実学
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実学(じつがく、独:praktische Wissenschaft)
実証性に裏づけられており、社会の役に立つ学問[1]。農工商などの産業経済の発達に役立つ実業的な知識・技術を学べる学問。法律学・経済学などの政策科学、数理工医などの実験科学など実生活で役に立っているタイプの学問。他にも経営学・農学、本草学(薬学)、天文学、暦学などのような学問のこと[1][2][3]。空理空論、理想主義、非現実的または非実用的、観念的で空疎な学問である哲学や文学など人文学・社会学など社会科学の一部を意味する虚学の対義語[1][4]。
新井白石が、当時学問として重要視されていた朱子学を非実用的だと批判し、殖産興業政策をとったのが日本における実学の先駆とされる[1]。福沢諭吉は、『学問のすゝめ』のなかで、1872年当時重要視されていた和学・儒学を「学問の実に遠くして日用の間に合はぬ」と虚学であるとし、「人間普通日用に近き実学」こそ学問だとし、実学の庶民への教育を記した[1]。
社会生活に実際に役立っている学問として、医学・法律学・経済学・工学以外には、歯学・薬学・獣医学・農学・水産学・情報学・計算機工学・計算機科学・会計学・統計学・ゲーム理論・経営学・商学などを指す。日本の大学では、理科系と文科系で扱う学問分野が異なるが、理系は人文・社会科学を含まないために概ね全て実学とされている。逆に文系の中でも法学や経済学などは実学とされる[4]。
→詳細は「学問の一覧 § 応用科学」を参照
→詳細は「学問の一覧 § 社会科学」を参照
漢字圏
[編集]- 明・清時代の中国で盛んになった経世致用の学のこと。明末の16〜17世紀にかけ李時珍(『本草綱目』)、徐光啓(『農政全書』)、宋応星(『天工開物』)らが技術関係の書物を著した。
- 実学 (朝鮮) - 朝鮮王朝後期に正統官学である性理学への批判を通じて登場した思想・学問潮流。「実事求是の学」とも。彼らは宋学(朱子学)が非現実な虚学となったことを批判し、「実事求是」の思想が生まれた。18世紀には西洋学紹介、現実社会改革、鎖国批判などの各種啓蒙運動を展開したが、19世紀初めに王朝から弾圧された[1]。
- →「李氏朝鮮の学問 § 実学」も参照
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e f 字通,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,旺文社世界史事典 三訂版,旺文社日本史事典 三訂版,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,世界大百科事典 第2版,普及版. “実学とは”. コトバンク. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “実学(じつがく)の意味・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書”. goo辞書. 2023年1月7日閲覧。
- ^ “経営学は実学と科学を両立できるのか 一橋大学教授・楠木建×慶應義塾大学准教授・琴坂将広【前編】 | リーダーシップ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー”. 経営学は実学であり、科学である。慶應義塾大学の琴坂将広准教授によるそんな問題提起がきっかけとなり、一橋大学の楠木建教授からこの問題を一緒に考えたいという提案をいただき、両者の対談が実現。実務から学問… (2017年3月2日). 2023年7月24日閲覧。
- ^ a b 教養學科紀要第14~16号 -p299, 1981年
参考文献
[編集]- Winfried Böhm: Theorie und Praxis: Eine Einführung in das pädagogische Grundproblem. Königshausen & Neumann, 2011, ISBN 978-3-8260-4693-3.