の材料が挙げられ、さらに、これら材料の化
合物、混合物や、その他従来公知の絶縁性の材料を挙げ
ることができる。保護層116a,116bは、これら
の材料を被覆材として、任意の手段で電極114a,1
14bの表面に被覆することにより形成することができ
る。
【0054】保護層116a,116bの具体的な被覆
方法としては、上記被覆材を適当な溶剤に溶解して塗布
液を調製し、該塗布液を浸漬塗布、スプレー塗布、ロー
ル塗布、バーコーター塗布等の塗布手段により電極11
4a,114b表面に塗布および乾燥させる方法、ある
いは、上記被覆材をフィルム上に成型し、これを直接電
極114a,114b表面に貼り付ける方法等が挙げら
れる。さらにCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法
等の従来公知の薄膜形成方法によっても形成することが
でき、また、電極114a,114bの表面に酸化、炭
化あるいは窒化等の反応処理を施すことにより形成する
こともできる。保護層116a,116bの厚みとして
は、通常0.1〜5μm程度であり、好ましくは0.2
〜2μm程度である。
【0055】インク102としては、水性インク、油性
インク、WAX系ホットメルトインク、樹脂系ホットメ
ルトインク等様々なものを用いることができる。これ
は、いずれのインクの誘電率も、印加する電圧の周波数
によって異なるものの、通常真空の誘電率の数倍〜80
倍であるのに対し、記録ヘッド100中に発生する気泡
118の成分は、空気、酸素、水素、窒素等であり、い
ずれの場合も誘電率は真空の誘電率とほぼ等しくなり、
既述の気泡流入防止電界が有効に作用するからである。
【0056】本実施の形態では、電極114bとしての
積層体は、エレクトレット層130と導電層132とが
一層ずつ形成される例を挙げたが、本発明はこれに限定
されるものではない。以下に、本発明における電極にな
り得る起電力発生部材としてのエレクトレットを用いた
積層体の他の例を挙げる。
【0057】図4は、エレクトレットを用いた積層体の
他の例を説明する断面図である。エレクトレット層23
0と導電層(以下、「第1の導電層」という場合があ
る。)232のほか、さらにエレクトレット層230側
(インク流路側)の面に第2の導電層234を積層した
例である。第2の導電層234を積層することにより、
第2の導電層234が電気的にフロート状態となるの
で、分極処理条件等によりエレクトレット層230の分
極電位が場所によってばらついても、第2の導電層23
4で均一化され、インク流路内に気泡流入防止電界を形
成するための電極の表面電位を均一化でき、安定した気
泡流入防止電界を形成することが可能になる。
【0058】図4(a)は、Si等の基板の上に、Al
等の金属からなる第1の導電層232と、PVDF、S
iO2等の材料からなるエレクトレット層230と、A
l等の金属からなる第2の導電層234とを順次積層・
パターニングした後、最上層にインクとの相互作用から
電極を保護するPSG、SiNX等の材料からなる保護
層216を形成してなる構造である。第1の導電層23
2は、配線電極(不図示)により接地電位に接続され
る。第2の導電層は、図示の通りエレクトレット層23
0の端部より内側に形成した方がよい。そうすることに
よって、第1の導電層232と第2の導電層234との
沿面距離を大きくすることができるので、第1の導電層
232および第2の導電層234の端部同士で発生しう
る局所放電を防止することができる。また、分極処理に
よってエレクトレット層230にトラップした電荷が沿
面に沿って移動するのを防ぐ効果もある。上記放電や電
荷移動が生じるとデバイスが損傷したり、エレクトレッ
ト層230の表面電位が低下する。
【0059】図4(b)は、図4(a)の構成の各層の
間にSiNx、SiC,ボロンリンシリケートガラス
(略称「BPSG」)等の材料からなる層間膜236b
を設けた例である。層間膜236bは上記放電や電荷移
動をより確実に防止するものである。さらに、エレクト
レット層230と両導電層232,234との間の原子
レベルの拡散現象等による性能劣化を防止するものであ
る。層間膜236bの材料としては、SiNx、Si
C,BPSGのほか、SiO2等上記機能を有するもの
が適宜選択される。
【0060】図4におけるエレクトレット層230、第
1の導電層232および保護層216の構成は、前記本
実施の形態におけるエレクトレット層130、導電層1
32および保護層116a,116bと基本的に同様で
ある。第2の導電層構成は、前記本実施の形態における
導電層132と基本的に同様である。また、層間膜23
6bの厚みとしては、通常0.5〜2μm程度であり、
好ましくは1〜1.5μm程度である。
【0061】なお、図4(a)および(b)において
は、最上層として保護層216を設けているが、前記本
実施の形態における保護層116a,116b同様、必
須ではない。
【0062】(第2の実施の形態)第2の実施の形態の
基本的な構成は、第1の実施の形態と同様である。従っ
て、第2の実施の形態についても図1を用いて説明す
る。
【0063】本実施の形態は、図1における電極114
b以外の構成は、全て第1の実施の形態と同様である。
しかし、本実施の形態では、電極114bが起電力発生
部材としての焦電部材を用いて形成されている。このた
め、焦電部材の焦電性により、温度上昇に応じて焦電部
材自身が部材内に電荷の偏りを生じ、これを利用して電
極114a,114b間に電位差を生じさせているの
で、電源手段が不要となり、装置の簡易化、低コスト
化、省エネルギー化を図ることができる。特に吐出手段
として発熱素子を用いるサーマルインクジェット方式で
は、通常の印字を行うだけでインクジェット記録ヘッド
内の温度が上昇するので、本実施の形態においてはこの
熱エネルギーを効果的に活用することができる。
【0064】本実施例においても電極114bの具体的
な積層構造は、第1の実施の形態同様である。すなわ
ち、図3におけるエレクトレット層130が、焦電部材
層に置き換わった構造である。第1の実施の形態ではエ
レクトレット層130が永久分極しているため、電位差
の発生に外部からの特別なエネルギーの付与は不要だ
が、焦電部材を用いる場合には、焦電部材がある程度昇
温されなければならない。この点本実施の形態のよう
に、発熱素子104を用いるサーマルインクジェット方
式においては、通常の印字を行うだけで記録ヘッド10
0内の温度が上昇するので、この熱エネルギーを効果的
に活用することができる。
【0065】焦電部材としては、ポリフッ化ビニリデン
(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンと3フッ化エチレ
ンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデンと4フッ化エチ
レンとの共重合体、シアン化ビニリデンと他のモノマ−
との共重合体等の焦電性樹脂;PZT(Pb2Zr03
PbTiO3)セラミックス、PLZT((Pb2Zr0
3−PbTiO3−La23)セラミックス等の焦電性セ
ラミックス;チタン酸バリウム(BaTiO3)、タン
タル酸リチウム(LiTaO3)、水晶等の無機焦電性
結晶微粉末や、ロッシェル塩、トリグリシンサルフェイ
ト(TGS)等の有機焦電性結晶微粉末からなる群から
