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※紙面抜粋
※2024年7月19日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
またもや自民党議員の「政治とカネ」(堀井学衆院議員の地元事務所を家宅捜索)/(C)共同通信社
また自民党議員の「政治とカネ」である。今度は「公選法違反」だ。
東京地検特捜部が、18日、公選法違反の疑いで自民党の堀井学衆院議員(52)の関係先4カ所を家宅捜索した。
堀井は、選挙区内の有権者に秘書を通じて香典を配った疑いを持たれている。公選法は、政治家個人が選挙区内で現金や物品を寄付することを原則禁じている。香典は、本人が葬儀に参列して直接渡す場合は例外的に認められているが、秘書による持参は違法だ。違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられる。有罪となれば公民権も停止される。
2022年ごろ、選挙区である北海道9区内の複数の有権者に「堀井学」と記された香典を秘書に持っていかせた疑いがあるという。違法な寄付の総額は数十万円に上るとみられている。
堀井は現在4期目。違法な香典配りは、1期目から常態化していたらしい。
「北海道では、香典に対して領収書を出す習慣があります。事務所では領収書を保管していた。堀井さんが1期目だったころのモノもあったようです。事務所内では『違法だからやめた方がいい』という指摘も複数回あったようですが、堀井さんは『慣例としてやってきた。いきなりやめることはできない』と、提供をつづけるよう秘書に指示していたといいます。堀井さんは、2012年の初当選以来、3回連続、小選挙区で勝利したが、21年の衆院選は僅差で敗れて比例復活だった。小選挙区で敗北し、有権者をつなぎとめるためにも香典配りをやめられなかったのだと思う。香典の金額を決める時は、LINEのグループチャットで『1万円でいいか』などと協議し、誰が香典を持っていくかといった予定も共有していたというから、違法な香典配りはシステム化されていたのでしょう」(政界関係者)
公選法の時効は3年。特捜部は22年ごろを集中的に捜査しているという。
捜査の発端は「裏金」だった。安倍派に所属していた堀井は、2018〜22年の5年間で2196万円の裏金をつくっていた。特捜部は、この捜査の過程で、香典が違法に配られていた疑いを把握したという。裏金は、香典に充てられていた可能性が高い。
強制捜査を受けた堀井は、18日、自民党を離党したが「議員辞職はしない。任期をまっとうする」と議員辞職を否定している。
この10年間でモラルは消えた
結局、身内に“大甘処分”。改革、出来るわけがない(C)日刊ゲンダイ
しかし、よくも、この時代に「香典配り」などという分かりやすい違法行為をつづけていたものだ。
有権者に「香典」や「祝儀」などを渡したらアウトということは、政界関係者なら誰だって知っているイロハのイである。過去には、小野寺五典元防衛相や菅原一秀元経産相が立件されている。しかも、菅原が立件されたのは21年である。堀井は、その翌年に香典を配っていたのだから、信じられない。
それにしても、東京地検に強制捜査される自民党議員の人数は、ちょっと異常なのではないか。
ここ数年だけでも、河井克行、薗浦健太郎、秋本真利、秋元司、柿沢未途、池田佳隆、大野泰正、谷川弥一……と、毎年のように立件されているのだから異様である。ここまで立件率の高い組織は、自民党と山口組くらいだろう。
つい最近も、柴山昌彦元文科相ら3人が「政治資金規正法違反容疑」で告発されたばかりだ。
自民党議員の不正が相次ぐのは、この10年間で、モラルが一気に低下したためなのではないか。かつては大物議員の贈収賄が騒がれたものだが、いまや上から下まで平気で不正に手を染めている。
「政治とカネ」に無縁と思われたメダリスト、堀井も、当たり前のように裏金をつくり、周囲に止められても香典を配っていた。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)がこう言う。
「安倍政権の誕生以降、自民党議員の意識は大きく変わったように見えます。謙虚さを失い、自分たちは、なにをやっても許される、という空気が蔓延したように思う。実際、どんな政治をやっても自民党は選挙に勝ちつづけ、トップに疑惑が持ち上がっても検察が手を出せないほど、自民党政権は権勢を誇っていた。結局、失敗しましたが、検察官の定年のルールを変えてまで“官邸の守護神”と呼ばれた黒川弘務・東京高検検事長を検事総長に就けようとしていた。民主国家とは思えないやり方だった。あんな政治を10年もつづけていたら、党内からモラルだって消えますよ」
安倍派に所属していた堀井は、自分は香典を配りつづけても大丈夫、と考えていたのだろうか。
裏金事件も反省ナシ
自民党が末期的なのは、これだけ「政治とカネ」の問題が噴き出しても、まったく反省していないことだ。
政界を揺るがした「裏金」事件についても、結局、大甘な処分で終わらせている。
裏金をつくっていたのは85人もいた。ところが、なぜか裏金総額500万円未満は不問に付され、処分を下されたのは半数以下の39人だけだった。しかも、処分された39人のうち、「離党勧告」や「党員資格停止」といった比較的重い処分を受けたのは5人しかいない。つまり、残りの約80人は、ほとんど実害がなく、次の選挙も「自民党公認候補」として堂々と出馬できるということだ。これで処分したことになるのか。
しかも、トップの岸田首相は、まったく責任をとっていない。岸田派も「裏金」をつくり、会計責任者は立件もされているのに、岸田本人は「自民党の歴史のなかで現職の総裁が処分された例はない」などと、勝手な理屈を並べて平然としている。
これでは、自民党議員のモラルは下がる一方なのではないか。不正が底ナシになるのも当たり前というものだ。
そのうえ、自民党議員からは「9月の総裁選に若手を出せば党のイメージは一新される」「総裁選で党刷新だ」などと、調子のいい声が聞こえてくる始末だ。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「自民党の裏金事件は、ある意味、自民党が再生する絶好のチャンスでした。キーマンと目された森喜朗元首相を国会に呼び、誰が裏金づくりをはじめたのか、全容を解明し、徹底的に膿を出せば、少しは国民の支持も戻ったはずです。安倍派の裏金づくりを解明することは、岸田首相にとってはリスクも小さかったはずだし、支持率をV字回復させる数少ないチャンスだったはず。なのに、すべてウヤムヤに終わらせるという最悪の決着にしてしまった。政治資金規正法の改正も、結局、目に見える成果はなかった。多くの国民は『もはや自民党に自浄作用を期待しても無駄だ』と確信したはずです。それもこれも、いまだに自民党の危機感が薄いからでしょう。もう一度、野党に転落させないと自民党は気づかないのだと思います」
はたして、あと何人、強制捜査されることか。
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