堀田隼人
堀田 隼人(ほった はやと)は、大佛次郎の小説『赤穂浪士』の主人公である[1]。同小説を原作にした1933年(昭和8年)製作・公開、伊藤大輔脚本・監督による日本の劇映画『堀田隼人』(ほったはやと)[2][3][4][5]についても、本項で詳述する。
人物
[編集]大佛次郎が考案した人物であり、実在しない架空の人物である[1]。堀田隼人を主人公とする小説は、『赤穂浪士』の題で、架空の人物である堀田の視点を通じて「赤穂事件」を描き、1927年(昭和2年) - 1928年(昭和3年)にわたり『東京日日新聞』(現在の『毎日新聞』)に連載され、1928年(昭和3年) - 1929年(昭和4年)にわたり改造社から全3巻として発行された長篇小説である[1][6]。
吉良上野介こと吉良義央(実在)の実子、米沢藩主・上杉綱憲(実在)の養子先である上杉家の家老・千坂兵部(実在)の前に現れ、自らが浪人であること、「堀田隼人」という名であること以外は明かさない[1]。千坂の依頼により、大石内蔵助(実在)ら赤穂浪士(実在)の動きを探る仕事をする[1]。同じミッションをもつ者に、怪盗・蜘蛛の陣十郎(くものじんじゅうろう、架空)、千坂の密偵としてお仙(おせん、架空)がいる[1]。最終的には吉良邸への討ち入りは果たされ、虚無感にかられて、お仙と心中して果てる[1]。ニヒリスティックな人物として描かれている[1]。
演じた俳優
[編集]年号 | タイトル | 演じた俳優 | 二役 | 製作/配給 | 監督 | 脚本 |
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1929年 | 赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻 |
大河内傳次郎 | 大石内蔵助 | 日活太秦撮影所/日活 | 志波西果 | 志波西果 |
1933年 | 堀田隼人 | 片岡千恵蔵 | 浅野内匠頭 | 片岡千恵蔵プロダクション/日活 | 伊藤大輔 | 伊藤大輔 |
1956年 | 赤穂浪士 天の巻 地の巻 |
大友柳太朗 | 東映京都撮影所/東映 | 松田定次 | 新藤兼人 | |
1961年 | 赤穂浪士 前編・後編 | 大友柳太朗 | 東映京都撮影所/東映 | 松田定次 | 小国英雄 | |
1959年 | 赤穂浪士 | 柳永二郎 | NET (テレビ) | 山本隆則 | 池田一朗 | |
1964年 | 赤穂浪士 | 林与一 | 日本放送協会 (テレビ) | 井上博 | 村上元三 | |
1979年 | 赤穂浪士 | 田村正和 | テレビ朝日 東映京都撮影所 (テレビ) |
沢島正継・田中徳三 村山三男・大洲齋・松島稔 |
新藤兼人・下飯坂菊馬・田坂啓 芦沢俊郎・岡本育子・千賀参一 | |
1999年 | 赤穂浪士 | 大鶴義丹 | テレビ東京・東映 (テレビ) | 原田雄一・上杉尚祺・牧口雄二 杉村六郎・吉川一義 |
高田宏治・藤井邦夫・ちゃき克彰 |
映画
[編集]堀田隼人 | |
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監督 | 伊藤大輔 |
脚本 | 伊藤大輔 |
原作 | 大佛次郎 |
出演者 |
片岡千恵蔵 月形龍之介 南光明 浅香新八郎 高津慶子 水の江澄子 |
撮影 | 唐沢弘光 |
製作会社 | 片岡千恵蔵プロダクション |
配給 | 日活 |
公開 | 1933年4月27日 |
上映時間 | 108分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
『堀田隼人』(ほったはやと)は、1933年(昭和8年)製作・公開、伊藤大輔脚本・監督による日本の劇映画、サイレント映画である[2][3][4][5]。
略歴・概要
[編集]前年1932年(昭和7年)、日活太秦撮影所を退社し、村田実、田坂具隆、内田吐夢らとともに興した製作会社・新映画社に所属していた伊藤大輔が、片岡千恵蔵プロダクションに招聘され、同社との臨時契約を交わして製作に臨んだ[5]。本作の撮影技師である唐沢弘光も、新会社設立の折に伊藤に同行しており、本作についても伊藤と同様に参加した[5]。所属した東活映画社が解散した後の月形龍之介、おなじく南光明、浅香新八郎、高津慶子がフリーランスの立場で出演した[5]。マキノ・プロダクションに所属していた「寿々川満智子」が片岡千恵蔵プロダクションに移籍し、本作をもって「水の江澄子」と改名した[5][7]。1929年(昭和4年)に日活太秦撮影所が製作し日活が配給した、大河内傳次郎主演、志波西果脚本・監督によるサイレント映画『赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻』のリメイクである[2]。