選ばれた焦電性結晶微粉末を熱可塑性樹脂または熱硬化
性樹脂からなる群から選ばれた樹脂の中に分散した材
料;等が使用できる。
【0066】なかでも、ポリフッ化ビニリデン系の樹脂
材料は、薄膜シ−トの製造が容易でしかも他の材料に比
べて誘電率が小さいので高い表面電位を形成でき好適で
ある。また、セラミックス系材料は焦電係数が大きいの
で投入熱エネルギーに対して効率よく表面電位を形成す
ることができる。さらにキュリー温度が室温より十分高
いので特性が安定している。作製方法は、スパッタ法、
ゾル−ゲル法、CVD法等により薄膜を形成できるの
で、適宜公知のパターニング技術と組み合わせることに
より電極114bとして形成することは容易である。
【0067】焦電部材層の厚みとしては、通常0.1〜
100μm程度であり、好ましくは2〜50μm程度で
ある。また、導電層132、保護層116a,116b
の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】本実施の形態では発熱部材を含まず、イン
ク吐出時に発熱素子から発生する熱のみによって焦電部
材を昇温させる例を挙げたが、さらに、焦電部材を加熱
するための発熱部材を設ければ、焦電部材に投入する熱
エネルギーを制御可能になるので、気泡流入防止電界を
高精度でかつ安定に形成することができるようになる。
【0069】また、本実施の形態では、電極114bと
しての積層体は、焦電部材層と導電層とが一層ずつ形成
される例を挙げたが、本発明はこれに限定されるもので
はなく、第1の実施の形態同様、焦電部材層側の面に、
さらに第2の導電層が形成されてなるものも、焦電部材
層の分極電位が場所によってばらついても、前記第2の
導電層で均一化され、インク流路内に気泡流入防止電界
を形成するための電極の表面電位を均一化できる点で、
好ましい。
【0070】図5は電極114bの他の一例を説明する
断面図である。これは、焦電部材層242および導電層
232と共に発熱部材240を配置した例である。具体
的には、Si等の基板の上に、多結晶Si、TaAl等
の材料からなる発熱部材240と、部材間を隔絶しデバ
イスとしての信頼性を確保するためのSiNx、Si
C,BPSG等の材料からなる層間膜236bと、を形
成した後に、層間膜236bの両端から電流を供給でき
るように、Al等の材料からなる給電電極238を発熱
部材240に接続する。
【0071】給電電極238を保護するように両端に層
間膜236bを設け、さらに給電電極238が配される
部分より内側の領域に、焦電部材の電位を安定化させる
ため接地電位に接続されるAl等の金属からなる導電層
232と、前記同様の層間膜236aと、発熱部材から
供給される熱エネルギーによって内部分極を起こし表面
電位を発現するPbTiO3等の材料からなる焦電部材
層242と、を順次積層・パターニングした後、最上層
にインクとの相互作用からデバイスを保護するPSG、
SiNX等の材料からなる保護層216を形成して本例
の電極が構成される。
【0072】本例の電極を用いれば、焦電部材層242
に投入する熱エネルギーを制御することが可能になり、
安定した気泡流入防止電界を形成することが可能にな
る。導電層232は表面電位を安定させる効果を発揮す
るために焦電部材層242と層構造になるよう形成する
のが好ましく、通常接地電位に保たれる。給電電極23
8の一方の電極と接続してもよい。導電層232の厚み
としては、通常0.1〜5μm程度であり、好ましくは
0.2〜2μm程度である。
【0073】保護層216の構成は、第1の実施の形態
と同様である。発熱部材240としては、通電によりジ
ュ−ル熱を発生する電熱現象を生じる材料により構成さ
れ、体積固有抵抗値が10-2〜106Ω・cmの範囲の
ものが良好である。発熱部材の材料としては、多結晶S
iやTaN等の抵抗性無機材料の薄膜;各種セラミック
ス材の単層または、混合/複合層;耐熱性樹脂と導電性
や絶縁性フィラーの1種または数種の混合/複合材;各
種セラミックス材と金属材の混合/複合材;等が用いら
れる。
【0074】発熱部材240の材料として、具体的に使
用される耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリア
ラミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミドアミド樹
脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、
ポリ-P-キシリレン樹脂等またはこれらの誘導体を含む
材料が挙げられ、具体的に使用される導電性フィラーお
よび導電材としては、C、Ni、Au、Ag、Fe、A
l、Ti、Pd、Ta、Cu、Co、Cr、Pt、M
o、Ru、W、In、などの無機材料系およびVO 2
RuO2、TaN、SiC、ZrO2、InO、Ta
2N、ZrN、NbN、VN、TiB2、ZrB2、Hf
2、TaB2、MoB2、CrB2、B2C、MoB、Z
rC、VC、TiC等およびこれらの化合物や混合物が
用いられる。抵抗値制御や結着のために用いられる絶縁
材料は、前記耐熱性樹脂と各種セラミックス材(アルミ
ナ、ジルコニア、珪素化合物、マグネシウム化合物な
ど)より構成されているものが好ましい。
【0075】(第3の実施の形態)図6は、本発明のイ
ンクジェット記録ヘッドの他の一例として、第3の実施
の形態の記録ヘッド300の動作状態を表す拡大断面図
である。第1の実施の形態の記録ヘッド100同様、イ
ンク流路312は、矢印B方向上流側の共通インク流路
312aと、同下流側で隔壁322により仕切られた個
別インク流路312bとからなる。本実施の形態では、
図6に示すように狭い領域にのみ電極314a,314
bを設けている。
【0076】本実施の形態では、電極314bが第2の
実施の形態と同様に起電力発生部材としての焦電部材を
用いて形成され、熱エネルギーを表面電位に変換するよ
う機能する。電極314aは接地電位に保たれる。電極
314bの構成は、基本的に第2の実施の形態と同様で
ある。従って、本実施の形態によっても第2の実施の形
態と同様の効果が達成される。
【0077】本実施の形態は、個別インク流路312b
が直線的に形成されており、第1の実施の形態の記録ヘ
ッド100のような、電極114a,114b間の間隙
を変化させることにより電界強度を不均一にする構成で
はない。本実施の形態は、局所的な不均一電界をインク
流路312に形成して、気泡318への斥力を生じさせ
る例である。本実施の形態の場合、気泡318が電極3
14a,314b位置に近づくと電界が急激に変化する
(強くなる)ので、強い斥力を受け、個別インク流路3
12bに気泡が流入するのを防止できる。本実施の形態
の構成によれば、インク流路312の構成が簡易であ
り、電極314a,314bのサイズを小さくできるた
め、全体の小型化が可能となる。
【0078】第3の実施の形態を構成する部材の構造、
形状、および材料や、第3の実施の形態の作用、効果
は、以上説明した第3の実施の形態に固有のものを除い
ては、第1の実施の形態と同様である。また、第3の実
施の形態では、電極314bとして起電力発生部材とし
ての焦電部材を用いた例としたが、焦電部材の代わりに
起電力発生部材としてのエレクトレットを用いても、気
泡流入防止電界の形成機構は同様である。
