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ジュリア・クイン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジュリア・クイン
Julia Quinn
誕生 Julie Cotler
1970年(53 - 54歳)
職業 小説家
言語 英語
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
最終学歴 ハーバード大学
活動期間 1994年 -
ジャンル ロマンス
デビュー作 『すみれの瞳に公爵のキスを』
公式サイト www.juliaquinn.com
ウィキポータル 文学
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ジュリア・クインJulia Quinn、本名:ジュリア・ポッティンガー〈Julie Pottinger 〉、旧姓:コトラー〈Cotler 〉、1970年 - )は、アメリカ合衆国ロマンス作家。ペンネームの「クイン (Quinn) 」は、本棚でベストセラー作家のアマンダ・クイック (Quick) の隣に並べられたいとの思いから名付けたと明かしている[1]。著作は26か国語に翻訳されており[2]、『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストに18回ランクインしたことがある[3]

経歴

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両親の離婚後はカリフォルニアで過ごしたが、主にニューイングランド地方で育った[2]。幼い頃から本ばかり読んでいた。ティーン向けのロマンス作品"Sweet Dreams" や「スイート・ヴァレー・ハイ」シリーズを読むことに父親はあまりいい顔をせず、そうした作品が自分にとって良いと証明できたら読み続けてもいいと言い渡し、すぐに自分はこの本で書き方を勉強しているのだと反論したという。そのことを証明しようと出たばかりのコンピュータの前に座って最初の2章を書いたという。3年かかって書き上げた作品を"Sweet Dreams" の出版社へ送ったが断られた。[4]

ハーバード大学を芸術史の学位を取得して卒業。4年生の時、その学位で何をしたいのかが分からず、医学部へ進むことを決めていた。医学部に入るには科学が必修で、更に2年通わなければならなかった[3]

科学の勉強に多くの時間を当てながら、軽めのリージェンシー・ロマンスを書き始めた[1]。医学部への入学が決まって数週間後、初めて書いた2作『すみれの瞳に公爵のキスを』(原題:Splendid )と『求婚のワルツは真夜中に』(原題:Dancing At Midnight )がオークションで売れているという、駆け出しのロマンス作家にとって信じられないことが起こっていることに気付いた[5]。さらに2作を書くために入学を2年延ばすことを決めた[4]

イェール大学医学部に入学し、医師になりたいと決めた時には、3作品が出版されていた。医学の道に進んでわずか数か月後、やはり自分は解剖より書く方が好きだと気付き、退学してフルタイムで執筆に専念することにした[4]

フェミニストと自認しており、作品のヒロインにもその気質を持たせているが、時代設定と照らし合わせると必ずしも正しいとはいえない[1]。作品の特徴として、ユーモアたっぷりでありながらシャープでウィットに富んだ会話が繰り広げられることが挙げられる[4]。ロマンス小説にありがちな、登場人物が窮地に立たされ、大きな争いに巻き込まれるような展開は少ない。『青い瞳にひそやかに恋を』(原題:When He was Wicked )もそういった普通のロマンス小説とは異なり、最初の4章でヒロインの(ヒーローでない男性との)幸せな結婚生活が描かれ、最初の夫の死、ヒロインと夫の親友だったヒーローの2人が悲しみに立ち向かい、2人の2度目の「恋」が怒濤のように始まっていく[5]

作品の多くに夫ポールへの献辞が書かれている。2007年、『夢の乙女に永遠の誓いを』(原題:On the Way to the Wedding )でアメリカロマンス作家協会英語版(以下、RWA)が主催するリタ賞を受賞、翌2008年には『ミランダの秘密の日記』(原題:The Secret Diaries of Miss Miranda Cheever )で連続受賞した。2010年には『レディ・オリヴィアの秘密の恋』(原題:What Happens in London )で受賞し、最年少で15人しかいないロマンス作家協会の殿堂入り作家の1人となった。2003年には『タイム』で特集記事が組まれたが、ロマンス作家では珍しい出来事だった。2005年、『パブリッシャーズ・ウィークリー』のレビューで『まだ見ぬあなたに野の花を』(原題:To Sir Phillip, With Love )が星付けされたことでその年のベストセラー6冊のうちの1冊になった[3]。『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストに近著の13作がランクインしており、2008年10月には『ウィンダム公爵とつれない許嫁』(原題:Mr. Cavendish, I Presume )は第1位になった。更に、アンソロジー「レディ・ホイッスルダウン」シリーズ2作にも参加し、同じく『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストにランクインした。またクインの代表作である「ブリジャートン」シリーズの後日談が収録されているアンソロジー『伯爵の花嫁探し』や『さらわれた花嫁たち』(コニー・ブロックウェイエロイザ・ジェームズ英語版の2人とコラボレーション)もランクインした[3]

