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池谷裕二

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
池谷裕二
人物情報
生誕 (1970-08-16) 1970年8月16日(54歳)
日本の旗 日本 静岡県藤枝市
国籍 日本の旗 日本
出身校 コロンビア大学
東京大学大学院薬学系研究科
東京大学薬学部
学問
研究分野 神経科学
薬理学
脳科学
研究機関 東京大学大学院薬学系研究科
学位 薬学博士
学会 日本薬理学会理事
主な受賞歴 日本学術振興会賞(2013年
公式サイト
池谷裕二のホームページ
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池谷 裕二[1](いけがや ゆうじ[1]、Yuuji IKEGAYA、1970年8月16日 - )は、日本薬剤師薬学者脳研究者[2]学位薬学博士東京大学大学院1998年)。東京大学大学院薬学系研究科教授

神経科学および薬理学を専門とし、海馬大脳皮質可塑性を研究する。脳科学の知見を紹介する一般向けの著作も執筆している。著作に『海馬』(2005年)、『進化しすぎた脳』(2007年)、『脳には妙なクセがある』(2012年)、『単純な脳、複雑な「私」』『ココロの盲点』(2013年)など。静岡県藤枝市出身[3]

略歴

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人物

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研究活動

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光学的画像電気生理学などの計測技術を用いて研究を行っている。池谷の学術論文は30歳にして100報、40歳にして200報、50歳にして300報を数え、米科学誌『Science』などの学術誌に掲載されている[9]。神経回路の動作原理に関する研究は、日本学士院学術奨励賞日本学術振興会賞文部科学大臣表彰若手科学者賞などの学術賞を受けている。

執筆・講演活動

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販売部数が10万部を超える書籍が9冊ある。累積部数は200万部を超え、ほとんどの著書が中国語韓国語に翻訳出版されている。

継続的に執筆活動を行う現役の科学者は珍しく、池谷の活動スタイルは「ネオ理系」と評された[10]。サイエンスライターの森健は「特筆すべきは、池谷氏の著作については同じ研究者の間でも非常に評価が高いということだ。たとえば今回の取材でも、理化学研究所のある研究者が『普段の研究活動がありながら、よくあれだけの(質の高い)本が出せていると感心する』と手放しで讃えていた」と述べている[11]。一方、池谷はアウトリーチ活動やメディア露出については慎重で、テレビやラジオへの出演は限定的である。株式会社エスエンタープライズに講師登録している[12]

サイエンス論争

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2004年に発表したScience論文[13]は、大脳皮質のニューロンに見られる特徴的な発火パターンに着目し、定型的なネットワーク活動を明らかにして、十数年続いた論争に対して画期的な実験結果を示した。しかし、in vivoのデータを提供した共著者が、再解析の結果、有意な関連性を否定する論文をNeuron誌に報告した[14]。続いて、第三者のJ Neurosciの報告[15]は、池谷らの解析結果の正しさを認めながらも、慎重な議論を展開している。しかし、再解析を行っても当初の結論は変わらないとする池谷らの反論がPLoS ONE誌[16]に掲載され、一定の決着をみた。

エピソード

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  • 九九や漢字は苦手で、小学校の成績は並以下だった[17]
  • しかし、中学以降の成績は突出しており、東京大学薬学部へ首席で進学しただけでなく、卒業時も首席で卒業した。また東京大学大学院の入学試験にも首席で合格している[18]
  • 人の顔をうまく認識できない先天性相貌失認症であることをカミングアウトしている。顔と名前を一致させる苦労を「道端の石コロに名前が付いていて、微妙な形を区別しながら覚えていくといえばイメージが湧きますか?」と述べている[19]

受賞歴

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  • 2004年 日本薬学会薬学研究ビジョン部会賞
  • 2006年 コニカミノルタ画像科学奨励賞
  • 2006年 日本薬理学会学術奨励賞
  • 2006年 日本神経科学学会奨励賞
  • 2008年 日本薬学会奨励賞
  • 2008年 文部科学大臣表彰若手科学者賞
  • 2009年 ニューロクリアティブ研究会創造性研究褒賞
  • 2013年 日本学術振興会賞
  • 2013年 日本学士院学術奨励賞
  • 2015年 塚原仲晃記念賞

著書

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  • 『記憶力を強くする』(講談社ブルーバックス 2001)ISBN 978-4062573153
  • 『最新脳科学が教える高校生の勉強法』(ナガセ 2002)ISBN 978-4890852420
  • 『受験脳の作り方』(ナガセ 2002 のち新潮文庫 2011)ISBN 978-4101329222
  • 『進化しすぎた脳』(朝日出版社 2004 のち講談社ブルーバックス 2004)ISBN 978-4062575386
  • 『怖いくらい通じるカタカナ英語の法則』(講談社 2004 のち講談社ブルーバックス 2008)ISBN 978-4062575744
  • 『脳はなにかと言い訳する』(祥伝社 2006 のち新潮文庫 2010)ISBN 978-4396681135
  • 『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社 2009 のち講談社ブルーバックス 2013)ISBN 978-4255004327
  • 『脳には妙なクセがある』(扶桑社 2012 のち扶桑社新書 2013)新潮文庫
  • 『ココロの盲点』(朝日出版社 2013)ISBN 978-4255007595
  • 『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』(講談社ブルーバックス 2016)ISBN 978-4-06-257953-7
  • 『脳はなにげに不公平 パテカトルの万脳薬』朝日新聞出版, 2016.3 のち文庫
  • 『メンタルローテーション "回転脳"をつくる』扶桑社, 2019.6
  • 『脳はすこぶる快楽主義 (パテカトルの万脳薬)』朝日新聞出版, 2020.10
  • 『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』扶桑社新書 2020.7 のち文庫(『脳研究者 育つ娘の脳に驚く』)
  • 『回転させるだけで脳が覚醒するドリル』扶桑社, 2021.2
  • 『できない脳ほど自信過剰 パテカトルの万脳薬』(朝日文庫) 2021/3
  • 『寝る脳は風邪をひかない』扶桑社 2022.1 のち文庫(『脳は意外とタフである』)