【0079】(第4の実施の形態)図7は、本発明のイ
ンクジェット記録ヘッドの他の一例として、第4の実施
の形態の記録ヘッド400の動作状態を表す拡大断面図
である。
【0080】記録ヘッド400の内部には、インクタン
ク(不図示)からノズル板464に形成されたインク吐
出口406までを繋ぐインク流路412が形成され、矢
印C方向にインクの流れが生ずるようになっている。こ
のインク流路412は、矢印C方向下流側で隔壁(不図
示)により仕切られ、図面奥行き方向に複数のインク吐
出口406に対応して設けられた複数の個別インク流路
412bが形成されている。即ち本実施の形態も第1の
実施の形態同様複数のインク吐出口を有するものであ
り、インク吐出口との関係で見れば、図7は、第1の実
施の形態を示す図1とは、記録ヘッドの断面の方向が垂
直に異なっている。なお、隔壁が設けられる位置よりも
上流側の分割されていないインク流路412は、共通イ
ンク流路412aと称することとする。
【0081】個別インク流路412bの側壁には、イン
ク吐出手段である発熱素子404が配されている(個別
インク流路412b中の発熱素子404周辺を圧力室4
20という場合がある)。記録ヘッド400内のインク
流路412にはインク402が満たされ、発熱素子40
4から吐出エネルギー(圧力)を得たインク402がイ
ンク吐出口406でドロップ化し、インク滴408とな
って、画像記録媒体410に着弾することで画像を記録
する。
【0082】共通インク流路412aの矢印C方向下流
側に、対向する一対の電極414a,414bが配設さ
れている。電極414a,414bが配設される区間の
共通インク流路412aの形状は、矢印C方向へ進むに
したがいインク流路の開口面積が連続的に減少するよう
な形状となっており、かかる形状の個別インク流路41
2b側壁に電極414a,414bが配設されている。
従って、電極414a,414b間の間隙は、矢印C方
向へ進むにしたがい狭まっている。なお、電極414
a,414bのそれぞれの表面に保護層416a,41
6bが形成されているが、第1の実施の形態で述べたと
同様、保護層416a,416bは必須ではない。
【0083】本実施の形態では、電極414bが起電力
発生部材としてのエレクトレットを用いて形成され、電
極414bに気泡流入防止電界を形成するための表面電
位を生じさせる。電極414aは接地電位に保たれる。
本実施の形態では、電極414a,414bより矢印C
方向上流、かつ、共通インク流路412aの側壁であっ
て、インク402の主たる流路から外れた位置に、気泡
トラップ構造である凹状の気泡溜まり424が設けられ
ている。気泡溜まり424は気泡を収容し得る個室の形
状となっている。
【0084】本実施の形態の記録ヘッド400を用いて
インクジェット記録を行う際、第1の実施の形態同様、
インク流路412中に不均一電界である気泡流入防止電
界が形成される。しかし、本実施の形態では、気泡流入
防止電界は共通インク流路412aの領域に形成され
る。
【0085】従って、本実施の形態では、気泡流入防止
電界を発生させるための電極414a,414bを個別
インク流路412b毎に設ける必要がなく、共通インク
流路412aにのみ設ければ十分であり、構成が簡易で
ある。さらに、上記電極414bは、発熱素子404に
接続される配線と兼用することも可能である。なお、電
極414a,414bは、気泡溜まり424まで電界が
作用するよう、気泡溜まり424近辺まで配置されてい
ることが好ましい。
【0086】本実施の形態では、電極414a,414
bからの電界による斥力を受け、矢印C方向への進行が
妨げられた気泡418が、気泡418自体の浮力の作用
も手伝って気泡トラップ構造である気泡溜まり424に
捕獲される。従って、気泡418がインク流路412に
滞留することがなく、圧力室420等のインク吐出口4
06付近への気泡418の侵入が長期間にわたり有効に
防止される。
【0087】また、複数のインク吐出口を有する記録ヘ
ッドでは、あるインク吐出口からのインクの吐出が記録
ヘッド内の圧力変動を引き起こし、他のインク吐出口の
メニスカスを振動させてしまい、これにより安定な吐出
が阻害されることが知られている。この現象を抑制する
のに、インク室内に気泡を配置することにより圧力変動
を吸収させることが有効であることが知られている。本
実施の形態では、気泡によるインク供給不良を防止する
効果があるとともに、気泡を記録ヘッド内に残すことで
前記記録ヘッド内の圧力変動を吸収することも可能とな
る。
【0088】本実施の形態では、図8に示すように、気
泡トラップ構造である気泡溜まり524に捕獲された気
泡518がある程度の量溜まってきた場合に、これを抜
気すべく、バルブ手段528を介して気泡溜まり524
に連通する抜気管526を設けることも好ましい態様で
ある。所定のタイミングで自動的に、あるいは手動でバ
ルブ手段528を開口することにより気泡溜まり524
に溜まった気泡518を抜気することができ、長期間の
使用により気泡溜まり524に溜まった気泡518が溢
れ出るといった、不具合を防止することができる。従っ
て、気泡溜まり524に連通する抜気管526を設けれ
ば、半永久的に、気泡による不具合の生じないインクジ
ェット記録ヘッドとすることができる。
【0089】気泡トラップ構造としては、気泡溜まり4
24内のインク402と接する壁面が撥インク処理され
ていることが好ましい。かかる構成とすれば、気泡41
8が壁面に吸着されやすくなり、気泡418の捕獲効果
が向上する。かかる撥インク処理は、インク402との
接触角が70°以上、好ましくは100°以上となるよ
うな材料で表面を被覆すれば良い。一般的に撥インク性
を示す材料としてはフッ素樹脂系の材料が知られてお
り、例えば以下のような材料であれば、適宜選択可能で
ある。
【0090】ポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)、具体的にはポリフロンTFE(ダイキン工業社
製)やTeflon TFE(Du Pont社製);
テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニル
エーテル共重合体(PFA)、具体的にはネオフロンP
FA(ダイキン工業社製)やTeflon PFA(D
uPont社製);テトラフルオロエチレン−ヘキサフ
ルオロプロピレン共重合体(FEP)、具体的にはネオ
フロンFEP(ダイキン工業社製)やTeflonFE
P(Du Pont社製);テトラフルオロエチレン−
ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニ
ルエーテル共重合体(EPE)、具体的にはネオフロン
EPA(ダイキン工業社製)やテフロンEPE(三井デ
ュポンフロロケミカル社製);テトラフルオロエチレン
−エチレン共重合体(ETFE)、具体的にはアフロン
COP(旭硝子社製)やTefzel(Du Pont
社製);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTF
E)、具体的にはネオフロンCTFE(ダイキン工業社
製)やKel−F(3M社製);クロロトリフルオロエ
チレン−エチレン共重合体(ECTFE)、具体的には
Halar(Ausimont N.V.製);ポリビ
ニリデンフルオライド(PVdF)、具体的にはKFポ