2001年、クイズ番組「ザ・ウィーケスト・リンク」で79,000ドルを獲得した[6]。現在も読書量は変わらず多く、フェイスブック上でお薦めの作品を紹介している。

夫とアメリカ北西部に住んでいる。

受賞、栄誉

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  • 1997年:『月をくれた伯爵』が『ロマンティック・タイムス・マガジン』が選ぶベスト・リージェンシー作品に選出[4]
  • 2001年:RWAが主催するリタ賞に最終候補まで残る。
  • 2002年:『恋心だけ秘密にして』がRWAのメンバーによる投票で決まる「今年のトップ10」に選ばれる。リタ賞の長編ヒストリカル部門で最終候補まで残る。
  • 2002年:『まだ見ぬあなたに野の花を』が『パブリッシャーズ・ウィークリー』で「今年のベスト6」に選ばれる。
  • 2003年:『タイム』誌で特集が組まれる。
  • 2007年:『夢の乙女に永遠の誓いを』でリタ賞長編ヒストリカル部門を受賞。
  • 2008年:『ミランダの秘密の日記』でリタ賞ベスト・リージェンシー・ヒストリカル部門を受賞。
  • 2010年:『レディ・オリヴィアの秘密の恋』でリタ賞ベスト・リージェンシー・ヒストリカル部門を受賞[7]
  • 2010年:アメリカ・ロマンス作家協会で殿堂入りする[7]

作品リスト

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シリーズ作品

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Splendid 三部作
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
すみれの瞳に公爵のキスを Splendid 1995年 2012年02月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
求婚のワルツは真夜中に Dancing At Midnight 1995年 2012年08月
野に咲く乙女に口づけを Minx 1996年 2012年11月
祭壇の前で待ちあわせ A Tale of Two Sisters 2003年 2013年05月 島崎雪菜 幻冬舎
〈ラベンダーブックス〉
その他の著者:リサ・クレイパスキンリー・マクレガー
アメリカ合衆国の旗 アンソロジー"Where's My Hero?" に収録
日本の旗 アンソロジー『愛しきあなたへ』に収録
Lyndon Sisters 二部作
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
月をくれた伯爵 Everything And The Moon 1997年 2016年3月 山本泉 ハーパーコリンズ・ジャパン
〈MIRA文庫〉
たそがれに恋した伯爵 Brighter Than The Sun 1997年 2016年7月 兒嶋みなこ
Agents of the Crown
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
To Catch An Heiress 1998年
運命の結婚はすぐそばに How To Marry A Marquis 1999年 2011年5月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
ブリジャートン シリーズ
ブリジャートン家の家族構成は8人兄弟姉妹と未亡人の母。作中では、一家はイギリス社交界から尊敬され好意的な目で見られている。一家は深い絆で結ばれている。シリーズは全8巻から成り、各巻で兄弟姉妹が順に1人ずつ主人公を務め、「真の愛」を見つけていく。時代設定は、イギリス摂政時代の終末期の上流社会。2016年、兄弟姉妹の一世代前、伯母ビリー(父エドモンドの姉)の時代を描く新シリーズ「ロークズビー家シリーズ」が開始した。
シリーズ第8作『夢の乙女に永遠の誓いを』は2007年にリタ賞を受賞。第5作『まだ見ぬあなたに野の花を』は2002年に『パブリッシャーズ・ウィークリー』でその年のベスト6に選ばれた。『ニューヨーク・タイムズ』のベストセラー・リストにも何作かがランクインしている。
第2作から第7作までの6作に、「2番目のエピローグ」を電子書籍として書き下ろしている。第1作と第8作のエピローグを足した全8作と、母ヴァイオレットにスポットを当てた短編を足した短編集が2013年4月に刊行された[8]
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
恋のたくらみは公爵と The Duke and I 2000年 2008年01月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
不機嫌な子爵のみる夢は The Viscount Who Loved Me 2000年 2008年06月
もう一度だけ円舞曲(ワルツ) An Offer From A Gentleman 2001年 2007年06月
恋心だけ秘密にして Romancing Mister Bridgerton 2002年 2008年11月
まだ見ぬあなたに野の花を To Sir Phillip, With Love 2003年 2009年06月
青い瞳にひそやかに恋を When He Was Wicked 2004年 2009年11月
突然のキスは秘密のはじまり It's In His Kiss 2005年 2010年03月
夢の乙女に永遠の誓いを On the Way to the Wedding 2006年 2010年07月 リタ賞受賞作
幸せのその後で〜ブリジャートン家後日譚〜 The Bridgertons: Happily Ever After 2013年 2013年08月 スピンオフ作品
ウィンダム公爵シリーズ
このシリーズは、「自分こそがウィンダム公爵だ」と名乗る2人の男性が主人公で、イギリスのロックバンド「ダイアー・ストレイツ」の曲にインスパイアされて執筆した作品である[9]。2作品は同時期に起こった出来事を異なった視点から描いており、同じシーンが登場する。
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
ウィンダム公爵と美しき義賊 The Lost Duke of Wyndham 2008年 2010年4月 羽田詩津子 ランダムハウス講談社文庫
〈RHブックス+〉
ウィンダム公爵とつれない許嫁 Mr. Cavendish, I Presume 2008年 2011年8月
Bevelstoke シリーズ
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
ミランダの秘密の日記 The Secret Diaries of Miss Miranda Cheever 2007年 2008年11月 羽田詩津子 ランダムハウス講談社文庫
〈RHブックス+〉
リタ賞受賞作
レディ・オリヴィアの秘密の恋 What Happens in London 2009年 2017年02月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
ミス・アナベルの秘密のキス Ten Things I Love About You 2010年
スマイス・スミス家四部作
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
はじめての恋をあなたに奏でて Just Like Heaven 2011年 2013年2月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
運命のキスは柔らかな雨のように A Night Like This 2012年 2014年1月
大嫌いなあなたと恋のワルツを The Sum of All Kisses 2013年 2014年6月
突然の結婚は恋を招いて The Secrets of Sir Richard Kenworthy 2015年 2016年7月
ロークズビー シリーズ
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
恋のはじまりは屋根の上で Because of Miss Bridgerton 2016年[10] 2016年12月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
The Girl with the Make-Believe Husband 2017年[11]