本作は、日活が配給し、同年4月27日に浅草公園六区・富士館を初めとする劇場で公開された[2][3][4][5]。同時上映は日活太秦撮影所製作、倉田文人監督の現代劇『女性陣』であるが[8][9]、日活データベースによれば、同年8月31日封切説があるという[5]。後者の説によれば、同日に富士館で封切られた伊藤大輔監督の『月形半平太』および鈴木重吉監督の『青春無情』と同時上映ということになる[9]。同年度キネマ旬報ベストテン9位を獲得した。
4年前の『赤穂浪士 第一篇 堀田隼人の巻』に主演した大河内傳次郎は、主人公「堀田隼人」と「大石内蔵助」の二役を演じたが、本作では、片岡千恵蔵が主人公「堀田隼人」と「浅野内匠頭」の二役を演じている[2][3][5]。本作の原作である大佛次郎の長編小説『赤穂浪士』は、第二次世界大戦後にも2回リメイクされているが、いずれも片岡が主演であるものの、「堀田隼人」が主人公ではなく、片岡は『赤穂浪士 天の巻 地の巻』(監督松田定次、1956年)では「立花左近」を、『赤穂浪士 前編・後編』(監督松田定次、1961年)では「大石内蔵助」を、それぞれ演じており、「堀田隼人」はいずれの作品でも大友柳太朗が演じている[10][11]。
2013年(平成25年)1月現在、東京国立近代美術館フィルムセンターも、マツダ映画社も、本作の上映用プリントを所蔵しておらず、現存していないとみなされるフィルムである[3][12][13]。伊藤大輔による本作のシナリオは、『伊藤大輔シナリオ集 1』(淡交社、1985年)に収録されている[14]。
スタッフ・作品データ
[編集]- 製作 : 片岡千恵蔵プロダクション
- 上映時間(巻数 / メートル) : 108分(12巻 / 2,949メートル)
- フォーマット : 白黒映画 - スタンダードサイズ(1.37:1) - 18fps - サイレント映画
- 公開日 : 日本 1933年4月27日
- 配給 : 日活
- 初回興行 : 浅草公園六区・富士館
- 昭和8年度キネマ旬報ベストテン9位
キャスト
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h 堀田隼人、コトバンク、2013年1月10日閲覧。
- ^ a b c d e 堀田隼人 、日本映画データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ a b c d e 堀田隼人、 日本映画情報システム、文化庁、2013年1月10日閲覧。
- ^ a b c 堀田隼人、KINENOTE、2013年1月10日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 堀田隼人、日活データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ 世界大百科事典 第2版『赤穂浪士』 - コトバンク、2013年1月10日閲覧。
- ^ 水ノ江澄子 - 日本映画データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ 女性陣、日本映画データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ a b 1933年 公開作品一覧 501作品、日本映画データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ 赤穂浪士 天の巻 地の巻、日本映画データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ 赤穂浪士、日本映画データベース、2013年1月10日閲覧。
- ^ 所蔵映画フィルム検索システム、東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月10日閲覧。
- ^ 主な所蔵リスト 劇映画 邦画篇、マツダ映画社、2013年1月10日閲覧。
- ^ 伊藤大輔シナリオ集 1、国立国会図書館、2013年1月10日閲覧。
参考文献
[編集]- 『伊藤大輔シナリオ集 1』、伊藤大輔・伊藤朝子、淡交社、1985年5月 ISBN 4473008975
- 『千恵プロ時代 - 片岡千恵蔵・伊丹万作・稲垣浩 洒脱にエンターテイメント』、冨田美香、フィルムアート社、1997年7月 ISBN 484599769X
- 『赤穂浪士 上・下』、大佛次郎、新潮文庫、新潮社、2007年11月 上 ISBN 4101083045 / 下 ISBN 4101083053