リマー(呉羽化学工業社製);ポリビニルフルオライド
(PVF)、具体的にはTedlar(Du Pont
社製)などが挙げられる。また、最近では主鎖に環状構
造を有するパーフルオロフッ素樹脂;具体的にはサイト
ップ(旭硝子社製)やTeflon AF(Du Po
nt社製)なども挙げられる。さらには、その他フッ素
原子を含有する樹脂、例えば、フッ素化エポキシ樹脂、
フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フ
ッ素化アクリル樹脂、フッ素化ポリウレタン樹脂、フッ
素化シロキサン樹脂およびそれらの変性樹脂なども挙げ
られる。一方、Si原子を含む撥水処理剤やシリコーン
系樹脂を用いてもよい。
【0091】気泡トラップ構造は、図7に示す気泡溜ま
り424のような凹状の部屋構造に限られない。例え
ば、図9に示す気泡溜まり624のように、インク流路
612と連通する部分624aが狭く内部624bが広
い構造は、一旦捕獲した気泡618の再流出を起こしに
くいという効果があるため好ましい形状である。
【0092】なお、気泡トラップ構造は、気泡418自
体の浮力の作用を有効に生かすべく、開口が水平面(地
面)に対向するように気泡溜まり424を設けることが
必要となる。従って、図7では、水平面に対し右向き平
行にインク滴408を吐出する形態であるため、気泡溜
まり424はそのまま下向きに開口している。しかし、
これを上下反転させ、水平面に対し左向き平行にインク
滴408を吐出する場合には、共通インク流路412a
側壁の、図7において気泡溜まり424が設けられてい
る箇所と対向する箇所に気泡溜まりを設ける必要があ
る。このような観点より考えると、例えば図10に示す
ように本実施の形態の記録ヘッド700を水平面に対し
右斜め下向きにインク滴708を吐出する形態であるな
らば、図10に示すような形状の気泡溜まり724にし
て、開口が水平面(地面)に対向するようにすることが
好ましい。
【0093】従って、気泡トラップ構造としての気泡溜
まり424,624,724の形状や配置箇所は、記録
ヘッド400,600,700の水平面に対する傾き、
インク流路412,612,712の形状等により適宜
決定すればよい。
【0094】第4の実施の形態を構成する部材の構造、
形状、および材料や、第4の実施の形態の作用、効果
は、以上説明した第4の実施の形態に固有のものを除い
ては、第1の実施の形態と同様である。また、第4の実
施の形態では、電極314bとして起電力発生部材とし
てのエレクトレットを用いた例としたが、エレクトレッ
トの代わりに起電力発生部材としての焦電部材を用いて
も、気泡流入防止電界の形成機構は同様である。
【0095】(第5の実施の形態)図11は、本発明の
インクジェット記録ヘッドの他の一例として、第5の実
施の形態の記録ヘッド800の動作状態を表す拡大断面
図である。
【0096】図11に示す本実施の形態の如く、インク
流路812側壁に気泡溜まり(凹部)824が設けら
れ、インク流路812から気泡溜まり824に向けて電
界強度が低下する電界を生じ得る一対の電極814a,
814bが、気泡溜まり824内側面に配されてなる構
成とすれば、一対の電極814a,814bにより形成
される電界勾配によってインク802中の気泡818が
気泡溜まり824に捕獲され、インク吐出口806への
気泡818の流入を防止し得る。
【0097】本実施の形態では、電極814bが起電力
発生部材としてのエレクトレットを用いて形成され、電
極814bに気泡流入防止電界を形成するための表面電
位を生じさせる。電極814aは接地電位に保たれる。
【0098】また気泡溜まり824には、気泡溜まり8
24に捕獲された気泡818がある程度の量溜まってき
た場合に、これを抜気すべく、バルブ手段を介して凹部
に連通する抜気管(気泡抜き)を設けることも好ましい
態様である(不図示)。所定のタイミングで自動的に、
あるいは手動でバルブ手段を開口することにより気泡溜
まり824に溜まった気泡818を抜気することがで
き、長期間の使用により気泡溜まり824に溜まった気
泡818が溢れ出るといった、不具合を防止することが
できる。従って、気泡溜まり824に連通する抜気管を
設ければ、半永久的に、気泡による不具合の生じないイ
ンクジェット記録ヘッドとすることができる。
【0099】第5の実施の形態を構成する部材の構造、
形状、および材料や、第5の実施の形態の作用、効果
は、以上説明した第5の実施の形態に固有のものを除い
ては、第1の実施の形態と同様である。また、第5の実
施の形態では、電極314bが起電力発生部材としての
エレクトレットを用いた例としたが、エレクトレットの
代わりに起電力発生部材としての焦電部材を用いても、
気泡流入防止電界の形成機構は同様である。
【0100】(第6の実施の形態)図12は、本発明の
インクジェット記録ヘッドの他の一例として、第6の実
施の形態の記録ヘッド900の動作状態を表す拡大断面
図である。第4の実施の形態の記録ヘッド400の動作
状態を表す図7と酷似しているが、以下に示す3点が異
なる。
【0101】 インク流路912は、矢印C方向に進
んで見て行くと、気泡溜まり924までは共通インク流
路912aを形成しているが、電極914aの始まり
(図12における電極914aの左端)から先は隔壁
(不図示)により仕切られ、図面奥行き方向に複数のイ
ンク吐出口906に対応して設けられた複数の個別イン
ク流路912bが形成されている。従って、これら複数
の個別インク流路912bにそれぞれ電極914a,9
14bが配設されている。
【0102】 電極914bが起電力発生部材として
の焦電部材を用いて形成され、より具体的には、電極9
14bとして、発熱部材240を組み込んだ図5に示す
電極を用いている。
【0103】 発熱素子904と電極914b中の発
熱部材240とが同一の(1の)個別インク流路912
b中でリード線944により電気的に接続されている。
従って、画像信号に応じて発熱素子904からはインク
吐出のための熱が発生し、同時に同一個別インク流路9
12bに配された発熱部材240からは、焦電部材の焦
電性を発揮させるための熱が発生する。従って、インク
吐出時に連動して気泡流入防止電界が形成され、インク
吐出後に必ず生ずるインク補充の流れに対して、効果的
に気泡流入防止電界が作用し、気泡がインク流路を塞い
だり、圧力室等のインク吐出口付近へ気泡が侵入するこ
とを効果的に防止することができる。
【0104】なお、本発明において、「1のインク流路
中で電気的に接続」とは、同一の画像信号に応じて発熱
素子904等の吐出手段および発熱部材240の双方を
駆動させ得るように電気的に対を成して接続しているこ
とを指し、必ずしもリード線944が同一の個別インク
流路912b内に配されていなくてもよい。また、両者
の電気的な接続は、リード線944等により直結されて
いる必要はなく、例えば不図示の制御装置から別々のリ
ード線により接続され、両者の関係が結果として電気的
に接続されていれば問題ない。さらに、発熱素子904
および発熱部材240は必ずしも同時に駆動して、同時
に熱を発生させる必要はなく、例えば発熱素子904の
駆動に先立って発熱部材240を駆動させる制御手段を
設けることにより、インク吐出に先立って、個別インク
流路912b中に予め気泡流入防止電界を形成しておく