アンソロジー

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レディ・ホイッスルダウン シリーズ
ブリジャートン・シリーズに登場する匿名のコラムニスト「レディ・ホイッスルダウン」を主題とした作品。
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
収録先 備考
三十六通のバレンタインカード Thirty-Six Valentines 2003年 2011年1月 村山美雪 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
アメリカ合衆国の旗 "The Further Observations of Lady Whistledown"
日本の旗 『レディ・ホイッスルダウンの贈り物』
他の著者:スーザン・イーノックカレン・ホーキンス英語版、ミア・ライアン
ファースト・キス The First Kiss 2004年 2011年9月 アメリカ合衆国の旗 "Lady Whistledown Strikes Back"
日本の旗 『レディ・ホイッスルダウンからの招待状』
The Lady Most...
邦題 原題 アメリカ合衆国の旗
刊行年月
日本の旗
刊行年月
日本の旗
訳者
日本の旗
出版社
備考
伯爵の花嫁探し The Lady Most Likely... 2010年12月 2014年03月 高橋佳奈子 竹書房
〈ラズベリーブックス〉
他の著者:コニー・ブロックウェイエロイザ・ジェームズ英語版
さらわれた花嫁たち The Lady Most Willing... 2012年12月 2013年10月
その他
原題 アメリカ合衆国の旗
刊行月
アメリカ合衆国の旗
収録先
他の著者
Gretna Greene 1999年06月 "Scottish Brides" クリスティーナ・ドット英語版ステファニー・ローレンスカレン・ラニー英語版
...and a Sixpence in Her Shoe 2016年12月 "Four Weddings and a Sixpence" エリザベス・ボイル、ステファニー・スローン、ローラ・リー・ガーク

出典

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  1. ^ a b c レヴ・グロスマン英語版 (2003年2月3日). “Rewriting the Romance” (PDF). Time. 2007年4月3日閲覧。
  2. ^ a b Interview With Julia Quinn”. Die Romantische Buecherecke (2001年2月). 2007年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年4月3日閲覧。
  3. ^ a b c d About Julia”. Julia Quinn Official Website. 2012年6月3日閲覧。
  4. ^ a b c d e White, Claire E. (1998年). “A Conversation with Julia Quinn”. Writers Writes. 2007年4月3日閲覧。
  5. ^ a b Julia Quinn Makes her own Destiny”. Romantics at Heart (1996年). 2007年4月3日閲覧。
  6. ^ News”. Julia Quinn Official Website (2012年). 2007年4月3日閲覧。
  7. ^ a b Authors and Books: Hall of Fame”. アメリカ・ロマンス作家協会. 2008年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月8日閲覧。
  8. ^ The Bridgertons: Happily Ever After from Julia Quinn”. Julia Quinn Official Website. 2013年8月19日閲覧。
  9. ^ FAQ”. Julia Quinn Official Website. 2012年6月3日閲覧。
  10. ^ Lamb, Joyce (2016年2月22日). “Exclusive excerpt: 'Because of Miss Bridgerton' by Julia Quinn”. USAトゥデイ. http://happyeverafter.usatoday.com/2016/02/22/because-of-miss-bridgerton-excerpt-julia-quinn/ 2016年10月5日閲覧。 
  11. ^ The Girl with the Make-Believe Husband - Julia Quinn - Paperback”. ハーパーコリンズ. 2016年10月5日閲覧。

外部リンク

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