社会貢献
科学とは、広い意味での再現可能の現象を、自然界から抜き出して、それを統計的に究明していく性質の学問と考えられています(1)。自然は広大無辺ですので、その中から科学の方法に適した現象を抜き出すとともに、担い手が人間であることから、人々の幸福と関係する現象の究明に発展することが、その本質上望まれます。
例えば、かつては大型のスーパーコンピューターで実施されていた演算も、現在は手のひらサイズの電話機状デバイスに収まる小型回路で計算されていますが、科学の発展の方向性の一つとして、大型の有益物を小型化して誰でも利用できるように工夫することがあります。私たちも、物質の原子レベルの研究に加えて地惑星の形成に関する学問の理解を通じ、これまでは取り扱いが難しかった巨大な岩石資源を僅かな合理的過程で変形・有益化し、皆さまの身の回りに低コストで提供する仕組みの構築に取り組んでいます。
さらには、遠くの巨大ダムで生み出され長い距離を伝搬して個人に供給される仕組みから大きく発展した電気エネルギー社会も、原子電池とも言える小型装置が発明されることで、身近なところでエネルギーが生み出される社会に変わるかもしれません。そして、次の発展を促すには、これまでの知識を整理して理論化し、普通の人間の考え及ばないところまで思考を深め、それによって新しい知識を得て、新たな発展のきっかけを作る、という方法が繰り返し用いられてきました。
私たちも、自然の本態を注意深く観察して知識を整理するとともに、その長所を正しく活用する方法を合理的に考案し続け、人々の身の回りに天然の有益物を適切な形で近づける営みを通じ、誰しもが物質的・精神的に豊かに生活する社会の実現に寄与したいと考えております。
2011年3月に東日本を襲った大震災により、国の資源投入を余儀なくされる中、多くの原子力発電所が停止され、火力発電所の割合が増加することで、エネルギー源としての火力発電所の稼働が益々重要になっています。新日本繊維会社は、増加する石炭灰の有効な活用方法を「科学の方法」に基づいて新たに見出しました。環境にやさしい新素材の研究開発へのたゆまない取り組みの中で、日本、世界の発展に貢献して参ります。
(1)中谷宇吉郎著「科学の方法」(岩波新書1958年)
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