ことも好ましく、本発明においては、かかる構成をも
「電気的に接続」の概念に含むものとする。
【0105】本実施の形態においては、吐出手段と対を
成してかつ電気的に接続される発熱部材240が、電極
914bの一部として配置され、同様に電極914bの
一部として配置される焦電部材層242を加熱するよう
構成されている。すなわち、吐出手段を駆動する信号で
同時に発熱部材を加熱することになる。従来、吐出機会
の多いインク吐出口906はインク流路912を介して
頻繁にインク902が供給されるので、気泡918によ
る問題も起きやすい。本実施の形態によれば、吐出のた
びに発熱部材240が加熱されて気泡流入防止電界を形
成される。すなわち、インク吐出後に必ず生ずるインク
902の補充の流れ(矢印C方向)に対して、効果的に
気泡流入防止電界が作用し、気泡918がインク流路9
12を塞いだり、圧力室920等のインク吐出口906
付近へ気泡918が侵入することを効果的に防止するこ
とができる。
【0106】特に、本実施の形態の如くインク吐出手段
がインク902を加熱して発泡させ吐出圧力を生成する
いわゆるサーマルインクジェット方式においては、吐出
手段が駆動することにより周囲のインク温度が上昇し、
溶存気泡が析出しやすくなるので、インク吐出のたびに
必ず気泡流入防止電界が形成される本実施の形態の構成
は、極めて有効である。
【0107】発熱素子904等の吐出手段と発熱部材2
40とがリード線944により直結され、同一の印加電
圧により吐出手段と発熱部材240とを駆動させる場合
には、電極914a,914bに印加すべき信号として
は、吐出手段において所定の電圧および電流が印加され
なければならないため、発熱部材240で消費されるエ
ネルギー(電圧降下)等を考慮して電源容量、信号波形
等が決定される。
【0108】吐出手段として発熱素子904を用いた本
実施の形態の場合、発熱素子904の表面温度が200
℃ないし300℃程度になるように駆動されるが、電極
414bの発熱部材240は同じ電流信号によって40
℃から100℃程度に発熱するように設計するのがよ
い。温度が高くなりすぎると電極414bの表面で気泡
918が成長してインク吐出に悪影響を及ぼす。発熱部
材240が発熱素子904ほど高温にならないようにす
るには、発熱部材240の材料、膜厚、パターン幅等の
設計により、発熱部材240の電気抵抗を発熱素子90
4の電気抵抗より小さくすればよい。また、発熱部材2
40としてどの程度の発熱が必要かは、焦電部材層24
2の焦電係数および比熱等により決定することができ
る。
【0109】電極914bの構成としては、図5に示す
構成のものには限られず、焦電部材を用いて形成され、
かつ、該電極に接触または近接して発熱部材が配されて
いる構成であれば、本実施の形態の作用および効果が問
題なく発揮される。
【0110】第6の実施の形態を構成する部材の構造、
形状、および材料や、第6の実施の形態の作用、効果
は、以上説明した第6の実施の形態に固有のものを除い
ては、第1、第2あるいは第4の実施の形態と同様であ
る。また、第6の実施の形態では、気泡トラップ構造を
有する構成としたが、気泡トラップ構造を有しなくても
本実施の形態特有の効果は十分に発揮されるし、第4の
実施の形態で説明した気泡トラップ構造の変形例を採用
することも一向に差し支えなく、それぞれ変形例に特有
の効果が発揮される。
【0111】以上、本発明を実施の形態を挙げて説明し
てきたが、本発明は上記実施の形態に挙げたものに限定
されるものではなく、例えば電極の形状や配置する位
置、吐出手段等は上記実施の形態で挙げられたもの以外
のものも適用しうる。また、起電力発生部材とする電極
は、各実施の形態における他の一方の電極であってもよ
く、一対の電極双方を起電力発生部材とすることもでき
る。なお、本発明は、上記実施の形態に挙げられた各構
成を必要に応じて組み合わせることができる。
【0112】さらに、上記実施の形態においては、すべ
てインク吐出口、およびインクの吐出方向が右向きであ
るが、下向き、上向き、左向き、あるいはこれら相互の
中間等、如何なる方向に本発明のインクジェット記録ヘ
ッドが向いていても構わない。
【0113】以上の如き構成の本発明のインクジェット
記録ヘッドは、従来よりあるいわゆるインクジェット記
録装置、即ち、画像記録媒体を搬送する搬送手段と、前
記搬送手段により搬送される前記画像記録媒体に対しイ
ンクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッ
ドと、前記インクジェット記録ヘッドに画像信号を入力
する画像信号入力手段と、を備えるインクジェット記録
装置において、好適に用いられる。本発明のインクジェ
ット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置は、イ
ンクジェット記録ヘッドの圧力室等のインク吐出口付近
への気泡の侵入が防止され、気泡によるインク吐出不良
等の不具合が生じにくい。
【0114】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。 (実施例1)本発明のインクジェット記録ヘッドを実験
機のインクジェット記録装置に組み込み、印字テストを
実施した。
【0115】本実施例に用いたインクジェット記録ヘッ
ドは、図7に示した記録ヘッド400の如き構造であっ
て、基板1(インク流路412の側壁を構成する部材で
あって、発熱素子404が形成されている側の部材)
と、基板2(インク流路412の側壁を構成する部材で
あって、気泡溜まり(気泡トラップ構造)424が形成
されている側の部材)と、ノズル板464と、からな
る。
【0116】基板1の表面には、個別インク流路412
b毎に発熱素子404と、発熱素子404を駆動させる
ための電気配線等が例えばLSI作製プロセスで形成さ
れ、共通インク流路412aに面する部分には、保護層
416bで表面を被覆した電極414bが形成されてい
る。
【0117】基板2には、基板1に形成される発熱素子
404に対応して、共通インク流路412aと連通する
個別インク流路412bおよび圧力室420となる溝が
複数形成されている。
【0118】基板1と基板2とは、インク流路412が
閉塞されないように各部が接着され、インク402がイ
ンク吐出口406以外の箇所から外部に漏れ出さないよ
うに封止される。
【0119】ノズル板464は、厚さ50μmのニッケ
ル板からなり、レーザー加工で直径30μmのインク吐
出口406が形成されている。インク吐出口406の紙
面垂直方向の配列密度は、1インチ当たり400ノズル
であり、インク吐出口406の総数は160ノズルであ
る。
【0120】電極414aは、アルミニウムの薄膜から
なり、リンシリケートガラス(略称PSG)からなる保
護層416aで被覆されており、記録ヘッド400のイ
ンクの流れ方向(矢印C方向)にわたって単一に形成さ
れる。また、電極414aと414bとの最近接距離は
25μmであり、両電極のなす角は30°である。
【0121】電極414bは、図4(b)に示した構造
のものとした。具体的には、Siウエハ基板表面を窒化
処理して高抵抗化した上で、Alの第1の導電層232
(厚さ1.5μm)、SiNxの層間膜236b(厚さ
1.2μm)、SiO2のエレクトレット層230(厚
さ3.2μm)、SiNxの層間膜236a(厚さ1.