共著

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翻訳

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  • J.アラン・ホブソン『夢に迷う脳: 夜ごと心はどこへ行く?』監訳 池谷香訳(朝日出版社 2007)
  • G.K.カンジ『「逆」引き統計学』著 久我奈穂子共訳(講談社 2009)

教科書

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  • 国語(中学1年) 「笑顔という魔法」(教育出版 2012-現在)
  • 国語(中学3年) 「海馬」(三省堂 2012-2015)

連載

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  • VISA(VISA)「ビジネス脳のすすめ」2004-2008
  • Field(エムエフディ)2005-2007
  • 日本経済新聞(日本経済新聞)夕刊一面「あすへの話題」2007
  • エコノミスト(毎日新聞)巻頭エッセイ「闘論席」2008-現在
  • 日経ビジネスAssocie(日経BP)Web連載「潜在“脳力”を活かす仕事術」2008年-2009年
  • 週刊現代(講談社)「リレー読書日記」2009-2010
  • 読売新聞(読売新聞)読書委員 2011-2012
  • 週刊朝日(朝日新聞出版)「パテカトルの万脳薬」 2012-2023
  • 読売新聞(読売新聞)文化面「ビタミンBOOK」 2013-2014
  • クーヨン(クレヨンハウス)「脳研究者パパの悩める子育て」 2013-2017
  • 家の光(家の光協会)「脳ピカドリル」 2014-2015
  • 婦人画報(ハースト婦人画報社)「宇宙の一皿」 2016-2017
  • RETHINK(日本たばこ産業)「Rethink LABO ~“新視点”発見ラボ」 2016-2017
  • 週刊新潮(新潮社)「池谷裕二の全知全脳」 2023-現在

テレビ出演

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出典

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  1. ^ a b c 『新訂 現代日本人名録 2002 1.あーかと』日外アソシエーツ、432頁。 
  2. ^ 池谷裕二、木村俊介『ゆらぐ脳』文藝春秋、13頁。 
  3. ^ 前掲書『新訂 現代日本人名録 2002 1.あーかと』
  4. ^ 池谷裕二『単純な脳、複雑な「私」』講談社〈講談社ブルーバックス〉、16頁。 
  5. ^ 薬剤師資格確認検索システム - 厚生労働省
  6. ^ 博士論文書誌データベース
  7. ^ 池谷裕二、木村俊介『ゆらぐ脳』文藝春秋、162頁。 
  8. ^ 「人事異動(教員)」『学内広報』NO.1363、東京大学広報委員会、2007年9月14日、42頁。
  9. ^ 「池谷裕二の研究業績」 (池谷裕二のホームページより) http://gaya.jp/publication/paper_in.html
  10. ^ 日本経済新聞「NIKKEIプラス1」. (2005年5月14日) 
  11. ^ 森健『脳にいい本だけを読みなさい!』光文社、80頁。ISBN 978-4334976026 
  12. ^ エスエンタープライズ 講師No.5222
  13. ^ Science.:304(5670):559-64. (2004) Synfire chains and cortical songs: temporal modules of cortical activity.Ikegaya Y, Aaron G, Cossart R, Aronov D, Lampl I, Ferster D, Yuste R. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15105494
  14. ^ Neuron.: 53(3):413-25. (2007) Stochastic emergence of repeating cortical motifs in spontaneous membrane potential fluctuations in vivo.Mokeichev A, Okun M, Barak O, Katz Y, Ben-Shahar O, Lampl I. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17270737
  15. ^ J Neurosci.: 28(42):10734-45. (2008) The statistics of repeating patterns of cortical activity can be reproduced by a model network of stochastic binary neurons. Roxin A, Hakim V, Brunel N. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18923048
  16. ^ PLoS ONE.: 3(12):e3983.(2008) Statistical significance of precisely repeated intracellular synaptic patterns.Ikegaya Y, Matsumoto W, Chiou HY, Yuste R, Aaron G. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19096523
  17. ^ 池谷裕二、糸井重里『海馬』新潮社〈新潮文庫〉、236頁。 
  18. ^ 池谷裕二『受験脳の作り方』新潮社〈新潮文庫〉、239頁。 
  19. ^ 池谷裕二『脳はこんなに悩ましい』新潮社、250頁。 

外部リンク

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