2μm)、Alの第2の導電層234(厚さ1.5μ
m)、PSGの保護層216(厚さ1.2μm)を順次
積層して、形成した。
【0122】電極414aおよび第1の導電層232
は、不図示の配線電極により接地電位に接続した。エレ
クトレット層230は、層間膜236b上にCVD法に
てSiO2膜を3.2μm形成し、層間膜236aを着
膜する前に負極性のコロナ放電をエレクトレット層23
0全表面に照射し、エレクトレット層230内に正極性
のヘテロ電荷をトラップした。このときエレクトレット
層230表裏の表面電位差は300Vである。
【0123】図13に、発熱素子404の構造を説明す
る模式断面図を示す。発熱素子404は従来公知の構
造、材料、製法により作製可能であるが、電極414b
と材料、製法等を共通化することはデバイスの工数低減
による信頼性向上および低コスト化に効果があるので、
本実施例では、Siウエハ基板上にSiOxの蓄熱層4
46、多結晶Siのヒータ層448、BPSGの層間膜
450、Alの個別電極452および共通電極454、
SiNxの電極保護層456、Taのヒータ保護層45
8、PSGの素子保護層460を、順次形成しパターニ
ングして形成した。
【0124】発熱素子404と電極414bの各電極お
よび導電層、各種保護層を同一材料で共通化し、作製プ
ロセスも共通化することにより、製造工数の低減による
信頼性向上および低コスト化が達成できた。
【0125】気泡溜まり(気泡トラップ構造)424内
のインク402と接する壁面には、サイトップ(旭硝子
社製)が被覆され、撥インク処理されている。インク4
02は、富士ゼロックス社製インクジェットプリンター
Jet Wind 300C用黒インクを用いた。
【0126】<印字テスト>室温22℃の環境で印字状
態に異常が無いことを確認した後、環境温度を40℃に
上げて一晩放置し、溶存気体が析出しやすい状態とした
後、環境条件を戻さずに(耐久環境)画像印字を実施
し、印字状態を確認した。その結果、連続20枚の印字
テスト中印字不良は発生しなかった。
【0127】エレクトレット層の永久分極により電極4
14aと414bとの間に約300Vの電位差が形成さ
れ、装置が非動作状態のときも気泡流入防止電界がイン
ク流路412に形成されたことによる効果であると考え
られる。
【0128】(実施例2)電極414bの構成を、以下
の焦電部材を用いたものに代え、基板1を以下の構成と
したほかは、上記実施例1と同様のインクジェット記録
ヘッドを作製し、以下に示す印字テストを行った。
【0129】電極414bは、図5に示した構造のもの
とした。具体的には、Siウエハ基板の上に、多結晶S
iからなる発熱部材240(厚さ0.7μm)、発熱部
材240の両端に電流を供給するAlからなる給電電極
238(厚さ1.5μm)、焦電部材層242の電位を
安定化させるため接地されるAlからなる導電層232
(厚さ1.5μm)、発熱部材240から供給される熱
エネルギーによって内部分極を起こし表面電位を発現す
るPbTiO3からなる焦電部材層242(厚さ5.2
μm)、デバイスの最上層でインクとの相互作用からデ
バイスを保護するSiNxからなる保護層216(厚さ
1.2μm)、各部材間を隔絶しデバイスとしての信頼
性を確保するためのBPSGからなる層間膜236a
(厚さ1.2μm),236bが順次形成されパターニ
ングされる。
【0130】PbTiO3からなる焦電部材層242
は、焦電係数30nC/(cm2・K)、比誘電率は2
00、比熱3.0J/(cm3・K)であった。この焦
電部材層242を室温付近(22℃)での表面電位がほ
ぼゼロになるように分極処理した上で、発熱部材240
より熱エネルギーを投入し、焦電部材層242の温度を
72℃まで上昇させたところ、電極414b表裏の表面
電位差は350Vであった。
【0131】図14に、基板1の(図7における上方向
から見た)模式平面図を示す。図面が複雑になるのを避
けるために発熱素子3本分のみを図示する。また、説明
の簡略化のため電極414bの構造も、保護層216、
層間膜236a,236bおよび導電層232を省略し
て、焦電部材層242および発熱部材240のみ図示す
る。
【0132】電極414b中の発熱部材240および発
熱素子404のヒータ層448、各電極および導電層、
各種保護層・層間膜を同一材料で共通化し、作製プロセ
スも共通化することにより、製造工数の低減による信頼
性向上および低コスト化が達成できた。
【0133】発熱部材240には給電電極238により
所定の電圧が印加され、発熱素子404には、画像信号
に応じて共通電極262および個別電極266間にイン
ク吐出用の電圧が印加される。
【0134】電極414bは、図示の通り発熱素子40
4の配列方向(インクの流れ方向に対し垂直方向)に渡
って単一に形成されるので記録ヘッド400内の気泡流
入防止電界をより安定に形成することが可能となる。
【0135】<印字テスト> ・実験1 上記実施例2のインクジェット記録ヘッドを用いて、発
熱部材240に電圧を印加せずに前記実施例1と同様の
印字テストを行ったところ、実施例1同様室温22℃の
環境で印字状態に異常が無く、耐久環境における印字で
も連続20枚の印字テスト中印字不良は発生しなかっ
た。
【0136】装置全体の温度上昇による電極414b表
裏の表面電位差は、別途確認した実験データによれば約
130Vである。電極414aと414b間に約130
Vの電位差が形成され、気泡流入防止電界として効果を
発揮したものと考えられる。
【0137】・実験2 上記実施例2の記録ヘッド400に衝撃を与えて、強制
的に内部に気泡418を発生させた。インク吐出口40
6から入り込んだ気泡418は空吐出を実施することに
より排出した。その後、発熱部材240に通電して、焦
電部材層242を約50℃に加熱した。この加熱による
電極414b表裏の表面電位差は約200Vである。そ
の後ただちに画像印字して印字状態を確認した。その結
果、連続20枚の印字テスト中印字不良は発生しなかっ
た。
【0138】(比較例1)比較のために従来のインクジ
ェット記録ヘッドを用いて、上記実施例1と同様の条件
で印字テスト(上記実施例2における実験1)を行った
ところ、1枚目からドット抜けとドット不良が発生し
た。ドット抜けはヘッド内部に発生した気泡がインク流
路を塞いでインク供給を阻害した結果であることが確認
され、ドット不良はインク流路から圧力室(発熱素子近
傍)に入り込んだ気泡が原因であることが確認された。
【0139】さらに、従来のインクジェット記録ヘッド
を用いて、上記実施例2における実験2の印字テストを
行ったところ、1枚目からドット抜けとドット不良が発
生した。ドット抜けは記録ヘッド内部に発生した気泡が
インク流路を塞いでインク供給を阻害した結果であるこ
とが確認され、ドット不良はインク流路から圧力室に入
り込んだ気泡が原因であることが確認された。
【0140】(実施例3)本発明のインクジェット記録
ヘッドを実験機のインクジェット記録装置に組み込み、
印字テストを実施した。
【0141】本実施例に用いたインクジェット記録ヘッ
ドは、図12に示した記録ヘッド900の如き構造であ
って、基板A(インク流路912の側壁を構成する部材
であって、発熱素子904が形成されている側の部材)
と、基板B(インク流路912の側壁を構成する部材で
あって、気泡溜まり(気泡トラップ構造)924が形成
されている側の部材)と、ノズル板964と、からな
る。
【0142】基板Aの表面には、個別インク流路912
b毎に発熱素子904と、発熱素子904を駆動させる
ための電気配線等が例えばLSI作製プロセスで形成さ
れ、共通インク流路912aに面する部分には、保護層
916bで表面を被覆した電極914bが形成されてい
る。
【0143】基板Bには、基板Aに形成される発熱素子
904に対応して、共通インク流路912aと連通する
個別インク流路912bおよび圧力室920となる溝が
複数形成されている。
【0144】基板Aと基板Bとは、インク流路912が
閉塞されないように各部が接着され、インク902がイ
ンク吐出口906以外の箇所から外部に漏れ出さないよ
うに封止される。
【0145】ノズル板964は、厚さ50μmのニッケ
ル板からなり、レーザー加工で直径30μmのインク吐
出口906が形成されている。インク吐出口906の紙
面垂直方向の配列密度は、1インチ当たり400ノズル
であり、インク吐出口906の総数は160ノズルであ
る。
【0146】気泡溜まり(気泡トラップ構造)924内
のインク902と接する壁面には、サイトップ(旭硝子
社製)が被覆され、撥インク処理されている。電極91
4aは、アルミニウムの薄膜からなり、リンシリケート
ガラス(略称PSG)からなる保護層916aで被覆さ
れており、記録ヘッド900のインクの流れ方向(矢印
C方向)にわたって単一に形成される。また、電極91
4aと914bとの最近接距離は25μmであり、両電
極のなす角は30°である。
【0147】電極914bは、実施例2における電極4
14bと同様の構成であり、発熱素子904は、実施例
2(実施例1と同様)における発熱素子404と同様の
構成である。
【0148】図15に、基板Aの(図12における上方
向から見た)模式平面図を示す。図面が複雑になるのを
避けるために発熱素子3本分のみを図示する。また、説
明の簡略化のため電極914bの構造についても、保護
層216、層間膜236a,236bおよび導電層23
2を省略して、焦電部材層242および発熱部材240
のみ図示する。
【0149】電極914b中の発熱部材240および発
熱素子404のヒータ層448、各電極および導電層、
各種保護層・層間膜を同一材料で共通化し、作製プロセ
スも共通化することにより、製造工数の低減による信頼
性向上および低コスト化が達成できた。
【0150】給電電極238’および共通電極962に
より、画像信号に応じて所定の電圧が発熱部材240に
印加され、さらにこれと電気的に対となって接続されて
いる発熱素子904にも、インク吐出用の電圧が印加さ
れる。インク902は、富士ゼロックス社製インクジェ
ットプリンターJet Wind 300C用黒インク
を用いた。
【0151】<印字テスト>室温22℃の環境で印字状
態に異常が無いことを確認した後、環境温度を40℃に
上げて一晩放置し、溶存気体が析出しやすい状態とし、
環境条件を戻さずに(耐久環境)、所定の空吐出工程で
圧力室920内に存在する気泡918を排出した後に画
像印字を実施し、印字状態を確認した。吐出機会のあっ
たインク吐出口906に対応する電極914b中の発熱
部材240における印字中の平均温度は、75℃であっ
た。このとき、焦電部材層242表裏の表面電位差は4
00Vであった。その結果、連続20枚の印字テスト中
印字不良は発生しなかった。
【0152】(実施例4・・・実施例3の変形例)実施
例3の記録ヘッド900の構成において、基板Aの構成
を図16に示す構成としたほかは、実施例3と同様にし
てインクジェット記録ヘッドを作製した。
【0153】図16においては、実施例3の基板Aの構
成を示す図15とは異なり、焦電部材層242を個別に
分割せず単一の薄層として、個別にパターニングされた
発熱部材240に積層している点が異なる。他の条件は
実施例3と同一である。
【0154】本実施例の構成によれば、細かいパターニ
ングが不要となるので焦電部材層242の作製が容易で
ある。焦電部材層242を分極処理する際、イオン注入
やコロナ放電、高電圧化での加熱など、従来公知の種々
の方法が採用可能であるが、図16に示す如く焦電部材
層242を単一の薄層とすれば、焦電部材層242より
下層に形成される導電層や層間膜(不図示)、および基
板Aの表面等を過酷な分極処理から保護するためのマス
キング処理をする必要がなくなり、製造適性の点から好
適である。
【0155】本実施例のインクジェット記録ヘッドを用
いて実施例3と同様に印字テストを行ったが、実施例3
と同様良好な結果が得られた。
【0156】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、イ
ンクジェット記録ヘッド内に発生する気泡に起因する問
題点を、バキューム吸引方式を用いることなく解決する
ことができる。従って本発明によれば、従来気泡を除去
するために実施されていたバキューム吸引等の工程が不
要となるため、従来かかっていた印字開始までの時間を
大幅に短縮でき、また、廃棄されるインクの量を大幅に
低減できる等、バキューム吸引方式を用いる場合の弊害
を解消することができる。
【0157】また、気泡流入防止電界を形成するための
電極の一部にエレクトレットや焦電部材等の起電力発生
部材を使用することにより、電圧を印加せずとも自身が
部材内で分極を生じて気泡流入防止電界を形成するの
で、該電界形成のための電源が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態のインクジェット記録ヘッ
ドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図2】 気泡流入防止電界の作用について説明するた
めの模式拡大図である。
【図3】 第1の実施の形態のインクジェット記録ヘッ
ドの電極周辺の構造を表す拡大断面図である。
【図4】 エレクトレットを用いて形成される電極の他
の構成例を示す拡大断面図である。
【図5】 焦電部材を用いて形成される電極の他の構成
例を示す拡大断面図である。
【図6】 第3の実施の形態であるインクジェット記録
ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図7】 第4の実施の形態であるインクジェット記録
ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図8】 第4の実施の形態の変形例であるインクジェ
ット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図9】 第4の実施の形態の他の変形例であるインク
ジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図であ
る。
【図10】 第4の実施の形態のさらに他の変形例であ
るインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面
図である。
【図11】 第5の実施の形態であるインクジェット記
録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図12】 第6の実施の形態であるインクジェット記
録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図13】 実施例のインクジェット記録ヘッドにおい
て用いた発熱素子の構造を説明する模式断面図である。
【図14】 実施例2のインクジェット記録ヘッドにお
ける基板1の模式平面図である。
【図15】 実施例3のインクジェット記録ヘッドにお
ける基板Aの模式平面図である。
【図16】 実施例4のインクジェット記録ヘッドにお
ける基板Aの模式平面図である。
【符号の説明】
100、300、400、500、600、700、8
00、900:記録ヘッド(インクジェット記録ヘッ
ド) 102、302、402、802、902:インク 104、304、404、904:発熱素子(吐出手
段) 106、306、406、806、906:インク吐出
口 108、308、408、708:インク滴 110、310、410:画像記録媒体 112、312、412、612、712、912:イ
ンク流路 112a、312a、412a、612a、712a、
912a:共通インク流路 112b、312b、412b、612b、712b、
912b:個別インク流路 114a,114b、314a,314b、414a,
414b、814a,814b、914a,914b:
電極 116、216、316、416、916:保護層 118、318、418、518、618、718、8
18、918:気泡120、320、420、920:
圧力室 122、322:隔壁 424、524、624、724、824:気泡溜まり
(気泡トラップ構造)526:抜気管 528:バルブ手段 130、230:エレクトレット層 132、232:導電層 234:第2の導電層 236a,236b:層間膜 238:給電電極 240:発熱部材 242:焦電部材層 944:リード線 446:蓄熱層 448:ヒータ層 450:層間膜 452:個別電極 454:共通電極 456:電極保護層 458:ヒータ保護層 460:素子保護層 262、962:共通電極 464、864、964:ノズル板 266:個別電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平潟 進 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 諏訪部 恭史 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 末光 裕治 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 長谷部 恵 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 毛利 哲 神奈川県足柄上郡中井町境430グリーンテ クなかい 富士ゼロックス株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA15 EC50 FA03 HA05 KD02 2C057 AF79 AG46 AG90 AK01 BA13

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 画像記録材料にインクを吐出するインク
    吐出口と、該インク吐出口に連通するインク流路と、画
    像信号に応じてインクを吐出するインク吐出手段と、か
    らなるインクジェット記録ヘッドにおいて、インク流路
    側壁に、対向する少なくとも一対の電極を配設してな
    り、該電極の少なくとも一方が起電力発生部材であるこ
    とを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記起電力発生部材の少なくとも一部
    が、少なくともエレクトレット層と導電層との積層体で
    あり、該積層体の導電層側の面がインク流路側壁に面す
    るように配設され、導電層が接地電位に接続されている
    ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録
    ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記エレクトレット層と導電層との積層
    体のエレクトレット層側の面に、第2の導電層が形成さ
    れてなることを特徴とする請求項2に記載のインクジェ
    ット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記起電力発生部材の少なくとも一部
    が、少なくとも焦電部材層と導電層との積層体であり、
    該積層体の導電層側の面がインク流路側壁に面するよう
    に配設され、導電層が接地電位に接続されていることを
    特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッ
    ド。
  5. 【請求項5】 前記焦電部材層と導電層との積層体の焦
    電部材層側の面に、第2の導電層が形成されてなること
    を特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 前記焦電部材層と導電層との積層体に接
    触または近接して、発熱部材が配されてなることを特徴
    とする請求項4または5に記載のインクジェット記録ヘ
    ッド。
  7. 【請求項7】 複数のインク吐出口と、該複数のインク
    吐出口にそれぞれ連通するインク流路と、前記複数のイ
    ンク吐出口に対応するインク吐出手段と、前記複数のイ
    ンク流路側壁にそれぞれ配設される少なくとも一対の電
    極と、を有する請求項4または5に記載のインクジェッ
    ト記録ヘッドであって、前記複数配設された一対の電極
    のうち焦電部材層と導電層との積層体からなる電極に、
    それぞれ接触または近接して発熱部材が配されてなるこ
    とを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記インク吐出手段と前記発熱部材と
    が、1のインク流路中で電気的に接続されていることを
    特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録ヘッ
    ド。
  9. 【請求項9】 前記インク吐出手段が、インク流路側壁
    であってインク吐出口近傍に配された発熱素子により、
    画像信号に応じてインクを加熱して発泡させ、吐出圧力
    を形成する手段であることを特徴とする請求項1ないし
    8のいずれか1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  10. 【請求項10】 インク流路における一対の電極が配設
    される区間の形状が、インクの流れ方向に進むにしたが
    いインク流路の開口面積が連続的に減少するような形状
    であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1
    に記載のインクジェット記録ヘッド。
  11. 【請求項11】 画像記録媒体を搬送する搬送手段と、
    前記搬送手段により搬送される前記画像記録媒体に対し
    インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘ
    ッドと、前記インクジェット記録ヘッドに画像信号を入
    力する画像信号入力手段と、を備えるインクジェット記
    録装置において、前記インクジェット記録ヘッドが請求
    項1ないし10のいずれか1に記載のインクジェット記
    録ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装
    置。
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